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特許7515242文字入力装置、文字入力支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】文字入力装置、文字入力支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06V 30/196 20220101AFI20240705BHJP
   G06V 30/19 20220101ALI20240705BHJP
【FI】
G06V30/196 B
G06V30/196 A
G06V30/19 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019165442
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021043713
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】良知 鷹彦
【合議体】
【審判長】畑中 高行
【審判官】片岡 利延
【審判官】高橋 宣博
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196685号公報
【文献】特開平09-231310号公報
【文献】特開平04-303279号公報
【文献】特開2016-177529号公報
【文献】特開平06-348687号公報
【文献】特開平11-154198号公報
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06V 30/196
G06V 30/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手書き入力された文字を認識可能な文字入力装置であって、
手書き入力領域への前記文字の手書き入力の途中として前記文字における複数の構成要素のうちの一部の構成要素が手書き入力された段階で前記段階までの筆跡に基づいた認識候補からなる候補リストを表示させる制御手段を備え、
前記候補リストには、前記段階までの筆跡に基づいた認識候補として、少なくとも1つの部首と、前記部首を構成要素に含む少なくとも1つの文字と、が含まれており、
前記制御手段は、
前記候補リストにおける前記部首と前記文字とのうち前記部首がユーザにより選択されることで前記筆跡に対応する部首が確定された場合に前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限し、
前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限する場合には、所定の空白領域に前記文字における複数の構成要素のうちの他の構成要素をユーザが手書き入力可能なように、前記手書き入力を受け付ける範囲を制限する、
ことを特徴とする文字入力装置。
【請求項2】
前記手書き入力領域は、前記手書き入力による筆跡を表示可能に構成されており、
前記制御手段により前記手書き入力を受け付ける範囲が制限された場合に、この制限された範囲が識別可能なように前記手書き入力領域に所定の境界情報を表示させる表示制御手段を備える、
ことを特徴とする請求項1記載の文字入力装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記文字の手書き入力の途中でユーザにより前記筆跡に対応する部首が確定された場合には、前記手書き入力領域に表示されている筆跡を所定のフォントに置換して表示させる、
ことを特徴とする請求項2記載の文字入力装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限する場合には、前記手書き入力を受け付ける位置が前記所定のフォントで前記部首が表示されている位置とは異なる位置となるように、前記手書き入力を受け付ける範囲を制限する、
ことを特徴とする請求項3記載の文字入力装置。
【請求項5】
手書き入力された文字を認識可能な入力装置が実行する文字入力支援方法であって、
手書き入力領域への前記文字の手書き入力の途中として前記文字における複数の構成要素のうちの一部の構成要素が手書き入力された段階で前記段階までの筆跡に基づいた認識候補からなる候補リストを表示させる制御処理を含み、
前記候補リストには、前記段階までの筆跡に基づいた認識候補として、少なくとも1つの部首と、前記部首を構成要素に含む少なくとも1つの文字と、が含まれており、
前記制御処理は、
前記候補リストにおける前記部首と前記文字とのうち前記部首がユーザにより選択されることで前記筆跡に対応する部首が確定された場合に前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限し、
前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限する場合には、所定の空白領域に前記文字における複数の構成要素のうちの他の構成要素をユーザが手書き入力可能なように、前記手書き入力を受け付ける範囲を制限する、
ことを特徴とする文字入力支援方法。
【請求項6】
手書き入力された文字を認識可能な文字入力装置のコンピュータを、
手書き入力領域への前記文字の手書き入力の途中として前記文字における複数の構成要素のうちの一部の構成要素が手書き入力された段階で前記段階までの筆跡に基づいた認識候補からなる候補リストを表示させる制御手段として機能させ、
前記候補リストには、前記段階までの筆跡に基づいた認識候補として、少なくとも1つの部首と、前記部首を構成要素に含む少なくとも1つの文字と、が含まれており、
前記制御手段は、
前記候補リストにおける前記部首と前記文字とのうち前記部首がユーザにより選択されることで前記筆跡に対応する部首が確定された場合に前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限し、
