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特許7515288撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】撮像装置及びその制御方法、プログラム、記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240705BHJP
   H04N 23/76 20230101ALI20240705BHJP
   H04N 23/741 20230101ALI20240705BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N23/76
H04N23/741
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020071887
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021168460
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖浩
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄介
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-303010(JP,A)
【文献】特開2003-198879(JP,A)
【文献】特開2019-220944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/60
H04N 23/76
H04N 23/741
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体からの光を光電変換する光電変換手段と、
前記光電変換手段から出力される信号をそれぞれ増幅する複数の増幅手段と、
前記複数の増幅手段のそれぞれの出力信号をデジタル信号に変換する複数のAD変換手段と、
前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を設定する設定手段と、
前記複数のAD変換手段から出力される複数のデジタル信号を合成する合成手段と、
前記合成手段により合成された合成信号に、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率に応じた画像処理を行う画像処理手段と、
を備え
前記設定手段は、ノイズ優先モードと、ダイナミックレンジ優先モードとを含む撮影設定に応じて、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を設定し、前記ダイナミックレンジ優先モードでは、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を異なる値に設定することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画像処理手段は、前記合成信号に、シャープネス補正処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、前記合成信号の増幅倍率の異なる成分ごとに、前記シャープネス補正処理のパラメータを異ならせることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記ノイズ優先モードでは、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を同じ値に設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記設定手段は、さらにISO感度に応じて、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を設定することを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、前記合成信号の現像処理をさらに行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率をユーザが設定する操作手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
2つ以上の露出情報を検出する検出手段をさらに備え、前記設定手段は、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を、前記2つ以上の露出情報に基づいて設定することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記検出手段は、測光センサからの信号に基づく露出情報と、前記光電変換手段からの信号に基づく露出情報とを出力することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記設定手段は、前記測光センサからの信号に基づく露出情報と、前記光電変換手段からの信号に基づく露出情報との差分に基づいて、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を設定することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項11】
