(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】保守時案内機能付き乗り場操作装置
(51)【国際特許分類】
B66B 3/02 20060101AFI20240705BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20240705BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20240705BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B66B3/02 N
B66B5/00 D
B66B1/34 C
B66B3/00 F
B66B3/00 Q
(21)【出願番号】P 2020096803
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野津 拓馬
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-242068(JP,A)
【文献】特開2002-234675(JP,A)
【文献】特開2009-155074(JP,A)
【文献】特開2005-298123(JP,A)
【文献】特開2005-247570(JP,A)
【文献】特開2015-051855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0002236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00 - 3/02
B66B 5/00 - 5/28
B66B 1/00 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのエレベーターの乗降口の間の壁面に形成された取付穴内の保守用接続部に保守用操作装置のケーブルが接続された状態で、前記壁面の正面側に張り出すように前記取付穴に嵌合され、前記ケーブルの通過部が形成された取付台と、
前記取付台の正面に配置された、利用者用の乗り場操作部と、
前記取付台の側端から使用可能なエレベーターを指す方向に突出する使用可能エレベーター表示パネルと、を備える、
保守時案内機能付き乗り場操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保守時案内機能付き乗り場操作装置において、
前記使用可能エレベーター表示パネルは、前記取付台のいずれか一方の側面に取り外し可能に装着されている、
保守時案内機能付き乗り場操作装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保守時案内機能付き乗り場操作装置において、
前記乗り場操作部は、前記2つのエレベーターの運行状態を表示可能な表示装置を含み、
前記取付台に配置され、使用可能エレベーター表示パネルの取り付け側を検出する取付センサを備え、
前記表示装置は、前記取付センサからの検出信号に応じて、使用可能なエレベーターの運行状態を表示すると共に、保守中のエレベーターの運行状態の表示は消灯する、
保守時案内機能付き乗り場操作装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の保守時案内機能付き乗り場操作装置において、
前記取付台に配置され、前記使用可能エレベーター表示パネルが取り付けられた側を検出する取付センサと、
前記取付センサからの検出信号に応じて、一方の前記エレベーターが使用可能であることを音声で知らせる音声出力装置と、を備える、
保守時案内機能付き乗り場操作装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の保守時案内機能付き乗り場操作装置において、
前記取付台は、通常時には前記取付穴内に収納され、保守時には前記取付穴から引き出される、
保守時案内機能付き乗り場操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのエレベーターの乗降口の間の壁面に設けられ、保守時に利用者に使用可能エレベーターを案内する保守時案内機能付き乗り場操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物内において2つのエレベーターの乗降口の間の壁面に2つのエレベーターで共通の、利用者用の乗り場操作装置が配置されている。