(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】車両用灯具の点灯制御装置及び点灯制御方法、車両用灯具システム
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/34 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
B60Q1/34 A
(21)【出願番号】P 2019178406
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中島 航
(72)【発明者】
【氏名】喜多 靖
(72)【発明者】
【氏名】木村 能子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 功基
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 暁久
(72)【発明者】
【氏名】岡田 英隆
(72)【発明者】
【氏名】大山 修斗
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033981(JP,A)
【文献】特開2005-132256(JP,A)
【文献】特開2005-178775(JP,A)
【文献】特開平07-277071(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0031832(KR,A)
【文献】国際公開第2019/068516(WO,A1)
【文献】特開2015-209105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具の点灯制御を行うための制御装置であって、
前記制御装置は、前記車両用灯具を、一定期間ごとに点灯する期間と消灯する期間を繰り返すように制御するものであり、
前記点灯する期間において、前記制御装置は、前記車両用灯具の発光領域を第1輝度により点灯させるとともに、前記車両用灯具の発光領域の一部領域を点灯させて得られる輝点であって当該第1輝度よりも高い第2輝度である当該輝点を当該発光領域内で所定方向へ順次移動させる制御を行うものであり、
当該制御の際に、前記制御装置は、第1時期の当該第2輝度の前記輝点に対応する前記一部領域である第1領域の一部分であって前記輝点の移動方向側の一部分が、前記第1時期の次の第2時期においても引き続き前記第2輝度の前記輝点に対応する前記一部領域である第2領域の一部分として重複して残る状態となるようにして当該輝点を移動させるものであり、
前記第2領域の他の一部分であって前記輝点の移動方向側の一部分は前記第1輝度から前記第2輝度に変更され、前記第1領域の他の一部分であって前記輝点の移動方向側ではない側の一部分は前記第2輝度から前記第1輝度に戻されるように制御される、
車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項2】
前記発光領域は、複数の発光部を点灯させて形成されており、
前記輝点に対応する
前記一部領域は、前記複数の発光部のうち少なくとも2つの発光部を点灯させて形成されており、
前記第1時期の前記第1領域に対応する前記少なくとも2つの発光部の全数よりも1つ以上少ない数の発光部を前記第2時期においても継続して点灯させることにより、前記第1領域と前記第2領域とを部分的に重複させる、
請求項1に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項3】
前記輝点に対応する前記一部領域は、前記所定方向に沿った少なくとも一方へ向けて徐々に輝度が低くなるような輝度分布を有する、
請求項1又は2に記載の車両用灯具の点灯制御
【請求項4】
前記輝点の移動は、仮現運動となるように制御される、
請求項1~3の何れか1項に記載の車両用灯具の点灯制御装置。
【請求項5】
車両用灯具の点灯制御を行うための制御方法であって、
前記制御方法は、一定期間ごとに点灯する期間と消灯する期間を繰り返すように前記車両用灯具を制御するものであり、
前記点灯する期間において、前記制御方法は、前記車両用灯具の発光領域を第1輝度により点灯させるとともに、前記車両用灯具の発光領域の一部領域を点灯させて得られる輝点であって当該第1輝度よりも高い第2輝度である当該輝点を当該発光領域内で所定方向へ順次移動させる制御を行うものであり、
当該制御の際に
、第1時期の当該第2輝度の前記輝点に対応する前記一部領域である第1領域の一部分であって前記輝点の移動方向側の一部分が、前記第1時期の次の第2時期においても引き続き前記第2輝度の前記輝点に対応する前記一部領域である第2領域の一部分として重複して残る状態となるものであり、