被写体からの光を光電変換する光電変換手段と、前記光電変換手段から出力される信号をそれぞれ増幅する複数の増幅手段と、前記複数の増幅手段のそれぞれの出力信号をデジタル信号に変換する複数のAD変換手段と、を備える撮像装置を制御する方法であって、
前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を設定する設定工程と、
前記複数のAD変換手段から出力される複数のデジタル信号を合成する合成工程と、
前記合成工程により合成された合成信号に、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率に応じた画像処理を行う画像処理工程と、
を有し、
前記設定工程では、ノイズ優先モードと、ダイナミックレンジ優先モードとを含む撮影設定に応じて、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を設定し、前記ダイナミックレンジ優先モードでは、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を異なる値に設定することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項12】
コンピュータを、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項13】
コンピュータを、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の撮像装置の各手段として機能させるためのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置における画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置において、S/N比の改善は重要である。一般的な撮像装置では、1つの光電変換素子に対して1つの増幅手段を有し、光電変換素子で生じた電気信号の増幅を行う。
【0003】
これに対し、S/N比の改善のため、光電変換素子で生じた電気信号を2つの増幅手段により増幅する撮像装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照)。
【0004】
このような撮像装置では、増幅した2つの電気信号、または増幅した2つの電気信号をAD(アナログデジタル)変換したデジタル値を輝度に応じて適切に選択して組み合わせ、1枚の画像を生成することでS/N比を改善することができる。また、被写体の輝度分布に応じて増幅率を決定する装置も知られている(特許文献3)。これらの装置から得られた信号は、2つの出力信号を合成した後に現像を行うことで、従来と比べてS/N比の良い画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-129397号公報
【文献】米国特許出願公開第2010/0177225号明細書
【文献】特開2019-220944号公報
【文献】特許第6087720号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】An 87dB Single ExpoSure Dynamic Range CMOS Image SenSor with a 3.0μm Triple ConverSion Gain Pixel
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、増幅率の決定後に、増幅率に合わせて撮影画像の現像設定を変更できない。特に、現像後の画像の鮮鋭性を向上させるシャープネスフィルタは、ノイズ感の強さと関係があるため、増幅率の変化に応じてパラメータを変化させることが望ましい。しかし、現状では、パラメータが一意に決まっているため、増幅率の設定とシャープネスパラメータの変化する輝度点が変わってしまい、輝度域ごとに補正の過不足が生じてしまう課題があった(特許文献4)。
【0008】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、2つ以上の画像信号を合成する場合において、画像補正処理の輝度域による過不足を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係わる撮像装置は、被写体からの光を光電変換する光電変換手段と、前記光電変換手段から出力される信号をそれぞれ増幅する複数の増幅手段と、前記複数の増幅手段のそれぞれの出力信号をデジタル信号に変換する複数のAD変換手段と、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を設定する設定手段と、前記複数のAD変換手段から出力される複数のデジタル信号を合成する合成手段と、前記合成手段により合成された合成信号に、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率に応じた画像処理を行う画像処理手段と、を備え、前記設定手段は、ノイズ優先モードと、ダイナミックレンジ優先モードとを含む撮影設定に応じて、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を設定し、前記ダイナミックレンジ優先モードでは、前記複数の増幅手段のそれぞれの増幅率を異なる値に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、2つ以上の画像信号を合成する場合において、画像補正処理の輝度域による過不足を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係わる撮像装置の構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態の撮像装置の動作の流れを示すフローチャート。
