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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】乾燥設備及び加熱量制御方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 25/22 20060101AFI20240705BHJP
   F26B 17/20 20060101ALI20240705BHJP
   C02F 11/13 20190101ALI20240705BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240705BHJP
   B01F 27/60 20220101ALI20240705BHJP
   B01F 35/95 20220101ALI20240705BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20240705BHJP
【FI】
F26B25/22 Z ZAB
F26B17/20 B
C02F11/13
B01D53/26 100
B01F27/60
B01F35/95
B09B3/40
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019128280
(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公開番号】P2021014926
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100169199
【弁理士】
【氏名又は名称】石本 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】小菅 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】築井 良治
(72)【発明者】
【氏名】片山 岳史
(72)【発明者】
【氏名】今西 智幸
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-091201(JP,A)
【文献】特開2002-011499(JP,A)
【文献】特開平06-108058(JP,A)
【文献】特開2012-163257(JP,A)
【文献】特開2015-010809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 25/22
F26B 17/20
C02F 11/13
B01D 53/26
B01F 27/60
B01F 35/95
B09B 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥物を加熱して乾燥させる乾燥機と、前記乾燥機から排出される排ガス中の水分量を液媒を用いて減少させる減湿機と、を有する乾燥設備であって、
前記減湿機の通過前後における前記液媒の温度を含む物理量又は前記排ガスの温度を含む物理量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を間接的に算出する演算手段と、
前記演算手段によって算出された前記蒸発水分量に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する制御手段と、
を備える乾燥設備。
【請求項2】
内部に蒸気が導入される攪拌手段によって被乾燥物を攪拌しながら加熱して乾燥させる乾燥機を有する乾燥設備であって、
前記蒸気の流量に係数を乗算することで、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を間接的に算出する演算手段と、
前記演算手段によって算出された前記蒸発水分量と目標蒸発水分量との差に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する制御手段と、
を備える乾燥設備。
【請求項3】
前記乾燥機は、加熱媒体によって前記被乾燥物を乾燥させ、前記被乾燥物の排出口に堰板が設けられ、
前記制御手段は、前記加熱量を相対的に大きく変化させる場合には前記堰板の高さを変化させ、前記加熱量を相対的に小さく変化させる場合には前記加熱媒体の物性値を変化させる
請求項1又は請求項2記載の乾燥設備。
【請求項4】
前記制御手段は、前記被乾燥物を前記乾燥機に投入してから所定時間経過後に算出した前記蒸発水分量に基づいて、前記加熱量を制御する請求項1から請求項3の何れか1項記載の乾燥設備。
【請求項5】
前記演算手段は、前記液媒の温度を含む物理量を用いて算出した前記減湿機における前記排ガスの凝縮熱流量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を間接的に算出する請求項1記載の乾燥設備。
【請求項6】
前記係数は、前記蒸気の流量、前記蒸気の温度又は前記蒸気が凝縮したドレンの流量に応じて変化する、請求項2記載の乾燥設備。
【請求項7】
被乾燥物を加熱して乾燥させる乾燥機と、前記乾燥機から排出される排ガス中の水分量を液媒を用いて減少させる減湿機と、を有する乾燥設備の加熱量制御方法であって、
前記減湿機の通過前後における前記液媒の温度を含む物理量又は前記排ガスの温度を含む物理量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を間接的に算出する第1工程と、
前記第1工程によって算出された前記蒸発水分量に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する第2工程と、
を有する加熱量制御方法。
【請求項8】
内部に蒸気が導入される攪拌手段によって被乾燥物を攪拌しながら加熱して乾燥させる乾燥機を有する乾燥設備の加熱量制御方法であって、
前記蒸気の流量に係数を乗算することで、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を間接的に算出する第1工程と、
前記第1工程によって算出された前記蒸発水分量に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する第2工程と、
