(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】無人確認システムと方法
(51)【国際特許分類】
E04H 6/18 20060101AFI20240705BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20240705BHJP
B65G 1/06 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
E04H6/18 601G
E04H6/42 H
B65G1/06 511Z
(21)【出願番号】P 2020182449
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 公基
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 博美
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067437(JP,A)
【文献】特開2018-112001(JP,A)
【文献】特開2005-068640(JP,A)
【文献】特開2019-109652(JP,A)
【文献】特開2014-231688(JP,A)
【文献】特開2014-202014(JP,A)
【文献】特開2010-001654(JP,A)
【文献】特開2018-100485(JP,A)
【文献】特開平06-173483(JP,A)
【文献】特許第3906328(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/44
B65G 1/00
B65G 1/06
G01V 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パレットに車両を載せて格納し少なくとも1つの前記パレットの上に内部に荷物を格納可能な収納箱を有する機械式駐車装置の乗降室の無人確認システムであって、
前記乗降室の内部に前記車両の3次元の乗降領域が設定され、該乗降領域の下端に前記パレットの定位置が設定されており、
前記乗降室の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データを検出するレーザーシステムと前記乗降領域の生体のみを検出する生体検出システムとのうちの前記レーザーシステムのみ又は該レーザーシステムと前記生体検出システムとの両方と、
前記レーザーシステムのみの検出データ、又は該レーザーシステムと前記生体検出システムとの両方の検出データから前記乗降室内の異物を検出するデータ処理装置と、を備え、
前記収納箱は、前記定位置において前記乗降領域の内側に位置し、
前記収納箱が設置された前記パレットは、前記定位置において前記レーザーシステム又は前記生体検出システムの検出範囲に人がアクセス可能なパレット上通路を有し、
前記データ処理装置は、前記定位置において前記収納箱が前記乗降領域の内側に位置し、かつ前記乗降室内に前記異物が存在しないときの前記レーザーシステムの検出データである無人データを記憶し、
前記収納箱が前記乗降領域の内側に位置する時に、前記検出データが前記レーザーシステムによるもののみであり前記レーザーシステムによる前記座標データが前記無人データと同じである場合、又は前記検出データが前記レーザーシステムと前記生体検出システムとの両方によるものであり前記レーザーシステムによる前記座標データが前記無人データと同じでありかつ前記生体検出システムにより前記生体を検出しない場合に、前記乗降室内が無人であると判断する、無人確認システム。
【請求項2】
前記パレット上通路は、前記パレットの上面の全範囲から前記収納箱が覆った範囲を除いた範囲に位置する、請求項1に記載の無人確認システム。
【請求項3】
前記生体検出システムは、前記乗降領域にミリ波を照射して生体のみを検出するミリ波システムであり、
前記ミリ波システムは、前記乗降領域の内側に停車する前記車両に対し、前方から前記パレットの幅方向中央又は幅方向端部に前記ミリ波を照射する前方生体検出レーダーを有し、
前記パレット上通路は、前記前方生体検出レーダーによる前記ミリ波の照射範囲であって、前記パレットの長さ方向全体にわたり設けられている、請求項1又は請求項2に記載の無人確認システム。
【請求項4】
前記生体検出システムは、前記乗降領域にミリ波を照射して生体のみを検出するミリ波システムであり、
前記ミリ波システムは、前記乗降領域の内側に停車する前記車両に対し、側方から前記ミリ波を照射する側方生体検出レーダーを有し、
前記パレット上通路は、前記側方生体検出レーダーによる前記ミリ波の照射範囲であって、前記パレットの幅方向全体にわたり設けられている、請求項1又は請求項2に記載の無人確認システム。
【請求項5】
前記収納箱は、その底面に、前記パレット上で水平移動するための車輪を有し、
前記パレット上通路の位置は、前記収納箱の前記水平移動によって変えられる、請求項1~請求項4のうちの何れか一項に記載の無人確認システム。
【請求項6】
前記収納箱は、その底面にキャスターを有し、乗降可能に前記パレットに積載されており、
前記パレット上に積載された前記収納箱は、該パレットの中央部に位置する、請求項1~請求項4のうちの何れか一項に記載の無人確認システム。
【請求項7】
前記収納箱は、その内部に生体が入ることができる大きさであり、
前記生体検出システムは、前記収納箱の内部に設けられており、
前記パレット上通路は、前記収納箱の内部に位置する、請求項1に記載の無人確認システム。
【請求項8】
前記レーザーシステムは、前記乗降室の内壁及び床面との間に前記異物が侵入できないように設置され、かつ前記乗降領域を間に挟んで位置する複数の3次元レーザーレーダーである、請求項1に記載の無人確認システム。
【請求項9】
前記レーザーシステムは、前記乗降室の前記内側全域を俯瞰可能な位置に設置された1又は複数の3次元レーザーレーダーである、請求項1に記載の無人確認システム。
【請求項10】
前記パレット上通路に前記生体を検出可能なマットスイッチを有する、請求項1に記載の無人確認システム。
【請求項11】
パレットに車両を載せて格納し少なくとも1つの前記パレットの上に内部に荷物を格納可能な収納箱を有する機械式駐車装置の乗降室の無人確認方法であって、
前記乗降室の内部に前記車両の3次元の乗降領域が設定され、該乗降領域の下端に前記パレットの定位置が設定されており、
前記定位置において前記収納箱が前記乗降領域の内側に位置し、かつ前記乗降室内に異物が存在しないときのレーザーシステムの検出データである無人データを記憶する無人データ記憶ステップと、
前記収納箱が前記乗降領域の内側に位置する時に、前記レーザーシステムによる前記乗降室の内側全域の座標データが前記無人データと同じ場合に、異物なしと判断する異物検出ステップと、
