(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】電源回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20240705BHJP
【FI】
H02M1/00 H
(21)【出願番号】P 2020190256
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 孝宣
(72)【発明者】
【氏名】中川 幸彦
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-080456(JP,A)
【文献】特開2013-192397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源ラインと第2電源ラインとの間に接続されている第1コンデンサ、
第2コンデンサ、
前記第2コンデンサに対して直列に接続されているスイッチ、及び
前記スイッチの開閉を制御する制御部
を備え、
前記第2コンデンサ及び前記スイッチは、前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間に前記第1コンデンサに対して並列に接続されており、
前記制御部は、前記第1電源ライン及び前記第2電源ラインに接続されている電源からの電力の供給が開始されてから第1時間が経過するまでは、前記スイッチを開いておき、前記第1時間が経過した後で、前記スイッチを閉じ
、
前記第1時間は、前記第1コンデンサに流れる突入電流が第1電流以下となるまでの時間である
電源回路。
【請求項2】
第1電源ラインと第2電源ラインとの間に接続されている第1コンデンサ、
第2コンデンサ、
前記第2コンデンサに対して直列に接続されているスイッチ、及び
前記スイッチの開閉を制御する制御部
を備え、
前記第2コンデンサ及び前記スイッチは、前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間に前記第1コンデンサに対して並列に接続されており、
前記制御部は、前記第1電源ライン及び前記第2電源ラインに接続されている電源からの電力の供給が開始されてから第1時間が経過するまでは、前記スイッチを開いておき、前記第1時間が経過した後で、前記スイッチを閉じ、
前記スイッチは、ゲートを有するトランジスタであり、
前記ゲートに入力される電圧は、時間が経過するとともに上昇し、
前記スイッチは、前記ゲートに入力する電圧が第1電圧以上となったときに、閉じられ、
前記第1時間は、
前記第1コンデンサに流れる突入電流が第1電流以下となり、かつ前記ゲートに入力
される電圧が
前記第1電圧以上となるまでの時間である
、
電源回路。
【請求項3】
前記第1コンデンサの容量は、前記第2コンデンサの容量よりも小さい
請求項1
または請求項
2に記載の電源回路。
【請求項4】
前記電源は、直流電源であり、前記直流電源の高電位側の端子は、前記第1電源ラインに逆接続防止用ダイオードを介して接続され、前記直流電源の低電位側の端子は、前記第2電源ラインに接続される
請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項5】
前記電源は、交流電源であり、前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間にダイオードブリッジを介して接続される
請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1電源ラインと前記第2電源ラインとの間の分圧比によって定まる電圧に基づいて前記スイッチの開閉を制御する信号を生成する
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項7】
前記制御部は、リセット回路からの信号に基づいて前記スイッチの開閉を制御する
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の電源回路。
【請求項8】
前記制御部は、マイコンからの信号に基づいて前記スイッチの開閉を制御する
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の突入電流防止回路は、メインスイッチ、制限抵抗器、接点、及び平滑回路を備えている。平滑回路は、コンデンサ、インダクタンス等を有している。平滑回路の出力は、DC/DCコンバータに接続されている。接点は、制限抵抗器と並列に接続されている。従来の突入電流防止回路には、メインスイッチを介して電源から電力が供給される。
【0003】
