(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】機械加工工程中の物質の輪郭シートの支持
(51)【国際特許分類】
B23B 35/00 20060101AFI20240705BHJP
B26F 1/16 20060101ALI20240705BHJP
B26D 7/20 20060101ALI20240705BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20240705BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20240705BHJP
B64F 5/10 20170101ALI20240705BHJP
【FI】
B23B35/00
B26F1/16
B26D7/20
B23Q3/08 A
B64C1/00 A
B64F5/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019227505
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・オゾグ
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-087131(JP,A)
【文献】特開2014-072510(JP,A)
【文献】特開昭62-015041(JP,A)
【文献】特開2012-135838(JP,A)
【文献】米国特許第02756644(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/00- 3/154
B23B35/00-49/06
B26D 7/00-11/00
B64F 5/10
B64C 1/00
B26F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート(104)に対する機械加工工程(106)後のシート(104)のスプリングバックを低減する方法(700、900)であって、
機械加工支持体(102)の支持表面(114)に対してシート(104)の第二表面(150)を保持するように機械加工支持体(102)の多孔質物質(110)を真空(122)に引くこと(704、902)であって、前記機械加工支持体(102)の多孔質物質(110)の支持表面(114)以外の各表面がシールされている、こと(704、902)と、
前記第二表面(150)に対向するシート(104)の第一表面(152)に機械加工工程(106)を行う間に前記多孔質物質(110)の中に真空(122)を維持すること(708、904)と、を備
え、
前記機械加工工程(106)を行うこと(706、904)が、前記シート(104)の第一表面(152)に機械加工工程(106)を行うこと(706、904)につれて前記機械加工支持体(102)の支持表面(114)に凹み(126)を機械加工すること(718、908)を更に備え、
前記支持表面(114)の各凹み(126)の中にシーリング材(134)を適用すること(714、910)を更に備える方法(700、900)。
【請求項2】
シート(104)に対する機械加工工程(106)後のシート(104)のスプリングバックを低減する方法(700)であって、
機械加工支持体(102)の支持表面(114)に接触してシート(104)の第二表面(150)を配置すること(702)であって、前記機械加工支持体(102)が、前記支持表面(114)以外の機械加工支持体(102)の各表面がシールされた多孔質物質(110)を備える、こと(702)と、
前記支持表面(114)に対して前記第二表面(150)を保持するように前記多孔質物質(110)を真空(122)に引くこと(704)と、
前記第二表面(150)に対向するシート(104)の第一表面(152)に機械加工工程(106)を行うこと(706)と、
前記機械加工工程(106)を行う間に前記多孔質物質(110)の中に真空(122)を維持すること(708)と、を備
え、
前記機械加工工程(106)を行うこと(706、904)が、前記シート(104)の第一表面(152)に機械加工工程(106)を行うこと(706、904)につれて前記機械加工支持体(102)の支持表面(114)に凹み(126)を機械加工すること(718、908)を更に備え、
前記支持表面(114)の各凹み(126)の中にシーリング材(134)を適用すること(714、910)を更に備える方法(700)。
【請求項3】
前記機械加工支持体(102)の多孔質物質(110)から真空(122)を解放すること(722)と、
前記真空(122)を解放すること(722)の後に、前記機械加工工程(106)によって形成された特徴部(128)を有するシート(104)を前記機械加工支持体(102)から取り外すこと(724)と、
前記支持表面(114)に対して第二シートを保持するように前記多孔質物質(110)を真空(122)に引くこと(726)と、
前記多孔質物質(110)の中に真空(122)を維持しながら前記第二シートに対して機械加工工程(106)を行うこと(728)と、を更に備える請求項1
又は2に記載の方法(700)。
【請求項4】
前記機械加工工程(106)を行うこと(706、904)が、特徴部(128)が前記シート(104)に形成されるにつれて前記機械加工支持体(102)の支持表面(114)に凹み(126)を機械加工すること(718、908)を備え、
前記方法(700)が、前記支持表面(114)に対して第二シートを保持するように前記多孔質物質(110)を真空(122)に引くことの前に、前記支持表面(114)の各凹み(126)の中にシーリング材(134)を適用すること(720)を更に備える、請求項
3に記載の方法(700、900)。
【請求項5】
前記シート(104)に対して前記機械加工工程(106)が行われる間に前記多孔質物質(110)の支持表面(114)に対して前記第二表面(150)を保持するために前記シート(104)の第二表面(150)にわたる圧力差を維持するように前記多孔質物質(110)に与えられる真空(122)を調整すること(716、906)を更に備える請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法(700、900)。
【請求項6】
前記第一表面(152)に機械加工工程(106)を行うこと(706)が、前記シート(104)に穴(130)を開けること(710)を備える、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法(700)。
【請求項7】
シート(104)に対する機械加工工程(106)後のシート(104)のスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体(102)であって、
前記シート(104)に接触して支持するように構成された輪郭(116)を有する支持表面(114)を含む複数の表面(112)を有する多孔質物質(110)と、
前記支持表面(114)以外の前記複数の表面(112)の各々を覆うシーリング材(118)と、
前記多孔質物質(110)を真空(122)にするように構成された真空ポート(120)と、
前記支持表面(114)の凹み(126)と、
各凹み(126)の中のシーリング材(134)と、を備
え、
前記凹み(126)が前記シート(104)に対する機械加工工程(106)の位置に対応する、機械加工支持体(102)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概してシートの機械加工工程に係り、特に機械加工工程中の物質のシートの支持に関する。
【背景技術】
【0002】
