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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】建築物用構造体
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20240705BHJP
   E04F 19/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
E04B9/00 H
E04B9/00 S
E04F19/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020082617
(22)【出願日】2020-05-08
(65)【公開番号】P2021177046
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】520160808
【氏名又は名称】チヨダ加工センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 輝哉
(72)【発明者】
【氏名】岡田 篤
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-111902(JP,A)
【文献】実開昭49-150822(JP,U)
【文献】実開昭49-113415(JP,U)
【文献】特開2019-163675(JP,A)
【文献】実開昭54-156910(JP,U)
【文献】実公平08-004947(JP,Y2)
【文献】実開昭54-093215(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00
E04F 19/02
E04F 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの板部分を備え、前記2つの板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体と、
前記2つの板部分を連結する少なくとも1つの連結部材と、を備え、
前記2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し、
前記連結部材は石膏ボードで形成され、直方体状の連結部材石膏ボード芯材部と、前記連結部材石膏ボード芯材部において角部を形成するように隣り合う2つの面のうちの一方の面に設けられた一側石膏ボード用原紙と、前記2つの面の他方の面に設けられた他側石膏ボード用原紙と、を有し、
前記連結部材は、前記一側石膏ボード用原紙を、折曲げ形状をなす前記2つの板部分のうちの一方の入隅側に設けられた前記石膏ボード用原紙に接着剤からなる接着層を介して接着するとともに、前記他側石膏ボード用原紙を、折曲げ形状をなす前記2つの板部分のうちの他方の入隅側に設けられた前記石膏ボード用原紙に接着剤からなる接着層を介して接着する、建築物用構造体。
【請求項2】
複数の板部分を備え、前記複数の板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体と、
前記複数の板部分のうちの2つの板部分を連結する少なくとも1つの連結部材と、を備え、
前記板部分複合体は、1枚の石膏ボードに複数の折曲げ溝を形成し、当該石膏ボードを前記複数の折曲げ溝を起点に折り曲げることで、内部空間を有するボックス形状をなすように形成され、
前記連結部材によって連結される前記2つの板部分は、互いに直接的には連結されない状態で前記内部空間を介して互いに向き合っており、
前記連結部材は1枚の石膏ボードから形成され、直方体状の連結部材石膏ボード芯材部と、前記連結部材石膏ボード芯材部において互いに対向するように位置する2つの面のうちの一方の面に設けられた一側石膏ボード用原紙と、前記2つの面のうちの他方に設けられた他側石膏ボード用原紙と、を有し、
