(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】点灯制御装置、照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/14 20200101AFI20240705BHJP
H05B 45/24 20200101ALI20240705BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20240705BHJP
【FI】
H05B47/14
H05B45/24
H05B47/16
(21)【出願番号】P 2020125043
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】河井 周平
(72)【発明者】
【氏名】浅賀 久
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友希
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-098718(JP,A)
【文献】特開2014-156215(JP,A)
【文献】特表2015-515251(JP,A)
【文献】特開2018-125938(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0033482(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子群に対して時分割で電力を供給する点灯制御装置であって、
前記複数の発光素子群と接続されておりパルス波形の電力を供給する電力供給部と、
前記複数の発光素子群の各々と前記電力供給部との間に接続される複数のスイッチング素子と、
前記電力供給部から前記複数の発光素子群に至る電流経路に接続されており当該電流経路に流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路と接続されており当該電流検出回路により検出される前記電流をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、
前記複数のスイッチング素子と接続されており、前記電流の立ち上がり及び立ち下がりの各時期と前記アナログデジタル変換器から得られる前記デジタル信号に基づいて、前記複数のスイッチング素子の各々の開閉を制御するコントローラと、
を含み、
前記コントローラは、前記電流の立ち上がりの時期からピーク値に至るまでの間を少なくとも含む
期間であって前記電流の立ち下がり時期を含まない期間である第1期間における前記電流に対応する前記デジタル信号を用いて当該第1期間における前記電流の値を求め、当該第1期間の電流の値を用いて前記立ち上がりから前記立ち下がりまでの期間における前記電流の平均値を求め、当該電流の平均値に基づいて前記複数のスイッチング素子の各々の開状態の時間を増減させる、
点灯制御装置。
【請求項2】
前記電流検出回路と接続されており当該電流検出回路により検出される前記電流の立ち上がり及び立ち下がりを検出する波形検出回路、を更に備え、
前記コントローラは、前記第1期間の経過後から前記電流の前記立ち下がりの時期までの間を少なくとも含む第2期間の長さを前記波形検出回路の出力に基づいて求め、当該第2期間の長さを用いて前記電流の平均値を求める、
請求項1に記載の点灯制御装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1期間における前記電流の第1平均値を前記デジタル信号とそのサンプリング周期に基づいて求め、前記第2期間における前記電流の第2平均値を前記第1期間の終期から前記電流の立ち下がりの時期までの時間の長さに基づいて求め、当該第1平均値及び第2平均値に基づいて前記電流の平均値を求める、
請求項2に記載の点灯制御装置。
【請求項4】
前記電力供給部は、昇圧モード、降圧モード、昇降圧モードのうち少なくとも2つの動作モードを自律的に切り替えて動作するDC-DCコンバータである、
請求項1~3の何れか1項に記載の点灯制御装置。
【請求項5】
前記アナログデジタル変換器は、前記コントローラに内蔵されている、
請求項1~4の何れか1項に記載の点灯制御装置。
【請求項6】
前記電流検出回路は、前記電流経路上に接続される抵抗素子と、当該抵抗素子に流れる電流を電圧に変換する変換部とを含み、
前記アナログデジタル変換器は、前記変換部から得られる前記電圧をデジタル信号に変換する、
請求項1~5の何れか1項に記載の点灯制御装置。
【請求項7】
前記複数の発光素子群は、各々の負荷の大きさが異なっており、前記複数の発光素子群の各々の点灯時に流れる電流のピーク値が互いに異なる、
