(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】バイオマーカの同時、多重化、超高感度およびハイスループットの光学的検出のためのバイオセンサプラットフォームおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20240705BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20240705BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240705BHJP
G01N 21/41 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N33/483 C
G01N33/543 595
G01N21/41 102
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020067273
(22)【出願日】2020-04-03
【審査請求日】2023-02-13
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520119024
【氏名又は名称】メクウィンズ,エセ.アー.
【氏名又は名称原語表記】MECWINS,S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ピーニ ヴァレリオ
(72)【発明者】
【氏名】トーン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】サルヴァドーリ-マタル レンテニア アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】セブリアン エルナンド ビルヒニア
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア アグアド,カルロス
(72)【発明者】
【氏名】アウマダ エレロ ヘスス,オスカル
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-502060(JP,A)
【文献】特開2009-042112(JP,A)
【文献】特開2012-242297(JP,A)
【文献】特開2004-041477(JP,A)
【文献】特表2018-507392(JP,A)
【文献】特開2019-020411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/27
G01N 33/483
G01N 33/543
G01N 21/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズモンナノ粒子で標識されたバイオマーカの同時、多重化、ハイスループット、および超高感度の光学検出のためのバイオセンシングプラットフォームであって、前記プラットフォームは、
認識要素とプラズモンナノ粒子で機能化された基板を含むバイオセンサ(BS)、広帯域連続スペクトル照明システム(IS)、各個別ナノ粒子の散乱信号を同時に取り込んで空間的およびスペクトル的に分解するための光検出器(OD)、オートフォーカスシステム(AF)
、前記バイオセンサの表面からの散乱光を前記光検出器(OD)に集めるように適応された光学システム(OS)
、および処理手段を備え、前記プラットフォームは、前記光学システム(OS)および前記バイオセンサ(BS)が3次元で互いに変位することができるように、前記光学システムおよび/または前記バイオセンサの移動のための移動手段(MS)を備え、前記処理手段は、
i)空間的およびスペクトル的に分解された散乱信号を各ナノ粒子から個別に同時に取り込み、
それにより空間的およびスペクトル的に分解された画像を取得し、
ii)前記画像を補正して、黒レベル、輝度の不均一性を補正し、ノイズを低減し、
iii)画像とテストパターンとの間の正規化された2次元相互相関を計算することにより、可能性のある粒子が位置特定され、
iv)前記画像内の粒子を識別し、少なくともその色と輝度によって前記粒子を特性評価し、
v)前記粒子を分類し、
vi)前記粒子をカウントし、
vii)以前の較正に基づいて前記バイオマーカ濃度を計算する、
バイオセンシングプラットフォーム。
【請求項2】
前記照明システム(IS)の光源が、タングステン、ハロゲン、キセノンランプ、または連続体レーザー、あるいは可視および近赤外スペクトル範囲の複数のLEDもしくはレーザーの組み合わせである、請求項1に記載のバイオセンシングプラットフォーム。
【請求項3】
前記光学システム(OS)が顕微鏡対物レンズを含む、請求項1または2に記載のバイオセンシングプラットフォーム。
【請求項4】
前記光学システム(OS)がチューブレンズと組み合わされた無限補正された顕微鏡対物レンズを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のバイオセンシングプラットフォーム。
【請求項5】
前記オートフォーカスシステム(AF)がプログラミング手段に基づく、請求項1~4のいずれか一項に記載のバイオセンシングプラットフォーム。
【請求項6】
前記光検出器(OD)が、ダイクロイック光学フィルタと結合された複数の単色CMOSもしくはCCDセンサの高密度アレイ、または同じ空間位置で異なるスペクトル帯域を検出することができる光検出器の垂直に積み重ねられたアレイである、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオセンシングプラットフォーム。
【請求項7】
前記光検出器(OD)が、モザイクパターンに配置された光学フィルタのアレイと結合されたCMOSまたはCCDセンサである、請求項1~5のいずれか一項に記載のバイオセンシングプラットフォーム。
【請求項8】
前記光学フィルタがRGBフィルタである、請求項7に記載のバイオセンシングプラットフォーム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のバイオセンシングプラットフォームを使用する複数のタンパク質バイオマーカの光学的検出方法であって、
a.前記検出されたバイオセンサの散乱信号から空間的およびスペクトル的に分解された画像を取得するステップと、
b.前記画像を補正して、黒レベル、輝度の不均一性を補正し、ノイズを低減するステップと、
c.前記画像内の粒子を識別し、少なくともその色と輝度によって前記粒子を特性評価するステップと、
d.前記粒子を分類するステップと、
e.前記粒子をカウントするステップと、
f.以前の較正に基づいて前記バイオマーカ濃度を計算するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、ターゲット分子を含むサンプルと相互作用するときに固体トランスデューサに結合された生物学的認識層が受ける物理的変化を検出して定量化する診断用途のための多重化バイオセンサに関する。
【関連技術の説明】
【0002】
バイオセンサは、いくつかの生体分子(受容体)の能力を使用して、相補的な生体分子(リガンド)に特異的に結合する(それを認識する)。最も典型的な相互作用は、相補的な核酸ハイブリダイゼーションと抗体/抗原結合である。バイオセンサは、基礎生物学研究、健康科学研究、創薬、臨床診断においてますます求められている。測定された物理的変化に応じて、バイオセンサは電気化学、機械、および光学バイオセンサに分類することができる。
【0003】
欧州特許出願公開第3153844号明細書には、表面に堆積したタンパク質バイオマーカを超高感度で検出するための新しいバイオセンシングプラットフォームが開示されている。このバイオセンシングプラットフォームの主な特徴は次の通りである。
1)各バイオマーカは、特定の種類のプラズモンナノ粒子(ナノスフェア、ナノロッド、ナノキューブ、ナノプリズムなど)で標識される。
2)プラズモンナノ粒子は、機能化された吊り下げられた複数の誘電体基板上に堆積して、同時に、プラズモンナノ粒子からの弱い散乱信号を強く増強し(オプトプラズモン効果)、ナノ粒子の質量を計量する。
【0004】
バイオセンシングプラットフォームは、光学的検出に基づく二重変換メカニズムを提示し、プラズモンナノ粒子は、標準的な暗視野顕微鏡で機械的に検出され、プラズモニックナノ粒子の質量は、ナノ粒子の堆積後の吊り下げられた機械的基板の共振周波数の変化を測定することによって検出される。