前記異物検出ステップで異物なしと判断した場合、又は前記異物検出ステップで異物なしと判断しかつ生体検出システムにより前記乗降領域に生体を検出しない場合に、前記乗降室内が無人であると判断する収納箱使用時確認ステップと、を有する無人確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空パレットを収納場所として利用する機械式駐車装置の無人確認システムと方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置は、地上に建設した建屋内部や地下に形成した空間に、機械装置を配設し、多数の自動車を立体的に格納する設備である。機械式駐車装置には、エレベータ方式、くし型エレベータ方式、垂直循環方式、多層循環方式、水平循環方式、平面往復方式等、様々な方式が用いられている。
また、機械式駐車装置には、駐車中に電気自動車に給電を行う充電機能を備えたものもある。
【0003】
これらの既設の機械式駐車装置の中には、パレットが使用されずに余っているものもある。このような機械式駐車装置の使用されていないパレット上の空間を有効活用する場合、例えば、空パレットを収納場所として利用することが提案されている。このような機械式駐車装置は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機械式駐車装置には、車両(例えば乗用車)が入出庫(入庫又は出庫)する乗降室と、乗降室へ車両が出入するための入出庫扉が設けられている。
機械式駐車装置が作動する際は、安全性を確保するために、車内に人や動物(以下、「生体」)が残っていないこと、及び、乗降室内に人、動物及び車両以外の物品(以下、「異物」)が残っていないことを確認し、入出庫扉を全閉する必要がある。従来この確認は、光電センサ又は人感センサによる異物検出や、管理人による目視確認によって実施されている。
機械式駐車装置のこのような安全確認を自動化にする試みが、近年行われている。
【0006】
しかし、機械式駐車装置の空パレットを収納場所として転用する場合、空パレット、車両を搭載したパレット、収納箱を搭載したパレットは、いずれも、生体や異物が立ち入得る範囲が異なる。駐車専用として製造された機械式駐車装置の安全装置は、収納場所に転用する場合を想定していない。
そのため、従来は、機械式駐車装置の空パレットを収納場所として転用する場合に乗降室内の無人を自動的に確認する方法が確立されていなかった。これにより空パレットを収納場所に転用した従来の機械式駐車装置では、収納箱を搭載したパレットを通常の機械式駐車場のパレットのように動かすことが出来ず、単に、静置したパレットを収納場所に転用する運用にとどまっていた。
【0007】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、空パレットを収納場所として転用する機械式駐車装置の乗降室内が無人であることを自動的に確認することができる無人確認システムと方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、パレットに車両を載せて格納し少なくとも1つの前記パレットの上に内部に荷物を格納可能な収納箱を有する機械式駐車装置の乗降室の無人確認システムであって、
前記乗降室の内部に前記車両の3次元の乗降領域が設定され、該乗降領域の下端に前記パレットの定位置が設定されており、
前記乗降室の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データを検出するレーザーシステムと前記乗降領域の生体のみを検出する生体検出システムとのうちの前記レーザーシステムのみ又は該レーザーシステムと前記生体検出システムとの両方と、
前記レーザーシステムのみの検出データ、又は該レーザーシステムと前記生体検出システムとの両方の検出データから前記乗降室内の異物を検出するデータ処理装置と、を備え、
前記収納箱は、前記定位置において前記乗降領域の内側に位置し、
前記収納箱が設置された前記パレットは、前記定位置において前記レーザーシステム又は前記生体検出システムの検出範囲に人がアクセス可能なパレット上通路を有し、
前記データ処理装置は、前記定位置において前記収納箱が前記乗降領域の内側に位置し、かつ前記乗降室内に前記異物が存在しないときの前記レーザーシステムの検出データである無人データを記憶し、
前記収納箱が前記乗降領域の内側に位置する時に、前記検出データが前記レーザーシステムによるもののみであり前記レーザーシステムによる前記座標データが前記無人データと同じである場合、又は前記検出データが前記レーザーシステムと前記生体検出システムとの両方によるものであり前記レーザーシステムによる前記座標データが前記無人データと同じでありかつ前記生体検出システムにより前記生体を検出しない場合に、前記乗降室内が無人であると判断する、無人確認システムが提供される。
【0009】
さらに本発明によれば、パレットに車両を載せて格納し少なくとも1つの前記パレットの上に内部に荷物を格納可能な収納箱を有する機械式駐車装置の乗降室の無人確認方法であって、
前記乗降室の内部に前記車両の3次元の乗降領域が設定され、該乗降領域の下端に前記パレットの定位置が設定されており、
前記定位置において前記収納箱が前記乗降領域の内側に位置し、かつ前記乗降室内に異物が存在しないときのレーザーシステムの検出データである無人データを記憶する無人データ記憶ステップと、
前記収納箱が前記乗降領域の内側に位置する時に、前記レーザーシステムによる前記乗降室の内側全域の座標データが前記無人データと同じ場合に、異物なしと判断する異物検出ステップと、
前記異物検出ステップで異物なしと判断した場合、又は前記異物検出ステップで異物なしと判断しかつ生体検出システムにより前記乗降領域に生体を検出しない場合に、前記乗降室内が無人であると判断する収納箱使用時確認ステップと、を有する無人確認方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空パレットを収納場所として転用する機械式駐車装置において、人がアクセス可能なパレット上の範囲であるパレット上通路をレーザーシステム又は生体検出システムの検出範囲内に有する。これにより、本発明によれば、収納用パレット上の生体の有無を自動的に確認することができる。したがって、機械式駐車装置が空パレットを収納場所として転用する場合であっても、乗降室内が無人であることを自動的に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の無人確認システムが搭載される機械式駐車装置を示す正面図である。
【
図2】乗降室の定位置に車用パレットが設置されたときの
図1のA-A矢視図である。
【
図4】第1実施形態の無人確認システムの全体構成図である。
【
図5】機械式駐車装置と無人確認システムの機器構成の説明図である。
【
図6】第1実施形態による無人確認方法の全体フロー図である。
【
図7】第2実施形態の無人確認システムの全体構成図である。
【
図8】第3実施形態の無人確認システムの全体構成図である。
【
図9】第4実施形態の無人確認システムの全体構成図である。
