(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】工業用織物
(51)【国際特許分類】
D21F 1/10 20060101AFI20240705BHJP
D03D 11/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
D21F1/10
D03D11/00 A
(21)【出願番号】P 2021110973
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2024-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000229818
【氏名又は名称】日本フイルコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 重信
(72)【発明者】
【氏名】野村 裕亮
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-152462(JP,A)
【文献】特開2001-159086(JP,A)
【文献】特開2008-057052(JP,A)
【文献】特開2010-126862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21F 1/00-13/12
D03D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面側織物と下面側織物とが接結された工業用織物であって、
前記上面側織物の一部を構成する上面側緯糸と、
前記下面側織物の一部を構成する下面側緯糸と、
前記上面側緯糸のみを織り込んで前記上面側織物の一部を構成する上面側経糸と、
前記下面側緯糸のみを織り込んで前記下面側織物の一部を構成する下面側経糸と、
前記上面側織物と前記下面側織物とを接結する接結経糸と、を備え、
前記接結経糸は、
上下に組をなして配置される第1接結経糸および第2接結経糸と、
前記上面側緯糸の上側を通るナックルを形成する第3接結経糸と、を有し、
前記上面側経糸は、前記第3接結経糸と上下に組をなす上面側崩し糸を含み、
前記上面側崩し糸は、前記第3接結経糸が前記上面側緯糸にナックルを形成する位置で、前記上面側緯糸の下側を通って上面側表面組織の一部を崩し、
完全組織において、前記第1接結経糸および前記第2接結経糸の組が互いに補完し合い、前記第3接結経糸および前記上面側崩し糸の組が互いに補完し合うことで、前記第1接結経糸および前記第2接結経糸の組と前記第3接結経糸および前記上面側崩し糸の組とが前記上面側緯糸に同様の織り込みパターンを形成することを特徴とする工業用織物。
【請求項2】
完全組織を構成する経糸の本数が4の倍数であることを特徴とする請求項1に記載の工業用織物。
【請求項3】
前記第1接結経糸および前記第2接結経糸の組は、前記第3接結経糸および前記上面側崩し糸の組と隣接することを特徴とする請求項1または2に記載の工業用織物。
【請求項4】
前記第1接結経糸および前記第2接結経糸の組は、前記第3接結経糸および前記上面側崩し糸の組と隣接しないことを特徴とする請求項1または2に記載の工業用織物。
【請求項5】
完全組織において、前記第1接結経糸と前記第2接結経糸と前記第3接結経糸とを合わせた数は、全ての経糸の数の半分未満であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項6】
完全組織において、前記第1接結経糸と前記第2接結経糸と前記第3接結経糸とを合わせた数は、全ての経糸の数の半分以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項7】
前記第3接結経糸が前記上面側緯糸の上側を通って形成するナックルの数は、前記第1接結経糸または前記第2接結経糸が前記上面側緯糸の上側を通って形成するナックルの数よりも少ないことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の工業用織物。
【請求項8】
完全組織において、前記第1接結経糸および前記第2接結経糸の組が互いに補完し合い、前記第3接結経糸および前記上面側崩し糸の組が互いに補完し合うことで、前記第1接結経糸および前記第2接結経糸の組と前記第3接結経糸および前記上面側崩し糸の組とが前記下面側緯糸に同様の織り込みパターンを形成することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の工業用織物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機に用いられる工業用織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、抄紙機に用いられる工業用織物として、経糸と緯糸を製織した抄紙網が広く使われている。抄紙網に求められる特性は様々であるが、例えば、特許文献1には、上層面側経糸と上層面側緯糸とからなる上層面側織物と、下層面側経糸と下層面側緯糸とからなる下層面側織物と、接結糸として機能する上層面側経糸と、接結糸として機能する下層面側経糸とからなる工業用織物が開示される。接結糸として機能する上層面側経糸と、接結糸として機能する下層面側経糸とは、上下に組となって設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上下に組になった接結糸の上層面側経糸と接結糸の下層面側経糸は、上面側織物および下面側織物を接結する力が強い一方で、上面側織物の表面性を低下させる要因となる。そのため、接結力を向上しようと接結糸の上層面側経糸と接結糸の下層面側経糸の組を増やすほど、上面側織物の表面性が低下する。
【0005】
本発明の目的は、接結力を確保しつつ、上面側織物の表面性を向上させる工業用織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、上面側織物と下面側織物とが接結された工業用織物であって、上面側織物の一部を構成する上面側緯糸と、下面側織物の一部を構成する下面側緯糸と、上面側緯糸のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する上面側経糸と、下面側緯糸のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する下面側経糸と、上面側織物と下面側織物とを接結する接結経糸と、を備える。接結経糸は、上下に組をなして配置される第1接結経糸および第2接結経糸と、上面側緯糸の上側を通るナックルを形成する第3接結経糸と、を有する。上面側経糸は、第3接結経糸と上下に組をなす上面側崩し糸を含む。上面側崩し糸は、第3接結経糸が上面側緯糸にナックルを形成する位置で、上面側緯糸の下側を通って上面側表面組織の一部を崩す。完全組織において、第1接結経糸および第2接結経糸の組が互いに補完し合い、第3接結経糸および上面側崩し糸の組が互いに補完し合うことで、第1接結経糸および第2接結経糸の組と第3接結経糸および上面側崩し糸の組とが上面側緯糸に同様の織り込みパターンを形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接結力を確保しつつ、表面性を向上させる工業用織物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図2】
図1に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【
図3】第2実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図4】
図3に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【
図5】第3実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図6】
図5に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【
図7】第4実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図8】
図7に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【
図9】第5実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図10】
図9に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【
図11】第6実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図12】
図11に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【
図13】第7実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図14】第8実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図15】第9実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図16】第10実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図17】第11実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図18】第12実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図19】第13実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図20】第14実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【
図21】第15実施形態に係る工業用織物の完全組織を示す意匠図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、「経糸」とは、製紙用の多層織物をループ状のベルトとした場合に、ウェブの搬送方向に沿って伸びている糸であり、「緯糸」とは、経糸に対して交差する方向に伸びている糸である。また、「上面側織物」とは、多層織物を抄紙網として利用する場合に、抄紙網の両面のうちウェブが搬送される表面側に位置する織物であり、「下面側織物」とは、抄紙用ベルトの両面のうち主として駆動ローラが当接する裏面側に位置する織物である。なお、単に「表面」とは、上面側織物や下面側織物の露出している側の面であり、上面側織物の「表面」とは、抄紙網における表面側に相当するが、下面側織物の「表面」とは、抄紙網における裏面側に相当する。
