(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】天井支持治具
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
B66B7/00 K
(21)【出願番号】P 2020080881
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 規彦
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104989(JP,A)
【文献】特開平09-203213(JP,A)
【文献】特開平04-020484(JP,A)
【文献】特開2011-070677(JP,A)
【文献】特開2009-249119(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0263887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00 - 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターのかごの天井を切断するために該天井を側壁から浮かせて支持する天井支持治具であって、
互いに所定の隙間を設けて、前記側壁と前記天井との間にそれぞれ差し込まれる一対の支持片を備え、
前記支持片は、前記かごの内側において下方へ延出する内脚を有する、
天井支持治具。
【請求項2】
請求項1記載の天井支持治具であって、
前記内脚には、前記側壁に吸着する磁石が設けられる、
天井支持治具。
【請求項3】
請求項1記載の天井支持治具であって、
前記支持片は、前記かごの外側において下方へ延出する外脚を有し、
前記外脚は、前記内脚より短い、
天井支持治具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の天井支持治具であって、
前記支持片の天面部は、前記かごの内側に向かって傾斜して形成される、
天井支持治具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の天井支持治具であって、
前記一対の支持片の隙間の前記側壁を覆う保護シートをさらに備える、
天井支持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターのかごの天井を切断するために、天井を側壁から浮かせて支持する天井支持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターのかごの内装を変更する際に、かごの天井を取り替える場合がある。特許文献1には、かごの天井を取り替える際の足場装置が開示されている。
【0003】
ところで、かごの天井を取り替える際には、天井を取り外すために天井を分割する必要があり、天井を分割するために天井を切断する作業が行われる。天井の切断作業では、電動のこぎりを用いて天井の中央部に開口された救出口から天井の対向するそれぞれの両端部に向かって切断する。しかし、天井の端部付近に電動のこぎりが近付くと側壁を傷つけてしまうおそれがある。そこで、天井を切断する際には、切断する作業者とは別の作業者が天井を持ち上げた状態で切断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した切断作業では複数の作業者により行われる必要がある。また、作業者が天井を持ち上げた状態では天井の安定性が悪いため、電動のこぎりの歯折れ、キックバック等の作業性の課題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、1人の作業者によってエレベーターのかごの天井を切断することができ、切断作業の作業性を向上させることができる天井支持治具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る天井支持治具は、エレベーターのかごの天井を切断するために天井を側壁から浮かせて支持する天井支持治具であって、所定の間隔を設けて、側壁と天井との隙間にそれぞれ差し込まれる一対の支持片を備え、支持片は、かごの内側において下方へ延出する内脚を有する。
【0008】
本発明に係る天井支持治具において、内脚には、側壁に吸着する磁石が設けられることが好ましい。
【0009】
本発明に係る天井支持治具において、支持片は、かごの外側において下方へ延出する外脚を有し、外脚は、内脚より短いことが好ましい。
【0010】
本発明に係る天井支持治具において、支持片の天面部は、かごの内側に向かって傾斜して形成されることが好ましい。
【0011】
本発明に係る天井支持治具において、一対の支持片の隙間の側壁を覆う保護シートをさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る天井支持治具によれば、1人の作業者によってエレベーターのかごの天井を切断することができ、切断作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係わるエレベーターのかごの内部を示す斜視図である。
【
図2】実施形態の一例である天井支持治具を示す斜視図である。
【
図4】実施形態の他の一例である天井支持治具を示す斜視図である。
【
図6】実施形態の他の一例である天井支持治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号を付して説明する。また、本文中の説明においては、必要に応じてそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0015】
図1を用いて、実施形態に係わるエレベーターのかご10について説明する。
図1は、かご10の内部を示す斜視図である。
【0016】
