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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/00 20060101AFI20240705BHJP
   B66C 23/88 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B66C13/00 D
B66C23/88 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020119550
(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公開番号】P2022016197
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】391033115
【氏名又は名称】株式会社カナモト
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 康如
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 貴文
(72)【発明者】
【氏名】三舩 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 道信
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-080053(JP,A)
【文献】特開2011-055246(JP,A)
【文献】特開2020-053959(JP,A)
【文献】特開2021-060837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00
B66C 23/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンに取付けられ、吊荷下の地上を撮影するカメラと、
前記カメラで撮影される地上に対して立入禁止領域を形成する形成部と、
前記立入禁止領域内へ作業員が立ち入ったか否か検知する検知部と、
前記検知部で前記立入禁止領域内へ作業員が立ち入ったと検知されると警報を報知する報知部と、
を有し、
前記検知部は、前記作業員の移動及び地上に関する条件を定めた学習データを用いて学習された認識モデルを用いて前記検知を行い、
前記認識モデルの学習には、前記作業員の移動に関する条件を作業員の移動速度に応じた秒間のフレーム単位で撮影した学習用カメラ画像を用いることとし、前記地上に関する条件を認識率の異なる複数の地面の種類及び気象条件下として撮影した学習用カメラ画像を前記学習データとして用いている、
監視システム。
【請求項2】
前記立入禁止領域は円形であり、半径は吊荷の大きさに応じて変更する請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記カメラは、広角レンズを有する第1カメラと、前記広角レンズよりも標準的な画角の標準レンズを有する第2カメラとを有し、
前記形成部は、前記カメラの高さに応じて、前記第1カメラのカメラ画像と前記第2カメラのカメラ画像を切り替えて、前記立入禁止領域の大きさを所定範囲内に収める請求項1又は請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記クレーンに取り付けられ、前記カメラの高さを検知する高さ検知器を更に含み、
前記高さ検知器で前記カメラの高さを検知し、
前記形成部は、検知した前記カメラの高さに応じて前記切り替えを制御することで、前記立入禁止領域の大きさを所定範囲内に収める請求項3に記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場において、吊荷は落下する危険があり、吊荷の落下による事故は未然に防ぐことが求められている。事故を未然に防ぐ対策として、玉掛けの際に吊荷の安定性を保持するためのいわゆる玉掛け333運動なども行われているが、これだけでは十分に実効性のある対策にはなっておらず、吊荷の下に立ち入らせない他の手立てが求められている。
【0003】
手法として、例えば、安全対策を実現し得るクレーンの吊荷監視システムに関する技術がある(特許文献1参照)。この技術では、危険領域に人が存在しているか否かを画像解析により判定し、吊り荷周囲の危険領域に人が存在していると判定された場合に警報信号又は非常停止信号を出力している。
【0004】