請求項1~6の何れか1項に記載の点灯制御装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載の点灯制御装置と、
前記点灯制御装置と接続されて時分割で電力を供給される複数の発光素子群と、
を含む、照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、点灯制御装置、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各々が1つ以上の発光素子を含む複数の発光素子グループ(発光素子群)に対し、当該各グループの発光時期が重ならないように時分割駆動する点灯制御方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような点灯制御方法は、タイムシェア制御とも称される。
【0003】
上記の時分割駆動による点灯制御方法を用いる場合、例えばDC-DCコンバータにより生成される電圧を各グループの発光素子へ時分割で与え、その際に流れる電流を検出してDC-DCコンバータへフィードバックすることにより、各グループの発光素子に対して与える電圧を適切な大きさに制御する。このとき、電流の検出精度が低下する場合があり、それに伴ってフィードバック制御の精度が低下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示に係る具体的態様は、時分割駆動による点灯制御を行う際のフィードバック制御の精度を向上させることを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本開示に係る一態様の点灯制御装置は、(a)複数の発光素子群に対して時分割で電力を供給する点灯制御装置であって、(b)前記複数の発光素子群と接続されておりパルス波形の電力を供給する電力供給部と、(c)前記複数の発光素子群の各々と前記電力供給部との間に接続される複数のスイッチング素子と、(d)前記電力供給部から前記複数の発光素子群に至る電流経路に接続されており当該電流経路に流れる電流を検出する電流検出回路と、(e)前記電流検出回路と接続されており当該電流検出回路により検出される前記電流をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器と、(f)前記複数のスイッチング素子と接続されており、前記電流の立ち上がり及び立ち下がりの各時期と前記アナログデジタル変換器から得られる前記デジタル信号に基づいて、前記複数のスイッチング素子の各々の開閉を制御するコントローラと、を含み、(g)前記コントローラは、前記電流の立ち上がりの時期からピーク値に至るまでの間を少なくとも含む期間であって前記電流の立ち下がり時期を含まない期間である第1期間における前記電流に対応する前記デジタル信号を用いて当該第1期間における前記電流の値を求め、当該第1期間の電流の値を用いて前記立ち上がりから前記立ち下がりまでの期間における前記電流の平均値を求め、当該電流の平均値に基づいて前記複数のスイッチング素子の各々の開状態の時間を増減させる、点灯制御装置である。
[2]本開示に係る一態様の照明装置は、上記[1]の点灯制御装置と、この点灯制御装置と接続されて時分割で電力を供給される複数の発光素子群と、を含む、照明装置である。
【0007】
なお、本開示において「接続(接続されている)」とは、対象物Aと対象物Bとが配線などを介して直接的に接続されている場合と、対象物Aと対象物Bとの間に他の対象物Cが介在させて配線などを介して間接的に接続されている場合のいずれの場合も含み得る。
【0008】
上記構成によれば、時分割駆動による点灯制御を行う際のフィードバック制御の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の点灯制御装置並びにこの点灯制御装置によって制御される発光素子群の構成を示す図である。
【
図2】
図2(A)~
図2(F)は、点灯制御装置の基本的な動作を説明するためのタイミングチャートである。
【
図3】
図3(A)、
図3(B)の各々は、DC-DCコンバータの出力電圧と発光素子群に流れる電流の関係を示す波形図である。
【
図4】
図4(A)は、電流検出方法について説明するための波形図である。
