IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社プライムポリマーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240705BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20240705BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08F2/44 B
C08F4/6592
C08F210/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020065431
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021161292
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】金子 英之
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄大
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157019(JP,A)
【文献】特開2000-313718(JP,A)
【文献】特開2000-327707(JP,A)
【文献】特開2011-005759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オレフィン重合用固体状触媒成分、
(B)下記一般式(I)で表されるアミン化合物、及び
(C)下記一般式(II)で表されるカルボン酸化合物、
の存在下、エチレンおよび炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを、重合器内で(共)重合する、
ことを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。
【化1】
[上記一般式(I)中、Rは炭素原子数1以上30以下の炭化水素基であり、R’は水素原子または炭素原子数1以上20以下の炭化水素基である。R’が複数ある場合の複数のR’は、それぞれ独立して、上記と同様に定義される。mおよびnは、それぞれ独立して、0以上の整数であり、m+nは1以上である。]
【化2】
[上記一般式(II)中、Rは炭素原子数1以上30以下の炭化水素基を表す。]
【請求項2】
成分(B)をオレフィン系重合体収量に対して0.1質量ppm以上500質量ppm以下の量を供給する請求項1に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項3】
オレフィンが、エチレン単独またはエチレンと炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンである、請求項1または2に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項4】
オレフィン(共)重合を、懸濁液中または気相中で行う、請求項1~3の何れかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【請求項5】
成分(A)が、
(A-1)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、
(A-2)(a)有機金属化合物、
(b)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(c)成分(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
(A-3)微粒子状担体と、
を含む、請求項1~4の何れかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合器壁や撹拌翼等の重合器内部の汚れを効果的に防止することによる製造装置の安定した運転と、重合活性の更なる向上を達成することができるオレフィン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油蒸留精製プラントやポリオレフィン製造プラント等の化学装置においては、ファウリングによりプラントの熱交換能力が落ちたり、配管が閉塞したりする等の問題が発生し、その結果製造運転が不安定となり、最悪の場合は運転停止に陥ることがある。具体的には、例えば重合器内でポリマー塊やシート状物が発生したり、撹拌羽根や重合器壁にポリマーが付着する現象が知られている。
【0003】
これらの課題を解決する方法として、特許文献1には固体触媒を用いる気相法によるオレフィン重合を行う重合器内にアルキルジエタノールアミン化合物を添加する方法が開示され、特許文献2にはポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物の存在下で固体触媒を用いる気相法によるオレフィン重合を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-313718号公報
【文献】特開2019-157019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オレフィン系重合体は、多種多様な用途に広範に利用されている重要な工業製品であり、その生産性の更なる向上が求められている。本発明の目的は、重合器壁や撹拌翼等の重合器内部の汚れを効果的に防止することによる製造装置の安定した運転と、重合活性の更なる向上を達成することができるオレフィン系重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、オレフィン系重合体の生産性の更なる向上を図る上で、特定のアミン化合物とカルボン酸化合物との組合せの存在下で、オレフィン重合用固体状触媒を用いるオレフィン重合を行うことによって、重合器壁や撹拌翼等の重合器内部の汚れを効果的に防止することによる製造装置の安定した運転と、重合活性の更なる向上を達成することが可能である、との新たな知見を得た。本発明は、かかる本発明者らの新たな知見に基づいてなされたものである。本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
[1] (A)オレフィン重合用固体状触媒成分、
(B)下記一般式(I)で表されるアミン化合物、及び
(C)下記一般式(II)で表されるカルボン酸化合物、
の存在下、エチレンおよび炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを、重合器内で(共)重合する、
ことを特徴とするオレフィン系重合体の製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
[上記一般式(I)中、Rは炭素原子数1以上30以下の炭化水素基であり、R’は水素原子または炭素原子数1以上20以下の炭化水素基である。R’が複数ある場合の複数のR’は、それぞれ独立して、上記と同様に定義される。mおよびnは、それぞれ独立して、0以上の整数であり、m+nは1以上である。]
【0010】
【化2】
【0011】
[上記一般式(II)中、Rは炭素原子数1以上30以下の炭化水素基を表す。]
【0012】
[2] 成分(B)をオレフィン系重合体収量に対して0.1質量ppm以上500質量ppm以下の量を供給する[1]に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
[3] オレフィンが、エチレン単独、またはエチレンと炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンである、[1]または[2]に記載のオレフィン系重合体の製造方法。
[4] オレフィン(共)重合を、懸濁液中または気相中で行う、[1]~[3]の何れかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
[5] 成分(A)が、
(A-1)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物と、
(A-2)(a)有機金属化合物、
(b)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(c)(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
