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特許7515233PrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法
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  • 特許-PrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】PrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20240705BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20240705BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240705BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20240705BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20240705BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20240705BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20240705BHJP
   C21D 6/00 20060101ALI20240705BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20240705BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F1/057 170
B22F1/00 V
B22F1/00 Y
B22F1/052
B22F1/14 500
B22F3/00 F
B22F9/04 C
B22F9/04 D
B22F9/04 E
C21D6/00 B
C22C33/02 J
C22C38/00 303D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022187940
(22)【出願日】2022-11-25
(65)【公開番号】P2023107733
(43)【公開日】2023-08-03
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】202210078227.2
(32)【優先日】2022-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】310005618
【氏名又は名称】煙台東星磁性材料株式有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】相春傑
(72)【発明者】
【氏名】彭衆傑
(72)【発明者】
【氏名】朱暁男
(72)【発明者】
【氏名】丁開鴻
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112509775(CN,A)
【文献】国際公開第2018/180891(WO,A1)
【文献】特開2018-174205(JP,A)
【文献】特開2016-154219(JP,A)
【文献】特開2019-036707(JP,A)
【文献】特開2022-094920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02、1/057
B22F 1/00、1/052、1/14、3/00、9/04
C21D 6/00
C22C 33/02
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法であって、
前記PrNd-Fe-B系焼結磁性体は、
Nd Fe 14 B又は(PrNd) Fe 14 で構成される主相Aと、
前記主相Aの結晶粒子外層であって、(PrNd)Fe14Bで構成され且つその厚さが0.1~2.0μmであるシェル層と、
前記シェル層と隣り合う結晶粒界層と、
PrFe14Bで構成される主相Bと、を有し、
結晶粒界の結合箇所はGaリッチ領域及びCuリッチ領域であり、
前記シェル層におけるPrの含有量は1~7質量%であり、
前記Gaリッチ領域におけるGaの含有量は2~5質量%、Cuの含有量は0~0.3質量%、Alの含有量は0~1質量%であり、且つGa、Cu及びAlの総質量は、前記Gaリッチ領域の総質量の2~6%であり、
前記Cuリッチ領域におけるCuの含有量は1~9質量%、Gaの含有量は0~0.4質量%、Alの含有量は0~0.5質量%であり、且つGa、Cu及びAlの総量は、前記Cuリッチ領域の総量の2~10質量%であり、
