(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】PCSK9結合分子を含む組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20240705BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240705BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240705BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240705BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240705BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61P3/06
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P3/10
A61P1/16
(21)【出願番号】P 2020564676
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 US2019032710
(87)【国際公開番号】W WO2019222529
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-12
(32)【優先日】2018-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520443974
【氏名又は名称】エルアイビー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル トレーシー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ミレイ リチャード
【審査官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血中LDL粒子濃度を低下させるための組成物であって、1もしくはそれ以上の
PCSK9結合融合タンパク質の単位
用量ならびに薬学的に許容される担体を含み、前記PCSK9結合融合タンパク質は配列番号3のアミノ酸配列を有し、前記単位
用量は、約250mg~約350mgの前記PCSK9結合融合タンパク質を含
み、
ここで、前記組成物中における前記PCSK9結合融合タンパク質の濃度は、少なくとも200mg/mLである、前記組成物。
【請求項2】
少なくとも約250mg/mLの前記PCSK9結合融合タンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも約300mg/mLの前記PCSK9結合融合タンパク質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約275mg~約325mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
約300mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記薬学的に許容される担体は、緩衝剤、等張化剤、任意選択的に界面活性剤、及び溶媒を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤は、アミノ酸緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、コハク酸塩緩衝剤、及び/または重炭酸塩緩衝剤を含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記緩衝剤は、L-ヒスチジン/L-ヒスチジン一塩酸塩を含む、請求項6または請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記L-ヒスチジン/L-ヒスチジン一塩酸塩は1mg/mL~10mg/mLで存在し、pH6.8に組成物のpHを維持する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記等張化剤は、塩化ナトリウム、ブドウ糖、ショ糖、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、アルギニン、または塩化カリウム、のうちの1種または複数種を含む、請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記等張化剤は塩化ナトリウムを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記塩化ナトリウムは2mg/mL~20mg/mLで存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記界面活性剤はポリソルベート界面活性剤を含む、請求項6から請求項12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記界面活性剤はポリソルベート80である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
20mMのヒスチジン緩衝材、150mMの塩化ナトリウム及び0.02%(重量/体積)のポリソルベート80を含み、pH6.8である、請求項6から請求項14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
界面活性剤を含まない、請求項6から請求項12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記溶媒は水である、請求項6から請求項16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
フェノール、メタ-クレゾール、及び安息香酸ナトリウムから選択される防腐剤、を更に含む、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
注射ペン内に含有される、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記注射ペンは、約275mg~約300mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含有及び送達する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記注射ペンは、約300mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含有及び送達する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記単位用量の容量は、約1.5mL以下、約1mL以下、0.8mL以下、または0.25mL以下である、請求項19から請求項21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
PCSK9関連疾患を患う対象を治療するための、請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記対象は、脂質異常症、高コレステロール血症、異常脂血症、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、2型糖尿病、及び胆汁うっ滞性肝疾患から選択される症状を有するヒトである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記対象は高コレステロール血症又は家族性高コレステロール血症を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記対象は、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する、または、(ASCVD)のリスクが高い、請求項24に記載の組成物。
【請求項27】
前記対象は、スタチンを用いた治療を受けていない、または、脂質低下経口治療薬を用いた治療を受けていない、請求項23から請求項26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
前記対象は、スタチンまたは別の脂質低下経口治療薬を用いた治療を受けている、請求項23から請求項26のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
前記対象はスタチン不耐性を示す、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記組成物は、皮下投与、筋肉内投与、皮膚内投与、または静脈内投与で投与される、請求項23から請求項29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
前記対象は、週に1回から2か月間に1回、前記組成物の単位用量を投与される、請求項23から請求項29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項32】
前記対象は、月に約1回または4週間に約1回、前記組成物の単位用量を投与される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記単位用量は0.7~1.5mLの容量を有する、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記対象は、週に約1回、前記組成物の単位用量を投与される、請求項31に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年5月16日に出願された米国仮出願第62/672,187号の利益及び当該仮出願に対する優先権を主張するものであり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の分野
本開示は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)と結合するフィブロネクチン型足場ドメインタンパク質、ならびにその医薬組成物及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)は、ヒトの1番染色体上のPCSK9遺伝子がコードする酵素である。PCSK9は、低密度リポタンパク質粒子(LDL)用の受容体に結合する。肝臓及びその他細胞膜上のLDL受容体(LDLR)はLDL粒子と結合し、細胞外液から細胞内へのLDL粒子のエンドサイトーシスを開始させ、その結果、血中LDL粒子濃度が低下する。PCSK9をブロックすると、より多くのLDLRが再利用されて細胞の表面上に存在するようになり、細胞外液からLDL粒子が除去される。それゆえ、PCSK9をブロックすることにより、血中LDL粒子濃度を低下させることができる。
