(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】クレーン及びクレーンの点検方法
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20240705BHJP
B66C 23/64 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B66C15/00 L
B66C23/64
(21)【出願番号】P 2020055421
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-01-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503032946
【氏名又は名称】住友重機械建機クレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲いく▼竣
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-118777(JP,U)
【文献】中国実用新案第201901541(CN,U)
【文献】実開昭49-046415(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0360809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00-15/06;19/00-23/94
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に接続されたブームとを有するクレーンであって、
前記ブームには、前記ブームが
水平面を基準にブームの中心線の角度が60°~100のいずれかの角度である起立姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第1足場
と、
前記ブームが前記起立姿勢のときに、前記第1足場まで作業員が昇降可能な昇降用具と、
が設けられ
、
前記第1足場と前記昇降用具とは構造が異なる、
クレーン。
【請求項2】
前記ブームには、更に、前記ブームが倒伏姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第2足場が設けられている、
請求項1記載のクレーン。
【請求項3】
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に接続されたブームとを有するクレーンであって、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第1足場が設けられ、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに、前記第1足場まで作業員が昇降可能な昇降用具が設けられ、
前記昇降用具は、
前記ブームの側方に着脱可能で、前記ブームが起立姿勢のときに、前記クレーン本体から作業員が昇降可能な着脱式昇降用具を含む、
クレーン。
【請求項4】
前記ブームには、更に、前記ブームが倒伏姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第2足場が設けられている、
請求項3記載のクレーン。
【請求項5】
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に接続されたブームとを有するクレーンであって、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第1足場と、前記ブームが倒伏姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第2足場とが設けられ、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに、前記第1足場まで作業員が昇降可能な昇降用具が設けられ、
前記第2足場には、前記ブームの起立側から見て、前記昇降用具の奥方に配置された昇降用具下第2足場を含む、
クレーン。
【請求項6】
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に接続されたブームとを有するクレーンであって、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第1足場と、前記ブームが倒伏姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第2足場とが設けられ、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに、前記第1足場まで作業員が昇降可能な昇降用具が設けられ、
前記第2足場の一部は、前記ブームの起立側から見て、前記昇降用具の側方に隣接配置されている、
クレーン。