【
図10】第5実施形態の無人確認システムの全体構成図である。
【
図11】第6実施形態の収納箱と収納用パレットの斜視図である。
【
図12】第6実施形態の無人確認システムの全体構成図である。
【
図13】第7実施形態の無人確認システムの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態は、パレット3A,3Bに車両4や収納箱8を載せて格納する機械式駐車装置1の乗降室2の無人を確認する無人確認システム30である。機械式駐車装置1は、パレット3(3A,3B)に車両4を載せて格納し、そのパレット3A,3Bが乗降室2とパレット3の格納場所(例えば格納棚14)との間で移動するものを想定している。この機械式駐車装置1は、少なくとも1つのパレット3Bの上に、内部に荷物Hを格納可能な収納箱8を有している。
【0014】
図1は、第1実施形態の無人確認システム30が搭載される機械式駐車装置1を示す正面図である。
この例において、機械式駐車装置1は、エレベータパーキングである。
この図において、2は乗降室、4は車両(例えば乗用車)、8は収納箱、3Aは車両4を載せるパレット(以下、車用パレット3A)、3Bは収納箱8を載せるパレット(収納用パレット3B)である。またこの図において、13は昇降路、14は格納棚、15は昇降路13を移動するケージである。
【0015】
この例において、ケージ15は、車両4や収納箱8が載るパレット3A,3Bを載せて昇降路13を昇降する。また格納棚14は、昇降路13に沿って配置され、パレット3A,3Bをそれぞれ格納する。
【0016】
なお、上述した機械式駐車装置1は、エレベータ式駐車装置に限定されず、乗降室2を有する限りで、垂直循環式駐車装置、多層循環式駐車装置、水平循環式駐車装置、平面往復式駐車装置、等のその他の機械式駐車装置であってもよい。
また、パレット3A,3Bは、この例ではパレット(例えば、折曲げパレット)であるが、本発明はこれに限定されず、フラットパレットであってもよい。
【0017】
図2は、乗降室2の定位置2aに車用パレット3Aが設置されたときの
図1のA-A矢視図である。
この図において、1は機械式駐車装置、2は乗降室、2aは定位置、2bは入出庫口、2cは入出庫扉、3Aは車用パレット、4は車両、5は乗降領域、30は無人確認システムである。
【0018】
乗降室2は、装置作動時に異物Gの発生を防止するため(例えば無人であるため)、入出庫口2bに入出庫扉2cを有する閉鎖空間として構成されている。
異物Gとは、乗降室内の人F、動物等の生体Fや、荷物H等を意味する。
【0019】
乗降室2の内部には、車両4の3次元の乗降領域5が設定されており、その乗降領域5の下端にパレット3A,3Bの定位置2aが設定されている。
【0020】
無人確認システム30は、乗降領域5を内部に有し、乗降室2の無人を検出するシステムである。乗降領域5は、車両4が停車して人Fが乗り降りする領域である。乗降領域5の幅、長さ、及び高さは、対象とする車両4の最大寸法よりも大きく設定されている。
例えば、対象とする車両4が中型車であり、全幅、全長、全高が1700mm、4800mm、1500mmである場合、停車位置の変動を考慮して、乗降領域5の幅、長さ、及び高さを例えば、2000mm、5100mm、2000mmに設定する。
【0021】
車両4は、乗降領域5の内側に停車する。乗降領域5は、停車した車両4の外面と乗降領域5の境界面との間に、生体Fが入れないように設定されている。生体Fとは、人や動物を意味する。なお、乗降領域5は、車種や収納箱8の種類に応じて自動的に変化させてもよい。
【0022】
入庫する車両4は、入出庫扉2cを通って外部から乗降室2の内側に入り、乗降領域5の内側に停車する。
この場合、車両4の前側を
図2で上向きに停車する。以下、
図1の上側を前方、下側を後方と呼ぶ。
入出庫扉2cは乗降領域5の後方に設けられている。また入出庫扉2cの開口幅は、乗降領域5の全幅より大きく設定されている。
【0023】
図2において、無人確認システム30は、レーザーシステム32、生体検出システム20、及びデータ処理装置36と、を備える。
【0024】
レーザーシステム32は、乗降室2の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データを検出する。レーザー光の照射は、水平走査又は3次元走査であるのがよい。
この例で、レーザーシステム32は、乗降室2の内壁及び床面との間に異物Gが侵入できないように設置され、かつ乗降領域5を間に挟んで位置する複数(この例で2台)の3次元レーザーレーダー32A,32Bである。
この図に示すように、レーザー光の水平走査範囲(水平走査角度)は、正面から少なくとも-45度~+45度、好ましくは-75度~+75度であるのがよい。
また3次元レーザーレーダー32A,32Bの検出距離は、乗降室2の間口及び奥行以上(例えば8m以上)であるのがよい。この図では、レーザーシステム32で異物Gを検出できる検出限界位置33a,33bを、一点鎖線で記載している。
【0025】
異物Gは、生体F(人又は動物)、車両4、及び収納箱8以外の物体を意味する。
なお、レーザーシステム32は、乗降室2の内側全域を俯瞰可能な位置に設置された1又は複数の3次元レーザーレーダー32A,32Bであってもよい。この図では、対角線上に位置する乗降室2の隅に、一対の3次元レーザーレーダー32A,32Bが設けられている。なお、この図において、3次元レーザーレーダー32Aの検出限界位置の符号を33aと記載し、3次元レーザーレーダー32Bの検出限界位置の符号を33bと記載している。
【0026】
データ処理装置36は、レーザーシステム32及び生体検出システム20の検出データから、乗降室内の異物Gを検出する。データ処理装置36は、例えばコンピュータ(PC)であり、入力装置、出力装置、記憶装置、及び演算装置を有する。
【0027】
生体検出システム20は、乗降領域5にミリ波7を照射して生体Fのみを検出するミリ波システム22であり、ミリ波7で車内の生体Fを検出することもできる装置である。ミリ波7は、金属は透過しないが、ガラスや車内のシート等は透過する性質を有する。例えばこの図の場合、ミリ波システム22から照射されたミリ波7が、車両4のフロントガラスとシートを透過し、その反射波データ6を受信することによって後部座席にいる子供Fを検出している。
【0028】
ミリ波システム22は、乗降領域5の内側に停車した車両4に対し、前方からパレット3の幅方向中央にミリ波7を照射する前方生体検出レーダー23を有する。
【0029】
本発明において、「ミリ波システム22」とは、ミリ波レーダー、ミリ波ドップラーセンサ、又は、ミリ波ドップラーレーダーを意味する。
「ミリ波レーダー」は、ミリ波帯の電波を使って対象物との距離、速度、角度を測定するレーダーである。
「ミリ波ドップラーセンサ」は発射したミリ波7の反射波データ6を受信し、発射した周波数と受信した周波数の差から動体を検出するドップラー効果を利用したセンサである。
