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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】床鋼板が係合配置される床構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/40 20060101AFI20240705BHJP
   E04B 5/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
E04B5/40 B
E04B5/02 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020126397
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023449
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小田島 暢之
(72)【発明者】
【氏名】岡村 祥子
(72)【発明者】
【氏名】川野 翔平
(72)【発明者】
【氏名】田渕 浩司
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-115413(JP,U)
【文献】特開2001-081728(JP,A)
【文献】特開2000-297410(JP,A)
【文献】特開2003-147726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 - 5/48
E01D 1/00 -24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の梁と、
隣り合う前記梁に架け渡された複数の床鋼板を含んで構成された床ユニットと、
を備え、
前記床鋼板の外周部には前記床鋼板の面内方向に沿う凹凸部が形成されており、互いに隣り合う前記床鋼板は、前記凹凸部同士が係合して配置され、
前記床鋼板には、前記梁の上面に溶接されたスタッドボルトが挿通された貫通孔が形成されている、
床鋼板が係合配置される床構造。
【請求項2】
複数の梁と、
隣り合う前記梁に架け渡された複数の床鋼板を含んで構成された床ユニットと、
前記床鋼板の上に打設されたコンクリートと、
を備え、
前記床鋼板の外周部には前記床鋼板の面内方向に沿う凹凸部が形成されており、互いに隣り合う前記床鋼板は、前記凹凸部同士が係合して配置されている、
床鋼板が係合配置される床構造。
【請求項3】
複数の梁と、
隣り合う前記梁に架け渡された複数の床鋼板を含んで構成された床ユニットと、
を備え、
前記床鋼板の外周部には前記床鋼板の面内方向に沿う凹凸部が形成されており、
互いに隣り合う前記床鋼板は、前記凹凸部同士が係合して配置され、
互いに隣り合う前記床鋼板の前記凹凸部は離間しており、離間した部分には、互いに隣り合う前記床鋼板同士でせん断力を伝達する伝達材が充填されている、
床鋼板が係合配置される床構造。
【請求項4】
前記凹凸部において、隣り合う前記床鋼板同士が対向する方向と交わる方向の端部の外縁には、折曲部が形成されており、
対向する前記折曲部の間に前記伝達材が充填されている、請求項3に記載の床鋼板が係合配置される床構造。
【請求項5】
前記床鋼板の板厚をaとし、前記床鋼板の単位面積あたりの圧縮強度をbとし、前記折曲部の折り曲げ高さをcとし、前記伝達材の単位面積あたりの圧縮強度をdとすると、下記(1)式が成り立つ、
請求項4に記載の床鋼板が係合配置される床構造。
a*b≦c*d・・・・・・・・・・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床鋼板が係合配置される床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数の床鋼板を接合して鋼板型枠を形成し、この鋼板型枠にコンクリートを打設した床構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-110935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の合成床を構成する床構造では、矩形状の床鋼板を縦横に並べ、隣り合う床鋼板同士を溶接することにより、床鋼板の板面に沿った面内せん断力を床鋼板同士で伝達するものがある。
【0005】
