(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体
(51)【国際特許分類】
H01L 31/107 20060101AFI20240705BHJP
H01L 31/0232 20140101ALI20240705BHJP
G01S 7/4914 20200101ALI20240705BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240705BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L31/10 B
H01L31/02 D
G01S7/4914
G01C3/06 120Q
H01L27/146 A
(21)【出願番号】P 2021004297
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】権 鎬楠
(72)【発明者】
【氏名】清水 真理子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和晃
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和拓
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-204561(JP,A)
【文献】特表2010-536165(JP,A)
【文献】特開2020-013950(JP,A)
【文献】特開2011-258691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域とpn接合面を形成する第2導電形の第2半導体領域と、を含
み、前記第1半導体領域から前記第2半導体領域に向かう第1方向に対して垂直であり且つ相互に直交する第2方向及び第3方向に沿って複数設けられた接合領域と、
前記第2方向又は前記第3方向において隣り合う前記接合領域の間に設けられ、前記第1方向に対して傾斜した傾斜面を有し、空洞を含む第1絶縁部であって、前記傾斜面は
前記第2方向又は前記第3方向において前記接合領域と対向する、前記第1絶縁部と、
前記第1絶縁部の上に設けられ、絶縁材料を含み、一部が前記第2半導体領域と同じ高さに位置する第2絶縁部と、
前記接合領域、前記第1絶縁部、及び前記第2絶縁部の上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられ、樹脂を含むレンズと、
前記第2半導体領域と電気的に接続されたクエンチ部と、
を備え
、
前記第1絶縁部の一部の前記第2方向における長さは、前記第1絶縁部の前記一部よりも上方に位置する前記第1絶縁部の別の一部の前記第2方向における長さよりも短く、
前記第2絶縁部及び前記絶縁層には、前記空洞と通じる第1開口が設けられた、光検出器。
【請求項2】
前記第1絶縁部は、前記傾斜面と前記空洞との間に設けられた絶縁領域を含み、
前記絶縁領域は、
前記樹脂、酸化物、又は窒化物を含む、請求項
1記載の光検出器。
【請求項3】
前記第1方向に垂直な第1面において前記絶縁層に囲まれ、前記樹脂を含む絶縁体
をさらに備えた、請求項
1記載の光検出器。
【請求項4】
前記第1絶縁部は、前記傾斜面と前記空洞との間に設けられた絶縁領域を含み、
前記絶縁領域は、前記樹脂を含み、前記絶縁体と連なる、請求項
3記載の光検出器。
【請求項5】
第1導電形の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域とpn接合面を形成する第2導電形の第2半導体領域と、を含む接合領域と、
前記第1半導体領域から前記第2半導体領域に向かう第1方向に垂直な第1面において前記接合領域の周りに互いに離れて複数設けられ、前記第1方向に対して傾斜した傾斜面を有し、空洞を含む第1絶縁部であって、前記傾斜面は前記第1方向に対して垂直な第2方向において前記接合領域と対向する、前記第1絶縁部と、
前記第1絶縁部の上に設けられ、絶縁材料を含み、一部が前記第2半導体領域と同じ高さに位置する第2絶縁部と、
前記接合領域と複数の前記第1絶縁部との間に設けられ、絶縁材料を含む第3絶縁部と、
前記第2半導体領域と電気的に接続されたクエンチ部と、
を備え、
前記第1絶縁部の一部の前記第2方向における長さは、前記第1絶縁部の前記一部よりも上方に位置する前記第1絶縁部の別の一部の前記第2方向における長さよりも短く、
前記第2絶縁部には、前記空洞と通じる第1開口が設けられ、
前記第3絶縁部の前記第1方向における長さは、前記第1絶縁部の前記第1方向における長さよりも長い、光検出器。
【請求項6】
第1導電形の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域とpn接合面を形成する第2導電形の第2半導体領域と、を含む接合領域と、
前記第1半導体領域から前記第2半導体領域に向かう第1方向に垂直な第1面において前記接合領域の周りに互いに離れて複数設けられ、前記第1方向に対して傾斜した傾斜面を有し、空洞を含む第1絶縁部であって、前記傾斜面は前記第1方向に対して垂直な第2方向において前記接合領域と対向する、前記第1絶縁部と、
前記第1絶縁部の上に設けられ、絶縁材料を含み、一部が前記第2半導体領域と同じ高さに位置する第2絶縁部と、
前記第1面において複数の前記第1絶縁部の周りに設けられ、絶縁材料を含む第3絶縁部と、
前記第2半導体領域と電気的に接続されたクエンチ部と、
を備え、
前記第1絶縁部の一部の前記第2方向における長さは、前記第1絶縁部の前記一部よりも上方に位置する前記第1絶縁部の別の一部の前記第2方向における長さよりも短く、
前記第2絶縁部には、前記空洞と通じる第1開口が設けられ、
前記第3絶縁部の前記第1方向における長さは、前記第1絶縁部の前記第1方向における長さよりも長い、光検出器。
【請求項7】
前記接合領域は、前記第2方向と、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向と、において複数設けられ、
複数の前記接合領域のそれぞれの周りに、前記複数の第1絶縁部が設けられた、請求項
5又は6に記載の光検出器。
【請求項8】
前記第1方向から見た時に、前記第1開口の位置は、前記クエンチ部の位置と異なる、請求項
1~7のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項9】
前記傾斜面の前記第1方向に対する角度は、45度よりも大きく74度よりも小さい、請求項1~
8のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項10】