【0004】
モノクローナル抗体PCSK9阻害剤であるアリロクマブ及びエボロクマブは、スタチン及び他の薬剤が十分に有効ではなかったまたは忍容性が不十分である場合にLDL粒子濃度を低下させるための、2週間に1回または毎月の皮下注射薬または注入薬として承認された。毎月の注射では、所望の用量に到達させるには数ミリリットルの医薬品製品が必要となる。より高濃度の活性剤を含む製剤がより望ましい投与スケジュール及び容量をもたらすことができ得るが、これらの投与スケジュール及び容量は、溶解限度、高い粘度、及び、凝集して粒子を形成する性質を含む、生物学的製剤の不安定性によって妨げられている。Carpenter JF,et al.,Overlooking subvisible particles in therapeutic protein products:Gaps that may compromise product quality,Journal of Pharmaceutical Sciences Vol.98,Issue 4(2008)。
【0005】
PCSK9を標的とし、かつ、概ね安全で忍容性が良好なプロファイルを維持しつつ、より望ましい投与スケジュール、より少ない容量、及び/または有効性の向上という潜在能力を有する医薬組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)と高親和性で結合するフィブロネクチン足場タンパク質を含む組成物を提供し、当該組成物は、最大の生物学的作用、ならびに、より簡便な投与スケジュール、投与容量、及び患者が使いやすい送達デバイス用に、高濃度で安定的に製剤化することができる。PCSK9結合融合タンパク質は、PCSK9結合モチーフ、及びヒト血清アルブミン(HSA)のアミノ酸配列を含む。PCSK9結合モチーフ及びHSAアミノ酸配列は、遺伝子融合体として発現し得る、または、化学的にコンジュゲートされ得る。
【0007】
本明細書に記載のPCSK9結合モチーフは、第10番目のヒトフィブロネクチンIII型ドメイン(10Fn3)から誘導され高親和性で標的に結合するように遺伝子操作されたタンパク質ファミリーであるアドネクチンをベースとしている。本開示に従い、当該PCSK9結合融合タンパク質は高濃度で安定的に製剤化され、最大の生物学的作用、ならびに簡便な投与スケジュール及び容量を可能とする。本組成物中におけるPCSK9結合融合タンパク質の濃度は少なくとも100mg/mLである。一部の実施形態では、本組成物中におけるPCSK9結合融合タンパク質の濃度は少なくとも約200mg/mLである。一部の実施形態では、本組成物中におけるPCSK9結合融合タンパク質の濃度は、少なくとも約250mg/mL、または少なくとも約275mg/mL、または少なくとも約300mg/mL、または少なくとも約350mg/mLである。一部の実施形態では、PCSK9結合融合タンパク質は、約275mg~約325mg(例えば、約300mg)の単位用量で投与される。
【0008】
PCSK9結合モチーフは、本明細書に記載の(配列番号1)のアミノ酸配列またはそのバリアントを含むまたはそれから構成される。PCSK9結合モチーフは、濃度依存的にナノモル未満の親和性でヒトPCSK9に結合する。PCSK9結合モチーフは、ヒト血清アルブミン(HSA)アミノ酸配列と化学的にコンジュゲートしている、またはC末端融合している。様々な実施形態では、PCSK9結合モチーフは、C末端においてHSAアミノ酸配列と融合しており、PCSK9結合モチーフとHSAアミノ酸配列の間のアミノ酸のリンカー配列を含んでいてもよい。
【0009】
PCSK9結合融合タンパク質は、高濃度の液剤の形態で安定的に製剤化することができる。本製剤は、通常の長期保存条件、ならびに加速及び負荷条件下の短期保存において、大幅な劣化または粒子形成を示さない。例示的な製剤は、(上記の活性剤に加えて)、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン一塩酸塩、塩化ナトリウム、及び任意選択的にポリソルベート80、を含むまたは本質的にそれから構成される。
【0010】
本開示の医薬組成物は、用量あたり所定量の本開示の活性剤を含有する単位投与剤形で都合よく提供されてもよい。一部の実施形態では、単位用量の容量は、約1.5mL以下、または約1mL以下である。一部の実施形態では、単位用量の容量は、0.8mL以下、または0.7mL以下である。更に他の実施形態では、本組成物は、例えば、0.5mL未満、または約0.25mL未満、または約0.15mL未満の容量を含むマイクロドーズで投与される。様々な実施形態では、本組成物は、約20~約450mgのPCSK9結合融合タンパク質を含む単位用量で送達される。例えば、一部の実施形態では、毎週のマイクロドーズ(例えば、約0.25mL未満または約0.15mL未満の容量)で、20~約75mgの用量を投与する。他の実施形態では、約2週間毎、毎月、または2か月間毎に、約0.7~1.5mLの範囲の容量で約200~約450mgの用量を投与する。
【0011】
本組成物または製剤は、皮下投与、筋肉内投与、皮膚内投与、または静脈内投与による投与に好適である。高濃度の製剤により、皮下投与に好適な、より少ない頻度の投与スケジュール及びより少ない投与容量が可能となる。本明細書で示すとおり、比較的低濃度のPCSK9結合融合タンパク質でPCSK9の最大抑制が達成され、またより高濃度により、より長い期間の抑制が可能となる。一部の実施形態では、週に約1回、2週間に1回、または3週間に約1回、または4週間に約1回(例えば、月に約1回)、または6週間に約1回、または8週間に約1回(2か月間に約1回)、本組成物の単位用量を対象に投与する。
【0012】
一部の実施形態では、ほぼ毎週または約2週間毎に、例えば、約50~約250μLの容量などの本組成物のマイクロドーズを対象に投与する。
【0013】
ヒト対象におけるPCSK9関連疾患を治療するために、本組成物を投与してもよい。一部の実施形態では、患者はLDL(例えば、LDL-C)の低下を必要としている。一部の実施形態では、対象は、高コレステロール血症及び/またはアテローム性動脈硬化症などのコレステロール関連疾患を示していてもよい。一部の実施形態では、対象は家族性高コレステロール血症を有する。一部の実施形態では、対象は、心血管疾患(例えば、動脈硬化性冠状動脈性心疾患)を有する、または、そのリスクが高い。
【0014】
一部の実施形態では、スタチン治療薬または別の経口脂質低下治療薬と共に本組成物を投与する、あるいは、一部の実施形態では、高コレステロール血症用の唯一の治療薬として、つまり、経口脂質低下治療薬(例えば、スタチン治療薬)を用いずに、本組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】PCSK9結合融合タンパク質の構造を示す。
【
図2】非ヒト霊長類(NHP)及びヒトにおけるPCSK9の薬物動態-薬力学(PK-PD)モデルを示す。LIB-003は、PCSK9結合融合タンパク質のことを意味する。
【
図3】LDLCを標的とするPCSK9の作用を予測するためのGadkarモデルを示す。Gadkar K et al.,A Mechanistic Systems Pharmacology Model for Prediction of LDL Cholesterol Lowering by PCSK9 Antagonism in Human Dyslipidemic Populations,CPT Pharmacometrics Syst.Pharmacol.2014;3(11)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)と高親和性で結合するフィブロネクチン足場融合タンパク質を含む組成物を提供し、当該組成物は、最大の生物学的作用、ならびに、より簡便な投与スケジュール及び投与容量、及び患者が使いやすい送達デバイス、例えば、注射器またはオートインジェクターなどを用いた送達用に、高濃度で安定的に製剤化することができる。PCSK9結合融合タンパク質は、C末端に、PCSK9結合モチーフ、及びヒト血清アルブミン(HSA)をコードするアミノ酸配列を含む。
【0017】
プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型は、主に肝臓によって分泌され、肝臓のLDLRを再利用する上で重要な役割を果たす血中タンパク質であり、LDL-Cを低下させるための有効な薬物標的として同定されている。LDLRは、LDL-コレステロール(LDL-C)を血中から除去するための主要な経路である。血漿中のPCSK9は、LDL-Cと共に肝臓のLDLRに結合するが、PCSK9は、エンドサイトーシス及び分解のために受容体を標的とし、その結果、利用できる血中からLDL-Cを除去するLDLRを減少させる。PCSK9がLDLRへと結合するのを阻害することにより、LDLRの分解が防止され、LDLRの再利用が促進され、LDL-Cのクリアランスが向上し、血中LDL-Cレベルが低下する。
【0018】
本明細書に記載のPCSK9結合モチーフは、第10番目のヒトフィブロネクチンIII型ドメインから誘導され高親和性で標的に結合するように遺伝子操作されたタンパク質ファミリーである「アドネクチン」をベースとしている。「アドネクチン」は、免疫グロブリンとの配列相同性はないが、抗体可変領域に類似した様々なループを備えたβシート折りたたみ構造を有する、小さく(12kDa以下の)コンパクトなタンパク質である。アドネクチンにはジスルフィドがなく、またグリコシル化されておらず、高い熱安定性及びモノマーの溶液挙動を示し、細菌、酵母菌、または哺乳動物の発現系を用いて効率的に作製される。足場残基をほぼ一定に維持しつつ可変ループ配列及び長さを調節することにより、構造的安定性を維持したまま、ナノモル未満の標的結合親和性を達成することができる。それらのサイズを考慮すると、アドネクチンは腎臓によって速やかに濾過されることから、in vivo用途用に、薬物動態(PK)を向上させるための調節が必要となる。例示的なPCSK9結合モチーフ(アドネクチン)については、米国特許8,420,098、9,234,027、及び9,856,309に開示されており、それぞれの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0019】
