(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】照明用光学系
(51)【国際特許分類】
F21V 9/40 20180101AFI20240705BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240705BHJP
F21S 41/64 20180101ALI20240705BHJP
F21V 9/14 20060101ALI20240705BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20240705BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240705BHJP
【FI】
F21V9/40 400
G02F1/13 505
F21S41/64
F21V9/14
F21W102:13
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020125731
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100091340
【氏名又は名称】高橋 敬四郎
(72)【発明者】
【氏名】岩本 宜久
(72)【発明者】
【氏名】北園 卓也
【審査官】河村 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-071192(JP,A)
【文献】特開2019-110084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 9/40
G02F 1/13
F21S 41/00
F21V 9/14
F21W 102/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射する照明光の光軸に沿って
順に積層配置された第1の偏光子、第1の液晶素子、第2の偏光子、第2の液晶素子、第3の偏光子を含み、
前記第1、第2の液晶素子の少なくとも1つは視野内の第1の領域の配光を調節する複数の電極パターンを含み、
前記第1、第2、第3の偏光子の少なくとも1つは、視野内の前記第1の領域と重ならない第2の領域に対応する領域には配置されていない、
照明用光学系。
【請求項2】
光源から出射する照明光の光軸に沿って配置された第1の偏光子、第1の液晶素子、第2の偏光子、第2の液晶素子、第3の偏光子を含み、
前記第1、第2の液晶素子の少なくとも1つは視野内の第1の領域の配光を調節する複数の電極パターンを含み、
前記第1、第2、第3の偏光子の少なくとも1つは、視野内の前記第1の領域と重ならない第2の領域に対応する領域には配置されていない、
照明用光学系であって、
前記第1の偏光子、前記第1の液晶素子、前記第2の偏光子の重なり領域がノーマリーホワイトモードを実現し、前記第3の偏光子が視野内の前記第2の領域に相当する領域には配置されていず、前記第2の偏光子、前記第2の液晶素子、前記第3の偏光子の重なり領域がノーマリーブラックモードを実現する、
照明用光学系。
【請求項3】
光源から出射する照明光の光軸に沿って配置された第1の偏光子、第1の液晶素子、第2の偏光子、第2の液晶素子、第3の偏光子を含み、
前記第1、第2の液晶素子の少なくとも1つは視野内の第1の領域の配光を調節する複数の電極パターンを含み、
前記第1、第2、第3の偏光子の少なくとも1つは、視野内の前記第1の領域と重ならない第2の領域に対応する領域には配置されていない、
照明用光学系であって、
前記第1の偏光子が視野内の前記第2の領域に相当する領域には配置されていず、前記第1の偏光子、前記第1の液晶素子、前記第2の偏光子の重なり領域がノーマリーブラックモードを実現し、前記第2の偏光子、前記第2の液晶素子、前記第3の偏光子がノーマリーホワイトモードを実現する、
照明用光学系。
【請求項4】
光源から出射する照明光の光軸に沿って配置された第1の偏光子、第1の液晶素子、第2の偏光子、第2の液晶素子、第3の偏光子を含み、
