(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】光学機能層付偏光フィルムおよび液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240705BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240705BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B27/30 102
G02B5/22
(21)【出願番号】P 2021142533
(22)【出願日】2021-09-01
(62)【分割の表示】P 2019504579の分割
【原出願日】2018-03-05
【審査請求日】2021-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2017041844
(32)【優先日】2017-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 恒三
(72)【発明者】
【氏名】吉川 貴博
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】関根 洋之
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/204154(WO,A1)
【文献】特開2009-31474(JP,A)
【文献】特開2010-134349(JP,A)
【文献】国際公開第2014/069542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系偏光子を有する偏光フィルムの少なくとも片側に、色素
及びベースポリマーを含有する
粘着剤層を有する光学機能層付偏光フィルムであって、前記ポリビニルアルコール系偏光子と前記色素を含有する
粘着剤層との距離が
25μm以下であ
り、
前記粘着剤層のベースポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマーであり、
前記偏光子と前記粘着剤層との間に接着剤層及び透明保護フィルムを有し、
前記透明保護フィルムの厚さが、10μm以上であり、
前記透明保護フィルムと前記接着剤層の厚みの合計が25μm以下であり、
前記接着剤層は、前記偏光子と前記透明保護フィルムとを接着し、前記接着剤層の厚みは、0.01~3μmであることを特徴とする光学機能層付偏光フィルム。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系偏光子は、酸素透過度が1[cm
3
/(m
2
・24h・atm)]以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学機能層付偏光フィルム。
【請求項3】
前記色素を含有する粘着剤層は、厚み25μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学機能層付偏光フィルム。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量が、50万~300万であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の光学機能層付偏光フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の光学機能層付偏光フィルムを有する画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色素を有する光学機能層およびポリビニルアルコール系偏光子を有する偏光フィルムを有する光学機能層付偏光フィルムに関する。前記光学機能層付偏光フィルムはこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置などの画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置などは、その画像形成方式から液晶セルの両面に偏光素子を配置することが必要不可欠であり、一般的には偏光フィルムが貼着されている。前記偏光フィルムを液晶セルに貼着する際には、通常、粘着剤が使用される。また、偏光フィルムと液晶セルの接着は、通常、光の損失を低減するため、それぞれの材料は粘着剤を用いて密着されている。このような場合に、偏光フィルムを固着させるのに乾燥工程を必要としないことなどのメリットを有することから、粘着剤は、偏光フィルムの片面に予め粘着剤層として設けられた粘着剤層付偏光フィルムが一般的に用いられる。
【0003】
また、前記粘着剤層に、染料または顔料を添加して着色することにより、偏光フィルムに任意の色相を与えて高コントラストの液晶表示体を得ることが提案されている(特許文献1)。近年では、画像表示装置に明るさ、鮮やかさ(即ち、広色域化)が求められており有機EL表示装置(OLED)が注目されているが、液晶表示装置に対しても広色域化が求められている。例えば、液晶表示装置を広色域化させる方法として、特定波長(560~610nm)の範囲に吸収極大波長を示す色素を含有する粘着剤層を介して前記液晶セルの片面または両面に偏光フィルムを積層することが提案されている(特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実登第3052812号明細書
【文献】特開2011-039093号公報
【文献】特開2014-092611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように色素は粘着剤層に含有することができる他に、光学部材に適用されるフィルム層中に含有することもできる。このように、色素をフィルム層又は粘着剤層のような樹脂層中に含有させることで、色素を含有する光学機能層を形成することができる。しかし、前記光学機能層中には色素を含有するために、前記光学機能層のベースとなる樹脂層の透湿性の観点から、前記光学機能層中の色素が経時劣化して、前記光学機能層は徐々に退色する。特に、光学機能層が、色素を含有する粘着剤層である場合には、透湿性の観点から、当該粘着剤層の耐久性が十分ではなく、当初は色素により着色されていた粘着剤層であっても徐々に退色してしまう。このように、光学機能層(特に、粘着剤層)中の色素が経時劣化する場合には、色素による広色域化を維持することが困難であった。
【0006】
本発明は、経時安定性が良好であり、色素による広色域化を維持することができる色素を含有する光学機能層を有する光学機能層付偏光フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤層付偏光フィルムを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子を有する偏光フィルムの少なくとも片側に、色素を含有する光学機能層を有する光学機能層付偏光フィルムであって、前記ポリビニルアルコール系偏光子と前記色素を含有する光学機能層との距離が45μm以下であることを特徴とする光学機能層付偏光フィルム、に関する。前記ポリビニルアルコール系偏光子との前記光学機能層と距離が25μm以下であることが好ましい。