【請求項7】
前記第2足場に、前記ブームの内部に通じる開口部が設けられ、
前記ブームの内部には、前記作業員が前記開口部から到達可能な第3足場が設けられている、
請求項2、請求項4、請求項5又は請求項6に記載のクレーン。
【請求項8】
前記第1足場又は前記第2足場は、一端部を中心に回動可能に支持された回動式足場を含む、
請求項2、請求項4、請求項5、請求項6又は請求項7に記載のクレーン。
【請求項9】
前記ブームには点検対象装置が配置され、
前記第1足場は、前記点検対象装置に対応する位置に設けられている、
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項10】
前記ブームが倒伏姿勢のときに前記第2足場の第1箇所から第2足場の第2箇所へ前記着脱式昇降用具を介して作業員が移動可能である、
請求項4に記載のクレーン。
【請求項11】
前記第1足場は、前記ブームの回動軸に沿った方向において前記ブームの中央よりも一方に設けられた左第1足場と他方に設けられた右第1足場とを含む、
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のクレーン。
【請求項12】
前記第2足場は、前記ブームの回動軸に沿った方向において前記ブームの中央よりも一方に設けられた左第2足場と他方に設けられた右第2足場とを含む、
請求項2記載のクレーン。
【請求項13】
前記第2足場は、前記ブームが倒伏姿勢のときに、前記左第2足場と前記右第2足場とへ作業員が移動可能な中継第2足場を含む、
請求項12記載のクレーン。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のクレーンの点検方法であって、前記ブームが起立姿勢の状態で、作業員が前記第1足場に立ってブームに搭載された点検対象装置を点検する、
クレーンの点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン及びクレーンの点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、下部ブームにウインチが搭載されたクレーンが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クレーンのブームには点検を要する装置が搭載される。従来、ブームに搭載された装置については、ブームが倒伏した姿勢のときに作業員が装置に接近し、点検作業が可能となる。したがって、ブームが起立した姿勢にあるときに、ブームに搭載された装置の点検が必要になった場合、点検作業の前にブームを倒伏しなければならず、ブームの倒伏には時間がかかるため、速やかな点検が行えないという課題があった。
【0005】
本発明は、ブームが起立した姿勢のときに点検が必要となった場合でも、ブームに搭載された装置を速やかに点検可能なクレーン及びクレーンの点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)
本発明に係る一つの態様のクレーンは、
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に接続されたブームとを有するクレーンであって、
前記ブームには、前記ブームが水平面を基準にブームの中心線の角度が60°~100のいずれかの角度である起立姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第1足場と、
前記ブームが前記起立姿勢のときに、前記第1足場まで作業員が昇降可能な昇降用具と、
が設けられ、
前記第1足場と前記昇降用具とは構造が異なる。
(2)
本発明に係るもう一つの態様のクレーンは、
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に接続されたブームとを有するクレーンであって、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第1足場が設けられ、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに、前記第1足場まで作業員が昇降可能な昇降用具が設けられ、
前記昇降用具は、
前記ブームの側方に着脱可能で、前記ブームが起立姿勢のときに、前記クレーン本体から作業員が昇降可能な着脱式昇降用具を含む。
(3)
本発明に係るもう一つの態様のクレーンは、
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に接続されたブームとを有するクレーンであって、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第1足場と、前記ブームが倒伏姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第2足場とが設けられ、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに、前記第1足場まで作業員が昇降可能な昇降用具が設けられ、
