(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240705BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240705BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/53
B23K26/03
(21)【出願番号】P 2020130257
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】杉本 陽
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-001457(JP,A)
【文献】特開2019-162662(JP,A)
【文献】特開2008-012566(JP,A)
【文献】特開2018-098464(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017599(WO,A1)
【文献】特開2001-150171(JP,A)
【文献】特開2009-140958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0077296(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
B23K 26/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を含む基板と、前記基板の前記第1主面側に設けられ金属層を含む機能素子層と、を有する対象物に対して、加工用レーザ光を照射し、前記機能素子層の内部に改質領域を仮想面に沿って形成するレーザ加工装置であって、
前記対象物を支持する支持部と、
前記加工用レーザ光を前記対象物に前記第2主面側から照射する加工用照射部と、
前記基板を透過する観察用透過光を、前記対象物に前記第2主面側から照射する観察用照射部と、
前記支持部、前記加工用照射部及び前記観察用照射部の少なくとも何れかを、前記対象物の厚さ方向に移動させる移動機構と、
前記金属層に前記観察用透過光の焦点が合うときの前記厚さ方向における前記観察用照射部及び/又は前記支持部の位置を、金属層焦点位置として取得する焦点位置取得部と、
前記焦点位置取得部で取得した前記金属層焦点位置を基準にして、前記改質領域を形成する際の前記厚さ方向における前記加工用照射部及び/又は前記支持部の位置を、レーザ加工位置として設定する加工位置設定部と、を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記観察用透過光に感度を有し、前記観察用照射部からの前記観察用透過光の照射に応じて反射した反射光を受光する第1撮像素子を備える、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1撮像素子は、前記加工用レーザ光に感度を更に有し、前記加工用照射部からの前記加工用レーザ光の照射に応じて反射した反射光を更に受光する、請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記第1撮像素子の撮像結果に基づいて前記移動機構を制御し、前記金属層に前記観察用透過光の焦点が合うように前記観察用照射部及び/又は前記支持部を前記厚さ方向に移動させる位置合わせ部を備える、請求項2又は3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記金属層焦点位置は、前記支持部上において前記厚さ方向を座標軸にした場合の前記観察用照射部の座標で表され、
前記レーザ加工位置は、前記支持部上において前記厚さ方向を座標軸にした場合の前記加工用照射部の座標で表される、請求項1~4の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
予め定められ前記金属層焦点位置の基準値である基準焦点位置と、予め定められ前記レーザ加工位置の基準値である基準加工位置と、を記憶する記憶部を備え、
前記加工位置設定部は、
前記焦点位置取得部で取得した前記金属層焦点位置と前記基準焦点位置との差分を求め、当該差分と前記基準加工位置とに基づき前記レーザ加工位置を設定する、請求項1~5の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記加工位置設定部は、当該差分又は当該差分の補正値に応じて前記基準加工位置を加減した値を前記レーザ加工位置に設定する、請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記基準加工位置は、加工マージン範囲の中央値であり、
前記加工マージン範囲は、前記加工用レーザ光の集光点が前記仮想面の周辺において前記厚さ方向に移動するように前記加工用照射部及び/又は前記支持部を移動させた場合であって、加工品質が一定以上となるときの当該移動の範囲である、請求項6又は7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記加工位置設定部で設定した前記レーザ加工位置に前記移動機構により前記加工用照射部を位置させ、当該加工用照射部から前記対象物に前記加工用レーザ光を照射させることで、前記機能素子層の内部に前記改質領域を形成させるレーザ加工実行部を備える、請求項1~8の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記改質領域は、前記厚さ方向から見て前記機能素子層の一部領域又は全領域に広がるように形成される、請求項1~9の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
前記加工用照射部及び前記観察用照射部を構成するレーザ加工ヘッドを備え、
前記レーザ加工ヘッドは、前記加工用レーザ光と前記観察用透過光とを同軸で出射する、請求項1~10の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項12】
前記加工用照射部及び前記観察用照射部を構成するレーザ加工ヘッドを備え、
前記レーザ加工ヘッドは、前記加工用レーザ光と前記観察用透過光とを別軸で出射する、請求項1~10の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項13】
前記加工用照射部を構成するレーザ加工ヘッドと、
前記観察用照射部を構成し且つ前記レーザ加工ヘッドとは別体の観察用ヘッドと、を備える、請求項1~10の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項14】
前記加工用レーザ光に感度を有し、前記加工用照射部からの前記加工用レーザ光の照射に応じて反射した反射光を受光する第2撮像素子を備える、請求項1~13の何れか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項15】
第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を含む基板と、前記基板の前記第1主面側に設けられ金属層を含む機能素子層と、を有する対象物に対して、加工用レーザ光を照射し、前記機能素子層の内部に改質領域を仮想面に沿って形成するレーザ加工方法であって、
前記対象物を支持部で支持するステップと、
