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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】バルブユニット
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/00 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
F16K27/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020109241
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022006776
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼▲崎▼ 陽平
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-304433(JP,A)
【文献】特開平7-167105(JP,A)
【文献】特開昭60-196405(JP,A)
【文献】実開平2-124302(JP,U)
【文献】特開平8-135603(JP,A)
【文献】特開平8-14417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 5/22,11/00-13/10
F16K 27/00-27/12,31/06-31/11
F16L 55/00-55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポートに連なる流路と、前記流路に連通するドレン流路とを備えたバルブハウジングと、
前記流路に挿入される流路圧制御体とを備え、
前記流路圧制御体は、前記ポートが閉塞されることにより前記流路を前記ドレン流路に連通させる位置に配置され、
前記流路圧制御体が、前記流路に対し移動自在に収容され、前記流路の形成方向に穿設されたバイパス流路を有する筒状で、且つ、前記バイパス流路に内端が連通し、外端が外周面に連通する連通経路を有し、
前記流路圧制御体は、前記連通経路を前記ドレン流路に連通させる連通位置と、前記連通経路を前記ドレン流路から離間させる非連通位置とに切換自在に構成されているバルブユニット。
【請求項2】
前記バルブハウジングが、前記ポートを閉塞する閉塞プラグと、前記ポートに接続することにより前記流路に連通するホースプラグとの何れか一方の装着が可能であり、
前記ポートに前記閉塞プラグを装着した場合に、前記閉塞プラグに当接することで前記流路圧制御体を前記連通位置に保持し、前記ポートに前記ホースプラグを装着した場合に、前記ホースプラグに当接することで前記流路圧制御体を前記非連通位置に保持する請求項に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記流路圧制御体を、前記ポートに向けて付勢する付勢部材を備えている請求項に記載のバルブユニット。
【請求項4】
ポートに連なる流路と、前記流路に連通するドレン流路とを備えたバルブハウジングと、
前記流路に挿入される流路圧制御体とを備え、
前記流路圧制御体は、前記ポートが閉塞されることにより前記流路を前記ドレン流路に連通させる位置に配置され、
前記バルブハウジングが、前記ポートを閉塞する閉塞プラグと、前記ポートに接続することにより前記流路に連通するホースプラグとの何れか一方の装着が可能であり、
前記閉塞プラグに前記流路圧制御体が備えられ、前記ポートに前記閉塞プラグを装着した場合に、前記流路圧制御体が前記流路を前記ドレン流路に連通させ、
前記ホースプラグに筒状体が備えられ、前記ポートに前記ホースプラグを装着した場合に、前記流路を前記ドレン流路に連通させることなく、前記筒状体が前記流路と前記ホースプラグとを連通させるバルブユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油を制御するバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタの油圧回路を例に挙げると、特許文献1にはローリングシリンダの負荷圧を導く一対のパイロット流路(文献ではパイロット通路)を備え、この一対のパイロット流路のパイロット圧のうち、高圧側のパイロット圧を分流バルブに作用させるものが示されている。