前記第1絶縁部の屈折率は
、1.5よりも大きく且つ2.0よりも小さく、
前記傾斜面の前記第1方向に対する角度は
、45度よりも大きく74度よりも小さ
い、請求項1~8のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項11】
前記傾斜面の一部は、前記
pn接合面と同じ高さに設けられた請求項1~
10のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項12】
前記接合領域及び前記第1絶縁部は、半導体層の上に設けられ、
前記半導体層は、シリコンを含み、
前記シリコンの(100)面は、前記第1方向に垂直である請求項1~
11のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項13】
前記第1半導体領域及び前記第2半導体領域は、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードを構成する請求項1~
12のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1つに記載の光検出器と、
前記光検出器の出力信号から光の飛行時間を算出する距離計測回路と、
を備えた光検出システム。
【請求項15】
物体に光を照射する光源と、
前記物体に反射された光を検出する請求項
14記載の光検出システムと、
を備えたライダー装置。
【請求項16】
前記光源と前記光検出器の配置関係に基づいて、三次元画像を生成する画像認識システムをさらに備える請求項
15記載のライダー装置。
【請求項17】
請求項
15又は
16に記載のライダー装置を備えた移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体領域に入射した光を検出する光検出器がある。光検出器について、クロストークは小さいことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、クロストークを低減可能な、光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る光検出器は、接合領域と、第1絶縁部と、クエンチ部と、を含む。前記接合領域は、第1導電形の第1半導体領域と、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域とpn接合面を形成する第2導電形の第2半導体領域と、を含む。前記第1絶縁部は、前記第1半導体領域から前記第2半導体領域に向かう第1方向に対して傾斜した傾斜面を有する。前記第1絶縁部は、空洞を含む。前記傾斜面は、前記接合領域の少なくとも一部と同じ高さに設けられ且つ前記接合領域から前記第1絶縁部に向かう第2方向と交差する。前記クエンチ部は、前記第2半導体領域と電気的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る光検出器を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係る光検出器を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る光検出器を示す平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図7】第1実施形態に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図8】第1実施形態に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図9】第1実施形態に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図11】第1実施形態の第1変形例に係る光検出器を示す断面図である。
【
図12】第1実施形態の第2変形例に係る光検出器を示す断面図である。
【
図13】第1実施形態の第3変形例に係る光検出器を示す断面図である。
【
図14】第1実施形態の第4変形例に係る光検出器を示す平面図である。
【
図17】第1実施形態の第4変形例に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図18】第1実施形態の第4変形例に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図19】第1実施形態の第4変形例に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図20】第1実施形態の第4変形例に係る光検出器の製造方法を示す模式図である。
【
図21】第1実施形態の第5変形例に係る光検出器を示す平面図である。
【
図22】第1実施形態の第5変形例に係る光検出器を示す平面図である。
【
図25】第1実施形態の第5変形例に係る別の光検出器を示す断面図である。
【
図26】第1実施形態の第6変形例に係る光検出器を示す平面図である。
【
図27】第1実施形態の第6変形例に係る光検出器を示す平面図である。
【
図30】第1実施形態の第7変形例に係る光検出器を示す平面図である。
【
図31】第1実施形態の第7変形例に係る光検出器を示す平面図である。
【
図33】第2実施形態に係るライダー(Laser Imaging Detection and Ranging:LIDAR)装置を例示する模式図である。
【
図34】ライダー装置の検出対象の検出を説明するための図である。
【
図35】第2実施形態に係るライダー装置を備えた移動体の上面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を示す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1~
図3は、第1実施形態に係る光検出器を示す平面図である。
図4は、
図1~
図3のA1-A2断面図である。
図1~
図4に示すように、第1実施形態に係る光検出器100は、半導体層1、半導体層2、接合領域10、第1絶縁部21、第2絶縁部22、絶縁層30、クエンチ部36、レンズ40、及び第1配線41を含む。
【0009】
なお、
図1では、レンズ40が破線で示され、絶縁層30が省略されている。
図2では、絶縁層30、クエンチ部36、レンズ40、及び第1配線41が省略されている。
図3では、第2絶縁部22、絶縁層30、クエンチ部36、レンズ40、及び第1配線41が省略され、第1半導体領域11及び第1開口OP1が破線で示されている。