加工用照射部により前記加工用レーザ光を前記対象物に前記第2主面側から照射するステップと、
観察用照射部により前記基板を透過する観察用透過光を前記対象物に前記第2主面側から照射し、前記観察用透過光の照射に応じて反射した反射光を第1撮像素子で受光するステップと、
前記第1撮像素子の撮像結果に基づいて前記観察用照射部及び/又は前記支持部を前記対象物の厚さ方向に移動し、前記金属層に前記観察用透過光の焦点が合うときの前記厚さ方向における前記観察用照射部及び/又は前記支持部の位置を、金属層焦点位置として取得するステップと、
取得した前記金属層焦点位置を基準にして、前記改質領域を形成する際の前記厚さ方向における前記加工用照射部及び/又は前記支持部の位置を、レーザ加工位置として設定するステップと、を備えるレーザ加工方法。
【請求項16】
前記金属層焦点位置の基準値である基準焦点位置と、前記レーザ加工位置の基準値である基準加工位置と、を取得する基準値取得ステップを備え、
前記基準値取得ステップでは、
基準設定用の前記対象物を前記支持部で支持するステップと、
前記観察用透過光を基準設定用の前記対象物に前記第2主面側から照射し、前記観察用透過光の照射に応じて反射した反射光を第1撮像素子で受光し、前記第1撮像素子の撮像結果に基づいて前記観察用照射部及び/又は前記支持部を前記厚さ方向に移動し、前記金属層に前記観察用透過光の焦点が合うときの前記厚さ方向における前記観察用照射部及び/又は前記支持部の位置を、前記基準焦点位置として取得するステップと、
前記厚さ方向における前記加工用照射部及び/又は前記支持部の位置を変えて前記加工用レーザ光を基準設定用の前記対象物に前記第2主面側から照射し、その加工品質と前記加工用照射部及び/又は前記支持部の位置とに基づいて前記基準加工位置を取得するステップと、を含み、
前記レーザ加工位置を設定するステップでは、
取得した前記金属層焦点位置と前記基準焦点位置との差分を求め、当該差分と前記基準加工位置とに基づき前記レーザ加工位置を設定する、請求項15に記載のレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のレーザ加工装置として、例えば特許文献1には、加工対象物の内部に改質領域を形成する装置が記載されている。特許文献1に記載されたレーザ加工装置は、加工対象物が載置される載置台と、照明光を出射する観察用光源と、レーザ光を出射するレーザ光源と、加工対象物の表面に照明光を集光すると共に加工対象物の内部にレーザ光を集光する集光用レンズと、加工対象物の表面に集光された照明光の反射光を撮像して撮像データを取得する撮像手段と、を備える。特許文献1に記載されたレーザ加工装置では、撮像データに基づいて照明光の焦点が加工対象物の表面上に位置するように載置台及び集光用レンズの少なくとも一方を移動させた後に、レーザ光の集光点が加工対象物の内部に位置するように当該表面を基準として加工対象物の厚さ方向に載置台及び集光用レンズの少なくとも一方を移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、レーザ加工装置では、第1主面及び第1主面の反対側の第2主面を含む基板と、基板の第1主面側に設けられ金属層を含む機能素子層と、を有する対象物に対して、加工用レーザ光を第2主面側から照射し、機能素子層の内部に改質領域を仮想面に沿って形成する場合がある。この場合において、上述した従来技術を用いて改質領域を形成する際には、基板のレーザ光入射面(第2主面)を基準にして厚さ方向に載置台及び集光用レンズの少なくとも一方が移動させられる。よって、基板厚さがばらつくと、その影響を受けて厚さ方向におけるレーザ光の集光点の位置(改質領域の形成位置)がばらつき、加工品質が悪化する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、基板厚さのばらつきの影響を抑えたレーザ加工が可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るレーザ加工装置は、第1主面及び第1主面の反対側の第2主面を含む基板と、基板の第1主面側に設けられ金属層を含む機能素子層と、を有する対象物に対して、加工用レーザ光を照射し、機能素子層の内部に改質領域を仮想面に沿って形成するレーザ加工装置であって、対象物を支持する支持部と、加工用レーザ光を対象物に第2主面側から照射する加工用照射部と、基板を透過する観察用透過光を、対象物に第2主面側から照射する観察用照射部と、支持部、加工用照射部及び観察用照射部の少なくとも何れかを、対象物の厚さ方向に移動させる移動機構と、金属層に観察用透過光の焦点が合うときの厚さ方向における観察用照射部及び/又は支持部の位置を、金属層焦点位置として取得する焦点位置取得部と、焦点位置取得部で取得した金属層焦点位置を基準にして、改質領域を形成する際の厚さ方向における加工用照射部及び/又は支持部の位置を、レーザ加工位置として設定する加工位置設定部と、を備える。
【0007】
このレーザ加工装置では、対象物のレーザ光入射面ではなく金属層に観察用透過光の焦点が合うときの金属層焦点位置を取得し、この金属層焦点位置を基準にしてレーザ加工位置を設定している。よって、基板が厚くなったり薄くなったりしても、その影響を受けずにレーザ加工位置を設定することができる。すなわち、基板厚さのばらつきの影響を抑えたレーザ加工を行うことが可能となる。
【0008】
本発明に係るレーザ加工装置は、観察用透過光に感度を有し、観察用照射部からの観察用透過光の照射に応じて反射した反射光を受光する第1撮像素子を備えていてもよい。この場合、第1撮像素子の撮像結果を利用して、金属層に観察用透過光の焦点が合うように観察用照射部及び/又は支持部を厚さ方向に移動させることが可能となる。
【0009】
本発明に係るレーザ加工装置では、第1撮像素子は、加工用レーザ光に感度を更に有し、加工用照射部からの加工用レーザ光の照射に応じて反射した反射光を更に受光してもよい。この場合、第1撮像素子の撮像結果を利用して、例えば加工用レーザ光のビーム形状等を把握することができる。
【0010】
本発明に係るレーザ加工装置は、第1撮像素子の撮像結果に基づいて移動機構を制御し、金属層に観察用透過光の焦点が合うように観察用照射部及び/又は支持部を厚さ方向に移動させる位置合わせ部を備えていてもよい。この場合、観察用照射部及び/又は支持部を、金属層に観察用透過光の焦点が合うように自動的に厚さ方向に移動させることができる。
【0011】
本発明に係るレーザ加工装置では、金属層焦点位置は、支持部上において厚さ方向を座標軸にした場合の観察用照射部の座標で表され、レーザ加工位置は、支持部上において厚さ方向を座標軸にした場合の加工用照射部の座標で表されていてもよい。これにより、金属層焦点位置及びレーザ加工位置を簡便に取り扱うことができる。
【0012】
本発明に係るレーザ加工装置は、予め定められ金属層焦点位置の基準値である基準焦点位置と、予め定められレーザ加工位置の基準値である基準加工位置と、を記憶する記憶部を備え、加工位置設定部は、焦点位置取得部で取得した金属層焦点位置と基準焦点位置との差分を求め、当該差分と基準加工位置とに基づきレーザ加工位置を設定してもよい。この場合、レーザ加工位置を簡便に設定することができる。
【0013】
本発明に係るレーザ加工装置では、加工位置設定部は、当該差分又は当該差分の補正値に応じて基準加工位置を加減した値をレーザ加工位置に設定してもよい。この場合、レーザ加工位置を簡便に且つ精度よく設定することができる。
【0014】