また、吊荷を移動させる作業がより安全に遂行されるように支援する作業支援装置、及び作業支援方法に関する技術がある(特許文献2参照)。この技術では、揚重装置のブームにおけるブーム先端部の下方の画像に基づいて、検出された作業員の行動に応じて、揚重点を基準に所定の範囲を決定し、支点の下方の画像に基づいて、所定の範囲内における人員を検出し、警告を発するようにしている。また、同様の技術として、作業員の安全性判定のための範囲を、吊荷の揚重状態の安全確認が実施される所定の高さに吊荷が吊揚げられるまでの段階に決定する技術がある(特許文献3参照)。
【0005】
また、オペレータがクレーン及びその吊荷の状態を客観的に把握できるようにするクレーン操縦支援装置に関する技術がある(特許文献4参照)。この技術では、姿勢の計測結果に基づいて可動部モデルを仮想的な三次元空間に配置し、フックブロックの高さを計測する高さを加えた計測結果の計測結果に基づいてフックブロックモデルを三次元空間に配置している。また、計測結果に基づいて吊荷モデルを三次元空間に配置し、可動部モデルの各々、フックブロックモデル及び吊荷モデルを描画処理により表示させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-7134号公報
【文献】特開2018-80053号公報
【文献】特開2018-80054号公報
【文献】特開2019-59593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1~3の技術は、吊荷の画像により作業員を検出して何らかの制御を行っている。特許文献4の技術は、クレーンの制御に係る把握を容易にしている。ここで、揚重作業を行っている場合に、作業員の立ち入りが危険な範囲は、作業の工程に関わらずある範囲で保つ必要があると想定される。特許文献1においての危険領域はどのように定めるかは具体的に定められていない。また、特許文献2及び3においては揚重点を基準にして落下時の影響等を想定し、カメラの高さの変化により危険な範囲が変化することを定めているが、カメラで撮影される地上の範囲については考慮されていない。クレーンを用いた揚重作業においては高さの変化によってカメラにより撮影される地上の範囲が異なってくる。また、カメラで撮影される画像内の地上の範囲が異なれば、地上に設定している危険な範囲についても何等かの考慮が必要である。地上の範囲が異なれば作業員が写り込むサイズも異なってくるが、このように検知対象のサイズに可変が生じてしまうと、作業員の立入禁止領域への立入を即座に検知できない、といったことも懸念される。よって、このようなクレーンを用いた揚重作業において生じる様々な変化にも柔軟に対応でき、作業に意識を集中している作業員に対して、吊荷に近づいたことを確実に知らせることができる監視システムが求められる。また、監視システムの精度向上を図ると共に、導入に係るコストを抑えることも考慮しておきたい。
【0008】
本発明は上記事実を考慮して、コストに配慮し、かつ、精度よく、立入禁止領域への作業員の立入を検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の監視システムは、クレーンに取付けられ、吊荷下の地上を撮影するカメラと、前記カメラで撮影される地上に対して立入禁止領域を形成する形成部と、前記立入禁止領域内へ作業員が立ち入ったか否か検知する検知部と、前記検知部で前記立入禁止領域内へ作業員が立ち入ったと検知されると警報を報知する報知部と、を有する。これにより、コストに配慮し、かつ、精度よく、立入禁止領域への作業員の立入を検知することを可能とする。
【0010】
また、本発明の監視システムにおいて、前記立入禁止領域は円形であり、半径は吊荷の大きさに応じて変更することができる。これにより、吊荷の大きさ、すなわち危険性に応じても、立入検知が必要な立入禁止領域の大きさを定めることができるため、様々な吊荷に対して適切な監視が行える。
【0011】
また、本発明の監視システムにおいて、前記カメラは、広角レンズを有する第1カメラと、前記広角レンズよりも標準的な画角の標準レンズを有する第2カメラとを有し、前記形成部は、前記カメラの高さに応じて、前記第1カメラのカメラ画像と前記第2カメラのカメラ画像を切り替えて、前記立入禁止領域の大きさを所定範囲内に収めることができる。これにより、画角変更が可能な単一のカメラを備えるよりもコストを抑えた構成とすることができる。また、カメラを切り替えて、画角の異なるカメラ画像を撮影し、カメラ画像を切り替えることで、立入禁止領域の大きさをある程度一定に保つことができる。
【0012】
また、本発明の監視システムにおいて、前記クレーンに取り付けられ、前記カメラの高さを検知する高さ検知器を更に含み、前記高さ検知器で前記カメラの高さを検知し、前記形成部は、検知した前記カメラの高さに応じて前記切り替えを制御することで、前記立入禁止領域の大きさを所定範囲内に収めることができる。これにより、高さ検知器で検知した高さに応じて、カメラ画像の切り替えを制御できる。
【0013】
