IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図1
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図2
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図3
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図4
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図5
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図6
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図7
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図8
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図9
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図10
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図11
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図12
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図13
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図14
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図15
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図16
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図17
  • 特許-微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/00 20240101AFI20240705BHJP
   G01N 15/06 20240101ALI20240705BHJP
   G01N 15/075 20240101ALI20240705BHJP
【FI】
G01N15/00 C
G01N15/06 E
G01N15/075
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020206935
(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公開番号】P2022094112
(43)【公開日】2022-06-24
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和也
(72)【発明者】
【氏名】牧野 亮
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 博康
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-174578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0131204(US,A1)
【文献】国際公開第2009/128483(WO,A1)
【文献】特開昭61-219386(JP,A)
【文献】特開昭63-181992(JP,A)
【文献】国際公開第2008/152712(WO,A1)
【文献】特開2012-013550(JP,A)
【文献】特開2010-081838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 - 15/1492
B03C 5/00
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電泳動によって微粒子を捕捉する微粒子捕捉方法であって、
流体槽と、前記流体槽内に電界を形成する第一及び第二の電極と、前記流体槽内であって前記第一及び第二の電極の間で少なくとも一つの開口が形成されている絶縁体と、を準備するステップと、
前記微粒子を含んでいる流体を前記流体槽に導入するステップと、
前記開口によって前記第一及び第二の電極の間で不均一電界を形成するように、前記第一及び第二の電極に電圧を印加するステップと、を含み、
前記流体槽と前記第一及び第二の電極と前記絶縁体とを準備する前記ステップでは、
前記流体槽を、前記第一及び第二の電極が配置されている基部と、前記絶縁体が配置されていると共に前記基部とで前記流体槽を画成する壁部と、を有する筐体によって準備し、
前記微粒子を含んでいる流体を前記流体槽に導入する前記ステップでは、
前記第一及び第二の電極と接するように前記微粒子を含んでいる流体を前記第一及び第二の電極上に導入した後に、
前記微粒子を含んでいる流体内に前記少なくとも一つの開口が位置するように前記壁部を前記基部に配置して前記流体槽を画成する、微粒子捕捉方法。
【請求項2】
前記絶縁体を準備する前記ステップでは、スリット状の前記開口が少なくとも一つ形成されている前記絶縁体を準備する、請求項に記載の微粒子捕捉方法。
【請求項3】
誘電泳動によって微粒子を捕捉する微粒子捕捉方法であって、
流体槽と、前記流体槽内に電界を形成する第一及び第二の電極と、前記流体槽内であって前記第一及び第二の電極の間で少なくとも一つの開口が形成されている絶縁体と、を準備するステップと、
前記微粒子を含んでいる流体を前記流体槽に導入するステップと、
前記開口によって前記第一及び第二の電極の間で不均一電界を形成するように、前記第一及び第二の電極に電圧を印加するステップと、を含み、
前記絶縁体を準備する前記ステップでは、スリット状の前記開口が少なくとも一つ形成されている前記絶縁体を準備する、微粒子捕捉方法。
【請求項4】
前記第一及び第二の電極に電圧を印加する前記ステップでは、
前記微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、前記第一及び第二の電極に電圧を印加する、請求項1~3のいずれか一項に記載の微粒子捕捉方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の前記微粒子捕捉方法によって前記微粒子を捕捉するステップと、
捕捉した前記微粒子に第一の光を照射するステップと、
前記第一の光の照射によって発せられる前記微粒子からの第二の光を受光するステップと、を含む、微粒子分析方法。
【請求項6】
前記微粒子を捕捉する前記ステップでは、前記第一の光及び前記第二の光に対して透明な前記絶縁体を準備する、請求項5に記載の微粒子分析方法。
【請求項7】
前記微粒子からの前記第二の光を受光する前記ステップでは、前記第一の光の照射によって発せられる前記微粒子からの蛍光を受光する、請求項5又は6に記載の微粒子分析方法。
【請求項8】
誘電泳動によって微粒子を捕捉する微粒子捕捉装置であって、
前記微粒子を含んでいる流体を導入する流体槽と、
前記流体槽内に電界を形成する第一及び第二の電極と、
前記流体槽内であって前記第一及び第二の電極の間で少なくとも一つの開口が形成されている絶縁体と、
を備え、
前記絶縁体は、前記開口によって前記流体槽内であって前記第一及び第二の電極の間で不均一電界が形成されるように、前記第一及び第二の電極の間に配置されており、
前記流体槽は、筐体により画成され、
前記筐体は、前記第一及び第二の電極が配置されている基部と、前記絶縁体が配置されていると共に前記基部とで前記流体槽を画成する壁部と、を有している、微粒子捕捉装置。
【請求項9】
前記開口は、スリット状を呈している、請求項に記載の微粒子捕捉装置。
【請求項10】
誘電泳動によって微粒子を捕捉する微粒子捕捉装置であって、
前記微粒子を含んでいる流体を導入する流体槽と、
前記流体槽内に電界を形成する第一及び第二の電極と、
前記流体槽内であって前記第一及び第二の電極の間で少なくとも一つの開口が形成されている絶縁体と、
を備え、
前記絶縁体は、前記開口によって前記流体槽内であって前記第一及び第二の電極の間で不均一電界が形成されるように、前記第一及び第二の電極の間に配置されており、
前記開口は、スリット状を呈している、微粒子捕捉装置。
【請求項11】
前記第一及び第二の電極は、前記微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電圧が印加されるように構成される、請求項8~10のいずれか一項に記載の微粒子捕捉装置。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一項に記載の前記微粒子捕捉装置と、
前記開口に捕捉された前記微粒子に第一の光を照射する照射部と、
前記第一の光の照射によって発せられる前記微粒子からの第二の光を受光する受光部と、
を備えている、微粒子分析装置。
【請求項13】
前記絶縁体が、前記第一の光及び前記第二の光に対して透明である、請求項12に記載の微粒子分析装置。
【請求項14】
前記受光部は、前記第一の光の照射によって発せられる前記微粒子からの蛍光を受光する、請求項12又は13に記載の微粒子分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子捕捉方法及び微粒子捕捉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電泳動によって微粒子を捕捉する微粒子捕捉装置が知られている(たとえば、特許文献1及び特許文献2参照)。上述した微粒子捕捉装置は、不均一電界を形成するように構成される複数の櫛歯電極を備えている。微粒子は、不均一電界によって移動し、櫛歯電極に捕捉される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-210128号公報
【文献】特表2011-521241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2の微粒子捕捉装置は、誘電泳動によって微粒子を電極に平行な線上に捕捉する。しかしながら、微粒子を線上に捕捉する微粒子捕捉装置は、捕捉された微粒子の密度を高めることに限界がある。このため、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉し得る微粒子捕捉方法及び装置の実現が望まれる。
【0005】
本発明の一つの態様は、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉する微粒子捕捉方法を提供することを目的とする。本発明の別の一つの態様は、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉する微粒子捕捉方法によって捕捉した微粒子を分析する微粒子分析方法を提供することを目的とする。本発明の更に別の一つの態様は、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉する微粒子捕捉装置を提供することを目的とする。本発明の更に別の一つの態様は、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉する微粒子捕捉装置を備える微粒子分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様に係る微粒子捕捉方法は、流体槽と、流体槽内に電界を形成する第一及び第二の電極と、流体槽内であって第一及び第二の電極の間で少なくとも一つの開口が形成されている絶縁体と、を準備するステップと、微粒子を含んでいる流体を流体槽に導入するステップと、開口によって第一及び第二の電極の間で不均一電界を形成するように、第一及び第二の電極に電圧を印加するステップと、を含んでいる。
【0007】
上記一つの態様では、絶縁体に形成された少なくとも一つの開口によって、流体槽内であって第一及び第二の電極の間に不均一電界が形成され、開口に電界が集中する。この結果、流体槽の流体に含まれている微粒子が、誘電泳動力を受けて開口に捕捉され得る。上記一つの態様は、流体の中から微粒子を高密度に捕捉する。
【0008】
上記一つの態様に係る微粒子捕捉方法において、流体槽と第一及び第二の電極と絶縁体とを準備するステップでは、流体槽を、第一及び第二の電極が配置されている基部と、絶縁体が配置されていると共に基部とで流体槽を画成する壁部と、を有する筐体によって準備し、微粒子を含んでいる流体を流体槽に導入するステップでは、第一及び第二の電極と接するように微粒子を含んでいる流体を第一及び第二の電極上に導入した後に、微粒子を含んでいる流体内に少なくとも一つの開口が位置するように壁部を基部に配置して流体槽を画成する。この場合、微粒子を含んでいる流体が、基部に配置された第一及び第二の電極上に導入された後に、流体内に少なくとも一つの開口が位置するように流体槽が画成される。第一及び第二の電極への電圧の印加によって、流体槽の流体に含まれている微粒子が開口に捕捉され得る。
【0009】
上記一つの態様に係る微粒子捕捉方法において、第一及び第二の電極に電圧を印加するステップでは、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、第一及び第二の電極に電圧を印加してもよい。この場合、流体の中から微粒子を確実に開口に捕捉する。
【0010】
上記一つの態様に係る微粒子捕捉方法において、絶縁体を準備するステップでは、スリット状の開口が少なくとも一つ形成されている絶縁体を準備してもよい。
【0011】
別の一つの態様に係る微粒子分析方法では、上記微粒子捕捉方法によって微粒子を捕捉するステップと、捕捉した微粒子に第一の光を照射するステップと、第一の光の照射によって発せられる微粒子からの第二の光を受光するステップとを含んでいてもよい。この場合、開口に高密度に捕捉された微粒子に第一の光が照射されるので、微粒子からの第二の光の光量が増大する。