シート状部品の製造においては、穴開けや切削等の機械加工工程が、予め形成された物質シートに対して行われ得る。シートの支持されていない部分に対するドリルビットからの初期の機械加工の力と、その結果としてのシートのスプリングバックが、あまり望ましくない穴の質をもたらし得る。ドリルビットからの初期の機械加工の力と、その結果としてのシートのスプリングバックは、ドリルビットに望ましくない影響を与え得て、ドリルビットを破壊する可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、上記問題の少なくとも一部、また他の想定される問題を考慮した方法及び装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の例示的な実施形態は、シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減する方法を提供する。機械加工支持体の支持表面に対してシートの第二表面を保持するように機械加工支持体の多孔質物質を真空に引くが、その機械加工支持体の多孔質物質は、支持表面以外の各表面がシールされたものである。第二表面に対向するシートの第一表面に機械加工工程を行う間に多孔質物質の中に真空を維持する。
【0005】
本開示の他の例示的な実施形態は、シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減する方法を提供する。機械加工支持体の支持表面と接触してシートの第二表面を配置するが、その機械加工支持体は、支持表面以外の機械加工支持体の各表面がシールされた多孔質物質を備える。支持表面に対して第二表面を保持するように多孔質物質を真空に引く。第二表面に対向するシートの第一表面に機械加工工程が行われる。機械加工工程を行う間に多孔質物質の中に真空を維持する。
【0006】
本開示の更に他の例示的な実施形態は、シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体を提供する。機械加工支持体は、シートに接触して支持するように構成された輪郭を有する支持表面を含む複数の表面を有する多孔質物質と、支持表面以外の複数の表面の各々を覆うシーリング材と、多孔質物質に真空を与えるように構成された真空ポートと、を備える。
【0007】
本開示の更なる例示的な実施形態は、シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体を形成する方法を提供する。シートに接触して支持するように構成された輪郭を有する支持表面を含む複数の表面を形成するように多孔質物質が成形される。支持表面以外の複数の表面の各々にシーリング材が適用される。
【0008】
特徴及び利点は本開示の多様な実施形態において独立して達成可能であり、又は、更に他の実施形態において組み合わせ可能でもあり、それらの更なる詳細は以下の説明及び図面を参照して理解可能なものである。
【0009】
例示的な実施形態の新規であると考えられる特徴が添付の特許請求の範囲に与えられている。しかしながら、例示的な実施形態、好ましい使用形態、更なる課題及び特徴は、添付図面と共に本開示の例示的な実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって、最も良く理解されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】例示的な実施形態に従って利用される製造環境における機械加工工程後のスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体のブロック図の例示である。
【
図2】例示的な実施形態に係る機械加工工程後のスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体上のシートの断面図の例示である。
【
図3】例示的な実施形態に係るシートに機械加工工程が行われた後の機械加工支持体上のシートの断面図の例示である。
【
図4】例示的な実施形態に係る支持表面の特徴部を有する機械加工支持体の断面図の例示である。
【
図5】例示的な実施形態に係る機械加工支持体によって支持されたシートの機械加工工程中の機械加工支持体の一部の断面図の例示である。
【
図6】例示的な実施形態に係る機械加工支持体によって支持されたシートの機械加工工程中の機械加工支持体の一部の断面図の例示である。
【
図7A】例示的な実施形態に係るシートの機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するための方法のフローチャートの例示である。
【
図7B】例示的な実施形態に係るシートの機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するための方法のフローチャートの例示である。
【
図8】例示的な実施形態に係るシートの機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体の形成方法のフローチャートの例示である。
【
図9】例示的な実施形態に係るシートの機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するための方法のフローチャートの例示である。
【
図10】例示的な実施形態に係る航空機の製造と保守点検方法のブロック図の形式での例示である。
【
図11】例示的な実施形態が実施され得る航空機のブロック図の形式での例示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
例示的な実施形態は一つ以上の異なる検討事項を認識して考慮しているものである。例示的な実施形態は、シートを機械加工する前に、シートがバッキングプレート型の支持ツールに保持されることを認識して考慮しているものである。シートはその周縁において保持されて、その保持が加工の妨げとならないようにシートの残りの部分は保持されていないことが多い。シートの周縁が保持されながら、シートの残りの部分は曲がって、シートの部分が支持ツールの支持表面と接触しなくなるようになり得る。支持表面と接触していないシートの部分は支持されていない。シートの周縁が支持ツールに対して保持されながら、シートの部分に機械加工工程が行われる。機械加工されるシートの部分は、支持ツールに接触せず、支持されていないものとなり得る。
【0012】
例示的な実施形態は、シートの支持されていない部分に対して機械加工工程を行うことがスプリングバックをもたらすことを認識して考慮しているものである。例えば、従来のドリルシステムを用いて穴を開ける場合、ドリルビットがシートの支持されていない表面とまず接触して、シートに圧力を印加する。ドリルビットから印加される圧力(機械加工の力)は、シートを貫通する前に支持ツールに対してシートを圧縮させる。シートを完全に貫通すると、弾性エネルギーが、シートをその自由状態に急速にスプリングバックさせる。このシートのスプリングバックは制御不能である。
【0013】
シートは、ドリルビットの機械加工の力によって機械加工工程中に支持ツールの方向に押される。ドリルビットがシートを貫通した後は、シートはドリルビットが押す機械加工の力を最早受けず、シートが元の位置にスプリングバックする。
【0014】
例えば、例示的な実施形態は、支持ツールが望ましくはシートの形状に合うことを認識して考慮しているものである。例示的な実施形態は、支持ツールが、その支持ツール全体にわたってはシートの形状に正確に合わなくなり得ることを認識して考慮しているものである。例示的な実施形態は、支持ツールの支持表面がシートを支持するために非平坦となり得ることを認識して考慮しているものである。例示的な実施形態は、支持ツール上にシートを保持することが、支持表面とシートとの間の隙間をもたらし得ることを認識して考慮しているものである。
【0015】