【0005】
このバイオセンシングプラットフォームは非常に堅牢で、感染性、炎症性、および腫瘍性のタンパク質バイオマーカでテストされており、日常の臨床診療における標準よりも最大6桁優れた超高検出感度を示す。しかし、この公知のバイオセンシングプラットフォームの主な欠点は、以下が不可能であることである。
i.光信号はすべての表面積にわたって平均化されるため、様々な種類のナノ粒子を区別すること、
ii.ナノ粒子の凝集の異なる状態(モノマー、ダイマー、トリマーなど)を区別すること、
iii.基板やその他の潜在的な不純物によって散乱された光によって引き起こされる非特異的な信号を排除すること、
iv.光学的認識が標準の暗視野顕微鏡で行われるため、表面のナノ粒子の基本的なスペクトル特性を抽出すること。
【0006】
さらに、このプラットフォームではセンサの統合された機械的特性しか測定できないため、機械的変換では個々のナノ粒子に関する情報を得ることができない。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、バイオセンサの表面に関する空間的およびスペクトル的に分解された情報を同時に取得することにより、以前にコメントされた技術的問題を解決するバイオセンシングプラットフォームおよび方法を提供する。従来技術と比較して、ここで説明する発明により、以下のことが可能になる。i)バイオセンサのS/N比を大幅に高めること、ii)アッセイの特異性を大幅に向上させること、iii)複数のバイオマーカを同時に検出すること(多重化)、iv)診断目的に適したハイスループットを達成すること。
【0008】
重要なことに、測定と解析に必要な時間は、多重化で使用されるバイオマーカの数に依存しない。
【0009】
本発明は、バイオセンサ、広帯域および連続スペクトル照明源、バイオセンサによって散乱された光を検出するための光学検出システム、ならびに検出された光信号の処理手段を備えたバイオセンシングプラットフォームで構成され、光検出器は、散乱光の空間解析とスペクトル解析を同時に実行することができる分光光度計のマイクロメトリックに密なアレイと、バイオセンサの表面の散乱信号をカメラに合焦するように適応されたオートフォーカスシステムと、を備える。プラットフォームは、光学的検出システムおよび/またはバイオセンサのための移動手段をさらに備え、その結果、光学的検出システムおよびバイオセンサは、3次元で互いに対して変位することができ、処理手段は、サンプルから空間的およびスペクトル的に分解された光信号を取り込むように適応される。
【0010】
取り込まれた光信号からの空間情報とスペクトル情報は、バイオセンサの表面上の散乱粒子の位置を導き出し、それらのスペクトル放出に関してそれらを特性評価するように処理される。粒子の各々を分類するために、特に、i)粒子がバイオセンサの標識として使用されるナノ粒子の1つであるかどうかを決定するために、ii)複数の標識を同時に使用する場合(多重化)、粒子がどの標識に属するかを決定するために、iii)粒子の凝集状態(モノマー、ダイマーなど)を決定するために、およびiv)標識として識別されない他のすべての粒子を廃棄するために、さらなる処理が行われる。バイオセンサで使用される各標識について、そのよう標識として識別された粒子の数がカウントされる。これらの数値から、バイオセンサ上の各サンプルにおけるバイオマーカの濃度が定量化され、出力結果としてプラットフォームのユーザに提示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
説明を完了し、本発明のより良い理解を提供するために、一組の図面が提供される。前記図面は、本発明の好ましい実施形態を示しており、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、本発明がどのように実施され得るかの一例としてである。
【0012】
【
図1】本発明によるシステムの方式を示す図である。
【
図2】分離または結合された光学システムおよび照明システムを有する実施形態に対応する2つの方式を示す図である。
【
図4】3つの異なるタイプのナノ粒子の3つの異なるスペクトルフィンガプリントを示す図である。
【
図5】2つのパラメータ値の2次元ヒストグラムであり、粒子の正規化された輝度が横軸に沿って表され、チャネル「赤」の相対的寄与が縦軸に沿って表されている。
【
図6】1つの粒子クラスの結果を「ヒートマップ」として示す図であり、すなわち、粒子番号がグレーコード化されており、バイオセンサ上の位置に似た2次元で表されている。
【好ましい実施形態の説明】
【0013】
図1を参照すると、本発明のバイオセンシングプラットフォームは以下を含む。
・広帯域連続スペクトルでバイオセンサを照明する手段
・空間分解能とスペクトル分解能を有する光検出器を使用して、サンプルから空間的およびスペクトル的に分解された光信号を同時に取り込む手段
・バイオセンサから表面を光学センサに合焦させる手段
・3つの空間座標でバイオセンサおよび/または光学ヘッドを移動させて、それらの相対位置を変更する手段。
【0014】
本システムは、サンプルからの散乱信号を取り込むことができる光学システム(OS)、グレージング角度でサンプルを照明するための照明システム(IS)、サンプル表面の空間およびスペクトル解析を同時に行うための光検出器(OD)、サンプル表面の高速で自動焦点合わせのためのオートフォーカスユニット(AF)、ならびに、サンプルと光学スキャナとの間の相対移動を生み出すことができるモータ化システム(MS)を含む。
【0015】
照明システム(IS)
照明システム(IS)は、例えば、照明装置のセットアップに結合された広帯域VI-NIR光源で構成されている。「広い」という用語は、光源が可視域(400nm~700nm)および/または近赤外スペクトル範囲(700nm~1000nm)で非常に広いスペクトル放射を示すことを意味する。本発明の目的のために、広帯域光源は、タングステンハロゲンランプ、キセノンランプ、超連続体レーザー、または複数のLEDもしくはレーザーの組み合わせであってもよい。照明装置のセットアップは、広帯域光源からの光を収集し、十分にコリメートされた光スポットでグレージング角度でサンプル表面を照明する。
【0016】
光学システム(OS)
光学システムの主な目的は、サンプル表面からの弱い散乱光を非常に効率的な方法で回復することである。本発明の好ましい設計における光学システム(OS)は、基本的に光学対物レンズをチューブレンズと組み合わせることによって得られる無限補正光学システムであってもよい。最適ではないが、光学システム(OS)は、光学対物レンズ(有限補正光学システム)だけで設計することができる。
【0017】
図2の概略図に示すように、光学(OS)および照明(IS)システムは、分離または結合された光路を提供することができる。選択した幾何学的構成(分離または結合)に応じて、照明システムは異なる幾何学的構成を有することができる。照明システム(IS)が光学システム(OS)と結合されている場合、照明設定はケーラー照明またはネルソニアン照明を実装することができる。逆に、ISとOSが光路を分離している場合、照明システムはグレージング角照明装置を使用することができる。
【0018】
同様に、光学システムは、OSとISの幾何学的構成(結合または分離)に応じて、かなりの違いがある。光学システム(OS)が照明システム(IS)と結合されている場合、光学システム(OS)に、照明の光路をサンプルにより散乱された光の光路から分離することができるいくつかの要素を実装する必要がある。この条件は、通常、光学システム(OS)に光学対物レンズと暗視野顕微鏡用途のために特別に設計された光学ビームスプリッタを取り付けることで満たされる。逆に、光学システム(OS)が照明システム(IS)から分離されている場合、光学システムは、明視野用途で使用される標準的な光学素子で設計することができる。
【0019】
光検出器(OD)
