(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】遠心分離機および試料調製装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20240705BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20240705BHJP
B04B 5/02 20060101ALI20240705BHJP
B04B 15/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G01N1/10 H
G01N35/00 B
B04B5/02 Z
B04B15/02
(21)【出願番号】P 2020060944
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-01-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業「免疫応答モニタリングによるがん免疫の全容理解に基づく新規層別化マーカーの開発」委託研究開発、産業技術強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】新屋 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】井口 和之
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02372366(EP,A1)
【文献】特開2012-010663(JP,A)
【文献】特開2018-096916(JP,A)
【文献】特表2015-529549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/10
G01N 35/00
B04B 5/02
B04B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体および試薬を収容した反応容器を保持するホルダ部を含み、前記ホルダ部を揺動自在に支持するロータ部と、
前記ロータ部に連結された回転軸部と、
前記回転軸部を回転させるロータ駆動部と、
前記ロータ駆動部が停止しているときに、前記ホルダ部の
下部と接触又は近接する位置に設けられた伝熱面を含む温度調整部と、を備え、
前記ロータ駆動部は、前記回転軸部を回転させて前記反応容器内の前記検体および前記試薬を攪拌し、
前記温度調整部は、
前記攪拌後に、前記反応容器内の温度を、前記検体と前記試薬とを反応させる温度となるよう調整する、遠心分離機。
【請求項2】
前記伝熱面は、前記ホルダ部の回転軸部側の側
面と接触又は近接する位置に設けられている、請求項1に記載の遠心分離機。
【請求項3】
前記温度調整部は、加熱または冷却を行う本体部と、前記本体部に接続され、前記伝熱面を有する伝熱部材と、を含む、請求項1または2に記載の遠心分離機。
【請求項4】
前記本体部は、前記伝熱部材の下方に配置されている、請求項3に記載の遠心分離機。
【請求項5】
前記本体部は、ペルチェ素子を有する、請求項3または4に記載の遠心分離機。
【請求項6】
前記伝熱面が曲面を有し、
前記ホルダ部は、前記ホルダ部の前記伝熱面に接触又は近接する領域に、前記伝熱面の曲面と対になる曲面を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項7】
前記伝熱面が、平面を有し、
前記ホルダ部は、前記ホルダ部の前記伝熱面に接触又は近接する領域に平面を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項8】
前記ロータ部は、複数の前記ホルダ部を有し、
前記伝熱面は、複数の前記ホルダ部ごとに設けられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項9】
前記ホルダ部は、前記反応容器を受容する保持孔を有するホルダ本体と、前記温度調整部の前記伝熱面に接触又は近接する領域を有するホルダ伝熱部と、を含み、
前記ホルダ伝熱部は、前記ホルダ本体よりも高い熱伝導率を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項10】
前記ロータ部は、前記ロータ部の回転中は前記ホルダ部の前記伝熱面に接触又は近接する領域が前記伝熱面から離れる方向に前記ホルダ部が傾斜し、当該領域が前記伝熱面に近接しなくなるように、前記ホルダ部を支持する、請求項1~9のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項11】
前記ロータ駆動部が停止しているときに、前記ホルダ部の前記伝熱面に接触又は近接する領域の少なくとも一部と前記伝熱面との間隔は、10mm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の遠心分離機。
【請求項12】
検体に試薬を反応させて試料を調製する装置であって、
請求項1~11のいずれか1項に記載の遠心分離機と、
試薬を前記反応容器に分注する分注部と、
前記反応容器内の前記検体および前記試薬を攪拌するよう前記ロータ駆動部を制御し、当該攪拌後に、前記反応容器内の温度が前記検体と前記試薬とを反応させる温度となるよう、前記温度調整部を制御する制御部と、を備えた、試料調製装置。
【請求項13】
前記温度調整部は、加熱または冷却を行う本体部を含み、
前記制御部は、前記伝熱面を0℃以上10℃以下になるように前記本体部を制御する、請求項12に記載の試料調製装置。
【請求項14】
前記試薬を収容した試薬容器を設置可能に構成され、試薬温度調整部を有する試薬設置部をさらに備え、
前記制御部は、前記ホルダ部に保持された前記反応容器に分注された前記試薬と、前記試薬設置部に設置された試薬容器に収容された前記試薬と、が同じ温度になるように前記本体部および前記試薬温度調整部を制御する、請求項13に記載の試料調製装置。
【請求項15】
前記検体が、血液であり、
前記試薬が、抗体試薬である、請求項12~14のいずれか1項に記載の試料調製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整機能を備えた遠心分離機およびそのような遠心分離機を備えた試料調製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、
図48に示すように、試験管901を保持するロータ902を誘導モータ903により回転軸904回りに回転させる遠心分離機900が開示されている。遠心分離機900は、遠心室905を画成するための有底筒状の断熱部材906を有する。断熱部材906の内周面には、遠心室905内を冷却するための冷媒管907が配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1では、冷媒管907により遠心室905の内部温度を調整しているが、検体と試薬との反応工程を含む試料調製に遠心分離機900を用いる場合、反応容器の内容物の温度条件が一定に維持されることが望まれる。そのため、温度調整の精度を向上させることが求められる。また、反応容器の内容物と反応工程の温度とが異なる場合に、反応容器の内容物をより短時間で所定温度に近づけることが望ましい。
【0005】
この発明は、遠心分離機に保持された反応容器内で検体と試薬とを反応させる際の反応容器の内容物に対する温度調整機能を向上させることに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願発明者らが鋭意検討した結果、対流熱伝達を利用した温度調整では、空気自体が断熱材として作用することから、反応容器の内容物の温度を精度良く速やかに調整することが困難であるという知見を得た。そこで、本願発明者らは、対流熱伝達よりも直接的に反応容器に熱を伝える構成に想到した。すなわち、第1の発明による遠心分離機は、
図1に示すように、検体および試薬を収容した反応容器(11)を保持するホルダ部(41)と、ホルダ部(41)を揺動自在に支持するロータ部(42)と、ロータ部(42)に連結された回転軸部(43)と、回転軸部(43)を回転させるロータ駆動部(44)と、ロータ駆動部(44)が停止しているときに、ホルダ部(41)の
下部と接触又は近接する位置に設けられた伝熱面(51)を含む温度調整部(50)と、を備える。
ロータ駆動部(44)は、回転軸部(43)を回転させて反応容器(11)内の検体および試薬を攪拌し、温度調整部(50)は、
攪拌後に、反応容器(11)内の温度を、検体と試薬とを反応させる温度となるよう調整する。
【0007】
第1の発明による遠心分離機(10)は、上記のように、ロータ駆動部(44)が停止しているときに、ホルダ部(41)の少なくとも一部と接触又は近接する位置に設けられた伝熱面(51)を含む温度調整部(50)を備える。これにより、ロータ部(42)の回転停止状態では、反応容器(11)を保持するホルダ部(41)と温度調整部(50)の伝熱面(51)との間で、極力空気層を介在させずに、熱伝導および/または熱放射によって熱伝達することができる。その結果、空気の対流を利用して伝熱する構成と比べて、温度調整部(50)の熱をホルダ部(41)、およびホルダ部(41)に保持された反応容器(11)により直接的に伝えることができるので、反応容器(11)の内容物の温度を、より精度良く、より速やかに調整することができる。これにより、遠心分離機(10)に保持された反応容器(11)内で検体と試薬とを反応させる際の反応容器(11)の内容物に対する温度調整機能を向上させることができる。
【0008】
第2の発明による試料調製装置は、
図1に示すように、検体に試薬を反応させて試料を調製する装置であって、上記第1の発明による遠心分離機(10)と、試薬を反応容器(11)に分注する分注部(20)と、
反応容器(11)内の検体および試薬を攪拌するようロータ駆動部(44)を制御し、当該攪拌後に、反応容器(11)内の温度が検体と試薬とを反応させる温度となるよう、温度調整部(50)を制御する制御部(30)と、を備える。
【0009】
この第2の発明による試料調製装置は、上記第1の発明による遠心分離機(10)を備えるので、遠心分離機(10)に保持された反応容器(11)内で検体と試薬とを反応させる際の反応容器(11)の内容物に対する温度調整機能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遠心分離機に保持された反応容器内で検体と試薬とを反応させる際の反応容器の内容物に対する温度調整機能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】試料調製装置の概要を示した模式図(A)および遠心分離機の変形例を示した図(B)である。
【
図2】試料調製装置の構成例を示した模式図である。
【
図3】試料調製装置の分注動作に関わる構成を示した模式図である。
【
図4】分注部の第1の構成例を示した模式図である。
【
図5】分注部の第2の構成例を示した模式図である。
【
図6】分注部の第3の構成例を示した模式図である。
【
図7】分注部の移動軸、吸引位置および吐出位置の位置関係を示した模式図である。
【
図8】分注部の分注動作の例を示した模式図である。
【
図9】遠心分離部の構造を説明するための模式的な縦断面図である。
【
図10】ロータ部におけるホルダ部の保持構造の構成例を示した模式図である。
【
図11】規制部材の第1の構成例を示した模式図である。
【
図12】規制部材の第2の構成例を示した模式図である。
【
図13】規制部材の第3の構成例を示した模式図である。
【
図14】遠心分離(A)、上清の除去(B)、試薬の分注(C)、攪拌(D)の各動作を示す図である。
【
図15】攪拌における反転回転(A)および断続回転(B)と、遠心分離時の回転(C)とを説明するための、角速度-時間グラフである。
【
図16】伝熱部材およびホルダ部の第1の構成例を示した図である。
【
図17】伝熱部材およびホルダ部の第2の構成例を示した図である。
【
図18】伝熱部材およびホルダ部の第3の構成例を示した図である。
【
図19】試薬の分注動作とノズルの洗浄動作とにおけるロータ部の回転動作を示した模式図である。
【
図21】試薬を分注した後のノズルの洗浄動作を示した模式図である。
【
図22】上清を除去した後のノズルの洗浄動作を示した模式図である。
【
図23】試薬の分注処理、上清の除去処理、および、ノズルの洗浄処理の一連の制御を示したフロー図である。
【
図24】蓋部が開閉可能な第1試薬設置部の構成例を示した模式図である。
【
図25】シャッター部材の第1の構成例を示した模式図である。
【
図26】シャッター部材の第2の構成例を示した模式図である。
【
図27】第1試薬設置部の内部構造の例を示した模式的な縦断面図である。
【
図28】試薬設置部の他の構成例を示した模式図(A)およびシャッター部材の例を示した模式図(B)である。
【
図29】
図2に示した試料調製装置の流体回路の構成例を示した模式図である。
【
図30】試料調製装置および制御装置の制御処理に関わる構成を示したブロック図である。
【
図32】反応容器を配置すべきホルダ部の配置パターン例を示した模式図である。
【
図33】第1容器を保持すべきホルダ部を表示部に表示する構成例を示した模式図である。
【
図34】試料調製装置の試料調製開始のための制御処理を示したフロー図である。
【
図35】反応容器を設置すべきホルダ部の表示処理の制御を示したフロー図である。
【
図37】シャッター部材の開閉制御処理の制御を示したフロー図である。
【
図39】遠心分離処理の制御を示したフロー図である。
【
図41】上清の除去処理の制御を示したフロー図である。
【
図42】ノズルの洗浄処理の制御を示したフロー図である。
【
図43】試料調製装置の動作の流れを説明するための第1の図である。
【
図44】試料調製装置の動作の流れを説明するための第2の図である。
【
図45】試料調製装置の動作の流れを説明するための第3の図である。
【
図46】試料調製処理の具体例を説明するための図である。
【
図47】温度調整部による温度調整のシミュレーションによる温度分布を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[遠心分離機の概要]
まず、
図1を参照して、一実施形態による遠心分離機10の概要について説明する。
【0014】
遠心分離機10は、反応容器を回転させて反応容器の内容物に遠心力を作用させることにより、反応容器の内容物に含まれた密度の異なる成分を分離する装置である。特に、本実施形態の遠心分離機10は、反応容器内で検体に試薬を反応させる機能を備えている。これにより、遠心分離機10は、検体分析などに供される試料の調製に用いられる。
【0015】
図1(A)に示すように、遠心分離機10は、ホルダ部41を含むロータ部42と、回転軸部43と、ロータ駆動部44と、温度調整部50とを備える。
【0016】
ホルダ部41は、反応容器11を保持するように構成されている。ホルダ部41は、たとえば筒状形状を有し、内部に反応容器11を受け容れ可能である。
【0017】
ロータ部42は、ホルダ部41を揺動自在に支持するように構成されている。ロータ部42には、外周部に揺動軸42aを介してホルダ部41が取り付けられている。ロータ部42は、上方から見て回転対称形状を有する。
図1(A)の例では、ロータ部42は、円板形状を有する。ロータ部42には、周方向に沿って複数のホルダ部41が設けられうる。複数のホルダ部41は、回転軸部43に対して回転対称となるように配置される。
【0018】
回転軸部43は、ロータ部42に連結されている。回転軸部43は、中心軸線回りに回転可能に構成され、ロータ部42を支持している。回転軸部43は、上下方向に延びるように形成され、上端部にロータ部42が連結されている。
【0019】
ロータ駆動部44は、回転軸部43を回転させるように構成されている。遠心分離機10は、ロータ駆動部44によって回転軸部43を回転させることにより、回転軸部43、ロータ部42およびホルダ部41を一体回転させる。これにより、ホルダ部41に保持された反応容器11が回転される。
【0020】
ホルダ部41は、少なくともロータ部42の非回転時に、上下方向に沿って配置される。つまり、非回転時には、反応容器11の開口が上方に向いた姿勢となる。ホルダ部41は、ロータ部42の回転時に、遠心力によって、半径方向外側へ揺動される。
【0021】
温度調整部50は、ホルダ部41に保持された反応容器11の内容物の温度を調整するように構成されている。温度調整部50は、たとえば、温熱を発生することにより、反応容器11の内容物の温度を上昇させる。温度調整部50は、たとえば、冷熱を発生することにより、反応容器11の内容物の温度を低下させる。温度調整部50は、発生する熱量の制御により、反応容器11の内容物の温度を許容範囲内に維持する。温度調整部50は、ヒートポンプを有する。ヒートポンプは、たとえば、ペルチェ素子、蒸気圧縮ヒートポンプなどでありうる。温度調整部50は、反応容器11内の温度を、たとえば反応容器11内の検体と試薬とが反応するのに適した所定温度となるように調整する。
【0022】
温度調整部50は、ロータ駆動部44が停止しているときに、ホルダ部41の少なくとも一部と接触又は近接する位置に設けられた伝熱面51を含む。伝熱面51は、ホルダ部41の回転軸部43側の表面41aまたはホルダ部41の下側の表面41bと、隣り合うとともに対向するように設けられている。伝熱面51とホルダ部41の表面とは、気体を除き熱の移動を妨げる壁、仕切りなどの部材を介在することなく、互いに隣り合って配置されている。
