(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】固形医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5415 20060101AFI20240705BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 33/08 20060101ALI20240705BHJP
A61K 33/10 20060101ALI20240705BHJP
A61K 33/12 20060101ALI20240705BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240705BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240705BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240705BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240705BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K31/5415
A61P29/00
A61K33/08
A61K33/10
A61K33/12
A61P1/04
A61P43/00 121
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K9/20
(21)【出願番号】P 2019238556
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 遼平
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-021025(JP,A)
【文献】特開2006-328000(JP,A)
【文献】特開2015-229663(JP,A)
【文献】特開2019-142840(JP,A)
【文献】特開2017-226611(JP,A)
【文献】特開平02-286614(JP,A)
【文献】特開2016-190793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 33/00
A61K 47/00
A61K 9/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メロキシカム及びその医薬的に許容可能な塩から選ばれる少なくとも1種(A)を含有し、かつ、マグネシウム原子を含有する制酸剤(B)を実質的に含有しない粒子の群(α1)と、
前記(B)成分を含有し、前記(A)成分を実質的に含有しない粒子の群(β1)と、
を有し、
前記粒子の群(α1)及び前記粒子の群(β1)の少なくとも一方は、造粒粒子の群であり、
前記粒子の群(α1)及び前記粒子の群(β1)の少なくとも一方に、乳糖、結晶セルロース、トウモロコシデンプン
、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、D-マンニトー
ル及びクロスポビドンからなる群から選ばれる少なくとも1種(C)をさらに含有する、固形医薬製剤。
【請求項2】
前記(B)成分は、酸化マグネシウム(B-1)、炭酸マグネシウム(B-2)及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(B-3)からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の固形医薬製剤。
【請求項3】
前記(C)成分/前記(B)成分で表される質量比は、0.01~12である、請求項1又は2に記載の固形医薬製剤。
【請求項4】
錠剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の固形医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内服医薬製剤及び固形医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
解熱鎮痛薬等の内服医薬製剤は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)等が解熱鎮痛成分として汎用されている。NSAIDsの中でも、メロキシカム又はその医薬的に許容可能な塩(以下、「メロキシカム(塩)」ということがある)は、鎮痛作用を長時間にわたって示す鎮痛成分として知られている。
メロキシカム(塩)は、副作用として胃障害を有することが知られている。胃障害の抑制を図るために、制酸剤を配合した内服医薬製剤が知られている。
例えば、特許文献1には、メロキシカム(塩)と制酸剤との組み合わせからなる配合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
制酸剤としては、乾燥水酸化アルミニウムゲル、グリシン、ケイ酸マグネシウム、水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム-炭酸マグネシウム共乾燥ゲル、水酸化アルミニウム-重炭酸ナトリウム共沈殿物、水酸化アルミニウム-炭酸カルシウム-炭酸マグネシウム共沈殿物、水酸化マグネシウム-硫酸アルミニウムカリウム共沈殿物及び炭酸マグネシウム等が知られている。本発明者は、制酸剤の中でも、マグネシウム原子を含有する制酸剤を用いることで、溶出性を高められるという知見を得た。即ち、マグネシウム原子を含有する制酸剤を用いることで、服用後に、メロキシカム(塩)を早期に溶出させて、即効性を高められる。
しかしながら、マグネシウム原子を含有する化合物を制酸剤として用いると、経時的に内服医薬製剤が変色するという問題がある。
そこで、本発明は、メロキシカム(塩)と制酸剤とを組み合わせる配合剤において、マグネシウム原子を含有する化合物を制酸剤として含有しても、変色を抑制できる内服医薬製剤を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
<1>