前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限する場合には、所定の空白領域に前記文字における複数の構成要素のうちの他の構成要素をユーザが手書き入力可能なように、前記手書き入力を受け付ける範囲を制限する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は文字入力装置、文字入力支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子辞書などの電子機器には、タッチパネルに対して文字を手書きすることで、手書き入力されたストロークデータ(文字データ)に対して文字認識処理を実行する手書き文字入力機能(手書き文字認識エンジン)が設けられたものがある。手書き文字入力では、例えば読み方が分からない漢字であっても、字形を表す線(ストロークデータ)を手書きすることで文字を入力することができる。
【0003】
従来では、漢字入力の時、文字あるいは正しい書き順を正確に覚えていない場合であっても、文字の一部を入力し、この文字の一部をキーにして文字を検索する手書き文字入力方法が考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-348687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、部首などのパーツ(部位)の配置、複数の部位の大小関係などを正しく手書きされなかった場合や、漢字全体を構成する複数の部位をバランス良く手書きされない場合には誤認識されやすく、意図した文字の入力結果が取得しにくくなってしまう。
【0006】
本発明は、前記のような課題に考慮してなされたもので、手書き入力によって正しい字形を表しにくい文字であっても、意図した文字の入力結果を取得しやすくする文字入力装置、文字入力支援方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る文字入力装置は、手書き入力された文字を認識可能な文字入力装置であって、手書き入力領域への前記文字の手書き入力の途中として前記文字における複数の構成要素のうちの一部の構成要素が手書き入力された段階で前記段階までの筆跡に基づいた認識候補からなる候補リストを表示させる制御手段を備え、前記候補リストには、前記段階までの筆跡に基づいた認識候補として、少なくとも1つの部首と、前記部首を構成要素に含む少なくとも1つの文字と、が含まれており、前記制御手段は、前記候補リストにおける前記部首と前記文字とのうち前記部首がユーザにより選択されることで前記筆跡に対応する部首が確定された場合に前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限し、前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限する場合には、所定の空白領域に前記文字における複数の構成要素のうちの他の構成要素をユーザが手書き入力可能なように、前記手書き入力を受け付ける範囲を制限する、ことを特徴とする。
また、本発明に係る文字入力支援方法は、手書き入力された文字を認識可能な入力装置が実行する文字入力支援方法であって、手書き入力領域への前記文字の手書き入力の途中として前記文字における複数の構成要素のうちの一部の構成要素が手書き入力された段階で前記段階までの筆跡に基づいた認識候補からなる候補リストを表示させる制御処理を含み、前記候補リストには、前記段階までの筆跡に基づいた認識候補として、少なくとも1つの部首と、前記部首を構成要素に含む少なくとも1つの文字と、が含まれており、前記制御処理は、前記候補リストにおける前記部首と前記文字とのうち前記部首がユーザにより選択されることで前記筆跡に対応する部首が確定された場合に前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限し、前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限する場合には、所定の空白領域に前記文字における複数の構成要素のうちの他の構成要素をユーザが手書き入力可能なように、前記手書き入力を受け付ける範囲を制限する、ことを特徴とする。
また、本発明に係るプログラムは、手書き入力された文字を認識可能な文字入力装置のコンピュータを、手書き入力領域への前記文字の手書き入力の途中として前記文字における複数の構成要素のうちの一部の構成要素が手書き入力された段階で前記段階までの筆跡に基づいた認識候補からなる候補リストを表示させる制御手段として機能させ、前記候補リストには、前記段階までの筆跡に基づいた認識候補として、少なくとも1つの部首と、前記部首を構成要素に含む少なくとも1つの文字と、が含まれており、前記制御手段は、前記候補リストにおける前記部首と前記文字とのうち前記部首がユーザにより選択されることで前記筆跡に対応する部首が確定された場合に前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限し、前記手書き入力を受け付ける範囲を前記手書き入力領域の一部に制限する場合には、所定の空白領域に前記文字における複数の構成要素のうちの他の構成要素をユーザが手書き入力可能なように、前記手書き入力を受け付ける範囲を制限する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、手書き入力によって正しい字形を表しにくい文字であっても、意図した文字の入力結果を取得しやすくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る手書き文字入力装置の電子回路の構成を示す機能ブロック図。
図2】本実施形態における電子辞書の外観構成を示す正面図。
図3】第1実施形態における手書き文字認識処理の動作を示すフローチャート。
図4】第1実施形態における手書き入力画面の一例を示す図。
図5】第1実施形態における手書き入力画面の一例を示す図。
図6】第1実施形態における手書き入力画面の一例を示す図。
図7】第1実施形態における手書き入力画面の一例を示す図。
図8】第2実施形態における手書き文字認識処理の動作を示すフローチャート。
図9図8のフローチャートに示す修正処理(1)の詳細を示すフローチャート。
図10】第2実施形態における手書き入力画面の一例を示す図。
図11図8のフローチャートに示す修正処理(2)の詳細を示すフローチャート。
図12】第2実施形態における手書き入力画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面により本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る手書き文字入力装置の電子回路の構成を示す機能ブロック図である。