【0023】
図1(A)の例では、伝熱面51がホルダ部41の回転軸部43側の表面41aと、隣り合うとともに対向するように設けられた例を示す。表面41aは、ホルダ部41の半径方向内側の側面である。伝熱面51は、ホルダ部41の回転軸部43側の表面41aと回転軸部43との間に配置され、表面41aと半径方向に対向する。
【0024】
図1(B)の例では、伝熱面51がホルダ部41の下側の表面41bと、隣り合うとともに対向するように設けられた例を示す。表面41bは、ホルダ部41の下面である。伝熱面51は、ホルダ部41の下方に配置され、表面41bと上下方向に対向する。
【0025】
伝熱面51とホルダ部41の表面(41aまたは41b)とは、直接接触するか、または互いに近接する位置で離間する。これにより、伝熱面51とホルダ部41の表面との間で、熱伝導および/または熱放射によって、熱伝達を行う。
【0026】
本実施形態の遠心分離機10は、上記のように、ロータ駆動部44が停止しているときに、ホルダ部41の少なくとも一部と接触又は近接する位置に設けられた伝熱面51を含む温度調整部50を備える。これにより、ロータ部42の回転停止状態では、反応容器11を保持するホルダ部41と温度調整部50の伝熱面51との間で、極力空気層を介在させずに、熱伝導および/または熱放射によって熱伝達することができる。その結果、空気の対流を利用して伝熱する構成と比べて、温度調整部50の熱をホルダ部41、およびホルダ部41に保持された反応容器11により直接的に伝えることができるので、反応容器11の内容物の温度を、より精度良く、より速やかに調整することができる。これにより、遠心分離機10に保持された反応容器11内で検体と試薬とを反応させる際の反応容器11の内容物に対する温度調整機能を向上させることができる。
【0027】
[試料調製装置の概要]
次に、
図1を参照して、一実施形態による試料調製装置100の概要について説明する。
【0028】
試料調製装置100は、検体に試薬を反応させて試料を調製する装置である。本実施形態では、試料調製装置100は、上記した温度調整部50を備えた遠心分離機10を備えている。遠心分離機10は、試料調製装置100において遠心分離処理を行うユニットである遠心分離部として設けられている。
【0029】
検体は、生体由来の検体である。生体由来の検体は、たとえば、被検体から採取された血液(全血、血清または血漿)、尿、またはその他の体液などの液体、あるいは、採取された液体に所定の前処理を施して得られた液体などである。また、検体は、たとえば、液体以外の、被検体の組織の一部や細胞などであってもよい。被検体は、主としてヒトであるが、ヒト以外の他の動物であってもよい。試料調製装置100は、たとえば患者から採取された検体の臨床検査または医学的研究のための試料調製を行う。
【0030】
調製された試料が、測定処理に供される。たとえば、試料調製装置100により調製された試料が、測定装置によって測定される。測定装置は、試料中に含有される所定の被検物質を検出する。被検物質は、たとえば、血液や尿検体中の所定の成分、細胞や有形成分を含みうる。被検物質は、DNA(デオキシリボ核酸)などの核酸、特定の細胞、細胞内物質、抗原または抗体、タンパク質、ペプチドなどありうる。測定装置は、血球計数装置、細胞画像分析装置、血液凝固測定装置、免疫測定装置、尿中有形成分測定装置などであってよく、これら以外の測定装置であってもよい。また、試料調製装置100は、測定装置の一部として組み込まれていてもよい。
【0031】
試料調製装置100は、被検物質を測定によって検出するための前処理を行う。試料調製装置100は、たとえば被検物質と特異的に反応する物質を含む試薬を、検体と反応させる。被検物質と特異的に反応する物質は、たとえば標識物質を含む。測定処理では、標識物質を検出することによって、被検物質と結合した被検物質を検出する。
【0032】
図1に示すように、試料調製装置100は、遠心分離機10と、分注部20と、制御部30と、を備える。
【0033】
分注部20は、試薬を反応容器11に分注するように構成されている。具体的には、分注部20は、遠心分離機10内に設置された反応容器11に対して試薬を分注する。分注部20は、ホルダ部41に保持された反応容器11内に試薬を分注するノズル21を含む。
【0034】
分注部20は、1つ以上のノズル21を有する。ノズル21は、たとえば直線状に延びる管状部材である。ノズル21は、ホルダ部41に保持された反応容器11よりも上方となる位置に配置される。分注部20は、たとえば、ノズル21を上下方向に移動可能である。ノズル21の上端部が、ポンプに接続されている。分注部20は、ポンプからの負圧によってノズル21の先端(つまり、下端)から液体を吸引でき、ポンプからの正圧によってノズル21の先端から液体を吐出できる。分注部20は、所定量の試薬をノズル21から反応容器11へ吐出する分注動作を行うように構成されている。
【0035】
制御部30は、温度調整部50を制御する。制御部30は、温度調整部50と電気的に接続されている。制御部30は、たとえば、演算処理を行うプロセッサと、プログラムを記憶するメモリとを含む。プロセッサが温度制御のプログラムを実行することにより、温度調整部50による温度制御を行う。制御部30は、たとえば、伝熱面51が所定温度になるように温度調整部50を制御する。なお、制御部30は、分注部20による分注動作の制御を更に行う。
【0036】
伝熱面51の温度は、熱放射および/または熱伝導により、ホルダ部41の表面へと速やかに伝達する。ホルダ部41と伝熱面51との熱交換により、伝熱面51の温度が、ホルダ部41に保持された反応容器11の内容物の温度に速やかに反映される。これにより、反応容器11の内容物の温度が、伝熱面51の温度と許容範囲内で一致するように制御される。
【0037】
本実施形態の試料調製装置100は、上記の遠心分離機10を備えるので、遠心分離機10に保持された反応容器11内で検体と試薬とを反応させる際の反応容器11の内容物に対する温度調整機能を向上させることができる。
【0038】
[試料調製装置の具体的な構成例]
次に、
図2~
図30を参照して、試料調製装置100の具体的な構成例について詳細に説明する。
図2~
図30の例では、試料調製装置100の検体が血液の全血であり、被検物質が血中の特定の細胞である。試料調製装置100は、検体中の被検物質を標識抗体により染色し、測定用試料を調製する。測定用試料は、たとえばフローサイトメトリーによる光学的測定用の試料として調製される。
【0039】
(試料調製装置の全体構成)
図2に示すように、試料調製装置100は、遠心分離部110と、分注部120と、試薬設置部(130、140)と、を備える。試料調製装置100は、制御部200を備える。試料調製装置100は、遠心分離部110と、分注部120と、試薬設置部と、を少なくとも収容した筐体101を備える。制御部200は、筐体101の内部または外部に設置されうる。
【0040】
図3において、遠心分離部110は、反応容器300を保持するホルダ部111と、ホルダ部111を支持するロータ部112と、ロータ部112に連結された回転軸部113と、回転軸部113を回転させるロータ駆動部114と、を含む。遠心分離部110は、ロータ駆動部114によって回転軸部113およびロータ部112を一体回転させることによって、ホルダ部111に保持された反応容器300の内容物を遠心分離する。
【0041】
分注部120は、ノズル121および駆動部122を含む。試薬設置部は、第1試薬容器310を設置可能な第1試薬設置部130を含む。試薬設置部は、第2試薬容器320を設置可能な第2試薬設置部140を含む。
【0042】
分注部120は、第1試薬を第1試薬容器310からノズル121により吸引し、反応容器300へ吐出する第1分注動作を行う。第1試薬設置部130は、ノズル121の移動可能範囲内に設置されている。
【0043】
駆動部122は、第1試薬設置部130における第1試薬容器310の吸引位置PN1と、遠心分離部110のホルダ部111に設置された反応容器300に対する吐出位置PN2との間で、ノズル121を移動させる。これにより、ノズル121は、吸引位置PN1と吐出位置PN2との間を往復するだけでよいので、ノズル121の移動範囲を極力小さくできる。その結果、試料調製装置100を小型化できる。
【0044】
分注部120は、第2試薬設置部140に設置された第2試薬容器320と、流路123を介して接続されている。分注部120は、第2試薬を第2試薬容器320から流路123を通じてノズル121へ送液して反応容器300へ吐出する第2分注動作を行う。第2試薬設置部140は、ノズル121の移動範囲外に配置されている。
【0045】
分注部120は、1つのノズル121により、第1分注動作と第2分注動作とを行うように構成されている。これにより、第1分注動作と第2分注動作とを別々のノズルにより実行する構成と比べて分注部120の構造を簡素化し分注部120を小型化できる。分注部120は、第1試薬を分注する第1ノズルと、第2試薬を分注する第2ノズルとを、別々に備えていてもよい。
【0046】
第1試薬設置部130は、第1試薬容器310を遮光状態で収容する箱状の設置部本体131を含む。設置部本体131は、ノズル121が第1試薬容器310内にアクセスするための開閉可能な挿入口132を含む。なお、「遮光状態」とは、第1試薬の保管上要求される水準以上の暗室が構成されていることを意味する。これにより、第1試薬が外光に晒されることを抑制できる。そのため、第1試薬が外光によって劣化することを抑制できる。
【0047】
第1試薬設置部130は、第1試薬容器310の温度を制御する温度調整部(試薬温度調整部136)を含む。これにより、第1試薬の温度を、保管に適した温度に維持できる。第2試薬と比べて分注量が小さく、調製される試料の品質に影響を与えやすい第1試薬の変質や劣化等を効果的に抑制できる。
【0048】
第2試薬設置部140は、第2試薬容器320を、室温で、かつ非遮光状態で保持するように構成されている。なお、「非遮光状態」とは、第2試薬設置部140が暗室化されていないことを意味し、第2試薬設置部140が外来光の侵入を防止する遮光構造を持たないカバーや箱体を備えることを許容する。第2試薬設置部140には、第2試薬容器320の温度を調整するための温度調整部が設けられていない。これにより、第2試薬設置部140に、断熱構造や外来光の侵入を防止するため構造を設ける必要がないので、第2試薬設置部140を小型化できる。その結果、試料調製装置100を小型化できる。
【0049】
図3の例では、分注部120は、遠心分離部110により遠心分離に供された後の反応容器300内の上清を、ノズル121により吸引するように構成されている。
【0050】
これにより、分注部120が第1試薬の第1分注動作および第2試薬の第2分注動作を行うだけでなく、さらに上清の吸引動作も行える。これにより、反応容器300内の上清を除去するための専用の機構を設ける場合と比べて、効果的に試料調製装置100を小型化できる。
【0051】
図3では、試料調製装置100は、廃液槽160と、廃液槽160とノズル121とを接続する廃液流路161と、を備えている。分注部120は、ノズル121により吸引した上清を、廃液流路161を介して廃液槽160へ送液するように構成されている。
【0052】
これにより、ノズル121と一体で移動する部分に、吸引した上清を貯留する部分を設ける必要がないので、分注部120を小型化できる。そのため、ノズル121によって遠心分離後の上清を吸引する場合でも、ノズル121の移動のために確保するスペースを低減できる。
【0053】
(分注部)
図4~
図6は、それぞれ分注部120の構成例を示す。
【0054】
図4~
図6は、第1ポンプ124の動作により、第1分注動作を行う例を示す。
図4~
図6において、分注部120は、ノズル121に接続された第1ポンプ124を含む。分注部120は、第1分注動作において、第1ポンプ124の吸引動作により第1試薬をノズル121内に吸引し、第1ポンプ124の吐出動作により第1試薬を吐出する。これにより、ノズルから吸引した第1試薬をそのまま吐出するだけで、第1分注動作を行える。
【0055】
ポンプ(第1ポンプ124)は、ノズル121が吸引位置PN1(
図3参照)にあるときに吸引動作を行い、ノズル121が吐出位置PN2(
図3参照)にあるときに吐出動作を行う。これにより、ノズルから吸引した試薬を吐出位置PN2(
図3参照)でそのまま吐出するだけで、分注動作を行える。
【0056】
第1ポンプ124は、分注量の小さい第1試薬を精度良く定量分注できる容積式ポンプが好ましい。第1ポンプ124は、たとえばシリンジポンプである。これにより、分注量の小さい第1試薬でも精度良く定量分注できる。第1ポンプ124は、ダイヤフラムポンプ、チューブポンプなどでもよい。
【0057】
図4~
図6は、第2分注動作を実施するための異なる構成例を示す。
【0058】
図4の例では、分注部120は、ノズル121に接続された分岐部125aと、第1ポンプ124と分岐部125aとを接続する第1流路123aと、第2試薬容器320と分岐部125aとを接続する第2流路123bと、を含む。分注部120は、第1分注動作において、第1ポンプ124が分岐部125aを通じてノズル121に第1試薬を吸引および吐出させ、第2分注動作において、第1ポンプ124が分岐部125aおよび第2流路123bを通じて第2試薬容器320内の第2試薬を第1流路123aまで吸引し、分岐部125aを介してノズル121から第2試薬を吐出させる。
【0059】
これにより、第1分注動作と第2分注動作との両方を第1ポンプ124によって実行できる。第1分注動作の専用のポンプと第2分注動作の専用のポンプとを設ける必要がないため装置構成を簡素化でき、試料調製装置100を小型化できる。
【0060】
分岐部125aは、ノズル121と第1流路123aとを接続する第1状態と、ノズル121と第2流路123bとを接続する第2状態と、第1流路123aと第2流路123bとを接続する第3状態と、に切り替え可能に構成されたバルブを含む。分岐部125aは、たとえば三方弁、開閉弁などを含みうる。第1状態では、第2流路123bとノズル121との間は遮断される。第2状態では、第1流路123aとノズル121との間は遮断される。第3状態では、第1流路123aおよび第2流路123bと、ノズル121との間は遮断されるが、第1流路123aと第2流路123bとの間は開放される。
【0061】
第1分注動作では、分岐部125aが第1状態で、第1ポンプ124の吸引動作により第1試薬がノズル121内に収容される。分注量が小さい第1試薬は、ノズル121の先端から分岐部125aまでの間の領域に収容されうる。分岐部125aが第1状態のまま、第1ポンプ124の吐出動作により、第1試薬が第1流路123aからノズル121へ送られる。第2分注動作では、分岐部125aが第1状態で、第1ポンプ124の吸引動作により、第2流路123bを通じて第2試薬の分注量の全量が分岐部125aと第1ポンプ124との間の第1流路123a内に収容される。分注量が大きい第2試薬を収容する容積を確保するため、第1流路123aには収容部126が設けられ得る。収容部126は、たとえば第1流路123aの経路長を長くした余長部により構成されうる。次に、分岐部125aが第2状態から第1状態に切り替えられ、第1ポンプ124の吐出動作により、第2試薬が第1流路123aからノズル121へ送られる。
【0062】
第2試薬容器320が複数設けられる場合、第2流路123bは複数の第2試薬容器320と1つずつ接続される分岐流路である。第2流路123bには、分岐部125aに連通させる第2試薬容器320を切り替えるための分岐部125bが設けられうる。
【0063】
図5の例では、分注部120は、流路を介してノズル121と第2試薬容器320とに接続された第2ポンプ127を含む。分注部120は、第2分注動作において、第2ポンプ127が第2試薬容器320から第2試薬を吸引し、ノズル121へ送液する。これにより、第2ポンプ127とノズル121とを流路123により接続するだけで、第2試薬をノズル121へ送り出すことができる。ノズル121と一体で移動する部分にポンプを設けずに済むので分注部120を小型化でき、その分、ノズル121の移動のために確保するスペースを低減できる。
【0064】
また、第2ポンプ127は、第1ポンプ124よりも大容量である。第2ポンプ127は、単位時間当たりの吐出量が第1ポンプ124よりも大きい。第2ポンプ127は、ノズル121とは別個に固定設置され、移動するノズル121に追従するように構成された流路123を介してノズル121に接続されている。流路123は、たとえば、変形可能な柔軟性を有する樹脂製の送液チューブにより構成される。これにより、ノズル121と一体で移動する部分に第2ポンプ127を設けずに済むので分注部120を小型化でき、その分、ノズル121の移動のために確保するスペースを低減できる。
【0065】
図5の例では、第2ポンプ127の吸い込み側が第2試薬容器320に接続され、第2ポンプ127の吐出側がノズル121に接続されている。第2ポンプ127は、たとえば、第2試薬容器320とノズル121とを接続する流路123上に設置されたダイヤフラムポンプを含む。第2ポンプ127は、吸引動作によって第2試薬容器320から第2試薬を内部に収容する。第2ポンプ127は、吐出動作によって内部に収容した第2試薬をノズル121へ供給する。ダイヤフラムポンプでは、分注量が、ポンプ容積の整数倍(ポンプ動作回数倍)で制御される。第2試薬は分注量が大きいため、ポンプ容積の整数倍でも必要な定量精度を十分に確保できる。
