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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20240705BHJP
   A01F 12/46 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
A01B69/00 303D
A01B69/00 303E
A01B69/00 303M
A01B69/00 301
A01F12/46
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020167990
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022060022
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中林 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】堀内 真幸
(72)【発明者】
【氏名】山岡 京介
(72)【発明者】
【氏名】奥平 淳人
(72)【発明者】
【氏名】寺西 陽之
(72)【発明者】
【氏名】松永 俊
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-101943(JP,A)
【文献】特開2020-018219(JP,A)
【文献】特許第6757633(JP,B2)
【文献】特開2017-038543(JP,A)
【文献】特許第6008728(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0313080(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 41/00 - 41/16
A01F 12/46
G05D 1/40 - 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動走行を行う手動走行モードと自動走行を行う自動走行モードとに走行モードを切り替え可能なコンバインであって、
機体の後方の情景を撮像する第1カメラと、
前記第1カメラで撮像された第1撮像画像を表示可能な表示装置と、
前記表示装置に対する前記第1撮像画像の表示指示を示す第1表示指示情報を取得する表示指示情報取得部と、
前記表示指示情報取得部が前記第1表示指示情報を取得した場合に前記表示装置に前記第1撮像画像を表示させる表示制御部と、
前記走行モードが前記自動走行モードであるか否かを判定する走行モード判定部と、を備え、
前記表示制御部は、前記第1表示指示情報が取得されていない場合であっても、前記走行モードが前記自動走行モードであると判定されているときは、前記表示装置に前記第1撮像画像を表示させるコンバイン。
【請求項2】
前記第1カメラの撮像範囲とは異なる撮像範囲の情景を撮像する第2カメラを更に備え、
前記表示指示情報取得部は、前記表示装置に対する前記第2カメラで撮像された第2撮像画像の表示指示を示す第2表示指示情報を取得し、
前記表示制御部は、前記第2表示指示情報が取得されている場合であっても、前記走行モードが前記自動走行モードであると判定されているときは、前記表示装置に前記第1撮像画像のみを表示する請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第2カメラは、穀粒タンク内の穀粒を外部に排出する穀粒排出装置に設けられ、前記穀粒排出装置における排出口の下方の情景を撮像する請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記表示制御部は、手動操作による前記穀粒排出装置からの前記穀粒の排出指示があったときは、前記表示装置に前記第1撮像画像を表示している場合であっても、前記第1撮像画像に代えて前記第2撮像画像を前記表示装置に表示する請求項3に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記自動走行モードにおいて、前記穀粒排出装置から自動的に前記穀粒の排出作業を行うように構成され、
前記表示制御部は、前記排出作業の排出指示に基づいて前記穀粒排出装置から前記穀粒が排出されるときは、前記第1撮像画像に代えて前記第2撮像画像を前記表示装置に表示する請求項3に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動走行を行う手動走行モードと自動走行を行う自動走行モードとに走行モードを切り替え可能なコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