本開示に従い、PCSK9結合融合タンパク質は、最大の生物学的作用、ならびに簡便な投与スケジュール及び容量を可能とするために、高濃度で安定的に製剤化される。本組成物中におけるPCSK9結合融合タンパク質の濃度は少なくとも100mg/mLである。一部の実施形態では、組成物中におけるPCSK9結合融合タンパク質の濃度は、少なくとも約150mg/mLであり、あるいは、一部の実施形態では、少なくとも約175mg/mL、または少なくとも約200mg/mL、または少なくとも約225mg/mLである。一部の実施形態では、本組成物中におけるPCSK9結合融合タンパク質の濃度は、少なくとも約250mg/mL、または少なくとも約275mg/mL、または少なくとも約300mg/mL、または少なくとも約350mg/mLである。一部の実施形態では、組成物中におけるPCSK9結合融合タンパク質の濃度は、約250mg/mL~約350mg/mLである。一部の実施形態では、組成物中におけるPCSK9結合融合タンパク質の濃度は、約250mg/mLまたは約300mg/mLである。
【0020】
PCSK9結合モチーフは、(配列番号1)、
のアミノ酸配列を含むまたはそれから構成される。PCSK9結合ループを下線で示す。一部の実施形態では、PCSK9結合モチーフは、配列番号1に対して、1~5つのアミノ酸置換、欠失、または挿入を有する、配列番号1のバリアントである。一部の実施形態では、アミノ酸改変が結合ループの外側で行われる。一部の実施形態では、1、2、または3つのアミノ酸改変が結合ループ内で行われる。
【0021】
PCSK9結合モチーフは、野生型(WT)10Fn3配列を実質的に維持して固有の免疫原性を最小限としつつ、PCSK9を特異的に標的とするように設計されている。米国特許第8,420,098号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。PCSK9結合モチーフは、濃度依存的にナノモル未満の親和性でヒトPCSK9に結合する。
【0022】
様々な実施形態では、PCSK9結合モチーフは、ヒト血清アルブミン(HSA)アミノ酸配列とC末端融合している。一部の実施形態では、HSAは、配列番号2のアミノ酸配列に対して、少なくとも80%の同一性、または少なくとも85%の同一性、または少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性、または少なくとも98%の同一性、または少なくとも99%の同一性、を有する配列を含む。例えば、HSAアミノ酸配列は、配列番号2に対して、アミノ酸置換、欠失、及び挿入から独立して選択される1~10、または1~5つの修飾を含んでいてもよい。一部の実施形態では、HSAアミノ酸配列は、配列番号2に示すように、配列番号2に対する34位に対応する位置にアラニン残基を含む。様々な実施形態では、HSAアミノ酸配列は少なくとも500アミノ酸長である。
【0023】
一部の実施形態では、PCSK9結合モチーフ及びHSAアミノ酸配列は、任意の既知の化学的コンジュゲート手法を用いて化学的にコンジュゲートされる。
【0024】
HSAは、ヘリックスクラスターで構成され17対のジスルフィド架橋を含有するマルチドメインタンパク質であり、天然のHSAにおいては、唯1つのシステイン残基Cys34が、遊離スルフヒドリル基として存在している。一部の実施形態では、PCSK9結合融合タンパク質において、このCysがアラニン残基で置換されている。HSA部分は、PCSK9結合融合タンパク質の血中半減期を向上させる役割を果たす。様々な実施形態では、PCSK9結合モチーフ及びHSAアミノ酸配列を含むPCSK9結合融合タンパク質は、約77kDaの分子量を有する。
【0025】
一部の実施形態では、HSAアミノ酸配列は、米国特許9,493,545、米国特許9,821,039、米国特許9,944,691、または米国2014/0315817(それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているバリアントである。
【0026】
一部の実施形態では、PCSK9結合モチーフとHSAアミノ酸配列は遺伝子融合により連結しており、例えば、HSAアミノ酸配列が分子のC末端において連結している。短いアミノ酸リンカーでPCSK9結合ドメインとHSAアミノ酸配列を連結させてもよい。例えば、リンカーは、2~20のアミノ酸を含んでいてもよく、あるいは、一部の実施形態では、4~10のアミノ酸を含んでいてもよい。一部の実施形態では、PCSK9結合モチーフとHSAアミノ酸配列は、6アミノ酸のリンカーを介して連結している。リンカーは、セリン、グリシン、スレオニン、及びアラニンアミノ酸で主に構成されていてもよい。例えば、リンカーはセリン/グリシンリンカーであってもよい。一部の実施形態では、リンカーは、アミノ酸配列GSGSGSを含むまたはそれから構成される。
【0027】
PCSK9結合融合タンパク質は、高濃度の液剤の形態で安定的に製剤化することができる。例えば、本製剤は、約5℃(例えば、2~8℃)の温度などの長期保存条件下、または、周囲条件における短期保存条件(例えば、25±3℃で1~6か月間)下で、大幅な劣化または粒子形成を示さない。PCSK9結合融合タンパク質を、適切な生理溶液中、例えば、生理食塩水もしくはその他の薬理学的に許容される溶媒、または緩衝溶液中に懸濁させるが、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)を任意選択的に含んでいてもよい。一部の実施形態では、本製剤は、緩衝剤、等張化剤、任意選択的に界面活性剤、及び溶媒を含む。
【0028】
薬学的に許容される担体としては、水、生理食塩水、グリセロールが挙げられる。一部の実施形態では、本製剤は、固定油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはその他の溶媒を含んでいてもよい。一部の実施形態では、溶媒は水である。
【0029】
本製剤は通常、緩衝溶液である。本明細書で使用する場合、「緩衝剤」とは、pHの大きな変動を伴わずに、ある一定量の酸または塩基を吸収することができる化学薬品のことを意味する。例示的な緩衝剤としては、クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、コハク酸塩緩衝剤、及び重炭酸塩緩衝剤が挙げられる。一部の実施形態では、緩衝剤はL-ヒスチジン/L-ヒスチジン一塩酸塩を含んでいてもよい。例えば、L-ヒスチジン/L-ヒスチジン一塩酸塩緩衝系を使用する場合、L-ヒスチジン/L-ヒスチジン一塩酸塩は、約1mg/mL~約10mg/mL、例えば、約2mg/mL~約5mg/mLで存在していてもよい。一部の実施形態では、緩衝剤は、pH約5.5~pH約7.2,例えば、pH約6.8(例えば、pH6.6~7.0)の範囲内に製剤のpHを維持する。一部の実施形態では、例えば、塩酸及び/または水酸化ナトリウムを用いて、本製剤のpHを調節する。一部の実施形態では、L-ヒスチジン/L-ヒスチジン一塩酸塩の比率は、pH調節を必要としないようにする。
【0030】
様々な実施形態では、単独または組み合わせで使用可能な等張化剤としては、ブドウ糖、ショ糖、グリセリン、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、アルギニン、塩化ナトリウム、または塩化カリウム、が挙げられる。一部の実施形態では、等張化剤は、塩化ナトリウムを含むまたはそれから構成される。例えば、本製剤は、約2~約20mg/mLの塩化ナトリウム(例えば、6~12mg/mLの塩化ナトリウム)、または、2~20mg/mLの塩化ナトリウム(または6~12mg/mLの塩化ナトリウム)の浸透圧と同等の量の1種もしくは複数種の等張化剤、を含んでいてもよい。
【0031】
一部の実施形態では、本製剤は、可溶化剤として機能することができる界面活性剤を含む。一部の実施形態では、界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。例示的な非イオン性界面活性剤としては、ポリソルベート界面活性剤、例えば、ポリソルベート20、40、60、または80などが挙げられる。例えば、本製剤はポリソルベート80を含んでいてもよい。その他の薬学的に許容される非イオン性界面活性剤もまた、単独または組み合わせで用いてもよい。一部の実施形態では、本製剤は界面活性剤を含まない。
【0032】
例示的な製剤は、クエン酸塩緩衝剤(例えば、10~50mM、pH5.6~6.0)、ヒスチジン緩衝剤(例えば、10mM~50mM、pH6.0~7.0)、またはコハク酸塩緩衝剤(例えば、10~50mM、pH5.5~6.0)、を含む。一部の実施形態では、本製剤は、アルギニン(例えば、100~200mM)、NaCl(例えば、100~200mM)、ソルビトール(例えば、100~300mM)、またはショ糖(例えば、100~300mM)から選択される賦形剤を含む。一部の実施形態では、本製剤は、界面活性剤、例えば、ポリソルベート80(例えば、0.01~0.5mg/mL)などを含む。一部の実施形態では、本製剤は界面活性剤を含有しない。
【0033】
一部の実施形態では、本製剤は、防腐剤、例えば、フェノール、メタ-クレゾール、または安息香酸ナトリウムなどを更に含む。
【0034】
一部の実施形態では、PCSK9結合融合タンパク質製剤は、(上記の活性剤に加えて)、L-ヒスチジン、L-ヒスチジン一塩酸塩、塩化ナトリウム、及びポリソルベート80から本質的になる。例示的な実施形態について、以下の表1に示す。
【表1】
【0035】
本開示の医薬組成物は、用量あたり所定量の本開示の活性剤を含有する単位投与剤形で都合よく提供されてもよい。
【0036】
一部の実施形態では、本組成物は注射ペン内に含有される。オートインジェクター、例えば、「注射ペン」などは、特定の薬剤の用量を送達するように設計されたバネ仕掛けの注射器である。設計上、注射ペンは使い易く、患者による自己投与、または訓練を受けていないスタッフによる投与を目的としている。注射ペンは、針型の薬剤送達デバイスを用いた自己投与に伴う躊躇を克服するように設計されている。注射ペンは注射前において針の先端部が覆われた状態のままとなっており、不測のファイヤー(注射)を防止するための受動的安全機構も有している。注射深度は調節可能または固定であることができ、針の遮蔽物を取り除くための機能を組み込んでもよい。ボタンを押すことにより、注射器の針が自動的に皮下組織内に挿入されて、薬剤が送達される。一部の注射ペンには、一旦注射が完了すると、全用量が送達されたことを確認するための可視または可聴式の通知がある。
【0037】