【0010】
図4に示すように、接合領域10は、第1半導体領域11及び第2半導体領域12を含む。ここでは、第1半導体領域11から第2半導体領域12に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に垂直であり、相互に直交する2方向をX方向(第2方向)及びY方向(第3方向)とする。また、説明のために、第1半導体領域11から第2半導体領域12に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、第1半導体領域11と第2半導体領域12との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0011】
図4に示すように、半導体層2は、半導体層1の上に設けられている。第1半導体領域11は、半導体層2の一部の上に設けられている。第1半導体領域11は、半導体層2を介して、半導体層1と電気的に接続されている。第2半導体領域12は、第1半導体領域11の上に設けられている。第1半導体領域11と第2半導体領域12との間には、pn接合面が形成される。例えば、pn接合面は、X方向及びY方向に平行である。第1半導体領域11の上面又はpn接合面は、Z方向に対して垂直である。
【0012】
半導体層1、半導体層2、及び第1半導体領域11は、第1導電形である。第2半導体領域12は、第2導電形である。半導体層2における第1導電形の不純物濃度は、半導体層1における第1導電形の不純物濃度よりも低い。第1半導体領域11における第1導電形の不純物濃度は、半導体層2における第1導電形の不純物濃度よりも高い。第1導電形は、p形及びn形の一方である。第2導電形は、p形及びn形の他方である。
【0013】
第1絶縁部21は、半導体層2の別の一部の上に設けられている。第1絶縁部21は、Z方向に対して傾斜した傾斜面21Sを有する。傾斜面21Sは、第2方向において接合領域10と対向する。すなわち、傾斜面21Sは、接合領域10から第1絶縁部21に向かう方向と交差し、接合領域10に面する。また、傾斜面21Sは、接合領域10の少なくとも一部と同じ高さに設けられている。傾斜面21SのZ方向における位置は、接合領域10の少なくとも一部のZ方向における位置と同じである。例えば、傾斜面21Sの一部は、第1半導体領域11と第2半導体領域12との間のpn接合面と同じ高さに設けられている。
【0014】
第1絶縁部21は、空洞21aを含む。光検出器100では、第1絶縁部21は、空洞21aのみから構成されている。例えば、第1絶縁部21は、互いに対向する一対の傾斜面21Sを有する。空洞は、一対の傾斜面21Sの間に位置している。傾斜面21Sは、半導体層2と空洞21aとの間の界面である。
【0015】
傾斜面21Sが設けられた部分では、第1絶縁部21の一部の幅は、第1絶縁部21の当該一部よりも上方に位置する第1絶縁部21の別の一部の幅よりも狭い。例えば、第1絶縁部21の下部の幅は、第1絶縁部21の上部の幅よりも狭い。傾斜面21Sの上部と接合領域10のX-Y面(第1面)における中心との間の距離は、傾斜面21Sの下部と当該中心との間の距離に比べて短い。「幅」は、接合領域10から第1絶縁部21に向かう方向における長さである。例えば、接合領域10から第1絶縁部21に向かう方向がX方向に平行であるとき、「幅」は、X方向における長さである。
【0016】
第1半導体領域11及び第2半導体領域12は、第1絶縁部21から離れている。接合領域10と第1絶縁部21との間には、半導体層2の一部が設けられている。傾斜面21Sは、半導体層2と第1絶縁部21との境界面である。
【0017】
第2絶縁部22は、第1絶縁部21の上に設けられている。第2絶縁部22の下端は、第2半導体領域12と同じ高さに設けられている。第2絶縁部22は、絶縁材料を含む。例えば、第2絶縁部22の幅は、第1絶縁部21の幅よりも広い。
【0018】
絶縁層30は、光透過性であり、接合領域10、第1絶縁部21、及び第2絶縁部22の上に設けられている。クエンチ部36は、絶縁層30中に設けられ、第2絶縁部22の上に位置している。
【0019】
図1に示すように、クエンチ部36の一端は、コンタクトプラグ36a、配線36b、及びコンタクトプラグ36cを介して、第2半導体領域12と電気的に接続されている。クエンチ部36の他端は、コンタクトプラグ36dを介して、絶縁層30中に設けられた第1配線41と電気的に接続されている。クエンチ部36の電気抵抗は、コンタクトプラグ36a、配線36b、コンタクトプラグ36c、及びコンタクトプラグ36dのそれぞれの電気抵抗よりも大きい。クエンチ部36の電気抵抗は、50kΩ以上2MΩ以下であることが好ましい。
【0020】
レンズ40は、絶縁層30の上に設けられ、接合領域10の上に位置している。レンズ40の上面は、上方に向けて凸である。レンズ40は、接合領域10に向けて光を集める。レンズ40の形状は、Z方向から見た時に、概ね、四角形、角丸四角形、又は円形である。
【0021】
図3に示すように、複数の第1絶縁部21が、X-Y面において、1つの接合領域10の周りに設けられている。複数の第1絶縁部21は、互いに離れている。
図2に示すように、1つの共通の第2絶縁部22が、複数の第1絶縁部21の上に設けられている。
【0022】
図1~
図3に示すように、接合領域10は、X方向及びY方向において複数設けられている。X方向に並んだ複数の接合領域10は、複数のクエンチ部36をそれぞれ介して、1つの第1配線41と電気的に接続されている。隣り合う接合領域10同士の間には、1つ以上の第1絶縁部21が設けられている。
図3に示す例では、X方向において、1つの第1絶縁部21が、1つの接合領域10と交互に並んでいる。Y方向において、2つの第1絶縁部21が、1つの接合領域10と交互に並んでいる。
【0023】
図2に示すように、第2絶縁部22及び絶縁層30には、複数の第1開口OP1が設けられている。複数の第1開口OP1は、互いに離れている。1つの第1開口OP1は、1つの空洞21aに繋がっている。
図1に示すように、Z方向から見た時に、第1開口OP1の形は、I字状又はJ字状である。Z方向から見た時に、第1開口OP1の位置は、接合領域10の位置、クエンチ部36の位置、及び第1配線41の位置とは異なる。Z方向から見た時に、第1開口OP1の少なくとも一部の位置は、レンズ40の一部の位置と同じでも良い。又は、第1開口OP1の位置は、レンズ40の位置と異なっていても良い。
【0024】
光検出器100の動作を説明する。