メロキシカム及びその医薬的に許容可能な塩から選ばれる少なくとも1種(A)と、
マグネシウム原子を含有する制酸剤(B)と、
乳糖、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、D-マンニトール、ポビドン及びクロスポビドンからなる群から選ばれる少なくとも1種(C)と、
を含有する、内服医薬製剤。
<2>
前記(B)成分は、酸化マグネシウム(B-1)、炭酸マグネシウム(B-2)及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(B-3)からなる群から選ばれる1種以上である、<1>に記載の内服医薬製剤。
<3>
前記(C)成分/前記(B)成分で表される質量比は、0.01~12である<1>又は<2>に記載の内服医薬製剤。
<4>
錠剤である、<1>~<3>のいずれかに記載の内服医薬製剤。
【0006】
<5>
メロキシカム及びその医薬的に許容可能な塩から選ばれる少なくとも1種(A)を含有し、かつ、マグネシウム原子を含有する制酸剤(B)を実質的に含有しない粒子の群(α1)と、
前記(B)成分を含有し、前記(A)成分を実質的に含有しない粒子の群(β1)と、
を有し、
前記粒子の群(α1)及び前記粒子の群(β1)の少なくとも一方は、造粒粒子の群である、固形医薬製剤。
<6>
前記(B)成分は、酸化マグネシウム(B-1)、炭酸マグネシウム(B-2)及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(B-3)からなる群から選ばれる1種以上である、<5>に記載の固形医薬製剤。
<7>
前記粒子の群(α1)及び前記粒子の群(β1)の少なくとも一方に、乳糖、結晶セルロース、トウモロコシデンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、D-マンニトール、ポビドン及びクロスポビドンからなる群から選ばれる少なくとも1種(C)をさらに含有する、<5>又は<6>に記載の固形医薬製剤。
<8>
前記(C)成分/前記(B)成分で表される質量比は、0.01~12である、<7>に記載の固形医薬製剤。
<9>
錠剤である、<5>~<8>のいずれかに記載の固形医薬製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の内服医薬製剤によれば、メロキシカム(塩)と制酸剤とを組み合わせる配合剤において、マグネシウム原子を含有する化合物を制酸剤として含有しても、変色を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の内服医薬製剤は、メロキシカム及びその医薬的に許容可能な塩から選ばれる少なくとも1種(A)((A)成分)と、マグネシウム原子を含有する制酸剤(B)((B)成分)と、を含有する。
内服医薬製剤の剤形としては、錠剤(フィルムコーティング錠、口腔内崩壊錠等)、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等の固形医薬製剤等が挙げられる。
本発明の内服医薬製剤としては、中でも、錠剤、カプセル剤等がより好ましい。錠剤としては、単層錠でもよいし、二層以上の多層錠でもよい。また、錠剤は、素錠でもよいし、コーティング錠でもよい。カプセル剤としては、例えば、軟質カプセルやマイクロカプセルに封入した錠剤でもよい。
【0009】
本発明の内服医薬製剤が錠剤の場合、錠剤の形状によって、本発明の効果は大きく変化しない。錠剤の寸法は、本発明の効果の点では特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の点から、錠剤の直径φは、例えば、6~14mmが好ましい。
錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の点から、錠剤の形状は、円柱部及び前記円柱部の上下の端面から膨出する膨出部とを有する形状が好ましい。前記の円柱部及び膨出部を有する形状の錠剤としては、R錠(標準R錠、糖衣R錠等)、2段R錠、スミ角平錠、スミ丸平錠等が挙げられる。これらの錠剤の膨出部は上下非対称であってもよいが、上下対称であることが好ましい。
【0010】
内服医薬製剤が顆粒剤、細粒剤又は散剤である場合、内服医薬製剤の平均粒子径は、10~700μmが好ましく、50~500μmがより好ましい。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定法に準じて測定される、重量平均粒子径(D50)である。
【0011】
(第一の実施形態)
<内服医薬製剤>
本発明の第一の実施形態に係る内服医薬製剤について、説明する。
本実施形態の内服医薬製剤は、(A)成分と、(B)成分と、特定の(C)成分とを併有する。
本実施形態の内服医薬製剤としては、単層錠、丸剤、(A)~(C)成分を共に造粒した顆粒剤、粉体混合された散剤や細粒剤等が挙げられる。また、本実施形態の内服医薬製剤としては、(A)~(C)成分を併有する層を有する多層錠が挙げられる。即ち、本実施形態の内服医薬製剤は、(A)~(C)成分が共存する剤形である。
【0012】
≪(A)成分≫
(A)成分は、メロキシカム(化学名:4-ヒドロキシ-2-メチル-N-(5-メチル-2-チアゾリル)-2H-1,2-ベンゾチアジン-3-カルボキサミド-1,1-ジオキシド)及びその医薬的に許容可能な塩から選ばれる少なくとも1種である。メロキシカムの医薬的に許容可能な塩としては、例えば、欧州特許第2,482B1号明細書、米国特許第4,233,299号明細書及び国際公開第99/49867号に記載されているものが挙げられる。許容可能な塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、メグルミン塩、トリス塩等が挙げられる。
(A)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0013】