【0012】
本実施形態では、手書き文字入力装置を例えば電子辞書10として構成した例について示す。なお、手書き文字入力装置は、電子辞書10の他、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットPCなどの各種の電子機器により実現することが可能である。
【0013】
電子辞書10は、複数の見出し語とする単語にそれぞれ対応する少なくとも1つの語義に関する情報、単漢字/熟語などの情報が辞書データとして記録されている。電子辞書10は、見出し語を指定する文字列(単語)を入力することで、見出し語に対応する語義などを含む情報を検索する検索機能を有する。電子辞書10は、見出し語を指定する文字列を、後述する文字入力キーに対する操作、あるいはタッチパネルに対して文字を手書きする操作によって入力することができる。
【0014】
電子辞書10は、各種の記録媒体に記録されたプログラム、又は、伝送されたプログラムを読み込んで、その読み込んだプログラムによって動作が制御されるコンピュータの構成を有し、その電子回路には、CPU(central processing unit)11が備えられる。
【0015】
CPU11は、電子辞書10の全体を制御する制御部として機能する。CPU11は、メモリ12内に予め記憶された制御プログラム、あるいはROMカードなどの記録媒体13から記録媒体読取部14を介してメモリ12に読み込まれた制御プログラム、あるいはインターネット等を含むネットワークNを通じて、サーバ20から通信部15を介しダウンロードされてメモリ12に読み込まれた制御プログラムに応じて、回路各部の動作を制御する。
【0016】
メモリ12に記憶された制御プログラムは、キー入力部16からのユーザ操作に応じた入力信号、タッチパネル式表示部17からのユーザ操作に応じた入力信号、あるいは外部接続されるネットワークN上のサーバ20との通信信号、あるいは記録媒体読取部14を介して接続されるEEPROM(登録商標),RAM,ROMなどの記録媒体13との接続通信信号に応じて起動される。
【0017】
CPU11には、メモリ12、記録媒体読取部14、通信部15、キー入力部16、タッチパネル式表示部17などが接続される。
【0018】
メモリ12に記憶される制御プログラムとしては、電子辞書10の全体の動作を司るシステムプログラム、外部接続されるネットワークN上のサーバ20、パーソナルコンピュータなどの他の電子機器とデータ通信するための通信プログラムが記憶される。さらに、メモリ12には、入力された文字列をもとに見出し語に対応する情報を検索して出力する検索機能を実行する辞書制御プログラム12aが記憶される。辞書制御プログラム12aは、タッチパネル式表示部17のデータ入力面において、例えばペン18を用いて手書きされることで入力された文字データ(座標データ列からなるストロークデータを含む)をもとに文字認識処理を実行して、認識された文字(文字コード)を入力する手書き入力プログラム12bが含まれる。手書き入力プログラム12bは、手書き入力された文字の文字データについて、例えば漢字の部首などの部位(文字の一部を構成する)について第1手書き文字認識と、部位を含む文字を対象とする第2手書き文字認識を実行して文字を入力することができる。
【0019】
また、メモリ12には、辞書データ12c、手書き文字認識データ12dなどが記憶される。
【0020】
辞書データ12cには、例えば、英和辞書、和英辞書、英英辞書、国語辞書などの複数の辞書を集録したデータベースが含まれる。辞書データ12cには、辞書毎に、各見出し語のそれぞれに対応する意味(語義)を説明する語義情報が含まれる。なお、辞書データ12cは、電子辞書10の本体に内蔵せずに、ネットワークNを通じてアクセス可能な辞書データベース(例えば、サーバ20)から取得するようにしても良い。
【0021】
手書き文字認識データ12dは、手書き入力された文字(文字データ)を認識するためのデータである。本実施形態の電子辞書10では段階的手書き入力処理をするため、手書き文字認識データ12dには、手書き文字に対応する1文字を認識するためのデータの他、文字の一部を構成する部位について認識する部位認識データ12eが含まれる。部位認識データ12eには、部位に対応する文字データ(ストロークデータ)を認識するデータには、部位が文字中の何れの位置に配置されているかを示すエリアデータが含まれる。なお、部位認識データ12eには、例えば漢字の部首だけでなく、部首に該当しない部分を対象としてデータが含まれていても良い。また、以下の説明では日本語の漢字を対象として説明するが、漢字以外の文字、他の言語の文字(中国語の簡体字、繁体字など)を対象とすることができる。
【0022】
手書き文字認識データ12dは、電子辞書10の本体に内蔵せずに、ネットワークNを通じてアクセス可能な辞書データベース(例えば、サーバ20)から取得するようにしても良い。
【0023】
図2は、本実施形態における電子辞書10の外観構成を示す正面図である。
【0024】
図2における電子辞書10の場合、開閉される装置本体の下段側にCPU11、メモリ12、記録媒体読取部14、通信部15が内蔵されると共に、キー入力部16及びペン収納部18aが設けられ、上段側にタッチパネル式表示部17が設けられる。
【0025】
キー入力部16には、文字入力キー16a、各種の辞書や各種機能を選択することができる辞書選択キー16b、[訳/決定]キー16c、[戻る]キー16d、カーソルキー(上下左右キー)16e、電源ボタン、その他の各種機能キーなどが備えられる。タッチパネル式表示部17には、各種機能の実行に応じて、各種メニューやボタン17aなどが表示される。
【0026】
電子辞書10は、ユーザによるキー入力部16に対する操作、あるいはタッチパネル式表示部17に表示されたメニューやボタンに対するタッチ操作(ペン先、あるいは指先による)に応じて、ユーザによる指示を入力することができる。また、電子辞書10は、タッチパネル式表示部17のデータ入力面においてペン18を用いて文字を手書きすることで(手書き文字入力)、文字を入力することができる。
【0027】
このように構成された電子辞書10は、CPU11が辞書制御プログラム12aに記述された命令に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウエアとハードウエアとが協働して動作することにより、以下の動作説明で述べる機能を実現する。