【0009】
前記光学機能層付偏光フィルムにおいて、前記ポリビニルアルコール系偏光子との前記粘着剤層は、直接、積層されているものを用いることができる。
【0010】
前記光学機能層付偏光フィルムにおいて、前記ポリビニルアルコール系偏光子との前記粘着剤層の間に、厚さ45μm以下の色素を有しない層を少なくとも1層有することができる。
【0011】
前記光学機能層付偏光フィルムにおいて、前記ポリビニルアルコール系偏光子は、酸素透過度が1[cm3/(m2・24h・atm)]以下であることが好ましい。
【0012】
前記光学機能層付偏光フィルムにおいて、前記色素が、波長域470~510nmおよび波長域570~610nmのいずれか少なくとも一方に極大吸収波長を有するものを用いることができる。
【0013】
前記光学機能層付偏光フィルムにおいて、前記色素は、テトラアザポルフィリン系色素を用いることができる。
【0014】
前記光学機能層付偏光フィルムにおいて、前記色素を、前記光学機能層の樹脂層を形成するベースポリマー100重量部に対して0.01~5重量部含有することが好ましい。
【0015】
前記光学機能層付偏光フィルムにおいて、前記色素を含有する粘着剤層は、厚み25μm以下であることが好ましい。
【0016】
また本発明は、前記光学機能層付偏光フィルムを有する画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学機能層付偏光フィルムでは、色素を含有する光学機能層を有する。前記光学機能層は、色素によって、一部の波長の光を吸収することにより、液晶表示装置の全体の色相を調整することができ、広色域化によって鮮やかさを向上させることができる。特に、波長域470~510nmおよび波長域570~610nmのいずれか少なくとも一方に極大吸収波長を有する色素は、RGB以外の波長域(波長域470~510nmおよび/または波長域570~610nm)での色表現に不要な発光を吸収して前記不要な発光を抑えることができ、広色域化に有効である。
【0018】
前記色素を含有する光学機能層における色素の退色は、大気中や樹脂内に存在する酸素が、前記光学機能層に侵入し、熱によって活性化して色素を攻撃することが原因であることが分かった。酸素は、粘着剤層の上下左右の面から侵入すると考えられる。
【0019】
本発明の光学機能層付偏光フィルムでは、前記色素を含有する光学機能層は、ポリビニルアルコール系偏光子を用いた偏光フィルムに適用される。前記ポリビニルアルコール系偏光子は、酸素透過度が低く、前記色素を含有する光学機能層の上面または下面からの前記光学機能層への酸素の侵入を防止することができる。なお、本発明の光学機能層付偏光フィルムは、具体的な使用までの期間は、前記光学機能層の他の面に酸素透過度が低いセパレータ等を用いることで、一方、具体的な使用に際してはガラス等の酸素透過度が低い被着体に適用することで前記光学機能層への酸素の侵入を防止することができ、色素の退色(分解)を抑制して、経時的に安定して広色域化を維持することができる光学機能層を提供することができる。
【0020】
また、本発明の光学機能層付偏光フィルムでは、前記色素を含有する光学機能層とポリビニルアルコール系偏光子とはこれらの距離が45μm以下になるように積層される。前記距離を45μm以下とすることで、光学機能層付偏光フィルムの端部から侵入する酸素についても防止することでき、光学機能層付偏光フィルムの端部においても、色素の退色(分解)を抑制して、経時的に安定して広色域化を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の光学機能層付偏光フィルムの概略を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の光学機能層付偏光フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の光学機能層付偏光フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の光学機能層付偏光フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の光学機能層付偏光フィルムの実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は、図面の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1に示すように、本発明の光学機能層付偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光子Pおよび色素を含有する光学機能層A有する。前記ポリビニルアルコール系偏光子Pおよび前記光学機能層Aは、これらの距離xが45μm以下になるように積層される。距離xは短い程、端部からの酸素の侵入を防止することができる。距離xは、25μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、さらには5μm以下、さらには1μm以下が好ましい。
【0024】
図2は、前記ポリビニルアルコール系偏光子Pと前記光学機能層Aとが、直接(前記x=0μm)、積層されている場合である。なお、
図2では、ポリビニルアルコール系偏光子Pの片側(光学機能層Aを設けない側)に透明保護フィルムFを有する偏光フィルム(片保護偏光フィルム)の場合が例示されている。また、
図2では、光学機能層Aに、基材Sが設けられた場合が例示されている、なお、光学機能層付偏光フィルムの具体的な使用までの期間に用いられる、基材Sとしては、セパレータ、蒸着フィルム等が挙げられる。具体的な使用に際しては、ガラス、蒸着層された透明基板等が挙げられる。
【0025】
また、
図3では、
図2の態様において、前記ポリビニルアルコール系偏光子Pと前記光学機能層Aとの間に、厚さ45μm以下の層Bを有する場合が例示されている。
図3では、前記層Bは、1層の場合が例示されているが、層Bは複数層を組み合わせることもできる。層Bとしては、例えば、粘着剤層、フィルム層等が挙げられる。なお、層Bの厚さは45μm以下の範囲で、各層の特性に応じて設計することができる。
【0026】
また、
図4では、
図2の態様において、前記ポリビニルアルコール系偏光子Pと前記光学機能層Aとが、直接(前記x=0μm)、積層されており、さらに、前記光学機能層Aに層Cを有する場合が例示されている。前記層Cは、1層の場合が例示されているが、層Cは複数層を組み合わせることもできる。層Cとしては、例えば、粘着剤層、表面処理層(ハードコート層、防眩処理層、反射防止層等)等が挙げられる。なお、層Cの厚さは45μm以下の範囲で、各層の特性に応じて設計することができる。層Cは、層Bと組わせて適用することもできる。
【0027】
本発明の光学機能層付偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光子を有する偏光フィルムおよび色素を含有する光学機能層を有する。以下、各部材について説明する。
【0028】
<光学機能層>
本発明の光学機能層は、色素を含む樹脂層であれば特に限定されない。前記樹脂層としては、フィルム層、粘着剤層等が挙げられる。前記光学機能層は、ベースポリマーおよび色素を含有する組成物から形成することができる。
