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特許7515426導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性積層体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240705BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240705BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20240705BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20240705BHJP
   C08J 3/03 20060101ALI20240705BHJP
   C08J 3/09 20060101ALI20240705BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240705BHJP
   C09D 165/00 20060101ALI20240705BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20240705BHJP
   H01B 1/20 20060101ALI20240705BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240705BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C08L101/12
C08L101/02
C08K5/053
C08L65/00
C08J3/03 CER
C08J3/09
B32B27/00 A
C09D165/00
H01B1/12 F
H01B1/20 A
H01B13/00 503C
H01B5/14 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021015917
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022119004
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 裕美
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131778(JP,A)
【文献】特開2015-199802(JP,A)
【文献】特開2020-142013(JP,A)
【文献】特開2015-117367(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0263050(US,A1)
【文献】特開2014-040550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、分散媒と、増粘剤と、分子内に炭素原子同士の二重結合又は三重結合を1つ有する、炭素数4~6のジオール化合物である不飽和脂肪族アルコール化合物と、を含有する導電性高分子分散液。
【請求項2】
前記不飽和脂肪族アルコール化合物が、シス-2-ブテン-1,4-ジオール、トランス-2-ブテン-1,4-ジオール、及び2-ブチン-1,4-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の導電性高分子分散液。
【請求項3】
前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項1又は2に記載の導電性高分子分散液。
【請求項4】
前記分散媒が、前記不飽和脂肪族アルコール化合物以外のジオール化合物である、請求項1~の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
【請求項5】
バインダ樹脂及び硬化剤のうち少なくとも一方をさらに含有する、請求項1~の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
【請求項6】
π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と水とを含有する水分散液に有機溶剤を混合して混合液を得て、前記混合液から水の少なくとも一部を除去し、導電性高分子濃縮液を得ることと、
前記導電性高分子濃縮液に、増粘剤、及び分子内に炭素原子同士の二重結合又は三重結合を1つ有する、炭素数4~6のジオール化合物である不飽和脂肪族アルコール化合物を添加し、導電性高分子分散液を得ることと、を含む、導電性高分子分散液の製造方法。
【請求項7】
基材と、前記基材の少なくとも一部の面に形成された、請求項1~のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層とを備える、導電性積層体。
【請求項8】
基材の少なくとも一部の面に、請求項1~のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工することを含む、導電性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、π共役系導電性高分子を含む導電性高分子分散液及びその製造方法、並びに導電性積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
π共役系導電性高分子は、アニオン基を有するポリアニオンがドープすることによって導電性複合体を形成し、水に対する分散性が生じる。導電性複合体を含有する導電性高分子分散液をガラス基材やフィルム基材等に塗工することにより、導電層(導電膜)を備えた導電性積層体を製造することができる。
このような導電層を種々の用途に展開するためにその導電性を向上することが求められており、例えば、特許文献1には、グリセリン等のポリオールを高濃度で含有させた導電性高分子含有液が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-007470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の導電性高分子含有液によればスクリーン印刷によって導電層を形成することができる利点を有するが、形成される導電層の導電性をさらに向上させることが求められている。
【0005】