【0012】
上記別の一つの態様に係る微粒子分析方法では、微粒子を捕捉する上記ステップでは、第一の光及び第二の光に対して透明な絶縁体を準備してもよい。この場合、微粒子からの第二の光の光量がより増大する。
【0013】
上記別の一つの態様に係る微粒子分析方法では、微粒子からの第二の光を受光する上記ステップでは、第一の光の照射によって発せられる微粒子からの蛍光を受光してもよい。
【0014】
更に別の一つの態様に係る微粒子捕捉装置は、誘電泳動によって微粒子を捕捉する微粒子捕捉装置であって、微粒子を含んでいる流体を導入する流体槽と、流体槽内に電界を形成する第一及び第二の電極と、流体槽内であって第一及び第二の電極の間で少なくとも一つの開口が形成されている絶縁体と、を備えている。絶縁体は、開口によって流体槽内であって第一及び第二の電極の間で不均一電界が形成されるように、第一及び第二の電極の間に配置されている。
【0015】
上記更に別の一つの態様では、絶縁体に形成された少なくとも一つの開口によって、流体槽内であって第一及び第二の電極の間に不均一電界が形成され、開口に電界が集中する。この結果、上記更に別の一つの態様は、誘電泳動によって、流体の中から微粒子を開口に高密度に捕捉する。
【0016】
上記更に別の一つの態様に係る微粒子捕捉装置は、流体槽は、筐体により画成され、筐体は、第一及び第二の電極が配置されている基部と、絶縁体が配置されていると共に基部とで流体槽を画成する壁部と、を有していてもよい。この場合、微粒子を含んでいる流体が、基部に配置された第一及び第二の電極上に導入される。
【0017】
上記更に別の一つの態様に係る微粒子捕捉装置では、第一及び第二の電極は、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電圧が印加されるように構成されていてもよい。この場合、流体の中から確実に開口に捕捉される。
【0018】
上記別の一つの態様に係る微粒子捕捉装置では、開口は、スリット状を呈していてもよい。
【0019】
更に別の一つの態様に係る微粒子分析装置は、上記微粒子捕捉装置と、開口に捕捉された微粒子に第一の光を照射する照射部と、第一の光の照射によって発せられる微粒子からの第二の光を受光する受光部と、を備えていてもよい。この場合、開口に捕捉された微粒子に第一の光が照射されるので、微粒子からの第二の光の光量が増大する。
【0020】
上記更に別の一つの態様に係る微粒子分析装置では、絶縁体が、第一の光及び第二の光の各波長に対して透明であってもよい。この場合、微粒子からの第二の光の光量がより増大する。
【0021】
上記更に別の一つの態様に係る微粒子分析装置では、受光部は、第一の光の照射によって発せられる微粒子からの蛍光を受光してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一つの態様は、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉する微粒子捕捉方法を提供する。本発明の別の一つの態様は、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉する微粒子捕捉方法によって捕捉した微粒子を分析する微粒子分析方法を提供する。本発明の更に別の一つの態様は、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉する微粒子捕捉装置を提供する。本発明の更に別の一つの態様は、誘電泳動によって微粒子を高密度に捕捉する微粒子捕捉装置を備える微粒子分析装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、第1実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。
図3図3は、第1実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。
図4図4は、第1実施形態に係る隔壁部の断面構成を示す模式図である。
図5図5は、第1実施形態の他の一例に係る隔壁部の断面構成を示す模式図である。
図6図6は、第1実施形態に係る微粒子分析方法を示す流れ図である。
図7図7は、第2実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。
図8図8は、第2実施形態に係る微粒子分析方法を示す流れ図である。
図9図9は、第3実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。
図10図10は、第3実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。
図11図11は、第3実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。
図12図12は、第4実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。
図13図13は、第4実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。
図14図14は、第4実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。
図15図15は、第5実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。
図16図16は、第6実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。
図17図17は、第6実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。
図18図18は、第6実施形態に係る微粒子分析方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0025】
(第1実施形態)
図1図4を参照して、第1実施形態に係る微粒子分析装置の構成を説明する。図1は、第一方向から見た第1実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。図2は、第三方向から見た第1実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。図3は、第二方向から見た第1実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。図4は、第一方向から見た第1実施形態に係る隔壁部の断面構成を示す模式図である。
【0026】
微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1を備えている。以下、微粒子捕捉装置TD1の構成を説明する。微粒子捕捉装置TD1は、筐体1と、複数の電極10a,10bとを備えている。本実施形態では、微粒子捕捉装置TD1は、一対の電極10a,10bを備えている。微粒子捕捉装置TD1は、誘電泳動によって、流体に含まれている微粒子を捕捉する装置である。本実施形態では、微粒子捕捉装置TD1は、微粒子を懸濁した懸濁液の中から、微粒子を捕捉する。流体の一例は、液体である。液体は、たとえば、純水である。微粒子の一例は、ポリスチレンビーズである。懸濁液の一例は、ポリスチレンビーズからなる複数の微粒子が懸濁されている純水である。
【0027】
筐体1は、基部2と壁部3とを有している。基部2と壁部3とは、第一方向D1で並んでおり、互いに連結されている。筐体1では、基部2と壁部3との内部に流体槽4が画成されている。流体槽4は、筐体1により画成されている。本実施形態では、流体槽4は、基部2と壁部3とに囲まれた流路である。基部2と壁部3とが、流体槽4を画成している。流体槽4に、懸濁液が導入される。懸濁液は、流体槽4の一部又は全部を満たすように、たとえば、第二方向D2に流れる。第二方向D2は、第一方向D1に交差する方向である。基部2と壁部3とは、互いに別体に形成されている。基部2と壁部3とは、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。基部2と壁部3とは、一体化されていてもよい。
【0028】
基部2は、たとえば、絶縁材料からなる。本実施形態では、基部2は、ガラスからなる。基部2は、たとえば、スライドガラスを含んでいる。基部2は、たとえば、直方体形状を呈している。基部2の厚さは、たとえば、1mmである。基部2の第二方向D2での長さは、たとえば、38mmである。基部2の第三方向D3での長さは、たとえば、26mmである。第三方向D3は、第一方向D1及び第二方向D2に交差する方向である。
【0029】
壁部3は、側壁部5と上壁部6とを有している。側壁部5と上壁部6とは、互いに連結されている。側壁部5は、第一方向D1から見て、流体槽4を囲んでいる。上壁部6は、第一方向D1で基部2に対向している。基部2と側壁部5と上壁部6とは、第二方向D2及び第三方向D3から見て、流体槽4を囲んでいる。側壁部5と上壁部6とは、互いに別体に形成されており、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。側壁部5と上壁部6とは、一体化されていてもよい。側壁部5と上壁部6とは、たとえば、絶縁材料からなる。本実施形態では、側壁部5と上壁部6とは、シリコーンゴムで構成されている。シリコーンゴムには、たとえば、ポリジメチルシロキサンが主成分として含まれる。
【0030】
上壁部6には、たとえば、導入ポート6pと排出ポート6qとが形成されている。導入ポート6pは、筐体1の外部から流体槽4に懸濁液を導入する開口を有している。排出ポート6qは、流体槽4から筐体1の外部に懸濁液を排出する開口を有している。導入ポート6pと排出ポート6qとは、第二方向D2で並んでいる。導入ポート6pの開口と排出ポート6qの開口とは、第一方向D1から見て、共に、たとえば、円形状を呈している。導入ポート6pの開口と排出ポート6qの開口とは、第一方向D1から見て、楕円形状を呈していてもよく、矩形状を呈していてもよい。懸濁液は、たとえば、シリンジポンプによって、導入ポート6pを通して、流体槽4に供給される。排出ポート6qから筐体1の外部に排出された懸濁液は、たとえば、筐体1の外部で循環されて、再び、導入ポート6pから流体槽4に導入されてもよい。流体槽4から筐体1の外部に排出された懸濁液は、廃棄されてもよい。本明細書での「矩形状」は、角部が丸められている長方形状及び正方形状を含む。
【0031】
第二方向D2及び第三方向D3から見て、流体槽4は、たとえば、矩形状を呈している。流体槽4の第一方向D1での長さは、たとえば、20μmである。流体槽4の第二方向D2での長さは、たとえば、20mmである。流体槽4の第三方向D3での長さは、たとえば、500μmである。
【0032】
壁部3には、隔壁部7が配置されている。隔壁部7は、流体槽4内に位置している。隔壁部7は、たとえば、上壁部6に接続されている。隔壁部7は、たとえば、第一方向D1で、上壁部6と基部2との間を延在している。隔壁部7は、基部2に接していてもよい。隔壁部7は、たとえば、導入ポート6pと排出ポート6qとを除く領域で、流体槽4内を第二方向D2に延びている。隔壁部7は、第二方向D2から見て、たとえば、流体槽4の中央領域に配置されており、第三方向D3で流体槽4を分離している。隔壁部7は、第二方向D2から見て、第三方向D3で流体槽4を二等分してもよい。隔壁部7は、絶縁材料からなる。本実施形態では、隔壁部7は、シリコーンゴムで構成されている。
【0033】
隔壁部7は、上壁部6と一体化されていてもよい。隔壁部7は、上壁部6と別体に形成されていてもよい。基部2と隔壁部7とは、互いに別体に形成されている場合、たとえば、接着剤によって互いに接着されている。隔壁部7は、基部2上に形成されていてもよく、上壁部6と接していなくてもよい。隔壁部7が基部2上に形成されている場合、隔壁部7は、たとえば、接着剤によって基部2に接着されている。隔壁部7は、基部2と一体化されていてもよい。図2及び図3では、隔壁部7が基部2と上壁部6とに接している構成が示されている。
【0034】
隔壁部7には、少なくとも一つの開口8が形成されている。本実施形態では、隔壁部7には、三つの開口8が形成されている。三つの開口8は、第二方向D2で並んでいる。開口8のそれぞれは、スリット状を呈している。開口8は、上壁部6の内側の面6aと、基部2の内側の面2aとの間を延在している。開口8は、面6aに達し、かつ、面2aにも達している。この場合、開口8は、隔壁部7と上壁部6と基部2とによって画成されている。隔壁部7と上壁部6と基部2とが、流体槽4内であって電極10a,10bの間で少なくとも一つの開口8が形成されている絶縁体を構成している。開口8は、面6aに達しておらず、かつ、面2aに達していてもよい。この場合、開口8は、隔壁部7と基部2とによって画成されている。隔壁部7と上壁部6とが、流体槽4内であって電極10a,10bの間で少なくとも一つの開口8が形成されている絶縁体を構成している。開口8は、面6aに達し、かつ、面2aに達していなくてもよい。この場合、開口8は、隔壁部7と上壁部6とによって画成されている。隔壁部7と基部2とが、流体槽4内であって電極10a,10bの間で少なくとも一つの開口8が形成されている絶縁体を構成している。開口8は、面6aに達しておらず、かつ、面2aに達していなくてもよい。この場合、開口8は、隔壁部7によって画成されている。隔壁部7が、流体槽4内であって電極10a,10bの間で少なくとも一つの開口8が形成されている絶縁体を構成している。開口8は、第一方向D1で懸濁液の液中に位置している。開口8は、第三方向D3から見て、たとえば、円形状を呈していてもよい。
【0035】