【0029】
<色素>
本発明の光学機能層が含有する色素は、各種色素を使用することができる。色素として、例えば、テトラアザポルフィリン系、ポルフィリン系、シアニン系、アゾ系、ピロメテン系、スクアリリウム系、キサンテン系、オキソノール系、スクアライン系等の各種化合物が挙げられる。前記色素は、広色域化の観点から、テトラアザポルフィリン系色素、ポルフィリン系色素、シアニン系色素、スクアリウム系色素、スクアライン系色素が好ましく、特にテトラアザポルフィリン系色素ら好ましい。前記色素は、具体的には、特開2011-116818号公報等に開示されている。前記色素は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0030】
前記色素は、波長域470~510nmおよび波長域570~610nmのいずれか少なくとも一方に極大吸収波長を有するものが好ましい。前記波長域に極大吸収波長を有する色素は、色表現に不要な発光を吸収して、その発光を抑えることができ、広色域化に有効である。前記波長域に極大吸収波長を有する色素としては、テトラアザポルフィリン系色素を好適に用いることができる。例えば、波長域570~610nmに極大吸収波長を示す色素としては、山本化成社製のテトラアザポルフィリン系化合物(商品名:PD-320,PD311)、山田化学工業社製のテトラアザポルフィリン系化合物(商品名:FDG-007)等が挙げられる。なお、色素の極大吸収波長の測定は、分光光度計(日本分光社製のV-570)により行ったものである。
【0031】
本発明の光学機能層における色素の含有量は、色素の吸収波長域、吸光係数やベースポリマーの種類によって調整されるが、通常、ベースポリマー100重量部に対して0.01~5重量部であることが好ましく、さらには0.05~3重量部が好ましく、さらには0.1~1重量部が好ましい。特に、テトラアザポルフィリン系色素を用いる場合に前記範囲は好ましい。
【0032】
<粘着剤層>
本発明の光学機能層としては、色素を含有する粘着剤層が挙げられ、前記粘着剤層は、粘着性のベースポリマーおよび色素を含有する粘着剤組成物から形成することができる。粘着性のベースポリマーの種類について、特に制限はないが、例えば、ゴム系ポリマー、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ビニルアルキルエーテル系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリビニルピロリドン系ポリマー、ポリアクリルアミド系ポリマー、セルロース系ポリマーなどの各種ポリマーが挙げられる。
【0033】
本発明の粘着剤組成物は、粘着性のベースポリマーを主成分として含む。主成分とは、粘着剤組成物に含まれる全固形分のうち最も含有割合の多い成分を指し、例えば、粘着剤組成物に含まれる全固形分のうち50重量%より多くを占める成分であり、さらには70重量%より多くを占める成分を指す。
【0034】
これら粘着性のベースポリマーなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとして(メタ)アクリル系ポリマーが好ましく使用される。以下、粘着剤層の形成材料の、アルキル(メタ)アクリレートをモノマー単位として含有する(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤について説明する。
【0035】
<(メタ)アクリル系ポリマー>
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、モノマー単位として、アルキル(メタ)アクリレートを主成分として含有する。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、本発明の(メタ)とは同様の意味である。
【0036】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの主骨格を構成する、アルキル(メタ)アクリレートとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基の炭素数1~18のものを例示できる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。これらアルキル基の平均炭素数は3~9であるのが好ましい。
【0037】
また、粘着特性、耐久性、位相差の調整、屈折率の調整等の点から、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのような芳香族環を含有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0038】
前記(メタ)アクリル系ポリマー中には、接着性や耐熱性の改善を目的に、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する、1種類以上の共重合モノマーを共重合により導入することができる。そのような共重合モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリルや(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)-メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー;アクリル酸のカプロラクトン付加物;スチレンスルホン酸やアリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー;2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の燐酸基含有モノマー等が挙げられる。
【0039】
また、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミドやN-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等の(N-置換)アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキル系モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミドやN-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド、N-アクリロイルモルホリン等のスクシンイミド系モノマー;N-シクロヘキシルマレイミドやN-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミドやN-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;N-メチルイタコンイミド、N-エチルイタコンイミド、N-ブチルイタコンイミド、N-オクチルイタコンイミド、N-2-エチルヘキシルイタコンイミド、N-シクロヘキシルイタコンイミド、N-ラウリルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー、等も改質目的のモノマー例として挙げられる。
