(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】バーナ用燃料制御装置およびバーナ用燃料制御方法
(51)【国際特許分類】
F23K 5/00 20060101AFI20240705BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20240705BHJP
F23N 5/20 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F23K5/00 302
F23N5/24 101F
F23N5/20 101Z
F23N5/20 A
F23K5/00 301C
F23K5/00 304
(21)【出願番号】P 2023072412
(22)【出願日】2023-04-26
【審査請求日】2024-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】保坂 康太
(72)【発明者】
【氏名】矢川 憲利
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雅人
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031219(WO,A1)
【文献】米国特許第03776275(US,A)
【文献】実開昭55-034093(JP,U)
【文献】国際公開第2018/216331(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23K5/00
F23N5/20
F23N5/24
F16K11/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼するバーナに、前記燃料または不活性ガスを選択的に供給するバーナ用燃料制御装置において、
前記バーナに、前記燃料または前記不活性ガスを供給する供給ラインが接続されていること、
前記供給ラインに、第1弁装置と、前記第1弁装置の下流側の第2弁装置と、が配設されていること、
前記第1弁装置は、
前記燃料の供給源に接続された第1入力ポートと、前記不活性ガスの供給源に接続された第2入力ポートと、出力ポートと、を備え、
前記出力ポートから前記燃料を出力する第1状態と、前記出力ポートから前記不活性ガスを出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、
前記第2弁装置は、
前記供給ラインを開放する開弁状態と、前記供給ラインを遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること、
前記第1弁装置および前記第2弁装置を制御する制御プログラムを記憶した制御部を備えること、
前記制御プログラムは、
前記バーナの燃焼を開始するための、
前記第1弁装置を前記第2状態に維持したまま、前記第2弁装置を前記閉弁状態から前記開弁状態にするステップと、
第1所定時間の経過後に、前記第2弁装置を前記開弁状態に維持したまま、前記第1弁装置を前記第2状態から前記第1状態にするステップと、
を備えること、
を特徴とするバーナ用燃料制御装置。
【請求項2】
燃料を燃焼するバーナに、前記燃料または不活性ガスを選択的に供給するバーナ用燃料制御装置において、
前記バーナに、前記燃料または前記不活性ガスを供給する供給ラインが接続されていること、
前記供給ラインに、第1弁装置と、前記第1弁装置の下流側の第2弁装置と、が配設されていること、
前記第1弁装置は、
前記燃料の供給源に接続された第1入力ポートと、前記不活性ガスの供給源に接続された第2入力ポートと、出力ポートと、を備え、
前記出力ポートから前記燃料を出力する第1状態と、前記出力ポートから前記不活性ガスを出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、
前記第2弁装置は、
前記供給ラインを開放する開弁状態と、前記供給ラインを遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること、
前記第1弁装置および前記第2弁装置を制御する制御プログラムを記憶した制御部を備えること、
前記制御プログラムは、
前記バーナの燃焼を停止するための、
前記第2弁装置を前記開弁状態に維持したまま、前記第1弁装置を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるステップと、
第2所定時間の経過後に、前記第1弁装置を前記第2状態に維持したまま、前記第2弁装置を前記開弁状態から前記閉弁状態にするステップと、
を備えること、
を特徴とするバーナ用燃料制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバーナ用燃料制御装置において、
前記第1弁装置は、前記第1入力ポートと前記第2入力ポートと前記出力ポートとに連通される弁室と、前記弁室内に配置される弁体と、を備えること、
前記弁室は、
前記第1入力ポートから前記燃料を流入させる第1弁口と、
前記第1弁口に対向して位置する、前記第2入力ポートから前記不活性ガスを流入させる第2弁口と、
を備えること、
前記弁体は、前記弁室内で、前記第1弁口を塞ぐ第1位置と、前記第2弁口を塞ぐ第2位置との間を往復運動することが可能に保持されていること、
を特徴とするバーナ用燃料制御装置。
【請求項4】
請求項
3に記載のバーナ用燃料制御装置において、
前記第1弁装置は、前記弁体に連結され、前記弁体を前記往復運動させる駆動ロッドを備えること、
前記駆動ロッドは、前記弁体が前記第1弁口に近づく方向に前記駆動ロッドが移動するよう、前記第1入力ポートから前記第1弁装置に入力された前記燃料による圧力の作用を受ける圧力作用面を備えること、
前記圧力作用面の表面積は、前記弁体の、前記第1弁口に対向する面の表面積よりも大きいこと、
を特徴とするバーナ用燃料制御装置。
【請求項5】
燃料を燃焼するバーナに、前記燃料または不活性ガスを選択的に供給するバーナ用燃料制御装置であって、
前記バーナに、前記燃料または前記不活性ガスを供給する供給ラインが接続されていること、
前記供給ラインに、第1弁装置と、前記第1弁装置の下流側の第2弁装置と、が配設されていること、
前記第1弁装置は、
前記燃料の供給源に接続された第1入力ポートと、前記不活性ガスの供給源に接続された第2入力ポートと、出力ポートと、を備え、
前記出力ポートから前記燃料を出力する第1状態と、前記出力ポートから前記不活性ガスを出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、
前記第2弁装置は、
前記供給ラインを開放する開弁状態と、前記供給ラインを遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること、
を特徴とするバーナ用燃料制御装置を用いてバーナの燃焼を制御するバーナ用燃料制御方法において、
前記バーナの燃焼を開始するための、