例示的な実施形態は、支持ツールの支持表面がシートを支持するために非平坦となり得ることを認識して考慮しているものである。例示的な実施形態は、支持ツールの支持表面がシートを支持するために凹み得ることを認識して考慮しているものである。支持表面が凹んでいる場合、シートの周縁の保持はシートの残りの部分を屈曲させて、シートの部分が支持ツールの支持表面と接触しなくなることを認識して考慮しているものである。例示的な実施形態は、シートの形状と支持ツールの形状の組み合わせが、シートと支持ツールとの間に隙間を生じさせ得ることを認識して考慮しているものである。例示的な実施形態は、潜在的なスプリングバックのエネルギーがシートに存在している場合であっても隙間が生じ得ることを認識して考慮しているものである。
【0016】
また、例示的な実施形態は、物質のシートのスプリングバックを低減するために、シートと支持ツールとの間の接触を増やし得ることを認識して考慮しているものである。シートのスプリングバックは、シートから力が取り除かれた際にシートが元の形状に戻ることである。シートとツールとの間の接触を維持することによって、機械加工工程後のシートのスプリングバックが低減又は排除される。シートとツールとの間の接触を維持することによって、シートに機械加工の力が印加される前及び間において、シートが元の形状を実質的に維持する。シートとツールとの間の接触を維持することによって、機械加工工程が完了した後に、シートが支持ツールから外されるまで、シートのスプリングバックが抑制される。
【0017】
例示的な実施形態は、シートの支持されていない部分に機械加工工程を行うことが、機械加工工程にとって望ましくない配置をもたらし得ることを認識して考慮しているものである。例示的な実施形態は、機械加工工程中に形成される特徴部の望ましい位置決めのためにシートが支持表面に接触することが望ましくなり得ることを認識して考慮しているものである。
【0018】
また、例示的な実施形態は、スプリングバックを低減するために、一時的な接着剤を用いて物質のシートを支持ツールに留め得ることを認識して考慮しているものである。しかしながら、接着剤の残留物がドリルビット等の機械加工ツールに移り得る。機械加工ツール上の接着剤の残留物は、機械加工ツールの寿命と製造される部品の品質との少なくとも一方に望ましくない影響を与え得る。例えば、接着剤の残留物は、製造された部品に開けられた穴の質に望ましくない影響を与え得る。例示的な実施形態は、接着剤を適用することが製造プロセスの時間とコストを追加することを認識して考慮しているものである。
【0019】
更に、物質のシートを支持ツールに保持するために用いられる接着剤は、シートの物質と支持ツールの物質の種類に応じて接触目的用に適格化される。シートの物質又は支持ツールの物質のいずれかを損傷させる接着剤の使用は望ましくない。シートの物質に応じて、適格な接着剤の量が制限され得る。
【0020】
一部の製造工程では、シートを真空にして、支持ツールに対してシートを保持する。しかしながら、周縁に真空チャネルを有する従来の真空プレートは、機械加工工程が行われるシートの中心を真空にしない。穿孔プロセス等の機械加工工程は、機械加工工程の領域に真空チャネルを有する従来の真空プレートの有効性を損なう。
【0021】
例示的な実施形態は、スプリングバックを低減することを意図した従来の方法が、支持ツールに対してシートを保持する方法を含むことを認識して考慮しているものである。スプリングバックを低減することを意図した従来の方法は、シートの周縁でシートの支持表面を増やす方法を含む。
【0022】
例示的な実施形態は、機械加工工程におけるスプリングバックを低減するための機械加工支持体及び方法を提供する。例示的な実施形態は、多孔質物質で形成された機械加工支持体を用いてシートを支持する。真空を用いて支持表面に対してシートを保持することによって、機械加工工程後のシートのスプリングバックが低減又は排除される。
【0023】
以下
図1を参照すると、例示的な実施形態に係る製造環境における機械加工工程後のスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体のブロック図の例示が示されている。製造環境100は、機械加工ツール108によってシート104に機械加工工程106が行われている間においてシート104を支持するための機械加工支持体102を有する。
【0024】
機械加工支持体102は、シート104の機械加工工程106後のシート104のスプリングバックを低減するように構成される。機械加工支持体102は、シート104と接触して支持するように構成された輪郭116を有する支持表面114を含む複数の表面112を有する多孔質物質110と、支持表面114以外の複数の表面112の各々を覆うシーリング材118と、多孔質物質110に真空122を与えるように構成された真空ポート120とを備える。
【0025】
外面124上のシーリング材118は、外面124から真空122が抜けることを防止する。真空122は、支持表面114に対してシート104を保持するための支持表面114から抜ける。
【0026】
一部の例示的な例では、支持表面114に凹み126が存在する。こうした例示的な例示では、凹み126は、シート104に対する機械加工工程の位置に対応する。こうした例示的な例では、凹み126は、シート104の或る数の特徴部128の位置に対応する。本願において、「或る数」とは一つ以上である。従って、或る数の特徴部128は一つ以上の特徴部である。こうした例示的な例では、凹みは、機械加工ツール108が特徴部を貫通して凹みの中に延伸し得る際の特徴部に対応する。
【0027】
一部の例示的な例では、シート104に機械加工工程106を行うことによって、凹み126が形成される。例えば、機械加工工程106がシート104に穴132を開ける穴開け130の場合、穴開け130がシート104を貫通して多孔質物質110に当たることによって、凹み126が形成される。
【0028】
一部の他の例示的な例では、各凹み126は、シート104に機械加工される或る数の特徴部128の対応する特徴よりも大きい。各凹み126が、シート104に機械加工される対応の特徴よりも大きい場合、機械加工工程106は支持表面114から物質を取り除かない。各凹み126がシート104に機械加工される対応の特徴部よりも大きい場合、機械加工公差が考慮される。
【0029】
凹み126が支持表面114に形成された後に、シーリング材118が各凹み126の中に配置される。一部の例示的な例では、支持表面114上にシート104を配置する前に、凹み126が形成されて、シーリング材134で充填される。一部の例示的な例では、シート104が支持表面114上にある際に凹み126が形成されて、シート104が機械加工支持体102から取り外された後に凹み126がシーリング材134でシールされる。
【0030】
多孔質物質110はあらゆる望ましい形態を取る。一部の例示的な例では、多孔質物質110は連続気泡型発泡材である。一部の例示的な例では、多孔質物質110は人工木材である。多孔質物質110は、真空122が機械工支持体102全体に行き渡り支持表面114から抜けるように選択される。多孔度(ポロシティ)等の多孔質物質110の物理的特性が、多孔質物質110全体にわたる真空122のための分布システムとして作用する。機械加工支持体102が多孔質物質110で形成されると、多孔質物質110の多孔度が、機械加工支持体102全体にわたる真空122のための分布システムとして作用する。
【0031】
機械加工工程106がシート104に行われている間、支持表面114によってシート104が支持される。機械加工工程106を用いて、シート104に或る数の特徴部128を形成する。シート104は物質136製である。一部の例示的な例では、物質136は、弾性変形138を有するあらゆる望ましい物質の形態を取る。弾性変形138は、力が印加された際に一次的に形状を変化させる物質136の性能である。力が取り除かれると、弾性変形138は物質136をその元の形状に戻す。一部の例示的な例では、物質136は、金属140又は複合材142の一方である。物質136が複合材142である場合、複合材142は硬化されるか又は部分的に硬化される。
【0032】