【0040】
さらに改質モノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N-ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルカプロラクタム等のビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等のグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2-メトキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル系モノマー等も使用することができる。さらには、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
さらに、上記以外の共重合可能なモノマーとして、ケイ素原子を含有するシラン系モノマー等が挙げられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4-ビニルブチルトリメトキシシラン、4-ビニルブチルトリエトキシシラン、8-ビニルオクチルトリメトキシシラン、8-ビニルオクチルトリエトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10-メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10-アクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0042】
また、共重合モノマーとしては、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物等の(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上有する多官能性モノマーや、ポリエステル、エポキシ、ウレタン等の骨格にモノマー成分と同様の官能基として(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の不飽和二重結合を2個以上付加したポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を用いることもできる。
【0043】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、全構成モノマーの重量比率において、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、(メタ)アクリル系ポリマー中の前記共重合モノマーの割合は、特に制限されないが、前記共重合モノマーの割合は、全構成モノマーの重量比率において、0~20%程度、0.1~15%程度、さらには0.1~10%程度であるのが好ましい。
【0044】
これら共重合モノマーの中でも、接着性、耐久性の点から、ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマーが好ましく用いられる。ヒドロキシル基含有モノマーおよびカルボキシル基含有モノマーは併用することができる。これら共重合モノマーは、粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合に、架橋剤との反応点になる。ヒドロキシル基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー等は分子間架橋剤との反応性に富むため、得られる粘着剤層の凝集性や耐熱性の向上のために好ましく用いられる。ヒドロキシル基含有モノマーはリワーク性の点で好ましく、またカルボキシル基含有モノマーは耐久性とリワーク性を両立させる点で好ましい。
【0045】
前記共重合モノマーとして、ヒドロキシル基含有モノマーを含有する場合、その割合は、0.01~15重量%が好ましく、0.03~10重量%がより好ましく、さらには0.05~7重量%が好ましい。前記共重合モノマーとして、カルボキシル基含有モノマーを含有する場合、その割合は、0.05~10重量%が好ましく、0.1~8重量%がより好ましく、さらには0.2~6重量%が好ましい。
【0046】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーは、通常、重量平均分子量が50万~300万の範囲のものが用いられる。耐久性、特に耐熱性を考慮すれば、重量平均分子量は70万~270万であるものを用いることが好ましい。さらには80万~250万であることが好ましい。重量平均分子量が50万よりも小さいと、耐熱性の点で好ましくない。また、重量平均分子量が300万よりも大きくなると、塗工するための粘度に調整するために多量の希釈溶剤が必要となり、コストアップとなることから好ましくない。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0047】
このような(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、UV重合等の放射線重合、塊状重合、乳化重合、各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0048】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50~70℃程度で、5~30時間程度の反応条件で行われる。
【0049】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0050】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2´-アゾビスイソブチロニトリル、2,2´-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2´-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA-057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
前記ラジカル重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005~1重量部程度であることが好ましく、0.02~0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0052】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノールなどが挙げられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0053】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0054】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS-10、HS-20、KH-10、BC-05、BC-10、BC-20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(旭電化工社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3~5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5~1重量部がより好ましい。