内服医薬製剤中の(A)成分の含有量は、服用1回当たりの(A)成分としては、0.5~70mgが好ましく、2~50mgがより好ましく、2.5~20mgがさらに好ましく、5~15mgが特に好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、内服医薬製剤の薬理効果をより高められる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、錠剤製造時の障害(例えば、打錠機の盤や杵に対する内服医薬製剤の付着等)を生じにくい。また、(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、胃障害をより軽減できる。
なお、内服医薬製剤が錠剤の場合、下記の(A)成分の含有量は、1錠に含まれていてもよいし、1回に服用する錠剤数の総量でもよい。
【0014】
内服医薬製剤が錠剤やカプセル剤の場合、錠剤1錠(又は1カプセル)当たりの(A)成分の含有量は、服用1回当たりの錠剤数(又はカプセル数)を勘案して適宜決定される。
【0015】
内服医薬製剤中の(A)成分の含有割合は、例えば、内服医薬製剤の総質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1.0~5.0質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、内服医薬製剤の薬理効果をより高められる。(A)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、錠剤製造時の障害(例えば、打錠機の盤や杵に対する内服医薬製剤の付着等)を生じにくい。また、(A)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、胃障害をより軽減できる。
【0016】
≪(B)成分≫
(B)成分は、マグネシウム原子を含有する制酸剤である。本実施形態の内服医薬製剤は、(B)成分を含有することで、(A)成分による胃障害を軽減できる。
(B)成分は、いわゆるマグネシウム系制酸剤であり、分子中にマグネシウム原子を有するアルカリ性化合物である。(B)成分は、マグネシウム原子の他に、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子、アルミニウム、ケイ素等の金属原子を含んでもよい。(B)成分の総質量に対するマグネシウム原子の含有割合は、1質量%以上である。本発明の課題に対する効果の顕著性から、(B)成分の総質量に対するマグネシウム原子の含有割合は、10質量%以上が好ましい。(B)成分中のマグネシウム原子の含有割合は、化学式から算出される質量比により求められる値である。
【0017】
(B)成分としては、例えば、酸化マグネシウム(以下、(B-1)成分ということがある)、炭酸マグネシウム(以下、(B-2)成分ということがある)及びメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(以下、(B-3)成分ということがある)が好ましい。これらの(B)成分を含有することで、(A)成分の溶出性の向上が図れる。
これらの(B)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0018】
内服医薬製剤中の(B)成分の含有量は、服用1回当たりの(B)成分として、68~700mgが好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(A)成分による胃障害をより軽減でき、(A)成分の溶出性の向上が図れる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、内服医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。
【0019】
医薬製剤中の(B)成分が、(B-1)酸化マグネシウムの場合、服用1回当たりの(B)成分の量は、68~700mgが好ましく、70~600mgがより好ましく、100~500mgがさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(A)成分による胃障害をより軽減できる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、内服医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。
医薬製剤中の(B)成分が、(B-2)炭酸マグネシウムまたは(B-3)メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの場合、服用1回当たりの(B)成分の量は、68~700mgが好ましく、110~700mgがより好ましく、180~600mgがさらに好ましく、270~500mgとなる量が最も好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、(A)成分による胃障害をより軽減できる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、内服医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。
【0020】
内服医薬製剤中の(B)成分の含有割合は、内服医薬製剤の総質量に対して、4~90質量%が好ましく、7~85質量%がより好ましい。(B)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、(A)成分による胃障害をより軽減でき、(A)成分の溶出性の向上が図れる。(B)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、内服医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。
【0021】
医薬組成物中、(A)成分/(B)成分で表される質量比(A/B比)は、0.005~1.0が好ましく、0.01~0.5がより好ましい。A/B比が上記下限値以上であれば、服用性をより高められる。A/B比が上記上限値以下であれば、胃障害をより低減できる。
【0022】
≪(C)成分≫