本発明は、印刷によって導電性に優れた導電層を形成することが可能な導電性高分子分散液及びその製造方法、並びにこれを用いた導電性積層体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、分散媒と、増粘剤と、分子中に炭素原子同士の不飽和結合とヒドロキシル基を有する不飽和脂肪族アルコール化合物と、を含有する導電性高分子分散液。
[2] 前記不飽和脂肪族アルコール化合物が、ジオール類である、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[3] 前記不飽和脂肪族アルコール化合物の炭素数が、4以上8以下である、[1]又は[2]に記載の導電性高分子分散液。
[4] 前記不飽和脂肪族アルコール化合物が、シス-2-ブテン-1,4-ジオール、トランス-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、及び2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載の導電性高分子分散液。
[5] 前記π共役系導電性高分子がポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であるか、又は、前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、[1]~[4]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[6] 前記分散媒が、前記不飽和脂肪族アルコール化合物以外のジオール化合物である、[1]~[5]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[7] バインダ樹脂及び硬化剤のうち少なくとも一方をさらに含有する、[1]~[6]の何れか一項に記載の導電性高分子分散液。
[8] π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と水とを含有する水分散液に有機溶剤を混合して混合液を得て、前記混合液から水の少なくとも一部を除去し、導電性高分子濃縮液を得ることと、前記導電性高分子濃縮液に、増粘剤、及び分子中に炭素原子同士の不飽和結合とヒドロキシル基を有する不飽和脂肪族アルコール化合物を添加し、導電性高分子分散液を得ることと、を含む、導電性高分子分散液の製造方法。
[9] 基材と、前記基材の少なくとも一部の面に形成された、[1]~[7]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層とを備える、導電性積層体。
[10] 基材の少なくとも一部の面に、[1]~[7]のいずれか一項に記載の導電性高分子分散液を塗工することを含む、導電性積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性高分子分散液によれば、導電性に優れた導電層をスクリーン印刷等の印刷によって容易に形成することができる。
本発明の導電性高分子分散液の製造方法によれば、上記の導電性高分子分散液を容易に製造することができる。
本発明の導電性積層体が有する導電層にあっては、従来のスクリーン印刷用インキ(例えば特許文献1の導電性高分子含有液)によって形成された導電層よりも優れた導電性を発揮し得る。
本発明の導電性積層体の製造方法によれば、上記の導電性積層体を容易に製造することができる。
【0008】
本発明はSDGs目標12「つくる責任 つかう責任」に資すると考えられる。
【0009】
本明細書及び特許請求の範囲において、「~」で示す数値範囲の下限値及び上限値はその数値範囲に含まれるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪導電性高分子分散液≫
本発明の第一態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と、分散媒と、増粘剤と、分子中に炭素原子同士の不飽和結合とヒドロキシル基を有する不飽和脂肪族アルコール化合物と、を含有する導電性高分子分散液である。
【0011】
[導電性複合体]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる導電性複合体は、π共役系導電性高分子とポリアニオンとを含む。導電性複合体中のポリアニオンはπ共役系導電性高分子にドープして、導電性を有する導電性複合体を形成している。
ポリアニオンにおいては、一部のアニオン基のみがπ共役系導電性高分子にドープしており、ドープに関与しない余剰のアニオン基を有している。余剰のアニオン基は親水基であるため、導電性複合体は水分散性を有する。
【0012】
(π共役系導電性高分子)
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であればよく、例えば、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン系導電性高分子、ポリアセチレン系導電性高分子、ポリフェニレン系導電性高分子、ポリフェニレンビニレン系導電性高分子、ポリアニリン系導電性高分子、ポリアセン系導電性高分子、ポリチオフェンビニレン系導電性高分子、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール系導電性高分子、ポリチオフェン類及びポリアニリン系導電性高分子が好ましく、透明性の面から、ポリチオフェン系導電性高分子がより好ましい。
【0013】
ポリチオフェン系導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ(3-エチルチオフェン)、ポリ(3-プロピルチオフェン)、ポリ(3-ブチルチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリ(3-デシルチオフェン)、ポリ(3-ドデシルチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルチオフェン)、ポリ(3-ブロモチオフェン)、ポリ(3-クロロチオフェン)、ポリ(3-ヨードチオフェン)、ポリ(3-シアノチオフェン)、ポリ(3-フェニルチオフェン)、ポリ(3,4-ジメチルチオフェン)、ポリ(3,4-ジブチルチオフェン)、ポリ(3-ヒドロキシチオフェン)、ポリ(3-メトキシチオフェン)、ポリ(3-エトキシチオフェン)、ポリ(3-ブトキシチオフェン)、ポリ(3-ヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルオキシチオフェン)、ポリ(3-デシルオキシチオフェン)、ポリ(3-ドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3-オクタデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヒドロキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジメトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジエトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジプロポキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジブトキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘキシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジヘプチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジオクチルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ジドデシルオキシチオフェン)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4-ブチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-メトキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-エトキシチオフェン)、ポリ(3-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルチオフェン)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルチオフェン)が挙げられる。
ポリピロール系導電性高分子としては、ポリピロール、ポリ(N-メチルピロール)、ポリ(3-メチルピロール)、ポリ(3-エチルピロール)、ポリ(3-n-プロピルピロール)、ポリ(3-ブチルピロール)、ポリ(3-オクチルピロール)、ポリ(3-デシルピロール)、ポリ(3-ドデシルピロール)、ポリ(3,4-ジメチルピロール)、ポリ(3,4-ジブチルピロール)、ポリ(3-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシエチルピロール)、ポリ(3-メチル-4-カルボキシブチルピロール)、ポリ(3-ヒドロキシピロール)、ポリ(3-メトキシピロール)、ポリ(3-エトキシピロール)、ポリ(3-ブトキシピロール)、ポリ(3-ヘキシルオキシピロール)、ポリ(3-メチル-4-ヘキシルオキシピロール)が挙げられる。
ポリアニリン系導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリ(2-メチルアニリン)、ポリ(3-イソブチルアニリン)、ポリ(2-アニリンスルホン酸)、ポリ(3-アニリンスルホン酸)が挙げられる。
これらのπ共役系導電性高分子のなかでも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
導電性複合体に含まれるπ共役系導電性高分子は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0014】
(ポリアニオン)
ポリアニオンは、アニオン基を有するモノマー単位を、分子内に2つ以上有する重合体である。このポリアニオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性を向上させる。
ポリアニオンのアニオン基としては、スルホ基、またはカルボキシ基であることが好ましい。
このようなポリアニオンの具体例としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、スルホ基を有するポリアクリル酸エステル、スルホ基を有するポリメタクリル酸エステル(例えば、ポリ(4-スルホブチルメタクリレート、ポリスルホエチルメタクリレート、ポリメタクリロイルオキシベンゼンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸等のスルホ基を有する高分子や、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸等のカルボキシ基を有する高分子が挙げられる。ポリアニオンは、単一のモノマーが重合した単独重合体であってもよいし、2種以上のモノマーが重合した共重合体であってもよい。
これらポリアニオンのなかでも、導電性をより高くできることから、スルホ基を有する高分子が好ましく、ポリスチレンスルホン酸がより好ましい。
前記ポリアニオンは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリアニオンの質量平均分子量は2万以上100万以下であることが好ましく、10万以上50万以下であることがより好ましい。質量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて測定し、プルラン換算で求めた質量基準の平均分子量である。
【0015】
導電性複合体中の、ポリアニオンの含有割合は、π共役系導電性高分子100質量部に対して1質量部以上1000質量部以下の範囲が好ましく、10質量部以上700質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。ポリアニオンの含有割合が前記下限値以上であれば、π共役系導電性高分子へのドーピング効果が強くなる傾向にあり、導電性がより高くなる。一方、ポリアニオンの含有量が前記上限値以下であれば、π共役系導電性高分子を充分に含有させることができるので、充分な導電性を確保できる。
【0016】
本態様の導電性高分子分散液の総質量に対する導電性複合体の含有量としては、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、導電性高分子分散液を塗布して形成する導電層の導電性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、導電性高分子分散液における導電性複合体の分散性を高め、均一な導電層を形成することができる。
【0017】
[不飽和脂肪族アルコール化合物]