【0010】
また、「意匠図」とは織物組織の最小の繰り返し単位であって織物の完全組織に相当する。つまり、「完全組織」が前後左右に繰り返されて「織物」が形成される。また、「ナックル」とは経糸が1本又は複数本の緯糸の上、又は下を通って表面に露出した部分をいう。
【0011】
また、「接結経糸」とは、上面側織物および下面側織物を構成する経糸の少なくとも一部の経糸であって、本来ならば上面側織物(又は下面側織物)の緯糸のみを織り込むべき経糸が、下面側織物(又は上面側織物)の緯糸を裏面側(又は表面側)から織り込むことで、上面側織物と下面側織物を接結する糸である。
【0012】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る工業用織物10の完全組織を示す意匠図である。
図2は、
図1に示す意匠図における経糸に沿った経方向(縦方向ともいう)の断面図である。
【0013】
意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3・・・で示す。緯糸は、ダッシュを付したアラビア数字、例えば1'、2'、3'・・・で示す。上面側糸はUを付した数字、下面側糸はLを付した数字、例えば1'U、2'L等で示す。また、上面側織物と下面側織物とを接結する接結経糸はBを付した数字で示し、第1接結経糸はBf、第2接結経糸はBs、第3接結経糸はBtと示す。
【0014】
また、意匠図において、△印は、第1接結経糸が下面側緯糸の下に配置されていることを示し、▲印は、第2接結経糸または第3接結経糸が上面側緯糸の上に配置されていることを示し、×印は、上面側経糸または第1接結経糸が上面側緯糸の上に配置されていることを示し、○印は、下面側経糸、第2接結経糸または第3接結経糸が下面側緯糸の下に配置されていることを示している。△印、▲印、×印および○印はナックルを示す。これらの表記は、
図3以降でも同様に用いられる。
【0015】
図1に示す第1実施形態に係る工業用織物10は、上面側経糸(1U,2U,3U,5U,6U,7U)と上面側緯糸(1’U~16’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L,2L,5L,6L)と下面側緯糸(1’L~3’L,5’L~7’L,9’L~11’L,13’L~15’L)を含んで構成される下面側織物とが、第1接結経糸(4Bf,8Bf)、第2接結経糸(4Bs,8Bs)および第3接結経糸(3Bt,7Bt)によって接結されたものである。上面側緯糸(1’U~16’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L~3’L,5’L~7’L,9’L~11’L,13’L~15’L)は、下面側織物の一部を構成する。第1接結経糸(4Bf,8Bf)、第2接結経糸(4Bs,8Bs)および第3接結経糸(3Bt,7Bt)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。第1接結経糸(4Bf,8Bf)、第2接結経糸(4Bs,8Bs)および第3接結経糸(3Bt,7Bt)を区別しない場合は単に接結経糸という。
【0016】
次に、工業用織物10における各経糸と各緯糸との織り方について
図2(a)から
図2(c)を参照して説明する。
図2(a)から
図2(c)に示す上面側緯糸および下面側緯糸の配置は同じである。
図2(a)は、上面側経糸2Uと下面側経糸2Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。
図2(a)に示すように、上面側経糸2Uが上面側緯糸(1’U~16’U)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側緯糸(2’U,4’U,6’U,8’U,10’U,12’U,14’U,16’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,3’U,5’U,7’U,9’U,11’U,13’U,15’U)の下側を通る。
【0017】
上面側経糸6Uは、上面側経糸2Uと同じように、上面側緯糸(1’U~16’U)に織り込まれる。また、上面側経糸(1U,3U,5U,7U)は、上面側経糸2Uと同様に上面側緯糸(1’U~16’U)に交互に織り込まれるものの、織り込み位置が経方向に1つずれている。このように、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して一定の間隔でナックルを形成し、表面組織を崩すことなく交互に織り込まれる。上面側経糸(1U,2U,3U,5U,6U,7U)は、上面側緯糸(1’U~16’U)のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0018】
下面側経糸2Lは、下面側緯糸(1’L,6’L,11’L)の下側を通って裏面側ナックルをそれぞれ形成し、それぞれの裏面側ナックルの間で3本の下面側緯糸(2’L,3’L,5’L)と、3本の下面側緯糸(7’L,9’L,10’L)と、3本の下面側緯糸(13’L,14’L,15’L)の上側を通る。
【0019】
下面側経糸(1L,5L,6L)は、下面側経糸2Lと同様の織り込みパターンを有し、1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L,2L,5L,6L)は、下面側緯糸(1’L~3’L,5’L~7’L,9’L~11’L,13’L~15’L)のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。同様の織り込みパターンに示す同様とは、ナックルの数や間隔は共通するが、経方向のずれを許容することを意味する。
【0020】
図2(b)は、上面側経糸3Uと第3接結経糸3Btとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。上面側経糸3Uと第3接結経糸3Btは、上下に対向して組をなし、第3接結経糸3Btによる接結のため交差する。
【0021】
上面側経糸3Uは、上面側緯糸(1’U,3’U,5’U,7’U,9’U,11’U,13’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(2’U,4’U,6’U,8’U,10’U,12’U,14’U~16’U)の下側を通る。
【0022】
第3接結経糸3Btは、下面側緯糸(1’L,6’L,11’L)の下側を通ってナックルを形成し、上面側緯糸15’Uの上側を通るナックルN3を形成する。第3接結経糸3Btは、下面側緯糸(1’L~3’L,5’L~7’L,9’L~11’L,13’L~15’L)に対して1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を交互に通り、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0023】
第3接結経糸3Btは、上面側織物に対して上面側緯糸(1’U~14’U,16’U)の下側を通り、接結のために上面側緯糸15’Uの上側を通り、1つだけ表面側にナックルN3を形成する。
【0024】
第3接結経糸3Btが表面側にナックルN3を形成する位置で、上面側経糸3Uが、上面側緯糸15’Uの下側を通って表面側にナックルを形成せず、上面側表面組織の一部を崩す上面側崩し糸3Uとして機能する。
【0025】
上面側経糸3Uおよび第3接結経糸3Btが、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側経糸3U(上面側崩し糸)以外の上面側経糸(1U,2U,5U,6U)と同様の表面組織を形成し、上面側崩し糸3U以外の上面側経糸(1U,2U,5U,6U)と同じ数のナックルを上面側表面組織に形成する。これにより、第3接結経糸3Btによって上面側織物の表面性が低下することを抑えられる。また、上面側緯糸のみに織り込まれる上面側崩し糸3Uと、第3接結経糸3Btとの組によって、接結をすることで、上下に接結経糸を設ける場合と比べて、表面性の低下を抑えられる。なお、上面側経糸7Uおよび第3接結経糸7Btも、上面側経糸3Uおよび第3接結経糸3Btと接結の位置は経方向にずれているが、同様の織り込みパターンを有するため、同様の機能を発揮する。
【0026】
図2(c)は、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。
【0027】
第1接結経糸4Bfは、上面側緯糸(2’U,12’U,14’U,16’U)の上側を通って4つのナックルN1を形成し、残りの上面側緯糸(1’U,3’U~11’U,13’U,15’U)の下側を通る。また、第1接結経糸4Bfは、下面側緯糸7’Lの下側を通ってナックルを形成し、下面側緯糸(1’L~6’L,8’L~15’L)の上側を通る。
【0028】
第2接結経糸4Bsは、上面側緯糸(4’U,6’U,8’U,10’U)の上側を通って4つのナックルN2を形成し、残りの上面側緯糸(1’U~3’U,5’U,7’U,9’U,11’U~16’U)の下側を通る。また、第2接結経糸4Bsは、下面側緯糸(2’L,13’L)の下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(1’L,3’L~12’L,14’L~15’L)の上側を通る。
【0029】
このように、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsは、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側崩し糸以外の上面側経糸(1U,2U,5U,6U)と同様の表面組織を形成し、上面側崩し糸以外の上面側経糸(1U,2U,5U,6U)と同じ数のナックルを上面側表面組織に形成する。また、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsは、互いに下面側織物の裏面組織を補完することで、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。なお、第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsは、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsと交差する位置は経方向にずれているが、同様の織り込みパターンを有するため、同様の機能を発揮する。
【0030】