(A-3)微粒子状担体と、
を含む、[1]~[4]の何れかに記載のオレフィン系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるオレフィン系重合体の製造方法によれば、重合器壁や撹拌翼等の重合器内部の汚れを効果的に防止することによる製造装置の安定した運転と、重合活性の更なる向上を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[オレフィン重合用固体状触媒成分(A)]
オレフィン重合用固体状触媒成分(A)としては、例えば周期表第3族ないし第12族から選ばれる遷移金属の化合物を含む固体状の触媒成分が好ましい。その具体例としては、周期表第4~6族遷移金属化合物が粒子状担体に担持された担体担持型の遷移金属錯体系触媒成分、固体状チタン触媒成分と有機アルミニウム化合物とを含む固体状のチタン系触媒成分、三酸化クロムに酸化し得る任意のクロム化合物をシリカ等の無機酸化物固体に担持させたフィリップス触媒成分が挙げられる。
【0015】
中でも、担体担持型の遷移金属錯体系触媒成分に属する担体担持型のメタロセン系触媒成分が好ましく、以下の各成分(A-1)~(A-3)を含む担体担持型のメタロセン系触媒成分がより好ましい。
(A-1)シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物、
(A-2)(a)有機金属化合物、
(b)有機アルミニウムオキシ化合物、および
(c)成分(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物
からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
(A-3)微粒子状担体。
【0016】
担体担持型の遷移金属錯体系触媒成分に用いる周期表第4~6族遷移金属化合物は、公知のオレフィン重合能を有する周期表第4~6族遷移金属化合物であれば良い。このような遷移金属化合物として、例えば、周期表4~6族の遷移金属ハロゲン化物、遷移金属アルキル化物、遷移金属アルコキシ化物、非架橋性または架橋性メタロセン化合物を使用できる。特に、周期表4族の遷移金属化合物が好ましい。周期表4族の遷移金属化合物の具体例としては、四塩化チタン、ジメチルチタニウムジクロライド、テトラベンジルチタン、テトラベンジルジルコニウム、テトラブトキシチタンが挙げられる。さらに、触媒の重合反応における活性(触媒1g当たりのオレフィン系重合体の収量)を示す重合活性等の観点から、非架橋性または架橋性メタロセン化合物が特に好ましい。メタロセン化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族の遷移金属化合物であり、例えば下記一般式(II)で表される。
【0017】
ML ・・・(III)
[式(III)中、Mは周期表第4族の遷移金属(具体的にはジルコニウム、チタンまたはハフニウム)である。Lは遷移金属に配位する配位子(基)であり、少なくとも1個のLはシクロペンタジエニル骨格を有する配位子である。シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外のLは炭素原子数が1以上12以下の炭化水素基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、-SOR(Rはハロゲン等の置換基を有していてもよい炭素原子数1以上8以下の炭化水素基)または水素原子である。xは遷移金属の原子価でありLの個数を示す。)
【0018】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子の具体例としては、シクロペンタジエニル基;メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロペンタジエニル基、メチルエチルシクロペンタジエニル基、プロピルシクロペンタジエニル基、メチルプロピルシクロペンタジエニル基、ブチルシクロペンタジエニル基、メチルブチルシクロペンタジエニル基、ヘキシルシクロペンタジエニル基等のアルキル置換シクロペンタジエニル基;インデニル基;4,5,6,7-テトラヒドロインデニル基;フルオレニル基が挙げられる。これらの基はハロゲン原子、トリアルキルシリル基等の置換基を有してもよい。
【0019】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては、アルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好ましい。一般式(III)で表される化合物が、シクロペンタジエニル骨格を有する基を2個以上含む場合、そのうち2個のシクロペンタジエニル骨格を有する基は、エチレン、プロピレン等のアルキレン基;イソプロピリデン、ジフェニルメチレン等のアルキリデン基;シリレン基;ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基等を介して結合されていてもよい。また、2個以上のシクロペンタジエニル骨格を有する基は、同一であることが好ましい。
【0020】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子である炭素原子数が1以上12以下の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフィル基等のアラルキル基が挙げられる。アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等の炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられる。アリーロキシ基の具体例としては、フェノキシ基が挙げられる。ハロゲン原子の具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。-SORの具体例としては、p-トルエンスルホナト基、メタンスルホナト基、トリフルオロメタンスルホナト基が挙げられる。シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子が複数ある場合、これらの配位子は同一でも異なっていてもよく、また、異なる配位子の組合せを1つ以上有してもよい。
【0021】
一般式(III)で表される化合物は、例えば遷移金属の原子価が4である場合、より具体的には下記一般式(III')で表される。
MR ・・・(III')
[式(III')中、Mはジルコニウム、チタンまたはハフニウムである。Rはシクロペンタジエニル骨格を有する基である。R、RおよびRはそれぞれ独立して、シクロペンタジエニル骨格を有する基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、-SOR(Rはハロゲン等の置換基を有していてもよい炭素原子数1以上8以下の炭化水素基)または水素原子である。]
【0022】
特に成分(A-1)としては、一般式(III')においてR、RおよびRのうち1個がシクロペンタジエニル骨格を有する基である遷移金属化合物が好ましい。例えばRとRがシクロペンタジエニル骨格を有する基である場合、これらシクロペンタジエニル骨格を有する基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルキリデン基、シリレン基、置換シリレン基等を介して結合されていてもよい。なお、この場合のRおよびRは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、トリアルキルシリル基、-SORまたは水素原子である。これらの基の具体例としては、先に式(III)について挙げた各基を同様に挙げることができる。
【0023】