本態様の導電性高分子分散液に含まれている1種以上の不飽和脂肪族アルコール化合物は、分子内に炭素原子同士の二重結合又は三重結合を1つ以上有し、かつ、分子内にヒドロキシル基(水酸基)を1つ以上有するアルコールである。
【0018】
本態様の導電性高分子分散液によって形成される導電層の導電性をより向上させる観点から、前記不飽和脂肪族アルコール化合物は、ヒドロキシル基を2つ有するジオール類であることが好ましい。
また、同様の観点から、前記不飽和脂肪族アルコール化合物の炭素数は、4以上12以下が好ましく、4以上10以下がより好ましく、4以上8以下がさらに好ましく、4以上6以下が特に好ましい。
また、同様の観点から、前記不飽和脂肪族アルコール化合物が有する不飽和結合の数は1つ以上4つ以下が好ましく、1つ以上3つ以下がより好ましく、1つ又は2つがさらに好ましい。
【0019】
前記不飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、シス-2-ブテン-1,4-ジオール、トランス-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、及び2,4-ヘキサジイン-1,6-ジオールからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール等も挙げられる。
【0020】
本態様の導電性高分子分散液において、前記導電性複合体100質量部に対する前記不飽和脂肪族アルコール化合物の合計の含有量は、10質量部以上1000質量部以下が好ましく、100質量部以上800質量部以下がより好ましく、200質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。上記の好適な範囲であると、本発明の効果が一層優れる。
【0021】
本態様の導電性高分子分散液の総質量に対する、前記不飽和脂肪族アルコール化合物の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上7質量%以下がより好ましく、2質量%以上5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、導電層の導電性を充分に向上させることができる。
【0022】
[分散媒]
本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒としては、水、有機溶剤、水と有機溶剤との混合液が挙げられる。
前記不飽和脂肪族アルコール化合物は、本態様の導電性高分子分散液に含まれる分散媒には該当しないものとする。
【0023】
(有機溶剤)
前記有機溶剤は、1気圧における沸点が150℃以上250℃以下の範囲にある高沸点溶剤であることが好ましい。高沸点溶剤を含むことにより、導電性の向上効果がより一層得られ、スクリーン印刷に適した粘度の導電性高分子分散液となり易い。前記分散媒に含まれる高沸点溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。また、前記分散媒は高沸点溶剤とともに高沸点溶剤以外の分散媒を1種以上含んでもよい。
【0024】
高沸点溶剤として、水溶性有機溶剤、非水溶性有機溶剤が例示される。ここで、水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g以上の有機溶剤であり、非水溶性有機溶剤は、20℃の水100gに対する溶解量が1g未満の有機溶剤である。
【0025】
高沸点の水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、窒素原子含有溶剤、硫黄原子含有溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコール(沸点198℃)、プロピレングリコール(別名:1,2-プロパンジオール、沸点188℃)、1,3-プロパンジオール(沸点214℃)、1,2-ブタンジオール(沸点194℃)、1,3-ブタンジオール(沸点207℃)、1,4-ブタンジオール(沸点228℃)、ジプロピレングリコール(沸点232℃、異性体の混合物)、ジエチレングリコール(沸点245℃)、等の多価アルコールが挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(沸点188℃)等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、メチルアミルケトン(沸点151℃)、ジアセトンアルコール(沸点168℃)等が挙げられる。
窒素原子含有溶剤としては、例えば、N-メチルピロリドン(沸点202℃)、N-メチルアセトアミド(沸点206℃)、ジメチルアセトアミド(沸点165℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点153℃)等が挙げられる。
硫黄原子含有溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)等が挙げられる。
【0026】
高沸点の非水溶性有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ノナン(沸点151℃)、デカン(沸点174℃)、ドデカン(沸点216℃)等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、プロピルベンゼン(沸点159℃)、イソプロピルベンゼン(沸点152℃)等が挙げられる。
【0027】
上記例の中でも、導電性向上の効果がより一層得られることから、アルコール系の高沸点溶剤が好ましい。
アルコール系の高沸点溶剤の中でも、導電性の向上等の効果が優れることから、ジオール化合物が好ましく、エチレングリコール(沸点198℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1,3-プロパンジオール(沸点214℃)、ジメチルスルホキシド(沸点189℃)がより好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオールがさらに好ましい。
【0028】
前記分散媒の総質量に対する高沸点溶剤の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。
高沸点溶剤の含有量が上記下限値以上であれば、得られる導電性高分子分散液の粘度がスクリーン印刷に適したものとなり、導電性向上の効果も充分に得られる。
【0029】