前記第2領域の他の一部分であって前記輝点の移動方向側の一部分は前記第1輝度から前記第2輝度に変更され、前記第1領域の他の一部分であって前記輝点の移動方向側ではない側の一部分は前記第2輝度から前記第1輝度に戻されるように制御される、
車両用灯具の点灯制御方法。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の点灯制御装置と、
前記点灯制御装置によって制御される車両用灯具と、
を含む、車両用灯具システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばターンランプ(方向指示ランプ)として用いられる車両用灯具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に用いられるターンランプの一種として、複数の発光部が時間差で順次点灯するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような点灯方法をここではシーケンシャルウインカーという。このようなシーケンシャルウインカーを行う車両用灯具は、例えば、車両の内側から外側へ向かって各発光部が順次点灯した後に全ての発光部が同時に消灯するという動作を繰り返すように制御される。
【0003】
上記のようなシーケンシャルウインカーを行う車両用灯具において、あるタイミングで点灯する領域(輝点)のサイズを大きくしてその視認性をより高めようとする場合を考える。この場合、例えば、所定タイミング毎に複数の発光部を同時に点灯させるようにし、あるいは各発光部のサイズそのものを大きくすることが考えられる。しかしながら、ターンランプを設置できる場所の幅には限度があるので、ターンランプの一端から他端までの間で形成できる輝点の数をそれほど多くすることはできない。このため、例えば輝点を比較的速く移動させた場合には輝点の移動がすぐに終わってしまい、シーケンシャルウインカーとしては違和感を生じさせ得る。他方で、例えば輝点を比較的遅く移動させた場合には、輝点の移動がすぐに終わることはないが当該移動が滑らかにはならないため、やはりシーケンシャルウインカーとしては違和感を生じさせ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る具体的態様は、シーケンシャルウインカーを行う際における違和感を軽減することが可能な技術を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る一態様の車両用灯具の点灯制御装置は、
車両用灯具の点灯制御を行うための制御装置であって、
前記制御装置は、前記車両用灯具を、一定期間ごとに点灯する期間と消灯する期間を繰り返すように制御するものであり、
前記点灯する期間において、前記制御装置は、前記車両用灯具の発光領域を第1輝度により点灯させるとともに、前記車両用灯具の発光領域の一部領域を点灯させて得られる輝点であって当該第1輝度よりも高い第2輝度である当該輝点を当該発光領域内で所定方向へ順次移動させる制御を行うものであり、
当該制御の際に、前記制御装置は、第1時期の当該第2輝度の前記輝点に対応する前記一部領域である第1領域の一部分であって前記輝点の移動方向側の一部分が、前記第1時期の次の第2時期においても引き続き前記第2輝度の前記輝点に対応する前記一部領域である第2領域の一部分として重複して残る状態となるものであり、
前記第2領域の他の一部分であって前記輝点の移動方向側の一部分は前記第1輝度から前記第2輝度に変更され、前記第1領域の他の一部分であって前記輝点の移動方向側ではない側の一部分は前記第2輝度から前記第1輝度に戻されるように制御される、
車両用灯具の点灯制御装置である。
[2]本発明に係る一態様の車両用灯具の点灯制御方法は、
車両用灯具の点灯制御を行うための制御方法であって、
前記制御方法は、一定期間ごとに点灯する期間と消灯する期間を繰り返すように前記車両用灯具を制御するものであり、
前記点灯する期間において、前記制御方法は、前記車両用灯具の発光領域を第1輝度により点灯させるとともに、前記車両用灯具の発光領域の一部領域を点灯させて得られる輝点であって当該第1輝度よりも高い第2輝度である当該輝点を当該発光領域内で所定方向へ順次移動させる制御を行うものであり、
当該制御の際に、第1時期の当該第2輝度の前記輝点に対応する前記一部領域である第1領域の一部分であって前記輝点の移動方向側の一部分が、前記第1時期の次の第2時期においても引き続き前記第2輝度の前記輝点に対応する前記一部領域である第2領域の一部分として重複して残る状態とものであり、
前記第2領域の他の一部分であって前記輝点の移動方向側の一部分は前記第1輝度から前記第2輝度に変更され、前記第1領域の他の一部分であって前記輝点の移動方向側ではない側の一部分は前記第2輝度から前記第1輝度に戻されるように制御される、
車両用灯具の点灯制御方法である。