前記主相A、前記シェル層、前記結晶粒界層及び前記主相Bの結合箇所における前記Gaリッチ領域及び前記Cuリッチ領域の総質量をX、Nd-Fe-B系磁性体の総質量をXとした場合、97%<X/X<100%、
である磁性体であって、主合金及び補助合金の2合金法によって製造され、
(ステップ1)前記主合金及び前記補助合金を、それぞれストリップキャスト法を用いて作成し、
前記主合金の成分はR1 a1 Fe 100-a1-b1-c1 b1 M1 c1 で示され、各成分の質量%は、29.2%≦a1≦29.5%、0.9%≦b1≦0.98%、0.47%≦c1≦2.76%であり、
前記補助合金の成分はR2 a2 Fe 100-a2-b2-c2 b2M2c2で示され、各成分の質量%は、38%≦a2≦50%、0.35%≦b2≦1%、2.5%≦c2≦12%であり、
R1はPrNd又はNd、R2はPr又はPrNdであり、
前記補助合金にPrNdを用いる場合、Prの含有量はNdの含有量よりも多く、かつ前記主合金にPrを含む場合、前記補助合金におけるPrの含有割合は、前記主合金におけるPrの含有割合より大きく、
M1は、少なくともAl、Cu、Gaを含み、
M2は、少なくともAl、Cu、Gaを含み、Al、Cu、Gaの質量の和をX、総質量をXした場合、35%<X/X<100%であり、
(ステップ2)前記主合金及び前記補助合金の薄片を、水素処理、ジェットミルによる粉砕、混合処理し、前記主合金と前記補助合金との混合比は、質量比で前記主合金82.0~95.0%、前記補助合金5.0~18.0%であり、
(ステップ3)得られた合金粉末を均一な磁界で成型し、冷間等静圧プレスして素地を形成し、
(ステップ4)前記素地を真空焼結炉で焼結し、時効処理を行う、
ことを特徴とするPrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項2】
前記主合金及び/又は前記補助合金は、Co、Tiの少なくとも一つを更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のPrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項3】
前記ストリップキャスト法は、アルゴンガス雰囲気下で行う溶錬工程を含み、溶錬温度は1450℃である、
ことを特徴とする請求項1に記載のPrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項4】
前記ジェットミルによって粉砕された前記合金粉末の平均粒子径は、3.0~4.0μmの範囲内である、
ことを特徴とする請求項1に記載のPrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項5】
前記磁界の強度は、1.8Tである、
ことを特徴とする請求項1に記載のPrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項6】
前記真空焼結炉での焼結温度は1040℃であり、焼結時間は11時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載のPrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【請求項7】
前記時効処理は2回に分けて行うものであり、
第1次時効処理の温度は850℃、処理時間は3時間であり、
第2次時効処理の温度は450~470℃、処理時間は3時間である、
ことを特徴とする請求項1に記載のPrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類永久磁性体の製造技術分野に属し、PrNd-Fe-B系焼結磁性体の組成構造を改良した磁性体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Nd-Fe-B系磁性材は、その優れた磁気特性によって、モータ、情報技術、医療機器等の分野で広く利用されている。昨今、風力発電や高性能モータといった高性能磁性体を利用する製品分野を中心として、低コストかつ高性能なNd-Fe-B系磁性体のニューズが高まっており、重希土類元素使用量の削減、或いは重希土類元素を含まない高性能磁性体の開発は今日の重要な研究低テーマとなっている。特にNd-Fe-B系焼結磁性体の組成構造の改良による磁気特性の向上は、特に重要な研究テーマの一つである。
【0003】
例えば、中国特許公開番号CN104952607Aには、結晶粒界が低融点な軽希土類-Cu合金で構成されたNd-Fe-B系磁性体が開示されている。この発明は、主合金と補助合金を別個に粉砕し、軽希土類-Cu合金の浸透性の高さ及び融点の低さの特徴を利用して、低温焼結による磁性体の製造を実現している。
【0004】