以下に、Mがジルコニウムである遷移金属化合物について具体的な化合物を例示する。ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(インデニル)ジルコニウムビス(p-トルエンスルホナト)、ビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジブロミド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)ジフェニルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムモノクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(p-トルエンスルホナト)、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、rac-ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,5-アセナフトシクロペンタジエニル)}ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4,5-ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-イソプロピル-7-メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリレンビス{1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、rac-ジメチルシリレンビス{1-(2-メチルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジブロミド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)シクロヘキシルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ベンジルジルコニウムモノクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムモノハイドライド、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジベンジルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムメトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(p-トルエンスルホナト)、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムエトキシクロリド、ビス(ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホナト)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルプロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムビス(メタンスルホナト)、ビス(トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド等。
【0024】
なお上記各例示において、シクロペンタジエニル環の二置換体は1,2-および1,3-置換体を含み、三置換体は1,2,3-および1,2,4-置換体を含む。またプロピル、ブチル等のアルキル基は、n-、i-、sec-、tert-等の異性体を含む。
【0025】
また、上記各ジルコニウム化合物において、ジルコニウム金属をチタン金属またはハフニウム金属に置換した遷移金属化合物を用いることもできる。また同様な立体構造を有するチタニウム化合物やハフニウム化合物、さらには臭化物、ヨウ化物等の他に、例えば特開平3-9913号公報、特開平2-131488号公報、特開平3-21607号公報、特開平3-106907号公報、特開平3-188092号公報、特開平4-69394号公報、特開平4-300887号公報、国際公開第2001/27124号等に記載されているような遷移金属化合物を挙げることができる。
【0026】
また遷移金属化合物として、特開平11-315109号公報に記載されているような下記一般式(IV)で表される遷移金属化合物も挙げられる。
【0027】
【化3】
【0028】
[一般式(IV)中、Mは周期表第4~6族の遷移金属原子を示す。mは1~6の整数を示す。R11~R16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。R11~R16のうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合にはR11~R16のうち2個の基が連結されていてもよい(但し、複数のR11同士が結合されることはない)。nはMの価数を満たす数である。Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。nが2以上の場合におけるXで示される複数の基は、それぞれ独立して上記と同様に定義される。Xで示される複数の基は同一でも、異なっていてもよく、あるいは、Xで示される複数の基に異なる基の組合せの1つ以上が含まれていてもよい。また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。]
Xとしての置換基の具体例としては、特開平11-315109号公報に開示された各基を挙げることができる。
【0029】
担体担持型の遷移金属錯体系触媒成分を構成する成分(A-2)は、有機金属化合物(a)、有機アルミニウムオキシ化合物(b)、および成分(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物(c)から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0030】
有機金属化合物(a)としては、例えば下記一般式(V)、(VI)、(VII)で表される周期表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物を用いることができる。
【0031】
Al(OR・・・(V)
[一般式(V)中、RおよびRはそれぞれ独立して、炭素原子数が1以上15以下、好ましくは1以上4以下の炭化水素基を示す。Xはハロゲン原子を示す。mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、m+n+p+q=3である。]
で表される有機アルミニウム化合物。この炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。一般式(V)で表される化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドが挙げられる。
【0032】
AlRg ・・・(VI)
[一般式(VI)中、MはLi、NaまたはKを示し、Rgは炭素原子数が1以上15以下、好ましくは1以上4以下の炭化水素基を示す。]
で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの有機金属錯体化合物。
上記の炭化水素基としては、炭素原子数が1以上15以下、好ましくは1以上4以下のアルキル基が好ましい。一般式(VI)で表される化合物の具体例としては、LiAl(C、LiAl(C15が挙げられる。
【0033】
・・・(VII)
[一般式(VII)中、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1以上15以下、好ましくは1以上4以下の炭化水素基を示す。MはMg、ZnまたはCdである。]
で表される周期表第2族または第12族金属の有機金属化合物。
この炭化水素基としてはアルキル基が好ましい。
【0034】
上記の有機金属化合物の中では、有機アルミニウム化合物が好ましい。また、有機金属化合物は1種単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
有機アルミニウムオキシ化合物(b)としては、公知のアルミノキサンを用いることができる。具体的には、例えば下記一般式(VIII)、(IX)で表される化合物を用いることができる。
【0036】
【化4】
【0037】
【化5】
【0038】
[一般式(VIII)および(IX)中、R21~R24はそれぞれ独立して炭素原子数1以上10以下の炭化水素基、nは2以上の整数を示す。)
【0039】