しかしながら、溶接を建設現場で行う場合、当該作業に工数がかかるため、工期が長くなる。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、溶接を用いずに、互いに隣り合う床鋼板同士で面内せん断力を伝達できる床鋼板が係合配置される床構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の床鋼板が係合配置される床構造は、複数の梁と、隣り合う前記梁に架け渡された複数の床鋼板を含んで構成された床ユニットと、を備え、前記床鋼板の外周部には前記床鋼板の面内方向に沿う凹凸部が形成されており、互いに隣り合う前記床鋼板は、前記凹凸部同士が係合して配置され、前記床鋼板には、前記梁の上面に溶接されたスタッドボルトが挿通された貫通孔が形成されている。
【0008】
請求項1の床鋼板が係合配置される床構造は、梁に複数の床鋼板が架け渡されて形成されている。そして、互いに隣り合う床鋼板は、これらの床鋼板の外周部に形成された凹凸部同士が係合して配置されている。このため、一方の床鋼板にせん断力が作用すると、このせん断力が、互いの凹凸部を介して、他方の床鋼板に伝達される。これにより、溶接を用いずに、互いに隣り合う床鋼板同士でせん断力を伝達できる。
請求項2の床鋼板が係合配置される床構造は、複数の梁と、隣り合う前記梁に架け渡された複数の床鋼板を含んで構成された床ユニットと、前記床鋼板の上に打設されたコンクリートと、を備え、前記床鋼板の外周部には前記床鋼板の面内方向に沿う凹凸部が形成されており、互いに隣り合う前記床鋼板は、前記凹凸部同士が係合して配置されている。
【0009】
請求項3の床鋼板が係合配置される床構造は、複数の梁と、隣り合う前記梁に架け渡された複数の床鋼板を含んで構成された床ユニットと、を備え、前記床鋼板の外周部には前記床鋼板の面内方向に沿う凹凸部が形成されており、互いに隣り合う前記床鋼板は、前記凹凸部同士が係合して配置され互いに隣り合う前記床鋼板の前記凹凸部は離間しており、離間した部分には、互いに隣り合う前記床鋼板同士でせん断力を伝達する伝達材が充填されている。
【0010】
請求項3の床鋼板が係合配置される床構造では、互いに隣り合う床鋼板の凹凸部の間に伝達材が充填されている。このため、凹凸部の間に隙間があっても、伝達材を介してせん断力を伝達できる。
【0011】
請求項4の床鋼板が係合配置される床構造は、請求項3に記載の床構造において、前記凹凸部において、隣り合う前記床鋼板同士が対向する方向と交わる方向の端部の外縁には、折曲部が形成されており、対向する前記折曲部の間に前記伝達材が充填されている。
【0012】
請求項4の床鋼板が係合配置される床構造では、伝達材が、凹凸部の外縁部に設けられた折曲部の間に充填されている。これにより、伝達材の上下方向の厚みが、床鋼板の厚みより大きく形成される。このため、床鋼板から伝達材に伝わる圧縮応力度が低減される。
【0013】
請求項5の床鋼板が係合配置される床構造は、請求項4に記載の床構造において、前記床鋼板の板厚をaとし、前記床鋼板の単位面積あたりの圧縮強度をbとし、前記折曲部の折り曲げ高さをcとし、前記伝達材の単位面積あたりの圧縮強度をdとすると、下記(1)式が成り立つ。
a*b≦c*d・・・・・・・・・・・・(1)
【0014】
請求項5の床鋼板が係合配置される床構造では、折曲部の折り曲げ高さがcとされている。このため、伝達材の上下方向の厚みをcとできる。すなわち、(1)式により、伝達材の厚みと単位面積あたりの圧縮強度との積が、床鋼板の板厚と単位面積あたりの圧縮強度との積以上となるように設定する。
【0015】
ここで、伝達材の厚みと単位面積あたりの圧縮強度との積、及び、床鋼板の板厚と単位面積あたりの圧縮強度との積は、それぞれ、伝達材及び床鋼板が耐えられる圧縮力(対向する折曲部の単位長さあたりに作用する圧縮力)を示している。
【0016】
(1)式によると、伝達材の面積あたりの圧縮強度が、床鋼板の面積あたりの圧縮強度より小さくても、折曲部の折り曲げ高さcが床鋼板の板厚aより大きいため、伝達材が耐えられる圧縮力は床鋼板が耐えられる圧縮力以上となる。このため、伝達材は床鋼板より先に損傷し難い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、溶接を用いずに、互いに隣り合う床鋼板同士で面内せん断力を伝達する構成を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は本発明の実施形態に係る床鋼板が係合配置される床構造を示す立断面図であり、(B)は床構造における床ユニットを示す平面図である。