前記分散媒は、高沸点溶剤以外の有機溶剤(以下、「その他の有機溶剤」ともいう。)を含有してもよい。その他の有機溶剤としては、水溶性有機溶剤でもよいし、非水溶性有機溶剤でもよいし、水溶性有機溶剤及び非水溶性有機溶剤の両方でもよい。
【0030】
水溶性有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)、2-メチル-2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アリルアルコール等が挙げられる。
エーテル系溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等が挙げられる。
ケトン系溶剤としては、例えば、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、ジイソプロピルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、ジアセトンアルコール等が挙げられる。
水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
非水溶性有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶剤等が挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等が挙げられる。
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン等が挙げられる。
非水溶性有機溶剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記分散媒には水が含まれていることが好ましい。水が含まれていることにより導電性複合体の分散性がより向上する。前記分散媒の総質量に対する水の含有量は、0.1質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量以上30質量%以下がより好ましく、10質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
本態様の導電性高分子分散液における分散媒の含有量は、導電性高分子分散液の総質量に対して、80質量%以上99.9質量%以下が好ましく、85質量%以上99質量%以下がより好ましく、90質量%以上98質量%以下がさらに好ましい。
分散媒の含有量が前記下限値以上であれば、導電性複合体を容易に分散させることができ、前記上限値以下であれば、導電性複合体を含有させる余地が得られる。
【0034】
[増粘剤]
本態様の導電性高分子分散液に増粘剤が含まれることにより、粘度やレオロジー特性がスクリーン印刷等の印刷に適したものとなる。
増粘剤としては、スクリーン印刷用の公知のインクに使用される増粘剤を適用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルピロリドン、セルロースエーテル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリウレタン系樹脂、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの中でもポリビニルピロリドンを用いると、形成される導電層の透明性が高まり、ヘイズが低下し、基材に対する密着性がより一層向上するので好ましい。
増粘剤は1種のみが含まれてもよいし、2種以上が含まれてもよい。
【0035】
本態様の導電性高分子分散液の総質量に対する増粘剤の含有量は、増粘剤の種類にもよるが、例えば、0.01質量%以上3質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、スクリーン印刷に適した粘度となり易い。
【0036】
[バインダ樹脂]
バインダ樹脂は、π共役系導電性高分子、前記ポリアニオン、前記不飽和脂肪族アルコール化合物、及び前記増粘剤以外の高分子化合物であり、形成された導電層において導電性複合体を結着させ、導電層の強度を高める樹脂である。
バインダ樹脂の具体例としては、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、メラミン樹脂等が挙げられる。
導電性複合体との相溶性が高いことから、バインダ樹脂としては水分散性樹脂が好ましい。
【0037】
水分散性樹脂としては、例えば、水分散性ポリエステル、水分散性アクリル樹脂、水分散性ポリウレタン、水分散性ポリイミド、水分散性メラミン樹脂等が挙げられる。これら水分散性樹脂のなかでも、水分散性ポリエステルが好ましい。水分散性樹脂が水分散性ポリエステルであれば、導電層を形成する基材としてポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルムを用いた場合に、基材に対する導電層の密着性を高めることができる。
水分散性樹脂は、その分散性を高める観点から、カルボキシ基やスルホ基等の酸基又はその塩を有することが好ましい。
水分散性樹脂は、水系分散媒中に乳化されたエマルションであってもよい。
水分散性樹脂のなかでも、水分散性が高く、導電層の導電性をより高くできることから、酸基又はその塩を有するポリエステル、酸基又はその塩を有するポリウレタン、エマルション状のポリエステル、エマルション状のポリウレタンが好ましく、酸基又はその塩を有するポリエステルがより好ましい。
水分散性樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
バインダ樹脂の含有量は、導電性複合体100質量部に対して、10質量部以上10000質量部以下が好ましく、100質量部以上1000質量部以下がより好ましく、100質量部以上500質量部以下がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であれば、導電層の基材に対する密着性が向上し、導電層の強度が向上する。
上記範囲の上限値以下であれば、導電性複合体の相対的な含有量の低下による導電性の低下を抑制することができる。
【0039】
[硬化剤]
本態様の導電性高分子分散液には硬化剤が含まれていてもよい。硬化剤は、導電性高分子分散液の塗膜の硬化に寄与する化合物であり、例えば、ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物、アミノ樹脂等が挙げられる。
本態様の導電性高分子分散液に活性水素基(カルボキシ基、スルホ基、水酸基等)を有する成分が含まれている場合、これらを容易に架橋できることから、ポリイソシアネート化合物が好ましい。ここで、ポリイソシアネート化合物はブロック剤によってブロック化されていてもよい。一般に、ブロック化ポリイソシアネート化合物が加熱されるとブロック剤がイソシアネート基から脱離し、元のイソシアネート基に由来する反応性基を現す。