この場合に、特許文献1に記載されているように、乗り場操作装置は、壁面に形成された取付穴に嵌め込まれているが、その取付穴の奥側には、保守用操作装置から導出されるケーブルに接続される接続部(保守用接続部)が配置される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のエレベーターの乗り場操作装置において、保守作業員がエレベーターの保守作業を行う場合に、乗り場操作装置を取付穴から引き出して、壁面から乗り場操作装置が張り出した状態で、保守用操作装置から導出されるケーブルを、乗り場操作装置の張り出し部の横方向端に形成された開口を通じて、接続部に接続することが考えられる。この状態で、保守作業員は、2つのエレベーターの一方のエレベーターの保守作業を行う。このとき、一方のエレベーターを利用者が使用することはできないが、他方のエレベーターは、利用者が使用できる場合がある。しかしながら、乗り場操作装置が壁面から張り出しているという通常時とは大きく異なる状態となっているので、利用者が他方のエレベーターを利用できることを認識しにくく、エレベーターを利用できる機会が無駄になっている場合が多い。
【0005】
本発明は、2つのエレベーターが並んで設けられる場合の保守作業時において、利用者がエレベーターを利用できる機会の無駄を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る保守時案内機能付き乗り場操作装置は、2つのエレベーターの乗降口の間の壁面に形成された取付穴内の保守用接続部に保守用操作装置のケーブルが接続された状態で、前記壁面の正面側に張り出すように前記取付穴に嵌合され、前記ケーブルの通過部が形成された取付台と、前記取付台の正面に配置された、利用者用の乗り場操作部と、前記取付台の側端から使用可能なエレベーターを指す方向に突出する使用可能エレベーター表示パネルと、を備える、保守時案内機能付き乗り場操作装置である。
【0007】
本発明に係る保守時案内機能付き乗り場操作装置によれば、2つのエレベーターが並んで設けられる場合の保守時において、取付台から使用可能エレベーター表示パネルが突出する方向によって、利用者がその突出方向にあるエレベーターを利用できることを認識しやすくなるので、利用者がエレベーターを利用できる機会の無駄を少なくできる。
【0008】
本発明に係る保守時案内機能付き乗り場操作装置において、好ましくは、前記使用可能エレベーター表示パネルは、前記取付台のいずれか一方の側面に取り外し可能に装着されている。
【0009】
上記構成によれば、1つの使用可能エレベーター表示パネルを用いて取付台からの使用可能エレベーター表示パネルの突出方向を変更できる。このため、利用者に使用可能なエレベーターを示す側を変更できる構成で、部品点数の削減によるコスト低減を図れる。
【0010】
本発明に係る保守時案内機能付き乗り場操作装置において、好ましくは、前記乗り場操作部は、前記2つのエレベーターの運行状態を表示可能な表示装置を含み、前記取付台に配置され、使用可能エレベーター表示パネルの取り付け側を検出する取付センサを備え、前記表示装置は、前記取付センサからの検出信号に応じて、使用可能なエレベーターの運行状態を表示すると共に、保守中のエレベーターの運行状態の表示は消灯する。
【0011】
上記構成によれば、表示装置において、保守時に利用者が使用可能なエレベーターの運行状態が表示されるが、保守中のエレベーターの表示は消灯されるので、利用者が一方のエレベーターのみを利用できることを、より認識しやすくなる。
【0012】
本発明に係る保守時案内機能付き乗り場操作装置において、好ましくは、前記取付台に配置され、前記使用可能エレベーター表示パネルが取り付けられた側を検出する取付センサと、前記取付センサからの検出信号に応じて、前記使用可能エレベーター表示パネルが取り付けられた側の一方の前記エレベーターが使用可能であることを音声で知らせる音声出力装置と、を備える。
【0013】
上記構成によれば、利用者、特に乗り場の乗降口から離れた利用者が、一方のエレベーターを利用できることを、より認識しやすくなる。
【0014】
本発明に係る保守時案内機能付き乗り場操作装置において、好ましくは、前記取付台は、通常時には前記取付穴内に収納され、保守時には前記取付穴から引き出される。
【0015】
上記構成によれば、通常時と保守時とで共通の取付台を使用できるので、保守時に必要な専用部品を少なくできると共に、通常時と保守時との間での乗り場操作装置の変更を容易に行える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る保守時案内機能付き乗り場操作装置によれば、2つのエレベーターが並んで設けられる場合の保守作業時において、利用者がエレベーターを利用できる機会の無駄を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の保守時案内機能付き乗り場操作装置が適用されるエレベーターの乗り場において、通常時に乗り場操作装置が設置されている状態を示す図である。
【
図2】
図1において壁面の取付穴から乗り場操作装置を取り外した状態を示す拡大斜視図である。