また中国特許公開番号CN109102976Aには、希土類Nd-Fe-B系磁性体の磁気特性を向上させる製造方法が開示されている。この発明は上記CN104952607Aに開示の発明と類似する方法であるが、その補助合金には重希土類元素を含み、重希土類元素を用いて磁性体内で結晶粒界拡散法に類する作用を奏させることで磁性体の磁気特性を向上させている。
【0005】
また中国特許公開番号CN106024253Aには、R-Fe-B系焼結磁性体及びその製造方法が開示されている。この発明はHaが高い化合物を磁性体表面に配置して拡散させ、結晶粒界を介して高HR(Dy、Tb、Hо)元素を磁性体内に拡散させ、更に主相の外層に(R,HR)-Fe(Cо)-M1相のコアシェル構造を形成することで、重希土類元素の含有量を減らし、保磁力を向上させている。
【0006】
さらに中国特許公開番号CN112992463Aには、R-T-B系磁性体の製造方法が開示されており、この発明は重希土類元素を有する磁性体を結晶粒界に拡散させ、且つ結晶粒界への拡散に用いた物質にも重希土類元素が含まれている。
【0007】
上記した従来の各方法では、補助合金の添加量が多くなると残留磁気が急激に下降し、また重希土類元素(Dy、Tb、Hо等)を利用して磁性体の保磁力を向上させている。また特別な結晶粒界拡散技術によって磁性体の結晶構造を改良してコアシェル構造を実現し、磁性体の保磁力を向上させているため、製造プロセスが複雑であり、依然としてコストが高いと言う課題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許CN104952607A公報
【文献】中国特許CN109102976A公報
【文献】中国特許CN106024253A公報
【文献】中国特許CN112992463A公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、複数回の結晶粒界拡散処理を必要とせず、焼結工程のみで磁性体の組成構造を改良して結晶粒子のコアシェル構造を形成し、且つ高価で希少な重希土類元素を使用せずに高保磁力、高残留磁気、高磁気特性を有するNd-Fe-B系焼結磁性体及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本願発明は、PrNd-Fe-B系焼結磁性体の製造方法であって、
前記PrNd-Fe-B系焼結磁性体は、
Nd Fe 14 B、又は(PrNd) Fe 14 で構成される主相Aと、
前記主相Aの結晶粒子外層であって、(PrNd)Fe14Bで構成され且つその厚さが0.1~2.0μmであるシェル層と、
前記シェル層と隣り合う結晶粒界層と、
PrFe14Bで構成される主相Bと、を有し、
結晶粒界の結合箇所はGaリッチ領域及びCuリッチ領域であり、
前記シェル層におけるPrの含有量は1~7質量%であり、
前記Gaリッチ領域におけるGaの含有量は2~5質量%、Cuの含有量は0~0.3質量%、Alの含有量は0~1質量%であり、且つGa、Cu及びAlの総質量は、前記Gaリッチ領域の総質量の2~6%であり、
前記Cuリッチ領域におけるCuの含有量は1~9質量%、Gaの含有量は0~0.4質量%、Alの含有量は0~0.5質量%であり、且つGa、Cu及びAlの総量は、前記Cuリッチ領域の総量の2~10質量%であり、
前記主相A、前記シェル層、前記結晶粒界層及び前記主相Bの結合箇所における前記Gaリッチ領域及び前記Cuリッチ領域の総質量をX、Nd-Fe-B系磁性体の総質量をXとした場合、97%<X/X<100%である磁性体であって、 主合金及び補助合金の2合金法によって製造され、
(ステップ1)前記主合金及び前記補助合金を、それぞれストリップキャスト法を用いて作成し、
前記主合金の成分はR1 a1 Fe 100-a1-b1-c1 b1 M1 c1 で示され、各成分の質量%は、29.2%≦a1≦29.5%、0.9%≦b1≦0.98%、0.47%≦c1≦2.76%であり、
前記補助合金の成分はR2 a2 Fe 100-a2-b2-c2 b2M2c2で示され、各成分の質量%は、38%≦a2≦50%、0.35%≦b2≦1%、2.5%≦c2≦12%であり、
R1はPrNd又はNd、R2はPr又はPrNdであり、
前記補助合金にPrNdを用いる場合、Prの含有量はNdの含有量よりも多く、かつ前記主合金にPrを含む場合、前記補助合金におけるPrの含有割合は、前記主合金におけるPrの含有割合より大きく、
M1は、少なくともAl、Cu、Gaを含み、
M2は、少なくともAl、Cu、Gaを含み、Al、Cu、Gaの質量の和をX、総質量をXした場合、35%<X/X<100%であり、
(ステップ2)前記主合金及び前記補助合金の薄片を、水素処理、ジェットミルによる粉砕、混合処理し、前記主合金と前記補助合金との混合比は、質量比で前記主合金82.0~95.0%、前記補助合金5.0~18.0%であり、
(ステップ3)得られた合金粉末を均一な磁界で成型し、冷間等静圧プレスして素地を形成し、
(ステップ4)前記素地を真空焼結炉で焼結し、時効処理を行う、
ことを特徴とする。
【0011】