内服医薬製剤は、乳糖(乳糖造粒物、無水乳糖を含む)、結晶セルロース(微結晶セルロースを含む)、トウモロコシデンプン(トウモロコシデンプン造粒物を含む)、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、D-マンニトール、ポビドン及びクロスポビドンからなる群から選ばれる少なくとも1種(C)((C)成分)を含有する。本実施形態の内服医薬製剤は、(C)成分を含有することで、内服医薬製剤の変色を抑制できる。
【0023】
(C)成分としては、乳糖((C-1)成分)、トウモロコシデンプン((C-3)成分)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース((C-4)成分)、結晶セルロース((C-5)成分)、マンニトール((C-6)成分)、クロスポビドン((C-7)成分)が好ましい。(C-1)成分は、乳糖造粒物((C-2)成分)でもよい。これらの(C)成分であれば、変色のさらなる抑制が図れる。
これらの(C)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0024】
(C-1)成分は、乳から得られる天然の二糖類で、1個のグルコース単位と1個のガラクトース単位からなる。
(C-2)成分は、乳糖が主成分であり、ヒドロキシプロピルセルロース等で造粒した造粒物である。
(C-3)成分は、成熟したトウモロコシの種子から得たでんぷんである。
(C-4)成分は、セルロースの低置換度ヒドロキシプロピルエーテルである。
(C-5)成分は、繊維性植物からパルプとして得たα-セルロースを酸で部分的に解重合し、精製したものである。
(C-6)成分は、ヘキソースに分類される糖アルコールである。
(C-7)成分は、1-ビニル-2-ピロリドンの架橋重合物である。
無水乳糖は、β-乳糖又はβ-乳糖とα-乳糖の混合物である。(C-1)成分や(C-2)成分が水分を3~6質量%含有するのに対し、無水乳糖の水分量は1.0質量%以下である。上記水分量は、カールフィッシャー水分で測定できる。
微結晶セルロースは、一般のセルロース(パルプ等)を加水分解し、結晶領域のみを残してこれを磨砕、精製、乾燥したものであり、平均粒子径が1~200μmの粒子である。上記平均粒子径の測定方法は、レーザー回折散乱法によって行う。
トウモロコシデンプン造粒物は、日本薬局方トウモロコシデンプンを温湯に懸濁し、噴霧乾燥造粒することにより顆粒状に製したものであり、平均粒子径が3~35μmの球形又は多角形の粒子である。上記平均粒子径の測定方法は、鏡検によって行う。
【0025】
内服医薬製剤中の(C)成分の下限値は、服用1回当たりの(C)成分の量として、1mg以上が好ましく、6mg以上がより好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、内服医薬製剤中で(C)成分が均一に分布し、内服医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。
内服医薬製剤中の(C)成分の上限値は、服用1回当たりの(C)成分の量として、1200mg以下が好ましく、840mg以下がより好ましい。(C)成分の含有量が上記上限値以下であれば、(A)成分の溶出性をより高められる。
服用1回当たりの内服医薬製剤中の(C)成分の含有量の好適な範囲は、1~1200mgが好ましく、6~840mgがより好ましく、25~640mgがさらに好ましい。
なお、内服医薬製剤が錠剤の場合、上記の(C)成分の含有量は、1錠に含まれていてもよいし、1回に服用する錠剤数の総量でもよい。
【0026】
内服医薬製剤中の(C)成分の含有割合は、内服医薬製剤の総質量に対して、1~95質量%が好ましく、3~91質量%がより好ましい。(C)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、(A)成分の溶出性が高められた内服医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。(C)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、内服医薬製剤を錠剤とした場合に、(A)成分の溶出性をより高められる。
【0027】
内服医薬製剤中、(C)成分/(B)成分で表される質量比(C/B比)の下限値は、0.01以上が好ましく、0.03以上がより好ましく、0.06以上がさらに好ましい。C/B比の上限値は、12以下が好ましく、4以下がより好ましく、1以下がさらに好ましい。例えば、C/B比は、0.01~12が好ましく、0.03~4がより好ましく、0.06~1がさらに好ましい。C/B比が上記下限値以上であれば、内服医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。C/B比が上記上限値以下であれば、内服医薬製剤を錠剤とした場合に、摩損が生じにくい硬度を維持しつつ、(A)成分の溶出性をより高められる。
【0028】
≪任意成分≫
内服医薬製剤は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)~(C)成分以外の他の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
任意成分としては、生理活性成分、添加剤(但し、(A)~(C)成分を除く)等が挙げられる。
【0029】
生理活性成分の例としては、解熱鎮痛成分(但し、(A)成分を除く。)(例えばピロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、ロキソプロフェンナトリウム、エテンザミド、スルピリン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl-メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB2及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB6及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンB12及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンD及びその誘導体並びにそれらの塩類、ビタミンE及びその誘導体並びにそれらの塩類、ヘスペリジン及びその誘導体並びにそれらの塩類等)、生薬(イレイセン、エンゴサク、オウゴン、ガイハク、カンゾウ、キキョウ、シャクヤク、セネガ等、第十七改正日本薬局方 医薬品各条「生薬等」に収載の成分)等が挙げられる。これらの生理活性成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