を有する加熱量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥設備及び加熱量制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種バイオマスや廃棄物、汚泥等の被乾燥物は、多量の水分を含有しているため、乾燥機を用いた加熱によって乾燥処理が実施される場合がある。乾燥機には、例えば、間接加熱型乾燥機がある。この乾燥機は、被乾燥物を収容するための中空ケーシングを備え、中空ケーシングには乾燥物を攪拌するための中空駆動軸及び中空攪拌羽根が設けられている。そして、間接加熱型乾燥機は、中空駆動軸及び中空攪拌羽根の中空部に蒸気等の加熱媒体が導入され、加熱媒体による間接的な加熱によって被乾燥物を乾燥させる。また、このような乾燥機には、乾燥機からの排ガスの排気路に排ガス中の水分量を減少(凝縮)させる減湿機が設けられているものがある。
【0003】
ここで、特許文献1には、被乾燥物を蒸気により間接加熱して含有する水分を蒸発させる間接加熱型乾燥機と、乾燥機からの排ガスを凝縮するドレントラップ(減湿機)を備えたシステムが開示されている。このドレントラップの出口は、乾燥排ガスの凝縮水(ドレン)を収容するドレンポットと接続されており、ドレントラップとドレンポットとの間の経路には、ドレン流量センサが設けられている。そして、ドレン流量センサの測定結果は被乾燥物からの蒸発水分量とみなされて演算器に送信される。演算器は、蒸発水分量を制御要素の一つとして、乾燥機へ供給される蒸気圧力、すなわち被乾燥物に対する加熱量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-163257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、乾燥排ガスを凝縮する減湿機を一例としてスクラバーとした場合、減湿機に供給される水(減湿水)と被乾燥物からの蒸発水とが混在して減湿機から排出される。そして減湿水が例えば90m3/hであると、一般的に蒸発水分量は2~3m3/hであるように、蒸発水分量は減湿機に供給される減湿水の数%程度であり、減湿水は蒸発水分量に対して大きい水量である。そして、減湿機からの排出流量を測定する流量センサは、減湿水の流量を基準に選定されるため、数十~数百m3/hの流量を測定可能な流量センサが選択される。
【0006】
すなわち、蒸発水分量の大きさは流量センサの測定誤差程度に相当し、流量センサで測定される蒸発水分量は流量センサの測定誤差の影響を受けやすいため、精度や安定性が十分ではなく正確に測定されない可能性がある。このため、流量センサの測定値に基づいて加熱量の制御を行ったとしても適切な制御とならず、その結果、被乾燥物の含水率を適切に制御できない可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、被乾燥物の含水率を適切に制御できる乾燥設備及び加熱量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の乾燥設備は、被乾燥物を加熱して乾燥させる乾燥機と、前記乾燥機から排出される排ガス中の水分量を液媒を用いて減少させる減湿機と、を有する乾燥設備であって、前記減湿機の通過前後における前記液媒の物理量又は前記排ガスの物理量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を算出する演算手段と、前記演算手段によって算出された前記蒸発水分量に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する制御手段と、を備える。
【0009】
本構成によれば、乾燥機での被乾燥物の蒸発水分量を、流量センサの測定値から直接算出することなく、減湿機の通過前後における液媒の物理量又は排ガスの物理量に基づいて算出する。これにより、算出される蒸発水分量は、流量センサの精度(百分率)と同等の正確性で算出される。そして、本構成は、算出した蒸発水分量に基づいて、乾燥機における被乾燥物に対する加熱量を制御するので、被乾燥物の含水率を適切に制御できる。
【0010】
上記の乾燥設備において、前記演算手段は、前記液媒の物理量を用いて算出した前記減湿機における前記排ガスの凝縮熱流量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を算出する。
【0011】
本構成によれば、乾燥機での被乾燥物の蒸発水分量を、流量センサの測定値から直接算出することなく、減湿機における排ガスの凝縮熱流量に基づいて算出する。このため、算出される蒸発水分量は、流量センサの精度(百分率)と同等の正確性で算出される。また、減湿機に流入出する液媒の物理量は瞬時変動しにくいため、液媒の物理量は被乾燥物の蒸発水分量を算出するための変数として適している。すなわち、瞬時変動するような変数から算出される制御因子を用いて乾燥機の加熱量を制御しようとしても、制御値が収束せずに適切な制御が行いにくい。一方、瞬時変動しにくい変数から算出される制御因子を用いることで、制御値が収束しやすく適切な制御となる。従って、本構成は、瞬時変動しにくい変数から算出される排ガスの凝縮熱流量を被乾燥物に対する加熱量の制御因子とすることで、被乾燥物の含水率を適切に制御できる。
【0012】
上記の乾燥設備において、前記演算手段は、少なくとも前記液媒の前記減湿機に対する入口温度の測定値と出口温度の測定値とに基づいて前記凝縮熱流量を算出してもよい。
【0013】
本構成によれば、簡易に排ガスの凝縮熱流量を算出できる。
【0014】
上記の乾燥設備において、前記演算手段は、前記排ガスの前記減湿機に対する入口流量の測定値、出口流量の測定値、及び出口温度の測定値に基づいて、前記蒸発水分量を算出する。
【0015】
本構成によれば、簡易に蒸発水分量を算出できる。
【0016】
また、本発明の乾燥設備は、内部に蒸気が導入される攪拌手段によって被乾燥物を攪拌しながら加熱して乾燥させる乾燥機を有する乾燥設備であって、前記蒸気の物理量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を算出する演算手段と、前記演算手段によって算出された前記蒸発水分量に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する制御手段と、を備える。
【0017】
