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特許7515259塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システム
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  • 特許-塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システム 図1
  • 特許-塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システム 図2
  • 特許-塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システム 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システム
(51)【国際特許分類】
   C01F 5/30 20060101AFI20240705BHJP
   C22B 26/22 20060101ALI20240705BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20240705BHJP
   C22B 3/10 20060101ALI20240705BHJP
   C25C 3/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C01F5/30
C22B26/22
C22B3/44 101A
C22B3/10
C25C3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020001483
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021109790
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和久
(72)【発明者】
【氏名】清澤 正志
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133045(JP,A)
【文献】国際公開第2019/150514(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 5/30
C22B 26/22
C22B 3/44
C22B 3/10
C25C 3/04
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
晶析部と、
前記晶析部と接続された沈降部と、
前記沈降部と接続された除去部と、
前記除去部と接続された酸アルカリ生成部と、
前記沈降部と接続された反応部と、を備え、
前記晶析部は、海水を原料とする被処理水に水酸化ナトリウム水溶液を加えて水酸化マグネシウムを晶析させ、前記水酸化マグネシウムの粒子が分散する反応スラリーを生成し、
前記沈降部は、前記反応スラリーを貯留して前記粒子を沈降させ、高濃度で前記粒子が含まれる回収スラリーと、低濃度で前記粒子が含まれる分離液とに分離し、
前記除去部は、前記被処理水または前記分離液から2価陽イオンを除去して反応液を生成し、
前記酸アルカリ生成部は、前記反応液から水酸化ナトリウム水溶液と、塩酸とを生成し、
前記反応部は、前記回収スラリーに塩酸を加え、塩化マグネシウム水溶液を生成し、
前記酸アルカリ生成部は、前記反応液から水酸化ナトリウム水溶液と、塩酸とを生成する本体部と、
前記本体部と前記晶析部とを接続し、前記晶析部に前記水酸化ナトリウム水溶液を供給する第1接続部と、
前記本体部と前記反応部とを接続し、前記反応部に前記塩酸を供給する第2接続部と、を有する塩化マグネシウム水溶液の製造システム。
【請求項2】
前記晶析部の上流側において前記晶析部と接続された前処理部を有し、
前記前処理部は、前記被処理水から純水を分離する分離部を有する請求項1に記載の塩化マグネシウム水溶液の製造システム。
【請求項3】
前記除去部から前記酸アルカリ生成部へ前記反応液を供給する経路内に設けられ、前記純水の少なくとも一部と前記反応液とを混合する混合部と、
前記純水を前記分離部から前記混合部へ供給する第1供給管を有する請求項2に記載の塩化マグネシウム水溶液の製造システム。
【請求項4】
前記晶析部の上流側において前記晶析部と接続された前処理部を有し、
前記前処理部は、前記被処理水に塩酸を加え、前記被処理水に含まれる少なくとも一部の炭酸を除去する脱炭酸部を有し、
前記酸アルカリ生成部は、前記本体部と前記脱炭酸部とを接続し、前記脱炭酸部に前記塩酸を供給する第3接続部を有する請求項1から3のいずれか1項に記載の塩化マグネシウム水溶液の製造システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の塩化マグネシウム水溶液の製造システムと、
