(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240705BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/304 642A
H01L21/304 642F
H01L21/304 648G
H01L21/304 648F
H01L21/304 651J
(21)【出願番号】P 2020130001
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019236757
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】内田 博章
(72)【発明者】
【氏名】岩田 敬次
(72)【発明者】
【氏名】折坂 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】武知 圭
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-189524(JP,A)
【文献】特開2005-244162(JP,A)
【文献】特表平11-508823(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁の周囲から側壁を立ち上がらせて処理液を貯留する貯留空間を形成し、上方開口から前記処理液をオーバーフローさせながら前記貯留空間に貯留される前記処理液に基板を浸漬することで前記基板を処理する処理槽と、
前記貯留空間内で前記基板を起立姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方側に設けられ、前記貯留空間に前記処理液を吐出して前記処理液が上方開口に向う流れを形成する処理液吐出部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方側に設けられ、前記貯留空間に貯留された前記処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、
前記側壁のうち前記基板保持部に保持された
まま前記処理液に浸漬された前記基板の上端よりも低い位置で前記基板と対向する基板対向領域に側壁開口が設けられることで、前記処理槽の外側に位置する回収空間と前記貯留空間とが前記側壁開口によって連通され、
前記上方開口に向かって流れる前記処理液を前記上方開口を介してオーバーフローして前記処理槽から前記回収空間に排出されるものと前記側壁開口を介して前記処理槽から前記回収空間に排出されるものとに分流することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記側壁開口は前記側壁に部分的に設けられる基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記側壁開口の開度を調整する開度調整部を備える基板処理装置。
【請求項4】
底壁の周囲から側壁を立ち上がらせて処理液を貯留する貯留空間を形成し、上方開口から前記処理液をオーバーフローさせながら前記貯留空間に貯留される前記処理液に基板を浸漬することで前記基板を処理する処理槽と、
前記貯留空間内で前記基板を起立姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方側に設けられ、前記貯留空間に前記処理液を吐出して前記処理液が上方開口に向う流れを形成する処理液吐出部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方側に設けられ、前記貯留空間に貯留された前記処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、
前記側壁のうち前記基板保持部に保持された前記基板と対向する基板対向領域に部分的に側壁開口が設けられることで、前記処理槽の外側に位置する回収空間と前記貯留空間とが前記側壁開口によって連通され、
前記側壁開口の開度を調整する開度調整部と、
前記開度調整部を制御して前記側壁開口の開度を調整する制御部を
更に備え、
前記開度調整部は、前記側壁開口を開閉するシャッターと、前記側壁開口に対して前記シャッターを移動させるシャッター駆動部とを有し、
前記制御部は前記処理液吐出部から前記貯留空間に吐出される単位時間当たりの前記処理液の量に応じて前記側壁開口に対する前記シャッターの位置を制御して前記側壁開口の開度を調整
し、
前記上方開口に向かって流れる前記処理液を前記上方開口を介してオーバーフローして前記処理槽から前記回収空間に排出されるものと前記側壁開口を介して前記処理槽から前記回収空間に排出されるものとに分流することを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
底壁の周囲から側壁を立ち上がらせて処理液を貯留する貯留空間を形成し、上方開口から前記処理液をオーバーフローさせながら前記貯留空間に貯留される前記処理液に基板を浸漬することで前記基板を処理する処理槽と、
前記貯留空間内で前記基板を起立姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方側に設けられ、前記貯留空間に前記処理液を吐出して前記処理液が上方開口に向う流れを形成する処理液吐出部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方側に設けられ、前記貯留空間に貯留された前記処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、
前記側壁のうち前記基板保持部に保持された前記基板と対向する基板対向領域に側壁開口が設けられることで、前記処理槽の外側に位置する回収空間と前記貯留空間とが前記側壁開口によって連通され、
前記側壁は前記底壁に接続される下方側壁部位と前記下方側壁部位の鉛直上方に配置される上方側壁部位とを有し、
前記上方側壁部位が前記下方側壁部位から鉛直上方に離間して配置されることで前記側壁開口は前記貯留空間を取り囲むように設けられ
、
前記上方開口に向かって流れる前記処理液を前記上方開口を介してオーバーフローして前記処理槽から前記回収空間に排出されるものと前記側壁開口を介して前記処理槽から前記回収空間に排出されるものとに分流することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記上方側壁部位を鉛直方向に移動させる壁部駆動部と、
前記処理液吐出部から前記貯留空間に吐出される単位時間当たりの前記処理液の量に応じて前記壁部駆動部を制御することで鉛直方向における前記上方側壁部位の高さ位置を変位させて前記側壁開口の面積を調整する制御部と、
を備える基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記側壁開口は前記基板保持部に保持された前記基板の中心を通る仮想水平面よりも上方側に設けられる基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記回収空間に排出される前記処理液を回収するオーバーフロー槽を備え、
前記側壁開口は前記オーバーフロー槽に回収された前記処理液の液面よりも上方に位置する基板処理装置。
【請求項9】
底壁の周囲から側壁を立ち上がらせて処理液を貯留する貯留空間を形成し、上方開口から前記処理液をオーバーフローさせながら前記貯留空間に貯留される前記処理液に基板を浸漬することで前記基板を処理する処理槽と、