一部の実施形態では、注射ペンは、1~10の単位用量、または1~5つの単位用量を含有する。一部の実施形態では、単位用量の容量は、約1.5mL以下、または1mLである(注射ペンが含有または送達するかどうかにかかわらず)。一部の実施形態では、単位用量の容量は、0.8mL以下、または0.7mL以下である。一部の実施形態では、注射ペンは、例えば、約50μL~約500μLの範囲の容量、または約75μL~約250μLの範囲の容量を含むマイクロドーズを送達する。一部の実施形態では、マイクロドーズは100~200μLの容量を有する。様々な実施形態では、注射ペン、または皮下送達用のその他のデバイスは、30~約450mgのPCSK9結合融合タンパク質を含む用量を提供する。様々な実施形態では、単位用量は、約50~約400mg、または約50~約300mgである。一部の実施形態では、単位用量は、少なくとも200mg、または少なくとも250mg、または少なくとも300mgである。一部の実施形態では、単位用量は、約250mg~約350mg(例えば、約300mg)である。単位用量あたりに送達される活性剤の量は、所望の投与頻度に基づいて調節することができる。例えば、一部の実施形態では、毎週のマイクロドーズ(例えば、約0.25mL未満または約0.15mL未満の容量)で、20~約75mgの用量を投与する。他の実施形態では、約2週間毎、毎月、または2か月間毎に、約0.7~1.5mLの範囲の容量で約200~約450mgの用量を投与する。一部の実施形態では、約275mg~約350mg(例えば、約300mg)の用量を、4週間毎、約1.5mL以下または約1mL以下の容量で、皮下注射で投与する。
【0038】
本組成物または製剤は、皮下投与、筋肉内投与、皮膚内投与、または静脈内投与による投与に好適である。高濃度で、比較的粘度が低く、適切な浸透圧の製剤により、患者の忍容性、より少ない頻度の投与スケジュール、及びより少ない容量が可能となる。本明細書で示すとおり、比較的低濃度のPCSK9結合融合タンパク質でPCSK9の最大抑制が達成され、またより高濃度により、より長い期間の抑制が可能となった。一部の実施形態では、1週間に約1回(例えば、マイクロドーズの毎週の投与により)、または2週間に約1回、または3週間に約1回、または4週間に約1回(例えば、月に約1回)、または6週間に約1回、または8週間に約1回(2か月間に約1回)、本組成物の単位用量を対象に投与する。
【0039】
ヒト対象におけるPCSK9関連疾患を治療するために、本組成物を投与してもよい。PCSK9関連疾患については、米国特許8,420,098、9,238,027、及び9,856,306に記載されており、それら全体は参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、患者はLDL(例えば、LDL-コレステロール)の低下を必要としている。一部の実施形態では、対象は、高コレステロール血症及び/またはアテローム性動脈硬化症などのコレステロール関連疾患を示していてもよい。様々な実施形態では、対象は、脂質異常症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、高脂血症、異常脂血症、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、及び糖尿病、から選択される症状を示す。一部の実施形態では、対象は家族性高コレステロール血症を有する。一部の実施形態では、対象は、心血管疾患(例えば、動脈硬化性冠状動脈性心疾患)を有する、または、そのリスクが高い。
【0040】
高コレステロール血症は、高い血清コレステロールを特徴とする症状である。高い血清コレステロールレベルはかなりの割合の人口に影響を及ぼしており、アテローム性動脈硬化症及び心筋梗塞の重要なリスク因子である。HMG-CoA還元酵素阻害薬(「スタチン」)などのコレステロール低下薬が、通常、高コレステロール血症患者に投与される。「家族性高コレステロール血症」(FH)は、血中の高いコレステロールレベル、具体的には極めて高レベルの低密度リポタンパク質(例えば、LDL-コレステロール)、及び早期の心血管疾患を特徴とする遺伝性疾患である。FHを有する個人の高いコレステロールレベルに対する、通常のコレステロール制御法(例えば、スタチン療法)の効果はより少ない。
【0041】
FHは、LDL受容体(LDL-R)遺伝子または脂質制御に関与するその他の遺伝子における、1つの変異または複数の変異、著しく高いLDL-C、及びアテローム性動脈硬化症の早期発症を特徴とする、常染色体優性の代謝性疾患である。一部の実施形態では、高コレステロール血症は、母性LDL-R遺伝子と父性LDL-R遺伝子の両方における変異を特徴とする症状であるホモ接合性家族性高コレステロール血症すなわちHoFHである。
【0042】
一部の実施形態では、対象はヘテロ接合性FHを有する。ヘテロ接合性FHは通常、スタチン、胆汁酸隔離剤、またはコレステロールレベルを低下させるその他の脂質低下剤を用いて治療される。
【0043】
一部の実施形態では、高コレステロール血症は、様々な遺伝的要因の影響に起因する高いコレステロールを特徴とする症状である多遺伝子性高コレステロール血症である。ある特定の実施形態では、多遺伝子性高コレステロール血症は、脂質の食事摂取によって悪化し得る。
【0044】
一部の実施形態では、スタチン治療薬またはその他の経口脂質低下治療薬と共に本組成物を投与する。このような実施形態の組成物は、相加的なLDL-Cの低下をもたらす。一部の実施形態では、高コレステロール血症用の唯一の治療薬として、つまり、スタチン治療薬またはその他の経口脂質低下治療薬を用いずに、本組成物を提供する。例えば、このような実施形態では、対象はスタチン不耐性を示していてもよい。「スタチン不耐性」は、副作用、または、血液検査後の肝機能もしくは筋機能(クレアチンキナーゼ)が示す異常の発生により、患者がスタチンの使用を継続できなくなるときに発生する。一部の実施形態では、スタチン不耐性は、部分的(すなわち、一定用量の一部のスタチンのみ)または完全(すなわち、あらゆる用量の全てのスタチン)のいずれかであり得る。一部の実施形態では、スタチン不耐性は、筋肉痛、疼痛、筋力低下、または痙攣(すなわち、筋肉痛)を引き起こし、これは治療患者の最大15%に発生する。
【0045】
特に明記しない限り、「約」という用語は、本明細書で使用する場合、それに伴う数値の±10%のことを意味する。
【0046】
[項1]
少なくとも100mg/mLのPCSK9結合融合タンパク質を含む組成物であって、前記融合タンパク質は、配列番号1のPCSK9結合モチーフまたはそのバリアント、及びヒト血清アルブミン(HSA)アミノ酸配列、ならびに薬学的に許容される担体を含む、前記組成物。
[項2]
前記PCSK9結合モチーフは、前記融合タンパク質のC末端における、前記HSAアミノ酸配列との遺伝子融合体である、項1に記載の組成物。
[項3]
前記PCSK9結合モチーフは、前記HSAアミノ酸配列との化学的コンジュゲートである、項1に記載の組成物。
[項4]
少なくとも約150mg/mLの前記PCSK9結合融合タンパク質を含む、項1から項3のいずれか1項に記載の組成物。
[項5]
少なくとも約200mg/mLの前記PCSK9結合融合タンパク質を含む、項4に記載の組成物。
[項6]
少なくとも約250mg/mLの前記PCSK9結合融合タンパク質を含む、項4に記載の組成物。
[項7]
少なくとも約300mg/mLの前記PCSK9結合融合タンパク質を含む、項4に記載の組成物。
[項8]
約275mg~約325mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含む、項4に記載の組成物。
[項9]
約300mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含む、項8に記載の組成物。
[項10]
前記薬学的に許容される担体は、緩衝剤、等張化剤、任意選択的に界面活性剤、及び溶媒を含む、項1から項9のいずれか1項に記載の組成物。
[項11]
前記緩衝剤は、アミノ酸緩衝剤、クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、コハク酸塩緩衝剤、及び/または重炭酸塩緩衝剤を含む、項10に記載の組成物。
[項12]
前記緩衝剤は、L-ヒスチジン/L-ヒスチジン一塩酸塩を含む、項10または項11に記載の組成物。
[項13]
前記等張化剤は、塩化ナトリウム、ブドウ糖、ショ糖、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、アルギニン、または塩化カリウム、のうちの1種または複数種を含む、項10から項12のいずれか1項に記載の組成物。
[項14]
前記等張化剤は塩化ナトリウムを含む、項13に記載の組成物。
[項15]
前記界面活性剤はポリソルベート界面活性剤を含む、項10から項14のいずれか1項に記載の組成物。
[項16]
前記界面活性剤はポリソルベート80である、項15に記載の組成物。
[項17]
界面活性剤を含まない、項10から項14のいずれか1項に記載の組成物。
[項18]
前記溶媒は水である、項10から項17のいずれか1項に記載の組成物。
[項19]
フェノール、メタ-クレゾール、及び安息香酸ナトリウムから任意選択的に選択される防腐剤、を更に含む、項1から項18のいずれか1項に記載の組成物。
[項20]
前記PCSK9結合融合タンパク質は、前記PCSK9結合モチーフと前記HSAアミノ酸配列の間にリンカーを更に含む、項1から項19のいずれか1項に記載の組成物。
[項21]
前記リンカーは、2~20のアミノ酸を含み、かつ、セリン、グリシン、スレオニン、及び/またはアラニンを主に含む、項20に記載の組成物。
[項22]
前記リンカーは、4~10のアミノ酸を含み、かつ、セリン及び/またはグリシンから本質的になる、項21に記載の組成物。
[項23]
前記HSAアミノ酸配列は少なくとも500のアミノ酸を含む、項1から項22のいずれか1項に記載の組成物。
[項24]
前記HSAアミノ酸配列は、1~10のアミノ酸置換、欠失、または挿入を任意選択的に有する、配列番号2を含む、項23に記載の組成物。
[項25]
前記HSAアミノ酸配列は、配列番号2に対する34位にアラニン残基を含む、項23または項24に記載の組成物。
[項26]
前記PCSK9結合融合タンパク質は、1~10のアミノ酸置換、挿入、及び/または欠失を任意選択的に有する、配列番号3のアミノ酸配列を有する、項1から項25のいずれか1項に記載の組成物。
[項27]
注射ペン内に含有される、項1から項26のいずれか1項に記載の組成物。
[項28]
前記注射ペンは、約30~約450mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含有または送達する、項27に記載の組成物。