光検出器は、光学システムによって収集された散乱光を取り込み、サンプル表面からの光信号を高い空間分解能とスペクトル分解能で同時に分解する機能を備えている。サンプルの空間解析とスペクトル解析を同時に実行するためには、光検出器が分光計のマイクロメトリックに密なアレイである必要がある。密なアレイは、サンプルの異なる空間位置を同時に解析する機能を提供するが、アレイの各分光計は、サンプルの各ポイントでのスペクトル解析を可能にする。ここで説明する光検出器により、空間座標とスペクトル座標の両方でサンプルを同時に解析することができる。分光計の密なアレイは、i)モザイクパターンに配置された光フィルタのアレイと結合された光検出器のアレイ、ii)二色性光フィルタと結合された光検出器の複数のアレイ、またはiii)同じ空間位置で異なるスペクトル帯域を検出することができる光検出器の垂直に積み重ねられたアレイで実現することができる。これらのタイプの光検出器は、サブマイクロメートルの分解能で、複数のスペクトル帯域(通常は少なくとも2つで30以下)でサンプルの空間解析とスペクトル解析を同時に行うための実行可能な技術的解決策である。優先的に、高ダイナミックレンジの光検出器を使用して、異なるバイオマーカに関連付けられたナノ粒子を1回の取り込みで撮像できるようにして、複数のバイオマーカを使用する場合に測定プロセスに必要な時間が増加しないようにする。
【0020】
オートフォーカスシステム(AF)
高速かつ自動的にサンプル表面の焦点を合わせるために、光学システムにはオートフォーカスシステム(AF)が装備されている。サンプルのオートフォーカスは、ハードウェア方式またはソフトウェア方式のいずれかにより実現することができる。ハードウェアベースのオートフォーカスシステムは、一般に文献ではアクティブオートフォーカスシステムと呼ばれ、レーザー光をサンプル(AFの一部であるレーザー)に投射し、サンプルから反射されたレーザー光を差動光検出器で収集することで得られる。光検出器で反射光の位置を測定することにより、最適な焦点位置からのサンプル表面の距離を定量化することが可能であり、したがって、バイオセンサ、光学システムまたはその一部、あるいは両方のハードウェア構成要素を動かすことにより、サンプルと光学スキャナのヘッドの間の相対距離を変更することができる1つまたは複数の電動ステージにより最適な位置が回復される。サンプル表面の焦点を正確に合わせるには、動きの一般的な解像度を高解像度光学対物レンズの被写界深度よりはるかに低くする必要がある(通常、100X光学対物レンズでは200nmに達する可能性がある)。ステッパーやDCモータ、圧電アクチュエータなど、様々な技術的解決策を実施することができる。
【0021】
ソフトウェアベースの自動焦点システムは、サンプルと光学ヘッドの間の異なる相対距離でサンプルのいくつかの画像を取り込む。画像の取り込みは、サンプルの光学解析に使用されるのと同じ光検出器、または専用の光検出器を使用して実行することができる。取り込まれた様々な画像は、各画像のコントラストを計算し、最適な焦点位置からのサンプル表面の距離を定量化することができる専用アルゴリズムで解析される。最適な位置は、サンプルとスキャナの光学ヘッドとの間の相対距離を変更することができる1つまたは複数の電動ステージで最終的に回復される。
【0022】
移動手段(MS)
測定は非常に広い表面積(数千cm2)で実行する必要があるため、このシステムでは、バイオセンサ表面と光学システムとの間の相対位置を変更することができるモータ駆動システムを使用する必要もある。
【0023】
このタスクは、様々な実験構成で実現することができる。
A.サンプルが2つの軸に沿って移動し、光学システムは静止したままである。
B.光学システムが2つの軸に沿って移動し、サンプルホルダーは静止したままである。
C.光学システムとサンプルの両方が、例えば光学システムが1つの軸に沿って移動し、サンプルホルダーが第2の軸に沿って移動する。
【0024】
バイオセンサ(BS)
バイオセンサは、機能化された基板および機能化されたナノ粒子を含む。ターゲット分析物は、サンプル、特に生体サンプルから検出される要素である。ターゲット分析物は、有機分子または無機分子(薬物、ホルモン、コレステロールなど)、生体分子(ペプチドまたはタンパク質、核酸分子、成長因子、バイオマーカなど)、細胞(原生動物細胞、細菌細胞、真菌細胞、真核細胞)、または細胞断片(細菌壁、ミトコンドリア、細胞小胞などの細胞小器官など)またはウイルスなど、どのような性質のものであってもよい。
【0025】
基板表面を機能化する認識要素は、ターゲット分析物を認識して特異的に結合することができる任意の要素であり得る。この意味で、認識要素は、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル抗体)、受容体(オピオイド受容体などの細胞表面受容体)、ペプチド(オピオイドペプチドなど)、タンパク質(レクチンなど)、炭水化物(リポ多糖O抗原など)、核酸(DNAまたはRNA配列)、細胞(原生動物細胞、細菌細胞、真菌細胞、真核細胞)、微生物またはその一部(細菌壁、ミトコンドリアなどの細胞小器官、細胞小胞など)であってもよい。本発明の好ましい実施形態では、認識要素は抗体、より好ましくはモノクローナル抗体である。
【0026】
ナノ粒子は自然にプラズモン特性を有しなければならない。原則として、プラズモン特性を備えたあらゆるタイプのナノ粒子を使用することができる。したがって、ナノ粒子は、例えば、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、またはプラズモンメタマテリアルのナノ粒子、例えば、限定されないが、窒化チタンおよび非化学量論的酸化物、例えば、非化学量論的バナジウム、チタンおよびアルミニウム酸化物であってもよい。
【0027】
さらに、ナノ粒子は、例えば、ナノスフェア、ナノロッド、尖ったナノロッド、ナノシェル、ナノケージ/フレーム、中空ナノスフェア、四面体、八面体、立方体、二十面体、菱形十二面体、凹型ナノキューブ、四六面体、鈍角三角錐、三十面体およびナノプリズムなどの複数の形態または構造を採用することができる。
【0028】
ナノ粒子は、ターゲット分析物に特異的に結合することができるそれに結合された少なくとも1つの検出要素を含む。検出要素は、ターゲット分析物に結合することができる任意のタイプの要素とすることができ、したがって、原則として、その性質は、認識要素の性質と同じまたは類似することができる。
【0029】
検出要素の機能は、基板表面に固定化された認識要素によって取り込まれたターゲット分析物の存在を検出することである。したがって、ターゲット分析物が分析されたサンプル中に存在する場合には、ナノ粒子は、それに結合された検出要素によってのみ基板に結合する。そのような場合、認識要素は、ターゲット分析物に結合することができ、それは次に、サンドイッチ型配置で検出要素によって検出される。サンプル中にターゲット分析物が存在しないと、認識要素がターゲット分析物に結合しないため、検出要素による検出が行われない。
【0030】
要約すると、ターゲット分析物がサンプルに存在する場合には、超低濃度であっても、個々のナノ粒子によって生成される散乱スペクトルに基づいて検出し定量化することができる。ターゲット分析物がサンプル中に存在しない場合には、ナノ粒子が存在しないため、基板に対する検出可能なプラズモン効果はない。
【0031】
空間的およびスペクトル的に分解された情報の解析
光学システムおよび検出器は、移動手段と共に、バイオセンサに関する空間的およびスペクトル的に分解された情報を取得するのに役立つ。この情報は、以下では「画像」と呼ばれるが、これらの「画像」には「典型的な」顕微鏡画像よりも多くのおよび/または異なるスペクトル情報が含まれる可能性があることに留意されたい。これらの画像の解析は、バイオセンサ上の各サンプルで検出されたバイオマーカの濃度を提供する。3つの側面は、画像の取得と結果との間の時間を最小限に抑えるのに役立つ。
1.解析の主要部分は、画像取得と並行して実行される。
2.解析方法では、ほとんどの解析で独立して画像を処理することができるため、いくつかの画像が並行して解析される。
3.高効率な画像解析方法が実装されている。
【0032】
解析の中核は、粒子の認識、分類、カウントにある(
図3を参照)。各画像が読み出され、必要に応じて補正が適用される(背景、不均一性など)。粒子は最初に各解析画像内で位置特定され、特性評価され(輝度、発光スペクトルなど)、その結果を使用してそれらが分類され(ナノ粒子モノマー、クラスタ、ダストなど)、最後にクラスごとにカウントされる。これらの数値は、画像ごとの主要な結果を構成する。さらに、測定の品質を制御する(正しい焦点合わせなど)ためのさらなる結果が導き出される。各画像の異なる粒子の数から、対応するサンプルのそれぞれのバイオマーカの濃度が導き出される。
