(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】インプリント装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240705BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020080690
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 陽介
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178127(JP,A)
【文献】特開2018-190843(JP,A)
【文献】特開2004-063870(JP,A)
【文献】特開2016-086102(JP,A)
【文献】特開2019-009420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のショット領域の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記ショット領域の上の前記インプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、硬化後の前記インプリント材から前記型を分離する離型工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記インプリント処理を制御する第1制御部と、
前記供給工程において前記インプリント材の供給を行う供給部と、を有し、
前記供給部は、インプリント材を吐出する複数の吐出部と、前記第1制御部
により制御
され、前記複数の吐出部を制御する第2制御部と、を含み、
前記第2制御部は、前記第1制御部から転送された駆動波形データを一時的に記憶するバッファメモリを含み、
前記複数の吐出部のそれぞれは、吐出素子と、前記バッファメモリに記憶された前記駆動波形データに基づいて前記吐出素子を駆動するドライバとを含み、
前記第1制御部は、
第1ショット領域に対する前記供給工程の実行中に、前記第1ショット領域に対する前記供給工程で未使用の前記バッファメモリの記憶領域に、第2ショット領域に対する前記供給工程のための駆動波形データを転送する第1転送処理を行い、前記第1ショット領域に対する前記供給工程の完了後、前記第1ショット領域に対する前記離型工程が完了する前に、前記第1ショット領域に対する前記供給工程で使用された前記バッファメモリの記憶領域に、
前記第2ショット領域に対する前記供給工程のための駆動波形データを転送する
第2転送処理を行う
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記第1制御部は、
前記第1転送処理において前記バッファメモリに空き記憶領域がないために未転送分が生じた場合、
前記第2転送処理において該未転送分を転送する、ことを特徴とする請求項
1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記第2ショット領域は、前記第1ショット領域の次に前記インプリント処理が行われるショット領域であることを特徴とする請求項1
又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記第1制御部は、各ショット領域のインプリント材の供給パターン情報に基づいて、ショット領域毎、吐出部毎のインプリント材の吐出条件に対応する駆動波形番号の割り当てを行い、前記割り当てられた駆動波形番号に対応する駆動波形データを前記バッファメモリに転送することを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記基板を保持して移動する基板ステージを備え、
前記第1制御部は、ショット領域にインプリント材を供給するために、前記供給部の下で前記基板ステージをスキャン駆動させながら前記供給部からインプリント材を吐出させるよう前記基板ステージおよび前記供給部を制御するように構成され、
前記第1制御部は、前記スキャン駆動におけるスキャン方向毎、ショット領域毎、吐出部毎のインプリント材の吐出条件に対応する駆動波形番号の割り当てを行う、
ことを特徴とする請求項
4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記基板の複数のショット領域に対するインプリント順序および前記供給パターン情報の識別情報をユーザによる操作を介して設定する設定部を更に有することを特徴とする請求項
4または
5に記載のインプリント装置。
【請求項7】
基板のショット領域の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記ショット領域の上の前記インプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、硬化後の前記インプリント材から前記型を分離する離型工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記インプリント処理を制御する第1制御部と、
前記供給工程において前記インプリント材の供給を行う供給部と、を有し、
前記供給部は、インプリント材を吐出する複数の吐出部と、前記第1制御部
により制御
され、前記複数の吐出部を制御する第2制御部と、を含み、