また、一実施形態において、
前記主合金及び/又は前記補助合金は、Co、Tiの少なくとも一つを更に含み、
前記ストリップキャスト法は、アルゴンガス雰囲気下で行う溶錬工程を含み、溶錬温度は1450℃であり、
前記ジェットミルによって粉砕された前記合金粉末の平均粒子径は、3.0~4.0μmの範囲内であり、
前記磁界の強度は、1.8Tであり、
前記真空焼結炉での焼結温度は1040℃であり、焼結時間は11時間であり、
前記時効処理は2回に分けて行うものであり、
第1次時効処理の温度は850℃、処理時間は3時間であり、
第2次時効処理の温度は450~470℃、処理時間は3時間である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、主合金及び補助合金の成分、その製造方法を調整することにより、Pr元素を低Ha領域へ拡散させて主相の結晶粒子外層に(PrNd)Fe14Bシェル層構を形成し、反磁気領域の形成を効果的に抑制することで、保磁力を高めた場合であっても高い残留磁気と磁気エネルギー積を有する。
【0013】
また本発明は、主相の結晶粒子周辺における低融点相の結晶粒界相分布を改善し、主相結晶粒子間を磁気絶縁することで磁性体の保磁力を更に高めることができ、補助合金中のPrFe14Bが磁性体の保磁力向上に有利に作用する。
【0014】
本発明に係る磁性体は、高価で希少な重希土類元素を含まない安価な磁性体でありながら、高保磁力、高残留磁気、高磁気特性を実現し、かつ製造方法は容易であり、製造コストを効果的に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1にかかる磁性体のミクロ構造を示す電子顕微鏡写真
図2】実施例1の磁性体表面におけるPr元素の分布を走査した電子顕微鏡写真
図3】比較例1の磁性体表面におけるPr元素の分布を走査した電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本願発明の実施形態について詳細に説明する。下記実施例1~5で用いた主合金及び補助合金の成分及び混合比は、下記表1に示すとおりであり、第2次(2回目)の時効処理温度は、表2に示すとおりである。
【0017】
表1 実施例1~5の主合金及び補助合金の成分及び混合比(質量%)

【0018】
表2 実施例1~5の第2次(2回目)の時効処理温度
【0019】
実施例1
主合金及び補助合金の各原料成分は表1に示すとおりの元素を含み、真空誘導炉で溶錬し、ストリップキャスト乾燥片法にて主合金及び補助合金の各薄片を作成した。溶錬温度は1450℃、薄片の厚さは約0.3mmである。
【0020】
主合金薄片と補助合金薄片を、質量比で主合金薄片95.0%、補助合金薄片5.0%の割合で混合し、水素処理炉内で水素粉砕処理した。粉砕後、窒素ガス雰囲気下でジェットミルを用いて微粉砕した。微粉砕後の粉末の平均粒子径をX50=4.0μmとした。
【0021】
窒素ガス雰囲気下で、上記粉末を1.8Tの磁界で配向して圧縮成型し、素地を作成した。
【0022】
圧縮成型後の素地を真空焼結炉で焼結した。焼結温度は1040℃、11時間保温した後、アルゴンガスを注入して冷却した。焼結磁性体に2回の時効処理を行った。まず第1次時効処理として850℃で3時間保温し、その後アルゴンガスで急冷した後、第2次時効処理として再び460℃に昇温して3時間保温し、室温まで降温させて実施例1に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0023】
図1は、実施例1で得られたNd-Fe-B系焼結磁性体のミクロ構造を撮影した電子顕微鏡写真であり、当該Nd-Fe-B系焼結磁性体は連続した結晶粒界相を有しており、結晶粒界の結合箇所は、それぞれGaリッチ領域及びCuリッチ領域であった。
【0024】
図2は、実施例1で得られたNd-Fe-B系焼結磁性体表面におけるPr元素の分布を走査した電子顕微鏡写真である。Pr元素の含有量が多い領域は灰色で示され、Pr元素を含まない領域は黒色で示されている。この写真から、Pr元素の分布は不均一であり、主相AにはPr元素の含有量は少なく、主相Aの結晶粒子外層にPr元素を多く含むシェル層が形成されることが分かる。
【0025】
実施例1に係る前記Nd-Fe-B系焼結磁性体は、Re-Fe-Bである主相A、主相A結晶粒子外層であり且つ厚さが0.1~2.0μmの(PrNd)Fe14Bからなるシェル層、PrFe14Bの主相B、結晶粒界の結合箇所であるGaリッチ領域及びCuリッチ領域を含むものである。
【0026】
実施例2
主合金及び補助合金の各原料成分は表1に示すとおりの元素を含み、主合金薄片と補助合金薄片を、質量比で主合金薄片93.0%、補助合金薄片7.0%の割合で混合し、第2次時効処理温度は表2に示す通り450℃、その他の条件は実施例1と同一として、実施例2に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0027】