初期状態において、接点は開放されている。従って、メインスイッチがオフ状態からオン状態へと変更されると、平滑回路には、制限抵抗器を介して突入電流が流れ、突入電流が制限抵抗器によって制限される。一定の遅延時間の後、接点が閉じられると、制限抵抗器の両端が短絡される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の突入電流防止回路では、制限抵抗器に比較的大きな突入電流が流れるため、制限抵抗器には定格電力の大きい抵抗器が必要とされる。抵抗器のサイズは、抵抗器の定格電力が大きいほど大きくなる。従って、従来の突入電流防止回路では、比較的大きなサイズの制限抵抗器が必要となり、回路が大型化するという問題があった。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するために為されたものであり、回路の大型化を抑制しながら突入電流を低減させることができる電源回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る電源回路は、第1電源ラインと第2電源ラインとの間に接続されている第1コンデンサ、第2コンデンサ、第2コンデンサに対して直列に接続されているスイッチ、及びスイッチの開閉を制御する制御部を備え、第2コンデンサ及びスイッチは、第1電源ラインと第2電源ラインとの間に第1コンデンサに対して並列に接続されており、制御部は、第1電源ライン及び第2電源ラインに接続されている電源からの電力の供給が開始されてから第1時間が経過するまでは、スイッチを開いておき、第1時間が経過した後で、スイッチを閉じる。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る電源回路によれば、回路の大型化を抑制しながら突入電流を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る電源回路を示す回路図である。
【
図2】
図1の電源回路の動作を示すタイミングチャートである。
【
図3】実施の形態2に係る電源回路を示す回路図である。
【
図4】
図3の電源回路の動作を示すタイミングチャートである。
【
図5】実施の形態3に係る電源回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る電源回路を示す回路図である。
図1に示したように、電源回路10は、第1電源ライン11、第2電源ライン12、第1コンデンサ13、第2コンデンサ14、第1スイッチ15、及び制御部16を備えている。
【0011】
第1電源ライン11は、高電位側の電源ラインである。第2電源ライン12は、低電位側の電源ラインである。第2電源ライン12は、GNDラインである。
【0012】
第1コンデンサ13は、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間に接続されている。第1コンデンサ13の容量はC1である。第2コンデンサ14及び第1スイッチ15は、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間に第1コンデンサ13に対して並列に接続されている。また、第1スイッチ15は、第2コンデンサ14に対して直列に接続されている。第2コンデンサ14の容量はC2である。第1コンデンサ13の容量C1は、第2コンデンサ14の容量C2よりも小さい。
【0013】
第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14は、平滑コンデンサである。第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14は、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間に発生するリップルを低減させる。大容量のコンデンサほど、大きなリップルを低減させることができる。従って、第2コンデンサ14は、第1コンデンサ13よりも大きなリップルを低減させることができる。
【0014】
制御部16は、第1スイッチ15の開閉を制御する。より具体的に述べると、制御部16は、第1スイッチ15を開閉するための制御信号を発生し、制御信号を第1スイッチ15に入力する。第1スイッチ15は、制御信号の電圧が第1電圧Vth未満であるときには開かれており、制御信号の電圧が第1電圧Vth以上であるときには閉じられている。
【0015】
従って、電源回路10全体の平滑コンデンサの容量は、制御信号の電圧が第1電圧Vth未満であるときはC1であり、制御信号の電圧が第1電圧Vth以上であるときは(C1+C2)である。
【0016】
第1電源ライン11の一端には、直流電源22の正極側端子が、メインスイッチ23及び逆接続防止用ダイオード21を介して接続されている。第1電源ライン11の他端には、負荷90の一端が接続されている。負荷90の他端は、GNDに接地されている。負荷90は、FA(Factory Automation)機器、家電機器等である。第2電源ライン12の一端には、直流電源22の負極側端子が接続されている。第2電源ライン12の他端は、GNDに接地されている。直流電源22の電源電圧はVP である。
【0017】
図2は、
図1の電源回路10の動作を示すタイミングチャートである。
図2には、入力電流I
IN、入力電圧V
IN、制御電圧V
SW、第1コンデンサ電流I
C1、第2コンデンサ電流I
C2、及び負荷電流I
LOADが示されている。
【0018】