【0028】
次に、本実施形態における電子辞書10の手書き文字認識処理の動作について説明する。
【0029】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態における手書き文字認識処理の動作を示すフローチャートである。第1実施形態における手書き文字認識処理は、手書き入力しようとする文字を、文字の一部を構成する部位毎に手書き入力する方法を用いる。ここでは、漢字の部首などの部位について手書き入力して第1手書き文字認識を実行し、部位を確定した後に、部位を含む文字を対象として第2手書き文字認識を実行する(段階的手書き入力)。
【0030】
なお、以下の説明では、2段階の段階的手書き入力をする場合について説明するが、3段階以上の段階的手書き入力をすることも可能である。
【0031】
電子辞書10では、各種の情報を検索するために見出し語(キーワード)とする文字列や文字を入力する必要があるが、文字の読みなどが分からずキー入力部16のキー操作によって文字を入力できない場合、手書き文字入力によって文字を入力することができる。CPU11は、タッチパネル式表示部17あるいはキー入力部16に対する操作によって、手書き文字入力の実行が指示されると、タッチパネル式表示部17において手書き入力画面を表示させる(ステップA1)。
【0032】
図4(A)は、第1実施形態における手書き入力画面の一例を示す図である。図4に示す手書き入力画面は、例えば漢字検索のためのもので、入力文字表示領域30、手書き文字入力領域31a、認識候補表示領域31b、メニュー領域32が設けられている。入力文字表示領域30には、例えば複数の検索方法にそれぞれ対応する入力項目と文字入力枠が設けられている。複数の入力項目には、例えば漢字検索30a、音訓検索、部首画数などがある。ユーザは、複数の入力項目から何れかを指定して、検索方法を選択することができる。
【0033】
例えば、漢字検索30aが選択された場合、手書き文字入力領域31aに対する手書き入力によって認識された文字が、漢字検索30aに対応する文字入力枠30bに表示される。以下、漢字検索30aが選択された場合を例にして説明する。
【0034】
手書き文字入力領域31aは、ユーザによりペン18を用いて文字を手書きさせるための領域である。認識候補表示領域31bは、手書き文字入力領域31aに入力された手書き文字(文字データ)に対する文字認識処理によって得られた認識候補を表示させるための領域である。なお、手書き文字入力領域31aは、1つに限らず、2つ以上であっても良い。また、認識候補表示領域31bは、認識候補が得られた場合に表示されるようにしても良い。
【0035】
メニュー領域32には、例えば認識ボタン32a、書き直しボタン32b、削除ボタン32cが設けられる。認識ボタン32aは、手書き文字入力領域31aに入力済みの手書き文字に対する文字認識処理の実行を指示するためのボタンである。書き直しボタン32bは、手書き文字入力領域31aに入力済みの手書き文字を消去して、手書き文字の書き直しを指示するためのボタンである。削除ボタン32cは、手書き文字に対する文字認識処理よって入力された文字(文字入力枠30bなどの文字入力枠に表示された文字)の削除を指示するためのボタンである。なお、メニュー領域32には、必要に応じて他のボタンが表示される。
【0036】
CPU11は、手書き文字入力領域31aにおいて、例えばペン18を用いて手書きされると、タッチパネル式表示部17により検出される座標データ列を文字の線を表すストロークデータ(文字データ)としてメモリ12に記憶させる。また、CPU11は、入力された座標データ列に応じて、手書き文字入力領域31aのペン18によってタッチされた位置に線(筆跡)を描画させる(ステップA2)。CPU11は、認識ボタン32aが操作されない場合(ステップA3、No)、手書き入力が可能な状態を継続する。
【0037】
図4(A)に示す手書き入力画面は、手書き文字入力領域31aに対して、手書き文字が入力された状態を示している。図4(A)に示すように、手書き文字(文字データ)が入力され、認識ボタン32aの操作によって文字認識処理の実行が指示されると(ステップA3、Yes)、CPU11は、手書き入力された文字データをもとに、第1手書き文字認識処理を実行する(ステップA4)。図4(A)に示す例では、漢字の部位「やまいだれ」に想到する文字の一部が手書き入力されている。
【0038】
第1手書き文字認識処理では、CPU11は、部位認識データ12eをもとに文字認識処理を実行する。すなわち、段階的手書き入力処理によって文字を入力するために、文字の一部が手書き入力されたものとして文字認識する。
【0039】
CPU11は、部位認識データ12eをもとにした第1文字認識処理により得られた認識候補を、認識候補表示領域31bにおいて一覧表示させる(ステップA5)。図4(B)は、認識候補表示領域31bに認識候補が一覧表示(認識候補一覧表示)された例を示している。
【0040】
ここで、認識候補表示領域31bから部位に相当する認識候補(部位候補)を選択する操作がされた場合(ステップA6,Yes→ステップA7、Yes)、CPU11は、手書き文字入力領域31aにおいて、選択された部位候補に応じた部位表示を実行させる(ステップA8)。
【0041】
図5(A)は、部位表示の一例を示している。部位表示では、認識候補表示領域31bから選択された部位候補を、文字中の位置に応じて表示すると共に、部位が配置されたエリア(部位エリアAR1)と、部位エリアAR1を除くエリア(手書き入力エリアAR2)を明示する。手書き入力エリアAR2は、先に手書き入力した部位の文字データに、さらに手書きによって文字データを追加するためのエリアである。
【0042】
なお、部位エリアAR1と手書き入力エリアAR2は、ユーザの操作によって範囲を変更できるようにしても良い。エリアの変更については後述する。
【0043】
CPU11は、手書き入力エリアAR2において手書き入力されると、前述と同様にして、座標データ列を文字の線を表すストロークデータ(文字データ)入力すると共に、ペン18によってタッチされた位置に線(筆跡)を描画させる(ステップA11)。なお、手書き入力エリアAR2に対して手書き入力された後、書き直しボタン32bによって書き直しが指示された場合には、手書き入力エリアAR2に入力済みのデータ(ストローク)を消去して書き直しが可能である。図5(B)は、手書き入力エリアAR2に手書き文字が入力された状態を示している。