前記第1弁装置を前記第2状態に維持したまま、前記第2弁装置を前記閉弁状態から前記開弁状態にするステップと、
第1所定時間の経過後に、前記第2弁装置を前記開弁状態に維持したまま、前記第1弁装置を前記第2状態から前記第1状態にするステップと、
を備えること、
を特徴とするバーナ用燃料制御方法。
【請求項6】
燃料を燃焼するバーナに、前記燃料または不活性ガスを選択的に供給するバーナ用燃料制御装置であって、
前記バーナに、前記燃料または前記不活性ガスを供給する供給ラインが接続されていること、
前記供給ラインに、第1弁装置と、前記第1弁装置の下流側の第2弁装置と、が配設されていること、
前記第1弁装置は、
前記燃料の供給源に接続された第1入力ポートと、前記不活性ガスの供給源に接続された第2入力ポートと、出力ポートと、を備え、
前記出力ポートから前記燃料を出力する第1状態と、前記出力ポートから前記不活性ガスを出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、
前記第2弁装置は、
前記供給ラインを開放する開弁状態と、前記供給ラインを遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること、
を特徴とするバーナ用燃料制御装置を用いてバーナの燃焼を制御するバーナ用燃料制御方法において、
前記バーナの燃焼を停止するための、
前記第2弁装置を前記開弁状態に維持したまま、前記第1弁装置を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるステップと、
第2所定時間の経過後に、前記第1弁装置を前記第2状態に維持したまま、前記第2弁装置を前記開弁状態から前記閉弁状態にするステップと、
を備えること、
を特徴とするバーナ用燃料制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼するバーナに、燃料または不活性ガスを選択的に供給するバーナ用燃料制御装置およびバーナ用燃料制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ボイラや工業炉等の燃焼設備に用いられるバーナの燃料には、天然ガス、プロパンガス等が使用されてきた。しかし、近年の環境意識の高まりから、CO2削減のために、燃料として水素ガスを利用することが推進されている。
【0003】
しかし、水素ガスは、従来の燃料に比して燃焼速度が速いため、バーナの燃焼を開始するときや、停止するときに、バーナで発生した火炎が、燃料をバーナに供給する供給ラインに逆流することがある(以下、この火炎の逆流現象を逆火と言う)。この逆火を、逆火防止装置(フレームアレスタ)を用いて防止することが行われている。このようなバーナ用燃料制御装置としては、例えば特許文献1に開示される発明や、
図8に開示される装置が知られている。
【0004】
ここで、
図8を用いて、従来技術に係るバーナ用燃料制御装置について詳しく説明する。
図8は、従来技術に係るバーナ用燃料制御装置100(以下、単に燃料制御装置100という)の概略構成を説明する図である。
【0005】
燃料制御装置100は、ボイラ等の燃焼炉4が備えるバーナ5に対し、燃焼用の燃料を供給するための装置である。
【0006】
燃料制御装置100は、水素ガスの供給源7から延びる水素供給ラインL21を備えている。水素供給ラインL21は、供給源7を上流側とし、下流側でバーナ5に接続されている。これにより、水素供給ラインL21は、供給源7から供給される水素ガスを燃料としてバーナ5に供給する。また、水素供給ラインL21には、上流側から順に、第1遮断弁51と、第2遮断弁52と、フレームアレスタ53と、が配設されている。
【0007】
さらに、燃料制御装置100は、窒素ガスの供給源8から延びる窒素ガス供給ラインL22を備えている。窒素ガス供給ラインL22は、供給源8を上流として、下流側で水素供給ラインL21に合流されている。具体的には、水素供給ラインL21上の、第2遮断弁52の下流側、かつ、フレームアレスタ53の上流側に合流されている。また、窒素ガス供給ラインL22には、上流側から、第3遮断弁54と、第4遮断弁55と、が配設されている。
【0008】
さらに、バーナ5には、空気供給ラインL23が接続されており、送風機6から燃焼用の空気が供給される。
【0009】
以上のような燃料制御装置100にあっては、バーナ5の燃焼時には、第1遮断弁51と第2遮断弁52とが共に開弁状態にあり、水素ガスが、フレームアレスタ53を通過して、バーナ5に供給され続ける。このとき、第3遮断弁54と第4遮断弁55は、いずれか一方または両方とも閉弁されており、窒素の供給は遮断されている。
【0010】
そして、バーナ5の燃焼を停止するときには、第1遮断弁51と第2遮断弁52を閉弁することで、水素ガスの供給を遮断する。その後に、第4遮断弁55を開弁することで、窒素ガスにより、水素供給ラインL21の第2遮断弁52より下流側(以下、ライン下流側という)において水素ガスをパージする。これにより、ライン下流側に残留する水素と空気が混ざって可燃混合気体とならないようにしている。
【0011】
しかし、上記のようにパージを行うとしても、供給ラインL21中の水素ガスを確実に窒素ガスに置換することが出来ず、逆火の発生を完全に抑えることが困難である場合がある。そのような場合、水素供給ラインL21のライン下流側にフレームアレスタ53を配設することで、逆火が発生したとしても、フレームアレスタ53から上流側には火炎が逆流しないようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の通り、バーナ5の燃焼時には、水素ガスは、フレームアレスタ53を通過してバーナ5に供給される。しかし、フレームアレスタ53の内部の消炎構造のために、水素ガスがフレームアレスタ53を通過する際の圧力損失が大きくなる。
【0014】
よって、バーナ5において必要な水素ガスの圧力を維持するためには、水素ガスの供給源7の供給圧力を高くする必要がある。例えば、供給源7の供給圧力を、バーナ5において必要な圧力の2倍程度にしなければならず、既存の設備では対応できない可能性がある。
【0015】
また、フレームアレスタは、サイズが大型かつ高価であり、配設には設置スペースの確保が必要であるとともにコストがかかる。バーナ1台につき1台のフレームアレスタが必要であるため、複数台のバーナを設けるとなれば、特にコストがかかる。また、逆火により焼損する等、フレームアレスタが劣化した場合には交換が必要であり、燃料制御装置を維持するためのコストも高価となる。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、フレームアレスタを用いずに、逆火の発生を防止することが可能なバーナ用燃料制御装置およびバーナ用燃料制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の一態様におけるバーナ用燃料制御装置およびバーナ用燃料制御方法は、次のような構成を有している。