本構成によれば、乾燥機での被乾燥物の蒸発水分量を、流量センサの測定値から直接算出することなく、攪拌手段を通過する蒸気の物理量に基づいて算出する。これにより、算出される蒸発水分量は、流量センサの精度(百分率)と同等の正確性で算出される。そして、本構成は、算出した蒸発水分量に基づいて、乾燥機における被乾燥物に対する加熱量を制御するので、被乾燥物の含水率を適切に制御できる。
【0018】
上記の乾燥設備において、前記演算手段は、前記蒸気の流量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を算出する。
【0019】
本構成によれば、簡易に蒸発水分量を算出できる。
【0020】
上記の乾燥設備において、前記乾燥機は、加熱媒体によって前記被乾燥物を乾燥させ、前記被乾燥物の排出口に堰板が設けられ、前記制御手段は、前記加熱量を相対的に大きく変化させる場合には前記堰板の高さを変化させ、前記加熱量を相対的に小さく変化させる場合には前記加熱媒体の物性値を変化させてもよい。
【0021】
本構成によれば、被乾燥物が含有する水分量の変化に応じた加熱量の制御能力が向上する。
【0022】
上記の乾燥設備において、前記制御手段は、前記被乾燥物を前記乾燥機に投入してから所定時間経過後に算出した前記蒸発水分量に基づいて、前記加熱量を制御してもよい。
【0023】
乾燥機が被乾燥物を乾燥させるためには時間を要する。このため、本構成によれば、被乾燥物に対する加熱量をより適切に制御できる。
【0024】
また、本発明の乾燥設備は、被乾燥物を加熱して乾燥させる乾燥機を備える乾燥設備であって、前記乾燥設備を流通する過程で熱が奪われることによって水分が凝縮する流体の物理量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を算出する演算手段と、前記演算手段によって算出された前記蒸発水分量に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する制御手段と、を備える。
【0025】
本発明の加熱量制御方法は、被乾燥物を加熱して乾燥させる乾燥機と、前記乾燥機から排出される排ガス中の水分量を液媒を用いて減少させる減湿機と、を有する乾燥設備の加熱量制御方法であって、前記液媒の物理量を用いて算出した前記減湿機における前記排ガスの凝縮熱流量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を算出する第1工程と、前記第1工程によって算出された前記蒸発水分量に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する第2工程と、を有する。
【0026】
本発明の加熱量制御方法は、内部に蒸気が導入される攪拌手段によって被乾燥物を攪拌しながら加熱して乾燥させる乾燥機を有する乾燥設備の加熱量制御方法であって、前記攪拌手段の通過前後における前記蒸気の物理量に基づいて、前記乾燥機での前記被乾燥物の蒸発水分量を算出する第1工程と、前記第1工程によって算出された前記蒸発水分量に基づいて、前記乾燥機における前記被乾燥物に対する加熱量を制御する第2工程と、を有する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、被乾燥物の含水率を適切に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態の乾燥設備の概略構成図である。
図2】第1実施形態の乾燥設備の加熱量制御に関する機能ブロック図である。
図3】第1実施形態の堰板高さ又は蒸気圧力の算出の流れを示した模式図である。
図4】第1実施形態の加熱量制御処理の流れを示したフローチャートである。
図5】第2実施形態の乾燥設備の概略構成図である。
図6】第2実施形態の乾燥設備の加熱量制御に関する機能ブロック図である。
図7】第3実施形態の乾燥設備の概略構成図である。
図8】第3実施形態の乾燥設備の加熱量制御に関する機能ブロック図である。
図9】他の実施形態の乾燥設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態の乾燥設備及び加熱量制御方法について、図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態では、乾燥設備を流通する過程で熱が奪われることによって水分が凝縮する流体の物理量に基づいて、乾燥機での汚泥の蒸発水分量を算出し、算出した蒸発水分量に基づいて、乾燥機における汚泥に対する加熱量を制御する形態について説明する。なお、上記流体は、一例として、減湿機(一例としてスクラバー)を流通する減湿水、減湿機を流通する排ガス、及び攪拌手段の内部を流通する蒸気である。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の乾燥設備10の概略構成図である。本実施形態の乾燥設備10は、例えば、食品廃棄物処理設備や下水処理設備に設けられるものであり、被乾燥物として汚泥や各種バイオマスや食品廃棄物等、水分を含む廃棄物等を乾燥させる設備である。なお、本実施形態では、被乾燥物を一例として汚泥として説明する。
【0031】
図1に示されるように、本実施形態の乾燥設備10は、供給ポンプ12、乾燥機14、搬送装置16、スクラバー18、及び主制御装置20を備える。
【0032】
供給ポンプ12は、被乾燥物である汚泥を乾燥機14に供給するための装置である。供給ポンプ12の出口には、汚泥を乾燥機14に供給する汚泥供給路22が設けられている。この汚泥供給路22には、乾燥機14へ供給される汚泥の投入量F0を測定する流量センサ24及び汚泥の含水率X0を測定する含水率センサ26が設けられている。
【0033】
乾燥機14は、汚泥を加熱して乾燥させる装置であり、汚泥を収容する中空ケーシング14A、中空ケーシング14A内の汚泥を攪拌する中空駆動軸14B及び中空攪拌羽根14Cが設けられている。
【0034】
中空ケーシング14Aの一方には、汚泥投入口14Dが設けられ、他方には乾燥後の汚泥(以下「乾燥汚泥」という。)の排出口14E及び乾燥の過程で乾燥の過程で蒸発した水分を含む排ガスの排気口14Fが設けられる。汚泥投入口14Dには、汚泥供給路22が連結され供給ポンプ12から汚泥が乾燥機14に供給される。また、排出口14Eには、搬送装置16が連結され、排出口14Eから排出された乾燥汚泥は搬送装置16によって搬送される。排気口14Fには、排気路36を介してスクラバー18が連結され、排ガスはスクラバー18へ送気される。
【0035】