【0044】
ここで、認識ボタン32aに対する操作によって文字認識処理の実行が指示されると(ステップA12、Yes)、CPU11は、手書き入力された文字データをもとに、第2手書き文字認識処理を実行する(ステップA13)。
【0045】
なお、認識ボタン32aに対する操作する前であれば、エリア変更ボタン32dに対する操作によってエリア変更処理をすることができる。CPU11は、認識ボタン32aに対する操作がされず(ステップA12、No)、エリア変更ボタン32dに対する操作によってエリア変更処理の実行が指示されると(ステップA9、Yes)、前述と同様にしてエリア変更処理を実行する(ステップA9,A10)。従って、ユーザは、手書き文字を入力が容易となるように、手書き文字入力領域31aのエリアの調整をすることができる。
【0046】
第2手書き文字認識処理では、部位の部分がユーザの選択によって確定されているため、部位の部分を有する文字を認識候補として認識処理を実行する。
【0047】
また、第2手書き文字認識処理では、手書き入力された部位に相当する文字データを、予め用意された部位を表す正しい文字データに変更し、この正しい部位の文字データと手書き入力エリアAR2において手書き入力された文字データをもとに、1文字について文字認識処理を実行し、確定された部位を有する認識候補の優先度を上げて認識結果とする。
【0048】
あるいは、第2手書き文字認識処理では、手書き入力エリアAR2において手書き入力された文字データを部位として認識し、この認識結果(部位)と、部位エリアAR1に表示された確定済みの部位との組合せが正しい文字を認識結果とする。
【0049】
このように、手書き入力された文字データの部位に相当する部分を確定した後、部位を含む文字を対象として第2手書き文字認識を実行することで、1文字全体について正しい字形を手書きできなくても、段階的に手書き入力された文字データを認識して確定していくことで、意図した文字を入力することができる。従って、手書き文字が意図した文字として認識されるまで、手書き入力(書き直し)を繰り返す必要がなく、手書きによる文字入力を容易にすることができる。
【0050】
CPU11は、第2手書き文字認識処理による認識結果を、漢字検索30aに対応する文字入力枠30bに表示させる(ステップA14)。図5(C)は、文字入力枠30bに認識結果とする文字「癖」が表示された例を示している。
【0051】
なお、前述した説明では、認識候補一覧表示から部位候補が選択された場合について説明しているが、部位候補を選択せずに、引き続き、文字を手書き入力することができる。認識候補表示領域31bから部位の認識候補を選択する操作がされず(ステップA6、No)、手書き文字入力領域31aに対して、さらに手書き入力された場合には、CPU11は、前述したように、ペン18によりによってタッチされた位置に対応する座標データ列を入力すると共に線(筆跡)を描画させる(ステップA11)。
【0052】
ここで、認識ボタン32aの操作によって文字認識処理の実行が指示されると(ステップA12、Yes)、CPU11は、手書き入力された文字データをもとに、第2手書き文字認識処理を実行する(ステップA13)。この場合、第2手書き文字認識処理では、入力されたストロークデータについて1文字として認識処理を実行する。CPU11は、第2手書き文字認識処理による認識結果を文字入力枠30bに表示させる(ステップA14)。
【0053】
また、前述した説明では、第1手書き文字認識処理の結果、図4(B)に示すように、部位に相当する認識候補(部位候補)を一覧表示させているが(認識候補一覧表示)、部位候補だけでなく、部位候補を含む文字を認識候補として一覧表示させるようにしても良い。
【0054】
図4(C)は、部位候補と、部位候補を含む文字を認識候補として表示する認識候補一覧表示の一例を示している。図4(C)に示す例では、例えば4つの部位候補が一覧表示されると共に、部位候補を含む3つの文字が部位候補毎に一覧表示されている。図4(C)に示す部位候補を含む3つの文字は、例えば文字の総画数の少ない文字を優先して表示させているが、ユーザが過去に手書き入力した文字を学習(記憶)しておき、学習された文字を優先して表示させたり、一般に使用頻度の高い文字を優先表示させたりするなど、表示対象とする文字候補を動的に変更するようにしても良い。
【0055】
部位候補と、部位候補を含む文字を一覧表示する場合、CPU11は、認識候補一覧表示から部位候補がユーザにより選択された場合(ステップA7、Yes)、前述と同様にして、選択された部位候補に応じた部位表示を実行させる(ステップA8)(図5(A))。以下、前述と同様の処理を実行する。
【0056】
一方、認識候補一覧表示から部位候補を含む文字がユーザにより選択された場合(ステップA7、No)、CPU11は、認識候補一覧表示から選択された文字を認識結果として文字入力枠30bに表示させる(ステップA14)。
【0057】
このように、部位候補と、部位候補を含む文字を一覧表示して選択できるようにすることで、一覧表示中に意図した文字が認識候補として表示されていれば、追加の手書き入力をすることなく、意図した文字を入力することができる。従って、手書きによる文字の入力を容易にすることができる。
【0058】
次に、部位エリアAR1と手書き入力エリアAR2の変更について説明する。図6(A)~(D)は、第1実施形態におけるエリア変更を説明するための手書き入力画面の一例を示す図である。
【0059】
図6(A)は、手書き文字入力領域31aに手書きされた文字について第1手書き文字認識処理を実行した結果、複数の認識候補が認識候補表示領域31bに一覧表示された状態を示している。ここでは、第1手書き文字認識処理において、手書き入力された文字データを、部位として認識処理を実行する。
【0060】
ここで、認識候補表示領域31bから認識候補を選択する操作がされた場合(ステップA6,Yes→ステップA7、Yes)、CPU11は、手書き文字入力領域31aにおいて、選択された認識候補に応じた部位を表示させる(ステップA8)。
【0061】