図4は、隔壁部7に形成されている三つの開口8のうちの一つを示す図である。本実施形態では、隔壁部7は、たとえば、3つの部分からなる。各部分は、第三方向D3の両端を規定する二つの側面7p,7qを有している。側面7p,7qは、第二方向D2で延在している。隔壁部7は、側面7p,7qにそれぞれ交差する二つの端面7s,7tを有している。端面7sは、側面7pに連結されており、端面7tは、側面7qに連結されている。端面7s,7tは、隔壁部7の第二方向D2での先端で互いに交差している。各部分の先端は、第二方向D2で互いに対向している。各部分の先端が、開口8を画成している。本実施形態では、各部分の先端は、第一方向D1から見て三角形状を呈している。端面7s,7tは、湾曲した形状を呈していてもよい。この場合、各部分の先端は、第一方向D1から見て、丸みを帯びた形状を呈している。
【0036】
図5は、隔壁部7に形成されている開口8の他の一例を示す図である。本例に係る隔壁部7は、二つの側面7p,7qと、二つの端面7s,7tと、を有している。側面7p,7qは、第二方向D2で延在している。端面7sは、側面7pに連結されており、端面7tは、側面7qに連結されている。端面7s,7tは、隔壁部7の第二方向D2での先端で互いに交差している。端面7s,7tは、第一方向D1から見て、凹状に湾曲した形状を呈しており、端面7s,7tが互いに交差する先端は、尖った形状を呈している。図5に示す先端は、第一方向D1から見て、図4に示す先端よりも尖った形状を呈している。端面7s,7tが互いに交差する先端は、第一方向D1から見て、丸みを帯びた形状を呈していてもよい。
【0037】
各電極10a,10bは、第三方向D3で互いに対向するように配置されている。本実施形態では、電極10a,10bは、共に、基部2の内側の面2a上に配置され、第三方向D3で互いに対向している。電極10aは、一対の端縁10c,10dを有している。一対の端縁10c,10dは、電極10aの第三方向D3での両端を規定している。端縁10cは、流体槽4の内側に露出している。端縁10dは、流体槽4の外側に露出し、基部2の一の端縁2bに達している。電極10bは、一対の端縁10e,10fを有している。一対の端縁10e,10fは、電極10bの第三方向D3での両端を規定している。端縁10eは、流体槽4の内側に露出している。端縁10fは、流体槽4の外側に露出し、基部2の別の一の端縁2cに達している。端縁2b,2cは、基部2の第三方向D3での両端を規定している。たとえば、電極10aが第一の電極を構成する場合、電極10bは第二の電極を構成する。
【0038】
電極10a,10bは、たとえば、金属膜からなる。金属膜は、たとえば、アルミニウム膜からなり、蒸着法によって形成されてもよい。電極10a,10bは、第一方向D1から見て、たとえば、矩形状を呈している。電極10a,10bの厚さは、共に、たとえば、100nmである。電極10a,10bは、たとえば、第三方向D3で互いに離間している。第三方向D3での電極10a,10b間の間隔は、たとえば、400μmである。電極10a,10bの第三方向D3での長さは、共に、たとえば、12.8mmである。電極10a,10bの第二方向D2での長さは、共に、たとえば、10mmである。本実施形態では、隔壁部7は、第三方向D3で流体槽4を二等分してもよく、電極10a,10bは、第二方向D2から見て、隔壁部7に対して、互いに対称となるように配置されていてもよい。電極10a,10bは、制御部20と電気的に接続されている。制御部20は、電源を有し、制御部20の電源が、電極10a,10bに電圧を印加する。電圧の印加によって、電極10a,10bは、流体槽4内に電界を形成する。
【0039】
電極10a,10bによって形成された電界は、たとえば、第三方向D3に沿っている。電界は、隔壁部7の開口8を通過する。開口8の開口幅は、電極10a,10bの第二方向D2での長さに比べて小さい。開口8を除く隔壁部7は、電界の通過を遮断する。電極10a,10bの間で生成した電界は、開口8で集中する。この結果、電極10a,10bの間に不均一電界が形成される。本実施形態では、隔壁部7は、開口8によって流体槽4内であって電極10a,10bの間で不均一電界が形成されるように、電極10a,10bの間に配置されている。電極10a,10bは、互いに絶縁されている。
【0040】
開口8は、開口8に微粒子を捕捉するように電束密度を向上する大きさの開口幅を有している。本実施形態では、開口8の第二方向D2での開口幅は、たとえば、1~25μmである。開口8を画成する端部を除く隔壁部7の第三方向D3での厚さは、たとえば、50μmである。三つの開口8の第二方向D2での互いの間隔は、たとえば、200μmである。開口8は、電極10a,10bから離間している。
【0041】
本実施形態において、電極10a,10bに印加される電圧は、交流電圧である。第一及び第二の電極10a,10bは、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電圧が印加されるように構成されている。電極10a,10bに交流電圧が印加される場合、正の誘電泳動力を受ける微粒子は、開口8に捕捉され得る。正の誘電泳動力を受ける微粒子は、開口8の近傍に捕捉される場合もあり得る。交流電圧が印加される場合、微粒子は、開口8の、電極10a,10bの双方側に捕捉される。電極10a,10bに印加される電圧は、直流電圧であってもよい。
【0042】
次に、微粒子分析装置AD1の構成を説明する。微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1に、照射部30と、受光部35とを備えている。照射部30と受光部35とは、たとえば、第一方向D1で微粒子捕捉装置TD1を挟むように配置されている。照射部30は、たとえば、筐体1の上壁部6寄りに配置され、第一方向D1で上壁部6を通して開口8に光を照射する。微粒子が開口8に捕捉されている場合、照射部30からの光L1が微粒子に照射される。照射部30は、たとえば、発光素子31と集光レンズ32とを有している。発光素子31は、たとえば、LED素子である。集光レンズ32は、たとえば、発光素子31と上壁部6との間に配置される。集光レンズ32は、発光素子31からの光L1を開口8に集光する。
【0043】
受光部35は、たとえば、基部2寄りに配置され、第一方向D1で照射部30からの光を受光する。微粒子が開口8に捕捉されている場合、受光部35は、たとえば、第一方向D1で基部2を通して、微粒子からの光を受光する。微粒子は、照射部30からの光L1の照射によって光F1を発生する。本実施形態では、光F1の一例が、蛍光であり、微粒子の一例であるポリスチレンビーズは、光L1の照射によって、蛍光を発生する。受光部35は、たとえば、蛍光に感度を有している。受光部35は、受光素子36と集光レンズ37とを有している。受光素子36は、たとえば、光電子増倍管を含む。集光レンズ37は、基部2と受光素子36との間に配置され、開口8からの光を集光する。本実施形態では、三つの開口8が、第二方向D2で並んでいる。微粒子分析装置AD1は、たとえば、照射部30と受光部35とを第二方向D2で移動させて、全ての開口8に光を照射する。本実施形態では、筐体1のうち、少なくとも光L1の光路と光F1の光路とに位置する領域は、光L1及び光F1の各波長に対して透明であってもよい。したがって、基部2と上壁部6と隔壁部7は、光L1及び光F1の各波長に対して透明な材料からなってよい。スライドガラスとシリコーンゴムとは、たとえば、光L1及び光F1の各波長に対して透明である。たとえば、光L1が第一の光を構成する場合、光F1が第二の光を構成する。
【0044】
図6を参照して、第1実施形態に係る微粒子分析方法を説明する。図6は、第1実施形態に係る微粒子分析方法を示す流れ図である。微粒子分析方法は、微粒子捕捉方法を含んでいる。初めに、微粒子捕捉方法を説明する。
【0045】
微粒子捕捉方法では、まず、微粒子捕捉装置TD1を準備する(S101)。すなわち、流体槽4と、電極10a,10bと、隔壁部7とが準備される。筐体1では、流体槽4内であって電極10a,10bの間で少なくとも一つの開口8が形成されるように、隔壁部7を配置する。続いて、微粒子を含んでいる懸濁液を流体槽4に導入する(S102)。懸濁液は、たとえば、純水中にポリスチレンビーズからなる微粒子を懸濁して準備される。本実施形態では、懸濁液中の微粒子の濃度は、たとえば、2×10粒子/mLである。微粒子の直径は、たとえば、0.1μmである。懸濁液を準備した後、導入ポート6pから流体槽4内に懸濁液を導入する。懸濁液を導入した流体槽4では、たとえば、第二方向D2で懸濁液が流れる。懸濁液は、導入ポート6pに接続されたシリンジポンプによって、一定の流速で流体槽4に導入されてもよい。懸濁液が一定の流速で流体槽4に導入される場合、懸濁液の流速は、たとえば、36μL/時である。排出ポート6qからは、たとえば、流体槽4内に過剰に導入された懸濁液が排出される。流体槽4内に空気及び他の流体が残存していた場合には、残存している空気及び他の流体が排出ポート6qから排出される。
【0046】
懸濁液の流体槽4内への導入と同時、懸濁液の流体槽4内への導入前、又は、懸濁液の流体槽4内への導入後のいずれかのタイミングで、電極10a,10bに電圧を印加する(S103)。本実施形態では、開口8によって電極10a,10bの間で不均一電界を形成するように、電極10a,10bに電圧を印加する。印加電圧の周波数は、たとえば、1MHzである。印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。第一及び第二の電極10a,10bに電圧を印加する場合、ポリスチレンビーズを含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、第一及び第二の電極10a,10bに電圧を印加する。電圧の印加によって、開口8は、流体槽4内であって電極10a,10bの間で不均一電界を形成する。流体槽4内で生成した電界は、開口8で集中する。懸濁液中のポリスチレンビーズは、正の誘電泳動力を受けて、開口8に集められ、開口8に捕捉される。本実施形態では、流体槽4が流路を形成しているので、開口8に捕捉される前の濃度のポリスチレンビーズを含んだ懸濁液が、流路の流れに沿って、次々と開口8付近に供給される。
【0047】
続いて、微粒子分析方法を説明する。微粒子分析方法では、開口8への光照射と受光とを行う(S104)。微粒子分析方法では、開口8に光L1を照射する。ポリスチレンビーズが開口8に捕捉されている場合、捕捉されたポリスチレンビーズに光L1が照射される。光L1の照射では、照射部30を駆動し、開口8に捕捉されたポリスチレンビーズに光を照射する。ポリスチレンビーズは、光L1の照射によって、たとえば、蛍光を発する。本実施形態では、受光部35を駆動し、ポリスチレンビーズから発せられる蛍光を受光する。微粒子分析方法では、受光部35で蛍光を受光し、ポリスチレンビーズの光学測定を行う。
【0048】
本実施形態に係る各態様の効果について説明する。微粒子捕捉方法は、流体槽4と、流体槽内に電界を形成する第一及び第二の電極10a,10bと、流体槽4内であって第一及び第二の電極10a,10bの間で少なくとも一つの開口8が形成されている隔壁部7と、を準備するステップと、微粒子を含んでいる流体を流体槽に導入するステップと、開口によって第一及び第二の電極の間で不均一電界を形成するように、第一及び第二の電極に電圧を印加するステップと、を含んでいる。
【0049】
本実施形態では、隔壁部7に形成された少なくとも一つの開口8によって、流体槽4内であって電極10a,10bの間に不均一電界が形成され、開口8に電界が集中する。この結果、流体槽4の流体に含まれている微粒子のポリスチレンビーズが、誘電泳動力を受けて開口8に捕捉され得る。微粒子捕捉方法は、流体の中から微粒子を高密度に捕捉する。
【0050】
微粒子捕捉方法において、第一及び第二の電極10a,10bに電圧を印加するステップでは、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、第一及び第二の電極10a,10bに電圧を印加する。この場合、流体の中から微粒子を確実に開口8に捕捉する。
【0051】
微粒子分析方法では、上記微粒子捕捉方法によって微粒子を捕捉するステップと、捕捉した微粒子に光を照射するステップと、光の照射によって発せられる微粒子からの光F1を受光するステップとを含んでいる。この場合、開口8に高密度に捕捉された微粒子に光が照射されるので、微粒子からの光F1の光量が増大する。すなわち、微粒子からの蛍光の光量が増大する。本実施形態では、微粒子が電極10a,10bから離間した開口8で捕捉されるので、照射部30から微粒子に照射される光と、微粒子からの光F1とが、共に、電極10a,10bに遮られない。
【0052】
微粒子分析方法において、微粒子を捕捉する上記ステップでは、光L1及び光F1に対して透明な隔壁部7を準備する。この場合、微粒子からの光F1の光量がより増大する。
【0053】
微粒子分析方法において、微粒子からの光F1を受光する上記ステップでは、光L1の照射によって発せられる微粒子からの蛍光を受光する。微粒子が、光L1の照射によって蛍光以外の光を発する場合、微粒子からの光F1を受光する上記ステップでは、微粒子が発する、蛍光以外の光を受光してもよい。
【0054】
微粒子捕捉装置TD1は、誘電泳動によって微粒子を捕捉する微粒子捕捉装置であって、微粒子を含んでいる流体を導入する流体槽4と、流体槽4内に電界を形成する電極10a,10bと、流体槽4内であって電極10a,10bの間で少なくとも一つの開口8が形成されている隔壁部7と、を備えている。隔壁部7は、開口8によって流体槽4内であって電極10a,10bの間で不均一電界が形成されるように、電極10a,10bの間に配置されている。
【0055】
本実施形態では、隔壁部7に形成された少なくとも一つの開口8によって、流体槽4内であって電極10a,10bの間に不均一電界が形成され、開口8に電界が集中する。この結果、微粒子捕捉装置TD1は、誘電泳動によって、流体の中から微粒子を開口8に高密度に捕捉する。
【0056】
微粒子捕捉装置TD1では、第一及び第二の電極10a,10bは、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電圧が印加されるように構成される。この場合、流体の中から確実に開口8に捕捉される。
【0057】