【0066】
図6の例では、第2ポンプ127とノズル121とを接続する流路の途中に第2試薬容器320が接続されている。第2ポンプ127は、第2試薬容器320内に陽圧を供給することにより第2試薬を流路123c、123dを通じてノズル121へ送液するエアプレッシャーポンプを含む。第2ポンプ127は、流路123cを介して、第2試薬容器320内に陽圧を供給する。第2試薬容器320内の第2試薬は、陽圧により、ノズル121に接続する流路123dへ押し出される。これにより、第2試薬容器320内の第2試薬を圧力で流路123dへ押し出すだけでの簡単な構成で、第2試薬をノズル121から分注できる。エアプレッシャーポンプでは、供給する陽圧を一定に維持することにより、陽圧の供給時間(すなわち、バルブを開放してから閉じるまでの時間長さ)を制御することにより、分注量が制御される。
【0067】
(ノズルの移動経路)
図7の例では、ノズル121は、移動機構128に設けられている。移動機構128は、試料調製装置100に固定して配置され、遠心分離部110と試薬設置部130との間でノズル121を移動させる。
【0068】
移動機構128は、試薬設置部130に設置された試薬容器310からの吸引位置PN1の上方と、遠心分離部110に保持された反応容器300への吐出位置PN2の上方と、の間でノズル121を直線移動させる直動機構である。移動機構128は、水平面内で移動軸128aに沿った方向にのみノズル121を往復移動可能に設けられている。これにより、吸引位置PN1の上方と吐出位置PN2の上方とを最短経路で結ぶことができる。その結果、ノズル121を移動させるための水平方向のスペースを極力小型化できるので、試料調製装置100の設置面積を効果的に抑制できる。
【0069】
移動機構128は、駆動部122と、水平方向の直動機構128bと、を含む。また、分注部120は、昇降機構128cを含む。
【0070】
ノズル121は、上下方向に延びる吸引管により構成されている。ノズル121は、第1試薬設置部130および遠心分離部110に設置された反応容器300よりも上方となる位置に保持されている。直動機構128bは、駆動部122の駆動力をノズル121の移動のために伝達する機構であり、昇降機構128cを介してノズル121を移動軸128aに沿って移動可能に支持する。駆動部122は、たとえばベルト-プーリ機構などの伝達機構を介して、ノズル121を直動機構128bに沿って移動させる。駆動部122は、たとえば電動モータである。昇降機構128cは、ノズル121を上下方向に移動可能に構成されている。昇降機構128cは、電動モータと直動機構とを含んで構成される。これにより、ノズル121は、駆動部122によって移動軸128aに沿って直線移動するとともに、吸引吐出時には昇降機構128cによって上下方向に移動する。
【0071】
図7の例では、試薬設置部は、試薬容器を複数保持する複数の容器保持部131cを含む。複数の容器保持部131cは、ノズル121の移動軸128aに沿って配置されている。これにより、たとえば複数の容器保持部131cを移動軸128aの線上まで移動させる機構を試薬設置部に設ける必要がないので、複数の試薬容器から試薬吸引を行う場合でも試薬設置部が占めるスペースが大型化することを抑制できる。
【0072】
容器保持部131cが水平面内で移動軸128aと直交する方向にも並ぶ場合、試料調製装置100は、試薬設置部を移動軸128aと直交する方向に移動させる機構を備えていてもよい。
【0073】
移動軸128aは、水平面内におけるノズル121の先端の軌跡である。移動軸128aは、第1試薬設置部130における吸引位置PN1の上方と、遠心分離部110のホルダ部111における吐出位置PN2の上方と、の間を結ぶ直線によって構成される。吐出位置PN2は、回転軸部113を中心とする円周上を移送するホルダ部111の移動軌跡上であって、第1試薬設置部130との距離が最短になる位置として設定されうる。すなわち、吐出位置PN2は、第1試薬設置部130の挿入口132とホルダ部111の回転中心軸とを結ぶ線分とホルダ部111の移動軌跡との交点に設定されうる。これにより、ノズル121の移動距離を最小にできる。
【0074】
図7に示すように、遠心分離部110は、円周状に並ぶ複数のホルダ部111を有し、回転中心軸回りにホルダ部111を移動させることにより、複数のホルダ部111に保持された反応容器300を、順次、ノズル121の移動軸128aの線上の吐出位置PN2に位置づけるように構成されている。これにより、ノズル121は、複数のホルダ部111が移動する円周経路上の1箇所の吐出位置PN2の上方に移動するだけで、複数のホルダ部111に保持された全ての反応容器300への分注を行える。このため、ノズル121を移動させるための水平方向のスペースを効果的に小さくできる。
【0075】
図8では、遠心分離部110が8個のホルダ部111を有する例を示す。それぞれのホルダ部111に保持された反応容器300に対して試薬の分注動作を行う場合、ノズル121が吐出位置PN2の上方に位置付けられるとともに、1番目のホルダ部111-1が回転により吐出位置PN2へ位置付けられる。ノズル121が下方向に移動するとともに1番目のホルダ部111-1に保持された反応容器300内に試薬を分注する。次に、ノズル121が反応容器300よりも上方へ移動すると、2番目のホルダ部111-2が回転により吐出位置PN2へ位置付けられる。ノズル121が下方向に移動するとともに2番目のホルダ部111-2に保持された反応容器300内に試薬を分注する。その後、3番目のホルダ部111-3に保持された反応容器300にも同様にして試薬が分注される。
【0076】
(遠心分離部)
図9に示すように、遠心分離部110は、複数のホルダ部111が設けられたロータ部112を収容する箱体115内に設けられている。箱体115は、ロータ部112の周囲を取り囲む周壁部115aと、箱体115の底面を構成するベース部115bとを有する有底円筒状に形成されている。また、箱体115は、箱体115の上部を覆う天面部115cを有する。天面部115cには、少なくとも吐出位置PN2(
図3、
図7-8参照)におけるホルダ部111の上方を開閉可能に覆う蓋部115dが設けられている。蓋部115dは電動モータなどの駆動源により、箱体115の上部を開放および閉鎖可能に構成されている。箱体115および蓋部115dは断熱材料により構成されている。
【0077】
回転軸部113は、上下方向に延びるとともに、ベース部115bを貫通している。回転軸部113の上端部がロータ部112に連結固定されている。回転軸部113の下端部がベース部115bを通過して、ベース部115bの下側に配置されたロータ駆動部114に接続されている。
【0078】
ロータ駆動部114は、電動モータにより構成され、ロータ部112を回転させる。ロータ駆動部114は、回転軸部113を回転させることにより、回転軸部113およびロータ部112を、回転軸線AXを中心に回転させる。
【0079】
遠心分離部110は、ロータ部112の回転位置を検出する回転位置検出部114aを含む。これにより、回転位置検出部114aの検出結果に基づいて、各ホルダ部111を吐出位置PN2(
図3、
図7-8参照)へ正確に位置付けることができる。制御部200(
図2参照)が、回転位置検出部114aの検出結果に基づきロータ駆動部114の駆動量を制御することにより、各ホルダ部111の周方向の位置制御が行われる。ロータ駆動部114は、たとえばパルスモータであり、回転位置検出部114aは、たとえばロータ駆動部114の回転角度の原点センサである。制御部200は、1パルス当たりのロータ部112の回転角度と、検出された原点角度から目標角度までの回転角度と、に基づいて、任意のホルダ部111を、周方向の任意の回転位置(たとえば、吐出位置PN2、容器のセット位置)に位置付けるようにロータ駆動部114を制御できる。回転位置検出部114aは、ロータリーエンコーダでもよい。
【0080】
遠心分離部110は、スイングロータ式の遠心分離機である。ロータ部112は、反応容器300を保持するホルダ部111を揺動自在に支持する。ホルダ部111は、ロータ部112から下方に吊り下がるように設けられている。ロータ部112は、ホルダ部111の上部を揺動軸として支持する。ロータ部112は、回転軸部113の上端部において水平方向に拡がる円板部112aを有する。ロータ部112は、たとえば
図10に示すように、円板部112aの外周部に固定された固定部112bと、固定部112bから延びてホルダ部111の周方向両側に配置された一対の軸支持部112cと、各軸支持部112cから延びてホルダ部111を支持する揺動軸112dとを含む。これにより、ホルダ部111は、周方向の両側から揺動軸112dによって揺動可能に支持されている。また、ロータ部112には、一対の軸支持部112cの径方向外側先端部を接続するように取付部112eが設けられている。
【0081】
〈規制部材〉
図9に戻り、遠心分離部110は、ロータ部112の回転時にホルダ部111と当接することにより反応容器300の傾斜角度を規制する規制部材116を含む。
図9のうち、図中左側のホルダ部111は、ロータ部112の非回転時の状態を示しており、図中右側のホルダ部111は、ロータ部112の回転時の状態を示している。規制部材116は、ロータ部112の取付部112e(
図10参照)の下面側に取り付けられている。規制部材116は、ロータ部112に一体形成されていてもよい。
【0082】
規制部材116は、ロータ部112の回転時に、傾斜したホルダ部111の底部と揺動軸112dとの間となる位置でホルダ部111と当接するように配置されている。
【0083】
具体的には、ホルダ部111は、上端から反応容器300を挿入可能な筒状形状を有する。規制部材116は、ロータ部112の回転時に、ホルダ部111の底部と上端部との間の外周面111aと当接するように設けられている。これにより、揺動するホルダ部111の最大半径の範囲内に規制部材116を収めることができるので、遠心分離機が大型化することがない。また、規制部材116がホルダ部111の底部や上端部でなく外周面111aと当接するので、容易かつ確実に規制部材116とホルダ部111とを当接させることができる。
【0084】
規制部材116は、ホルダ部111と当接するとともに反応容器300の傾斜角度に対応した傾斜面116aを有する。これにより、ホルダ部111を傾斜面116aに沿う角度まで揺動した状態で規制できる。また、ホルダ部111が規制部材116に当接する際に点接触のような局所接触を避けることができるので、当接時の衝撃が集中することを抑制できる。
【0085】
規制部材116は、少なくともホルダ部111と当接する部分が耐衝撃材料から形成されている。
図9の例では、ホルダ部111と当接する部分は、傾斜面116aである。耐衝撃材料は、外部から加えられる瞬間的な大きな力(すなわち衝撃)に対して破壊されにくい性質を有する材料である。これにより、ホルダ部111と規制部材116とが繰り返し当接しても、規制する傾斜角度が変動したりすることを抑制できる。耐衝撃性は、たとえばアイゾット衝撃試験による衝撃強さの値で評価できる。
【0086】
また、規制部材116は、少なくともホルダ部111と当接する部分が弾性材料から形成されている。これにより、規制部材116の弾性によって、当接時に、ホルダ部111と規制部材116とに過度な衝撃が作用することを回避できる。規制部材116は、たとえば耐衝撃材料であり弾性材料でもある樹脂材料により構成されている。そのような樹脂材料は、たとえばPOM(ポリアセタール樹脂)である。樹脂材料は、PC(ポリカーボネート)、ナイロン、PS(ポリスチレン)、ABS樹脂などでありうる。
【0087】
図11に示すように、規制部材116は、ロータ部112の回転時における反応容器300の長手方向DR1と、反応容器300の内容物にかかる遠心力方向DR2との間の角度θが20度以上70度以下の範囲内の角度となるように、反応容器300の傾斜角度を規制するように構成されている。これにより、反応容器300の内容物を十分に偏らせて沈降させることができるので、上清の吸引時におけるノズル121による沈殿物の吸い込みを効果的に抑制できる。また、ホルダ部111の揺動角度が0度(すなわち、水平方向)よりも十分に大きくなることで、回転時のロータ部112の最大半径を効果的に抑制できる。
【0088】
本実施形態では、遠心力方向DR2は、水平方向に一致する。傾斜面116aがホルダ部111と当接する構成では、角度θは、傾斜面116aの角度によって決定されうる。角度θは、たとえば、20度、30度、40度、45度、50度、60度、70度でありうる。
図11では、角度θが45度の例を示す。
図12では、角度θが30度の例を示す。
図13では、角度θが20度の例を示す。
図11~
図13の各々では、傾斜面116aの角度が異なる。
【0089】
角度θが0度に近いほど、反応容器300の傾斜角度が遠心力方向DR2に近付くため、反応容器300内で沈殿物を偏らせる効果、ロータ部112の回転時における最大半径を抑制する効果が低くなる。角度θが90度に近いほど、遠心力が反応容器300の底部よりも内側面に向けて作用することになるため、沈殿物の形成範囲が拡がり沈殿物を塊状に集約させにくくなる。そのため、好ましくは、角度θは、35度以上55度以下の範囲内の角度である。
【0090】
また、
図9の例では、規制部材116は、ロータ部112に着脱可能に設けられている。このため、形状が異なる複数種類の規制部材116(
図11、
図12、
図13参照)を交換することができ、規制部材116の交換により反応容器300の傾斜角度の調整(つまり、角度θの調整)が可能である。これにより、沈殿物の量などに応じて、反応容器300の傾斜角度を、ノズル121による沈殿物の吸い込みを抑制可能な適切な傾斜角度に設定できる。
図10の例では、規制部材116は、ロータ部112の取付部112eの下面側に、ねじなどの固定手段によって着脱可能に固定されている。
図10の例では、規制部材116が1つのホルダ部111に対して1つ設けられる例を示しているが、規制部材116を円環形状に形成して、周方向に並ぶ複数のホルダ部111に対して1つ設けてもよい。
【0091】
遠心分離部110におけるロータ部112の回転制御は、制御部200(
図2参照)によって行われる。制御部200は、反応容器300の内容物を沈降させる遠心分離をするように遠心分離部110を制御する。遠心分離時には、制御部200は、たとえばロータ部112を所定の角速度で等角速度回転させる制御を行う。
【0092】
図14(A)に示すように、規制部材116は、反応容器300の内容物を遠心分離するためのロータ部112の回転時に、ホルダ部111との当接状態を維持するように構成されている。これにより、反応容器300の内容物に作用する遠心力の方向を一定に保つことができる。その結果、反応容器300内の沈殿物PPが広く分布しないように沈殿物を集めることができる。
【0093】
図14(B)に示すように、遠心分離後、分注部120のノズル121によって、反応容器300内の上清が除去される。
図14(C)に示すように、上清が除去された後、分注部120のノズル121によって試薬が分注される。反応容器300内には、沈殿物PPと試薬とが収容される。
【0094】
図14の構成例では、試薬分注が行われた場合、遠心分離部110によって、撹拌が行われる。制御部200は、ロータ部112の角加速度を変化させることにより、反応容器300の内容物を攪拌するように遠心分離部110を制御する。
【0095】
図14(D)に示すように、制御部200は、攪拌時に、規制部材116との当接状態と、ホルダ部111から離れた非当接状態とが生じるようにロータ部112を制御する。これにより、遠心分離後に沈降した内容物と、分注された試薬とを攪拌により混合することができる。ホルダ部111と規制部材116とが衝突することによって、ホルダ部111に衝撃が付与される。ホルダ部111に付与された衝撃は、ホルダ部111に保持された反応容器300に伝わる。この非接触状態のホルダ部111が規制部材116に当接することによる衝撃によって、ホルダ部111に保持された反応容器300をタッピングする作用を得ることができる。タッピングとは、手で保持したバイアル側面を指で弾いて衝撃を付与することによりバイアルの内容物を攪拌する手法である。これにより、角加速度変化による攪拌効果と、タッピングによる攪拌効果との両方を得ることができるので、内容物の攪拌を効果的に行える。
【0096】
制御部200は、攪拌時に、ロータ部112の角加速度を複数回にわたって繰り返し変化するように遠心分離部110を制御する。制御部200は、攪拌時に、当接状態と非当接状態とが繰り返し生じるようにホルダ部111を制御する。これにより、角加速度によるオイラー力の繰り返し変化による攪拌効果が得られる。さらに、当接状態と非接触状態とが繰り返し生じることにより、複数回のタッピングによる攪拌効果が得られる。そのため、より効果的に、短時間で効率良く攪拌が行える。
【0097】
攪拌は、ロータ部112の角加速度が変化する断続回転または反転回転である。攪拌時に、制御部200は、ロータ部112が断続回転または反転回転するように遠心分離部110を制御する。断続回転は、同じ方向へ向けて、回転と停止とを繰り返し行う回転である。反転回転は、一方回転と他方回転とを繰り返し行う回転である。これにより、一定の回転方向への断続回転、または一方回転と他方回転とを行う反転回転によって、効果的に角加速度を変化させることができる。
【0098】