また、本発明の監視システムにおいて、前記検知部は、前記作業員の移動及び地上に関する条件を定めた学習データを用いて学習された認識モデルを用いて前記検知を行うことができる。これにより、現実の環境に即した条件で学習された認識モデルを用いて作業員の立入を検知することになるため、環境の変化に対しても頑健に検知を行うことができ、立入検知の精度向上が期待できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コストに配慮し、かつ、精度よく、立入禁止領域への作業員の立入を検知する、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】監視システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態の監視システムの稼働シーンの一例を示す概略図である。
図3】カメラの画角の違いによる撮影範囲の一例を示す図である。
図4】真上から吊荷を撮影したカメラ画像中に、形成した立入禁止領域を表示した場合の一例を示す模式図である。
図5】監視部の一例を示す斜視図である。
図6】報知部の一例を示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態に係る監視システムにおける監視処理を示すシーケンス図である。
図8】立入検知の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本発明の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の監視システムについて説明する。
【0017】
図1は、監視システム100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、監視システム100は、監視部110と、報知部130とが、ネットワークNを介して接続されている。ネットワークNは、本実施形態では監視部110及び報知部130にそれぞれに内蔵されたWiFiを用いる。
【0018】
図2は、本発明の実施形態の監視システム100の稼働シーンの一例を示す概略図である。図2に示すように、クレーン30のフック32の付近に監視部110が取り付けられており、監視部110にはカメラ112(なお、以下の説明においてカメラ一般を指す場合には単にカメラとも表記する)が内蔵されている。ここで、フック32の付近の監視部110の取り付け箇所は、例えばフックブロックである。また、取り付ける際の方向は、監視部110に内蔵されたカメラ112のレンズが真下方向となるように取り付ける。これにより、カメラ112により吊荷34を見下ろした地上を撮影する。また、吊荷と共に地上を撮影できれば取り付け箇所はフックブロックに限られない。監視部110は、カメラ112で撮影される地上に対して立入禁止領域40を形成している。監視部110は、作業員が立入禁止領域40に侵入したことを検知すると、報知部130に通知し、報知部130が警報を報知して作業員に危険を知らせる。報知部130の配置は、例えば、図2のクレーン30の荷置き場である荷取ヤード側など、クレーン30の付近にいる作業員が視認可能な場所を配置場所にする。これにより、報知部130は警報音の報知によって作業員に危険を報知できると共に、ランプの点灯によっても作業員に危険を報知することができる。
【0019】
次に監視部110及び報知部130の構成態様の一例について説明する。
【0020】
監視部110の各構成について説明する。図1に示したように、監視部110は、カメラ112と、気圧センサ114と、コンピュータ120とを含んで構成されている。カメラ112は、第1カメラ112Aと、第2カメラ112Bとを含んでいる。コンピュータ120は、形成部122と、検知部124と、記憶部126とを含んでいる。コンピュータ120は、CPUと、RAMと、各処理部を実行するためのプログラム及び各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することができる(図示省略)。
【0021】
カメラ112は、広角レンズを有する第1カメラ112Aと、広角レンズよりも標準的な画角の標準レンズを有する第2カメラ112Bで構成されているとする。このように画角の異なる2種類のカメラを用いることで、撮影するカメラ画像において、形成部122で形成する立入禁止領域の大きさを所定の範囲内に収めることができる。もしカメラの画角が一定の場合、揚重作業中にカメラの高さが変化し、カメラ画像における地上の物体の寸法は大きく変化してしまう。図3は、カメラの画角の違いによる撮影範囲の一例を示す図である。図3に示すように、第1カメラ112A及び第2カメラ112Bのそれぞれの画角が異なれば、クレーン30の高さが変化した際に、一定の範囲を撮影することができ、また、カメラ画像における地上の寸法を一定に保つことが可能となる。また、画角の異なるカメラを2種類以上使用することで、ズーム機能等の機能が付随したカメラ、三次元計測が可能なカメラ等のコストの高いカメラを用いなくても、コストを抑えて、かつ、精度のよい監視システム100を構成できるという利点がある。