図6(B)は、図6(A)に示す認識候補の一覧から認識候補31b1が選択された場合の表示例を示している。図6(B)では、手書き文字入力領域31aにおいて全体に手書きされたことから、認識候補から選択された部位(1文字に相当する)が手書き文字入力領域31aの全体に表示される。すなわち、手書き文字入力領域31aの全体が、図5(A)に示す部位エリアAR1に設定される。
【0062】
メニュー領域32には、エリア変更ボタン32dが設けられている。CPU11は、エリア変更ボタン32dに対する操作によってエリア変更処理の実行が指示されると(ステップA9、Yes)、図6(B)の手書き文字入力領域31aに示すように、例えば、エリア変更の対象とするエリアを示す破線枠と、エリアの変更操作を受け付けるための複数のハンドルを破線枠上に設定する。
【0063】
CPU11は、例えばペン18によってハンドルがタッチされ、タッチされた状態でタッチ位置が移動されると、タッチ位置に応じて部位エリアAR1の範囲を変更すると共に、変更された範囲内に文字全体が表示されるように、文字を変形して表示させる(ステップA10)。
【0064】
図6(C)には、部位エリアAR1の範囲が変更された例を示している。図6(C)では、部位エリアAR1の下辺を上方向に移動させて、部位エリアAR1を手書き文字入力領域31aのほぼ上半分の範囲に変更している。この場合、文字入力領域31aのほぼ下半分の範囲が手書き入力エリアAR2となる。手書き入力エリアAR2では、手書きによって文字データを追加することができる。
【0065】
なお、図6(C)では、単純に部位エリアAR1の下辺の位置を変更しているだけであるが、複数のハンドルの位置を変更することで、手書き文字入力領域31aの任意の位置に部位エリアAR1(手書き入力エリアAR2)を設定することができる。
【0066】
また、前述した説明では、ハンドルをペン18の操作に移動させることでエリアを変更しているが、タッチパネルに対する指先などを用いた一般的なタッチ操作、例えばピンチインやピンチアウトなどの操作によってエリアを変更できるようにしても良い。
【0067】
CPU11は、エリア変更により設定された手書き入力エリアAR2において手書き入力されると、前述と同様にして、座標データ列を文字の線を表すストロークデータ(文字データ)入力すると共に、ペン18によってタッチされた位置に線(筆跡)を描画させる(ステップA11)。図6(D)は、手書き入力エリアAR2に手書き文字が入力された状態を示している。
【0068】
ここで、認識ボタン32aに対する操作によって文字認識処理の実行が指示されると(ステップA12、Yes)、CPU11は、手書き入力された文字データをもとに、前述と同様にして、第2手書き文字認識処理を実行する(ステップA13)。
【0069】
図6に示す例では、1文字分を手書き入力して認識処理した後、部位エリアAR1の範囲を変更しているが、部位のみを手書き入力して認識処理した後、部位エリアAR1の範囲をユーザ操作に応じて設定することで手書き入力エリアAR2を設け、手書き文字を追加することができる。
【0070】
このように、部位エリアAR1(手書き入力エリアAR2)の位置をユーザ操作によって任意に変更できるようにすることで、文字中の正確な部位の位置に合わせて部位を手書き入力できなくても、部位についての認識結果を利用した手書き文字の入力が可能となる。
【0071】
なお、前述した説明では、認識候補一覧表示において認識候補(部位候補)を選択する操作がされた場合(ステップA7,Yes)、図5(A)に示すように部位表示をしているが、認識候補(部位候補)の選択に応じて、選択された部位を含む文字の一覧表示をするようにしても良い。
【0072】
図7(A)は、第1文字認識処理により得られた認識候補を、認識候補表示領域31bにおいて一覧表示させた例を示している。ここでは、メニュー領域32には、スキップボタン32eが設けられている。
【0073】
例えば、図7(A)に示す認識候補表示領域31bの認識候補一覧表示から認識候補31b2が選択されたものとする。この場合、CPU11は、図7(B)に示すように、認識候補31b2の部位を含む複数の文字を認識候補表示領域31bにおいて一覧表示させる。
【0074】
ここで、認識候補表示領域31bの一覧表示から何れかの文字がユーザ操作によって選択された場合、CPU11は、選択された文字を認識結果として文字入力枠30bに表示させる。
【0075】
一方、図7(B)に示す部位を含む文字の一覧表示から認識候補が選択されず、スキップボタン32eに対する操作があった場合、CPU11は、図7(C)に示すように(図5(A)と同じ)、手書き文字入力領域31aにおいて部位表示させて、手書き入力エリアAR2において追加の手書き入力をさせる。以下、前述と同様の処理が実行されるものとして詳細な説明を省略する。
【0076】
このように、部位の選択に応じて部位を含む文字を一覧表示させることで、この一覧表示から認識結果とする文字を選択して文字を入力することができる。従って、手書き入力エリアAR2における追加の手書き入力を省略して、効率的に文字入力することが可能となる。
【0077】
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態における手書き文字認識処理の動作を示すフローチャートである。第2実施形態では、第1実施形態と共通する部分について詳細な説明を省略する。
【0078】
第2実施形態における手書き文字認識処理は、手書きされた文字について文字認識した後、認識結果が誤りであった場合には、認識後の文字から部位を選択して、選択した部位に対応するエリアについて手書き入力して第2手書き文字認識を実行して修正できるようにする。第2実施形態では、修正処理(1)(2)の何れかにより文字認識結果を修正することができる。
【0079】
まず、修正処理(1)を用いる場合について説明する。図9は、図8のフローチャートに示す修正処理(1)の詳細を示すフローチャートである。
【0080】
図8に示すステップB1~B4は、図3に示すステップA1~A4と同様にして実行される。ただし、第2実施形態における第1手書き文字認識処理では、手書き文字入力領域31aに手書き入力された文字データは、部位ではなく1文字が手書きされたものとして認識処理を実行する。図10(A)は、手書き文字入力領域31aに手書き文字が入力された状態の一例を示す図である。
【0081】