[項29]
前記注射ペンは、約275mg~約300mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含有及び送達する、項28に記載の組成物。
[項30]
前記注射ペンは、約300mgの前記PCSK9結合融合タンパク質の単位用量を含有及び送達する、項29に記載の組成物。
[項31]
前記単位用量の容量は、約1.5mL以下、または約1mL以下である、項28から項30のいずれか1項に記載の組成物。
[項32]
前記単位用量の容量は0.8mL以下である、項31に記載の組成物。
[項33]
前記単位用量の容量は約0.25mL以下である、項31に記載の組成物。
[項34]
項1から項33のいずれか1項に記載の組成物を、必要とする対象に投与することを含む、PCSK9関連疾患を治療するための方法。
[項35]
前記対象は、脂質異常症、高コレステロール血症、異常脂血症、冠状動脈性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、2型糖尿病、及び胆汁うっ滞性肝疾患、から選択される症状を有するヒトである、項34に記載の方法。
[項36]
前記対象は高コレステロール血症を有する、項35に記載の方法。
[項37]
前記対象は家族性高コレステロール血症を有する、項36に記載の方法。
[項38]
前記対象は、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する、または、(ASCVD)のリスクが高い、項35に記載の方法。
[項39]
前記対象は、スタチンを用いた治療を受けていない、または、脂質低下経口治療薬を用いた治療を受けていない、項34から項38のいずれか1項に記載の方法。
[項40]
前記対象は、スタチンまたは別の脂質低下経口治療薬を用いた治療を受けている、項34から項38のいずれか1項に記載の方法。
[項41]
前記対象はスタチン不耐性を示す、項39に記載の方法。
[項42]
前記組成物は、皮下投与、筋肉内投与、皮膚内投与、または静脈内投与で投与される、項34から項41のいずれか1項に記載の方法。
[項43]
前記対象は、週に1回から2か月間に1回、前記組成物の単位用量を投与される、項34から項42のいずれか1項に記載の方法。
[項44]
前記対象は、月に約1回または4週間に約1回、前記組成物の単位用量を投与される、項43に記載の方法。
[項45]
前記単位用量は0.7~1.5mLの容量を有する、項44に記載の方法。
[項46]
前記対象は、週に約1回、前記組成物の単位用量を投与される、項43に記載の方法。
[項47]
前記単位用量は約0.05~約0.25mLの容量を有する、項46に記載の方法。
ここで、以下の実施例により、本発明の実施形態について説明する。
【実施例】
【0047】
実施例1:PCSK9結合融合タンパク質及び薬物動態-薬力学挙動
PCSK9結合融合タンパク質は、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を標的とする修飾フィブロネクチンドメイン(アドネクチン)、及びヒト血清アルブミンを含む(
図1)。当該融合タンパク質は、約77,000ダルトンの総分子量を有する。PCSK9結合融合タンパク質は、ヒトPCSK9に対して高い結合親和性、及びカニクイザルPCSK9に対して100倍超弱い親和性を有している。結合親和性におけるこの違いにもかかわらず、非ヒト霊長類(NHP)は、遊離PCSK9の最大抑制及び最大LDL-C低下がNHPにおいて達成されることから、PCSK9結合融合タンパク質の安全性及び薬効を試験するのに適切な種であると考えられている。
【0048】
PCSK9結合融合タンパク質は、例えば、高コレステロール血症(家族性高コレステロール血症または高コレステロール血症及び動脈硬化性冠状動脈性心疾患(CHD)を有する患者におけるものを含む)を治療するための、皮下(SC)投与用に開発されている。PCSK9結合融合タンパク質における薬物動態の2つの主な決定因子は、その標的であるPCSK9との相互作用、及び、新生児Fc受容体(FcRn)を介して再利用されて腎臓の濾過作用を最小限とし、それによりPCSK9結合融合タンパク質のクリアランスを低下させて半減期を向上させる能力である。野生型マウスを用いた研究では、PCSK9結合融合タンパク質がマウスPCSK9へと効果的に結合せず、HSAがマウスFcRnと相互作用しないことから、これら決定因子のいずれもの、PCSK9結合融合タンパク質の薬物動態に対する影響に対処することはできない。そのため、カニクイザルがPCSK9結合融合タンパク質における薬物動態-薬力学を評価するための最も好適なin vivoモデルを提供する。それは、このモデルにおけるPCSK9への結合性が、遊離PCSK9とLDL-Cの両方における低下をもたらすことに加え、HSAがNHP FcRn受容体を介して効率的に再利用され得るからである。
【0049】
hPCSK9トランスジェニックマウスを用いて、PCSK9結合融合タンパク質のhPCSK9に対するin vivo結合親和性に関する調査を行い、hFcRnマウスを用いて、hFcRnを介したPCSK9結合融合タンパク質の再利用能についても評価を行った。このヒトFcRnマウスモデルは、マウスFcRn遺伝子のヌル変異、及び、ヒトFcRn α鎖をその天然ヒトプロモーターの制御下で発現する導入遺伝子、を有している。その結果、これらのマウスは、モノクローナル抗体及びヒト血清アルブミンの薬物動態を評価するためのモデルとして機能する。
【0050】
抗PCSK9抗体に関して、全身の遊離PCSK9レベルの抑制と血清LDL-Cの低下の間の関係を支持するかなりのデータセットが存在している。Gadkar K et al.,A Mechanistic Systems Pharmacology Model for Prediction of LDL Cholesterol Lowering by PCSK9 Antagonism in Human Dyslipidemic Populations,CPT Pharmacometrics Syst.Pharmacol.2014;3(11):1-9、Squizzato A,et al.,PCSK9 inhibitors for treating dyslipidemia in patients at different cardiovascular risk:a systematic review and meta-analysis.Intern.Emerg.Med.2017、Jul:e1-11。
図3を参照されたい。LDL-C低下における所望の目標レベルを達成するのに必要な、PCSK9結合融合タンパク質(LIB003、配列番号3)のヒト用量を推定するために、上記研究のデータをアロメトリックスケーリングして、PCSK9とLDL-Cの間の既知の関係を含む、半機械的トランスレーショナルモデルへと組み込んだ。
図2。このモデルを用いて、LIB003と血清LDL-Cの予測用量-効果関係を構築した。
【0051】
非ヒト霊長類における毒性動力学-薬力学
単回投与非GLP用量範囲設定(DRF)試験における静脈内(IV)投与及び皮下(SC)投与(10、30、100、200mg/kgのIV用量、200mg/kgのSC用量)の後、及び、4週間(100mg/kgのIV用量、30及び100mg/kgのSC用量)、12週間(30及び100mg/kgのSC用量)、または26週間(30及び100mg/kgのSC用量)にわたる、GLP毒性試験における反復投与の後に、LIB003の毒性動力学-薬力学挙動の特徴を調べた。
【0052】
hPCSK9を捕捉用試薬とし、ルテニウム標識したウサギ抗HSAポリクローナル抗体を検出用試薬とすることで、標的捕捉電気化学蛍光アッセイとして、LIB003の毒性動力学アッセイを構築する。NHPにおいて、このアッセイは総LIB003を測定する(NHP PCSK9と比較して、捕捉用試薬である hPCSK9に対するより強力な親和性に起因する)。代替的に、毒性動力学アッセイでは、LIB003特異的mAbを捕捉用試薬として、ルテニウム標識したウサギ抗HSAポリクローナル抗体を検出用試薬として使用した。このアッセイ形式もまた総LIB003を測定する。これらの試験の結果は、この用量範囲における静脈内投与と皮下投与の両方の後、総PCSK9結合融合タンパク質の動態がほぼ線形で用量比例的であることを示している。
【0053】
DRF試験では、10mg/kgを超える全ての用量レベルで、持続的な抗薬物抗体(ADA)反応が示された。LIB003の単回投与後、この試験におけるADAの存在は、ほとんどの場合で、LIB003への曝露の急速な低下と関連しており、標的捕捉の低下(遊離PCSK9の減少)に続いた。PCSK9結合融合タンパク質の毎週の投与(4週間、12週間、及び26週間のGLP毒性試験)後、ほとんどの動物においてADAが検出されたが、PCSK9結合融合タンパク質への曝露は投与間隔中にわたって維持され、毒性動力学/薬力学に対するADAの影響は、2頭の動物(4週間の試験)、1頭の動物(12週間の試験)、及び1頭の動物(26週間の試験)においてのみ明白であった。
【0054】
ADAの影響がないと、LIB003の除去は緩慢で、血清中消失半減期の範囲は、DRF試験において8.3~10.4日間(平均9日間)、4週間のGLP毒性試験から回復した動物において7.6~9.2日間(平均8.3日間)であり、非ヒト霊長類におけるアルブミン様分子の挙動と一致した。12週間及び26週間のGLP毒性試験において、同様の結果が認められた。DRF試験では、単回のIV投与後、クリアランス(CL)の範囲は、測定可能な動物において5.63~7.65mL/日/kg(平均6.64mL/日/kg)であり、分布容積(Vz)の範囲は、測定可能な動物において67.6~103.8mL/kg(平均86.4mL/kg)であった。
【0055】
総PCSK9濃度(LIB003に結合分及び非結合分)の上昇は緩慢で、投与後7日頃にピークに達したが、この時点における総PCSK9濃度は、血中LIB003濃度の10%未満であった。標的捕捉は、遊離PCSK9及びLDLの低下により測定した際、DRF試験における全用量において最大であり、このことは、試験を行った中で最も少ない用量(10mg/kg)において標的抑制が最大であることを示している。ADAの不在下でLIB003の用量を増加させると、標的捕捉が最大となる期間が長くなることを結果が示している。
【0056】
用量または投与経路のいずれにも関係なく、血清LDLが約60%抑制され、全ての用量レベルにおける最大薬力学的効果と一致した。予想どおり、LDL抑制の低下及びベースラインレベルへの回復は、最大PCSK9捕捉の低下と一致した。総合的に言えば、これらの試験は、最大薬力学的効果が達成され、より多い用量が遊離PCSK9またはLDLのいずれのより大きな抑制も生じさせるものではないということを示している。