【0018】
(1)燃料を燃焼するバーナに、前記燃料または不活性ガスを選択的に供給するバーナ用燃料制御装置において、前記バーナに、前記燃料または前記不活性ガスを供給する供給ラインが接続されていること、前記供給ラインに、第1弁装置と、前記第1弁装置の下流側の第2弁装置と、が配設されていること、前記第1弁装置は、前記燃料の供給源に接続された第1入力ポートと、前記不活性ガスの供給源に接続された第2入力ポートと、出力ポートと、を備え、前記出力ポートから前記燃料を出力する第1状態と、前記出力ポートから前記不活性ガスを出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、前記第2弁装置は、前記供給ラインを開放する開弁状態と、前記供給ラインを遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること、を特徴とする。
【0019】
(2)(1)に記載のバーナ用燃料制御装置において、前記第1弁装置および前記第2弁装置を制御する制御プログラムを記憶した制御部を備えること、前記制御プログラムは、前記バーナの燃焼を開始するための、前記第1弁装置を前記第2状態に維持したまま、前記第2弁装置を前記閉弁状態から前記開弁状態にするステップと、第1所定時間の経過後に、前記第2弁装置を前記開弁状態に維持したまま、前記第1弁装置を前記第2状態から前記第1状態にするステップと、を備えること、が好ましい。
【0020】
(3)(1)または(2)に記載のバーナ用燃料制御装置において、前記第1弁装置および前記第2弁装置を制御する制御プログラムを記憶した制御部を備えること、前記制御プログラムは、前記バーナの燃焼を停止するための、前記第2弁装置を前記開弁状態に維持したまま、前記第1弁装置を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるステップと、第2所定時間の経過後に、前記第1弁装置を前記第2状態に維持したまま、前記第2弁装置を前記開弁状態から前記閉弁状態にするステップと、を備えること、が好ましい。
【0021】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載のバーナ用燃料制御装置において、前記第1弁装置は、前記第1入力ポートと前記第2入力ポートと前記出力ポートとに連通される弁室と、前記弁室内に配置される弁体と、を備えること、前記弁室は、前記第1入力ポートから前記燃料を流入させる第1弁口と、前記第1弁口に対向して位置する、前記第2入力ポートから前記不活性ガスを流入させる第2弁口と、を備えること、前記弁体は、前記弁室内で、前記第1弁口を塞ぐ第1位置と、前記第2弁口を塞ぐ第2位置との間を往復運動することが可能に保持されていること、が好ましい。
【0022】
(5)(4)に記載のバーナ用燃料制御装置において、前記第1弁装置は、前記弁体に連結され、前記弁体を前記往復運動させる駆動ロッドを備えること、前記駆動ロッドは、前記弁体が前記第1弁口に近づく方向に前記駆動ロッドが移動するよう、前記第1入力ポートから前記第1弁装置に入力された前記燃料による圧力の作用を受ける圧力作用面を備えること、前記圧力作用面の表面積は、前記弁体の、前記第1弁口に対向する面の表面積よりも大きいこと、が好ましい。
【0023】
(6)(1)に記載のバーナ用燃料制御装置を用いてバーナの燃焼を制御するバーナ用燃料制御方法において、前記バーナの燃焼を開始するための、前記第1弁装置を前記第2状態に維持したまま、前記第2弁装置を前記閉弁状態から前記開弁状態にするステップと、第1所定時間の経過後に、前記第2弁装置を前記開弁状態に維持したまま、前記第1弁装置を前記第2状態から前記第1状態にするステップと、を備えること、を特徴とする。
【0024】
(7)(1)に記載のバーナ用燃料制御装置を用いてバーナの燃焼を制御するバーナ用燃料制御方法において、前記バーナの燃焼を停止するための、第2弁装置を前記開弁状態に維持したまま、第1弁装置を前記第1状態から前記第2状態に切り替えるステップと、第2所定時間の経過後に、第1弁装置を第2状態に維持したまま、第2弁装置を開弁状態から閉弁状態にするステップと、を備えること、を特徴とする。
【0025】
上記バーナ用燃料制御装置によれば、バーナに、燃料または不活性ガスを供給する供給ラインが接続されていること、供給ラインに、第1弁装置と、第1弁装置の下流側の第2弁装置と、が配設されていること、第1弁装置は、燃料の供給源に接続された第1入力ポートと、不活性ガスの供給源に接続された第2入力ポートと、出力ポートと、を備え、出力ポートから燃料を出力する第1状態と、出力ポートから不活性ガスを出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、第2弁装置は、供給ラインを開放する開弁状態と、供給ラインを遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること、を特徴とするので、例えば、上記(2)または(6)に記載のように、バーナの燃焼を開始するために、第1弁装置を第2状態に維持したまま、第2弁装置を閉弁状態から開弁状態にし、第1所定時間の経過後に、第2弁装置を開弁状態に維持したまま、第1弁装置を第2状態から第1状態にするものとすれば、バーナの燃焼を開始する時(点火時)に、まず、第1弁装置を第2状態に維持したまま、第2弁装置を閉弁状態から開弁状態にするため、供給ラインを不活性ガス(例えば窒素ガス)によりパージすることができる。そして、所定時間の経過後に、第2弁装置を開弁状態に維持したまま、第1弁装置を第2状態から第1状態にするため、供給ラインに燃料(例えば水素ガス)が供給され、バーナを点火することができる。なお、上記した第1所定時間とは、パージが継続される時間を意味しており、燃焼炉の大きさや供給ラインの容量等に応じて、不活性ガスによるパージを十分に行うことが可能な時間に適宜調整されるものである。
【0026】
このように、バーナの点火時に、まず供給ラインをパージすることで、供給ライン中の空気を不活性ガスに置換する。これにより、供給ラインにおける空気と水素が混ざった可燃混合気の生成を防止することができ、ひいては逆火の発生を防止することができる。よって、安全にバーナの点火を行うことができる。
【0027】
また例えば、バーナ用燃料制御装置を、上記(3)または(7)に記載のように、バーナの燃焼を停止するために、第2弁装置を開弁状態に維持したまま、第1弁装置を第1状態から第2状態に切り替え、第2所定時間の経過後に、第1弁装置を第2状態に維持したまま、第2弁装置を開弁状態から閉弁状態にする構成とすれば、
燃焼停止時(消化時)に、まず、第2弁装置を開弁状態に維持したまま、第1弁装置を第1状態から第2状態に切り替えることで、供給ラインを不活性ガスによりパージすることができる。つまり、バーナの燃焼時に、供給ラインを満たしていた燃料を、不活性ガスに置換することができる。