「ミリ波ドップラーレーダー」とは、ドップラー効果による周波数の変移を観測することで、観測対象の相対的な移動速度と変位を観測する事のできるレーダーである。
【0030】
ミリ波システム22は、ドップラー効果により生体Fを検知しかつ所定の周波数帯域を除去することにより意図しない生体検知を回避する機能を有する。
またミリ波システム22は、短波長のため高い精度での検出を実現でき、最小で0.1mm単位の動きを検出することができる。そのため、生体F(人又は動物)の呼吸時における胸部の動きや、心拍による胸部の動きも検出することができる。
【0031】
これにより、前方生体検出レーダー23は、前面ガラス(フロントガラス)を透してミリ波7を車内に照射しその反射波データ6を受信する。
【0032】
図3は、ミリ波システム22の全体構成図である。
図3(A)において、ミリ波システム22は、送信周波数が24GHz帯のミリ波7を発振する発振器22aと、ミリ波7の垂直偏波を照射するパラボラアンテナ22bを有する。パラボラアンテナ22bは、電波の反射器に回転放物面を利用した椀形のアンテナである。また、ミリ波システム22は、前方生体検出レーダー23、中間周波数増幅器24、及び判別装置26を備える。
【0033】
24GHz帯のミリ波7を用いるのは、従来の10GHz帯のミリ波は、電波法の屋内規制により扉(又はシャッター)を開いた状態で使用できないからである。これに対し、24GHz帯(準ミリ波)は、屋内規制が無く、かつガラスに対する透過性がミリ波帯より優れている。なお、24GHz帯の準ミリ波を、本発明では単に「ミリ波7」と呼ぶ。
また、本発明のミリ波7は、24GHz帯のミリ波に限定されず、周波数帯10~300GHzの電波であってもよい。
【0034】
また、垂直偏波(TM波)を用いるのは、従来の水平偏波(TE波)と比較して、ガラスに対する透過率が大きいからである。
【0035】
さらに、パラボラアンテナ22bを用いるのは、従来のパッチアンテナと比較して、空中線利得を稼ぎつつ半値角θを狭めることができるからである。
パラボラアンテナ22bは、アンテナゲインが半分となる半値角θが6度以上、10度以下であり、照射位置から3mにおける半値幅Lが300mm以上、600mm以下であるのがよい。半値角θとは、アンテナゲインが半分となるミリ波7の広がり角である。半値角が6~10°の場合、照射位置から3mにおける半値幅L(ミリ波7の照射幅)が300mm以上、600mm以下となる。
【0036】
図3(B)は、中間周波数増幅器24の増幅率(縦軸)と反射波データ6の周波数(横軸)との関係図である。
この図に示すように、中間周波数増幅器24は、反射波データ6のうち呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅して増幅信号を出力する。
【0037】
人の脈拍の変位量は約0.1~0.2mm、呼吸の変位量は約10mm、体動の変位量は約100mmのオーダである。また、RCS(radar cross section)は、脈拍を1とすると、呼吸は100、体動は1000のオーダである。
そのため、脈拍のRCSに対し呼吸と体動のRCSが2~3桁のオーダで大きく、ミリ波システム22の信号を利用してバイタル信号(生体信号)を検出する場合、呼吸と体動の信号成分により脈拍の信号成分が埋もれてしまう。また、脈拍信号を検出するためには高ゲインのアンプを用いて信号を増幅する必要があるが、この場合、呼吸と体動の信号によってアンプが飽和し、脈拍信号が喪失されることが予測される。
【0038】
一方、バイタル信号の周波数成分は、例えば、呼吸が約0.2~0.5Hz、脈拍が約1~2Hz、体動が約5Hz以上である。
本発明では、
図3(B)に示すように、呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分を異なる増幅率で増幅する。
【0039】
この例では、脈拍(約1~2Hz)を含む0.5Hz~5Hzの増幅率を脈拍信号の検出に必要な高いゲインG(=X)に設定する。また、呼吸に相当する約0.2~0.5Hzの増幅率をアンプが飽和せずかつ脈拍信号と同等のオーダの増幅信号が得られるようにゲインG(例えば=X-20dB)に設定する。同様に、体動に相当する5~20Hzの増幅率をアンプが飽和せずかつ脈拍信号と同等のオーダの増幅信号が得られるようにゲインG(例えば=X-40dB)に設定する。
【0040】
上述した構成により、増幅後の呼吸、脈拍、及び体動の信号レベルを、各信号が互いに埋没せず、かつアンプが飽和しないようにすることができ、それぞれのバイタル信号を検出することができる。
【0041】
図3(A)において、判別装置26は、増幅信号を周波数分析する周波数分析器と、周波数分析後の呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分の出力をそれぞれの閾値と比較する比較部と、を有する。
この構成により、判別装置26は、呼吸、脈拍、及び体動の周波数成分(例えば、約0.2~0.5Hz、約1~2Hz、約5Hz以上)をそれぞれの閾値と比較し、いずれかの出力がその閾値を超えるか否かにより、生体Fの有無を判別する。それにより、無人確認システム30は、乗降室2に車用パレット3Aが設置されているときには、前方生体検出レーダー23で車内の生体Fの有無を確認することができている。
【0042】
次に第1実施形態の無人確認システム30について説明する。
図4は、第1実施形態の無人確認システム30の全体構成図である。
無人確認システム30は、レーザーシステム32、生体検出システム20、及びデータ処理装置36と、を備える。生体検出システム20は、この図の例では、乗降室2の奥側に設置されたミリ波システム22である前方生体検出レーダー23を想定している。
この図に示すように、収納用パレット3Bの上には、収納箱8がパレット3Bの幅方向両端部に沿ってその長さ方向全体にわたって設置されている。収納箱8は、収納用パレット3Bが乗降室内の定位置2aにあるときに、乗降領域5の内側に位置する。収納箱8は、中に物を入れることができる入れ物であれば、どのようなものであってもよい。例えば収納箱8は、ロッカーや宅配ボックス、倉庫、納屋、収納庫、トランクルーム、レンタル収納スペース、等であってもよい。
【0043】
また収納用パレット3Bは、その上に、収納箱8に荷物Hを出し入れするときに人Fが作業する場所となるパレット上通路9を有する。この図の例では、収納箱8の扉(以下、収納扉8a)は、パレット上通路9に面して設けられている。パレット上通路9は、パレット3Bの上面の全範囲から収納箱8が覆った範囲を除いた範囲に位置する。本実施形態のパレット上通路9は、収納用パレット3Bの幅方向中央で、収納用パレット3Bの長さ方向全体にわたって延びたものである。言い換えると、収納箱8が、収納用パレット上の、パレット上通路9が占める範囲以外の範囲の全面を占めるように設置されている。
【0044】