前記連結部材は、前記一側石膏ボード用原紙を、互いに向き合う前記2つの板部分のうちの一方の前記石膏ボード用原紙に接着剤からなる接着層を介して且つ当該接着層とは異なる部分を介在させることなく接着するとともに、前記他側石膏ボード用原紙を、互いに向き合う前記2つの板部分のうちの他方の前記石膏ボード用原紙に接着剤からなる接着層を介して且つ当該接着層とは異なる部分を介在させることなく接着し、前記一側石膏ボード用原紙及び前記他側石膏ボード用原紙が設けられる面を除く他の全ての面を、前記板部分複合体に接着せず、
前記連結部材は、前記2つの板部分それぞれの外縁よりも内側の位置で、前記2つの板部分を連結している、建築物用構造体。
【請求項3】
複数の前記連結部材が、前記入隅が連続する方向に間隔を空けて設けられる、請求項1に記載の建築物用構造体。
【請求項4】
複数の前記連結部材が、互いに向き合う前記2つの板部分の間に間隔を空けて配列されている、請求項2に記載の建築物用構造体。
【請求項5】
間接照明用の照明器具ボックス、カーテンボックス、又はブラインドボックスである、請求項1乃至のいずれかに記載の建築物用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石膏ボードからなる少なくとも二つの板部分で特定形状を形成する建築物用構造体であって、間接照明用の照明器具ボックスや、カーテンボックス、ブラインドボックス、ニッチ等の建築物の一部を構成し得る建築物用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人はこの種の技術(ボックス構造)を特許文献1において以前提案している。特許文献1に開示されるボックス構造は、石膏ボードにV字形の折曲げ溝を複数設け、各折曲げ溝に接着剤を塗布し、石膏ボードを各折曲げ溝を起点に折り曲げて且つ接着することでボックス形状を形成している。
【0003】
一方、特許文献2は間接照明構造体のユニット部品を開示する。このユニット部品は、石膏ボードを複数箇所で折り曲げて庇状をなすボックス形状部と、ボックス形状部に形成された内部空間に一部を挿入して保持される金属製のブラケット部(底板補強材22及び取付補強材23)と、を備える。ブラケット部は、上記内部空間に挿入される部分と、上記内部空間から外部に延び出す部分とを有する。そしてブラケット部の延び出す部分を壁等に取り付けることで、ボックス形状部で間接照明の設置部分を構成する。
【0004】
このような特許文献1及び特許文献2に開示される構造体は、例えば工場等で予め作製された状態で現場に持ち込まれることで、作業員の作業効率及び建築物の仕上りを顕著に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3152953号公報
【文献】特許第5861903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されるボックス構造は、複数の板部分によって囲まれる内部空間を有し、この内部空間に野縁等の下地材を挿入することで下地材に取り付けられる。しかし、保管時や搬送時等の下地材に取り付けられる前の状態では内部空間に何も部材が介在しないため、内部空間に向けて外力が加わった場合に、板部分の凹みや折曲り部分の分離等の損傷が生じ易くなる虞がある。
【0007】
これに対し、特許文献2に開示されるユニット部品では、ボックス形状部の内部空間にブラケット部が挿入されるため、耐衝撃性能が向上する。
【0008】
しかしながら、特許文献2で用いられるブラケット部はボックス形状部の外面から貫通させたビス等によりボックス形状部に取り付けられるため、取り付け作業に手間がかかる。また、ボックス形状部の内部空間とブラケット部との寸法誤差が大きい場合には、ブラケット部が金属製であることで形状修正を行い難く、作製に手間がかかる虞がある。
【0009】
また、上記ブラケット部の材質は金属であるため石膏ボートとは異なる線膨張率を有し、温度上昇に伴う伸び量の違いに起因し、ボックス形状部に損傷が生じ易くなる虞がある。また、湿度が高い環境においてはブラケット部に錆が生じ易くなる虞もあり、耐候性が良好であるとは言い難い。さらに、石膏ボート製のボックス形状部と金属製のブラケット部とは形成材料が大きく異なり、またビス等で一体化されているため廃棄にも手間がかかる。