前記第1、第2の液晶素子の少なくとも1つは視野内の第1の領域の配光を調節する複数の電極パターンを含み、
前記第1、第2、第3の偏光子の少なくとも1つは、視野内の前記第1の領域と重ならない第2の領域に対応する領域には配置されていない、
照明用光学系であって、
前記第2の偏光子が視野内の前記第2の領域に相当する領域には配置されていず、前記第1の偏光子、前記第1の液晶素子、前記第2の液晶素子、前記第3の偏光子の重なり領域がノーマリーホワイトモードを実現し、前記第2の偏光子、前記第2の液晶素子、前記第3の偏光子の重なり領域がノーマリーブラックモードを実現する、
照明用光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯等に適した照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用前照灯において、前方の状況、即ち対向車や前走車等の有無及びその位置に応じて配光形状をリアルタイムで制御する技術(adaptive driving beam ADB等と呼ばれる)が注目されている。
【0003】
この技術によれば、例えば走行用の配光形状すなわちハイビームでの走行中に対向車を検出した場合、前照灯に照射される領域の内、当該対向車の領域のみに向う光をリアルタイムで低減することが可能となる。ドライバに対しては常にハイビームに近い視界を与え、その一方で対向車に対しては眩惑光(グレア)を与えることを防止できる。
【0004】
また、車両の進行方向を変化させる場合、ハンドルの舵角に合わせて進行しようとする方向の配光を調整する前照灯システム(adaptive front-lighting systemAFS等と呼ばれる)が一般化されつつある。
【0005】
複数のLED素子を配列してマトリクスLEDを形成し、所望領域内のLED素子のオン/オフを制御することによりADB機能を実現すれば、信頼性の高いシステムを構成できるであろう。但し、個々のLEDのオン/オフを制御しようとすると、マトリクスLED内のLED素子数に応じた電源が必要になる。構成が複雑化し、コストが嵩んでしまう。
【0006】
光源から供給される照明光を1平面上に供給し、その平面に、入射側偏光子、駆動電極を備えた1対の基板間に液晶層を配置した液晶素子、出射側偏光子を含む液晶素子を配置し、駆動電極の電位を変化させることにより、液晶素子内で照明光のスイッチングを行うことが可能である。照明に必要な光強度を形成するために、例えば複数のLED光源を用いるとしてもその数は限られ、光源用の電源は極めて簡単な構成でよい。液晶素子および液晶素子用制御装置は、要求される機能に応じて、極めて容易かつ安価に入手できる。液晶素子を用いる車両用前照灯の構成は、光源、光源用電源、液晶素子、液晶素子制御回路、制御電源等を含むものとなろう。
【0007】
液晶素子を用いる車両用前照灯において、液晶素子の制御回路等に故障が起きることが考えられる。車両用前照灯の機能として、何らかの故障が生じた時も安全を維持できるフェールセーフ機能を備えることが望まれる。制御回路等の故障時に、照明が失われてしまうと最も危険な状態となる。自車両の近傍の照明は維持して、自車両近傍(近場)の歩行者、他の車両の安全を図ることが必要である。言い換えると、制御回路などの故障時にも、安全を維持するため、近場の照明は維持するノーマリーホワイトの構成とするのが好ましい。
【0008】
一方、制御回路等の故障時にも、ハイビームが照射され続け、対向車にハイビームを照射し、対向車の運転手にグレアを与えることは好ましくない。制御回路等に故障が起きた場合には、対向車に対するグレアを防止するため、遠場の照明は断つノーマリーブラックの構成とするのが好ましい。
【0009】
ノーマリーホワイトの構成例として以下のような構成が考えられる:(1)垂直配向セルの両側にパラレルニコル偏光子を配置する構成;(2)面内配向方向が全厚さ方向で90度回転するツイステッドネマチックセルの両側に、隣接する液晶分子配向方向と平行な(相互には直交する)偏光軸を持つ偏光子を配置する構成;(3)全液晶分子の配光が無電界で面内の第1の方向に揃っており、電圧印加により面内で第1の方向に直交する第2の方向に液晶分子の配向が変化するIPSセルの両側に、第1の方向と平行な偏光軸を持つパラレルニコル偏光子を配置する構成。