入力電流IINは、直流電源22に流れる電流である。入力電圧VINは、直流電源22側における第1電源ライン11と第2電源ライン12との間の電位差である。制御電圧VSWは、第1スイッチ15への制御信号の入力電圧である。第1コンデンサ電流IC1は、第1コンデンサ13に流れる電流である。第2コンデンサ電流IC2は、第2コンデンサ14に流れる電流である。負荷電流ILOADは、負荷90に流れる電流である。
【0019】
時刻t10は、メインスイッチ23が閉じられ、電源回路10へ直流電源22からの電力の供給が開始される時刻である。従って、入力電圧VINは、時刻t10において0Vから上昇し、その後、電源電圧VP に達する。
【0020】
また、時刻t10において、第1コンデンサ13には、第1コンデンサ13を充電するために第1突入電流Irush1 が流れ始める。第1突入電流Irush1 は、第1コンデンサ電流IC1に現れるピークである。第1コンデンサ13の容量C1は、第2コンデンサ14の容量C2よりも小さい値に設定されているため、第1コンデンサ13への充電は、比較的早期に完了する。従って、第1突入電流Irush1 発生期間は、比較的短い。
【0021】
時刻t10において、制御部16は、第1スイッチ15を開いている。従って、時刻t10において、第2コンデンサ14には電流は流れない。つまり、第2コンデンサ電流IC2はゼロである。
【0022】
また、時刻t10において、負荷90に電力が供給され始めると、負荷90の状態は、小負荷状態となる。小負荷状態とは、負荷90としてのFA機器又は家電機器がスタンバイ状態にあるような状態である。例えば、負荷90がFA機器である場合、リセット回路及び誤出力を停止させるための制御回路等が動作している状態が小負荷状態に相当する。また、負荷90が家電機器である場合、リモコン操作を受け付けるためのスタンバイ回路が動作している状態が小負荷状態に相当する。
【0023】
小負荷状態では、負荷電流ILOADは比較的小さく、リップルも比較的小さい。第1コンデンサ13の容量C1としては、小負荷状態におけるリップルを十分に低減可能な値が選定されている。
【0024】
時刻t11は、制御電圧VSWが第1電圧Vth以上となる時刻である。従って、時刻t11において、制御部16は、第1スイッチ15を閉じる。また、時刻t11は、時刻t10から第1時間が経過した時刻よりも後の時刻である。第1時間は、時刻t10から時刻t11までの期間よりも短い期間である。
【0025】
例えば、第1時間は、第1突入電流Irush1 が第1電流Ith以下となるまでの時間と定義されている。また、実施の形態1では、第1電流Ithはゼロと定義されている。第1時間は、第1コンデンサ13の容量C1に基づいて制御部16に予め設定されている。
【0026】
時刻t11において、第2コンデンサ14を充電するために、第2突入電流Irush2 が第2コンデンサ14に流れ始める。第2突入電流Irush2 は、第2コンデンサ電流IC2に現れるピークである。
【0027】
時刻t12は、第2突入電流Irush2 が実質的にゼロとなる時刻である。言い換えると、時刻t12は、第2コンデンサ14への充電が完了する時刻である。
【0028】
時刻t13は、負荷90の状態が、小負荷状態から全負荷状態へ遷移する時刻である。全負荷状態とは、例えば、負荷90としてのFA機器又は家電機器が、定格出力で動作しているときの状態である。全負荷状態では、負荷電流ILOADは比較的大きく、リップルも比較的大きい。第2コンデンサ14の容量C2としては、全負荷状態におけるリップルを十分に低減可能な値が選定されている。
【0029】
このように、制御部16は、第1突入電流Irush1 がゼロとなるまでの期間、第2突入電流Irush2 が発生している期間(t12-t11)、及び負荷90の状態が小負荷状態から全負荷状態へ遷移する時刻t13を考慮して時刻t11を決定する。より具体的には、時刻t11は、第1突入電流Irush1 がゼロとなる時刻よりも後の時刻となるように、且つ時刻t11から時刻t13までの期間が、第2突入電流Irush2 が発生している期間よりも長くなるように、予め設定されている。
【0030】
入力電流I
INは、第1コンデンサ電流I
C1、第2コンデンサ電流I
C2、及び負荷電流I
LOADの和に相当する。なお、
図2において、入力電流I
INの極性と、第1コンデンサ電流I
C1、第2コンデンサ電流I
C2、及び負荷電流I
LOADの極性とは、互いに逆になっている。
【0031】
このように、実施の形態1の電源回路10によれば、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14は、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間において並列に接続されている。さらに、第1スイッチ15が第2コンデンサ14に対して直列に接続されている。
【0032】
そして、電源回路10の制御部16は、第1突入電流Irush1 がゼロとなってから負荷90の状態が小負荷状態から全負荷状態へ遷移するまでの間に第1スイッチ15を閉じ、第2コンデンサ14に第2突入電流Irush2 を流すようになっている。
【0033】