【
図3】保守時に実施形態の保守時案内機能付き乗り場操作装置が設置されている状態を示している
図1の中央部の拡大斜視図である。
【
図4】
図3から保守時案内機能付き乗り場操作装置を取り出して示す斜視図である。
【
図6】
図3とは使用可能エレベーター表示パネルの装着側を逆にして、
図3とは反対側のエレベーターが使用可能であることを示す斜視図である。
【
図7】実施形態において、保守作業員が乗り場から離れる場合に使用可能エレベーター表示パネルと反対側のケーブル通過部を点検表示札で塞いだ状態を示す
図4に対応する図である。
【
図8】実施形態の別例の保守時案内機能付き乗り場操作装置の分解斜視図である。
【
図9】実施形態の別例の保守時案内機能付き乗り場操作装置において、乗り場操作部を省略して示す分解斜視図である。
【
図10】実施形態の別例において、音声出力装置付きの取付台の一方側半部と、使用可能エレベーター表示パネルとを分離して示す斜視図である。
【
図11】(a)は、実施形態の別例において、通常時に、乗り場の取付穴に保守時案内機能付き乗り場操作装置の取付台が収納された状態を示す斜視図であり、(b)は、保守時に、取付穴から取付台が引き出されて使用可能エレベーター表示パネルが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図12】取付穴に取付台が収納された場合の
図11(b)のA-A断面対応図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下において、図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下で説明する形状、材料、個数などは説明のための例示であって、保守時案内機能付き乗り場操作装置の仕様により変更が可能である。以下では同様の構成には同一の符号を付して説明する。
【0019】
図1、
図2を用いて通常時におけるエレベーター1a、1bの乗り場10の基本構造を説明する。
図1に示すように複数階からなる建物の内部において2つのエレベーター1a、1bが横方向(
図1の左右方向)に並んで設けられる。このとき、建物のそれぞれの階では、2つのエレベーター1a、1bの乗降口2a、2bが左右方向に並んで配置され、乗り場10における2つの乗降口2a、2bの間の壁面3には、乗り場操作装置4が設置されている。ここで「左右方向」とは、乗り場10から乗降口2a、2b側を見た場合の左右方向を意味する。
図1は、中間の階の乗り場10を示している。乗り場操作装置4は、上下方向の中間部と下側部とに、上側に移動する乗りかごの予備登録を指示する上昇ボタン5と、下側に移動する乗りかごの予備登録を指示する下降ボタン6とを有する。乗り場操作装置4の上側部分には左右方向に並んだ2つの表示画面8,9を含む表示装置7が配置される。左右方向一方側(
図1の左側)の表示画面8は、一方側のエレベーター1aの運行状態として、一方側(
図1の左側)の乗りかご(図示せず)の現在位置、例えば6階を表す「6」を表示する。左右方向他方側(
図1の右側)の表示画面9は、他方側のエレベーター1bの運行状態として、他方側(
図1の右側)の乗りかごの現在位置、例えば2階を表す「2」を表示する。2つのエレベーター1a、1bを備えるエレベーターシステムは、例えばエレベーターの運転を制御する制御盤が昇降路内に設けられており、制御盤を収容する機械室は設けられない機械室レス型である。
【0020】
保守時に保守作業員が乗りかごを移動させる場合には、まず乗りかごに乗り込んで、乗りかご内のかご操作盤を操作し、それによって通常運転モードから保守運転モードに切り換える。その後、保守作業員は最寄り階で乗り場10に降りて、その乗り場10の保守用接続部13(
図2)に保守用操作装置15(
図3)のケーブル16(
図3)を接続する。保守作業員は、乗り場10から保守用操作装置15を用いて、保守対象の乗りかごを手動操作で上下方向に移動させる。
【0021】
図2は、
図1の壁面の取付穴12から乗り場操作装置4を取り外した状態を示している。乗り場操作装置4は、取付穴12に嵌合されて取り付けられており、取付穴12から取り外した状態で、その取付穴12の奥側には、保守用操作装置15(
図3)から導出されるケーブル16の接続端子(図示せず)に接続するための保守用接続部13が配置されている。保守作業員は保守対象の一方側のエレベーター1aの乗降口2aの扉を手動で開放し、保守用接続部13にケーブル16を接続した状態で、保守用操作装置15の上昇ボタン、下降ボタン、停止ボタンのうちの適切なボタン17を操作しながら一方側の乗りかごを、保守作業しやすい所定の位置に移動させる。このような保守作業において、一方側のエレベーター1aを利用者が利用することはできないが、他方側のエレベーター1bは利用者に利用可能である。以下で説明する本実施形態の保守時案内機能付き乗り場操作装置20(