前記第2制御部は、前記第1制御部から転送された駆動波形データを一時的に記憶するバッファメモリを含み、
前記複数の吐出部のそれぞれは、吐出素子と、前記バッファメモリに記憶された前記駆動波形データに基づいて前記吐出素子を駆動するドライバとを含み、
前記第1制御部は、第1ショット領域に対する前記供給工程の実行中に、前記第1ショット領域に対する前記供給工程で未使用の前記バッファメモリの記憶領域に、第2ショット領域に対する前記供給工程のための駆動波形データを転送する第1転送処理を行い、
前記第1制御部は、前記バッファメモリの前記記憶領域の更新回数が最小となるようにインプリント順序を決定することを特徴とするインプリント装置。
【請求項8】
基板のショット領域のインプリント材にパターンを形成するインプリント処理を行うインプリント装置であって、
前記インプリント処理を制御する第1制御部と、
前記インプリント材の供給を行う供給部と、を有し、
前記供給部は、インプリント材を吐出する吐出部と、前記吐出部を制御する第2制御部と、を含み、
前記第2制御部は、前記第1制御部から転送されメモリに記憶されたデータに基づいて前記吐出部を制御し、
前記第1制御部は、
第1ショット領域に対する前記インプリント処理の実行中に、前記第1ショット領域に対する前記インプリント処理の後に前記インプリント処理が行われる第2ショット領域に対する前記データを未使用の前記メモリの記憶領域に転送する第1転送処理を行い、前記第1ショット領域に対して前記インプリント材が供給された後、前記第1ショット領域に対する前記インプリント処理が完了する前に、前記
第2ショット領域に対して前記インプリント材が吐出される際に使用される前記データを、前記第1ショット領域に対して前記インプリント材が吐出された際に使用された前記データが記憶されていた前記メモリの記憶領域に転送する
第2転送処理を行う
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項9】
請求項1乃至
8のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板のインプリント材にパターンを形成する工程と、
前記工程において前記パターンが形成された基板の処理を行う工程と、
を含み、前記処理が行われた前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の製造用途において、基板の上のインプリント材に型を接触させた状態でインプリント材を硬化させてショット領域の上にパターンを形成するインプリント装置が実用化されている。 インプリント装置は、液体のインプリント材を吐出する吐出装置を備える。インプリント装置により基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造を有する物品を形成するため、吐出装置のノズルから吐出されるインプリント材の液滴の吐出速度や吐出量などには高い精度が求められる。インプリント材の液滴の吐出速度が目標速度からずれると、基板上の液滴の付着位置にずれが生じる。また、ノズルの吐出量が目標吐出量からずれると、基板上のインプリント材の吐出物の厚さにムラが生じ、形成されるパターンが所望の形状にならない可能性がある。
【0003】
そこで、吐出速度および吐出量が目標値からずれている場合には、ノズルに含まれる吐出エネルギー発生素子(圧電素子)に入力する駆動波形を補正することが考えられる。例えば特許文献1には、駆動信号を調整するための調整テーブルをノズル毎に有し、調整テーブルを参照してノズル毎に吐出調整を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インプリント材の供給を遅延なくリアルタイムに行うためには、インプリントの都度、吐出装置(インプリント材供給部)の吐出制御部(ドライバ基板)内のバッファメモリに駆動波形データを高速に転送する必要がある。しかし、駆動波形データには上記のような補正または調整が有効に行われうるだけの分解能が必要とされるため駆動波形データのデータ量が大きく、バッファメモリへの転送に長時間を要する。そのため、駆動波形データのバッファメモリへの転送時間がスループット向上のボトルネックになりうる。
【0006】
本発明は、インプリント材供給部へのデータ転送制御を改善することによるスループット向上に有利なインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、基板のショット領域の上にインプリント材を供給する供給工程と、前記ショット領域の上の前記インプリント材と型とを接触させる接触工程と、前記インプリント材と前記型とが接触した状態で前記インプリント材を硬化させる硬化工程と、硬化後の前記インプリント材から前記型を分離する離型工程とを含むインプリント処理を行うインプリント装置であって、前記インプリント処理を制御する第1制御部と、前記供給工程において前記インプリント材の供給を行う供給部と、を有し、前記供給部は、インプリント材を吐出する複数の吐出部と、前記第1制御部により制御され、前記複数の吐出部を制御する第2制御部と、を含み、前記第2制御部は、前記第1制御部から転送された駆動波形データを一時的に記憶するバッファメモリを含み、前記複数の吐出部のそれぞれは、吐出素子と、前記バッファメモリに記憶された前記駆動波形データに基づいて前記吐出素子を駆動するドライバとを含み、前記第1制御部は、第1ショット領域に対する前記供給工程の実行