【0057】
皮下投与後、同一用量レベルの低速IVボーラスと比較して、Cmaxがより低下し、Tmaxが遅れたが、このことは、注射部位から体循環へと吸収されていることを示している。皮下経路の絶対バイオアベイラビリティは、DRF試験において約76%と推定し、4週間のGLP毒性試験において66.5~89.7%と推定されるが、両方の推定は、ADAの存在、及び皮下投与後に総曲線下面積(AUC)を明らかにできないことにより、損なわれる。母集団薬物動態モデルを用いて両方の試験を組み合わせて解析を行うことにより、皮下投与後のバイオアベイラビリティは92%と推定されるが、このモデルが両方の投与経路における総AUCの推定を生じることから、より信頼性の高い推定であると考えられる。
【0058】
ヒトにおける予測される薬物動態-薬力学挙動
複数の試験に由来するデータを組み合わせて、ヒトにおけるLIB003の予測薬物動態-薬力学挙動の予測を行った。つまり、NHPデータ(DRF試験及び4週間のGLP毒性試験)から、LIB003への曝露及びPCSK9の抑制を記述する母集団2コンパートメント薬物動態-薬力学結合モデルを構築した。これらのパラメータをヒトへとスケーリングする際、hPCSK9に対するin vivo結合親和性は、hPCSK9トランスジェニックマウスにおけるPK-PD試験から導いた。これらのデータは、皮下投与後のデータのみが入手可能であったことから、1コンパートメント薬物動態モデルによって適切に記述されたが、このモデルは、NHPデータに使用したモデルと同等であった。NHP PCSK9及びhPCSK9に対するLIB003の結合親和性において認められた差異は、in vitro由来データとin vivo由来データの両方と一致し、hPCSK9トランスジェニックマウスのin vivo由来K
D値をヒトへの予測用に使用した。
【表2】
【0059】
NHPとhFcRnマウスの両方におけるLIB003のクリアランスが、これらの動物におけるHSAの予測クリアランスと一致したことから、LIB003のクリアランスが、ヒトにおけるHSAのクリアランス(半減期19日間、アロメトリック指数0.74)を模倣するものと予測された。その他のパラメータについては、サイズが約77kDaの治療用アルブミン融合タンパク質の予測係数を用いてアロメトリックスケーリングを行った。
【0060】
遊離PCSK9の捕捉及び抑制を記述するNHP及びヒトのPK-PD結合モデルの全体的な構成を、
図2及び
図3に示す。ヒトにおけるスタチン及び抗PCSK9抗体の作用機序を記述するための定量系薬理学モデルが、これまでに確立されている。Gadkar K et al.,A Mechanistic Systems Pharmacology Model for Prediction of LDL Cholesterol Lowering by PCSK9 Antagonism in Human Dyslipidemic Populations,CPT Pharmacometrics Syst.Pharmacol.2014;3(11)。このモデルを採用して、ヒトにおける予測PCSK9抑制と、ヒト初回(FIH)試験における皮下及び静脈内によるLIB003の単回投与後の経時的なLDL-C低下の間を結びつけた。
【0061】
実施例2:配合及び安定性評価
PCSK9結合融合タンパク質の製剤における様々な緩衝剤及び賦形剤の性能に対する評価を行った。
【0062】
本製剤に用いる適切な緩衝剤及びpHを見極めるために、2mg/mLのLIB003で、6つの異なる緩衝剤を用いた緩衝剤及びpHの18の異なる条件について、DSCによる解析で熱安定性を評価し、DLSによる解析で凝集形成を評価した。5未満かつ7超のpHでは、タンパク質の変性が50℃未満の温度(T開始)で始まってしまうことから、これらのpH値についてはこれらの実験から除外した。
【0063】
解析を行った緩衝剤/pHの組み合わせを、以下の表3に示す。更なるスクリーニング用に選択した組み合わせを、太字及び下線を施したpH値により示す。
【表3】
【0064】
条件に合ったpH範囲及び適切な緩衝剤を特定した後、所定の緩衝剤及びpHと組み合わせて、賦形剤についての検証を行った。2mg/mLのLIB003で、緩衝剤/賦形剤の合計15の異なる組み合わせを調製してから、DSCによる解析で熱安定性を評価し、DLSによる解析で凝集形成を評価した。緩衝剤/賦形剤の組み合わせのうちの3つについては、T開始が55℃未満であることから除外した。更に、ショ糖、ソルビトール、及び低濃度のNaClを使用すると凝集が生じ、その結果、その後の配合におけるそれらの使用が限定されるということが、DLSデータにより示唆された。
【0065】
解析を行った緩衝剤/賦形剤の組み合わせを、以下の表4に示す。更なるスクリーニング用に選択した組み合わせを、太字及び下線を施した賦形剤により示す。
【表4】
【0066】
高濃度で配合されたLIB003の安定性を維持するための、緩衝剤及び賦形剤の好適な組み合わせを決定するために、上の表4で特定した12の異なる配合物について溶解度スクリーニングを実施した。これらの配合物を、200mg/mL、250mg/mL、300mg/mL、及び340mg/mLの目標濃度へと濃縮した。濁度は全ての配合物にわたり同等であり、SEC-HPLCを用いて評価した際に凝集は認められなかった。これらのパラメータに基づき、これらの配合物は同等であるとみなされた。
【0067】
LIB003候補配合物へと界面活性剤を添加することの潜在的な効果を評価するために、表4の緩衝剤/賦形剤の8つの組み合わせにポリソルベート80(PS80)を含有させるかまたは含有させないかのいずれかを行い、250mg/mLのLIB003で合計16の配合物(表5)について評価を行った。凝集及び粒子形成を防止するのにPS80が効果的となり得ることから、候補配合物について、それらが凍結と解凍及び攪拌の繰り返しの応力に耐える能力を評価した。復元、濁度、または凝集の性質に基づく差異は認められなかった(DLS及びSECを用いて評価した)。長期保存時及び製品搬送時におけるPS80の予測される効果により、PS80を含有する全ての配合物を先へと進めた。
【表5】
【0068】
LIB003の濃度が高い場合であっても、LIB003の安定性、及び標準的な保存条件下の配合物と剪断応力下の配合物の間に差異が欠如しているということは、長期保存条件に耐えうるLIB003の配合物を同定するための代替アプローチが必要であることを示唆した。緩衝剤/賦形剤スクリーニング(表4)で同定した目標濃度340mg/mLの配合物に0.02%のPS80を添加し、2~8℃または50℃で3週間保存してから、SEC-HPLCで解析した。一般的に、50℃で3週間保存した後には、低レベルの高分子量(HMW)化学種及び低分子量(LMW)化学種が認められた。賦形剤のアルギニン及びソルビトールを含有する配合物中におけるHMW化学種の低いパーセンテージに基づいて、クエン酸塩を含有する配合物を、アルギニン及びソルビトールに絞った。最も高いパーセンテージのメインピーク化学種に基づいて、ヒスチジン配合物のうち、150mMのNaClを追加の実験用に選択した。最後に、2~8℃の比較用対照試料と比較して、50℃で保存したほとんどのコハク酸塩配合物中に認められた高レベルのHMW化学種及びLMW化学種に基づいて、更なる考察からコハク酸塩を除外した。
【0069】
これらの解析の結果を以下の表6に示す。選択した配合物を、太字及び下線のフォントで示す。
【表6】
【0070】
候補配合物を更に探索するために、PS80を含む緩衝剤/賦形剤の3つの組み合わせ、3つの異なるpHで、250mg/mLのLIB003を配合した(表7)。劣化を誘発させるために2~8℃または50℃で3週間試料を保存してから、LIB003の濃度/復元(A280)、粒子(DLS)、凝集(SEC-HPLC)、電荷特性(icIEF)、クリッピング(CE-SDS)、力価、濁度及び熱安定性(DSC)について解析を行った。50℃で3週間保存した後の電荷特性、凝集/粒子形成の性質、及び相対力価の比較を行ったところ、配合物間でいくらかの差異が明らかとなった(表8、9、10及び11)。CE-SDS特性、復元、濁度及び熱安定性については配合物間で同等であった。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0071】
27Gまたはより小さな穴の針を備えたオートインジェクターを使用して0.25~1.5mLのSC注射でLIB003を送達するという目的を考慮して、250mg/mLで配合されたLIB003がオートインジェクターによるSC注射に好適な特性を有し得るかどうかを確認するために、追加の実験を実施した。それぞれにおける中央程度のpHを有する上位3つの250mg/mLの配合物について、粘度、浸透圧、及び粒子の評価を行った。目標は、15cP未満の粘度、250~350mOsmの浸透圧、及び調節限界を十分に下回る粒子レベルであった。結果を以下の表11に示す。粒子レベルは全配合物にわたり同等に低かった。
【表11】
【0072】
追加の安定性試験用に、20mMのヒスチジン、150mMのNaCl、0.02%(重量/体積)のポリソルベート80、pH6.8で、注射(皮下)用の滅菌液剤としてPCSK9結合融合タンパク質を製剤化した。これらの安定性試験には、長期保存条件下、加速条件下に加え、負荷条件下における評価が含まれていた。PCSK9結合融合タンパク質製品の所定の長期保存温度は5±3℃であり、短期保存(1~6か月間以下)は25℃±3℃であった。
【0073】
1か月間の安定性データを、目的の保存温度(5±3℃)に加え、加速(25±2℃/60±5%相対湿度)及び負荷(40±2℃/75±5%相対湿度)保存条件において取得した。
【0074】
例示的なPCSK9結合融合タンパク質製品ロットにおける、安定性プロトコルの安定性を示すパラメータ(icIEF、力価、CE-SDS、及びSEC-HPLC)を含む全評価パラメータのデータは、検査時点(1か月)及びそれぞれの保存条件において許容基準内であった。更に、長期保存条件において、凝集もしくは劣化した化学種の大幅な増加、または力価の低下は認められなかった。加速及び負荷条件についてSEC-HPLCにより凝集にわずかな増加(約1%)が認められたが、SEC-HPLCによるメインピークの結果は十分に許容基準内であり、力価の変化は認められなかった。同様に、負荷条件における還元CE-SDSにより断片にわずかな増加(約2%)が認められたが、この場合もまた、それに付随する力価の変化は認められなかった。それぞれの保存条件におけるicIEFにより、メインピーク種の減少に付随して酸性電荷バリアント種にわずかな増加(約1~4%)が認められた(薬物において逆の傾向が認められたが、おそらく、認められた変化は方法のばらつき内に収まることを示していると留意されたい)。外観、物理化学的パラメータ、または力価の変化は認められなかった。まとめると、安定性データは、評価を行った長期、加速及び負荷保存条件において、PCSK9結合融合タンパク質製品が1か月間安定であることを示している。