これにより、第1突入電流Irush1 が第1コンデンサ13に流れている期間と、第2突入電流Irush2 が第2コンデンサ14に流れている期間とが互いに異なる期間に分けられる。そのため、単位時間当たりの突入電流を低減させることができる。つまり、電源回路10に過大な電流が流れることを抑制することができる。
【0034】
そのため、電源回路10においては、突入電流が流れる経路に電流制限用の抵抗器を設ける必要がない。電流制限用の抵抗器としては、定格電力の大きい抵抗器が必要である。そのため、電流制限用の抵抗器のサイズは、他の回路部品と比べて大きい。従って、電流制限用の抵抗器が不要な電源回路10によれば、回路の大型化を抑制しながら突入電流を低減させることができる。
【0035】
また、電流制限用の抵抗器が不要な電源回路10によれば、電流制限用の抵抗器による電圧降下が生じるおそれがない。
【0036】
また、第1時間は、第1突入電流Irush1 が第1電流Ith以下となるまでの時間である。従って、制御部16は、第1突入電流Irush1 が第1電流Ith以下となった後で、第1スイッチ15を閉じる。これにより、第1突入電流Irush1 と第2突入電流Irush2 とが互いに分離される。そのため、電源回路10に流れる突入電流を低減させることができる。
【0037】
また、第1電流Ithがゼロに設定されている場合、第1突入電流Irush1 と第2突入電流Irush2 とは、より明確に分離され、互いに重なり合わなくなる。従って、電源回路10に流れる突入電流をより低減させることができる。
【0038】
また、平滑コンデンサには、負荷電流ILOADが大きいほど大きい容量が要求される。その一方、コンデンサの容量が大きいほど突入電流が大きくなる。しかし、上で述べたように、小負荷状態では、負荷電流ILOADが比較的小さいため、第1コンデンサ13の容量C1を第2コンデンサ14の容量C2よりも小さくすることができる。このため、電源回路10では、第1突入電流Irush1 を小さくすることができる。
【0039】
また、直流電源22の高電位側の端子は、第1電源ライン11に逆接続防止用ダイオード21を介して接続されている。また、直流電源22の低電位側の端子は、第2電源ライン12に接続されている。そのため、電源回路10は、直流電源22からの電力を、より確実に負荷90へ供給することができる。
【0040】
なお、実施の形態1において、制御部16には、第1コンデンサ13の容量C1に基づいて予め第1時間が設定されていた。しかし、電源回路10が第1コンデンサ電流IC1を検出するための電流検出回路をさらに備え、制御部16は、検出された第1突入電流Irush1 が第1電流以下になる時刻以降に第1スイッチ15を閉じてもよい。
【0041】
また、実施の形態1において、第1時間は、時刻t10から時刻t11までの期間よりも短い時間であったが、時刻t10から時刻t11までの期間と等しくてもよい。
【0042】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る電源回路を示す回路図である。
図3に示したように、電源回路10Aは、第1電源ライン11、第2電源ライン12、第1コンデンサ13、第2コンデンサ14、第1スイッチ15、及び制御部16を備えている。第1スイッチ15は、nチャネル型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。
【0043】
さらに、電源回路10Aは、プルダウン抵抗24、第1分割抵抗25、及び第2分割抵抗26を備えている。第1分割抵抗25及び第2分割抵抗26の抵抗値は、それぞれR1及びR2である。プルダウン抵抗24の抵抗値は、R8である。
【0044】
制御部16は、第1入力抵抗161、第2入力抵抗162、第1トランジスタ163、第1直列抵抗164、第2トランジスタ165、第2直列抵抗166、調整用抵抗167、及び調整用コンデンサ168を有している。
【0045】
第1入力抵抗161、第2入力抵抗162、第1直列抵抗164、第2直列抵抗166、及び調整用抵抗167の抵抗値は、それぞれ、R3、R4、R5、R6、及びR7である。第1分割抵抗25と第2分割抵抗26との間の電位Vdは、抵抗値R1、R2、R3、及びR4によって決定される。言い換えると、電位Vdは、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間の分圧比によって定まる。分圧比は、電位Vdが第2電圧以上の電位となるように予め設定されている。
【0046】
調整用コンデンサ168の容量は、C3である。第1トランジスタ163は、npn型バイポーラトランジスタである。第2トランジスタ165は、pnp型バイポーラトランジスタである。
【0047】
第1トランジスタ163は、電位Vdが第2電圧未満のときはオフしており、電位Vdが第2電圧以上のときはオンしている。第2トランジスタ165は、第1トランジスタ163がオフしているときにはオフしており、第1トランジスタ163がオンしているときにはオンしている。
【0048】
調整用抵抗167及び調整用コンデンサ168は、制御電圧VSWの時定数を決定する。調整用抵抗167及び調整用コンデンサ168は、制御部16の時定数回路である。時定数回路の時定数は、抵抗値R7と容量C3とによって定まる。
【0049】