中に、前記第1ショット領域に対する前記供給工程で未使用の前記バッファメモリの記憶領域に、第2ショット領域に対する前記供給工程のための駆動波形データを転送する第1転送処理を行い、前記第1ショット領域に対する前記供給工程の完了後、前記第1ショット領域に対する前記離型工程が完了する前に、前記第1ショット領域に対する前記供給工程で使用された前記バッファメモリの記憶領域に、前記第2ショット領域に対する前記供給工程のための駆動波形データを転送する第2転送処理を行うことを特徴とするインプリント装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インプリント材供給部へのデータ転送制御を改善することによるスループット向上に有利なインプリント装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】ノズルから液滴が吐出される過程を説明する図。
【
図4】吐出素子に印加される駆動波形とノズル内の流体の表面位置の例を示す図。
【
図6】インプリント材の供給パターン情報の例を示す図。
【
図10】インプリント処理中にバッファメモリの波形記憶領域へ転送される駆動波形データの変遷を示す図。
【
図13】インプリント処理中にバッファメモリの波形記憶領域へ転送される駆動波形データの変遷を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
まず、インプリント装置の概要について説明する。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
【0012】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、インプリント材供給装置により、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0013】
図1(a)には、実施形態におけるインプリント装置100の構成が示されている。本明細書および図面においては、水平面をxy平面とするxyz座標系において方向が示される。一般には、被露光基板である基板103はその表面が水平面(xy平面)と平行になるように基板ステージ104の上に置かれる。よって以下では、基板103の表面に沿う平面内で互いに直交する方向をx軸およびy軸とし、x軸およびy軸に垂直な方向をz軸とする。また、以下では、xyz座標系におけるx軸、y軸、z軸にそれぞれ平行な方向をx方向、y方向、z方向といい、x軸周りの回転方向、y軸周りの回転方向、z軸周りの回転方向をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向という。
【0014】
インプリントヘッド101は、基板上のインプリント材に転写されるべき凹凸パターンを有する型102を保持する。インプリントヘッド101は、型102を主にz方向に駆動する型駆動機構を備えるが、型駆動機構は、その他の方向(x,y方向)の駆動およびθx,θy,θz方向の回転駆動の機構を更に備えていてもよい。
【0015】
基板ステージ104は、ステージ定盤113上で、x,y,z方向の並進およびθx,θy,θz方向の回転が可能である。基板ステージ104には、基板を保持する基板チャック108が設けられる。基板チャック108は、真空吸引または静電吸着により基板103を保持する。インプリント材供給部106は、基板ステージ104によって保持されている基板103の上にインプリント材を供給(ディスペンス)する。
【0016】
光源105は、インプリント材401を硬化させることができる波長を含んだ光を生成する。光源105からの光の照度は、照射時間および/または光源電圧により制御されうる。基板ステージ104の上に配置された照度検出器123は、光源105により照射された光の照度を検出する。照度検出器123で検出された照度に基づいて、照度低下量を計測し光源105で生成される光量を調整することができる。インプリント材401が単分子逐次光反応系である場合は、照度に対するインプリント材401の反応率は照度×時間に比例する。インプリント材401が光ラジカル重合反応系である場合は、照度に対するインプリント材401の反応率は√(照度)×時間に比例する。インプリント材401は、型102のパターンの凹部内に充填しやすい粘弾性にされる。インプリント材401は、光源105からの光が照射されることで、光硬化反応が促進され粘弾性が高くなる。
【0017】
基板高さ計測部109は、光学式の測距センサを含む。高さ計測部109は、基板上のインプリント材と型102との接触基準面に原点調整され、接触基準面に対する基板の被転写面の高さを計測する。型高さ計測部117は、光学式の測距センサを含む。型高さ計測部117は、接触基準面に原点調整され、接触基準面に対する型102のパターン面の高さを計測する。
【0018】
オンアクシスアライメントスコープ116は、型102に形成されているマークと、基板103上のマークおよび/または基板ステージ104上のマーク115との間の相対位置計測に使用される。オフアクシスアライメントスコープ107は、基板103上のマークと基板ステージ104上のマーク115との間の相対位置計測に使用される。
【0019】
観察カメラ114は、型102のパターン部をインプリントヘッド101側から撮影する。観察カメラ114により、基板103の上のインプリント材401が型102と基板103との間に充填される過程が観測されうる。観察カメラ114により撮影された画像は制御部C内の記憶部等の記憶装置へ保存されてもよい。