本発明に係るレーザ加工装置では、基準加工位置は、加工マージン範囲の中央値であり、加工マージン範囲は、加工用レーザ光の集光点が仮想面の周辺において厚さ方向に移動するように加工用照射部及び/又は支持部を移動させた場合であって、加工品質が一定以上となるときの当該移動の範囲であってもよい。この場合、加工用レーザ光の集光部として低NA(numerical aperture)のものを用いると、より広い加工マージン範囲を得ることができる。
【0015】
本発明に係るレーザ加工装置は、加工位置設定部で設定したレーザ加工位置に移動機構により加工用照射部を位置させ、当該加工用照射部から対象物に加工用レーザ光を照射させることで、機能素子層の内部に改質領域を形成させるレーザ加工実行部を備えていてもよい。この場合、機能素子層の内部における改質領域の形成を具体的に実現することができる。
【0016】
本発明に係るレーザ加工装置では、改質領域は、厚さ方向から見て機能素子層の一部領域又は全領域に広がるように形成されていてもよい。この場合、厚さ方向から見て機能素子層の一部領域又は全領域に形成された改質領域を利用して、対象物を剥離することができる。
【0017】
本発明に係るレーザ加工装置は、加工用照射部及び観察用照射部を構成するレーザ加工ヘッドを備え、レーザ加工ヘッドは、加工用レーザ光と観察用透過光とを同軸で出射してもよい。この場合、加工用照射部及び観察用照射部をレーザ加工ヘッドとして一体で構成しつつ、当該レーザ加工ヘッドから加工用レーザ光と観察用透過光とを同軸で出射することができる。
【0018】
本発明に係るレーザ加工装置は、加工用照射部及び観察用照射部を構成するレーザ加工ヘッドを備え、レーザ加工ヘッドは、加工用レーザ光と観察用透過光とを別軸で出射してもよい。この場合、加工用照射部及び観察用照射部をレーザ加工ヘッドとして一体で構成しつつ、当該レーザ加工ヘッドから加工用レーザ光と観察用透過光とを別軸で出射することができる。
【0019】
本発明に係るレーザ加工装置は、加工用照射部を構成するレーザ加工ヘッドと、観察用照射部を構成し且つレーザ加工ヘッドとは別体の観察用ヘッドと、を備えていてもよい。この場合、加工用照射部及び観察用照射部をそれぞれレーザ加工ヘッド及び観察用ヘッドとして別体で構成しつつ、加工用レーザ光と観察用透過光とをそれぞれレーザ加工ヘッド及び観察用ヘッドから別軸で出射することができる。
【0020】
本発明に係るレーザ加工装置は、加工用レーザ光に感度を有し、加工用照射部からの加工用レーザ光の照射に応じて反射した反射光を受光する第2撮像素子を備えていてもよい。この場合、第2撮像素子の撮像結果を利用して、例えば加工用レーザ光のビーム形状等を把握することができる。
【0021】
本発明に係るレーザ加工方法は、第1主面及び第1主面の反対側の第2主面を含む基板と、基板の第1主面側に設けられ金属層を含む機能素子層と、を有する対象物に対して、加工用レーザ光を照射し、機能素子層の内部に改質領域を仮想面に沿って形成するレーザ加工方法であって、対象物を支持部で支持するステップと、加工用照射部により加工用レーザ光を対象物に第2主面側から照射するステップと、観察用照射部により基板を透過する観察用透過光を対象物に第2主面側から照射し、観察用透過光の照射に応じて反射した反射光を第1撮像素子で受光するステップと、第1撮像素子の撮像結果に基づいて観察用照射部及び/又は支持部を対象物の厚さ方向に移動し、金属層に観察用透過光の焦点が合うときの厚さ方向における観察用照射部及び/又は支持部の位置を、金属層焦点位置として取得するステップと、取得した金属層焦点位置を基準にして、改質領域を形成する際の厚さ方向における加工用照射部及び/又は支持部の位置を、レーザ加工位置として設定するステップと、を備える。
【0022】
このレーザ加工方法では、対象物のレーザ光入射面ではなく金属層に観察用透過光の焦点が合うときの金属層焦点位置を取得し、この金属層焦点位置を基準にしてレーザ加工位置を設定している。よって、基板が厚くなったり薄くなったりしても、その影響を受けずにレーザ加工位置を設定することができる。すなわち、基板厚さのばらつきの影響を抑えたレーザ加工を行うことが可能となる。
【0023】
本発明に係るレーザ加工方法は、金属層焦点位置の基準値である基準焦点位置と、レーザ加工位置の基準値である基準加工位置と、を取得する基準値取得ステップを備え、基準値取得ステップでは、基準設定用の対象物を支持部で支持するステップと、観察用透過光を基準設定用の対象物に第2主面側から照射し、観察用透過光の照射に応じて反射した反射光を第1撮像素子で受光し、第1撮像素子の撮像結果に基づいて観察用照射部及び/又は支持部を厚さ方向に移動し、金属層に観察用透過光の焦点が合うときの厚さ方向における観察用照射部及び/又は支持部の位置を、基準焦点位置として取得するステップと、厚さ方向における加工用照射部及び/又は支持部の位置を変えて加工用レーザ光を基準設定用の対象物に第2主面側から照射し、その加工品質と加工用照射部及び/又は支持部の位置とに基づいて基準加工位置を取得するステップと、を含み、レーザ加工位置を設定するステップでは、取得した金属層焦点位置と基準焦点位置との差分を求め、当該差分と基準加工位置とに基づきレーザ加工位置を設定してもよい。この場合、基準焦点位置及び基準加工位置を利用してレーザ加工位置を簡便に設定することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基板厚さのばらつきの影響を抑えることが可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、第1実施形態のレーザ加工装置を示す構成図である。
【
図2】
図2は、対象物を示す平面図及び断面図である。
【
図3】
図3は、対象物の一部を拡大して示す断面図である。
【
図4】
図4は、基準値取得ステップを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、層間剥離加工を示すフローチャートである。
【
図6】
図6(a)は、基準値取得ステップを説明するための対象物の概略断面図である。
図6(b)は、
図6(a)の続きを示す図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6(b)の続きを示す図である。
図7(b)は、
図7(a)の続きを示す図である。
【
図8】
図8(a)は、層間剥離加工を説明するための対象物の概略断面図である。
図8(b)は、
図8(a)の続きを示す図である。
【
図9】
図9(a)は、一般的なレーザ加工を説明するための対象物の概略断面図である。
図9(b)は、一般的なレーザ加工を説明するための対象物の概略断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態の変形例に係る観察用ヘッドを示す構成図である。
【
図13】
図13は、第4実施形態に係るレーザ加工装置を示す構成図である。
【
図14】
図14は、変形例に係る対象物の一部を拡大して示す断面図である。
【
図15】
図15(a)は、機能素子層の一部領域に改質領域を形成する第1例を説明するための対象物の平面図及び断面図である。
図15(b)は、機能素子層の一部領域に改質領域を形成する第2例を説明するための対象物の平面図及び断面図である。
【
図16】
図16(a)は、機能素子層の一部領域に改質領域を形成する第3例を説明するための対象物の平面図及び断面図である。