図15は、攪拌を行う場合の角速度の時間変化を示したグラフである。縦軸が角速度を示し、横軸が時間を示す。縦軸のうち正の値は一方方向(たとえば時計方向)の回転を示し、負の値は他方方向(たとえば反時計方向)の回転を示す。
【0099】
図15(A)は、反転回転の例を示す。時間t1の加速と、時間t2の減速とにより、一方方向への回転が行われる。略停止状態の時間t3の経過後、時間t4の加速と、時間t5の減速とにより、他方方向への回転が行われる。一方方向の回転での加減速と他方方向の回転での加減速とが交互に繰り返されることにより、反応容器300の内容物に、方向が逆転するオイラー力が繰り返し作用する。最大の角速度w1、-w1は、遠心力によりホルダ部111が当接状態となるのに十分な大きさに設定される。ホルダ部111は、角速度が0付近において、非接触状態となる。一方方向の回転での加減速と他方方向の回転での加減速とのそれぞれにおいて、ホルダ部111が規制部材116に衝突してタッピングが行われる。
【0100】
図15(B)は、一方方向への断続回転の例を示す。時間t6の加速と、時間t7の減速とにより、一方方向への回転が行われる。略停止状態の時間t8の経過後、再度一方方向への加減速が行われる。これが繰り返されることにより、反応容器300の内容物に、方向が逆転するオイラー力が繰り返し作用する。角速度の大きさについては、
図15(A)と同様としてよい。これにより、(時間t6+時間t7)の1回の断続回転を行う毎に、ホルダ部111が規制部材116に衝突してタッピングが行われる。なお、他方方向への断続回転を行ってもよい。
【0101】
図14(D)の攪拌は、
図15(B)に示すように行われる。
図14(A)~(D)に示したように、制御部200は、上清が吸引された後の反応容器300内に、分注部120により試薬を分注し、ホルダ部111を攪拌するように、遠心分離部110および分注部120を制御する。これにより、遠心分離によって沈降した沈殿物PPの塊を、分注された試薬中で効果的に分散させることができる。その結果、検体と試薬との反応のばらつきを抑制できる。
【0102】
なお、遠心分離時の回転例を、
図15(C)に示す。遠心分離時には、一方回転または他方回転で、角速度の状態が所定時間t9の間継続される。
図15(C)は一方回転の例であるが、他方回転でもよい。最大の角速度w2は、ホルダ部111が当接状態となるのに十分な大きさに設定される。所定時間t9のうち、少なくとも角速度w2で回転している間、ホルダ部111の当接状態が維持される。図では模式的に示しているが、遠心分離時の角速度w2は、攪拌時の角速度w1よりも大きい。
【0103】
〈温度調整部〉
図9に示した例では、遠心分離部110は、温度調整部117を備える。温度調整部117は、ホルダ部111の表面と隣り合うとともに対向するように設けられた伝熱面117aを含む。
【0104】
図9では、温度調整部117は、加熱または冷却を行う本体部117bと、本体部117bに接続された伝熱部材117cと、を含む。温度調整部117は、本体部117bにおいて発生させた高温または低温の熱を、伝熱部材117cを介してホルダ部111に伝達する。
【0105】
本体部117bは、ペルチェ素子を有する。これにより、本体部117bを小型化できる。また、熱媒体を循環させる熱交換器などを本体部117bに設ける場合と比べて、伝熱部材117cの均一な温度調整ができるので、反応容器300の内容物に対する温度調整を高精度に行える。
【0106】
図9では、伝熱部材117cは、回転軸部113の外周に配置され、伝熱面117aを有する。本体部117bは、伝熱部材117cの下方に配置されている。伝熱面117aは、ホルダ部111の回転軸部113側の側面の少なくとも一部と接触又は近接する位置に設けられている。伝熱面117aは、ホルダ部111の側方の表面111bと半径方向に対向する。これにより、加熱または冷却を行う本体部117bを回転軸部113の外周に配置せずに済むので、設計上の制約なく本体部117bを容易に配置できる。伝熱部材117cの側面により伝熱面117aを構成し、ホルダ部111の回転軸部113側の表面111bと伝熱面117aとを対向させることができる。
【0107】
本体部117bは、ベース部115bの下側に配置されている。本体部117bは、伝熱部材117cの下方に配置されている。本体部117bは、ベース部115bを貫通するように設けられた伝熱部材117cの下端部と接触している。これにより、本体部117bは、伝熱部材117cと直接接触して、熱伝導により熱を伝える。
【0108】
また、伝熱部材117cは、ホルダ部111と、ロータ部112と、回転軸部113とにより囲まれるように設けられている。伝熱部材117cは、ホルダ部111側の外表面に伝熱面117aを有する。これにより、回転軸部113とホルダ部111との間の空間に伝熱部材117cを収容できるので、伝熱部材117cを設ける場合でも、遠心分離機(遠心分離部110)の外形寸法が大きくなる事を抑制できる。
【0109】
また、ホルダ部111は、反応容器300を受容する保持孔151a(
図10参照)を有するホルダ本体151を含む。ホルダ部111は、ホルダ本体151に設けられたホルダ伝熱部152を含む。ホルダ伝熱部152は、温度調整部117の伝熱面117aに接触又は近接する領域を有する。すなわち、ホルダ伝熱部152は、伝熱面117aと対面する表面111bを有する。ホルダ伝熱部152は、ホルダ本体151よりも高い熱伝導率を有する。これにより、熱伝導率の高いホルダ伝熱部152によって、ホルダ伝熱部152と伝熱面117aとの間の熱伝達を効率良く行える。その結果、ホルダ部111に保持される反応容器300の内容物に対する温度調整機能を効果的に向上できる。なお、規制部材116と当接する外周面111aは、ホルダ本体151の外周面である。
【0110】
ホルダ本体151は、たとえば樹脂材料により形成され、ホルダ伝熱部152は、たとえば金属材料により形成される。たとえば、ホルダ本体151はPOM(ポリアセタール樹脂)により形成されており、ホルダ伝熱部152はアルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されている。POMの熱伝導率は、約0.25[W/m・K]であり、アルミニウムの熱伝導率は、約236[W/m・K]である。なお、反応容器300は、たとえばPS(ポリスチレン)により形成されており、PSの熱伝導率は、0.10[W/m・K]~0.14[W/m・K]である。
【0111】
ホルダ伝熱部152の表面111bは、伝熱面117aに沿って延びる面である。これにより、伝熱面117aとホルダ伝熱部152との間の熱伝達を均一に行える。そのため、反応容器300の内容物の温度ばらつきを効果的に抑制できる。ホルダ伝熱部152の表面111bと伝熱面117aとは、半径方向に向かい合う。
【0112】
図9の例では、ホルダ伝熱部152が、ホルダ本体151の下部に設けられ、保持孔151aの下端部を構成している。つまり、ホルダ本体151には、保持孔151aのうち上端部から中間位置までの貫通孔が形成されている。ホルダ伝熱部152には、ホルダ本体151の貫通孔の下端部と連続して、保持孔151aのうち中間位置から下端部までの凹部が形成されている。保持孔151aは、貫通孔と凹部とが連結されることによって、上部が開放され、下部が塞がれた有底円筒状に形成されている。このため、ホルダ伝熱部152は、ホルダ本体151を介在させずに反応容器300と直接接触するように構成されている。その結果、ホルダ部111に保持される反応容器300の内容物に対する温度調整機能を効果的に向上できる。
【0113】
図9の右側のホルダ部111により示したように、ホルダ部111は、ロータ部112の回転中は伝熱面117aから離れる方向に揺動する。
図9の左側のホルダ部111により示したように、ホルダ部111は、ロータ部112の停止時に、伝熱面117aに近付く位置に配置されるように、ロータ部112に設けられている。このように、ロータ部112は、ロータ部112の回転中はホルダ部111の伝熱面117aに接触又は近接する領域(すなわち、表面111b)が伝熱面117aから離れる方向にホルダ部111が傾斜し、当該領域が伝熱面117aに近接しなくなるように、ホルダ部111を支持する。
【0114】
これにより、ロータ部112の停止時には、伝熱面117aとホルダ部111とが近付くので、伝熱面117aとホルダ部111との間の熱伝達を効率良く行える。その結果、検体と試薬との反応工程を速やかに行える。ロータ部112の回転中は、遠心分離工程など反応工程以外の工程を行うことから、熱伝達を行う必要がないので、温度調整機能への影響がない。
【0115】
ロータ部112の停止時に、ホルダ部111の表面111bが、伝熱面117aと当接するか、または伝熱面117aと非接触で近接する位置に配置される。これにより、ホルダ部111と伝熱面117aとの間の熱伝達を極力効率良く行える。そのため、反応容器300の内容物の温度を速やかに調整できる。
【0116】
ロータ駆動部114が停止しているときに、ホルダ部111の伝熱面117aに接触又は近接する領域(すなわち、表面111b)の少なくとも一部と伝熱面117aとの間隔は、10mm以下である。これにより、熱放射による熱伝達効率を確保できる。ホルダ部111の表面111bと伝熱面117aとの間隔が0mmとなり当接する場合には、熱伝導による直接的な熱伝達が実現できる。伝熱部材117c、ロータ部112およびホルダ部111の寸法誤差や、組付誤差を考慮して、ホルダ部111の表面111bと伝熱面117aとを僅かに離してよい。たとえば、ホルダ部111の表面111bと伝熱面117aとの間隔は、5mm、3mm、2mmまたは1mmに設定してもよい。ホルダ部111の表面111bと伝熱面117aとの間隔を0mmに設定してもよい。ホルダ部111が揺動可能なので、誤差により伝熱面117aの位置が設計よりも僅かに外周側にずれたとしても、その分、ホルダ部111が外側にずれた位置で伝熱面117aと接触するだけである。
【0117】
図16~
図18は、伝熱部材117cの伝熱面117aの形状と、ホルダ部111の表面111bの形状のバリエーションを示す。なお、
図9に示したようにホルダ部111がホルダ伝熱部152を有する場合、
図16~
図18のホルダ部111の表面111bは、ホルダ伝熱部152の表面である。
【0118】
図16の例では、伝熱部材117cは、回転軸部113を取り囲む筒状形状を有し、外周面111a(
図9参照)の少なくとも一部が伝熱面117aである。伝熱部材117cは、ホルダ部111の個数に一致する数の面を有する中空の多角柱形状に形成されている。多角柱形状の伝熱部材117cの各面が、伝熱面117aである。これにより、複数のホルダ部111の各表面111bにそれぞれ対向するように、伝熱部材117cの外周面に伝熱面117aを形成できる。
【0119】
図17の例では、伝熱部材117cが、円筒形状を有し、伝熱部材117cに対向するホルダ部111の表面111bが、円弧状の凹面を有する。これにより、ホルダ部111の周方向位置がどの位置にある場合でも、伝熱面117aとホルダ部111とを確実に対向させることができる。また、ホルダ部111が周方向に複数設けられている場合でも、1つの伝熱部材117cによって伝熱面117aと複数のホルダ部111とを半径方向に対向させることができる。
【0120】
それぞれの凹面は、伝熱部材117cの外周面である伝熱面117aと、ホルダ部111の回転軸部113を中心とする同心円状の円弧曲面として形成される。それぞれの凹面は、伝熱部材117cの伝熱面117aと平行である。
【0121】
図18の例では、伝熱部材117cは、ホルダ部111の個数と同じ個数の伝熱ブロック117dを含む。伝熱ブロック117dが、ホルダ部111と対向するように回転軸部113の外周に沿って並んで配置されている。複数の伝熱ブロック117dは、それぞれ本体部117bに接続している。
図18の例は、
図16の伝熱部材117cを伝熱面117a毎に分離させた構造である。
【0122】
図16の例、および
図18の例では、伝熱面117aが、平面を有する。ホルダ部111は、ホルダ部111の伝熱面117aに接触又は近接する領域に平面を有する。つまり、伝熱部材117cに対向するホルダ部111の表面111bが、平面である。これにより、伝熱面117aとホルダ部111の表面111bとを、平面同士で対向させることができる。そのため、ホルダ部111の表面111bへの熱伝達を均一かつ効率良く行える。
図16の例、および
図18の例では、伝熱面117aとホルダ部111の表面111bとが、互いに平行に延びる平坦面である。
【0123】
また、
図16の例、および
図18の例では、伝熱面117aは、複数のホルダ部111ごとに設けられている。これにより、伝熱面117aとホルダ部111とを一対一で設けることができる。そのため、ホルダ部111が周方向に複数設けられている場合でも、各ホルダ部111に保持される反応容器300の内容物に対する高い温度調整機能を確保できる。
【0124】
図9に戻り、温度調整部117の制御は、制御部200(
図2参照)により行われる。制御部200は、反応容器300の内容物に対する温度調整を行う。温度は、反応容器300内で検体と試薬とを反応させるのに適した温度となるように調整される。温度は、室温とは異なる温度でありうる。
【0125】
制御部200は、たとえば、伝熱面117aを0℃以上10℃以下になるように本体部117bを制御する。これにより、標準的な室温(20℃程度)よりも低い温度に調整する場合にも、温度調整部117によって、反応容器300の内容物を速やかに目標温度に調整できる。
【0126】
また、制御部200は、たとえば、伝熱面117aの温度を試薬設置部内の温度と一致させる。制御部200は、ホルダ部111に保持された反応容器300に分注された試薬と、試薬設置部(第1試薬設置部130)に設置された試薬容器(第1試薬容器310)に収容された試薬と、が同じ温度になるように本体部117bおよび試薬温度調整部136を制御する。これにより、反応容器300に分注される試薬の温度と、遠心分離部110内における温度調整部117の目標温度とを一致させることができる。そのため、分注される試薬温度によって反応容器300の内容物の温度が目標温度から乖離することがないので、反応容器300の内容物の温度調整を容易かつ速やかに行える。
【0127】
一例では、検体が、血液であり、試薬が、抗体試薬である。抗体試薬は、温度による影響を受けやすいため、反応容器300の内容物の温度調整を速やかに行える本実施形態によれば、血液と抗体試薬との反応工程における温度に起因するばらつきを低減できる。その結果、試料調製の品質ばらつきを効果的に抑制できる。
【0128】
一例では、第1試薬容器310に収容された抗体試薬は、たとえば保管温度が約4℃、反応温度が約4℃である。この場合、制御部200は、伝熱面117aおよび第1試薬設置部130を4℃±E℃になるように、本体部117bおよび試薬温度調整部136をそれぞれ制御する。Eは許容誤差を表す。
【0129】
このように、試料調製装置100は、温度調整部117を備えた遠心分離機により構成された遠心分離部110と、試薬を反応容器300に分注する分注部120と、温度調整部117を制御する制御部200と、を備えるので、遠心分離機に保持された反応容器300内で検体と試薬とを反応させる際の反応容器300の内容物に対する温度調整機能を向上させることができる。
【0130】
〈容器の種類および配置〉
ホルダ部111が保持する反応容器300は、
図19に示すように、第1容器301と、第2容器302とを含む。本実施形態では、ロータ部112は、複数のホルダ部111において、第1容器301および第2容器302として、同種類の容器を保持するように構成されている。
【0131】
第1容器301は、検体を収容した反応容器300である。また、第2容器302は、検体を収容していない反応容器300である。また、第2容器302は、ノズル121の洗浄に用いる洗浄容器302aを含む。また、第2容器302は、第1容器301との重量バランスを取るためのバランサーを含む。
【0132】
〈ノズルの洗浄〉
図19の例では、制御部200(
図2参照)は、遠心分離部110において、ホルダ部111に保持された第1容器301に試薬を分注し、ホルダ部111に保持された第2容器302に収容された洗浄液を用いてノズル121を洗浄するように遠心分離部110および分注部120を制御するように構成されている。具体的には、制御部200は、複数のホルダ部111に保持された容器のうち、検体を収容した第1容器301に試薬を分注し、検体を収容していない第2容器302に収容された洗浄液を用いてノズル121を洗浄するように遠心分離部110および分注部120を制御する。
【0133】
具体的には、
図20に示すように、制御部200(
図2参照)は、ノズル121を第2容器302に挿入した状態で、洗浄液容器166aから吸引した洗浄液を第2容器302に吐出し、第2容器302に吐出した洗浄液を吸引除去するように遠心分離部110(
図19参照)および分注部120を制御する。
【0134】
図20の例では、分注部120は、ノズル121に洗浄液を送液するための第1ポンプ170と、ノズル121により第1ポンプ170から送液された洗浄液を吸引するための第2ポンプ171と、を含む。第1ポンプ170および第2ポンプ171は、たとえば、ダイヤフラムポンプを含む。
【0135】
制御部200(
図2参照)は、第1ポンプ170によってノズル121に送液することにより第2容器302内に洗浄液を吐出するように分注部120を制御する。また、制御部200は、第2ポンプ171によって第2容器302内の洗浄液をノズル121により吸引することにより、ノズル121を洗浄するように分注部120を制御する。