[3]本発明に係る一態様の車両用灯具システムは、上記点灯制御装置と、この点灯制御装置によって制御される車両用灯具と、を含む、車両用灯具システムである。
【0007】
上記構成によれば、シーケンシャルウインカーを行う際における違和感を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の車両用灯具システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ランプユニットの外観上の構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の車両用灯具システムの動作状態を説明するための図である。
【
図4】
図4(A)~
図4(D)は、ランプユニットの各発光部に対応するLEDの駆動電流波形を示すタイミングチャートである。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)は、車両用灯具システムの他の動作状態を説明するための図である。
【
図6】
図6(A)~
図6(D)は、車両用灯具システムの他の動作状態を説明するための図である。
【
図7】
図7は、変形例の車両用灯具システムの動作状態を説明するための図である。
【
図8】
図8(A)~
図8(D)は、暗点を移動させる変形例におけるランプユニットの各発光部に対応するLEDの駆動電流波形を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、一実施形態の車両用灯具システムの構成を示すブロック図である。図示の車両用灯具システムは、例えば方向指示ランプ(ターンランプ)として用いられるものであり、制御装置1と、この制御装置1によって動作を制御される一対のランプユニット(車両用灯具)2L、2Rを含んで構成されている。
【0010】
制御装置1は、車両から方向指示器が操作されたことを示すターン信号が入力されると、そのターン信号に応じてランプユニット2L、2Rの何れかの点灯状態を制御して、車両の進行方向を示すための光を照射させる。
【0011】
一対のランプユニット2L、2Rは、それぞれ駆動回路20、LEDアレイ21を含んで構成されている。ランプユニット2Lは、車両前部の左側に設置される。ランプユニット2Rは、車両前部の右側に設置される。なお、同様にして一対のランプユニットが車両後部の左右それぞれに設置されてもよい。説明を簡単にするため、本実施形態では車両前部に設置される一対のランプユニット2L、2Rのみを考える。
【0012】
駆動回路20は、LEDアレイ21に含まれる各LED(発光素子)に駆動電力を供給して、各LEDを点消灯させる。
【0013】
LEDアレイ21は、複数のLEDを有しており、駆動回路20から与えられる駆動電力によって各LEDを発光させる。
【0014】
図2は、ランプユニットの外観上の構成を示す平面図である。ここではランプユニット2Lについて示しているが、ランプユニット2Rについても左右対称で同様の構成を有している。図示のようにランプユニット2Lは、車両内側(中心側)から車両外側にかけて配列された複数(図示の例では18個)の発光部22を備えている。各発光部22は、それぞれLEDアレイ21に含まれる1ないし複数のLEDが対応付けられており、駆動回路20の制御によりそれぞれ個別に点消灯させることができるとともにその明るさ(輝度)を自在に設定することができる。なお、以下では説明の便宜上、各発光部22に対して1つずつのLEDが対応付けられているものとする。
【0015】
図3は、本実施形態の車両用灯具システムの動作状態を説明するための図である。ここではランプユニット2Lについて説明するがランプユニット2Rについても左右対称で同様に動作する。
【0016】
ターン信号が入力されると、時刻t1においてランプユニット2Lの各発光部22のうち車両内側から2つの発光部22を除く各発光部22に対応する各LEDが定格電流により駆動され、各発光部22からは第1輝度で光が放出される。なお、各発光部22において対応するLEDの輝度にバラツキが生じ得るので、上記した「第1輝度」とは必ずしも一定値である必要はなく、例えば±10%程度の誤差範囲内に入る輝度であればよい。
【0017】
上記の時刻t1において、内側から2つの発光部22に対応するLEDが一時的に定格電流よりも高い電流で駆動され、これらの発光部22からは第1輝度よりも高い第2輝度で光が放出される。これにより、車両内側の2つの発光部22に対応する箇所に他の発光部22よりも輝度の高い一部領域である輝点が形成される。
【0018】
次の時刻t2においては、内側の1つの発光部22に対応するLEDの駆動電流は定格電流に戻され、当該発光部22からは第1輝度で光が放出される。また、この時刻t2において、内側から2番目の発光部22に対応するLEDの駆動電流は定格電流よりも高い電流で駆動されたまま維持され、さらに内側から3番目の発光部22に対応するLEDの駆動電流も一時的に定格電流よりも高い電流で駆動される。それにより、これら2つの発光部22からは第1輝度よりも高い第2輝度で光が放出される。これにより、車両の内側から2番目と3番目の各発光部22に対応する箇所に他の発光部22よりも輝度の高い一部領域である輝点が形成される。