図16(b)は、機能素子層の一部領域に改質領域を形成する第4例を説明するための対象物の平面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。
図1に示されるレーザ加工装置1は、対象物10にレーザ光(加工用レーザ光)Lを照射することで対象物10に改質領域を形成する装置である。なお、以下の説明では、互いに直交する3方向を、それぞれ、X方向、Y方向及びZ方向という。本実施形態では、X方向は第1水平方向であり、Y方向は第1水平方向に垂直な第2水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。Z方向は、対象物10の厚さ方向に対応する。
【0028】
図2及び
図3に示されるように、対象物10は、第1基板11と、機能素子層12と、第2基板13と、を有する。第1基板11、機能素子層12及び第2基板13は、Z方向にこの順で積層するように配置されている。
【0029】
第1基板11及び第2基板13は、円板状に形成されたウェハである。第1基板11及び第2基板13は、例えばシリコン基板等の半導体基板、圧電材料で形成された圧電材料基板、及び、ガラスで形成されたガラス基板等である。第1基板11及び第2基板13には、結晶方位を示すノッチ又はオリエンテーションフラットが設けられていてもよい。第1基板11は、表面(第1主面)11a及び表面11aとは反対側の裏面(第2主面)11bを含む。第2基板13は、表面13a及び表面13aとは反対側の裏面13bを含む。ここでの第1基板11及び第2基板13は、表面11a,13aが互いに対向する向きで配置されている。
【0030】
機能素子層12は、第1基板11の表面11a側に設けられている。機能素子層12は、第2基板13の表面13a側に設けられている。機能素子層12は、複数の機能素子を含む。各機能素子は、例えば、配線用素子、フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、メモリ等の回路素子等である。各機能素子は、複数の層がスタックされて3次元的に構成される場合、及び、マトリックス状に配列される場合がある。ここでの機能素子層12は、複数の金属層12aと複数の非金属層12bとを含み、これらがZ方向に積層されて構成されている。
【0031】
金属層12aは、Ti(チタン)層及びSn(すず)層等を含む。非金属層12bは、例えば酸化膜層及び窒化膜層を含む。非金属層12bは、例えばSiO(一酸化シリコン)層及びSiCN(シリコンカーボンナイトライド)層を含む。金属層12a及び非金属層12bは、例えば成膜処理(スパッタリング、蒸着又はCVD等)、エッチング処理(ドライエッチング又はウェットエッチング)並びに研磨処理等によって、表面11a,13a上に形成されている。
【0032】
対象物10には、剥離予定面としての仮想面M1が設定されている。仮想面M1は、改質領域の形成を予定する面である。仮想面M1は、対象物10のレーザ光入射面である裏面11bに対向する面である。仮想面M1は、裏面11bに平行な面であり、例えば円形状を呈している。仮想面M1は、仮想的な領域であり、平面に限定されず、曲面ないし3次元状の面であってもよい。仮想面M1の設定は、ユーザが操作入力部(図示省略)を介して行うことができる。仮想面M1は、座標指定されたものであってもよい。
【0033】
図1に示されるように、本実施形態のレーザ加工装置1は、対象物10に集光点(少なくとも集光領域の一部)を合わせてレーザ光Lを照射することにより、対象物10の機能素子層12の内部において仮想面M1(
図2参照)に沿って改質領域を形成する。レーザ加工装置1は、対象物10に剥離加工を含むレーザ加工を施す。剥離加工は、対象物10の一部分を剥離するための加工である。レーザ加工装置1は、レーザデボンディング装置としての機能を有する。仮想面M1の位置(つまり、改質領域の形成位置)は、機能素子層12においてそれよりレーザ光入射側に金属層12aを含まない(つまり、非金属層12bのみが含まれる)位置である。
【0034】
レーザ加工装置1は、支持部2、レーザ加工ヘッド3、移動機構4、制御部5及び表示部6を備える。支持部2は、例えば吸着により対象物10を支持する。支持部2は、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動可能である。本実施形態の支持部2には、裏面11bをレーザ光入射面側である上側にした状態で、対象物10が載置される。支持部2は、Z方向に沿って延びる回転軸を有し、この回転軸を中心に回転可能である。
【0035】
レーザ加工ヘッド3は、加工用光源31、観察用光源32、集光部33及び第1撮像素子34を有する。加工用光源31は、例えばパルス発振方式によって、加工用のレーザ光Lを出射する。レーザ光Lは、機能素子層12に吸収性を有する波長域のレーザ光である。例えば、加工用光源31としては、固体パルスレーザ装置が用いられ、レーザ光Lの波長は355nmである。観察用光源32は、第1基板11を透過する観察用透過光L0を出射する。観察用透過光L0は、第1基板11に透過性を有する波長域の光である。観察用光源32としては、特に限定されず、観察用透過光L0を出射可能であれば種々の光源を用いることができる。
【0036】
集光部33は、レーザ光L及び観察用透過光L0を、支持部2によって支持された対象物10に集光する。本実施形態では、加工用光源31から出射されたレーザ光LがダイクロイックミラーH1によって反射され、集光部33に入射する。また、観察用光源32から出射された観察用透過光L0がダイクロイックミラーH2によって反射されてダイクロイックミラーH1を透過し、集光部33に入射する。集光部33は、そのように入射したレーザ光L及び観察用透過光L0を対象物10に集光する。集光部33は、例えば複数の集光用レンズから成るレンズユニットを含んで構成されている。集光部33のレンズユニットとしては、低NA(numerical aperture)のレンズユニットを利用することができる。なお、集光部33は、レンズユニットをZ方向に駆動する圧電素子等の駆動機構を有していてもよいし、有していなくてもよい。低NAとしては、例えば0.1~0.4が挙げられる。
【0037】
第1撮像素子34は、観察用透過光L0に感度を有する撮像素子である。第1撮像素子34は、観察用透過光L0の照射(集光部33による観察用透過光L0の対象物10への集光)に応じて反射した反射光を受光する。本実施形態では、対象物10に照射されて機能素子層12の金属層12aで反射された観察用透過光L0の反射光が、集光部33及びダイクロイックミラーH1,H2を介して第1撮像素子34で検出される。例えば第1撮像素子34は、観察用透過光L0による金属層12aの像を画像として取得する。
【0038】
また、第1撮像素子34は、レーザ光Lに感度を更に有する。第1撮像素子34は、レーザ光Lの照射(集光部33によるレーザ光Lの対象物10への集光)に応じて反射した反射光を更に受光する。本実施形態では、対象物10に照射されて反射されたレーザ光Lの反射光が、集光部33及びダイクロイックミラーH1,H2を介して第1撮像素子34で検出される。例えば第1撮像素子34は、レーザ光Lのビーム形状に係る像を画像として取得する。第1撮像素子34は、撮像結果を制御部5へ出力する。
【0039】