【0022】
気圧センサ114は、一般的な気圧を検出できるセンサであれば何を用いてもよい。気圧センサ114により、揚重作業の開始時及び作業中に気圧を検出することで、コンピュータ120は検出した気圧差から高さの計算が可能である。なお、気圧センサ114は高さ検知器の一例であり、他の高さを検知可能な手段を用いてもよい。例えば、カメラ画像中の画像解析、レーザレーダ、又は揚重作業を撮影する外部カメラ等を高さ検知器として用いてもよい。
【0023】
形成部122は、カメラ112で撮影される地上に対して立入禁止領域40を形成する。立入禁止領域40は、例えば、半径3m(直径6m)等の想定される吊荷の大きさに合わせた任意の大きさの円を定めればよい。また、吊荷34の大きさに応じて予め定めておく場合、吊荷34の大きさを揚重作業の開始時にカメラ画像等から計算して、大きさを定めるようにしてもよい。図4は、真上から吊荷34を撮影したカメラ画像中に、形成した立入禁止領域40を表示した場合の一例を示す模式図である。
【0024】
また、形成部122は、クレーン30の高さが所定の高さよりも低い位置の時は広角の第1カメラ112Aのカメラ画像を使用し、クレーン30の高さが所定の高さになった時は標準の画角の第2カメラ112Bのカメラ画像を使用するように切り替える。ここでいう所定の高さとは、地上の撮影範囲に対する範囲条件を満たす任意の高さとする。例えば、カメラ画像について、撮影範囲を直径20m以内に収めたい、という範囲条件を設けたとする。この範囲条件は、認識モデルによる検知を精度よく行える範囲とすればよい。この場合、例えば測定などにより事前に第1カメラ112Aの高さごとのカメラ画像の撮影範囲を求めておき、直径20mの撮影範囲になった高さを、所定の高さとして定める。これにより、範囲条件を満たす高さを所定の高さとして定めることができる。また、所定の高さは、第1カメラ112A及び第2カメラ112Bと双方の画角に応じた高さごとの撮影範囲を元に適切な切り替えができる高さに調整して定めてもよい。例えば、範囲条件において、撮影範囲を直径10m以上~20m以内に定めたとする。この場合において、第1カメラ112Aの撮影範囲が直径18mの時点の高さで、第2カメラ112Bの撮影範囲が直径10mになる場合には、当該高さを所定の高さとして定めるようにしてもよい。高さは気圧センサ114の気圧の検出結果から求めておく。形成部122は、カメラ画像の切り替えにおいて、カメラ画像中の立入禁止領域40を予め定めた範囲内に収め、かつ、大きさを一定に保つように所定の高さを定めて制御する。このように、形成部122は、検知したカメラの高さに応じて第1カメラ112A及び第2カメラ112Bの切り替えを制御し、カメラ画像中の立入禁止領域40を所定範囲に収め、かつ、大きさを一定に保つ。これにより、カメラの高さは揚重作業の段階で変化するものの、カメラの高さに関わらず立入禁止領域40を所定範囲に収めることができる。このように立入禁止領域40を所定範囲とするように形成する利点は、範囲が保たれていた方が、検知部124における作業員の立入の検知を精度よく行うことができるからである。なお、当該切り替えの処理は検知部124が処理してもよい。
【0025】
検知部124は、記憶部126の認識モデルを用いて、立入禁止領域40内へ作業員が立ち入ったか否か検知する。検知部124は、カメラ画像を認識モデルに入力し、認識モデルの出力として、カメラ画像中の作業員の検出結果を得る。カメラ画像中の作業員の検出結果と、立入禁止領域40とを照合することにより、立入禁止領域40内へ作業員が立ち入ったか否かを検知する。カメラ画像と立入禁止領域40との照合は、気圧から計算した高さ、及び当該カメラ画像を撮影したカメラ112(第1カメラ112A又は第2カメラ112B)の画角により計算すればよい。検知部124は、作業員が立ち入ったことを検知すると、立入検知信号を報知部130に送信する。また、検知部124は、立ち入りを検知しない場合には正常信号を報知部130に送信する。
【0026】