【0019】
時刻t3、t4・・・t9においても同様にして、定格電流よりも高い電流で駆動される2つの発光部22が順次切り替えられる。それにより、図示のように第2輝度で光が放出されることにより形成される輝点が車両内側から車両外側へ向かって順次移動する。そして、輝点移動の際には、ある第1時期(例えばt1~t2間)における輝点に対応する領域(第1領域)の一部分、詳細には輝点の移動方向側の一部分が、次の第2時期(例えばt2~t3)においても引き続き輝点に対応する領域(第2領域)の一部分として重複して残る状態となる。本実施形態では、輝点の一部分は1つの発光部22に対応する領域となる。このように輝点の一部分を次の時刻まで残存させながら輝点を仮現運動させることにより、輝点のサイズを比較的に大きくすることができるとともにその移動を滑らかにすることができる。その後、時刻t19以降の一定期間において全ての発光部22が消灯する。消灯期間が経過した後、次の周期が開始し、時刻t1以降の動作が繰り返される。
【0020】
ランプユニット2Lの各発光部22は時刻t1から時刻t18の間で全体としては第1輝度によって光を放出する状態を維持する。以降、この状態をベース点灯という。このように各発光部22がベース点灯した状況において、第2輝度で点灯して光を放出する2つの発光部22が一部重複しながら順次切り替えられることにより輝点が順次移動する。時刻t19以降の一定期間は全発光部22が消灯する。これらの動作が組み合わされることにより、ランプユニット2Lは、全体として一定期間ごとに点滅(点灯と消灯)を繰り返しつつ、その点灯する期間内において輝点が車両内側から車両外側へ移動するように動作する。すなわち、従前からの単純な点滅による方向指示に対してシーケンシャルウインカーが重畳された方向指示の表示を実現することができる。
【0021】
なお、ターン信号ではなくハザード信号が与えられた場合には、ランプユニット2L、2Rを上記の制御方法によって同時に動作させればよい。
【0022】
図4(A)~
図4(D)は、ランプユニットの各発光部に対応するLEDの駆動電流波形を示すタイミングチャートである。ここでもランプユニット2Lに対する駆動電流について説明するがランプユニット2Rでも同様である。
図4(A)は、最も内側の発光部22に対応するLEDの駆動電流波形であり、
図4(B)は、内側から2番目の発光部22に対応するLEDの駆動電流波形であり、
図4(C)は、内側から3番目の発光部22に対応するLEDの駆動電流波形であり、
図4(D)は、最も外側の発光部22に対応するLEDの駆動電流波形である。
【0023】
図4(A)に示すように、時刻t1において、最も内側の発光部22に対応するLEDの駆動電流が定格電流よりも高く設定され、時刻t2までこの状態が維持され、その後駆動電流が定格電流に戻される。これにより、時刻t1からt2までの期間において当該発光部22に対応する領域から放射される光が第2輝度となり、この領域に輝点が形成される。また、
図4(B)に示すように、時刻t1において、内側から2番目の発光部22に対応するLEDの駆動電流が定格電流よりも高く設定され、時刻t3までこの状態が維持され、その後駆動電流が定格電流に戻される。これにより、時刻t1からt3までの期間において当該発光部22に対応する領域から放射される光が第2輝度となり、この領域に輝点が形成される。これらの輝点が合成されることで、時刻t1からt2の間において2つの発光部22に対応するサイズの輝点が形成される(
図3参照)。このとき、
図4(A)~
図4(D)に示すように、他の発光部22に対応するLEDの駆動電流は定格電流に設定されているので、他の発光部22に対応する各発光領域から放射される光は第1輝度となる(ベース点灯)。
【0024】
上記のように時刻t1からt3までの期間において、内側から2番目の発光部22に対応する領域から放射される光が第2輝度となり、この領域に輝点が形成される。また、
図4(C)に示すように、時刻t2において、内側から3番目の発光部22に対応するLEDの駆動電流が定格電流よりも高く設定され、時刻t4までこの状態が維持され、その後駆動電流が定格電流に戻される。これにより、時刻t2からt4までの期間において当該発光部22に対応する領域から放射される光が第2輝度となり、この領域に輝点が形成される。これらの輝点が合成されることで、時刻t2からt3の間において2つの発光部22に対応するサイズの輝点が形成される(
図3参照)。このとき、
図4(A)~