有機アルミニウムオキシ化合物(b)としては、上記一般式(VIII)および(IX)において、R21~R24がメチル基であるメチルアルミノキサンでnが3以上、好ましくは10以上のものが好適に利用される。これらアルミノキサン類には、若干の有機アルミニウム化合物が混入していても差し支えない。また、有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。特開平2-167305号公報に記載されている有機アルミニウムオキシ化合物、特開平2-24701号公報、特開平3-103407号公報に記載されている二種類以上のアルキル基を有するアルミノキサン等も好適に利用できる。
【0040】
このようなアルミノキサンは、例えば下記(1)~(3)の方法によって製造でき、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
【0041】
(1)吸着水を含有する化合物あるいは結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物等の炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物を添加して、有機アルミニウム化合物と吸着水または結晶水とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等の媒体中で、トリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に直接水や氷や水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエン等の媒体中でトリアルキルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド等の有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0042】
アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収されたアルミノキサンの溶液から溶媒あるいは未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解してもよい。
【0043】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリtert-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウム等のトリシクロアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド;ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド等のジアルキルアルミニウムアルコキシド;ジエチルアルミニウムフェノキシド等のジアルキルアルミニウムアリーロキシドが挙げられる。中でもトリアルキルアルミニウムおよびトリシクロアルキルアルミニウムが好ましい。
【0044】
さらに、アルミノキサン調製用の有機アルミニウム化合物として下記一般式(X)で表わされるイソプレニルアルミニウムを用いることもできる。
【0045】
(i-CAl(C10・・・(X)
[一般式(X)中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。]
【0046】
アルミノキサン調製用の有機アルミニウム化合物は1種単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0047】
アルミノキサンの調製の際に用いられる溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油等の石油留分あるいは上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物、とりわけ塩素化物、臭素化物等の炭化水素溶媒が挙げられる。その他、エチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類を用いることもできる。中でも、芳香族炭化水素が好ましい。
【0048】
成分(A-1)と反応してイオン対を形成する化合物(c)(以下「イオン化イオン性化合物(c)」という)としては、例えば、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、米国特許5321106号等に記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物、さらにヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物が挙げられる。イオン化イオン性化合物(c)は1種単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
以上、成分(A-2)として使用可能な成分である、有機金属化合物(a)、有機アルミニウムオキシ化合物(b)、イオン化イオン性化合物(c)を説明したが、特に、有機アルミニウムオキシ化合物(b)を成分(A-2)として用いることが好ましい。
【0050】
微粒子状担体(A-3)としては、無機材料からなる無機担体及び有機材料からなる有機担体が挙げられる。無機担体としては、例えば、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、およびこれらの2種以上を含む混合物(例えば、SiO-MgO、SiO-Al、SiO-TiO、SiO-V、SiO-Cr、SiO-TiO-MgO)等の無機酸化金属担体、MgCl、MgBr、MnCl、MnBr等の無機塩化物担体が挙げられる。また、粘土、その成分である粘土鉱物、イオン交換性層状化合物等を無機担体として用いることもできる。
有機担体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体等の有機ポリマー担体が挙げられる。
【0051】
無機担体の平均粒径は、好ましくは1~300μm、より好ましくは3~200μmである。このような担体は、必要に応じて100~1000℃、好ましくは150~700℃で焼成して使用される。
【0052】
無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコール等の溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0053】
粘土を用いた担体は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、イオン交換性層状化合物を用いた担体は、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有し、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl型、CdI型等の層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物等を例示することができる。このような粘土、粘土鉱物としては、例えばカオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト等が挙げられる。イオン交換性層状化合物としては、例えばα-Zr(HAsO・HO、α-Zr(HPO、α-Zr(KPO・3HO、α-Ti(HPO、α-Ti(HAsO・HO、α-Sn(HPO・HO、γ-Zr(HPO、γ-Ti(HPO、γ-Ti(NHPO・HO等の多価金属の結晶性酸性塩等が挙げられる。粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理等、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理等が挙げられる。
【0054】
イオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーション用のゲスト化合物としては、TiCl、ZrCl等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)、Zr(OR)、PO(OR)、B(OR)等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)、[Al13(OH)247+、[Zr(OH)142+、[FeO(OCOCH+等の金属水酸化物イオン等が挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)、Al(OR)、Ge(OR)等の金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)等を加水分解して得た重合物、SiO2等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0055】