【0003】
この油圧回路では、例えば、ローリングシリンダがストロークエンドに達し、負荷圧力が上昇した場合には、高圧側のパイロット圧で分流バルブを操作し、ローリングシリンダに供給される作動油を分流バルブから排出することで負荷の軽減を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-2073号公報(段落番号〔0045〕等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、トラクタ等の車両が、外部に複数の油圧シリンダを装着できるものでは、これら複数の油圧シリンダに供給する作動油の給排を可能にする分流バルブを車体側に備え、特許文献1と同様に、複数の油圧シリンダに作用する負荷圧のうち、最も高圧となるパイロット圧を高圧選択バルブで選択し、選択された負荷圧によって分流バルブを制御する油路構成を採る場合もある。
【0006】
このような車両では、装着可能な数より少ない数の油圧シリンダを装着することも考えられ、このような場合には、パイロット圧を高圧選択バルブに作用させるパイロット流路をプラグによって閉塞することになる。
【0007】
しかしながら、パイロット流路がプラグで閉塞された場合には、閉塞されたパイロット流路に対し、高圧選択バルブ等からリークするパイロット油が流れ込み、パイロット流路の圧力が上昇することもあった。このような圧力を「こもり圧」と称しており、「こもり圧」を生じた場合には、「こもり圧」が高圧選択バルブに作用し、この高圧選択バルブの適正な作動を損なうことも考えられた。
【0008】
このような理由から、閉塞された流路の圧力が上昇する現象を防止できるバルブユニットが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るバルブユニットの特徴構成は、ポートに連なる流路と、前記流路に連通するドレン流路とを備えたバルブハウジングと、前記流路に挿入される流路圧制御体とを備え、前記流路圧制御体は、前記ポートが閉塞されることにより前記流路を前記ドレン流路に連通させる位置に配置され、前記流路圧制御体が、前記流路に対し移動自在に収容され、前記流路の形成方向に穿設されたバイパス流路を有する筒状で、且つ、前記バイパス流路に内端が連通し、外端が外周面に連通する連通経路を有し、前記流路圧制御体は、前記連通経路を前記ドレン流路に連通させる連通位置と、前記連通経路を前記ドレン流路から離間させる非連通位置とに切換自在に構成される点にある。
【0010】
この特徴構成によると、例えば、閉塞プラグでポートが閉塞された場合には、流路圧制御体が、閉塞された流路をドレン流路に連通させる位置に配置されることになり、例えば、ハウジングの内部のバルブ等からパイロット油がリークする場合でも、その油をドレン流路に排出することにより流路の圧力上昇を抑制できる。
従って、閉塞された流路の圧力が上昇する現象を防止できるバルブユニットが構成された。
また、流路に対して、その流路の軸芯に沿う方向に移動自在に筒状の流路圧制御体を移動自在に挿入しておき、流路のポートが閉塞された場合に、流路圧制御体が連通位置にセットされることで、流路がバイパス流路と連通経路とを介してドレン流路に連通させ、流路の圧力上昇を防止できる。これに対して、流路の開口が閉塞されない場合には、流路圧制御体を非連通位置にセットし、流路とドレン流路とが連通しない状態とすることが可能となり、油を無駄にドレン流路に排出することがなく、しかも、油を流路圧制御体のバイパス流路を介して流すことができる。
【0011】
【0012】
【0013】
上記構成に加えた構成として、前記バルブハウジングが、前記ポートを閉塞する閉塞プラグと、前記ポートに接続することにより前記流路に連通するホースプラグとの何れか一方の装着が可能であり、前記ポートに前記閉塞プラグを装着した場合に、前記閉塞プラグに当接することで前記流路圧制御体を前記連通位置に保持し、前記ポートに前記ホースプラグを装着した場合に、前記ホースプラグに当接することで前記流路圧制御体を前記非連通位置に保持しても良い。