第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組は、第3接結経糸3Btおよび上面側崩し糸3Uの組と隣接する。これにより、上面側織物と下面側織物の接結を強固にできる。なお、第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsの組と、第3接結経糸7Btおよび上面側崩し糸7Uの組とは、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組と、第3接結経糸3Btおよび上面側崩し糸3Uの組と同様の関係を有するため、説明を省略する。
【0031】
完全組織において、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組が互いに補完し合い、第3接結経糸3Btおよび上面側崩し糸3Uの組が互いに補完し合うことで、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組と第3接結経糸3Btおよび上面側崩し糸3Uの組とが、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して同様の織り込みパターンを形成する。第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組は、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に1つ飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。第3接結経糸3Btおよび上面側崩し糸3Uの組も、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に1つ飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。このように、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組と第3接結経糸3Btおよび上面側崩し糸3Uの組とが共通する表面組織を形成することで、接結によって上面側織物の表面性が低下することを抑えることができる。
【0032】
第3接結経糸3Btが上面側緯糸15’Uの上側を通って形成するナックルN3の位置で、上面側崩し糸3Uが上面側緯糸15’Uの下側に配置されるため、接結による上面側緯糸15’Uの引き込みが上面側崩し糸3Uによって抑制される。これによって、上面側織物の表面性が低下することを抑えることができる。第3接結経糸3Btが上面側緯糸15’Uの上側を通って形成するナックルN3の数は、第1接結経糸4Bfが上面側緯糸の上側を通って形成するナックルN1の数よりも少ない。また、ナックルN3の数は、ナックルN2の数よりも少ない。これにより、第3接結経糸3Btの列で表面性の低下を抑えることができる。
【0033】
完全組織を構成する全ての経糸(1U~3U,4Bf,5U~7U,8Bf,1L~2L,3Bt,4Bs,5L~6L,7Bt,8Bs)の本数が4の倍数である。これにより、平織り、綾織り、2本の緯糸の上下を交互に通過する2/2織、4シャフト組織、8シャフト組織、16シャフト組織などの様々な組織に対応することができる。
【0034】
完全組織において、第1接結経糸(4Bf,8Bf)と第2接結経糸(4Bs,8Bs)と第3接結経糸(3Bt,7Bt)とを合わせた数は、全ての経糸(1U~3U,4Bf,5U~7U,8Bf,1L~2L,3Bt,4Bs,5L~6L,7Bt,8Bs)の数の半分未満である。これにより、接結糸の数を少なくして通気性および表面性の低下を抑えることができる。
【0035】
第3接結経糸3Btおよび上面側崩し糸3Uは、完全組織において、互いに補完し合うことで上面側緯糸に形成するナックルの数および間隔を、上面側崩し糸3U以外の上面側経糸(1U,2U,5U,6U)が上面側緯糸に形成するナックルの数および間隔と同じにする。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0036】
第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsは、完全組織において、互いに補完し合うことで上面側緯糸に形成するナックル(N2,N3)の数を、上面側崩し糸3U以外の上面側経糸(1U,2U,5U,6U)が上面側緯糸に形成するナックルの数と同じにする。これにより、上面側織物の表面性の低下を抑えることができる。
【0037】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る工業用織物20の完全組織を示す意匠図である。
図4は、
図3に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【0038】
図3に示す第2実施形態に係る工業用織物20は、上面側経糸(1U~3U,5U~8U)と上面側緯糸(1’U~16’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)と下面側緯糸(1’L~3’L,5’L~7’L,9’L~11’L,13’L~15’L)を含んで構成される下面側織物とが、第1接結経糸4Bf、第2接結経糸4Bsおよび第3接結経糸8Btによって接結されたものである。上面側緯糸(1’U~16’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L~3’L,5’L~7’L,9’L~11’L,13’L~15’L)は、下面側織物の一部を構成する。第1接結経糸4Bf、第2接結経糸4Bsおよび第3接結経糸8Btは、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。
【0039】
図4(a)は、上面側経糸3Uと下面側経糸3Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。
図4(a)から
図4(c)に示す上面側緯糸および下面側緯糸の配置は同じである。
図4(a)に示すように、上面側経糸3Uが上面側緯糸(1’U~16’U)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側緯糸(1’U,3’U,5’U,7’U,9’U,11’U,13’U,15’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(2’U,4’U,6’U,8’U,10’U,12’U,14’U,16’U)の下側を通る。
【0040】
上面側経糸6Uは、上面側経糸2Uと同じように、上面側緯糸(1’U~16’U)に織り込まれる。また、上面側経糸(1U,3U,5U,7U)は、上面側経糸2Uと同様に上面側緯糸(1’U~16’U)に交互に織り込まれるものの、織り込み位置が経方向に1つずれている。このように、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して一定の間隔でナックルを形成し、表面組織を崩すことなく交互に織り込まれる。上面側経糸(1U~3U,5U~7U)は、上面側緯糸(1’U~16’U)のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0041】
下面側経糸3Lは、下面側緯糸(1’L,6’L,11’L)の下側を通って裏面側ナックルをそれぞれ形成し、それぞれの裏面側ナックルの間で3本の下面側緯糸(2’L,3’L,5’L)と、3本の下面側緯糸(7’L,9’L,10’L)と、3本の下面側緯糸(13’L,14’L,15’L)の上側を通る。
【0042】
他の下面側経糸(1L~2L,5L~7L)は、下面側経糸3Lと同様の織り込みパターンを有し、1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を交互に通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)は、下面側緯糸(1’L~3’L,5’L~7’L,9’L~11’L,13’L~15’L)のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0043】
図4(b)は、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。
【0044】
第1接結経糸4Bfは、上面側緯糸(2’U,12’U,14’U,16’U)の上側を通って4つのナックルN1を形成し、残りの上面側緯糸(1’U,3’U~11’U,13’U,15’U)の下側を通る。また、第1接結経糸4Bfは、下面側緯糸7’Lの下側を通ってナックルを形成し、下面側緯糸(1’L~6’L,8’L~15’L)の上側を通る。
【0045】
第2接結経糸4Bsは、上面側緯糸(4’U,6’U,8’U,10’U)の上側を通って4つのナックルN2を形成し、残りの上面側緯糸(1’U~3’U,5’U,7’U,9’U,11’U~16’U)の下側を通る。また、第2接結経糸4Bsは、下面側緯糸(2’L,13’L)の下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(1’L,3’L~12’L,14’L~15’L)の上側を通る。
【0046】
このように、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsは、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同様の表面組織を形成し、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同じ数のナックルを上面側表面組織に形成する。また、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsは、互いに下面側織物の裏面組織を補完することで、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0047】
図4(c)は、上面側経糸8Uと第3接結経糸8Btとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。上面側経糸8Uと第3接結経糸8Btは、上下に対向して組をなし、第3接結経糸8Btによる接結のため交差する。
【0048】
上面側経糸8Uは、上面側緯糸(4’U,6’U,8’U,10’U,12’U,14’U,16’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,2’U,3’U,5’U,7’U,9’U,11’U,13’U,15’U)の下側を通る。
【0049】
第3接結経糸8Btは、上面側緯糸2’Uの上側を通るナックルN3を形成し、下面側緯糸(5’L,10’L,15’L)の下側を通ってナックルを形成する。第3接結経糸8Btは、下面側緯糸(1’L~3’L,5’L~7’L,9’L~11’L,13’L~15’L)に対して1本の下面側緯糸の下側と、3本の下面側緯糸の上側を交互に通り、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0050】