圃場において作業車を用いて作業を行う場合、圃場の状態や圃場の作業者等の存在に注意を払う必要がある。そこで、機体の周囲の状況に注意を払うことが可能な作業車が利用されてきた(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、汎用コンバインが開示されている。この汎用コンバインは、刈取部の前方を撮像可能なテレビカメラと、当該テレビカメラから入力される画像に基づいて、障害対象を識別する画像処理装置とが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-155340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、テレビカメラで刈取部の前方の情景を撮像する。このため、障害対象の検出範囲は、機体前方に限られる。コンバインにあっては、運転席の後方に穀粒タンクや脱穀装置が備えられている。また、コンバインにあっては自動走行を行うものもあり、自動走行を行う場合において運転席の後方を確認したいときに、運転席の後方が死角となることがある。このため、特許文献1に記載の技術は改良の余地がある。
【0006】
そこで、自動走行時に機体の後方を確認することが可能なコンバインが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、手動走行を行う手動走行モードと自動走行を行う自動走行モードとに走行モードを切り替え可能なコンバインであって、機体の後方の情景を撮像する第1カメラと、前記第1カメラで撮像された第1撮像画像を表示可能な表示装置と、前記表示装置に対する前記第1撮像画像の表示指示を示す第1表示指示情報を取得する表示指示情報取得部と、前記表示指示情報取得部が前記第1表示指示情報を取得した場合に前記表示装置に前記第1撮像画像を表示させる表示制御部と、前記走行モードが前記自動走行モードであるか否かを判定する走行モード判定部と、を備え、前記表示制御部は、前記第1表示指示情報が取得されていない場合であっても、前記走行モードが前記自動走行モードであると判定されているときは、前記表示装置に前記第1撮像画像を表示させる点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、第1表示指示情報が取得されていない場合であって、走行モードが自動走行モードである場合には自動的に機体の後方の情景を撮像した第1撮像画像を表示装置に表示することができるので、作業者に機体の後方を確認させることができる。
【0009】
また、前記コンバインは、前記第1カメラの撮像範囲とは異なる撮像範囲の情景を撮像する第2カメラを更に備え、前記表示指示情報取得部は、前記表示装置に対する前記第2カメラで撮像された第2撮像画像の表示指示を示す第2表示指示情報を取得し、前記表示制御部は、前記第2表示指示情報が取得されている場合であっても、前記走行モードが前記自動走行モードであると判定されているときは、前記表示装置に前記第1撮像画像のみを表示すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、例えば、表示装置に第2撮像画像のみが表示されている場合や、表示装置に第1撮像画像及び第2撮像画像の双方が表示されている場合であっても、走行モードが自動走行モードに切り替えられた場合には、第1撮像画像のみを表示装置に表示することができるので、作業者に機体の後方を確認させ易くできる。
【0011】
また、前記第2カメラは、穀粒タンク内の穀粒を外部に排出する穀粒排出装置に設けられ、前記穀粒排出装置における排出口の下方の情景を撮像すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、穀粒タンクに貯留された穀粒を排出する際に、排出口の下方の情景を表示装置に映すことができる。したがって、排出先の状況に応じて、例えば穀粒の排出を停止したり、排出口の位置を変更したりすることが可能となる。
【0013】
また、前記表示制御部は、手動操作による前記穀粒排出装置からの前記穀粒の排出指示があったときは、前記表示装置に前記第1撮像画像を表示している場合であっても、前記第1撮像画像に代えて前記第2撮像画像を前記表示装置に表示すると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、穀粒タンク内の穀粒を外部に排出する排出指示があった場合には、排出口の下方の情景を優先して表示装置に映すことが可能となる。したがって、作業者に対して穀粒の排出先の状況を注視させ易くできる。
【0015】
あるいは、前記自動走行モードにおいて、前記穀粒排出装置から自動的に前記穀粒の排出作業を行うように構成され、前記表示制御部は、前記排出作業の排出指示に基づいて前記穀粒排出装置から前記穀粒が排出されるときは、前記第1撮像画像に代えて前記第2撮像画像を前記表示装置に表示するように構成しても良い。
【0016】