図3】第1の実施形態におけるシャープネス補正パラメータを示す図。
図4】第1の実施形態におけるシャープネス補正パラメータと輝度の対応関係を示す図。
図5】第2の実施形態に係わる撮像装置の構成を示すブロック図。
図6】第2の実施形態の撮像装置の動作の流れを示すフローチャート。
図7】第2の実施形態における撮影条件設定を決定する処理の流れを示すフローチャート。
図8】第2の実施形態におけるAGCセンサから得られる輝度、EV値、増幅率の関係を示す図。
図9】第2の実施形態におけるEV値差と増幅率差の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
[概要]
本発明の第1の実施形態の概要について説明する。第1の実施形態では、ユーザにより撮影条件を設定するとともに、撮像装置の動作モードをダイナミックレンジ優先とするか、低ノイズ優先とするかを指定しておく。その指示に基づいて撮像装置内のプログラマブルゲインアンプの増幅率を設定する。そして、設定された増幅率に基づき画像処理パラメータの更新を行い、撮像および現像を行う。以下、これらの処理の詳細について説明する。
【0014】
[第1の実施形態の装置構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる撮像装置150の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1において、撮像部100は、被写体の光学像を光電変換して画像信号を取得する。光学系101は、レンズ、絞りを含み、被写体の光学像を結像させる。光電変換素子102は、被写体の光学像を信号電荷に変換する。フローティングディフュージョン(FD)部103は、光電変換素子102から出力された信号電荷を信号電圧へ変換する。プログラマブルゲインアンプ(PGA)104は、信号電圧を増幅する。AD変換回路105は、PGA104で増幅した信号電圧をデジタル値へ変換する。なお、図1では、撮像部100は光電変換素子102を1つもつように図示されているが、実際には、撮像部100は、光電変換素子102を有する画素120が2次元状に複数配置された撮像素子を有する。
【0016】
本実施形態では、アナログ信号処理回路106は、PGA105およびAD変換回路105を含み、入力された信号電圧に対して信号処理を行う。また、アナログ信号処理回路106は、PGA104およびAD変換回路105を2組持ち、ぞれぞれの組に異なるゲイン設定が適用される。このため、PGA104とAD変換回路105は、それぞれ104A,105Aと、104B、105Bの2組の構成となる。これにより、FD部103からの出力データを2種類の増幅率で増幅してデジタルデータを得ることが可能である。
【0017】
デジタル信号処理回路107は、画像合成回路108、増幅率決定回路110、シャープネス補正回路111、シャープネス補正パラメータ決定回路120を含む。画像合成回路108は、撮像部100から出力される2種類の信号値を合成し、1つの画像信号を生成する。増幅率決定回路110は、画像合成時の2種類の信号の増幅率を決定する。この増幅率の決定動作は、ユーザの指示に基づく。この動作の詳細については後述する。シャープネス補正パラメータ制御回路120は、シャープネス補正回路111で適用するシャープネス補正パラメータを、ユーザの指示に基づき決定する。
【0018】
記録回路112は、信号処理された画像データを記録媒体113に記録する回路である。記録媒体113は、撮影した画像データを保存する記録媒体(例えば、SDカード、CFカード、HDD等)である。
【0019】
システム制御部117は、撮像装置150全体の動作を制御する。本実施形態では、シャープネス補正パラメータ制御部としての役割も持つ。ROM118は、システム制御部117で実行される制御方法を記載したプログラム、及び、制御パラメータや画像処理パラメータ等の各種データを記憶した不揮発性メモリである。RAM116は、システム制御部117が撮像装置150を制御する際のデータ処理などに使用する揮発性メモリである。
【0020】
撮像動作制御部114は、システム制御部117の制御命令に応じて、撮像部100の動作を制御する。増幅率制御回路115は、FD部103の静電容量と、PGA104の増幅率の設定を変更することにより、信号電圧の増幅率を制御する。操作部119は、撮像装置150の外部(例えば、ユーザや、レリーズ等の外部接続機器)からの指示を撮像装置150に入力するための操作部材を有する。
【0021】
[撮像装置の動作フロー]
本実施形態の撮像装置の動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