図2】(A)は本発明の実施形態に係る床鋼板が係合配置される床構造の床鋼板において、梁の延設方向と交わる方向の端部の構造を示した部分拡大平面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図3】(A)は本発明の実施形態に係る床鋼板が係合配置される床構造の床鋼板において、梁の延設方向の端部の構造を示した部分拡大平面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図4】(A)は本発明の実施形態に係る床鋼板が係合配置される床構造の床鋼板において、凹凸部に折曲部を形成した変形例を示す斜視図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図5】(A)は本発明の実施形態に係る床鋼板が係合配置される床構造の床鋼板において、梁の延設方向の端部にのみ凹凸部を形成した変形例を示す平面図であり、(B)は梁の延設方向のみに複数配置した変形例を示す平面図であり、(C)は梁の延設方向と交わる方向の端部にのみ凹凸部を形成した変形例を示す平面図であり、(D)は梁の延設方向と交わる方向のみに複数配置した変形例を示す平面図である。
図6】比較例に係る床ユニットを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る床鋼板が係合配置される床構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
<床構造>
本発明の実施形態に係る床鋼板が係合配置される床構造(以下、床構造と称す)は、図1(A)に示すように、複数の梁12及び梁12に架け渡されたスラブ14を備えている。スラブ14は、床ユニット20及びコンクリート床版40を備えている。
【0021】
<梁>
図1(B)に示すように、梁12はY方向に沿って延設され、X方向に間隔を空けて複数配置されている。梁12は、例えばH形鋼で形成された鉄骨梁とされているが、この梁は鉄筋コンクリート製としてもよい。
【0022】
なお、各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0023】
<スラブ>
(床ユニット)
図1(A)に示したスラブ14における床ユニット20は、図1(B)に示すように、複数の床鋼板22を組み合わせて形成されている。それぞれの床鋼板22は、隣り合う梁12に架け渡されている。床ユニット20は、これらの床鋼板22及び後述する伝達材26を含んで構成されている。
【0024】
床鋼板22は、X方向の端部が、梁12の上に載置されている。これにより、床鋼板22が、梁12によって支持されている。また、床鋼板22は、梁の延設方向(Y方向)及び梁の延設方向と交わる方向(X方向)の双方において、複数並べて配置されている。
【0025】
(床鋼板のX方向端部の構成)
図2(A)、(B)には、床ユニット20における床鋼板22の、X方向端部が示されている。この図に示すように、床鋼板22は、梁12の上部で、X方向において他の床鋼板22と隣り合って配置されている。
【0026】
なお、以下の説明においては、便宜上、X方向における一方側(紙面左側)の床鋼板22を、床鋼板22X1と称し、他方側(紙面右側)の床鋼板22を、床鋼板22X2と称す場合がある。
【0027】
床鋼板22におけるX方向の端部(Y方向に沿う外周部)には、凹凸部24が形成されている。「凹凸部」とは、Y方向に沿う基準線CL1から、床鋼板22の面内方向に沿って、床鋼板22から離れる方向へ突出した部分(凸部24A)と、床鋼板22の内側へ陥入した部分(凹部24B)とが、Y方向に沿って交互に形成された部分である。
【0028】
凹凸部24の外縁部のうち、Y方向の端部に形成されたX方向に沿う外縁部を、特に外縁部24Cと称す。本発明における「床鋼板同士が対向する方向と交わる方向の端部の外縁」とは、ここでは、床鋼板22同士が対向するX方向と交わるY方向の端部の外縁部24Cのことである。なお、基準線CL1は、本実施形態においては、梁12の中心線と略一致するものとしているが、Y方向に沿うものであればよい。
【0029】
(床鋼板の係合)