前記第2足場には、前記ブームの起立側から見て、前記昇降用具の奥方に配置された昇降用具下第2足場を含む。
(4)
本発明に係るもう一つの態様のクレーンは、
クレーン本体と、前記クレーン本体に起伏可能に接続されたブームとを有するクレーンであって、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第1足場と、前記ブームが倒伏姿勢のときに作業員が前記クレーン本体から到達可能な第2足場とが設けられ、
前記ブームには、前記ブームが起立姿勢のときに、前記第1足場まで作業員が昇降可能な昇降用具が設けられ、
前記第2足場の一部は、前記ブームの起立側から見て、前記昇降用具の側方に隣接配置されている。
【0007】
本発明に係るクレーンの点検方法は、
前記クレーンの点検方法であって、前記ブームが起立姿勢の状態で、作業員が前記第1足場に立ってブームに搭載された点検対象装置を点検する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブームが起立した姿勢のときに点検が必要となった場合でも、ブームに搭載された装置を速やかに点検できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態のクレーンを示す全体図である。
【
図2】ブームが起立姿勢のときのブーム下部を示す斜視図である。
【
図3】ブームが倒伏姿勢のときのブーム下部を示す斜視図である。
【
図4】回動式の左上第1足場の回動構造を示す斜視図である。
【
図6】第2足場の開口部と第3足場を示す側面図である。
【
図7】ブームが起立姿勢のときの点検作業の一例を説明する図である。
【
図8】ブームが倒伏姿勢のときの点検作業の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態のクレーンを示す全体図である。本実施形態のクレーン1はタワー式クローラクレーンであり、キャブ及びメインフレームを有するクレーン本体2と、クレーン本体2に回動可能に接続されたブーム(タワーブーム)3と、ブーム3に回動可能に接続されたジブ4と、ワイヤロープを巻回する複数のウインチとを備える。クレーン本体2には、並進走行する走行体6と、走行体6に対して旋回する旋回装置7とが設けられている。ブーム3は、クレーン本体2に対して回動することで起伏する。複数のウインチは、ブーム3(下部ブーム)に搭載された2つのウインチ8a、8bを含む。ウインチ8a、8bは、点検を要する点検対象装置である。
【0012】
本明細書においては、倒伏姿勢におけるブーム3の上側、すなわち、起立姿勢におけるブーム3の後ろ側(カウンタウエイト2aに近い側)を、ブーム3の起立側と呼ぶ。倒伏姿勢におけるブーム3の下側、すなわち、起立姿勢におけるブーム3の前側を、ブーム3の倒伏側と呼ぶ。ブーム3の倒伏姿勢とは、水平面を基準にブーム3の中心線M1の角度が-10°~15°の姿勢を意味する。ブーム3の起立姿勢とは、水平面を基準にブーム3の中心線M1の角度が60°~100°の姿勢を意味する。クレーン本体2に立ってブーム3の方を向いたときの左方及び右方を、ブーム3においても左方及び右方と呼ぶ。左右方向はブーム3の回動軸に沿った方向に相当する。
【0013】
さらに、本明細書において足場とは、ブーム3の構成部材とは別で存在する作業員が配置可能なスペースを有する構造物と定義される。つまり、元々ブーム3の強度部材として必ず存在する部材は含まない。本明細書において足場とは、足のサイズ30cmの両足をはみ出さずに乗せることのできる二次元領域を有し、上方に作業員を配置可能なスペースが確保された構造物と定義されてもよい。足場の二次元領域は、45cm四方の面を含む領域と定義されてもよい。足場の二次元領域を構成する部材は、板であっても、複数の小孔が設けられた金属板であっても、サイズ20cmの足を掛けることができる程度の間隔が開いた剛性を有する複数の網であってもよい。
【0014】
さらに、本明細書における昇降用具とは、はしご及び階段を含む概念であり、足掛りとなる横材を有する構成であり、手を掛ける縦材を有する構成であってもよい。昇降用具の横材が棒材である場合、この棒材は、ブーム3を構成する棒材と比べて、50%以下の径又は幅を有し、ブーム3を構成する棒材のうち、平行な向きで隣り合う棒材の最小間隔よりも、50%以下の間隔を有する点で、ブーム3の構成部材と区別される。昇降用具の縦材が棒材である場合、この棒材は、ブーム3を構成する棒材と比べて、50%以下の径又は幅を有する点で、ブーム3の構成部材と区別される。
【0015】
図2は、ブームが起立姿勢のときのブーム下部を示す斜視図である。
図3は、ブームが倒伏姿勢のときのブーム下部を示す斜視図である。
図2以降において、ウインチ8a、8bを二点鎖線で示す。
【0016】