微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1と、開口8に捕捉された微粒子に光を照射する照射部30と、光L1の照射によって発せられる微粒子からの光F1を受光する受光部35と、を備えている。この場合、開口8に捕捉された微粒子に光L1が照射されるので、微粒子からの光F1の光量が増大する。すなわち、微粒子からの蛍光の光量が増大する。
【0058】
微粒子分析装置AD1では、隔壁部7が、光L1及び光F1の各波長に対して透明であってもよい。この場合、微粒子からの光F1の光量がより増大する。
【0059】
微粒子分析装置AD1では、受光部35は、光L1の照射によって発せられる微粒子からの蛍光を受光する。微粒子が、光L1の照射によって蛍光以外の光を発する場合、受光部35は、微粒子が発する、蛍光以外の光を受光してもよい。
【0060】
上述したように、照射部30から微粒子に照射される光L1と、微粒子からの光F1とが、電極10a,10bに遮られない。したがって、第一及び第二の電極10a,10bは、透明電極でなくてもよい。
透明電極は、一般に、高価である。したがって、第一及び第二の電極10a,10bが透明電極でない構成は、微粒子捕捉装置TD1の低コスト化を図り、微粒子捕捉方法を低コストで実現する。この結果、第一及び第二の電極10a,10bが透明電極でない構成は、微粒子分析装置AD1の低コスト化も図り、微粒子分析方法を低コストで実現する。
【0061】
懸濁液の他の一例は、たとえば、ウイルス懸濁液である。ウイルス懸濁液は、超純水中にロタウイルスを懸濁して準備される。ロタウイルスは、蛍光色素によって蛍光標識されている。蛍光色素は、Alexa Fluor(登録商標)488 5-TFPである。懸濁液中のウイルスの濃度は、たとえば、300ng/mLである。ウイルスの外径は、たとえば、100nmである。懸濁液を準備した後、導入ポート6pから流体槽4内に懸濁液を導入する。
【0062】
周波数1MHzの交流電圧を電極10a,10bに印加する。印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。懸濁液中のロタウイルスは、正の誘電泳動力を受けて、開口8に捕捉される。微粒子分析装置AD1を用い、開口8に捕捉したロタウイルスに光を照射し、ロタウイルスから発せられる蛍光を受光する。
【0063】
懸濁液がウイルス懸濁液である場合、隔壁部7に形成された開口8のサイズ及び数は、以下のように設定されていてもよい。隔壁部7には、二つの開口8が形成されている。開口8は、たとえば、第一方向D1に延びるスリット状を呈している。二つの開口のうち、一の開口8の開口幅は、たとえば、1μmである。別の一の開口8の開口幅は、たとえば、5μmである。開口を画成する端部を除く隔壁部7の第三方向D3での厚さは、たとえば、50μmである。二つの開口8は、第二方向D2で互いに並んでいる。二つの開口8の第二方向D2での互いの間隔は、たとえば、200μmである。
【0064】
ウイルス懸濁液が流体槽4に導入される。ウイルス懸濁液は、二種類のウイルスを含んでいる。一のウイルスは、タバコモザイクウイルス(TMV)であり、別の一のウイルスは、単純ヘルペスウイルス1型(HSV)である。タバコモザイクウイルスは、ローダミンBによって赤色の蛍光標識がなされている。単純ヘルペスウイルス1型は、NBD-ジヘキサデシルアミンによって緑色の蛍光標識がなされている。これら二種類のウイルスは、共に同一の超純水中に懸濁される。懸濁液中のタバコモザイクウイルスの濃度は、たとえば、7×10個/mLである。懸濁液中の単純ヘルペスウイルス1型の濃度は、たとえば、3×10個/mLである。タバコモザイクウイルスは、円筒形状の粒子であり、円筒形状の底面の直径は、たとえば、18nmであり、円筒形状の高さは、たとえば、280nmである。単純ヘルペスウイルス1型の外径は、たとえば、250nmである。懸濁液を準備した後、導入ポート6pから流体槽4内に懸濁液を導入する。
【0065】
周波数1MHzの交流電圧を電極10a,10bに印加する。印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。懸濁液中の二種類のウイルスは、共に、正の誘電泳動力を受ける。電極10a,10bの間で形成された電界は、開口幅が小さくなるに従って、より開口8で集中する。開口幅が小さい開口8付近では、開口幅が大きい開口8付近に比べて、ウイルスが受ける誘電泳動力が大きい。タバコモザイクウイルスは、当該ウイルスが受ける誘電泳動力が比較的小さい場合でも、開口幅が互いに異なる二つの開口8に捕捉される。単純ヘルペスウイルス1型は、当該ウイルスが受ける誘電泳動力が比較的小さい場合には、開口幅が大きい開口8には捕捉され難く、開口幅が小さな開口8のみに捕捉される。
【0066】
開口8に捕捉したウイルスに光L1を照射し、ウイルスから発せられる光F1の一例として蛍光を受光する。タバコモザイクウイルスは、開口幅が互いに異なる二つの開口8に捕捉されるので、二つの開口8からタバコモザイクウイルスに由来する赤色蛍光が観測される。単純ヘルペスウイルス1型は、開口幅の小さな開口のみに捕捉されるので、開口幅の小さな開口のみから、単純ヘルペスウイルス1型に由来する緑色蛍光が観測される。開口8の開口幅の大きさによって、開口8で捕捉するウイルスが選別される。
【0067】
ウイルス懸濁液が、たとえば、二種類のウイルスを含んでいる場合、電極10a,10bに印加される交流電圧の周波数は、以下のように設定されてもよい。ウイルス懸濁液は、たとえば、上述された、タバコモザイクウイルス及び単純ヘルペスウイルス1型を含む懸濁液である。
【0068】
ウイルス懸濁液を流体槽4に導入し、周波数6MHzの交流電圧を電極10a,10bに印加する。印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。懸濁液中の二種類のウイルスのうち、タバコモザイクウイルスは、正の誘電泳動力を受けて、開口8に捕捉される。単純ヘルペスウイルス1型は、負の誘電泳動力を受けるので、開口8に捕捉されない。開口8に捕捉されるウイルスは、タバコモザイクウイルスのみである。本例では、開口8に捕捉したウイルスに光L1を照射し、捕捉したウイルスから発せられる光F1の一例として蛍光を受光する。開口8からは、タバコモザイクウイルスに由来する赤色蛍光のみが観測される。電極10a,10bに印加する電圧の周波数によって、開口8で捕捉するウイルスが選別される。
【0069】
(第2実施形態)
図7を参照して、第2実施形態に係る微粒子分析装置の構成を説明する。図7は、第一方向D1から見た第2実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。第2実施形態では、微粒子を含んでいる液体は、第1実施形態の懸濁液と同一である。微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1を備えている。まず、微粒子捕捉装置TD1の構成を説明する。
【0070】
微粒子捕捉装置TD1は、筐体1と、電極10a,10bとを備えている。筐体1は、基部2と壁部3とを有している。基部2と壁部3とは、互いに連結されている。筐体1には、基部2と壁部3とによって流体槽4が形成されている。流体槽4は、筐体1により画成されている。本実施形態では、流体槽4は、基部2と壁部3とに囲まれた流路である。基部2と壁部3との内部に流体槽4が画成されている。基部2と壁部3とが、流体槽4を画成している。壁部3は、側壁部5と上壁部6と内壁部9とを有している。側壁部5と上壁部6と内壁部9とは、それぞれ互いに連結されている。流体槽4は、第一方向D1から見て、内壁部9の周りを循環する循環路を形成している。側壁部5は、流体槽4を挟んで内壁部9を囲んでいる。上壁部6は、第一方向D1で基部2に対向している。基部2と壁部3とは、第二方向D2又は第三方向D3から見て、流体槽4を囲んでいる。
【0071】
側壁部5と上壁部6と内壁部9とは、互いに別体に形成されており、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。側壁部5と上壁部6と内壁部9とは、一体化されていてもよい。基部2と壁部3とは、互いに別体に形成されており、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。基部2と壁部3とは、一体化されていてもよい。壁部3は、たとえば、絶縁材料からなる。本実施形態では、壁部3は、シリコーンゴムで構成されている。上壁部6には、たとえば、導入ポート6pと排出ポート6qとが形成されている。導入ポート6pを通して、筐体1の外部から流体槽4に懸濁液が導入される。排出ポート6qを通して、流体槽4から筐体1の外部に懸濁液が排出される。
【0072】
基部2は、たとえば、絶縁材料からなる。本実施形態では、基部2は、ガラス材料で構成され、ガラス材料は、たとえば、スライドガラスである。基部2は、たとえば、直方体形状を呈している。基部2の厚さは、たとえば、1mmである。基部2の第二方向D2での長さは、たとえば、38mmである。基部2の第三方向D3での長さは、たとえば、26mmである。
【0073】
流体槽4は、第一部分4a、第二部分4b、第三部分4c、及び第四部分4dを有している。第一部分4aと第三部分4cとは、第二方向D2に延在し、第二部分4bと第四部分4dとを接続している。第二部分4bと第四部分4dとは、第三方向D3に延在し、第一部分4aと第三部分4cとを接続している。導入ポート6pからの懸濁液は、たとえば、第一部分4aに導入される。第二部分4bには、スターラーバー4eが配置され、第四部分4dには、スターラーバー4fが配置されている。スターラーバー4e,4fは、たとえば、磁気回転子である。第一部分4aに導入された懸濁液は、スターラーバー4e,4fの回転によって、第二部分4bにまで流れる。第二部分4bにまで流れた懸濁液は、スターラーバー4e,4fの回転によって、第三部分4cを経由して第四部分4dにまで流れる。第四部分4dにまで流れた懸濁液は、スターラーバー4e,4fの回転によって、再び、第一部分4aにまで流れる。流体槽4では、たとえば、第一部分4a、第二部分4b、第三部分4c、及び第四部分4dの順に懸濁液が循環する。
【0074】
懸濁液が流体槽4を循環している間、導入ポート6pの開口及び排出ポート6qの開口は、共に閉じられている。この場合、流体槽4の導入された懸濁液の全体から微粒子がより効率的に捕捉される。懸濁液が流体槽4を循環している間、流体槽4には新たに懸濁液が導入されなくてもよい。懸濁液が流体槽4を循環している間、導入ポート6pの開口及び排出ポート6qの開口は、共に、開けられていてもよい。懸濁液が流体槽4を循環している間、流体槽4に新たに懸濁液が導入されてもよい。流体槽4では、たとえば、第四部分4d、第三部分4c、第二部分4b、及び第一部分4aの順に懸濁液が循環してもよい。
【0075】
第一部分4a、第二部分4b、第三部分4c、及び第四部分4dの第一方向D1での長さは、それぞれ互いに等しくてよく、たとえば、0.5mmである。第一部分4a及び第三部分4cの第二方向D2での長さは、互いに等しくてよく、たとえば、15mmである。第一部分4a及び第三部分4cの第三方向D3での長さは、互いに等しくてよく、たとえば、1mmである。第二部分4b及び第四部分4dの第三方向D3での長さは、互いに等しくてよく、たとえば、11mmである。第二部分4b及び第四部分4dの第二方向D2での長さは、互いに等しくてよく、スターラーバー4e,4fが配置されている領域を除いて、たとえば、1mmである。
【0076】
壁部3には、隔壁部7が配置されている。隔壁部7は、流体槽4内に位置している。本実施形態では、壁部3は、第一部分4a内に隔壁部7を有している。隔壁部7の構成は、第1実施形態に係る隔壁部7と同一の構成を有している。開口8の構成も、第1実施形態に係る開口8の構成と同一である。
【0077】
電極10a,10bは、第三方向D3で互いに対向するように配置されている。本実施形態では、電極10a,10bは、共に、基部2の面2a上に配置され、第三方向D3で互いに対向している。電極10a,10bのうち、電極10aの端縁10cは、第一部分4aの内側に露出している。電極10aの端縁10dは、第一部分4aの外側に露出している。端縁10dは、基部2の端縁2bから離間している。電極10bの端縁10eは、第一部分4aの内側に露出している。電極10bの端縁10fは、第一部分4aの外側に露出し、基部2の一の端縁2cに達している。
【0078】
電極10a,10bは、たとえば、金属膜からなる。金属膜は、たとえば、アルミニウム膜からなり、蒸着法によって形成されてもよい。電極10a,10bは、第一方向D1から見て、たとえば、矩形状を呈している。電極10a,10bの厚さは、共に、たとえば、100nmである。電極10a,10bは、たとえば、第三方向D3で互いに離間している。第三方向D3での電極10a,10b間の間隔は、たとえば、400μmである。電極10a,10bの第三方向D3での長さは、共に、たとえば、7.8mmである。電極10a,10bの第二方向D2での長さは、共に、たとえば、5mmである。本実施形態では、隔壁部7は、第三方向D3で第一部分4aを二等分してもよく、電極10a,10bは、第二方向D2から見て、隔壁部7に対して、互いに対称となるように配置されていてもよい。電極10a,10bは、制御部20と電気的に接続されている。制御部20は、電源を有し、制御部20の電源が、電極10a,10bに電圧を印加する。制御部20の電源からの電圧の印加によって、電極10a,10bは、流体槽4の第一部分4a内に電界を形成する。
【0079】
図8を参照して、第2実施形態に係る微粒子分析方法を説明する。図8は、第2実施形態に係る微粒子分析方法を示す流れ図である。本実施形態でも、微粒子分析方法は、微粒子捕捉方法を含んでいる。本実施形態の微粒子分析装置AD1の構成は、微粒子捕捉装置TD1を除いて、第1実施形態に係る微粒子分析装置AD1の構成と同一である。
【0080】