このような構成とすれば、走行モードが自動走行モードである場合において、例えば自動的に穀粒タンク内の穀粒を外部に排出する排出指示があった場合でも、排出口の下方の情景を優先して表示装置に映すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】コンバインの全体左側面図である。
図2】コンバインの全体平面図である。
図3】表示装置への表示を制御する制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】自動走行中の表示装置の表示を示す図である。
図5】排出作業中の表示装置の表示を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るコンバインは、手動走行を行う手動走行モードと自動走行を行う自動走行モードとに走行モードを切り替え可能であって、自動走行時に機体の後方を確認(注視)できるように構成される。以下、本実施形態のコンバイン1について説明する。
【0019】
図1は本実施形態に係るコンバイン1の全体左側面図である。図2は本実施形態に係るコンバイン1の全体平面図である。図3はコンバイン1に設けられ、表示装置71への表示を制御する制御装置100の構成を示すブロック図である。なお、以下では、本実施形態のコンバイン1について所謂普通型コンバインを例に挙げて説明する。もちろん、コンバイン1は自脱型コンバインであっても良い。また、本実施形態では、クローラ式のコンバインを例に挙げて説明するが、ホイール式のコンバインであっても良い。
【0020】
ここで、理解を容易にするために、本実施形態では、特に断りがない限り、「前」(図1図2に示す矢印Fの方向)は機体前後方向(走行方向)における前方を意味し、「後」(図1図2に示す矢印Bの方向)は機体前後方向(走行方向)における後方を意味するものとする。また、左右方向または横方向は、機体前後方向に直交する機体横断方向(機体幅方向)を意味するものとする。更に、「上」(図1に示す矢印Uの方向)及び「下」(図1に示す矢印Dの方向)は、機体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示すものとする。また、「左」(図2における矢印Lの方向)は機体左側、「右」(図2における矢印Rの方向)は機体右側である。
【0021】
図1及び図2に示すように、コンバイン1は、走行車体(「機体」の一例)11、クローラ式の走行装置12、運転部13、脱穀装置14、穀粒タンク15、収穫部H、搬送装置16、穀粒排出装置17、自車位置検出モジュール18、バックカメラ(「第1カメラ」の一例)21、アンローダカメラ(「第2カメラ」の一例)22、表示装置71、制御装置100を備えている。
【0022】
走行車体11(以下単に車体11と称する)の下部には走行装置12が備えられる。コンバイン1は、走行装置12によって自走可能に構成されている。運転部13、脱穀装置14、及び穀粒タンク15は、走行装置12の上側に備えられ、車体11の上部を構成する。運転部13は、コンバイン1を運転する運転者やコンバイン1の作業を監視する監視者が搭乗可能である。通常、運転者と監視者とは兼務される。なお、運転者と監視者が別人の場合、監視者は、コンバイン1の機外からコンバイン1の作業を監視していても良い。
【0023】
自車位置検出モジュール18は、運転部13の前上部に取り付けられ、自車位置を検出する。自車位置検出モジュール18は、GNSSモジュールとして構成されている衛星測位モジュールを用いることが可能である。この自車位置検出モジュール18は、人工衛星からのGPS信号やGNSS信号(以下単に「GPS信号」とする)を受信するための衛星用アンテナを有している。なお、自車位置検出モジュール18には、衛星航法を補完するために、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだ慣性航法モジュールを含めることができる。もちろん、慣性航法モジュールは、自車位置検出モジュール18とは別の場所に設けてもよい。自車位置検出モジュール18は、上述したGPS信号、慣性航法モジュールの検出結果に基づいて、コンバイン1の位置である自車位置を検出する。自車位置検出モジュール18により検出された自車位置は、コンバイン1の自動走行(自律走行)に利用される。
【0024】
収穫部Hは、コンバイン1における前部に備えられる。搬送装置16は、収穫部Hの後側に設けられる。収穫部Hは、切断機構19及びリール20を有している。切断機構19は、圃場の植立穀稈を刈り取る。リール20は、回転駆動しながら収穫対象の植立穀稈を掻き込む。このような構成により、収穫部Hは、圃場の穀物(農作物の一種)を収穫可能となる。コンバイン1は、収穫部Hによって圃場の穀物を収穫しながら走行装置12によって走行する作業走行が可能である。
【0025】