前記貯留空間内で前記基板を起立姿勢で保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方側に設けられ、前記貯留空間に前記処理液を吐出して前記処理液が上方開口に向う流れを形成する処理液吐出部と、
前記基板保持部に保持された前記基板の下方側に設けられ、前記貯留空間に貯留された前記処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、
前記側壁のうち前記基板保持部に保持された前記基板と対向する基板対向領域に側壁開口が設けられることで、前記処理槽の外側に位置する回収空間と前記貯留空間とが前記側壁開口によって連通され、
前記上方開口に向かって流れる前記処理液を前記上方開口を介してオーバーフローして前記処理槽から前記回収空間に排出されるものと前記側壁開口を介して前記処理槽から前記回収空間に排出されるものとに分流し、
前記回収空間に排出される前記処理液を回収するオーバーフロー槽
と、
前記オーバーフロー槽における前記処理液の液面が前記側壁開口よりも低くなるように、前記オーバーフロー槽から前記処理液を回収して前記液面の高さを調整する処理液回収部
とを
更に備え、
前記側壁開口は前記オーバーフロー槽に回収された前記処理液の液面よりも上方に位置することを特徴とする基板処理装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記処理液吐出部は前記貯留空間の内底面に向けて前記処理液を吐出し、前記貯留空間の内底面を経由して前記処理液が上方開口に向う流れを形成する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液や純水などの処理液を処理槽からオーバーフローさせながら処理槽に貯留された処理液に基板を浸漬して処理する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野においては、半導体装置の高密度化と大容量化に対応するために高アスペクト比の凹部を形成する技術が要望されている。例えば三次元NAND型不揮発性半導体装置(以下「3D-NANDメモリ」という)の製造過程においては、シリコン酸化膜(SiO2膜)とシリコン窒化膜(SiN膜)を多数積層した積層体に対して積層方向に凹部を形成した後、凹部を介してSiN膜をウエットエッチングにより除去する工程が含まれる。この工程を実行するために、例えば特許文献1に記載の基板処理装置を用いることが検討されている。
【0003】
基板処理装置を用いて上記ウエットエッチングを行う場合、SiN膜のエッチャントの一例であるリン酸を含む薬液が処理液として用いられる。より具体的には、基板処理装置では、処理槽の内部に形成された貯留空間の内底部に噴出管が配置され、当該噴出管から処理液が貯留空間に供給される。このため、処理槽では、処理液が処理槽からオーバーフローされながら処理槽に一定量だけ貯留される。そして、処理槽に貯留された処理液に上記凹部構造を有する基板が浸漬される。また、基板処理装置では、噴出管と同様に、気泡供給管が貯留空間の内底部に配置され、貯留空間の内底部からオーバーフロー面に向かって気泡が供給される。これらの気泡は処理液中で上昇して基板に供給される。こうした基板への気泡供給により凹部に対して新鮮な処理液を迅速かつ連続して供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、次のような問題があった。噴出管からの処理液の噴出により貯留空間内でオーバーフロー面に向う液流、つまり処理液の上昇流が形成される。そして、貯留空間の上方開口に到達した処理液の多くはオーバーフローするが、一部はオーバーフローせずオーバーフロー面の近傍から下向きに流れる。いわゆる下降流が貯留空間内で発生する。この下降流はオーバーフロー面への気泡の上昇を阻害し、基板への気泡の均一供給を低下させる主要因のひとつとなっている。その結果、基板処理の品質低下が発生している。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理液を処理槽からオーバーフローさせながら処理槽に貯留された処理液に基板を浸漬するとともに処理液内で上記基板に気泡を供給して処理する基板処理技術において、基板に対して気泡を均一に供給して処理品質を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の第1態様は、基板処理装置であって、底壁の周囲から側壁を立ち上がらせて処理液を貯留する貯留空間を形成し、上方開口から処理液をオーバーフローさせながら貯留空間に貯留される処理液に基板を浸漬することで基板を処理する処理槽と、貯留空間内で基板を起立姿勢で保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板の下方側に設けられ、貯留空間に処理液を吐出して処理液が上方開口に向う流れを形成する処理液吐出部と、基板保持部に保持された基板の下方側に設けられ、貯留空間に貯留された処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、側壁のうち基板保持部に保持されたまま処理液に浸漬された基板の上端よりも低い位置で基板と対向する基板対向領域に側壁開口が設けられることで、処理槽の外側に位置する回収空間と貯留空間とが側壁開口によって連通され、上方開口に向かって流れる処理液を上方開口を介してオーバーフローして処理槽から回収空間に排出されるものと側壁開口を介して処理槽から回収空間に排出されるものとに分流することを特徴としている。
この発明の第2態様は、基板処理装置であって、底壁の周囲から側壁を立ち上がらせて処理液を貯留する貯留空間を形成し、上方開口から処理液をオーバーフローさせながら貯留空間に貯留される処理液に基板を浸漬することで基板を処理する処理槽と、貯留空間内で基板を起立姿勢で保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板の下方側に設けられ、貯留空間に処理液を吐出して処理液が上方開口に向う流れを形成する処理液吐出部と、基板保持部に保持された基板の下方側に設けられ、貯留空間に貯留された処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、側壁のうち基板保持部に保持された基板と対向する基板対向領域に部分的に側壁開口が設けられることで、処理槽の外側に位置する回収空間と貯留空間とが側壁開口によって連通され、側壁開口の開度を調整する開度調整部と、開度調整部を制御して側壁開口の開度を調整する制御部を更に備え、開度調整部は、側壁開口を開閉するシャッターと、側壁開口に対してシャッターを移動させるシャッター駆動部とを有し、制御部は処理液吐出部から貯留空間に吐出される単位時間当たりの処理液の量に応じて側壁開口に対するシャッターの位置を制御して側壁開口の開度を調整し、上方開口に向かって流れる処理液を上方開口を介してオーバーフローして処理槽から回収空間に排出されるものと側壁開口を介して処理槽から回収空間に排出されるものとに分流することを特徴としている。