【0055】
<架橋剤>
さらに、本発明においては、色素を有する粘着剤層を形成する粘着剤組成物中に架橋剤を含有することできる。架橋剤としては、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを用いることができる。有機系架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤、エポキシ系架橋剤、イミン系架橋剤等が挙げられる。多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等が挙げられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等が挙げられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等が挙げられる。
【0056】
イソシアネート系架橋剤に係る化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、クロルフェニレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添されたジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネートモノマーおよびこれらイソシアネートモノマーをトリメチロールプロパンなどと付加したイソシアネート化合物やイソシアヌレート化物、ビュレット型化合物、さらにはポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールなど付加反応させたウレタンプレポリマー型のイソシアネートなどを挙げることができる。特に好ましくは、ポリイソシアネート化合物であり、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種またはそれに由来するポリイソシアネート化合物である。ここで、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートからなる群より選択される1種またはそれに由来するポリイソシアネート化合物には、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ポリオール変性ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリオール変性水添キシリレンジイソシアネート、トリマー型水添キシリレンジイソシアネート、およびポリオール変性イソホロンジイソシアネートなどが含まれる。例示したポリイソシアネート化合物は、水酸基との反応が、特にポリマーに含まれる酸、塩基を触媒のようにして、迅速に進む為、特に架橋の早さに寄与し、好ましい。
【0057】
過酸化物としては、加熱または光照射によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃~160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃~140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0058】
前記過酸化物としては、例えば、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ-n-オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t-ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)等が挙げられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)等が好ましく用いられる。
【0059】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログ等に記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」等に記載されている。
【0060】
前記架橋剤の使用量は、粘着剤組成物中、(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、さらには0.01~20重量部が好ましく、さらには0.03~10重量部が好ましい。なお、前記架橋剤が20重量部より多いと、耐湿性が十分ではなく、信頼性試験などで剥がれが生じやすくなる。
【0061】
さらに、本発明の色素を有する粘着剤層を形成する粘着剤組成物には、シランカップリング剤を含有することできる。シランカップリング剤を用いることにより、耐久性を向上させることができる。シランカップリング剤としては、具体的には、たとえば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0062】
前記シランカップリング剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は前記(メタ)アクリル系ポリマー等のベースポリマー100重量部に対し、前記シランカップリング剤0.001~5重量部が好ましく、さらには0.01~1重量部が好ましく、さらには0.02~1重量部がより好ましく、さらには0.05~0.6重量部が好ましい。耐久性を向上させ、液晶セルなどの光学部材への接着力を適度に保持する量である。
【0063】
さらに、本発明においては色素を有する粘着剤層を形成する粘着剤組成物中に、ポリエーテル変性シリコーンを配合することができる。ポリエーテル変性シリコーンは、例えば、特開2010-275522号公報に開示されているものを用いることができる。
【0064】
さらに本発明においては色素を有する粘着剤層を形成する粘着剤組成物中に、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。
【0065】
前記粘着剤組成物により、色素を有する粘着剤層を形成するが、粘着剤層の形成にあたっては、架橋剤の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮することが好ましい。
【0066】
使用する架橋剤によって架橋処理温度や架橋処理時間は、調整が可能である。架橋処理温度は170℃以下であることが好ましい。
【0067】
また、かかる架橋処理は、粘着剤層の乾燥工程時の温度で行ってもよいし、乾燥工程後に別途架橋処理工程を設けて行ってもよい。
【0068】
また、架橋処理時間に関しては、生産性や作業性を考慮して設定することができるが、通常0.2~20分間程度であり、0.5~10分間程度であることが好ましい。
【0069】