図3)は、利用者に利用可能なエレベーター1bがあることを認識しやすくして、利用者がエレベーターを利用できる機会の無駄を少なくするために考えられたものである。
【0022】
図3~
図5を用いて実施形態の保守時案内機能付き乗り場操作装置20を説明する。
図3は、保守時に実施形態の保守時案内機能付き乗り場操作装置20が設置されている状態を示している
図1の中央部の拡大斜視図である。
図4は、
図3から保守時案内機能付き乗り場操作装置20を取り出して示す斜視図であり、
図5は、
図4の分解斜視図である。以下、保守時案内機能付き乗り場操作装置20は、乗り場操作装置20と記載する。
【0023】
乗り場操作装置20は、保守時に、通常運転用の乗り場操作装置4の代わりに、取付穴12に取り付けられる。
図3では、一方側(
図3の左側)のエレベーター1aの保守作業を行い、他方側(
図3の右側)のエレベーター1bが利用者によって利用可能な場合を示している。このために、乗り場操作装置20が取付穴12に取り付けられた状態で、保守用操作装置15のケーブル16が、乗り場操作装置20の左右方向一方端(
図3の左端)に形成されたケーブル通過部21を通じて、取付穴12の奥側の保守用接続部13(
図2)に接続される。
【0024】
具体的には、
図4に示すように乗り場操作装置20は、取付穴12に嵌合される取付台22と、取付台22の左右方向における側端から使用可能なエレベーター1bを指す方向に突出する使用可能エレベーター表示パネル30と、取付台22の正面に配置された、利用者用の乗り場操作部40とを含んで構成される。
【0025】
図5に示すように、取付台22は、鉄板等の金属板製であり、左右方向両端に配置される2つの平行な側壁23と、2つの側壁23の上端を連結する上壁24と、2つの側壁23の下端を連結する下壁25とを有し、断面が略長方形の矩形枠状に形成される。各側壁23は、左右方向一方側から見て略横U字形に形成され、上下両端部の前後方向長さが、上下方向中間部の前後方向長さより大きくなっている。ここで、「前後方向」とは、乗り場操作装置20が乗り場の壁面に設置された状態で乗り場から乗降口を見た場合に、乗り場10側(正面側)から乗りかごの配置側に向かう方向を意味し、乗り場10側が前側で、乗りかご配置側が後側である。各側壁23の上端部の前後方向に長い幅広部23aは、下端部の幅広部23bより高さが大きくなっている。後述の使用可能エレベーター表示パネル30は、上端部の幅広部23aに、磁石31によって取り外し可能に装着可能である。取付台22の各側壁23の後側には、後端が開口するU字形の切り欠きによって矩形状開口としてのケーブル通過部21が形成される。保守時には、使用可能エレベーター表示パネル30が一方のケーブル通過部21を塞ぐので、保守作業者でない人がこのケーブル通過部21を通じて取付穴12内に手を入れることを防止できる。なお、
図5では、各側壁23の下端に幅広部23bを形成し、取付台22の剛性を高くしているが、この下側の幅広部23bを省略してもよい。
【0026】
図5では、左右方向一端の側壁23の上端に二点鎖線枠αを示している。この枠α部分には、後述の点検表示札50(
図7)をその上端部に設けた磁石で装着可能である。
【0027】
上壁24及び下壁25は、略矩形板状であり、後端の左右方向複数位置に矩形状の切込み26,27が形成され、それらの切込み26,27の内側の板部が下側、または上側に折り曲げられることでストッパ28,29が形成される。上壁24及び下壁25のストッパ28,29には、後述の乗り場操作部40の上端及び下端において後側に突出するように形成された2つの端板41の後端が突き当てられて位置決めされる。さらに、上壁24及び下壁25の前端部の左右方向複数位置には、乗り場操作部40を取付台22にネジ止め固定するためのネジ貫通孔P1,P2が形成される。
【0028】
乗り場操作部40は、通常運転用の乗り場操作装置4と同様に上昇ボタン5、下降ボタン6、及び表示装置7を含む本体部42と、本体部42の上下両端に固定され、後側に突出する2つの端板41とを含んでいる。本体部42からは上昇ボタン5、下降ボタン6、及び表示装置7に接続された複数の信号線(図示せず)が導出され、複数の信号線が取付穴12の奥側の孔(図示せず)を通じて、昇降路(図示せず)内に配置された制御盤に接続される。
【0029】
このような乗り場操作部40は、取付台22の前側から内側に嵌め込まれ、
図4に示すように各端板41の後端が取付台22のストッパ28,29に突き当てられることで位置決めされ、その状態で取付台22の上下両端の孔P1と2つの端板41に形成された孔P2とを貫通した複数のネジ43が、本体部42のネジ穴(図示せず)にネジ結合されることにより、乗り場操作部40が取付台22に固定される。