そして、所定時間の経過後に、第1弁装置を第2状態に維持したまま、第2弁装置を開弁状態から閉弁状態にすることで、不活性ガスの供給を遮断する。
【0028】
このように、バーナの消火時に、まず供給ラインをパージし、燃料を不活性ガスに置換することで、供給ライン中の燃料の残留を防止し、ひいては逆火の発生を防止することができる。よって、安全にバーナの消火を行うことができる。なお、上記の第2所定時間とは、パージが継続される時間を意味しており、供給ラインの容積や、供給する不活性ガスの流量等に基づき、不活性ガスによるパージを十分に行うことが可能な時間に適宜設定される。
【0029】
以上のように、バーナの点火時および消化時ともに、確実に不活性ガスにより供給ラインをパージすることで、供給ライン内の可燃混合気の生成を防ぐことが出来るため、フレームアレスタを用いなくとも逆火の発生を防止することが出来る。よって、フレームアレスタを用いることによる燃料の圧力損失の発生や、コストおよび設置スペースの増大を防ぐことができる。また、燃料制御装置に用いる弁装置としては、第1弁装置と第2弁装置とがあれば足りるため、従来(
図8参照)よりも弁装置の台数を減らして逆火の発生を防止することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明のバーナ用燃料制御装置およびバーナ用燃料制御方法によれば、フレームアレスタを用いずに、逆火の発生を防止することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本実施形態に係るバーナ用燃料制御装置の概略構成を説明する図である。
【
図2】第1弁装置および第2弁装置の構成を説明する図である。
【
図3】燃料制御の工程を説明する図であり、システム停止状態にある場合の、第1弁装置および第2弁装置の状態を表している。
【
図4】燃料制御の工程を説明する図であり、プレパージを行う際の第1弁装置および第2弁装置の状態を表している。
【
図5】燃料制御の工程を説明する図であり、点火を行う際の第1弁装置および第2弁装置の状態を表している。
【
図6】燃料制御の工程を説明する図であり、バーナの燃焼が行われている場合の、第1弁装置および第2弁装置の状態を表している。
【
図7】燃料制御の工程を説明する図であり、消火を行う際の、第1弁装置および第2弁装置の状態を表している。
【
図8】従来技術に係るバーナ用燃料制御装置の概略構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係るバーナ用燃料制御装置の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るバーナ用燃料制御装置1(以下、単に燃料制御装置1という)の概略構成を説明する図である。
図2は、第1弁装置2および第2弁装置3の構成を説明する図である。
【0033】
(燃料制御装置の概略構成について)
まず、本実施形態に係る燃料制御装置1の概略構成について説明する。燃料制御装置1は、ボイラ等の燃焼炉4が備えるバーナ5に対し、燃焼用の燃料を供給するための装置である。
【0034】
燃料制御装置1は、
図1に示すように、バーナ5に接続された供給ラインL11を備えている。供給ラインL11は、バーナ5に対し、水素ガス(燃料の一例)または窒素ガス(不活性ガスの一例)を供給するための配管である。
【0035】
供給ラインL11には、第1弁装置2が配設されている。第1弁装置2は、内部の弁体の動作に応じ、内部の流路の切り替えを行うことができる三方弁である(詳細は後述する)。第1弁装置2は、第1入力ポート23と、第2入力ポート24と、出力ポート25と、を備えている。
【0036】
第1入力ポート23には、水素ガス供給ラインL12により、水素ガスの供給源7が接続されている。供給源7における水素ガスの供給圧力は、特に限定されないが、例えば0.01-0.3MPaである。また、水素ガス供給ラインL12は、供給源7から供給される水素ガスを第1弁装置2に流入するための配管である。
【0037】
第2入力ポート24には、窒素ガス供給ラインL13により窒素ガスの供給源8が接続されている。供給源8における窒素ガスの供給圧力は、特に限定されないが、水素の供給圧力よりも高く設定されている。また、窒素ガス供給ラインL13は、供給源8から供給される窒素ガスを第1弁装置2に流入するための配管である。
【0038】
出力ポート25は、第1弁装置2内部の弁体223(
図2参照)の動作に応じ、第1入力ポート23から第1弁装置2に流入された水素ガス、または、第2入力ポート24から第1弁装置2に流入された窒素ガスを、第1弁装置2から出力する。なお、第1弁装置2が出力ポート25から水素ガスを出力する状態を第1状態といい、第1弁装置2が出力ポート25から窒素ガスを出力する状態を第2状態という。
【0039】
さらに、供給ラインL11には、第1弁装置2の下流側に第2弁装置3が配設されている。第2弁装置3は、内部の弁体321(
図2参照)の動作に応じ、供給ラインL11を開放する開弁状態と、供給ラインL11を遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁である(詳細は後述する)。第2弁装置3は、入力ポート33と、出力ポート34と、を備えている。
【0040】
入力ポート33は、第1弁装置2の出力ポート25に接続されている。ここでいう接続とは、入力ポート33が第1弁装置2の出力ポート25と直接に連結されていても良いし、配管を介して接続されていても良い。入力ポート33が、第1弁装置2の出力ポート25に接続されることで、第1弁装置2から出力される水素ガスまたは窒素ガスは、第2弁装置3に流入するようになっている。
【0041】
出力ポート34は、第2弁装置3が開弁状態にあるとき、入力ポート33から第2弁装置3に流入された水素ガスまたは窒素ガスを、第2弁装置3から出力する。そして、第2弁装置3から出力された水素ガスまたは窒素ガスは、供給ラインL11を通じて、バーナ5に供給される。
【0042】
さらに、バーナ5には、空気供給ラインL14が接続されている。空気供給ラインL14の上流側には、送風機6が接続されており、送風機6から空気供給ラインL14を通じて、バーナ5に対して燃焼用の空気が供給される。
【0043】
また、燃料制御装置1は、バーナ5の燃焼を制御する制御部9を備えている。制御部9は、第1弁装置2、第2弁装置3、送風機6に電気的に接続されている。また、制御部9は、第1弁装置2、第2弁装置3、送風機6を制御するための制御プログラムが記憶されている。つまり、制御部9は、制御プログラムにより、第1弁装置2、第2弁装置3、送風機6の動作を制御することで、バーナ5の燃焼を制御する。
【0044】
(第1弁装置について)
次に、第1弁装置2(三方弁)について、より詳細に説明する。第1弁装置2は、エアオペレイト式のパイロット弁である。第1弁装置2は、
図2に示すように、図中の上下に積み重ねられた駆動部21と、弁部22と、を備える。
【0045】