色素を有する粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤組成物を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後にポリビニルアルコール系偏光子を有する偏光フィルムに転写する方法、またはポリビニルアルコール系偏光子を有する偏光フィルムに前記粘着剤組成物を塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層をポリビニルアルコール系偏光子を有する偏光フィルムに形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0070】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の接着剤組成物を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0071】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0072】
また、ポリビニルアルコール系偏光子を有する偏光フィルムの表面に、アンカー層(例えば厚さ0.5~2μm程度)を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0073】
前記粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法が挙げられる。
【0074】
前記粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1~100μm程度である。好ましくは、2~50μm、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは、5~35μmである。前記色素を含有する粘着剤層は厚み25μm以下であるのが当該粘着剤層の端部からの酸素の侵入を防止するうえで好ましい。
【0075】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0076】
<フィルム層>
また、本発明の光学機能層としては、色素を含有するフィルム層が挙げられ、前記フィルム層は、フィルム形成用のベースポリマーおよび色素を含有する組成物から形成することができる。フィルム層を形成するベースポリマーの材料としては、後述の透明保護フィルムを構成する材料と同様のものを例示することができる。特に、前記材料としては、トリアセチルセルロースなどのセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)等が好ましく用いられる。フィルム層は、適宜に接着剤、粘着剤等を用いてポリビニルアルコール系偏光子に適用することができる。
【0077】
色素を含有するフィルム層の形成法は、各種の方法を採用することができる。例えば、前記の樹脂材料のペレットを溶剤に溶解させる際に、色素を混合して組成物を調製し、当該組成物をキャストしたり、押し出ししたりすることによりフィルム層を製造することができる。その際に、フィルム層を適宜の厚さで成形することができる。前記組成物の調製に際しては、適宜に添加剤を配合することができる。
【0078】
前記フィルム層の厚さは、特に制限されず、粘着剤層と同様であり、例えば、1~100μm程度である。好ましくは、2~50μm、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは、5~35μmである。前記セパレータは、色素を含有するフィルム層にも適用することができる。
【0079】
前記セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などを挙げることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0080】
そのプラスチックフィルムとしては、前記光学機能層(特に、粘着剤層)を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0081】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは5~100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記光学機能層(特に、粘着剤層)からの剥離性をより高めることができる。
【0082】
なお、上記の粘着剤層付偏光フィルムの作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま光学機能層付偏光フィルムのセパレータとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0083】
前記セパレータとしては、酸素透過度が1[cm3/(m2・24h・atm)]以下のものを用いるのが好ましい。前記酸素透過度は、0.8[cm3/(m2・24h・atm)]以下が好ましく、さらには0.6[cm3/(m2・24h・atm)]以下が好ましく、さらには0.5[cm3/(m2・24h・atm)]以下が好ましい。前記酸素透過度は、材料、厚み等により決定される。光学部材の酸素透過度は、具体的には実施例の記載により測定される。
【0084】
前記低酸素透過度を満足することができるセパレータとしては、例えば、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミ蒸着を施したフィルム、ポリアクリロニトリル、エチレンビニルアルコール等が好ましい。また、当該フィルムの厚さは10~100μmであるのが好ましく、さらには25~75μmであるのが好ましい。
【0085】
<偏光フィルム>
本発明の偏光フィルムは、前記ポリビニルアルコール系偏光子を有する。前記ポリビニルアルコール系偏光子は、酸素透過度が低く、酸素透過度が1[cm3/(m2・24h・atm)]以下を満足することができる。
【0086】
前記偏光フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0087】
前記ポリビニルアルコール系偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に80μm程度以下である。
【0088】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0089】
また偏光子としては厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることができる。薄型化の観点から言えば当該厚みは1~7μmであるのが好ましい。このような薄型の偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため耐久性に優れ、さらには偏光フィルムとしての厚みも薄型化が図れる点が好ましい。
【0090】
薄型の偏光子としては、代表的には、特開昭51-069644号公報や特開2000-338329号公報や、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010-269002号明細書や特願2010-263692号明細書に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。これら薄型偏光膜は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
