(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】樹脂パイプ
(51)【国際特許分類】
F16L 9/128 20060101AFI20240705BHJP
F16L 9/133 20060101ALI20240705BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20240705BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240705BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240705BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20240705BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F16L9/128
F16L9/133
C08K7/06
C08L23/26
C08K5/098
C08K5/20
C08L23/06
(21)【出願番号】P 2020182289
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】落合 義人
(72)【発明者】
【氏名】沈 遒
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-304463(JP,A)
【文献】特開平06-190979(JP,A)
【文献】特開2005-306950(JP,A)
【文献】特開2015-038181(JP,A)
【文献】特開2018-104658(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212016(WO,A1)
【文献】特開2012-106494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/128
F16L 9/133
C08K 7/06
C08L 23/26
C08K 5/098
C08K 5/20
C08L 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維と、ポリエチレン樹脂と、イミン変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂パイプ。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、結晶核剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂パイプ。
【請求項3】
前記結晶核剤は、脂肪酸アミドまたは脂肪酸金属塩の一方または両方であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂パイプ。
【請求項4】
最内層にポリエチレン樹脂層を有することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の樹脂パイプ。
【請求項5】
前記炭素繊維の量は、前記ポリエチレン樹脂の配合重量部の1/50~1/5であることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の樹脂パイプ。
【請求項6】
前記イミン変性ポリオレフィン樹脂の量は、前
記炭素繊維の配合重量部の1/10~2/3であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の樹脂パイプ。
【請求項7】
前記炭素繊維は、再生炭素繊維であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の樹脂パイプ。
【請求項8】
前
記炭素繊維は、炭素繊維強化樹脂の熱分解物であることを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の樹脂パイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水、工場用用水、温調用システムなどの配管に使用される樹脂パイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂パイプとして、ポリオレフィン系樹脂から形成された単層あるいは複層の樹脂パイプがある。