このようにパレット上通路9は、前方生体検出レーダー23によるミリ波7の照射範囲7aであるパレット3の幅方向中央に、収納用パレット3Bの長さ方向全体にわたり設けられている。これにより、収納用パレット上において人Fがアクセス可能な範囲であるパレット上通路9を、収納用パレット3Bが定位置2aにあるときの生体検出システム20の検出範囲20aに必ず含めるので、乗降領域5の内側に位置する生体Fの有無を確実に検出することができる。
【0045】
また、無人確認システム30は、乗降室2に車用パレット3Aが置かれたときと同様に、レーザーシステム32で、乗降室2の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データを検出する。これにより、乗降室2の内壁と収納箱8の外側の間にある異物Gの有無を検出することができる。なお、本実施形態の無人確認システム30の場合、乗降領域内のパレット上通路上の一部に、レーザーシステム32による検出範囲の死角エリアが生じる。この死角エリアは、生体検出システム20で無人確認を行うため、本実施形態のレーザーシステム32の検出範囲から除外される。
【0046】
無人確認システム30には、生体検出システム20とは別個に、マットスイッチ40やパッシブセンサ42が設けられていてもよい。もしくは、無人確認システム30は、生体検出システム20とは別個に、乗降室2の室内を監視カメラで撮影し、そのカメラ画像をAI(人工知能)で解析することによって人Fを検出する検出装置やWi-Fiの電波反射データを活用して空間内の測位やセンシングを行うことで人Fを検出する検出装置を有していてもよい。
例えばマットスイッチ40を設ける場合には、パレット上通路9の全体に、生体Fを検出可能なマットスイッチ40が敷き詰め、生体検出システム20とマットスイッチ40の両方でパレット上通路上の異物Gの有無を検知してもよい。なお、無人確認システム30がレーザーシステム32を備えていない場合は、マットスイッチ40を、パレット上通路9と乗降室2の床面の全面に敷き詰め、床面上の異物Gの検知をマットスイッチ40で行うことが好ましい。レーザーシステム32や生体検出システム20だけでなく、マットスイッチ40やパッシブセンサ42等の他の検出装置で異物Gの有無を二重三重に検出することにより、確実に、乗降室2の無人を確認することができる。
【0047】
データ処理装置36は、レーザーシステム32や生体検出システム20、マットスイッチ40、パッシブセンサ42等の検出装置から検出データを受け取り、乗降室内の異物Gを検出する。データ処理装置36は、予め定位置2aにおいて収納箱8が乗降領域5の内側に位置し、かつ乗降室内に異物Gが存在しないときのレーザーシステム32の検出データである無人データD0を記憶する。そして、収納箱8が乗降領域5の内側に位置する時に、生体検出システム20により生体Fを検出せず、かつレーザーシステム32による座標データが無人データD0と同じである場合に、乗降室内が無人であると判断する。
【0048】
図5は、機械式駐車装置1と無人確認システム30の機器構成の説明図である。この図において、電源の供給を示す矢印を破線で示している。また、検出装置20,32,40,42から出力される検出データや、データ処理装置36又は機械式駐車装置本体の制御装置1cから出力される指令信号は、実線の矢印で記載している。
この図に示すように、無人確認システム30の検出装置20,32,40,42やデータ処理装置36は、機械式駐車装置1から独立したシステムであってもよい。この図の例では、検出装置20,32,40,42やデータ処理装置36は、機械式駐車装置1の電源供給部1aから電源が供給されている。各検出装置20,32,40,42が検出した検出データは、データ処理装置36へ出力される。
【0049】
データ処理装置36は、これらの検出データから、乗降室内が無人であるか否かを判断し、その判断結果を、機械式駐車装置1のPLC通信部1bを通じて、機械式駐車装置本体の制御装置1cへ出力する。これにより、無人確認システム30の判断結果に応じて、機械式駐車装置1が、ケージ15等の機械式駐車装置本体の機械を駆動することができる。
また、データ処理装置36や機械式駐車装置本体の制御装置1cから検出装置20,32,40,42へ指令信号を出力することができる。これにより、検出装置20,32,40,42を、機械式駐車装置1の動きに連動させて制御することができる。なお、これに限らず機械式駐車装置本体の制御装置1cが、データ処理装置36を兼ねていてもよい。
【0050】
機械式駐車装置1が車用パレット3Aと収納用パレット3Bとを混載して備えている場合、制御装置1cは、各パレット3A,3Bに割り振られた個体識別番号を把握し、各番号のパレット3A,3Bがどの格納棚14に収納しているかを常に把握している。制御装置1cは、利用者が呼び出したパレット3が、車用なのか、それとも第1実施形態の収納用パレット3Bなのか、もしくは後述する第2~第7実施形態の収納用パレット3Bなのかを、個体識別番号から判断する。そして制御装置1cは、そのパレット3A,3Bに合った検出装置32,20,40,42を作動させる。
【0051】
次に、本実施形態の無人確認方法ついて説明する。
図6は、第1実施形態による無人確認方法の全体フロー図である。なお、この図における二重枠は、人Fの動作を表している。
【0052】
本実施形態による無人確認方法は、パレット3に車両4を載せて格納し少なくとも1つのパレット3の上に内部に荷物Hを格納可能な収納箱8を有する機械式駐車装置1の乗降室2の無人確認方法である。この図において、本発明による無人確認方法は、T1~T4の各ステップ(工程)を有する。
【0053】
無人データ記憶ステップT1では、定位置2aにおいて収納箱8が乗降領域5の内側に位置し、かつ乗降室内に異物Gが存在しないときに、レーザーシステム32により、乗降室2の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データである無人データD0を記憶する。無人データD0とは、レーザーシステム32の検出データである。無人データD0を記憶するのは、入出庫扉2cを開く前に毎回行うことが好ましい。しかしそれに限らず、予め記憶しておいた無人データD0を、毎回使い続けてもよい。もしくは、無人が確認できた度に無人データD0を更新していってもよい。
【0054】
「収納箱8が乗降領域5の内側に位置する時」とは、収納用パレット3Bが乗降室2の定位置2aに着床してから、入出庫扉2cが開き、利用者が荷物Hの出し入れを行い、乗降室2から退出し、その後入出庫扉2cを閉めるまでの時間帯を意味する。なお、正常には利用者が乗降室2から退出した時点で乗降室2が無人となる。
【0055】
収納箱8が乗降領域5の内側に位置する時には、ステップT2~T4を実施する。
収納箱使用時データ検出ステップT2では、収納箱8が乗降領域5の内側に位置する時に、レーザーシステム32による乗降室2の内側全域の座標データである全域データD1を検出する。乗降室2の内側全域は、乗降領域5を含む。
【0056】
