(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】エレベーターの乗場の押釦システム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/46 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
B66B1/46 A
(21)【出願番号】P 2020111355
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃司
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-179345(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00512575(EP,A2)
【文献】特開2011-148606(JP,A)
【文献】特開平02-075580(JP,A)
【文献】特開2009-096617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 - 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターの乗場の押釦システムであって、
前記エレベーターの複数の運転モードを有する制御装置と、押釦装置と、を備え、
前記押釦装置は、前記乗場に乗りかごを呼び出す押釦と、複数の前記運転モードのうちの一つの前記運転モードの設定情報が記憶された記憶部と、をそれぞれ有する複数の押釦シートと、複数の前記押釦シートのうちの1枚の前記押釦シートが着脱可能に取り付けられ、取り付けられた前記押釦シートの前記記憶部に記憶された前記設定情報を読み取り前記制御装置に該設定情報を送信する読取部を有する取付部と、を有し、
前記制御装置は、前記読取部から送信される前記設定情報による前記運転モードが設定される、
押釦システム。
【請求項2】
請求項1記載の押釦システムであって、
前記制御装置は、前記押釦シートが前記取付部に取り付けられていない状態が所定時間以上続いた場合には、前記エレベーターを休止させる、
押釦システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の押釦システムであって、
前記運転モードには、少なくとも乗りかごの停止階を限定する運転が含まれる、
押釦システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の押釦システムであって、
前記押釦装置は、前記エレベーターが設けられる建物の入口がある階の前記乗場に設けられる、
押釦システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの乗場の押釦システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターの乗場において乗場扉の近くに設けられ、乗りかごを当該乗場の階に呼び出す押釦は公知である(例えば、特許文献1)。通常、押釦としては上方向又は下方向を示すそれぞれが設けられ、利用客は行先階の方向を示す押釦を押して乗りかごを呼び出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エレベーターは、通常運転以外の運転モードとして、エレベーターの停止階を限定する運転(切り放し機能)、エレベーターの利用を特定の利用者に限定する運転(シークレットコール)等の特別な運転モードを設定することができる。このような特別な運転モードの設定は、乗りかごのかご操作盤のみにて行われている。
【0005】
しかし、このような特別な運転モードの設定を乗場において行いたいというニーズが高まっている。また、乗りかごのかご操作盤にて行われる特別な運転モードの設定は、釦の長押し又は複数の釦の同時押し等の複雑な釦操作を行う必要があり、簡単に行うことができなかった。
【0006】
本発明の目的は、エレベーターの乗場においてエレベーターの運転モードの設定を簡単に行うことができる押釦システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る押釦システムは、エレベーターの乗場の押釦システムであって、エレベーターの複数の運転モードを有する制御装置と、押釦装置と、を備え、押釦装置は、乗場に乗りかごを呼び出す押釦と、複数の運転モードのうちの一つの運転モードの設定情報が記憶された記憶部と、をそれぞれ有する複数の押釦シートと、複数の押釦シートのうちの1枚の押釦シートが着脱可能に取り付けられ、取り付けられた押釦シートの記憶部に記憶された設定情報を読み取り制御装置に設定情報を送信する読取部を有する取付部と、を有し、制御装置は、読取部から送信される設定情報による運転モードが設定される。