一部の例示的な例では、シート104は薄型シート144と称される。支持表面114を有する機械加工支持体102を用いずに機械加工工程106からの圧力がシート104に印加された際にシート104が撓むのに十分な程薄いと、シート104が薄型シート144と称され得る。一部の例示的な例では、シート104がCFRP(炭素繊維強化プラスチック)ラミネート材等の複合材142である場合、物質136の厚さは0.020インチから0.100インチの間である。シート104の厚さに加えて、複合材142中のプライの品質と繊維の向きがシート104の撓みに影響する。厚さが同じだがレイアップが異なる複合材は、異なる角度に撓み得る。
【0033】
機械加工支持体102の多孔質物質110に真空122が与えられると、シート104が支持表面114に対して保持される。支持表面114の輪郭116は、曲率148を支持するように構成される。支持表面114は、周縁146だけではなくて、第二表面150の全てを支持するように構成される。
【0034】
シート104を支持表面114に対して保持しながら或る数の特徴部128を形成するようにシート104に機械加工工程106が行われる。機械加工工程106はシート104の第一表面152に行われる。第一表面152は第二表面150と対向する。一部の例示的な例では、第一表面152はシート104の前面と称され、第二表面150はシート104の背面と称される。
【0035】
機械加工工程106はあらゆる望ましい工程である。一部の例示的な例では、機械加工工程106は穴開け130である。一部の例示的な例では、機械加工工程106はルーター加工154である。機械加工工程106は或る数の特徴部128を形成する。
【0036】
或る数の特徴部128はあらゆる望ましい形態を取り得る。或る数の特徴部128は穴132、又は他の形状、例えばチャネル156や溝158を含む。一部の例示的な例では、或る数の特徴部128はそれぞれ0.020インチから0.300インチのサイズ範囲内にある。一部の例示的な例では、或る数の特徴部128は、一貫したパーセントのオープンエリアを得るために繰り返しパターンで配置される。オープンエリアは、或る数の特徴部128が占める第一表面152の量比である。一部の例示的な例では、或る数の特徴部128のパターンは、部品162の設計基準に基づいて5パーセントのオープンエリアから30パーセントのオープンエリアまでの範囲内のパーセントのオープンエリアを有する。
【0037】
或る数の特徴部128は領域160に形成される。一部の例示的な例では、シート104が周縁146によってのみ保持された場合には、領域160に機械加工工程106を行うことがスプリングバックをもたらす。周縁146よりも多くの第二表面150を支持することによって、領域160の機械加工工程106後のシート104のスプリングバックが低減又は排除される。
【0038】
機械加工ツール108はシート104に機械加工工程106を行い、部品162を形成する。部品162はあらゆる望ましい種類のプラットフォームの部品である。そのプラットフォームは、例えば、ビークル、移動型プラットフォーム、静止型プラットフォーム、陸上用構造、水中/水上用構造、宇宙用構造であり得る。より具体的には、プラットフォームは、水上艦、戦車、人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、人工衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋、ダム、家、製造工場、建物、又は他の適切なプラットフォームであり得る。一部の例示的な例では、プラットフォームは、航空機の形態を取る。こうした例示的な例では、部品162は航空機部品164である。
【0039】
部品162は、機械加工工程106において機械加工ツール108によって形成された少なくとも一つの特徴部を有する。例えば、部品162は、複数の溝、複数のチャネル、複数の穴、又はあらゆる他の所望の特徴部を有し得る。一部の例示的な例では、部品162は穿孔部品である。一部の例示的な例では、部品162は緩衝体162の形態を取る。緩衝体162は、音響(吸音)緩衝体、圧力緩衝体、又はあらゆる他の種類の緩衝体であり得る。
【0040】
図1の製造環境100と機械加工支持体102の例示は、例示的な実施形態が実施され得る方法に対する物理的又は構造的な制限を示唆するものではない。例示されているものに加えて又は代えて、他の構成要素が使用され得る。一部の構成要素は不必要となり得る。また、ブロックは、一部の機能的構成要素を例示するために示されている。例示的な実施形態で実施される際には、これらブロックのうち一つ以上が組み合わせられ得て、分割され得て、又は他のブロックへと組み合わせ及び分割され得る。
【0041】
例えば、部品162は緩衝体166として記載されているが、部品162はあらゆる望ましい形態を取り得る。一部の例示的な例では、部品162は、プラットフォームの内装又は外装を装飾するための審美パネルである。
【0042】
以下
図2を参照すると、例示的な実施形態に係る機械加工工程後のスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体上のシートの断面図の例示が示されている。概観200では、シート202が機械加工支持体204に対して保持されている。機械加工支持体204は、シート202の機械加工工程後のシート202のスプリングバックを低減するように構成される。機械加工支持体204は、
図1の機械加工支持体102の一実施形態である。機械加工支持体204は、複数の表面208を有する多孔質物質206を備える。複数の表面208は、シート202に接触して支持するように構成された輪郭212を有する支持表面210を含む。シーリング材214が支持表面210以外の複数の表面208の各々を覆う。真空ポート216が多孔質物質206を真空にするように構成される。
【0043】
シーリング材214は、支持表面210以外の複数の表面208から真空が抜けることを防止する。例えば、外面218上のシーリング材214が、外面218から真空が抜けることを防止する。他の例として、外面220上のシーリング材214が、外面220から真空が抜けることを防止する。真空ポート216は、外面222のシーリング材214を貫通する。
【0044】
多孔質物質206は、機械加工支持体204全体にわたって真空を伝えるためのあらゆる望ましい形態を取る。一部の例示的な例では、多孔質物質206は連続気泡型発泡材である。他の例示的な例では、多孔質物質206は人工木材である。
【0045】
真空ポート216を介して提供されて多孔質物質206全体にわたって分布する真空が、支持表面210に対してシート202を保持する。より具体的には、シート202の第二表面224が支持表面210に対して保持される。シート202の第二表面224を支持表面210に対して保持しながら、機械加工工程を第一表面226に行うことができる。
【0046】
シート202が支持表面210に対して保持されていると、シート202と機械加工支持体204が真空室を形成する。図示されているように、多孔質物質206は凹みを有していない。機械加工工程がシート202を貫通すると、多孔質物質206に凹みが形成される。機械加工工程中に多孔質物質206に凹みが形成される場合、凹みから真空が抜ける。
【0047】
図2の機械加工支持体204の例示は、例示的な実施形態が実施され得る方法に対する物理的又は構造的な制限を示唆するものではない。例示されているものに加えて又は代えて、他の構成要素が使用され得る。
【0048】
例えば、支持表面210の輪郭212は、シート202を支持するためのあらゆる望ましい形状を有し得る。一部の例示的な例では、シート202は、
図2に示さている曲率と異なる曲率を有する。こうした例示的な例では、支持表面210は、