この発明の第3態様は、基板処理装置であって、底壁の周囲から側壁を立ち上がらせて処理液を貯留する貯留空間を形成し、上方開口から処理液をオーバーフローさせながら貯留空間に貯留される処理液に基板を浸漬することで基板を処理する処理槽と、貯留空間内で基板を起立姿勢で保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板の下方側に設けられ、貯留空間に処理液を吐出して処理液が上方開口に向う流れを形成する処理液吐出部と、基板保持部に保持された基板の下方側に設けられ、貯留空間に貯留された処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、側壁のうち基板保持部に保持された基板と対向する基板対向領域に側壁開口が設けられることで、処理槽の外側に位置する回収空間と貯留空間とが側壁開口によって連通され、側壁は底壁に接続される下方側壁部位と下方側壁部位の鉛直上方に配置される上方側壁部位とを有し、上方側壁部位が下方側壁部位から鉛直上方に離間して配置されることで側壁開口は貯留空間を取り囲むように設けられ、上方開口に向かって流れる処理液を上方開口を介してオーバーフローして処理槽から回収空間に排出されるものと側壁開口を介して処理槽から回収空間に排出されるものとに分流することを特徴としている。
この発明の第4態様は、基板処理装置であって、底壁の周囲から側壁を立ち上がらせて処理液を貯留する貯留空間を形成し、上方開口から処理液をオーバーフローさせながら貯留空間に貯留される処理液に基板を浸漬することで基板を処理する処理槽と、貯留空間内で基板を起立姿勢で保持する基板保持部と、基板保持部に保持された基板の下方側に設けられ、貯留空間に処理液を吐出して処理液が上方開口に向う流れを形成する処理液吐出部と、基板保持部に保持された基板の下方側に設けられ、貯留空間に貯留された処理液内に気泡を供給する気泡供給部と、を備え、側壁のうち基板保持部に保持された基板と対向する基板対向領域に側壁開口が設けられることで、処理槽の外側に位置する回収空間と貯留空間とが側壁開口によって連通され、上方開口に向かって流れる処理液を上方開口を介してオーバーフローして処理槽から回収空間に排出されるものと側壁開口を介して処理槽から回収空間に排出されるものとに分流し、回収空間に排出される処理液を回収するオーバーフロー槽と、オーバーフロー槽における処理液の液面が側壁開口よりも低くなるように、オーバーフロー槽から処理液を回収して液面の高さを調整する処理液回収部とを更に備え、側壁開口はオーバーフロー槽に回収された処理液の液面よりも上方に位置することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、本発明によれば、側壁開口が貯留空間と回収空間とを連通させる。このため、貯留空間内で上方開口に向かって流れる処理液が、上方開口を介してオーバーフローして処理槽から回収空間に排出されるものと側壁開口を介して処理槽から回収空間に排出されるものとに分流される。この処理液の分流によって下降流の発生が抑制される。その結果、基板に対して気泡が均一に供給され、基板処理を高品質で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【
図2】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図2に示す基板処理装置の主要構成を模式的に示す分解組立斜視図である。
【
図5】リフタに保持される複数の基板と気泡吐出口との配置関係を示す模式図である。
【
図6】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態の概略構成を示す部分断面図である。
【
図7】本発明に係る基板処理装置の第3実施形態の概略構成を示す平面図である。
【
図8】本発明に係る基板処理装置の第4実施形態で用いているバブラーの構成を模式的に示す図である。
【
図9】本発明に係る基板処理装置の第5実施形態で用いているバブラーの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。基板処理システム1は、収納器載置部2と、シャッター駆動機構3と、基板移載ロボット4と、姿勢変換機構5と、プッシャ6と、基板搬送機構7と、処理ユニット8と、制御部9を備えている。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標軸を設定する。ここでXY平面が水平面を表す。また、Z軸が鉛直軸を表し、より詳しくはZ方向が鉛直方向である。
【0011】
収納器載置部2では、基板Wを収納した収納器が載置される。本実施形態では、収納器の一例として、水平姿勢の複数枚(たとえば25枚)の基板WをZ方向に積層した状態で収納可能に構成されたフープFが用いられている。フープFは、未処理の基板Wを収納した状態で収納器載置部2に載置されたり、処理済の基板Wを収納するために、空の状態で収納器載置部2に載置されたりする。フープFに収納される基板Wは、この実施形態では、3D-NANDメモリを形成する半導体ウエハであり、高アスペクト比の凹部を有している。
【0012】
収納器載置部2に対して(+Y)方向側で隣接するプロセス空間内には、シャッター駆動機構3、基板移載ロボット4、姿勢変換機構5、プッシャ6、基板搬送機構7および処理ユニット8が配置されている。収納器載置部2とプロセス空間とは、開閉自在なシャッター31を装備する隔壁(図示省略)により区画されている。シャッター31はシャッター駆動機構3に接続されている。シャッター駆動機構3は制御部9からの閉指令に応じてシャッター31を閉成して収納器載置部2とプロセス空間とを空間的に分離する。逆に、シャッター駆動機構3は制御部9からの開指令に応じてシャッター31を開放し、収納器載置部2とプロセス空間とを連通させる。これにより、フープFからプロセス空間への未処理基板Wの搬入および処理済基板WのフープFへの搬出が可能となる。
【0013】
上記した基板Wの搬入出処理は基板移載ロボット4によって行われる。基板移載ロボット4は水平面内で旋回自在に構成されている。基板移載ロボット4は、シャッター31が開放された状態で、姿勢変換機構5とフープFとの間で複数枚の基板Wを受け渡しする。また、姿勢変換機構5は、基板移載ロボット4を介してフープFから基板Wを受け取った後やフープFに基板Wを受け渡す前に、複数枚の基板Wの姿勢を起立姿勢と水平姿勢との間で変換する。
【0014】
姿勢変換機構5の基板搬送機構7側(同図中の+X方向側)にプッシャ6が配置され、姿勢変換機構5と基板搬送機構7との間で起立姿勢の複数枚の基板Wを受け渡しする。また、基板搬送機構7は、同図に示すようにプッシャ6に対向した位置(以下「待機位置」という)から処理ユニット8を構成する処理部81~85が配列された配列方向(同図中のY方向)に沿って水平方向に移動する。
【0015】
基板搬送機構7は一対の懸垂アーム71を備えている。この一対の懸垂アーム71の揺動によって複数の基板Wを一括保持と保持解除を切替可能となっている。より具体的には、各アーム71の下縁が互いに離れる方向に水平軸周りで揺動して複数枚の基板Wを開放し、各アーム71の下縁を互いに接近させる方向に水平軸周りに揺動して複数枚の基板Wを挟持して保持する。また、
図1への図示を省略しているが、基板搬送機構7はアーム移動部とアーム揺動部とを有している。これらのうちアーム移動部は、処理部81~85が配列された配列方向Yに沿って一対の懸垂アーム71を水平移動させる機能を有している。このため、この水平移動によって一対の懸垂アーム71は処理部81~85の各々に対向した位置(以下「処理位置」という)および待機位置に位置決めされる。
【0016】