異物検出ステップT3では、全域データD1が無人データD0と同じ場合に、「異物Gなし」と判断する。またステップT3で同じでない場合には、「異物Gあり」と判断する。
【0057】
収納箱使用時確認ステップT4では、異物検出ステップT3で「異物Gなし」と判断し、かつ、他の検出装置20(22),40,42によって、収納箱8が設置されたパレット3上のパレット上通路9に生体Fを検出しない場合に、乗降室内が無人であると判断する。「他の検出装置」とは、生体検出システム20やそのマットスイッチ40、パッシブセンサ42、等である。またステップT4で生体Fを検出する場合には、「生体Fあり」と判断する。
ステップT4で「無人」と判断することで、無人確認が完了し、その「無人」という判断結果を、機械式駐車装置本体の制御装置1cへ出力する。またデータ処理装置36は、「無人」と判断した場合、収納箱8が閉じているか否かを確認し、入出庫扉2cを閉じる。収納箱8が閉じているか否かを確認する方法は、例えば収納扉8aにドアの開閉を検知する無線センサを取り付け、その無線センサからの開閉信号を受信することでデータ処理装置36が収納扉8aの開閉を検知するものであってもよい。
【0058】
ステップT3で「異物Gあり」と判断した場合、及びステップT4で「生体Fあり」とした場合には、その旨を出力し、必要な動作(例えば装置の停止)を実施する。
【0059】
上述した本発明の実施形態によれば、生体検出システム20により、乗降領域5にミリ波7を照射し、パレット上通路9が生体検出システム20の検出範囲内にあるので、パレット上通路上の生体Fを検出することができる。
これにより、生体検出システム20により生体Fを検出せず、かつレーザーシステム32により異物Gを検出しない場合に、乗降室内が無人であると判断することで、人が介在せずに、乗降室2の無人(人Fや動物の不在)を高い精度で確認することができる。
【0060】
このようにして、第1実施形態の無人確認システム30は、車用の検出装置を収納箱用に転用し、乗降室2の定位置2aに収納箱8を載せたパレット3Bがある場合にも、乗降室内の無人を自動で確実に確認することができる。
したがって、空のパレット3を収納場所に転用した場合でも、収納箱8を載せたパレット3Bを安全に動かすことができる。
【0061】
また、空のパレット3を収納場所に転用した場合でもパレット3Bを乗降室2と格納棚14の間で動かすことができるので、車用パレット3Aを乗降室2の定位置2aに着床させることができる。これにより車用パレット3Aには車両4を駐車させることができるので、機械式駐車装置1に、車両4を駐車させる駐車場機能と、荷物Hを収納する収納機能の両方を持たせることができる。
【0062】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態の無人確認システム30の全体構成図である。
本実施形態の無人確認システム30は、収納箱8が収納用パレット3Bの幅方向中央に、その長さ方向の全体にわたって設けられており、パレット上通路9が収納箱8に沿って収納用パレット3Bの幅方向両端部に設けられている点で、第1実施形態とは異なる。このパレット上通路9は、収納用パレット3Bの幅方向両端部で、パレット3Bの長さ方向の全体にわたって延びている。
【0063】
レーザーシステム32は、乗降室2の内側全域にレーザー光を照射してその反射位置の座標データを検出する。
パレット上通路9が収納用パレット3Bの幅方向両端部にあり、収納用パレット上の収納箱8の位置が固定されているため、パレット上通路9は、レーザーシステム32の検出範囲の内側に位置する。本実施形態の無人確認システム30では、乗降領域内のパレット上通路上に、レーザーシステム32の死角エリアが生じない。そのため、本実施形態の無人確認システム30は、ミリ波システム22を使わなくても、レーザーシステム32だけでパレット上通路上の無人を確認することができる。
【0064】
しかし、これに限らず、この図に破線で示したように、収納箱8を使用するとき用のミリ波システム22として、前方からパレット3の幅方向両端部にミリ波7を照射する収納箱用前方生体検出レーダー23aを有していてもよい。
もしくは、パッシブセンサ42の検出範囲42aを、パレット上通路9の上にまで拡張することで、パレット上通路上の生体Fを検出してもよい。この場合、パッシブセンサ42が生体検出システム20として機能する。
また、第1実施形態と同様に、生体検出システム20として、パレット上通路9の全面にマットスイッチ40を敷いてもよい。
【0065】
その他の本実施形態の無人確認システム30の構成、方法、及び効果は、第1実施形態と同様である。
【0066】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態の無人確認システム30の全体構成図である。
本実施形態の無人確認システム30は、収納箱8が収納用パレット3Bの幅方向一端部に、その長さ方向の全体にわたって設けられており、パレット上通路9が収納用パレット3Bの幅方向他端部と幅方向中央に設けられている点で、第2実施形態とは異なる。なお、このパレット上通路9が収納用パレット3Bの長さ方向の全体にわたって延びている点は、第1,第2実施形態と同様である。
【0067】
この図に示すように、パレット上通路9が、パレット3Bの幅方向一端部で収納箱8が占める以外のパレット上の範囲の全面を占めるため、パレット上通路9の全範囲がレーザーシステム32の検出範囲の内側に位置する。従って、本実施形態の無人確認システム30も、第2実施形態と同様にミリ波システム22を使わずにレーザーシステム32だけでパレット上通路上の無人を確認することができる。
しかし、これに限らず、第2実施形態と同様に、本実施形態の無人確認システム30も、収納箱用前方生体検出レーダー23aを有していてもよい。もしくは、パッシブセンサ42の検出範囲42aをパレット上通路9にまで拡張することで、パッシブセンサ42とで生体Fの有無を検出してもよい。
その他の本実施形態の無人確認システム30の構成、方法、及び効果は、第1及び第2実施形態と同様である。
【0068】
(第4実施形態)
図9は、第4実施形態の無人確認システム30の全体構成図である。
本実施形態の無人確認システム30は、ミリ波システム22として、乗降領域5の内側に停車した車両4に対し、側方からミリ波7を照射する側方生体検出レーダー27を有する点で、第1実施形態~第3実施形態とは異なる。本実施形態のパレット上通路9は、側方生体検出レーダー27によるミリ波7の照射範囲7aであり、パレット3の幅方向全体にわたり設けられている。この図の側方生体検出レーダー27は、収納箱8の使用時専用に設けられたものである。しかし、車両4を駐車させるときに乗降領域5の側方から車両4の側面ガラスを通してミリ波7を照射する側方生体検出レーダー27を使用する場合には、その側方生体検出レーダー27を、収納箱8の使用時に兼用してもよい。
もしくは、検出範囲42aをパレット上通路9にまで拡張したパッシブセンサ42やパレット上通路9に敷いたマットスイッチ40で生体Fの有無を検出してもよい。