【0010】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであり、石膏ボードからなる少なくとも二つの板部分で特定形状を形成して建築物の一部を構成する構造体であって、作製に手間をかけることなく、耐衝撃性、耐久性及び耐候性を向上でき、さらには廃棄にも手間がかからない建築物用構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる建築物用構造体は、
少なくとも2つの板部分を備え、前記2つの板部分がそれぞれ石膏ボードから形成されて石膏ボード芯材部と前記石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する板部分複合体と、
前記2つの板部分を連結する少なくとも1つの連結部材と、を備え、
前記連結部材は、前記2つの板部分それぞれの前記石膏ボード用原紙に接着剤からなる接着層を介して接着され、
前記連結部材は、石膏ボード、石膏、木材、紙、珪酸カルシウム又は繊維強化セメントから形成される、建築物用構造体である。
【0012】
前記連結部材は石膏ボードから形成され、前記連結部材の石膏ボード用原紙と、前記2つの板部分それぞれの前記石膏ボード用原紙とが接着されてもよい。
【0013】
前記2つの板部分は折曲げ形状をなすように連結し、前記連結部材は、折曲げ形状をなす前記2つの板部分それぞれの入隅側に設けられた前記石膏ボード用原紙に接着されてもよい。
【0014】
前記入隅側に設けられた前記2つの板部分それぞれの前記石膏ボード用原紙は、酢酸ビニル樹脂系接着剤からなる紙間接着層で互いに接着されてもよい。
【0015】
前記2つの板部分それぞれの出隅側には他の石膏ボード用原紙が設けられ、当該他の石膏ボード用原紙は前記2つの板部分にわたり連続してもよい。
【0016】
前記2つの板部分は、互いに直接的には連結されない状態で空間を介して互いに向き合っており、前記連結部材は、前記2つの板部分それぞれにおける前記空間に面する側の表面に接着されてもよい。
【0017】
前記板部分複合体は、3つ以上の前記板部分を有し、3つ以上の前記板部分により囲まれる空間を形成してもよい。
【0018】
前記板部分複合体は、互いに連結されて折曲げ形状を形成する2つの前記板部分の組みと、互いに直接的には連結されない状態で空間を介して互いに向き合う2つの前記板部分の組みであって他の1つ以上の前記板部分によって間接的に連結される2つの前記板部分の組みと、を少なくとも有し、前記連結部材は、折曲げ形状をなす前記2つの板部分それぞれにおける入隅側の表面に接着される第1連結部材と、互いに直接的には連結されない状態で互いに向き合う2つの前記板部分それぞれにおける前記空間に面する側の表面に接着される第2連結部材と、を含んでもよい。
【0019】
前記接着層は、酢酸ビニル樹脂系接着剤からなるものでもよい。
【0020】
前記板部分の線膨張率と前記連結部材の線膨張率との差が、8(×10-6/K)以下でもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、石膏ボードからなる少なくとも二つの板部分で特定形状を形成して建築物の一部を構成する構造体であって、作製に手間をかけることなく、耐衝撃性、耐久性及び耐候性を向上でき、さらには廃棄にも手間がかからない建築物用構造体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施の形態にかかる建築物用構造体の断面図である。
図2】第1の実施の形態にかかる建築物用構造体の板部分複合体を形成する石膏ボードを示す図である。
図3図1の矢印IIIの方向に第1の実施の形態にかかる建築物用構造体を見た図である。
図4】第1の実施の形態にかかる建築物用構造体が建築物に組み込まれた状態を示す図である。
図5】本発明の第2の実施の形態にかかる建築物用構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施の形態について説明する。