図2に示されている輪郭212と異なる輪郭を有して、支持表面210がシート202の曲率を反映するようになる。支持表面210の輪郭212は、シート202を支持して接触するように構成されて、製造工程が行われる領域においてシート202が支持表面210に接触するようにする。他の例示的な例では、真空ポート216が、外面222と異なる位置に配置され得る。例えば、真空ポート216は外面218に存在し得る。他の例示的な例では、真空ポート216は外面222内の異なる位置に配置され得る。他の例示的な例では、真空ポート216は外面220に存在し得る。
【0049】
以下
図3を参照すると、例示的な実施形態に係るシートに機械加工工程が行われた後の機械加工支持体上のシートの断面図の例示が示されている。概観300は、機械加工が行われた後のシート202の概観である。概観300では、シート202は或る数の特徴部302を有する。或る数の特徴部302は複数の穴又は複数の溝であり得る。一部の例示的な例では、シート202は穿孔シートと称され得る。
【0050】
図示されているように、シート202に対する機械加工工程は、機械加工支持体204に凹み304を生じさせている。図示されているように、支持表面210の凹み304は、シート202に対する機械加工工程の位置に対応する。図示されているように、支持表面210の凹み304は、或る数の特徴部302の位置に対応する。
【0051】
図3の特徴部302及び凹み304の例示は、例示的な実施形態が実施され得る方法に対する物理的又は設計的な制限を示唆するものではない。例えば、シート202の特徴部の量、サイズ及び位置は、物理的又は構造的な制限を示唆するものではない。特徴部302はあらゆる望ましい特徴部の量、サイズ、位置、及び種類を有し得る。
【0052】
以下
図4を参照すると、例示的な実施形態に係る支持表面の特徴部を有する機械加工支持体の断面図の例示が示されている。機械加工支持体400は
図1の機械加工支持体102の物理的な実施形態である。機械加工支持体400は、機械加工支持体204が凹み304を有したものと同じであり得る。
【0053】
機械加工支持体400は、シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するように構成される。機械加工支持体400は、複数の表面404を有する多孔質物質402を備える。複数の表面404は、シートに接触して支持するように構成された輪郭408を有する支持表面406を含む。シーリング材410は、支持表面406以外の複数の表面404の各々を覆う。真空ポート412は多孔質物質402に真空を与えるように構成される。
【0054】
シーリング材410は、支持表面406以外の複数の表面404から真空が抜けることを防止する。例えば、外面414上のシーリング材410が、外面414から真空が抜けることを防止する。他の例として、外面416上のシーリング材410が、外面416から真空が抜けることを防止する。真空ポート412は、外面418のシーリング材410を貫通する。
【0055】
多孔質物質402は、機械加工支持体400全体にわたって真空を伝えるためのあらゆる望ましい形態を取る。一部の例示的な例では、多孔質物質402は連続気泡型発泡材である。他の例示的な例では、多孔質物質402は人工木材である。
【0056】
真空ポート412を介して提供されて多孔質物質402に広がる真空が、支持表面406に対してシートを保持する。機械加工支持体400は、支持表面406に凹み420を有し、凹み420は、シートに対する機械加工工程の位置に対応する。
【0057】
一部の例示的な例では、各凹み420は、シートに機械加工される対応の特徴部よりも大きい。この例示的な例では、シーリング材422が各凹み420の中に存在する。
【0058】
シートが支持表面406に対して保持されると、シートと機械加工支持体400が真空室を形成する。凹み420がシーリング材422でシールされるので、真空室は、シートに対応の特徴部を機械加工するための機械加工工程全体にわたって残る。
【0059】
以下
図5を参照すると、例示的な実施形態に係る機械加工支持体によって支持されたシートに対する機械加工工程中の機械加工支持体の部分の断面図の例示が示されている。機械加工支持体500は、
図1の機械加工支持体102の物理的な実施形態である。一部の例示的な例では、概観502は、
図2と
図3との間のシート202の部分に対して行われている機械加工工程の概観である。
【0060】
機械加工支持体500は支持表面504を有する。機械加工支持体500の多孔質物質508に印加された真空507によって、シート506が機械加工支持体500の支持表面504に対して保持される。概観502では、特徴部510がシート506に機械加工されている。シート506の特徴部510を形成した機械加工工程によって、凹み512が形成されている。
【0061】
概観502に見て取れるように、真空507が凹み512から抜ける。与えられる真空は、多孔質物質508中に真空507が維持されるように調整される。一部の例示的な例では、多孔質物質508に与えられる真空は、シート506に対する機械加工工程が行われている間に多孔質物質508の支持表面504に対して第二表面513を保持するためにシート506の第二表面513にわたって圧力差を維持するように調整される。
【0062】
概観502では、機械加工ツール514がシート506に対して機械加工工程を行っている。図示されているように、機械加工ツール514が、シート506を貫通して、支持表面504に凹み516を形成している。図示されているように、機械加工ツール514は、ドリルビットの形態を取っている。図示されていないが、機械加工ツール514は、ドリル、CNC(コンピュータ数値制御)マシン、又は他の望ましい機械等のあらゆる望ましい機械に取り付け可能である。
【0063】
以下
図6を参照すると、例示的な実施形態に係る機械加工支持体によって支持されたシートに対する機械加工工程中の機械加工支持体の部分の断面図の例示が示されている。機械加工支持体600は、
図1の機械加工支持体102の物理的な実施形態である。
【0064】
概観602では、機械加工支持体600は支持表面604を有する。機械加工支持体600の多孔質物質608に印加される真空607によって、シート606が機械加工支持体600の支持表面604に対して保持される。概観602では、特徴部610がシート606に機械加工されている。凹み612と凹み614は、支持表面604に対してシート606を保持する前に多孔質物質608に形成されたものである。一部の例示的な例では、凹み612と凹み614は、別のシート(図示せず)に対して機械加工工程を行っている間に多孔質物質608に形成されたものである。他の例示的な例では、凹み612と凹み614は、機械加工支持体600を製造している間に多孔質物質608に形成されたものである。
【0065】
凹み612と凹み614は両方ともシーリング材616でシールされる。シーリング材616は、凹み612と凹み614から真空が抜けることを実質的に抑制又は防止する。
【0066】
概観602では、機械加工ツール618がシート606に対して機械加工工程を行っている。図示されているように、機械加工ツール618はシート606を貫通するが、支持表面604に接触しない。図示されているように、機械加工ツール618は機械加工支持体600の多孔質物質608に接触しない。凹み612と凹み614は特徴部610よりも大きい。凹み612と凹み614を特徴部610と機械加工ツール618よりも大きくすることによって、機械加工ツール618が、特徴部610を形成するための機械加工工程を行っている間に多孔質物質608に接触しなくなる。一部の例示的な例では、凹み612と凹み614は、機械加工ツール618によって行われる機械加工工程の公差を考慮したサイズにされる。
【0067】
以下
図7A及び
図7Bを参照すると、例示的な実施形態に係るシートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するための方法のフローチャートの例示が示されている。方法700は、
図1の製造環境100において機械加工支持体102を用いて実施され得る。方法700は、