【0075】
更に、18か月間の長期安定性データを、目的の保存温度(5±3℃)において取得し、加えて、9か月間については加速保存条件(25±2℃/60±5%相対湿度)、3か月間については負荷(40±2℃/75±5%相対湿度)保存条件において取得した。
【0076】
例示的なPCSK9結合融合タンパク質製品ロットについて、安定性プロトコルの安定性を示すパラメータ(icIEF、力価、CE-SDS、及びSEC-HPLC)を含む全評価パラメータのデータは、検査時点及びそれぞれの保存条件において許容基準内であった。更に、長期保存条件において、凝集もしくは劣化した化学種の大幅な増加、または力価の低下は認められなかった。全ての保存条件におけるSEC-HPLCにより凝集にわずかな増加(約1%)が認められたが、SEC-HPLCによるメインピークの結果は十分に許容基準内であり、力価の変化は認められなかった(アッセイのばらつき内)。同様に、長期保存条件における還元CE-SDSにより断片にわずかな増加(最大約2%)が認められたが、この場合もまた、対応する力価の変化は認められなかったため、方法のばらつき内に収まるものと考えられ得る。還元及び非還元CE-SDSによる断片の増加は、時間及び温度の増加(負荷条件において最大約5%の変化)と相関してした。長期保存条件におけるicIEFにより酸及びメインピーク種に変動(最大約8%)が認められたが、その変動は方法のばらつき内に収まっていた。加速及び負荷条件におけるicIEFの結果は当初、酸性種に対する正の傾向(最大約7%)、及びそれに対応するメインピーク種に対する負の傾向を示すものと思われたが、それに付随する力価の変化は認められなかった。しかし、別の時点では、観察された小さな変化も、方法のばらつきに関連する変動であった可能性があることが示された。可視未満の粒子が時間の経過とともにわずかに変動するようであったが、十分に許容限界内であった(長期条件と加速条件の両方における9か月時点において、2μm以上及び5μm以上の粒子について典型的でない結果が認められたが、12か月及び18か月の時点では、粒子数が予測レベルにまで戻ったということに留意されたい)。外観、物理化学的パラメータ、または力価の変化は認められなかった。
【0077】
更に、12か月間の長期安定性データを、目的の保存温度(5±3℃)において取得し、加えて、12か月間の加速保存条件(25±2℃/60±5%相対湿度)において取得した。
【0078】
例示的なPCSK9結合融合タンパク質製品ロットについて、安定性プロトコルの安定性を示すパラメータ(icIEF、力価、CE-SDS、及びSEC-HPLC)を含む全評価パラメータのデータは、検査時点及びそれぞれの保存条件において許容基準内であった。更に、長期保存条件において、凝集もしくは劣化した化学種の大幅な増加や、力価の低下も認められなかった。両方の保存条件においてSEC-HPLCにより凝集にわずかな増加(最大約1%)が認められたが、SEC-HPLCによるメインピークの結果は十分に許容基準内であり、力価の変化は認められなかった(アッセイのばらつき内)。同様に、還元CE-SDS条件による長期保存条件(最大約2%)及び負荷保存条件(約3%)、ならびに非還元CE-SDSによる負荷保存条件(約3%)において、断片にわずかな増加が認められたが、この場合もまた、対応する力価の変化は認められなかった(アッセイのばらつき内)。両方の保存条件におけるicIEFにより、メインピーク種の減少に付随して酸性電荷バリアント種に増加(最大約5%)が認められた(後の時点においては酸性種の割合(%)がより少なかったことから、アッセイのばらつきによるものであり得る)。外観、物理化学的パラメータ、または力価の変化は認められなかった。
【0079】
実施例3:ヒト初回試験
LIB003について、18歳以上70歳以下の年齢の63名の被験者(女性24名、男性39名、45名はLIB003、18名はプラセボ)を含む第1相SAD試験において試験を行い、投与後少なくとも43日間にわたりモニタリングを行った。本試験はプラセボ対照二重盲検であった。9つのコホートのそれぞれに7名の被験者(5名はLIB-003治療患者、2名はプラセボ治療患者)がおり、結果として、43名の被験者がLIB003による治療を受け、18名の被験者がプラセボによる治療を受けた。脂質低下療法を受けておらず、ベースラインLDL-Cが100mg/dL以上190mg/dL以下である、一定した食事を摂っている健康な被験者に、皮下用量のLIB003を25mg、75mg、150mg、300mg、及び600mgで投与した。150mg及び300mgの用量はまた、ベースラインLDL-Cが100mg/dL以上であり一定したスタチン療法を受けている患者にもSC投与した。全ての被験者は250mg/dL以下のTGを有していた。脂質低下療法を受けておらず、SCコホートと同一の脂質登録基準を有する、2つの追加コホートの健康な被験者に、300mg及び600mgのLIB003をIVで投与した。
【0080】
安全性結果の概要
ドロップアウトする、すなわち43日目の前に終了となる患者を出すことなく、63名の被験者全員が試験を完了させた。総合的に、LIB003は、健康な被験者における単回SC投与と単回IV投与の両方、ならびに、スタチン療法中の高コレステロール血症を有する患者において、安全で良好な忍容性を示した。
【0081】
薬力学(有効性)結果の概要
遊離PCSK9の平均値の低下は全ての用量において速やかであり、12時間以内に99%超に達し、脂質低下療法を受けておらず150mg以上のLIB003を投与されたコホートにおけるほぼ全ての被験者において少なくとも3週間(22日目)にわたり持続した。LIB003の300mg用量は遊離PCSK9の99%抑制を29日間にわたり維持したが、脂質低下療法を受けていない150mg用量の被験者では、遊離PCSK9は、ベースラインの12%にまで低下し、スタチンを受けている被験者ではベースラインの54%にまで低下した。遊離PCSK9のより小さな低下は、LDL-C及びapoBの低下に反映された一方で、脂質低下療法を受けていない被験者においてはより大きな低下が維持された。しかし、これらの低下は、スタチンを受けている患者において4週間(29日目)にわたっては維持されなかった。単回300mg用量は、非スタチン治療被験者とスタチン治療被験者の両方において、遊離PCSK9、LDL-C、及びapo Bのより安定かつ最大の低下をもたらした。加えて、mAbを用いた試験の先行データに基づいて、複数回の投与により、遊離PCSK9抑制とLDL-C低下の両方の期間がより長くなることが予測された。更に、広範囲にわたる先行データは、高強度スタチンを受けている患者及びFHを有する患者が、より高いベースラインPCSK9レベルを有しており、PCSK9の合成が上昇していると考えられ、遊離PCSK9とLDL-Cの両方を4週間にわたり完全に抑制するためには、300mg以上の用量が必要となることを示した。
【0082】
薬物動態結果の概要
SC投与による総LIB003のCmax、AUC0-t、及びAUCinfは、75mg~300mgのLIB003において用量比例的に増加し、25mg~75mg(4~5倍の増加)及び300mg~600mg(3倍の増加)においてより小さな上記の用量比例を示した。同様に、スタチン治療被験者は、150mg~300mgの用量範囲にわたる総LIB003において用量比例的な増加を示したが、総LIB003の曝露(AUC0-t及びAUCinf)は全体的に、非スタチン治療被験者における曝露と比較してより少ないものであった。IV投与された総LIB003のCmax、AUC0-t、及びAUCinfは、用量比例的に増加した。
【0083】
総LIB003のTmax中央値は、全てのSC用量レベルにわたり、72~168時間の範囲(範囲は36~220時間の範囲で変化可能であった)であった。T-HALF、CL/F、及びVz/Fの全てについても、試験を行ったSC用量に加えて、スタチンと共にLIB003を投与した際の全体にわたり同様であった。総LIB003のTmax中央値は、両方のIV用量レベルにわたり、0.33~1.08時間の範囲であった。T-HALF、CL、及びVzは全て、試験を行った両方のIV用量にわたり同様であった。
【0084】
それぞれ300mg及び600mgのLIB003の単回SC投与後における、総LIB003の絶対バイオアベイラビリティは、67%~111%の範囲であった。
【0085】
第2相試験における用量レベルの論理的根拠
第1相の遊離PCSK9データ及びLDL-Cデータ、ならびに、オートインジェクターによる単回SC注射と一致する容量(1.5mL以下)で、少なくともQ4Wの投与を得るという目的に基づいて、一定のスタチン及び/またはエゼチミブを受けている、ASCVDを有する、もしくはASCVDのリスクが高い、または、CVDを伴わないHeFHを有する、約80名の患者を含む第2相用量設定試験を計画した。この第2相用量設定試験におけるQ4W投与用に選択した用量には、150mg、300mg、及び350mgが含まれる。第1相における最大600mg(SCとIVの両方)のヒトLIB003曝露と、12週間の非ヒト霊長類GLP毒性試験において到達したレベル、の両方において報告がないことから、全3用量は、安全であると予測された。
【0086】
実施例4:一定した脂質低下療法を受けており、更なるLDL-C低下が必要な患者における、LIB003の有効性及び安全性を評価するための無作為化二重盲検、プラセボ対照、第2相、用量設定