【0024】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる建築物用構造体1の断面図である。図1に示す建築物用構造体1は一例として間接照明用の照明器具ボックスとして構成されている。
【0025】
建築物用構造体1は、石膏ボードから形成される複数の板部分11~15を有する板部分複合体10と、板部分複合体10を構成する複数の板部分11~15のうちの2つの板部分の組みの一つ又は複数において板部分間を連結する連結部材20と、を備えている。
【0026】
板部分複合体10は、複数の板部分として第1~第5板部分11~15を有する。板部分複合体10は照明器具ボックスの主要部分を構成する部材であり、ボックス形状(多角形)が形成されるように、第1板部分11と、第2板部分12と、第3板部分13と、第4板部分14と、第5板部分15とをこの順で連結させ、ボックス形状内部に各板部分(11、12、13、14、15)により囲まれる内部空間Sを形成している。
【0027】
詳細は図2を用いて後述するが、板部分複合体10は、1枚の石膏ボードBに、平面方向で同じ方向に延び且つ厚み方向で先細りとなる複数の折曲げ溝G1~G4を形成し、各折曲げ溝G1~G4を起点に石膏ボードBを複数箇所で折り曲げ、折曲げ溝G1~G4の対向する側面同士を接着することにより形成される。この際、板部分複合体10を構成する各板部分(11、12、13、14、15)は、折曲げ溝G1~G4によって区分けされ、各板部分(11、12、13、14、15)のうちの互いに隣り合う板部分(例えば第1板部分11と第2板部分12等)は両者間に位置する折曲げ溝の対向する側面同士を接着することにより連結されることになる。
【0028】
上述のように板部分複合体10が形成される場合、その各板部分(11、12、13、14、15)それぞれの厚み方向は、同一平面内に含まれることになる。したがって、本実施の形態における板部分複合体10を構成する各板部分(11、12、13、14、15)は、それぞれの厚み方向を同一平面内に含まれるように配置された状態になっている。図1に示される断面図は、詳しくは、各板部分(11、12、13、14、15)の厚み方向が含まれる面で建築物用構造体1を切断した場合の断面図である。
【0029】
各板部分(11、12、13、14、15)は、それぞれの厚み方向で見た際に矩形状に形成され、各板部分(11、12、13、14、15)のうちの互いに隣り合う板部分は、それぞれの四辺のうちの1つの辺同士を接着させることにより連結されている。
【0030】
各板部分(11、12、13、14、15)はそれぞれ石膏ボードBから形成されるため、石膏ボード芯材部と、石膏ボード芯材部の表面に接合された石膏ボード用原紙とを有する。具体的には、第1板部分11は、石膏ボード芯材部11Aと、石膏ボード芯材部11Aの厚み方向一方側(内部空間S側)の表面に接合された内側石膏ボード用原紙11Bと、石膏ボード芯材部11Aの厚み方向他方側(内部空間S側とは反対の側)の表面に接合された外側石膏ボード用原紙11Cと、を有する。
【0031】
同様に、第2板部分12は、石膏ボード芯材部12Aと、内側石膏ボード用原紙12Bと、外側石膏ボード用原紙12Cと、を有する。第3板部分13は、石膏ボード芯材部13Aと、内側石膏ボード用原紙13Bと、外側石膏ボード用原紙13Cと、を有する。第4板部分14は、石膏ボード芯材部14Aと、内側石膏ボード用原紙14Bと、外側石膏ボード用原紙14Cと、を有する。第5板部分15は、石膏ボード芯材部15Aと、内側石膏ボード用原紙15Bと、外側石膏ボード用原紙15Cと、を有する。なお、図1においては、説明の便宜のため各石膏ボード用原紙のハッチングの図示を省略している。
【0032】
各板部分(11、12、13、14、15)の四辺には石膏ボード用原紙が接合されておらず、各板部分(11、12、13、14、15)の四辺は石膏ボード芯材部によって形成されることになる。したがって、各板部分(11、12、13、14、15)のうちの互いに隣り合う板部分は、それぞれの石膏ボード芯材部で形成される四辺のうちの1つの辺同士を接着させている。