駆動部21は、その内部に円盤状のピストン211が装填されている。そして、ピストン211には、第1ロッド部材215aと第2ロッド部材215bとが連結されてなる駆動ロッド215が連結されている。駆動ロッド215は、駆動部21から弁部22に向かって延在しており、ピストン211の側とは反対側の端部に、後述する弁体223が連結されている。
【0046】
また、駆動部21は、その内部が、ピストン211により、図中の上下に方向において、第1室212aと第2室212bとに区画されている。第1室212aには、操作ポート213から操作エアを導入することができる。よって、操作エアを第1室212aに導入し、第1室212a内の圧力を上昇させることで、ピストン211を第2室212bの側に移動させることができる。第2室212bには、空気抜き孔214が設けられており、ピストン211が第2室212bの側に移動するとき、第2室212b内の空気が空気抜き孔214から外部に排出される。
【0047】
また、駆動部21は、第2室212bに、ピストン211に対して第1室212aの側に付勢力を与えるコイルばね216を備えている。よって、第1室212aに操作エアが導入されると、ピストン211は、コイルばね216の付勢力に抗して第2室212bの側(
図2中の下方向)に移動し、第1室212aに対する操作エアの導入が停止されると、ピストン211は、コイルばね216の付勢力により第1室212aの側(
図2中の上方向)に移動する。以上のようにピストン211は上下動するため、このピストン211の上下動に合わせて、ピストン211に連結されている駆動ロッド215も上下動する。
【0048】
弁部22は、第1入力ポート23 第2入力ポート24 出力ポート25と、弁室221と、流体室222と、を備えている。流体室222は、弁室221の上流側に位置するとともに、第1弁口221aにより、弁室221と連通している。さらに、流体室222は、第1入力ポート23と連通している。よって、第1入力ポート23から第1弁装置2に流入される水素ガスを、流体室222と第1弁口221aを介して、弁室221に流入させることができる。
【0049】
また、弁室221は、第1弁口221aに対向する第2弁口221bを備えており、第2弁口221bにより、第2入力ポート24と連通している。よって、第2入力ポート24から第1弁装置2に流入される窒素ガスを、第2弁口221bを介して、弁室221に流入させることができる。
【0050】
さらに、弁室221は、出力ポート25に連通している。よって、弁室221に流入された水素ガスまたは窒素ガスを、出力ポート25から出力することができる。
【0051】
また、弁室221には、第1弁口221aの周囲に沿って、環状の第1弁座221cが設けられている。さらに、弁室221には、第2弁口221bの周囲に沿って、環状の第2弁座221dが設けられている。さらに、弁室221には、円盤状の弁体223が第1弁口221aおよび第2弁口221bの同軸上に位置されている。この弁体223は、駆動ロッド215に連結されているため、駆動ロッド215が上下動することにより、第1弁座221cに当接することで第1弁口221aを塞ぐ第1位置と、第2弁座221dに当接することで第2弁口221bを塞ぐ第2位置との間を往復運動可能である。より具体的には、駆動部21の第1室212aへの操作エアの導入が停止されていれば、ピストン211が第1室212aの側に移動する。これにより駆動ロッド215が、
図2中の上方に移動し、駆動ロッド215に連結されている弁体223が第1位置に位置する。一方で、駆動部21の第1室212aへ操作エアが導入されていれば、ピストン211が第2室212bの側に移動する。これにより駆動ロッド215が、
図2中の下方に移動し、駆動ロッド215に連結されている弁体223が第2位置に位置する。
【0052】
弁体223が第1位置にあるとき、水素ガスは弁室221に流入されず、窒素ガスが弁室221に流入される。よって、出力ポート25からは、窒素ガスが出力される(第1弁装置2の第2状態)。一方で、弁体223が第2位置にあるとき、窒素ガスは弁室221に流入されず、水素ガスが弁室221に流入される。よって、出力ポート25からは、水素ガスが出力される(第1弁装置2の第1状態)。なお、フェールセーフのため、停電等により操作エアの供給が行われなくなったときは、コイルばね216の付勢力により、弁体223は第1位置に位置し、水素ガスを遮断するようになっている。
【0053】
さらに、弁部22は、流体室222と駆動部21との間に圧力作用室224 を備えている。圧力作用室224は、内部流路226により、流体室222と連通しており、流体室222に流入された水素ガスは、圧力作用室224にも流入するようになっている。
【0054】
また、駆動ロッド215は薄膜部材225を備えており、該薄膜部材225は、圧力作用室224内に固定されている。この薄膜部材225は、圧力作用室224に面する端面が、圧力作用室224内に流入する水素ガスによって圧力の作用を受ける圧力作用面225aである。また、薄膜部材225は、圧力作用面225aに作用する圧力に応じて、駆動ロッド215の駆動方向(図中の上下方向)と同一方向に弾性変形可能である。つまり、薄膜部材225は、圧力作用面225aに作用する圧力が高くなれば、駆動部21の側に弾性変形し、これに伴って駆動ロッド215を上方向に移動させる。これにより、弁体223が上方向(第1弁口221aに近づく方向)に移動する。
【0055】
また、圧力作用面225aの表面積は、弁体223の 第1弁口221aに対向する面(対向面223a)の表面積よりも大きくされている。したがって、第1弁装置2に流入した水素ガスにより受ける力は、対向面223aよりも、圧力作用面225aの方が大きくなる。つまり、第1弁装置2に流入される水素ガスが、弁体223を第1弁口221aから離れる方向に移動させようとする力よりも、薄膜部材225を駆動部21の側に弾性変形させる力、すなわち、弁体223を第1弁口221aに近づく方向に移動させようとする力の方が大きくなる。よって、第1入力ポート23に流入される水素ガスの圧力値が、供給源7の不具合等により、不必要に高くなった場合には、内部流路226を通じて流体室222から圧力作用室224に流れ込む水素ガスにより、薄膜部材225が駆動部21の側に弾性変形し、弁体223を第1位置に位置させる。つまり、水素ガスの流れが遮断されるため、薄膜部材225は、フェールセーフとして機能する。
【0056】
(第2弁装置について)
次に、第2弁装置3(開閉弁)について、詳細に説明する。第2弁装置3は、通電時に開弁状態となる一方で、非通電時には閉弁状態となる、ノーマルクローズタイプの電磁弁である。第2弁装置3は、
図2に示すように、図中の上下に積み重ねられた駆動部31と、弁部32と、を備える。
【0057】
駆動部31は、その内部に、円筒状のコイルボビン311を有する。コイルボビン311は外周に凹部311aを備え、凹部311aには励磁コイル312が巻回されている。コイルボビン311の中空部311bには、固定鉄心313と可動鉄心314が挿通されている。
【0058】