【0033】
好ましい実施形態
第1の実施態様では、LEDベースの白色光源が照明に使用される。光源は、対象となる粒子の散乱スペクトルをカバーするように選択され、球状の金ナノ粒子の場合、通常は青(450nm)から赤(700nm)までである。より小さな粒子はより少ない光を散乱し、それらのスペクトルは青色にシフトするので、好ましくは青緑色領域でより強い放射を有する光源が、この効果を(部分的に)補償するために選択される。この補償により、光検出器の設定を1つだけにして、すべての粒子を撮像することができる。高い光学分解能と光学システムの効率的な集光を実現するために、開口数(NA)の高い暗視野顕微鏡対物レンズ、例えば50X/0.8対物レンズが使用される。全視野(FOV)にわたってバイオセンサ上の粒子の正確な特性評価と分類を確実にするために、球状にかつ色彩的に十分に補正された対物レンズ、例えば平面アポクロマートが使用される。無限補正対物レンズは、光学システムのさらなる構成要素と組み合わせて柔軟性を確保するために使用される。
【0034】
第1の実施態様では、RGBフィルタを備えたCCDセンサが使用され、第2の実施態様では、RGBフィルタを備えたCMOSセンサが使用される。好ましい実施形態は、モザイクパターンに配置された16の異なるスペクトル帯域を有するCMOSセンサを利用する。あるいは、ダイクロイック光学フィルタと組み合わせた複数の単色CCD/CMOSセンサを、光検出器として、またはFoveon技術に基づくセンサとして実装することもできる。
【0035】
上記から、複数のスペクトル帯域を備えたカラーカメラまたはセンサを使用する明らかな代替例は、単色カメラと外部フィルタ(一組の固定フィルタ、単一だがスペクトル調整可能なフィルタなど)、または可変照明(切り替えられる光源、光源とモノクロメータなど)との組み合わせであろう。これらすべての代替案では、カメラは各フィルタまたは照明設定ごとに1つの画像を取得し、同等の画像スタックを生成する。それでも、各スキャン位置で複数の画像を取得し、画像間でフィルタまたは照明設定を変更する必要があるため、これらの代替例は著しく遅く、非常に低いスループットになり、診断目的には不適切である。本発明の方法の利点は、必要とされる空間情報およびスペクトル情報が順次ではなく並行して得られ、可能な限り最高のデータ取得速度を保証することである。重要なことに、本発明に使用される光検出器は、サンプル表面の空間解析とスペクトル解析を同時に実行する必要がある。本発明のプラットフォームは、数分で約100個のサンプルのアッセイを測定することを可能にし、これは、従来のミクロ分光光度法よりも少なくとも10~100倍優れている。
【0036】
センサの幾何学的寸法は、光学システム(すなわち、顕微鏡の対物レンズ)が提供する画像の寸法とほぼ一致するように選択される。標準的な顕微鏡では、このサイズは「視野数」(FN)と呼ばれ、接眼レンズの絞り径(mm)と等しくなる。センサが小さすぎると、対物レンズによって提供される利用可能な視野が十分に活用されず、センサが大きすぎると、センサは部分的にしか使用されない。光学システムの収差は画像の境界に向かって増加する傾向があるため、FNよりやや小さいセンササイズは、通常、高画質を保証し、粒子の信頼性の高い検出、特性評価および分類を行うための最良の選択である。現在の実施態様では、センサの対角線は約18mmであるが、FNは22mmである。多重化で使用される異なるタイプのナノ粒子は、通常、非常に異なる散乱効率を有し、輝度が大幅に変化するため(例えば、30倍以上)、ダイナミックレンジが大きいセンサを使用して、単一のカメラ設定ですべての粒子を撮像することができる。大きなダイナミックレンジでは、通常、画像ピクセルが十分に大きく、ノイズレベルが低いセンサが必要である。
【0037】
顕微鏡の対物レンズと光検出器の組み合わせは、1μm未満(例えば、直径が50nmから150nmの範囲)の粒子を1μmを超える光学解像度(例えば、通常0.5μmから0.9μmの範囲)で撮像することができて、画像内の粒子ごとに十分なピクセル(例えば、オブジェクト平面を参照すると、1μmごとに10ピクセル)が得られるように選択される。したがって、光検出器は通常、4~12メガピクセルで、サイズは10x15mm2程度である(例えば、いわゆる1”センサタイプに属する)。
【0038】
本発明では、使用されるスペクトル帯域の数は、画像取得またはデータ解析にほとんど影響しない。重要なことに、取得した画像は、2次元の空間情報(画像ピクセル)と3次元の画像情報(画像レイヤ)を有するように配置することができる。例(
図4を参照)では、3つの異なるスペクトルフィンガプリントを有する3種類のナノ粒子を含むバイオセンサが撮像されていると想定している。画像センサは、それぞれが1つのスペクトル範囲に対応する5つの画像レイヤのスタックを提供する。5つのレイヤを使用すると、右側に示す散乱スペクトルの簡略化されたバージョン(5つのデータポイントのみ)が各画像ピクセルで取得される。スペクトルレイヤが多いほど、散乱スペクトルの再現が良くなり、異なる粒子のスペクトル間の識別が容易になる。
【0039】
以下では、RGBカメラを例として使用して、本発明で使用される画像解析方法を説明するが、それでも、以下で「色」または「色成分」について言及する場合でも、「色」は常に各画像ピクセルで利用可能なすべてのレイヤからの完全なスペクトル情報を指し、「色成分」はこれらのレイヤの1つからのデータを指すことを理解されたい。同様に、空間情報とスペクトル情報の組み合わせは、「画像」と呼ばれ、スペクトルレイヤの数とは無関係である。
【0040】
カメラのパラメータは、黒と白のレベル、ホワイトバランス、および色再現に関して、十分に露出された画像を生成するように調整される。設定は、バイオマーカ標識として機能するナノ粒子を良好に撮像することができるように選択され、(感度と露光時間を調整することにより)ノイズレベルを超え飽和領域を下回る信号で、散乱スペクトル(「色」;色補正行列を調整することによる)に関して異なる粒子間の良好な識別をもたらす。
【0041】
通常、スキャンされるバイオセンサは、マルチウェルプレートに非常に類似しており、患者サンプルごとに1つのウェルを有する、異なるサンプルに対応する異なる領域を備えている。
【0042】
バイオセンサの空間分解能は、2つの手段で達成される。光検出器(つまり、カメラセンサ)自体が空間分解能を提供し、バイオセンサと光学システムが互いに相対的に移動する。現在の実施態様では、バイオセンサは、2軸の電動ステージによって、静止した光学システムに対して移動する。
【0043】
通常、同じサンプルに対応する各領域の複数の画像が取得されるが、それでも、撮影された画像は通常、サンプル領域を完全には覆っていない。典型的なスキャンでは、サンプルごとに取得される画像の数と、サンプル領域内のそれらの位置は、バイオセンサのすべてのサンプル領域で同じにすることができる。
【0044】
しかし、これは必ずしも最良のオプションではない。数と位置は、サンプルごとに個別に選択することもできる。例えば、バイオマーカの濃度が低いサンプルの画像をより多く取得して、測定の統計的ロバスト性を向上させることができる。バイオセンサのスキャン中に光学プラットフォームが取得する画像の総数は、1から数千の範囲に及ぶ可能性がある。個々の画像のデータ収集を細分化すると、それらの画像の解析(対応するチャプタを参照)をスキャンと並行して、つまり光学プラットフォームが画像の収集を継続しながら実行することができるという重要な利点がある。これにより、プラットフォームのサンプルスループットが向上する。
【0045】
スキャン中に取り込まれた画像は、一般的な画像フォーマット、例えばTIFFやJPEGで通常、色チャネルごとに8ビットのRGB画像として保存される。ほとんどの場合、JPEGが推奨されるが、これは、結果のファイルが小さくなり、書き込みと読み出しの両方がより高速になるからである。一方、JPEGは、特にカラー表現に影響する非可逆圧縮を使用する。バイオセンサ上の粒子のスペクトル特性評価は本発明の本質的な側面であるので、かなり穏やかなJPEG圧縮(すなわち、高い「品質係数」)のみが使用され、色表現の潜在的な歪みを最小限に抑える。あるいは、
・散乱強度が低い粒子の場合に画像内のアーチファクトを回避するために、画像をより大きな色深度で、例えば16ビットTIFF画像として保存することができる。