図2の機械加工支持体204を用いて実施され得る。方法700は、
図2及び
図3のシート202に対して機械加工を行うように実施され得る。方法700は、
図4の機械加工支持体400を用いて実施され得る。方法700は、
図5の機械加工支持体500を用いて実施され得る。方法700は、
図6の機械加工支持体600を用いて実施され得る。
【0068】
方法700は、機械加工支持体の支持表面に接触してシートの第二表面を配置し、ここで、その機械加工支持体は支持表面以外の機械加工支持体の各表面がシールされた多孔質物質を備える(工程702)。一部の例示的な例では、支持表面に接触してシートの第二表面を配置する際に、シートの第二表面の一部分のみが、機械加工支持体の支持表面に接触して配置される。一部の例示的な例では、シートが曲率を有する場合、シートの周縁又は中心が支持表面に接触しない。
【0069】
方法700は、支持表面に対して第二表面を保持するように多孔質物質を真空に引く(工程704)。機械加工支持体の残りの表面に対するシーリングに起因して、多孔質物質を真空に引くことができる。真空は支持表面にわたって広がり、支持表面に対して第二表面を保持する。
【0070】
方法700は、第二表面に対向するシートの第一表面に機械加工工程を行う(工程706)。機械加工工程は、あらゆる望ましい工程である。機械加工工程は、穴開け、切削、又は他のあらゆる望ましい種類の工程であり得る。
【0071】
方法700は、機械加工工程を行っている間において多孔質物質中の真空を維持する(工程708)。機械加工工程を行っている間において多孔質物質中の真空を維持することによって、機械加工工程からの機械加工の力がシートを撓ませない。シートに対して機械加工工程が行われる際に、シートは支持表面と接触していて撓まない。シートのスプリングバックは、シートから力が取り除かれた際にシートが元の形状に戻ることである。シートの第二表面と支持表面との間の接触を維持することによって、機械加工工程後のシートンのスプリングバックが低減又は排除される。シートの第二表面と支持表面との間の接触を維持することによって、機械加工の力がシートに印加される前と間において、シートがその形状を実質的に維持する。その後、方法700が終了する。
【0072】
一部の例示的な例では、機械加工工程がシートに行われるにつれて、機械加工支持体に凹みが設けられる。一部の例示的な例では、機械加工支持体に凹みが設けられる際に与えられる真空を調整することによって、真空が維持される。
【0073】
一部の例示的な例では、第一表面に機械加工工程を行うことは、シートに穴を開けることを備える(工程710)。一部の例示的な例では、機械加工工程を行うことは、シートの第一表面に機械加工工程が行われるにつれて、機械加工支持体の支持表面に凹みを機械加工することを更に備える(工程712)。
【0074】
一部の例示的な例では、方法700は、支持表面の各凹みの中にシーリング材を適用する(工程714)。一部の例示的な例では、各凹みが形成された後の一回のシーリング工程で、シーリング材が各凹みの中に入れられる。この例示的な例では、シートが支持表面から取り除かれた後に、シーリング材が適用される。シーリング材が各凹みの中に適用されていると、凹みから真空が失われない。シーリング材が各凹みの中に適用されていると、機械加工支持体を別のシートを支持するために使用することができる。
【0075】
一部の例示的な例では、方法700は、シートに対して機械加工工程が行われている間に多孔質物質の支持表面に対して第二表面を保持するためにシートの第二表面にわたる圧力差を維持するように多孔質物質に与えられる真空を調整する(工程716)。
【0076】
一部の例示的な例では、機械加工工程を行うことは、シートに穴が開けられるにつれて機械加工支持体の支持表面に凹みを機械加工することを備え(工程718)、方法700は、支持表面に対して第二表面を維持するために多孔質物質を真空に引く前に、支持表面の各凹みの中にシーリング材を適用する(工程720)。一部の例示的な例では、シーリング材は、各凹みが形成された後の一回のシーリング工程において各凹みの中に配置される。この例示的な例では、シートが支持表面から取り外された後に、シーリング材が適用される。シーリング材が各凹みの中に適用されると、凹みから真空が失われない。シーリング材が各凹みの中に適用されると、機械加工支持体を、他のシート(第二シートを含む)を支持するために使用することができる。
【0077】
一部の例示的な例では、方法700は、機械加工支持体の多孔質物質から真空を解放する(工程722)。一部の例示的な例では、方法700は、機械加工工程によって形成された特徴部を有するシートを、真空を解放した後に機械加工支持体から取り外す(工程724)。一部の例示的な例では、方法は、支持表面に対して第二表面を保持するように多孔質物質を真空に引く(工程726)。一部の例示的な例では、方法700は、多孔質物質中の真空を維持しながら第二表面に対して機械加工工程を行う(工程728)。
【0078】
以下
図8を参照すると、例示的な実施形態に係るシートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体を形成するための方法のフローチャートの例示である。方法800は、
図1の機械加工支持体を形成するように実施され得る。方法800は、
図2及び
図3の機械加工支持体204を形成するように実施され得る。方法800は、
図4の機械加工支持体400を形成するように実施され得る。方法800は、
図5の機械加工支持体500を形成するように実施され得る。方法800は、
図6の機械加工支持体600を形成するように実施され得る。
【0079】
方法800は、シートに接触して支持するように構成された輪郭を有する支持表面を含む複数の表面を形成するように多孔質物質を成形する(工程802)。方法800は、支持表面以外の複数の表面の各々にシーリング材を適用する(工程804)。複数の表面をシールすることによって、印加された真空が、機械加工支持体のシールされた表面から抜けない。支持表面をシールしないことによって、多孔質物質に印加された真空が、支持表面に対してシートを保持するための支持表面から抜ける。その後、方法800が終了する。
【0080】
一部の例示的な例では、方法800は、支持表面に凹みを機械加工する(工程806)。一部の例示的な例では、支持表面上にシートを配置する前に、凹みが支持表面に機械加工される。
【0081】
一部の例示的な例では、方法800は、各凹みにシーリング材を適用する(工程808)。各凹みの中のシーリング材が、凹みから真空が抜けることを防止する。各凹みの中のシーリング材は、機械加工支持体の支持表面のみから真空が抜けるようにする。
【0082】
一部の例示的な例では、各凹みは、シートに機械加工される対応の特徴部よりも大きい(工程810)。各凹みがシートに機械加工される対応の特徴部よりも大きい場合、機械加工工程は、支持表面から物質を除去しない。各凹みがシートに機械加工される対応の特徴部よりも大きい場合、機械加工の公差が考慮される。
【0083】
一部の例示的な例では、支持表面に凹みを機械加工することは、シートに対する機械加工工程中に行われ、シーリング材を適用することは、支持表面からシートを取り外した後に行われる(工程812)。
【0084】
一部の例示的な例では、方法800は、多孔質物質に真空ポートを挿入する(工程814)。真空ポートは、多孔質物質を真空に引くためにシールされた表面のうち一つに流入口を与える。
【0085】
以下
図9を参照すると、例示的な実施形態に係るシートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するための方法のフローチャートの例示が示されている。方法900は、
図1の製造環境100において機械加工支持体102を用いて実施され得る。方法900は、
図2の機械加工支持体204を用いて実施され得る。方法900は、