【0020】
インプリント装置100は、クリーンチャンバ118に収められる。気体供給部120は、インプリント装置100から発生した熱や塵などを除去することを目的として、インプリント装置100の内部に気流119を発生させる。気体供給部120は、インプリント材供給部106と基板103あるいは基板ステージ104との間に気流119を発生させることを目的として設けられていてもよい。気流119は、インプリント材供給部106から吐出されたインプリント材が基板103上へ均一に吐出されることを阻害しないように、気流119の方向は一定とされうる。
図1(a)では気流119がx方向に流れるように記載されているが、y方向に流れるように構成されていてもよい。気体供給部120は、ケミカルフィルタやパーティクルフィルタを含みうる。気体供給部120では、クリーンチャンバ118が設置される雰囲気の大気を取り込み、取り込んだ大気に僅かに含まれる化学物質や塵を、ケミカルフィルタやパーティクルフィルタで取り除くことができる。これにより、送風口(不図示)からクリーンチャンバ118内部の空間へ清浄な大気が供給される。気体回収部121は、クリーンチャンバ118内の気体を回収する。気体回収部121には真空ポンプを用いることができる。
【0021】
図1(b)には、インプリントヘッド101の構成が示されている。インプリントヘッド101は、型102を保持する型保持部110を有する。シールガラス112および型102の裏面と間に形成された閉空間は、配管111を介して不図示の圧力制御装置に接続されており、該閉空間内の気圧を増減することが可能である。圧力制御装置により該閉空間内の気圧をインプリント装置内の気圧(大気圧)より上昇させることにより型102を基板へ向かって凸形状に変形させることが可能である。ガス供給部125は、置換ガスを型102と基板103との間の空間内へ供給する。これにより該空間内の空気が置換ガスによって置換される。置換ガスは例えばヘリウムでありうる。ヘリウムを充填することにより、ヘリウムが型102から抜けることによる接触工程時の充填性が向上し、かつ、硬化工程時の酸素阻害によるインプリント材401の硬化不良の発生が抑制されうる。置換ガスの供給量は、例えば、型102のパターン部と基板103との隙間量と、置換ガスの供給量との間の複数通りの組み合わせによる試験によって決定される。
【0022】
制御部C
(第1制御部)は、インプリント装置100の各部を統括的に制御してインプリント処理の実行を管理する。制御部Cは、コンピュータ装置によって実現されうる。
図1(c)は、制御部Cの構成を示すブロック図である。制御部Cは、CPU151と、一時的なデータを記憶するとともにCPU151にワークエリアを提供するRAM152と、固定的なデータおよびプログラムを記憶しているROM153とを含みうる。制御部Cは更に、ハードディスクドライブ(HDD)154と、表示部155と、インタフェース156とを含みうる。HDD154には、インプリント処理を実行するための制御プログラム154a、および、インプリント材供給部106に与える駆動波形データ(後述)が記憶されている。表示部155は、各種情報を表示する。インタフェース156は、インプリント装置100の各部(インプリント材供給部106を含む)と接続するためのインタフェースである。制御部Cは、クリーンチャンバ118内に収容されていてもよいし、クリーンチャンバ118の外部に設置されていてもよい。
【0023】
実施形態におけるインプリント装置100の構成は概ね以上のとおりである。次に、インプリント装置100によるインプリント処理を説明する。
【0024】
インプリント処理は、基板103の上にインプリント材を供給する供給工程と、基板103上のインプリント材と型102とを接触させる接触工程と、インプリント材を硬化させる硬化工程と、インプリント材と型102とを分離する離型工程とを含みうる。具体的な動作例は、以下とおりである。この動作は、処理部Cが制御プログラムを実行することによって実施される。
【0025】
供給工程においては、インプリント材供給部106の下で基板ステージ104をX方向またはY方向にスキャン駆動させながらインプリント材供給部106からインプリント材が吐出される。これにより、基板103上のショット領域(インプリント領域)にインプリント材が供給(配置)される。本実施形態においては、基板1上の隣接する複数のショット領域に一括してインプリント材が供給される。
【0026】
次に、接触工程において、基板ステージ104がインプリントヘッド101の直下に移動する。ショット領域がインプリントヘッド101の直下に来たところで基板ステージ104は停止する。その後、インプリントヘッド101が型102を降下させることにより型102と基板103上のインプリント材との接触が開始される。型102が基板103上のインプリント材と接触することにより、型102のパターン部内にインプリント材が充填される。
【0027】
次に、硬化工程において、光源105からの光(紫外線)をショット領域に照射してインプリント材を硬化させる。その後、離型工程において、インプリントヘッド101が型102を上昇させることにより、硬化後のインプリント材から型102が分離される。この一連の動作をインプリント処理という。インプリント処理が、基板上の複数のショット領域に対して繰り返し行われる。全てのショット領域でインプリント処理を終えたら、基板103はインプリント装置100の外に搬出される。