固定鉄心313と可動鉄心314とは、固定鉄心313の
図2中の下端面と、可動鉄心314の
図2中の上端面とが対向するように、同軸上に並べて配設されている。可動鉄心314は、上下動可能にされており、励磁コイル312に通電されると、固定鉄心313が磁化し、可動鉄心314を引きつける。このため、可動鉄心314は、固定鉄心313の側(
図2中の上方)に移動する。また、可動鉄心314には、ロッド315が挿通され、固定されている。したがって、固定鉄心313が、可動鉄心314を引きつけると、可動鉄心314の移動に合わせて、ロッド315も移動する。
【0059】
弁部32は、入力ポート33と、出力ポート34と、弁室322と、を備えている。弁室322は、入力ポート33に連通している。よって、入力ポート33から第2弁装置3に流入される水素ガスまたは窒素ガスを、弁室322に流入させることができる。さらに、弁室322は、弁口322aを介して出力ポート34に連通している。よって、弁室322に流入された水素ガスまたは窒素ガスを、出力ポート34から出力することができる。
【0060】
また、弁室322には、弁口322aの周囲に沿って、環状の弁座322bが設けられている。さらに、弁室322には、円盤状の弁体321が弁口322aの同軸上に位置されている。この弁体321は、弁室322内に挿通されたロッド315に連結されている。さらに、弁体321の駆動部31側の端面には、コイルばね324の一端が当接されている。コイルばね324の他端は、弁体321の駆動部31側の端面と距離をおいて設けられた鍔部材323に当接しており、コイルばね324は圧縮された状態になっている。よって、弁体321は、コイルばね324により、弁座322bの側に付勢された状態である。
【0061】
以上のような弁体321は、可動鉄心314の移動およびコイルばね324の付勢力により、弁座322bに対して当接離間動作を行うことが可能である。より具体的には、励磁コイル312への通電が行われていない状態では、コイルばね324の付勢力により、弁体321は、弁座322bの側に移動されて、弁座322bに当接する。一方で、励磁コイル312への通電が行われると、固定鉄心313が磁化し、可動鉄心314が、固定鉄心313の側に移動する。これにより、ロッド315が、
図2中の上方に移動し、ロッド315に連結されている弁体223が、弁座322bから離間する。
【0062】
弁体321が弁座322bに当接した状態が、第2弁装置3の閉弁状態であり、入力ポート33から第2弁装置3に流入される水素ガスまたは窒素ガスは、出力ポート34から出力されない状態である。弁体321が弁座322bから離間した状態が、第2弁装置3の開弁状態であり、入力ポート33から第2弁装置3に流入される水素ガスまたは窒素ガスが、出力ポート34から出力される状態である。なお、フェールセーフのため、停電等により電力が途絶し、通電が行われなくなったときは、コイルばね324の付勢力により、第2弁装置3は閉弁状態になるようになっている。
【0063】
(燃料制御について)
次に、燃料制御装置1を用いた、バーナ5に対する水素ガスおよび窒素ガスの供給状態の制御(以下、単に燃料制御)について説明する。具体的には、システム停止の状態から、バーナ5の燃焼を開始し、バーナ5の燃焼が行われている状態から、バーナ5の燃焼が停止され、再びシステム停止の状態になるまでの燃料制御について説明する。なお、上記の「システム停止の状態」とは、燃焼炉4の動作が停止されている状態を意味する。また、以下において、バーナ5の燃焼を開始することを単に「点火」といい、バーナ5の燃焼を停止することを単に「消火」という。
【0064】
燃料制御は、制御部9に記憶された制御プログラムにより、第1弁装置2および第2弁装置3を、
図3乃至
図4に示すように制御することで行われる。
図3は、燃料制御の工程を説明する図であり、システム停止状態にある場合の、第1弁装置2および第2弁装置3の状態を表している。
図4は、燃料制御の工程を説明する図であり、供給ラインL11のプレパージを行う際の第1弁装置2および第2弁装置3の状態を表している。なお、供給ラインL11のプレパージとは、点火前に供給ラインL11を窒素ガスG12でパージすることをいう。
図5は、燃料制御の工程を説明する図であり、点火を行う際の第1弁装置2および第2弁装置3の状態を表している。
図6は、燃料制御の工程を説明する図であり、バーナ5の燃焼が行われている場合の、第1弁装置2および第2弁装置3の状態を表している。
図7は、燃料制御の工程を説明する図であり、消火を行う際の、第1弁装置2および第2弁装置3の状態を表している。なお、
図3乃至
図7中では、第1弁装置2、第2弁装置3、供給ラインL11、水素ガス供給ラインL12、窒素ガス供給ラインL13、の内部を流れる水素ガスG11および窒素ガスG12をドットで表している。具体的には、相対的にドットの密度が高い方が、水素ガスG11を表し、相対的にドット密度の低い方が、窒素ガスG12を表している。
【0065】
(システム停止)
まず、システム停止の状態について説明する。システム停止の状態にあるとき、
図3に示すように、第1弁装置2は、弁体223が第1位置に位置した状態にあり、第2弁装置3は、閉弁状態にある。つまり、第1弁装置2において、水素ガスG11は遮断された状態である一方で、窒素ガスG12は出力ポート25から出力されている状態(第2状態)にある。そして、出力ポート25から出力されている窒素ガスG12は、第2弁装置3により遮断されている。つまり、供給ラインL11には、水素ガスG11、窒素ガスG12ともに流れていない状態である。
【0066】
(プレパージのステップ)
システム停止状態からバーナ5の点火を行うには、まず、プレパージを行う。プレパージは、
図4に示すように、第1弁装置2の弁体223を第1位置に維持したまま(すなわち、第1弁装置2を第2状態に維持したまま)、第2弁装置3を開弁状態にすることで行う。第1弁装置2の弁体223を第1位置に維持したまま、第2弁装置3を開弁状態にすることで、第2弁装置3に流入していた窒素ガスG12が、第2弁装置3の出力ポート34から出力され、供給ラインL11を流れていく。このように、窒素ガスを供給ラインL11に流すことで、供給ラインL11中の空気を窒素ガスG12に置換する。これにより、供給ラインL11における空気と水素が混ざった可燃混合気の生成を防止することができるため、点火時の逆火を防止することができる。よって、安全にバーナ5の点火を行うことができる。
【0067】
(点火のステップ)
プレパージを開始してから所定時間(第1所定時間)の経過後に、バーナ5の点火を行う。バーナ5の点火は、