一方、アーム揺動部は上記アーム揺動動作を実行する機能を有しており、基板Wを挟持して保持する保持状態と、基板Wの挟持を解除する解除状態とを切り替える。このため、この切替動作と、処理部81、82の基板保持部として機能するリフタ810aや処理部83、84の基板保持部として機能するリフタ810bの上下動とによって、リフタ810と懸垂アーム71との間での基板Wの受け渡しを行うことが可能となっている。また、処理部85に対向する処理位置では、処理部85と懸垂アーム71との間での基板Wの受け渡しを行うことが可能となっている。さらに、待機位置では、プッシャ6を介して姿勢変換機構5と懸垂アーム71との間での基板Wの受け渡しを行うことが可能となっている。
【0017】
処理ユニット8には、上記したように5つの処理部81~85が設けられているが、それぞれ第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83、第2リンス処理部84および乾燥処理部85として機能する。これらのうち第1薬液処理部81および第2薬液処理部83は、それぞれ、同種または異種の薬液を処理槽821に貯留し、その薬液中に複数枚の基板Wを一括して浸漬させて薬液処理を施す。第1リンス処理部82および第2リンス処理部84は、それぞれ、リンス液(たとえば純水)を処理槽821に貯留し、そのリンス液中に複数枚の基板Wを一括して浸漬させて、表面にリンス処理を施すものである。これら第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当しており、処理液の種類が相違するものの装置の基本構成は同一である。なお、装置構成および動作については後で
図2ないし
図5を参照しつつ詳述する。
【0018】
図1に示すように、第1薬液処理部81と、これに隣接する第1リンス処理部82とが対になっており、第2薬液処理部83と、これに隣接する第2リンス処理部84とが対になっている。そして、リフタ810aは第1薬液処理部81および第1リンス処理部82において本発明の「基板保持部」として機能するのみならず、第1薬液処理部81で薬液処理された基板Wを第1リンス処理部82に移すための専用搬送機構としても機能する。また、リフタ810bは第2薬液処理部83および第2リンス処理部84において本発明の「基板保持部」として機能するのみならず、第2薬液処理部83で薬液処理された基板Wを第2リンス処理部84に移すための専用搬送機構としても機能する。
【0019】
このように構成された処理ユニット8では、リフタ810aの3本の支持部材(
図2中の符号812)が基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71から複数枚の基板Wを一括して受け取り、後で詳述するように、処理槽から処理液をオーバーフローさせるオーバーフロー工程と処理槽に貯留された処理液内に気泡を供給する気泡供給工程とを実行しながら、第1薬液処理部81の処理槽中に下降させて薬液中に浸漬させる(浸漬工程)。さらに、所定の薬液処理時間だけ待機した後に、リフタ810aは複数枚の基板Wを保持する支持部材を薬液中から引き上げ、第1リンス処理部82へと横行させ、さらに、薬液処理済の基板Wを保持したまま支持部材を第1リンス処理部82の処理槽(
図2中の符号821)内へと下降させてリンス液中に浸漬させる。所定のリンス処理時間だけ待機した後、リフタ810aは、リンス処理済の基板Wを保持したまま支持部材を上昇させてリンス液中から基板Wを引き上げる。この後、リフタ810aの支持部材から基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71に複数枚の基板Wが一括して渡される。
【0020】
リフタ810bも同様に、基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71から複数枚の基板Wを一括して受け取り、この複数枚の基板Wを第2薬液処理部83の処理槽821中に下降させて薬液中に浸漬させる。さらに、所定の薬液処理時間だけ待機した後に、リフタ810bは、支持部材を上昇させて薬液中から薬液処理済の複数枚の基板Wを引き上げ、第2リンス処理部84の処理槽へと支持部材を横行させ、さらに、この支持部材を第2リンス処理部84の処理槽821内へと下降させてリンス液中に浸漬させる。所定のリンス処理時間だけ待機した後、第2リフタ810bは、支持部材を上昇させてリンス液中から基板Wを引き上げる。この後、第2リフタ810bから基板搬送機構7に複数枚の基板Wが一括して渡される。なお、第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84の各々に本発明の「基板保持部」として機能するリフタを設ける一方、処理部81~84に対する基板Wの搬入出を基板搬送機構7や専用の搬送機構で行うように構成してもよい。
【0021】
乾燥処理部85は、複数枚(たとえば52枚)の基板Wを起立姿勢で配列した状態で保持することができる基板保持部材(図示省略)を有しており、減圧雰囲気中で有機溶剤(イソプロピルアルコール等)を基板Wに供給したり、遠心力によって基板W表面の液成分を振り切ったりすることにより、基板Wを乾燥させるものである。この乾燥処理部85は、基板搬送機構7の一対の懸垂アーム71との間で基板Wの受渡可能に構成されている。そして、リンス処理後の複数枚の基板Wを一括して基板搬送機構7から受け取り、この複数枚の基板Wに対して乾燥処理を施す。また、乾燥処理後においては、基板保持部材から基板搬送機構7に複数枚の基板Wが一括して渡される。
【0022】
次に、本発明に係る基板処理装置について説明する。
図1に示す基板処理システムに装備された第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84では、使用される処理液が一部相違しているが、装置構成および動作は基本的に同一である。そこで、以下においては、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当する第1薬液処理部81の構成および動作について説明し、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84に関する説明を省略する。
【0023】
図2は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す模式図である。
図3は
図2に示す基板処理装置の主要構成を模式的に示す分解組立斜視図である。
図4は
図2の部分断面図である。
図5はリフタに保持される複数の基板と気泡吐出口との配置関係を示す模式図である。第1薬液処理部81は例えばリン酸を含む薬液を処理液として用いて基板Wの表面に形成された凹部を介してシリコン窒化膜をエッチング除去する装置である。この第1薬液処理部81は、
図2および
図3に示すように、基板Wに対して第1薬液処理を行うための処理槽821を備えている。この処理槽821は、平面視で長方形をなす底壁821aと、底壁821aの周囲から立ち上がる4つの側壁821b~821eとで構成された上方開口のボックス構造を有する。このため、処理槽821は底壁821aと側壁821b~821eとで囲まれた貯留空間821f内で処理液を貯留しながらリフタ810aに保持される複数の基板Wを一括して浸漬可能となっている。また、処理槽821は(+Z)方向に開口された上方開口821gを有し、当該貯留空間821fから処理液をオーバーフローさせることが可能となっている。
【0024】