【0014】
これによると、ポートに閉塞プラグを装着した場合には、この閉塞プラグに当接することで流路圧制御体が連通位置に保持され、流路の圧力上昇を抑制できる。また、ポートにホースプラグを装着した場合には、このホースプラグに流路圧制御体に当接することで、流路圧制御体が非連通位置に保持され、作動油がドレン流路に流れる不都合を招くことなく、流路とホースとを連通させることが可能となる。
【0015】
上記構成に加えた構成として、前記流路圧制御体を、前記ポートに向けて付勢する付勢部材を備えても良い。
【0016】
これによると、付勢部材の付勢力により流路圧制御体が、閉塞プラグ又はホースプラグに当接する状態を維持し、流路圧制御体を連通位置と非連通位置との何れかに維持できる。
【0017】
本発明に係る別のバルブユニットの特徴構成は、ポートに連なる流路と、前記流路に連通するドレン流路とを備えたバルブハウジングと、前記流路に挿入される流路圧制御体とを備え、前記流路圧制御体は、前記ポートが閉塞されることにより前記流路を前記ドレン流路に連通させる位置に配置され、前記バルブハウジングが、前記ポートを閉塞する閉塞プラグと、前記ポートに接続することにより前記流路に連通するホースプラグとの何れか一方の装着が可能であり、前記閉塞プラグに前記流路圧制御体が備えられ、前記ポートに前記閉塞プラグを装着した場合に、前記流路圧制御体が前記流路を前記ドレン流路に連通させ、前記ホースプラグに筒状体が備えられ、前記ポートに前記ホースプラグを装着した場合に、前記流路を前記ドレン流路に連通させることなく、前記筒状体が前記流路と前記ホースプラグとを連通させる点にある
【0018】
この特徴構成によると、例えば、閉塞プラグでポートが閉塞された場合には、流路圧制御体が、閉塞された流路をドレン流路に連通させる位置に配置されることになり、例えば、ハウジングの内部のバルブ等からパイロット油がリークする場合でも、その油をドレン流路に排出することにより流路の圧力上昇を抑制できる。
従って、閉塞された流路の圧力が上昇する現象を防止できるバルブユニットが構成された。
また、流路のポートを閉塞プラグで閉塞した場合には、流路圧制御体が流路をドレン流路に連通させるため、供給流路の圧力上昇を抑制できる。また、流路のポートにホースプラグを装着した場合には、流路とホースとを連通させることになり、筒状体が流路とドレン流路とを連通させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】バルブユニットの正面図である。
図2】バルブユニットの底面図である。
図3】バルブユニットの左側面図である。
図4】バルブユニットの後面図である
図5】バルブユニットの油圧回路図である。
図6】バルブユニットのセンシングポートの部位の断面図である。
図7】高圧選択バルブの断面図である。
図8】連通位置と非連通位置とにある圧力制御筒を示す断面図である。
図9】別実施形態(a)の閉塞プラグを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔バルブユニット〕
図1図5に示すように、分流バルブVと、リリーフバルブRと、第1高圧選択バルブS1と、第2高圧選択バルブS2とをバルブハウジングHに内蔵してバルブユニットAが構成されている。
【0021】
このバルブユニットAは、油圧ポンプ1から作動油が供給されるポンプポートPをバルブハウジングHに形成すると共に、分流バルブVで制御された作動油を送り出すため第1供給ポートQ1、第2供給ポートQ2、第3供給ポートQ3の3つの供給ポートQ(第1、第2、第3供給ポートの上位概念)をバルブハウジングHに形成している。更に、バルブユニットAは、分流バルブVからの作動油を排出する第1タンクポートT1と、リリーフバルブRからの作動油を排出する第2タンクポートT2とをバルブハウジングHに形成している。
【0022】
バルブユニットAは、作業装置(図示せず)の油圧アクチュエータに作用する負荷圧を取得するため第1センシングポートSP1、第2センシングポートSP2、第3センシングポートSP3の3つのセンシングポートSP(第1、第2、第3センシングポートの上位概念)をバルブハウジングHに形成している。