また、ポリオレフィン系樹脂にガラス繊維を配合した樹脂から形成された複層の樹脂パイプがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の樹脂パイプは、線膨張係数が大きいため、外気温やパイプ内を通る液体の影響等でパイプの伸縮量が大きい。それまでの鋼管から樹脂パイプに置き換えた場合、例えば吊り配管などは、樹脂パイプの大きな線膨張により撓みが大きくなる影響を抑えるため、短い樹脂パイプを支持金具(接続金具)で接続する必要がある。そのため、パイプ接続のための支持金具の固定ピッチ(間隔)が短くなって、作業に手間が掛かる問題がある。また、樹脂パイプの伸縮を吸収するための伸縮管継ぎ手が必要になり、コストがアップする問題もある。
【0005】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、線膨張係数の小さい樹脂パイプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、炭素繊維と、ポリエチレン樹脂と、イミン変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物からなる樹脂パイプである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、線膨張係数の小さい樹脂パイプが得られる。本発明の樹脂パイプは、線膨張係数が小さいため、配管時に、支持金具の固定ピッチ(間隔)を短くしなくてもよく、作業を簡略化することができ、かつ伸縮管継ぎ手を削減または不要にでき、コストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態の樹脂パイプの断面図である。
【
図2】本発明の第2実施形態の樹脂パイプの断面図である。
【
図3】実施例と比較例の構成及び線膨張係数等を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示す第1実施形態の樹脂パイプ10Aは、炭素繊維と、ポリエチレン樹脂と、イミン変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物から押出成形によって形成された炭素繊維強化樹脂層11Aの単層構造である。炭素繊維強化樹脂層11Aを有する樹脂パイプ10Aの厚み(肉厚)については、SDR(パイプの基準外径と最小厚さの比 D/t)が、9~17に設定することが好ましい。またSDRを9~13.6に設定すれば更に好ましい。例えば、外径90mmの樹脂パイプにおいて、厚みは5.0~10mmが好ましい。また、樹脂パイプ10Aの外径が25mmの場合は、厚み2.5mm~3mmが好ましい。
【0010】
炭素繊維は、バージン(未使用)の炭素繊維あるいはリサイクル処理(加熱処理)等がされた再生炭素繊維の何れでもよく、何れか一方のみ、あるいは両方を併用することもできる。
【0011】
再生炭素繊維の場合は、炭素繊維強化樹脂を加熱処理して得られる熱分解物が好ましい。熱分解される炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維と樹脂とからなる炭素繊維強化樹脂(CFRP)成形体の廃棄物である。また、炭素繊維強化樹脂から再生炭素繊維を得るための加熱処理は、炭素繊維強化樹脂を加熱して樹脂を炭化物とし、その炭化物を酸化分解して炭素繊維(再生炭素繊維)を得る処理であり、公知の処理技術である。
【0012】
炭素繊維は、裁断されたチョップド炭素繊維または粉砕されたミルド炭素繊維の何れでもよい。
チョップド炭素繊維は、ミルド炭素繊維よりも、樹脂パイプの線膨張係数が小になる。チョップド炭素繊維の平均長さは1~7mm、好ましくは1~5mm、より好ましくは2~4mmである。チョップド炭素繊維の平均長さが7mmを越えると樹脂パイプの外観が悪くなる。
一方、ミルド炭素繊維は、平均長さが5μm~100μm、好ましくは10μm~50μm、より好ましくは20μm~30μmである。ミルド炭素繊維は、チョップド炭素繊維よりも、樹脂パイプの外観(平滑性)が良好になる。
【0013】
炭素繊維の配合量は、ポリエチレン樹脂の配合重量部の1/50~1/5(ポリエチレン樹脂100重量部に対して2~20重量部)が好ましく、より好ましくは3/100~1/10(ポリエチレン樹脂100重量部に対して3~10重量部)である。炭素繊維の配合量が少なすぎると樹脂パイプが撓みやすくなり、逆に多すぎると樹脂パイプの成形性が低下するようになる。
【0014】
ポリエチレン樹脂は、樹脂パイプに必要な剛性を付与するため、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
【0015】