図2及び
図3のシート202に対する機械加工工程を行うように実施され得る。方法900は、
図4の機械加工支持体400を用いて実施され得る。方法900は、
図5の機械加工支持体500を用いて実施され得る。方法900は、
図6の機械加工支持体600を用いて実施され得る。
【0086】
方法900は、機械加工支持体の支持表面に対してシートの第二表面を保持するように機械加工支持体の多孔質物質を真空に引き、ここで、その機械加工支持体の多孔質物質は支持表面以外の各表面がシールされたものである(工程902)。方法900は、第二表面に対向するシートの第一表面に機械加工工程を行う間に多孔質物質内の真空を維持する(工程904)。その後、方法900が終了する。
【0087】
一部の例示的な例では、方法900は、シートに対する機械加工工程が行われている間に多孔質物質の支持表面に対して第二表面を保持するためにシートの第二表面にわたって圧力差を維持するように多孔質物質に与えられる真空を調整する(工程906)。一部の例示的な例では、機械加工工程を行うことは、シートの第一表面に機械加工工程が行われるにつれて機械加工支持体の支持表面に凹みを機械加工することを更に備える(工程908)。一部の例示的な例では、方法900は、支持表面の各凹みの中にシーリング材を適用する(工程910)。
【0088】
本願において、列挙された事項と共に用いられる「少なくとも一つ」との表現は、列挙された事項のうちの一つ以上の事項の多様な組み合わせが使用可能であり、列挙された各事項のうち一つのみが必要となり得ることを意味する。言い換えると、「少なくとも一つ」は、列挙された事項のあらゆる組み合わせ、あらゆる数の事項が使用可能であるが、列挙された事項の全てが必須ではないことを意味する。それら事項は、特定の対象、物体、カテゴリであり得る。
【0089】
例えば、「事項Aと事項Bと事項Cとのうちの少なくとも一つ」は、事項Aを含む、事項Aと事項Bを含む、又は、事項Bを含むとなり得るが、これらに限定されない。また、この例は、事項Aを含む、事項Bを含む、事項Cを含む、又は事項Bと事項Cを含むともなり得る。勿論、これら事項のあらゆる組み合わせが存在し得る。他の例では、「少なくとも一つ」は、二個の事項Aと一個の事項Bと十個の事項Cであること、四個の事項Bと七個の事項Cであること、又は他の適切な組み合わせとなり得るが、これらに限定されるものではない。
【0090】
図示されている多様な実施形態のフローチャート及びブロック図は、例示的な実施形態の装置及び方法としていくつか考えられる例の構造、機能、工程を例示するものである。この点に関して、フローチャートやブロック図の各ブロックは、モジュール、セグメント、機能、及び/又は、工程やステップの一部を表すものであり得る。
【0091】
例示的な実施形態のいくつかの代替例では、ブロックに記されている機能が、図に記されている順序以外で行われ得る。例えば、一部の場合では、関与している機能に応じて、連続して示されている二つのブロックが実質的に同時に実行され得て、又は、場合によっては、逆の順序でブロックが行われ得る。また、フローチャートやブロック図に例示されているブロックに他のブロックが追加され得る。幾つかのブロックは任意選択的なものとなり得る。例えば、方法700において、工程710から工程728が任意選択的なものであり得る。他の例では、方法800において、工程806から工程814が任意選択的なものとなり得る。他の例では、方法900において、工程906から工程910が任意選択的なものとなり得る。
【0092】
本開示の例示的な実施形態は、
図10に示されるような航空機の製造と保守点検方法1000や、
図11に示されるような航空機1100との関係において説明され得る。まず、
図10を参照すると、例示的な実施形態に係る航空機の製造と保守点検方法の例示が示されている。製造準備段階において、航空機の製造と保守点検方法1000は、
図11の航空機1100の仕様及び設計1002と材料調達1004とを含み得る。
【0093】
製造段階においては、航空機1100の部品及びサブアセンブリの製造1006と、システム統合1008が行われる。その後、航空機1100が認証と配送1010を得て、就航1012する。顧客による就航1012の間に、航空機1100の所定の保守点検1014(変更、再構成、改造、又は他の保守点検が含まれ得る)がスケジュールされる。
【0094】
航空機の製造と保守点検方法1000の各プロセスは、システムインテグレータ、サードパーティ、及び/又はオペレータによって実施又は実行され得る。こうした例において、オペレータは顧客であり得る。説明目的として、システムインテグレータとして、航空機製造者や主要なシステム下請け業者が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、サードパーティとして、ベンダー、下請け業者、サプライヤが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、オペレータは、航空会社、リース業者、軍隊、保守点検業者等であり得る。
【0095】
以下
図11を参照すると、例示的な実施形態が実施され得る航空機の例示が示されている。この例では、航空機1100は、
図10の航空機の製造と保守点検方法100によって製造され、機体1102、複数のシステム1104、内装1106を含み得る。システム1104の例として、推進システム1108、電気システム1110、油圧システム1112、環境システム1114のうち一つ以上が含まれる。任意の数の他のシステムが含まれ得る。航空宇宙の例が示されているが、自動車産業等の他の産業に別の例示的な実施形態が適用され得る。
【0096】
本開示の装置及び方法は、航空機の製造と保守点検方法1000の少なくとも一つの段階において採用され得る。一つ以上の例示的な実施形態が、
図10の部品及びサブアセンブリの製造1006、システム統合1008、保守点検1014のうちの少なくとも一つにおいて使用され得る。例えば、機械加工支持体102は、航空機1100の部品を形成するための部品及びサブアセンブリの製造1006中に使用され得る。他の例として、機械加工支持体102は、保守点検1014において使用され得る。機械加工支持体102を用いて、機体1102や内装1106の一部等の航空機1100の一部を製造し得る。
【0097】
例示的な実施形態は、機械加工工程中に、薄型CFRP(炭素繊維強化プラスチック)ラミネート等の薄型シートを保持するための方法及び機械的支持体を提供する。機械的支持体に対してシートを保持することは、音響(吸音)処理用のロボットによる穿孔プロセス等の機械加工工程中にシートを安定に保つ。例示的な例では、真空源が、機械的支持体の支持表面に対してシートを保持するようにシートの曲率に成形された多孔質媒体又は多孔質物質を真空に引く。多孔質媒体は局所的な流れ抵抗を与えて、ラミネートに複数の穴や他の特徴部が穿孔される際にシートに対する全体的な真空が失われないようにする。
【0098】
機械的支持体にシートを真空で保持することによって、均等で密接な接触をシート全体にわたって生じさせて、シートを安定化させることができる。シートに安定性を与えることによって、穴や他の特徴部を許容可能な品質でシートに形成することができる。
【0099】
機械加工工程を行う間に多孔質物質の中に真空を維持することによって、シートと支持表面との間に密接な接触が維持される。シートと支持表面との間の接触を維持することによって、機械加工工程からの機械加工の力がシートを撓ませない。機械加工工程をシートに行う際に、シートが支持表面に接触して、撓まない。シートのスプリングバックは、シートから力が取り除かれた際にシートが元の形状に戻ることである。シートの第二表面と支持表面との間の接触を維持することによって、機械加工工程後のシートのスプリングバックが低減又は排除される。シートの第二表面と支持表面との間の接触を維持することによって、シートのスプリングバックが制御される。シートの第二表面と支持表面との間の接触を維持することによって、シートのスプリングバックが、支持ツールからシートを解放した後に生じるようになる。