【0030】
使用可能エレベーター表示パネル30は、取付板32と、表示板33とを含み、取付板32の外側面(
図5の右側面)の前後方向中間部に直角に表示板33が固定される。使用可能エレベーター表示パネル30は、金属板、または樹脂板等により形成される。取付板32の内側面(
図5の左側面)の上端部には、取付台22の側面に取り付けるための薄板状の磁石31が固定される。表示板33の第1面S1には「こちらのエレベーター使用できます」の文字表示がされており、その上側には使用可能なエレベーター1bの配置側を示す矢印表示がされている。文字表示は、使用可能なエレベーター1bの存在とその配置側とを知らせることができるものであれば、その表示内容は限定されない。例えば、文字表示は、「右側」、「左側」等、より具体的に使用可能エレベーター1bの配置側を知らせる内容としてもよい。また、文字表示のみで使用可能エレベーター1bの配置側が明確であれば、矢印表示は省略してもよい。
【0031】
さらに、後述の
図6に示すように、表示板33の第2面S2には、第1面S1と同様の文字表示がされると共に、前側に向けた状態で第1面S1の矢印表示とは反対側の向きを示す矢印表示がされる。これにより、
図6に示すように、
図3とは逆側に使用可能エレベーター1aがあることを利用者に知らせることができる。
【0032】
図3、
図4、
図6に示すように、使用可能エレベーター表示パネル30は、取付台22のいずれか一方の左右方向端の側面に、取り外し可能に装着される。
図3、
図4では、使用可能エレベーター表示パネル30が第1面S1を前側に向けるように、取付台22の右端の側面に取り外し可能に装着されている。この状態で、使用可能エレベーター表示パネル30は、取付台22の端端から使用可能なエレベーター1bを指す方向(右方向)に突出し、この使用可能エレベーター表示パネル30によって、右端のケーブル通過部21が塞がれる。
【0033】
保守作業員は、取付穴12内の保守用接続部13(
図2)に保守用操作装置15のケーブル16を接続した状態で、取付台22の左端のケーブル通過部21から外側に導出されたケーブル16を有する保守用操作装置15のボタン17を操作して、一方側のエレベーター1aの乗りかごを移動させることができる。
【0034】
図6は、
図3とは使用可能エレベーター表示パネル30の装着側を逆にして、
図3とは反対側のエレベーター1aが使用可能であることを示している。このとき、乗り場操作装置20の取付台22の左端の側面には、使用可能エレベーター表示パネル30が取り外し可能に装着される。この状態で、使用可能エレベーター表示パネル30は、取付台22の側端から使用可能なエレベーター1aを指す方向(左方向)に突出する。
【0035】
上記の乗り場操作装置20によれば、2つのエレベーター1a、1bが並んで設けられる場合の保守時において、取付台22から使用可能エレベーター表示パネル30が突出する方向によって、利用者がその突出方向にあるエレベーターを利用できることを認識しやすくなるので、利用者がエレベーターを利用できる機会の無駄を少なくできる。
【0036】
さらに、使用可能エレベーター表示パネル30は、取付台22のいずれか一方の側面に取り外し可能に装着される。これにより、1つの使用可能エレベーター表示パネル30を用いて、取付台22からの使用可能エレベーター表示パネル30の突出方向を変更できる。このため、利用者に使用可能なエレベーターを示す側を変更できる構成で、部品点数の削減によるコスト低減を図れる。
【0037】
なお、上記では、保守時に通常運転用の乗り場操作装置4の代わりに乗り場操作装置20を取付穴12に取り付ける場合を説明したが、通常運転用の乗り場操作装置4が、ケーブル通過部が形成された取付台と、乗り場操作部とを備える構成で、保守時に、取付穴12から引き出した取付台の側端に使用可能エレベーター表示パネルを装着する構成としてもよい。
【0038】
図7は、実施形態において、保守作業員が乗り場から離れる場合に使用可能エレベーター表示パネル30と反対側のケーブル通過部21を点検表示札50で塞いだ状態を示す
図4に対応する図である。
図7に示すように、保守作業員が保守作業の途中で乗り場10から一時的に離れる場合に、取付穴12内の保守用接続部13から保守用操作装置15のケーブル16を取り外した状態で、取付台22の使用可能エレベーター表示パネル30と反対側に点検表示札50を装着することができる。このとき、点検表示札50には、上端に磁石が固定された取付板50aが設けられ、取付板50aには、「定期点検中」等の保守作業中であることを示す文字表示がされた表示板50bが、リング50cによって吊り下げ支持される。取付板50aは、磁石により取付台22の側壁23の上端部に取り外し可能に装着される。この状態で、取付台22において使用可能エレベーター表示パネル30とは反対側のケーブル通過部21が塞がれる。これにより、保守作業員が乗り場10から離れている場合に、点検表示札50によって、乗り場に近づいた人に、現在保守作業中であることを知らせることができる。さらに、点検表示札50によってケーブル通過部21が塞がれるので、そのケーブル通過部21を通じて取付穴12内に、保守作業員でない人がいたずら等で手を入れることを防止できる。