【0040】
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。具体的には、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、これらポリイソシアネートの誘導体等が挙げられる。
【0041】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。
【0042】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等が挙げられる。
【0043】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等が挙げられる。
【0044】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等が挙げられる。
【0045】
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上述のポリイソシアネートのダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等が挙げられる。
【0046】
上述のポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上を併用してもよい。また、これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体が好ましい。
【0047】
また、ポリイソシアネート化合物は、先に例示したポリイソシアネート及びその誘導体と、ポリイソシアネートに対して反応し得る反応性化合物とを、イソシアネート基過剰の条件で反応させてなるプレポリマーであってもよい。前記反応性化合物としては、例えば、水酸基、アミノ基等の活性水素基を有する化合物が挙げられる。具体的には、例えば、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂、アミン、水等が挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネート化合物が有するイソシアネート基をブロックするブロック剤は、公知のものを適用できる。具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0049】
[その他の添加剤]
導電性高分子分散液には、その他の添加剤が含まれてもよい。
添加剤としては、本発明の効果が得られる限り特に制限されず、例えば、界面活性剤、無機導電剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを使用できる。
ただし、添加剤は、前述したπ共役系導電性高分子、ポリアニオン、不飽和脂肪族アルコール化合物、増粘剤、分散媒、バインダ成分、及び硬化剤以外のものである。
界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の界面活性剤が挙げられるが、保存安定性の面からノニオン系が好ましい。また、ポリビニルピロリドンなどのポリマー系界面活性剤を添加してもよい。
無機導電剤としては、金属イオン類、導電性カーボン等が挙げられる。なお、金属イオンは、金属塩を水に溶解させることにより生成させることができる。
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンオイル等が挙げられる。
カップリング剤としては、エポキシ基、ビニル基又はアミノ基を有するシランカップリング剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキサニリド系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0050】
導電性高分子分散液が前記添加剤を含有する場合、その含有割合は、添加剤の種類に応じて適宜決められるが、例えば、導電性複合体100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下の範囲とすることができる。
【0051】
<粘度>
本態様の導電性高分子分散液の粘度は、増粘剤によって高められており、さらに前述の高沸点溶剤の粘度によっても調整することができる。本態様の導電性高分子分散液の印刷適正、特にスクリーン印刷の適正を高める観点から、25℃における前記粘度は、0.1Pa・s以上5Pa・s以下が好ましく、0.3Pa・s以上3Pa・s以下がより好ましく、0.6Pa・s以上1Pa・s以下がさらに好ましい。
ここで、粘度は、JIS Z8809で規定された粘度計校正用標準液を用いて校正された粘度計を用いて、25℃にて測定した値である。
【0052】
≪導電性高分子分散液の製造方法≫
本発明の第二態様は、π共役系導電性高分子及びポリアニオンを含む導電性複合体と水とを含有する水分散液に有機溶剤を混合して混合液を得て、前記混合液から水の少なくとも一部を除去し、導電性高分子濃縮液を得ること(濃縮工程)と、前記導電性高分子濃縮液に、増粘剤、及び分子中に炭素原子同士の不飽和結合とヒドロキシル基を有する不飽和脂肪族アルコール化合物を添加し、導電性高分子分散液を得ること(添加工程)と、を含む、導電性高分子分散液の製造方法である。
本態様の製造方法により、第一態様の導電性高分子分散液を製造することができる。
【0053】
(濃縮工程)
濃縮工程で用いる前記導電性複合体の水分散液は、ポリアニオンの水溶液中でπ共役系導電性高分子を形成するモノマーを化学酸化重合させて得てもよいし、市販のものを使用しても構わない。
【0054】
前記化学酸化重合は、公知の触媒及び酸化剤を用いて行うことができる。触媒としては、例えば、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硝酸第二鉄、塩化第二銅等の遷移金属化合物等が挙げられる。酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩が挙げられる。酸化剤は、還元された触媒を元の酸化状態に戻すことができる。
【0055】
濃縮工程で用いる前記有機溶剤は、第一態様で説明したものであり、高沸点溶剤であることが好ましい。高沸点溶剤を用いることにより、前記混合液から水を除去することが容易になる。
【0056】