処理槽821の周囲にオーバーフロー槽822が設けられ、当該オーバーフロー槽822と処理槽821の側壁821b~821eとでオーバーフローした処理液を回収する回収空間822aが形成されている。また、処理槽821およびオーバーフロー槽822の下方と側方とを囲うように外容器823が設けられている。
【0025】
このように本実施形態では、処理液を回収空間822aに回収する経路として、上記したオーバーフロー経路が設けられているが、これ以外に側壁821b~821eを経由する経路が設けられている。すなわち、
図3に示すように、処理槽821の側壁821bのうち処理液に浸漬されている基板Wと対向する基板対向領域に側壁開口821hが部分的に設けられている。また、その他の側壁821c~821eに対しても、側壁821bと同様に、側壁開口821i~821kがそれぞれ部分的に設けられている。これら側壁開口821h~821kによって貯留空間821fと回収空間822aとが連通される。このため、上方開口821gに向かって流れる処理液の一部は側壁開口821h~821kを介して処理槽821から回収空間822aに排出される。
【0026】
オーバーフロー槽822の回収空間822aの一部、より具体的には、側壁821dの(-X)方向側の空間にフロー配管系839が配置されている。フロー配管系839のインレットは処理液供給部832に接続され、アウトレットは処理液吐出部830のフロー管831に接続されている。このため、制御部9からの処理液供給指令に応じて処理液供給部832が作動すると、処理液がフロー配管系839を介して複数のフロー管831に同時供給される。その結果、フロー管831から処理液が吐出され、貯留空間821fに貯留される。なお、フロー管831の詳しい構成などについては後で詳述する。
【0027】
また、処理槽821からオーバーフローした処理液および側壁開口821h~821kを経由する処理液はオーバーフロー槽822に回収される。このオーバーフロー槽822には処理液回収部833が接続されている。制御部9からの処理液回収指令に応じて処理液回収部833が作動すると、オーバーフロー槽822に回収された処理液が処理液回収部833を経由して処理液供給部832に送液されて再利用に供せられる。このように本実施形態では、処理槽821に対して処理液を循環供給しながら処理液を貯留空間821fに貯留可能となっている。
【0028】
側壁開口821h~821kを介して処理液が処理槽821からオーバーフロー槽822に回収するために、本実施形態では、側壁開口821h~821kはオーバーフロー槽822に回収された処理液の液面よりも上方に位置するように配設されている。また、オーバーフロー槽822での鉛直方向Zにおける処理液の液面位置は処理液吐出部830により処理槽821に吐出される単位時間あたりの処理液の吐出量に応じて変位する。一方、処理液回収部833により単位時間あたりにオーバーフロー槽822から回収される処理液の回収量によっても上記液面位置は鉛直方向Zにおいて変位する。そこで、本実施形態では、制御部9は、上記吐出量に関する情報や液面位置に関する情報などに基づいて処理液回収部833による上記回収量を制御することで、液面位置が側壁開口821h~821kよりも低くなるように調整している。なお、液面位置に関する情報については、例えばオーバーフロー槽822に液面検出センサを取りつけ、センサ出力に基づいて取得してもよい。
【0029】
処理液が貯留された貯留空間821fに対して複数の基板Wを一括して保持しながら浸漬させるために、
図2に示すように、リフタ810aが設けられている。このリフタ810aは、複数枚の基板Wを基板搬送機構7(
図1)との間で受け渡しを行う「受渡位置」と、貯留空間821fとの間で昇降可能に構成されている。リフタ810aは、背板811と、3本の支持部材812と、延出部材813とを備えている。背板811は、処理槽821の側壁821bに沿って底壁821aに向けて延出されている。支持部材812は、背板811の下端部側面から(-X)方向に延出されている。本実施形態では、3本の支持部材812が設けられている。各支持部材812では、複数のV字状の溝812aが一定のピッチでX方向に配設されている。各溝812aは基板Wの厚さより若干幅広のV字状の溝812aが(+Z)方向に開口して形成され、基板Wを係止可能となっている。このため、3本の支持部材812によって基板搬送機構7により搬送されてくる複数の基板Wを一定の基板ピッチPT(
図5)で一括して保持可能となっている。また、延出部材813は、背板811の上端部背面から(+X)方向に延出されている。リフタ810aは、
図2に示すように全体としてL字状を呈している。なお、リフタ810aの最上昇位置は、基板搬送機構7が複数枚の基板Wを保持した状態であっても支持部材812の上方を通過できる高さに設定されている。
【0030】
処理槽821の(+X)方向側には、リフタ駆動機構814が設けられている。リフタ駆動機構814は、昇降モータ815と、ボールネジ816と、昇降ベース817と、昇降支柱818と、モータ駆動部819とを備えている。昇降モータ815は、回転軸を縦置きにした状態で基板処理システム1のフレーム(図示省略)に取り付けられている。ボールネジ816は、昇降モータ815の回転軸に連結されている。昇降ベース817は、ボールネジ816に一方側が螺合されている。昇降支柱818は、基端部側が昇降ベース817の中央部に取り付けられ、他端部側が延出部材813の下面に取り付けられている。制御部9からの上昇指令に応じてモータ駆動部819が昇降モータ815を駆動させると、ボールネジ816が回転し、昇降ベース817とともに昇降支柱818が上昇する。これによって支持部材812が受渡位置に位置決めされる。また、制御部9からの下降指令に応じてモータ駆動部819が昇降モータ815を逆方向に駆動させると、ボールネジ816が逆回転し、昇降ベース817とともに昇降支柱818が下降する。これによって、支持部材812に保持される複数の基板Wが一括して貯留空間821fに貯留された処理液に浸漬される。
【0031】
貯留空間821fでは、支持部材812に保持される複数の基板Wの下方側、つまり(-Z)方向側に処理液吐出部830と気泡供給部840とが配設されている。処理液吐出部830は処理液供給部832からフロー配管系839を介して供給される処理液を貯留空間821fに吐出するものであり、気泡供給部840は貯留空間821fに貯留された処理液内に窒素ガスの気泡V(
図5)を供給するものであり、それぞれ以下のように構成されている。
【0032】
処理液吐出部830は、
図3および
図4に示すように、X方向に延設されたフロー管831を有している。本実施形態では4本のフロー管831がY方向に互いに離間して配置されている。各フロー管831の(-X)方向端部はフロー配管系839のアウトレットと接続され、(+X)方向端部は封止されている。また、各フロー管831の側壁には複数の処理液吐出口834が一定の間隔でX方向に配列するように穿設されている。本実施形態では、
図4に示すように、各処理液吐出口834は(-Z)方向に向けて設けられている。このため、フロー管831に供給されてきた処理液は配管内部を(+X)方向に流れ、各処理液吐出口834から底壁821a、つまり貯留空間821fの内底面821hに向けて吐出される。そして、処理液は