【0039】
図8は、実施形態の別例の乗り場操作装置の分解斜視図である。本例の構成では、取付台22の左右方向両端の2つの側壁23に、2つの取付センサ51が取り付けられる。各取付センサ51は、側壁23の内側面に取り付けられると共に、伸び縮みする軸状の押圧部51aが側壁23の外側面から側壁23に形成された孔を通じて左右方向に突出している押圧検出装置である。2つの取付センサ51は、いずれか一方の側壁23の外側面に使用可能エレベーター表示パネル30が取り付けられた場合に、対応する取付センサ51の押圧部51aが使用可能エレベーター表示パネル30で押されることにより、使用可能エレベーター表示パネル30の取り付け側を検出する。2つの取付センサ51の検出信号は、乗り場操作部40の内側に取り付けられた制御部44に送信される。制御部44は、表示装置7の各表示画面8,9と、各ボタン5,6とに接続され、ボタン5,6からの信号を取得して信号線(図示せず)を介して昇降路内の制御盤に送信すると共に、制御盤からの信号を取得して、各表示画面8,9に、対応するエレベーターの乗りかごの現在位置を表示させる。さらに、表示装置7は、制御部44が、取付センサ51から使用可能エレベーター表示パネル30の取り付け側の検出信号を制御部44が取得した場合にその検出信号に応じて、使用可能エレベーター表示パネル30の取り付け側の表示画面8が、使用可能なエレベーターの乗りかごの現在位置を表示すると共に、使用可能エレベーター表示パネル30と反対側の表示画面9が、保守中のエレベーターの運行状態の表示を消灯する。これにより、保守時に利用者が使用可能なエレベーターの運行状態が表示されるが、保守中のエレベーターの表示は消灯されるので、利用者が一方のエレベーターのみを利用できることを、より認識しやすくなる。なお、上記では表示装置7が2つの表示画面を有する場合を説明したが、表示装置が表示画面として1つのみを有し、表示画面の一方側で一方のエレベーターの運行状態を表示し、他方側で他方のエレベーターの運行状態を表示する構成に、本例の構成を適用してもよい。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図7の構成と同様である。
【0040】
図9は、実施形態の別例の乗り場操作装置において、乗り場操作部を省略して示す分解斜視図である。本例の構成では、上記の
図8の構成において、2つの取付センサ51が、取付台22の下壁25上に固定した音声出力装置53に接続される。音声出力装置53は、略直方体状のスピーカ54と、スピーカ54から出力される音声を制御する音声制御部(図示せず)とを有する。音声制御部は、記憶部に予め2種類の音声として右側のエレベーターが使用できることを知らせる音声、例えば「右側のエレベーターを使用できます」と、左側のエレベーターが使用できることを知らせる音声、例えば「左側のエレベーターを使用できます」を記憶している。そして音声制御部は、取付センサ51から使用可能エレベーター表示パネル30の取り付け側の検出信号を取得した場合にその検出信号に応じて、その検出信号が出力された側のエレベーターが使用可能であることを、上記の2種類の音声から選択した音声の出力によって知らせる。これにより、利用者、特に乗り場10の乗降口から離れた利用者が、音声で知らされたエレベーターを利用できることを、より認識しやすくなる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図7の構成、または
図8の構成と同様である。
【0041】
図10は、実施形態の別例において、音声出力装置53付きの取付台22の一方側半部と、使用可能エレベーター表示パネル30とを分離して示す斜視図である。本例の構成では、上記の