イミン変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィンにイミノ基を多数含有しているポリイミド化合物を、ラジカル発生剤の存在下でグラフト処理することによって得られるものである。ポリイミド化合物の基となるポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0016】
イミン変性ポリオレフィン樹脂を樹脂組成物に配合することにより、炭素繊維とポリエチレン樹脂との接着性を高めるとともに、樹脂組成物の溶融押出時におけるメルトテンションの限界速度の値が大になり、樹脂パイプの外観(成形体表面の平滑性)を良好にできる。メルトテンションの限界速度は、樹脂の溶融押出時における増速引取による破断時の最大速度であり、JIS K7199に基づいて測定される。メルトテンションの限界速度の値が大きいほど、溶融体の破裂を生じ難いため、得られる樹脂パイプの表面の平滑性が良好なものになる。
【0017】
イミン変性ポリオレフィン樹脂の配合量は、炭素繊維の配合重量部の1/10~2/3が好ましい。イミン変性ポリオレフィン樹脂の配合量が少なすぎると、パイプの平滑性が悪くなるとともに線膨張係数も下げにくくなる。
【0018】
樹脂組成物には、結晶核剤を含むのが好ましい。
結晶核剤としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、へベニン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩が好ましい。結晶核剤は、これらの一つに限られず二以上でもよく、また脂肪酸アミドと脂肪酸金属塩の双方を組み合わせて使用してもよい。結晶核剤の配合により、樹脂パイプの線膨張係数をより小さくすることができる。
【0019】
結晶核剤は、ポリエチレン樹脂をベース樹脂(主成分)とするマスターバッチ(MB)を使用してもよい。市販されている結晶核剤のマスターバッチの例として、高密度ポリエチレン(HDPE)をベースとし、結晶核剤がステアリン酸亜鉛と1,2-シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩である「リケマスターCN-002」は好適である。なお、「リケマスターCN-002」は、(結晶核剤)ステアリン酸亜鉛:1.36%と1,2-シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩:2.72%となっている。
樹脂組成物における結晶核剤マスターバッチ(MB)の配合量は、ポリエチレン樹脂の配合重量部の1/20以下(ポリエチレン樹脂100重量部に対して5重量部)以下が好ましい。なお、樹脂組成物における結晶核剤の配合量は、結晶核剤のマスターバッチを使用する場合、マスターバッチにおける主成分を除いた結晶核剤単独の量となる。従って、リケマスターCN-002の場合、自身の配合量に対して4.08%が結晶核剤単独の量となる。
【0020】
樹脂組成物には、その他適宜の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、顔料、滑剤、酸化防止剤等を挙げることができる。
【0021】
樹脂組成物は、樹脂ペレットにされて樹脂パイプの製造に用いられる。
樹脂ペレットの製造は、樹脂組成物を混練押出機で混練りし、該混練物をストランド状に押出し、水中冷却槽に通して冷却硬化し、ペレタイザーで切断してペレットとすることにより行うことができる。なお、樹脂のペレット化は、公知の方法である。
【0022】
樹脂パイプ10Aの製造に使用される押出成形では、樹脂ペレットを、押出機に投入して溶融し、溶融樹脂をダイスから押し出してダイス形状の長尺品からなる樹脂パイプを形成する。
【0023】
図2に示す第2実施形態の樹脂パイプ10Bは、外層11Bと内層15Bとの二層構造からなる。外層11Bと内層15Bは、何れか一方の層が炭素繊維強化樹脂層、他方の層がポリエチレン樹脂層である。
【0024】
炭素繊維強化樹脂層は、前記第1実施形態の樹脂パイプ10Aにおける炭素繊維強化樹脂層11Aと同様の構成からなる。
【0025】
ポリエチレン樹脂層は、ポリエチレン樹脂から形成される。ポリエチレン樹脂としては、樹脂パイプに必要な剛性を付与するため、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
【0026】
外層11Bを炭素繊維強化樹脂層とし、内層15Bをポリエチレン樹脂層とした場合、内層15Bの耐塩素水性が向上し、塩素が含まれる水道水にも好適な樹脂パイプになる。
【0027】