図4中の実線矢印で示すように貯留空間821fの内底面821hを経由して上方に流れ、処理槽821の底壁821aから上方開口821g、つまりオーバーフロー面に向う処理液の流れFを形成する。こうして、処理液の上昇流が基板Wの下方側に形成される。なお、発明内容の理解を容易とするため、4本のフロー管831のうち最も(-Y)方向側に配置されたものを「フロー管831a」と称し、(+Y)方向側に順次配置されるものをそれぞれ「フロー管831b」、「フロー管831c」および「フロー管831d」と称する。また、これらを区別しない場合には、上記のように単に「フロー管831」と称する。
【0033】
気泡供給部840は、
図3ないし
図5に示すように、複数(本実施形態では4本)のバブラー841を有している。各バブラー841は、X方向に延設されたバブル配管842と、バブル配管842から上方、つまり(+Z)方向に突設される複数の突設部位843を有している。各バブル配管842の一方端部は窒素ガスを供給するガス供給部844と接続され、他方端部は封止されている。複数の突設部位843は一定の基板ピッチPTと同じピッチPTでバブル配管842の上方側壁に設けられている。各突設部位843は
図3に示すように中空円柱形状を有し、上端面の中央部に気泡吐出口845が設けられている。本実施形態では、樹脂材料、特にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群から選択された少なくとも1つのもので構成された長尺樹脂管の表面に対して切削加工と穿設加工を施すことでバブル配管842と複数の突設部位843とを一体的に形成している。ここで、バブル配管842と、複数の突設部位843とを個別に準備し、バブル配管842に対して複数の突設部位843を取り付けて一体化させてもよいことは言うまでもない。
【0034】
このように構成された気泡供給部840では、制御部9からの気泡供給指令に応じてガス供給部844が窒素ガスを気泡供給部840に供給すると、バブル配管842を流れる窒素ガスが気泡吐出口845から上方に向けて吐出する。これによって、窒素ガスの気泡Vが貯留空間821fに貯留された処理液に供給され、鉛直方向Zにおいて処理液吐出口834よりも高い位置からオーバーフロー面に向う方向、つまり(+Z)方向に気泡Vが供給される。これらの気泡Vは処理液内を上昇し、基板Wの表面の処理液を新鮮な処理液に置換することを促進する。なお、ガス供給部844としては、例えば窒素ガスが充填されたボンベから窒素ガスを供給する構成であってもよいし、基板処理システム1が設置される工場に設けられたユーティリティを用いてもよい。
【0035】
また、
図4に示すように、4本のバブラー841は、3つのバブラーボード851により下方から支持されることで、リフタ810aに保持された基板Wの下方側かつ処理液吐出口834の上方側で固定的に配置されている。ここでも、発明内容の理解を容易とするため、4本のバブラー841のうち最も(-Y)方向側に配置されたものを「バブラー841a」と称し、(+Y)方向側に順次配置されるものをそれぞれ「バブラー841b」、「バブラー841c」および「バブラー841d」と称する。また、これらを区別しない場合には、上記のように単に「バブラー841」と称する。一方、バブラーボード851についても同様に、バブラーボード851のうち最も(-Y)方向側に配置されたものを「バブラーボード851a」と称し、(+Y)方向側に順次配置されるものをそれぞれ「バブラーボード851b」および「バブラーボード851c」と称する。また、これらを区別しない場合には、上記のように単に「バブラーボード851」と称する。
【0036】
バブラーボード851a~851cはいずれもX方向に延設されたプレート形状を有している。これらのうちバブラーボード851aは、
図4に示すように、鉛直方向Zにおいて処理液吐出口834よりも高い位置でフロー管831aとフロー管831bとの間に配置されるとともに固定部材(図示省略)により処理槽821に固定されている。そして、当該バブラーボード851aの上面にバブラー841aが次の配置関係を満足するように固定されている。その配置関係とは、
図5に示すように、バブラー841aに取り付けられた突設部位843が上方を向いていることと、X方向において基板Wと気泡吐出口845とが交互に位置するということである。このように配置することで気泡吐出口845から供給された気泡VはX方向において隣接する基板Wの間に向けて気泡Vを吐出され、効率的な薬液処理が実行される。なお、この配置関係はその他のバブラー841b~841dについても同様である。
【0037】
バブラーボード851bは鉛直方向Zにおいて処理液吐出口834よりも高い位置でフロー管831bとフロー管831cとの間に配置されるとともに固定部材(図示省略)により処理槽821に固定されている。そして、当該バブラーボード851bの上面にバブラー841b、841cがY方向に一定間隔だけ離間しながら固定されている。さらにバブラーボード851cは鉛直方向Zにおいて処理液吐出口834よりも高い位置でフロー管831cとフロー管831dとの間に配置されるとともに固定部材(図示省略)により処理槽821に固定されている。そして、当該バブラーボード851cの上面にバブラー841dが固定されている。このようにバブラーボード851a~851cは気泡供給部840を下方から支持する機能を有している。
【0038】
また、バブラーボード851a~851cは鉛直方向Zにおいて処理液吐出口834よりも高い位置にてフロー管831a~831dの間に配置されているため、上記支持機能以外に、貯留空間821fの内底面821hを経由して上方に流れる処理液の流れFを規制する機能を有している。バブラーボード851a~851cは互いに離間して処理液の流通経路となる貫通部位852a、852bを形成している。そして、貫通部位852a、852bにフロー管831b、831cの下端部が入り込むように配置されている。また、フロー管831b、831cと同一高さ位置で、フロー管831aがバブラーボード851aの(-Y)方向側に配置されるとともにフロー管831dがバブラーボード851aの(+Y)方向側に配置されている。しかも、バブラーボード851a~851cおよびフロー管831a~831dのうち互いに隣接するもの同士の間に隙間86が形成されている。このため、処理液の上昇流のうちバブラーボード851の下面に向かって流れる処理液(以下「分流対象液」という)の流れFは当該下面で規制され、水平面内で振り分けられる。例えば
図4の部分拡大図では、バブラーボード851cの下面に向う分流対象液の流れFはバブラーボード851cとフロー管831cとの隙間86を流れる処理液の流れF5とバブラーボード851cとフロー管831dとの隙間86を流れる処理液の流れF6とに分流される。また、他のバブラーボード851a、851bにおいても、バブラーボード851cと同様に、分流対象液の流れFが規制されて複数の処理液の流れF1~F4に分流される。
【0039】
このように本実施形態では、貯留空間821fの内底面821hを経由して上方に流れる処理液の一部(分流対象液)の流れFが複数の流れF1~F6に分流されてオーバーフロー面に向けて上昇する。このように本実施形態では、バブラーボード851a~851cは貯留空間821fの内底面821hを経由して上方に流れる処理液の少なくとも一部を分流対象液とし、当該分流対象液の流れFを複数の上昇流に分流してリフタ810aに保持された基板Wに案内しており、分流部850(
図3)として機能している。
【0040】
なお、
図2ないし