このようなレーザ加工ヘッド3は、レーザ光Lと観察用透過光L0とを同軸で出射する。レーザ加工ヘッド3は、レーザ光Lを対象物10に裏面11b側から照射する加工用照射部と観察用透過光L0を対象物10に裏面11bから照射する観察用照射部とを構成する。レーザ加工ヘッド3は、レーザ光Lを変調する空間光変調器を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0040】
移動機構4は、支持部2及びレーザ加工ヘッド3の少なくとも何れかをX方向、Y方向及びZ方向に移動させる機構を含む。移動機構4は、レーザ光Lの集光点がX方向、Y方向及びZ方向に移動するように、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により支持部2及びレーザ加工ヘッド3の少なくとも何れかを駆動する。移動機構4は、観察用透過光L0の焦点がZ方向に移動するように、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により支持部2及びレーザ加工ヘッド3の少なくとも何れかを駆動する。また、移動機構4は、回転軸を中心に支持部2を回転させる機構を含む。移動機構4は、レーザ光Lの集光点が回転軸回りのθ方向に移動するように、モータ等の公知の駆動装置の駆動力により支持部2を回転駆動する。移動機構4としては特に限定されず、公知の種々の機構を採用することができる。
【0041】
制御部5は、レーザ加工装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部5では、プロセッサが、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)を実行し、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信を制御する。制御部5は、焦点位置取得部51、加工位置設定部52、記憶部53及びレーザ加工実行部54を含む。
【0042】
焦点位置取得部51は、金属層12aに観察用透過光L0の焦点が合うときのZ方向におけるレーザ加工ヘッド3の位置を、金属層焦点位置(以下、単に「金属層焦点位置」という)として取得する。金属層焦点位置は、支持部2上におけるレーザ加工ヘッド3のZ座標(Z方向の座標軸の座標)で表される。例えば、表示部6に表示させた観察用透過光L0による金属層12aの画像について金属層12aにピントが合っているとき、そのときのレーザ加工ヘッド3のZ方向の位置が焦点位置取得部51により金属層焦点位置として取得される。
【0043】
加工位置設定部52は、焦点位置取得部51で取得した金属層焦点位置を基準にして、レーザ光Lの集光により改質領域を形成する際のZ方向におけるレーザ加工ヘッド3の位置を、レーザ加工位置(以下、単に「レーザ加工位置」という)として設定する。レーザ加工位置は、支持部2上におけるレーザ加工ヘッド3のZ座標で表される。具体的には、加工位置設定部52は、焦点位置取得部51で取得した金属層焦点位置と、記憶部53に記憶されている基準焦点位置との差分を求める。そして、加工位置設定部52は、求めた当該差分と、記憶部53に記憶されている基準加工位置と、に基づいて、レーザ加工位置を設定する。一例として、加工位置設定部52は、当該差分の補正値に応じて基準加工位置を加減したZ座標を、レーザ加工位置として設定する。
【0044】
記憶部53は、例えばハードディスク等であり、各種データを記憶する。記憶部53は、予め定められ金属層焦点位置の基準値である基準焦点位置と、予め定められレーザ加工位置の基準値である基準加工位置と、を記憶する。基準加工位置は、加工マージン範囲の中央値であるマージンセンターである。加工マージン範囲は、レーザ光Lの集光点が仮想面M1の周辺においてZ方向に移動するようにレーザ加工ヘッド3及び/又は支持部2を移動させた場合であって加工品質が一定以上となるときの、当該移動の範囲である(詳しくは、後述)。加工マージン範囲は、加工プロセスウィンドウとも称される。
【0045】
レーザ加工実行部54は、加工位置設定部52で設定したレーザ加工位置に移動機構4によりレーザ加工ヘッド3を位置させ、機能素子層12に集光するようにレーザ光Lをレーザ加工ヘッド3から対象物10に照射させる。機能素子層12の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点に対応する部分でレーザ光Lが吸収され、改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。改質領域は、複数の改質スポット及び複数の改質スポットから延びる亀裂を含む。
【0046】
レーザ加工実行部54は、レーザ加工ヘッド3からのレーザ光Lの照射に併せて、レーザ光Lの集光点が仮想面M1に沿って移動するように移動機構4により支持部2及びレーザ加工ヘッド3の少なくとも一方を移動させる。例えばレーザ加工実行部54は、支持部2を回転させながら、レーザ加工ヘッド3のX方向及び/又はY方向の移動を制御する。
【0047】
表示部6は、例えばモニタ等である。表示部6は、制御部5により制御され、第1撮像素子34の撮像結果を表示する。表示部6は、観察用透過光L0による金属層12aの画像を表示する。表示部6に表示した金属層12aにピントが合っているかどうかを確認することで、金属層12aに観察用透過光L0の焦点が合っているかどうかを確認できる。表示部6は、レーザ光Lのビーム形状の画像を表示する。表示部6に表示したビーム形状が最も絞られているかどうかを確認することで、レーザ光Lの集光点の位置を確認できる。表示部6としては特に限定されず、公知の種々の表示装置を用いることができる。
【0048】
次に、レーザ加工装置1によるレーザ加工方法を説明する。ここでは、レーザ加工装置1を用いて対象物10を機能素子層12で剥離させる層間剥離加工の例を説明する。
【0049】
本実施形態のレーザ加工方法は、対象物10に対してレーザ光Lを照射し、機能素子層12の内部に改質領域を仮想面M1に沿って形成する。本実施形態のレーザ加工方法では、まず、生産用の対象物10Bに層間剥離加工を行うのに先立ち、加工前工程として、基準焦点位置及び基準加工位置を取得する基準値取得ステップを実施する。
【0050】
基準値取得ステップでは、
図4に示されるように、基準設定用の対象物10を支持部2に取り付け、基準設定用の対象物10Aを支持部2上にて支持する(ステップS1)。ステップS1では、第1基板11の裏面11bをレーザ光入射面側にした状態で、支持部2上に対象物10Aを載置する。
【0051】
基準焦点位置を取得する(ステップS2)。ステップS2では、レーザ加工ヘッド3により観察用透過光L0を対象物10Aに裏面11b側から照射し、観察用透過光L0の照射に応じて反射した反射光を第1撮像素子34で受光する(
図6(a)参照)。第1撮像素子34で撮像した金属層12aの画像(撮像結果)を表示部6に表示させる。レーザ加工ヘッド3を移動機構4によりZ方向に移動させ、表示部6に表示した金属層12aのピントが合う位置、すなわち、金属層12aに観察用透過光L0の焦点が合うときのレーザ加工ヘッド3のZ座標を、基準焦点位置として取得する。取得した基準焦点位置を記憶部53に記憶する。
【0052】
加工マージン範囲を取得する(ステップS3)。ステップS3では、まず、例えばレーザ光Lの集光点が仮想面M1上に位置するようにレーザ加工ヘッド3を移動機構4によりZ方向に移動させる(