【0069】
本実施形態の無人確認システム30では、第1実施形態と同様に、乗降領域内のパレット上通路上の一部がレーザーシステム32による検出範囲の死角エリアになる。本実施形態のレーザーシステム32は、この死角エリアを検出範囲から除外する。この死角エリアの無人確認は、側方生体検出レーダー27で行う。
その他の本実施形態の無人確認システム30の構成、方法、及び効果は、第1~第3実施形態と同様である。
【0070】
(第5実施形態)
図10は、第5実施形態の無人確認システム30の全体構成図である。
本実施形態の収納箱8は、底面に図示しない車輪を有し、例えばハンドル8cを回すことにより又は電動により、収納用パレット3Bの上で水平移動するようになっている。この収納箱8は、パレット上に設けられたレール8dに沿って移動する移動棚や移動ラック、もしくは移動可能なロッカーであってもよく、横にスライドできる限りにおいて、その他の形態のものであってもよい。これらの移動棚や移動ラックには、収納扉8aが設けられていることが好ましい。
【0071】
この図には、収納箱8とパレット上通路9がパレット3Bの幅方向に延び、パレット3Bの長さ方向に移動する場合を例示している。しかし、これに限らず、本実施形態の無人確認システム30は、第1~第3実施形態のように収納箱8とパレット上通路9がパレット3Bの長さ方向に延び、パレット3Bの幅方向に移動するものであってもよい。言い換えれば、収納箱8が移動することによって、空けられたパレット上の空間が、パレット上通路9となる。利用者が収納箱8を移動することにより、任意の位置にパレット上通路9を設けることができる。
本実施形態の生体検出システム20は、その検出範囲20aがパレット上通路9が位置し得る場所を含めるように設置されている。
【0072】
この構成により、本実施形態の無人確認システム30は、利用者が任意の位置に収納箱8を移動してパレット上通路9の位置を変えることができ、パレット上通路以外のパレット上の空間を収納スペースとして使用することができるので、収納箱8を設置する空間を第1~第4実施形態より多く確保することができる。
本実施形態で使用する生体検出システム20は、側方生体検出レーダー27が好ましいが、検出範囲42aをパレット上通路9にまで拡張したパッシブセンサ42であってもよい。
【0073】
また、収納箱8がパレット上を移動するので、収納が完了したときの収納箱8の配置は、毎回異なる。これにより、パレット上通路9の位置が毎回異なり、レーザーシステム32の検出範囲の死角エリアの位置が毎回異なる。そのため、本実施形態の無人確認システム30は、レーザーシステム32の検出範囲から乗降領域5を除外し、乗降領域5は生体検出システム20で無人確認するのが好ましい。もしくは、無人確認システム30は、収納箱8を動かしてもパレット上通路9が死角にならない位置(例えば側方生体検出レーダー27が設置されている位置)にも、レーザーシステム32を備えていてもよい。
その他の本実施形態の無人確認システム30の構成、方法、及び効果は、第1~第4実施形態と同様である。
【0074】
(第6実施形態)
図11は、第6実施形態の収納箱8と収納用パレット3Bの斜視図である。
本実施形態の無人確認システム30は、収納箱8として、その底面にキャスター8eを有するかご台車、物流で用いるロールケージ、等を想定している。このキャスター8eにより、収納箱8は、パレット3Bに乗降可能に設けられている。収納用パレット3Bは、その中央部に、これらの収納箱8を1つ又は複数積載することができる。利用者(例えば物流業者)は、収納箱8に載せた荷物Hを、収納箱8ごと機械式駐車装置1に出し入れすることができる。
【0075】
例えば利用者が運送業者の場合、機械式駐車装置1から収納箱8ごと荷物Hを取り出し、収納箱8ごとトラックに積み込んでもよい。また、この図に示すように、複数の収納箱8が連結されており、それらの収納箱8をまとめて一遍に乗降室2から出し入れしてもよい。
【0076】
例えばこの図のように、収納用パレット3Bが折曲げパレットであることが好ましい。この場合、折曲げパレットの幅方向中央の凸部をキャスター8eで跨ぐように収納箱8を配置させることで、パレット3Bに対する幅方向の収納箱8の位置を容易に固定することができる。
【0077】
図12は、第6実施形態の無人確認システム30の全体構成図である。
この図の例では、本実施形態の収納箱8は、収納用パレット3Bの中央に位置する。本実施形態のパレット上通路9は、パレット3Bの上面における収納箱8が置かれていないスペースである。この図では、パレット上通路9は、収納箱8の周りのスペースであり、パレット3Bの長さ方向両端部及び幅方向両端部において、その長さ方向及び幅方向の全体にわたって設けられている。
【0078】
本実施形態の収納箱8は、パレット上を移動可能であり、毎回パレット3Bに搭載されるかご台車8の台数や配置、又はかご台車同士の隙間の位置が異なる。かご台車8は、収納用パレット3Bが乗降室2に呼び出される度に、増えたり、減ったり、配置が変わったりする。カゴ台車8が、間隔を大きく開けて配置すれば、かご台車同士の隙間の中にレーザーシステム32の検出範囲の死角エリアが生じ得る。
従って、本実施形態の無人確認システム30は、側方生体検出レーダー27を複数有していることが好ましい。なお、折曲げパレットの幅方向中央の凸部を、同じ形状のカゴ台車8がキャスター8eで跨いでいるのであれば、パレット3Bの幅方向両端部のパレット上通路9はレーザーシステム32で検出してもよい。パレット3Bの幅方向両端部のパレット上通路9の位置は、変わらないからである。この場合は、パレット3Bの長さ方向両端部のパレット上通路9だけを生体検出システム20で無人確認する。
【0079】
また、例えばこの図のように4つのかご台車(収納箱8)を載せられるパレット3Bに、それより少ない数(例えば3つ)のかご台車8だけを載せて、格納棚14に格納してもよい。その場合、かご台車とかご台車の間に人F(子供)が入り込めるほどの大きさの隙間が生じないように連結することが好ましい。この場合、隣接するカゴ台車8の間に人が隠れることができる隙間が空いているかどうかをレーザーシステム32で検知し、空いていた場合には、データ処理装置36が直ちにカゴ台車8の収納位置が誤っていると利用者へ通知する。
その他の本実施形態の無人確認システム30の構成、方法、及び効果は、第1~第5実施形態と同様である。
【0080】
(第7実施形態)
図13は、第7実施形態の無人確認システム30の全体構成図である。
本実施形態の無人確認システム30は、パレット上に設けられた収納箱8が、人Fが中に入れる大きさであり、生体検出システム20が収納箱8の中に設けられている点で、他の実施形態とは異なる。この実施形態の収納箱8は、例えば、この図のように、収納用パレット3Bの全面を覆う大きさのコンテナ8Bであってもよいが、人F(子供F)を含めた生体Fが入れる大きさである限りで、これに限定されない。例えば、本実施形態の収納箱8は、人F(子供F)が入れる大きさであって、第1~第6実施形態のように配置された収納箱8であってもよい。