図9の構成において、2つの取付センサ55のそれぞれが、取付台22の側壁23の外側面に前後方向に離れて露出するように取り付けられた2つの接続端子56,57と、使用可能エレベーター表示パネル30の取付板32の内側面の、2つの接続端子56,57と対向する位置に、前後方向に直線状に貼られて固定された導電板58とを含んで構成される。2つの接続端子56,57は、それぞれ音声出力装置53から導出される2本の信号線W1,W2に接続される。導電板58は、薄板状の銅等の導電性の高い材料により形成される。さらに、使用可能エレベーター表示パネル30の取付板32の導電板58と上下方向に異なる位置には、磁石31aが固定される。磁石31aが、取付台22の側壁23の外側面に吸着されることにより、使用可能エレベーター表示パネル30が取付台22に固定される。その状態で、2つの接続端子56,57が導電板58に接触し、2本の信号線W1,W2が電気的に接続される。信号線W1,W2の電気的な接続によって、使用可能エレベーター表示パネル30が取付台22の一方の側壁23に押し付けられたことが、音声出力装置53の音声制御部で検出される。これにより、音声制御部が、その検出に応じて、信号線W1,W2の接続が検出された側のエレベーターが使用可能であることを、選択された音声の出力によって知らせる。このため、
図9の構成と同様に、利用者、特に乗り場10の乗降口から離れた利用者が、音声で知らされたエレベーターを利用できることを、より認識しやすくなる。本例において、その他の構成及び作用は、
図9の構成と同様である。
【0042】
図11~
図12は、実施形態の別例を示している。
図11(a)は、実施形態の別例において、通常時に、乗り場の壁面3の取付穴12に乗り場操作装置20の取付台22が収納された状態を示す斜視図であり、(b)は、保守時に、取付穴12から取付台22が引き出されて使用可能エレベーター表示パネル30が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図12は、取付穴12に取付台22が収納された場合の
図11(b)のA-A断面対応図である。本例の構成では、取付台22の前側に、取付穴12の開口端と略同じ大きさの乗り場操作部40aが固定される。乗り場操作部40aは、
図5に示した乗り場操作部40で2つの端板41がない構成と同様である。取付台22は、乗り場操作部40aの後側面に固定される。
【0043】
さらに、取付台22の上壁24と取付穴12の内面の上端との間には、取付台案内構造60が設けられる。取付台案内構造60は、取付穴12の内面上端に固定された断面クランク形のガイドレール61と、取付台22の上壁24上面に上方に突出するように固定された断面T字形で前後方向に延びる形状の案内突部65とを含んでいる。ガイドレール61は上端に左右方向に離れて2つの取付板部62が設けられ、その間に断面矩形状に下側に突出する下側突出部63が設けられる。下側突出部63の下端には、前後方向に延び、前端が開口する溝64が形成され、その溝64を通じて、案内突部65の下側部分が下側に突出する。この状態で、案内突部65は、ボルト70及びナット72により取付台22の上壁24上面に固定される。取付台22の前後方向の幅が大きくなった上端部が、下側突出部63の底部上に係合する。これにより、取付台22が取付穴12の上部に吊り下げ支持され、取付穴12に対し前後方向に移動可能となる。このため、取付台22は、
図11(a)に示すように、通常時には取付穴12内に収納される。この状態で、取付台22の開口端から乗り場操作部40aのみが露出した状態となる。一方、
図11(b)に示すように保守時には、取付台22が取付穴12から引き出される。この状態で、取付台22のいずれか一方の側端に使用可能エレベーター表示パネル30が装着される。なお、取付台案内構造は、取付穴12の内面下端と取付台22の下壁25との間にも、取付台22の前後方向の移動を可能とするように設けられてもよい。
【0044】
上記の構成によれば、通常時と保守時とで共通の取付台22を使用できるので、保守時に必要な専用部品を少なくできると共に、通常時と保守時との間での乗り場操作装置20の変更を容易に行える。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図7の構成と同様である。
【符号の説明】
【0045】
1a,1b エレベーター(使用可能エレベーター)、2a,2b 乗降口、3 壁面、4 乗り場操作装置、5 上昇ボタン、6 下降ボタン、7 表示装置、8,9 表示画面、10 乗り場、12 取付穴、13 保守用接続部、15 保守用操作装置、16 ケーブル、17 ボタン、20 保守時案内機能付き乗り場操作装置(乗り場操作装置)21 ケーブル通過部、22 取付台、23 側壁、23a 幅広部、23b 幅広部、24 上壁、25 下壁、26,27 切込み、28,29 ストッパ、30 使用可能エレベーター表示パネル、31 磁石、31a 磁石、32 取付板、33 表示板、40,40a 乗り場操作部、41 端板、42 本体部、43 ネジ、44 制御部、50 点検表示札、50a 取付板、50b 表示板、50c リング、51 取付センサ、51a 押圧部、53 音声出力装置、54 スピーカ、55 取付センサ、56、57 接続端子、58 導電板、60 取付台案内構造、61 ガイドレール、62 取付板部、63 下側突出部、64 溝、65 案内突部、70 ボルト、72 ナット。