【0033】
ここで本実施の形態においては、上記互いに隣り合う板部分において互いに連結される辺同士がシリコーン変性ポリマー系弾性接着剤からなる接着層を介して接着されている。この場合、シリコーン変性ポリマー系弾性接着剤が結合強度の観点で石膏ボード、詳しくは石膏ボード芯材部と相性が良いことで、各板部分(11、12、13、14、15)のうちの互いに隣り合う板部分の間の結合強度を向上できる。また、シリコーン変性ポリマー系弾性接着剤からなる接着層は弾性部材として機能し得ることで、折曲げ形状をなす板部間の境界に適度な柔軟性が付与され、耐久性も向上させ得る。
【0034】
また上述したように板部分複合体10は、1枚の石膏ボードBに形成された厚み方向で先細りとなる複数の折曲げ溝G1~G4を起点に石膏ボードBを複数箇所で折り曲げ、折曲げ溝G1~G4の対向する側面同士を接着することにより形成されている。ここで、折曲げ溝G1~G4は、石膏ボードBの厚み方向一方側から他方側に向けて又はその反対に向けて先細りとなるように形成されるため、各折曲げ溝G1~G4の側面は石膏ボードBの厚み方向に対して傾斜して延びる。ここで各折曲げ溝G1~G4の側面は、板部分複合体10の板部分(11、12、13、14、15)のいずれかの接着部分である辺を形成する。したがって、各板部分(11、12、13、14、15)のうちの互いに隣り合う板部分はそれぞれの厚み方向に対して傾斜した辺同士を互いに突き合わせた状態で接着されている。
【0035】
以下、図2を参照しつつ板部分複合体10の作製手順を説明する。図2は板部分複合体10を形成する石膏ボードBを示す図であり、ボックス形状に形成される前の平板状の石膏ボードBを示す。石膏ボードBは、石膏ボード芯材部BAと、内側石膏ボード用原紙BBと、外側石膏ボード用原紙BCと、を有する。
【0036】
石膏ボードBには基本的には内側及び外側の概念はないが、この例では、内側石膏ボード用原紙BBが板部分(11、12、13、14、15)の各内側石膏ボード用原紙を構成し、外側石膏ボード用原紙BCが板部分(11、12、13、14、15)の各外側石膏ボード用原紙を構成する。よって、本実施の形態では、説明の便宜のために石膏ボードBの表裏の石膏ボード用原紙の名称を「内側石膏ボード用原紙BB」及び「外側石膏ボード用原紙BC」と称している。
【0037】
本実施の形態では、先ず、石膏ボードBに、内側石膏ボード用原紙BBから外側石膏ボード用原紙BCに向けて先細りとなる第1折曲げ溝G1、第2折曲げ溝G2及び第3折曲げ溝G3と、外側石膏ボード用原紙BCから内側石膏ボード用原紙BBに向けて先細りとなる第4折曲げ溝G4とを形成する。これにより、折曲げ溝G1~G4によって区分けされた第1板部分11~第5板部分15が形成される。
【0038】
また、各折曲げ溝G1~G4を形成する際、本実施の形態では第1折曲げ溝G1、第2折曲げ溝G2及び第3折曲げ溝G3は、内側石膏ボード用原紙BBを分断するが、外側石膏ボード用原紙BCには到達せず、外側石膏ボード用原紙BCは分断しない状態にする。一方、第4折曲げ溝G4は、外側石膏ボード用原紙BCを分断するが、内側石膏ボード用原紙BBには到達せず、内側石膏ボード用原紙BBは分断しない状態にする。これにより、第1板部分11、第2板部分12、第3板部分13及び第4板部分14は外側石膏ボード用原紙BCによって繋がった状態になり、第4板部分14及び第5板部分15は内側石膏ボード用原紙BBによって繋がった状態になる。
【0039】
次いで、各折曲げ溝G1~G4にシリコーン変性ポリマー系弾性接着剤が塗布される。その後、折曲げ溝G1~G4を起点に石膏ボードBを複数箇所で折り曲げ、折曲げ溝G1~G4の対向する側面同士をシリコーン変性ポリマー系弾性接着剤で接着することにより、隣り合う板部分が折曲り形状をなすように連結し、そして図1に示すボックス形状の板部分複合体10が形成される。
【0040】