X方向に隣り合う床鋼板22X1、22X2は、それぞれの凹凸部24同士が係合して配置されている。「係合」とは、床鋼板22X1、22X2における一方の凸部24Aが、他方の凸部24A又は凹部24Bと、Y方向から見て重なっている状態を示す。換言すると、「係合」とは、床鋼板22X1、22X2におけるそれぞれの外縁部24CがY方向に対向して配置されている状態を示す。
【0030】
なお、床鋼板22X1と床鋼板22X2とは、後述するように、必ずしも接している必要はない。つまり「係合」とは、床鋼板22X1、22X2が互いに接触してない実施形態を含む概念である。
【0031】
床鋼板22X1、22X2におけるそれぞれの凹凸部24同士は、離間して配置されている。この離間した部分には、床鋼板22X1、22X2同士でせん断力を伝達するための伝達材26が充填されている。伝達材26は、無収縮モルタルとされている。
【0032】
「離間した部分」とは、床鋼板22X1、22X2におけるそれぞれの凹凸部24の外縁部24Cに挟まれた隙間(濃い網掛で示す隙間E1)、及び、X方向の端部に形成された外縁部に挟まれた隙間(薄い網掛で示す隙間E2)のことである。
【0033】
なお、本実施形態においては、隙間E1、E2のそれぞれに伝達材26が充填されているが、本発明の実施形態はこれに限らず、少なくとも隙間E1に充填すればよい。また、床鋼板22X1、22X2のそれぞれの外縁部24Cが接して配置される場合は、伝達材26は必ずしも用いなくてもよい。
【0034】
(床鋼板のY方向端部の構成)
図3(A)、(B)には、床ユニット20における床鋼板22の、Y方向端部が示されている。この図に示すように、床鋼板22は、Y方向において他の床鋼板22と隣り合って配置されている。
【0035】
なお、以下の説明においては、便宜上、Y方向における一方側(紙面上側)の床鋼板22を、床鋼板22Y1と称し、他方側(紙面下側)の床鋼板22を、床鋼板22Y2と称す場合がある。
【0036】
床鋼板22におけるY方向の端部(X方向に沿う外周部)には、凹凸部28が形成されている。この「凹凸部」は、X方向に沿う基準線CL2から、床鋼板22の面内方向に沿って、床鋼板22から離れる方向へ突出した部分(凸部28A)と、床鋼板22の内側へ陥入した部分(凹部28B)とがX方向に沿って交互に形成された部分である。
【0037】
凹凸部28の外縁部のうち、X方向の端部に形成されたY方向に沿う外縁部を、特に外縁部28Cと称す。本発明における「床鋼板同士が対向する方向と交わる方向の端部の外縁」とは、ここでは、床鋼板22同士が対向するY方向と交わるX方向の端部の外縁部28Cのことである。
【0038】
(床鋼板の係合)
Y方向に隣り合う床鋼板22Y1、22Y2は、それぞれの凹凸部28同士が係合して配置されている。「係合」とは、床鋼板22Y1、22Y2における一方の凸部28Aが、他方の凸部28A又は凹部28Bと、X方向から見て重なっている状態を示す。換言すると、「係合」とは、床鋼板22Y1、22Y2におけるそれぞれの外縁部248がX方向に対向して配置されている状態を示す。
【0039】
床鋼板22Y1、22Y2におけるそれぞれの凹凸部28同士は、離間して配置されている。この離間した部分には、床鋼板22Y1、22Y2同士でせん断力を伝達する伝達材26が充填されている。
【0040】
「離間した部分」とは、床鋼板22Y1、22Y2におけるそれぞれの凹凸部28の外縁部28Cに挟まれた隙間(濃い網掛で示す隙間E3)、及び、Y方向の端部に形成された外縁部に挟まれた隙間(薄い網掛で示す隙間E4)のことである。
【0041】
隙間E3、E4に伝達材26を充填する際には、図3(B)に示すように、床鋼板22Y1、22Y2の下面に、床鋼板22Y1、22Y2に亘ってプレートPを固定する。このプレートPは、ビス等で固定してもよいし、接着剤等で固定してもよい。また、プレートPは、伝達材26の硬化後に、除去してもよいし残置してもよい。また、梁12の間に小梁を架け渡す場合、この小梁をプレートPの代わりに用いてもよい。
【0042】
なお、本実施形態においては、隙間E3、E4のそれぞれに伝達材26が充填されているが、本発明の実施形態はこれに限らず、少なくとも隙間E3に充填すればよい。また、床鋼板22Y1、22Y2のそれぞれの外縁部28Cが接して配置される場合は、伝達材26は必ずしも用いなくてもよい。
【0043】
(床ユニットの固定)