図5に示すように、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2の弁体223を第2位置に位置させる(すなわち、第1弁装置2を第2状態から第1状態にする)ことで行う。第1弁装置2の弁体223を第2位置に位置させることで、窒素ガスG12が遮断されるとともに、水素ガスG11が第1弁装置2の出力ポート25から出力されるようになる。第1弁装置2の出力ポート25から出力された水素ガスG11は、第2弁装置3に流入すると、第2弁装置3が開弁状態に維持されているため、第2弁装置3の出力ポート34から供給ラインL11に出力される。よって、プレパージ時に供給ラインL11を満たしていた窒素ガスG12が、水素ガスG11に置換されていく。そして、水素ガスG11がバーナ5にまで達すると、例えば燃焼炉4内に設けられたパイロットバーナにより点火され、バーナ5における水素ガスの燃焼が開始される。なお、上記の所定時間とは、プレパージが継続される時間を意味しており、供給ラインL11の容積や、供給する不活性ガスの流量等に基づき、窒素ガスG12によるパージを十分に行うことが可能な時間に適宜設定される。
【0068】
(燃焼の継続)
点火の後、バーナ5の燃焼が継続されている間は、
図6に示すように、第1弁装置2の弁体223は第2位置に維持された状態(すなわち、第1弁装置2は第1状態に維持された状態)であり、第2弁装置3は開弁状態を維持された状態である。これにより、供給ラインL11により、バーナ5に水素ガスG11が供給され続け、バーナ5は燃焼を継続することができる。
【0069】
(消火のステップ)
バーナ5の消火は、
図7に示すように、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2の弁体223を第1位置に位置させる(すなわち、第1弁装置2を第1状態から第2状態にする)ことで行う。第1弁装置2の弁体223を第1位置に位置させることで、水素ガスG11が遮断されるとともに、窒素ガスG12が第1弁装置2の出力ポート25から出力されるようになる。第1弁装置2の出力ポート25から出力された窒素ガスG12は、第2弁装置3に流入すると、第2弁装置3が開弁状態に維持されているため、第2弁装置3の出力ポート34から供給ラインL11に出力される。よって、バーナ5が燃焼状態にあったときに供給ラインL11を満たしていた水素ガスG11が、ポストパージされる。供給ラインL11のポストパージとは、消火を行う際に供給ラインL11を窒素ガスG12でパージすることをいう。より具体的には、供給ラインL11内の水素ガスG11が、上流側から窒素ガスG12によって下流側(バーナ5の側)へ押し出されていき、供給ラインL11内のガスが、水素ガスG11から窒素ガスG12に置換される。ポストパージが進むにつれ、供給ラインL11に残留している水素ガスG11の濃度が低下していき、バーナ5は自然に消火する。そして、最終的には、供給ラインL11は窒素ガスG12で満たされる(
図4に示す状態と同様の状態になる)。このように、供給ラインL11中のガスの置換を行うことで、バーナ5の消火を行うため、供給ラインL11中に水素ガスG11が残留せず、逆火の発生を防止することができる。よって、安全にバーナ5の消火を行うことができる。
【0070】
(システム停止のステップ)
ポストパージが開始されてから所定時間(第2所定時間)の経過後に、システムの停止が行われる。システムの停止は、第1弁装置2の弁体223を第1位置に維持したまま(すなわち、第1弁装置2を第2状態に維持したまま)、第2弁装置3を閉弁状態にすることで行われる。すなわち、第1弁装置2および第2弁装置3を
図3に示す状態にすることで、システムの停止を行う。なお、上記の所定時間とは、ポストパージが継続される時間を意味しており、供給ラインL11の容積や、供給する不活性ガスの流量等に基づき、窒素ガスG12によるパージを十分に行うことが可能な時間に適宜設定される。
【0071】
(作用効果について)
以上説明したように、本実施形態に係るバーナ用燃料制御装置1は、
(1)燃料(水素ガス)を燃焼するバーナ5に、燃料(水素ガス)または不活性ガス(窒素ガス)を選択的に供給するバーナ用燃料制御装置1において、バーナ5に、燃料(水素ガス)または不活性ガス(窒素ガス)を供給する供給ラインL11が接続されていること、供給ラインL11に、第1弁装置2と、第1弁装置2の下流側の第2弁装置3と、が配設されていること、第1弁装置2は、燃料(水素ガス)の供給源7に接続された第1入力ポート23と、不活性ガス(窒素ガス)の供給源8に接続された第2入力ポート24と、出力ポート25と、を備え、出力ポート25から燃料(水素ガス)を出力する第1状態と、出力ポート25から不活性ガス(窒素ガス)を出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、第2弁装置3は、供給ラインL11を開放する開弁状態と、供給ラインL11を遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること、を特徴とする。
【0072】
(2)上記バーナ用燃料制御装置1において、第1弁装置2および第2弁装置3を制御する制御プログラムを記憶した制御部9を備えること、制御プログラムは、バーナ5の燃焼を開始するための、第1弁装置2を第2状態に維持したまま、第2弁装置3を閉弁状態から開弁状態にするステップ(プレパージのステップ)と、第1所定時間の経過後に、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2を第2状態から第1状態にするステップ(点火のステップ)と、を備えること、が好ましい。
【0073】
(3)上記バーナ用燃料制御装置1において、第1弁装置2および第2弁装置3を制御する制御プログラムを記憶した制御部9を備えること、制御プログラムは、バーナ5の燃焼を停止するための、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2を第1状態から第2状態に切り替えるステップ(消火のステップ)と、第2所定時間の経過後に、第1弁装置2を第2状態に維持したまま、第2弁装置3を開弁状態から閉弁状態にするステップ(システム停止のステップ)と、を備えること、が好ましい。
【0074】
(4)上記バーナ用燃料制御装置1において、第1弁装置2は、第1入力ポート23と第2入力ポート24と出力ポート25とに連通される弁室221と、弁室221内に配置される弁体223と、を備えること、弁室221は、第1入力ポート23から燃料(水素ガス)を流入させる第1弁口221aと、第1弁口221aに対向して位置する、第2入力ポート24から不活性ガスを流入させる第2弁口221bと、を備えること、弁体223は、弁室221内で、第1弁口221aを塞ぐ第1位置と、第2弁口221bを塞ぐ第2位置との間を往復運動することが可能に保持されていること、が好ましい。
【0075】
(5)上記バーナ用燃料制御装置1において、第1弁装置2は、弁体223に連結され、弁体223を往復運動させる駆動ロッド215を備えること、駆動ロッド215は、弁体223が第1弁口221aに近づく方向に駆動ロッド215が移動するよう、第1入力ポート23から第1弁装置2に入力された燃料(水素)による圧力の作用を受ける圧力作用面225aを備えること、圧力作用面225aの表面積は、弁体223の、第1弁口221aに対向する面(対向面223a)の表面積よりも大きいこと、が好ましい。