【0010】
ノーマリーブラックの構成例として以下のような構成が考えられる:(1)垂直配向セルの両側にクロスニコル偏光子を配置する構成;(2)ツイステッドネマチックセルの入力側、出力側の少なくとも一方の液晶分子配向方向と直交するパラレルニコル偏光子を配置する構成;(3)全液晶分子の配向が無電界で面内の第1の方向に揃っており、電圧印加で全液晶分子の配向が面内で第1の方向に直交する第2の方向に変化するIPSセルの両側に、第1の方向と垂直な偏光軸を持つパラレルニコル偏光子を配置する構成。
【0011】
例えば特許文献1は、
図1に示すように、光源106と、入射側偏光子110と、TN(ツイステッドネマチック)型液晶素子109と、出射側偏光子111とを光軸上に配置し、投影レンズ112を介して反転投影を行う車両用前照灯であって、出射側偏光子111を偏光軸方向が直交する上下2領域111d、111cに分割し、入射側偏光子110と合わせて、上側領域はクロスニコル偏光子を構成し、下側領域はパラレルニコル偏光子を構成する構造を提案している。
【0012】
液晶素子に制御電圧が印加されない時、液晶素子に入射する偏光はTN動作により偏光軸を90度回転する。クロスニコル偏光子に挟まれた上側液晶素子部は透光(ノーマリーホワイト)し、パラレルニコル偏光子に挟まれた下側液晶素子部は遮光(ノーマリーブラック)する。投影レンズで反転投影されると、上側領域を通過した照明光により、近場の照明のみがされることになる。
【0013】
但し、本構成のポイントとなる、ノーマリーホワイト領域とノーマリーブラック領域とを並列的に実現する、偏光方向の直交する上下領域を含む偏光子をどのように作成できるかの実施可能開示は見い出せない。
【0014】
図2Aは、前照灯システムの概略構成を示すブロック図である。前照灯システム200は、左右それぞれの車両用前照灯100、配光制御ユニット102、前方監視ユニット104等を備えている。車両用前照灯100は、LEDからなる光源と、液晶装置を用いた配光制御装置と、投影レンズと、それらを収容する灯体等を有する。
【0015】
車載カメラ108、レーダ106、車速センサ107等の各種センサが接続されている前方監視ユニット104は、センサから取得した撮像データを画像処理し、前方車両(対向車や先行車)やその他の路上光輝物体、区画線(レーンマーク)を検出し、それらの属性や位置等配光制御に必要なデータを算出する。算出されたデータは車内LAN等を介して配光制御ユニット102や各種車載機器に発信される。
【0016】
車速センサ107、舵角センサ114、GPSナビゲーション116、前照灯スイッチ118等が接続されている配光制御ユニット102は、前方監視ユニット104から送出されてくる路上光輝物体の属性(対向車、先行車、反射器、道路照明)、その位置(前方、側方)と車速に基づいて、その走行場面に対応した配光パターンを決定する。配光制御ユニット102は、その配光パターンを実現するために必要な配光可変前照灯の制御量を決定する。
【0017】
ドライバ120は、配光制御ユニット102からの制御量の情報を、前照灯100内の駆動装置や配光制御素子の動作に対応した命令に変換すると共にそれらを制御する。
【0018】
図2Bは、前照灯100に相当する照明装置の構成例を示す断面図である。LED等の光源106を出た光は、リフレクタ121により反射され、液晶素子109に集光される。液晶素子の前後には1枚ずつの偏光子P1,P2が配置される。液晶素子109の上側領域に沿ってλ/2波長板113が配置されている。上側領域のみに設けられたλ/2波長板113は、上側領域に入射する波長λの直線偏光を90度回転させる。上側領域の波長λの透過偏光は、下側領域の波長λの透過偏光に対して、偏光方向が90度異なる(直交する)ことになる。
【0019】