【0028】
あるいは、隣接する複数のショット領域または基板の全ショット領域に対して予め供給工程を連続的に行い(マルチエリア先行供給)、その後、1ショット領域ごとに接触工程、硬化工程、離型工程を行うようにしてもよい。離型動作が完了した後、基板ステージ104は、次のショット領域がインプリントヘッド101の直下に来るように駆動する。
【0029】
図2には、インプリント材供給部106の構成例が示されている。インプリント材供給部106は、基板上にインプリント材(未硬化状態の樹脂)を吐出するノズルを含むディスペンサとして構成される。インプリント材供給部106は、例えば、ピエゾジェット方式やマイクロソレノイド方式などを採用し、基板上に1pL(ピコリットル)程度の微小な容積のインプリント材を供給することができる。なお、インプリント材供給部106が備えるノズルの数には限定はなく、1つ(シングルノズル)であってもよいし、100を超えるような多数のノズルを備えていてもよい。
【0030】
図2において、インプリント材供給部106は、複数の吐出部である複数のノズル207と、制御部Cの制御により複数のノズル207を制御する吐出制御部200
(第2制御部)とを備える。ノズル207は、圧電素子(吐出エネルギー発生素子)を含む吐出素子207bと、吐出素子207bを駆動するドライバ207aとを含みうる。吐出制御部200は、ドライバ207aを制御するドライバ基板(ドライバボード)として構成されうる。
【0031】
吐出制御部200は、処理部であるCPU201と、ROM202およびRAM203を含みうる。吐出制御部200は、インタフェース205を介して制御部Cと接続されている。吐出制御部200は更に、制御部Cから受信された駆動波形データを一時的に記憶するバッファメモリ204も備える。バッファメモリ204には、吐出部毎(ノズル毎)に複数の駆動波形データを記憶する記憶領域が確保されている。複数の駆動波形データのそれぞれは駆動波形番号によって識別されうる。どの駆動波形データを使用するかは供給条件により決定される。CPU201は、バッファメモリ204に記憶された駆動波形データをドライバ207aに供給する。ドライバ207aは、供給された駆動波形データに基づいて吐出素子207bを駆動する。
【0032】
図3(a)には、インプリント材供給部106の吐出口面を下から見た図が示されている。吐出口面には、複数のノズル207の吐出口が形成されている。複数のノズル207の吐出口は、例えば、x方向に1または複数列、y方向に複数列配列されている。装置によっては、y方向の配置される吐出口の数は、数千個に及びうる。複数の吐出口の配置間隔は、数μm~数十μmでありうる。複数の吐出口の配置間隔を狭くするほど、型102の凹パターン内へのインプリント材の充填に要する時間を短くできる。しかし、配置間隔が狭すぎると、吐出ヘッドの製造が困難になるし、隣り合う吐出口同士で吐出されたインプリント材の液滴が干渉しうる。隣り合う液滴と液滴が干渉すると、それらが相互に融合することによって液滴の位置が目標位置からずれてしまう場合がある。このような干渉を防止するため、
図3(a)に示されるように、隣り合う吐出口列がシフトした配列とされうる。
【0033】
図3(b)、(c)、(d)には、インプリント材供給部106のノズル207のXZ断面が示されている。
図3(b)は、ノズル207における吐出素子207b(圧電素子)が駆動される前の状態を示している。このとき、インプリント材と外気との界面を表す液面602は吐出口面601から上方にわずかに引き込まれた状態でありうる。
図3(c)は、圧電素子の駆動により、吐出口面601の上方にインプリント材が引き込まれた状態を示している。
図3(d)は、吐出素子207bの駆動により、ノズル207から液滴603が吐出された直後の状態を示している。
【0034】
図4(a)は、吐出素子207bに印加される駆動信号720の波形の例を示している。駆動信号720は、ノズル207内のインプリント材を液滴603として吐出させるべく吐出素子207bに印加される電圧信号であり、横軸は時間を、縦軸は電圧を示している。駆動信号720の基本的な波形は、
図4(a)に示されるような台形波である。この台形波の駆動信号720は、引き成分701、第1の待機成分702、押し成分703、電圧値を開始の値に戻す第2の待機成分704、戻し成分705の5成分から構成されている。
【0035】
駆動信号720の各成分は、T0からT5までの時間を5分割した時間領域に対応している。T0~T1の区間の駆動波形が引き成分701、T1~T2の区間の駆動波形が第1の待機成分702、T2~T3の区間の駆動波形が押し成分703となっている。さらに、T3~T4の区間の駆動波形が第2の待機成分704、T4~T5の区間の駆動波形が戻し成分705となっている。
【0036】
図4(b)は、
図4(a)に示した駆動信号720が吐出素子207bに印加されたことによって生じるノズル207内のインプリント材のz方向の液面602の位置を示す図である。ノズル207に含まれる吐出素子207bが駆動される前の
図3(b)に示されるような初期状態においては、液面602は基準位置706にある。そして、吐出素子207bが駆動されると、液面602は+z方向に引き込まれて引き込み位置707に達し、その後、-z方向の押し出し位置708まで押し出される。この押し出し位置708に至るまでの間に液滴603が形成される。従って、実際の液面の位置は