図2(A)、(B)に示すように、床ユニット20における床鋼板22には貫通孔22Hが形成されており、この貫通孔22Hには、スタッドボルトSが挿通されている。スタッドボルトSは、梁12の上面に溶接された頭付きスタッドボルトであり、床鋼板22の上面から突出して、コンクリート床版40に埋設されている。
【0044】
隙間E1、E2には、伝達材26が充填される。その後、床鋼板22の上部にコンクリートが打設され、コンクリート床版40が形成される、コンクリート床版40の内部には、必要に応じてスラブ配筋を敷設する。
【0045】
なお、図2(A)においては、スタッドボルトSが梁12の中心線である基準線CL1に沿って配置され、かつ、凸部24Aと凹部24Bが配置されたピッチと等しいピッチで配置されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0046】
スタッドボルトSの梁12の上における配置は任意であり、凹凸部24の形状とは無関係に決定することができる。凹凸部24には、スタッドボルトSと干渉する位置に、貫通孔22Hを形成すればよい。
【0047】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係る床構造では、図1に示すように、梁12に複数の床鋼板22が架け渡されて形成されている。そして、互いに隣り合う床鋼板22は、これらの床鋼板22の外周部に形成された凹凸部同士(凹凸部24同士及び凹凸部28同士)が係合して配置されている。
【0048】
具体的には、図2(A)に示すように、梁12の上でX方向に隣り合う床鋼板22X1、22X2は、X方向の外周部に形成された凹凸部24同士が係合して配置されている。
【0049】
このため、一方の床鋼板(例えば床鋼板22X1)にY方向に沿うせん断力T1が作用すると、このせん断力T1が、互いの凹凸部24を介して、他方の床鋼板(床鋼板22X2)に伝達される。
【0050】
これにより、溶接を用いずに、X方向において互いに隣り合う床鋼板22X1、22X2同士で、Y方向に沿うせん断力T1を伝達できる。
【0051】
また、図3(A)に示すように、Y方向に隣り合う床鋼板22Y1、22Y2は、Y方向の外周部に形成された凹凸部28同士が係合して配置されている。
【0052】
このため、一方の床鋼板(例えば床鋼板22Y1)にX方向に沿うせん断力T2が作用すると、このせん断力T2が、互いの凹凸部28を介して、他方の床鋼板(床鋼板22Y2)に伝達される。
【0053】
これにより、溶接を用いずに、Y方向において互いに隣り合う床鋼板22Y1、22Y2同士で、X方向に沿うせん断力T2を伝達できる。
【0054】
また、互いに隣り合う床鋼板22において、凹凸部24同士の間、及び、凹凸部28同士の間には、伝達材26が充填されている。このため、凹凸部24同士の間、及び、凹凸部28同士の間に隙間E1や隙間E3があっても、伝達材26を介してせん断力を伝達できる。
【0055】
これに対して、図6には、比較例に係る床鋼板220が示されている。この床鋼板220には、凹凸部24、28に相当する構成がない。
【0056】
このため、X方向において互いに隣り合う床鋼板220X1、220X2同士で、Y方向に沿うせん断力T1を伝達することが難しい。同様に、Y方向において互いに隣り合う床鋼板220Y1、220Y2同士で、X方向に沿うせん断力T2を伝達することが難しい。
【0057】
これらの間でせん断力T1、T2を伝達するためには、互いに隣り合う床鋼板220同士を溶接する必要がある。
【0058】
<変形例>
図4(A)、(B)には、凹凸部24の外縁部24Cに、折曲部24CHを形成した変形例が示されている。折曲部24CHは、床鋼板22を形成している鋼板をプレス加工することにより、外縁部24CをZ方向に立ち上げて形成した部分である。折曲部24CHの根元部分には、三角ビードFが形成されている。三角ビードFは、折曲部24CHをプレス加工する際に併せて形成される。
【0059】
Y方向において互いに対向する折曲部24CHの間に形成された隙間E5には、図4(B)に示すように、伝達材26が充填されている。伝達材26は、折曲部24CHの上端まで充填されている。
【0060】
ここで、床鋼板22の板厚をa[mm]とし、床鋼板22の単位面積あたりの圧縮強度をb[N/mm2]とし、折曲部24CHの折り曲げ高さをc[mm]とし、伝達材26の単位面積あたりの圧縮強度をd[N/mm2]とすると、下記式(1)が成り立つ。
【0061】
a*b≦c*d・・・・・・・・・・・・(1)
【0062】