図5を参照しつつ本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当する第1薬液処理部81の構成について説明したが、第2薬液処理部83も処理液の種類が同種または異種である点を除き、第1薬液処理部81と同一の構成を有し、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当している。また、第1リンス処理部82および第2リンス処理部84は、処理液が純水やDIW(deionized water)などのリンス液である点を除き、第1薬液処理部81と同一の構成を有し、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当している。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、貯留空間821f内における上昇している処理液の多くは上方開口821gを介してオーバーフローして処理槽821から回収空間822aに排出されるが、処理液の一部は側壁開口821h~821kを介して処理槽821から回収空間822aに排出される。このように上昇流は基板対向領域の近傍で分流される。この処理液の分流によって下降流の発生が抑制される。その結果、基板Wに対して気泡Vが均一に供給され、第1薬液処理部81、第1リンス処理部82、第2薬液処理部83および第2リンス処理部84における各基板処理を高品質で行うことができる。
【0042】
特に、第1薬液処理部81は高アスペクト比の凹部を介してSiN膜をウエットエッチングするため、本発明を第1薬液処理部81に適用することは3D-NANDメモリの製造に重要である。すなわち、ウエットエッチング性能を高めるためには凹部の内部と外部との間で処理液の置換を良好に行う必要がある。また、凹部の底付近にエッチング反応に伴うシリコン析出が発生するが、処理液の置換により上記シリコンを凹部から排出することが可能となる。この液置換を安定的かつ継続して発現させるためには、凹部の内部と外部との濃度差、つまり濃度勾配を大きく、しかも基板Wの表面全体にわたって均一に保つ必要がある。さらに言えば、これらを満足させるためには、基板Wの表面に新鮮な処理液を均一に供給することが重要な技術事項となる。この点について、基板Wに対して気泡Vを均一に供給することができる第1薬液処理部81によれば、気泡Vによる処理液の均一供給によりSiN膜のウエットエッチングを良好に行うことができる。
【0043】
また、処理液吐出口834から処理液が貯留空間821fの内底面821hに向けて吐出され、当該内底面821hを経由してオーバーフロー面に向う処理液の流れFを形成している。このため、処理液を基板Wの下方側から上方や斜め上方に向けて吐出したり、特許文献1に記載の装置のように貯留空間の内底面に沿って吐出した従来技術に比べて貯留空間821f内で処理液の上昇流が偏って形成されるのを抑制することができる。しかも、内底面821hを経由して上方に流れる処理液の流れFの一部については、複数の流れF1~F6に分流した後でオーバーフロー面に向けて案内している。したがって、貯留空間821fに貯留された処理液内では、数多くの上昇流が処理液内で広く分散して形成された状態で処理液は上昇する。このため、貯留空間821f内で下降流が発生するのを効果的に抑制することができる。その結果、基板Wに対して気泡Vが均一に供給され、基板処理を高品質で行うことができる。
【0044】
また、上記実施形態では、側壁開口821h~821kを設けて処理液の上昇流を分流している。このため、鉛直方向Zにおける側壁開口821h~821kの高さ位置よりも上方側では単位時間当たりに基板Wの供給される処理液の量は下方側に比べて少なくなる。この点を考慮して、本実施形態では、全側壁開口821h~821kは、
図4に示すように、貯留空間821f内でリフタ810aに保持された基板Wの中心Wcを通るとともに基板Wの表面と直交する仮想水平面HSよりも上方側に設けられている。そのため、側壁開口821h~821kによる分流による影響を抑えることができる。
【0045】
また、
図4の部分拡大図に示すように、互いに隣接するフロー管831c、831dの間にバブラーボード851cおよびバブラー841dが配置されている。つまり、バブラーボード851cおよびバブラー841dは鉛直方向Zにおいてフロー管831c、831dの最頂部位と最低部位(処理液吐出口834)との間に配置されている。この点については、フロー管831a、831bの間およびフロー管831b、831cの間においても同様である。このように、処理液吐出部830、気泡供給部840および分流部850は鉛直方向Zにおいてフロー管831の外径寸法の範囲に収まっており、鉛直方向Zにおいて処理槽821をサイズアップすることなく、基板処理を高品質で行うことができる。
【0046】
また、
図4に示すように、貯留空間821f内でリフタ810aに保持された基板Wの中心Wcを通るとともに基板Wの表面と直交する仮想鉛直面VSに対し、処理液吐出部830、気泡供給部840および分流部850が対称配置されている。このため、貯留空間821fに貯留された処理液内で発生する上昇流も仮想鉛直面VSに対して対象となり、上昇流の偏りが抑えられ下降流の発生を効果的に抑制することができる。
【0047】
また、
図5の部分拡大図に示すように、X方向において基板Wと気泡吐出口845とが交互に位置するようにバブラー841dに配置されているため、気泡Vを互いに隣接する基板Wの間に向けて効率的に供給することができる。その結果、基板処理(薬液処理やリンス処理)を高品質で行うことができる。
【0048】
また、バブラーボード851a~851cを気泡供給部840の鉛直直下に位置させて気泡供給部840を下方から支持している。このため、気泡供給部840をしっかりと固定することができ、気泡Vを安定して互いに隣接する基板Wの間に向けて供給することができる。
【0049】
さらに、
図3に示すように、貫通部位852a、852bは気泡吐出口845の配列方向Xと平行な方向に設けられている。このため、貫通部位852a、852bを通過して上方に流れる処理液の流れと気泡Vの流れの相対的な関係がX方向において一定となり、気泡Vの供給方向が乱れるのを抑制する。その結果、気泡Vを安定して互いに隣接する基板Wの間に向けて供給することができる。
【0050】
図6は本発明に係る基板処理装置の第2実施形態の概略構成を示す部分断面図である。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、側壁開口821h~821kの開度を調整する開度調整部860を備える点であり、その他の構成は第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0051】
開度調整部860は、側壁開口821h~821kの近傍に配置されて側壁開口821h~821kを開閉するシャッター861と、側壁開口821h~821kに対してシャッター861を鉛直方向Zに移動させるシャッター駆動部862とを有している。シャッター駆動部862は制御部9と電気的に接続されている。制御部9は処理液吐出部830から貯留空間821fに吐出される単位時間当たりの処理液の吐出量に応じて鉛直方向Zにおける側壁開口821h~821kに対するシャッター861の最適位置を求める。そして、制御部9は当該最適位置にシャッター861を移動させるべき移動量を計算し、当該移動量に基づいて移動指令をシャッター駆動部862に与える。シャッター駆動部862は移動指令に応じてシャッター861を移動させる。このように側壁開口821h~821kに対するシャッター861の位置を制御して側壁開口821h~821kの開度を調整する。その結果、処理液吐出部830からの処理液の吐出量の値にかかわらず、側壁開口821h~821kを介して回収空間822aに回収される処理液の回収量を適切に調整し、下降流の発生を確実に抑制することができる。