図4(D)に示すように、他の発光部22に対応するLEDの駆動電流は定格電流に設定されているので、他の発光部22に対応する各発光領域から放射される光は第1輝度となる(ベース点灯)。
【0025】
以降の時刻においても同様に駆動電流が供給される。そして、
図4(D)に示すように、時刻t17において、最も外側の発光部22に対応するLEDの駆動電流が定格電流よりも高く設定され、時刻t19までこの状態が維持され、その後駆動電流が定格電流に戻される。これにより、時刻17からt19までの期間において当該発光部22に対応する領域から放射される光が第2輝度となり、この領域に輝点が形成される(
図3参照)。このとき、時刻t17からt18までの間においては左隣の発光部22に対応する領域から放射される光も第2輝度となり、この間は輝点のサイズが2つの発光部22に対応する大きさとなる。また、
図4(A)~
図4(D)に示すように、他の発光部22に対応するLEDの駆動電流は定格電流に設定されているので、他の発光部22に対応する各発光領域から放射される光は第1輝度となる(ベース点灯)。
【0026】
その後、時刻t19においていずれの発光部22に対する駆動電流もオフとされ、各発光部22が消灯の状態となる。この消灯期間は、例えば時刻t1から時刻t19までの期間と同じ長さに設定される。なお、ある時刻(例えば時刻t1)から次の時刻(例えば時刻t2)までの間の長さは、例えば35m秒程度に設定することが好適である。
【0027】
制御装置1の制御に基づき駆動回路20からLEDアレイ21へ上記のような駆動電流を供給することにより、
図3に示した従前からの単純な点滅による方向指示に対してシーケンシャルウインカーが重畳された方向指示の表示を実現することができる。
【0028】
図5(A)、
図5(B)は、車両用灯具システムの他の動作状態を説明するための図である。上記した
図3に示した例では2つの発光部22を同時に第2輝度で点灯させて輝点を形成するようにしていたが、より多くの発光部22を同時に点灯させて輝点を形成してもよい。例えば
図5(A)に示す例では3つの発光部22が同時に点灯して輝点を形成しており、時間経過に伴って左側の1つの発光部22が消灯し、代わりに右側の1つの発光部22が点灯する。これにより、輝点における2つの発光部22に対応する領域が当該輝点の移動の前後において重複することになる。同様に、
図5(B)に示す例では、3つの発光部22が同時に点灯して輝点を形成しており、時間経過に伴って左側の2つの発光部22が消灯し、代わりに右側の2つの発光部22が点灯する。これにより、輝点における1つの発光部22に対応する領域が当該輝点の移動の前後において重複することになる。すなわち、輝点に対応する発光部22の全数より1つ以上少ない数の発光部22を継続して点灯させることにより、輝点の移動の前後において重複する領域を設けることができる。このような態様によれば、輝点の移動の滑らかさを保ちつつそのサイズをより大きくすることができる。
【0029】
図6(A)~
図6(D)は、車両用灯具システムの他の動作状態を説明するための図である。ここでは縦軸を輝度、横軸をランプユニット2Lの左右方向位置に対応付けて、各発光部22から放出される光の輝度分布を示している。上記した実施形態では、
図6(A)に示すようにベース点灯に対応する第1輝度の領域の一部が輝点に対応する第2輝度の領域となっている。これに対して、例えば
図6(B)に示すように、第2輝度の領域から第1輝度の領域へ戻す前に、それらの中間的な大きさの輝度とする領域を設けてもよい。図示の例では第2輝度から第1輝度へ戻す間に2段階の輝度を設けているが1段階としてもよいし、3段階以上としてもよい。同様に、例えば
図6(C)に示すように、第1輝度の領域から第2輝度の領域へ変化させる前に、それらの中間的な大きさの輝度とする領域を設けてもよい。図示の例では第1輝度から第2輝度へ変化させる間に2段階の輝度を設けているが1段階としてもよいし、3段階以上としてもよい。また、
図6(D)に示すように、第2輝度の領域の前後にそれぞれ段階的な輝度の領域を設けてもよい。これらの制御は、各領域の発光部22に対応するLEDに対する駆動電流を増減させることで実現することができる。このように、輝点に対応する領域に対して輝点の移動方向と同方向および逆方向の少なくとも一方または両方に向けて徐々に輝度が低くなるような輝度分布を持たせることで、第1輝度と第2輝度の間の急激な輝度変化を緩和してより滑らかな輝度変化を得ることができる。特に
図6(D)のような態様とすることで輝度の変化が波のように滑らかなものとなる。
【0030】
なお、これまでの説明では、車幅方向に配列された複数の発光部を例示しているが各発光部の配列方向はこれに限られない。例えば、各発光部が車両下側から車両上側へ向かって配列されていてもよいし、斜め方向に配列されていてもよいし、それら複数の配列方向を組み合わせて配列されていてもよい。これらによれば、輝点を車両下側から車両上側へ向かって移動させることや、輝点を斜め方向に移動させることや、それら複数の移動方向を組み合わせて輝点を移動させることができる。また、各発光部の形状、面積は必ずしも同一でなくてもよい。