まず、ステップS201では、撮像装置150の撮影条件を設定する。例えば、シャッタースピード、ISO感度、絞りといった撮影条件や、ダイナミックレンジ優先モードにするか、低ノイズ優先モードにするかといった増幅率設定を、ユーザが操作部119を用いて設定する。
【0023】
次に、ステップS202では、システム制御部117は、ステップS201で設定された増幅率設定がダイナミックレンジ優先モードか否かを判定する。ダイナミックレンジ優先モードである場合には、ステップS205へ進み、そうでない場合にはステップS203へ進む。
【0024】
ステップS203では、システム制御部117は、増幅率制御回路115を用いて、FD部103およびPGA104A,104Bに対する増幅率設定を行う。このとき、ステップS203では、ノイズ優先モードに設定されているので、2つのPGA104A,104Bに対して、増幅率(ゲイン)の値を同じ値に設定する。
【0025】
ここで、増幅率設定について説明する。増幅率設定とは、PGA104に適用する増幅倍率を設定するとともに、それに伴ってFD部103に対して静電容量等のパラメータの値を設定することを意味する。例えば、PGA104に設定可能な増幅率の値が×1,×2,×4,×8であった場合、ダイナミックレンジ優先モードでは、2つのPGA104A,104Bにそれぞれ×1と×8を設定する。また、ノイズ優先モードでは、PGA104A,104Bにそれぞれ×2を設定する。また、それぞれのPGA104A,104Bの設定倍率に応じてFD部103の静電容量も変更する。
【0026】
ステップS204では、システム制御部117は、ROM118に記録されている画像処理設定を、ステップS203で設定した増幅率設定を参照して、増幅率決定回路110、およびシャープネス補正パラメータ制御回路120に適用する。増幅率決定回路110およびシャープネス補正パラメータ制御回路120は、ぞれぞれ本ステップで設定された増幅率設定に基づいて画像合成回路108へ増幅率設定を、シャープネス補正回路111へシャープネス補正パラメータを出力する。
【0027】
ここでは、画像処理設定として、特にシャープネス補正パラメータについて説明する。本実施形態におけるシャープネス補正パラメータは、図3のように、撮影設定毎、および増幅率毎に保存されている。これは、ダイナミックレンジ優先モードや、ノイズ優先モード等のモード設定の違いにより、同じISO感度設定でも用いるシャープネス補正パラメータが異なるためである。このシャープネス補正パラメータを、ステップS204において撮影設定の変更に合わせて変更する。
【0028】
一方、ダイナミックレンジ優先モードであるステップS205では、システム制御部117は、増幅率制御回路115を用いて、FD部103およびPGA104A,104Bに対する増幅率設定を行う。このとき、増幅率の設定値はノイズ優先モードであるステップS203とは異なり、2つのPGA104A,104Bに異なる値を設定する。たとえば、×1と×8を設定する。また、それぞれのPGA104A,104Bの設定倍率に応じてFD部103の静電容量も変更する。
【0029】
ステップS206では、システム制御部117は、ROM118に記録されている画像処理設定を、ステップS205で設定した増幅率設定を参照して、増幅率決定回路110、およびシャープネス補正パラメータ制御回路120に適用する。増幅率決定回路110およびシャープネス補正パラメータ制御回路120は、ぞれぞれ本ステップで設定された増幅率設定に基づいて画像合成回路108へ増幅率設定を、シャープネス補正回路111へシャープネス補正パラメータを出力する。
【0030】
ステップS207では、撮像装置の外部から撮影指示が入力された操作部119の命令に応じて、撮像動作制御部114は、撮像部100の撮影動作を開始させる。撮影動作は、まず、撮像動作制御部114が、光学系101のレンズと絞りを駆動して、被写体の光学像を光電変換素子102上に結像させる。光電変換素子102は、撮像動作制御部114の制御信号により露光時間を制御され、光学像を信号電荷に変換し、FD部103へ転送する。転送された信号電荷は、FD部103において信号電圧に変換された後、2つの経路に分配され、アナログ信号処理回路106へ入力される。入力された信号電圧は、アナログ信号処理回路106内のPGA104により増幅される。増幅された信号電圧は、AD変換回路105でデジタル信号値に変換され、デジタル信号処理回路107へ出力される。そして、画像合成回路108で2つのベイヤー画像の合成処理と現像処理を行った後に、シャープネス補正回路111でシャープネス補正処理を行う。画像合成処理、シャープネス補正処理については後述する。
【0031】
ステップS208では、シャープネス補正回路111からシャープネス補正処理が行われた画像が出力される。その画像は、記録回路112により、記録媒体113に適したデータフォーマットに変換され、記録媒体113へ記録される。
【0032】
[合成処理、および現像処理]
次に、ステップS207で行われる画像の合成処理、および現像処理について説明する。シャープネス補正処理を行うにあたり、まず、増幅率決定回路110は、PGA104A,104Bに設定されていた増幅率の情報を画像合成回路108に伝達する。画像合成回路108は、増幅率決定回路110から取得した処理対象となる2つの画像の増幅率(PGA104A,104Bに設定されていた増幅率)を参照して画素の選択を行い、1つの画像へと合成する。例えば、増幅率設定が×1と×8であって、最大画素値が255の画像であった場合、画素値255の約1/8となる画素値32までは増幅率×8の画素を用い、それ以上の画素値については増幅率×1の画素を用いる。こうしてできた合成信号に対して、現像処理後、シャープネス補正処理を行う。なお、現像処理については、公知の方法を用いればよい。