前記塩化マグネシウム水溶液から水を分離し塩化マグネシウムを生成する生成部と、
前記塩化マグネシウムを溶融塩電解し金属マグネシウムを得る電解部と、を有するマグネシウムの製造システム。
【請求項6】
前記除去部から前記酸アルカリ生成部へ前記反応液を供給する経路内に設けられ、前記生成部で分離された水の少なくとも一部と前記反応液とを混合する混合部と、
前記生成部で分離された水を前記生成部から前記混合部へ供給する第2供給管を有する請求項5に記載のマグネシウムの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水に溶解したマグネシウムを回収する方法として、Dow法と称される方法が知られている。Dow法では、まず海水にアルカリを添加して水酸化マグネシウム(Mg(OH))を得る。次いで、得られたMg(OH)に塩酸を添加して塩化マグネシウム(MgCl)を得る。さらに、得られたMgClを溶融塩電解することで金属マグネシウムを得る(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】軽金属、Vol.18、No.2(1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記Dow法では、Mg(OH)を得る反応で大量のアルカリを使用し、MgClを得る反応で大量の塩酸を使用する。これらの薬品に係る費用が、海水からマグネシウムを製造する際のコストを高める原因となっている。そのため、製造コストを低減可能とする改善が求められていた。
【0005】
本開示はこのような事情に鑑みてなされたものであって、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減可能とする塩化マグネシウム水溶液の製造システムを提供することを目的とする。また、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減可能とするマグネシウムの製造システムを提供することを併せて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本開示に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムは、晶析部と、前記晶析部と接続された沈降部と、前記沈降部と接続された除去部と、前記除去部と接続された酸アルカリ生成部と、前記沈降部と接続された反応部と、を備え、前記晶析部は、海水を原料とする被処理水に水酸化ナトリウム水溶液を加えて水酸化マグネシウムを晶析させ、前記水酸化マグネシウムの粒子が分散する反応スラリーを生成し、前記沈降部は、前記反応スラリーを貯留して前記粒子を沈降させ、高濃度で前記粒子が含まれる回収スラリーと、低濃度で前記粒子が含まれる分離液とに分離し、前記除去部は、前記被処理水または前記分離液から2価陽イオンを除去して反応液を生成し、前記酸アルカリ生成部は、前記反応液から水酸化ナトリウム水溶液と、塩酸とを生成し、前記反応部は、前記回収スラリーに塩酸を加え、塩化マグネシウム水溶液を生成し、前記酸アルカリ生成部は、前記反応液から水酸化ナトリウム水溶液と、塩酸とを生成する本体部と、前記本体部と前記晶析部とを接続し、前記晶析部に前記水酸化ナトリウム水溶液を供給する第1接続部と、前記本体部と前記反応部とを接続し、前記反応部に前記塩酸を供給する第2接続部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減可能とする塩化マグネシウム水溶液の製造システムを提供することができる。また、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減可能とするマグネシウムの製造システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムを示す模式図である。
図2図2は、本開示の第2実施形態に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムの説明図である。
図3図3は、本開示の第3実施形態に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、図1を参照しながら、本開示の第1実施形態に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムについて説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0010】
図1は、本開示の第1実施形態に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システム1およびマグネシウムの製造システム100を示す模式図である。
【0011】