ブーム3の下部には、
図2に示すように、中下第1足場11と、回動式の左上第1足場12と、右上第1足場13と、第1昇降用具41と、着脱式の第2昇降用具42と、第3昇降用具43とが設けられている。さらに、ブーム3の下部には、
図3に示すように、左手前第2足場21と、右手前第2足場22と、左奥第2足場23と、右奥第2足場24と、中継第2足場25と、ラダー下第2足場26と、開口部51とが設けられている。さらに、
図2、
図3には示されないが、ブーム3の内部で開口部51の倒伏側には、第3足場31(
図6)が設けられている。開口部51と第3足場31との間には第4昇降用具44(
図6)が設けられている。中下第1足場11、左上第1足場12及び右上第1足場13を、以下、第1足場11~13とも呼ぶ。同様に、左手前第2足場21、右手前第2足場22、左奥第2足場23、右奥第2足場24、中継第2足場25及びラダー下第2足場26を、以下、第2足場21~26とも呼ぶ。第1足場11~13は、ブーム3が起立姿勢のときに作業員がクレーン本体2から到達可能な足場である。第2足場21~26は、ブーム3が倒伏姿勢のときに作業員がクレーン本体2から到達可能な足場である。到達可能とする構造には、クレーン本体2から該当の足場までの間に、互いに隣接配置された昇降用具や他の足場が連なっている構造が含まれる。
【0017】
第1足場11、13、第2足場21~26、並びに、第3足場31は、ブーム3の構成部材に連結されている。左上第1足場12は、着脱式の第2昇降用具42に回動自在に接続されている。第1昇降用具41は第1足場11に連結され、第3昇降用具43は第1足場13とブーム3の構成部材とに連結されている。第4昇降用具44(
図6)は中継第2足場25と第3足場31とに連結されている。
【0018】
第1足場11~13は、
図1に示すように、ブーム3の起立側に張り出し、ブーム3が起立姿勢のときに、足場として機能する。第1足場11~13は、ブーム3が起立姿勢のいずれかの角度のときに、上面が略水平になる向きに設けられていてもよい。
【0019】
中下第1足場11は、第1点検対象装置であるウインチ8aに対応する位置、すなわち、作業員がその場に立つか屈んで第1点検対象装置を点検できる位置に設けられている。より具体的には、中下第1足場11は、ブーム3が起立姿勢のときにウインチ8aよりも下方でかつウインチ8aよりも起立側に張り出した位置に設けられている。
【0020】
回動式の左上第1足場12は、ブーム3の長手方向に沿った中心線M1よりも左方に配置され、右上第1足場13は、ブーム3の長手方向に沿った中心線M1よりも右方に配置されている。左上第1足場12及び右上第1足場13は、第2点検対象装置であるウインチ8bに対応する位置、すなわち、作業員がその場に立つか屈んで第2点検対象装置を点検できる位置に設けられている。より具体的には、左上第1足場12は、ブーム3が起立姿勢のときにウインチ8bよりも下方でかつウインチ8bよりも左方に配置され、右上第1足場13は、ブーム3が起立姿勢のときにウインチ8bよりも下方でかつウインチ8bよりも右方に配置されている。
【0021】
図4は、回動式の左上第1足場の回動構造を示す斜視図である。左上第1足場12は、左辺部がヒンジ部12a、12bを介して第2昇降用具42の支持フレーム42bに回動自在に支持され、右辺部がブーム3の構成部材に連結された支持用ブラケット12cに上方から当接して支持されている。左上第1足場12の右辺部が支持用ブラケット12cに当接した姿勢が使用姿勢であり、左上第1足場12の右辺部が上方まで回動された姿勢が格納姿勢である。ヒンジ部12a、12bには、ラッチ機構が設けられ、左上第1足場12は使用姿勢と格納姿勢とで位置をロックすることができる。格納姿勢において、左上第1足場12は、着脱式の第2昇降用具42の側方で長手方向に沿った方向を向くので、第2昇降用具42を搬送容易な形態にできる。
【0022】
第1昇降用具41、第2昇降用具42及び第3昇降用具43は、ブーム3が起立姿勢のときに、作業員が昇降できる昇降用具として機能する。さらに、第2昇降用具42は、ブーム3が倒伏姿勢のときに、作業員が歩行する通路として機能する。
【0023】
第1昇降用具41は、一端がクレーン本体2の近傍に位置し、他端が中下第1足場11に位置する。作業員は、第1昇降用具41を登って、クレーン本体2から中下第1足場11へ到達することができる。
【0024】
第2昇降用具42は、ブーム3の左方でかつブーム3の起立側に着脱自在に固定される。第2昇降用具42は、一端がクレーン本体2の近傍に位置し、途中の部位が左上第1足場12の左方に位置し、他端が左奥第2足場23の左方に位置する。ブーム3が起立姿勢のときに、作業員は、
図2の矢印Aに示すように、第2昇降用具42を登って、クレーン本体2から左上第1足場12へ到達することができる。
【0025】
第2昇降用具42は、
