(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】手袋および手袋の編成方法
(51)【国際特許分類】
A41D 19/00 20060101AFI20240705BHJP
A41D 19/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A41D19/00 M
A41D19/04 A
(21)【出願番号】P 2020075048
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2022-04-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 憲夫
(72)【発明者】
【氏名】下野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】幸前 智也
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-183404(JP,A)
【文献】登録実用新案第3004233(JP,U)
【文献】特開昭58-136802(JP,A)
【文献】特開平07-003592(JP,A)
【文献】特開2013-151778(JP,A)
【文献】実公昭48-002271(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00
A41D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋編機を使用して、五本胴に続く手首部を折り返して二重にして手首終端部を五本胴終端部に編み合わして解れ止め編成を行う手袋の編成方法において、
前記手首部の編成を、
五本胴の編成に使用した編針の一部を休止させ、残余の編針を使って折り返し部に至るまでの手首前半部のコース編成を行うステップ、
折り返し部では手首前半部の編成に使用した編針の一部を休止させ、残余の編針を使って適宜数のコース編成を行うことで突起部を形成するステップ、
折り返し部以降の手首後半部を手首前半部の編成に使用した編針を使ってコース編成を行うステップ、
で行うことを特徴とする手袋の編成方法。
【請求項2】
前記突起部が手袋と異なる色の編糸で編成することを特徴とする請求項1に記載の手袋の編成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手袋編機で編成される手袋および手袋の編成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に手袋編機による手袋の編成は、通常、小指、薬指、中指、人差指の順に四指の指袋を編成し、続いて四本胴、親指指袋、五本胴を編成した後、手首部とそれに続く手首終端部を編成して終了する。各指袋から五本胴までの編成は、例えば綿などの主糸によって行われ、手首部の編成は、主糸で形成した編目にゴム糸をタックすることで行われる。また手首終端部では熱収縮性及び熱溶解性を有する縢り糸、所謂X糸と呼ばれる解れ止め用の糸を使って編成を行った後、手袋編機から手袋を払い落として完了する。
【0003】
特許文献1は、手首部を五本胴の編成に使用した編針の一部を休止させ、残余の編針を使って編成し、手首部を折り返して二重にして手首終端部を五本胴下端部に編み合わし、X糸で解れ止め編成を行うことを開示している。上記のように折り返して二重にする編み方はウェルトターン編成と呼ばれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたものでは、ウェルトターン編成で手首部分を単に二重にしているだけなので履き口となる折り返し部は手袋を装着時に掴み難いという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、手首部がウェルトターン編成された手袋であっても装着しやすい手袋およびその編成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、手袋編機を使用して、五本胴7に続く手首部8を折り返して二重にして手首終端部13を五本胴終端部7aに編み合わして解れ止め編成を行う手袋10の方法において、
前記手首部8の編成を、
五本胴7の編成に使用した編針の一部を休止させ、残余の編針を使って折り返し部11に至るまでの手首前半部8fのコース編成を行うステップ、
折り返し部11では手首前半部8fの編成に使用した編針の一部を休止させ、残余の編針を使って適宜数のコース編成を行うことで突起部12を形成するステップ、
折り返し部11以降の手首後半部8bを手首前半部8fの編成に使用した編針を使ってコース編成を行うステップ、
で行うことを特徴とする。
【0008】
好ましくは前記突起部12が手袋と異なる色の編糸23で編成することを特徴とする。
【0009】
また本発明の手袋は、五本胴7に続く手首部8を折り返し部11で折り返して二重にして手首終端部13を五本胴下端部7aに編み合わして解れ止めされる手袋10において、手首部8の折り返し部11から分岐して形成され、手首部8に編み合わされた突起部12を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の手袋および編成方法では、手袋の手首部分がウェルトターン編成で折り返された二重に形成されているだけでなく、手首部の折り返し部に突起部を形成するようにしたので突起部が手袋を装着する際の掴み部となり装着がしやすくなる。