・画像はカメラの生データとして保存することができる。これにより、カメラセンサのダイナミックレンジ全体(通常12~14ビット)、および散乱光の量とセンサによって測定された信号との間の線形依存性が保持される。
・複数のスペクトル帯域を有するカメラの場合、通常は製造元の独自の画像形式を使用する必要がある。RAWフォーマットとは別に、これはコンテナとしてTIFFに基づくこともできる。
【0046】
画像の保存に必要な時間とメモリの量、およびそれらを解析する時間を削減するために、取り込まれた画像はビニングされる。通常、2×2のビニングが適用される。つまり、4つのセンサピクセルが1つの画像ピクセルになる。ピクセル間の二次補間は、ビニングされた画像を計算するために使用される。画像の後続のビニングを行わずに、ピクセル数の少ないセンサを直接使用する代替方法と比較して、このアプローチは、色の点で粒子間のより良い識別を実現する。したがって、現在の実施態様では、12MPのカメラを使用する場合に画像のビニングが適用され、4MPカメラからの画像は、残りの空間解像度が低すぎるため、ビニングされない。
【0047】
通常、画像は最初にコンピュータのハードディスクまたは同様の記憶装置にローカルに保存される。あるいは、プラットフォームのコンピュータのネットワーク内で、画像を別のコンピュータまたは記憶システムに直接転送することもできる。また、代わりに、取り込まれた各画像(次の段落を参照)の解析が、コンピュータのメモリ(RAM)に残っている画像で直接実行される場合には、記憶装置(例えばハードディスク)への画像の格納を省略することができる。
【0048】
スキャンからの画像の解析には、Matlab(MathWorksから市販されている)およびGNU Octave(フリーソフトウェア)と互換性のあるスクリプトで構成される解析プログラムを使用することができる。また、解析の一部またはすべてを、例えば、光検出器に直接接続されたFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を使用して、ハードウェアで実施することができる。これにより、必要な解析時間を短縮することができる。実際の解析の前に、解析に必要なデータ収集(「スキャン」)のパラメータが収集される。通常、これらはファイルまたはデータベースから読み出されるか、ユーザが手動で入力する。これらのパラメータは、サンプルの数と位置、およびバイオセンサ上の個々の画像の数と位置、サンプルに存在するバイオマーカのタイプ、使用するナノ粒子のタイプとバイオセンサ基板、サンプル量に関する情報、照明、カメラと画像取り込みの設定などを含むものとする。現在の実施態様では、この情報はスキャン中に2つのテキストファイルに自動的に保存される。1つのファイルには、カメラ、照明、オートフォーカスの設定に関する情報が含まれ、第2のファイルには、バイオセンサ上のサンプルの形状、各サンプルの領域内の画像の形状、および実際にスキャンされた(つまり、すべてのサンプルまたはそれらのサブセット)に関する情報が含まれる。さらに、バイオセンサ上のサンプルと患者情報の対応(例えば、バイオセンサ上のどのウェル/サンプルがどの患者IDに対応するか)が保存されている必要があり、この情報は解析自体には関係ないが、もちろんその結果の診断的使用には不可欠である。臨床環境では、この情報は通常、中央の病院情報システム(HIS)に格納される。現在の実施形態では、情報は、バイオセンサを準備する人によって編集され、本発明のプラットフォームおよび解析ソフトウェアの両方によって読み出すことができるネットワークドライブ上のフォルダに格納される。
【0049】
光学プラットフォームで取得されたすべて(またはすべてのサブセット)の画像が解析される。コンピュータでは、この解析は厳密に連続して(時間ごとに1つの画像)、または並列でいくつかの画像(コンピュータの複数のスレッドを使用して、例えば、スレッドごとに1つの画像)を解析することができる。通常、コンピュータで使用可能な最大数に近い並列スレッドの数(=カーネルの数または論理プロセッサの数)が選択され、解析の合計時間を短縮する。現在の実施態様では、解析はプラットフォームでのデータ取得を制御する同じコンピュータで実行される。異なる画像を個別に解析することにより、バイオセンサに関する関心のある情報を取得できる可能性は、この手法の大きな利点である。このようにして、最も時間のかかるタスク(各画像の解析)を容易に並列化でき、この並列化を直接的、効率的、かつ経済的に実現可能な方法(カーネル数が多いコンピュータ、複数のCPU、ネットワーク内の複数のコンピュータなど)で拡張することができる。任意選択で、画像がネットワーク内に保存されている場合には、プラットフォームを制御するコンピュータとは別のコンピュータで解析を実行することができる。同様に、すべての画像の解析をネットワーク内の複数のコンピュータに分割して、各コンピュータが画像のサブセットを解析したり、記憶と解析の両方をクラウドサービスを使用して行うことができる。並列化は、画像(スレッドごとに1つの画像)対して行うこともできるし、あるいは各画像を細分割して並列にサブ画像を解析することもできる。解析は、バイオセンサ全体をスキャンした後に、またはスキャンと並行して(例えば、特定のサンプルのすべての画像が取得されるたびに)実行することができるので、結果がスキャン後にできるだけ早く取得される。
【0050】
解析中、各画像に対して次の手順が実行される。最初に、画像データが記憶装置から(またはコンピュータのメモリから直接)読み出される。対応するオプションがユーザによって選択されているか、デフォルトで有効になっているか、スキャンに関する情報(使用するカメラセンサのタイプ、撮像パラメータなど)に基づいて自動的に有効になっている場合には、画像補正および/または変換が計算される。
【0051】
画像の背景補正を行って黒レベルを調整する。本発明のプラットフォームからの典型的な画像では、関心のある粒子は、暗い背景に個々の小さな明るいスポットとして現れる。基板、カメラセンサのタイプ、および取得パラメータによっては、この背景が「黒」(つまり、センサの値がゼロに近い、「理想的な」場合)ではなく、「灰色」(特定の色合いの有無にかかわらず)で表示される場合がある。センサ値の評価(例えば、すべてのピクセルのヒストグラムに基づく)により、信号オフセットと潜在的な色合いの両方を補正することができる。これにより、解析の後のステップでの粒子の特性評価が簡素化される。
【0052】
次に、輝度の潜在的な不均一性について画像が補正される。このような不均一性は、照明、集光、カメラセンサなどによる可能性がある。典型的な効果は、画像の中心が境界よりも明るく見えることである。これらの影響の補正は、解析の後のステップで粒子の正しい特性評価と分類を確実にするために必要になる場合がある。
【0053】
ダイナミックレンジを調整するために、画像のガンマ曲線の変更が行われる。「ガンマ曲線」とは、検出された実際の(物理的な)光量に対する画像内のピクセル値の依存性を指す。標準画像(JPEG、TIFFなど)では、この依存性は非線形であり、光の増加に伴い、ピクセル値の増加は比例よりも遅くなる。解析では、「ガンマ曲線」の逆関数を使用してこの非線形依存性が補正されるため、取得されたピクセル値は散乱光の量に比例する。
【0054】
画像データは、画像ノイズを低減するために平滑化される。前述のように、実際の光学解像度は通常、カメラセンサのピクセルピッチよりも粗くなっている。これは、解像度に影響を与えずに平滑化することで、(カメラセンサからの、低い光度などによる)画像ノイズを低減することができることを意味する。画像ノイズの低減により、粒子の正しい特性評価と分類が再び改善される。
【0055】
標準のカラーカメラの場合、別の色空間への変換を実行することができる。例えば、RGBからHSV、L*a*bなどに変換することができ、これにより、粒子特性評価の結果の解釈を簡素化し、色に関して粒子をより正確に区別することができる。L*a*b色空間には、例えば、光強度(L)の1つのチャネルが含まれ、他の2つの軸は色を表す。それに比べて、RGBのチャネルはすべて色と輝度を混合している。
【0056】
使用される色空間に専用の輝度値(例えばRGBで)が含まれていない場合には、そのような値は各画像ピクセルの色チャネルを合計することによって計算される。結果として得られるグレースケール画像は、以下では「輝度画像」と呼ばれる。この輝度画像は通常、正規化されており、「0」と「1」は指定された画像形式の最低と最高の輝度レベルに対応する(8ビットRGB:(0|0|0)→0、(255|255|255)→1)。