【0008】
本発明に係る押釦システムにおいて、制御装置は、押釦シートが取り付け部に取り付けられていない状態が所定時間以上続いた場合には、エレベーターを休止させることが好適である。
【0009】
本発明に係る押釦システムにおいて、運転モードには、少なくとも乗りかごの停止階を限定する運転が含まれることが好適である。
【0010】
本発明に係る押釦システムにおいて、押釦装置は、エレベーターが設けられる建物の入口がある階の前記乗場に設けられることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るエレベーターの乗場の押釦システムによれば、エレベーターの乗場においてエレベーターの運転モードの設定を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係わるエレベーターを示す模式図である。
【
図2】本実施形態の一例である押釦システムを示す模式図である。
【
図3】本実施形態の一例である押釦装置を示す模式図である。
【
図4】本実施形態の一例である制御装置を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態の一例である押釦システムにおける押釦シートと運転モードとの組み合わせを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0014】
図1を用いて、実施形態に係わるエレベーター10について説明する。
図1は、エレベーター10を示す模式図である。
【0015】
図1に例示するように、エレベーター10は、乗りかご11に利用客を乗せ、利用客の要求に応じて乗りかご11を昇降させて各階の乗場12に停止させる昇降機である。エレベーター10は、建物の各階を貫くように形成されると共に乗りかご11を昇降させる昇降路13と、昇降路13の上部に設けられる機械室14とを備える。
【0016】
昇降路13には、昇降ロープ15の一端側に接続される乗りかご11と、昇降ロープ15の他端側に接続される釣合おもり16とが収容される。機械室14には、昇降ロープ15を巻き上げまたは繰り出して乗りかご11を昇降させる巻上機17と、巻上機17の回転を制御することによって乗りかご11の運転(以下、単にエレベーター10の運転)を制御する制御装置40と、が収容される。各階の乗場12には乗場扉18が設けられる。
【0017】
建物の2階には、建物の入口Eが設けられる。なお、建物において入口Eが設けられる階は2階に限定されなくてもよい。2階の乗場12の乗場扉18の近傍には、後述する押釦システム20を構成する押釦装置30が設けられる。
【0018】
図2を用いて、本実施形態の一例である押釦システム20について説明する。
図2は、押釦システム20を示す模式図である。
【0019】
図2に例示するように、押釦システム20は、エレベーター10の2階の乗場12の乗場扉18の近傍に設けられる押釦装置30と、エレベーター10の複数の運転モードを有する上述した制御装置40と、を備える。押釦システム20によれば、詳細は後述するがエレベーター10の2階の乗場においてエレベーター10の運転モードの設定を簡単に行うことができる。押釦装置30及び制御装置40について詳細は後述する。
【0020】
図3を用いて、実施形態の一例である押釦装置30について説明する。
【0021】
図3に例示するように、押釦装置30は、乗場12に乗りかご11を呼び出す押釦32を有するシート状の複数の押釦シート31と、複数の押釦シート31のうちの1枚の押釦シート31が着脱可能に取り付けられる取付部35とを備える。押釦装置30によれば、エレベーター10の乗場12においてエレベーター10の運転モードの設定を簡単に実行することができる。
【0022】
押釦シート31は、矩形のシート状の部材であって、上述したように乗場12に乗りかご11を呼び出す押釦32と、押釦32の操作を信号として出力する出力部33と、上述した運転モードの切替情報が記憶された記憶部34とを有する。複数の押釦シート31のそれぞれの記憶部34には、エレベーター10の運転モードを設定するための設定情報が記憶されている。これにより、押釦シート31を取付部35に取り付けることによって、エレベーター10の運転モードの設定を簡単に実行することができる。
【0023】
押釦32は、押釦シート31の表面に設けられる。押釦シート31は、例えば上方向を表す三角形状の押釦と、下方向を表す三角形状の押釦とを有する。それぞれの押釦は、押されることによって点灯する構成であってもよい。
【0024】