【0031】
以上のような実施形態によれば、単純な点滅による方向指示に対してシーケンシャルウインカーが重畳された方向指示の表示を実現し、かつその際の輝点のサイズを比較的大きくしつつ移動も滑らかにすることができるので、シーケンシャルウインカーを行う際における違和感を軽減することが可能となる。
【0032】
また、輝点の移動はいわゆる仮現運動となるので、ベース点灯の領域に対してそれほど大きく輝度を上げなくても方向指示表示に対する気づきや目立ちをより高めることができる。すなわち、それほど駆動電流を大きくすることなく輝度の視認性を高めることができる。さらに、輝点が移動することで全ての視認角度からの瞬間的な気づきを高め、印象の良い新規見栄えを実現できる。
【0033】
また、輝点に対応する領域以外の領域を全てベース点灯として同時期に点灯させるので、従前のシーケンシャルウインカーに比べて配光範囲の全ての視認角度で瞬時に点灯を確認することができる。このため、例えばランプユニットの一部が遮蔽物(例えば二輪車)によって遮蔽されていたとしてもターンランプを容易に確認することができる。
【0034】
また、ベース点灯の領域は全体として点消灯するので、各発光部を含む全体が1つのグループとして認識される。これはゲシュタルト心理学でいうところの共通運命の法則によるものである。このグループとして認識される領域中で輝点の移動(仮現運動)を行わせるので、輝点の動きがグループ全体の点滅の認識を妨げることがない。
【0035】
なお、本発明は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態ではベース点灯における立ち上がり時期と最初の輝点の立ち上がり時期が同時期となっていたが両者が異なる時期であってもよい。同様に、ベース点灯における立ち下がり時期と最後の輝点の立ち下がり時期が同時期となっていたが両者が異なる時期であってもよい。また、輝点移動の繰り返し周期と、ベース点灯の繰り返し周期とが同じでなくてもよい。
【0036】
また、輝点の移動の速さは一定でなくてもよく、例えば徐々に速くなってもよいし、徐々に遅くなってもよいし、不規則に変化してもよい。また、ある時期に形成される輝点の数も1つに限られず、2つ以上の輝点が同じ時期に形成されて移動してもよい。また、輝点の面積や形状は必ずしも一定でなくてもよく、例えば徐々に面積が大きくなってもよいし、徐々に面積が小さくなってもよいし、面積や形状が不規則に変化してもよい。
【0037】
また、上記した実施形態ではベース点灯の発光領域中で輝点を移動させる場合について説明していたが、同様の制御により輝点に代えて暗点を移動させてもよい。
【0038】
図7は、変形例の車両用灯具システムの動作状態を説明するための図である。図示の例のように、上記した実施形態における輝点に代えて暗点(第1輝度より低い第3輝度の領域)が時間経過とともに順次移動するように制御されている。その際、暗点の一部分が重複しながら移動するように制御されている。
【0039】
図8(A)~
図8(D)は、暗点を移動させる変形例におけるランプユニットの各発光部に対応するLEDの駆動電流波形を示すタイミングチャートである。
図8(A)は、最も内側の発光部22に対応するLEDの駆動電流波形であり、
図8(B)は、内側から2番目の発光部22に対応するLEDの駆動電流波形であり、
図8(C)は、内側から3番目の発光部22に対応するLEDの駆動電流波形であり、
図8(D)は、最も外側の発光部22に対応するLEDの駆動電流波形である。各図に示すように、輝点の場合には駆動電流が定格電流よりも大きく設定されていたのに対して、暗点の場合は逆に駆動電流を一時的に定格電流よりも小さく設定している。図示の例では消灯の場合と同じ大きさの駆動電流としているが、異なる大きさとしてもよい。
【0040】
制御装置1の制御に基づき駆動回路20からLEDアレイ21へ上記のような駆動電流を供給することにより、
図7に示した従前からの単純な点滅による方向指示に対して、輝点に代えて暗点を移動させるシーケンシャルウインカーが重畳された方向指示の表示を実現し、かつその際の輝点のサイズを比較的大きくしつつ移動も滑らかにすることができる。
【0041】
また、上記した実施形態ではターンランプとして用いられる車両用灯具システムに本発明を適用した場合を例示していたが本発明の適用範囲はこれに限定されず、車両に搭載されてその周辺へ光照射を行う種々の車両用灯具システムに対して本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1:制御装置、2L、2R:ランプユニット(車両用灯具)、20:駆動回路、21:LEDアレイ、22:発光部