前記混合液から水の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、前記混合液を減圧下において水蒸気として除去する方法、前記混合液を加熱して水蒸気として除去する方法、水を吸収する薬剤を添加する方法等が挙げられる。
【0057】
前記導電性高分子濃縮液の総質量に対する導電性複合体の含有量としては、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3質量%以下がより好ましく、0.3質量%以上1.5質量%以下がさらに好ましい。
上記範囲であると、導電性高分子濃縮液における導電性複合体の分散性を高め、前述の好適な導電性複合体濃度の導電性高分子分散液を容易に調製することができる。
【0058】
前記導電性高分子濃縮液の総質量に対する前記有機溶剤の含有量は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、75質量以上が特に好ましい。前記含有量の上限値は他の成分との兼ね合いで調整され、例えば95質量%以下とすることができる。
高沸点溶剤の含有量が上記下限値以上であれば、スクリーン印刷に適した粘度を有する導電性高分子分散液を容易に調製することができる。
【0059】
前記導電性高分子濃縮液の総質量に対する水の含有量は、0.1質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量以上30質量%以下がより好ましく、10質量%以上20質量%以下がさらに好ましい。
上記下限値以上の水が含まれていることにより導電性複合体の分散性がより向上する。
上記上限値以下であると、粘度調整に用いる前記有機溶剤を添加する余地が増える。
【0060】
(添加工程)
添加工程で用いる増粘剤及び不飽和脂肪族アルコール化合物は、第一態様で説明したものである。これらの添加量は第一態様で説明した好適な濃度となる量が好ましい。
添加工程において、前記バインダ樹脂、前記硬化剤、前記その他の添加剤等を任意に添加してもよい。
各成分を導電性高分子濃縮液に添加した後、適宜攪拌・混合することにより、各成分が均一に分散された導電性高分子分散液を得ることができる。
【0061】
≪導電性積層体≫
本発明の第三態様は、基材と、前記基材の少なくとも一部の面に形成された、第一態様の導電性高分子分散液の硬化層からなる導電層とを備える、導電性積層体である。
【0062】
[導電層]
前記導電層の形成範囲は、基材が有する任意の面の全体でもよいし、一部でもよい。導電性フィルムにおいては、フィルム基材の一方の面又は他方の面のほぼ全体にほぼ均一な厚さの導電層が形成されていることが好ましい。基材が有する面の一部のみに導電層が形成されている場合、例えば、当該導電層は回路や電極などの微細な導電パターンであってもよいし、導電層が設けられた領域と設けられていない領域とが同じ面に存在して大まかに区分けされただけであってもよい。
【0063】
前記導電層の平均厚みとしては、例えば、10nm以上100μm以下が好ましく、20nm以上50μm以下がより好ましく、30nm以上30μm以下がさらに好ましい。
導電層の平均厚さが前記下限値以上であれば、高い導電性を発揮でき、前記上限値以下であれば、導電層の基材に対する密着性がより向上する。
【0064】
本態様の導電層の良好な導電性の目安として、その表面抵抗値が、例えば、10Ω/□以上5000Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以上1000Ω/□以下がより好ましく、10Ω/□以上500Ω/□以下がさらに好ましい。
【0065】
[基材]
前記基材は、絶縁性材料からなる基材であってもよいし、導電性材料からなる基材であってもよい。基材の形状は特に制限されず、例えば、フィルム、基板等の平面を主体とする形状が挙げられる。
絶縁性材料としては、ガラス、合成樹脂、セラミックス等が挙げられる。
導電性材料としては、金属、導電性金属酸化物、カーボン等が挙げられる。
【0066】
(フィルム基材)
前記基材としてフィルム基材を用いると、導電性積層体は導電性フィルムとなる。
前記フィルム基材としては、例えば、合成樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。前記合成樹脂としては、例えば、エチレン-メチルメタクリレート共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン、ポリアリレート、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどが挙げられる。
フィルム基材と導電層との密着性を高める観点から、フィルム基材用の合成樹脂はポリエステル樹脂であることが好ましく、なかでも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0067】
フィルム基材用の合成樹脂は、非晶性でもよいし、結晶性でもよい。
フィルム基材は、未延伸のものでもよいし、延伸されたものでもよい。
フィルム基材には、前記導電層の密着性をさらに向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されてもよい。
【0068】
フィルム基材の平均厚みは、5μm以上500μm以下が好ましく、20μm以上200μm以下がより好ましい。フィルム基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破断しにくくなり、前記上限値以下であれば、フィルムとして充分な可撓性を確保できる。
フィルム基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0069】
(ガラス基材)
ガラス基材としては、例えば、無アルカリガラス基材、ソーダ石灰ガラス基材、ホウケイ酸ガラス基材、石英ガラス基材等が挙げられる。基材にアルカリ成分が含まれると、導電層の導電性が低下する傾向にあるため、前記ガラス基材のなかでも、無アルカリガラスが好ましい。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分の含有量がガラス組成物の総質量に対し、0.1質量%以下のガラス組成物のことである。
【0070】
ガラス基材の平均厚みとしては、100μm以上3000μm以下が好ましく、100μm以上1000μm以下がより好ましい。ガラス基材の平均厚みが前記下限値以上であれば、破損しにくくなり、前記上限値以下であれば、導電性積層体の薄型化に寄与できる。