上方から接合領域10に光が入射すると、半導体層2又は接合領域10で電荷が発生する。電荷が発生すると、クエンチ部36及び第1配線41に電流が流れる。第1配線41に流れる電流を検出することで、接合領域10への光の入射を検出できる。
【0025】
例えば、第1半導体領域11と第2半導体領域12との間には、逆電圧が印加される。接合領域10は、アバランシェフォトダイオードとして機能する。第1半導体領域11と第2半導体領域12との間には、降伏電圧を超える逆電圧が印加されても良い。すなわち、接合領域10は、ガイガーモードで動作しても良い。ガイガーモードで動作することにより、高いゲインと短い時定数を持ったパルス状の信号が出力される。これにより、光検出器100の受光感度を向上できる。
【0026】
クエンチ部36は、接合領域10に光が入射し、アバランシェ降伏が発生した際に、アバランシェ降伏の継続を抑制するために設けられる。アバランシェ降伏が発生し、クエンチ部36に電流が流れると、クエンチ部36の電気抵抗に応じて電圧降下が生じる。電圧降下により、第1半導体領域11と第2半導体領域12との間の電位差が小さくなり、アバランシェ降伏が停止する。これにより、次に接合領域10へ入射した光を検出できるようになる。
【0027】
上述したように、大きな電圧降下を生じさせる抵抗体がクエンチ部36として設けられても良いし、抵抗体に代えて電流を遮断する制御回路がクエンチ部36として設けられても良い。例えば、制御回路は、コンパレータ、制御ロジック部、及び2つのスイッチング接合領域を含む。制御回路には、アクティブクエンチ回路と呼ばれる公知の構成を適用可能である。
【0028】
各要素の材料の一例を説明する。
半導体層1、半導体層2、第1半導体領域11、及び第2半導体領域12は、シリコンを含む。例えば、半導体層1、半導体層2、第1半導体領域11、及び第2半導体領域12は、シリコンを含む。リン、ヒ素、又はアンチモンがn形不純物として用いられる。ボロンがp形不純物として用いられる。半導体層1及び2に含まれるシリコン単結晶の(100)面は、Z方向に対して垂直である。
【0029】
第2絶縁部22及び絶縁層30は、シリコンと、酸素及び窒素からなる群より選択される1つと、を含む。
図4に示すように、絶縁層30は、第1層31~第3層33を含んでも良い。第2層32は、第1層31の上に設けられている。第3層33は、第2層32の上に設けられている。例えば、第2絶縁部22、第1層31、及び第3層33は、酸化シリコンを含む。第2層32は、窒化シリコンを含む。
【0030】
抵抗体としてのクエンチ部36は、ポリシリコンを含む。クエンチ部36には、n形不純物又はp形不純物が添加されていても良い。コンタクトプラグ及び各配線は、チタン、タングステン、銅、及びアルミニウムからなる群より選択された少なくとも1つの金属を含む。
【0031】
レンズ40は、光透過性の樹脂を含む。樹脂は、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混ぜた樹脂であってもよい。
【0032】
例えば、第1導電形はp形であり、第2導電形はn形である。p形不純物であるボロンは、シリコンへの注入及びシリコン中での拡散が、n形不純物に比べて容易である。このため、第1導電形がp形である場合、第1半導体領域11の形成が容易となる。また、光検出器100の感度を向上できる。
【0033】
第1導電形はn形であり、第2導電形はp形であっても良い。この場合、半導体層2で発生した電子が、正孔に比べてより早く第2半導体領域12に向けて移動でき、アバランシェ倍増を促進できる。また、電子がより早く第2半導体領域12に向けて移動することで、ロングテールノイズの時間を短縮できる。ロングテールノイズは、接合領域10に光が入射してパルス状の信号が現れた後に発生する、微少な信号である。
【0034】
【0035】
公知の方法により、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、半導体層2、接合領域10、第2絶縁部22、絶縁層30、及びクエンチ部36を、半導体基板である半導体層1の上に形成する。例えば、半導体層2は、半導体層1の(100)面へのエピタキシャル成長によって形成される。第1半導体領域11及び第2半導体領域12は、半導体層2へのイオン注入により形成される。第2絶縁部22は、LOCal Oxidation of Silicon(LOCOS)により形成される。絶縁層30及びクエンチ部36は、化学気相堆積(CVD)により形成される。
【0036】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング(RIE)により、第2絶縁部22及び絶縁層30を貫通する複数の第1開口OP1を形成する。複数の第1開口OP1は、接合領域10、クエンチ部36、及び第1配線41を避けて形成される。第1開口OP1の底部では、半導体層2が露出する。
【0037】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、ウェットエッチングにより、第1開口OP1を通して、半導体層2の一部を除去する。水酸化カリウム(KOH)又はテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)が、薬液として用いられる。ウェットエッチングにより、空洞21aを含む第1絶縁部21が形成される。
図7(a)に示すように、Z方向から見た時、第1絶縁部21の形状は、1つの第1開口OP1に外接する四角形となる。また、
図7(b)に示すように、第1絶縁部21の側面には、Z方向に対して傾斜したシリコンの(111)面が現れる。これにより、傾斜面21Sを有する第1絶縁部21が形成される。例えば、(111)面のX方向に対する傾きは、54度~55度である。
【0038】
絶縁層30の上に、樹脂を塗布し、樹脂層40aを形成する。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、フォトリソグラフィ及びRIEによって、第1開口OP1上に位置する樹脂層40aの一部を除去する。これにより、樹脂層40aが複数に分離される。この結果、後のリフロー工程において、樹脂が第1開口OP1及び空洞21aへ流れ込むことを抑制できる。
【0039】
熱処理により、樹脂層40aの流動性を高め、樹脂層40aをリフローさせる。
図9(a)及び
図9(b)に示すように、樹脂層40aの上面は、表面張力により湾曲する。樹脂層40aが凝固し、レンズ40が形成される。以上の工程により、第1実施形態に係る光検出器100が製造される。
【0040】