初めに、微粒子捕捉方法を説明する。微粒子捕捉方法では、まず、流体槽4と電極10a,10bと隔壁部7とを準備する(S201)。筐体1では、第一部分4a内であって電極10a,10bの間で少なくとも一つの開口8が形成されるように、隔壁部7を配置する。続いて、微粒子のポリスチレンビーズを含んでいる懸濁液を流体槽4に導入する(S202)。
【0081】
懸濁液の流体槽4内への導入と同時、懸濁液の流体槽4内への導入前、又は、懸濁液の流体槽4内への導入後のいずれかのタイミングで、電極10a,10bに電圧を印加する(S203)。本実施形態では、開口8によって電極10a,10bの間で不均一電界を形成するように、電極10a,10bに電圧を印加する。たとえば、周波数1MHzの交流電圧を電極10a,10bに印加する。印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。本実施形態では、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電極10a,10bに電圧を印加してもよい。懸濁液中のポリスチレンビーズは、正の誘電泳動力を受けて、開口8に捕捉される。本実施形態では、スターラーバー4e,4fを駆動させて、流体槽4内で懸濁液を循環させる(S204)。循環する懸濁液の流速は、たとえば、1.8mL/時である。懸濁液が流体槽4内を循環するので、懸濁液内の微粒子が、より効率的に開口8に捕捉される。手順S204は、手順S203と同時、手順S203の前、又は手順S203の後のいずれかのタイミングで行われてよい。
【0082】
続いて、微粒子分析方法を説明する。微粒子分析方法では、開口8への光照射と受光とを行う(S205)。微粒子分析方法では、開口8に捕捉したポリスチレンビーズに光L1を照射する。光の照射では、照射部30を駆動し、開口8に捕捉されたポリスチレンビーズに光L1を照射する。受光部35を駆動し、ポリスチレンビーズから発せられる光F1を受光する。本実施形態では、光L1の照射によって発せられるポリスチレンビーズからの蛍光を受光する。
【0083】
本実施形態では、微粒子を含んでいる流体は、ポリスチレンビーズを含んでいる懸濁液の他、超純水中にロタウイルスを含んでいる懸濁液、又はタバコモザイクウイルス(TMV)と単純ヘルペスウイルス1型(HSV)とを含んでいる懸濁液であってもよい。
【0084】
(第3実施形態)
図9図11を参照して、第3実施形態に係る微粒子分析装置の構成を説明する。図9は、第一方向から見た第3実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。図10は、第三方向から見た第3実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。図11は、第二方向から見た第3実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。
【0085】
微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1を備えている。まず、微粒子捕捉装置TD1の構成を説明する。微粒子捕捉装置TD1は、筐体1と、電極10a,10bとを備えている。筐体1は、一対の基部2と、壁部3とを有している。一対の基部2と、壁部3とは、互いに連結されている。壁部3は、側壁部5を有している。一対の基部2は、基部2rと基部2sとからなり、基部2rと基部2sとは、第一方向D1で側壁部5を挟んで互いに対向している。基部2rと側壁部5と基部2sとは、第一方向D1で並んでおり、それぞれ互いに連結されている。筐体1では、基部2r,2sと側壁部5との内部に流体槽4が画成されている。流体槽4は、筐体1により画成されている。本実施形態では、流体槽4は、基部2r,2sと側壁部5とに囲まれた流路である。基部2r,2sと側壁部5とが、流体槽4を画成している。側壁部5は、第一方向D1から見て、流体槽4を囲んでいる。基部2r,2sと側壁部5とは、第二方向D2及び第三方向D3から見て、流体槽4を囲んでいる。
【0086】
流体槽4内では、懸濁液は、たとえば、第二方向D2に流れる。懸濁液は、流体槽4の一部又は全部を満たすように流れる。基部2r,2sと側壁部5とは、互いに別体に形成されている。基部2r,2sと側壁部5とは、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。基部2r,2sと側壁部5とは、一体化されていてもよい。
【0087】
一対の基部2のうち、基部2sには、導入ポート6pと排出ポート6qとが形成されている。本実施形態では、導入ポート6p及び排出ポート6qは、第1実施形態に係る導入ポート6p及び排出ポート6qと同一の構成を有していてもよい。基部2r,2sは、第1実施形態に係る基部2と同一のサイズと材質とを有していてもよい。側壁部5は、たとえば、絶縁材料からなる。側壁部5は、シリコーンゴムで構成されている。流体槽4は、第1実施形態に係る流体槽4と同一のサイズを有していてもよい。懸濁液は、第1実施形態と同一の懸濁液である。
【0088】
壁部3には、隔壁部7が配置されている。側壁部5は、第一側壁5aと第二側壁5bとを有しており、隔壁部7は、第三方向D3で第一側壁5aと第二側壁5bとに挟まれて、側壁部5に保持されている。第一側壁5aと第二側壁5bとは、第一方向D1で並んでいる。隔壁部7は、流体槽4の第三方向D3での両側部を連結するように、当該流体槽4内を第三方向D3に延びている。隔壁部7は、たとえば、導入ポート6pと排出ポート6qとを除く領域で、流体槽4内を第二方向D2に延びている。隔壁部7は、第三方向D3から見て、たとえば、流体槽4の中央領域に配置されており、第一方向D1で流体槽4の中央領域を分離している。隔壁部7は、第一方向D1で流体槽4を二等分してもよい。隔壁部7では、第一方向D1から見て、流体槽4内であって電極10の間に少なくとも一つの開口8が形成されている。本実施形態では、隔壁部7には、六つの開口8が形成されている。六つの開口8は、第二方向D2で並んでいる。開口8は、たとえば、第一方向D1から見て、円形状を呈している。六つの開口8は、第一方向D1から見て、第三方向D3で流体槽4を二等分するように並んでいてもよい。
【0089】
隔壁部7は、絶縁材料で構成されており、本実施形態では、隔壁部7は、絶縁材料からなる絶縁膜で構成される。絶縁膜は、たとえば、エポキシ樹脂シート又はポリイミドシートからなる。エポキシ樹脂シートは、たとえば、SU-8(登録商標)フォトレジストシートであり、ポリイミドシートは、たとえば、カプトン(登録商標)シートである。SU-8フォトレジストシートは、たとえば、以下の方法で作成される。すなわち、初めに、シリコンウェハ基板上に犠牲層をスピンコート法によりコートする。続いて、スピンコート法によって、犠牲層の上にSU-8フォトレジストシートを形成する。続いて、フォトリソグラフィーによって、SU-8フォトレジストシートに開口を形成する。開口は、たとえば、円形を呈する。開口が円形を呈す場合、開口の直径は、たとえば、5μmである。開口の形成後、犠牲層を溶解し、シリコンウェハ基板からSU-8フォトレジストシートを剥離する。犠牲層の剥離後、SU-8フォトレジストシートが作製される。絶縁膜は、たとえば、接着剤により側壁部5と接着されている。カプトンシートについても、同様の方法で作製され得る。
【0090】
電極10a,10bは、第一方向D1で互いに対向する領域を有するように配置されている。電極10aは、一対の基部2のうち、一の基部2rの内側の面2t上に配置されている。電極10bは、別の一の基部2sの内側の面2u上に配置されている。電極10aは、一対の端縁10c,10dを有している。一対の端縁10c,10dは、電極10aの第三方向D3での両端を規定している。端縁10cは、流体槽4の内側に露出している。端縁10cは、基部2rの一の端縁2eから離間している。端縁10dは、流体槽4の外側に露出し、基部2rの一の端縁2dに達している。端縁2d,2eは、基部2rの第三方向D3での両端を規定している。電極10bは、一対の端縁10e,10fを有している。一対の端縁10e,10fは、電極10bの第三方向D3での両端を規定している。端縁10eは、流体槽4の内側に露出している。端縁10eは、基部2sの一の端縁2fから離間している。端縁10fは、流体槽4の外側に露出し、基部2sの一の端縁2gに達している。端縁2f,2gは、基部2sの第三方向D3での両端を規定している。
【0091】
電極10a,10bの厚さは、共に、たとえば、100nmである。第二方向D2及び第三方向D3から見て、電極10a,10bは、第一方向D1で互いに400μmだけ離間している。電極10a,10bの第二方向D2での長さは、共に、たとえば、10mmである。第一方向D1から見た電極10a,10b間の第三方向D3での間隔は、たとえば、200μmである。電極10a,10bの第三方向D3での長さは、共に、たとえば、12.9mmである。本実施形態では、隔壁部7は、第一方向D1で流体槽4を二等分してもよく、電極10a,10bは、第二方向D2から見て、隔壁部7での仮想的な中心点に対して、互いに対称となるように配置されていてもよい。電極10a,10bは、制御部20と電気的に接続されている。制御部20は、電極10a,10bに電圧を印加する。電圧の印加によって、電極10a,10bは、流体槽4内に電界を形成する。
【0092】
電圧の印加によって、電極10a,10bは、第一方向D1から見て、第三方向D3に電界を形成する。電極10a,10bで形成された電界は、開口8を通過する。開口8が円形状を呈する場合、開口8の直径は、電極10a,10bの第二方向D2での長さに比べて小さい。開口8を除く隔壁部7は、電界の通過を遮断する。電極10a,10bの間で生成した電界は、開口8で集中する。この結果、電極10a,10bの間に不均一電界が形成される。本実施形態では、隔壁部7は、開口8によって流体槽4内であって電極10a,10bの間で不均一電界が形成されるように、電極10a,10bの間に配置されている。
【0093】
開口8が円形状を呈している場合、開口8の直径は、たとえば、5μmである。開口8を画成する端部を除く隔壁部7の厚さは、たとえば、50μmである。第二方向D2での各開口8の距離は、たとえば、200μmである。本実施形態において、開口8の形状は、第一方向D1から見て、矩形状であってもよく、楕円形状であてもよい。
【0094】
本実施形態では、周波数1MHzの交流電圧を電極10a,10bに印加する。印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。本実施形態では、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電極10a,10bに電圧を印加してもよい。懸濁液中のポリスチレンビーズは、正の誘電泳動力を受けて、開口8に捕捉される。本実施形態でも、第1実施形態に係る微粒子分析装置AD1と同一の構成を有する微粒子分析装置AD1を用い、第1実施形態と同一の分析方法によって、開口8に捕捉したポリスチレンビーズに光L1を照射し、ポリスチレンビーズから発せられる光F1を受光する。
【0095】
本実施形態では、微粒子を含んでいる流体は、ポリスチレンビーズを含んでいる懸濁液の他、超純水中にロタウイルスを含んでいる懸濁液、又はタバコモザイクウイルス(TMV)と単純ヘルペスウイルス1型(HSV)とを含んでいる懸濁液であってもよい。
【0096】
(第4実施形態)
図12図14を参照して、第4実施形態に係る微粒子分析装置の構成を説明する。図12は、第一方向から見た第4実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。図13は、第三方向から見た第4実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。図14は、第二方向から見た第4実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1を備えている。まず、微粒子捕捉装置TD1の構成を説明する。
【0097】
微粒子捕捉装置TD1は、筐体1と、電極10a,10bとを備えている。筐体1は、一対の基部2と、壁部3とを有している。一対の基部2と、壁部3とは、互いに連結されている。壁部3は、側壁部5を有している。一対の基部2は、基部2rと基部2sとからなり、基部2rと基部2sとは、第一方向D1で側壁部5を挟んで互いに対向している。基部2rと側壁部5と基部2sとは、第一方向D1で並んでおり、それぞれ互いに連結されている。筐体1では、基部2r,2sと側壁部5との内部に流体槽4が画成されている。流体槽4は、筐体1により画成されている。本実施形態では、流体槽4は、基部2r,2sと側壁部5とに囲まれた流路である。基部2r,2sと側壁部5とが、流体槽4を画成している。側壁部5は、第一方向D1から見て、流体槽4を囲んでいる。基部2r,2sと側壁部5とは、第二方向D2及び第三方向D3から見て、流体槽4を囲んでいる。
【0098】
流体槽4内では、懸濁液は、たとえば、第二方向D2に流れる。懸濁液は、流体槽4の一部又は全部を満たすように流れる。基部2r,2sと側壁部5とは、互いに別体に形成されている。基部2r,2sと側壁部5とは、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。基部2r,2sと側壁部5とは、一体化されていてもよい。
【0099】
一対の基部2のうち、基部2sには、導入ポート6pと排出ポート6qとが形成されている。本実施形態では、導入ポート6p及び排出ポート6qは、第1実施形態に係る導入ポート6p及び排出ポート6qと同一の構成を有していてもよい。基部2r,2sは、第1実施形態に係る基部2と同一のサイズと材質とを有していてもよい。側壁部5は、たとえば、絶縁材料からなる。側壁部5は、シリコーンゴムで構成されている。流体槽4は、第1実施形態に係る流体槽4と同一のサイズを有していてもよい。
【0100】