内服医薬製剤中の上記生理活性成分の配合割合は、特に限定されないが、内服医薬製剤の総質量に対して、1~40質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましい。
【0030】
添加剤の例としては、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、香料、色素、基剤、甘味剤、酸味剤等が挙げられる。
結合剤としては、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等が挙げられる。
賦形剤としては、従来公知の賦形剤の内、(C)成分を除く賦形剤が挙げられ、例えば、粉糖、L-システイン等が挙げられる。
崩壊剤としては、従来公知の賦形剤の内、(C)成分を除く崩壊剤が挙げられ、例えば、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
色素としては、三二酸化鉄等が挙げられる。
基剤としては、水、エタノール等が挙げられる。
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
酸味剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸及びそれらの塩等が挙げられる。
これらの添加剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
内服医薬製剤中の添加剤の含有割合は、特に限定されないが、内服医薬製剤の総質量に対して、1~80質量%が好ましく、2~60質量%がより好ましい。上記任意成分の内、賦形剤及び崩壊剤(但し、(C)成分を除く)を含有する場合、その合計量は、内服医薬製剤の総質量に対して、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。賦形剤及び崩壊剤の合計量が上記上限値以下であれば、内服医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。
なお、(A)~(C)成分及び任意成分の合計は、100質量%を超えない。
【0031】
<製造方法>
本実施形態の内服医薬製剤の製造方法は、(A)~(C)成分が共存できるものであれば、特に限定されない。
内服医薬製剤が単層錠である場合、(A)~(C)成分及び必要に応じて任意成分を粉体混合し、得られた粉体混合物を打錠する製造方法が挙げられる。
また、例えば、(A)~(C)成分及び必要に応じて任意成分を粉体混合し、得られた粉体混合物を造粒して造粒粒子の群とし、これを顆粒剤とする製造方法が挙げられる。得られた粒子群をカプセルに封入してカプセル剤としてもよいし、得られた粒子群を打錠して錠剤としてもよい。
【0032】
以下、顆粒剤の造粒方法について説明する。
造粒方法としては、乾式造粒法、湿式造粒法等が挙げられる。湿式造粒法としては、流動層造粒法、攪拌造粒法、転動造粒法、押し出し造粒法等が挙げられる。
造粒方法としては、製造性の点から、湿式造粒法が好ましい。中でも、(A)~(C)成分を効率良く接触可能なこと、操作性、生産性の観点から、流動層造粒法及び攪拌造粒法が好ましい。
造粒条件は、造粒方法に応じて適宜選定できる。例えば、流動層造粒法にて造粒を行う場合は、給気温度60~100℃、給気風量1.0~4.0m3/分で造粒を行うことができる。攪拌造粒法にて造粒を行う場合は、チョッパー回転速度500~3000rpm、アジテーター回転速度100~500rpmにて造粒を行うことできる。
【0033】
製造上問題ない液体を噴霧しながら造粒を行ってもよい。このような液体としては、水、エタノール等が挙げられる。
一般的に湿式造粒法では、水溶性高分子や水不溶性アクリル酸重合体等の結合剤を水に分散又は溶解させた結合液を噴霧しながら造粒を行う。本態様の造粒工程においても、結合液を噴霧しながら造粒を行ってよい。この場合、得られる粒子群(X)を構成する粒子(x)は結合剤を含む。
結合剤が水溶性高分子を含む場合、崩壊性を良好に保つ点から、粒子(x)は、結合剤の含有量が少ないことが好ましい。具体的には、結合液の噴霧量は、水溶性高分子の含有量が、粒子(x)の総質量に対し、5質量%以下となる量が好ましい。
【0034】
造粒後、必要に応じて、水分率の調整等を目的とし、得られた造粒粒子を乾燥する。
乾燥方法としては、特に限定されないが、流動層造粒機又は箱式通気型式乾燥機等の乾燥機を使用して棚乾燥することが好ましい。
乾燥条件は、乾燥方法に応じて適宜選定できる。例えば、流動層造粒機を用いて乾燥を行う場合は、給気温度60~100℃、乾燥時間10~90分間、給気風量1.0~4.0m3/分で乾燥させることができる。箱式通気型式乾燥機を用いて乾燥を行う場合は、乾燥温度40~90℃、乾燥時間15~130分間で乾燥させることができる。
【0035】
以上、粉体混合工程と造粒工程とを有する態様の製造方法について説明したが、粒子群(X)の製造方法はこの態様の製造方法に限定されるものではない。
例えば、造粒工程を有し、粉体混合工程を有しない製造方法により粒子群(X)を製造してもよい。この場合、造粒工程では、造粒する各成分((A)~(C)成分等)を、粉体等の固体の状態で接触させてもよく、液状媒体に溶解又は分散された状態で接触させてもよい。
【0036】
粉体混合工程を経ずに造粒工程を行う場合、(A)~(C)成分の造粒機への投入順序は、製造上問題なければ特に限定されない。例えば、(A)成分を投入し、造粒した後、造粒機に(B)成分及び(C)を投入し、さらに造粒を行ってもよく、(A)成分と(B)成分の投入順序を逆にしてもよい。粒子(x)がより均一になりやすく、さらに工程の煩雑化を避けることができる点では、(A)~(C)成分を同時に又は予め造粒機に投入して造粒を行うことが好ましい。