上述した製造方法において、第1開口OP1の形成及び第1絶縁部21の形成は、樹脂層40aの形成後に実行されても良い。例えば、第1開口OP1が形成される位置の樹脂層40aを、フォトリソグラフィ及びRIEにより除去する。樹脂層40aに形成された開口を通して、第2絶縁部22及び絶縁層30を貫通する複数の第1開口OP1を形成する。ウェットエッチングにより、第1開口OP1を通して、半導体層2の一部を除去し、第1絶縁部21を形成する。
【0041】
第1実施形態の利点を説明する。
接合領域10に光が入射すると、電荷が発生する。一部の電荷は、再結合し、光(二次光子)を発する。二次光子が、別の接合領域10に入射すると、その別の接合領域10で電荷が発生する。すなわち、クロストークが発生する。光検出器100による光子の検出精度を高めるためには、クロストークを抑制できることが望ましい。
【0042】
図10は、
図4の一部を拡大した断面図である。
第1実施形態に係る光検出器100は、第1絶縁部21を含む。第1絶縁部21は、傾斜面21Sを有する。接合領域10で発生した二次光子Pは、隣接する接合領域10に向けて進むと、傾斜面21Sによって下方に向けて反射される。これにより、クロストークを抑制できる。
【0043】
第1絶縁部21は、空洞21aを含む。空洞21aは、気体を含み、空洞21aの屈折率は、半導体層2の屈折率よりも低い。空洞21aを設けることにより、空洞21aが無い場合に比べて、第1絶縁部21の屈折率と半導体層2の屈折率との差が大きくなる。差が大きくなることで、二次光子Pが、傾斜面21Sによって反射され易くなる。第1実施形態によれば、クロストークを効果的に抑制でき、光検出器100による光子の検出精度を向上できる。
【0044】
また、空洞21aが設けられることで、光検出器100に発生した応力を空洞21aで緩和できる。このため、光検出器100を製造する際に、応力による損傷の発生、半導体層1及び2の反りなどを低減でき、光検出器100の歩留まりを向上できる。
【0045】
図10に示すように、二次光子Pは、主に、第1半導体領域11と第2半導体領域12との間のpn接合面近傍で発生する。このため、傾斜面21Sの一部は、第1半導体領域11と第2半導体領域12との間のpn接合面と同じ高さに設けられることが好ましい。すなわち、傾斜面21Sの一部のZ方向における位置は、pn接合面のZ方向における位置と同じであることが好ましい。
【0046】
傾斜面21SのZ方向に対する傾きθは、17度よりも大きいことが好ましい。スネルの法則により、二次光子Pが全反射される臨界角θm、半導体層2の屈折率ni、及び第1絶縁部21の屈折率noは、sinθm=ni/noの関係を満たす。半導体層2がシリコンを含む場合、屈折率niは、3.6である。第1絶縁部21が空気の空洞21aから構成される場合、屈折率noは、1である。これらの屈折率に基づく臨界角θmは、約16度である。傾きθが17度よりも大きいと、より多くの二次光子Pを反射できる。例えば、pn接合面からX-Y面に沿って進行する二次光子Pが、傾斜面21Sによって全反射される。これにより、クロストークを効果的に抑制できる。
【0047】
より好ましくは、傾きθは、25度よりも大きい。レンズ40を形成する際に、リフローされた樹脂が空洞21aに流れ込む可能性がある。この場合、一部の傾斜面21Sは、半導体層2と樹脂との界面となる。例えば、第1絶縁部21(樹脂)の屈折率noは、1.5である。屈折率ni=3.6、屈折率no=1.5のとき、臨界角θmは、約24度である。傾きθが25度よりも大きいと、より確実に、多くの二次光子Pを反射できる。
【0048】
一方で、傾きθが大きくなるに連れて、第1絶縁部21の上部の幅が広くなる。光検出器100のサイズが一定の場合、幅が広くなるほど、接合領域10のX-Y面における面積が小さくなり、光検出器100の受光感度が低下する。又は、接合領域10の面積が一定の場合、幅が広くなるほど、光検出器100のサイズが大きくなる。光検出器100の受光感度又はサイズの観点から、傾きθは、45度よりも小さいことが好ましい。
【0049】
また、クロストークを効果的に低減するために、第1絶縁部21(傾斜面21S)の一方向の長さは、接合領域10の一方向の長さよりも長いことが好ましい。例えば
図3に示すように、1つの第1絶縁部21は、1つの接合領域10とX方向において並んでいる。前記1つの第1絶縁部21のY方向における長さLy2は、前記1つの接合領域10のY方向における長さLy1よりも長い。別の1つの第1絶縁部21は、前記1つの接合領域10とY方向において並んでいる。前記別の1つの第1絶縁部21のX方向における長さLx2は、前記1つの接合領域10のX方向における長さLx1よりも長い。
【0050】
また、第1開口OP1が設けられることで、光検出器100に発生した応力を第1開口OP1で緩和できる。このため、光検出器100を製造する際に、応力による損傷の発生、半導体層1及び2の反りなどを低減でき、光検出器100の歩留まりを向上できる。
【0051】
[第1変形例]
図11は、第1実施形態の第1変形例に係る光検出器を示す断面図である。
第1変形例に係る光検出器110では、
図11に示すように、第1開口OP1内に、絶縁体42が設けられている。絶縁体42は、レンズ40と連なっている。絶縁体42は、X-Y面において、絶縁層30に囲まれている。絶縁体42に含まれる樹脂は、レンズ40に含まれる樹脂と同じである。
【0052】
レンズ40のX-Y面における中心は、接合領域10のX-Y面における中心からずれていても良い。このスケーリングにより、接合領域10の中心の感度と、接合領域10の外周の感度と、の差を低減できる。スケーリングされたレンズ40を形成する場合、樹脂層40aをリフローする時点で、第1開口OP1は樹脂層40aに覆われている。リフロー時に、樹脂が第1開口OP1内へ流れ込み、絶縁体42が形成される。
【0053】
又は、光検出器100のようにスケーリングを実施しない場合であっても、リフロー時に、樹脂が第1開口OP1内へ流れ込む可能性がある。光検出器100において、光検出器110と同様に、第1開口OP1内に、絶縁体42が設けられていても良い。この場合、絶縁体42は、レンズ40と連なっていても良いし、レンズ40から離れていても良い。
【0054】
レンズ40と絶縁体42が同じ樹脂を含む場合、レンズ40と絶縁体42との間の屈折率の差を小さくできる。また、絶縁体42がレンズ40と連なる場合、レンズ40と絶縁体42との間には界面が存在しない。レンズ40の樹脂が絶縁体42の樹脂と異なる場合に比べて、レンズ40と絶縁体42との間で光の反射を抑制できる。例えば、下方に向けて進行した光がレンズ40と絶縁体42との間を通過した際に、乱反射されることを抑制し、光検出器110の受光感度を向上できる。