有機担体としては、粒径が1~300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体が挙られる。有機担体を形成するポリマーとして具体的には、先に例示したように、エチレン、あるいは、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素原子数が3以上14以下のα-オレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体が挙げられる。
【0056】
また、特開平11-140113号公報、特開2000-38410号公報、特開2000-95810号公報、国際公開第2010/55652号などに記載された方法で、先に説明した成分(A-2)を不溶化させて得られる固体成分を微粒子状担体(A-3)として用いることもできる。この場合、下記担体担持型のメタロセン系触媒成分の調製方法における、成分(A-2)との接触は必須ではない。
【0057】
オレフィン重合用固体状触媒成分(A)として好ましく用いられるものの一つである担体担持型のメタロセン系触媒成分の調製方法について説明する。担体担持型のメタロセン系触媒成分は、メタロセン系遷移金属化合物が担体に担持されてなる触媒成分であって、好ましくは、先に説明した成分(A-1)、成分(A-2)[特に好ましくは有機アルミニウムオキシ化合物(b)[成分(b)]及び成分(A-3)を含んでなる触媒成分である。この担体担持型のメタロセン系触媒は、例えば成分(A-1)~成分(A-3)を混合接触させることにより調製できる。各成分の接触順序は任意である。
【0058】
担体担持型のメタロセン系触媒成分の調製には、不活性炭化水素溶媒を用いることが好ましい。その具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
担体担持型のメタロセン系触媒成分を調製するに際して、遷移金属化合物(A-1)は、遷移金属原子換算で微粒子状担体(A-3)1g当り通常0.001~1.0ミリモル、好ましくは0.005~0.5ミリモルの量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、アルミニウム原子換算で、通常0.1~100ミリモル、好ましくは0.5~20ミリモルの量で用いられる。有機アルミニウム化合物を用いる場合、その有機アルミニウム化合物は微粒子状担体(A-3)1g当り、通常0.001~1000ミリモル、好ましくは2~500ミリモルの量で用いられる。
【0060】
上記各成分を混合接触させる際の温度は、通常-50~150℃、好ましくは-20~120℃であり、接触時間は1~1000分間、好ましくは5~600分間である。
【0061】
このようにして得られる担体担持型のメタロセン系触媒成分には、微粒子状担体(A-3)1g当たり、遷移金属化合物(A-1)が遷移金属原子換算で、好ましくは約5×10-6~10-3モル、より好ましくは10-5~3×10-4モルの量で担持される。また、微粒子状担体(A-3)1g当たり、有機アルミニウムオキシ化合物(b)がアルミニウム原子換算で、好ましくは約10-3~10-1モル、より好ましくは2×10-3~5×10-2モルの量で担持される。
【0062】
オレフィン重合用固体状触媒成分(A)は、オレフィンが予備重合された予備重合触媒成分であってもよい。予備重合触媒成分は、オレフィン重合用触媒と、必要に応じて予備重合により生成するオレフィン系重合体とから形成されている。予備重合触媒は、遷移金属化合物(A-1)と、有機アルミニウムオキシ化合物(b)等の成分(A-2)と、微粒子状担体(A-3)とを含み、必要に応じて予備重合により生成するオレフィン系重合体(D)を含む。予備重合触媒を調製する方法としては、例えば、成分(A-1)~(A-3)を不活性炭化水素溶媒中またはオレフィン媒体中で混合接触させて得られる固体触媒成分に、少量のオレフィンを予備重合する方法がある。予備重合触媒の調製に用いられる不活性炭化水素溶媒の具体例としては、先に説明した担体担持型のメタロセン系触媒を調製する際に用いられる不活性炭化水素溶媒と同様のものが挙げられる。
【0063】
予備重合時に用いられるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン及び炭素原子数が4以上20以下のオレフィンの少なくとも1種を用いることができる。予備重合用のオレフィンは以下の組成(A)を有することが好ましい。
・組成(A):
エチレン:100~0モル%、
プロピレン:0~49モル%、および
炭素原子数が4以上のα-オレフィン:0~100モル%。
更に、より好ましい組成とし以下の組成(B)を、更に好ましい組成として以下の組成(C)を、特に好ましい組成として以下の組成(D)を挙げることができる。
・組成(B):
エチレン:100~0モル%、
プロピレン:0~20モル%、および
炭素原子数が4以上のα-オレフィン:0~100モル%。
・組成(C):
エチレン:100~20モル%、
プロピレン:0~20モル%、および
炭素原子数が4以上のα-オレフィン:0~80モル%。
・組成(D):
エチレン:100~20モル%、および
炭素原子数が4以上のα-オレフィン:0~80モル%。
(上記各組成において、エチレンのモル%、プロピレンのモル%及び炭素原子数が4以上のオレフィンのモル%の合計を100%とする。)
【0064】
炭素原子数が4以上20以下のα-オレフィンとして、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。さらに、α-オレフィンと共重合させるモノマーとして、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン類等を用いることもできる。
【0065】
予備重合触媒を調製するに際して、遷移金属化合物(A-1)は、遷移金属原子換算で微粒子状担体(A-3)1g当り、通常0.001~1.0ミリモル、好ましくは0.005~0.5ミリモルの量で用いられる。有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、アルミニウム原子換算で、微粒子状担体(A-3)1g当り、通常0.1~100ミリモル、好ましくは0.5~20ミリモルの量で用いられる。
【0066】
上記のようにして得られる予備重合触媒には、微粒子状担体(A-3)1g当たり、遷移金属化合物(A-1)が遷移金属原子換算で、好ましくは約5×10-6~10-3モル、より好ましくは10-5~3×10-4モルの量で担持される。微粒子状担体(A-3)1g当たり、有機アルミニウムオキシ化合物(b)がアルミニウム原子換算で好ましくは約10-3~10-1モル、より好ましくは2×10-3~5×10-2モルの量で担持される。予備重合により生成するオレフィン系重合体(D)が、約0.1~500g、好ましくは0.3~300g、特に好ましくは1~100gの量で微粒子状担体(A-3)に担持されていることが望ましい。
【0067】
なお、オレフィン重合用固体状触媒成分(A)は、以上説明した各成分以外にも、重合に有用な他の成分を含むことができる。また、担体担持型のメタロセン系触媒成分には、必要に応じて有機アルミニウム化合物や界面活性剤を触媒合成時または予備重合時に任意に含んでいてもよい。
【0068】
[アミン化合物(B)]
アミン化合物(B)は、下記一般式(I)で表される化合物である。
【0069】
【化6】
【0070】
[式(I)中、Rは炭素原子数1以上30以下の炭化水素基であり、R’は水素原子または炭素原子数1以上20以下の炭化水素基である。R’が複数ある場合は、複数のR’はそれぞれ独立して上記と同様に定義される。mおよびnはそれぞれ独立して0以上の整数である。mとnは、互いに同一でも異なってもよい。m+nは1以上である。)
【0071】