記憶部126には、カメラ画像に作業員の存在を検出するための予め学習された認識モデルが格納されている。学習手法は、DNN(ディープニューラルネットワーク)による画像認識手法を用いる。認識モデルは、DNNの学習データとして、作業員が作業する様子を真上から撮影した数百~数万枚以上収集した大量の学習用カメラ画像を用いればよい。また、学習用データは、作業員の移動に関する条件、及び地上に関する条件を定める。作業員の移動に関する条件とは、例えば、連続撮影された学習用カメラ画像として、作業員の移動速度にあわせた状態の変化を捉えるように1秒間に5~1フレーム程度の画像を用いて検知を行うようにした。また、地上に関する条件としては、複数の地面の種類で撮影した学習用カメラ画像とする。これは、地面の条件が黒いアスファルト上であれば認識率は高いものの、このような認識率が高い地面の学習用カメラ画像だけで学習しただけでは、多様な色が混じっている地面(例えばコンクリート又は敷き鉄板)の場合は認識率が低下する可能性があるからである。よって、このような多様な地面の条件下にも対応した認識モデルを学習させる。また、地面だけでなく気象条件によって地上の光の反射具合も関係することから、様々な気象条件下で撮影された学習用カメラ画像も用いる。
【0027】
報知部130の各構成について説明する。図1に示したように、報知部130は、第1点灯ランプ132と、第2点灯ランプ134と、警報ブザー136と、報知制御部138とを含んで構成されている。
【0028】
第1点灯ランプ132及び第2点灯ランプ134はそれぞれが異なる色で回転して点灯する回転警告灯である。本実施形態では、例えば、第1点灯ランプ132が立入検知時に点灯し、他のデータ通信異常発生時等に点灯するように設定されている。警報ブザー136は予め定められた警報音を報知するブザーである。
【0029】
報知制御部138は、監視部110から立入検知信号を受け付けると、第1点灯ランプ132を回転点灯させ、警報ブザー136による警報音を報知するように制御する。また、例えば、立入検知信号を受け付けている時間が長い場合に、第1点灯ランプ132及び第2点灯ランプ134の両方を回転点灯させ、警報音の音量を大きくする等の制御を行ってもよい。
【0030】
次に監視部110及び報知部130を実寸構成の一例について図を参照して説明する。図5は、監視部110の一例を示す斜視図である。図5に示すように、監視部110は長方形型のボックス型の装置として構成できる。監視部110のボックスには、底部にカメラ112(第1カメラ112A及び第2カメラ112B)が配置されており、地上の撮影を可能とするようにカメラ112のレンズを表出させた状態にしている。また、ボックス内の蓋の対面側には気圧センサ114兼コンピュータ120を配置し、その他、コンピュータ120の稼働に必要なバッテリ115及び報知部130との通信に必要なWiFiアンテナ116をそれぞれ配置している。なお、監視部110をボックス型の形状とするのはあくまで一例であり、他の形状でもよい。例えば、カメラ112及びコンピュータ120等を同一面に並べた平面型とする等、適宜、クレーン30のフック32の付近に取り付けられる形状であればよい。
【0031】
図6は、報知部130の一例を示す斜視図である。図6に示すように、報知部130は、報知装置として、第1点灯ランプ132、第2点灯ランプ134、及び警報ブザー136が上面に設置され、報知制御部138を内蔵している。第1点灯ランプ132、及び第2点灯ランプ134はそれぞれ異なる色となるように配色された半透明のグローブを備えている。
【0032】
次に、本発明の実施形態の監視システム100の作用について説明する。図7は、本発明の実施形態に係る監視システム100における監視処理を示すシーケンス図である。なお、監視部110のコンピュータ120はCPUがROMからプログラム及び各種データを読み出して実行することにより、各種処理を行う。CPUが、コンピュータ120の各部として機能する。以下の監視処理は、例えば、外部のコンピュータから揚重作業の作業開始信号を受け付けて開始すればよい。なお、気圧センサ114は開始時点から気圧を検出しているとする。
【0033】
ステップS100では、監視部110の形成部122は、作業開始時に、立入禁止領域40を形成する。なお、カメラ画像から計算した吊荷34の大きさを元に立入禁止領域40を形成する場合、ステップS100とステップS102とを入れ替えてもよい。また、吊荷34の大きさに関わらず立入禁止領域40の大きさを予め定めておく場合には、事前に立入禁止領域40を形成しておいてもよい。
【0034】
ステップS102では、カメラ112は、作業開始に伴い、地上の撮影を開始し、カメラ画像を生成する。なお、作業開始時点では第1カメラ112Aのカメラ画像を用いるように設定されているが、即座にカメラ画像を切り替えることができるように第1カメラ112A及び第2カメラ112Bのいずれも撮影し、カメラ画像を生成する。
【0035】
ステップS104では、形成部122は、気圧センサ114の気圧の検出結果から高さを検知し、所定の高さ以上であるか否かを判定する。所定の高さ以上と判定された場合にはステップS106へ移行し、所定の高さ以上でないと判定した場合にはステップS108へ移行する。
【0036】