【0057】
使用する色空間に相対色値が含まれていない場合には、各ピクセルについて、各色チャネルをチャネルの合計で除算することにより、このような相対色の寄与を計算することができ、例えば、チャネル「赤」の相対的寄与についてRrel=R/(R+G+B)である。
【0058】
複数のスペクトル帯域を有するカメラが使用されている場合、RGB値の代わりに、センサの各波長範囲で測定された散乱強度が使用される。どちらの場合も、解析方法は大きく変わらない。例えば、RGB画像などの3つの値は、異なる波長領域を表す要素の配列と簡単に交換される。要素の数は通常、スペクトル分解能を得るために3よりも多くなる。それでも、適切に選択された2つの波長の組み合わせは、異なる粒子間の正確な識別に適した選択肢になる。
【0059】
次に、可能性のある粒子が画像内で位置特定される。使用される実際の画像取得パラメータ(光学およびセンサの解像度、倍率など)を考慮して、光学プラットフォームからの画像内のナノ粒子の典型的な形状を表すグレースケールテストパターンが計算される。この形状は、例えば、2次元ガウス関数、エアリーパターン、単純な円盤形状などで表すことができる。現在の実施態様では、2つのガウス関数の合計(G1+(-G2))を使用して、個々の金ナノ粒子の典型的な「ドーナツ」形状の散乱パターンをほぼ一致させる。変形例として、単一のグレースケールテストパターンの代わりに、色付きのパターンを使用することができ、例えば、RGB成分ごとに1つのパターンを使用したり、複数のスペクトル帯域を備えたカメラのチャネルごとに1つのパターンを使用したりすることができる。これにより、形状が波長に依存する場合に、可能性のある粒子の正確な識別を改善することができる(例えば、緑色のガウス形状とオレンジ色のスペクトル範囲のドーナツ形状)。
【0060】
輝度画像と(1つまたは複数の)テストパターンとの間の正規化された2次元相互相関が計算される。この相互相関画像は、テストパターンと形状が類似している画像の領域に対して1に近い値を有する。輝度画像を使用する代わりに、相互相関をテストパターンと、例えば画像の色チャネルの1つ(または複数のチャネルの線形結合、またはその他の関数)との間で計算することもできる。これは、例えば、特定のパターンが他のチャネルと比較して1つのチャネルでより顕著である場合に適している。バイナリマスクが画像に対して計算される。あるしきい値を超える相互相関値(例えば>0.6)と特定の範囲(例えば、>0.03かつ<0.98、つまりノイズより高く、飽和より低い)の相対輝度を有するピクセルのマスクは1(=真)に等しい。他のすべてのピクセルはゼロ(=偽)である。バイナリマスク(「0」または「1」)の代わりに、連続値を有するマスクを使用することができ、例えば、制約が十分に一致している場合には、グレースケールマスクは(例えば)1に近い値を有し、そうでない場合はゼロに近い値を有し、これらの間のすべての値が可能である。相関と輝度の所定のしきい値は単なる例であり、実際の測定値に基づいて、より適切な値を選択したり、あるいは、異なるおよび/または追加のパラメータのしきい値を選択することができる(色、信号-バックグラウンド比など)。次に、バイナリマスクと相互相関画像とがピクセルごとに乗算される。結果のグレースケール画像では、極大点(=隣接するすべてのピクセルの値よりも高い値を有するピクセル)が位置特定される。相互相関画像とバイナリマスクの積を使用する代わりに、可能性のある粒子の位置は、バイナリマスクのみ(値「1」を有する領域の位置)から導き出すことができる。積の代わりに、例えば、相互相関画像の二乗を取るなど、他の関数が使用されている。これらの極大点の位置は、可能性のある粒子位置とみなされる。変形例は、テストパターンで相互相関を使用する代わりに、画像のハフ変換(例えば、特定のサイズの円形のオブジェクトを見つける)などでしきい値処理技術(例えば、特定の背景値を超えるすべてが可能性のある粒子とみなされる)に基づく粒子検索を使用することであろう。
【0061】
本発明の重要な側面は、各粒子が個別に特性評価されることである。これにより、解析の次のステップで粒子を分類することができる。
【0062】
特性評価は次のように機能する。
a)最も関心のあるパラメータは、各粒子の輝度と散乱スペクトル(「色」)である。これらのパラメータの平均値(つまり、粒子の領域全体の平均)を取得するためには、対応する画像(輝度画像、相対的な色の寄与がある画像など)を適切なカーネル、例えば、予想される粒子サイズに近いサイズの2次元ガウス、またはディスク形状のパターンで畳み込まれる。
b)結果的に得られたフィルタ処理された画像は、前に計算された可能性のある粒子位置で評価される。
変形例:(a.-b.)特性評価される画像あたりの粒子の数が「少ない」場合には、平均値を抽出するためにカーネルを使用して画像全体の畳み込みを計算することは計算上非効率的である可能性がある。代わりに、各粒子の周りの画像から小さな領域を直接抽出し、それらを使用して平均値を導出する方がより効率的である。「低い」数とみなされるものは、撮像パラメータ、コンピュータのハードウェア、および解析ルーチンの実施態様に依存する。特定のセットアップで、クロスオーバーポイントを決定して、どちらか一方の方法を自動的に使用することができる。
c)関心のある追加特性は、粒子のサイズと形状、例えば、輝度画像のFWHM、テストパターンとの相関の程度、および粒子の中心での局所形状である。後者のパラメータは、ドーナツ形状(=中心に凹み)をガウス(または類似の)形状(=中心に最大値)から区別することを可能にする。現在の実施態様で使用されている解析は、粒子の中心での離散ラプラシアンに比例する値を使用する。この選択により、3×3カーネルによる画像の単純な畳み込みに基づく効率的な実施態様が可能になる。
d)関心のあるさらなる追加特性は、(例えば、最近傍距離に基づく)局所粒子密度、およびさらなるスペクトル特性(例えば、スペクトル成分の差または比)である。
e)その結果、各可能性のある粒子の特性が得られる(それらの位置は前のステップからすでに分かっている)。画像ごとに、この中間結果は表として表され、可能性のある粒子ごとに1つの行があり、特性が導出されたのと同じ数の列があり、1つの画像の特性評価ステップの結果を示す例については、表1を参照されたい。テーブルの各行は1つの粒子に対応し、xとyは画像内の座標、Iはその輝度、R、G、Bは相対的な色の寄与である。解析によっては、追加特性評価パラメータ用に列が追加される。
【0063】
【0064】
粒子分類
粒子分類では、解析でバイオマーカに最も固有であり、多重化に不可欠な粒子のみを考慮することができる。
【0065】
分類は次のように機能する。
a)必要に応じて、特定の特性を使用して、解析のさらなるステップから粒子を除外することができる。例えば、ナノ粒子のモノマーのみが対象であり、モノマーが識別機能としてドーナツ形状を示す場合、このパラメータを使用して、すべての非ドーナツ形状の粒子を除去することができる。
b)以前の実験の情報に基づいて、粒子の様々なクラスがそれらの特性(輝度、「色」、形状、サイズ)に基づいて定義される。例えば、
(1)ノイズ(非常に低い輝度)、
(2)バイオセンサ製造からの残留物(特定のスペクトルパターン)、
(3)ダスト(異なるスペクトルパターン)、
(4)個々のナノ粒子(明確なスペクトルパターン、輝度、形状など)、
(5)ナノ粒子のクラスタ(ダイマー、トリマーなど、スペクトルパターン、輝度に基づく)。これらのクラスタの場合、それらの輝度は通常、対応する個々のナノ粒子の輝度に系統的に依存する。この依存性は、分類を改善するために使用される。
c)多重化(=様々なバイオマーカの同時検出、各々が異なるナノ粒子で標識される)の場合、使用されるすべてのナノ粒子を考慮して追加の分類グループが定義される。
d)必要な分類パラメータ/ルール(どの特性の組み合わせが各クラスに対応するか)は、(以前の測定に基づいて)事前に与えることができ、または解析する測定自体から導き出すことができる。第2の場合、この解析は通常、測定値のすべての画像から個別にではなく、(統計を改善し、分類がすべての画像間で一貫していることを確認するために)すべての画像の結合結果に基づいている。