【0023】
図1図4に示すようにバルブハウジングHは全体的にブロック状であり、図1図4における上側をバルブハウジングHの上側として説明すると、バルブハウジングHの本体部分から下方に突出した突出部にポンプポートPが形成され、第2タンクポートT2がバルブハウジングHの本体部分の上端に形成されている。また、バルブハウジングHの本体部分を横方向に貫通する空間に分流バルブVが収容され、この分流バルブVの上側の空間にリリーフバルブRが収容されている。
【0024】
図1に示すように、分流バルブVが伸びる方向を左右方向とすると、この左右方向に直交する方向となる前後方向での一つの面に第1供給ポートQ1と、第1センシングポートSP1と、第1タンクポートT1とが形成されている。また、図1図3に示すように、第1供給ポートQ1が形成される部位の側面に第2供給ポートQ2が形成されている。
【0025】
更に、図2に示すように、バルブハウジングHの本体部分の下端面Haに第3供給ポートQ3と、第2センシングポートSP2と、第3センシングポートSP3とが形成されている。
【0026】
このバルブユニットAは、トラクタ等の車両に備えられるものであり、車両に備えた複数の油圧アクチュエータに作動油を供給するため、複数(実施形態では3つ)の供給ポートQを形成している。また、このバルブユニットAは、車両に備えた複数の油圧アクチュエータの負荷圧を取得するため、複数(実施形態では3つ)のセンシングポートSPを形成している。
【0027】
また、このバルブユニットAでは、複数の油圧アクチュエータを制御する場合には、供給ポートQと油圧アクチュエータとを供給ホース接続し、これらの油圧アクチュエータの負荷圧をバルブユニットAで取得するように、センシングポートとSPと油圧アクチュエータとをセンシングホース21bで接続する。
【0028】
このような接続を容易に行えるように、図1図4に示すバルブハウジングHでは、第1供給ポートQ1と第1センシングポートSP1とが互いに近接し、第2供給ポートQ2と第2センシングポートSP2とが互いに近接し、第3供給ポートQ3と第3センシングポートSP3とが互いに近接する位置に配置されている。
【0029】
〔油路構成〕
このバルブユニットAは、図5に示すように、油圧ポンプ1からの作動油がポンプポートPを介して供給される主流路2と、この主流路2に供給される作動油の流れを切り換える分流バルブVと、主流路2から分岐する分岐流路5と、この分岐流路5の圧力が設定値を超えた場合に開放するリリーフバルブRとバルブハウジングHに収容している。
【0030】
分流バルブVは、作動油を供給流路3と、排出流路4との一方を選択して送るように構成されている。供給流路3は、第1供給ポートQ1と、第2供給ポートQ2と、第3供給ポートQ3とに連通しており、排出流路4は第1タンクポートT1に連通している。また、リリーフバルブRが開放した際には分岐流路5の作動油が第2タンクポートT2に排出される。
【0031】
分流バルブVは、作動油を制御するスプールを備えており、このスプールは、スプールスプリングVsにより、主流路2の作動油を排出流路4に送り出すポジションに付勢されている。また、スプールは、供給流路3に作動油を供給するポジションに維持できるように作動油からの圧力を受けており、この圧力によりスプールスプリングVsの付勢力に抗して主流路2の作動油を供給流路3に送り出すポジションに維持される。
【0032】
この分流バルブVは、スプールのうちスプールスプリングVsの付勢力が作用する端部に対して、後述する第2高圧選択バルブS2で選択されたパイロット圧を、操作パイロット流路6を介して作用させ、スプールを、主流路2の作動油を排出流路4に送り出すポジションに操作できるように構成されている。
【0033】
これにより、操作パイロット流路6から作用するパイロット圧が予め設定された圧力を超えた場合には、スプールの作動により、主流路2の作動油の一部を排出流路4に送り出し、油圧アクチュエータに作用する過剰な負荷の作用を解消する。
【0034】
〔油路構成:パイロット油路〕