中空駆動軸14Bは、中空ケーシング14Aの長手方向に沿って設けられており、モータ等の回転駆動装置(不図示)によって回転する。中空攪拌羽根14Cは、中空駆動軸14Bと中空部(詳細後述)が繋がった複数枚の扇型状の羽根であり、中空ケーシング14Aの内壁に接触することなく中空駆動軸14Bの回転に応じて回転する。そして、汚泥投入口14Dから乾燥機14に投入された汚泥は、回転する中空攪拌羽根14Cによって排出口14Eに向かって移送される。
【0036】
また、中空駆動軸14B及び中空攪拌羽根14Cの内部は中空(以下「中空部」という。)となっており、汚泥を乾燥させるための加熱媒体が導入される。本実施形態の加熱媒体は、一例として蒸気であるが、加熱媒体はこれに限られず、温水や加熱された油脂等でもよい。なお、中空駆動軸14Bの端部には蒸気導入配管28が接続され、この蒸気導入配管28を介して加熱媒体である蒸気が中空駆動軸14B及び中空攪拌羽根14Cの中空部に導入される。
【0037】
そして、中空駆動軸14B及び中空攪拌羽根14Cの中空部を満たした蒸気は、中空駆動軸14B及び中空攪拌羽根14Cに接触している汚泥を間接的に加熱し、汚泥に含まれる水分を蒸発させる。汚泥を加熱すると、汚泥の粘性が低下して汚泥からろ液が分離しやすくなると共に、汚泥の熱変性が起こって汚泥の保水力が低下するので、汚泥の含水率を効率良く低下させることができる。このように、乾燥機14に投入された汚泥は、中空駆動軸14B及び中空攪拌羽根14Cを介して加熱媒体により加熱されながら、中空攪拌羽根14Cにより圧搾、脱水されながら乾燥機14の下流側に移送される。
【0038】
ここで、蒸気導入配管28には、蒸気圧力を制御する圧力制御弁30が設けられており、乾燥設備10は、蒸気圧力を制御することで汚泥に対する加熱量を制御する。圧力制御弁30は、弁制御装置31によって開度が制御されることで蒸気圧力を変化させる。また、弁制御装置31は、蒸気導入配管28に設けられた圧力センサ32の測定値が入力され、蒸気圧力が主制御装置20から送信された所定値となるように圧力制御弁30をフィードバック制御する。
【0039】
なお、本実施形態の乾燥設備10は、加熱媒体である蒸気の物性値を変化させることで加熱量を制御すればよく、例えば、圧力制御弁30の替わりに流量制御弁が蒸気導入配管28に設けられてもよい。この形態の場合、乾燥設備10は、蒸気流量を制御することで汚泥に対する加熱量を制御する。さらに、蒸気導入配管28に圧力制御弁30及び流量制御弁の両方が設けられ、蒸気圧力と蒸気流量とで汚泥に対する加熱量が制御されてもよい。
【0040】
乾燥機14の排出口14Eの前方には、中空攪拌羽根14Cにより移送された汚泥を堰き止めて滞留させる堰板14Gが設けられる。堰板14Gは、駆動装置であるモータ34によってその高さ(以下「堰板高さ」という。)が制御され、堰板高さが高いほど乾燥機14内の汚泥量が増加する。すなわち、堰板高さが高いほど、汚泥の滞留時間が長くなり、汚泥に対する加熱量が増加する。モータ34は、モータ制御装置35によってその回転数及び回転方向が制御される。一例として、堰板高さは百分率(%)で表され、100%の場合は堰板14Gが最も閉じた状態、すなわち堰板高さが最も高い状態であり、0%の場合は堰板14Gが最も開いた状態、すなわち堰板高さが最も低い状態である。
【0041】
本実施形態の堰板14Gの形状は、一例として板状であるが、これに限られない。堰板14Gの形状は、排出口14Eから排出される汚泥を堰き止めて汚泥に対する加熱量を制御できる形状であれば、他の形状でもよい。
【0042】
乾燥機14の排気口14Fから排出された排ガスは、上述のようにスクラバー18を通過して大気中に放出、又は、再度乾燥機14内へキャリアガスとして導入される。
【0043】
スクラバー18は、排ガス中の水分量を減少させる減湿機としての機能を有する。本実施形態のスクラバー18は、一例として、液媒を排ガスに散布することにより排ガス中の水分量を減少させる。本実施形態の液媒は一例として冷水(以下「減湿水」という。)であるが、液媒はこれに限らず、アルコール等、水以外の他の液体でもよい。
【0044】
減湿水は、給水路38からスクラバー18に供給され、スクラバー18の上部から散布(散水)される。乾燥機14から排出された排ガスは、スクラバー18の下方から送気され、スクラバー18内で散布される減湿水によって冷却されることで、排ガス中の水分が凝縮される。凝縮された水分は、散布された減湿水と共にスクラバー18の下部に貯留し、排水路40から排水される。一方、スクラバー18を通過した排ガスは、スクラバー18の上部に設けられたガス出口42から脱臭装置(不図示)を介して大気中に放出される。又は、排ガスは、ガス出口42から熱交換器(不図示)を介して加熱され、再度乾燥機14内へキャリアガスとして導入される。
【0045】
また、主制御装置20は、乾燥設備10全体の制御を司る。主制御装置20は、例えば、コンピュータであるCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。
【0046】
主制御装置20は、例えば、乾燥機14における汚泥に対する加熱量等を制御(以下「加熱量制御」という。)する。加熱量は、上述のように蒸気圧力や堰板高さによって制御される。このため、主制御装置20は、蒸気圧力を制御するための制御信号を弁制御装置31へ送信し、堰板高さを制御するための制御信号をモータ制御装置35へ送信する。
【0047】
なお、主制御装置20は、加熱量制御を行うために、流量センサ24及び含水率センサ26による測定結果と共に、他のセンサによって測定された種々の物性値が入力される。以下に各センサの配置位置とセンサが測定する物性値について説明する。
【0048】
スクラバー18の給水路38には減湿水流量F1を測定する流量センサ44と減湿水温度T1を測定する温度センサ46が設けられる。スクラバー18の排水路40には排水流量F2を測定する流量センサ48と排水温度T2を測定する温度センサ50が設けられる。排気路36には、入口排ガス温度T3を測定する温度センサ52が設けられる。スクラバー18のガス出口42には、出口排ガス温度T4を測定する温度センサ54と出口排ガス流量F4を測定する流量センサ56とが設けられる。
【0049】