e)分類は、基本的にパラメータ空間のセグメンテーションで構成される。そのルールは、ユーザが定義するか(手動によるセグメンテーションなど)、または自動的に導出することができる(例えば、クラスタ検索、k平均法、セグメンテーションアルゴリズム、機械学習アルゴリズムなど)。RGBカメラの場合、分類の一例は、範囲[>0.1、<0.7]の正規化された輝度、および範囲[>0.0、<0.33]の色チャネル「赤」の相対的な寄与を有するすべての粒子は、製造からの残留物とみなされるということであろう。
【0066】
現在の実施態様では、分類ルールは次のように導出される。
i.特性評価ステップから2つのパラメータが選択され、すべての可能性のある粒子からのこれら2つのパラメータの2次元ヒストグラムが計算される。RGBカメラの場合、通常、正規化された輝度とチャネル「赤」の相対的な寄与がパラメータとして使用される。
ii.このような2次元のヒストグラムでは、同じタイプの粒子(例えば、個々のナノ粒子)は、一種の「ピーク」(=ヒストグラムの、または一般的に、パラメータ空間の「密な」領域)を形成するが、これは、それらすべての輝度と色が類似しているためである。個々の粒子の違い、およびノイズおよび/または測定の精度不足のため、これらは類似しているが同一ではない。
iii.典型的な測定では、メインの「ピーク」は個々のナノ粒子(モノマー)に対応する。以前の測定からの知識に基づいて、解析するデータのヒストグラムのこの「ピーク」の位置を自動的に識別し、所与のパラメータ範囲、例えば、[0.1、0.3]の正規化された輝度、および[0.35、0.45]のチャネル「赤」の相対的寄与でヒストグラムの極大点を検索することができる。
iv.モノマーのこの位置が分かれば、ダイマー、トリマーなどの位置は、それらの輝度がモノマーの輝度の約2倍、3倍などであるという知識に基づいて推定することができる。繰り返しになるが、推定値は実際の極大点の検索をガイドするために使用される。
v.モノマー、ダイマーなどのピークは多少重なる傾向がある。粒子を一方または他方のピークに割り当てるためには、2つのピーク間の「境界」を定義する。ルーチンは、2つのピーク間の「谷」を最もよく定義する(直線)線を検索する。
vi.モノマー、ダイマー、トリマー、およびヒストグラム内のナノ粒子のより大きな凝集体の間の位置と分離線は、上記のように識別される。粒子を、例えばダイマーとして分類するルールは、粒子のパラメータがヒストグラムのポイントに対応することであり、それは、モノマーとダイマーを分離する「境界」の「右側」(=より高い正規化された輝度)、およびダイマーとトリマーを分離する「境界」の左側(=より低い輝度)である。さらに、データポイントは、チャネル「赤」の寄与に関して特定の範囲内にある必要がある(例えば、0.34より大きく0.6より小さい)。
vii.現在の実施態様では、ナノ粒子はモノマー、ダイマー、トリマー、および「より大きな凝集体」(すなわち、N≧4)として分類される。
viii.ナノ粒子のモノマー、ダイマー、トリマー、およびより大きな凝集体に対して自動的に適応される4つのルールとは別に、さらに4つのタイプの「粒子」に対して固定ルールが定義される。
(1)ノイズ:0.1未満の正規化された輝度を有するすべての「粒子」であり、すでに定義されているナノ粒子のグループに属していない。
(2)低輝度の残留物:0.33未満の「赤」、[>0.1、<0.7]の範囲の輝度。
(3)高輝度の残留物:0.33未満の「赤」、範囲[>0.7、<1.0]の輝度。
(4)飽和粒子:輝度値が1(=飽和)に等しい画像ピクセルを含む。
f)ナノ粒子のロット間の違い、照明の変化、検出パラメータの変化などの場合、分類は手動または自動で適応することができる。
g)結果として、すべての可能性のある粒子の分類が得られる。この結果の表現は、特性評価ステップで生成された表に基づいており、分類結果の列が追加されている。1つの画像の分類ステップの結果を示す図については、表2を参照されたい。表1と比較して、右側に1つの列が追加され、対応する粒子が属する「クラス」を示している。この例では、クラスは整数を使用して示されている。
【0067】
【0068】
粒子カウント
ここで説明する方法は「デジタル」技法であり、バイオセンサの特定の領域にわたって標識バイオマーカからの光信号を積分する代わりに、検出された標識バイオマーカの実際の数がカウントされる。これにより、本方法はより堅牢になり、画像の取得パラメータ、例えば照明の輝度やスペクトル、およびバイオセンサ基板の変動、ナノ粒子の変動などから独立する。
【0069】
粒子カウントは次のように機能する。
a)各分類グループの粒子の数がカウントされる。
b)この「カウント」は、直接(1粒子、1カウント)または重み付け(例えば、グループ内の各粒子の輝度、または正しい分類の確率の推定などによる)することができる。
c)その結果、分類グループごとの粒子数が各画像について得られる。この結果は、例えば、画像ごとに1行、分類グループごとに1列の表として表すことができる。
【0070】
多重化の場合、多重化の場合、特定のグループはパラメータ空間で大幅に重複することが生じる可能性があり、例えば、異なる(輝度より高い)ナノ粒子のモノマーを伴う輝度がより低いナノ粒子のクラスタ(ダイマー、トリマーなど)である。この場合、計算された数値を補正する必要がある。
a)ナノ粒子の1つのタイプのみが存在する測定は、多重化で使用される各タイプのナノ粒子のモノマー、ダイマー、トリマーなどの間の比率を計算するために使用される。
b)これらの粒子について、それらのどの割合が、使用されるさらなるタイプのナノ粒子に属するパラメータ空間の領域に該当するかが計算される。
c)例えば、輝度が最も低いモノマーから始めて、それらの数を使用して、対応するダイマー、トリマーなどの数、および他のナノ粒子に対応するパラメータ空間の領域にそれらがいくつ出現するかを推定する。
d)これらの数値は、特定の領域でカウントされた粒子の数を補正するために使用される。つまり、クラスタの数が未補正のカウントから差し引かれる。
e)例えば、輝度を増すために、残りのナノ粒子に対して手順を繰り返す。
【0071】
変形例:ヒストグラム内の2種類(またはそれ以上)の粒子の密集した領域が実質的に重複している場合、それらの間に単純な境界を割り当てると、かなりの数の誤って分類された粒子が生じる可能性がある。これは別のアプローチで減らすことができる。適切な関数の合計を使用して、関心のある各粒子タイプ(ヒストグラムの「ピーク」)に少なくとも1つの成分を使用して、すべての画像から取得したヒストグラムまたは密度分布を当てはめる。次に、各画像のすべての粒子(または同じサンプルに対応するすべての粒子)について、この画像(またはサンプル)のヒストグラムに最もよく一致するこれらの成分の重みが決定され、これらの重みが前述の粒子カウントの代わりに使用される。
【0072】
品質管理
一般に測定の品質、特に各画像の品質を評価するためには、
・飽和が発生する画像の面積(つまり、正規化された輝度が1に近い領域)が計算され、
・画像の合焦の程度を表す値が導出される(例えば、個々のナノ粒子の平均測定サイズ)。
一般的な品質管理とは別に、これらの値は解析結果の計算をガイドするために使用することができ、以下のステップを参照されたい。
【0073】
全体的な解析結果
同じサンプルに対して複数の画像が取得された場合、同じサンプルのすべての画像から適切な統計値(例えば、画像からの値の平均または合計、トリミングされた平均、中央値、変位値など)が計算される。現在の実施態様では、40%の対称トリミングによるトリミング平均は、同じサンプル属するすべての画像から計算される。
【0074】
この値の計算では、画像の品質と相関するパラメータを使用して、サンプルの最も代表的な画像の選択をガイドすることができ、例えば、飽和が発生した領域が大きすぎる画像(例えば、飽和領域>10%)、または十分に焦点が合っていない画像(例えば、モノマーのFWHM>1μm)を省略することができる。
【0075】
各サンプルについて、サンプルに存在するバイオマーカの量と相関する値が計算される。多重化の場合、バイオマーカごとにそのような値が1つ計算される。この値の適切な選択は、標識として使用される個々のナノ粒子の数である。結果は、画像あたりの平均粒子数、粒子密度(例えば、mm2あたりの粒子数)、またはサンプル領域内の粒子の総数への外挿(通常、撮影された画像は領域全体をカバーしていないので外挿)として表すことができる。後者の表現が好ましいが、それは、解釈するのが最も直接的であるため、つまり、バイオセンサで使用される特定の(既知の)量の患者サンプルでは、この数のバイオマーカが検出されているからである。