第3接結経糸8Btは、上面側織物に対して上面側緯糸(1’U,3’U~16’U)の下側を通り、接結のために上面側緯糸2’Uの上側を通り、1つだけ表面側にナックルN3を形成する。
【0051】
第3接結経糸8Btが表面側にナックルN3を形成する位置で、上面側経糸8Uが、上面側緯糸2’Uの下側を通って表面側にナックルを形成せず、上面側表面組織の一部を崩す上面側崩し糸8Uとして機能する。
【0052】
上面側経糸8Uおよび第3接結経糸8Btが、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側経糸8U(上面側崩し糸)以外の上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同様の表面組織を形成し、上面側崩し糸8U以外の上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同じ数のナックルを上面側表面組織に形成する。これにより、第3接結経糸8Btによって上面側織物の表面性が低下することを抑えられる。第3接結経糸8Btが形成するナックルN3の位置で、上面側崩し糸8Uが上面側緯糸2’Uの下側に配置されるため、第3接結経糸8Btの接結による上面側緯糸2’Uの引き込みが上面側崩し糸8Uによって抑制される。これによって、上面側織物の表面性が低下することを抑えることができる。上面側緯糸のみに織り込まれる上面側崩し糸8Uと、第3接結経糸8Btとの組によって、接結をすることで、上下に接結経糸を設ける場合と比べて、表面性の低下や通気性の低下を抑えられる。
【0053】
完全組織において、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組が互いに補完し合い、第3接結経糸8Btおよび上面側崩し糸8Uの組が互いに補完し合うことで、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組と第3接結経糸8Btおよび上面側崩し糸8Uの組とが、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して同様の織り込みパターンを形成する。同様の織り込みパターンとは、ナックルが同様の間隔で配置されていればよく、経方向にずれているものも含まれる。第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組は、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に1つ飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。第3接結経糸3Btおよび上面側崩し糸3Uの組も、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に1つ飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。このように、第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組と第3接結経糸8Btおよび上面側崩し糸8Uの組とが共通する表面組織を形成することで、接結によって上面側織物の表面性が低下することを抑えることができる。
【0054】
第1接結経糸4Bfおよび第2接結経糸4Bsの組は、第3接結経糸8Btおよび上面側崩し糸8Uの組と隣接しない。これにより、表面性を低下させる要因となる接結位置を分散することができ、接結位置が密集する場合と比べて、工業用織物20によって製造される紙にマークが発生することを抑制することができる。
【0055】
完全組織において、第1接結経糸4Bfと第2接結経糸4Bsと第3接結経糸8Btとを合わせた数は、全ての経糸(1U~3U,4Bf,5U~8U,1L~3L,4Bs,5L~7L,8Bt)の数の半分未満である。これにより、接結糸の数を少なくして通気性および表面性の低下を抑えることができる。
【0056】
完全組織を構成する全ての経糸(1U~3U,4Bf,5U~8U,1L~3L,4Bs,5L~7L,8Bt)の本数が4の倍数である。これにより、平織り、綾織り、2本の緯糸の上下を交互に通過する2/2織、4シャフト組織、8シャフト組織、16シャフト組織などの様々な組織に対応することができる。
【0057】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係る工業用織物30の完全組織を示す意匠図である。
図6は、
図5に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【0058】
図5に示す第3実施形態に係る工業用織物30は、上面側経糸(1U,2U,4U,5U,6U,8U)と上面側緯糸(1’U~16’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L,2L,5L,6L)と下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)とからなる下面側織物とが、第1接結経糸(3Bf,7Bf)、第2接結経糸(3Bs,7Bs)および第3接結経糸(4Bt,8Bt)によって接結されたものである。上面側緯糸(1’U~16’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)は、下面側織物の一部を構成する。第1接結経糸(3Bf,7Bf)、第2接結経糸(3Bs,7Bs)および第3接結経糸(4Bt,8Bt)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。
【0059】
図6(a)から
図6(c)に示す上面側緯糸および下面側緯糸の配置は同じである。
図6(a)は、上面側経糸2Uと下面側経糸2Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。
図6(a)に示すように、上面側経糸2Uが上面側緯糸(1’U~16’U)に対して上側に1本と下側に3本の比率で交互に織り込まれ、上面側緯糸(3’U,7’U,11’U,15’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,2’U,4’U~6’U,8’U~10’U,12’U~14’U,16’U)の下側を通る。
【0060】
他の上面側経糸(1U,4U~6U,8U)も、上面側経糸2Uと同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して上側に1本と下側に3本の比率で交互に織り込まれ、表面組織を崩すことなく織り込まれる。上面側経糸(1U,2U,4U~6U,8U)は、上面側緯糸(1’U~16’U)のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0061】
下面側経糸2Lは、下面側緯糸(5’L,15’L)の下側を通って裏面側ナックルをそれぞれ形成し、それぞれの裏面側ナックルの間で2本の下面側緯糸(1’L,3’L)と、4本の下面側緯糸(7’L,9’L,11’L,13’L)との上側を通る。
【0062】
他の下面側経糸(1L,5L,6L)も、下面側経糸2Lと同様の織り込みパターンを有し、2つの裏面側ナックルをそれぞれ形成し、裏面側ナックルの間で2本の下面側緯糸と4本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L,2L,5L,6L)は、下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0063】
図6(b)は、第1接結経糸3Bfと第2接結経糸3Bsとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。第1接結経糸3Bfと第2接結経糸3Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。
【0064】
第1接結経糸3Bfは、上面側緯糸(8’U,12’U)の上側を通って2つのナックルN1を形成し、残りの上面側緯糸(1’U~7’U,9’U~11’U,13’U~16’U)の下側を通る。また、第1接結経糸3Bfは、下面側緯糸5’Lの下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(1’L,3’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)の上側を通る。
【0065】
第2接結経糸3Bsは、上面側緯糸(4’U,16’U)の上側を通って2つのナックルN2を形成し、残りの上面側緯糸(1’U~3’U,5’U~15’U)の下側を通る。また、第2接結経糸3Bsは、下面側緯糸11’Lの下側を通ってナックルを形成し、下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,13’L,15’L)の上側を通る。
【0066】
第1接結経糸3Bfおよび第2接結経糸3Bsは、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側織物に一定の間隔でナックル(N1,N2)を形成し、表面組織を崩すことなく織り込まれる。また、第1接結経糸3Bfおよび第2接結経糸3Bsは、互いに下面側織物の裏面組織を補完することで、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0067】
図6(c)は、上面側経糸4Uと第3接結経糸4Btとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。上面側経糸4Uと第3接結経糸4Btは、上下に対向して組をなし、第3接結経糸4Btによる接結のため交差する。
【0068】
上面側経糸4Uは、上面側緯糸(2’U,10’U,14’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,3’U~9’U,11’U~13’U,15’U,16’U)の下側を通る。
【0069】
第3接結経糸4Btは、下面側緯糸(1’L,11’L)の下側を通って裏面側のナックルを形成し、上面側緯糸6’Uの上側を通るナックルN3を形成する。第3接結経糸4Btは、それぞれの裏面側ナックルの間で4本の下面側緯糸(3’L,5’L,7’L,9’L)と、2本の下面側緯糸(13’L,15’L)との上側を通る。第3接結経糸4Btは、下面側織物に対して、下面側経糸(1L,2L,5L,6L)と同様の織り込みパターンで織り込まれており、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0070】