本実施形態の加熱量制御は、換言すると、乾燥汚泥に含まれる水分量(乾燥汚泥含水率)の制御であり、減湿水の物理量を用いて算出したスクラバー18における排ガスの凝縮熱流量(以下「排ガス凝縮熱流量」という。)に基づいて乾燥機14での汚泥の蒸発水分量を算出する。そして、加熱量制御は、算出した蒸発水分量に基づいて、乾燥機14における汚泥に対する加熱量を制御する。排ガス凝縮熱流量とは、具体的には、スクラバー18において排ガスを冷却することで、排ガス中の水分を凝縮させる熱流量(kJ/h)であり。また、算出した蒸発水分量は、以下の説明において実際蒸発水分量という。
【0050】
このように本実施形態の加熱量制御によれば、乾燥機14での汚泥の実際蒸発水分量を、流量センサの測定値から直接算出することなく、スクラバー18における排ガスの凝縮熱流量に基づいて算出する。このため、算出される実際蒸発水分量は、流量センサの精度(百分率)と同等の正確性で算出される。また、スクラバー18に流入出する減湿水の物理量は瞬時変動しにくいため、減湿水の物理量は汚泥の実際蒸発水分量を算出するための変数として適している。すなわち、瞬時変動するような変数から算出される制御因子を用いて乾燥機14の加熱量を制御しようとしても、制御値が収束せずに適切な制御が行いにくい。一方、瞬時変動しにくい変数から算出される制御因子を用いることで、制御値が収束しやすく適切な制御となる。
【0051】
従って、本実施形態の加熱量制御は、瞬時変動しにくい変数から算出される排ガスの凝縮熱流量を汚泥に対する加熱量の制御因子とすることで、汚泥の含水率を適切に制御できる。また、本実施形態の加熱量制御は、自動的な乾燥制御となるため、乾燥設備10の運転に要する管理員の省力化を実現できる。さらに、本実施形態の加熱量制御は、適切な制御を行うことが可能となるので、乾燥汚泥の含水率が過度に少なくなる状態を避けることができ、乾燥汚泥からの発火防止等、安全性を向上できる。
【0052】
図2は、本実施形態の加熱量制御に関する機能ブロック図である。図2に示される各機能は、一例として主制御装置20が備えるコンピュータによって実行されるが、これに限らず、各機能は、主制御装置20が備えるASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の個別のハードウェアによって実行されてもよい。
【0053】
主制御装置20は、凝縮熱流量演算部60、実際蒸発水分量演算部62、目標蒸発水分量演算部64、及び加熱量制御部66を備える。
【0054】
凝縮熱流量演算部60は、排ガス凝縮熱流量を算出する。
【0055】
本実施形態の凝縮熱流量演算部60は、一例として下記(1)式に示すように、スクラバー18へ供給される減湿水の熱流量(減湿水熱流量Q1)及びスクラバー18から排出される排水の熱流量(排水熱流量Q2)、並びにスクラバー18へ流入する排ガスの熱流量(入口排ガス熱流量Q3)及びスクラバー18から流出する排ガスの熱流量(出口排ガス熱流量Q4)から排ガス凝縮熱流量を算出する。
【0056】
排ガス凝縮熱流量=排水熱流量Q2+出口排ガス熱流量Q4-減湿水熱流量Q1-入口排ガス熱流量Q3 ・・・(1)
【0057】
なお、減湿水熱流量Q1、排水熱流量Q2、入口排ガス熱流量Q3、及び出口排ガス熱流量Q4は、下記式によって算出される。
【0058】
Q1=H1(減湿水温度T1の比エンタルピー[kJ/kg])×F1(減湿水流量[kg/h])
Q2=H2(排水温度T2の比エンタルピー[kJ/kg])×F2(排水流量[kg/h])
Q3=H3g(入口排ガス温度T3の比エンタルピー[kJ/kg])×F3g(スクラバー18の入口排ガス中のガス流量[kg/h])
Q4=H4g(出口排ガス温度T4の比エンタルピー[kJ/kg])×F4g(スクラバー18の出口排ガス中のガス流量[kg/h])
【0059】
入口排ガス中ガス流量F3g及び出口排ガス中ガス流量F4gは、各々、スクラバー18へ流入出する排ガスのうち乾燥ガスの流量である。この乾燥ガスは、スクラバー18によって凝集されないため、乾燥ガスの流量はスクラバー18へ流入する前と流出後で変化しない。このため、入口排ガス中ガス流量F3gと出口排ガス中ガス流量F4gとは下記式のように同じである。
F3g[kg/h]=F4g[kg/h]
【0060】
また、出口排ガス中ガス流量F4gは、下記(2),(3)式による連立方程式によって算出される。なお、出口排ガス中水分流量F4wは、出口排ガス中の水分量が飽和水蒸気量と同じであると仮定している。
F4[kg/h]=F4g[kg/h]+F4w[kg/h] ・・・(2)
F4w[kg/h]=m(出口排ガス温度T4の100%絶対湿度[kg-H2O/kg-dry gas])×F4g[kg/h] ・・・(3)
【0061】
このように、本実施形態の凝縮熱流量演算部60は、単に減湿水熱流量Q1と排水熱流量Q2とから排ガス凝縮熱流量を算出するのではなく、入口排ガス熱流量Q3と出口排ガス熱流量Q4とを排ガス凝縮熱流量の算出に加味している。すなわち、本実施形態の凝縮熱流量演算部60は、乾燥ガスの熱量(顕熱)を加味して排ガス凝縮熱流量を算出することになるので、より正確な排ガス凝縮熱流量を算出できる。
【0062】
実際蒸発水分量演算部62は、乾燥機14による乾燥で汚泥から失われた水分量である実際蒸発水分量を算出する。実際蒸発水分量演算部62は、具体的には、下記(4)式のように、排ガス凝縮熱流量から蒸気潜熱(凝縮潜熱)を除算することで実際蒸発水分量を算出する。
実際蒸発水分量[kg/h]=排ガス凝縮熱流量[kJ/h]÷蒸気潜熱[kJ/kg] ・・・(4)
【0063】
ここで、従来技術では、実際蒸発水分量を流量センサ44,48の測定値(減湿水流量F1、排水流量F2)の差分から直接的に取得することもできる。しかしながら、減湿水流量F1、排水流量F2は流量センサ44,48の測定誤差が大きく影響する可能性がある。例えば、90m3/hの減湿水流量において実際蒸発水分量が2~3m3/hの場合があり、このような場合には、流量センサ44,48の測定値の差分から取得した実際蒸発水分量は流量センサ44,48の測定誤差内となり、正確でない可能性がある。
【0064】
一方で、本実施形態に係る乾燥設備10は、スクラバー18において熱交換される熱流量(排ガス凝縮熱流量)を算出し、この熱流量に基づいて実際蒸発水分量を算出する。ここで、排ガス凝縮熱流量は、減湿水の物理量として、少なくとも減湿水のスクラバー18に対する入口温度の測定値(減湿水温度T1)と出口温度の測定値(排水温度T2)とに基づいて算出されればよい。この理由は、温度センサの測定値は一般的に測定誤差が小さく、またスクラバー18に流入出する減湿水の温度は、瞬時変動しにくく、加熱量制御に用いる実際蒸発水分量の算出に適した物理量のためである。
【0065】