ここで、本実施の形態では上述したように第1折曲げ溝G1、第2折曲げ溝G2及び第3折曲げ溝G3は、内側石膏ボード用原紙BBを分断するが、外側石膏ボード用原紙BCには到達せず、外側石膏ボード用原紙BCは分断しない。一方、第4折曲げ溝G4は、外側石膏ボード用原紙BCを分断するが、内側石膏ボード用原紙BBには到達せず、内側石膏ボード用原紙BBは分断しない。これにより、折曲り形状をなすように連結する第1板部分11と第2板部分12との間では、図1に示すように凸となる角部側、つまり出隅側の外側石膏ボード用原紙11Cと外側石膏ボード用原紙12Cとが分断することなく、2つの板部分11,12にわたり連続する。一方、凹となる角部側、つまり入隅側の内側石膏ボード用原紙11Bと内側石膏ボード用原紙12Bは分断されるが、これらは酢酸ビニル樹脂系接着剤からなる紙間接着層で互いに接着される。紙間接着層は第1板部分11と第2板部分12とが形成する入隅に沿って延びるように形成される。
【0041】
同様に、第2板部分12と第3板部分13との間では、出隅側の外側石膏ボード用原紙12Cと外側石膏ボード用原紙13Cとが分断することなく、2つの板部分12,13にわたり連続する。一方、入隅側の内側石膏ボード用原紙12Bと内側石膏ボード用原紙13Bは分断されるが、これらは酢酸ビニル樹脂系接着剤からなる紙間接着層で互いに接着される。また第3板部分13と第4板部分14との間では、出隅側の外側石膏ボード用原紙13Cと外側石膏ボード用原紙14Cとが分断することなく、2つの板部分13,14にわたり連続する。一方、入隅側の内側石膏ボード用原紙13Bと内側石膏ボード用原紙14Bは分断されるが、これらは酢酸ビニル樹脂系接着剤からなる紙間接着層で互いに接着される。
【0042】
逆に、第4板部分14と第5板部分15との間では、出隅側の内側石膏ボード用原紙14Bと内側石膏ボード用原紙15Bとが分断することなく、2つの板部分14,15にわたり連続する。一方、入隅側の外側石膏ボード用原紙14Cと外側石膏ボード用原紙15Cは分断されるが、これらは酢酸ビニル樹脂系接着剤からなる紙間接着層で互いに接着される。
【0043】
上述のように分断された石膏ボード用原紙間を酢酸ビニル樹脂系接着剤からなる紙間接着層で接着する場合、酢酸ビニル樹脂系接着剤が結合強度の観点で石膏ボード用原紙と相性が良いことで、板部分間の結合強度を向上できる。
【0044】
次に、連結部材20について説明する。本実施の形態における連結部材20には、折曲げ形状をなすように連結した第4板部分14及び第5板部分15それぞれにおいて入隅側に設けられた外側石膏ボード用原紙14C及び外側石膏ボード用原紙115Cに接着される第1連結部材21と、互いに直接的には連結されない状態で内部空間Sを介して互いに向き合う第1板部分11及び第5板部分15それぞれにおいて内部空間S側に設けられた内側石膏ボード用原紙11B及び内側石膏ボード用原紙15Bに接着される第2連結部材22と、互いに直接的には連結されない状態で内部空間Sを介して互いに向き合う第1板部分11及び第3板部分13それぞれにおいて内部空間S側に設けられた内側石膏ボード用原紙11B及び内側石膏ボード用原紙13Bに接着される第3連結部材23と、が含まれている。
【0045】
第1連結部材21は石膏ボードから形成され、一例として直方体状の石膏ボード芯材部21Aと、石膏ボード芯材部21Aにおいて角部を形成するように隣り合う2つの面のそれぞれに設けられた一側石膏ボード用原紙21B及び他側石膏ボード用原紙21Cと、を有する。図1には第1連結部材21と第4板部分14及び第5板部分15との連結部分の拡大図が示されている。第1連結部材21は、その一側石膏ボード用原紙21Bを第4板部分14の外側石膏ボード用原紙14Cに接着層30を介して接着するとともに、その他側石膏ボード用原紙21Cを第5板部分15の外側石膏ボード用原紙14Cに接着層30を介して接着している。
【0046】