第3接結経糸4Btが表面側にナックルN3を形成する位置で、上面側経糸4Uが、上面側緯糸6’Uの下側を通って表面側にナックルを形成せず、上面側表面組織の一部を崩す上面側崩し糸4Uとして機能する。なお、上面側経糸8Uおよび第3接結経糸8Btの組も、上面側経糸4Uおよび第3接結経糸4Btと同様の織り込みパターンを有し、同様の機能を発揮する。そのため、上面側経糸4Uおよび第3接結経糸4Btについて主に説明する。
【0071】
上面側経糸4Uおよび第3接結経糸4Btが、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側崩し糸(上面側経糸4U,8U)以外の上面側経糸(1U,2U,5U,6U)と同様の表面組織を形成し、上面側崩し糸(上面側経糸4U,8U)以外の上面側経糸(1U,2U,5U,6U)と同じ数で同じ間隔で配置されたナックルを上面側表面組織に形成する。これにより、第3接結経糸4Btによって上面側織物の表面性が低下することを抑えられる。また、上面側緯糸のみに織り込まれる上面側崩し糸4Uと、第3接結経糸4Btとの組によって、接結をすることで、上下に接結経糸を設ける場合と比べて、表面性の低下を抑えられる。
【0072】
完全組織において、第1接結経糸(3Bf,7Bf)および第2接結経糸(3Bs,7Bs)の組が互いに補完し合い、第3接結経糸(4Bt,8Bt)および上面側崩し糸(4U,8U)の組が互いに補完し合うことで、第1接結経糸(3Bf,7Bf)および第2接結経糸(3Bs,7Bs)の組と第3接結経糸(4Bt,8Bt)および上面側崩し糸(4U,8U)の組とが、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して同様の表面組織を形成する。第1接結経糸(3Bf,7Bf)および第2接結経糸(3Bs,7Bs)の組は、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に3本飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。第3接結経糸(4Bt,8Bt)および上面側崩し糸(4U,8U)の組も、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に3本飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。このように、第1接結経糸(3Bf,7Bf)および第2接結経糸(3Bs,7Bs)の組と第3接結経糸(4Bt,8Bt)および上面側崩し糸(4U,8U)の組とが表面側に共通する表面組織を形成することで、接結によって上面側織物の表面性が低下することを抑えることができる。
【0073】
第1接結経糸(3Bf,7Bf)および第2接結経糸(3Bs,7Bs)の組は、第3接結経糸(4Bt,8Bt)および上面側崩し糸(4U,8U)の組と隣接する。これにより、接結部分同士が近くに配置され、上面側織物と下面側織物が強固に接結される。
【0074】
完全組織を構成する全ての経糸の本数が4の倍数である。これにより、平織り、綾織り、2本の緯糸の上下を交互に通過する2/2織、4シャフト組織、8シャフト組織、16シャフト組織などの様々な組織に対応することができる。
【0075】
完全組織において、第1接結経糸(3Bf,7Bf)と第2接結経糸(3Bs,7Bs)と第3接結経糸(4Bt,8Bt)とを合わせた数は、全ての経糸の数の半分未満である。これにより、接結糸の数を少なくして通気性および表面性の低下を抑えることができる。
【0076】
[第4実施形態]
図7は、第4実施形態に係る工業用織物40の完全組織を示す意匠図である。
図8は、
図7に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【0077】
図7に示す第4実施形態に係る工業用織物40は、上面側経糸(1U~7U)と上面側緯糸(1’U~16’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)と下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)とからなる下面側織物とが、第1接結経糸8Bf、第2接結経糸8Bsおよび第3接結経糸4Btによって接結されたものである。上面側緯糸(1’U~16’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)は、下面側織物の一部を構成する。第1接結経糸8Bf、第2接結経糸8Bsおよび第3接結経糸4Btは、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。
【0078】
図8(a)から
図8(c)に示す上面側緯糸および下面側緯糸の配置は同じである。
図8(a)は、上面側経糸3Uと下面側経糸3Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。
図8(a)に示すように、上面側経糸3Uが上面側緯糸(1’U~16’U)に対して上側に1本と下側に3本の比率で交互に織り込まれ、上面側緯糸(4’U,8’U,12’U,16’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U~3’U,5’U~7’U,9’U~11’U,13’U~15’U)の下側を通る。
【0079】
他の上面側経糸(1U,2U,4U~7U)も、上面側経糸3Uと同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して上側に1本と下側に3本の比率で交互に織り込まれ、表面組織を崩すことなく織り込まれる。上面側経糸(1U~7U)は、上面側緯糸(1’U~16’U)のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0080】
下面側経糸3Lは、下面側緯糸(5’L,11’L)の下側を通って裏面側ナックルをそれぞれ形成し、それぞれの裏面側ナックルの間で2本の下面側緯糸(7’L,9’L)と、4本の下面側緯糸(1’L,3’L,13’L,15’L)との上側を通る。
【0081】
他の下面側経糸(1L,2L,5L~7L)も、下面側経糸3Lと同様の織り込みパターンを有し、2つの裏面側ナックルをそれぞれ形成し、裏面側ナックルの間で2本の下面側緯糸と4本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれる。このように、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)は、下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0082】
図8(b)は、上面側経糸4Uと第3接結経糸4Btとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。上面側経糸4Uと第3接結経糸4Btは、上下に対向して組をなし、第3接結経糸4Btによる接結のため交差する。
【0083】
上面側経糸4Uは、上面側緯糸(2’U,10’U,14’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,3’U~9’U,11’U~13’U,15’U,16’U)の下側を通る。
【0084】
第3接結経糸4Btは、下面側緯糸(1’L,11’L)の下側を通って裏面側のナックルを形成し、上面側緯糸6’Uの上側を通るナックルN3を形成する。第3接結経糸4Btは、それぞれの裏面側ナックルの間で4本の下面側緯糸(3’L,5’L,7’L,9’L)と、2本の下面側緯糸(13’L,15’L)との上側を通る。第3接結経糸4Btは、下面側織物に対して、下面側経糸(1L~3L,5L~7L)と同様の織り込みパターンで織り込まれており、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0085】
第3接結経糸4Btが表面側にナックルN3を形成する位置で、上面側経糸4Uが、上面側緯糸6’Uの下側を通って表面側にナックルを形成せず、上面側表面組織の一部を崩す上面側崩し糸4Uとして機能する。
【0086】
上面側経糸4Uおよび第3接結経糸4Btが、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側崩し糸(上面側経糸4U)以外の上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同様の表面組織を形成し、上面側崩し糸(上面側経糸4U)以外の上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同じ数で同じ間隔で配置されたナックルを上面側表面組織に形成する。これにより、第3接結経糸4Btによって上面側織物の表面性が低下することを抑えられる。また、上面側緯糸のみに織り込まれる上面側崩し糸4Uと、第3接結経糸4Btとの組によって、接結をすることで、上下に接結経糸を設ける場合と比べて、表面性の低下を抑えられる。
【0087】
図8(c)は、第1接結経糸8Bfと第2接結経糸8Bsとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。第1接結経糸8Bfと第2接結経糸8Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。
【0088】
第1接結経糸8Bfは、上面側緯糸(2’U,6’U)の上側を通って2つのナックルN1を形成し、残りの上面側緯糸(1’U,3’U~5’U,7’U~16’U)の下側を通る。また、第1接結経糸8Bfは、下面側緯糸9’Lの下側を通ってナックルを形成し、残りの下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,11’L,13’L,15’L)の上側を通る。
【0089】
第2接結経糸8Bsは、上面側緯糸(10’U,14’U)の上側を通って2つのナックルN2を形成し、残りの上面側緯糸(1’U~9’U,11’U~13’U,15’U,16’U)の下側を通る。また、第2接結経糸8Bsは、下面側緯糸(3’L)の下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、残りの下面側緯糸(1’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)の上側を通る。
【0090】