図4(B)は、フィードバック制御の方法について説明するための波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、一実施形態の点灯制御装置並びにこの点灯制御装置によって制御される発光素子群の構成を示す図である。図示の点灯制御装置1は、電源2から電力供給を受けて駆動電圧を生成し、この駆動電圧(電力)を時分割で発光素子群3a、3bに供給する。本実施形態の点灯制御装置1は、車両に備わる種々のランプを構成する各発光素子群3a、3bを制御する。電源2は、例えば車両に備わったバッテリである。点灯制御装置1と発光素子群3aと発光素子群3bは、照明装置の一例である車両用灯具を構成している。発光素子群3aは、例えばロービーム(すれ違い灯)を照射するために用いられ、発光素子群3bは、例えばハイビーム(走行灯)を照射するために用いられる。
【0011】
点灯制御装置1は、DC-DCコンバータ10、電流検出回路11、コントローラ12、点灯時間検出回路13、2つのスイッチング素子14a、14bを含んで構成されている。なお、点灯時間検出回路が「波形検出回路」に対応する。
【0012】
DC-DCコンバータ10は、電源2と接続されており、この電源2から得られる直流電圧を昇圧し、または降圧することにより、発光素子群3aまたは発光素子群3bの駆動に適した電圧値の出力電圧(駆動電圧)を生成する。
【0013】
電流検出回路11は、DC-DCコンバータ10と接続されており、このDC-DCコンバータ10の動作に必要な信号を生成するものであり、抵抗素子20、ピーク電流検出部21、I/V変換部(変換部)22を含んで構成されている。この電流検出回路11は、例えば集積回路を含んで構成される。
【0014】
抵抗素子20は、DC-DCコンバータ10と各発光素子群3a、3bとの間をつなぐ配線(すなわち電流経路上)に接続されている。
【0015】
ピーク電流検出部21は、抵抗素子20の両端に接続されており、この抵抗素子20を流れる最大の電流(ピーク電流)を検出する。詳細には、電流検出部21は、DC-DCコンバータ10と接続されており、抵抗素子20に流れるピーク電流の大きさに応じて可変する電圧信号を生成してその電圧信号をDC-DCコンバータ10へ供給する。DC-DCコンバータ10は、この電圧信号をフィードバック信号として用いてピーク電流が略一定に保たれるように出力電圧を調整する。
【0016】
I/V変換部22は、ピーク電流検出部21を介して抵抗素子20を流れる電流を取得し、この電流(I)を電圧(V)の信号に変換する。
【0017】
コントローラ12は、スイッチング素子14a、14bの開閉動作を制御する。このコントローラ12は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するコンピュータシステムを用い、このコンピュータシステムにおいて所定の動作プログラムを実行させることによって実現されるものである。本実施形態のコントローラ12は、アナログデジタル変換器(ADC)23を内蔵している。
【0018】
アナログデジタル変換器(ADC)23は、I/V変換部22と接続されており、I/V変換部22から入力される電圧をデジタル信号に変換する。なお、本実施形態ではアナログデジタル変換器23はコントローラ12に内蔵されているが、内蔵されずに別体であってもよい。
【0019】
点灯時間検出回路13は、発光素子群3aまたは発光素子群3bの点灯時間を検出するための回路であり、I/V変換部22と接続されているとともに、コントローラ12と接続されている。この点灯時間検出回路13は、コンパレータ24を有する。
【0020】
コンパレータ(比較器)24は、一方の入力端がI/V変換部22と接続され、他方の入力端がリファレンス電圧Vrfを供給するリファレンス電源4と接続されており、出力端がコントローラ12と接続されている。このコンパレータ24は、I/V変換部22から出力される電圧とリファレンス電圧Vrfの大小関係に応じて出力端からの出力電圧が相対的に大きさの異なる2つの値のいずれかとなるものである。リファレンス電圧Vrfを適宜に設定しておくことで、抵抗素子20に電流が流れている間だけ出力端からの電圧が第1値(例えば、ハイレベル)となり、実質的に電流が流れていない間は第2値(例えば、ローレベル)となる。すなわち、コンパレータ24を含む本実施形態の点灯時間検出回路13は、電流の立ち上がりと立ち下がりの各時期を検出する波形検出回路としての作用を有する。したがって、コントローラ12は、コンパレータ24の出力端の電圧の大きさに基づいて発光素子群3aまたは発光素子群3bの点灯時間を判断することができる。
【0021】
スイッチング素子14aは、第1入出力端が抵抗素子20を介してDC-DCコンバータ10と接続され、第2入出力端が発光素子群3aと接続され、制御端がコントローラ12と接続されている。このスイッチング素子14aは、コントローラ12から制御端に与えられる制御信号に応じてオン/オフが制御される。ここでいう「オン」とは、第1入力端と第2入力端の間に電流が流れやすい状態(開状態)となることをいい、「オフ」とは、第1入力端と第2入力端の間に電流が実質的に流れない状態(閉状態)となることをいう。