【0052】
図7は本発明に係る基板処理装置の第3実施形態の概略構成を示す部分斜視図であり、オーバーフロー槽822および外容器823の一部を切り欠いて図示している。この第3実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は2つある。1つ目は、側壁821b~821eがそれぞれ下方側壁部位821b1~821e1と上方側壁部位821b2~821e2とに分割されている点である。また、2つ目は、上方側壁部位821b2~821e2が一定距離だけ下方側壁部位821b1~821e1の鉛直上方に配置されている点である。なお、その他の構成は第1実施形態と同一である。したがって、以下においては、相違点を中心に説明し、同一構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
第3実施形態では、上記仮想水平面HS(
図4)よりも上方側で側壁821b~821eは上下分割されている。そして、上方側壁部位821b2~821e2と下方側壁部位821b1~821e1とが鉛直方向Zに互いに離間することで、貯留空間821fを水平方向から取り囲むように側壁開口821mが形成されている。このため、第1実施形態と同様に、上方開口821gに向けて上昇してくる処理液の一部は側壁開口821mを介して処理槽821から回収空間822aに排出され、基板対向領域の近傍で分流される。この処理液の分流によって下降流の発生が抑制され、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0054】
また、第3実施形態では、上方側壁部位821b2~821e2と下方側壁部位821b1との離間距離は一定であるが、上方側壁部位821b2~821e2の全部あるいは一部を鉛直方向Zに移動可能な可動側壁部位としてもよい。そして、図示を省略する壁部駆動部を可動側壁部位に接続し、第2実施形態と同様に、制御部9が処理液吐出部830から貯留空間821fに吐出される単位時間当たりの処理液の吐出量に応じて鉛直方向Zにおける可動側壁部位の位置を制御して側壁開口821mの開度を調整するように構成してもよい。この場合、処理液吐出部830からの処理液の吐出量の値にかかわらず、側壁開口821mを介して回収空間822aに回収される処理液の回収量を適切に調整し、下降流の発生を確実に抑制することができる。
【0055】
さらに、下降流の発生をさらに抑制するために、特開平11-102888号公報に記載された技術、つまり上方開口821gの面積を制限するカバーを追加して下降流を抑制するという技術を上記実施形態に付加してもよい。
【0056】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、バブル配管842から中空円柱状の突設部位843を設けたバブラー841を用いて気泡Vを供給しているが、バブラー841の構成はこれに限定されるものではない。例えば
図8に示すように中空円錐台形状の突設部位846をバブル配管842から突設したものを用いてもよい(第4実施形態)。また、例えば
図9に示すように突設部位を設けないもの、つまりバブル配管842の上面に気泡吐出口845を穿設したものを用いてもよい(第5実施形態)。
【0057】
また、第1実施形態では、全側壁821b~821eに側壁開口を設けているが、一部の側壁のみに側壁開口を設けてもよい。また、側壁821b~821e毎に1つの側壁開口を独立して設けているが、1つの側壁に設ける側壁開口の数は2以上であってもよい。また、互いに隣接する側壁に設けられた開口を連結して1つの側壁開口を設けてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、処理液吐出部830は4本のフロー管831を含んでいるが、フロー管831の本数はこれに限定されるものではなく、貯留空間821fや基板Wのサイズ等に応じて設定するのが望ましい。また、気泡供給部840に含まれるバブラー841の本数は4本であるが、バブラー841の本数はこれらに限定されるものではなく、貯留空間821fや基板Wのサイズ等に応じて設定するのが望ましい。また、分流部850に含まれるバブラーボード851の枚数は3枚であるが、バブラー841の本数はこれらに限定されるものではなく、貯留空間821fや基板Wのサイズ等に応じて設定するのが望ましい。
【0059】
また、上記実施形態では、バブラー841を分流部850のバブラーボード851により支持して貯留空間821fに貯留された処理液内で固定的に配置するとともに、当該バブラーボード851により内底面821hを経由して上方に流れる処理液の流れFを複数の流れに分流させている。ここで、例えばバブラーボード851を処理槽821に直接的に固定する、つまり分流部850を設けない基板処理装置に対して本発明を適用してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、窒素ガスをバブラー841に送り込んで窒素ガスの気泡Vを処理液内に供給しているが、窒素ガス以外のガスを本発明の「気体」として用いてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、フロー管831から処理液を貯留空間821fの内底面821hに向けて吐出する基板処理装置に本発明を適用しているが、本発明の処理液の供給態様はこれに限定されるものではない。例えば基板の下方側から上方や斜め上方に向けて吐出したり、特許文献1のように貯留空間の内底面に沿って吐出する基板処理装置に対して本発明を適用してもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、リン酸を含む薬液により薬液処理を行う基板処理装置やリンス処理を行う基板処理装置に対して本発明を適用しているが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではなく、上記薬液やリンス液以外の処理液に基板を浸漬させるとともに処理液内で上記基板に気泡を供給して基板処理を行う基板処理技術全般に本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、処理液を処理槽からオーバーフローさせながら処理槽に貯留された処理液に基板を浸漬するとともに処理液内で上記基板に気泡を供給して処理する基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
81…第1薬液処理部(基板処理装置)
82…第1リンス処理部(基板処理装置)
83…第2薬液処理部(基板処理装置)
84…第2リンス処理部(基板処理装置)
810,810a,810b…リフタ(基板保持部)
821…処理槽
821a…(処理槽の)底壁
821b~821e…(処理槽の)側壁
821b1~821e1…下方側壁部位
821b2~821e2…上方側壁部位
821f…貯留空間
821g…上方開口
821h…(貯留空間の)内底面
821h~821m…側壁開口
822…オーバーフロー槽
822a…回収空間
830…処理液吐出部
834…処理液吐出口
840…気泡供給部
841,841a~841d…バブラー
845…気泡吐出口
HS…仮想水平面
V…気泡
VS…仮想鉛直面
W…基板
Wc…(基板の)中心
Z…鉛直方向