図4(b)に示す位置よりも-z方向側にある。しかし説明を簡略化するために、
図4(b)では、液滴603が形成される位置を示さずに液面602の代表的な位置を示している。T5~T6の区間は、液滴603がノズル207から吐出された後、ノズル207内のインプリント材401の液面602が初期状態における位置(
図4(b)における基準位置706)に戻るまでの時間を示している。なお、厳密には吐出素子207bに電圧を印加する時間に遅れて液面602は動くが、
図4(b)ではそのような遅れ成分は省略されている。
【0037】
図5には、制御部Cの表示部155に表示される、インプリント設定画面(設定部)の一例が示されている。インプリント順序表示部501には、基板のショットレイアウト情報に基づいて表示される複数のショット領域のそれぞれの上にインプリント順序が表示される。なお、
図5の例では、ショット領域(以下、単に「ショット」ともいう。)の識別番号(ショット番号)とインプリント順序を表す番号とは一致している。供給グループ表示部502には、マルチエリア先行供給を行う場合にインプリント材が一括して供給されるショット領域のグループの番号が表示される。ただし
図5の例では、マルチエリア先行供給のグループは設定されておらず(すなわち、1グループ1ショット領域の状態)、グループの番号はインプリント順序表示部501に表示されているインプリント順序と一致している。ショット情報入力部503には、ショット番号、インプリント順序、インプリント材供給パターン名(供給パターン情報の識別情報)、およびインプリント材供給グループ番号の対応関係が表示される。このうち、インプリント順序、インプリント材供給パターン名、およびインプリント材供給グループ番号の内容は、ユーザ操作によって変更されうる。
【0038】
図6(a)、(b)は、インプリント材の供給パターン情報の例を示す図である。供給パターンには、供給時のスキャン方向、ノズルを特定するノズル番号、各吐出タイミングでの供給条件番号が含まれる。スキャン方向については、往路スキャンが1、復路スキャンが2で表される。供給条件番号0は、そのタイミングにおける吐出はないことを表す。各供給条件番号に対する補正の内容が、
図6(b)に示されている。
図6(b)により、各供給条件番号に対応する吐出位置補正量、吐出量補正量が定義される。供給条件番号1に対応する吐出位置補正量および吐出量補正量は共に0であり、これは格子上の基準位置に基準吐出量でインプリント材が供給されることを示している。吐出量補正量は基準吐出量からの相対的な補正量として設定される。駆動波形は、吐出位置補正量、吐出量補正量に基づいて決定される。
【0039】
図7は、実施形態におけるインプリント処理のフローチャートである。この処理は制御部Cによって実行される。具体的には、例えばこのフローチャートに対応するプログラムは制御部Cの制御プログラム154aに含まれ、RAM152にロードされてCPU151によって実行される。なお、ここでは、基板103は5つのショット領域によって構成されており、インプリント順序はショット番号順、すなわち、第1ショット、第2ショット、第3ショット、第4ショット、第5ショットの順に設定されているものとする。また、ここでは、供給グループは設定されておらず(すなわち、マルチエリア先行供給は行わない)、ショット毎に供給工程、接触工程、硬化工程、および離型工程が行われる。また、吐出制御部200のバッファメモリ204には、1ノズルあたり6個の駆動波形データを記憶できる記憶領域(波形記憶領域)が確保されているものとする。
【0040】
S700で、制御部Cは、
図8(a)~(e)に示されるような第1~5ショットの供給パターン情報に基づいて、ショット領域毎、スキャン方向毎、ノズル毎の供給条件(吐出条件)(吐出位置補正量、吐出量補正量)に対応する駆動波形番号を割り当てる。
図9に、S700で得られる駆動波形番号の割り当て結果の例を示す。
図9において、まず、第1ショットについては、スキャン方向は往路スキャン1、復路スキャン2の2種類、供給条件番号は1,2の2種類あることから、計4種類の駆動波形に新規の駆動波形番号1~4が割り当てられる(S1101)。
【0041】
次に、第2ショットについては、スキャン方向が往路スキャン1、供給条件番号が2の組み合わせに対応する駆動波形には、新規に駆動波形番号5が割り当てられる(S1102)。また、スキャン方向が復路スキャン2、供給条件番号が2の組み合わせに対応する駆動波形には、新規に駆動波形番号6が割り当てられる。第2ショットにおいて、スキャン方向が往路スキャン1、供給条件番号が1の組み合わせに対応する駆動波形は、第1ショットにおけるスキャン方向が往路スキャン1、供給条件番号1の駆動波形と同じになるため、新規の駆動波形番号は割り当てない。スキャン方向が往路スキャン1、供給条件番号が1の組み合わせに対しては、吐出位置補正量が+1μmであるため、駆動波形は吐出速度が遅くなるように補正される。一方、第2ショットにおいて、スキャン方向が復路スキャン2、供給条件番号3の組み合わせに対しては、吐出位置補正量が-1μmであるため、駆動波形は吐出速度が遅くなるように補正される。結果的に、第2ショットにおいて、スキャン方向が復路スキャン2、供給条件番号3の組み合わせに対応する駆動波形は、第2ショットにおけるスキャン方向が往路スキャン1、供給条件番号1の駆動波形と同じになるため、新規の駆動波形番号は割り当てない。