切断機構19により刈り取られた刈取穀稈は、搬送装置16によって脱穀装置14へ搬送される。脱穀装置14において、刈取穀稈は脱穀処理される。脱穀処理により得られた穀粒、すなわち収穫した穀粒は穀粒タンク15に貯留される。穀粒タンク15に貯留された穀粒は、必要に応じて、後述する穀粒排出装置17により機外に排出される。
【0026】
運転部13には、通信端末2が配置されている。本実施形態において、通信端末2は、運転部13に固定されている。もちろん、通信端末2は、運転部13に対して着脱可能に構成されていても良いし、コンバイン1の機外に配置されていても良い。コンバイン1は、この通信端末2を介して機外に設けられたシステム(例えば、農業支援システム等)と各種情報の送受信が可能である。
【0027】
穀粒タンク15の後部から上部に亘って、当該穀粒タンク15の内部に貯留されている穀粒を外部に排出する穀粒排出装置17が備えられている。穀粒排出装置17は、穀粒を上方に搬送する縦搬送部17Aと、当該縦搬送部17Aの上端部から穀粒を横方向に搬送して先端の排出口25から排出する横搬送部17Bとを備えている。
【0028】
ここで、穀粒タンク15内の下部には、貯留している穀粒を、縦搬送部17Aの搬送始端部まで前後方向に沿って搬送する底スクリュー(図示せず)が備えられている。底スクリューと縦搬送部17Aとはベルト伝動機構(図示せず)を介して連動連結され、穀粒は角部ケース27(図2参照)内の穀粒通路を通って穀粒タンク15から縦搬送部17Aに搬送される。
【0029】
縦搬送部17Aは、横搬送部17Bと共に、縦軸心Y(縦搬送部17Aの回転軸心)周りで回動自在に車体11の機体フレーム3に支持されている。縦搬送部17Aの左横側には縦フレーム(図示せず)が設けられ、当該縦フレームは下端が機体フレーム3に固定されている。縦搬送部17Aは、下端部が角部ケース27に縦軸心Y周りで回動自在に支持され、上下中間部が縦フレームの上部に支持ブラケット6を介して回動自在に支持されている。縦搬送部17Aの下端部は、角部ケース27及び回動ボス部(図示せず)を介して機体フレーム3に支持されている。一方、横搬送部17Bは受部35により支持されている。本実施形態のコンバイン1が備える穀粒排出装置17の縦搬送部17A及び横搬送部17Bは、穀粒の収穫中においては、図2に示されるように、平面視でコンバイン1の横幅内に収まるように、すなわち左端及び右端の夫々から外側に突出しない状態で支持される。本実施形態では、このような穀粒排出装置17の姿勢は「ホーム姿勢」と称される。ここで、受部35に横搬送部17Bを支持しているか否かを検出可能なセンサを設け、このセンサの検出結果に応じて穀粒排出装置17の姿勢がホーム姿勢であるか否かを特定するように構成すると好適である。なお、上述した縦搬送部17A及び横搬送部17Bを支持する構造は一例であり、他の構造とすることも可能である。
【0030】
本実施形態のコンバイン1は、上述したように手動走行を行う手動走行モードと自動走行を行う自動走行モードとに走行モードを切り替え可能である。走行モードが手動走行モードである場合、運転者兼監視者(以下「運転者」とする)が手動で操作することで、コンバイン1の操行操舵が行われる。一方、走行モードが自動走行モードである場合、圃場において走行経路が設定され、設定された走行経路に沿って自動で走行するように、コンバイン1が自動走行制御される。この自動走行では、上述した自車位置検出モジュール18により取得された自車位置情報が利用される。
【0031】
具体的には、圃場において運転者は、コンバイン1を手動で操作し、圃場内の外周部分において、圃場の境界線に沿って周回するように収穫走行を行う。これにより既刈地(既作業地)となった領域は、外周領域として設定される。外周領域の内側に未刈地(未作業地)のまま残された領域は、作業対象領域として設定される。なお、圃場内の外周部分の走行は手動操作による走行でなく、自動走行であっても良い。
【0032】
このとき、外周領域の幅をある程度広く確保するために、運転者は、コンバイン1を2~3周走行させる。この走行においては、コンバイン1が1周する毎に、コンバイン1の作業幅分だけ外周領域の幅が拡大する。例えば、最初の2~3周の走行が終わると、外周領域の幅はコンバイン1の作業幅の2~3倍程度の幅となる。なお、運転者による最初の周回走行は2~3周でなく、1周であっても良いし、それ以上(4周以上)であっても良い。
【0033】
外周領域は、作業対象領域において収穫走行を行うときに、コンバイン1が方向転換するためのスペースとして利用される。また、外周領域は、収穫走行を一旦終えて、穀粒の排出場所へ移動する際や、燃料の補給場所へ移動する際等の移動用のスペースとしても利用される。
【0034】
上述した手動操作の走行により、外周領域及び作業対象領域が設定されると、作業対象領域における走行経路が算定される。算定された走行経路は、作業走行のパターンに基づいて順次設定され、設定された走行経路に沿って走行するように、コンバイン1が自動走行制御される。