バルブユニットAは、図5図6に示すように第1高圧選択バルブS1と第2高圧選択バルブS2とを収容している。バルブハウジングHは、第3センシングポートSP3と、第1高圧選択バルブS1の一方の入力側との間に第3パイロット流路13を形成し、第2センシングポートSP2と、第1高圧選択バルブS1の他方の入力側との間に第2パイロット流路12を形成している。
【0035】
また、バルブハウジングHは、第1高圧選択バルブS1の出力側と第2センシングポートSP2の一方の入力側との間にパイロット流路(符号は付していない)を形成し、第1センシングポートSP1と、第2高圧選択バルブS2の他方の入力側との間に第1パイロット流路11を形成している。
【0036】
更に、バルブハウジングHは、第2高圧選択バルブS2の出力側からのパイロット圧を分流バルブVのスプールに作用させるように、前述した操作パイロット流路6が形成されている。尚、第1パイロット流路11と、第2パイロット流路12と、第3パイロット流路13とを、パイロット流路PCと称する。このパイロット流路PCはポート(センシングポートSP)に連なる流路の一例である。
【0037】
〔油路構成:高圧選択バルブ〕
第1高圧選択バルブS1と第2高圧選択バルブS2との上位概念を高圧選択バルブと称しており、この高圧選択バルブは、図7に示すように、本体部15aと、ブッシュ部15bと当接状態で配置したプラグ状ケース15と、プラグ状ケース15の内部に収容したボール16とを備えている。プラグ状ケース15は、本体部15aからブッシュ部15bに亘る領域にケース軸芯(プラグ状ケース15の中心の軸芯)に沿う方向に流路孔15cを形成しており、この流路孔15cのうち、本体部15aとブッシュ部15bとの境界の大径部にボール16を収容している。
【0038】
本体部15aは、流路孔15cから本体部15aの外周に連通する入力側連通孔17を備えている。また、本体部15aは、流路孔15cの大径部から、本体部15aの外周に連通する出力側連通孔18を備えている。特に、高圧選択バルブは、ブッシュ部15bに形成された流路孔15cのうちプラグ状ケース15の外端位置と、前述した入力側連通孔17とが入力側として機能し、出力側連通孔18が出力側として機能する。
【0039】
この構成から、高圧選択バルブは、2つの入力側(入力側連通孔17と流路孔15cの端部)に作用するパイロット圧のうち高圧側の圧力によってボール16を低圧側に作動させ、高圧となる圧力を出力側(出力側連通孔18)からの取り出しを可能にしている。
【0040】
このバルブユニットAは、図5に示すように第1高圧選択バルブS1と第2高圧選択バルブS2とを組み合わせることにより、第1センシングポートSP1に作用するパイロット圧と、第2センシングポートSP2に作用するパイロット圧と、第3センシングポートSP3に作用するパイロット圧とのうち、最も高い圧力を、選択して取り出し、分流バルブVに作用させるように構成している。
【0041】
〔センシングポート〕
このバルブユニットAは、作業装置に作用する負荷圧を取得する場合には、図8に示すように、センシングポートSPにホースプラグ21が接続される。これに対して、センシングポートを用いない場合には、そのセンシングポートSPが閉塞プラグ22で閉塞される。このような接続を可能にするため、ホースプラグ21と閉塞プラグ22との雄ネジ部の規格が共通し、複数のセンシングポートSPの雌ネジ部に螺合できるように、これらの雌ネジの規格が共通している。図8に示すように、ホースプラグ21はセンシングホース21bの端部に備えられるものである。
【0042】
ここで、センシングポートSPを閉塞プラグ22で閉塞した状況を考えると、センシングポートSPが閉塞プラグ22で閉塞されることによりセンシングポートSPのパイロット流路PCに対し高圧選択バルブ等からリークしたパイロット油が流入した場合には、パイロット流路PCの圧力を上昇させる、所謂、「こもり圧」を生じ、この「こもり圧」により高圧選択バルブの適正な作動が阻害されることもあった。
【0043】
このような不都合を防止するため、図5図6図8に示すように、パイロット流路PCと第2タンクポートT2とを連通させるドレン流路23がバルブハウジングHに形成され、パイロット流路PCとドレン流路23との間でのパイロット油の流れを制御する圧力制御筒24(流路圧制限体の一例)がパイロット流路PCに挿入する状態で備えられている。