【0022】
スイッチング素子14bは、第1入出力端が抵抗素子20を介してDC-DCコンバータ10と接続され、第2入出力端が発光素子群3bと接続され、制御端がコントローラ12と接続されている。このスイッチング素子14bは、コントローラ12から制御端に与えられる制御信号に応じてオン/オフが制御される。ここでいう「オン」、「オフ」の意味については上記と同様である。
【0023】
本実施形態では、図中、スイッチング素子14a、14bの一例として電界効果型トランジスタを示しているがこれに限定されない。各スイッチング素子14a、14bは、例えばバイポーラトランジスタであってもよい。本実施形態では、これらのスイッチング素子14a、14bのオン/オフがコントローラ12によって時分割で制御されることにより、発光素子群3aと発光素子群3bが互いに同時に点灯することなく時分割で点灯するように制御される。
【0024】
発光素子群3aは、直列接続された5つの発光素子(LED)を含み、一方端がDC-DCコンバータ10と接続され、他方端が基準電位端(いわゆるGND)と接続されている。発光素子群3bは、直列接続された8つの発光素子(LED)を含み、一方端がDC-DCコンバータ10と接続され、他方端が基準電位端(いわゆるGND)と接続されている。本実施形態では、発光素子群3aと発光素子群3bは、DC-DCコンバータ10に対して並列に接続されている。また、発光素子群3aと発光素子群3bは、互いに発光素子の数が異なっているため、各々の全体としての負荷(抵抗値)の大きさが異なっている。
【0025】
図2(A)~
図2(F)は、点灯制御装置の基本的な動作を説明するためのタイミングチャートである。詳細には、
図2(A)はスイッチング素子14aのオン/オフの状態を示す波形図であり、
図2(B)はスイッチング素子14bのオン/オフの状態を示す波形図であり、
図2(C)はDC-DCコンバータ10のPWM制御によるオン/オフの状態を示す波形図である、
図2(D)は発光素子群3aに流れる電流の波形であり、
図2(E)は発光素子群3bに流れる電流の波形であり、
図2(F)はDC-DCコンバータ10の出力電圧の波形である。なお、
図2(A)および
図2(B)において波形が相対的にハイレベルである場合が各スイッチング素子14a、14bの「オン」を示し、波形が相対的にローレベルである場合が各スイッチング素子14a、14bの「オフ」を示す。また、
図2(C)において波形が相対的にハイレベルである場合がDC-DCコンバータ10から電圧が出力される状態を示し、波形が相対的にローレベルである場合がDC-DCコンバータ10から電圧が出力されない状態を示す。
【0026】
図2(C)に示されるように、DC-DCコンバータ10は、PWM(Pulse Width Modulation)制御されており、所定ディーティ比でオン/オフを繰り返してパルス波形の電圧を生成する。DC-DCコンバータ10のディーティがオンのときに、スイッチング素子14aがオン状態になると(
図2(A))、遅延時間td1(例えば10μs)を経てDC-DCコンバータ10の出力電圧が上昇して、発光素子群3aの負荷に対応した一定値となる(
図2(F))。このとき、DC-DCコンバータ10の出力電圧は一定値に至るまでにある程度の時間をかけて漸増するので、発光素子群3aに流れる電流もこれに対応して漸増した後、一定値で推移する(
図2(D))。その後、スイッチング素子14aがオフ状態になると(
図2(A))、発光素子群3aに流れる電流は実質的に0となる(
図2(D))。なお、遅延時間td1を設けているのは、DC-DCコンバータ10の出力が開始する前に発光素子群3aを導通状態にしておき、DC-DCコンバータ10の異常昇圧を防止するためである。
【0027】
スイッチング素子14aがオフ状態になってから一定時間を経て、スイッチング素子14bがオン状態になると(
図2(B))、DC-DCコンバータ10のPWM信号がオンになるまでの間の遅延時間td2(例えば10μs)を経てDC-DCコンバータ10の出力電圧が上昇し、その後出力電圧は発光素子群3bの負荷に対応した一定値となる(
図2(F))。このように本実施形態では、スイッチング素子14bをオン状態にした後に、DC-DCコンバータ10の出力電圧を上昇させている。なお、遅延時間td2を設けているのは上記した遅延時間td1の場合と同様にDC-DCコンバータ10の異常昇圧を防止するためである。
【0028】
本実施形態では、発光素子群3aよりも発光素子群3bの負荷が大きいので出力電圧も大きくなる。このため、出力電圧が一定値に至るまでに要する時間も長くなる。発光素子群3bに流れる電流は、DC-DCコンバータ10の出力電圧の漸増に対応して漸増した後、一定値で推移する(