【0035】
コンバイン1の穀粒タンク15には、収穫作業により収穫された穀粒が貯留される。穀粒タンク15内の穀粒は、圃場の周囲に停車する搬送車CV(図5参照)に排出され、搬送車CVにより所定の場所に運搬される。コンバイン1が穀粒を排出する際、コンバイン1は搬送車CVの近傍へ移動し、穀粒排出装置17により穀粒を搬送車CVへ排出する。この搬送車CVの駐車位置が予め決められている場合には、搬送車CVへ接近する際の接近走行、すなわち作業対象領域における作業走行からの一時的な離脱、及び作業走行への復帰も自動走行で行うことが可能である。この作業対象領域からの離脱及び作業対象領域への復帰のための走行経路は、外周領域が設定された時点で生成される。なお、搬送車CVの代わりに燃料補給車やその他の作業支援車も圃場の周囲に駐車可能である。コンバイン1が収穫した穀粒を搬送車CVに排出するために駐車する位置は穀粒排出用駐車位置であり、燃料補給車から燃料を補給されるためにコンバイン1が駐車する位置は燃料補給用駐車位置にあたる。穀粒排出用駐車位置と燃料補給用駐車位置とは、互いに同じ位置に設定しておくと好適であり、これらの位置についてもコンバイン1が自動走行で達するように構成することが可能である。
【0036】
穀粒タンク15には穀粒の貯留量を検出するセンサ(図示せず)が設けられ、穀粒タンク15の貯留量が満杯または満杯近くとなったことがセンサにより検出されると、穀粒排出用駐車位置と自車位置とに基づいて、作業対象領域での作業走行から離脱し、外周領域を走行して穀粒排出用駐車位置に自動走行で向かうように構成することが可能である。もちろん、手動走行により穀粒排出用駐車位置に向かうように構成しても良い。
【0037】
穀粒の排出や燃料補給のため、作業対象領域での作業走行から離脱するタイミングは、それぞれの余裕度と駐車位置までの走行時間または走行距離とから決定される。本実施形態では、穀粒の排出に係る余裕度は穀粒タンク15の現在の貯留量から満杯になるまでに予測される走行時間または走行距離とすると好適である。一方、燃料補給であれば、燃料タンクの現在の燃料の残量から完全に燃料切れになるまでに予測される走行時間または走行距離とすると好適である。例えば、自動走行中に穀粒排出用駐車位置の近くを通過する際に、余裕度や排出作業に要する時間等に基づいて、穀粒排出用駐車位置を通り過ぎて、満杯になってから離脱して穀粒排出用駐車位置に戻ってくる場合と、穀粒排出用駐車位置の近くを通るついでに排出も行う場合とで、いずれが、最終的に効率的な走行であるか(総作業時間が短いとか総走行距離が短いとか)を判定する。穀粒タンク15の貯留量が極めて少ないときに排出作業を行うと、全体として排出回数が増えてしまい、効率的ではなく、ほぼ満杯であれば、ついでに排出する方が効率的である。そこで、コンバイン1は、余裕度や排出作業に要する時間等に基づいて、穀粒排出用駐車位置まで自動走行を行うか否かが判断される。
【0038】
コンバイン1は、穀粒タンク15から穀粒の排出を終えると、作業対象領域における穀粒排出用駐車位置への自動走行を開始するまでに収穫作業を行っていた地点に自動走行で復帰する。作業対象領域から離脱する際の作業対象領域における走行には後進を用いることも可能である。
【0039】
上述したように穀粒の排出中は、穀粒排出装置17はホーム姿勢にあったが、穀粒の排出時にはホーム姿勢から移動し、穀粒タンク15に貯留された穀粒を機外に排出する排出姿勢となる。排出姿勢は、縦軸心Y周りで縦搬送部17Aが回動することで実現される。この時の回動量は、穀粒排出用停車位置と搬送車CVとの位置関係に応じて設定される。図5には、搬送車CVの側方に穀粒排出用停車位置が設定された場合における穀粒排出装置17の排出姿勢が示される。排出姿勢では、排出口25が搬送車CVの貯留部CVA(搬送車CVのコンテナ)上に位置するように、縦搬送部17Aが縦軸心Y周りで回動する。これにより、排出姿勢では排出口25から搬送車CVに貯留部CVAに穀粒を排出することが可能となる。このように穀粒排出装置17は、ホーム姿勢と排出姿勢とで姿勢の変更が可能なように構成される。
【0040】
図1図3に戻り、バックカメラ21(「第1カメラ」の一例)が車体11の後端部に設けられている。バックカメラ21は、車体11の後方の情景を撮像する。車体11の後方の情景とは、車体11の真後ろにおける下方の情景であって、バックカメラ21は撮像した画像(後述する「第1撮像画像」)にこのような情景が含まれるように配置すると良い。好ましくは、車体11の後方であって、運転部13から脱穀装置14や穀粒タンク15により死角となる領域が含まれると好適である。
【0041】