【0037】
<使用方法>
本実施形態の内服医薬製剤の使用方法は、剤形に応じて適宜決定される。即ち、(A)~(C)成分が所望の服用量となるように、内服医薬製剤を経口で摂取する。
【0038】
本実施形態の内服医薬製剤によれば、(A)成分と(B)成分とを併有するため、(A)成分の薬効を発揮しつつ、(A)成分による胃障害を軽減できる。ここで、(A)成分と(B)成分とが共存すると、内服医薬製剤は経時的に変色する。しかしながら、本実施形態の内服医薬製剤によれば、(C)成分を含有するため、(A)成分と(B)成分とが共存しても、内服医薬製剤の変色を抑制できる。
【0039】
(A)成分と(B)成分とが共存する剤形(単層錠、(A)成分と(B)成分とが同一層に含まれる多層錠、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等)においては、本発明の課題を生じる。このため、本実施形態の内服医薬製剤によれば、(A)成分と(B)成分との共存下において、(C)成分が存在することで、如何なる剤形においても、内服医薬製剤の変色を抑制できる。
【0040】
(第二の実施形態)
本実施形態の固形医薬製剤は、(A)成分を含有し、実質的に(B)成分を含有しない粒子の群(α1)と、(B)成分を含有し、実質的に(A)成分を含有しない粒子の群(β1)とを有する。粒子の群(α1)及び粒子の群(β1)の少なくとも一方は、造粒粒子である。本実施形態の固形医薬製剤は、内服固形製剤であることが好ましい。
なお、「実質的に含有しない」とは、全く含有しないか、又は各成分の影響を生じない程度に含有することをいう。
【0041】
<粒子の群(α1)>
粒子の群(α1)は、(A)成分を含有し、(B)成分を実質的に含有しない造粒粒子群である。後述する粒子の群(β1)が造粒粒子の群である場合、粒子の群(α1)は造粒粒子の群でもよいし(A)成分の粒子が独立して存在する粒子の群でもよい。後述する粒子の群(β1)が造粒粒子でない場合、粒子の群(α1)は、造粒粒子の群である。
(A)成分の種類、含有量及び含有割合は、第一の実施形態と同様である。
粒子の群(α1)の総質量に対する(B)成分の含有量は、例えば、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、0質量%がさらに好ましい。
【0042】
粒子の群(α1)は、(C)成分を含有する造粒粒子の群としてもよい。粒子の群(α1)が(C)成分を含有することで、固形医薬製剤における変色のさらなる抑制が図れる。
(C)成分の種類は、第一の実施形態と同様である。
本実施形態における固形医薬製剤中の(C)成分の含有量は、服用1回当たりの量として、5~1200mgが好ましく、6~540mgがより好ましい。固形医薬製剤中の(C)成分の含有割合は、10~95質量%が好ましく、20~91質量%がより好ましい。前記含有量や含有割合が好ましい理由は、第一の実施形態と同様である。
【0043】
粒子の群(α1)において、(C)成分/(A)成分で表される質量比(C/A比)の下限値は、0.5以上が好ましく、2以上がより好ましい。C/A比が上記下限値以上であれば、固形医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。C/A比の上限値は、50以下が好ましく、40以下がより好ましい。C/A比が上記上限値以下であれば、固形医薬製剤を錠剤とした場合に、摩損が生じにくい硬度を維持しつつ、(A)成分の溶出性をより高められる。
【0044】
粒子の群(α1)は、(A)成分及び(C)成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、第一の実施形態と同様の成分が挙げられる。
【0045】
粒子の群(α1)が造粒粒子の群である場合、粒子の群(α1)の製造方法は、(A)成分と、必要に応じて(C)成分又は任意成分とを粉体混合物とし、これを造粒する製造方法が挙げられる。造粒方法は、第一の実施形態と同様の造粒方法が挙げられる。
【0046】
粒子の群(α1)が造粒粒子の群である場合、粒子の群(α1)の平均粒子径は、10~700μmが好ましく、50~500μmがより好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であれば、体積に対する表面積の割合が小さく、粒子の群(α1)を構成する造粒粒子が、粒子の群(β1)を構成する粒子と接触しても、粒子の群(α1)内の(A)成分に対する(B)成分の影響が少ない。このため、固形医薬製剤の変色を良好に抑制できる。平均粒子径が上記上限値以下であれば、固形医薬製剤を錠剤とした場合に、(A)成分の溶出性を高められる。
粒子の群(α1)が造粒粒子の群ではなく、(A)成分の粒子が独立して存在する粒子の群である場合、その平均粒子径は、5~500μmが好ましく、20~350μmが好ましい。前記平均粒子径が好ましい理由は、粒子の群(α1)が造粒粒子の群である場合と同様である。
なお、上記平均粒子径は、ロータップ法又はレーザー回折散乱法で測定できる。ロータップ法で測定される平均粒子径は質量基準において頻度の累積が50質量%となる粒子径に相当する。
【0047】
<粒子の群(β1)>
粒子の群(β1)は、(B)成分を含有し、(A)成分を実質的に含有しない粒子群である。粒子の群(α1)が造粒粒子の群である場合、粒子の群(β1)は、造粒粒子の群でもよいし、(B)成分の粒子が独立して存在する粒子群でもよい。粒子の群(α1)が造粒粒子でない場合、粒子の群(β1)は、造粒粒子の群である。
(B)成分の種類、含有量及び含有割合は、第一の実施形態と同様である。但し、固形医薬製剤が(C)成分を実質的に含有しない場合には、(B)成分の含有割合は、固形医薬製剤の総質量に対して、4~98質量%が好ましく、7~90質量%がより好ましい。
粒子の群(β1)の総質量に対する(A)成分の含有割合は、例えば、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、0質量%がさらに好ましい。
【0048】