【0076】
ユーザに提示される値は、例えば、標準偏差または変動係数(CV)に基づいて、不確実性の適切な尺度と共に提供される。これらの不確実性は、同じサンプルからの様々な画像間の変動から、および/または個々の画像内の変動から推定することができる。それらは、数値(N±ΔN粒子)として直接報告でき、および/または結果が信頼することができるかどうかを示すために使用することができる。
【0077】
サンプルの結果の不確実性が特定の制限よりも高い場合、解析ソフトウェアはこの発見をバイオセンシングプラットフォームにフィードバックすることができる。この場合、スキャナは対応するサンプルの追加の画像を取得して、一貫した結果が得られるかどうかを確認することができる。さらなるステップとして、解析結果はスキャン全体を直接ガイドすることができる。すなわち、特定の品質パラメータが満たされるか、あるいはサンプルごとに時間または画像数が上限に達するまで、各サンプルについて画像が取得される。
【0078】
各サンプルと各バイオマーカの全体的な結果は、定性的(バイオマーカの有無)または定量的(バイオマーカの濃度)のいずれかである。
【0079】
バイオセンシング用途のためのプラズモンナノ粒子の概念実証実験、多重化空間解析およびスペクトル解析:
2つのバイオマーカを検出するためのバイオセンサが準備された。2つのインターロイキンIL-6およびIL-10(BioLegend(著作権))のデュプレックスである。96ウェルのバイオセンサが使用され、8つの異なるバイオマーカ濃度(1fg/mlから1ng/ml、さらに陰性対照)がそれぞれ12回複製された。バイオセンサには、サイズが120mm x 80mmのSiベースの多誘電体基板を使用した。表面をシラン処理した後に、目的のバイオマーカ用の2つの捕捉抗体の1:1混合物に基づく自己組織化単分子膜を成長させた。取り外し可能な上部構造(GraceBio)により、96の長方形のウェル内のバイオセンサの分割が達成された。直径が100nmおよび80nm(NanoPartz)の球状の金ナノ粒子(GNP)が、それぞれIL-6およびIL-10検出抗体で機能化された。2種類の機能化GNPの1:1混合物を調製した。サンプルでは、緩衝液(PBST-25%FBS)を段階希釈したバイオマーカ(1:10)でスパイクし、最終濃度を1ng/mlから1fg/mlにし、陰性対照を加えた。ウェルごとに200μlの溶液を使用した。サンプルの分布を表3に示す。濃度はg/mlの単位で、「0」は陰性対照である。各濃度(行1~8)は12回複製される(列1~12)。
【0080】
【0081】
2つのインキュベーションステップ(最初にサンプルを使用し、次にGNPを使用)の後に、96ウェル上部構造を取り外した。バイオセンサ基板を数回洗浄し、最後に乾燥窒素でブロー乾燥した。
【0082】
この実験では、以下の構成要素を備えた本発明によるプラットフォームが使用された。
・暗視野顕微鏡対物レンズ50×/0.8
・高出力白色光LED光源を使用した暗視野EPI照明
・12メガピクセルのCMOS RGBセンサを搭載したカメラ
・JPEGファイル形式で保存する前に適用された画像の2×2ビニング
【0083】
バイオセンサの各ウェル内で13×13の画像を撮影した。合計16224枚の画像の取得時間は約100分、つまり1時間あたり約10,000枚であった。バイオセンサの均質性の詳細な解析を可能にするために、多数の画像が選択された。関心のある主要な結果である2つのバイオマーカの濃度については、はるかに少ない数の画像で十分であった。例えば、3×3の画像の取得は、約5:20分しか必要としなかったであろう。顕微鏡の対物レンズの倍率とカメラセンサのサイズにより、バイオセンサの208×284μm2の視野に対応する画像が得られる。ビニング後の1504×2056ピクセルの場合、画像のスケールはピクセルあたり0.138μmであった。
【0084】
画像の解析は、データ取得と並行して、プラットフォームの残りの部分を制御する同じコンピュータで実行された。1つのウェルの169枚すべての画像が取得されるたびに、コンピュータの11スレッドを使用してそれらを並行して解析した。画像のRGBフォーマットは独立した輝度と色の値を提供しないため、そのような正規化された値が最初に計算された。
・輝度=範囲0~1に正規化されたRGB値の合計。
・相対成分=各RGB成分をRGB値の合計で割ったもので、範囲0~1に正規化される。
【0085】
粒子の位置特定は、上記のように行われた。2つの2次元ガウス関数の合計で構成されるグレースケールパターンを使用して、個々の金ナノ粒子からの発光のドーナツ形状を一致させた。パターンのFWHM(半値全幅)は、0.7μmの見かけの粒子サイズに対応した。可能性のある粒子の許容基準として、パターンと画像の間の少なくとも0.6の相関を使用した。GNPの輝度の10%未満の可能性のある粒子でさえも特定するために、0.03の相対輝度という低いしきい値を設定した。
【0086】
各粒子の強度と発光スペクトルの平均値を取得するために、以前に計算された画像レイヤ(正規化された輝度、正規化された相対色成分)は、2.5ピクセルのシグマを有するガウスフィルタで平滑化され、これは、FWHMが約0.8μmの画像領域全体の平均に対応する、すなわち、一般的な見かけの粒子サイズに近くなる。フィルタ処理されたレイヤは、位置特定ステップで取得された位置で評価され、各粒子の特性のリストが得られた(画像ごとに1つのリスト)。
【0087】
前のステップで取得した特性から、正規化された輝度と1つの色成分が選択され、見つかったすべての粒子に基づいて2次元のヒストグラムが計算された。2つの最も顕著な「ピーク」は、80nm(M80)および100nm(M100)の粒子のモノマーに対応した。対応するダイマーも簡単に区別することができるが(D80、D100)、大きな凝集体は実質的に重複する(
図5を参照)。
【0088】
低い輝度値(<0.1)では、「ノイズ」として分類された粒子が見られる。発光スペクトルが異なるため(<0.33)、製造からの残留物を区別することができる。それらの輝度に応じて、2つのクラスに分類される(0.1~0.7低、>0.7高)。このヒストグラムに基づいて、分類ルールが定義される。分類ルールが特性評価ステップの結果に適用され、見つかった各粒子の既知の特性に粒子クラスが追加された。
【0089】
前のステップで取得した分類に基づいて、各クラス内の粒子が各画像でカウントされる。結果は、画像ごとに1行、粒子クラスごとに1列の表として視覚化することができる。粒子クラスごとの結果も「ヒートマップ」として視覚化される。すなわち、粒子番号は、バイオセンサ上の位置に似た軸を有するカラーコードまたはグレースケールの画像として表示される(
図6を参照)。
【0090】
通常、カウント統計を改善するために、ウェルごとに複数の画像が取得され、この実験では、13×13画像が取得された。ここで、ウェルの画像の外側の2つの行と列は、バイオセンサの非感度領域内にある。残りの9×9=81個の画像は感度領域内にあり、このウェルの主要な結果である平均値とその変動係数(CV)の計算に使用される。この実験では、81個の画像に40%のトリミングを適用した後に、平均粒子数を計算した。
【0091】
例えば、1種類のGNPのモノマーの数とサンプル中の対象のバイオマーカの濃度を関連付ける較正曲線が得られると、粒子カウントをバイオマーカの濃度に変換することができる。(表4を参照)。
【0092】
【0093】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語とその派生語(「含む」など)は、除外の意味で理解されるべきではないことに留意されたい。すなわち、これらの用語は、説明され定義されたものがさらなる要素、ステップなどを含み得る可能性を除外するものとして解釈されるべきではない。
【0094】
一方、本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に明らかに限定されず、(例えば、材料、寸法、構成要素、構成などの選択に関して)当業者によって特許請求の範囲で定義された本発明の一般的な範囲内であるとみなされ得るいかなる変形も包含する。