(塩化マグネシウム水溶液の製造システム)
塩化マグネシウム水溶液の製造システム1は、晶析部10と、沈降部20と、除去部30と、酸アルカリ生成部40と、反応部50と、前処理部60とを備える。
【0012】
(前処理部(脱炭酸部))
前処理部60は、晶析部10の上流側において晶析部10と接続されている。前処理部60では、晶析部10に供給される被処理水L1を予め処理し、晶析部10以降の処理に適した状態に調整する。本実施形態の塩化マグネシウム水溶液の製造システム1において、前処理部60は、被処理水L1に溶解する炭酸の少なくとも一部を除去する脱炭酸部61を有する。
【0013】
被処理水は、海水のほか、海水から水を除去して濃縮した濃縮海水も含む。濃縮海水は、例えば、海水を逆浸透膜処理し、水を分離して生じる濃縮液が該当する。
【0014】
さらに、被処理水は、海水または濃縮海水に脱炭酸処理を施し、炭酸を低減させた液も含む。
【0015】
脱炭酸部61は、公知の構成を採用することができる。例えば、脱炭酸部61は、被処理水L1に塩酸(HCl aq.)を加えた後、被処理水L1に曝気することで、被処理水L1に含まれる炭酸を除去する脱炭酸塔を挙げることができる。被処理水L1を脱炭酸することで、工程内で炭酸塩が生成し難くなり、塩化マグネシウム水溶液の製造システム1を長期間安定して運転させることができる。
【0016】
脱炭酸部61には配管P1と配管P61とが接続されている。脱炭酸部61には、配管P1を介して被処理水L1が供給される。また、脱炭酸部61で脱炭酸処理された被処理水(被処理水L61)は、配管P61を介して晶析部10に供給される。
【0017】
(晶析部)
晶析部10は、被処理水L61に水酸化ナトリウム水溶液(NaOH aq.)を加えてMg(OH)を晶析させる装置である。被処理水L61は、配管P61を介して晶析部10に供給される。
【0018】
晶析部10においては、Mg(OH)の粒子が分散する反応スラリーL2が生成する。
【0019】
(沈降部)
沈降部20は、配管P2を介して晶析部10と接続されている。晶析部10で生じた反応スラリーL2は、配管P2を介して沈降部20に供給される。
【0020】
沈降部20は、反応スラリーL2を貯留してMg(OH)の粒子を沈降させる沈降槽を採用することができる。沈降部20は、反応スラリーL2を高濃度でMg(OH)の粒子が含まれる回収スラリーSと、低濃度でMg(OH)の粒子が含まれる分離液L3とに分離する。分離液L3には、カルシウムイオン(Ca2+)が多く残存する。
【0021】
(反応部)
反応部50は、配管P31を介して沈降部20と接続されている。沈降部20で生じた回収スラリーSは、配管P31を介して反応部50に供給される。
【0022】
反応部50は、回収スラリーSに塩酸を加え、塩化マグネシウム水溶液を生成する。
【0023】
(除去部)
除去部30は、配管P32を介して沈降部20と接続されている。沈降部20で生じた分離液L3は、配管P32を介して除去部30に供給される。
【0024】
除去部30は、分離液L3に含まれる2価陽イオンの少なくとも一部を除去し、2価陽イオン濃度を低減させた反応液L4を生成する。分離液L3から除去される2価陽イオンとしては、代表的にはカルシウムイオンが挙げられる。
【0025】
除去部30としては、2価陽イオンを選択的に除去可能な公知の電気透析槽を採用することができる。
【0026】
また、除去部30としては、2価陽イオンを分離するナノろ過膜であってもよい。
【0027】
また、除去部30としては、分離液L3に硫酸イオンを添加する反応槽であってもよい。分離液L3に硫酸イオンを添加すると、Ca2+とSO 2-とが反応し、CaSOが生じて沈降する。生じたCaSOを除去することで分離液L3中のカルシウムイオン濃度を低減することができる。
【0028】
(酸アルカリ生成部)
酸アルカリ生成部40は、配管P4を介して除去部30と接続されている。除去部30で生じた反応液L4は、配管P4を介して酸アルカリ生成部40に供給される。
【0029】
酸アルカリ生成部40は、本体部40Aと、第1接続部41と、第2接続部42と、第3接続部43とを有する。
【0030】
本体部40Aは、反応液L4から水酸化ナトリウム水溶液と、塩酸とを生成する。本体部40Aは、例えば、公知のバイポーラ膜や、電気分解装置を採用することができる。
【0031】
バイポーラ膜では、下記の反応式に基づいて、塩酸および水酸化ナトリウム水溶液が生成する。
NaCl+HO → HCl+NaOH
【0032】
電気分解装置では、下記の反応式に基づいて、塩酸および水酸化ナトリウム水溶液が生成する。
NaCl+HO → NaOH+1/2H+1/2Cl
+Cl → 2HCl
【0033】
酸アルカリ生成部40に供給される反応液L4は、除去部30においてカルシウムイオンを含む2価陽イオンが低減している。これにより、酸アルカリ生成部40において硫酸カルシウム及び水酸化カルシウムなどのスケール成分が析出しにくく、安定した連続運転が可能となる。