【0136】
また、分注部120は、第1ポンプ170により洗浄液を送液する第1流路400aと、第2ポンプ171により第1ポンプ170から送液された洗浄液を吸引する第2流路400bとを切り替える切替弁180を含む。
【0137】
図20の例では、制御部200(
図2参照)は、分注部120と、第1ポンプ170と、第2ポンプ171と、切替弁180とを制御し、流路400を介して洗浄液を吐出および吸引することによってノズル121の洗浄動作を行う。
【0138】
流路400は、第1流路400aと、第2流路400bと、第3流路400cと、第4流路400dとを含む。第1流路400aは、洗浄液容器166aと切替弁180とを接続する流路である。また、第2流路400bは、切替弁180と廃液槽160とを接続する流路である。また、第3流路400cは、切替弁180とノズル121とを接続する流路である。また、第4流路400dは、廃液槽160と第2ポンプ171とを接続する流路である。ノズル121の洗浄動作を行う際、第1流路400a~第3流路400c内は、洗浄液が流れ、第4流路400d内は、空気が流れる。
【0139】
第1ポンプ170は、第1流路400aに設けられている。また、第2ポンプ171は、第4流路400dによって、廃液槽160に接続されている。制御部200(
図2参照)は、切替弁180によって第1流路400aと第2流路400bとを切り替えることにより、ノズル121を洗浄するように分注部120を制御する。
【0140】
本実施形態では、制御部200(
図2参照)は、第1容器301に試薬を分注した後、および、第1容器301内の上清を除去した後に、ノズル121の洗浄動作を行うように、遠心分離部110および分注部120を制御する。
【0141】
〈試薬分注後のノズルの洗浄〉
図21の例では、制御部200(
図2参照)は、ロータ部112を回転させることにより、第1容器301をノズル121の位置に移動させ、第1容器301に試薬を分注するように遠心分離部110および分注部120を制御する。また、制御部200は、ロータ部112を回転させることにより、第2容器302をノズル121の位置に移動させ、ノズル121を洗浄するように遠心分離部110および分注部120を制御する。
【0142】
制御部200(
図2参照)は、複数のホルダ部111のうち、ロータ部112の回転軸(すなわち、回転軸部113)に対して対称となる位置に対で配置された複数の第1容器301に対して試薬を分注するように遠心分離部110および分注部120を制御する。
図21の例では、第1容器301は、ホルダ部111-1、ホルダ部111-3、ホルダ部111-5、および、ホルダ部111-7に保持されている。制御部200は、ロータ部112を回転させながら第1容器301内に試薬を分注するように、遠心分離部110および分注部120を制御する。制御部200は、ホルダ部111-1、ホルダ部111-3、ホルダ部111-5、および、ホルダ部111-7を、順次、吐出位置PN2に移動させ、各ホルダ部111に保持されている第1容器301に対して、試薬を分注する。
【0143】
また、
図21の例では、制御部200(
図2参照)は、複数のホルダ部111のうち、回転軸に対して対称となる位置に対で配置された複数の第2容器302のいずれかを用いてノズル121を洗浄するように遠心分離部110および分注部120を制御する。
図21の例では、第2容器302は、ホルダ部111-2、ホルダ部111-4、ホルダ部111-6、および、ホルダ部111-8に保持されている。
【0144】
各第1容器301に試薬を分注した後、制御部200(
図2参照)は、ロータ部112を回転させ、ホルダ部111-8を吐出位置PN2に移動させ、第2容器302を用いてノズル121を洗浄するように遠心分離部110および分注部120を制御する。
図21では、直前に試薬を分注したホルダ部111-7に最も近いホルダ部111-8の第2容器302を用いてノズル121の洗浄を行う例を示している。
【0145】
ノズル121の洗浄後、遠心分離を行う際には、遠心分離部110内の各ホルダ部111の重量バランスが保たれていることが好ましい。そこで、本実施形態では、制御部200(
図2参照)は、第2容器302に吐出した洗浄液を吸引除去した後に遠心分離するように遠心分離部110および分注部120を制御するように構成されている。
【0146】
〈上清除去後のノズルの洗浄〉
また、制御部200(
図2参照)は、第1容器301の内容物を遠心分離するように遠心分離部110を制御し、ロータ部112を回転させて第1容器301内の上清を吸引除去し、ノズル121を洗浄するように遠心分離部110および分注部120を制御する。
【0147】
図22に示す例では、第1容器301は、ホルダ部111-1、ホルダ部111-3、ホルダ部111-5、および、ホルダ部111-7に保持されている。また、第2容器302は、ホルダ部111-2、ホルダ部111-4、ホルダ部111-6、および、ホルダ部111-8に保持されている。
【0148】
図22に示す例では、第1容器301と、第2容器302とは、ロータ部112の円周方向に並ぶホルダ部111に対して、交互に隣り合うように設置されている。制御部200(
図2参照)は、ロータ部112を回転させ、第1容器301と第2容器302とを順次ノズル121の位置に移動させ、第1容器301内の上清を除去してノズル121を洗浄するように遠心分離部110および分注部120を制御する。
【0149】
図22に示すように、制御部200(
図2参照)は、ホルダ部111-1を、吐出位置PN2に移動させ、ホルダ部111-1が保持する第1容器301内の上清を吸引除去するように、遠心分離部110および分注部120を制御する。その後、制御部200は、第2容器302を保持するホルダ部111-2を吐出位置PN2の位置に移動させるように、ロータ部112を回転させるように制御する。そして、制御部200は、ホルダ部111-2が保持する第2容器302に収容された洗浄液によって、ノズル121の洗浄を行う。
【0150】
制御部200(
図2参照)は、同様の制御を繰り返し行うことにより、ホルダ部111-3、ホルダ部111-5、および、ホルダ部111-7の各々が保持する第1容器301内の上清を吸引除去する制御を行うとともに、ホルダ部111-4、ホルダ部111-6、および、ホルダ部111-8の各々が保持する第2容器302を用いて、ノズル121を洗浄する制御を行う。
【0151】
〈試薬の分注、上清の除去、および、ノズルの洗浄〉
次に、
図23を参照して、本実施形態による試料調製装置100による試料調製方法における、試薬の分注処理、上清の除去処理、および、ノズル121の洗浄処理の一連の流れについて説明する。
【0152】
本実施形態による試薬調製方法は、ホルダ部111に保持された容器のうち、検体を含む第1容器301にノズル121を用いて試薬を分注する工程S501と、第1容器301内の内容物を遠心分離する工程S502と、遠心分離部110に設けられた洗浄部においてノズル121を洗浄する工程S503と、を含む。ノズル121を洗浄する工程は、第2容器302内において行われる。
【0153】
第1容器301に試薬を分注する工程S501は、ロータ部112を回転させることにより、第1容器301をノズル121の位置に移動させて行う。また、ノズル121を洗浄する工程S503は、第1容器301に試薬を分注する工程S502の後にロータ部112を回転させることにより、第2容器302をノズル121の位置に移動させてノズル121の洗浄を行う第1洗浄動作を含む。第1洗浄動作を行う工程は、第1容器301に試薬を分注した後、第1容器301に分注する試薬の種類を変更する前に、複数のホルダ部111に保持された第2容器302を用いて行われる。
【0154】
また、本実施形態による試薬調製方法は、遠心分離する工程S501の後に、第1容器301に含まれる上清を、ノズル121を用いて吸引除去する工程S504を含む。ノズル121を洗浄する工程S503は、第1容器301に含まれる上清を、ノズル121を用いて吸引除去する工程S504の後に、第1容器301に分注する試薬を吸引する前にノズル121の洗浄が行われる第2洗浄動作を含む。
【0155】
本実施形態による試薬調製方法では、第1容器301内の上清を除去する工程S504と、ノズル121を洗浄する工程S503とは、ロータ部112を回転させながら、ロータ部112の円周方向に並ぶホルダ部111に対して、交互に隣り合うように設置された第1容器301と第2容器302とを順次ノズル121の位置に移動させて交互に行われる。
【0156】
(第1試薬設置部)
図24に示す例では、試料調製装置100は、第1試薬設置部130に設置された第1試薬容器310(
図3参照)から、挿入口132を介して分注部120(
図3参照)によって試薬を吸引できる。第1試薬設置部130は、挿入口132を開閉可能に構成されている。
【0157】
第1試薬設置部130は、設置部本体131と、蓋部133と、シャッター部材134と、シャッター駆動部135と、を含む。
【0158】
設置部本体131は、上面を構成する蓋部133が開閉可能に設けられた箱状部材である。蓋部133は、設置部本体131の上部を覆うように設けられている。蓋部133には、複数の試薬容器の上方位置に、ノズル121を通過させる複数の第1挿入孔133aが形成されている。シャッター部材134は、蓋部133と重なるように配置されている。シャッター部材134(
図25参照)には、ノズル121の第2挿入孔134aと遮蔽部134bとが形成されている。
【0159】
図24では、シャッター部材134は、設置部本体131に対して蓋部133と一体的に開閉されるように蓋部133に設けられている。これにより、試薬容器の設置時および取出時に蓋部133を開放すると、シャッター部材134も蓋部133とともに開放される。そのため、蓋部133とシャッター部材134とを別々に開放する場合と比較して、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0160】
シャッター駆動部135は、シャッター部材134を移動させるアクチュエータを有する。シャッター駆動部135は、
図25に示すように、シャッター部材134を、第2挿入孔134aを介して複数の第1挿入孔133aを開放する開放位置OPと、遮蔽部134bにより複数の第1挿入孔133aを閉鎖する閉鎖位置CLと、に移動させるように構成されている。
図25では、遮蔽部134bにハッチングを付して示している。
【0161】
〈挿入口〉
第1試薬設置部130の挿入口132は、蓋部133の第1挿入孔133aと、シャッター部材134の第2挿入孔134aと、によって構成される。開放位置OPでは、第1挿入孔133aに第2挿入孔134aが重なることによって、第1試薬設置部130の内部と外部とを連通させる挿入口132が開放される(つまり、第1挿入孔133aが開放される)。閉鎖位置CLでは、第1挿入孔133aに第2挿入孔134aが重ならずに遮蔽部134bが重なることによって、第1試薬設置部130の挿入口132が閉鎖される(つまり、第1挿入孔133aが閉鎖される)。
【0162】
図25の例では、シャッター部材134は、複数の第1挿入孔133aが第2挿入孔134aを介して開放される1つの開放位置OPと、閉鎖位置CLとに移動可能に構成されている。これにより、シャッター部材134が2ポジションに移動するだけでよいので、シャッター部材134が多数のポジションに移動する場合と比べて、シャッター部材134およびシャッター駆動部135の構成を簡素化できる。
【0163】
シャッター部材134は、複数の第1挿入孔133aと同数の複数の第2挿入孔134aを有している。開放位置OPにおいて、複数の第1挿入孔133aと複数の第2挿入孔134aとが1つずつ重なることにより、複数の第1挿入孔133aが開放される。これにより、たとえば長孔形状の第2挿入孔134aにより複数の第1挿入孔133aをまとめて開放する構成と比較して、第1挿入孔133aの形成箇所だけに第2挿入孔134aが配置されるので、第1挿入孔133aを介した気体の流通および光の透過を効果的に抑制できる。
【0164】
図25の例では、蓋部133には、2つの第1挿入孔133aが設けられている。シャッター部材134には、2つの第1挿入孔133aに対応する2つの第2挿入孔134aが設けられている。
【0165】
蓋部133における複数の第1挿入孔133aのピッチp1と、シャッター部材134における複数の第2挿入孔134aのピッチp2とが、等しい。これにより、同一サイズの第1挿入孔133aと第2挿入孔134aとを同一のピッチで形成するだけで、開放位置OPで全ての第1挿入孔133aを開放する構成が実現できる。
【0166】
図26は、開放位置OPが複数設けられている例を示す。シャッター部材134は、複数の開放位置OP1、OP2に移動されることにより、複数の第1挿入孔133aのうち一部分ずつを、第2挿入孔134aを介して別々に開放可能に構成されている。これにより、試薬吸引の際に必要な第1挿入孔133aを開放し、他の第1挿入孔133aを閉鎖しておくことができるので、第1挿入孔133aを介した気体の流通および光の透過を効果的に抑制できる。
【0167】
図26では、閉鎖位置CLにおいて、複数の第1挿入孔133aの間の位置に第2挿入孔134aが配置されている。一方の第1挿入孔133a側の開放位置OP1にシャッター部材134が移動することにより、一方の第1挿入孔133aと第2挿入孔134aとが重なり第1挿入孔133aが開放される。このとき他方の第1挿入孔133aは遮蔽部134bと重なり閉鎖される。他方の第1挿入孔133a側の開放位置OP2にシャッター部材134が移動することにより、他方の第1挿入孔133aと第2挿入孔134aとが重なり第1挿入孔133aが開放される。このとき一方の第1挿入孔133aは遮蔽部134bと重なり閉鎖される。
【0168】
なお、
図26の例では、第1挿入孔133aの数と第2挿入孔134aの数とが異なっている。第1挿入孔133aの数は任意である。第2挿入孔134aは任意であるが、第1挿入孔133aと同数または第1挿入孔133aよりも少数でありうる。
【0169】
〈試薬設置部の構造〉
図27に示すように、設置部本体131は、底部131aおよび側部131bで囲まれた内部空間を有する。内部空間に、複数の容器保持部131cが設けられている。内部空間の上部が蓋部133により区画されている。容器保持部131cは、試薬容器が挿入される凹部である。
【0170】
試薬設置部は、シャッター部材134が閉鎖位置CLにあるとき、試薬設置部の内部が閉空間となるように構成されている。これにより、試薬吸引時以外での試薬設置部の内部での試薬の蒸発を効果的に抑制できる。シャッター部材134が開放位置OPにある場合にのみ、試薬設置部の内部が外部と連通する。
【0171】
シャッター部材134および蓋部133の少なくとも一方と、設置部本体131とが、遮光性材料で形成されている。これにより、試薬設置部の遮光性を効果的に向上させることができる。
【0172】
図27の例では、シャッター部材134および蓋部133の両方が遮光性材料により形成されている。シャッター部材134および蓋部133の構成材料は、不透明な樹脂材料である。黒色の樹脂材料または表面が黒色に塗装されていることが、遮光性の点で好ましい。シャッター部材134および蓋部133は、同一材料により形成されうる。また、シャッター部材134は、蓋部133と面接触した状態で重ねられ、蓋部133に対して摺動するように設けられている。これにより、蓋部133とシャッター部材134との間の遮光性を向上できる。この場合、シャッター部材134および蓋部133は、摩擦係数が低く摩耗が少ない材料により形成されることが好ましい。シャッター部材134および蓋部133はたとえばポリアセタール(POM)などの樹脂により形成されている。設置部本体131は、たとえばアルミニウムまたはアルミニウム合金などの金属材料により形成されている。
【0173】
シャッター部材134は、第2挿入孔134aが形成された単一の板状部材である。これにより、シャッター部材134の構造を簡素化できる。第2挿入孔134aは、板状部材に形成された厚み方向の貫通孔である。遮蔽部134bは、板状部材のうち、第2挿入孔134aが形成されていない中実の部分である。
【0174】
蓋部133は、外表面側の上面部材133bと、設置部本体131側の下面部材133cとを含む。シャッター部材134は、上面部材133bと下面部材133cとの間にスライド可能に配置されている。これにより、シャッター部材134のスライドが蓋部133の内部で行われるので、シャッター部材134のスライド部分にユーザが触れたり、スライド部分に異物が侵入してシャッター部材134の動作の妨げとなることを抑制できる。
【0175】
上面部材133bは、シャッター部材134に対して上側(すなわち、外表面側)に設けられている。上面部材133bは、シャッター部材134の上面と接触している。下面部材133cは、シャッター部材134に対して下側(すなわち、設置部本体131側)に設けられている。下面部材133cは、シャッター部材134の下面と接触している。上面部材133bの上側に、さらに外装板などが設けられていてもよい。下面部材133cは、容器保持部131cが設けられた試薬設置部の内部空間に露出する。蓋部133の第1挿入孔133aは、上面部材133bおよび下面部材133cを貫通する孔である。
図27の例では、第1挿入孔133aは、厳密には互いに同一位置に形成された上面部材133bの貫通孔および下面部材133cの貫通孔によって構成されている。