【0033】
[シャープネス補正処理]
次に、シャープネス補正処理について説明する。シャープネス補正処理パラメータは、図4に示すように、輝度域によって区分けされており、上記のように×1と×8の増幅率設定の場合、画素値32を境にパラメータが増幅倍率の異なる成分ごとに区分けされる。これを合成処理後の画像に対して適用することで、適切なシャープネス補正効果が得られる。
【0034】
このため、シャープネス補正パラメータは、ステップS203、S205の増幅率設定に基づいて選択する必要がある。このとき、シャープネス補正処理は、例えばアンシャープマスクを適用する。
【0035】
なお、本実施形態ではシャープネス補正パラメータは画素値32を境に区分けされていたが、本発明はそれに限定されるものではなく、例えば画素値22を境に10レベルの移行区間を設け、画素値22から32までの間の値を、増幅率×8と×1とのアルファブレンドによって生成してもよい。
【0036】
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザの指定した設定に基づいて、撮影設定や増幅率設定に応じた最適な画像処理が行われた画像を得ることが可能となる。
【0037】
(第2の実施形態)
[第2の実施形態の概要]
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態については第1の実施形態と異なる部分についてのみ、図5を用いて説明する。
【0038】
第2の実施形態では、撮像装置160は2つのAGC(Automatic Gain Control)モードを設定可能であり、これら2つのAGCはユーザの設定などに基づいて設定される。次に、設定されたAGCモードに基づいてAGC計算部122で露出情報となるEV値を、AGCセンサ121および撮像部100(2つの検出手段)の2つの入力からそれぞれ計算し、露出情報の計算結果に違いがあるか否かを確認する。違いがある場合には、2つあるPGA104A,104Bに設定する増幅率をEV値の違いに基づいてそれぞれ設定する。また、違いがない場合には増幅率を同じ値に設定する。そして、シャープネス補正パラメータも増幅率設定に基づき設定する。その後、撮影および合成を行う。これにより、撮影設定や増幅率設定に応じた最適な画像処理が行われた画像を得ることができる。
【0039】
図5において、AGCセンサ121(測光センサ)は、一般的な撮像素子と同様のCMOSセンサなどで構成され、撮影時のシーンの明るさがAGCセンサ121の画素値をもとに決定される。AGCセンサ121は、通常の撮影用の撮像素子に比べて少ない画素数を持つセンサで構成されるが、本実施形態を実現する場合には、画素数は多くてもかまわない。また、AGCセンサ121からは出力画素値として輝度データが出力される。AGC計算部122は、AGCセンサ121からの出力値、および撮像部100からの出力結果に基づいてオート露出の露出値(EV値)を計算する。この計算の結果に基づいて、2つのPGA104A,104Bの増幅率を決定する。
【0040】
[全体動作]
以下、撮像装置160の全体動作について図6のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
ステップS401では、まずオートゲインコントロール(AGC)のモードを2つ設定する。設定方法は、例えばユーザの指定による。AGCのモードには、例えば中央重点測光モード、評価測光モード、スポット測光モードなどがある。以下、本実施形態では、評価測光モードと中央重点測光モードを選択した場合の動作例について説明する。
【0042】
中央重点測光モードは、画像中央の明るさの重みを最も大きくし、周囲へ離れるほど、重みを小さくして画面内の明るさを計算するモードである。評価測光モードは、画面全体の明るさを平均して求めるモードである。本実施形態では、特にユーザからの指示により、AGCセンサ121で求めるAGCモードを評価測光モード、撮像部101で求めるAGCモードを中央重点測光モードとした場合の例について説明する。
【0043】
ステップS402では、システム制御部117は、AGCモードの設定に基づいて、PGA104の増幅率をプレ撮影とAGCセンサ121からのEV値を基に決定し、この増幅率設定に合わせたシャープネス補正パラメータを決定する。本実施形態でいうプレ撮影とは、ユーザからの撮影動作の指示の直前に行う動作のことで、例えばユーザが撮影ボタンを半押しした状態での撮影のことを指す。この動作の詳細については後述する。
【0044】
ステップS403では、撮像装置160の外部から撮影指示を入力された操作部119の命令に応じて、撮像動作制御部114が撮像部100の撮影動作を開始させる。撮影動作は、まず、撮像動作制御部114が、光学系101のレンズと絞りを駆動して、被写体の光学像を光電変換素子102上に結像させる。光電変換素子102は、撮像動作制御部114の制御信号により露光時間を制御され、光学像を信号電荷に変換し、FD部103へ転送する。転送された信号電荷は、FD部103において信号電圧に変換された後、2つの経路に分配され、アナログ信号処理回路106へ入力される。入力された信号電圧は、アナログ信号処理回路106内のPGA104A,104Bにより増幅される。増幅された信号電圧は、AD変換回路105A,105Bでデジタル値に変換され、デジタル信号処理回路107へ出力される。