CPU11は、第1手書き文字認識処理による認識結果を手書き文字入力領域31aにおいて表示させる(ステップB5)。なお、第1手書き文字認識処理によって意図した文字が認識結果として手書き文字入力領域31aに表示された場合、認識ボタン32aに対する操作、あるいは後述する部位エリアを選択する操作以外の操作がされることで(ステップB6、No)、手書き文字入力領域31aに表示された文字を文字入力枠30bに表示させる。
【0082】
ここで、メニュー領域32に設けられた修正ボタン32fに対する操作によって文字認識の修正が選択されると(ステップB6、Yes)、CPU11は、図9のフローチャートに示す修正処理(1)を実行する(ステップB7)。
【0083】
CPU11は、修正対象とする部位を選択させるための部位選択画面を表示させる(ステップC1)。例えば、図10(A)に示す手書きされた文字について第1文字認識処理をした結果、図10(B)に示すように、認識結果とする文字が表示されたものとする。
【0084】
CPU11は、認識結果とする文字に部位が設定されている場合には、部位選択画面において、部位毎のエリアを明示して表示させる。図10(B)では、部首「やまいだれ」に相当する部位に対応する部位エリアAR3と、その他の部位エリアAR4が明示されている。
【0085】
ここで、部位エリアAR3,AR4の何れかが例えばペン18の操作によって選択された場合(ステップC2、Yes)、CPU11は、第1実施形態と同様にして、手書き文字入力領域31aにおいて、選択された部位に応じた部位表示を実行させる(ステップC3)。ここでは、修正対象とする部位エリアを選択させるものとする。
【0086】
図10(C)は、図10(B)において部位エリアAR4が選択された場合の部位表示の一例を示している。図10(C)に示すように、選択された部位エリアAR4を表示クリアして、修正のための手書き入力が可能な状態にする。従って、図10(D)に示すように、部位エリアAR4に対して、修正のための手書き入力をすることができる。
【0087】
なお、図9に示すステップC4~C8の処理は、図3に示すステップA9~A13と同様に実行されるものとして詳細な説明を省略する。
【0088】
CPU11は、修正処理(1)によって修正された認識結果を文字入力枠30bに表示させる(ステップB8)。
【0089】
また、前述した説明では、修正対象とする部位エリアを選択させるものとしているが、認識結果として正しい部位が表示された部位エリアを選択させるようにしても良い。すなわち、図10(B)において、部位エリアAR3が選択された場合に、図10(C)に示す部位表示をさせる。
【0090】
このように、第2実施形態の修正処理(1)では、第1文字認識処理によって正しい認識結果とする文字が得られなかった場合に、修正対象とする部位を指定して、修正のための手書き入力をして第2文字認識処理を実行して、意図した文字を入力することができる。従って、修正が必要な場合のみ、追加の手書き入力をすれば良いので、手書きによる文字入力の効率を向上させることができる。
【0091】
次に、修正処理(2)を用いる場合について説明する。図11は、図8のフローチャートに示す修正処理(2)の詳細を示すフローチャートである。
【0092】
図11のステップD1は、図9に示すステップC1と同様に実行されるものとして説明を省略する。図12(A)は、部位選択画面の一例を示している(図10(B)と同じ)。
【0093】
ここで、部位エリアAR3,AR4の何れかが例えばペン18を用いたユーザ操作によって選択された場合(ステップD2、Yes)、CPU11は、第1実施形態と同様にして、手書き文字入力領域31aにおいて、選択された部位に応じた部位表示を実行させると共に、選択された部位に対応する入力済みの文字データ(ストロークデータ)に対して認識処理(第2手書き文字認識処理)を実行して、認識候補を認識候補表示領域31bにおいて一覧表示させる(ステップD3)。ここでは、修正対象とする部位エリアを選択させるものとする。
【0094】
なお、図12(A)に示す部位選択画面において、部位エリアAR3,AR4を選択する操作がされない場合、例えば認識ボタン32aに対する操作、あるいは部位エリアを選択する操作以外の操作がされた場合(ステップD2、No)、CPU11は、修正処理の中止が指示されたものと判別して修正処理を終了し、手書き文字入力領域31aに表示された文字を認識結果として文字入力枠30bに表示させる(ステップB8)。
【0095】
図12(B)は、図12(A)において部位エリアAR4が選択された場合の部位表示の一例を示している。図12(B)に示すように、選択された部位エリアAR4を表示クリアして、修正のための手書き入力が可能な状態にする。従って、前述した修正処理(1)と同様にして、部位エリアAR4に対して、改めて修正のための手書き入力をすることができる。なお、修正のための手書き入力がされた場合の処理、エリアの変更の処理については、前述した修正処理(1)と同様に実行されるものとして説明を省略する。
【0096】
また、認識候補表示領域31bには、選択された部位に対応する複数の認識候補が表示されており、ユーザ操作によって任意に選択することができる。ここで、認識候補表示領域31bに表示された認識候補から何れかを選択するユーザ操作があった場合(ステップD4、Yes)、CPU11は、選択された認識候補を、修正対象とする部位エリアAR4に表示させる(ステップD5)。図12(C)には、認識候補表示領域31bから選択された認識候補31b3が手書き文字入力領域31aの部位エリアAR4に表示された例を示している。
【0097】
ここでは、認識ボタン32aが操作されなければ(ステップD6、No)、前述と同様にして部位を選択して、再度、修正のための手書き入力をすることができる(ステップD2~D5)。また、例えば認識ボタン32aに対する操作によって認識結果を確定する指示が入力された場合(ステップD6、Yes)、CPU11は、修正処理(2)によって修正された認識結果を文字入力枠30bに表示させる(ステップB8)。
【0098】
このように、第2実施形態の修正処理(2)では、第1文字認識処理によって正しい認識結果とする文字が得られなかった場合に、修正対象とする部位を指定して、修正対象とする部位についてのみ第2文字認識処理を実行して、部位に対する第2文字認識処理による認識候補を表示させることができる。そして、第2文字認識処理による認識候補から選択することで、意図した文字を入力することができる。従って、修正が必要な部位を指定し、認識候補から何れかを選択する操作をすれば修正ができるので、手書きによる文字入力の効率を向上させることができる。