液晶素子109を通過した光は再び広がりながら投影光学系112のレンズに入光する。レンズ112を出た光は前方に投影される。液晶素子109の電極パターン部分がレンズの焦点になるように設計配置されている。液晶素子109の電極パターンに接続された端子部は、配光制御ユニット、駆動回路を含む制御回路125に接続されている。リフレクタをレンズ光学系に置換することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2019-071192号公報
【文献】特開2019-114358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ADB動作が可能な液晶装置を含み、かつ液晶装置の故障時にはフェールセーフの安全措置ができる実用的な照明用光学系が求められている。フェールセーフの安全措置としては、ロービームが投影されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の実施例によれば、
光源から出射する照明光の光軸に沿って順に積層配置された第1の偏光子、第1の液晶素子、第2の偏光子、第2の液晶素子、第3の偏光子を含み、
前記第1、第2の液晶素子の少なくとも1つは視野内の第1の領域の配光を調節する複数の電極パターンを含み、
前記第1、第2、第3の偏光子の少なくとも1つは、視野内の前記第1の領域と重ならない第2の領域に対応する領域には配置されていない、
照明用光学系
が提供される。
【0023】
前記第2の領域、すなわちロービームエリアに偏光子が配置されていないと、入射する光が遮光されない。ロービームエリアをノーマリーホワイト照明して、フェールセーフ構成を形成するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】特許文献1の提案する、クロスニコルとパラレルニコルとを並列的に有する車両用前照灯の分解斜視図である。
【
図2】
図2Aは一般的な前照灯の概略構成を示すブロック図であり、
図2Bは前照灯に相当する照明装置の構成例を示す断面図である。
【
図3】
図3A,3B,3Cは、第1の実施例による照明用光学系を示す概略断面図、機能略示図、詳細機能表である。
【
図4】
図4A,4B,4Cは、第2の実施例による照明用光学系を示す概略断面図、機能略示図、詳細機能表である。
【
図5】
図5A,5B,5Cは、第3の実施例による照明用光学系を示す概略断面図、機能略示図、詳細機能表である。
【符号の説明】
【0025】
LS 光源、 P 偏光子、
LC 液晶素子
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の実施例
図3A,3B,3Cは、第1の実施例による照明用光学系を示す。
図3Aは、光学系の概略断面図であり、光源LSから出射する発光の光軸上に、第1偏光子P1,第1液晶素子LC1,第2偏光子P2,第2液晶素子LC2,第3偏光子P3がこの順序で配置されている。
【0027】
図3Bに光源以外の各構成要素の例をより具体的に示す。第1偏光子P1の吸収軸は偏光子のxy面内でx軸から約45度の角度に配置されている。第1の偏光子P1から出射する光は略135度の偏光角を持つ直線偏光となる。第1の液晶素子LC1は、駆動電圧無印加時に、液晶分子が基板面にほぼ平行に配向し、配向方向が基板間で左ねじれ方向に略90度ねじれるツイステッドネマチック(TN)モードを形成する。両基板面の液晶層側配向方位は隣接する偏光子透過軸に対し略平行又は略直交に配置する。前記液晶素子の液晶層中央分子配向方位は2つの偏光子の透過軸に対し略45度に配置されている。x軸から略135度の偏光角を持つ直線偏光は90度回転して、略225度の偏光角を持つようになる。第2の偏光子P2はx軸から略135度の吸収軸を有し、略225度の偏光角を持つ直線偏光を透過する。第1偏光子P1,第1液晶素子LC1,第2偏光子P2はノーマリーホワイトモードを構成する。
【0028】
第2液晶素子LC2は、例えば垂直配向(VA)モードであり、駆動電圧無印加状態では入射する偏光の偏光軸を変化させない。駆動電圧を印加されると、液晶分子が垂直配向から例えば基板面内y軸方向成分を持つように変位する。第3偏光子P3は、xy面内で約45度の角度の吸収軸を有し、下側のHi領域(第1の領域に関連する)のみに存在し、上側のLo領域(第2の領域に関連する)には存在しない。