【0055】
[第2変形例]
図12は、第1実施形態の第2変形例に係る光検出器を示す断面図である。
第2変形例に係る光検出器120では、
図12に示すように、第1絶縁部21は、空洞21a及び絶縁領域21bを含む。
【0056】
絶縁領域21bは、半導体層2と空洞21aとの間に設けられている。傾斜面21Sは、半導体層2と絶縁領域21bとの間の界面である。絶縁領域21bは、絶縁体42と連なっている。絶縁領域21bは、絶縁性の樹脂を含む。絶縁領域21bに含まれる樹脂は、絶縁体42に含まれる樹脂及びレンズ40に含まれる樹脂と同じである。
【0057】
光検出器120によれば、光検出器100と同様に、二次光子Pが傾斜面21Sによって下方に向けて反射される。また、傾斜面21Sで反射されたなかった一部の二次光子は、空洞21aと絶縁領域21bとの界面によって上方又は下方へ反射される。これにより、光検出器120におけるクロストークを抑制できる。
【0058】
傾斜面21SのZ方向に対する傾きθは、傾斜面21Sでより多くの二次光子を反射させるために、上述した通り、25度よりも大きいことが好ましい。
【0059】
絶縁領域21b及び絶縁体42は、樹脂以外の酸化物又は窒化物を含んでも良い。例えば、絶縁領域21b及び絶縁体42は、シリコンと、酸素及び窒素からなる群より選択される1つと、を含む。例えば、
図7(a)及び
図7(b)に示す工程の後であって樹脂層40aの形成前に、CVDにより、絶縁領域21b及び絶縁体42が形成される。この場合、絶縁体42は、絶縁領域21bと連なり、レンズ40とは連なっていない。レンズ40と絶縁体42との間には、界面が形成される。
【0060】
例えば、酸化シリコン又は窒化シリコンの屈折率は、約2.0である。このため、傾斜面21SのZ方向に対する傾きθが25度よりも大きければ、絶縁領域21bが、樹脂、酸化物、又は窒化物のいずれを含む場合でも、二次光子を傾斜面21Sによって好適に反射できる。
【0061】
[第3変形例]
図13は、第1実施形態の第3変形例に係る光検出器を示す断面図である。
図13に示す第3変形例に係る光検出器130のように、一部の第1開口OP1内に、絶縁体42が設けられても良い。別の一部の第1開口OP1内には、絶縁体42は設けられていない。一部の第1絶縁部21が、絶縁領域21bを含んでも良い。別の一部の第1絶縁部21は、絶縁領域21bのみを含み、空洞21aを含まなくても良い。さらに別の一部の第1絶縁部21は、絶縁領域21bを含まず、空洞21aのみから構成される。
【0062】
複数の第1絶縁部21の少なくとも一部が空洞21aを含むことで、いずれの第1絶縁部21も空洞21aを含まない場合に比べて、光検出器130におけるクロストークを抑制できる。
【0063】
[第4変形例]
図14は、第1実施形態の第4変形例に係る光検出器を示す平面図である。
図15は、
図14のA1-A2断面図である。
図14では、レンズ40が破線で示され、第1絶縁部21及び絶縁層30が省略されている。第4変形例に係る光検出器140は、
図14に示すように、第3絶縁部23をさらに含む。
【0064】
第3絶縁部23は、X-Y面において、接合領域10の周りに設けられている。
図15に示すように、第3絶縁部23は、接合領域10と第1絶縁部21との間に位置する。例えば、第1半導体領域11及び第2半導体領域12は、第3絶縁部23から離れている。第1半導体領域11及び第2半導体領域12は、第3絶縁部23に接していても良い。第3絶縁部23の下端は、第1絶縁部21の傾斜面21Sよりも下方に位置する。例えば、第3絶縁部23の下端は、半導体層1に達している。第3絶縁部23と半導体層2との間の界面のZ方向に対する傾きは、傾斜面21SのZ方向に対する傾きよりも小さい。
【0065】
第1絶縁部21の下に、空洞21aに通じる第2開口OP2が設けられていても良い。第2開口OP2は、第1開口OP1の下に位置する。Z方向から見た時に、第2開口OP2は、第1開口OP1と重なる。第2開口OP2は、隣り合う第3絶縁部23同士の間に位置している。例えば、第2開口OP2の下端は、第3絶縁部23の下端よりも上方に位置する。第2開口OP2を設けることで、半導体層2に生じる応力を低減できる。例えば、半導体層1又は2に損傷が生じる可能性を低減できる。又は、光検出器140の反りを低減できる。
【0066】
図16は、
図15の一部を拡大した断面図である。
絶縁層30は、第1層31~第4層34を含む。第4層34は、第3層33の上に設けられている。第1層31、第3層33、及び第4層34は、酸化シリコンを含む。第2層32は、窒化シリコンを含む。
【0067】
図16に示すように、接合領域10で発生した二次光子Pの一部は、第3絶縁部23を第1絶縁部21に向けて進行し、傾斜面21Sによって反射される。傾斜面21Sよりも下方に進行した二次光子Pは、半導体層2と第3絶縁部23との間の界面によって反射される。第3絶縁部23が設けられることで、傾斜面21Sよりも下方に進行した二次光子Pを反射できる。第4変形例に係る光検出器140によれば、光検出器100に比べて、クロストークをさらに抑制できる。
【0068】
【0069】
公知の方法により、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、半導体層2、接合領域10、第3絶縁部23、絶縁層30、及びクエンチ部36を、半導体基板である半導体層1の上に形成する。例えば、半導体層1、半導体層2、第1層31、及び第2層32を貫通する開口をRIEによって形成し、CVDによってその開口を絶縁材料で埋め込むことで、第3絶縁部23が形成される。
【0070】
図18(a)及び
図18(b)に示すように、フォトリソグラフィ及びRIEにより、絶縁層30を貫通する複数の第1開口OP1を形成する。Z方向から見た時に、第3絶縁部23は、第1開口OP1と接合領域10との間に位置する。
【0071】
図19(a)及び
図19(b)に示すように、ウェットエッチングにより、第1開口OP1を通して、半導体層2の一部を除去する。これにより、空洞21aを含み、且つ傾斜面21Sを有する第1絶縁部21が形成される。
【0072】
図20(a)及び
図20(b)に示すように、RIEにより、第1開口OP1を通して、半導体層2の一部をさらに除去する。これにより、第1絶縁部21の下に、空洞21aと通じる第2開口OP2が形成される。
【0073】
以降は、
図9(a)及び
図9(b)に示す工程と同様に、樹脂層40aを絶縁層30の上に形成し、樹脂層40aをパターニングする。
図10(a)及び