このように、第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsは、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同様の表面組織を形成し、上面側経糸(1U~3U,5U~7U)と同じ数で同じ間隔のナックルを上面側表面組織に形成する。また、第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsは、互いに下面側織物の裏面組織を補完することで、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0091】
完全組織において、第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsの組が互いに補完し合い、第3接結経糸4Btおよび上面側崩し糸4Uの組が互いに補完し合うことで、第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsの組と第3接結経糸4Btおよび上面側崩し糸4Uの組とが、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して同様の表面組織を形成する。第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsの組は、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に3本飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。第3接結経糸4Btおよび上面側崩し糸4Uの組も、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に3本飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。このように、第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsの組と第3接結経糸4Btおよび上面側崩し糸4Uの組とが表面側に共通する表面組織を形成することで、接結によって上面側織物の表面性が低下することを抑えることができる。
【0092】
第1接結経糸8Bfおよび第2接結経糸8Bsの組は、第3接結経糸4Btおよび上面側崩し糸4Uの組と隣接しない。完全組織において、第1接結経糸8Bfと第2接結経糸8Bsと第3接結経糸4Btとを合わせた数は、全ての経糸の数の半分未満である。完全組織を構成する全ての経糸の本数が4の倍数である。
【0093】
[第5実施形態]
図9は、第5実施形態に係る工業用織物50の完全組織を示す意匠図である。
図10は、
図9に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【0094】
図9に示す第5実施形態に係る工業用織物50は、上面側経糸(3U,7U)と上面側緯糸(1’U~16’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(2L,4L,6L,8L)と下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)とからなる下面側織物とが、第1接結経糸(1Bf,5Bf)、第2接結経糸(1Bs,5Bs)および第3接結経糸(3Bt,7Bt)によって接結されたものである。上面側緯糸(1’U~16’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)は、下面側織物の一部を構成する。第1接結経糸(1Bf,5Bf)、第2接結経糸(1Bs,5Bs)および第3接結経糸(3Bt,7Bt)は、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。下面側経糸の数が、上面側経糸の数の2倍であるため、上面側経糸の密度が小さくなり、通常の上面側経糸と下面側経糸との比率(1:1)と比較して、上面側緯糸を多く打ち込める。
【0095】
図10(a)は、第1接結経糸1Bfと第2接結経糸1Bsとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。
図10(a)から
図10(c)に示す上面側緯糸および下面側緯糸の配置は同じである。第1接結経糸1Bfと第2接結経糸1Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。
【0096】
第1接結経糸1Bfは、上面側緯糸(1’U,9’U,11’U,13’U,15’U)の上側を通って5つのナックルN1を形成し、残りの上面側緯糸(2’U~8’U,10’U,12’U,14’U,16’U)の下側を通る。また、第1接結経糸1Bfは、下面側緯糸5’Lの下側を通ってナックルを形成し、下面側緯糸(1’L,3’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)の上側を通る。
【0097】
第2接結経糸1Bsは、上面側緯糸(3’U,5’U,7’U)の上側を通って3つのナックルN2を形成し、残りの上面側緯糸(1’U,2’U,4’U,6’U,8’U~16’U)の下側を通る。また、第2接結経糸1Bsは、下面側緯糸11’Lの下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,13’L,15’L)の上側を通る。
【0098】
このように、第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsの組は、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側緯糸に対して1つずつ交互に織り込み、表面組織を崩すことなく織り込まれる。また、第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsは、互いに下面側織物の裏面組織を補完することで、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。なお、第1接結経糸5Bfおよび第2接結経糸5Bsも、第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsと接結の位置は経方向にずれているが、同様の織り込みパターンを有するため、同様の機能を発揮する。
【0099】
図10(b)は、下面側経糸2Lが下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。下面側経糸2Lは、下面側緯糸(1’L,11’L)の下側を通って裏面側ナックルをそれぞれ形成し、それぞれの裏面側ナックルの間で4本の下面側緯糸(3’L,5’L,7’L,9’L)と、2本の下面側緯糸(13’L,15’L)との上側を通る。
【0100】
下面側経糸(4L,6L,8L)は、下面側経糸2Lと同様の織り込みパターンを有し、2つの裏面側ナックルを形成し、裏面側ナックルの間で4本の下面側緯糸と、2本の下面側緯糸との上側を通る。このように、下面側経糸(2L,4L,6L,8L)は、下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0101】
図10(c)は、上面側経糸3Uと第3接結経糸3Btとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。上面側経糸3Uと第3接結経糸3Btは、上下に対向して組をなし、第3接結経糸3Btによる接結のため交差する。
【0102】
上面側経糸3Uは、上面側緯糸(2’U,4’U,6’U,8’U,10’U,14’U,16’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,3’U,5’U,7’U,9’U,11’U~13’U,15’U)の下側を通る。
【0103】
第3接結経糸3Btは、下面側緯糸(1’L,7’L)の下側を通ってナックルを形成し、上面側緯糸12’Uの上側を通るナックルN3を形成する。第3接結経糸3Btは、下面側緯糸(1’L,7’L)の裏面側ナックルの間で2本の下面側緯糸(3’L,5’L)と、4本の下面側緯糸(9’L,11’L,13’L,15’L)との上側を通る。第3接結経糸4Btは、下面側織物に対して、下面側経糸(2L,4L,6L,8L)と同様の織り込みパターンで織り込まれており、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0104】
第3接結経糸3Btは、上面側織物に対して上面側緯糸(1’U~11’U,13’U~16’L)の下側を通り、接結のために上面側緯糸12’Uの上側を通り、1つだけ表面側にナックルN3を形成する。
【0105】
第3接結経糸3Btが表面側にナックルN3を形成する位置で、上面側経糸3Uが、上面側緯糸12’Uの下側を通って表面側にナックルを形成せず、上面側表面組織の一部を崩す上面側崩し糸3Uとして機能する。
【0106】
上面側経糸3Uおよび第3接結経糸3Btが、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側織物の表面組織に一定の間隔でナックルを形成できる。これにより、第3接結経糸3Btによって上面側織物の表面性が低下することを抑えられる。また、上面側緯糸のみに織り込まれる上面側崩し糸3Uと、第3接結経糸3Btとの組によって接結をすることで、上下に接結経糸を設ける場合と比べて、表面性の低下を抑えられる。なお、上面側経糸7Uおよび第3接結経糸7Btも、上面側経糸3Uおよび第3接結経糸3Btと接結の位置は経方向にずれているが、同様の織り込みパターンを有するため、同様の機能を発揮する。
【0107】
完全組織において、第1接結経糸(1Bf,5Bf)および第2接結経糸(1Bs,5Bs)の組が互いに補完し合い、第3接結経糸(3Bt,7Bt)および上面側崩し糸(3U,7U)の組が互いに補完し合うことで、第1接結経糸(1Bf,5Bf)および第2接結経糸(1Bs,5Bs)の組と第3接結経糸(3Bt,7Bt)および上面側崩し糸(3U,7U)の組とが、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して同様の表面組織を形成する。第1接結経糸(1Bf,5Bf)および第2接結経糸(1Bs,5Bs)の組は、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に1本飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。第3接結経糸(3Bt,7Bt)および上面側崩し糸(3U,7U)の組も、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に1本飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。このように、第1接結経糸(1Bf,5Bf)および第2接結経糸(1Bs,5Bs)の組と第3接結経糸(3Bt,7Bt)および上面側崩し糸(3U,7U)の組とが表面側に共通する表面組織を形成することで、接結によって上面側織物の表面性が低下することを抑えることができる。