【0029】
下側のHi領域では第2偏光子P2と第3偏光子P3がクロスニコル偏光子を構成するので、駆動電圧無印加時には入射光は遮光される。駆動電圧印加時には、直線偏光が一部解消され、光が透過するようになる。上側領域では第3偏光子P3が存在しないので、第2液晶素子LC2を透過してきた光はそのまま出射する。
【0030】
図3Cは、第1偏光子P1から第1液晶素子LC1に入射した偏光が、第1液晶素子LC1、第2液晶素子LC2の駆動電圧印加(On)/無印加(Off)状態に応じて、第2偏光子P2の後、および第3偏光子P3の後でどのように変化するかを、第3偏光子P3の状態と共に示す表である。
【0031】
第1液晶素子LC1が駆動電圧無印加状態(Off)であれば、入射光の偏光軸を約90度回転し、第2偏光子P2から出射する。この動作を
図3Cでは、LC1が「Off」の時、P2後が「明」と表記されている。第1液晶素子LC1が駆動電圧印加状態(On)であれば、TN液晶分子が基板垂直方向に立ち上がり、入射した偏光は回転されず、偏光方向が直交する第2偏光子P2で遮光される。この動作が、LC1が「On」、P2後「暗」と表記されている。第1偏光子P1、第1液晶素子LC1、および第2偏光子P2は、ノーマリーホワイトモードを実現している。
【0032】
前記第1液晶素子においては内部に少なくともLo/Hi領域を分割する複数の電極が配置される。Lo領域には電極が配置されずHi領域のみに配置されていてもよい。
【0033】
第2偏光子の出射側にはHi照射パターンを形成するための垂直配向(VA)型の第2液晶素子を配置し、第2液晶素子の出射側にはHi領域のみをカバーする第3偏光子が配置されている。表中、P3の欄は、第3偏光子P3が存在しない状態を、「窓」と表記している。窓状態では、第2液晶素子LC2を透過した光はそのまま出射する。Lo領域のP3後の状態はP2後の状態と等しくなる。
【0034】
第2液晶素子LC2が駆動電圧無印加(Off)であれば、VAセルは偏光を変化させないので、Hi領域のクロスニコル偏光子P2-P3は入射光を遮光する。P2後が「暗」であった状態は更に遮光されて「暗暗」となり、P2後が「明」であった状態は「暗」となる。
【0035】
第2の液晶素子LC2が駆動電圧印加(On)であれば、垂直配向の液晶分子が基板に対して水平になるよう傾き、複屈折率効果が生じて、透光状態となる。P2後が「暗」の場合は、LC2の動作に関わらずそのまま「暗」となり、P2後が「明」であれば、そのまま「明」となる。
【0036】
第2の偏光子P2から第2の液晶素子LC2を介して第3の偏光子P3までのHi領域の構成は、ノーマリーブラックモードを形成する。
【0037】
第2の実施例
図4A,4B,4Cは、第2の実施例による照明用光学系を示す概略断面図、機能略示図、詳細機能表である。
図4Aに示すように、光源LSから出射する発光の光軸上に、Hi領域のみに配置された第1偏光子P1、少なくともHi領域に配向パターンを有する垂直配向(VA)型の第1液晶素子LC1、Lo/Hi領域を内包する第2偏光子P2、Lo/Hi領域を内包し、第1液晶素子LC1のHi領域の配光パターンに関連する複数のセグメント分割パターンを有するツイステッドネマチック(TN)型の第2の液晶素子LC2、第3の偏光子P3がこの順序で配置されている。
【0038】
図4Bに示すように、下側のHi領域のみに配置された第1偏光子P1の吸収軸は偏光子のxy面内でx軸から略45度に配置されている。第1の偏光子P1から出射する光はx軸から略135度の偏光角を持つ直線偏光となる。第1の液晶素子LC1は、例えば垂直配向(VA)モードであり、駆動電圧無印加時には液晶分子が基板面にほぼ垂直に配向し、入射する直線偏光の偏光角度を変化させない。第1偏光子P1で偏光した入射光はクロスニコル配置の第2偏光子P2で遮光される。
【0039】