図10(b)に示す工程と同様に、樹脂層40aをリフローさせ、レンズ40を形成する。以上の工程により、第4変形例に係る光検出器140が製造される。
【0074】
[第5変形例]
図21及び
図22は、第1実施形態の第5変形例に係る光検出器を示す平面図である。
図23は、
図21及び
図22のA1-A2断面図である。
図21では、レンズ40が破線で示され、第1絶縁部21及び絶縁層30が省略されている。
図22では、絶縁層30、クエンチ部36、レンズ40、及び第1配線41が省略されている。
【0075】
第5変形例に係る光検出器150は、第1開口OP1の形状及び第1絶縁部21の形状について、光検出器100と差異を有する。
図21に示すように、第5変形例に係る光検出器150では、1つの第1開口OP1の形は、Z方向から見た時に、U字状である。1つの第1開口OP1の形は、Z方向から見た時に、L字状であっても良い。
図22に示すように、1つの第1絶縁部21の形は、Z方向から見た時に、1つの第1開口OP1に外接する四角形である。
【0076】
図22及び
図23に示すように、1つの第1絶縁部21は、X-Y面において、1つの第3絶縁部23の周りに設けられている。第1開口OP1を通して半導体層2をウェットエッチングしたときに、接合領域10に向けたエッチングが第3絶縁部23によって停止する。これにより、第3絶縁部23の周りに、空洞21aからなる第1絶縁部21が形成される。
【0077】
図24は、
図23の一部を拡大した断面図である。
図24に示すように、1つの第1絶縁部21の傾斜面21Sは、X-Y面において、1つの接合領域10を囲んでいる。1つの傾斜面21Sは、外方を向いている。外方は、前記1つの接合領域10から1つの第1絶縁部21に向かう方向である。
【0078】
例えば、接合領域10で発生した二次光子Pの一部は、その接合領域10を囲う第1絶縁部21を通過し、隣接する別の第1絶縁部21に進む。二次光子Pは、別の第1絶縁部21の傾斜面21Sによって反射される。傾斜面21Sよりも下方に進行した二次光子Pは、半導体層2と第3絶縁部23との間の界面によって反射される。第5変形例に係る光検出器150によれば、光検出器140と同様に、クロストークを抑制できる。
【0079】
図25は、第1実施形態の第5変形例に係る別の光検出器を示す断面図である。
図25に示す光検出器151のように、第1開口OP1は、絶縁層30の上部によって塞がれていても良い。例えば、絶縁層30は、第1層31~第5層35を含む。第5層35は、第4層34の上に設けられ、酸化シリコンを含む。第1開口OP1は、第1層31~第3層33を貫通し、第4層34及び第5層35によって覆われている。例えば、空洞21aは、光検出器100の外部の空間とは分離されている。
【0080】
光検出器151は、以下の方法により製造できる。まず、半導体層2、接合領域10、第3絶縁部23、第1層31、及び第2層32を形成する。第2層32の上に、第3層33を形成する。RIEにより、第1層31~第3層33を貫通する第1開口OP1を形成する。第1開口OP1を通して、ウェットエッチングにより、第1絶縁部21を形成する。第4層34及び第5層35を形成し、第1開口OP1を覆う。レンズ40を絶縁層30の上に形成する。この製造方法によれば、レンズ40を形成する際に、樹脂が空洞21aに流れ込むことを防止できる。これにより、傾斜面21Sにおいて、二次光子がより反射され易くなる。
【0081】
[第6変形例]
図26及び
図27は、第1実施形態の第6変形例に係る光検出器を示す平面図である。
図28は、
図26及び
図27のA1-A2断面図である。
図26では、レンズ40が破線で示され、第1絶縁部21及び絶縁層30が省略されている。
図27では、絶縁層30、クエンチ部36、レンズ40、及び第1配線41が省略されている。
【0082】
第6変形例に係る光検出器160は、第1開口OP1の形状及び第1絶縁部21の形状について、光検出器100と差異を有する。
図26に示すように、第6変形例に係る光検出器160では、X方向に並ぶ複数の接合領域10に対して、1つの連続した第1開口OP1が設けられている。第1開口OP1の形は、Z方向から見た時に、櫛形である。又は、Z方向から見た時にT字状である第1開口OP1が、X方向において互いに離れて複数並んでいても良い。
【0083】
図27及び
図28に示すように、1つの第1絶縁部21が、X-Y面において、X方向に並ぶ複数の第3絶縁部23のそれぞれの周りに設けられている。第1開口OP1を通して半導体層2をウェットエッチングしたときに、接合領域10に向けたエッチングが第3絶縁部23によって止められることで、空洞21aからなる第1絶縁部21が形成される。
【0084】
図29は、
図28の一部を拡大した断面図である。
図29に示すように、隣り合う接合領域10の間には、第1絶縁部21の一部が設けられている。第1絶縁部21の当該一部は、互いに対向する一対の傾斜面21Sを有する。
【0085】
接合領域10で発生した二次光子Pの一部は、傾斜面21Sによって反射される。傾斜面21Sよりも下方に進行した二次光子Pは、半導体層2と第3絶縁部23との間の界面によって反射される。第6変形例に係る光検出器160によれば、光検出器140と同様に、クロストークを抑制できる。
【0086】
[第7変形例]
図30及び
図31は、第1実施形態の第7変形例に係る光検出器を示す平面図である。
図32は、
図30及び
図31のA1-A2断面図である。
図30では、レンズ40が破線で示され、第1絶縁部21及び絶縁層30が省略されている。
図31では、絶縁層30、クエンチ部36、レンズ40、及び第1配線41が省略されている。
【0087】
第7変形例に係る光検出器170では、
図30に示すように、Z方向から見たとき、第1開口OP1は、接合領域10と第3絶縁部23との間に位置する。複数の第1開口OP1が、接合領域10の周りに設けられている。複数の第1開口OP1は、互いに離れている。
【0088】
図31及び
図32に示すように、第1絶縁部21は、接合領域10と第3絶縁部23との間に設けられている。複数の第1絶縁部21が、X-Y面において、接合領域10の周りに設けられている。複数の第1絶縁部21は、互いに離れている。
【0089】
光検出器170によれば、光検出器140と同様に、接合領域10で発生した二次光子の一部は、傾斜面21Sによって反射される。傾斜面21Sよりも下方に進行した二次光子は、半導体層2と第3絶縁部23との間の界面によって反射される。これにより、光検出器170におけるクロストークを抑制できる。
【0090】