接着層30は酢酸ビニル樹脂系接着剤を硬化してなる。酢酸ビニル樹脂系接着剤は結合強度の観点で石膏ボード用原紙と相性が良いため、酢酸ビニル樹脂系接着剤を用いる場合には、第1連結部材21と板部分14,15との間の結合強度を向上できる。また、図3図1の矢印IIIの方向に建築物用構造体1を見た図である。図3に示すように、第1連結部材21は第4板部分14と第5板部分15とが形成する入隅が連続する方向に、言い換えると第4板部分14と第5板部分15との境界が各板部分の平面方向に平行に延びる方向に複数(本例では2つ)設けられている。
【0047】
第2連結部材22も石膏ボードから形成され、一例として直方体状の石膏ボード芯材部22Aと、石膏ボード芯材部22Aにおいて互いに対向するように位置する2つの面のそれぞれに設けられた一側石膏ボード用原紙22B及び他側石膏ボード用原紙22Cと、を有する。第2連結部材22は、その一側石膏ボード用原紙22Bを第5板部分15の内側石膏ボード用原紙15Bに接着層30(図示省略)を介して接着するとともに、その他側石膏ボード用原紙22Cを第1板部分11の内側石膏ボード用原紙11Bに接着層30(図示省略)を介して接着している。図3に示すように、第2連結部材22は第1板部分11と第5板部分15との間に複数、本例では4つ設けられている。第2連結部材22は、複数の第1連結部材21が並ぶ方向に配列されている。
【0048】
第3連結部材23も石膏ボードから形成され、一例として直方体状(六面体)の石膏ボード芯材部23Aと、石膏ボード芯材部23Aにおいて互いに対向するように位置する2つの面のそれぞれに設けられた一側石膏ボード用原紙23B及び他側石膏ボード用原紙23Cと、を有する。第3連結部材23は、その一側石膏ボード用原紙23Bを第3板部分13の内側石膏ボード用原紙13Bに接着層30を介して接着するとともに、その他側石膏ボード用原紙23Cを第1板部分11の内側石膏ボード用原紙11Bに接着層30を介して接着している。なお、第1板部分11と第3板部分13とは非平行であり、一側石膏ボード用原紙23Bと他側石膏ボード用原紙23Cも非平行である。
【0049】
上述のように各連結部材21~23は石膏ボードからなり、その石膏ボード用原紙を対応する板部分の石膏ボード用原紙に酢酸ビニル樹脂系接着剤からなる接着層30を介して連結する。酢酸ビニル樹脂系接着剤は結合強度の観点で石膏ボード用原紙と相性が良いことで、連結部材と板部分との結合強度を向上できる。さらには、連結部材21~23と、板部分との材質が同じであることで、温度上昇に伴う伸び量の違いに起因する損傷も抑制され得る。ただし、連結部材21~23の材質(形成材料)は石膏ボードに限られるものではなく、例えば単なる石膏、木材、紙、珪酸カルシウム、繊維強化セメント等でもよい。また線膨張率の差の観点では、板部分(11、12、13、14、15)の線膨張率と連結部材21~23の線膨張率との差が、8(×10-6/K)以下であることが好ましく、4(×10-6/K)以下であることがより好ましく、2(×10-6/K)以下であることが更に好ましく、理想的には差が無いことが望ましい。
石膏の線膨張率は一般に、45℃以下の環境で、2~10(×10-6/K)の値となり得る。本件発明者は、板部分(11、12、13、14、15)の線膨張率と連結部材21~23の線膨張率との差が、8(×10-6/K)以下であれば、線膨張率差に起因する板部分の損傷を効果的に回避できることを見出している。なお、線膨張率は、JIS A 1325:1995に準拠して特定できる。この特定においては、45℃以下の範囲で測定対象物の測定を行うようにする。
【0050】
図4は、建築物用構造体1が建築物に組み込まれた状態を示す図である。建築物用構造体1は、板部分複合体10に形成された内部空間Sに対し天井材40に支持されたMバー等の下地材41を挿入することで下地材41に支持される。このような建築物用構造体1によれば、板部分複合体10が予め所望の特定形状(照明器具ボックス形状等)に形成されているため、建築物の一部を形成する際の作業効率及び仕上がりを向上できる。なお、下地材41は、隣り合う第2連結部材22の間に通されている。すなわち、隣り合う第2連結部材22は挿入される下地材41の挿入スペースを規定している。
【0051】