第1液晶素子LC1に駆動電圧を印加されると、液晶分子は基板に対して水平になるように変位する。例えば、第1液晶素子LC1に駆動電圧印加時、液晶層の中央の液晶配向方位は偏光軸に対し45度とする。第2の偏光子P2はx軸から略135度の吸収軸を有し、x軸から略45度の偏光角を持つ直線偏光を透過させる。
【0040】
Hi領域のみに存在する第1偏光子P1,第1液晶素子LC1,第2偏光子P2は、Hi領域にノーマリーブラックモードを構成する。Lo領域における、第1偏光子の窓、第1液晶素子LC1、第2偏光子P2は、第2偏光子P2の偏光軸に平行な偏光を透過する明領域を形成する。
【0041】
第2偏光子P2の後段にTN配向の第2液晶素子LC2が配置され、その後段に第3偏光子P3が配置されている。第1偏光子P1にLo領域がなく、第2偏光子P2のLo領域から出射する光は、x軸から略45度の偏光角を有する偏光となる。駆動電圧無印加時の第2TNモード液晶素子LC2を通過する偏光は、偏光方向を略90度回転してx軸から略135度の偏光となり、第3の偏光子P3を透過する。液晶素子LC2に駆動電圧を印加すると液晶素子内の偏光回転がなくなり、クロスニコル配置の第2偏光子P2、第3偏光子P3が遮光機能を持つ。
【0042】
第2偏光子P2、第2液晶素子LC2、第3偏光子P3は、ノーマリーホワイトモードを実現できる。例えば、第2偏光子P2の透過軸と第3偏光子P3の透過軸とを、クロスニコル配置とし、第2液晶素子LC2をTN配向液晶層とすればよい。
【0043】
第2液晶素子LC2に駆動電圧を印加して、第2、第3偏光子P2,P3が暗状態を構成すれば、グレアをさらに低減できる。
【0044】
図4Cは、第1偏光子P1から第1液晶素子LC1に入射した偏光が、第1液晶素子LC1、第2液晶素子LC2の駆動電圧印加(On)/無印加(Off)状態に応じて、第2偏光子P2の後、および第3偏光子P3の後でどのように変化するかを、第1偏光子P1の状態と共に示す表である。
【0045】
第1偏光子P1は、Hi領域にのみ存在し、Lo領域は入射光が透過する窓となる。Hi領域において、第1液晶素子LC1が駆動電圧無印加状態(Off)であれば、垂直配向(VA)液晶の第1液晶素子は入射偏光の偏光軸を変化せず、クロスニコル偏光子の第1偏光子P1,第2偏光子P2は遮光する。この動作を
図4Cでは、LC1が「Off」の時、P2後が「暗」と表記している。
【0046】
第1液晶素子LC1が駆動電圧印加状態(On)になれば、液晶分子が基板に対して水平に変化して複屈折効果により、第1偏光子P1,第2偏光子P2を透過する成分が生じる。
図4Cでは、LC1が「On」の時、P2後が「明」と表記している。
【0047】
Hi領域の第1偏光子P1、第1液晶素子LC1、および第2偏光子P2は、ノーマリーブラックモードを実現している。第1偏光子P1が存在しないLo領域には第1偏光子が存在せず、第1液晶素子LC1の動作状態に依存せず、入射光は第2偏光子P2を透過し、「明」となる。
【0048】
第2の液晶素子LC2に駆動電圧無印加(Off)であれば、TNセルは偏光を90度回転し、第3の偏光子P3を透過させる。P2後が「明」であった状態は「明」、P2後が「暗」であった状態は「暗」のままとなる。
【0049】
駆動電圧を印加(On)すれば、偏光回転がなくなり、クロスニコル偏光子の第2偏光子P2,第3偏光子P3が遮光状態を形成する。P2後が「暗」であった状態は更に遮光されて「暗暗」となり、P2後が「明」であった状態は「暗」となる。第2の偏光子P2から第2の液晶素子LC2を介して第3の偏光子P3までのHi領域の構成は、ノーマリーホワイトモードを形成する。
【0050】
図5A,5B,5Cは、第3の実施例による照明用光学系を示す概略断面図、機能略示図、詳細機能表である。
図5Aに示すように、光源LSから出射する発光の光軸上に、Lo/Hi領域を内包する第1偏光子P1、少なくともHi領域に配向パターンを有する垂直配向(VA)型の第1液晶素子LC1、Hi領域のみに配置された第2偏光子P2、Lo/Hi領域を内包し、第1液晶素子LC1のHi領域の配光パターンに関連する複数のセグメント分割パターンを有する垂直配向(VA)型の第2の液晶素子LC2、第3の偏光子P3がこの順序で配置されている。