炭素繊維強化樹脂層の厚みは樹脂パイプの厚みの30%以上、ポリエチレン樹脂層の厚みは樹脂パイプの厚みの70%以下が好ましい。また、炭素繊維強化樹脂層の厚み:ポリエチレン樹脂層の厚みは、3:7~9:1が好ましい。
二層構造の樹脂パイプ10Bの外径は、特に限定されないが、例として20mm~250mmを挙げる。
なお、二層構造の樹脂パイプ10Bにおいても、樹脂パイプの厚み(肉厚)は、SDR(パイプの基準外径と最小厚さの比 D/t)を9~17に設定することが好ましい。
【0028】
二層構造の樹脂パイプ10Bの製造は、公知の多層共押出成形で行うことができる。なお、炭素繊維強化樹脂層の押出成形は、第1実施形態の樹脂パイプ10Aで説明した樹脂組成物の樹脂ペレットが使用され、一方、ポリエチレン樹脂層の押出成形は、ポリエチレン樹脂のペレットが使用される。
【実施例】
【0029】
図3に、各実施例及び各比較例の樹脂パイプにおける層構造及び樹脂組成物の配合を示す。
炭素繊維が配合された樹脂組成物の樹脂ペレットは、混練押出機(品名:KTX-30、神戸製鋼製)で溶融混練し、直径3mmのストランド状で水中冷却層に押し出し、ペレタイザー(品名:ストランドカッター、タナカ社製)で長さ3~4mmに切断して製造した。溶融混練条件はバレルおよびダイ温度200℃、スクリュー回転数400rpm、吐出量20kg/hである。
また、ポリエチレン樹脂のペレットは、購入品である。
【0030】
炭素繊維強化樹脂層の単層からなる樹脂パイプの製造は、炭素繊維を含む樹脂組成物のペレットを汎用押出成形機に投入し、押出成形によって、外径32mm、内径26mmからなるパイプを製造した。成形条件は、ダイ温度220~230℃、スクリュー回転数55rpm、引取速度2m/minである。
【0031】
ポリエチレン樹脂の単層からなる樹脂パイプの製造は、ポリエチレン樹脂のペレットを汎用押出成形機に投入し、押出成形によって、外径32mm、内径26mmからなるパイプを製造した。成形条件は、ダイ温度200℃、スクリュー回転数30rpm、引取速度1.85m/minである。
【0032】
炭素繊維強化樹脂層とポリエチレン樹脂層との二層構造の樹脂パイプの製造は、炭素繊維を含む樹脂組成物のペレットとポリエチレン樹脂のペレットを用い、汎用押出成形機によって、外径32mm、内径26mm、炭素繊維強化樹脂層の厚み1mm、ポリエチレン樹脂層の厚み2mmからなる二層構造の樹脂パイプを製造した。成形条件は、ダイ温度220~230℃、スクリュー回転数は、炭素繊維強化樹脂層側が34rpmでポリエチレン樹脂層側が50rpm、引取速度2m/minである。
【0033】
使用した原料を以下に示す。
・ポリエチレン:高密度ポリエチレン(HDPE)、品名;ハイゼックス7700M、株式会社プライムポリマー製
・再生炭素繊維(ミルド):炭素繊維強化樹脂の熱分解物からなる平均繊維長25μmの再生炭素繊維、品名;ミルド再生CF繊維、カーボンファイバーリサイクル工業株式会社製
・再生炭素繊維(チョップド):炭素繊維強化樹脂の熱分解物からなる平均繊維長3mmの再生炭素繊維、品名;チョップド再生CF繊維、カーボンファイバーリサイクル工業株式会社製
・酸変性ポリオレフィン:マレイン酸変性ポリオレフィン、品名;ユーメックス、三洋化成株式会社製
・イミン変性ポリオレフィンA:品名;アドマーIP(登録商標)AT3096、三井化学株式会社製
・イミン変性ポリオレフィンB:品名;アドマーIP(登録商標)AT3346、三井化学株式会社製
・結晶核剤:(結晶核剤)ステアリン酸亜鉛1.36%、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸カルシウム塩:2.72%/(主成分)高密度ポリエチレン(HDPE)マスターバッチ、品名;リケマスターCN-002、理研ビタミン社製
【0034】
各実施例及び各比較例に対し、以下の方法によって線膨張係数を測定した。各実施例及び各比較例の樹脂パイプを1010mmの長さで切断してサンプルを作製し、サンプルを20℃に設定した恒温層に2時間保管した。20℃の恒温層から取り出したサンプルの表面に、間隔1000mmで標線を針で罫書き、標線記入後のサンプルを60℃に設定した恒温層に2時間保管した。60℃の恒温層からサンプルを取り出して標線間の距離をメジャーによって測定した。
60℃における標線間距離と20℃における標線間距離の差によってサンプルの伸び(mm)を算出し、線膨張率を[サンプルの伸び÷1000÷40]によって算出する。
【0035】
各実施例及び各比較例の構成と線膨張係数の測定結果について説明する。
・実施例1
実施例1は、炭素繊維強化樹脂層の単層構造である。炭素繊維強化樹脂層は、ポリエチレン樹脂95重量部と、再生炭素繊維(チョップド)5重量部と、イミン変性ポリオレフィンAの2.5重量部が配合された樹脂組成物から形成されている。