ガラス基材の平均厚みは、無作為に選択される10箇所について厚さを測定し、その測定値を平均した値である。
【0071】
≪導電性積層体の製造方法≫
本発明の第四態様は、基材の少なくとも一部の面に、第一態様の導電性高分子分散液を塗工し、導電層を形成することを含む、導電性積層体の製造方法である。本態様の製造方法により、第三態様の導電性積層体を製造することができる。
【0072】
導電性高分子分散液を基材の任意の面に塗工(塗布)する方法としては、例えば、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等のコーターを用いた方法、エアスプレー、エアレススプレー、ローターダンプニング等の噴霧器を用いた方法、ディップ等の浸漬方法等を適用することができる。
【0073】
また、上記の塗工する方法として、印刷を適用してもよい。塗工する導電性高分子分散液が好適な粘度を有する場合には、にじみ及びかすれの無い良好な印刷を行うことができる。具体的な印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、凸版印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。なかでも、形成する塗膜、すなわち導電層を厚くすることが容易であることから、スクリーン印刷が好ましい。
【0074】
前記塗膜は、基材の任意の面の全面に塗工されてもよいし、一部のみに形成されてもよく、任意のパターンを形成してもよい。前記パターンとしては、例えば、電極、配線、電気回路等が挙げられる。印刷によって塗工することにより、微細なパターン形成がより容易になる。
【0075】
導電性高分子分散液の基材への塗布量は特に制限されないが、均一にムラなく塗工することと、導電性と膜強度を勘案して、固形分として、0.01g/m以上10.0g/m以下の範囲であることが好ましい。
【0076】
基材上に塗工した導電性高分子分散液からなる塗膜を乾燥させて、分散媒の少なくとも一部を除去することが好ましい。
塗膜を乾燥する方法としては、加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥としては、例えば、熱風加熱や、赤外線加熱などの方法を採用できる。
加熱乾燥を適用する場合、加熱温度は、使用する分散媒に応じて適宜設定されるが、通常は、50℃以上200℃以下の範囲内である。ここで、加熱温度は、乾燥装置の設定温度である。上記加熱温度の範囲における好適な乾燥時間としては、0.5分以上30分以下が好ましく、1分以上15分以下がより好ましい。
乾燥処理において、導電性高分子分散液の塗膜に含まれる前記硬化剤による硬化反応が促進される。
【実施例
【0077】
(製造例1)
固形分1.2質量%のPEDOT-PSS水分散液800gにプロピレングリコール436.4gを添加し、混合した後、エバポレーターを用いて756.4gの水を減圧留去し、固形分2質量%の導電性高分子濃縮液を得た。
次いで、前記導電性高分子濃縮液187.5gに、ポリビニルピロリドン(第一工業製薬社製K-90、重量平均分子量120万)が10質量%で含まれるプロピレングリコール溶液10gと、プロピレングリコール37.5gと、スルホン酸Na基を有する水分散性ポリエステルの水分散液(互応化学工業社製プラスコートRZ-105、固形分25質量%)30gと、ヘキサメチレンジイソシアネートの誘導体であるブロックポリイソシアネート(旭化成社製デュラネートWM44-L70G)1.5gを添加して撹拌し、導電性高分子分散液のベース液(PEDOT-PSS濃度:約1.4質量%)を得た。
【0078】
(実施例1)
製造例1で得たベース液100gにシス-2-ブテン-1,4-ジオールを3g添加し、目的の導電性高分子分散液を得た。
【0079】
(実施例2)
シス-2-ブテン-1,4-ジオールの添加量を5gに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0080】
(実施例3)
シス-2-ブテン-1,4-ジオールの代わりに2-ブチン-1,4-ジオールを3g添加した以外は、実施例1と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0081】
(実施例4)
2-ブチン-1,4-ジオールの添加量を5gに変更した以外は、実施例3と同様にして導電性高分子分散液を得た。
【0082】
(比較例1)
シス-2-ブテン-1,4-ジオールを添加せず、製造例1で得たベース液をそのまま導電性高分子分散液として使用した。
【0083】
(粘度の測定)
音叉型振動式粘度計(エー・アンド・デイ社製、型番:SV-10)を用いて、温度25℃の条件で、各例の導電性高分子分散液の粘度を測定した。その結果を表1に示す。
なお、音叉型振動式粘度計による粘度の測定は、JIS Z8809で規定された粘度計校正用標準液を用いて粘度計を校正した後で行った。
【0084】
(導電性フィルムの作製)
ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、ルミラーT-60)の片面に、400メッシュのスクリーン版を用いて、各例の導電性高分子分散液をスクリーン印刷し、120℃で4分間乾燥し、導電層を形成することにより、導電性フィルムを得た。
【0085】
(表面抵抗値)
各例の導電性高分子分散液を塗布して作製した上記導電性フィルムを試料として、抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタ)を用い、印加電圧10Vの条件で、導電層の表面抵抗値(単位:Ω/□)を測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
(全光線透過率およびヘイズの測定)
各例の導電性高分子分散液を塗布して作製した上記導電性フィルムを試料として、JIS K7136に従い、ヘーズメーター(日本電色工業社製、NDH-5000)を用い、導電層を形成した部位の全光線透過率(T.T.)とヘイズ(HAZE)を測定した。全光線透過率はその数値(%)が高いほど、ヘイズはその数値(%)が低いほど、透明性が優れるといえる。その結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
[結論]
比較例1に示す不飽和脂肪族アルコール化合物を添加していない系では、実施例1~4の添加している系に比べて、表面抵抗値が高かった。フィルムの光学特性がすべての系においてほぼ同程度であることから、不飽和脂肪族アルコール化合物の添加により導電性高分子の導電性が向上していることが明らかである。