出力部33は、押釦シート31が取付部35に取り付けられた際に、後述する取付部35の入力部37に接触し、押釦32の操作を信号として出力する部分である。出力部33は、押釦シート31の裏面に設けられる。出力部33は、入力部37と接触することなく、入力部37の近傍において押釦32の操作を信号として入力部37に送信する構成であってよい。
【0025】
記憶部34は、押釦シート31が取付部35に取り付けられた際に、後述する取付部35の読取部38に接触し、記憶されたエレベーター10の運転モードの設定情報が読み取られる部分である。記憶部34は、例えばROM(Read Only Memory)であって、記録されている設定情報を読み出すことのみ可能なメモリである。記憶部34は、押釦シート31の裏面に設けられる。
図3に例示する押釦シート31の記憶部34には、通常運転の運転モードの設定情報が記憶されている。
【0026】
取付部35は、押釦シート31が差し込まれる差込部36と、押釦シート31の出力部33から出力される信号が入力される入力部37と、押釦シート31の記憶部34の設定情報を読み取る読取部38とを有する。取付部35によれば、乗りかご11の呼び出し情報及び運転モードの切替情報を制御装置40に送信することができる。
【0027】
差込部36は、乗場扉18の近くに設けられる。差込部36は、例えば矩形の押釦シート31の下縁部、左縁部、右縁部のそれぞれが係合する3つの係合部を有する構成であってもよい。差込部36は、例えば押釦シート31が上方から差し込まれる構成であって、押釦シート31の押釦32のみが表面に露出し、押釦シート31のその他の部分が被装される構成であってもよい。
【0028】
入力部37は、押釦シート31が取付部35に取り付けられた際に、押釦シート31の出力部33に接触し、押釦32の操作の信号が入力される部分である。入力部37によって入力された信号は、制御装置40に送信される。入力部37は、上述したように出力部33と接触することなく、出力部33の近傍において押釦32の操作を信号として受信する構成であってよい。
【0029】
読取部38は、押釦シート31が取付部35に取り付けられた際に、押釦シート31の記憶部34に接触し、運転モードの設定情報を読み取る部分である。読取部38によって読み取られた設定情報は、制御装置40に送信される。
【0030】
図4を用いて、制御装置40について説明する。
図4は、制御装置40の構成を示すブロック図である。
【0031】
制御装置40は、エレベーター10の複数の運転モードを有し、設定された運転モードに従ってエレベーター10の運転を制御する装置である。制御装置40には、制御を実行する演算処理装置としてのCPUと、CPUに接続される記憶装置としてのROM、RAM、ハードディスクドライブ(HDD)と、情報の送受信を行う通信装置とが搭載される。
【0032】
図4に例示するように、制御装置40は、押釦装置30の読取部38と、乗りかご11のかご操作盤とに接続されている。
【0033】
制御装置40は、押釦装置30の読取部38から送信される運転モードの設定情報を取得する運転モード設定情報取得部41と、運転モード設定情報取得部41によって取得された運転モードの運転を許可する許可情報を取得する運転モード許可情報取得部42と、運転モード設定情報取得部41によって取得された運転モード、又は運転モード許可情報取得部42によって許可された運転モードを実行する運転モード実行部43とを有する。
【0034】
運転モード設定情報取得部41は、上述したように押釦装置30の読取部38から送信される運転モードの設定情報を取得する機能を有する。運転モード設定情報取得部41は、押釦装置30の読取部38から運転モードの設定情報が所定時間(例えば10分間)送信されない場合には、休止の運転モードの設定情報を取得する。
【0035】
運転モード許可情報取得部42は、運転モード設定情報取得部41によって設定された運転モードのうちで、さらに利用客の許可が必要な運転モードにおいて利用客の許可を取得する機能を有する。例えば、シークレットコールの運転モードが設定された場合には、利用客が乗りかご11のかご操作盤の押釦による暗証番号の入力が必要である。
【0036】
運転モード実行部43は、運転モード設定情報取得部41によって設定された運転モードを実行する機能を有する。また、運転モード実行部43は、運転モード設定情報取得部41によって設定された運転モードのうちの運転モード許可情報取得部42によって許可された運転モードを実行する機能を有する。
【0037】
図5を用いて、押釦システム20における押釦シート31と運転モードとの組み合わせについて説明する。