【0108】
第1接結経糸(1Bf,5Bf)および第2接結経糸(1Bs,5Bs)の組は、第3接結経糸(3Bt,7Bt)および上面側崩し糸(3U,7U)の組と隣接しない。完全組織を構成する全ての経糸の本数が4の倍数である。
【0109】
完全組織において、第1接結経糸(1Bf,5Bf)と第2接結経糸(1Bs,5Bs)と第3接結経糸(3Bt,7Bt)とを合わせた数は、全ての経糸(1Bf,1Bs,2L,3U,3Bt,4L,5Bf,5Bs,6L,7U,7Bt,8L)の数の半分以上である。これにより、接結力を強くして上面側織物と下面側織物とが内部で摩擦することを抑えることができる。
【0110】
第1接結経糸1Bfが上面側織物において形成するナックルの数(5個)が、第2接結経糸1Bsが上面側織物において形成するナックルの数(3個)と異なる。このように、上面側接結糸及び下面側接結糸が互いに異なる組織である。一般的に、2本の接結糸の交差部分は、(i)脱水性が低下する、(ii)上面側緯糸の引込みが局所的に強くなる傾向にある。そのため、交差部分が規則的に並ぶと、当該部分のマーク(緯糸のマーク、規則的な斜めマーク)が発生しやすくなる。特に、接結糸が同一の組織である場合、規則性が生じるため、上記の不具合が発生しやすい。そこで、工業用織物50のように、2本の接結糸を異なる組織にすることで、2本の接結糸の交差部分の並びの規則性が低くなる。その結果、マークの発生が抑制される。
【0111】
上面側織物に織り込まれる経糸が、第1接結経糸(1Bf,5Bf)および第2接結経糸(1Bs,5Bs)の組と、第3接結経糸(3Bt,7Bt)および上面側崩し糸(3U,7U)の組だけで構成されていずれも、接結されている経糸列で構成される。このように、接結糸の本数を多くすることで、上面側織物と下面側織物との拘束力を強くし、内部摩耗を抑制することができる。
【0112】
[第6実施形態]
図11は、第6実施形態に係る工業用織物60の完全組織を示す意匠図である。
図12は、
図11に示す意匠図における経糸に沿った経方向の断面図である。
【0113】
図11に示す第6実施形態に係る工業用織物60は、上面側経糸(3U,5U,7U)と上面側緯糸(1’U~16’U)を含んで構成される上面側織物と、下面側経糸(2L~4L,6L~8L)と下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)とからなる下面側織物とが、第1接結経糸1Bf、第2接結経糸1Bsおよび第3接結経糸5Btによって接結されたものである。上面側緯糸(1’U~16’U)は、上面側織物の一部を構成する。下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)は、下面側織物の一部を構成する。第1接結経糸1Bf、第2接結経糸1Bsおよび第3接結経糸5Btは、上面側織物と下面側織物とを接結し、上面側織物および下面側織物の一部をそれぞれ構成する。
【0114】
図12(a)は、第1接結経糸1Bfと第2接結経糸1Bsとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。
図12(a)から
図12(d)に示す上面側緯糸および下面側緯糸の配置は同じである。第1接結経糸1Bfと第2接結経糸1Bsは、上下に対向して組をなし、接結のため交差する。
【0115】
第1接結経糸1Bfは、上面側緯糸(1’U,9’U,11’U,13’U,15’U)の上側を通って5つのナックルN1を形成し、残りの上面側緯糸(2’U~8’U,10’U,12’U,14’U,16’U)の下側を通る。また、第1接結経糸1Bfは、下面側緯糸5’Lの下側を通ってナックルを形成し、下面側緯糸(1’L,3’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)の上側を通る。
【0116】
第2接結経糸1Bsは、上面側緯糸(3’U,5’U,7’U)の上側を通って3つのナックルN2を形成し、残りの上面側緯糸(1’U,2’U,4’U,6’U,8’U~16’U)の下側を通る。また、第2接結経糸1Bsは、下面側緯糸11’Lの下側を通ってナックルをそれぞれ形成し、下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,13’L,15’L)の上側を通る。
【0117】
このように、第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsの組は、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側緯糸に対して1つずつ交互に織り込み、表面組織を崩すことなく織り込まれる。また、第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsは、互いに下面側織物の裏面組織を補完することで、下面側織物に対して一定の間隔でナックルを形成し、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0118】
図12(b)は、下面側経糸2Lが下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。下面側経糸2Lは、下面側緯糸(1’L,11’L)の下側を通って裏面側ナックルをそれぞれ形成し、それぞれの裏面側ナックルの間で4本の下面側緯糸(3’L,5’L,7’L,9’L)と、2本の下面側緯糸(13’L,15’L)との上側を通る。
【0119】
下面側経糸(4L,6L,8L)は、下面側経糸2Lと同様の織り込みパターンを有し、2つの裏面側ナックルを形成し、裏面側ナックルの間で4本の下面側緯糸と、2本の下面側緯糸との上側を通る。このように、下面側経糸(2L,4L,6L,8L)は、下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0120】
図12(c)は、上面側経糸3Uと下面側経糸3Lの組が上面側緯糸と下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。
図12(c)に示すように、上面側経糸3Uが上面側緯糸(1’U~16’U)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、上面側緯糸(2’U,4’U,6’U,8’U,10’U,12’U,14’U,16’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(1’U,3’U,5’U,7’U,9’U,11’U,13’U,15’U)の下側を通る。
【0121】
他の上面側経糸7Uも、上面側経糸3Uと同じ織り込みパターンを有し、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して1本ずつ上下に織り込まれ、表面組織を崩すことなく織り込まれる。上面側経糸(3U,7U)は、上面側緯糸(1’U~16’U)のみを織り込んで上面側織物の一部を構成する。
【0122】
下面側経糸3Lは、下面側緯糸(1’L,7’L)の下側を通って裏面側ナックルをそれぞれ形成し、それぞれの裏面側ナックルの間で2本の下面側緯糸(3’L,5’L)と、4本の下面側緯糸(9’L,11’L,13’L,15’L)との上側を通る。
【0123】
他の下面側経糸7Lも、下面側経糸3Lと同様の織り込みパターンを有し、2つの裏面側ナックルをそれぞれ形成し、裏面側ナックルの間で2本の下面側緯糸と4本の下面側緯糸の上側を通って織り込まれる。このように、下面側経糸(3L,7L)は、下面側緯糸(1’L,3’L,5’L,7’L,9’L,11’L,13’L,15’L)のみを織り込んで下面側織物の一部を構成する。
【0124】
図12(d)は、上面側経糸5Uと第3接結経糸5Btとの組が上面側緯糸および下面側緯糸に織り込まれた形態を示す。上面側経糸5Uと第3接結経糸5Btは、上下に対向して組をなし、第3接結経糸5Btによる接結のため交差する。
【0125】
上面側経糸5Uは、上面側緯糸(1’U,3’U,5’U,7’U,11’U,13’U,15’U)の上側を通って表面側ナックルをそれぞれ形成し、上面側緯糸(2’U,4’U,6’U,8’U~10’U,12’U,14’U,16’U)の下側を通る。
【0126】
第3接結経糸5Btは、下面側緯糸(3’L,13’L)の下側を通ってナックルを形成し、上面側緯糸9’Uの上側を通るナックルN3を形成する。第3接結経糸5Btは、下面側緯糸(3’L,13’L)の裏面側ナックルの間で2本の下面側緯糸(1’L,15’L)と、4本の下面側緯糸(5’L,7’L,9’L,11’L)との上側を通る。第3接結経糸5Btは、下面側織物に対して、下面側経糸(2L~4L,6L~8L)と同様の織り込みパターンで織り込まれており、裏面組織を崩すことなく織り込まれる。
【0127】
第3接結経糸5Btは、上面側織物に対して上面側緯糸(1’U~8’U,10’U~16’L)の下側を通り、接結のために上面側緯糸9’Uの上側を通り、1つだけ表面側にナックルN3を形成する。
【0128】
第3接結経糸5Btが表面側にナックルN3を形成する位置で、上面側経糸5Uが、上面側緯糸9’Uの下側を通って表面側にナックルを形成せず、上面側表面組織の一部を崩す上面側崩し糸5Uとして機能する。
【0129】
上面側経糸5Uおよび第3接結経糸5Btが、互いに上面側織物の表面組織を補完することで、上面側織物の表面組織に一定の間隔でナックルを形成できる。これにより、第3接結経糸5Btによって上面側織物の表面性が低下することを抑えられる。また、上面側緯糸のみに織り込まれる上面側崩し糸5Uと、第3接結経糸5Btとの組によって接結をすることで、上下に接結経糸を設ける場合と比べて、表面性の低下を抑えられる。
【0130】
完全組織において、第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsの組が互いに補完し合い、第3接結経糸5Btおよび上面側崩し糸5Uの組が互いに補完し合うことで、第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsの組と第3接結経糸5Btおよび上面側崩し糸5Uの組とが、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して同様の表面組織を形成する。第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsの組は、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に1本飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。第3接結経糸5Btおよび上面側崩し糸5Uの組も、上面側緯糸(1’U~16’U)に対して表面側に1本飛ばしでナックルを形成する表面組織を形成する。このように、第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsの組と第3接結経糸5Btおよび上面側崩し糸5Uの組とが表面側に共通する表面組織を形成することで、接結によって上面側織物の表面性が低下することを抑えることができる。