実施の形態2における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0050】
図4は、
図3の電源回路10Aの動作を示すタイミングチャートである。
図4に示したように、時刻t20において、メインスイッチ23が閉じられ、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間に電源電圧V
P が印加される。時刻t20から第1コンデンサ13に第1突入電流I
rush1 が流れ始める。
【0051】
また、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間に電源電圧VP が印加されると、第1分割抵抗25と第2分割抵抗26との間の電位Vdは、第2電圧以上となる。これにより、第1トランジスタ163はオンし、さらに、第2トランジスタ165もオンする。
【0052】
第1スイッチ15の制御電圧VSWは、制御部16の時定数回路の時定数に従って0Vから上昇を開始し、時刻t21において第1電圧Vthに到達する。制御電圧VSWが第1電圧Vthに到達すると、第1スイッチ15が閉じられる。このように、実施の形態2において、第1時間は、第1スイッチ15のゲートに入力する電圧が第1電圧Vth以上となるまでの時間である。
【0053】
そして、時刻t21において、第2コンデンサ14に第2突入電流Irush2 が流れ始める。時刻t22において、第2突入電流Irush2 がゼロとなる。また、時刻t23において、負荷90の状態が、小負荷状態から全負荷状態へ遷移する。
【0054】
このように、実施の形態2の電源回路10Aによれば、制御部16をいくつかのトランジスタ、抵抗、及びコンデンサを用いて簡易に実現することができるため、回路の大型化を抑制しながら突入電流を低減させることができる。
【0055】
また、上述したように、第1スイッチ15は、nチャネル型MOSFETであり、第1時間は、nチャネル型MOSFETへの制御電圧VSWが第1電圧Vth以上となるまでの時間である。これによれば、電源回路10Aを容易に実現することができる。
【0056】
また、制御部16は、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間の分圧比によって定まる電圧に基づいて第1スイッチ15の開閉を制御する信号を生成する。これによれば、電源回路10Aを簡素化することができる。
【0057】
なお、実施の形態1及び2において、第1電源ライン11の他端は、DC/DCコンバータを介して負荷90に接続されてもよい。
【0058】
また、実施の形態1及び2において、時刻t11及び時刻t21は、それぞれ第1突入電流I
rush1 がゼロとなる時刻以降の時刻であった。しかし、時刻t11及び時刻t21は、それぞれ第1突入電流I
rush1 がそのピーク値からある程度低下した時刻以降の時刻であってもよい。言い換えると、
図2及び
図4において、第1突入電流I
rush1 の裾部分と第2突入電流I
rush2 の裾部分とが時間軸方向に重なり合ってもよい。つまり、第1電流I
thは、ゼロではなく、ゼロよりも大きい値であってもよい。要は、第1突入電流I
rush1 のピークと第2突入電流I
rush2 のピークとを互いに分離できればよい。
【0059】
実施の形態3.
図5は、実施の形態3に係る電源回路を示す回路図である。
図5に示したように、電源回路10Bは、第1電源ライン11、第2電源ライン12、第1コンデンサ13、第2コンデンサ14、第1スイッチ15、制御部16、スイッチング制御部34、及び第2スイッチ35を備えている。電源回路10Bは、さらに、一次側ダイオード36、一次側コンデンサ37、一次側抵抗38、トランス39、二次側ダイオード41、二次側コンデンサ42、フィードバック回路43、第1絶縁回路44、及び第2絶縁回路45を備えている。
【0060】
また、電源回路10Bにおいて、交流電源32が、第1電源ライン11と第2電源ライン12との間にメインスイッチ33及びダイオードブリッジ31を介して接続されている。
【0061】
電源回路10Bでは、制御部16へ入力される制御信号を他の回路、例えば、二次側に存在する図示しないマイコンから供給することを想定している。マイコンは、例えば、負荷90を含むFA機器のマイコンである。
【0062】
制御部16は、第2絶縁回路45を介してマイコンからの信号を入力する。制御部16は、マイコンからの信号に基づいて第1スイッチ15の開閉を制御する。制御部16の構成は、実施の形態2における制御部16の構成と同じである。ただし、調整用抵抗167の抵抗値R7及び調整用コンデンサ168の容量C3は、実施の形態2における値とは異なっている。
【0063】
フィードバック回路43は、二次側ダイオード41の出力電圧を入力する。フィードバック回路43は、二次側ダイオード41の出力電圧に応じたデータを、第1絶縁回路44を介してスイッチング制御部34に送信する。スイッチング制御部34は、二次側ダイオード41の出力電圧に応じたデータに基づいて、スイッチング周波数、変調のパルス幅等を変更する。
【0064】