壁部3には、隔壁部7が配置されている。側壁部5は、第一側壁5aと第二側壁5bとを有しており、隔壁部7は、第三方向D3で第一側壁5aと第二側壁5bとに挟まれて、側壁部5に保持されている。第一側壁5aと第二側壁5bとは、第一方向D1で並んでいる。隔壁部7は、流体槽4の第三方向D3での両側部を連結するように、当該流体槽4内を第三方向D3に延びている。隔壁部7は、たとえば、導入ポート6pと排出ポート6qとを除く領域で、流体槽4内を第二方向D2に延びている。隔壁部7は、第三方向D3から見て、たとえば、流体槽4の中央領域に配置されており、第一方向D1で流体槽4の中央領域を分離している。隔壁部7は、第一方向D1で流体槽4を二等分してもよい。隔壁部7には、たとえば、二つの開口8が形成されている。二つの開口8は、第二方向D2で並んでいる。開口8は、第一方向D1から見て、共に、第三方向D3に延びるスリットの形状を呈している。
【0101】
開口8は、第一方向D1から見て、円形状又は矩形状を呈していてもよい。開口8の数は、一つであってもよく、複数であってもよい。開口8の数が複数である場合、複数の開口8が、第三方向D3で配列していてもよい。複数の開口8が、円形状を呈している場合、たとえば、直径が1μm又は5μmである複数の開口8が、第三方向D3で、200μmだけ互いに離間していてもよい。上記円形状は、真円形状以外に、たとえば、楕円形状及び長円形状を含む。
【0102】
隔壁部7は、絶縁材料で構成されており、本実施形態では、隔壁部7は、絶縁材料からなる絶縁膜で構成されている。絶縁膜は、たとえば、第3実施形態の絶縁膜と同一の材料からなるシートである。隔壁部7は、たとえば、接着剤により側壁部5と接着されている。
【0103】
電極10a,10bは、第一方向D1で互いに対向する領域を有するように配置されている。電極10aは、一対の基部2のうち、一の基部2rの内側の面2t上に配置されている。電極10bは、別の一の基部2sの内側の面2u上に配置されている。電極10a,10bは、たとえば、金属膜からなる。金属膜は、たとえば、アルミニウム膜からなり、蒸着法によって形成されてもよい。電極10a,10bは、第一方向D1から見て、たとえば、櫛形状を呈している。
【0104】
電極10aは、一対の端縁10c,10dを有している。一対の端縁10c,10dは、電極10aの第三方向D3での両端を規定している。電極10aは、端縁10cを含む領域と、端縁10dを含む領域とを含んでいる。端縁10cを含む領域は、複数の部分に分割されている。すなわち、分割されている複数の部分が、端縁10cを含む領域を構成する。分割されている複数の部分それぞれが、端縁10cを含んでいる。端縁10cを含む領域を構成する複数の部分は、第二方向D2に並んでいる。端縁10cを含む領域を構成する複数の部分のうち、第二方向D2で互いに隣り合う二つの部分は、第二方向D2で離間している。第二方向D2で互いに隣り合う二つの部分の間には、間隙10mが形成されている。本実施形態では、端縁10cを含む領域は、三つに分割されており、三つの部分から構成されている。したがって、電極10aには、二つの間隙10mが形成されている。端縁10cを含む領域と、端縁10dを含む領域とは、一体に形成されている。
【0105】
端縁10cを含む領域を構成する複数の部分は、端縁10dを含む領域から第三方向D3に延在している。端縁10dを含む領域は、分割されていない。したがって、本実施形態では、各間隙10mの第三方向D3での一端は、端縁10dを含む領域で規定される。各間隙10mの第二方向D2での両端は、上述した、第二方向D2で互いに隣り合う二つの部分で規定される。各間隙10mは、端縁10dから離間している。
【0106】
電極10aは、端縁10cを含む領域のうち、端縁10cを除く部分で、流体槽4の内側に露出している。すなわち、電極10aは、間隙10mが流体槽4内に臨むように、基部2に配置されている。端縁10cは、基部2rの一の端縁2eから離間している。端縁10dは、流体槽4の外側に露出し、基部2rの一の端縁2dに達している。端縁2d,2eは、基部2rの第三方向D3での両端を規定している。
【0107】
電極10bは、一対の端縁10e,10fを有している。一対の端縁10e,10fは、電極10bの第三方向D3での両端を規定している。電極10bは、端縁10eを含む領域と、端縁10fを含む領域とからなる。端縁10eを含む領域は、複数の部分に分割されている。すなわち、分割されている複数の部分が、端縁10eを含む領域を構成する。分割されている複数の部分それぞれが、端縁10eを含んでいる。端縁10eを含む領域を構成する複数の部分は、第二方向D2に並んでいる。端縁10eを含む領域を構成する複数の部分のうち、第二方向D2で互いに隣り合う二つの部分は、第二方向D2で離間している。第二方向D2で互いに隣り合う二つの部分の間には、間隙10nが形成されている。本実施形態では、端縁10eを含む領域は、三つに分割されており、三つの部分から構成されている。したがって、電極10bには、二つの間隙10nが形成されている。端縁10eを含む領域と、端縁10fを含む領域とは、一体に形成されている。端縁10eを含む領域を構成する複数の部分は、端縁10fを含む領域から第三方向D3に延在している。端縁10fを含む領域は、分割されていない。したがって、本実施形態では、各間隙10nの第三方向D3での一端は、端縁10fを含む領域で規定される。各間隙10nの第二方向D2での両端は、上述した、第二方向D2で互いに隣り合う二つの部分で規定される。各間隙10nは、端縁10fから離間している。
【0108】
電極10bは、端縁10eを含む領域のうち、端縁10eを除く部分で、流体槽4の内側に露出している。すなわち、電極10bは、間隙10nが流体槽4内に臨むように、基部2に配置されている。端縁10eは、基部2rの一の端縁2fから離間している。端縁10fは、流体槽4の外側に露出し、基部2rの一の端縁2gに達している。端縁2f,2gは、基部2sの第三方向D3での両端を規定している。
【0109】
図12に示されるように、電極10a,10bは、間隙10mと間隙10nとの位置が略一致するように、基部2に配置されている。隔壁部7は、第一方向D1から見て、開口8が間隙10m,間隙10nと重なるように、基部2に配置されている。すなわち、本実施形態では、二つの間隙10mのうちの一の間隙10mと、二つの開口8のうちの一つの開口8と、二つの間隙10nのうちの一の間隙10nとは、第一方向D1で並んでいる。二つの間隙10mのうちの別の一の間隙10mと、二つの開口8のうちの別の一つの開口と、二つの間隙10nのうちの別の一の間隙10nとは、第一方向D1で並んでいる。図12では、説明のため、第一方向D1から見て、電極10aと電極10bとを意図的にずらして図示している。実際には、第一方向D1から見て、電極10aの外縁は、電極10bの外縁と重なり合う部分を有している。
【0110】
電極10a,10bの厚さは、たとえば、共に、100nmである。二つの間隙10m及び二つの間隙10nの第三方向D3での長さは、たとえば、全て、4mmである。二つの間隙10m及び二つの間隙10nの第二方向D2での長さは、たとえば、全て、200μmである。電極10aでの端縁10c,10d間の長さは、たとえば、共に、15mmである。電極10bでの端縁10e,10f間の長さは、たとえば、15mmである。電極10a,10bの第二方向D2での長さは、たとえば、共に、10mmである。第二方向D2及び第三方向D3から見た、電極10a,10b間の第一方向D1での距離は、たとえば、400μmである。本実施形態では、隔壁部7は、第一方向D1で流体槽4を二等分してもよく、電極10a,10bは、第二方向D2から見て、隔壁部7での仮想的な中心点に対して、互いに対称となるように配置されていてもよい。電極10a,10bは、制御部20と電気的に接続されている。制御部20の電源からの電圧の印加によって、電極10a,10bは、流体槽4内に電界を形成する。
【0111】
電圧の印加によって、電極10a,10bは、流体槽4内に電界を形成する。電極10a,10bで形成された電界は、開口8を通過する。第二方向D2での開口幅は、電極10a,10bの第二方向D2での長さに比べて小さい。開口8を除く隔壁部7は、電界の通過を遮断する。電極10a,10bの間で生成した電界は、開口8で集中する。この結果、電極10a,10bの間に不均一電界が形成される。本実施形態では、隔壁部7は、開口8によって流体槽4内であって電極10a,10bの間で不均一電界が形成されるように、電極10a,10bの間に配置されている。
【0112】
開口幅は、二つの開口8で互いに異なっている。二つの開口8のうち、一の開口8の開口幅は、たとえば、1μmである。別の一の開口8bの開口幅は、たとえば、5μmである。二つの開口8の第二方向D2での間隔は、たとえば、5mmである。第一方向D1から見て、開口8の形状は、円形状であってもよく、楕円形状であってもよい。
【0113】
第4実施形態では、第1実施形態と同一のタバコモザイクウイルスと単純ヘルペスウイルス1型との懸濁液を流体槽4に導入し、交流電圧を電極10a,10bに印加する。印加電圧の周波数は、たとえば、1MHzである。印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。本実施形態では、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電極10a,10bに電圧を印加してもよい。懸濁液中の二種類のウイルスは、共に、正の誘電泳動力を受けて、開口8に捕捉される。開口8の開口幅が小さくなるに従って、電界は、より開口8で集中する。本実施形態では、タバコモザイクウイルスは、開口幅が互いに異なる二つの開口8に捕捉される。単純ヘルペスウイルス1型は、開口幅の小さな開口8のみに捕捉される。
【0114】
本実施形態でも、開口8に捕捉した微粒子に光L1を照射し、微粒子から発せられる光F1の一例として蛍光を受光する。タバコモザイクウイルスは、二つの開口8に捕捉されるので、二つの開口8からタバコモザイクウイルスに由来する赤色蛍光が観測される。単純ヘルペスウイルス1型は、開口幅の小さな開口8のみに捕捉されるので、開口幅の小さな開口8のみから、単純ヘルペスウイルス1型に由来する緑色蛍光が観測される。互いに異なる開口幅を有する二つの開口8が形成されている場合に、各ウイルスが受ける誘電泳動力の大きさの違いによって、各ウイルスを捕捉する開口8が区別され得る。
【0115】
(第5実施形態)
図15を参照して、第5実施形態に係る微粒子分析装置の構成を説明する。図15は、第一方向から見た第5実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1を備えている。まず、微粒子捕捉装置TD1の構成を説明する。
【0116】
微粒子捕捉装置TD1は、筐体1と、電極11a,11bと、電極12a,12bとを備えている。筐体1は、基部2と壁部3とを有している。基部2と壁部3とは、互いに連結されている。筐体1には、基部2と壁部3とによって流体槽4が形成されている。流体槽4は、筐体1により画成されている。本実施形態では、流体槽4は、基部2と壁部3とに囲まれた流路である。基部2と壁部3との内部に流体槽4が画成されている。基部2と壁部3とが、流体槽4を画成している。懸濁液は、たとえば、流体槽4内を第二方向D2に流れる。懸濁液は、流体槽4の一部又は全部を満たすように流れる。たとえば、電極11aが第一の電極を構成する場合、電極11bは第二の電極を構成する。たとえば、電極12aが第一の電極を構成する場合、電極12bは第二の電極を構成する。
【0117】
本実施形態に係る基部2は、第1実施形態に係る基部2と同一のサイズと材質とを有していてもよい。本実施形態の流体槽4は、第1実施形態に係る流体槽4と同一のサイズを有していてもよい。
【0118】
壁部3は、側壁部5と上壁部6とを有している。側壁部5と上壁部6とは、互いに連結されている。上壁部6は、第一方向D1で基部2に対向している。側壁部5は、第一方向D1から見て、流体槽4を囲んでいる。上壁部6は、第一方向D1で基部2に対向している。基部2と側壁部5と上壁部6とは、第二方向D2及び第三方向D3から見て、流体槽4を囲んでいる。上壁部6には、導入ポート6pと排出ポート6qとが形成されている。本実施形態に係る導入ポート6p及び排出ポート6qは、第1実施形態に係る導入ポート6p及び排出ポート6qと同一の構成を有していてもよい。側壁部5と上壁部6とは、たとえば、絶縁材料からなる。本実施形態では、側壁部5と上壁部6とは、シリコーンゴムで構成されている。
【0119】
壁部3には、隔壁部7が配置されている。隔壁部7は、流体槽4内に位置している。隔壁部7は、たとえば、上壁部6に接続されている。隔壁部7は、たとえば、第一方向D1で、上壁部6と基部2との間を延在している。隔壁部7は、基部2に接していてもよい。隔壁部7は、たとえば、導入ポート6pと排出ポート6qとを除く領域で、流体槽4内を第二方向D2に延びている。隔壁部7は、第二方向D2から見て、たとえば、流体槽4の中央領域に配置されており、第三方向D3で流体槽4を分離している。隔壁部7は、絶縁材料からなる。本実施形態では、隔壁部7は、シリコーンゴムで構成されている。
【0120】
隔壁部7は、上壁部6と一体化されていてもよい。隔壁部7は、上壁部6と別体に形成されていてもよい。基部2と隔壁部7とは、互いに別体に形成されている場合、たとえば、接着剤によって互いに接着されている。隔壁部7は、基部2上に形成されていてもよく、上壁部6と接していなくてもよい。隔壁部7は、基部2と一体化されていてもよい。
【0121】
隔壁部7には、二つの開口8a,8bが形成されている。開口8は、スリット状を呈しており、スリット状の開口8が、第一方向D1に延びている。開口8は、上壁部6の内側の面と、基部2の内側の面との間を延在している。開口8は、上壁部6の内側の面に達していてもよく、基部2の内側の面に達していてもよい。開口8は、基部2の内側の面に達していなくてもよく、上壁部6の内側の面に達していなくてもよい。
【0122】