【0034】
第1接続部41は、配管P100と、貯留槽401と、供給装置411とを有する。
【0035】
配管P100は、本体部40Aと晶析部10とを接続する。
【0036】
貯留槽401は、本体部40Aで生成した水酸化ナトリウム水溶液を貯留する。
【0037】
供給装置411は、貯留槽401に貯留された水酸化ナトリウム水溶液を晶析部10に供給する。
【0038】
第2接続部42は、配管P40と、貯留槽402と、配管P200と、供給装置421とを有する。
【0039】
配管P40は、本体部40Aと貯留槽402とを接続する。
【0040】
貯留槽402は、本体部40Aで生成した塩酸を貯留する。
【0041】
配管P200は、貯留槽402と反応部50とを接続する。
【0042】
供給装置421は、配管P200を介して、貯留槽402に貯留された塩酸を反応部50に供給する。
【0043】
第3接続部43は、配管P40と、貯留槽402と、配管P300と、供給装置431とを有する。
【0044】
配管P300は、貯留槽403と脱炭酸部61とを接続する。
【0045】
供給装置431は、配管P300を介して、貯留槽403に貯留された塩酸を脱炭酸部61に供給する。
【0046】
(作用効果)
上述したように、本実施形態の塩化マグネシウム水溶液の製造システム1では、酸アルカリ生成部40において塩酸と水酸化ナトリウム水溶液とを生成し、晶析部10、反応部50および脱炭酸部61に供給する。すなわち、塩化マグネシウム水溶液の製造システム1では、晶析部10で用いる水酸化ナトリウム水溶液と、反応部50および脱炭酸部61で用いる塩酸とを、塩化マグネシウム水溶液の製造システム1内で生成している。
【0047】
そのため、本実施形態の塩化マグネシウム水溶液の製造システム1では、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減することができる。
【0048】
(マグネシウムの製造システム)
マグネシウムの製造システム100は、上述の塩化マグネシウム水溶液の製造システム1に加え、生成部80と、電解部90とを有する。
【0049】
(生成部)
生成部80は、塩化マグネシウム水溶液から水を分離しMgClを得る装置である。生成部80では、塩化マグネシウム水溶液を加熱、減圧、送風およびこれらの組み合わせにより処理し、水分を蒸発させる構成を採用することができる。
【0050】
生成部80で生じたMgClは、電解部90に供給される。
【0051】
(電解部)
電解部90は、MgClを溶融塩電解し、金属マグネシウムを得る装置である。電解部90の構成としては、公知の溶融塩電解設備を採用することができる。
【0052】
以上のような塩化マグネシウム水溶液の製造システム1によれば、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減した上で塩化マグネシウム水溶液を製造することができる。
【0053】
また、以上のようなマグネシウムの製造システム100によれば、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減した上でマグネシウムを製造することができる。
【0054】
[第2実施形態]
図2は、本開示の第2実施形態に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムの説明図である。本実施形態の塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムは、第1実施形態の塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムと一部共通している。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0055】
(塩化マグネシウム水溶液の製造システム)
塩化マグネシウム水溶液の製造システム2は、前処理部60として、脱炭酸部61と分離部62とを有する。
【0056】
分離部62は、脱炭酸部61と晶析部10との間に設けられている。分離部62は、脱炭酸部61と配管P21を介して接続している。また、分離部62は、晶析部10と配管P22を介して接続している。
【0057】
分離部62は、脱炭酸部61において炭酸が低減した被処理水L61から純水PWを分離する逆浸透膜である。分離部62は、被処理水L61から純水PWを分離した被処理水(被処理水L62)を生成する。そのため、分離部62を有する塩化マグネシウム水溶液の製造システム2では、塩化マグネシウム水溶液と共に純水PWを製造することができる。
【0058】
被処理水L62は、配管P62を介して晶析部10に供給される。晶析部10より下流側の処理は、第1実施形態で説明したとおりに行われる。
【0059】