図6(b)参照)。その後、レーザ加工ヘッド3のZ座標を変えてレーザ光Lを対象物10Aに裏面11b側から照射し、これを複数回繰り返す。このときの加工品質とレーザ加工ヘッド3のZ座標とに基づき、加工マージン範囲を取得する。例えば、レーザ加工ヘッド3のZ座標を仮想面M1の位置から徐々に大きく及び小さくして実施したレーザ加工において、加工品質が一定以上となる場合のレーザ加工ヘッド3のZ座標の集合を、加工マージン範囲KMとして取得する(
図7(a)及び
図7(b)参照)。加工品質が一定以上とは、加工品質に影響がない場合と同義である。加工品質は、レーザ加工中又はレーザ加工後に第1撮像素子34で撮像した機能素子層12の画像を表示部6に表示させることで、当該画像から把握できる。
【0053】
加工マージン範囲KMの中央値であるマージンセンターを、基準加工位置として取得し、記憶部53に記憶する(ステップS4)。対象物10Aを支持部2から取り外し、基準値取得ステップが完了する(ステップS5)。
【0054】
ちなみに、ステップS3では、レーザ加工ヘッド3のZ座標とレーザ光Lの集光点との位置関係を予め記憶部53に記憶しておき、この位置関係に基づいてレーザ加工ヘッド3をZ方向に移動させてもよい。レーザ加工ヘッド3のZ座標とレーザ光Lの集光点との位置関係は、例えば次のようにして記憶部53に予め記憶してもよい。すなわち、裏面11bにおけるレーザ光Lのビーム形状の画像を第1撮像素子34で撮像し、表示部6に表示させる。当該ビーム形状が最も小さくなる(ビーム径が最小化する)ようにレーザ加工ヘッド3を移動機構4によりZ方向に移動させる。このときのレーザ加工ヘッド3のZ座標と裏面11bとの位置関係を、レーザ加工ヘッド3のZ座標とレーザ光Lの集光点との位置関係として記憶部53に予め記憶してもよい。
【0055】
続いて、
図5に示される層間剥離加工を行う。層間剥離加工では、生産用の対象物10Bを支持部2に取り付け、対象物10Bを支持部2上にて支持する(ステップS11)。ステップS11では、第1基板11の裏面11bをレーザ光入射面側にした状態で、支持部2上に対象物10Bを載置する。
【0056】
金属層焦点位置を取得する(ステップS12)。ステップS12では、レーザ加工ヘッド3により観察用透過光L0を対象物10Bに裏面11b側から照射し、観察用透過光L0の照射に応じて反射した反射光を第1撮像素子34で受光する(
図8(a)参照)。第1撮像素子34で撮像した金属層12aの画像(撮像結果)を表示部6に表示させる。レーザ加工ヘッド3を移動機構4によりZ方向に移動させ、表示部6に表示した金属層12aのピントが合う位置、すなわち、金属層12aに観察用透過光L0の焦点が合うときのレーザ加工ヘッド3のZ座標を、金属層焦点位置として取得する。取得した金属層焦点位置を記憶部53に記憶する。
【0057】
取得した金属層焦点位置を基準にして、レーザ加工位置を設定する。すなわち、例えば下記(1)式に従い、ステップS12で取得した金属層焦点位置と記憶部に記憶された基準焦点位置との差分を求める(ステップS13)。そして、例えば下記(2)式に従い、差分と基準加工位置とに基づきレーザ加工位置を設定する(ステップS14)。α及びβは、補正が必要な場合の補正係数である。補正が不要な場合には、α=1及びβ=0となる。α及びβは、実験上、経験上及び理論上の少なくとも何れかの観点から公知技術に基づき予め定めることができる。
差分=金属層焦点位置-基準焦点位置 … (1)
レーザ加工位置=基準加工位置+(α×差分+β) … (2)
【0058】
レーザ加工を実施する(ステップS15)。ステップS15では、レーザ加工ヘッド3によりレーザ光Lを対象物10Bに第1基板11の裏面11b側から照射する(
図8(b)参照)。設定したレーザ加工位置にレーザ加工ヘッド3が位置するように、移動機構4によりレーザ加工ヘッド3をZ方向に移動させる。この状態でレーザ加工ヘッド3により対象物10Bに第1基板11の裏面11b側からレーザ光Lを照射し、機能素子層12にレーザ光Lを集光させる。レーザ加工ヘッド3からのレーザ光Lの照射に併せて、支持部2を回転させながらレーザ加工ヘッド3のX方向及び/又はY方向の移動を制御し、レーザ光Lの集光点を仮想面M1に沿って移動させる。これにより、機能素子層12の内部に仮想面M1に沿って改質領域が形成される。ここでは、改質領域は、Z方向から見て機能素子層12の全領域に広がるように形成される。
【0059】
その後、対象物10Bを支持部2から取り外す(ステップS16)。その後、上記ステップS11~S16と同様にして2枚目以降の対象物10Bに層間剥離加工を行う、又は、層間剥離加工を終了する。
【0060】
ところで、一般的なレーザ加工では、例えば
図9(a)に示されるように、対象物10に改質領域を形成する際、第1基板11のレーザ光入射面である裏面11bに照明光L1の焦点が位置するときのレーザ加工ヘッド3(集光部33)のZ座標を基準にして、Z方向にレーザ加工ヘッド3が所定量Hだけ移動させられる。よって、例えば
図9(b)に示されるように、第1基板11の厚さがばらつく(図示では厚くなる)場合、その影響を受けてZ方向におけるレーザ光Lの集光点の位置ひいては改質領域の形成位置がばらつき、加工品質が悪化してしまう可能性がある。
【0061】
この点、本実施形態に係るレーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、第1基板11の裏面11bではなく金属層12aに観察用透過光L0の焦点が合うときの金属層焦点位置を取得し、この金属層焦点位置を基準にしてレーザ加工位置を設定している。よって、第1基板11が厚くなったり薄くなったりしても、その影響を受けずにレーザ加工位置を設定することができる。また、第2基板13が厚くなったり薄くなったりしても、その影響を受けずにレーザ加工位置を設定することができる。第1及び第2基板11,13の厚みを把握する必要がなくなる。すなわち、第1及び第2基板11,13の基板厚さのばらつきの影響を抑えたレーザ加工を行うことが可能となる。
【0062】
本実施形態は、第1撮像素子34を備える。第1撮像素子34は、観察用透過光L0に感度を有し、観察用透過光L0の反射光を受光する。この場合、第1撮像素子34の撮像結果を利用して、金属層12aに観察用透過光L0の焦点が合うようにレーザ加工ヘッド3をZ方向に移動させることが可能となる。
【0063】
本実施形態では、第1撮像素子34は、レーザ光Lに感度を更に有し、レーザ光Lの反射光を更に受光する。この場合、第1撮像素子34の撮像結果を利用して、上述のようにレーザ光Lのビーム形状を把握することができる。
【0064】
本実施形態では、金属層焦点位置及びレーザ加工位置は、Z座標で表される。これにより、金属層焦点位置及びレーザ加工位置を簡便に取り扱うことができる。
【0065】
本実施形態では、基準焦点位置及び基準加工位置を記憶しており、金属層焦点位置と基準焦点位置との差分を求め、当該差分と基準加工位置とに基づきレーザ加工位置を設定する。この場合、レーザ加工位置を簡便に設定することができる。観察用透過光L0及びレーザ光Lの集光に低NAの集光部33を使用することで、第1基板11と非金属層12bとを透過することによる収差影響を少なくして、この設定方法を用いることができる。
【0066】
本実施形態では、金属層焦点位置と基準焦点位置との差分の補正値に応じて基準加工位置を加減した値を、レーザ加工位置に設定する。この場合、レーザ加工位置を簡便に且つ精度よく設定することができる。
【0067】