【0091】
前記薄型偏光膜としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、WO2010/100917号パンフレット、PCT/JP2010/001460の明細書、または特願2010-269002号明細書や特願2010-263692号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特願2010-269002号明細書や特願2010-263692号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。
【0092】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロースなどのセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。なお、偏光子の片面には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片面には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性などが十分に発現できないおそれがある。
【0093】
透明保護フィルムの厚さは、特に制限されず、例えば、10~90μm程度である。好ましくは、15~60μm、より好ましくは20~50μmである。前記ポリビニルアルコール系偏光子と前記色素を含有する粘着剤層と間に、透明保護フィルムが配置される場合には、接着剤層等との合計厚みが45μm以下になるように調整された厚さの透明保護フィルムが用いられる。
【0094】
前記透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層(表面層)を設けることができる。
【0095】
前記偏光子と透明保護フィルムの貼り合わせに用いる接着剤は光学的に透明であれば、特に制限されず水系、溶剤系、ホットメルト系、ラジカル硬化型、カチオン硬化型の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤またはラジカル硬化型接着剤が好適である。接着剤層の厚みは、通常、0.01~3μm程度であり、0.3~2μmであるのが好ましく、さらには0.5~1.5μmが好ましい。
【0096】
前記ポリビニルアルコール系偏光子と、前記色素を有する粘着剤層の間に設けることができる色素を有しない層(例えば、
図3の態様における層B)としては、例えば、前記アンカー層、偏光子に適用される透明保護フィルム、接着剤層(前記透明保護フィルムを偏光子に貼り合わせるため)、粘着剤層(色素を有しない)、位相差層(または位相差フィルム)、光散乱層、発光層、下塗り層、液晶層、偏光層等が挙げられる。前記層Bは単層で用いることができ、また複数層を組み合わせることもできる。なお、層Bを複数層(例えば、層B1,層B2)用いる場合には、例えば、偏光子P/層B1/粘着剤層(色素を有しない)/層B2/粘着剤層A(色素を有する)のように、複数の層Bを、色素を有しない粘着剤層を介して積層したものを用いることができる。前記層Bの厚さは、45μm以下の範囲で各層の特性に応じて設計することができる。前記層Bについても、低酸素透過度のものが好ましい。
【0097】
<液晶パネル>
前記本発明の光学機能層付偏光フィルムは、液晶パネルを形成する際に好適に用いることができる。例えば、本発明の光学機能層付偏光フィルムの光学機能層が粘着剤層である、粘着剤層付偏光フィルムの場合には、当該粘着剤層付偏光フィルムは、液晶セルのいずれか少なくとも一方の面に、当該粘着剤層付偏光フィルムの粘着剤層を介して貼り合わされて液晶パネルを形成する。本発明の粘着剤層付偏光フィルムは、液晶セルの視認側に好適に用いられる。
【0098】
液晶セルは、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうるが、本発明の液晶パネルには、IPSモードの液晶セルが好適に用いられる。
【0099】
液晶パネルの形成には、前記偏光フィルムの他に、他の光学層を適用することができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、視角補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶パネルの形成に用いられることのある光学層を、液晶セルの視認側および/または背面側において1層または2層以上用いることができる。
【0100】
<液晶表示装置>
液晶表示装置には、上記液晶パネルが用いられ、必要に応じて照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成される。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。また、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%RHである。
【0102】
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量の測定>
(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定した。Mw/Mnについても、同様に測定した。
・分析装置:東ソー社製、HLC-8120GPC
・カラム:東ソー社製、G7000HXL+GMHXL+GMHXL
・カラムサイズ:各7.8mmφ×30cm 計90cm
・カラム温度:40℃
・流量:0.8mL/min
・注入量:100μL
・溶離液:テトラヒドロフラン
・検出器:示差屈折計(RI)
・標準試料:ポリスチレン
【0103】
<酸素透過度の測定>
モコン社製、酸素透過率測定装置OX-TRANを用い、23℃、0%RHの条件下にて、JISK 7126-2に従って求めた。
【0104】
実施例1
<偏光フィルムの作製>
薄型偏光層を作製するため、まず、非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された4μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された高機能偏光層を構成する、厚さ4μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を生成することができた。更に、当該光学フィルム積層体の偏光層の表面にポリビニルアルコール系接着剤を塗布しながら(形成された接着剤層の厚さ1μm)、けん化処理した40μm厚の第1のアクリル樹脂フィルム(酸素透過度5[cm3/(m2・24h・atm)])を貼合せたのち、非晶性PET基材を剥離して、薄型偏光子(酸素透過度0.02未満[cm3/(m2・24h・atm)])を用いた片保護偏光フィルムを作製した。これを薄型片保護偏光フィルムという。
【0105】
<(メタ)アクリル系ポリマーの調製>