一般式(I)におけるRとしての炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。また、この炭化水素基は、直鎖状、分岐状または環状でもよく、これらの構造の2つ以上を有してもよい。この炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ならびにこれらの両方の基を有する基でもよい。この炭化水素基としては、例えば、アルキル基やアルケニル基等の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基の何れも用いることができる。炭化水素基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、オレオイル基等のアルキル基またはアルケニル基が挙げられる。その他、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、ネオフィル基等のアラルキル基も挙げられる。中でも、炭素原子数が8以上18以下のアルキル基が好ましい。
【0072】
一般式(I)におけるR’は、水素原子または炭素原子数1以上20以下の炭化水素基である。R’が炭素原子数1以上20以下の炭化水素基の場合、その好ましい具体例としては、上記一般式(I)におけるRとしての炭化水素基と同様のものが挙げられる。中でも、水素原子、炭素原子数1または2のアルキル基が好ましく、特に水素原子、メチル基がより好ましい。
【0073】
一般式(I)におけるmおよびnはそれぞれ0以上の整数である。m+nは1以上である。mおよびnは、それぞれ独立して、好ましくは0~10である。m+nは好ましくは1~20である。
【0074】
一般式(I)で表されるアミン化合物(B)の具体例としては、ラウリルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン、ポリオキシエチレン水添牛脂アミン、ポリオキシプロピレンラウリルアミン、ポリオキシプロピレンヤシ油アルキルアミン、ポリオキシプロピレン牛脂アミンが挙げられる。中でも、ポリオキシエチレンオクチルアミン、ポリオキシエチレンデシルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルアミン、ポリオキシプロピレンヤシ油アルキルアミンが好ましい。
【0075】
アミン化合物(B)として、一般式(I)で表されるアミン化合物からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0076】
[カルボン酸化合物(C)]
カルボン酸化合物(C)は、下記一般式(II)で表される化合物である。
【0077】
【化7】
【0078】
[上記一般式(II)中、Rは炭素原子数1以上30以下の炭化水素基を表す。]
一般式(II)中、Rは炭素原子数1以上30以下の炭化水素基である。この炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは炭素原子数7以上21以下であり、より好ましくは7以上17以下である。一般式(II)で表されるカルボン酸化合物(C)の具体例としては、カプリル酸、ラウリン酸、ステアリル酸、等がある。
カルボン酸化合物(C)として、一般式(II)で表される化合物からなる群から選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0079】
[オレフィン系重合体の製造]
本発明のオレフィン系重合体の製造方法は、以上説明したオレフィン重合用固体状触媒成分(A)、アミン化合物(B)及びカルボン酸化合物(C)の存在下、エチレンおよび炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンよりなる群から選ばれる一種以上のオレフィンを重合器内で(共)重合する工程を有する。本発明において「(共)重合」の語は、重合および共重合の両方を包含した意味で用いている。また本発明において「重合」および「重合体」は、単独重合および単独重合体だけでなく共重合および共重合体をも包含した意味で用いることがある。
【0080】
(共)重合の際の、オレフィン重合用固体状触媒成分(A)[成分(A)]、アミン化合物(B)[成分(B)]およびカルボン酸化合物(C)[成分(C)]の重合器への添加方法は任意であり、特に限定されない。成分(A)~成分(C)をそれぞれ個々に、任意の順に重合器に添加してもよい。あるいは、成分(A)~成分(C)の内の2つの成分を予め混合接触させた混合物と、残りの成分を任意の順に重合器に添加してもよい。あるいは、成分(A)~成分(C)を予め混合接触させた混合物を重合器に添加してもよい。更に、これらの添加方法の2以上を組み合わせてもよい。なお、成分(A)は予備重合固体触媒成分として重合器に添加してもよい。
【0081】
重合は、懸濁液中、溶液中または気相中の何れでも行うことができ、特に懸濁液中または気相中で、スラリー重合または気相重合により好適に行われる。スラリー重合において用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素が好ましい。
【0082】
重合温度は、スラリー重合の場合は通常-50~150℃、好ましくは0~100℃であり、気相重合の場合は通常0~120℃、好ましくは20~100℃である。重合圧力は、通常、常圧~10MPaゲージ圧、好ましくは常圧~5MPaゲージ圧である。重合反応は、回分式、半連続式、連続式の何れの方法でも行うことができる。
【0083】
重合を、反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。得られるオレフィン系重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。
【0084】
重合用の原料としてエチレンおよび炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンが用いられる。このα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンが挙げられる。これらは1種単独で、また2種以上組み合わせて用いることができる。また、エチレンおよび炭素原子数3以上20以下のα-オレフィンに加えて、さらに他の共重合用のモノマーを併用して共重合してもよい。共重合用のモノマーとしては、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2-メチル-1,4:5,8-ジメタノ-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロナフタレンが挙げられる。さらにスチレン、ビニルシクロヘキサン、ジエン類を用いることもできる。
【0085】
重合用の原料としてのオレフィンとしては、先に予備重合用として例示した組成(A)~(D)のいずれかの組成を有するオレフィンを同様に用いることができる。さらに、本発明においては、エチレンを主モノマーとするエチレン系重合体を製造することが好ましい。エチレン系重合体としては、エチレン成分を50モル%以上含み、必要に応じて炭素原子数4以上10以下のα-オレフィン成分を含む(共)重合体が好ましい。
【0086】
重合に際してオレフィン重合用触媒(A)は、遷移金属化合物(A-1)中の遷移金属原子に換算して重合容積1リットル当り、通常10-8~10-3モル、好ましくは10-7~10-4モルの量で用いることが望ましい。有機アルミニウムオキシ化合物(A-2)は、アルミニウム原子換算で遷移金属化合物(A-1)中の遷移金属原子1モル当り、通常10~500モル、好ましくは20~200モルの量で用いることが望ましい。
【0087】
アミン化合物(B)は、オレフィン系重合体収量に対して0.1質量ppm以上500質量ppm以下の量で用いることが望ましい。アミン化合物(B)を0.1質量ppm以上の量で用いれば、ファウリング等の諸問題の発生の抑制効果が十分に得られる傾向がある。一方、500質量ppm以下の量で用いれば、重合溶媒およびガスの回収、精製処理への負荷増大や触媒性能低下を抑制できる傾向にある。アミン化合物(B)の使用量は、より好ましくは0.5質量ppm以上200質量ppm以下、特に好ましくは1質量ppm以上100質量ppm以下である。
【0088】
アミン化合物(B)に加えて、カルボン酸化合物(C)を用いることによって、重合器壁や撹拌翼等の重合器内部の汚れの防止と、重合活性の向上とを両立することが可能となり、オレフィン系重合体の生産性の向上を図ることができる。このような効果が得られる理由として、塩基性のアミン化合物(B)の重合活性を抑制する傾向を酸の添加によって抑えることができ、更に、酸として一般式(II)で表されるカルボン酸化合物を特別に選択したことによって上述した汚れ防止効果と重合活性の向上を図ることができたものと、本発明者らは推定している。