本実施形態では、基準加工位置は、加工マージン範囲KMの中央値である。この場合、レーザ光Lの集光部として低NAの集光部33を用いることで、低NAでは集光点サイズが大きくなるため、より広い加工マージン範囲KMを得ることができる。
【0068】
本実施形態では、加工位置設定部52で設定したレーザ加工位置に移動機構4によりレーザ加工ヘッド3を位置させ、レーザ加工ヘッド3から対象物10にレーザ光Lを照射させることで、機能素子層12の内部に改質領域を形成させる。これにより、機能素子層12の内部における仮想面M1に沿った改質領域の形成を、具体的に実現することができる。
【0069】
本実施形態では、改質領域は、Z方向から見て機能素子層12の全領域に広がるように形成される。この場合、機能素子層12の一部領域又は全領域に形成された改質領域を利用して、対象物10を層間剥離させることができる。
【0070】
本実施形態のレーザ加工装置1は、レーザ加工ヘッド3を備え、レーザ加工ヘッド3からレーザ光Lと観察用透過光L0とが同軸で出射される。この場合、加工用照射部及び観察用照射部をレーザ加工ヘッド3として一体で構成しつつ、レーザ光Lと観察用透過光L0とを同軸で出射することができる。装置構成を簡易化することが可能となる。
【0071】
本実施形態のレーザ加工方法は、基準焦点位置及び基準加工位置を取得する基準値取得ステップを備える。基準値取得ステップでは、基準設定用の対象物10Aを支持し、観察用透過光L0を対象物10Aに裏面11bから照射し、その反射光を第1撮像素子34で受光し、第1撮像素子34の撮像結果に基づいてレーザ加工ヘッド3をZ方向に移動し、基準焦点位置を取得する。Z方向におけるレーザ加工ヘッド3の位置を変えてレーザ光Lを対象物10Aに裏面11b側から照射し、その加工品質とレーザ加工ヘッド3のZ座標に基づいて基準加工位置を取得する。その後、レーザ加工位置を設定する場合には、金属層焦点位置と基準焦点位置との差分を求め、当該差分と基準加工位置とに基づきレーザ加工位置を設定する。これにより、基準焦点位置及び基準加工位置を利用してレーザ加工位置を簡便に設定することができる。
【0072】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0073】
図10に示されるように、第2実施形態に係るレーザ加工装置101は、レーザ加工ヘッド3が第2撮像素子35を更に有する点で、第1実施形態と異なる。第2撮像素子35は、レーザ光Lに感度を更に有し、レーザ光Lの照射に応じて反射した反射光を更に受光する。本実施形態では、対象物10に照射されて反射されたレーザ光Lの反射光が、集光部33及びダイクロイックミラーH1,H2,H3を介して第2撮像素子35で検出される。例えば第2撮像素子35は、レーザ光Lのビーム形状に係る像を画像として取得する。第2撮像素子35は、撮像結果を制御部5へ出力する。なお、本実施形態の第1撮像素子34は、レーザ光Lに感度を有していなくてもよい。表示部6は、第2撮像素子35の撮像結果を更に表示してもよい。
【0074】
以上、本実施形態に係るレーザ加工装置101及びレーザ加工方法においても、第1及び第2基板11,13の基板厚さのばらつきの影響を抑えたレーザ加工を行うことが可能となる。また、レーザ加工装置101が第2撮像素子35を備えているため、第2撮像素子35の撮像結果を利用して、レーザ光Lのビーム形状等を把握することができる。
【0075】
[第3実施形態]
第3実施形態について説明する。第3実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0076】
図11に示されるように、第3実施形態に係るレーザ加工装置201は、レーザ加工ヘッド3(
図1参照)に代えてレーザ加工ヘッド3A及び観察用ヘッド3Bを備える点で、第1実施形態と異なる。
【0077】
レーザ加工ヘッド3Aは、加工用光源31、集光部33A及び第2撮像素子35を有する。集光部33Aは、レーザ光Lを支持部2によって支持された対象物10に集光する。本実施形態では、加工用光源31から出射されたレーザ光LがダイクロイックミラーH1によって反射され、集光部33Aに入射する。集光部33Aは、そのように入射したレーザ光Lを対象物10に集光する。集光部33Aは、例えば複数の集光用レンズから成るレンズユニットを含んで構成されている。集光部33Aのレンズユニットとしては、低NAのレンズユニットを利用することができる。第2撮像素子35は、レーザ光Lに感度を更に有し、レーザ光Lの照射に応じて反射した反射光を更に受光する。例えば第2撮像素子35は、レーザ光Lのビーム形状に係る像を画像として取得する。第2撮像素子35は、撮像結果を制御部5へ出力する。
【0078】
観察用ヘッド3Bは、観察用光源32、集光部33B及び第1撮像素子34を有する。集光部33Bは、観察用透過光L0を支持部2によって支持された対象物10に集光する。本実施形態では、観察用光源32から出射された観察用透過光L0がダイクロイックミラーH2によって反射され、集光部33Bに入射する。集光部33Bは、そのように入射した観察用透過光L0を対象物10に集光する。集光部33Bは、集光部33Aと同様に、例えば複数の集光用レンズから成るレンズユニットを含んで構成されている。
【0079】
このようにレーザ加工ヘッド3A及び観察用ヘッド3Bは、互いに別体で構成されており、レーザ光Lと観察用透過光L0とをそれぞれ出射する。レーザ加工ヘッド3Aは、レーザ光Lを対象物10に裏面11b側から照射する加工用照射部を構成し、観察用ヘッド3Bは、観察用透過光L0を対象物10に裏面11bから照射する観察用照射部を構成する。レーザ加工ヘッド3Aは、レーザ光Lを変調する空間光変調器を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0080】
本実施形態の移動機構4は、レーザ加工ヘッド3A及び観察用ヘッド3Bを独立してZ方向に移動可能であってもよいし、レーザ加工ヘッド3A及び観察用ヘッド3Bを一体的にZ方向に移動可能であってもよい。
【0081】
以上、本実施形態に係るレーザ加工装置201及びレーザ加工方法においても、第1及び第2基板11,13の基板厚さのばらつきの影響を抑えたレーザ加工を行うことが可能となる。また、加工用照射部及び観察用照射部をそれぞれレーザ加工ヘッド3A及び観察用ヘッド3Bとして別体で構成しつつ、レーザ光L及び観察用透過光L0のそれぞれをレーザ加工ヘッド3A及び観察用ヘッド3Bのそれぞれから別軸で出射することができる。
【0082】
図12は、第3実施形態の変形例に係る観察用ヘッド3Bを示す構成図である。
図12に示されるように、観察用ヘッド3Bは、複数の集光部33B及び複数の第1撮像素子34を有していてもよい。複数の集光部33Bに含まれる各レンズユニットの倍率は、互いに異なっていてもよい。この場合、複数の集光部33Bのうち最も倍率が高いレンズユニットを含む集光部33Bを用いて、対象物10に観察用透過光L0を集光させてもよい。
【0083】
[第4実施形態]
第4実施形態について説明する。第4実施形態の説明では、第1実施形態と異なる点について説明し、重複する説明は省略する。
【0084】
図13に示されるように、第4実施形態に係るレーザ加工装置301は、レーザ加工ヘッド3(
図1参照)に代えてレーザ加工ヘッド303を備える点で、第1実施形態と異なる。
【0085】