エレベーターのかご10は、図示しない建物(ビル、マンション等)に設置される昇降路を上下方向に昇降し、各階に設置された乗り場の間を移動する装置である。かご10は、利用者及び荷物を乗せることが可能であって、中空の略直方体状に構成される。かご10は、略矩形状に構成されるかご床11と、かご床11の周囲に立設される側壁12と、かご床11に対向して設けられる天井13とを備える。
【0017】
側壁12は、表面が金属製のパネルによって構成される。かご10を構成する周囲の側壁12のうちの一つには、利用者及び荷物がかご10の内部空間に出入りするための出入口14が形成される。出入口14には、ドアユニット15のドア16が開閉可能に設置される。
【0018】
天井13は、かご床11と同様に略矩形状に構成されている。天井13の略中央には、略矩形状に開口された救出口17が形成される。救出口17は、緊急時にかご10内に閉じ込められた利用客を救出する開口部である。救出口17は、救出扉18によって塞がれている。
【0019】
エレベーターのリニューアルとしてかご10の内装を変更する際には、一例としてかご10の天井13を取り替える。かご10の天井13を取り替える際には、天井13を分割して取り外す必要があり、天井13を分割するために天井13を切断する作業が行われる。天井13の切断作業では、電動のこぎりを用いて天井13の救出口17から対向する天井13のそれぞれの両端部に向かって切断する。このとき、後述する天井支持治具20によって天井13を側壁12から浮かせて支持する。
【0020】
図2及び
図3を用いて、実施形態の一例である天井支持治具20について説明する。
図2は、天井支持治具20を示す斜視図である。
図3は、
図2のAA断面図である。
【0021】
天井支持治具20は、エレベーターのかご10の天井13を切断するために、天井13を側壁12から浮かせて支持する治具である。天井支持治具20によれば、1人の作業者によってエレベーターのかご10の天井13を切断することができ、詳細は後述するが切断作業の作業性を向上させることができる。
【0022】
図2に示すように、天井支持治具20は、互いに所定の隙間を設けて、側壁12と天井13との間にそれぞれ差し込まれる一対の支持片30と、一対の支持片30の隙間の側壁12を覆う保護シート40とを備える。支持片30と支持片30との隙間は、20~30cmであることが好ましい。
【0023】
以下では、かご10の内側から外側に向かう方向を奥行き方向とし、一対の支持片30が並ぶ方向を幅方向とし、鉛直方向であって奥行き方向及び幅方向と直交する方向を上下方向とする。
【0024】
図2及び
図3に示すように、支持片30は、側壁12に固定されると共に天井13を側壁12の上端面12Aから浮かせて支持する部材である。一対の支持片30によれば、天井13を側壁12の上端面12Aから浮かせて安定して支持することができる。支持片30は、例えばアルミ製であることが好ましいが、これに限定されない。支持片30は、かご10の側壁12と天井13との間に差し込まれる本体31と、かご10の内側において下方に延出する内脚32と、内脚32に設けられる磁石33と、作業者が把持する取っ手34とを有する。
【0025】
本体31は、側面視において(幅方向から見て)略矩形に形成される。本体31は、天井13の底面13Aに当接する天面部31Tと、天面部31Tを含む上端部が奥行き方向の内側に延出して形成される延出部31Eと、側壁12の上端面12Aに当接する底面部31Bとを含む。
【0026】
天面部31Tは、奥行き方向の内側に向かって傾斜して形成される。天面部31Tの傾斜角度は、本体31が側壁12と天井13との間に差し込まれて天井13が傾斜している状態の天井13の傾斜角度と略同一角度とする。これにより、天井13が傾斜している状態であっても、傾斜して形成される天面部31Tが天井13の底面13Aに当接して天井13を安定して支持することができる。
【0027】
天井13が傾斜している状態では、天井13が水平な状態よりも奥行き方向の長さが短い状態となる。天井13が傾斜して奥行き方向の長さが短い状態であっても、延出部31Eによって天井13を支持する奥行き方向の長さを延長しているため、天井13を天井支持治具20によって支持している際に天井13が落下することを防止できる。
【0028】
本体31の奥行き方向の大きさは、30~40cmであることが好ましい。これにより、側壁12の厚みが大きい(奥行き方向の長さが長い)かご10であっても安定して側壁12に支持片30を固定することができる。本体31の上下方向の大きさは、20~30cmであることが好ましい。これにより、天井13に照明装置が設けられ天井13が下側に凸となる形状であっても天井支持治具20によって天井13を側壁12から確実に浮かせることができる。
【0029】
底面部31Bは、平坦に形成される。底面部31Bの奥行き方向の内端側には、内脚32が形成される。底面部31Bの奥行き方向の外側は、側壁12の外側にはみ出していてもよい。
【0030】
内脚32は、かご10の内側において下方に延出すると共に側壁12の内側面に当接する部分である。内脚32の上下方向の大きさは、20~30cmであることが好ましい。内脚32の奥行き方向の外側には、磁石33が設けられる。
【0031】
磁石33は、側壁12の金属製の表面に吸着するものである。磁石33によれば、支持片30を側壁12に固定することができる。磁石33は、着脱式磁石であってもよい。着脱式磁石とは、例えばレバー操作によって磁石33の奥行き方向の移動を可能とし、側壁12に吸着した状態と、側壁12への吸着が解除された状態とを切り替えることができる機構を有する磁石である。
【0032】
取っ手34は、支持片30の内側面(本体31の内側面及び内脚32の内側面)に設けられる。取っ手34は、例えばアーチ形状であることが好ましい。取っ手34によれば、天井支持治具20を持ち運ぶ又は側壁12に固定する際に作業者が把持することができる。
【0033】
保護シート40は、上述したように天井支持治具20を側壁12に固定した際に、一対の支持片30の隙間の側壁12を覆うシートである。保護シート40によれば、天井支持治具20に電動のこぎりが近づく際に、電動のこぎりによる切りくずが側壁12にかかることを防止できる。また、万が一、電動のこぎりが側壁12に近付いた場合には、側壁12を保護することができる。