【0044】
図8に示すように、第2センシングポートSP2(センシングポートSP)にホースプラグ21が接続した場合に、圧力制御筒24は、ドレン流路23と第2パイロット流路12(パイロット流路PC)との間でのパイロット油の流れを阻止する非連通位置に保持され、センシングホース21bから作用するパイロット圧をパイロット流路PCに伝えられる。
【0045】
これに対し、図8に示すように第3センシングポートSP3(センシングポートSP)に閉塞プラグ22が接続した場合に、圧力制御筒24は、第3パイロット流路13(パイロット流路PC)とドレン流路23とを連通させる連通位置に保持され、パイロット油をドレン流路23に排出し、「こもり圧」の発生を阻止できるように構成されている。
【0046】
つまり、第1パイロット流路11と、第2パイロット流路12と、第3パイロット流路13との何れのパイロット流路PCとも等しい内径でバルブハウジングHに形成され、これらのパイロット流路PCに連通するようにドレン流路23がバルブハウジングHに形成されている。
【0047】
圧力制御筒24は、パイロット流路PCの内周に密嵌合する外径に成形され、パイロット流路PCの軸芯に沿う方向に移動自在に3つのパイロット流路PCの夫々に挿入されている。また、バルブユニットAは、圧力制御筒24をセンシングポートSPに近接する方向に付勢するスプリング25(付勢部材の一例)をパイロット流路PCの内部に収容している。
【0048】
圧力制御筒24は、圧力制御筒24の軸芯と同軸芯のバイパス流路24aを有する筒状に成形され、外周には全周に亘る流路溝24bが形成されている。この圧力制御筒24は、流路溝24bとバイパス流路24aとを連通させる連通流路24cが形成され、一方の外端(センシングポートSPに近接する側)に小径部24dが形成されている。
【0049】
また、小径部24dと、圧力制御筒24の本体部分の境界には、圧力制御筒24の軸芯に直交する姿勢の段状部24eが形成されている。尚、流路溝24bと連通流路24cとで連通経路が構成されている。また、バイパス流路24aは、圧力制御筒24がパイロット流路PCに挿入された状態で、パイロット流路PCの形成方向と同方向に穿設されている。
【0050】
図8に示すように、ホースプラグ21は、全体的に筒状であり、雄ネジ部の内端側に嵌合突部21aが形成されている。この嵌合突部21aの筒状部分の内径を、圧力制御筒24の小径部24dの外周より大きく設定している。これに対し、閉塞プラグ22は、雄ネジ部の内端側に、閉塞プラグ22の軸芯に直交する端面を有する当接突部22aが形成されている。
【0051】
これにより、図8に示すように、ホースプラグ21を第2センシングポートSP2に装着した場合には、圧力制御筒24の小径部24dが、嵌合突部21aの筒状部の内部に入り込む。これにより圧力制御筒24の段状部24eが、ホースプラグ21の嵌合突部21aの突出端が当接することになり、圧力制御筒24が非連通位置に達し、スプリング25の付勢力が圧力制御筒24を非連通位置に保持する。その結果、バイパス流路24aでパイロット圧が作用する状態を維持しつつ、バイパス流路24aとドレン流路23との連通を間でのパイロット油の漏出が阻止される。
【0052】
これに対し、図8に示すように、閉塞プラグ22を第3センシングポートSP3に装着した場合には、圧力制御筒24の小径部24dの突出端が、閉塞プラグ22の当接突部22aに当接することで圧力制御筒24が連通位置に達し、スプリング25の付勢力が圧力制御筒24を連通位置に保持する。その結果、バイパス流路24aの作動油を連通流路24cと流路溝24bとを介してドレン流路23に排出し、パイロット流路PCの「こもり圧」を解消する。
【0053】
〔実施形態の作用効果〕
図8に示すように、パイロット流路PCに対してドレン流路23が連通する位置を、バルブハウジングHの下端面Haを基準に設定された距離に設定し、圧力制御筒24に形成される流路溝24bの位置を、小径部24dの突出側の端部を基準に設定された距離に設定している。
【0054】
これにより、ホースプラグ21を何れのセンシングポートSPに装着した場合でも、圧力制御筒24を、非連通位置に保持することが可能となる。また 閉塞プラグ22を何れのセンシングポートSPに装着した場合でも、圧力制御筒24を、連通位置に設定することが可能となる。