図3に示すように、ブーム3が倒伏姿勢のときに、横材に足を掛けて進むことのできる歩行路としても機能する。第2昇降用具42の左側と倒伏姿勢における前側には、作業員が歩行時に手を掛けられる手すり42aが設けられている。手すり42aは、起立側に張り出しかつ歩行路の外側に沿って延在する。第2昇降用具42には、さらに、回動式の左上第1足場12を回動自在に支える支持フレーム42bが設けられている。
【0026】
図5は、第2昇降用具の着脱部を示す上面図である。第2昇降用具42は、右側の複数箇所に連結機構42dが設けられている。ブーム3の対応する箇所には、複数の連結機構42dをそれぞれ着脱自在に連結する複数の受け機構3dが設けられている。なお、連結機構42dと受け機構3dとの連結構造としては、様々な構造が採用されてもよい。例えば、連結機構42dには、ブームが倒伏姿勢のときに、受け機構3dに仮固定できるフック部42fと、仮固定された連結機構42dを固定ピン42pを用いて連結するピン孔とが設けられていてもよい。これらに対応して、受け機構3dには、連結機構42dのフック部42fに通される支持ピン3eと、連結機構42dのピン孔と重なる固定側ピン孔とが設けられていてもよい。フック部42fは、受け機構3dの支持ピン3eが通される鉤状のフック溝を有し、ブーム3が倒伏姿勢のときに、連結機構42dを受け機構3dに上方から降下させかつクレーン本体2側にずらすことで、支持ピン3eがフック溝の奥まで通される構造であってもよい。このような構造により、ブーム3が起立姿勢のとき及び倒伏姿勢のときの両方で、仮固定が解かれることがない。そして、連結機構42dを受け機構3dに仮固定した後、連結機構42dのピン孔と受け機構3dの固定側ピン孔とに固定ピン42pを通すことで、連結機構42dと受け機構3dとを連結できる。なお、フック部42fが受け機構3dに設けられ、支持ピン3eが連結機構42dに設けられていてもよい。また、連結機構42dと受け機構3dとがボルトにより連結される構成が採用されてもよい。
【0027】
第3昇降用具43は、一端が中下第1足場11の右方に位置し、他端が右上第1足場13に位置する。作業員は、
図2の矢印Bに示すように、第3昇降用具43を登って、中下第1足場11から右上第1足場13へ到達することができる。
【0028】
第2足場21~26は、ブーム3の仮想背面に沿って広がり、ブーム3が倒伏姿勢のときに足場として機能する。仮想背面とは、ブーム3の構成部材間を仮想平面で埋めたときに、ブーム3の起立側に位置する面に相当する。第2足場21~26は、ブーム3が倒伏姿勢のいずれかの角度のときに、上面がほぼ水平になる向きに設けられていてもよい。左手前第2足場21と左奥第2足場23とは、ブーム3の長手方向に沿った中心線M1よりも左方に設けられている。右手前第2足場22とラダー下第2足場26と右奥第2足場24とは、ブーム3の長手方向に沿った中心線M1よりも右方に設けられている。
【0029】
左手前第2足場21は、ブーム3の回動軸の近傍から第1点検対象装置であるウインチ8aの左方領域まで延在する。右手前第2足場22は、ブーム3の回動軸の近傍から第1点検対象装置であるウインチ8aの右方領域の近傍まで延在する。ラダー下第2足場26は、ウインチ8aの右方領域で、ブーム3が倒伏姿勢のときに第3昇降用具43の下方に位置する。作業員は、第3昇降用具43の横材の間の空間に入ってラダー下第2足場26に立つことができる。
【0030】
左奥第2足場23は、第2点検対象装置であるウインチ8bの左方領域からブーム3の先方へ延在する。右奥第2足場24は、第2点検対象装置であるウインチ8bの右方領域の近傍からブーム3の先方へ延在する。中継第2足場25は、第2点検対象装置であるウインチ8bよりもブーム3の先方で、左奥第2足場23と右奥第2足場24との間に延在する。左手前第2足場21と左奥第2足場23との間には、作業員が跨いで移動することのできない間隔が開き、かつ、左上第1足場12が配置されている。右奥第2足場24と右手前第2足場22との間には、作業員が跨いで移動することのできない間隔が開き、かつ、右上第1足場13と第3昇降用具43とが配置されている。
【0031】
左奥第2足場23には、途中、ウインチ8bの構成部材を避けるように、起立側に登る階段部と、段部上面の足場とが含まれていてもよい。
【0032】
ブーム3が倒伏姿勢のときに、作業員は、クレーン本体2から左手前第2足場21と右手前第2足場22とへ移動することができる。さらに、作業員は、第2昇降用具42を歩行通路として、左手前第2足場21(本発明に係る第2足場の第1箇所に相当)から左奥第2足場23(本発明に係る第2足場の第2箇所に相当)へ移動することができる。作業員は、中継第2足場25を通って左奥第2足場23から右奥第2足場24へ移動することができる。
【0033】
図6は、第2足場の開口部と第3足場を示す側面図である。
図6は、ブーム3の右側部を破断してブーム3の内部を示している。
【0034】