ステップS106では、形成部122は、カメラ画像を切り替える。以降のステップでは切り替えたカメラ画像を用いて処理を行う。ここでは第1カメラ112Aで撮影しているカメラ画像から第2カメラ112Bで撮影しているカメラ画像に切り替える。
【0037】
ステップS108では、検知部124は、記憶部126の認識モデルを用いて、立入禁止領域40内へ作業員が立ち入ったか否か検知する。立ち入っていると判定された場合にはステップS110へ移行し、立ち入っていると判定されなかった場合にはステップS112へ移行する。
ここで検知部124による作業員の立ち入りの検知は、カメラ画像を認識モデルに入力し、認識モデルの出力として、カメラ画像中の作業員の検出結果を得る。そして、カメラ画像中の作業員の検出結果と、立入禁止領域40とを照合することにより、立入禁止領域40内へ作業員が立ち入ったか否かを検知する。
【0038】
ステップS110では、検知部124は、立入検知信号を報知部130に送信する。
【0039】
ステップS112では、検知部124は、正常信号を報知部130に送信する。
【0040】
また、監視部110の処理は、ステップS110又はS112の送信の処理の後はステップS122へ移行する。
【0041】
ステップS114では、報知部130の報知制御部138は、立入検知信号を受け付けたか否かを判定する。立入検知信号を受け付けた場合にはステップS116へ移行し、立入検知信号を受け付けていない場合にはステップS118へ移行する。
【0042】
ステップS116では、報知制御部138は、第1点灯ランプ132を回転点灯させ、警報ブザー136による警報音を報知するように制御する。このような制御により、監視部110の検知部124から立入検知信号を受信している間は作業員に対する警報が報知される。
【0043】
ステップS118では、何らかの信号(本実施形態では、立入検知信号又は正常信号)を一定時間の間に受け付けたか否かを判定する。受け付けている場合には処理を終了し、受け付けていない場合にはステップS120へ移行する。
【0044】
ステップS120では、報知制御部138は、第2点灯ランプ134を回転点灯させ、データ通信に異常が発生している旨を報知するように制御する。
【0045】
ステップS122では、監視部110の検知部124が、作業が終了したか否かを判定する。終了している場合には監視処理を終了し、終了していない場合にはステップS104に戻って処理を繰り返す。当該処理における作業の終了判定は、外部のコンピュータから作業終了信号等を受け付けることにより判定すればよい。
【0046】
ここで、検知部124の立入検知について図を参照して説明する。図8は、立入検知の一例を示す図である。図8左に示すように、作業員が立入禁止領域40の境界の外側にいる場合には、立入禁止領域40に立ち入っていないとして、検知部124は正常信号を送信するので、警報は報知されない。図8右に示すように作業員が立入禁止領域40の境界に接触又は内側に入り込んだ場合には、立入禁止領域40に立ち入っているとして、検知部124は立入検知信号を送信するので、これにより作業員に対する警報が報知される。
【0047】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る監視システム100によれば、コストに配慮し、かつ、精度よく、立入禁止領域への作業員の立入を検知することができる。
【0048】
また、吊荷とクレーン操作室との間に障害物がある場合など、作業員が吊荷を直接視認できないときなどに立入検知を即座に報知することで、事故防止において特に効果を発揮する。
【0049】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、第1カメラ112Aを広角とし、第2カメラ112Bを標準の画角とする態様について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1カメラ112A及び第2カメラ112Bとして同様の画角のカメラを用いて、監視部110内の配置によって、カメラ画像の視野角を広げるようにしてもよい。この場合、カメラ画像の切り替えは不要となるが、常に両方のカメラ画像を用いて立入検知を行う。これにより一方のカメラ画像の吊荷34等の死角に作業員が入った場合でも立入を検知できる。
【符号の説明】
【0051】
30 クレーン
32 フック
34 吊荷
40 立入禁止領域
100 監視システム
110 監視部
112 カメラ
112A 第1カメラ
112B 第2カメラ
114 気圧センサ
115 バッテリ
116 アンテナ
120 コンピュータ
122 形成部
124 検知部
126 記憶部
130 報知部
132 第1点灯ランプ
134 第2点灯ランプ
136 警報ブザー
138 報知制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8