本実施形態では、コンバイン1に、バックカメラ21の撮像範囲とは異なる撮像範囲の情景を撮像するアンローダカメラ22が更に備えられている。バックカメラ21の撮像範囲とは、車体11の後方である。アンローダカメラ22は、穀粒タンク15内の穀粒を外部に排出する穀粒排出装置17に設けられ、穀粒排出装置17における排出口25の下方の情景を撮像する。特に、本実施形態ではアンローダカメラ22は、横搬送部17Bの先端部において排出口25が下方に突出するように設けられ、この突出する部分における運転部13側の側面に、下向きに設けられる。
【0042】
本実施形態では、表示装置71が運転部13に設けられる。表示装置71にはバックカメラ21で撮像された第1撮像画像が表示可能である。バックカメラ21で撮像された第1撮像画像とは、車体11の後方の情景を撮像した画像である。このような第1撮像画像を表示装置71に表示した場合には、運転者が当該第1撮像画像を確認することでコンバイン1の後方の様子を把握することが可能となる。
【0043】
ここで、本実施形態ではバックカメラ21で撮像された第1撮像画像は、表示装置71に常に表示されるわけではなく、表示指示情報取得部72が表示装置71に対する第1撮像画像の表示指示を示す第1表示指示情報を取得した場合で、且つ、所定の条件(後述する)を具備した場合に表示される。そこで、表示指示情報取得部72は表示装置71に対する第1撮像画像の表示指示を示す第1表示指示情報を取得する。第1表示指示情報は、例えば運転者が表示装置71に第1撮像画像を表示したい場合に、第1操作スイッチ91を押下したことを検知し、当該検知により第1表示指示情報を出力するように構成することが可能である。表示指示情報取得部72は、このような第1表示指示情報を取得する。なお、第1表示指示情報は第1操作スイッチ91による操作とは異なる形態で取得するように構成しても良い。
【0044】
また、本実施形態では、表示指示情報取得部72は、表示装置71にアンローダカメラ22で撮像された第2撮像画像の表示指示を示す第2表示指示情報を取得する。第2表示指示情報は、例えば運転者が表示装置71に第2撮像画像を表示したい場合に、第2操作スイッチ92を押下したことを検知し、当該検知により第2表示指示情報を出力するように構成することが可能である。表示指示情報取得部72は、このような第2表示指示情報を取得する。なお、第2表示指示情報は第2操作スイッチ92による操作とは異なる形態で取得するように構成しても良い。
【0045】
表示制御部74は、表示指示情報取得部72が第1表示指示情報を取得した場合に表示装置71に第1撮像画像を表示させる。第1表示指示情報は表示指示情報取得部72が取得した場合に、表示制御部74に伝達される。この時、表示指示情報取得部72は取得した第1表示指示情報を表示制御部74に伝達しても良いし、第1表示指示情報を取得したことを示す情報を表示制御部74に伝達しても良い。また、表示制御部74にはバックカメラ21から第1撮像画像が伝達される。これにより、表示制御部74は、表示指示情報取得部72が第1表示指示情報を取得した場合に、図4に示されるように第1撮像画像、すなわち車体11の後方の情景を撮像した撮像画像を表示装置71に表示することが可能となる。
【0046】
走行モード判定部73は、走行モードが自動走行モードであるか否かを判定する。コンバイン1にあっては、上述したように走行モードとして、手動走行を行う手動走行モードと自動走行を行う自動走行モードとがある。これらは例えば操作具93により設定するように構成することが可能である。走行モード判定部73は、このような走行モードを設定する媒体(例えば操作具93)から現在の走行モードを示す情報を取得し、走行モードが自動走行モードであるか否かを判定する。
【0047】
上述したように、表示制御部74は、表示指示情報取得部72が第1表示指示情報を取得した場合に、第1撮像画像を表示装置71に表示するが、第1表示指示情報が取得されていない場合であっても、走行モードが自動走行モードであると判定されているときは、表示装置71に第1撮像画像を表示する。第1表示指示情報が取得されていない場合とは、運転者により表示装置71に第1撮像画像を表示させるための第1操作スイッチ91が押下されていない場合をいう。このような場合には、本来、第1撮像画像は表示装置71に表示されないが、表示制御部74は、走行モード判定部73により走行モードが自動走行モードであると判定されているときは、元々、表示装置71に第1撮像画像が表示されているときはもちろん、表示装置71に何ら画像が表示されていない時や第1撮像画像とは異なる画像が表示されている時であっても、表示装置71に第1撮像画像を表示する。
【0048】