つまり、板厚がa[mm]で単位面積あたりの圧縮強度がb[N/mm2]である鋼材を用いて床鋼板22を形成し、折曲部24CHの間に単位面積あたりの圧縮強度がd[N/mm2]である伝達材26を充填する場合に、上記(1)式を満たすように折曲部24CHの折り曲げ高さc[mm]を設計する。これにより、伝達材26の厚みがc[mm]確保できる。
【0063】
これにより、伝達材26の厚みc[mm]と単位面積あたりの圧縮強度d[N/mm2]との積が、床鋼板22の板厚a[mm]と単位面積あたりの圧縮強度b[N/mm2]との積以上とする。
【0064】
ここで、伝達材26の厚みc[mm]と単位面積あたりの圧縮強度d[N/mm2]との積、及び、床鋼板22の板厚a[mm]と単位面積あたりの圧縮強度b[N/mm2]との積は、それぞれ、伝達材26及び床鋼板22が耐えられる圧縮力(対向する折曲部24CHの単位長さあたりに作用する圧縮力)を示している。
【0065】
すなわち、(1)式によると、伝達材26の単位面積あたりの圧縮強度d[N/mm2]が、床鋼板22の単位面積あたりの圧縮強度b[N/mm2]より小さくても、折曲部24CHの折り曲げ高さc[mm]が床鋼板の板厚a[mm]より大きいため、伝達材26が耐えられる圧縮力は床鋼板が耐えられる圧縮力以上となる。このため、伝達材26は床鋼板22より先に損傷し難い。
【0066】
また、本実施形態においては、折曲部24CHの根元部分には、三角ビードFが形成されている。このため、折曲部24CHが伝達材26から圧縮力を受けた際に、折曲部24CHが変形することが抑制されている。
【0067】
なお、このような折曲部及び三角ビードは、図3(A)に示す外縁部28Cにも、同様に形成することができる。
【0068】
また、上記実施形態においては、伝達材26として無収縮モルタルを用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば伝達材26としては、コンクリート、樹脂材料及び木材などを使用することができる。伝達材26の圧縮強度に応じて、折曲部24CHを適宜形成することが好ましい。
【0069】
また、上記実施形態においては、スラブ14を、床ユニット20及びコンクリート床版40を用いて形成したが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばコンクリート床版40は、木製床板に代えてもよいし、省略してもよい。このように床版の強度を小さくしたり床版を省略したりしても、床鋼板22同士でせん断力を伝達できる。
【0070】
また、上記実施形態においては、床鋼板22が、X方向における外周部の凹凸部24、及び、Y方向における外周の凹凸部28の双方を備えているものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0071】
一例として、図5(A)に示す床鋼板22Aのように、X方向における外周部の凹凸部24を省略し、凹凸部としてはY方向における外周の凹凸部28のみを備えるものとしてもよい。また、凹凸部24を省略する実施形態においては、床鋼板22Aは、図5(B)に示すように、Y方向のみに複数配置するものとすることができる。
【0072】
別の一例として、図5(C)に示す床鋼板22Bのように、Y方向における外周部の凹凸部28を省略し、X方向における外周の凹凸部24のみを備えるものとしてもよい。また、凹凸部28を省略する実施形態においては、床鋼板22Aは、図5(D)に示すように、X方向のみに複数配置するものとすることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、床鋼板22を折り曲げた折曲部24CHを形成することで、伝達材26の上下方向の厚みを床鋼板22の厚みより大きくしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、床鋼板22の凹凸部24の厚さを他の部分より厚くすることで、伝達材26の上下方向の厚みを床鋼板22の厚みより大きくしてもよい。この場合、床鋼板22の凹凸部24、又は、凹凸部24及びその近傍部分に、別の鋼板を工場で溶接することで厚みを大きくすることができる。
【符号の説明】
【0074】
12 梁
14 床ユニット
22 床鋼板
24 凹凸部
24CH 折曲部
26 伝達材
28 凹凸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6