【0089】
カルボン酸化合物(C)とアミン化合物(B)との配合比(モル比)は、好ましくは(B):(C)=100:1~100:100の範囲から選択する。この配合比は、100:5~100:50の範囲から選択することがより好ましく、100:15~100:35の範囲から選択することが特に好ましい。
【実施例
【0090】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0091】
[安定化剤]
実施例および比較例で使用した安定化剤としてのアミン化合物(B)[成分(B)]は、以下の通りである。
「B-1」:ラウリルジエタノールアミン[エレクトロストリッパー(登録商標)EA、花王株式会社製]
「B-2」:ステアリルジエタノールアミン[CAS番号10213-78-2、東京化成工業株式会社製]
「B-3」:ポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物[アミート(登録商標)102、花王株式会社製](含有される化合物の種類及び組成比の分析結果は特許文献2の表1に開示されている。)
「B-4」:ポリオキシアルキレンアルキルアミン化合物[アミート(登録商標)105、花王株式会社製]
「B-5」:アルキルジエタノールアミン化合物[アトマー(登録商標)163、クローダジャパン株式会社製](含有される化合物の種類及び組成比の分析結果は特許文献2の表1に開示されている。)
【0092】
「カルボン酸類」
実施例及び比較例で使用したカルボン酸化合物[成分(C)]は、以下の通りである。
「C-1」:オクタン酸(CAS番号124-07-2、富士フィルム和光純薬株式会社製)
「C-2」:ラウリン酸(CAS番号143-07-7、富士フィルム和光純薬株式会社製)
「C-3」:ステアリン酸(CAS番号57-11-4、富士フィルム和光純薬株式会社製)
【0093】
[調製例1](固体触媒成分(X-1)の調製)
内容積270Lの攪拌機付き反応器を用い、窒素雰囲気下、シリカゲル(富士シリシア化学株式会社製、平均粒径70μm、比表面積340m/g、細孔容積1.3cm/g、250℃で10時間乾燥)10kgを77Lのトルエンに懸濁させ、その後0~5℃に冷却した。系内温度を0~5℃に保持しつつ、この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mol/L)19.4Lを30分間かけて滴下した。そして各添加成分を30分間接触させた後、系内温度を1.5時間かけて95℃まで昇温し、引き続き93~97℃で4時間接触させた。その後、常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄し、全量115Lのメチルアルミノキサンを担持する固体状担体のトルエンスラリーを得た。このスラリーの一部を採取し分析したところ、固体分濃度は123g/Lであった。
得られたスラリーの内、12.2L(固体分として1.50kg)を内容積114Lの撹拌機付き反応器に窒素雰囲気下で装入し、さらに全量が28Lになるようトルエンを添加した。次に、ビス(1,3-n-ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド23.5g(Zr原子換算で54.2mmol)をトルエン5.0Lに溶解させた溶液を、上記反応器に圧送し、系内温度20~25℃で1時間接触させた。上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて3回洗浄した。その後さらにヘキサンを加えて全量を30Lとし、固体触媒成分(X-1)のヘキサンスラリーを得た。
【0094】
[調製例2](予備重合固体触媒成分(XP-1)の調製)
調製例1で得られた固体触媒成分(X-1)のヘキサンスラリー30Lを10℃まで冷却し、これにジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl-H)2.89molを添加した。系内温度を10~15℃に保持しつつ、常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給し、次いで1-ヘキセン70mlを添加した。その後1.46kg/hでエチレン供給を開始し、系内温度32~37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから30分毎に計5回、1-ヘキセン70mlを添加し、予備重合開始から180分後にエチレン供給が4.37kgに到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。その後さらにヘキサンを加えて全量を30Lとし、予備重合固体触媒成分(XP-1)のヘキサンスラリーを得た。
次に、ヘキサンスラリーを、内容積43Lの撹拌機付き蒸発乾燥機に窒素雰囲気下で挿入し、約60分かけて-68kPaGまで減圧し、-68kPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥し、ヘキサンおよび予備重合触媒成分中の揮発分を除去した。さらに-100kPaGまで減圧し、-100kPaGに到達したところで8時間真空乾燥し、予備重合固体触媒成分(XP-1)6.20kgを得た。
【0095】
[実施例1]
(重合評価(i):重合時のオートクレーブ器壁状態評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn-ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1-へキセン10ml、調製例2で得た予備重合固体触媒成分(XP-1)250mgを投入し、55℃まで昇温した。この予備重合固体触媒成分(XP-1)の添加から55℃になるまでには、約10分程度の時間がかかった。その後、成分(B)としてラウリルジエタノールアミン(B-1)5.0mg、成分(C)としてオクタン酸(C-1)0.4mg[成分(B-1):成分(C)=100:15(モル比)]を混合したものをトルエン5mlに希釈して投入した。続けて予備重合固体触媒成分(XP-1)200mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm-Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、重合体を除去し、オートクレーブの状況を確認したところ、オートクレーブの器壁や攪拌羽根へのポリマーの付着は認められなかった。
【0096】
(重合評価(ii):重合活性評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn-ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1-へキセン20ml、トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(1.0mol/L)0.06mlを投入し、5分間室温で保持した。その後、成分(B)としてラウリルジエタノールアミン(B-1)5.0mg、成分(C)としてオクタン酸(C-1)0.4mg[成分(B-1):成分(C)=100:15(モル比)]を混合したものをトルエン5mlに希釈して投入した。続けて予備重合固体触媒成分(XP-1)180mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm-Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、重合体を濾過、洗浄し、減圧下80℃で10時間乾燥することにより重合体88.7gを得た。重合体収量(g)に対する成分(B-1)の量は56質量ppmであり、触媒1g当りの重合体収量(重合活性)は493(g-PE/g-cat)であった。
【0097】
[実施例2~8及び比較例1~7]
表1に示すように、安定化剤(成分(B))の種類、またカルボン酸化合物(成分(C))の種類及び量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして重合評価(i)および重合評価(ii)を実施した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】