ここで、表示装置71には、表示指示情報取得部72により第2表示指示情報が取得されているときには第2撮像画像が表示される。また、表示指示情報取得部72により第1表示指示情報及び第2表示指示情報の双方が取得されているときには第1撮像画像及び第2撮像画像の双方を表示するように構成することも可能である。このように第2表示指示情報が取得されている場合において、表示装置71に、少なくとも第2表示指示情報が表示されている時であっても、表示制御部74は走行モードが自動走行モードであると判定されているときは、表示装置71に第1撮像画像のみを表示する。すなわち、表示装置71に、少なくとも第2表示指示情報が表示されている時であっても、走行モードが自動走行モードであると判定されているときは、表示装置71への第2撮像画像の表示が停止され、第1撮像画像のみが表示される。
【0049】
以上のように、本コンバイン1にあっては、走行モードが自動走行モードである場合に、表示装置71に車体11の後方の情景を撮像した第1撮像画像が表示される。これにより、運転者は運転部13から死角となる車体11の後方の状況を確認することが可能となる。一方、コンバイン1にあっては、上述したように穀粒タンク15に貯留された穀粒を排出することがある。係る場合、搬送車CVへの穀粒の排出状況を確認することを目的として、図5に示されるように、表示装置71に第2撮像画像を表示すると好適である。すなわち、表示制御部74は、手動操作による穀粒排出装置17からの穀粒の排出指示があったときは、表示装置71に第1撮像画像を表示している場合であっても、第1撮像画像に代えて第2撮像画像を表示装置71に表示する。この第2撮像画像の表示装置71への表示は、走行モードが自動走行モードである場合や、第1表示指示情報が取得されている場合であっても行うと良い。
【0050】
排出指示は、スイッチ操作により検出しても良いし、穀粒排出装置17がホーム姿勢から排出姿勢への姿勢変更時に、受部35に設けたセンサで検出しても良い。これにより、穀粒排出装置17の排出口25が搬送車CVの貯留部CVA上に位置した場合に、アンローダカメラ22で貯留部CVAを撮像することが可能となる。したがって、運転者が表示装置71に表示される第2撮像画像を確認することで、穀粒排出装置17の排出口25が搬送車CVの貯留部CVA上に適切に位置しているか否かを把握することが可能となる。また、排出口25から排出された穀粒は貯留部CVAにおいて山状になるが、表示装置71に穀粒が排出されている状況を表示することにより、運転者が貯留部CVAにおける穀粒の貯留状態を把握することができ、穀粒の高さが高くなった場合には必要に応じて穀粒排出装置17を縦軸心Yで回動することで排出口25の位置を変更することが可能となる。これにより、貯留部CVAにおける穀粒の高さをなだらかにすることが可能となる。
【0051】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、第2カメラ22がアンローダカメラであるとして説明したが、第2カメラ22はアンローダカメラとは異なる他のカメラ、例えば車体11の側方の情景を撮像する側方カメラであっても良いし、第2カメラ22はアンローダカメラ及び側方カメラの双方であっても良い。また、第2カメラ22は備えていなくても良い。
【0052】
上記実施形態では、表示装置71が運転部13に設けられるとして説明したが、表示装置71は通信端末2の表示装置と併用することも可能であるし、運転部13から持ち出し可能な端末の表示画面であっても良い。また、コンバイン1から離間した位置に設けられる端末(例えば管理端末)の表示画面であっても良い。
【0053】
上記実施形態では、表示制御部74は、手動操作による穀粒排出装置17からの穀粒の排出指示があったときは、表示装置71に第1撮像画像を表示している場合であっても、第1撮像画像に代えて第2撮像画像を表示装置71に表示するとして説明した。コンバイン1は、自動走行モードにおいて、穀粒排出装置17から自動的に穀粒の排出作業を行うように構成することも可能である。この場合、表示制御部74は、穀粒の排出作業の排出指示に基づいて穀粒排出装置17から穀粒が排出されるときは、第1撮像画像に代えて第2撮像画像を表示装置71に表示するように構成すると良い。すなわち、コンバイン1が自動走行モードにおいて、例えば穀粒タンク15に貯留された穀粒の量に応じて自動で穀粒タンク15から穀粒を排出するように構成されている場合に、自動走行モード中であっても表示装置71に第2撮像画像を表示すると良い。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、手動走行を行う手動走行モードと自動走行を行う自動走行モードとに走行モードを切り替え可能なコンバインに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1:コンバイン
11:車体(機体)
15:穀粒タンク
17:穀粒排出装置
21:バックカメラ(第1カメラ)
22:アンローダカメラ(第2カメラ)
25:排出口
71:表示装置
72:表示指示情報取得部
73:走行モード判定部
74:表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5