開口部51は、中継第2足場25の途中で、第2点検対象装置であるウインチ8bの近傍に設けられている。第3足場31及び第4昇降用具44は、ブーム3が倒伏姿勢のときに足場及び昇降用具として機能する。第3足場31は、倒伏姿勢のブーム3の底面(起立姿勢のときの前面)に位置する構成部材に連結されている。第3足場31は、ブーム3が倒伏姿勢のいずれかの角度のときに、上面がほぼ水平になる向きに設けられていてもよい。第4昇降用具44は、一端が開口部51に位置し、他端が第3足場31に位置する。ブーム3が倒伏姿勢のとき、作業員は、中継第2足場25から開口部51及び第4昇降用具44を介して、第3足場31へ到達することができる。第3足場31は、第2点検対象装置であるウインチ8bに対応する位置、すなわち、作業員が立つか屈んで第2点検対象装置を点検できる位置に設けられている。より具体的には、第3足場31は、ウインチ8bよりブーム3の先端側で、ブーム3が倒伏姿勢のときに、ブーム3よりも低い位置に配置されている。
【0035】
<クレーンの点検方法>
図7は、ブームが起立姿勢のときの点検作業の一例を説明する図である。
図8は、ブームが倒伏姿勢のときの点検作業の一例を説明する図である。
【0036】
ブーム3を倒伏できない現場などにおいては、
図6に示すように、ブーム3を起立姿勢のまま、作業員は、第1昇降用具41~第3昇降用具43を登って、第1足場11~13に移動し、ブーム3の起立側からウインチ8a、8bに近づく。そして、この状態で、作業員は、ウインチ8a、8bの点検作業を行う。
【0037】
ブーム3を倒伏できる場合などには、
図7に示すように、ブーム3を倒伏姿勢とする。この姿勢において、作業員は、途中に第2昇降用具42(
図3)を歩行路として使用し、或いは、第4昇降用具44を降りて、第2足場21~25又は第3足場に移動し、ブーム3の起立側からウインチ8aに近づき、ブーム3の起立側又はブーム3の内部からウインチ8bに近づく。そして、この状態で、作業員は、ウインチ8a、8bの点検作業を行う。作業員は、ブーム3の上方から点検作業位置へ移動でき、ブーム3の下方を移動する作業を減らすことができる。
【0038】
以上のように、本実施形態のクレーン1によれば、ブーム3の起立側に張り出し、ブーム3が起立姿勢のときに作業員がクレーン本体2から到達可能な第1足場11~13を備える。したがって、作業員は、ブーム3が起立姿勢の状態でも、第1足場11~13を利用して、ウインチ8a、8bの点検作業を行うことができる。よって、ブーム3が起立姿勢のときにウインチ8a、8bの点検が必要となった場合でも、速やかに点検作業を開始できる。
【0039】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、ブーム3が倒伏姿勢のときに作業員がクレーン本体2から到達可能な第2足場21~25を備える。したがって、作業員は、ブーム3が倒伏姿勢のときには、第2足場21~25を利用して、ウインチ8a、8bの点検作業を行うことができる。
【0040】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、ブーム3が起立姿勢のときに、第1足場11~13まで作業員が昇降可能な第1昇降用具41、第2昇降用具42及び第3昇降用具43を備える。作業員は、これらを利用して、ブーム3が起立姿勢のときに第1足場11~13へ移動できる。
【0041】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、第2昇降用具42が、ブーム3の側方に着脱可能に設けられている。ブーム3の側方に配置されることで、ブーム3の仮想背面にスペースを確保せずに、昇降路を確保でき、さらに、着脱可能とすることで、クレーン1を輸送する際に第2昇降用具42を取り外して、輸送の妨げとなることを回避できる。
【0042】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、ブーム3の起立側から見て、第3昇降用具43の奥方に位置するラダー下第2足場26を有する。作業員は、第3昇降用具43の横材の間の空間に入ってラダー下第2足場26に立つことができる。ラダー下第2足場26により、ブーム3が起立姿勢のときに利用される第3昇降用具43があっても、ブーム3が倒伏姿勢のときに利用できる足場の配置スペースをより多く確保できる。
【0043】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、ブーム3の起立側から見て、第2足場21~25の一部(左手前第2足場21及び左奥第2足場23)が、第2昇降用具42の側方に隣接配置されている。第2昇降用具42の側方とは、第2昇降用具42がブーム3に取り付けられていれば、その側方という意味である。この配置により、ブーム3が倒伏姿勢のときに、第2昇降用具42を、作業員が左手前第2足場21又は左奥第2足場23から移動できる歩行通路として使用することができる。本明細書において隣接配置とは、作業員がその間を跨いで移動できる配置を意味し、接触した配置、一部が重なった配置、並びに、60cm以内の距離で離間した配置を含む概念と定義される。