レーザ加工ヘッド303は、加工用光源31、集光部333A、第1撮像素子34、観察用光源32、集光部333B及び第2撮像素子35を有する。集光部333Aは、レーザ光Lを支持部2によって支持された対象物10に集光する。本実施形態では、加工用光源31から出射されたレーザ光LがダイクロイックミラーH1によって反射され、集光部333Aに入射する。集光部333Aは、そのように入射したレーザ光Lを対象物10に集光する。集光部333Aは、例えば複数の集光用レンズから成るレンズユニットを含んで構成されている。集光部333Aのレンズユニットとしては、低NAのレンズユニットを利用することができる。
【0086】
集光部333Bは、観察用透過光L0を支持部2によって支持された対象物10に集光する。本実施形態では、観察用光源32から出射された観察用透過光L0がダイクロイックミラーH2によって反射され、集光部333Bに入射する。集光部333Bは、そのように入射した観察用透過光L0を対象物10に集光する。集光部33Bは、集光部333Aと同様に、例えば複数の集光用レンズから成るレンズユニットを含んで構成されている。第2撮像素子35は、レーザ光Lに感度を更に有し、レーザ光Lの照射に応じて反射した反射光を更に受光する。例えば第2撮像素子35は、レーザ光Lのビーム形状に係る像を画像として取得する。第2撮像素子35は、撮像結果を制御部5へ出力する。
【0087】
このようなレーザ加工ヘッド303は、レーザ光Lと観察用透過光L0とを別軸で出射する。レーザ加工ヘッド303は、レーザ光Lを対象物10に裏面11b側から照射する加工用照射部と観察用透過光L0を対象物10に裏面11bから照射する観察用照射部とを構成する。レーザ加工ヘッド303は、レーザ光Lを変調する空間光変調器を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0088】
以上、本実施形態に係るレーザ加工装置301及びレーザ加工方法においても、第1及び第2基板11,13の基板厚さのばらつきの影響を抑えたレーザ加工を行うことが可能となる。また、加工用照射部及び観察用照射部をレーザ加工ヘッド303として一体で構成しつつ、当該レーザ加工ヘッド303からレーザ光Lと観察用透過光L0とを別軸で出射することができる。
【0089】
[変形例]
本発明の一態様は、上述した実施形態に限定されない。
【0090】
上記実施形態では、対象物10が第1基板11及び第2基板13を有するが、これに限定されない。対象物10は、例えば
図14に示されるように、第2基板13を有していなくてもよい。上記実施形態では、補正係数α,βを用いてレーザ加工位置を補正したが、当該補正を行わなくてもよい。上記実施形態では、上記(2)式で例示されるような1次関数を使用してレーザ加工位置を補正したが、n次関数(nは2以上の整数)を使用してレーザ加工位置を補正してもよい。上記実施形態の第1撮像素子34は、レーザ光Lに感度を有していなくてもよい。
【0091】
上記実施形態では、制御部5は、第1撮像素子34の撮像結果に基づいて移動機構4を制御し、金属層12aに観察用透過光L0の焦点が合うようにレーザ加工ヘッド3,3A,303及び観察用ヘッド3BをZ方向に移動させる位置合わせ部を備えていてもよい。この場合、レーザ加工ヘッド3,3A,303及び観察用ヘッド3Bを、金属層12aに観察用透過光L0の焦点が合うように自動的にZ方向に移動させることができる。
【0092】
上記実施形態では、移動機構4によりレーザ加工ヘッド3,3A,303及び観察用ヘッド3BをZ方向に移動させたが、これに代えてもしくは加えて、移動機構4により支持部2をZ方向に移動させてもよい。上記実施形態では、集光部33,33A,33B,333A,333Bは、レンズユニットに代えて例えば単レンズを含んで構成されていてもよい。
【0093】
上記実施形態では、Z方向から見て、機能素子層12の全領域に広がる仮想面M1を設定し、改質領域を機能素子層12の全領域に広がるように形成(全面層間剥離加工)したが、これに限定されない。Z方向から見て、機能素子層12の一部領域に広がる仮想面を設定し、改質領域を機能素子層12の一部領域に広がるように形成してもよい。この場合、機能素子層12の一部領域に形成された改質領域を利用して、対象物10を層間剥離することができる。
【0094】
例えば
図15(a)に示されるように、Z方向から見て、機能素子層12の外周部分に広がる仮想面M2を設定し、改質領域を機能素子層12の外周部分に広がるように形成してもよい(外周部層間剥離加工)。また例えば
図15(b)に示されるように、Z方向から見て、機能素子層12の内周部分に広がる仮想面M3を設定し、改質領域を機能素子層12の内周部分に広がるように形成してもよい(内周部層間剥離加工)。
【0095】
また例えば
図16(a)に示されるように、Z方向から見て、弓形の仮想面M4を設定し、改質領域を機能素子層12における弓形の一部分に広がるように形成してもよい(部分層間剥離加工)。また例えば
図16(b)に示されるように、Z方向から見て、円形のうち一対の弓形に挟まれた一部分に広がる仮想面M5を設定し、改質領域を機能素子層12における当該一部分に広がるように形成してもよい(部分層間剥離加工)。
【0096】
上記実施形態では、対象物10の種類、対象物10の形状、対象物10のサイズ、対象物10が有する結晶方位の数及び方向、並びに、対象物10の主面の面方位は特に限定されない。上記実施形態では、対象物10は、結晶構造を有する結晶材料を含んで形成されていてもよいし、これに代えてもしくは加えて、非結晶構造(非晶質構造)を有する非結晶材料を含んで形成されていてもよい。結晶材料は、異方性結晶及び等方性結晶の何れであってもよい。例えば対象物10は、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、LiTaO3、ダイアモンド、GaOx、サファイア(Al2O3)、ガリウム砒素、リン化インジウム、ガラス、及び無アルカリガラスの少なくとも何れかで形成された基板を含んでいてもよい。
【0097】
上記実施形態では、改質領域は、例えば対象物10の内部に形成された結晶領域、再結晶領域、又は、ゲッタリング領域であってもよい。結晶領域は、対象物10の加工前の構造を維持している領域である。再結晶領域は、一旦は蒸発、プラズマ化あるいは溶融した後、再凝固する際に単結晶あるいは多結晶として凝固した領域である。ゲッタリング領域は、重金属等の不純物を集めて捕獲するゲッタリング効果を発揮する領域であり、連続的に形成されていてもよいし、断続的に形成されていてもよい。上記実施形態は、アブレーション等の加工へ適用されてもよい。
【0098】
上述した実施形態及び変形例における各構成には、上述した材料及び形状に限定されず、様々な材料及び形状を適用することができる。また、上述した実施形態又は変形例における各構成は、他の実施形態又は変形例における各構成に任意に適用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1,101,201,301…レーザ加工装置、2…支持部、3,303…レーザ加工ヘッド(加工用照射部,観察用照射部)、3A…レーザ加工ヘッド(加工用照射部)、3B…観察用ヘッド(観察用照射部)、4…移動機構、10…対象物、11…第1基板(基板)、11a…表面(第1主面)、11b…裏面(第2主面)、12…機能素子層、12a…金属層、34…第1撮像素子、35…第2撮像素子、51…焦点位置取得部、52…加工位置設定部、53…記憶部、54…レーザ加工実行部、KM…加工マージン範囲、L…レーザ光(加工用レーザ光)、L0…観察用透過光、M1,M2,M3,M4,M5…仮想面。