実施の形態3における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0065】
スイッチング制御部34は、フィードバック回路43から送られる信号に基づいて第2スイッチ35の開閉を制御する。第2スイッチ35には、例えば、nチャネル型MOSFETが用いられる。
【0066】
トランス39は、一次側巻線の極性と二次側巻線の極性とが互いに逆向きのトランスである。二次側ダイオード41は、二次側に流れる電流を整流するための整流ダイオードである。二次側コンデンサ42は、二次側の電圧を平滑にするための平滑コンデンサである。二次側コンデンサ42の容量は、C5である。
【0067】
第2スイッチ35、トランス39、二次側ダイオード41、及び二次側コンデンサ42は、フライバック型DC/DCコンバータを構成している。第2スイッチ35が閉じられると、トランス39の一次側巻線に電流が流れることにより、トランス39にエネルギーが蓄えられる。第2スイッチ35が開くと、トランス39に蓄えられたエネルギーが二次側巻線から二次側ダイオード41を通じて出力される。
【0068】
また、一次側ダイオード36、一次側コンデンサ37、及び一次側抵抗38は、スナバ回路を構成している。スナバ回路は、第2スイッチ35のスイッチング時に第2スイッチ35に発生するサージ電圧を抑制する。一次側コンデンサ37の容量は、C4である。一次側抵抗38の抵抗値は、R9である。
【0069】
一般的に、電源回路の入力コンデンサCINのリップル電圧は、以下の(1)式によって求められる。入力コンデンサCINは、電源回路10Bの平滑コンデンサに相当する。(1)式から理解されるように、リップル電圧ΔVINは、出力電流IOUT が大きいほど大きくなる。出力電流IOUT は、電源回路10Bの負荷電流ILOADに相当する。fOSC は第2スイッチ35のスイッチング周波数である。
【0070】
従って、出力電流IOUT が大きいほど、入力コンデンサCINの容量を大きくする必要がある。つまり、出力電流IOUT が大きいほど入力コンデンサCINの突入電流は大きくなる。
【0071】
【0072】
また、実施の形態3の電源回路10Bでは、交流電源32が第1電源ライン11と第2電源ライン12との間にダイオードブリッジ31を介して接続されている。このように、電源回路10Bは、交流電源32に適用可能である。
【0073】
また、実施の形態3の電源回路10Bは、直流電源にも適用可能であり、実施の形態1の電源回路10及び実施の形態2の電源回路10Aは、いずれも交流電源に適用可能である。
【0074】
また、電源回路10Bによれば、マイコンからの信号に基づいて第1スイッチ15の開閉が制御される。マイコンは、FA機器等のマイコンを兼ねているため、回路の大型化を抑制しながら突入電流を低減させることができる。
【0075】
なお、実施の形態3において、第1コンデンサ13及び第2コンデンサ14は、一次側に設けられていたが、二次側に設けられてもよい。言い換えると、二次側コンデンサ42を2つの並列なコンデンサに分割し、分割されたコンデンサの1つに対して直列にスイッチが接続されてもよい。このスイッチは、第1スイッチ15に相当し、制御部16によって開閉が制御される。
【0076】
また、実施の形態3において、制御部16は、負荷90側の図示しないリセット回路からの信号に基づいて第1スイッチ15の開閉を制御してもよい。リセット回路は、電源起動時にマイコンを初期状態にリセットするための回路である。これによれば、リセット回路からの信号に基づいて第1スイッチ15の開閉が制御されるため、起動時及び瞬時停電からの回復時に確実に突入電流を低減させることができる。
【0077】
また、第1スイッチ15及び第2スイッチ35は、nチャネル型MOSFETに限定されない。第1スイッチ15及び第2スイッチ35は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。第1スイッチ15及び第2スイッチ35は、SiC(Silicon Carbide)、GaN(Gallium Nitride)等を材料とする半導体スイッチであってもよい。
【0078】
また、実施の形態3において、マイコンは、家電機器のマイコンであってもよい。
【0079】
実施の形態1から3までにおいて、第1コンデンサ13の容量C1は、第2コンデンサ14の容量C2よりも小さい値に設定されていたが、容量C1は、容量C2と等しい値であってもよい。さらに、容量C1が容量C2よりも大きい値に設定されていてもよい。要は、容量C1及びC2の値は、リップルを十分に低減可能な値であればよい。
【0080】
また、第2コンデンサ14と第1スイッチ15とを1つの組とする直列回路が互いに並列に複数設けられ、各直列回路の第1スイッチ15が時間の経過とともに順に閉じられてもよい。これによれば、単位時間当たりの突入電流をさらに小さくすることができる。
【符号の説明】
【0081】
10,10A,10B 電源回路、11 第1電源ライン、12 第2電源ライン、13 第1コンデンサ、14 第2コンデンサ、15 第1スイッチ(スイッチ)、16 制御部、21 逆接続防止用ダイオード、22 直流電源(電源)、31 ダイオードブリッジ、32 交流電源(電源)、90 負荷。