粒子の群(β1)は、(C)成分を含有する造粒粒子の群としてもよい。粒子の群(β1)が(C)成分を含有することで、固形医薬製剤の変色をより良好に抑制できる。
(C)成分の種類は、第一の実施形態と同様である。
本実施形態における固形医薬製剤中の(C)成分の含有量は、服用1回当たりの量として、5~1200mgが好ましく、6~540mgがより好ましい。固形医薬製剤中の(C)成分の含有割合は、0.5~50質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましい。前記含有量や含有割合が好ましい理由は、第一の実施形態と同様である。
【0049】
粒子の群(β1)において、(C)成分/(B)成分で表される質量比(C/B比)の下限値は、0.01以上が好ましく、0.03以上がより好ましい。C/B比が上記下限値以上であれば、固形医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。C/B比の上限値は、12以下が好ましく、4以下がより好ましい。C/B比が上記上限値以下であれば、固形医薬製剤を錠剤とした場合に、摩損が生じにくい強度を維持しつつ、(A)成分の溶出性をより高められる。
【0050】
また、固形医薬組成物中、C/B比の下限値は、0.01以上が好ましく、0.03以上がより好ましい。C/B比が上記下限値以上であれば、固形医薬製剤の変色のさらなる抑制が図れる。C/B比の上限値は、12以下が好ましく、4以下がより好ましい。C/B比が上記上限値以下であれば、固形医薬製剤を錠剤とした場合に、(A)成分の溶出性をより高め、硬度を高められる。
【0051】
粒子の群(β1)は、(B)成分及び(C)成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、第一の実施形態と同様の成分が挙げられる。
【0052】
粒子の群(β1)が造粒粒子の群の場合、粒子の群(β1)の製造方法は、(B)成分と、必要に応じて(C)成分又は任意成分とを粉体混合物とし、これを造粒する製造方法が挙げられる。造粒方法は、第一の実施形態と同様の造粒方法が挙げられる。
【0053】
粒子の群(β1)の平均粒子径は、10~700μmが好ましく、50~500μmがより好ましい。平均粒子径が上記下限値以上であれば、体積に対する表面積の割合が小さく、造粒粒子(β1)が造粒粒子(α1)と接触しても、造粒粒子(α1)内の(A)成分に対する(B)成分の影響が少ない。このため、固形医薬製剤の変色を良好に抑制できる。平均粒子径が上記上限値以下であれば、固形医薬製剤を錠剤とした場合に、服用後の錠剤の崩壊を早められる。
粒子の群(β1)が造粒粒子の群ではなく、(B)成分の粒子が独立して存在する粒子の群である場合、その平均粒子径は、5~500μmが好ましく、20~350μmが好ましい。前記平均粒子径が好ましい理由は、粒子の群(β1)が造粒粒子の群である場合と同様である。
なお、粒子の群(β1)の平均粒子径の測定方法は、粒子の群(α1)の平均粒子径の測定方法と同様である。
【0054】
<任意粒子群>
本実施形態の固形医薬製剤は、粒子の群(α1)及び粒子の群(β1)の他に他の粒子の群(任意粒子群)を有してもよい。任意粒子群としては、例えば、(C)成分を含有し、実質的に(A)成分及び(B)成分を含有しない粒子群が挙げられる。即ち、(C)成分は、粒子の群(α1)及び粒子の群(β1)とは異なる粒子群として、固形医薬製剤中に存在してもよい。
【0055】
<製造方法>
本実施形態の固形医薬製剤の製造方法は、粒子の群(α1)と粒子の群(β1)とを粉体混合し、これを顆粒剤とする。あるいは、得られた顆粒剤をカプセル剤としてもよい。また、例えば、得られた顆粒剤を打錠して、粒子の群(α1)と粒子の群(β1)とを同一層に含む錠剤としてもよい。
【0056】
本実施形態の固形医薬製剤によれば、(A)成分と(B)成分とは、それぞれ異なる粒子に含まれるため、両者が直接接触する機会が少ない。このため、固形医薬製剤における変色を抑制できる。
【0057】
(A)成分と(B)成分とが共存する剤形(単層錠、(A)成分と(B)成分とが同一層に含有されている積層錠、カプセル剤、マイクロカプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤等)においては、本発明の課題を生じる。このため、本実施形態の固形医薬製剤によれば、(A)成分と(B)成分とを各々に含有する粒子を独立させることで、如何なる剤形においても、固形医薬製剤の変色を抑制できる。加えて、(B)成分がマグネシウム原子を含有するため、(A)成分を早期に溶出させ、即効性を高められる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0059】
(使用原料)
<(A)成分>
・A-1:メロキシカム(商品名:メロキシカム、SUN Pharma社製)。
【0060】
<(B)成分>
・B-1:酸化マグネシウム(商品名:日局酸化マグネシウム重質、規格:日局、協和化学工業株式会社製)。
・B-2:炭酸マグネシウム(商品名:重質、規格:日局、協和化学工業株式会社製)。
・B-3:メタケイ酸アルミン酸マグネシウム(商品名:ノイシリン、規格:局外規、富士化学工業株式会社製)。
【0061】
<(B’)成分:(B)成分の比較品>
・B’-1:乾燥水酸化アルミニウムゲル(商品名:S-100、規格:日局、協和化学工業株式会社製)。
【0062】
<(C)成分>
・C-1:乳糖(水和物、Pharmatose200M、規格:日局、DMV社製)。
・C-2:乳糖造粒物(商品名:乳糖G、規格:薬添規、フロイント産業株式会社製)。
・C-3:トウモロコシデプン(商品名:局方松谷コーンスターチ、松谷化学工業株式会社製)。
・C-4:低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:LH-31、規格:日局、信越化学工業株式会社製)。
・C-5:結晶セルロース(商品名:セオラス、グレード:PH-302、規格:日局、旭化成株式会社製)。
・C-6:マンニトール(商品名:ペアリトール200SD、規格:日局、ロケット社製)。
・C-7:クロスポビドン(商品名:Kollidon CL-SF、規格:日局、BASF社製)。
【0063】