実施例3
主合金及び補助合金の各原料成分は表1に示すとおりの元素を含み、主合金薄片と補助合金薄片を、質量比で主合金薄片91.50%、補助合金薄片8.5%の割合で混合し、その他の条件は実施例1と同一として、実施例3に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0028】
実施例4
主合金及び補助合金の各原料成分は表1に示すとおりの元素を含み、主合金薄片と補助合金薄片を、質量比で主合金薄片88.0%、補助合金薄片12.0%の割合で混合し、その他の条件は実施例1と同一として、実施例4に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0029】
実施例5
主合金及び補助合金の各原料成分は表1に示すとおりの元素を含み、主合金薄片と補助合金薄片を、質量比で主合金薄片82.0%、補助合金薄片18.0%の割合で混合し、第2次時効処理温度は表2で示す通り470℃とした。主合金粉末の平均粒子径を4.0μmとし、補助合金粉末の平均粒子径を3.0μmとした。その他の条件は実施例1と同一として、実施例5に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0030】
上記各実施例と対比するため、以下の比較例1~5を作成した。各比較例は各実施例のように主合金と補助合金の2つに分けることなく、単一の合金から作成するものであり、表3に示すとおり比較例1~5の各元素の成分量は対応する実施例1~5の主合金及び補助合金の各元素成分の合計値と同じとした。また第2次(2回目)の時効処理温度も、表4に示すとおり対応する実施例1~5と同じとした。
【0031】
表3 比較例1~5の合金成分(質量%)
【0032】
表4 比較例1~5の第2次(2回目)の時効処理温度
【0033】
比較例1
合金の原料成分は表3に示すとおりの元素を含み、合金溶錬乾燥片法にて薄片を作成した。溶錬温度は1450℃、薄片の厚さを約0.3mmとした。
【0034】
合金薄片を水素処理炉内で水素粉砕処理し、水素粉砕粉末を作成した。水素粉砕粉末を窒素ガス雰囲気下でジェットミルを用いて微粉砕した。粉末の平均粒子径をX50=4.0μmとした。
【0035】
上記合金粉末を1.8Tの磁界で配向して圧縮成型し、素地を作成した。
【0036】
圧縮成型後の素地を真空焼結炉で焼結した。焼結温度は1040℃、11時間保温した後、アルゴンガスを注入して冷却した。焼結磁性体に2回の時効処理を行った。まず第1次時効処理として850℃で3時間保温し、その後アルゴンガスで急冷した後、第2次時効処理として再び460℃に昇温して3時間保温し、室温まで降温させて比較例1に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0037】
比較例2
合金の原料成分は表3に示すとおりの元素を含み、第2次時効処理温度は表4に示す通り450℃、その他の条件は比較例1と同一として、比較例2に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0038】
比較例3
合金の原料成分は表3に示すとおりの元素を含み、第2次時効処理温度は表4に示す通り460℃、その他の条件は比較例1と同一として、比較例3に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0039】
比較例4
合金の原料成分は表3に示すとおりの元素を含み、第2次時効処理温度は表4に示す通り460℃、その他の条件は比較例1と同一として、比較例4に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0040】
比較例5
合金の原料成分は表3に示すとおりの元素を含み、第2次時効処理温度は表4に示す通り470℃、その他の条件は比較例1と同一として、比較例5に係るNd-Fe-B系焼結磁性体を作成した。
【0041】
実施例1~5、比較例1~5で得られたNd-Fe-B系焼結磁性体の磁気特性の測定結果を表5に示す。
【0042】
表5 各実施例、各比較例に係る磁性体の磁気特性測定結果
【0043】
上記表5から明らかなとおり、実施例1~5の磁気特性にはそれぞれ差があるものの、トータルとしての合金成分が同じ実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、実施例4と比較例4、実施例5と比較例5、をそれぞれ対比すると、いずれも実施例1~5の方が、対応する比較例1~5に対してその磁気特性が向上していることが分かる。
【0044】
本発明によれば、補助合金の成分及び製造方法を調整することにより、高価な重希土類元素を含まない安価な磁性体でありながら高い磁気特性を有し、かつ製造方法は容易であり、製造コストを効果的に削減することができる。
図1
図2
図3