上述した変形例に係る構造は、適宜組み合わせることができる。例えば、光検出器140、150、160、170のいずれかにおいて、光検出器110と同様に、絶縁体42が設けられていても良い。光検出器140、150、160、170のいずれかにおいて、光検出器120と同様に、絶縁領域21b及び絶縁体42が設けられていても良い。光検出器150、151、160、170のいずれかにおいて、光検出器140と同様に、空洞21aと通じる第2開口OP2が設けられていても良い。
【0091】
[第2実施形態]
図33は、第2実施形態に係るライダー(Laser Imaging Detection and Ranging:LIDAR)装置を例示する模式図である。
この実施形態は、ライン光源、レンズと構成され長距離被写体検知システム(LIDAR)などに応用できる。ライダー装置5001は、対象物411に対してレーザ光を投光する投光ユニットTと、対象物411からのレーザ光を受光しレーザ光が対象物411までを往復してくる時間を計測し距離に換算する受光ユニットR(光検出システムともいう)と、を備えている。
【0092】
投光ユニットTにおいて、光源404は、光を発する。例えば、光源404は、レーザ光発振器を含み、レーザ光を発振する。駆動回路403は、レーザ光発振器を駆動する。光学系405は、レーザ光の一部を参照光として取り出し、そのほかのレーザ光をミラー406を介して対象物411に照射する。ミラーコントローラ402は、ミラー406を制御して対象物411にレーザ光を投光する。ここで、投光とは、光を当てることを意味する。
【0093】
受光ユニットRにおいて、参照光用光検出器409は、光学系405によって取り出された参照光を検出する。光検出器410は、対象物411からの反射光を受光する。距離計測回路408は、参照光用光検出器409で検出された参照光と光検出器410で検出された反射光に基づいて、対象物411までの距離を計測する。画像認識システム407は、距離計測回路408で計測された結果に基づいて、対象物411を認識する。
【0094】
ライダー装置5001は、レーザ光が対象物411までを往復してくる時間を計測し距離に換算する光飛行時間測距法(Time of Flight)を採用している。ライダー装置5001は、車載ドライブ-アシストシステム、リモートセンシング等に応用される。光検出器410として上述した実施形態の光検出器を用いると、特に近赤外線領域で良好な感度を示す。このため、ライダー装置5001は、人が不可視の波長帯域への光源に適用することが可能となる。ライダー装置5001は、例えば、移動体向け障害物検知に用いることができる。
【0095】
図34は、ライダー装置の検出対象の検出を説明するための図である。
光源3000は、検出対象となる物体600に光412を発する。光検出器3001は、物体600を透過あるいは反射、拡散した光413を検出する。
【0096】
光検出器3001は、例えば、上述した本実施形態に係る光検出器を用いると、高感度な検出を実現できる。なお、光検出器410および光源404のセットを複数設け、その配置関係を前もってソフトウェア(回路でも代替可)に設定しておくことが好ましい。光検出器410および光源404のセットの配置関係は、例えば、等間隔で設けられることが好ましい。それにより、各々の光検出器410の出力信号を補完しあうことにより、正確な三次元画像を生成することができる。
【0097】
図35は、第2実施形態に係るライダー装置を備えた移動体の上面略図である。
図35の例では、移動体は、車である。本実施形態に係る車両700は、車体710の4つの隅にライダー装置5001を備えている。本実施形態に係る車両は、車体の4つの隅にライダー装置を備えることで、車両の全方向の環境をライダー装置によって検出することができる。
【0098】
移動体は、
図35に表した車以外に、ドローン、ロボットなどであっても良い。ロボットは、例えば、無人搬送車(AGV)である。これらの移動体の4つの隅にライダー装置を備えることで、移動体の全方向の環境をライダー装置によって検出することができる。
【0099】
以上で説明した各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいとみなせる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0100】
以上で説明した実施形態によれば、光検出器におけるクロストークを低減可能である。
【0101】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0102】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、光検出器に含まれる半導体層、第1半導体領域、第2半導体領域、第1絶縁部、第2絶縁部、第3絶縁部、絶縁層、クエンチ部、レンズ、第1配線、絶縁体などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0103】
各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0104】
その他、本発明の実施の形態として上述した光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0105】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0107】
1:半導体層、 2:半導体層、 10:接合領域、 11:第1半導体領域、 12:第2半導体領域、 21:第1絶縁部、 21S:傾斜面、 21a:空洞、 21b:絶縁領域、 22:第2絶縁部、 23:第3絶縁部、 30:絶縁層、 31:第1層、 32:第2層、 33:第3層、 34:第4層、 35:第5層、 36:クエンチ部、 36a:コンタクトプラグ、 36b:配線、 36c:コンタクトプラグ、 36d:コンタクトプラグ、 40:レンズ、 40a:樹脂層、 41:第1配線、 42:絶縁体、 100,110,120,130,140,150,151,160,170:光検出器、 402:ミラーコントローラ、 403:駆動回路、 404:光源、 405:光学系、 406:ミラー、 407:画像認識システム、 408:距離計測回路、 409:参照光用光検出器、 410:光検出器、 411:対象物、 412,413:光、 600:物体、 700:車両、 710:車体、 3000:光源、 3001:光検出器、 5001:ライダー装置、 OP1:第1開口、 OP2:第2開口、 P:二次光子、 R:受光ユニット、 T:投光ユニット、 θ:傾き