冷却管、窒素導入管、温度計および撹拌装置を備えた反応容器にアクリル酸ブチル100部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル0.01部、およびアクリル酸5部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、前記モノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2´-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)180万、Mw/Mn=4.1のアクリル系ポリマーの溶液(固形分濃度30重量%)を調製した。
【0106】
(粘着剤組成物の調製)
上記で製造したアクリル系ポリマー溶液の固形分100部に対して、
ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製の商品名ナイパーBMT)を0.3部、
イソシアネート系架橋剤(東ソー社製の商品名コロネートL)を1部、
テトラアザポルフィリン系色素(山本化成社製の商品名PD-320:波長595nmに極大吸収波長を有する)を0.25部、および
を配合して、粘着剤組成物を得た。
【0107】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
前記粘着剤組成物を、上記薄型片保護偏光フィルムの偏光子(PVA層)の面に、直接、アプリケータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥して、前記偏光子の表面に厚さ20μmの色素を有する粘着剤層を形成して、粘着剤層付片保護偏光フィルムを作製した。
【0108】
実施例2
実施例1において、厚さ20μmの色素を有しない粘着剤層を前記偏光子の表面に積層した後に、厚さ20μmの色素を有する粘着剤層を形成したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層付片保護偏光フィルムを作製した。
なお、厚さ20μmの色素を有しない粘着剤層の形成には、上記色素を有する粘着剤層の形成に用いた粘着剤組成物において、色素を配合しなかったこと以外は同様の粘着剤組成物を用いた。粘着剤層の形成は、前記粘着剤組成物をシリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離基材(三菱樹脂社製MRF38CK)の表面に、アプリケータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥することにより行い、当該粘着剤層を前記偏光子に転写して積層した。
【0109】
実施例3
実施例1において、実施例2で用いた厚さ20μmの色素を有しない粘着剤層を前記偏光子の表面に2層積層(合計厚さ40μm)した後に、厚さ20μmの色素を有する粘着剤層を形成したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層付片保護偏光フィルムを作製した。なお、色素を有しない粘着剤層の形成は実施例2の記載と同様である。
【0110】
実施例4
<偏光フィルムの作製>
実施例1において得られた薄型片保護偏光フィルムの偏光子(PVA層)の面に、けん化処理した40μm厚の第2のアクリル樹脂フィルム(酸素透過度5[cm3/(m2・24h・atm)])を接着剤(接着剤層の厚さ1μm)を介して貼り合せて、両保護偏光フィルムを作製した。これを薄型両保護偏光フィルムという。
【0111】
(粘着剤層付偏光フィルムの作製)
上記両保護偏光フィルムの第2のアクリル樹脂フィルムの裏面(接着剤層とは反対面)に、実施例1で用いた粘着剤組成物を、直接、アプリケータで均一に塗工し、155℃の空気循環式恒温オーブンで2分間乾燥して、前記第2のアクリル樹脂フィルムの裏面に厚さ20μmの色素を有する粘着剤層を形成して、粘着剤層付片保護偏光フィルムを作製した。
【0112】
比較例1
実施例1において、実施例2で用いた厚さ20μmの色素を有しない粘着剤層を前記偏光子の表面に3層積層(合計厚さ60μm)した後に、厚さ20μmの色素を有する粘着剤層を形成したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層付片保護偏光フィルムを作製した。なお、色素を有しない粘着剤層の形成は実施例2の記載と同様である。
【0113】
比較例2
実施例1において、前記粘着剤組成物を、上記薄型片保護偏光フィルムの偏光子(PVA層)の面に形成する代わりに、けん化処理した40μm厚のアクリル樹脂フィルム(酸素透過度5[cm3/(m2・24h・atm)])に形成したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤層付アクリル樹脂フィルムを作製した。
【0114】
上記実施例および比較例で得られた、粘着剤層付片保護または両保護偏光フィルム、または粘着剤層付アクリル樹脂フィルムをサンプルとして以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0115】
(退色の評価)
サンプルを縦50mm×横25mmの試験片に裁断した後、正面および端部の状態(初期)を、スキャナ(具体的には、Canon社製の商品名ピクサス MX923)を用いて写真として取り込んだ。次いで、サンプルを85℃の恒温槽に24時間放置する耐久性試験を施した後に、取り出して、室温(23℃)に戻してから、再度、サンプルの正面および端部の状態(24時間後)を、再度、同様のスキャナを用いて写真として取り込だ。前記試験投入前(初期)と後(24)時間後の写真を二値化し、正面の色抜け有無、及び端部の色抜け量を下記の方法で測定した。
【0116】
<正面の色抜け>
試験片を耐久性試験に投入する前の二値化写真、及び投入後の二値化写真の画像を元に、色が抜けているかどうかを目視にて評価した。試験片を耐久性試験に投入する前後の透過率についても併せて表1に記載した。透過率の測定は積分球付き分光透過率測定器(村上色彩技術研究所のDot-3c)を用いて、試験片が23℃の状態で行った。
〇 投入前に比べて色の差がない。
× 投入前に比べて明らかに色が薄くなっている。
【0117】
<端部の色抜け>
試験片の周辺端部から中央に向けて、周辺端部の明確に色が抜けている部分の最も長い箇所の距離を定規にて測定し、これを色抜け(退色進行距離:mm)として評価した。
【0118】
【0119】
実施例では、正面の色抜けは無く、端部の色抜け量は小さかった。端部の色抜け(退色進行距離:mm)は3mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましく、さらには1mm以下であるのが好ましく、0mmであるの好ましい。一方、比較例1では、前記ポリビニルアルコール系偏光子を用いているため正面での色抜けは認められなかったが、前記ポリビニルアルコール系偏光子と前記光学機能層(粘着剤層)との距離が45μmを超え得ており、端部の色抜け(退色進行距離:mm)が認められた。比較例2では、前記ポリビニルアルコール系偏光子を用いていないため、正面の色抜け、端部の色抜けが共に認められた。
【符号の説明】
【0120】
P ポリビニルアルコール系偏光子
A 光学機能層
F 透明保護フィルム
S セパレータ
B、C その他の層
x ポリビニルアルコール系偏光子との粘着剤層と距離