なお、本実施形態では、排ガス凝縮熱流量の算出に流量センサ44,48の測定値も用いているため、算出される実際蒸発水分量にはこの測定誤差も含まれる。しかしながら、算出される排ガス凝縮熱流量は、流量センサ44,48の測定値に対して温度センサ46,50の測定値に基づく物理量(温度差と比熱)を乗算するものであり、その算出結果は流量センサ44,48の測定誤差に対して十分大きい。このため、算出される実際蒸発水分量にとって、流量センサ44,48の測定誤差の影響は十分に小さくなり、流量センサ44,48の測定値を用いることがより正確な排ガス凝縮熱流量の算出に寄与する。
【0066】
ここで凝縮熱流量演算部60は、上述のように、減湿水の物理量として、少なくとも減湿水温度T1と排水温度T2とに基づいて排ガス凝縮熱流量を算出すればよい。これにより、凝縮熱流量演算部60は、簡易に排ガス凝縮熱流量を算出できる。なお、減湿水温度T1と排水温度T2のみを排ガス凝縮熱流量の算出に用いる場合は、他の値を定数とする。
【0067】
そして、減湿水温度T1と排水温度T2と共に他の測定値を用い排ガス凝縮熱流量を算出するパターンは、上記説明のパターンを含んで下記のように複数パターンある。何れのパターンを用いるかは、各種センサの有無に応じて適宜選択される。
【0068】
パターン1:T1及びT2は測定値、その他の値は定数
パターン2:T1、T2、F1、及びF2は測定値、その他の値は定数
パターン3:T1、T2、F1、F2、T3、及びT4は測定値、その他の値は定数
パターン4:T1、T2、F1、F2、T3、T4、及びF4は測定値、定数なし
【0069】
目標蒸発水分量演算部64は、乾燥機14において汚泥から蒸発させたい水分量(以下「目標蒸発水分量」という。)を算出する。本実施形態の目標蒸発水分量演算部64は、例えば、汚泥投入量F0と汚泥含水率X0とから汚泥の水分量である水分投入量[kg/h]を算出し、この水分投入量のうち蒸発させたい割合である目標水分[%]を乗算することで目標蒸発水分量[kg/h]を算出する。
【0070】
なお、乾燥機14に投入される汚泥の量には多少の時間変化があるため、目標蒸発水分量を算出するために用いられる汚泥投入量F0と汚泥含水率X0とは、瞬間値が用いられるのではなく、一例として、所定時間(例えば10分間)の平均値が用いられる。
【0071】
また、汚泥含水率の変動を安定させるために、汚泥を受け入れるホッパーを汚泥の含水率の違いによって振り分けてもよい。すなわち、高含水率の汚泥と低含水率の汚泥とを各々異なるホッパーを介して乾燥機14へ投入する。そして、高含水率の汚泥の供給量と低含水率の汚泥の供給量を調整して汚泥の含水率が所定値となるように乾燥機14に投入する。これにより、乾燥機14に投入される汚泥の含水率がより安定化される。
【0072】
加熱量制御部66は、乾燥機14における汚泥に対する加熱量を制御する。本実施形態の加熱量制御部66は、上述のように、堰板高さや蒸気圧力を制御することで汚泥に対する加熱量を制御する。このため、加熱量制御部66は、蒸気圧力や堰板高さを示す制御信号を弁制御装置31やモータ制御装置35へ送信する。
【0073】
より具体的には、本実施形態の加熱量制御部66は、実際蒸発水分量と目標蒸発水分量との差(以下「蒸発水分量差」という。)に基づいて加熱量を制御する。すなわち、実際蒸発水分量が目標蒸発水分量よりも大きい場合、加熱量制御部66は、加熱量が小さくなるように制御する。一方、実際蒸発水分量が目標蒸発水分量よりも小さい場合、加熱量制御部66は、加熱量が大きくなるように制御する。
【0074】
ここで、堰板高さの制御は、堰板14Gが乾燥機14内の汚泥を堰き止めるものであるため、汚泥に対する加熱量を大きく変化させることに適しているものの、加熱量を微調整することには不向きである。一方、蒸気圧力の制御は、汚泥に対する加熱量を微調整することに適しているものの、蒸気圧力の制御範囲には限界があるため加熱量を大きく変化させることには不向きである。
【0075】
そこで、本実施形態の加熱量制御部66は、加熱量を相対的に大きく変化させる場合には堰板高さを変化させ、加熱量を相対的に小さく変化させる場合には蒸気圧力を変化させる。これにより、乾燥設備10は、汚泥が含有する水分量の変化に応じた加熱量の制御能力が向上する。
【0076】
なお、本実施形態の加熱量制御部66は、一例として、予め定められた制御関数に基づいて、堰板高さ又は蒸気圧力を制御する。この制御関数には、目標蒸発水分量が変数として入力され、目標蒸発水分量に応じた堰板高さ又は蒸気圧力を示す値が出力される。制御関数は、一例として、堰板高さを制御する場合と蒸気圧力を制御する場合とで異なる関数とされる。
【0077】
図3は、本実施形態の加熱量制御による堰板高さ又は蒸気圧力の算出の流れを示した模式図である。図3に示される目標水分は、乾燥設備10の管理員等によって入力される。また、流量センサ24で測定された汚泥投入量F0と含水率センサ26で測定された汚泥含水率X0に基づいて、汚泥に含まれる固形分の投入量(固形分投入量)と水分の投入量(水分投入量)が算出される。そして、目標水分と固形分投入量と水分投入量とから目標蒸発水分量が算出される。
【0078】
また、算出された水分投入量に基づいて堰板高さ又は蒸気圧力に対する複数の制御関数のうち、適切な制御関数が選択される。
【0079】
一方、算出された目標蒸発水分量と算出された実際蒸発水分量との乖離の度合いを示した蒸発水分量差が算出される。選択された制御関数は、この蒸発水分量差に基づいて補正される。そして、補正された制御関数に目標蒸発水分量が入力され、堰板高さの制御量又は蒸気圧力の制御量が算出される。
【0080】
制御関数の補正は、一例として、蒸発水分量差が実質的にゼロ(零)とみなせる所定値未満となるように、蒸発水分量差に応じて制御関数に含まれる係数や定数を変化させることである。係数や定数の変化量は、次に行われる加熱量制御によって蒸発水分量差が小さくなるような値が選択される。
【0081】
本実施形態では水分投入量に基づいた制御関数の選択を行う際に、蒸発水分量差から加熱量の変化量を算出し、この変化量が基準値以上の場合には制御関数として堰板高さの制御関数が選択される。一方、加熱量の変化量が基準値未満の場合に制御関数として蒸気圧力の制御関数が選択される。
【0082】