【0034】
保護シート40は、布製であって、例えばフェルトであることが好ましい。保護シート40の幅方向の両端部の上半分は、支持片30の本体31及び内脚32の内側面において、例えば固定ネジによって固定される。保護シート40の上下方向の長さは、支持片30の内脚32の上下方向の長さよりも長いことが好ましく、40~50cmであることが好ましい。
【0035】
天井支持治具20によれば、1人の作業者によってエレベーターのかご10の天井13を切断することができ、切断作業の作業性を向上させることができる。具体的には、支持片30が側壁12に固定されると共に天井13を支持するため、作業者が天井13を持ち上げて支持する必要がない。
【0036】
これにより、切断された天井13の片側が落下することがなく、天井13の切断作業の作業性を向上させることができる。また、一対の支持片30が天井13を安定して支持するため、電動のこぎりの歯折れ、キックバック等が生じることがない。
【0037】
また、天井支持治具20によれば、切断作業の作業性を向上させることができる。具体的には、一対の支持片30が天井13を安定して支持するため、電動のこぎりによってスムーズに天井13を切断することができる。
【0038】
さらに、天井支持治具20によれば、支持片30をかご10の内側から側壁12の上端部に固定する構成とすることで、作業者がかご10の内側から天井支持治具20を取り付けることができる。これにより、かご10の外側から天井支持治具20を取り付ける場合よりも作業性を向上することができる。
【0039】
また、天井支持治具20によれば、アルミ製のシンプルな形状である支持片30と、布製の保護シート40とから構成されるため、安価かつ手軽に製作することができる。
【0040】
本実施形態の天井支持治具20は、一対の支持片30と、保護シート40とを備える構成としたが、これに限定されない。例えば、天井支持治具20は、一対の支持片30のみから構成されてもよい。
【0041】
図4及び
図5を用いて、実施形態の他の一例である天井支持治具20について説明する。
図4は、天井支持治具20を示す斜視図である。
図5は、
図4のBB断面図である。
【0042】
図4に示すように、天井支持治具20は、互いに所定の隙間を設けて、側壁12と天井13との間にそれぞれ差し込まれる一対の支持片30と、一対の支持片30の隙間の側壁12を覆う保護シート40とを備える。保護シート40については、上述した保護シート40と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0043】
支持片30は、側壁12に設置されると共に天井13を支持する部材である。支持片30については、磁石を有さないこと、並びにかご10の外側において下方に延出する外脚35を有すること以外は、上述した支持片30と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0044】
外脚35は、かご10の外側において下方に延出する部分である。外脚35は、内脚32よりも短い。換言すれば、外脚35の上下方向の長さは、内脚32の上下方向の長さよりも短い。支持片30では、外脚35、本体31及び内脚32によって鉤形状が形成され、側壁12の上端部に係合することができる。
【0045】
支持片30に形成される鉤形状は、側壁12の上端部に隙間なく係合することが好ましいがこれに限定されない。例えば、
図4及び
図5に示すように、支持片30を側壁12に設置した際に外脚35と側壁12の外側面との間に隙間が生じてもよい。
【0046】
本例の天井支持治具20によれば、上述した天井支持治具20と比較して磁石を有さず、アルミ製のシンプルな形状である支持片30と、布製の保護シート40とから構成されるため、安価かつ手軽に製作することができる。また、本例の天井支持治具20によれば、外脚35が内脚32より短く形成されていることから、作業者がかご10の内側から天井支持治具20を取り付けることができる。
【0047】
図6を用いて、実施形態の他の一例である天井支持治具20について説明する。
図6は、天井支持治具20を示す斜視図である。
【0048】
図6に示すように、天井支持治具20は、互いに所定の隙間を設けて、側壁12と天井13との間にそれぞれ差し込まれる一対の支持片30と、一対の支持片30同士を連結する連結棒50とを備える。
【0049】
支持片30は、側壁12に固定されると共に天井13を支持する部材である。支持片30については、
図2及び
図3を用いて上述した支持片30と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0050】
連結棒50は、金属製であって、例えば円筒状に形成される。連結棒50によれば、支持片30を持ち運ぶ又は側壁12に固定する際に作業者が把持することができる。また、万が一、電動のこぎりが側壁12に近付いた場合には、側壁12を保護することができる。
【0051】
本例の天井支持治具20によれば、上述した天井支持治具20と比較して保護シート40を有さず、アルミ製のシンプルな形状である支持片30と、円筒状の連結棒50とからから構成されるため、安価かつ手軽に製作することができる。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態及びその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 天井支持治具、11 床、12 側壁、13 天井、14 出入口、15 ドアユニット、16 ドア、17 救出口、18 救出扉、20 天井支持治具、30 支持片、31 本体、31B 底面部、31B 底部、31E 延出部、31T 天面部、32 内脚、33 磁石、34 取っ手、35 外脚、40 保護シート、50 連結棒