【0176】
シャッター駆動部135は、シャッター部材134を一方向に直線移動させることにより、シャッター部材134を開放位置OPと閉鎖位置CLとに移動させるように構成されている。これにより、シャッター駆動部135の構成を簡素化できる。
【0177】
シャッター駆動部135がシャッター部材134の移動させる構成は、公知のスライド構造を採用できるので、特に限定されない。シャッター駆動部135は、電動モータ、ソレノイド、エアシリンダなどのアクチュエータを有する。アクチュエータは、シャッター部材134と直接接続されるか、カム機構、クランク機構、ラックアンドピニオン機構、ベルト-プーリ機構、などの動力伝達機構を介してシャッター部材134と接続される。アクチュエータが発生する駆動力によって、シャッター部材134が開放位置OPと閉鎖位置CLとに移動される。
【0178】
第1試薬設置部130は、試薬温度調整部136を含む。これにより、第1試薬設置部130に設置された状態でも、試薬容器内の試薬を適切な温度で保管できる。そして、本実施形態では、シャッター部材134により第1挿入孔133aを介した気体の流通を抑制できるので、試薬設置部内の温度変動を効果的に抑制できる。
【0179】
図27では、試薬温度調整部136は、たとえばペルチェ素子を含み、設置部本体131の底部131aの下面に設けられている。試薬温度調整部136で発生した低温または高温が、底部131aを構成する材料を介して、底部131aに形成された容器保持部131cの部分へ伝達される。試薬温度調整部136は、主として熱伝導により、容器保持部131cに保持された第1試薬容器310内の試薬の温度を調整する。この構成では、設置部本体131の底部131aが、アルミニウムまたはアルミニウム合金などの熱伝導性の高い材料により構成されていることが好ましい。設置部本体131には、断熱材料により構成された外装が設けられていてもよい。
【0180】
このような構成により、第1試薬設置部130では、設置された第1試薬容器310を保管温度に維持しつつ、密閉状態および遮光状態で保管できる。そして、分注部120による試薬吸引時には、一時的に開放した挿入口132を介して、第1試薬容器310内の第1試薬を吸引できる。
【0181】
分注部120(
図3参照)は、第1挿入孔133aの上方位置において、第1挿入孔133aと開放位置OPにある第2挿入孔134aとを介してノズル121を試薬容器内に挿入させて試薬を吸引し、遠心分離部110のホルダ部111の上方位置において、吸引した試薬を、ノズル121から反応容器300内に吐出する。これにより、遠心分離部110において、反応容器300内への試薬の吐出、検体と試薬との反応、および遠心分離の処理を行える。そのため、反応容器300を試薬の分注位置と、反応処理の位置と、遠心分離部110とに移動させる構成と比べて、装置構成を簡素化できる。また、分注部120が第1挿入孔133aの上方の吸引位置PN1とホルダ部111の上方の吐出位置PN2とに移動するだけでよいので、これによっても装置構成を簡素化できる。
【0182】
(変形例)
図28(A)、(B)の例では、設置部本体131が、水平面内で直交する2軸方向に沿って行列状に試薬容器を設置可能である例を示している。シャッター部材134は、12個の第1挿入孔133aを開放する開放位置OPと閉鎖位置CLとに移動可能である。分注部120が1軸の移動軸128aに沿って移動する場合、第1試薬設置部130には、水平面内でX方向に延びる移動軸128aと直交するY方向へ第1試薬設置部130を移動させる機構が設けられ得る。
【0183】
〈流体回路〉
次に、
図29を参照して、分注部120による試薬吸引、吐出、および上清の吸引を行うための流体回路を説明する。
【0184】
試料調製装置100は、第1ポンプ124と、第2ポンプ127とを備えている。第1ポンプ124はシリンジポンプであり、第2ポンプ127はダイヤフラムポンプである。第1ポンプ124は1つ設けられている。第2ポンプ127は、第2試薬設置部140に設置される第2試薬容器320に対して1つずつ設けられている。
【0185】
分注部120のノズル121は、三方弁である分岐部163a、三方弁である分岐部163bを介して、第1ポンプ124および第2ポンプ127と接続されている。分岐部163aの3つのポートは、ノズル121と、分岐部163bと、廃液槽160と、に接続している、分岐部163bの3つのポートが、分岐部163aと、第1ポンプ124につながる流路164aと、第2ポンプ127につながる流路164bとに接続している。流路164bは、複数の第2ポンプ127が並列で接続されているとともに、分岐部163cを介して、洗浄液槽166に接続している、分岐部163cは、流路164cを介して第1ポンプ124に接続している。
【0186】
試料調製装置100は、陽圧源165aおよび陰圧源165bを備えているか、またはこれらに外部接続されている。陽圧源165aおよび陰圧源165bは、分岐部163dを介して洗浄液槽166に接続し、分岐部163eを介して廃液槽160に接続している。シリンジポンプである第1ポンプ124は、シリンジ駆動用のモータ124aによって吸引吐出を行う。ダイヤフラムポンプである複数の第2ポンプ127は、陰圧源165bからの陰圧を用いて吸引動作を行い、陽圧源165aからの陽圧を用いて吐出動作を行うが、吸引吐出動作に関わる流路、バルブ等の構成は省略している。各分岐部などのバルブの開閉、第1ポンプ124および第2ポンプ127の動作は、制御部200により制御される。
【0187】
第1試薬を分注する場合、分岐部163aおよび分岐部163bの切り替えにより第1ポンプ124とノズル121とが接続される。第1ポンプ124の吸引動作により、第1試薬容器310内にアクセスしたノズル121の先端から第1試薬が吸引される。また、第1ポンプ124の吐出動作によりノズル121内に吸引された第1試薬が吐出される。モータ124aの駆動量制御によって、第1試薬の分注量が制御される。
【0188】
第2試薬を分注する場合、分岐部163aおよび分岐部163bの切り替えにより第2ポンプ127とノズル121とが接続される。分岐部163cは閉じられる。第2ポンプ127の吸引動作により、第2試薬が第2試薬容器320から第2ポンプ127内に吸引される。第2ポンプ127の吐出動作により、第2ポンプ127内に吸引された第2試薬がノズル121へ送液され、ノズル121から吐出される。第2ポンプ127の1回の吐出容積と、第2ポンプ127の吐出回数とにより、第2試薬の分注量が制御される。第2ポンプ127の吐出量は、ノズル121からの分注量と、第2ポンプ127からノズル121の先端までの流通経路の容積と、の合計量とされる。
【0189】
上清の吸引を行う場合、分岐部163aおよび分岐部163eの切り替えにより陰圧源165bとノズル121とが廃液槽160を介して接続される。分岐部163dおよび廃液槽160の開閉バルブ163fは閉じられる。陰圧源165bの陰圧により、反応容器300中の上清がノズル121の先端から吸引され、廃液槽160内に排出される。
【0190】
洗浄液の吐出を行う場合、分岐部163a、分岐部163b、分岐部163cおよび分岐部163dの切り替えにより陽圧源165aとノズル121とが洗浄液槽166を介して接続される。分岐部163eおよび洗浄液容器166aとの間の開閉バルブ163gは閉じられる。陽圧源165aの陽圧により、洗浄液槽166中の洗浄液がノズル121の先端から吐出される。
【0191】
試料調製装置100は、ホルダ部111に保持された容器を用いて、ノズル121の洗浄動作を行うことができる。ノズル121の洗浄時には、洗浄液の吐出動作によって、洗浄液槽166中の洗浄液がノズル121の先端から吐出される。そして、上清の吸引と同じ吸引動作によって、容器中の上清がノズル121の先端から吸引され、廃液槽160内に排出される。
【0192】
(制御部)
図30に示すように、制御部200は、プロセッサ201および記憶部202を備えたコンピュータである。制御部200は、通信部203、表示部204および入力部205を備える。
図30では、試料調製装置100の装置本体100aと、制御部200とが別体で設けられ、通信可能に接続される例を示している。装置本体100aには、遠心分離部110、分注部120、試薬設置部などに制御信号を出力するコントローラ210と、通信部211とが設けられている。制御部200は、装置本体100aに組み込まれていてもよい。
【0193】
プロセッサ201は、たとえばCPU(Central Processing Unit)またはFPGA(field-programmable gate array)により構成される。記憶部202は、メモリおよびストレージを含みうる。ストレージはたとえばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)でありうる。プロセッサ201は、記憶部202に記憶されたプログラムを実行することにより、コンピュータを試料調製装置100の制御部200として動作させる。
【0194】
制御部200は、遠心分離部110の回転動作制御を行う。たとえば、制御部200は、回転制御は、遠心分離時の回転制御、攪拌時の回転制御、分注時におけるホルダ部111の移動制御、ロータ部112のバランス確認動作の制御、を含みうる。遠心分離部110が温度調整部117を備える構成では、制御部200は、遠心分離部110の温度調整制御を行う。
【0195】
制御部200は、分注部120の動作制御を行う。たとえば、制御部200は、ノズル121の水平方向の移動制御、およびノズル121の上下方向の移動制御を行う。制御部200は、ポンプの吸引動作および吐出動作の制御を行う。制御部200は、分岐部およびバルブの切り替えまたは開閉制御を行う。
【0196】
制御部200は、試薬設置部の動作制御を行う。たとえば、制御部200は、第1試薬設置部130における温度制御を行う。第1試薬設置部130がシャッター部材134を備える構成では、制御部200は、シャッター部材134の開閉制御を行う。
【0197】
通信部203は、装置本体100aの通信部211と相互通信可能に接続されている。通信部203および通信部211は、通信インターフェースを含み、有線または無線により情報通信を行う。コントローラ210は、制御部200からの制御指令に従って、装置本体100aの各部への制御信号を出力するとともに、各種センサの検出信号を制御部200へ送信する。
【0198】
表示部204および入力部205は、制御部200に外部接続されていてもよいし、制御部200に組み込まれたビルトインタイプでもよい。表示部204は、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどの表示デバイスである。入力部205は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力デバイスである。一例として、制御部200は、表示部204および入力部205が一体化されたタッチパネル式のディスプレイを備えている。
【0199】
(表示画面)
次に、
図31~
図33を参照して、制御部200(
図30参照)が、複数のホルダ部111のうち、容器を配置すべきホルダ部111を表示部204に表示させる構成について説明する。
【0200】
制御部200(
図30参照)は、複数のホルダ部111の少なくとも一つに、配置すべき容器または検体を特定して表示するように表示部204を制御する。具体的には、制御部200は、複数のホルダ部111のうち、検体が収容された第1容器301を配置すべきホルダ部111および検体が収容されていない第2容器302を配置すべきホルダ部111を識別可能に表示するように表示部204を制御する。
【0201】
また、第1容器301および第2容器302を配置すべきホルダ部111を識別可能に表示した場合でも、ユーザが複数のホルダ部111から配置するホルダ部111を選んで配置する場合、表示部204に表示されたホルダ部111と、実際に容器を配置するホルダ部111とを見間違う可能性があり、容器が配置すべきホルダ部111に配置されない場合がある。そこで、本実施形態では、容器を配置する位置をユーザが間違えることを抑制するために、遠心分離部110は、容器を1つずつホルダ部111に配置可能に構成されている。
【0202】
具体的には、
図31に示すように、蓋部115dは、遠心分離部110の上方に設けられ、所定位置PN3の直上の位置に開口115eを有する。これにより、ユーザは、蓋部115dの開口115eから、ホルダ部111に対して容器を配置することができる。また、遠心分離部110には、容器検出部118が設けられている。制御部200(
図30参照)は、所定位置PN3に配置されたホルダ部111に対して、容器が配置されたか否かを検出するように、容器検出部118を制御する。容器検出部118は、たとえば、光学センサなどを含む。
【0203】
また、制御部200(
図30参照)は、容器が配置される際に、容器を配置すべきホルダ部111を、順次、所定位置PN3に移動させるようにロータ駆動部114(
図9参照)および回転位置検出部114a(
図9参照)を制御する。
【0204】
このように、制御部200(
図30参照)は、容器を配置するホルダ部111を表示部204に表示する制御と、ホルダ部111を所定位置PN3に移動させる制御とを行うように構成されている。
【0205】
〈容器の配置パターン〉
制御部200(
図30参照)は、入力部205(
図30参照)を介した検体に関する情報の入力操作に応じて第1容器301の数を取得し、取得した第1容器301の数に基づいて、第1容器301を配置すべきホルダ部111を表示するように表示部204(
図30参照)を制御する。制御部200は、記憶部202に記憶された配置パターン500の中から、洗浄を行うタイミングと、検体数とに応じたパターンを取得する。制御部200は、取得したパターンを表示することにより、各容器を配置すべきホルダ部111を表示部204に表示する制御を行う。
【0206】
図32の例では、記憶部202には、第1容器301および第2容器302の配置パターン500が記憶されている。配置パターン500は、第1配置パターン500aと、第2配置パターン500bとを含む。第1配置パターン500aは、上清の除去後に洗浄を行わずに、試薬の分注後にノズル121の洗浄を行う場合の配置パターンである。また、第2配置パターン500bは、試薬の分注後、および、上清の除去後に洗浄を行う場合の配置パターンである。
【0207】
第1配置パターン500aでは、検体の数に関係なく、一対の洗浄容器302aが配置される。第2配置パターン500bでは、第1容器301から上清を除去する度にノズル121を洗浄するため、検体数に応じた数の洗浄容器302aが配置される。
【0208】
制御部200(
図30参照)は、第1容器301の数が偶数のとき、複数のホルダ部111のうち、ロータ部112の回転軸に対して対称となる対のホルダ部111を、第1容器301を配置すべきホルダ部111として表示するように表示部204を制御する。
【0209】
検体の数が奇数の場合、第1容器301のうちの1つは、対にならない。そのため、第1容器301との重量バランスを取るために、第1容器301と対となる位置にバランサーとしての第2容器302が配置される。
【0210】
そのため、制御部200(
図30参照)は、第1容器301の数が奇数のとき、複数のホルダ部111において、第1容器301を配置すべきホルダ部111とロータ部112の回転軸に対して対称となる位置にあるホルダ部111を、バランサーを配置すべきホルダ部111として、第1容器301を配置すべきホルダ部111とともに表示するように表示部204(
図30参照)を制御する。また、制御部200は、バランサーとしての洗浄液を第2容器302に分注するように分注部120を制御する。具体的には、制御部200は、第2容器302に対して、第1容器301の内容物と等量の洗浄液を分注するように、分注部120(
図19参照)を制御する。
【0211】
また、
図32の例による配置パターン500では、検体の数にかかわらず、配置される洗浄容器302aの個数が偶数となるように、洗浄容器302aが配置される。また、配置パターン500では、複数のホルダ部111のうち、ロータ部112の回転軸に対して対称となる位置にある対のホルダ部111に洗浄容器302aが配置される。
【0212】
図33は、制御部200(
図30参照)が表示部204に表示させる表示画面204aおよび表示画面204bの例を示しており、
図32の配置パターン500に基づいている。表示画面204aは、1番目のホルダ部111-1に第1容器301を配置する際の画面の例である。また、表示画面204bは、5番目のホルダ部111-5に第1容器301を配置する際の画面の例である。また、
図33は、検体の数が3であり、バランサーを1つ配置する例を示している。なお、
図33では、便宜上、1番目のホルダ部111‐1、3番目のホルダ部111‐3、5番目のホルダ部111‐5、および、7番目のホルダ部111‐7を、それぞれ、第1ホルダ部、第3ホルダ部、第5ホルダ部、および、第7ホルダ部として図示している。
【0213】
図33の表示画面204aでは、制御部200(
図30参照)は、第1容器301を配置すべきホルダ部111と、洗浄容器302aを配置すべきホルダ部111と、バランサーを配置すべきホルダ部111とを、表示色を変えることにより識別可能に表示するように表示部204を制御する。なお、
図33では、ホルダ部111に対して異なるハッチングを付すことにより、表示色の違いを表している。
【0214】
制御部200(