そして以上に説明した本実施の形態にかかる建築物用構造体1では、板部分複合体10における石膏ボードからなる2つの板部分(例えば第4板部分14と第5板部分15)が連結部材20(21~23)によって連結され、連結部材20(21~23)が2つの板部分それぞれの石膏ボード用原紙に接着層30を介して接着される。
【0052】
この構成では、板部分複合体10に外部から力が加わった場合における板部分の凹みや折曲り部分の分離等の損傷を抑制できる。また、連結部材20は本実施の形態では石膏ボードから形成されるが、単なる石膏、木材、紙、珪酸カルシウム、繊維強化セメント等から形成されてもよい。連結部材20はこれらいずれの材質であっても非金属であるため錆の発生が抑制される。また連結部材20が非金属である場合、板部分複合体10と連結部材20との間に寸法誤差が生じた場合であっても、連結部材20の形状修正を行い易いため建築物用構造体1を効率良く作製できる。また板部分複合体10は石膏ボードから形成され、連結部材20は石膏ボード、可燃性の木材、紙や、石膏と同系統の材質から形成されることで、金属を使用する場合に比較して廃棄が容易となる。
【0053】
よって、本実施の形態にかかる建築物用構造体1によれば、作製に手間をかけることなく、耐衝撃性、耐久性及び耐候性を向上でき、さらには廃棄にも手間がかからない建築物用構造体を提供できるようになる。
【0054】
<第2の実施の形態>
次に第2の実施の形態にかかる建築物用構造体2について図5を参照しつつ説明する。図5に示す建築物用構造体2はカーテンボックスとして構成されている。
【0055】
建築物用構造体2は、石膏ボードから形成される5つの板部分111~115でカーテンボックス形状を形成する板部分複合体110と、板部分複合体110を構成する複数の板部分111~115のうちの2つの板部分の組み(板部分111と板部分112の組み、及び、板部分114と板部分115の組み)それぞれにおいて板部分間を連結する連結部材121,122と、を備えている。
【0056】
板部分111と板部分112は折曲り形状をなすように連結しており、連結部材121は板部分111と板部分112の入隅側のそれぞれの表面を連結している。また板部分114と板部分115は折曲り形状をなすように連結しており、連結部材122は板部分114と板部分115の入隅側のそれぞれの表面を連結している。
以上のような第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果が得られる。
【0057】
以上、本発明の各実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態の構成に限定されるものではなく、各実施の形態においては種々の変更を加えることができる。例えば本発明にかかる建築物用構造体は、図1に示した照明器具ボックスや、図5に示したカーテンボックス等の形態の他、例えばブラインドボックスやニッチ等の他の種々の形態で形成され得る。
【符号の説明】
【0058】
1,2…建築物用構造体
10,110…板部分複合体
11…第1板部分
11A…石膏ボード芯材部
11B…内側石膏ボード用原紙
11C…外側石膏ボード用原紙
12…第2板部分
12A…石膏ボード芯材部
12B…内側石膏ボード用原紙
12C…外側石膏ボード用原紙
13…第3板部分
13A…石膏ボード芯材部
13B…内側石膏ボード用原紙
13C…外側石膏ボード用原紙
14…第4板部分
14A…石膏ボード芯材部
14B…内側石膏ボード用原紙
14C…外側石膏ボード用原紙
15…第5板部分
15A…石膏ボード芯材部
15B…内側石膏ボード用原紙
15C…外側石膏ボード用原紙
20…連結部材
21…第1連結部材
21A…石膏ボード芯材部
21B…一側石膏ボード用原紙
21C…他側石膏ボード用原紙
22…第2連結部材
22A…石膏ボード芯材部
22B…一側石膏ボード用原紙
22C…他側石膏ボード用原紙
23…第3連結部材
23A…石膏ボード芯材部
23B…一側石膏ボード用原紙
23C…他側石膏ボード用原紙
30…接着層
111~115…板部分
121,122…連結部材
図1
図2
図3
図4
図5