【0045】
ステップS404では、画像合成回路108が合成処理と現像処理を行い、シャープネス補正回路111でシャープネス補正処理が行われた画像が出力される。その画像は、記録回路112により、記録媒体113に適したデータフォーマットに変換され、記録媒体113へ記録される。このときの合成方法、現像方法、シャープネス補正方法は、第1の実施形態の場合と同じである。
【0046】
[撮影条件の決定方法]
ここで、ステップS402での撮影条件の決定方法について、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0047】
ステップS501では、PGA104A,104Bに適用する2つの増幅率に対して、初期値を設定する。例えば、PGA104に設定可能な値が×1,×2,×4,×8であった場合、両方のPGA104A,104Bに×2を初期値として設定する。
【0048】
ステップS502では、AGC計算部122は、操作部119でレリーズボタンが半押しされて、AGCが有効にされたか否かを判定する。レリーズボタンが半押しされていなければそのまま待機し、レリーズボタンが半押しされていれば、ステップS503へ進む。
【0049】
ステップS503では、AGCセンサ121により得られた輝度データと、ステップS401で設定したAGCモードとに基づいてAGCのEV値を計算する。本実施形態では、AGCセンサ121では評価測光モードを選択しているので、AGCセンサ121での輝度データの平均値からEV値を計算する。このとき、EV値とAGCセンサ121の平均値との関係は図8に示されるようなテーブルなどで保持されており、これを参照することでEV値を求めることができる。
【0050】
ステップS504では、撮像部100から得られたRGBデータと、ステップS401で設定したAGCモードとに基づいてAGCのEV値を計算する。本実施形態では、撮像部100は中央重点測光モードを選択しているので、撮像部100から出力されたRGBデータから輝度データを計算し、この輝度データに重みを重畳し、平均値からEV値を計算する。なお、RGBデータから輝度データYを求めるには、下記の式(1)のような変換式を用いるとよいが、式(1)以外の式を適用してもかまわない。
【0051】
Y=0.2126×R+0.587×G+0.114×B …(1)
ここで、R,G,Bは撮像部100から得られるRGB値で、YはEV値の算出に用いる輝度データである。
【0052】
ステップS505では、システム制御部117は、ステップS503で求めたAGCセンサ121からのEV値の値と、ステップS504で撮像部100から求めたEV値の値とを比較し、その値に所定値以上の差があるか否かを判断する。所定値以上差がある場合にはステップS506へ進み、差がない場合にはステップS507へ進む。
【0053】
ステップS506では、ステップS505で求めたAGCセンサ121からのEV値の値と、撮像部100から求めたEV値の差分をもとに、増幅率差分を決定し、PGA104A,104Bのうちの一つの増幅率に、増幅率差分を重畳する。具体的には、増幅率差分とEV値の差分を図9で示すようなテーブルで保持しておき、参照した値を、PGA104の一つに重畳する。ただし、重畳した結果、PGA104で設定可能な増幅率を超えてしまう場合には、PGA104で設定可能な最大の増幅率値とする。
【0054】
ステップS507では、PGA104A,104Bで設定する2つの増幅率を同じ値に設定する。具体的には、ステップS503で求めたAGCセンサ121からのEV値の値をもとに、PGA104の増幅率を設定すればよい。
【0055】
ステップS508では、PGA104の2つ目の増幅率を、ステップS506またはステップS507で設定した値に基づいて設定する。
【0056】
ステップS509では、ステップS508までに決定した増幅率設定に基づき、シャープネス補正パラメータをROM118より読み込み、画像合成回路108に設定する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザの意図に基づいた主被写体のS/N比が高い画像を生成することができる。
【0058】
(他の実施形態)
また本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現できる。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現できる。
【0059】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0060】
100:撮像部、101:光学系、102:光電変換素子、104A,104B:PGA、106:アナログ信号処理回路、107:デジタル信号処理回路、108:画像合成回路、111:シャープネス補正回路、117:システム制御回路、120:撮像素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9