【0044】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、第2足場25の途中に開口部51が設けられ、ブーム3の内部に開口部51から移動して到達できる第3足場31が設けられている。したがって、ウインチ8bを、ブーム3の内部から検査することができ、その際に、ブーム3の下方を通らなくてもよいという利点が得られる。なお、開口部51は、第2足場25の一端に設けられていてもよく、この場合でも上記と同様の作用が得られる。
【0045】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、第1足場11~13には、回動式の左上第1足場12が含まれる。そして、左上第1足場12を回動させることで、クレーン1の各部品の輸送時に、輸送しやすい姿勢に足場を格納できるという利点が得られる。
【0046】
なお、上記実施形態では、回動式の左上第1足場12が、着脱式の第2昇降用具42に、設けられている例を示したが、回動式の足場は、ブームに設けられていてもよい。この場合でも、足場を回動させることで、ブームの輸送時に即して足場を格納し、ブームを輸送容易な形態にすることができる。
【0047】
さらに、回動式の足場は、ブーム3が起立姿勢であるか倒伏姿勢であるかに応じて、使用姿勢と格納姿勢とに切り替える構成としてもよい。この場合、ブーム3が起立姿勢又は倒伏姿勢の一方の姿勢のときに、使用姿勢として足場を使用し、ブーム3が他方の姿勢のときに、格納姿勢として別の足場を利用した作業者の移動を、妨げないようにすることができる。
【0048】
さらに、本実施形態のクレーン1によれば、第1足場11~13と、第2足場21~26には、ブーム3の左方に設けられた足場(左上第1足場12、左手前第2足場21、左奥第2足場23)と、ブーム3の右方に設けられた足場(右上第1足場13、右手前第2足場22、右奥第2足場24、ラダー下第2足場26)とが含まれる。このような構成により、ブーム3の左右方向における中央に配置されるウインチ8a、8bを左右の両側から点検することができる。
【0049】
また、本実施形態のクレーン1によれば、ブーム3が倒伏姿勢のときに、左奥第2足場23と右奥第2足場24との両方に移動できる中継第2足場25を備える。したがって、作業員は、中継第2足場25を介して、左奥第2足場23と右奥第2足場24とへ移動できる。仮に、ブーム3の左側のみ移動して左側の全ての足場に到達でき、かつ、ブーム3の右側のみ移動して右側の全ての足場に到達できる構成を実現しようとすると、ブーム3の限られた背面部に、足場を配置するスペースの確保が困難となる。そこで、一部に左側の足場から右側の足場へ移ることのできる中継足場を設けることで、足場の配置スペースの確保を容易にしつつ、左右全ての足場への移動を可能にできる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、ブーム3の下部に搭載される点検対象装置として、ウインチ8a、8bを示したが、これに限定されず、点検対象装置はコードリール、油圧配管、電気装置など、様々な装置が適用される。また、上記実施形態では、第1足場と第2足場との具体的な配置例を示したが、足場の配置は点検対象装置の配置に応じて適宜変更可能である。例えば、実施形態で示した第2足場(左手前第2足場21、右手前第2足場22、左奥第2足場23、ラダー下第2足場26)、並びに、実施形態で示した昇降用具(第2昇降用具42、第3昇降用具43)などは、実施形態の位置から左右逆転した位置に配置されてもよい。また、上記実施形態では、第1足場がブームの起立側に張り出した例を示したが、第1足場は例えばブーム内部に配置されていてもよい。また、第1足場は、例えばブームの側方から見たときのブームの中心線より起立側に配置されていてもよい。好ましくは、第1足場は、ブームの起立側の仮想背面から倒伏側に60cm離れた位置よりも起立側に配置されてもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 クレーン
2 クレーン本体
3 ブーム
3d 受け機構
8a、8b ウインチ
11 中下第1足場(第1足場)
12 左上第1足場(第1足場、回動式足場、左第1足場)
12a、12b ヒンジ部
12c 支持用ブラケット
13 右上第1足場(第1足場、右第1足場)
21 左手前第2足場(第2足場、左第2足場)
22 右手前第2足場(第2足場、右第2足場)
23 左奥第2足場(第2足場、左第2足場)
24 右奥第2足場(第2足場、右第2足場)
25 中継第2足場(第2足場)
26 ラダー下第2足場(第2足場、昇降用具下第2足場)
31 第3足場
41 第1昇降用具
42 第2昇降用具(着脱式昇降用具)
42a 手すり
42b 支持フレーム
42d 連結機構
43 第3昇降用具
44 第4昇降用具