【0099】
表1から明らかなように、成分(B-1)と成分(C-1)を使用した実施例1~2では、オートクレーブの器壁や攪拌羽根へのボリマーの付着を抑制し、さらに成分(B-1)のみを同じ添加量で使用した比較例1や、成分(C-1)のみを同じ添加量で使用した比較例2よりも重合活性が高かった。
すなわち実施例1~2においては、比較例1~2と比べて、高い重合活性でかつ安定的にオレフィン重合体を製造できた。
また成分(B-1)と成分(C-2)または成分(C-3)を使用した実施例3~4でも、比較例1と比べて重合活性が高かった。
成分(B-1)の代わりに成分(B-2)~(B-5)と成分(C-1)を使用した実施例5~8では、成分(B-2)~(B-5)のみを使用した比較例3~6と比べて重合活性が高かった。
【0100】
[調製例3](予備重合固体触媒成分(XP-2)の調製)
内容積200mlの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、調製例2で得た予備重合固体触媒成分(XP-1)10.0gを装入し、全量が50mlになるようヘキサンを添加した。次に、系内の温度を35℃に昇温し、その後成分(B)としてラウリルジエタノールアミン(B-1)100.0mg、成分(C)としてオクタン酸(C-1)18.5mg[成分(B-1):成分(C)=100:35(モル比)]を混合したものをトルエン5mlに希釈して投入し、引き続き32~37℃で2時間接触させて、予備重合固体触媒成分(XP-2)のヘキサンスラリーを得た。このヘキサンスラリーを、内容積100mlのガラス製シュレンク管に移し、減圧下25℃にてヘキサンを減圧留去させて、予備重合固体触媒成分(XP-2)10.1gを得た。
【0101】
[実施例9]
(重合評価(i):重合時のオートクレーブ器壁状態評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn-ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1-へキセン10ml、調製例3で得た予備重合固体触媒成分(XP-2)250mgを投入し、55℃まで昇温した。この予備重合固体触媒成分(XP-2)の添加から55℃になるまでには、約10分程度の時間がかかった。その後、さらに予備重合固体触媒成分(XP-2)200mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm-Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、重合体を除去し、オートクレーブの状況を確認したところ、オートクレーブの器壁や攪拌羽根へのポリマーの付着は認められなかった。
【0102】
(重合評価(ii):重合活性評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn-ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1-へキセン20ml、トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(1.0mol/L)0.06mlを投入し、5分間室温で保持した。その後、予備重合固体触媒成分(XP-2)180mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm-Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、重合体を濾過、洗浄し、減圧下80℃で10時間乾燥することにより、重合体123.5gを得た。触媒1g当りの重合体収量(重合活性)は686(g-PE/g-cat)であった。
【0103】
[調製例4](予備重合固体触媒成分(XP-3)の調製)
内容積200mlの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、調製例2で得た予備重合固体触媒成分(XP-1)10.0gを装入し、全量が50mlになるようヘキサンを添加した。次に、系内の温度を35℃に昇温し、その後成分(B)としてラウリルジエタノールアミン(B-1)100.0mgをトルエン5mlに希釈して投入し、引き続き32~37℃で2時間接触させて、予備重合固体触媒成分(XP-3)のヘキサンスラリーを得た。このヘキサンスラリーを、内容積100mlのガラス製シュレンク管に移し、減圧下25℃にてヘキサンを減圧留去させて、予備重合固体触媒成分(XP-3)10.1gを得た。
【0104】
[比較例8]
(重合評価(i):重合時のオートクレーブ器壁状態評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn-ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1-へキセン10ml、調製例4で得た予備重合固体触媒成分(XP-3)250mgを投入し、55℃まで昇温した。この予備重合固体触媒成分(XP-3)の添加から55℃になるまでには、約10分程度の時間がかかった。その後、さらに予備重合固体触媒成分(XP-3)200mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm-Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、重合体を除去し、オートクレーブの状況を確認したところ、オートクレーブの器壁や攪拌羽根へのポリマーの付着は認められなかった。
【0105】
(重合評価(ii):重合活性評価)
充分に窒素置換した1Lのステンレス製オートクレーブにn-ヘプタン500mlを装入し、系内をエチレンで置換し、1-へキセン20ml、トリイソブチルアルミニウムのデカン溶液(1.0mol/L)0.06mlを投入し、5分間室温で保持した。その後、予備重合固体触媒成分(XP-3)180mgを投入し、系内の温度を73℃に昇温した。次いで、エチレンを導入することにより重合を開始し、連続的にエチレンを供給しながら圧力を8.0kg/cm-Gに保ち、90分間重合を行った。重合終了後、脱圧し、重合体を濾過、洗浄し、減圧下80℃で10時間乾燥することにより、重合体110.8gを得た。触媒1g当りの重合体収量(重合活性)は616(g-PE/g-cat)であった。
【0106】
[実施例10]
(重合評価(iii):気相重合による運転性評価)
気相流動床重合装置を用いて、エチレンと1-ヘキセンとの共重合を行った。重合圧力を1.7MPaG、重合温度を80℃とした。調製例2で調製した予備重合固体触媒成分(XP-1)を4.8g/hrで重合反応器中に供給した。成分(B)としてラウリルジエタノールアミン(B-1)、成分(C)としてオクタン酸(C-1)をモル比:100対35で混合したものを、循環ガスライン中に、重合体の質量に対して(B-1)として30質量ppmの量で存在するように供給した。気相重合器内のガス組成は、エチレン分圧=1.0MPa、水素/エチレン=4.8×10-4モル比、1-ヘキセン/エチレン=0.022モル比となるようにエチレン、水素、1-ヘキセンおよびイソペンタンを連続的に供給し、6.0kg/hrの割合で重合体を生成した。滞留時間は4時間であった。このときの重合体密度は916kg/m、メルトフローレートは3.8g/10minであった。なお、メルトフローレートは、ASTMD1238-65Tに従い190℃、2.16kg加重の条件下で測定した。
以上の条件で48時間運転を実施したが、重合器や配管等、全ての箇所にヒートスポットの発生はみられず、安定した重合が実施できた。
【0107】
[比較例9]
予備重合固体触媒成分(XP-1)の供給量を4.8g/hrとし、成分(B-1)と成分(C-1)の混合物を供給しなかったこと以外は実施例6と同様にして、6.0kg/hrの割合で重合体を生成した。この条件で運転した結果、重合器等にヒートスポットが発生し4時間で運転が継続できなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、重合器壁や撹拌翼等の重合器内部の汚れを効果的に防止することによる製造装置の安定した運転と、重合活性の更なる向上を達成可能なオレフィン系重合体の製造方法を提供することができ、本発明は触媒を用いるオレフィン系重合体の生産性の向上に大きく寄与するものである。