図30参照)は、入力操作に基づいて、第1容器301に含まれる検体の情報600を取得する。検体の情報600は、たとえば、検体IDを含む。表示画面204aに示すように、制御部200は、取得した検体の情報600を表示するように表示部204を制御する。また、
図33に示す例では、制御部200は、所定位置PN3に移動されたホルダ部111を強調表示するように表示部204を制御する。具体的には、制御部200は、ユーザが入力した検体の情報600に基づいて、検体を配置すべきホルダ部111が所定位置PN3に移動された際に、ホルダ部111の周囲に標識501を表示させることにより、所定位置PN3に移動されたホルダ部111を強調表示する制御を行う。
【0215】
表示画面204aでは、ユーザが1番目のホルダ部111-1に配置すべき検体の情報600を入力したので、制御部200(
図30参照)は、1番目のホルダ部111-1を所定位置PN3に移動させるようにロータ部112を制御する。このとき、制御部200は、1番目のホルダ部111-1の周囲に標識501を表示させるように表示部204を制御する。
【0216】
また、制御部200(
図30参照)は、ホルダ部111に配置された第1容器301の情報601を表示部204に表示させる制御を行う。具体的には、制御部200は、1番目のホルダ部111-1に第1容器301が配置された後、ホルダ部111に配置された第1容器301の情報601として、ユーザが配置した検体の検体IDを、対応するホルダ部111とともに表示画面204aに表示させるように表示部204を制御する。
【0217】
また、
図33に示す例では、制御部200(
図30参照)は、第1容器301を配置すべきホルダ部111、第1容器301を配置したホルダ部111、洗浄容器302aを配置すべきホルダ部111、および、バランサー(第2容器302)を配置すべきホルダ部111を互いに識別可能な凡例602を、表示画面204aおよび表示画面204bに表示させるように表示部204を制御する。
【0218】
制御部200(
図30参照)は、複数のホルダ部111のうち、第1容器301を配置すべきホルダ部111、第1容器301を配置したホルダ部111、洗浄容器302aを配置すべきホルダ部111、および、バランサーを配置すべきホルダ部111の表示態様を、それぞれ、凡例602a、凡例602b、凡例602c、および、凡例602dに示す表示態様で表示させる制御を行う。
【0219】
制御部200(
図30参照)は、1番目のホルダ部111-1に第1容器301が配置された後、対称となる位置にある5番目のホルダ部111-5を所定位置PN3に移動させるように、ロータ部112を制御する。この場合、制御部200は、ロータ部112を180度回転させる制御を行う。
【0220】
制御部200(
図30参照)は、ロータ部112を回転させて所定位置PN3に移動させた後の容器を配置したホルダ部111を表示するように表示部204を制御する。
図33に示す例では、制御部200は、ロータ部112を90度回転させる制御を行った後、5番目のホルダ部111に第1容器301を配置する際の表示画面204bを表示部204に表示させる制御を行う。
【0221】
また、制御部200(
図30参照)は、第1容器301が配置された1番目のホルダ部111-1の表示態様を、第1容器301を配置すべきホルダ部111の凡例602aから、第1容器301を配置したホルダ部111の凡例602bに変化させて表示画面204bに表示させるように表示部204を制御する。
【0222】
また、表示画面204bでは、5番目のホルダ部111-5が、所定位置PN3の位置に移動され、5番目のホルダ部111-5の周囲には、標識501が表示されている。また、表示画面204bでは、ユーザが5番目のホルダ部111-5に配置させる検体として、新たな検体の情報600が表示されている。
【0223】
ユーザが5番目のホルダ部111-5に第1容器301を配置した後、制御部200は、ホルダ部111に配置された第1容器301の情報601を表示画面204bに表示させるように表示部204を制御する。
【0224】
その後、制御部200は、3番目のホルダ部111-3についても、5番目のホルダ部111-5と同様に、所定位置PN3に移動させる制御、入力操作に基づいて検体の情報600を表示させる制御を行う。3番目のホルダ部111‐3に第1容器301が配置された後、制御部200は、7番目のホルダ部111-7を所定位置PN3に移動させる。7番目のホルダ部111-7には、バランサーが配置されるため、制御部200は、検体の情報600を表示する位置に、バランサーを表示する旨のメッセージを表示するように表示部204を制御する。なお、
図33は、バランサーを1つ配置する例であるため、ホルダ部111に配置された第1容器301の情報601のうち、7番目のホルダ部111-7の位置には、バランサーが配置される旨が表示されている。
【0225】
(制御動作)
図34を参照して、試料調製装置100の動作制御を説明する。
【0226】
ステップS101において、制御部200は、試料調製装置100による処理モードの選択または設定を受け付ける。制御部200は、入力部205を介して、試料調製時に実施する処理項目を取得する。処理項目に応じたアッセイが実施される。制御部200は、入力部205を介して、検体数、洗浄モードなどの情報を取得する。処理モードは、プリセットされた選択肢から選択される形式でもよいし、ユーザが入力欄に情報入力することにより設定される形式でもよい。
【0227】
ステップS102において、制御部200は、ウォーミングアップ処理を実行する。制御部200は温度制御に関わる部位の温度調整の制御を行う。制御部200は、第1試薬設置部130の試薬温度調整部136により、第1試薬設置部130を所定温度に調整する。制御部200は、遠心分離部110の温度調整部117により、伝熱面117aを所定温度に調整する。
【0228】
ステップS103において、検体のセットが行われる。検体を収容した反応容器300が、遠心分離部110のホルダ部111に1つずつセットされる。制御部200は、ステップS101で取得された設定情報に基づいて、遠心分離部110の複数のホルダ部111にセットする容器の割り当てを決定する。制御部200は、容器をセットすべきホルダ部111を所定の設置位置へ位置付けるように、ロータ部112を回転させる。制御部200は、設置位置へ位置付けられたホルダ部111にセットすべき容器を、表示部204に表示させる。ユーザが表示部204の表示を確認しながら、容器をホルダ部111にセットする。制御部200は、複数のホルダ部111を1つずつ順番に設置位置へ位置付けることにより、処理対象となる容器を、対応するホルダ部111にセットさせる。
【0229】
ステップS104において、制御部200は、入力部205を介して、試料調製の開始指令の入力を受け付ける。ユーザが入力操作を行うと、自動の試料調製が開始される。
【0230】
ステップS105において、制御部200は、試料調製のための処理工程を実行するための動作項目を、ステップS101の処理モードに応じた順序で実行する制御を行う。
【0231】
動作項目は、たとえば以下の項目を含みうる。
ホルダ部111の容器を吐出位置への移動および分注部120による分注処理
遠心分離部110による攪拌処理
検体と試薬との反応処理
反応容器300内の上清の除去処理
ノズル121の洗浄処理
第1試薬設置部130の温度制御処理
【0232】
一連の処理工程が完了することにより、試料調製処理動作が完了する。
【0233】
(反応容器設置時の表示処理)
次に、
図35を参照して、反応容器300を設置する際に、制御部200が表示部204に配置パターン500を表示させる処理について説明する。
【0234】
ステップS401において、制御部は、検体を配置すべきホルダ部111が所定位置PN3に配置されているか否かを判断する。第1容器301を配置すべきホルダ部111が所定位置PN3に配置されている場合、処理がステップS402に進む。ステップS402において、制御部200は、第1容器301を配置すべきホルダ部111を表示部204において表示させる。
【0235】
ステップS403において、制御部200は、容器が配置されたか否かを判断する。具体的には、制御部200は、容器検出部118の出力結果に基づいて、容器が配置されたか否かを判断する。容器が配置された場合、処理が、ステップS404に進む。
【0236】
ステップS404において、制御部200は、最後の容器か否かを判断する。最後の容器でない場合、処理が、ステップS405に進む。ステップS405において、制御部200は、ロータ部112を回転させ、ステップS401に処理を戻す。ステップS401~S405が繰り返されることにより、第1容器301を配置すべきホルダ部111に第1容器301が配置される。
【0237】
ステップS401において、制御部200が、第1容器301を配置すべきホルダ部111が所定位置PN3に配置されていないと判断した場合、処理は、ステップS405へ進む。
【0238】
また、ステップS403において、制御部200が、第1容器301が配置されていないと判断した場合、第1容器301が配置されるまでステップS403を繰り返す。
【0239】
また、ステップS404において、制御部200が、最後の容器が配置されたと判断した場合、第1容器301を配置すべきホルダ部111の表示処理が終了する。
【0240】
〈分注処理〉
分注処理において、制御部200は、以下の(a)~(e)を行うように遠心分離部110および分注部120を制御する。
(a)試薬の吸引位置PN1でノズル121に第1の量の試薬を吸引させる。
(b)ノズル121を吸引位置PN1から吐出位置PN2に移動させる。
(c)ノズル121から吐出位置PN2の反応容器300に第1の量よりも小さい第2の量の試薬を吐出させる。
(d)ホルダ部111を回転移動させて別の反応容器300を吐出位置PN2に移動させる。
(e)分注すべき複数の反応容器300に試薬が吐出されるまで、(c)および(d)を繰り返す。
【0241】
これにより、分注すべき複数の反応容器300に対する合計の分注量に相当する第1の量の試薬を予め1回吸引するだけで、分注すべき複数の反応容器300への複数回の分注動作をまとめて行える。このため、分注の度に吸引動作を行う場合と比較して、効率的に試料調製を行える。また、分注すべき複数の反応容器300の本数分のノズル121を設ける必要がないので、分注部120を小型化できる。
【0242】
第1の量は、試薬吸引量である。第2の量は、1つの反応容器300に対する試薬吐出量である。第1の量は、分注すべき反応容器300の数と第2の量との積以上である。これにより、1回の試薬吸引で、分注すべき反応容器300の全てに第2の量の試薬を分注できる。
【0243】
【0244】
ステップS111において、制御部200は、分注する試薬の種類が第1試薬か第2試薬かを判断する。第1試薬の場合、処理がステップS112に進む。第2試薬の場合、処理がステップS120に進む。
【0245】
ステップS112において、制御部200は、第1試薬容器310の直上の吸引位置PN1にノズル121を水平移動させる。ステップS113において、制御部200は、第1試薬容器310の内部へ向けてノズル121を下方向に移動させる。制御部200は、シャッター部材134を閉鎖位置CLから開放位置OPへ移動させる。ステップS114において、制御部200は、第1ポンプ124による吸引動作を実行させる。これにより、ノズル121内に第1の量の第1試薬が吸引される。ステップS115において、制御部200は、第1試薬容器310の上方へ向けてノズル121を上方向へ移動させる。このとき、制御部200は、シャッター部材134を開放位置OPから閉鎖位置CLへ移動させる。
【0246】
ステップS116において、制御部200は、ノズル121を吐出位置PN2へ水平移動させる。また、制御部200は、吐出すべき反応容器300を保持したホルダ部111を吐出位置PN2の直下まで回転させる。ステップS117において、制御部200は、第1ポンプ124による吐出動作を実行させる。これにより、反応容器300内に第2の量の第1試薬が吐出される。
【0247】
ステップS118において、制御部200は、分注を行った反応容器300が、分注すべき最後の反応容器300であるか否かを判断する。最後の反応容器300でない場合、処理がステップS119に進む。ステップS119において、制御部200は、次に分注すべき反応容器300を保持したホルダ部111を吐出位置PN2の直下まで回転させ、ステップS117に処理を戻す。ステップS117~S119が繰り返されることにより、分注すべき反応容器300の各々に、第1試薬が分注される。
【0248】
また、ステップS111において、第2試薬の分注を行うと判断した場合、制御部200は、ステップS120において、ノズル121を吐出位置PN2へ水平移動させる。また、制御部200は、吐出すべき反応容器300を保持したホルダ部111を吐出位置PN2の直下まで回転させる。ステップS121において、制御部200は、第2ポンプ127によりノズル121へ第2試薬を送液させる動作を行う。これにより、反応容器300内に第2試薬が吐出される。
【0249】
ステップS122、S123は、上記のステップS118およびS119と同じ処理である。ステップS121~S123が繰り返されることにより、分注すべき反応容器300の各々に、第2試薬が分注される。
【0250】
ステップS119、または、ステップS122において、制御部200が、分注を行った反応容器300が、分注すべき最後の反応容器300であると判断した場合、分注処理が終了する。
【0251】
〈シャッター部材の開閉制御〉
次に、
図37を参照して、分注処理おけるシャッター部材134の開閉制御を説明する。シャッター部材134の開閉制御は、
図36のステップS112~S115の処理時に行われる制御である。
【0252】
ステップS131において、制御部200は、第1試薬容器310の直上の吸引位置PN1にノズル121が配置(ステップS112)されたか否かを判断する。制御部200は、吸引位置PN1にノズル121が配置されるまでシャッター部材134を閉鎖位置CLのまま待機する。
【0253】
吸引位置PN1にノズル121が配置されると、制御部200は、ステップS132において、シャッター部材134を閉鎖位置CLから開放位置OPへ移動するようにシャッター駆動部135を制御する。これにより、ノズル121が第1試薬容器310内にアクセス可能となる。この状態でステップS113~S115が実行される。
【0254】
ステップS133において、制御部200は、第1試薬容器310の上方へノズル121が退避(ステップS115)されたか否かを判断する。制御部200は、挿入口132よりも上方となる高さ位置へノズル121が配置されるまでシャッター部材134を開放位置OPのまま待機する。
【0255】
挿入口132よりも上方となる高さ位置へノズル121が退避されると、制御部200は、ステップS134において、シャッター部材134を開放位置OPから閉鎖位置CLへ移動するようにシャッター駆動部135を制御する。これにより、第1試薬設置部130の内部空間が閉じられる。
【0256】
(遠心分離および反応処理)
制御部200は、以下の(f)および(g)の制御を行うように構成されている。
(f)検体と試薬とを反応容器300内で所定時間反応させる。
(g)ホルダ部111を回転させて反応容器300内の内容物を遠心分離する。
【0257】
これにより、遠心分離部110の内部で検体と試薬とを反応させ、反応後にそのまま遠心分離を実行できる。このため、試薬分注後の反応容器300を、遠心分離部110とは異なる反応部に移動させて反応させる場合と異なり、遠心分離部110が反応部を兼ねることができるので、その分、装置を小型化できる。
【0258】
〈反応処理〉
図38を参照して、遠心分離部110における反応処理における制御を説明する。ステップS141において、制御部200は、ロータ部112の回転を停止させた状態で、所定時間が経過したか否かを判断する。制御部200は、所定時間が経過するまで、回転停止状態を継続する。所定時間が経過した場合、反応処理が終了する。
【0259】
〈遠心分離処理〉
図39を参照して、遠心分離部110による遠心分離処理における制御を説明する。ステップS151において、制御部200は、ロータ部112が所定の角速度で回転することにより、反応容器300の内容物を沈降させるように遠心分離部110を制御する。制御部200は、所定時間の間、所定の角速度での等角速度回転を継続するように、遠心分離部110を制御する。これにより、反応容器300の内容物が沈降される。
【0260】
〈撹拌処理〉
次に、
図40を参照して、遠心分離部110による攪拌処理における制御を説明する。
ステップS161において、制御部200は、ロータ部112の角加速度を変化させることにより、反応容器300の内容物を攪拌するように遠心分離部110を制御する。制御部200は、角加速度の変化を所定回数繰り返すように、遠心分離部110を制御する。これにより、反応容器300の内容物が攪拌される。
【0261】
〈上清の除去処理〉
制御部200は、以下の(h)~(j)の制御を行うように構成されている。
(h)吐出位置PN2において、遠心分離に供された後の反応容器300内の上清を、ノズル121により吸引する。
(i)ホルダ部111を回転移動させて別の反応容器300を吐出位置PN2に移動させる。
(j)吸引すべき複数の反応容器300から上清が吸引されるまで、(h)および(i)を繰り返す。
【0262】