【0042】
同様に、第3ショットにおいて、スキャン方向が往路スキャン1、供給条件番号2の組み合わせに対応する駆動波形には、新規に駆動波形番号7が割り当てられる(S1103)。また、スキャン方向が復路スキャン2、供給条件番号2の組み合わせに対応する駆動波形には、新規に駆動波形番号8が割り当てられる。さらに、第4ショットにおいて、スキャン方向が往路スキャン1、供給条件番号2の組み合わせに対応する駆動波形には、新規に駆動波形番号9が割り当てられる(S1104)。また、スキャン方向が復路スキャン2、供給条件番号2の組み合わせに対応する駆動波形には、新規に駆動波形番号10が割り当てられる。第5ショットについては、第2ショットと同じ供給パターン情報であり使用する駆動波形も同じであるため、新規の駆動波形番号は割り当てない。
【0043】
S702で、インプリント対象の基板がロードされる。具体的には、制御部Cは、不図示の基板搬送機構を制御してインプリント対象の基板をインプリント装置100内に搬送し、基板ステージ104に搭載する。S703では、制御部Cは、インプリント順序に従うショット番号を表す変数nを1に初期化する。S704では、制御部Cは、第1ショット領域の供給工程のための駆動波形データ(S701で割り当てられた駆動波形番号に対応する駆動波形データ)を吐出制御部200のバッファメモリ204に転送する。
【0044】
その後、S705で、第nショット(第1ショット領域)の供給工程が実施される。S706では、制御部Cは、S705の供給工程の実行中、第nショットの供給工程で未使用のバッファメモリ204の記憶領域に、第n+1ショット(第2ショット領域)の供給工程のための駆動波形データを転送する(第1転送処理)。ここで、第n+1ショットの供給工程のための駆動波形データとは、S700で割り当てられた、第n+1ショットの駆動波形番号に対応する駆動波形データである。なお、マルチエリア先行供給が設定されている場合には、第n+1ショット以降のマルチエリア先行供給分の駆動波形データが転送される。
【0045】
S707では、バッファメモリ204に記憶されている第nショットの供給工程のための駆動波形データを用いて第nショットの接触工程が実施される。続いて、S708で硬化工程が実施され、S709で離型工程が実施される。S706においては、バッファメモリ204に空き記憶領域の不足のために第n+1ショットの供給工程のための駆動波形データの全てを転送できない場合がある。そのような未転送分が生じる場合には、制御部Cは、S710で、第nショットの供給工程で使用されたバッファメモリ204の記憶領域に、第n+1ショットの当該未転送分の駆動波形データを転送する(第2転送処理)。なお、マルチエリア先行供給が設定されている場合には、第n+1ショット以降のマルチエリア先行供給分の駆動波形データが転送される。S710は、供給工程の完了後、S707~S709の接触工程、硬化工程、および離型工程が完了するまでの間に実行される。制御部Cは、第nショットに対する供給工程で未使用のバッファメモリ204の波形記憶領域の記憶容量と駆動波形データのデータ量とに基づいて、第1転送処理で未転送分が生じるかどうかを判定しうる。その後、制御部Cは、未転送分が生じると判定された場合に、第2転送処理を行うようにするとよい。
【0046】
S711では、制御部Cは、全てのショットについてインプリント処理が完了したか否かを判定する。まだ処理が済んでいないショットがある場合は、制御部CはS714で変数nを1増分した上で、S705に戻って処理を繰り返す。全てのショットについてインプリント処理が完了した場合、S712で、基板がアンロードされる。具体的には、制御部Cは、基板ステージ104に搭載されている基板の保持状態を解除し、基板搬送機構を制御してその基板をインプリント装置100の外に搬出する。S713では、制御部Cは、処理すべき次の基板があるかを判定する。処理すべき次の基板がある場合、S702に戻って次の基板について処理が繰り返される。基板毎に駆動波形番号の割り当てを調整する場合には、基板毎または必要に応じてS700に戻るようにしてもよい。予定されている全ての基板の処理が完了した場合、この処理は終了する。
【0047】
図10は、第1~第5ショットに対するインプリント処理中にバッファメモリ204の波形記憶領域へ転送される駆動波形データの変遷を示す。まず、第1ショットの供給工程(S705)の開始前に、第1ショットの供給工程のための駆動波形番号1~4(
図9参照)に対応する駆動波形データがそれぞれ、波形記憶領域1~4に転送される(S704)。
図10に示されるように、第1ショットの供給工程の実施中は波形記憶領域5および6は未使用である。そこで第1ショットの供給工程の実施中に第2ショットの供給工程で使用される駆動波形番号5および6に対応する駆動波形データがそれぞれ、波形記憶領域5および6に転送される(S706)。第2ショットの供給工程では波形記憶領域1~6の全てが使用されるため、第2ショットの供給工程完了までは波形記憶領域の更新はされない。
【0048】
次に、第2ショットの接触工程~離型工程(S707~S709)の実施中に、第3ショットの供給工程で使用される駆動波形番号7および8に対応する駆動波形データがバッファメモリ204へ転送される(S710)。ここで、駆動波形番号1、2、5、6に対応する駆動波形データは第2ショットでも使用されたため引き続き記憶領域に残され、駆動波形番号3および4が記憶されている波形記憶領域3および4に駆動波形番号7および8に対応する駆動波形データが転送される。その後、第3ショットの供給工程では波形記憶領域1~6の全てが使用されるため、第3ショットの供給工程完了までは波形記憶領域の更新はされない。