第一及び第二の電極11a,11bは、第三方向D3で互いに対向するように配置されている。電極11a,11bは、共に、基部2の内側の面2a上に配置され、第三方向D3で互いに対向している。電極11aは、一対の端縁11c,11dを有している。一対の端縁11c,11dは、電極11aの第三方向D3での両端を規定している。端縁11cは、流体槽4の内側に露出している。端縁11dは、流体槽4の外側に露出し、基部2の一の端縁2bに達している。電極11bは、一対の端縁11e,11fを有している。一対の端縁11e,11fは、電極11bの第三方向D3での両端を規定している。端縁11eは、流体槽4の内側に露出している。端縁11fは、流体槽4の外側に露出し、基部2の別の一の端縁2cに達している。端縁2b,2cは、基部2の第三方向D3での両端を規定している。
【0123】
第一及び第二の電極12a,12bは、第三方向D3で互いに対向するように配置されている。電極12a,12bは、基部2の内側の面上に配置され、第三方向D3で互いに対向している。電極12aは、一対の端縁12c,12dを有している。一対の端縁12c,12dは、電極12aの第三方向D3での両端を規定している。端縁12cは、流体槽4の内側に露出している。端縁12dは、流体槽4の外側に露出し、基部2の一の端縁2bに達している。電極12bは、一対の端縁12e,12fを有している。一対の端縁12e,12fは、電極12bの第三方向D3での両端を規定している。端縁12eは、流体槽4の内側に露出している。端縁12fは、流体槽4の外側に露出し、基部2の別の一の端縁2cに達している。
【0124】
電極11a,11b,12a,12bは、たとえば、金属膜からなる。金属膜は、たとえば、アルミニウム膜からなり、蒸着法によって形成されてもよい。電極11a,11b,12a,12bは、第一方向D1から見て、たとえば、矩形状を呈している。電極11a,11b,12a,12bの厚さは、共に、たとえば、100nmである。電極11a,11bは、たとえば、第三方向D3で互いに離間している。第三方向D3での電極11a,11b間の間隔は、たとえば、400μmである。電極11a,11bの第三方向D3での長さは、共に、たとえば、12.8mmである。電極11a,11bの第二方向D2での長さは、共に、たとえば、5mmである。本実施形態では、電極12a,12bのサイズと電極間の間隔は、電極11a,11bのサイズと電極間の間隔と同一である。電極11a,11b,12a,12bは、制御部20と電気的に接続されている。制御部20の電源からの電圧の印加によって、電極11a,11b,12a,12bは、流体槽4内に電界を形成する。
【0125】
隔壁部7では、第一方向D1から見て、電極11a,11bの間と、電極12a,12bの間とに、少なくとも一つの開口8が形成されている。本実施形態では、第一方向D1から見て、二つの開口8のうち、一の開口8aが、第三方向D3で電極11a,11bの間に位置している。第一方向D1から見て、別の一の開口8bが、第三方向D3で電極12a,12bの間に位置している。開口8aは、第三方向D3から見て、電極11a,11bが配置されている領域に位置している。開口8bは、第三方向D3から見て、電極12a,12bが配置されている領域に位置している。
【0126】
電極11a,11bは、電圧の印加によって、第三方向D3に沿って電界を形成する。電極12a,12bは、電圧の印加によって、第三方向D3に沿って電界を形成する。電極11a,11bで形成された電界は、開口8aを通過する。電極12a,12bで形成された電界は、開口8bを通過する。第二方向D2での各開口8a,8bの開口幅は、電極11a,11b,12a,12bの第二方向D2での長さに比べて小さい。開口8a,8bを除く隔壁部7は、電界の通過を遮断する。電極11a,11bの間で生成した電界は、開口8aで集中し、電極11a,11bの間に不均一電界が形成される。電極12a,12bの間で生成した電界は、開口8bで集中し、電極12a,12bの間に不均一電界が形成される。開口8aは、電極11a,11bの間で不均一電界を形成するように、電極11a,11bの間に配置されている。開口8bは、電極12a,12bの間で不均一電界を形成するように、電極12a,12bの間に配置されている。
【0127】
開口8a,8bは、開口8a,8bに微粒子を捕捉するように電束密度を向上する大きさの開口幅を有している。本実施形態では、開口8a,8bの開口幅は、共に、たとえば、5μmである。開口8a,8bを画成する端部を除く隔壁部7の第三方向D3での厚さは、たとえば、50μmである。本実施形態では、二つの開口8a,8bは、第二方向D2で並んでいる。開口8a,8bの第二方向D2での間隔は、たとえば、10mmである。第三方向D3から見て、開口8a,8bの形状は、円形状であってもよく、楕円形状であってもよい。開口8a,8bは、共に、第一方向D1で懸濁液の液中に位置している。
【0128】
本実施形態では、ウイルスと細胞とからなる微粒子懸濁された懸濁液が流体槽4に導入される。本実施形態の懸濁液は、ロタウイルスとHL-60細胞とを含んでいる。ロタウイルスは、蛍光色素によって蛍光標識されている。蛍光色素は、Alexa Fluor(登録商標)488 5-TFPである。HL-60細胞は、カルセイン(登録商標)-AM蛍光色素によって蛍光標識されている。ロタウイルスとHL-60細胞とは、共に同一のソルビトール溶液中に懸濁される。ソルビトール溶液の濃度は、280mMである。懸濁液の導電率は、たとえば、10μS/mである。懸濁液中のロタウイルスの濃度は、たとえば、300ng/mLである。懸濁液中のHL-60細胞の濃度は、たとえば、10個/mLである。ロタウイルスの外径は、たとえば、100nmである。HL-60細胞の外径は、たとえば、10μmである。懸濁液を準備した後、導入ポート6pから流体槽4内に懸濁液を導入する。
【0129】
交流電圧を電極11a,11bと電極12a,12bとに印加する。本実施形態では、電極11a,11bと電極12a,12bとに印加される電圧の周波数は、互いに異なっている。電極11a,11bに印加される電圧の周波数は、たとえば、10kHzである。電極12a,12bに印加される電圧の周波数は、たとえば、6MHzである。電極11a,11bに印加される印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。電極12a,12bに印加される電圧の大きさは、たとえば、10Vppである。
【0130】
電極11a,11bの間では、周波数10kHzで不均一電界が形成される。電極12a,12bの間では、周波数6MHzで不均一電界が形成される。本実施形態では、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電極12a,12bに電圧を印加してもよい。周波数10kHzの不均一電界では、ロタウイルスは、正の誘電泳動力を受けて、開口8aに捕捉され、HL-60細胞は、負の誘電泳動力を受けて、開口8aに捕捉されない。周波数6MHzの不均一電界では、ロタウイルスは、負の誘電泳動力を受けて、開口8bに捕捉されず、HL-60細胞は、正の誘電泳動力を受けて、開口8bに捕捉される。本実施形態では、電極11a,11bと電極12a,12bとに印加する交流電圧の周波数によって、開口8a,8bのそれぞれに捕捉される微粒子が区別され得る。
【0131】
第5実施形態でも、第1実施形態と同一の微粒子分析装置AD1を用い、第1実施形態と同一の分析方法によって、開口a,8bに捕捉した微粒子に光L1を照射し、微粒子から発せられる光F1の一例として蛍光を受光する。本実施形態では、開口8aから、ロタウイルスに由来する蛍光が観測され、開口8bから、HL-60細胞に由来する蛍光が観測される。
【0132】
(第6実施形態)
微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1を備えている。まず、微粒子捕捉装置TD1の構成を説明する。図16及び図17を参照して、第6実施形態に係る微粒子分析装置の構成を説明する。図16は、第一方向から見た第6実施形態に係る微粒子分析装置の構成を示す模式図である。図17は、第三方向から見た第6実施形態に係る微粒子分析装置の断面構成を示す模式図である。微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1を備えている。まず、微粒子捕捉装置TD1の構成を説明する。
【0133】
微粒子捕捉装置TD1は、筐体1と、複数の電極13a,13b,14a,14bとを備えている。本実施形態では、微粒子捕捉装置TD1は、四つの電極13a,13b,14a,14bを備えている。筐体1は、基部2と壁部3とを有している。基部2と壁部3とは、第一方向D1で並んでおり、互いに連結されている。筐体1では、基部2と壁部3との内部に流体槽4が画成されている。流体槽4は、筐体1により画成されている。本実施形態では、流体槽4は、基部2と壁部3とに囲まれた液体槽である。基部2と壁部3とが、流体槽4を画成している。流体槽4には、微粒子を含んでいる流体が導入される。基部2と壁部3とは、互いに別体に形成されている。基部2と壁部3とは、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。基部2と壁部3とは、一体化されていてもよい。
【0134】
基部2は、たとえば、絶縁材料からなる。本実施形態では、基部2は、ガラス材料で構成されている。基部2の厚さは、たとえば、1mmである。基部2の第二方向D2での長さは、たとえば、38mmである。基部2の第三方向D3での長さは、たとえば、26mmである。
【0135】
壁部3は、側壁部5と上壁部6とを有している。側壁部5と上壁部6とは、互いに連結されている。側壁部5は、第一方向D1から見て、たとえば、流体槽4を囲んでいる。上壁部6は、第一方向D1で基部2に対向している。基部2と側壁部5と上壁部6とは、第二方向D2から見て、流体槽4を囲んでいる。側壁部5と上壁部6とは、互いに別体に形成されており、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。側壁部5と上壁部6とは、一体化されていてもよい。側壁部5と上壁部6とは、たとえば、絶縁材料からなる。本実施形態では、側壁部5と上壁部6とは、シリコーンゴムで構成されている。
【0136】
流体槽4は、第一方向D1から見て、たとえば、円形状を呈している。流体槽4の第一方向D1での長さは、たとえば、50μmである。流体槽4が円形状を呈している場合、流体槽4の直径は、たとえば、15mmである。流体槽4は、第一方向D1から見て、楕円形状を呈していてもよく、矩形状を呈していてもよい。
【0137】
壁部3には、隔壁部7が配置されている。隔壁部7は、たとえば、二つの隔壁7a,7bからなる。二つの隔壁7a,7bのうち、一の隔壁7aは、たとえば、第二方向D2に延びている。別の一の隔壁7bは、たとえば、第三方向D3に延びている。隔壁7a,7bは、たとえば、上壁部6に接続されている。隔壁7a,7bは、第一方向D1で、上壁部6と基部2との間を延在している。隔壁7a,7bは、基部2に接していてもよい。隔壁7a,7bは、側壁部5と離間している。隔壁7a,7bは、側壁部5と接続されてしてもよい。隔壁7a,7bは、第一方向D1から見て、たとえば、流体槽4を四つに区分けしていてもよく、流体槽4を四等分していてもよい。隔壁7a,7bは、絶縁材料からなる。本実施形態では、隔壁7a,7bは、シリコーンゴムで構成されている。
【0138】
隔壁7a,7bは、上壁部6と一体化されていてもよい。隔壁7a,7bは、上壁部6と別体に形成されていてもよい。基部2と側壁部5とは、別体に形成されている場合、たとえば、互いに接着剤によって接着されている。隔壁7a,7bは、基部2上に形成され、上壁部6と接しない構成を有していてもよい。この場合、隔壁7a,7bは、たとえば、基部2に接着剤によって接着されている。隔壁7a,7bは、基部2と一体化されていてもよい。
【0139】
隔壁7aには、一の開口8aが形成されている。隔壁7bには、一の開口8bが形成されている。開口8a,8bは、たとえば、スリット状を呈しており、スリット状の開口8a,8bが、第一方向D1に延びている。開口8a,8bは、第一方向D1から見て、互いに交差していてもよい。開口8a,8bは、上壁部6の内側の面6aと、基部2の内側の面2aとの間を延在している。開口8a,8bは、上壁部6の面6aに達していてもよく、基部2の面2aに達していてもよい。開口8a,8bは、基部2の面2aに達していなくてもよく、上壁部6の面6aに達していなくてもよい。開口8a,8bは、たとえば、円形状を呈していてもよい。開口8a,8bは、第一方向D1で懸濁液の液中に位置している。第一方向D1から見た開口8a,8bの構成は、第1実施形態に係る開口8を第一方向D1から見た構成と同一である。
【0140】
電極13a,13b,14a,14bは、基部2の面2a上に配置されている。本実施形態では、電極13a,13b,14a,14bは、四重極型の電極である。四重極型の電極は、たとえば、互いに同じ極性を有する電極13a,13bと、互いに同じ極性を有する電極14a,14bとからなる。電圧が印加される際には、電極13a,13bの極性と、電極14a,14bの極性とは、互いに異なっている。電極13a,13bと、互いに同じ極性を有する電極14a,14bとは、流体槽4内に配置されている。たとえば、電極13aが第一の電極を構成する場合、電極14aが第二の電極を構成してもよく、電極14bが第二の電極を構成してもよい。たとえば、電極13bが第一の電極を構成する場合、電極14aが第二の電極を構成してもよく、電極14bが第二の電極を構成してもよい。
【0141】
電極13a,13bは、たとえば、第二方向D2と第三方向D3とに交差する方向で互いに対向している。電極14a,14bは、たとえば、第二方向D2と第三方向D3とに交差する方向で互いに対向している。電極13a,13bが互いに対向している方向と、電極14a,14bが互いに対向している方向とは、互いに交差している。電極13aは、第二方向D2で、電極14aと対向している。電極13aは、第三方向D3で、電極14bと対向している。電極13bは、第二方向D2で、電極14bと対向している。電極13bは、第三方向D3で、電極14aと対向している。
【0142】