【0081】
この図の例では、コンテナ8Bの内部全域の生体Fを検出できるように、複数の生体検出システム20が設置されている。本実施形態の収納箱8が複数あるときは、収納箱毎に生体検出システム20が設置される。本実施形態のパレット上通路9は、この収納箱8の中に位置する。具体的には、収納箱8の床面であって、荷物Hに覆われていない範囲が、本実施形態のパレット上通路9となる。
【0082】
これによりコンテナ8Bの中に生体Fが居るか否かを確実に検出することができるので、コンテナ8Bの中に生体Fが置き去りになったまま機械式駐車装置1が動くのを防ぐことができる。
【0083】
例えば収納用パレット3Bは、電気自動車用の給電装置が搭載されたパレット3Cを転用したものであってもよい。この電気自動車用のパレット3Cは、定位置2aで電源供給部1aから給電装置へ電源が供給されるようになっているものであってもよい。これにより、乗降室2で収納箱8の内部に設置される生体検出システム20を使用するときに、生体検出システム20の駆動電源を確保することができる。
【0084】
もしくは、収納箱8の内部に設置される生体検出システム20が、例えばバッテリーを備えたものであり、電気自動車用の格納棚14に設けられた電源供給部1aでバッテリーが充電され、その電力で生体検出システム20が駆動するものであってもよい。生体検出システム20は、ミリ波システム22であることが好ましい。
【0085】
また、収納箱8の内部に設ける検出装置は、生体検出システム20に限らない。例えば、マットスイッチ40やパッシブセンサ42を生体検出システム20の代わりに、もしくは生体検出システム20と併用して設置してもよい。
【0086】
もしくは、生体検出システム20は、収納扉付近の収納箱8の内壁や天井に設けた入退室カウントセンサ43であってもよい。パレット3Aに車両4を駐車させる際には、人Fが車両4に乗って乗降室2に入るので、入退室カウントセンサ43で乗降室内の人数を把握することは出来ないが、コンテナ8Bに荷物Hを収納する場合には、人Fが歩いてコンテナ8Bの中に入るので、入退室カウントセンサ43で人数を把握することが可能であるからである。
入退室カウントセンサ43は、測域センサにより指定されたエリアの入退場数をカウントし、その人数を出力する検出装置である。なお、入退室カウントセンサ43を設置するときは、他の検出装置22,40,42と併用することが好ましい。
【0087】
本実施形態の無人確認システム30は、この構成により、収納箱8の内部に荷物Hが無作為に収納されていたとしても、荷物Hの陰にいる人Fをも検知することができる。
【0088】
コンテナ8Bの外側の生体Fの有無は、乗降室2に設置されたレーザーシステム32やパッシブセンサ42で検出する。なお、他の実施形態の収納箱8が、人F(子供)が入れる大きさである場合、無人確認システム30は、それぞれの実施形態の特徴と、第7実施形態の特徴の両方を兼ね備えることが好ましい。
その他の本実施形態の無人確認システム30の構成、方法、及び効果は、第1実施形態~第6実施形態と同様である。
【0089】
上述した本発明の実施形態によれば、空パレット3Bを収納場所として転用する機械式駐車装置1において、人Fがアクセス可能なパレット上の範囲であるパレット上通路9を、レーザーシステム32又は生体検出システム20の検出範囲内に有するので、収納用パレット上の生体Fの有無を自動的に確認することができる。したがって、機械式駐車装置1が空パレット3Bを収納場所として転用する場合であっても、乗降室内が無人であることを自動的に確認することができる。
【0090】
なお本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、一つの機械式駐車装置1が、第1~第7実施形態の収納用パレット3Bを、混載して備えていてもよい。
【0091】
また、上述した例では、機械式駐車装置1は、車用パレット3Aと収納用パレット3Bを混載して備えているが、車用パレット3Aを有さない収納用パレット専用の装置であってもよい。この場合、生体検出システム20は、要求機能を満たしている限りでミリ波システム22に限らない。生体検出システム20の要求機能は以下の3つである。
(1)乗降室2の奥側正面から入出庫口2bまでの長さ、幅、及び高さの空間を検出範囲とすること。
(2)一人歩きできる子供(例えば1歳半)の大きさの異物G(人Fでなくともよい)の有無を検知できること。
(3)動いている異物Gを検知できること。
【0092】
このような要求機能を満たす限りで、生体検出システム20は、例えば、マットスイッチ40やパッシブセンサ42であってもよい。
マットスイッチ40は、上に異物Gが乗ったときに荷重を検知し、接触検知信号をデータ処理装置36へ出力する検出装置である。
パッシブセンサ42とは、自らは赤外線を発射せず、生体Fの表面から放出する赤外線や熱を受信して、生体Fを検出する装置である。
【0093】
もしくは、生体検出システム20は、乗降室2の室内を監視カメラで撮影し、そのカメラ画像をAI(人工知能)で解析することによって人Fを検出する検出装置であってもよい。
さらに生体検出システム20は、Wi-Fiの電波反射データを活用して空間内の測位やセンシングを行うことで人Fを検出する検出装置であってもよい。
【符号の説明】
【0094】
D0 無人データ、D1 全域データ、
F 生体(人,子供)、G 異物、H 荷物、
1 機械式駐車装置、1a 電源供給部、1b PLC通信部、
1c 機械式駐車装置本体の制御装置、
2 乗降室、2a 定位置、2b 入出庫口、2c 入出庫扉、
3,3A,3B,3C パレット、
3A 車用パレット、3B 収納用パレット、
3C 電気自動車用の給電装置が搭載されたパレット、
4 車両、5 乗降領域、6 反射波データ、
7 ミリ波、7a ミリ波システムの検出範囲(ミリ波の照射範囲)、
8 収納箱、8a 収納扉、8B コンテナ、
8c ハンドル、8d レール、8e キャスター、
9 パレット上通路、
13 昇降路、14 格納棚、15 ケージ、
20 生体検出システム、20a 生体検出システムの検出範囲、
22 ミリ波システム、22a 発振器、
22b パラボラアンテナ、
23 前方生体検出レーダー、23a 収納箱用前方生体検出レーダー、
24 中間周波数増幅器24、26 判別装置、
27 側方生体検出レーダー、
30 無人確認システム、
32 レーザーシステム、32A,32B 3次元レーザーレーダー、
33 検出限界位置、
33a 3次元レーザーレーダー32Aの検出限界位置、
33b 3次元レーザーレーダー32Bの検出限界位置、
36 データ処理装置、
40 マットスイッチ、42 パッシブセンサ、
42a パッシブセンサの検出範囲、
43 入退室カウントセンサ、
T1 無人データ記憶ステップ、
T2 収納箱使用時データ検出ステップ、
T3 異物検出ステップ、T4 収納箱使用時確認ステップ