また、純水PWの少なくとも一部は、第1供給管P63を介して、配管P4内に設けられた混合部70に供給される。本実施形態において混合部70は、配管P4と第1供給管P63とが接続する箇所を指す。
【0060】
配管P4では、反応液L4と純水PWとが混合され、反応液L4の濃度が下がる。これにより、酸アルカリ生成部40における処理負担が軽減する。また、反応液L4の希釈に純水PWを用いるため、酸アルカリ生成部40において硫酸カルシウム及び水酸化カルシウムなどのスケール成分が析出しにくく、安定した連続運転が可能となる。
【0061】
なお、本実施形態においては、混合部70は配管P4と第1供給管P63との接続箇所としたが、混合部として反応液L4と純水PWとを混合する混合槽を配管P4の経路内に設けてもよい。
【0062】
このような構成の塩化マグネシウム水溶液の製造システム2においても、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減した上で塩化マグネシウム水溶液を製造することができる。
【0063】
[第3実施形態]
図3は、本開示の第3実施形態に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムおよびマグネシウムの製造システムの説明図である。本実施形態において第1,第2実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0064】
(塩化マグネシウムの製造システム)
塩化マグネシウム水溶液の製造システム3は、前処理部60として、脱炭酸部61と分離部62とを有する。
【0065】
また、除去部30には、配管P64を介して、沈降部20で生じた分離液L3ではなく、分離部62で生成した被処理水L62の一部を除去部30に供給する。塩化マグネシウム水溶液の製造システム3においては、沈降部20で生じた分離液L3は廃棄する。
【0066】
分離液L3は、回収スラリーSと比べて低濃度ではあるが、液中にMg(OH)の粒子が分散していることがある。そのため、分離液L3を除去部30において分離液L3を処理すると、除去部30の内部でMg(OH)の粒子が閉塞し、除去部30の性能が低下する懸念がある。
【0067】
対して、被処理水L62には、分離液L3のように液中に分散するMg(OH)の粒子は存在しないため、上述した除去部30の性能が低下を抑制することができ、長期間安定して運転させることができる。
【0068】
(マグネシウムの製造システム)
マグネシウムの製造システム100は、生成部80で塩化マグネシウム水溶液から分離されたを混合部70へ供給する第2供給管P300を有する。は、例えば生成部80において塩化マグネシウム水溶液から蒸発させた水(純水)である。
【0069】
配管P5では、反応液L5とが混合され、反応液L5の濃度が下がる。これにより、酸アルカリ生成部40における処理負担が軽減する。また、反応液L5が希釈されることにより、酸アルカリ生成部40において硫酸カルシウム及び水酸化カルシウムなどのスケール成分が析出しにくく、安定した連続運転が可能となる。
【0070】
このような構成の塩化マグネシウム水溶液の製造システム3においても、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減した上で塩化マグネシウム水溶液を製造することができる。
【0071】
また、このような構成のマグネシウム水溶液の製造システム100においても、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減した上でマグネシウム水溶液を製造することができる。
【0072】
以上、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施の形態例について説明したが、本開示は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態においては、前処理部60の構成として、脱炭酸部61の後に分離部62を設けることとしたが、分離部62の後に脱炭酸部61を設けることとしてもよい。
【0074】
また、前処理部60においては、分離部62のみを設けることとしてもよい。
【0075】
さらに、前処理部60は省略することもできる。
【0076】
<付記>
各実施形態に記載の塩化マグネシウム水溶液の製造システムは、例えば以下のように把握される。
【0077】