なお、図3の例では、汚泥投入量F0と汚泥含水率X0とをセンサによる測定値としたが、これに限らず、汚泥投入量F0と汚泥含水率X0とを管理員による入力値としてもよい。また、汚泥が複数の運搬車によって異なるタイミングで乾燥設備10に搬入され、乾燥設備10で貯留や移送、混合を行って乾燥機14へ投入する場合もある。このような場合には、乾燥設備10の管理員又は運搬車の運転員が、汚泥投入量F0、汚泥含水率X0、及び汚泥の搬入時刻を入力し、汚泥を貯留、移送、及び混合して乾燥設備10へ投入されるまでのシミュレーションが行われ、その結果に基づいて乾燥機14へ投入される固形投入量と水分投入量とが算出されてもよい。
【0083】
図4は、本実施形態の主制御装置20で実行される加熱制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、加熱制御処理は、乾燥設備10の運転が開始された場合に開始される。
【0084】
まず、ステップS100では、目標蒸発水分量演算部64が目標蒸発水分量の平均値(例えば10分間の平均値)を算出する。
【0085】
次のステップS102では、水分投入量に基づいて制御関数を選択する。
【0086】
次のステップS104は、目標蒸発水分量を制御関数に代入することで、加熱量制御部66が目標蒸発水分量に応じた加熱量を算出し、算出した加熱量に応じた制御信号を弁制御装置31及びモータ制御装置35へ送信する。なお、本ステップでは、堰板高さの制御関数と蒸気圧力の制御関数の両方に目標蒸発水分量を代入することで、堰板高さの初期値と蒸気圧力の初期値とが決定される。これにより、モータ制御装置35は、制御信号に応じた堰板高さとなるようにモータ34を駆動させる。また、弁制御装置31は、制御信号に応じた蒸気圧力となるようにモータ34を駆動させる。なお、ステップS104の処理は、汚泥に対する加熱量のフィードフォワード制御に相当する。
【0087】
次のステップS106では、前回の目標蒸発水分量の算出から所定時間(例えば1~2時間)経過したか否かを実際蒸発水分量演算部62が判定し、肯定判定の場合はステップS108へ移行する一方、否定判定の場合は所定時間が経過するまで待ち状態となる。なお、この所定時間は、乾燥機14に汚泥が投入された後、乾燥機14による乾燥処理が終了して排出さるまでに要する時間に相当する。
【0088】
ステップS108では、凝縮熱流量演算部60が排ガス凝縮熱流量を算出し、実際蒸発水分量演算部62が排ガス凝縮熱流量を用いて実際蒸発水分量を算出する。
【0089】
次のステップS110では、前回算出した目標蒸発水分量と実際蒸発水分量との乖離度合いを示した蒸発水分量差を加熱量制御部66が算出し、加熱量制御部66が蒸発水分量差に応じて制御関数を補正する。なお、加熱量制御部66は、蒸発水分量差が所定値未満の場合には、制御関数の補正を行わなくてもよい。
【0090】
次のステップS112では、目標蒸発水分量演算部64が目標蒸発水分量の平均値(例えば30分間の平均値)を算出する。
【0091】
次のステップS114では、ステップS112で算出した目標蒸発水分量を制御関数に入力することで、加熱量制御部66が目標蒸発水分量に応じた加熱量を算出し、算出した加熱量に応じた制御信号を弁制御装置31及びモータ制御装置35の何れかへ送信する。これにより、算出した加熱量に応じて堰板高さ又は蒸気圧力が制御される。すなわち、ステップS112の処理は、蒸発水分量差に応じて補正された制御関数を用いた堰板高さまたは蒸気圧力に対する操作量の補正であり、汚泥に対する加熱量のフィードバック制御に相当する。
【0092】
次のステップS116では、乾燥設備10の停止指示が入力されたか否かを加熱量制御部66が判定し、否定判定の場合はステップS104へ戻って加熱量の制御を繰り返し行う。一方、肯定判定の場合は加熱量制御処理を終了する。
【0093】
図4のフローチャートを用いて説明したように、本実施形態の加熱量制御処理は、汚泥を乾燥機14に投入してから所定時間経過後に算出した蒸発水分量に基づいて加熱量を制御する。この理由は、乾燥機14が汚泥を乾燥させるためには時間を要するためである。すなわち、算出された実際蒸発水分量は、算出時に乾燥機14に投入された汚泥の蒸発水分量ではなく、それ以前に投入された汚泥の蒸発水分量である。そして、乾燥機14に投入される汚泥の含水率は、投入される汚泥の性状によって変化する可能性がある。このため、汚泥を乾燥機14に投入してから所定時間経過後、すなわち、汚泥の乾燥に要する時間経過後の実際蒸発水分量が、乾燥機14に投入された汚泥に対応した実際蒸発水分量である。
【0094】
このため本実施形態のように、汚泥を乾燥機14に投入してから所定時間経過後、すなわち時間遅れを考慮して算出した実際蒸発水分量に基づいて加熱量を制御することで、汚泥に対する加熱量をより適切に制御できる。なお、この所定時間は、堰板高さに応じて汚泥の乾燥機14内における滞留時間が変化するため、堰板高さに応じて変化させてもよい。
【0095】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の乾燥設備10は、乾燥機14からの排ガスの物理量に基づいて、乾燥機14での汚泥の蒸発水分量を算出する。
【0096】
図5は、本実施形態の乾燥設備10の概略構成図である。図5における図1と同一の構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。また、図6は、本実施形態の加熱量制御に関する機能ブロック図である。図6における図2と同一の構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0097】
図5に示されるように、本実施形態の乾燥設備10は、乾燥機14の排気路36に、スクラバー18への入口排ガス流量F3を測定する流量センサ70が設けられる。
【0098】
図6に示されるように、本実施形態の主制御装置20は、実際蒸発水分量演算部62A、目標蒸発水分量演算部64、及び加熱量制御部66を備える。
【0099】
実際蒸発水分量演算部62Aは、スクラバー18の通過前後における排ガスの物理量に基づいて、乾燥機14での汚泥の実際蒸発水分量を算出する。本実施形態の実際蒸発水分量演算部62Aは、一例として、排ガスのスクラバー18に対する入口流量の測定値(入口排ガス流量F3)、出口流量の測定値(出口排ガス流量F4)、及び出口温度の測定値(出口排ガス温度T4)に基づいて、実際蒸発水分量を算出する。
【0100】
次に排ガスの物理量に基づく乾燥機14での汚泥の実際蒸発水分量の算出例を説明する。
【0101】