【0131】
第1接結経糸1Bfおよび第2接結経糸1Bsの組は、第3接結経糸5Btおよび上面側崩し糸5Uの組と隣接しない。完全組織を構成する全ての経糸の本数が4の倍数である。完全組織において、第1接結経糸1Bfと第2接結経糸1Bsと第3接結経糸5Btとを合わせた数は、全ての経糸の数の半分未満である。
【0132】
[第7実施形態]
図13は、第7実施形態に係る工業用織物70の完全組織を示す意匠図である。第7実施形態に係る工業用織物70は、
図9に示す工業用織物50と比べて、第3接結経糸3Btが上面織物の表面側に形成するナックルの数が多く、第3接結経糸3Btが表面側に2つのナックルを形成する。
【0133】
[第8実施形態]
図14は、第8実施形態に係る工業用織物80の完全組織を示す意匠図である。第8実施形態に係る工業用織物80は、
図9に示す工業用織物50と比べて、完全組織を構成する上面側緯糸の本数が少なく、下面側緯糸の配置が異なっている。工業用織物80では、上面側緯糸が12本で構成されており、下面側緯糸は1つ飛ばしで2本連続して配置される。上面側緯糸および下面側緯糸の比率が、3対2になっており、工業用織物80の幅方向(緯方向)端部にカールが発生することを抑え、耐摩耗性を向上できる。
【0134】
[第9実施形態]
図15は、第9実施形態に係る工業用織物90の完全組織を示す意匠図である。第9実施形態に係る工業用織物90は、
図9に示す工業用織物50と比べて、シャフト数が多く、完全組織を構成する上面側緯糸の本数が多い点で異なる。第9実施形態に係る工業用織物90では、経糸が16列で構成され、上面側緯糸が32本で構成される。緯糸のシャフト数を多くすることで、接結部分を分散してマークの発生を抑え、表面の平滑性および脱水の均一性を向上できる。
【0135】
[第10実施形態]
図16は、第10実施形態に係る工業用織物100の完全組織を示す意匠図である。第10実施形態に係る工業用織物100は、
図15に示す工業用織物90と比べて、第3接結経糸(3Bt,7Bt,11Bt,15Bt)の上面織物の表面側に形成するナックルの数が多く、第3接結経糸が表面側に2つのナックルをそれぞれ形成する。
【0136】
[第11実施形態]
図17は、第11実施形態に係る工業用織物110の完全組織を示す意匠図である。第11実施形態に係る工業用織物110は、
図14に示す工業用織物80と比べて、シャフト数が多く、完全組織を構成する上面側緯糸の本数が多い点で異なる。第11実施形態に係る工業用織物110では、経糸が16列で構成され、上面側緯糸が24本で構成される。
【0137】
[第12実施形態]
図18は、第12実施形態に係る工業用織物120の完全組織を示す意匠図である。第12実施形態に係る工業用織物120は、
図17に示す工業用織物110と比べて、第3接結経糸(3Bt,7Bt,11Bt,15Bt)の上面織物の表面側に形成するナックルの数が多く、第3接結経糸が表面側に2つのナックルをそれぞれ形成する。
【0138】
[第13実施形態]
図19は、第13実施形態に係る工業用織物130の完全組織を示す意匠図である。第13実施形態に係る工業用織物130は、
図5に示す工業用織物30と比べて、第1接結経糸および第2接結経糸の組と、第3接結糸および上面側崩し糸の組とが隣接していない点で異なる。これによって、接結部分を分散してマークの発生を抑えることができる。
【0139】
工業用織物130では、第1接結経糸および第2接結経糸の組と、第3接結糸および上面側崩し糸の組とが、連続した2本の上面側緯糸の上側を通るナックルをそれぞれ形成し、同様の織り込みパターンを形成する。一方で、上面側経糸は、上面側緯糸に1本ずつ上下に織り込まれた織り込みパターンを有するため、第1接結経糸および第2接結経糸の組と、第3接結糸および上面側崩し糸の組と織り込みパターンが異なる。
【0140】
[第14実施形態]
図20は、第14実施形態に係る工業用織物140の完全組織を示す意匠図である。第14実施形態に係る工業用織物140は、
図15に示す工業用織物90と比べて、第1接結経糸および第2接結経糸の組が下面側経糸を挟んで一対配置されてる点、接結経糸でない上面側経糸および下面側経糸の組を含む点で異なる。第1接結経糸および第2接結経糸の組が下面側経糸を挟んで一対配置されているため、上面側織物のみ見ると、第1接結経糸および第2接結経糸の組が隣接しているようになる。
【0141】
[第15実施形態]
図21は、第15実施形態に係る工業用織物150の完全組織を示す意匠図である。第15実施形態に係る工業用織物150は、
図15に示す工業用織物90と比べて、第1接結経糸および第2接結経糸の組が下面側経糸を挟んで一対並んで配置されている点、上面側崩し糸および第3接結経糸の組が下面側経糸を挟んで一対並んで配置されている点で異なる。上面側織物のみ見ると、第1接結経糸および第2接結経糸の組が隣接し、上面側崩し糸および第3接結経糸の組が隣接しているようになる。
【0142】
上述の各実施形態に係る工業用織物は、以下の加工を施してもよい。例えば、表面の平滑性を向上させるために、工業用織物の表面側が0.02~0.05mmの範囲で研磨加工が施されていてもよい。特に表面側が0.02mm又は0.03mm研磨加工されているとよい。
【0143】
また、網(工業用織物)端部の糸がほつれるのを抑制するために、網端部から5mm~30mmの範囲(特に5mm、10mm、20mmまでの範囲)をポリウレタン樹脂でコーティングすることにより、補強されていてもよい。網端部のコーティングは片側でも両側でもよい。樹脂はホットメルトのポリウレタンであってもよい。
【0144】
網端部の耐摩耗性を向上させるために、網端部から20mm~500mm離れた範囲(特に25,50,75,100,150,250,300,350,400mm離れた範囲)を、巾が7mm程度の3本~16本(特に3,4,7,8,10,12,15,16本)の帯状の樹脂により全長さに亘ってコーティングしてもよい。前述の複数本のポリウレタン樹脂は網の両端部に塗布されていてもよく、片側のみでもよい。樹脂はホットメルトのポリウレタンであってもよい。
【0145】
また、防汚性を向上させるために、網全体に樹脂によるコーティングがなされていてもよい。また、網端部付近で紙の抄造巾をトリミングできるように、網端部から10mm~500mm離れた範囲(特に10,15,20,25,30,40,50,75,100,150,200,250,300,350,400mm)を、巾が3,5,7,10,15,20mm程度の1本の帯状の樹脂により全長さに亘ってコーティングしていてもよい。前述の樹脂は網の両端部に塗布されていてもよく、片側のみでもよい。樹脂はポリウレタンであってよく、ホットメルトでもよい。また、使用中に網の筋曲がりが分かるように、全巾に亘って巾25mm又は50mm程度の線が網にひかれていてもよい。
【0146】
工業用織物の好ましい要素の範囲について列挙する。経糸(経糸は、上面側経糸、下面側経糸、第1接結経糸、第2接結経糸および第3接結経糸を含む。)の線径は0.10~1.0mmが好ましく、0.1~0.5mmが更に好ましく、特に0.11~0.35mmが好ましい。また、緯糸の線径は、0.10~1.0mmが好ましく、0.12~0.6mmが更に好ましく、特に0.12~0.55mmが好ましい。
【0147】
上面側緯糸は、PET線のみ、ポリアミド線のみ、又はPET線とポリアミド線を交互に織り込んだものであってもよく、連続した2本のPET線と連続した2本のポリアミド線を交互に織り込んだものであってもよい。下面側緯糸は、PET線のみ、ポリアミド線のみであってよく、PET線とポリアミド線を交互に織り込んだものであってもよく、連続した2本のPET線と連続した2本のポリアミド線を交互に織り込んだものであってもよく、PET線とポリアミド線の本数の比率が1:2や1:3であってもよい。また、機械の駆動負荷を低減するために、低摩擦糸を下面側緯糸に織り込んでもよい。
【0148】
上面側緯糸本数と下面側緯糸本数の比率は、1:1,2:1,3:1,4:1,3:2,4:3,5:2,5:3,5:4であってよい。通気度は、100cm3/cm2/s~600cm3/cm2/sが好ましく、120cm3/cm2/s~300cm3/cm2/sが更に好ましい。
【0149】
網厚は0.3mm~3.0mmが好ましく、0.5mm~2.5mmが更に好ましく、0.5mm~1.0mmが特に好ましい。使用用途としては、主に抄紙用や不織布用ベルトとして使用され、特に抄紙用脱水ベルト、スパンボンド不織布搬送用ベルトとして使用されてよい。
【0150】
上述の各実施の形態に係る経糸や緯糸の断面形状は円形に限らず、四角形状や星型等の糸や、楕円形状、中空、芯鞘構造等の糸が使用できる。特に下経糸の断面形状を正方形又は長方形又は楕円形状にすることで、糸の断面積が増加し、伸び耐性や剛性を向上できる。
【0151】
また、糸の材質としても、目的の特性を満たす範囲で自由に選択でき、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、綿、ウール、金属、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマー等が使用できる。もちろん、共重合体やこれらの材質に目的に応じて様々な物質をブレンドしたり含有させた糸を使用したりしてもよい。一般的に工業用織物を構成する糸には剛性があり、寸法安定性に優れるポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。
【0152】
経糸のシャフト数は、4シャフト、8シャフト、12シャフト、16シャフト、20シャフト、24シャフト、28シャフト、32シャフト、36シャフトが好ましい。また、緯糸のシャフト数は、8シャフト、12シャフト、16シャフト、20シャフト、24シャフト、28シャフト、32シャフト、36シャフト、40シャフト、44シャフト、48シャフトが好ましい。
【0153】
なお各実施形態はあくまでも例示であり、各構成要素の組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0154】
1’L 下面側緯糸、 1’U 上面側緯糸、 1L 下面側経糸、 1U,3U 上面側経糸、 3Bt 第3接結経糸、 4Bf 第1接結経糸、 4Bs 第2接結経糸、 10 工業用織物。