これにより、分注部120が試薬の分注動作を行うだけでなく、さらに上清の吸引動作も行える。これにより、反応容器300内の上清を除去するための専用の機構を設ける場合と比べて、効果的に試料調製装置100を小型化できる。
【0263】
図41を参照して、分注部120による反応容器300内の上清の除去処理における制御を説明する。ステップS171において、制御部200は、吐出位置PN2に配置させたノズル121を下方向に移動させ、吐出位置PN2の直下に位置付けられた反応容器300内にノズル121を挿入させる。
【0264】
ステップS172において、制御部200は、ノズル121の先端から上清を吸引させる。制御部200は、陰圧源165bから供給される陰圧により上清を吸引させる。吸引された上清は、廃液槽160へ送られる。
【0265】
ステップS173において、制御部200は、ノズル121が反応容器300の上方に位置付けられるように、ノズル121を上方向へ移動させる。
【0266】
ステップS174において、制御部200は、上清の除去を行った反応容器300が、上清を除去すべき最後の反応容器300であるか否かを判断する。最後の反応容器300でない場合、処理がステップS175に進む。ステップS175において、制御部200は、ノズル121の洗浄処理を行う。ステップS176において、制御部200は、次に上清を除去すべき反応容器300を保持したホルダ部111を吐出位置PN2の直下まで回転させ、ステップS171に処理を戻す。ステップS171~S176が繰り返されることにより、上清を除去すべき反応容器300の各々から、上清が除去される。
【0267】
ステップS174において、制御部200が、上清の除去を行った反応容器300が最後の反応容器300であると判断した場合、上清の除去処理が終了する。
【0268】
〈ノズル洗浄処理〉
次に、
図42を参照して、分注部120によるノズル121の洗浄処理における制御を説明する。
【0269】
ステップS181において、制御部200は、ノズル121の洗浄容器302aを吐出位置PN2の直下に配置するようにロータ部112を回転させる。
【0270】
ステップS182において、制御部200は、ノズル121の洗浄容器302aを吐出位置PN2の直下に配置するようにロータ部112を回転させる。制御部200は、吐出位置PN2に配置させたノズル121を下方向に移動させ、洗浄容器302a内にノズル121を挿入させる。
【0271】
ステップS183において、制御部200は、ノズル121の先端から洗浄液を吐出させる。制御部200は、陽圧源165aから供給される陽圧により、洗浄液槽166から洗浄液を吐出させる。
【0272】
ステップS184において、制御部200は、ノズル121の先端から洗浄液を吸引させる。制御部200は、陰圧源165bから供給される陰圧により洗浄液を吸引させる。吸引された洗浄液は、廃液槽160へ送られる。
【0273】
ステップS185において、制御部200は、洗浄液の吐出および吸引が、所定回数行われたか否かを判断する。所定回数は、1回以上であり、任意に設定可能である。洗浄液の吐出および吸引が所定回数行われていない場合、制御部200は、ステップS181に処理を戻す。ステップS181~S185が繰り返されることにより、洗浄液の吐出および吸引を1単位とするノズル121の洗浄動作が所定回数実行される。
【0274】
洗浄液の吐出および吸引が所定回数行われた場合、ステップS186において、制御部200は、洗浄容器302aの上方へ、ノズル121を上方向へ移動させて、洗浄処理が終了する。
【0275】
(試料調製処理の例)
次に、試料調製処理の例を説明する。最初に、
図43~
図45を参照して、典型的な処理の流れを示す。便宜的に、4つの検体に対して、第1試薬および第2試薬の分注処理、撹拌処理、反応処理および温度制御処理、遠心分離処理、上清の除去処理、を行う例を示す。ノズルの洗浄処理は、ノズル121による吸引や吐出を行う直前、または直後のタイミングで実施されるが、ここでは説明を省略する。
【0276】
図43に示すように、まず、試料調製に用いられる容器がセットされる。第1試薬容器310が第1試薬設置部130にセットされる。検体を収容した反応容器300が遠心分離部110のホルダ部111にセットされる。次に、分注処理が行われる。分注部120が第1試薬を吸引する。そして、分注部120による反応容器300への第1試薬の吐出と、ロータ部112の回転による反応容器300の移動とが繰り返されることにより、4つの反応容器300に、順番に第1試薬が分注される。第1試薬の分注後、遠心分離部110により攪拌処理が行われる。攪拌により、検体と第1試薬とが混合される。
【0277】
図44に示すように、撹拌後、遠心分離部110において反応処理および温度制御処理が行われる。所定時間、所定温度が維持されるように、温度調整部117が制御される。反応後、遠心分離部110により遠心分離処理が行われる。遠心分離によって、反応容器300中で固形成分が沈殿することにより、液体成分と分離される。遠心分離後、上清の除去処理が行われる。分注部120による反応容器300からの上清の吸引と、ロータ部112の回転による反応容器300の移動とが繰り返されることにより、4つの反応容器300から、順番に上清が除去される。
【0278】
図45に示すように、上清の除去後、分注処理が行われる。第2試薬容器320から分注部120への第2試薬の送液および反応容器300への第2試薬の吐出と、ロータ部112の回転による反応容器300の移動とが繰り返されることにより、4つの反応容器300に、順番に第2試薬が分注される。第2試薬の分注後、遠心分離部110により攪拌処理が行われる。攪拌により、反応容器300の内容物と第2試薬とが混合される。攪拌が完了すると、試料調製が終了する。
【0279】
以上のように、試料調製処理は、上述した各動作項目(分注処理、攪拌処理、反応処理、上清の除去処理、ノズルの洗浄処理、温度制御処理)の組み合わせで行われる。組み合わせは、試料調製のアッセイに応じて決定される。
【0280】
次に、より具体的な試料調製処理の一例を示す。一例では、試料調製装置100は、免疫反応に関わるT細胞の分析用の試料調製を行う。試料調製装置100は、検体を全血の血液とし、血液中のT細胞のうち、制御性T細胞(Treg細胞)と、エフェクターT細胞(Teff細胞)と、を区別して検出するための処理を行う。被検物質が、Treg細胞およびTeff細胞である。
【0281】
試料調製装置100は、Treg細胞およびTeff細胞をそれぞれ異なる標識物質によって染色する処理を行う。一例として、Treg細胞の染色は、表面抗原CD4、表面抗原CD25およびフォークヘッドボックスP3転写因子(Foxp3)と特異的な抗体試薬により行う。CD25およびFoxp3の発現は、Treg細胞に特徴的である。Teff細胞の染色は、表面抗原CD4および表面抗原CD62Lと特異的な抗体試薬により行う。CD4およびCD62Lの発現は、Treg細胞に特徴的である。
【0282】
第1試薬は、これらのT細胞の染色を行うための抗体試薬である。一例では、第1試薬設置部130には、CD25標識抗体、CD4標識抗体、CD62L標識抗体を含むカクテル試薬を収容する第1試薬容器310と、Foxp3標識抗体を含む試薬を収容する第1試薬容器310と、の2つの試薬容器が設置される。
【0283】
標識の測定は、フローサイトメータにより光学的に行われる。標識抗体に含まれる標識物質は、蛍光物質である。CD25標識抗体、CD4標識抗体、CD62標識抗体およびFoxp3標識抗体は、蛍光色が異なり、互いに識別可能である。
【0284】
第2試薬は、染色処理に用いる各種試薬である。第2試薬は、赤血球を溶出させる溶血剤、細胞を固定させる固定化剤、試薬が細胞膜を透過できるようにするための透過剤、希釈液、緩衝液、検体の洗浄液を含む。第2試薬設置部140には、これらの第2試薬をそれぞれ収容する複数の第2試薬容器320が設置される。
【0285】
図46に示すように、試料調製処理は、大別して、溶血処理、表面抗原CD25、CD4、CD62に対する第1の染色処理、細胞の固定および透過処理、Foxp3に対する第2の染色処理、がこの順で実行される。最後に、測定試料としての調整を行う準備処理がある。これらの処理動作は、動作項目のいずれかに分類され、動作内容は上述した通りであるので、概要のみ説明する。
【0286】
〈溶血処理〉
ステップS200において、各反応容器300に第2試薬容器320内の溶血剤が分注される。
ステップS201において、攪拌が行われる。
ステップS202において、所定時間、所定温度で反応が行われる。所定時間はたとえば10分間、反応温度は約4℃である。
ステップS203において、各反応容器300に第2試薬容器320内の緩衝液が分注される。緩衝液により、溶血反応の進行が停止される。
ステップS204において、攪拌が行われる。
ステップS205において、遠心分離が行われる。
ステップS206において、各反応容器300から上清が除去される。
ステップS207において、第2試薬容器320内の固定前検体用の洗浄液が分注される。
ステップS208において、攪拌が行われる。
ステップS209において、遠心分離が行われる。
ステップS210において、各反応容器300から上清が除去される。以上により、検体内の赤血球が反応容器300から除去される。
【0287】
〈第1の染色処理〉
ステップS211において、各反応容器300に、CD25標識抗体、CD4標識抗体、CD62標識抗体を含むカクテル試薬が第1試薬容器310から分注される。
ステップS212において、攪拌が行われる。
ステップS213において、所定時間、所定温度で反応が行われる。所定時間はたとえば30分間、反応温度は約4℃である。
ステップS214において、第2試薬容器320内の固定前検体用の洗浄液が分注される。
ステップS215において、攪拌が行われる。
ステップS216において、遠心分離が行われる。
ステップS217において、各反応容器300から上清が除去される。以上により、表面抗原CD25、CD4、CD62が、それぞれ対応する標識物質により染色される。
【0288】
〈細胞の固定および透過処理〉
ステップS218において、各反応容器300に第2試薬容器320内の固定剤および透過剤が分注される。
ステップS219において、攪拌が行われる。
ステップS220において、所定時間、所定温度で反応が行われる。所定時間はたとえば30分間、反応温度は約4℃である。
ステップS221において、第2試薬容器320内の固定後検体用の洗浄液が分注される。
ステップS222において、攪拌が行われる。
ステップS223において、遠心分離が行われる。
ステップS224において、各反応容器300から上清が除去される。
ステップS225~S128において、洗浄液の分注、攪拌、遠心分離および上清の除去が行われる。つまり、検体の洗浄処理が繰り返される。検体の洗浄処理は、1回(S121~S124のみ実施)、2回(S121~S128まで実施)、3回以上でもよい。以上により、反応容器300中の細胞に対する固定化処理および透過処理が行われる。
【0289】
〈第2の染色処理〉
ステップS229において、各反応容器300に、Foxp3標識抗体を含む試薬が第1試薬容器310から分注される。
ステップS230において、攪拌が行われる。
ステップS231において、所定時間、所定温度で反応が行われる。所定時間はたとえば30分間、反応温度は約4℃である。
ステップS232において、第2試薬容器320内の固定後検体用の洗浄液が分注される。
ステップS233において、攪拌が行われる。
ステップS234において、遠心分離が行われる。
ステップS235において、各反応容器300から上清が除去される。
ステップS236~S139において、洗浄液の分注、攪拌、遠心分離および上清の除去を含む検体の洗浄処理が繰り返される。検体の洗浄処理は、1回(S132~S135のみ実施)、2回(S132~S139まで実施)、3回以上でもよい。以上により、反応容器300中のFoxp3が、対応する標識物質により染色される。
【0290】
〈準備処理〉
ステップS240において、第2試薬容器320内の緩衝液が分注される。分注により、測定装置への供給に適した所定の液量、所定のphになるように反応容器300内の試料が調整される。
ステップS241において、攪拌が行われる。
【0291】
以上により、試料調製装置100による試料調製が完了する。
【0292】
(分析例)
調製された試料は、フローサイトメータを備えた測定装置による光学的な測定に供される。測定装置は、標識物質に対応する信号を検出することにより、試料中のTreg細胞およびTeff細胞を区別して計数する。すなわち、CD4標識抗体の蛍光、CD25標識抗体の蛍光およびFoxp3標識抗体の蛍光を発生する細胞がTreg細胞として検出される。CD4標識抗体の蛍光およびCD62L標識抗体の蛍光を発生する細胞がTeff細胞として検出される。
【0293】
測定装置により得られた測定結果は、たとえば、がん治療薬である免疫チェックポイント阻害剤の効果予測の分析に用いられる。分析では、試料中のTeff細胞とTreg細胞との存在比率から、免疫チェックポイント阻害剤の効果が予測される。分析例として、たとえば、効果指標=(Teff細胞の数)2/(Treg細胞の数)の値が所定の閾値以上であれば、免疫チェックポイント阻害剤が有効である可能性が高い、と判定する。免疫チェックポイント阻害剤は、活性化T細胞に発現した免疫チェックポイント分子とがん細胞(または抗原提示細胞)に発現したそのリガンドとの結合を阻害することにより、免疫チェックポイント分子によるT細胞の活性化抑制を解除し、抗腫瘍効果を維持させると考えられる。そのため、活性化T細胞機能の前提となるTeff細胞の存在比が十分に高くTreg細胞によって抑制されていない免疫状態である場合(効果指標が閾値以上の場合)には、免疫チェックポイント阻害剤が有効である可能性が高く、Teff細胞の存在比がTreg細胞に比べて低い場合(効果指標が閾値未満の場合)には、免疫チェックポイント阻害剤の効果が低い可能性がある、という知見に基づく。
【0294】
なお、CD4、CD25およびFoxp3を発現したTreg細胞と、CD4およびCD62Lを発現したTeff細胞とは、免疫チェックポイント分子がPD-1(PD-L1)である場合の効果予測マーカーとして機能しうる。CTLA-4などの他の免疫チェックポイント分子を利用する免疫チェックポイント阻害剤の効果予測に用いる試料調製には、その免疫チェックポイント分子に応じた効果予測マーカーを検出するための標識抗体が用いられ得る。
【0295】
(温度シミュレーション結果の説明)
図47は、温度調整部117(
図9参照)による反応容器300の内容物に対する温度調整機能を確認するために行ったシミュレーション結果を示す。
【0296】
シミュレーションでは、伝熱面117aと、ホルダ部111の表面111bとの間は、半径方向に5mmの隙間が形成されているとした。温度調整の目標温度は0℃とし、反応容器300の内容物温度の許容範囲は0℃以上10℃以下とした。温度調整にとって劣悪な温度環境を想定して、遠心分離部110の外部温度を30℃とした。
【0297】
図47では、温度を複数範囲に区分し、温度範囲毎に異なるハッチングを付して遠心分離部110内の温度分布を示した。
図47は、温度調整開始から20分後の温度分布を示している。
【0298】
図47から、冷熱源である本体部117b、伝熱部材117c、ホルダ部111および反応容器300が、許容範囲内の略均一な温度分布となることが確認された。反応容器300の上端部、中央部、下端部の3箇所において、温度は約0℃±0.2℃の範囲に収まった。一方、遠心分離部110の内部でも、伝熱部材117c、ホルダ部111および反応容器300の周囲の空気温度は、約10℃~約25℃と相対的に高温になった。このことから、空気を介した対流熱伝達よりも、伝熱面117aとホルダ部111の表面111bとの間の熱放射による熱伝達が、迅速かつ効率的に対象物(すなわち、反応容器300の内容物)の温度を変化させることが分かる。これにより、本実施形態では、反応容器300の内容物の温度調整を効果的に行えることが示唆された。
【0299】
また、
図47から、本実施形態では、遠心分離部110の内部空間全体のうち、ホルダ部111および反応容器300を局所的に温度調整できることが分かる。このため、本実施形態では、遠心分離部110の内部空間全体の温度を一定に調整する場合よりも、エネルギー利用効率が向上する。
【0300】
本シミュレーションでは、伝熱面117aとホルダ部111との間に5mmの隙間を形成したが、隙間が小さいほど温度調整効果が向上することは明らかである。また、伝熱面117aとホルダ部111とが接触する場合、伝熱面117aとホルダ部111との間で熱伝導により、直接的に熱伝達できるので、より効果的である。
【0301】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0302】
10:遠心分離機、11:反応容器、20:分注部、30:制御部、41:ホルダ部、41a:表面、41b:表面、42:ロータ部、43:回転軸部、44:ロータ駆動部、50:温度調整部、51:伝熱面、100:試料調製装置、110:遠心分離部(遠心分離機)、111:ホルダ部、111b:表面、112:ロータ部、113:回転軸部、114:ロータ駆動部、117:温度調整部、117a:伝熱面、117b:本体部、117c:伝熱部材、117d:伝熱ブロック、120:分注部、130:第1試薬設置部、136:試薬温度調整部、151:ホルダ本体、151a:保持孔、152:ホルダ伝熱部、200:制御部、300:反応容器、310:第1試薬容器