実際蒸発水分量は、下記(5)式のように、スクラバー18の入口排ガス中の水分流量[kg/h]であるF3wから出口排ガス中の水分流量[kg/h]であるF4wを減算することで算出される。
実際蒸発水分量=F3w―F4w ・・・(5)
【0102】
入口排ガス中水分流量F3wは、下記(6)式のように、入口排ガス流量F3から出口排ガス中ガス流量F4gを減算することで算出される。
F3w=F3―F4g ・・・(6)
【0103】
出口排ガス中ガス流量F4gと出口排ガス中水分流量F4wとは、下記(7),(8)式による連立方程式によって算出される。算出された出口排ガス中ガス流量F4gを(6)式に代入することで入口排ガス中水分流量F3wが算出される。
F4g=F4一F4w ・・・(7)
F4w=m(出口排ガス温度T4の100%絶対湿度[kg-H2O/kg-dry gas])×F4g ・・・(8)
【0104】
このように(6)~(8)式によって算出した入口排ガス中水分流量F3wと出口排ガス中水分流量F4wとを(5)式に代入することで、実際蒸発水分量が算出される。
【0105】
そして、本実施形態の加熱量制御部66は、排ガスの物理量に基づいて算出された実際蒸発水分量と目標蒸発水分量との差(蒸発水分量差)に基づいて加熱量を制御する。
【0106】
なお、本実施形態の主制御装置20で実行される加熱制御処理は、図4で説明した加熱制御処理と同様なので、説明を省略する。
【0107】
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の乾燥設備10は、攪拌手段(中空駆動軸14B及び中空攪拌羽根14C)の内部に導入される蒸気(以下「加熱用蒸気」という。)の物理量に基づいて、乾燥機14での汚泥の実際蒸発水分量を算出する。
【0108】
図7は、本実施形態の乾燥設備10の概略構成図である。図7における図1,5と同一の構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。また、図8は、本実施形態の加熱量制御に関する機能ブロック図である。図8における図6と同一の構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0109】
本実施形態の乾燥設備10は、図7に示されるように、蒸気導入配管28に加熱用蒸気の流量F5を測定する流量センサ80が設けられる。
【0110】
また、中空駆動軸14Bには、汚泥に熱を奪われた加熱用蒸気が凝縮した水分(ドレン)を排出するドレン配管82が設けられる。なお、ドレン配管82は、図1,5では省略しているものの、第1,2実施形態の乾燥設備10にも設けられるものである。
【0111】
図8に示されるように、本実施形態の主制御装置20は、実際蒸発水分量演算部62B、目標蒸発水分量演算部64、及び加熱量制御部66を備える。
【0112】
本実施形態の実際蒸発水分量演算部62Bは、一例として、流量センサ80で測定される加熱用蒸気流量F5に基づいて、乾燥機14での汚泥の蒸発水分量を算出する。
【0113】
ここで、乾燥機14では、攪拌手段に導入された加熱用蒸気によって汚泥が乾燥される。このため、汚泥に熱を奪われた加熱用蒸気は、凝縮してドレンとして排出される。すなわち、汚泥の蒸発水分量と加熱用蒸気の供給量とは相関関係があり、実際蒸発水分量は加熱用蒸気の流量から算出できる。
【0114】
そこで、実際蒸発水分量演算部62Aは、下記(9)式に示すように、加熱用蒸気流量F5に係数Aを乗算することで実際蒸発水分量を算出する。
実際蒸発水分量=A×F5 ・・・(9)
【0115】
この係数Aは、加熱用蒸気の流量に応じて任意に設定されるが、例えば、加熱用蒸気の温度に応じて変化してもよい。また、係数Aは、例えば、加熱用蒸気が凝縮したドレンの流量に応じて変化してもよい。この場合、ドレン配管82にドレンの流量を測定するための流量センサが設けられる。
【0116】
そして、本実施形態の加熱量制御部66は、加熱用蒸気の物理量に基づいて算出された実際蒸発水分量と目標蒸発水分量との差(蒸発水分量差)に基づいて加熱量を制御する。
【0117】
なお、本実施形態の主制御装置20で実行される加熱制御処理は、図4で説明した加熱制御処理と同様なので、説明を省略する。
【0118】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態の構成は各々適宜組み合わされてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、蒸発水分量差に応じて堰板高さや蒸気圧力の制御関数を補正し、補正後の制御関数から堰板高さや蒸気圧力の制御量を算出する形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、蒸発水分量差から汚泥に対する加熱量の増減値を算出し、この増減値に応じて蒸気圧力又は堰板高さの制御量を算出してもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、排ガス中の水分量を減少させる減湿機をスクラバー18とする形態について説明したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、図9に示されるように、スクラバー18をコンデンサ90としてもよい。この形態の場合、コンデンサ90には減湿水として冷却水が入流出し、この冷却水によって乾燥機14からの排ガスが間接的に冷却される。これにより、排ガス内の水蒸気は凝縮され、ドレン排出口90Aからドレンとして排出される。なお、図9の例では、給水路38に流量センサ44が設けられ、排水路40に流量センサ48が設けられるが、給水路38と排水路40とを流通する冷却水の流量は同じであるため、流量センサ44及び流量センサ48の何れか一方が設けられればよい。
【0121】
また、上記実施形態では、乾燥機14での汚泥の蒸発水分量を算出するための流体であって、乾燥設備1を流通する過程で熱が奪われることによって水分が凝縮する流体として、スクラバー18を流通する減湿水、スクラバー18を流通する排ガス、及び攪拌手段の内部を流通する加熱用蒸気とする形態について説明したが、本発明はこれに限られず、他の流体であってもよい。
【符号の説明】
【0122】
10 乾燥設備
14 乾燥機
14G 堰板
18 スクラバー(減湿機)
62 実際蒸発水分量演算部(演算手段)
66 加熱量制御部(制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9