【0099】
なお、前述した説明では、日本語における文字を例にして説明しているが、日本語以外の言語、例えば中国語における文字を対象として実施することが可能である。
【0100】
また、実施形態において記載した手法、すなわち図3図8図9図11のフローチャートに示す処理等の各手法は、コンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカード等)、磁気ディスク(フレキシブルディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記録媒体に格納して配布することができる。そして、コンピュータは、記録媒体に記録されたプログラムを読み込み、このプログラムによって動作が制御されることにより、実施形態において説明した機能と同様の処理を実現することができる。
【0101】
また、各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態としてネットワーク(インターネット)上を伝送させることができ、このネットワーク(インターネット)に接続されたコンピュータ(サーバ装置等)からプログラムデータを取り込み、前述した実施形態と同様の機能を実現することもできる。
【0102】
なお、本願発明は、実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【0103】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0104】
[1]複数の文字の一部を構成する部位を記憶する記憶手段と
手書き文字の文字データを入力する入力手段と、
前記文字データをもとに、前記手書き文字に対応する文字の一部を構成する部位について認識する第1手書き文字認識手段と、
前記第1手書き文字認識手段により認識された前記手書き文字に対応する文字の一部の構成と前記記憶手段に記憶されている文字の一部を構成する部位とに基づいて、前記手書き文字に対応する文字の一部の部位を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記文字の一部の部位を含む文字を対象として、前記文字データをもとに、前記手書き文字に対応する文字を認識する第2手書き文字認識手段とを有する文字入力装置。
【0105】
[2]前記第1手書き文字認識手段は、前記文字データから識別される前記部位に相当する部位範囲について認識し、
前記第2手書き文字認識手段は、前記部位範囲に対応する文字データと、前記部位範囲以外において入力される文字データとをもとに、前記手書き文字に対応する文字を認識する請求項1記載の文字入力装置。
【0106】
[3]前記部位範囲を変更する変更手段を更に有し、
前記第2手書き文字認識手段は、前記変更手段により変更された前記部位範囲に対応する文字データと、前記部位範囲以外において入力される文字データとをもとに、前記手書き文字に対応する文字を認識する請求項2記載の文字入力装置。
【0107】
[4]前記第1手書き文字認識手段による認識により得られる複数の認識候補を一覧表示する候補一覧表示手段をさらに有し、
前記第2手書き文字認識手段は、前記一覧表示から認識候補が選択されない場合に、前記部位範囲以外に対応する文字データを入力し、前記手書き文字に対応する文字を認識する請求項2または請求項3記載の文字入力装置。
【0108】
[5]前記第1手書き文字認識手段による認識により得られる複数の部位と同部位を含む文字の認識候補を一覧表示する候補一覧表示手段をさらに有し、
前記第2手書き文字認識手段は、前記一覧表示から部位の認識候補が選択された場合に、前記部位範囲以外に対応する文字データを入力し、前記手書き文字に対応する文字を認識する請求項2または請求項3記載の文字入力装置。
【0109】
[6]手書き文字の第1文字データを入力する入力手段と、
前記第1文字データをもとに、前記手書き文字について認識する第1手書き文字認識手段と、
前記第1手書き文字認識手段により認識された文字から前記文字の一部を構成する部位を選択する部位選択手段と、
前記部位選択手段により選択された前記部位に相当する部位範囲、又は部位範囲以外に対応する第2文字データについての第1文字認識結果と、前記部位選択手段により選択されていない部位範囲以外、又は前記部位に相当する第2文字認識結果とをもとに文字を認識する第2手書き文字認識手段と
を有する文字入力装置。
【0110】
[7]コンピュータに実行させる文字入力方法であって、
手書き文字の文字データを入力し、
前記文字データをもとに、前記手書き文字に対応する文字の一部を構成する部位について認識し、
認識された前記手書き文字に対応する文字の一部の構成と記憶手段に記憶されている文字の一部を構成する部位とに基づいて、前記手書き文字に対応する文字の一部の部位を決定し、
決定された前記文字の一部の部位を含む文字を対象として、前記文字データをもとに、前記手書き文字に対応する文字を認識する文字入力方法。
【0111】
[8]コンピュータを、
複数の文字の一部を構成する部位を記憶させる記憶手段と、
手書き文字の文字データを入力する入力手段と、
前記文字データをもとに、前記手書き文字に対応する文字の一部を構成する部位について認識する第1手書き文字認識手段と、
前記第1手書き文字認識手段により認識された前記手書き文字に対応する文字の一部の構成と前記記憶手段に記憶されている文字の一部を構成する部位とに基づいて、前記手書き文字に対応する文字の一部の部位を決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記文字の一部の部位を含む文字を対象として、前記文字データをもとに、前記手書き文字に対応する文字を認識する第2手書き文字認識手段として機能させるための手書き入力プログラム。
【符号の説明】
【0112】
10…電子辞書、11…CPU、12…メモリ、12a…辞書制御処理プログラム、12b…手書き入力プログラム、12c…辞書データ、12d…手書き文字認識データ、13…記録媒体、14…記録媒体読取部、15…通信部、16…キー入力部、17…タッチパネル式表示部、20…サーバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12