実施例1は、線膨張係数測定時の伸びが2.5mm、線膨張係数が6.3×10-5/℃であり、線膨張係数の小さいものである。
【0036】
・実施例2
実施例2は、外層がポリエチレン樹脂層、内層が炭素繊維強化樹脂層の二層構造である。外層のポリエチレン樹脂層は、ポリエチレン100重量部から形成されている。内層の炭素繊維強化樹脂層は、ポリエチレン樹脂95重量部と、再生炭素繊維(チョップド)5重量部と、イミン変性ポリオレフィンAの2.5重量部が配合された樹脂組成物から形成されている。
実施例2は、線膨張係数測定時の伸びが3.0mm、線膨張係数が7.5×10-5/℃であり、炭素繊維強化樹脂層の外層にポリエチレン樹脂層を有するため、実施例1の炭素繊維強化樹脂層の単層と比べて、若干繊維膨張係数の値が大になったが、それでも十分に線膨張係数の小さいものである。
【0037】
・実施例3
実施例3は、炭素繊維強化樹脂層の単層構造である。炭素繊維強化樹脂層は、ポリエチレン樹脂90重量部と、再生炭素繊維(チョップド)5重量部と、イミン変性ポリオレフィンBの3重量部と、結晶核剤(マスターバッチ)2.5重量部が配合された樹脂組成物から形成されている。
実施例3は、線膨張係数測定時の伸びが2.0mm、線膨張係数が5.0×10-5/℃であり、線膨張係数の小さいものである。結晶核剤を含むため、実施例1の炭素繊維強化樹脂層の単層と比べ、繊維膨張係数の値がさらに小になった。
【0038】
・実施例4
実施例4は、外層が炭素繊維強化樹脂層、内層がポリエチレン樹脂層の二層構造である。外層の炭素繊維強化樹脂層は、ポリエチレン樹脂90重量部と、再生炭素繊維(チョップド)5重量部と、イミン変性ポリオレフィンBの3.0重量部と、結晶核剤(マスターバッチ)2.5重量部が配合された樹脂組成物から形成されている。内層のポリエチレン樹脂層は、ポリエチレン100重量部から形成されている。
実施例4は、線膨張係数測定時の伸びが2.5mm、線膨張係数が6.3×10-5/℃であり、線膨張係数の小さいものである。また、ポリエチレン樹脂層の内層を有するため、内層の耐塩素水性が向上し、塩素が含まれる水道水にも好適である。
【0039】
・比較例1
比較例1は、ポリエチレン樹脂層の単層構造である。ポリエチレン樹脂層は、ポリエチレン100重量部から形成されている。
比較例1は、線膨張係数測定時の伸びが4.5mm、線膨張係数が11.3×10-5/℃であり、線膨張係数が大きいものである。
【0040】
・比較例2
比較例2は、酸変性ポリオレフィンを配合した炭素繊維強化樹脂層の単層構造である。炭素繊維強化樹脂層は、ポリエチレン95重量部と、再生炭素繊維(ミルド)5重量部と、酸変性ポリオレフィン1重量部が配合された樹脂組成物から形成されている。
比較例2は、線膨張係数測定時の伸びが3.5mm、線膨張係数が8.8×10-5/℃であり、線膨張係数の大きいものである。
【0041】
・比較例3
比較例3は、再生炭素繊維(ミルド)及び酸変性ポリオレフィンの量を比較例2よりも減らした例である。炭素繊維強化樹脂層は、ポリエチレン樹脂97.5重量部と、再生炭素繊維(ミルド)2.5重量部と、酸変性ポリオレフィン0.5重量部が配合された樹脂組成物から形成されている。
比較例3は、線膨張係数測定時の伸びが4.0mm、線膨張係数が10.0×10-5/℃であり、比較例2よりも線膨張係数がさらに大きいものである。
【0042】
・比較例4
比較例4は、ポリエチレンと再生炭素繊維(ミルド)のみからなる炭素繊維強化樹脂層の単層構造である。炭素繊維強化樹脂層は、ポリエチレン90重量部と再生炭素繊維(ミルド)10重量部が配合された樹脂組成物から形成されている。
比較例4は、線膨張係数測定時の伸びが3.5mm、線膨張係数が8.8×10-5/℃であり、線膨張係数が大きいものである。
【0043】
このように、本発明によれば、線膨張係数の小さい樹脂パイプを得ることができる。さらに、最内層にポリエチレン樹脂層を設けることにより、内層の耐塩素性が向上し、塩素が含まれる水道水用にも使用することができる。
なお、本発明は実施例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。例えば、実施例では、単層構造と2層構造の場合を示したが、3層構造の複層構造であってもよい。また、炭素繊維と、ポリエチレン樹脂と、イミン変性ポリオレフィン樹脂を含む樹脂組成物からなる炭素繊維強化樹脂層は、少なくとも1層有するものであればよい。
【符号の説明】
【0044】
10A、10B 樹脂パイプ
11A 炭素繊維強化樹脂層
11B 外層
15B 内層