【0100】
シートは、あらゆる望ましい目的のために穿孔され得る。一部の例示的な例では、シートは音響(吸音)処理のために穿孔され得る。支持表面全体に対する気流を制限する多孔質物質を使用することによって、ガスケット型の真空領域に依拠する従来の真空維持システムで生じるように真空を完全に失うことなく、シートの表面に穿孔することができる。
【0101】
更に、本開示は、以下の項に係る例を含む。
【0102】
項1
シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減する方法であって、機械加工支持体の支持表面に対してシートの第二表面を保持するように機械加工支持体の多孔質物質を真空に引くこと(その機械加工支持体の多孔質物質の支持表面以外の各表面がシールされている)と、第二表面に対向するシートの第一表面に機械加工工程が行われている間に多孔質物質の中の真空を維持することと、を備える方法。
【0103】
項2
シートに対して機械加工工程が行われている間に多孔質物質の支持表面に対して第二表面を保持するためにシートの第二表面にわたる圧力差を維持するように多孔質物質に与えられる真空を調整することを更に備える項1に記載の方法。
【0104】
項3
機械加工工程を行うことが、シートの第一表面に機械加工工程が行われるにつれて機械加工支持体の支持表面に凹みを機械加工することを更に備える、項1又は2に記載の方法。
【0105】
項4
支持表面の各凹みの中にシーリング材を適用することを更に備える項3に記載の方法。
【0106】
項5
機械加工支持体の支持表面に接触してシートの第二表面を配置することを更に備える項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0107】
項6
シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減する方法であって、機械加工支持体の支持表面に接触してシートの第二表面を配置すること(その機械的支持体が、支持表面以外の機械的支持体の各表面がシールされた多孔質物質を備える)と、支持表面に対して第二表面を保持するように多孔質物質を真空に引くことと、第二表面に対向するシートの第一表面に機械加工工程を行うことと、機械加工工程を行う間に多孔質物質の中に真空を維持することと、を備える方法。
【0108】
項7
機械加工工程を行うことが、シートの第一表面に機械加工工程が行われるにつれて機械加工支持体の支持表面に凹みを機械加工することを更に備える、項5又は6に記載の方法。
【0109】
項8
支持表面の各凹みの中にシーリング材を適用することを更に備える項7に記載の方法。
【0110】
項9
機械加工支持体の多孔質物質から真空を解放することと、真空を解放することの後に、機械加工工程によって形成された特徴部を有するシートを機械加工支持体から取り外すことと、支持表面に対して第二シートを保持するように多孔質物質を真空に引くことと、多孔質物質の中に真空を維持しながら第二シートに対して機械加工工程を行うことと、のうちの少なくとも一つを更に備える項5から8のいずれか一項に記載の方法。
【0111】
項10
機械加工工程を行うことが、シートに特徴部が形成されるにつれて機械加工支持体の支持表面に凹みを機械加工することを備え、本方法が、支持表面に対して第二表面を保持するように多孔質物質を真空に引くことの前に支持表面の各凹みの中にシーリング材を適用することを更に備える、項9に記載の方法。
【0112】
項11
シートに対する機械加工工程が行われている間に多孔質物質の支持表面に対して第二表面を保持するためにシートの第二表面にわたる圧力差を維持するように多孔質物質に与えられる真空を調整することを更に備える項5から10のいずれか一項に記載の方法。
【0113】
項12
第一表面に機械加工工程を行うことが、シートに穴を開けることを更に備える、項5から11のいずれか一項に記載の方法。
【0114】
項13
シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体であって、シートに接触して支持するように構成された輪郭を有する支持表面を含む複数の表面を有する多孔質物質と、支持表面以外の複数の表面の各々を覆うシーリング材と、多孔質物質に真空を与えるように構成された真空ポートと、を備える機械加工支持体。
【0115】
項14
支持表面の凹みを更に備え、凹みがシートに対する機械加工工程の位置に対応する、項13に記載の機械加工支持体。
【0116】
項15
各凹みが、シートに機械加工される対応の特徴部よりも大きい、項14に記載の機械加工支持体。
【0117】
項16
各凹みの中のシーリング材を更に備える項14又は15に記載の機械加工支持体。
【0118】
項17
多孔質物質が連続気泡型発泡材である、項13から16のいずれか一項に記載の機械加工支持体。
【0119】
項18
多孔質物質が人工木材である、項13から16のいずれか一項に記載の機械加工支持体。
【0120】
項19
項13から18のいずれか一項に記載の機械加工支持体を形成する方法であって、シートに接触して支持するように構成された輪郭を有する支持表面を含む複数の表面を形成するように多孔質物質を成形することと、支持表面以外の複数の表面の各々にシーリング材を適用することと、備える方法。
【0121】
項20
シートに対する機械加工工程後のシートのスプリングバックを低減するように構成された機械加工支持体を形成する方法であって、シートに接触して支持するように構成された輪郭を有する支持表面を含む複数の表面を形成するように多孔質物質を成形することと、支持表面以外の複数の表面の各々にシーリング材を適用することと、備える方法。
【0122】
項21
支持表面に凹みを機械加工することと、各凹みにシーリング材を適用することと、を更に備える項19又は20に記載の方法。
【0123】
項22
各凹みが、シートに機械加工される対応の特徴部よりも大きい、項21に記載の方法。
【0124】
項23
支持表面に凹みを機械加工することが、シートに対する機械加工工程の間に行われ、シーリング材を適用することが、支持表面からシートを取り外した後に行われる、項21又は22に記載の方法。
【0125】
項24
多孔質物質に真空ポートを挿入することを更に備える項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【0126】
多様な例示的な実施形態の説明を例示及び説明目的で与えてきたが、その説明は、包括的なものではなく、開示されている形態の実施形態に限定されるものでもない。多様な修正と変更が当業者には明らかである。更に、多様な例示的な実施形態は、他の例示的な実施形態と比較して異なる特徴を与え得る。選択された実施形態は、実施形態の原理、実際的な応用を最も良く説明するため、そして、想定される特定の使用に適するような多様な修正を有する多様な実施形態について当業者が本開示を理解することができるように選択されて説明されているものである。
【符号の説明】
【0127】
202 シート
204 機械加工支持体
206 多孔質物質
208 表面
210 支持表面
212 輪郭
214 シーリング材
216 真空ポート
218 外面
220 外面
222 外面
224 第二表面
226 第一表面
302 特徴部
304 凹み
500 機械加工支持体
504 支持表面
506 シート
507 真空
508 多孔質物質
510 特徴部
512 凹み
513 第二表面
514 機械加工ツール
516 凹み
600 機械加工支持体
604 支持表面
606 シート
607 真空
608 多孔質物質
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612 凹み
614 凹み
616 シーリング材
618 機械加工ツール