[1]第1の態様に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムは、晶析部10と、晶析部10と接続された沈降部20と、沈降部20と接続された除去部30と、除去部30と接続された酸アルカリ生成部40と、沈降部20と接続された反応部50と、を備え、晶析部10は、海水を原料とする被処理水L1に水酸化ナトリウム水溶液を加えて水酸化マグネシウムを晶析させ、水酸化マグネシウムの粒子が分散する反応スラリーL2を生成し、沈降部20は、反応スラリーL2を貯留して粒子を沈降させ、高濃度で粒子が含まれる回収スラリーSと、低濃度で粒子が含まれる分離液L3とに分離し、除去部30は、被処理水L1または分離液L3から2価陽イオンを除去して反応液L4を生成し、酸アルカリ生成部40は、反応液L4から水酸化ナトリウム水溶液と、塩酸とを生成し、反応部50は、回収スラリーSに塩酸を加え、塩化マグネシウム水溶液を生成し、酸アルカリ生成部40は、反応液L4から水酸化ナトリウム水溶液と、塩酸とを生成する本体部40Aと、本体部40Aと晶析部10とを接続し、晶析部10に水酸化ナトリウム水溶液を供給する第1接続部41と、本体部40Aと反応部50とを接続し、反応部50に塩酸を供給する第2接続部42と、を有する塩化マグネシウム水溶液の製造システム。
【0078】
上記態様によれば、酸アルカリ生成部40において塩酸と水酸化ナトリウム水溶液とを生成し、晶析部10、反応部50および脱炭酸部61に供給することができる。これにより、塩化マグネシウム水溶液の製造システムでは、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減することができる。
【0079】
[2]第2の態様に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムは、海水から被処理水L1を得る前処理部60を有し、前処理部60は、被処理水L1から水を分離する分離部62を有する。
【0080】
上記態様によれば、塩化マグネシウム水溶液と共に純水を製造することができる。
【0081】
[3]第3の態様に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムは、除去部30から酸アルカリ生成部40へ反応液L4を供給する経路内に設けられ、純水PWの少なくとも一部と反応液L4とを混合する混合部70と、水を分離部62から混合部70へ供給する第1供給管P63を有する。
【0082】
上記態様によれば、反応液L4と純水PWとが混合され、反応液L4の濃度が下がる。これにより、酸アルカリ生成部40における処理負担が軽減する。また、反応液L4の希釈に純水PWを用いるため、酸アルカリ生成部40において硫酸カルシウム及び水酸化カルシウムなどのスケール成分が析出しにくく、安定した連続運転が可能となる。
【0083】
[4]第4の態様に係る塩化マグネシウム水溶液の製造システムは、晶析部10の上流側において晶析部10と接続された前処理部60を有し、前処理部60は、被処理水L1に塩酸を加え、被処理水L1に含まれる少なくとも一部の炭酸を除去する脱炭酸部61を有し、酸アルカリ生成部40は、本体部40Aと脱炭酸部61とを接続し、脱炭酸部61に塩酸を供給する第3接続部43を有する。
【0084】
上記態様によれば、工程内で炭酸塩が生成し難くなり、塩化マグネシウム水溶液の製造システムを長期間安定して運転させることができる。
【0085】
また、各実施形態に記載のマグネシウムの製造システムは、例えば以下のように把握される。
【0086】
[5]第5の態様に係るマグネシウムの製造システムは、第1の態様から第4の態様のいずれか1つの塩化マグネシウム水溶液の製造システムと、塩化マグネシウム水溶液から水を分離し塩化マグネシウムを生成する生成部80と、塩化マグネシウムを溶融塩電解し金属マグネシウムを得る電解部90と、を有する。
【0087】
上記態様によれば、従来の方法よりも薬品に係る費用を低減可能とするマグネシウムの製造システム100を提供することができる。
【0088】
[6]第6の態様に係るマグネシウムの製造システムは、除去部30から酸アルカリ生成部40へ反応液L5を供給する経路内に設けられ、生成部80で分離されたの少なくとも一部と反応液L5とを混合する混合部70と、生成部80で分離されたを生成部80から混合部70へ供給する第2供給管P300を有する。
【0089】
上記態様によれば、反応液L5とが混合され、反応液L5の濃度が下がる。これにより、酸アルカリ生成部40における処理負担が軽減する。また、反応液L5が希釈されることにより、酸アルカリ生成部40において硫酸カルシウム及び水酸化カルシウムなどのスケール成分が析出しにくく、安定した連続運転が可能となる。
【符号の説明】
【0090】
1,2,3…塩化マグネシウム水溶液の製造システム、10…晶析部、20…沈降部、30…除去部、40…酸アルカリ生成部、40A…本体部、41…第1接続部、42…第2接続部、43…第3接続部、50…反応部、60…前処理部、61…脱炭酸部、62…分離部、70…混合部、80…生成部、90…電解部、100,200…マグネシウムの製造システム、L1,L61,L62…被処理水、L2…反応スラリー、L3…分離液、L4…反応液、P63…第1供給管、P81…第2供給管、PW…純水、S…回収スラリー、W1…水
図1
図2
図3