電極13aと電極14aとは、第二方向D2で互いに離間している。電極13aと電極14aとの間隔は、たとえば、300μmである。電極13aと電極14bとは、第三方向D3で離間している。電極13aと電極14bとの間隔は、たとえば、300μmである。電極13bと電極14bとは、第二方向D2で離間している。電極13bと電極14bとの間隔は、たとえば、300μmである。電極13bと電極14aとは、第三方向D3で離間している。電極13bと電極14aとの間隔は、たとえば、300μmである。電極13a,13b,14a,14bは、たとえば、金属膜である。金属膜は、たとえばアルミニウム膜からなり、蒸着法によって形成されてもよい。電極13a,13b,14a,14bの厚さは、たとえば、100nmである。
【0143】
基部2の面2aには、たとえば、四つの中継電極15a,15b,15c,15dが、配置されている。中継電極15a,15b,15c,15dは、流体槽4の外側に位置している。中継電極15a,15bは、基部2の一の端縁2bに配置され、中継電極15c,15dは、別の一の端縁2cに配置されている。端縁2b,2cは、基部2の第三方向D3での両端を規定している。電極13aは、中継電極15aに接続され、電極13bは、中継電極15cに接続されている。電極14aは、中継電極15bに接続され、電極14bは、中継電極15dに接続されている。電極13aは、中継電極15aを介して、制御部20と電気的に接続されている。電極13bは、中継電極15cを介して、制御部20と電気的に接続されている。電極14aは、中継電極15bを介して、制御部20と電気的に接続されている。電極14bは、中継電極15dを介して、制御部20と電気的に接続されている。制御部20は、四重極型の電極13a,13b,14a,14bに電圧を印加する。四重極型の電極13a,13b,14a,14bは、それぞれ互いに絶縁されている。
【0144】
電極13a,13b,14a,14bのそれぞれは、互いに異なる極性の電極と対向している面において、たとえば、周辺領域から中央領域に向かうに従って緩やかに突き出ている形状を有していてもよい。四重極型の電極13a,13b,14a,14bのそれぞれは、第一方向D1から見て、たとえば、双曲線状のカーブを描く面を有していてもよい。この場合、電極13a,13b,14a,14bの各端縁への電界の集中が軽減される。電界の生成は、四重極以外の多重極によってもよく、たとえば、三重極型、五重極型、又は六重極型の電極によってもよい。
【0145】
制御部20の電源からの電圧の印加によって、電極13aと、電極14a及び電極14bの少なくとも一つとの間に電界が形成され、電極13bと、電極14a及び電極14bの少なくとも一つとの間に電界が形成される。開口8a,8bの開口幅は、電極13a,13b,14a,14bの第二方向D2での長さと、電極13a,13b,14a,14bの第三方向D3での長さとの合計に比べて小さい。開口8a,8bは、電界を通過させ、開口8a,8bを除く隔壁7a,7bは、電界の通過を遮断する。電極13a,13b,14a,14bで生成した電界は、開口8a,8bで集中する。この結果、流体槽4内であって電極13aと、電極14a及び電極14bの少なくとも一つとの間に不均一電界が形成され、流体槽4内であって電極13bと、電極14a及び電極14bの少なくとも一つとの間に不均一電界が形成される。
【0146】
開口8a,8bは、開口a,8bに微粒子を捕捉するように電束密度を向上する大きさの開口幅を有している。本実施形態では、開口8a,8bの開口幅は、たとえば、共に、5μmである。開口8a,8bを画成する端部を除く隔壁7a,7bの厚さは、たとえば、共に、50μmである。
【0147】
図18を参照して、第6実施形態に係る微粒子分析方法を説明する。図18は、第6実施形態に係る微粒子分析方法を示す流れ図である。本実施形態でも、微粒子分析方法は、微粒子捕捉方法を含んでいる。本実施形態の微粒子分析装置AD1の構成は、微粒子捕捉装置TD1を除いて、第1実施形態に係る微粒子分析装置AD1の構成と同一である。
【0148】
初めに、微粒子捕捉方法を説明する。微粒子捕捉方法では、流体槽4と電極13a,13b,14a,14bと隔壁部7とを準備するステップにおいて、まず、電極13a,13b,14a,14bを準備する(S301)。本実施形態では、電極13a,13b,14a,14bを、基部2の面2a上に配置する。
【0149】
続いて、懸濁液を電極13a,13b,14a,14b間に導入する(S302)。本実施形態では、電極13a,13b,14a,14bと接するように微粒子を含んでいる流体を電極13a,13b,14a,14b上に導入する。懸濁液は、面2a上に配置された電極13a,13b,14a,14bで囲まれた部分を含む領域に導入される。懸濁液の導入は、たとえば、スポイトを用いた懸濁液の滴下による。懸濁液は、たとえば、ウイルス懸濁液である。本実施形態では、ウイルス懸濁液は、超純水中にロタウイルスを懸濁して準備される。ロタウイルスは、蛍光色素によって蛍光標識されている。蛍光色素は、Alexa Fluor(登録商標)488 5-TFPである。懸濁液中のロタウイルスの濃度は、たとえば、300ng/mLである。ロタウイルスの外径は、たとえば、100nmである。懸濁液を準備した後に、電極13a,13b,14a,14b間に懸濁液が導入される。
【0150】
ウイルス懸濁液の導入後、流体槽4及び隔壁部7を準備する(S303)。本実施形態では、流体槽4を、電極13a,13b,14a,14bが配置されている基部2と、隔壁部7が配置されていると共に基部2とで流体槽4を画成する壁部3と、を有する筐体1によって準備する。基部2と壁部3とは、たとえば、互いに連結され、基部2と壁部3との内部に流体槽4を画成する。流体槽4内には、ウイルス懸濁液が導入されている。壁部3は、微粒子を含んでいる流体内に少なくとも一つの開口8a,8bが位置するように基部2に配置され、基部2と壁部3とが、流体槽4を画成する。
【0151】
本実施形態では、流体槽4及び隔壁部7を準備した後、交流電圧を電極13a,13b,14a,14bに印加する(S304)。交流電圧は、開口8a,8bによって電極13a,13b,14a,14b間で不均一電界が形成されるように印加される。印加電圧の周波数は、たとえば、1MHzである。印加電圧の大きさは、たとえば、70Vppである。本実施形態では、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電極13a,13b,14a,14bに電圧を印加してもよい。懸濁液中のロタウイルスは、正の誘電泳動力を受けて、開口8a,8bに捕捉される。
【0152】
続いて、微粒子分析方法を説明する。微粒子分析方法では、開口8a,8bへの光照射と受光とを行う(S305)。微粒子分析方法では、開口8a,8bに捕捉したロタウイルスに光L1を照射する。光の照射では、照射部30を駆動し、開口8a,8bに捕捉されたロタウイルスに光L1を照射する。本実施形態では、受光部35を駆動し、ロタウイルスから発せられる光F1を受光する。光F1は、蛍光である。本実施形態では、微粒子を含んでいる流体は、超純水中にロタウイルスを含んでいる懸濁液の他、ポリスチレンビーズを含んでいる懸濁液又はタバコモザイクウイルス(TMV)と単純ヘルペスウイルス1型(HSV)とを含んでいる懸濁液であってもよい。
【0153】
本実施形態に係る各態様の効果について説明する。微粒子捕捉方法は、電極13a,13b,14a,14bを準備するステップと、微粒子を含んでいる流体を電極13a,13b,14a,14bの間に導入するステップと、電極13a,13b,14a,14bによって内部に電界が形成される流体槽4と、流体槽4内であって電極13a,13b,14a,14bの間で少なくとも一つの開口8a,8bが形成されている隔壁部7と、を準備するステップと、開口8a,8bによって電極13a,13b,14a,14bの間で不均一電界を形成するように、電極13a,13b,14a,14bに電圧を印加するステップと、を含んでいる。
【0154】
本実施形態では、隔壁部7に形成された開口8a,8bによって、流体槽4内であって電極13a,13b,14a,14bの間に不均一電界が形成され、開口8a,8bに電界が集中する。この結果、流体槽4の流体に含まれている微粒子のウイルスが、誘電泳動力を受けて開口8a,8bに捕捉され得る。微粒子捕捉方法は、流体の中から微粒子を高密度に捕捉する。
【0155】
微粒子捕捉方法において、流体槽4と電極13a,13b,14a,14bと隔壁部7とを準備するステップでは、流体槽4を、電極13a,13b,14a,14bが配置されている基部2と、隔壁部7が配置されていると共に基部2とで流体槽4を画成する壁部3と、を有する筐体1によって準備し、微粒子を含んでいる流体を流体槽4に導入するステップでは、電極13a,13b,14a,14bと接するように微粒子を含んでいる流体を電極13a,13b,14a,14b上に導入した後に、微粒子を含んでいる流体内に少なくとも一つの開口8a,8bが位置するように壁部3を基部2に配置して流体槽4を画成する。この場合、微粒子を含んでいる流体が、基部に配置された電極13a,13b,14a,14b上に導入された後に、流体内に少なくとも一つの開口8a,8bが位置するように流体槽4が画成される。電極13a,13b,14a,14bへの電圧の印加によって、流体槽4の流体に含まれている微粒子が開口8a,8bに捕捉され得る。
【0156】
微粒子捕捉方法において、電極13a,13b,14a,14bに電圧を印加するステップでは、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電極13a,13b,14a,14bに電圧を印加する。この場合、流体の中から微粒子を確実に開口8a,8bに捕捉する。
【0157】
微粒子分析方法では、上記微粒子捕捉方法によって微粒子を捕捉するステップと、捕捉した微粒子に光L1を照射するステップと、光の照射によって発せられる微粒子からの光F1を受光するステップとを含んでいる。この場合、開口8a,8bに高密度に捕捉された微粒子に光L1が照射されるので、微粒子からの光F1の光量が増大する。本実施形態では、微粒子が電極13a,13b,14a,14bから離間した開口8a,8bで捕捉されるので、照射部30から微粒子に照射される光L1と、微粒子からの光F1とが、共に、電極13a,13b,14a,14bに遮られない。したがって、電極13a,13b,14a,14bとして、高価な透明電極を用いる必要がないので、微粒子分析方法を低コストで行い得る。
【0158】
微粒子分析方法において、微粒子を捕捉する上記ステップでは、光L1及び光F1に対して透明な隔壁部7を準備する。この場合、微粒子からの光F1の光量がより増大する。
【0159】
微粒子分析方法において、微粒子からの光F1を受光する上記ステップでは、光L1の照射によって発せられる微粒子からの蛍光を受光する。
【0160】
微粒子捕捉装置TD1は、誘電泳動によって微粒子を捕捉する微粒子捕捉装置であって、微粒子を含んでいる流体を導入する流体槽4と、流体槽4内に電界を形成する電極13a,13b,14a,14bと、流体槽4内であって電極13a,13b,14a,14bの間で少なくとも一つの開口8a,8bが形成されている隔壁部7と、を備えている。隔壁部7は、開口8a,8bによって流体槽4内であって電極13a,13b,14a,14bの間で不均一電界が形成されるように、電極13a,13b,14a,14bの間に配置されている。
【0161】
本実施形態では、隔壁部7に形成された少なくとも一つの開口8a,8bによって、流体槽4内であって電極13a,13b,14a,14bの間に不均一電界が形成され、開口8a,8bに電界が集中する。この結果、微粒子捕捉装置TD1は、誘電泳動によって、流体の中から微粒子を開口8a,8bに高密度に捕捉する。
【0162】
微粒子捕捉装置TD1では、流体槽4は、筐体1により画成され、筐体1は、電極13a,13b,14a,14bが配置されている基部2と、隔壁部7が配置されていると共に基部2とで流体槽4を画成する壁部3と、を有している。この場合、微粒子を含んでいる流体が、基部2に配置された電極13a,13b,14a,14b上に導入される。
【0163】
微粒子捕捉装置TD1では、電極13a,13b,14a,14bは、微粒子を含んでいる流体に正の誘電泳動力を作用させるように、電圧が印加されるように構成される。この場合、流体の中から確実に開口8a,8bに捕捉される。
【0164】
微粒子分析装置AD1は、微粒子捕捉装置TD1と、開口8a,8bに捕捉された微粒子に光を照射する照射部30と、光L1の照射によって発せられる微粒子からの光F1を受光する受光部35と、を備えている。この場合、開口8a,8bに捕捉された微粒子に光L1が照射されるので、微粒子からの光F1の光量が増大する。
【0165】
微粒子分析装置AD1では、隔壁部7が、光L1及び光F1の各波長に対して透明であってもよい。この場合、微粒子からの光F1の光量がより増大する。
【0166】
微粒子分析装置AD1では、受光部35は、光L1の照射によって発せられる微粒子からの蛍光を受光する。
【0167】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0168】
上述した各実施形態では、隔壁部は、開口に照射される第一の光及び微粒子からの第二の光の各波長に対して透明でなくてもよい。隔壁部が開口に照射される第一の光及び微粒子からの第二の光の各波長に対して透明である構成は、上述したように、微粒子分析方法及び微粒子分析装置において、微粒子からの第二の光がより効率的に受光される。
上述した各実施形態では、微粒子として、ポリスチレンビーズ、ウイルス、及び細胞を用いて、説明したが、適用可能な微粒子は、これらに限られない。上述のポリスチレンビーズ、ウイルス、及び細胞以外に適用可能な微粒子は、たとえば、貴金属ナノ粒子、セラミックス粒子、磁性粒子、血小板、タンパク質、ゼラチン、花粉、及び微生物である。
【符号の説明】
【0169】
4…流体槽、10a,10b…電極、11a,11b,12a,12b…電極、13a,13b,14a,14b…電極、30…照射部、35…受光部、AD1…微粒子分析装置、F1…光、L1…光、TD1…微粒子捕捉装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18