12週間の無作為化、二重盲検、プラセボ対照、用量設定第2相試験において、様々な用量のLIB003を毎月(Q4W)投与して、LIB003についての試験を行い、それに続く、4週間のフォローアップ評価期間において、LDL-Cレベルのベースラインからの変化率(12週目における10週目と12週目の平均値として、Friedewald式で算出した)の評価を行った。この試験には、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有する、もしくはASCVDのリスクが高い(10%以上の5年リスクまたは7.5%以上の10年リスク)、ASCVDを有するもしくはCVDリスクを有する被験者(算出したLDL-Cはが80mg/dL以上)、または、ヘテロ接合性家族性高コレステロール血症を有しCVDを有さない被験者(算出したLDL-Cが100mg/dL以上)、のいずれかである、18歳以上の年齢の合計で81名の男性及び女性が参加した。スタチン(エゼチミブを伴ってまたは伴わずに)などの一定した脂質低下経口薬物療法を受けている全ての被験者は、400mg/dL以下のTGを有していた。これらの被験者を、3つの活性剤治療群、及び対応する1つのプラセボ治療群へとグループ分けした。それぞれの群には、1名のプラセボ被験者毎に無作為化された3名のLIB003被験者が含まれたが、それはすなわち、治療群あたり20名のLIB003被験者及び20名のプラセボということである。150mg、300mg、もしくは350mgのLIB003またはプラセボの皮下用量を、一定した規定食及び経口LDL-C低下薬物療法を受けている高コレステロール血症を有する被験者に毎月(Q4W)皮下投与した。
【0087】
本試験に登録された被験者の人口統計の一覧を以下の表12に示す。
【表12】
【0088】
安全性結果の概要
総合的に、LIB003は、本試験において、最大350mg Q4Wの皮下用量として、安全で概ね良好な忍容性を示した。全てのLIB003用量、すなわち150mg、300mg、及び350mgは、良好な忍容性を示し、安全性懸念は何ら明らかとならなかった。81名の被験者のうち、79名の被験者が試験を完了させ、2名の被験者が中止となった。中止は有害事象によるものではなかった。更に、本試験における有害事象が死亡に至ることはなかった。
【0089】
本試験中に被験者が経験した、治療下で発現した有害事象(TEAE)の一覧を以下の表13に示す。
【表13】
【0090】
81名の被験者のうちの合計43名(53%)がTEAEを示し、プラセボの20名のうちの10名(50%)がTEAEを示し、混合LIB003治療群の61名のうちの33名(54%)がTEAEを示した。大部分のTEAEの重症度は軽度から中程度であった。最も一般的に報告されたTEAEは、疲労、注射部位の紫斑、上気道感染症、及び呼吸困難であった。他の全てのTEAEは3名以下の被験者から報告された。
【0091】
81名の被験者のうちの6名(7%)のみが試験薬関連TEAEを示し、プラセボの20名のうちの2名(10%)が試験薬関連TEAEを示し、混合LIB003治療群の61名のうちの4名(7%)が試験薬関連TEAEを示した。大部分の試験薬関連TEAEの重症度は軽度であり、重症とみなされるものはいなかった。最も多く報告された試験薬関連TEAEは注射部位の紅斑であった。他の全ての試験薬関連TEAEは1名以下の被験者から報告された。
【0092】
81名の被験者のうちの6名(7%)がSAEを示し、プラセボの1名(5%)及び混合LIB003治療群の5名(8%)がSAEを示したが、そのどれもが試験薬に関連するとはみなされなかった。5件のSAE、すなわちプラセボの1件(5%)及び混合LIB003治療群の4件(7%)の強度が重症であり、LIB003治療群の1件(2%)の強度が中程度であった。
【0093】
異常検査値に関連するTEAEは認められなかった。いかなる治療群での肝機能検査(ALT、AST、またはビリルビン)においても、臨床的に有意な増加もしくは傾向は認められず、また、プラセボもしくはLIB003治療群間における差異も認められなかった。具体的には、3×ULN超のALTまたはASTの増加を経験した被験者はおらず、2×ULN超のビリルビンを示したものはいなかった。全治療群において幾人かの被験者が非持続性のCKの増加を経験したが、それは運動または活動に関連するものであり、5×ULNを超えるものはいなかった。腎機能、グルコース、その他の化学または血液パラメータにおいて、臨床的に有意な増加は認められず、または、治療群間に差異は認められなかった。
【0094】
バイタルサイン、ECG、及び理学的検査の結果に、臨床的に有意な所見は認められなかった。試験薬の投与後15分時点において、合計5件の注射部位紅斑のインシデントが記録された。プラセボ群における1名の被験者はまた、1日目の投与後15分に注射部位の掻痒を報告した。投与後15分に生じた注射部位における反応の全て(プラセボ群の1件、及び混合LIB003治療群の4件)の重症度は軽度であった。
【0095】
有効性結果の概要
試験を行った全てのLIB003用量、すなわち150mg、300mg、及び350mgは、LDL-Cレベル及び遊離PCSK9レベルの、速やかで、持続的で、著しい、平均値低下を引き起こした。LDL-Cの最も大きな平均値低下は、300mgのLIB003投与コホートで認められた。これまでの試験と一致して、より高い、350mgのLIB003用量では、更なるLDL-C低下は生じなかった。投与間の全4週間において最大LDL-C低下を得るのに、150mg用量では不十分であることが判明した。
【0096】
本試験の有効性データの一覧を以下の表14に示す。
【表14】
【0097】
LIB003の投与後、Friedewald式で算出すると、ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、12週目LOCFへの、LDL-Cレベルの大きく持続的な平均値低下が認められた。LIB003コホートとプラセボ群の間における、ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、12週目LOCFへの、LDL-CのLS平均値変化率の最大差異(95%CI)は、300mgのLIB003投与コホートで生じ、それぞれ、-76.1%([-86.0%、-66.2%]、p<0.0001)及び-77.3%([-90.5%、-64.1%]、p<0.0001)であった。分取超遠心分離及びHopkins式を用いて、LDL-Cレベルの平均値変化率を評価することにより、同様の知見が得られた。
【0098】
PCSK9の最大抑制が一旦達成されると更なるLDL-C低下は生じないということを示すこれまでの試験と一致して、より多い用量の350mgのLIB003では、更なるLDL-Cレベルの低下は生じなかった。投与後の全ての2週間において、150mg用量が、300mg用量及び350mg用量と同様の低下を達成したが、投与間の全ての4週間において最大LDL-C低下を維持するには不十分であった。
【0099】
LIB003の投与後、ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、12週目LOCFへの、遊離PCSK9レベルの大きく持続的な平均値低下が認められた。LIB003コホートとプラセボ群の間における、ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、12週目LOCFへの、遊離PCSK9レベルのLS平均値変化率の差異(95%CI)は、300及び350mgコホートで生じ、それぞれ、-89.7%([-100.0%、-79.4%]、p<0.0001)及び-92.8%([-102.9%、-82.6%]、p<0.0001)であった。それぞれ300及び350mgコホートの、LIB003コホートとプラセボ群の間における、ベースラインから12週目LOCFへの、遊離PCSK9レベルのLS平均値変化率の差異(95%CI)は、-84.1%([-99.5%、-68.7%]、p<0.0001)及び-90.2%([-105.4%、-75.0%]、p<0.0001)であった。350mg LIB003用量が、12週目において、300mg用量と比較してわずかにより多くのPCSK9を抑制した(それぞれ、90.2%対84.1%)が、このことは、より高いLDL-C効果をもたらさなかった。
【0100】
更に、LIB003の投与後、ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、12週目LOCFへの、総PCSK9レベルの大きく持続的な平均値低下が認められた。ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、LIB003の150mg、300mg、及び350mgコホートの平均値変化率は、それぞれ、95.555%、90.273%、及び90.080%であった。ベースラインから12週目LOCFへの、LIB003 150mg、300mg、及び350mgコホートの平均値変化率は、それぞれ、75.165%、78.188%、及び86.811%であった。対照的に、プラセボは、同一時点において極めて小さな平均値変化率(3.044%以下)を示した。
【0101】
更に、ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、12週目LOCFへの、非HDL-Cレベルの大きく持続的な平均値低下が認められ、TCレベルの中程度で持続的な平均値低下が認められた。しかし、LIB003コホートとプラセボ群の両方において、ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、12週目への、HDL-Cレベルの極めてわずかな平均値変化が認められたに過ぎなかった。加えて、ANOVAモデルを用いた、それぞれのLIB003コホートとプラセボ群の間のVLDL-Cレベル及びTGレベルの変化率の比較は、ベースラインから10週目LOCFと12週目LOCFの平均値への、12週目LOCFへの、VLDL-Cレベル及びTGレベルの小さな平均値低下を示した。
【0102】
同様に、LIB003の投与後、ベースラインから12週目LOCFへの、apo Bレベルの大きく持続的な平均値低下が認められた。LIB003コホートとプラセボ群の間における、apo BレベルのLS平均値変化率の最大差異(95%CI)は、300mgコホートで生じ、-58.4%([-68.9%、-48.0%]、p<0.0001)であった。
【0103】
更に、全LIB003の投与後、ベースラインから12週目LOCFへの、Lp(a)レベルの中程度で持続的な低下が認められた。LIB003コホートとプラセボ群の間における、Lp(a)レベルのLS平均値変化率の最大差異(95%CI)は、300mgコホートで生じ、-28.7%([-42.6%、-14.8%]、p<0.0001)であった。この低下は、用量及び投与頻度が等しいPCSK9モノクローナル抗体(LIB003の300mg、Q4Wと同様に遊離PCSK9及び LDL-Cを抑制した)により達成された低下と一致した。
【0104】
apo A1レベルは、LIB003コホート及びプラセボ群において、ベースラインから12週目LOCFへの極めてわずかな平均値変化を示した。
【0105】
上で考察した第2相試験のデータに基づいて、LIB003の300mg皮下Q4W用量をオープンラベル拡張試験及び第3相試験用に選択した。
【0106】
【配列表】