【0055】
バルブハウジングHの内部にドレン流路23を形成し、パイロット流路PCに圧力制御筒24とスプリング25とを挿入するようにバルブユニットAを構成することにより、ホースプラグ21と閉塞プラグ22との一方を装着した場合には、他に人為的な操作を行わずとも、圧力制御筒24を連通位置と非連通位置との何れかに適正に設定し、パイロット流路PCの適正なパイロット圧の取得を可能にする、あるいは、パイロット流路PCの「こもり圧」の解消が可能となる。
【0056】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(実施形態と同じ機能を有するものには、実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0057】
(a)図9に示すように、閉塞プラグ22に圧力制御筒24(流路圧制限体の一例)を一体的に形成し、ホースプラグ21に筒状体30を一体的に形成する。この別実施形態(a)では、バルブハウジングHに対し、実施形態に示した構成と同様にドレン流路23を形成しており、閉塞プラグ22に一体的に形成される圧力制御筒24は、実施形態の構成と同様にバイパス流路24aと流路溝24bと連通流路24cとが形成されている。
【0058】
また、ホースプラグ21を装着した場合にはパイロット流路PCをドレン流路23に連通させる必要がないため、筒状体30には軸芯に沿って貫通孔30aを形成した構造を有している。この貫通孔30aは、圧力制御筒24のバイパス流路24aと同様にパイロット圧を伝えるように機能する。尚、この別実施形態(a)は、筒状体30に代えて、圧力制御筒24をホースプラグ21に一体形成する構成を採用しても良い。
【0059】
このように構成することにより、閉塞プラグ22をセンシングポートSPに装着した場合には、圧力制御筒24が連通位置に保持されるため、バイパス流路24aとドレン流路23とを連通させ、パイロット流路PCの「こもり圧」を解消できる。更に、ホースプラグ21をセンシングポートSPに装着した場合には、筒状体30が、パイロット流路PCを連通状態に維持できる。
【0060】
(b)圧力制御筒24に形成される連通経路は、実施形態に記載した流路溝24bと連通流路24cとを組み合わせた構成に限るものではない。つまり、例えば、パイロット流路PCの内周に対し、ドレン流路23に連通する環状溝を形成しておくことにより、圧力制御筒24のバイパス流路24aから圧力制御筒24の外周に亘る領域を連通させるように半径方向に穿設される連通孔で連通経路を構成することも可能である。
【0061】
(c)圧力制御筒24に付勢力を作用させるスプリング25(付勢部材の一例)を備えないでバルブユニットAを構成することも考えられる。この他の構成として、スプリング25に代えて、付勢部材として複数のオーリングを用いることも考えられる。
【0062】
(d)バルブユニットAは、車両の油圧アクチュエータに作用する負荷圧が増大した場合に油圧ポンプ1から供給される作動油を、他の油圧アクチュエータに供給するように分流バルブ等を制御するように構成することが可能である。また、このような構成の他に、油圧ポンプ1を可変容量型に構成し、負荷圧の増大を取得した場合に、油圧ポンプ1から供給される作動油の流量を制御するように構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、油を制御するバルブユニットに利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
21 ホースプラグ
21b センシングホース(ホース)
22 閉塞プラグ
23 ドレン流路
24 圧力制御筒(流路圧制御体)
25 スプリング(付勢部材)
24a バイパス流路
24b 流路溝(連通経路)
24c 連通流路(連通経路)
30 筒状体
H バルブハウジング
Q センシングポート(ポート)
PC パイロット流路(ポートに連なる流路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9