図5の表では、紙面に向かって左側から右側の列に向かって、押釦装置30に取り付けられた押釦シート31、設定された運転モードにおける利用客の許可の有無、設定された運転モードの内容を示す。
【0038】
押釦シート31Aは、上方向を表す三角形状の押釦32のみを有する。また、記憶部34には、例えば2階よりも上部階のみにて通常運転を行い、2階よりも下部階には運転しない運転モード(下部階切り放し運転)の設定情報が記憶されている。制御装置40は、押釦シート31Aが取付部35に取り付けられた場合には、乗りかご11を2階よりも下部階には停止しないように運転する。このとき、乗りかご11のかご操作盤の2階よりも下部階の行き先釦は無効となる。
【0039】
押釦シート31Bは、下方向を表す三角形状の押釦32のみを有する。また、記憶部34には、例えば2階よりも下部階のみにて通常運転を行い、2階よりも上部階には運転しない運転モード(上部階切り放し運転)の設定情報が記憶されている。制御装置40は、押釦シート31が取付部35に取り付けられた場合には、乗りかご11を2階よりも下部階には停止しないように運転する。このとき、乗りかご11のかご操作盤の2階よりも上部階の行き先釦は無効となる。
【0040】
押釦シート31Cは、特定階数の表示(本実施形態では5階)のみを有する。また、記憶部34には、例えば特定階数以外の階には停止しない運転モード(5階以外切り放し運転)の設定情報が記憶されている。制御装置40は、押釦シート31Cが取付部35に取り付けられた場合には、乗りかご11を特定階数以外の階には停止しないように運転する。このとき、乗りかご11の特定階数以外の階の行き先釦は無効となる。
【0041】
押釦シート31Dは、例えば上方向を表す矢印の押釦と、下方向を表す矢印の押釦とを有する。また、記憶部34には、通常運転を行う運転モードの設定情報が記憶されている。制御装置40は、押釦シート31Dが取付部35に取り付けられた場合には、通常運転を行う。このようにして、運転モードを変更することなく押釦シート31Dのデザインを変更することもできる。
【0042】
押釦シート31Eは、上方向を表す矢印の押釦と、下方向を示す矢印の押釦と、2F PARKの記載表示とを有する。また、記憶部34には、例えば通常運転において、特に呼び出しがなければ2階に乗りかご11を停止させておく運転モード(2階パーク運転)の設定情報が記憶されている。制御装置40は、押釦シート31Eが取付部35に取り付けられた場合には、乗りかご11を特に呼び出しがなければ2階に乗りかご11を停止させておくように運転する。
【0043】
押釦シート31Fは、上方向を表す三角形状の押釦と、土日祝の記載表示とを有する。また、記憶部34には、例えば土日祝日には上部階の特定階(本実施形態では5階)と2階の往復運転のみを行う運転モード(土日祝5階以外切り放し運転)の設定情報が記憶されている。制御装置40は、押釦シート31Fが取付部35に取り付けられた場合には、土日祝日には5階と2階の往復運転のみを行うように運転する。
【0044】
押釦シート31Gは、上方向を表す三角形状の押釦と、下方向を表す三角形状の押釦と、「VIP」の記載表示とを有する。また、記憶部34には、例えば特定の利用客のみが特定の階(本実施形態では5階)を利用できる運転モード(シークレットコール運転)が記憶されている。制御装置40は、押釦シート31Gが取付部35に取り付けられ、かつ、乗りかご11のかご操作盤の押釦によって暗証番号が入力された場合には、5階まで運転することができる。
【0045】
押釦シート31Hは、「災害」の記載表示を有する。また、記憶部34には、建物が冠水た場合には上部の特定の階(本実施形態では5階)において乗りかご11を停止させて、全ての階の乗場の押釦操作が無効となる運転モードの設定情報が記憶されている。制御装置40は、押釦シート31Gが取付部35に取り付けられた場合には、5階において乗りかご11を停止させて、全ての階の乗場12の押釦操作を無効とする。
【0046】
押釦シート31が取り付けられていない状態が所定時間(例えば10分間)継続した場合には、制御装置40は、運転モードを所定の階(本実施形態では2階)において乗りかご11を開放させる休止モードに設定する。
【0047】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0048】
10 エレベーター、20 押釦システム、21 乗りかご、22 乗場、23 昇降路、24 機械室、25 昇降ロープ、26 釣合おもり、27 巻上機、28 乗場扉、30 押釦装置、31 押釦シート、32 押釦、33 出力部、34 記憶部、35 取付部、36 差込部、37 入力部、38 読取部、40 制御装置、41 運転モード設定情報取得部、42 運転モード許可情報取得部、43 運転モード実行部