【0051】
図5Bに示すように、第1偏光子P1の吸収軸は偏光子のxy面内でx軸から略45度に配置されている。第1偏光子P1から出射する光はx軸から略135度の偏光角を持つ直線偏光となる。第1液晶素子LC1は、例えば垂直配向(VA)モードであり、駆動電圧無印加時には液晶分子が基板面に完全または略垂直に配向し、入射する直線偏光の偏光角度を変化させない。駆動電圧を印加されると、液晶分子は基板に対して水平に変位する。例えば、第1液晶素子LC1に駆動電圧印加時、液晶層の配向方位は偏光軸に対し45度とする。
【0052】
第2偏光子P2は、Hi領域にのみ存在し、Lo領域には存在しない。Hi領域では、x軸から略135度の吸収軸を有し、x軸から略45度の偏光角を持つ直線偏光を透過させる。第1偏光子P1と第2偏光子P2とはクロスニコル偏光子を構成する。
【0053】
第1偏光子P1,第1液晶素子LC1,Hi領域のみに存在する第2偏光子P2は、Hi領域にノーマリーブラックモードを構成する。Lo領域は、第2偏光子P2が存在しない(窓部のみの)ため、光が透過する明状態となる。
【0054】
Hi領域の第2偏光子P2、第2液晶素子LC2、第3偏光子P3の構成により、ノーマリーブラックモードを実現できる。例えば、第2液晶素子LC2を垂直配向(VA)モードとし、第2偏光子P2の透過軸と第3偏光子P3の透過軸とを、クロスニコル配置とすればよい。
【0055】
第2偏光子P2はHi領域にのみ存在する。Lo領域においては、第1偏光子P1,第1液晶素子LC1,第2液晶素子LC2,第3偏光子P3が存在する。
【0056】
図5Cに示すように、第2偏光子P2は、Hi領域のみに存在し、Lo領域では単に光を通過させる窓となる。Lo領域には、第2偏光子P2による遮光機能は形成されず、P2後は「明」となる。
【0057】
Lo領域において、第1偏光子P1,第3偏光子P3はパラレルニコルを構成している。第1液晶素子LC1、第2液晶素子LC2共に駆動電圧無印加(Off)であれば、偏光軸の回転は生ぜず、第3偏光子P3後に光が到達し、「明」となる。
【0058】
第1液晶素子LC1、第2液晶素子LC2が共にOnの場合、2回の偏光軸の回転によって偏光軸の方向が元に戻り、第3偏光子P3後は「明」となる。
【0059】
第1液晶素子LC1、第2液晶素子LC2のいずれか一方がOnの場合、偏光軸の回転が生じて第3偏光子P3が遮光の機能を得、第3偏光子P3後は「暗」となる。
【0060】
Hi領域においては、第1液晶素子LC1と第2液晶素子LC2との間に第2偏光子P2が存在する。第1液晶素子LC1の駆動電圧無印加Offの場合、第1偏光子P1で偏光した入射光はクロスニコル配置の第2偏光子P2で遮光され、第2偏光子P2後が「暗」となる。第1液晶素子LC1が駆動電圧印加Onとなると、複屈折効果が生じて、第2偏光子P2を透過する光成分が生じ、第2偏光子P2後が「明」となる。
【0061】
第2液晶素子LC2が駆動電圧印加Onであれば、第2偏光子P2を通過した偏光に複屈折効果が生じ、第3偏光子P3後が「明」となる。第2液晶素子LC2が駆動電圧無印加Offであれば、第2偏光子P2を通過した偏光に偏光は変化せず、第3偏光子P3が遮光機能を示し、第3偏光子P3後が「暗」となる。
【0062】
第2偏光子P2が入射光を遮光し、第2偏光子P2後が「暗」の場合、第2液晶素子LC2,第3偏光子P3への入射光はない。第2液晶素子LC2が駆動電圧印加On状態であれば、複屈折効果の可能性、光透過の可能性があるが、そもそもの入射光がないので、第3偏光子P3後は「暗」となる。第2液晶素子LC2が駆動電圧無印加Offであれば、第2液晶素子LC2における複屈折効果はなく、第2偏光子P2,第3偏光子P3のクロスニコル構成により遮光機能が生じ、第3偏光子P3後は「暗暗」となる。グレアがさらに低減されうる。
【0063】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限られるものではない。種々の変形、改良、組み合わせ、置換などが可能なことは当業者に自明であろう。