【0049】
次に、第3ショットの接触工程~離型工程(S707~S709)の実施中に、第4ショットの供給工程で使用される駆動波形番号3、9、10に対応する駆動波形データがバッファメモリ204へ転送される(S710)。ここで、駆動波形番号1に対応する駆動波形データは第3ショットでも使用されたため引き続き波形記憶領域に残され、その他の駆動波形が記憶されている波形記憶領域2~6が転送目的地となる。ここで、波形記憶領域5および6に設定されている駆動波形番号5および6に対応する駆動波形データは、第5ショットでも使用されるため、波形記憶領域に保持しておくことが望ましい。このため、波形記憶領域2~4が駆動波形番号3、9、10に対応する駆動波形データの転送目的地となる。
【0050】
第5ショットの供給工程で使用される駆動波形データは、第4ショットの供給工程時に、波形記憶領域1、5、6に保持されている。このため、第4ショットの供給工程時の波形記憶領域1~6は第5ショットの供給工程完了まで維持される。
【0051】
<第2実施形態>
図11は、第2実施形態におけるインプリント処理のフローチャートである。本実施形態では、基板内に4つのショットがあり、第1ショットおよび第3ショットに
図12(a)に示されるような供給パターン情報が設定され、第2ショットおよび第4ショットに
図12(b)に示されるような供給パターン情報が設定されているものとする。また、本実施形態ではバッファメモリ204には1ノズルあたり6個の駆動波形データを記憶できる波形記憶領域が確保されているものとする。
図11のフローチャートと
図7のフローチャートとの違いは、
図11のフローチャートにはS701が追加されている点である。その他は
図7のフローチャートと同じであるためそれらの説明は省略する。本実施形態では、12個の駆動波形が基板内で使用されることとし、S701では、駆動波形番号1~12が割り振られる。S701では、バッファメモリ204の波形記憶領域の更新回数が最小となるようにショット順(インプリント順序)を決定する。以下、S701について詳しく説明する。
【0052】
図13(a)は、インプリント処理により第1ショット、第2ショット、第3ショット、第4ショットの順番にインプリント処理(供給、接触、硬化、離型)を実施した際にバッファメモリ204の波形記憶領域へ転送される駆動波形データの変遷の例を示す。
図13(a)では、第1ショットの接触工程中、第2ショットの接触工程中、および第3ショットの接触工程中の3回のタイミングで、波形記憶領域の更新が行われる。更新処理に時間がかかるとその分生産性が低下することになる。
【0053】
S701では、制御部Cは、ノズル毎に、基板の複数のショットを、使用する駆動波形データが共通であるショットグループに分類する。ショットグループ間で駆動波形データを1つ切り替えるコストを1として、制御部Cは、このコストの総和が最小となるようにショットグループの処理順番を決定する。これは、巡回セールスマン問題として帰結され、計算コストを考慮し厳密解を求めずに局所探索法などで解を求めればよい。
【0054】
図13(b)は、決定されたショット順でソートした後の、バッファメモリ204の波形記憶領域へ転送される駆動波形データの変遷を示している。ここで、決定されたショット順は、第1ショット、第3ショット、第2ショット、第4ショットの順番になっている。
図13(b)では、第2ショットの接触工程中でのみ波形記憶領域1~6の更新が行われる。この例は、第1ショットの接触工程中、第2ショットの接触工程中、および第3ショットの接触工程中の3回のタイミングで波形記憶領域の更新が行われる
図13(a)の例よりもスループットの点で有利である。
【0055】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0056】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0057】
次に、物品製造方法について説明する。
図14の工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0058】
図14の工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図14の工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0059】
図14の工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0060】
図14の工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図14の工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0061】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
100:インプリント装置、101:インプリントヘッド、102:型、103:基板、104:基板ステージ、105:光源、106:インプリント材供給部、C:制御部