【0011】
また突起部を形成することで手首の折り返し部を擬似的にオーバーロック処理された手袋のようにみせることができる。
【0012】
折り返し部に使用する編糸の色をオーバーロックで使用するミシン糸の色合いのものを使用することでより一層オーバーロック処理された手袋に似せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る手袋の各部を構成する示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る手袋の手首部以降の編成を示す図である。
【
図3】
図3-a~
図3-eは、手首部編成時の針床上での五本胴と手首部の編地の係止状体を示す側断面図を示し、
図3-fは、編機から外された手袋10の五本胴7と手首部8の側断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態>
以下、
図1乃至
図3に基づいて本発明の手袋およびその編成方法について説明する。
本発明の手袋10およびその編成方法は
図1に示すように小指、薬指、中指、人差指の指袋1,2,3,4、四本胴5、親指指袋6、五本胴7および手首部8で構成される。
【0015】
手袋は公知のように四指を指袋1,2,3,4の順に編成し、続いて四本胴5、親指指袋6、五本胴7を編成した後、手首部8を編成して終了する。
図2のS0は主糸20による五本胴7が編成される際の手袋編機の針床における編目の係止状態を示す。前針床の編針a~nに手袋10の例えば掌側の編目が、後針床の編針a~nに手袋10の甲側の編目がそれぞれ係止されている。手袋10の編成は掌側および甲側も同様の編成を行いながら周回状に編成されていくのでS1以降については説明の便宜を図るため掌側のみを説明する。
【0016】
S1は、主糸20による五本胴7の最終コース(五本胴終端部7a)の編成を編針a~nを使って行う。S2から手首部8の編成を開始する。
【0017】
S2では五本胴7の編成に使用した編針のうち編針c,f,i,lを休止させ、残余の編針a,b,d,e,g,h,j,k,m,nを使って主糸20によるニットとこれに続けて編針a,d,g,j,mを使ってゴム糸21によるタック編成を繰り返しながら所望長の手首前半部8fの編成を行う。手首部8の編成は休止とした編針c,f,i,lにS1で形成した編目を係止したまま行う。
図3-aは手首前半部8fの編成が数回行われた状態の針床上での各部の係止状態を示し、
図3-bは手首前半部8fの編成が終了した状態を示す。
【0018】
S3は、手首部8の折り返し部11の編成で、主糸20とは糸の異なる編糸22を使い、S2でゴム糸21による編成を行った編針を使って編成を行う。S3を適宜数繰り返し行うことで履き口となる折り返し部11に手首部8から分岐して突起部12となる部分を編成する(
図3-c)。突起部12の厚み、ボリューム感、固さなどはS3の繰り返し回数や度目値、編機のゲージや糸番手などに応じて適宜調整することがきる。このように突起部12を形成することで突起部12があたかもオーバーロックミシンで処理されたように見える。この突起部12は外観をオーバーロック処理された手袋に似せるだけでなく、突起部12の膨らみを掴めば手袋が嵌めやすい。編糸22を使わず主糸のままで折り返し部を編成してもよいが、主糸20と異なる色の編糸22を使えばより一層オーバーロック処理された手袋に似せることができる。
【0019】
S4は折り返し部11に続く手首後半部8bの編成を示し、S2と同様に主糸20によるニットとゴム糸21によるタック編成を繰り返し行う。この編成によりS3によって折り返し部で手首部8から分岐して形成された部分の終端コースを手首部8に編み合わされて突起部12が完成される。手首後半部分8bは手首前半部分8fと同じ程度の長さになるまで編成する(
図3-d)。
【0020】
S5は、手首終端部13の編成を示し、X糸23を使って編針aから編針nでニットコースを編成する。このS5の編成により形成される手首終端部13の編針c,f,i,lで形成される編目とS1の後、休止とした編針c,f,i,lに係止した状態の五本胴終端部7aの最終コースの編目が編み合わされることになる(
図3-e)。X糸23による編成は1乃至3回程度行い、手袋を編機から払い落とした後、X糸23を熱処理することで手首終端部の解れ止めが行われる。
【0021】
図3―fは、編機から外された手袋10の五本胴7と手首部8の側断面図を示す。手首部8は、
図1に示すように五本胴7の延長上に位置する形に延ばされた状態を示す。
【0022】
なお手袋10は、
図3-fに示す状態で使用しても良いが、裏返して五本胴終端部7aと手首終端部13の接合箇所を手袋の内側にして使用しても良い。また手首部8での主糸20、ゴム糸21による編成パターンはS2に限らず種々変更してもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 小指、2 薬指、3 中指、4 人差指、5 四本胴、6 親指、7 五本胴、7a 五本胴終端部、8 手首部、8f 手首前半部、8b 手首後半部、11 折り返し部、12 突起部、13 手首終端部、10 手袋、20 主糸、21 ゴム糸、22 編糸、23 X糸