【0076】
また、以上説明したように、本実施形態に係るバーナ用燃料制御方法は、
(6)上記バーナ用燃料制御装置1を用いてバーナ5の燃焼を制御するバーナ用燃料制御方法において、バーナ5の燃焼を開始するための、第1弁装置2を第2状態に維持したまま、第2弁装置3を閉弁状態から開弁状態にするステップ(プレパージのステップ)と、第1所定時間の経過後に、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2を第2状態から第1状態にするステップ(点火のステップ)と、を備えること、を特徴とする。
【0077】
(7)上記バーナ用燃料制御装置1を用いてバーナ5の燃焼を制御するバーナ用燃料制御方法において、バーナ5の燃焼を停止するための、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2を第1状態から第2状態に切り替えるステップ(消火のステップ)と、第2所定時間の経過後に、第1弁装置2を第2状態に維持したまま、第2弁装置3を開弁状態から閉弁状態にするステップ(システム停止のステップ)と、を備えること、を特徴とする。
【0078】
上記バーナ用燃料制御装置1によれば、燃料(水素ガス)を燃焼するバーナ5に、燃料(水素ガス)または不活性ガス(窒素ガス)を選択的に供給するバーナ用燃料制御装置1において、バーナ5に、燃料(水素ガス)または不活性ガス(窒素ガス)を供給する供給ラインL11が接続されていること、供給ラインL11に、第1弁装置2と、第1弁装置2の下流側の第2弁装置3と、が配設されていること、第1弁装置2は、燃料(水素ガス)の供給源7に接続された第1入力ポート23と、不活性ガス(窒素ガス)の供給源8に接続された第2入力ポート24と、出力ポート25と、を備え、出力ポート25から燃料(水素ガス)を出力する第1状態と、出力ポート25から不活性ガス(窒素ガス)を出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、第2弁装置3は、供給ラインL11を開放する開弁状態と、供給ラインL11を遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること、を特徴とするので、例えば、上記(2)または(6)に記載のように、バーナ5の燃焼を開始するために、第1弁装置2を第2状態に維持したまま、第2弁装置3を閉弁状態から開弁状態にし(プレパージのステップ)、第1所定時間の経過後に、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2を第2状態から第1状態にする(点火のステップ)ものとすれば、バーナ5の燃焼を開始する時(点火時)に、まず、第1弁装置2を第2状態に維持したまま、第2弁装置3を閉弁状態から開弁状態にするため、供給ラインを不活性ガス(例えば窒素ガス)によりパージ(プレパージ)することができる。そして、所定時間の経過後に、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2を第2状態から第1状態にするため、供給ラインL11に燃料(水素ガス)が供給され、バーナ5を点火することができる。
【0079】
このように、バーナ5の点火時に、まず供給ラインL11をパージすることで、供給ラインL11中の水素ガスの残留を防止し、ひいては逆火の発生を防止することができる。よって、安全にバーナ5の点火を行うことができる。
【0080】
また例えば、上記(3)または(7)に記載のように、バーナ5の燃焼を停止するために、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2を第1状態から第2状態に切り替え(消火のステップ)、第2所定時間の経過後に、第1弁装置2を第2状態に維持したまま、第2弁装置3を開弁状態から閉弁状態にする(システム停止のステップ)ものとすれば、燃焼停止時(消化時)に、まず、第2弁装置3を開弁状態に維持したまま、第1弁装置2を第1状態から第2状態に切り替えるため、供給ラインL11を窒素ガスによりパージ(ポストパージ)することができる。つまり、バーナ5の燃焼時に、供給ラインL11を満たしていた水素ガスを、窒素ガスに置換することができる。そして、所定時間の経過後に、第1弁装置2を第2状態に維持したまま、第2弁装置3を開弁状態から閉弁状態にすることで、窒素ガスの供給を遮断する。
【0081】
このように、バーナ5の消火時に、まず供給ラインL11をパージし、水素ガスを不活性ガスに置換することで、供給ラインL11中の水素ガスの残留を防止し、ひいては逆火の発生を防止することができる。よって、安全にバーナ5の消火を行うことができる。
【0082】
以上のように、バーナ5の点火時および消化時ともに、確実に窒素ガスにより供給ラインL11をパージすることで、供給ラインL11内の可燃混合気の生成を防ぐことが出来るため、フレームアレスタを用いなくとも逆火の発生を防止することが出来る。よって、フレームアレスタを用いることによる燃料の圧力損失の発生や、コストおよび設置スペースの増大を防ぐことができる。また、燃料制御装置に用いる弁装置としては、第1弁装置2と第2弁装置3とがあれば足りるため、従来(
図8参照)よりも弁装置の台数を減らして逆火の発生を防止することができる。
【0083】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、第1弁装置2をエアオペレイト式の弁装置として説明しているが、電磁弁であっても良い。また、第1弁装置2と第2弁装置3とは、直接に連結されていても良いし、配管を介して接続されていても良い。また、燃料として水素ガスを、不活性ガスとして窒素ガスを挙げているが、これらに限定されるものではない。例えば、燃料としてはメタンガス、プロパンガス、アセチレンガス等を用いることが考えられ、不活性ガスとしては、アルゴンガスやヘリウムガス等を用いることが考えられる。
【符号の説明】
【0084】
1 バーナ用燃料制御装置
2 第1弁装置
3 第2弁装置
5 バーナ
23 第1入力ポート
24 第2入力ポート
25 出力ポート
L11 供給ライン
【要約】
【課題】フレームアレスタを用いずに、逆火の発生を防止することが可能なバーナ用燃料制御装置およびバーナ用燃料制御方法を提供すること。
【解決手段】バーナ5に、水素ガスまたは窒素ガスを供給する供給ラインL11が接続されていること、供給ラインL11に、第1弁装置2と、第1弁装置2の下流側の第2弁装置3と、が配設されていること、第1弁装置2は、水素ガスの供給源7に接続された第1入力ポート23と、窒素ガスの供給源8に接続された第2入力ポート24と、出力ポート25と、を備え、出力ポート25から水素ガスを出力する第1状態と、出力ポート25から窒素ガスを出力する第2状態と、を切替可能な三方弁であること、第2弁装置3は、供給ラインL11を開放する開弁状態と、供給ラインL11を遮断する閉弁状態と、を切替可能な開閉弁であること。
【選択図】
図1