図2(E))。その後、スイッチング素子14bがオフ状態になると(
図2(B))、発光素子群3bに流れる電流は実質的に0となる(
図2(E))。
【0029】
スイッチング素子14aがオン状態になった後にオフ状態となり、その後スイッチング素子14bがオン状態になった後にオフ状態となり、一定時間が経過して次にスイッチング素子14aがオン状態になるまでの間を1周期と定義すると、この1周期の長さTは、例えば5000μs(200Hzに相当)程度にすることができる。本実施形態では、1周期内において、スイッチング素子14aのオン期間のほうがスイッチング素子14bのオン期間よりも相対的に長く設定されている。
【0030】
発光素子群3aに流れる電流は、その1周期Tでの平均値が例えば1.3Aとなるようにピーク電流値とデューティの目標値が設定される。同様に、発光素子群3bに流れる電流は、その1周期Tでの平均値が例えば0.05Aとなるようにピーク電流値とデューティの目標値が設定される。これらのデューティについては上記したスイッチング素子14a、14bのオン期間とオフ期間によって設定できる。
【0031】
ここで、本実施形態のDC-DCコンバータ10は、ピーク電流が略一定となるように出力電圧が制御される。このため、発光素子群3a、3bの各々に流れる電流の平均値を増減するためには、電流の流れる時間を増減させるとよい。本実施形態では、コントローラ12がスイッチング素子14a、14bのオン期間とオフ期間の長さを可変設定することにより、発光素子群3a、3bの各々に電流の流れる時間を増減させる。
【0032】
図3(A)、
図3(B)の各々は、DC-DCコンバータの出力電圧と発光素子群に流れる電流の関係を示す波形図である。各図において上段は出力電圧、下段は電流を示している。本実施形態のDC-DCコンバータ10は、出力電圧の大きさに応じて、昇圧モード、昇降圧モード、降圧モードの3つの制御モードを自動的に切り替える制御を行う。このため、電源2からの入力電圧とDC-DCコンバータ10の出力電圧との関係が制御モードの切り替わり電圧に至った際には、出力電圧の立ち上がり時間に遅延を発生する。
【0033】
制御モードの切り替えが生じない場合には、
図3(A)上段に示すように出力電圧が一次関数的(直線的)に上昇した後に一定値で推移し、それに伴って
図3(A)下段に示すように電流も同様の推移を示す。この場合には、電流の流れる時間(点灯時間)tを検出することでDC-DCコンバータ10の出力電圧を精度よく制御できる。
【0034】
他方、制御モードの切り替えが生じる場合には、
図3(B)上段に示すように出力電圧が一次関数的には増加せず、途中で制御モードの切り替わりにより出力電圧が上昇しない期間を挟んで段階的に出力電圧が増加する。このため、
図3(B)下段に示すように電流もすぐにはピーク電流(Ipk)まで至らず、その間に相対的に低い電流の期間を挟むことになる。この場合には、電流の流れる時間(点灯時間)tを検出するのみではDC-DCコンバータ10の出力電圧を精度よく制御することが難しい。制御モードの切り替えがない場合と比べて、発光素子群3a(または3b)に流れる電流の平均値が低下するためのである。このため、本実施形態では、点灯時間検出回路13によって検出される電流の立ち上がりと立ち下がりに基づいて、コントローラ12にて各スイッチング素子14a、14bをオンとする時間を制御することにより、電流を適切な値に近づける制御を行う。以下、その内容について詳細に説明する。
【0035】
図4(A)は、電流検出方法について説明するための波形図である。なお、実際には抵抗素子20に流れる電流がI/V変換部22によって電圧に変換され、この電圧を介して電流の大きさが検出されるので、
図4(A)ではこの電圧波形を示す。コントローラ12は、点灯時間検出回路13から出力される電圧信号の電圧レベル(ハイ/ロー)に基づいて電流の立ち上がり時期(始期)を検出する。また、コントローラ12は、一定のサンプリング周期ΔtでI/V変換部22から出力される電圧信号をアナログデジタル変換器23によってデジタル信号に変換して取り込む。図中、理解を容易にするためにサンプリング点を黒丸で例示する。
【0036】
コントローラ12は、電流の立ち上がり時期からピーク電流(Ipk)に至るまでの間を少なくとも含む第1期間(本実施形態ではピーク電流Ipkに至った後に一定時間が経過するまでの間も含む)では、アナログデジタル変換器23によって得られるデジタル信号に基づいて電流の値を取得する。また、コントローラ12は、電流がピーク電流(Ipk)に至った後から立ち下がり時期(終期)までの間を少なくとも含む第2期間では、点灯時間検出回路13の出力電圧に基づいて、電流の流れる時間を検出する。具体的には、コントローラ12は、点灯時間検出回路13から出力される電圧信号の電圧レベル(ハイ/ロー)に基づいて電流の立ち下がり時期を検出する。第2期間の始期から電流の立ち下がり時期までの時間が第2期間の時間となる。なお、第1期間と第2期間の境界はコントローラ12が適宜設定する。