<(C’)成分:(C)成分の比較品>
・C’-1:ソルビトール(規格:日局、メルク株式会社製)。
・C’-2:リン酸二水素カリウム二水和物(規格:局外規、太平化学産業株式会社製)。
【0064】
<任意成分>
・ステアリン酸マグネシウム(規格:日局、太平化学産業株式会社製)。
・ポリビニルアルコール(商品名:ゴーノセール、規格:薬添規、三菱ケミカル株式会社製)。
【0065】
(評価方法)
<変色度>
各例の固形医薬組成物を60℃、75%RHの条件下にて2週間保存した。
色差計(CM/700D、コニカミノルタ社製)を用いて、固形医薬組成物について、保存前後のL*値(明度)を測定し、保存前後の明度の差の絶対値(変色度[ΔL])を下記(s)式により算出した。
保存前後でのΔLが3以内の場合は、「課題が発生しない」とみなした。
【0066】
ΔL=|(L1-L0)| ・・・(s)
(s)式中、L0は、保存前のL*であり、L1は、2週間保存後のL*である。
【0067】
<溶出率>
上記変色度の測定における2週間保存後の固形医薬組成物について、日局精製水で溶出試験を行った。37℃±1℃の試験液(日局精製水)900mLにて、回転バスケット法100rpmにてサンプル1錠を攪拌した。撹拌開始後、5分経過時点で液部を採取して試験液とした。試験液を孔径0.45μmのメンブレンフィルターにてろ過し、液体クロマトグラフィーを用いてメロキシカム量を定量した。メロキシカム量の定量は、USP収載のメロキシカム錠の定量法に基づき、分光光度計(UV-2700、株式会社島津製作所製)を用いて、UVで測定した。
下記(t)式により、メロキシカムの溶出率(%)を求めた。
【0068】
溶出率(%)=[5分経過時点でのメロキシカムの溶出量(mg)]÷[1錠中のメロキシカムの含有量]×100 ・・・(t)
【0069】
(実施例1-1~1-11、1-13、1-15、比較例1-1~1-6、参考例1-1~1-6)
表1~4に示す配合比に基づき、(A)成分、(B)成分(又は(B’)成分)及び(C)成分((C’)成分)をプラスチック製の袋内で粉体混合して、100gの粉末の固形医薬組成物(表中、「混合粉」と記載)を得た。
得られた固形医薬組成物について、変色度を評価し、その結果を表中に示す。
なお、(B’)成分又は(C’)成分を用いた場合には、それぞれを(B)成分又は(C)成分を読み替えて、表中の「C/B比」を表す(以降において同様)。
【0070】
(実施例1-12、1-14)
表2に示す配合比に基づき、(A)~(C)成分及び任意成分をプラスチック製の袋内で粉体混合して、3000gの粉体混合物を得た。
実施例1-12、1-14は、上記で得られた粉体混合物をLIBRA2(菊水製作所社製)で打錠して、各例の錠剤(標準R錠、300mg/錠)を得た。打錠に用いた杵はφ8.5mmであり、硬度は2kgf~15kgfとした。
得られた錠剤について、変色度を評価し、その結果を表中に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
表1~4に示す通り、本発明を適用した実施例1-1~1-15は、いずれも変色度が4.1以下であった。
(C)成分を欠く比較例や、(C)成分に代えて(C’)成分を用いた比較例1-1~1-6は、変色度が5.9以上であった。
(A)成分又は(B)成分のいずれかを欠く参考例は、いずれも変色度が2.5以下であった。
【0076】
(実施例2-1~2-3)
表5に示す配合比に基づき、粒子の群(α1)の原料の粉体(但し、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルアルコールを除く)をプラスチック製の袋内で粉体混合して、3000gの粉体混合物を得た。得られた粉体混合物を流動層造粒機(フロイント産業株式会社製、「FLO-5」)に投入し、4質量%の結合液(ヒドロキシプロピルセルロース又はポリビニルアルコールの水溶液)を噴霧しながら、流動層造粒を行った。造粒条件を給気温度60~100℃、給気風量1.0~4.0m3/分とした。粒子の群(α1)中のヒドロキシプロピルセルロース又はポリビニルアルコールの含有量が固形物換算で表中に示す値となるように結合液を噴霧して流動層造粒を完了させ、各例の粒子の群(α1)を造粒粒子の群として得た。引き続き同じ流動層造粒機を用いて給気温度70℃、給気風量1.5m3/分にて20分間、粒子の群(α1)を乾燥した。得られた粒子の群(α1)に対して、表に示す配合比に従い、粒子の群(β1)を加え、プラスチック製の袋内で粉体混合して、各例の粉末の固形医薬組成物を得た。なお、粒子の群(β1)は、造粒粒子ではなく、各々の成分が粒子として独立した混合粉体である。表5においては、比較対象として、比較例1-1を記載した。
得られた固形医薬製剤について、変色率を評価し、その結果を表中に示す。
【0077】
【0078】
表5に示すように、本発明を適用した実施例2-1~2-3は、いずれも変色度が1.4以下であった。(A)成分と(B)成分とを単に混合した比較例1-1は、変色度が7.8であった。
【0079】
(実施例3-1~3-5、参考例3-1)
表6に示す配合比に基づき、(A)成分、(B)成分(又は(B’)成分)、(C)成分及びステアリン酸マグネシウム(滑剤)をプラスチック製の袋内で粉体混合して、3000gの粉体混合物を得た。
得られた粉体混合物をLIBRA2(菊水製作所社製)で打錠して、各例の錠剤(標準R錠、300mg/錠)を得た。打錠に用いた杵はφ8.5mmであり、硬度を2kgf~15kgfとした。
得られた錠剤について、変色度及び溶出率を評価し、その結果を表中に示す。
【0080】
【0081】
表6に示すように、本発明を適用した実施例3-1~3-5は、変色度が0.4~2.5で、溶出率が40~61%であった。(B)成分に代えて(B’)成分を用いた参考例3-1は、変色度が1.9で、溶出率が21%であった。
なお、実施例3-1~3-5は、1錠300mgの標準R錠であるが、1錠質量は任意で設定可能であり、例えば、実施例3-2は(A)成分を5mg含有する1錠196mgの錠剤としてもよく、実施例3-3は(A)成分を10mg含有する1錠262mgの錠剤としてもよく、これらの錠剤の変色度や溶出率は、対応する実施例と同様の効果が得られる。