【0037】
電流の立ち上がりに対応する第1期間ではアナログデジタル変換器23によるデジタル信号を用いることで波形変化を的確に検出することができる。他方、第1期間と第2期間を合わせた全期間の波形変化をアナログデジタル変換器23のデジタル信号に基づいて検出した場合、サンプリング周波数が電流の急峻な立ち下がりに追随できず電流の立ち下がりの時期(第2期間の終期)を的確に検出できない可能性がある。このため、第2期間の終期についてはアナログ回路からなる点灯時間検出回路13を用いて検出し、そのコンパレータ23の出力端の電圧をロジック信号(デジタル信号)として扱ってコントローラ12のデジタル信号用の入力ポートから取り込むことで、終期をより的確に検出することができる。
【0038】
コントローラ12は、第1期間における各サンプリング点での電流の大きさをサンプリング周期に基づいて積分するとともに、第2期間におけるピーク電流の大きさとその流れる時間を積算し、それらを合算して平均をとることにより、第1期間、第2期間の全体での平均的な電流の大きさ(電流平均値)を求める。そして、コントローラ12は、この電流平均値を予め設定した基準値と比較し、その差分に応じて、
図4(B)に示すように、発光素子群3a(または3b)に電流を流す時間(導通時間)を増減する。具体的には、図示のように導通時間の終期を前後させることによって導通時間の長さを増減する。例えば、電流平均値が基準値よりも小さい場合には、その差分に応じて導通時間をより長くする。また、電流平均値が基準値よりも大きい場合には、その差分に応じて導通時間をより短くする。具体的には、コントローラ12は、各スイッチング素子14a、14bのオンの期間の長さを制御することによって導通時間を増減する。これにより、電流平均値に応じた的確なフィードバック制御を実現することができる。
【0039】
以上の通り、本実施形態によれば、複数の発光素子群に対して分割駆動による点灯制御を行う際のフィードバック制御の精度を向上させることができる。
【0040】
なお、本開示は上記した実施形態の内容に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。例えば、上記した実施形態では2つの発光素子群に対して時分割駆動を行う場合を例示していたが、発光素子群の数は3つまたはそれ以上であってもよい。また、発光素子群のそれぞれに含まれる発光素子の数も例示であり、上記した実施形態のものに限定されない。本開示において発光素子群の各々に含まれる発光素子の数は少なくとも1つ以上であればよい。また、発光素子群の用途は車両用灯具に限定されず、種々の照明装置を対象とすることができる。
【0041】
また、上記した実施形態では各発光素子群への電流の供給時間(導通時間)を増減することでフィードバック制御を実現していたが、ピーク電流を増減させることによってフィードバック制御を実現してもよい。この場合は電流平均値に応じてコントローラ12から制御信号をDC-DCコンバータ10に供給し、出力電圧を増減させることによってピーク電流を増減させればよい。さらに、このようなピーク電流による制御と導通時間による制御を組み合わせて用いてもよい。また、各発光素子群へ供給される電流のピーク電流値および/または平均電流値は同じであってもよいし異なってもよい。
【0042】
また、上記した実施形態では電流の立ち下がり時期についてアナログ回路である点灯時間検出回路を用いて検出していたが、アナログデジタル変換器のサンプリング周期が十分に短い場合には立ち下がり時期についてもアナログデジタル変換器から得られるデジタル信号に基づいて検出してもよい。
【0043】
また、上記した実施形態のDC-DCコンバータは、3つの制御モードを備えていたが、少なくとも2つの制御モードを備えていればよい。また、上記した実施形態ではパルス波形の電力を供給する電力供給部の一例としてDC-DCコンバータを用いていたが電力供給部はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1:点灯制御装置、2:電源、3a、3b:発光素子群、4:リファレンス電源、10:DC-DCコンバータ、11:制御回路、12:コントローラ、13:点灯時間検出回路、14a、14b:スイッチング素子、15:抵抗素子、21:ピーク電流検出部、22:I/V変換部、23:アナログデジタル変換器、24:コンパレータ