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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20240705BHJP
   G02F 1/1368 20060101ALI20240705BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240705BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20240705BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240705BHJP
   H10K 59/00 20230101ALI20240705BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
G02F1/1368
H01L29/78 616U
H01L29/78 616V
H01L29/78 618E
H01L29/78 619A
H05B33/02
H05B33/14 A
H10K59/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021503228
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 IB2020051294
(87)【国際公開番号】W WO2020178651
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019037921
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】生内 俊光
(72)【発明者】
【氏名】肥塚 純一
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212442(JP,A)
【文献】特開2016-189479(JP,A)
【文献】特開2018-116274(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0338107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
G02F 1/1368
H01L 21/336
H05B 33/02
H10K 50/10
H10K 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電層と、第1の絶縁層と、半導体層と、一対の第2の導電層と、第2の絶縁層と、を有し、
前記第1の絶縁層は、前記第1の導電層の上面と接し、
前記半導体層は、前記第1の絶縁層の上面と接し、
一対の前記第2の導電層は、前記半導体層の上面と接し、
一対の前記第2の導電層は、前記第1の導電層と重畳する領域で離間し、
前記半導体層は、インジウムと、亜鉛と、酸素と、を有し、
前記半導体層は、インジウム、元素M及び亜鉛の原子数比を示す三角図において、第1の座標(44:11:10)と、第2の座標(4:1:4)と、第3の座標(1:0:1)と、第4の座標(11:0:2)と、前記第1の座標と、をこの順に直線で結ぶ範囲内の組成を有し、
前記元素Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウムまたはスズのいずれか一以上であり、
前記第2の導電層は、第1の導電膜と、前記第1の導電膜上の第2の導電膜と、前記第2の導電膜上の第3の導電膜との積層構造を有し、
前記第2の導電膜は、銅、銀、金、またはアルミニウムを含み、
前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜は、それぞれ前記第2の導電膜とは異なる元素を含み、
前記第1の導電膜及び前記第3の導電膜は、それぞれ独立に、チタン、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、亜鉛、インジウム、白金、及びルテニウムのうちのいずれかを含み、
前記第2の絶縁層は、前記半導体層の上面、前記第1の導電膜の上面、前記第1の導電膜の側面、前記第2の導電膜の側面、前記第3の導電膜の側面、前記第3の導電膜の上面と接する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記半導体層は、第1の金属酸化物膜と、前記第1の金属酸化物膜上の第2の金属酸化物膜との積層構造を有し、
前記第1の金属酸化物膜は、前記第2の金属酸化物膜よりも結晶性が低い半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、及びその作製方法に関する。本発明の一態様は、表示装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する本発明の一態様の技術分野として、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置、入出力装置、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法を一例として挙げることができる。半導体装置は、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。
【背景技術】
【0003】
トランジスタに適用可能な半導体材料として、金属酸化物を用いた酸化物半導体が注目されている。例えば、特許文献1では、複数の酸化物半導体層を積層し、当該複数の酸化物半導体層の中で、チャネルとなる酸化物半導体層がインジウム及びガリウムを含み、且つインジウムの割合をガリウムの割合よりも大きくすることで、電界効果移動度(単に移動度、またはμFEという場合がある)を高めた半導体装置が開示されている。
【0004】
非特許文献1及び非特許文献2では、InGaO(ZnO)m(m:自然数)の酸化物半導体材料が開示されている。
【0005】
半導体層に用いることのできる金属酸化物は、スパッタリング法などを用いて形成できるため、大型の表示装置を構成するトランジスタの半導体層に用いることができる。また、多結晶シリコンや非晶質シリコンを用いたトランジスタの生産設備の一部を改良して利用することが可能なため、設備投資を抑えられる。また、金属酸化物を用いたトランジスタは、非晶質シリコンを用いた場合に比べて高い電界効果移動度を有するため、駆動回路を設けた高性能の表示装置を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-7399号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】M.Nakamura,N.Kimizuka,and T.Mohri、「The Phase Relations in the In▲2▼O▲3▼-Ga▲2▼ZnO▲4▼-ZnO System at 1350℃」、J.Solid State Chem.、1991、Vol.93,p.298-315
【文献】N.Kimizuka,M.Isobe,and M.Nakamura、「Syntheses and Single-Crystal Data of Homologous Compounds,In▲2▼O▲3▼(ZnO)▲m▼(m=3,4,and 5),InGaO▲3▼(ZnO)▲3▼,and Ga▲2▼O▲3▼(ZnO)▲m▼(m=7,8,9,and 16)in the In▲2▼O▲3▼-ZnGa▲2▼O▲4▼-ZnO System」、J.Solid State Chem.、1995、Vol.116,p.170-178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、電気特性の良好な半導体装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、電気特性の安定した半導体装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、信頼性の高い表示装置を提供することを課題の一とする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、第1の導電層と、第1の絶縁層と、半導体層と、一対の第2の導電層と、を有する半導体装置である。第1の絶縁層は、第1の導電層の上面と接し、半導体層は、第1の絶縁層の上面と接し、一対の第2の導電層は、半導体層の上面と接し、一対の第2の導電層は、第1の導電層と重畳する領域で離間する。半導体層は、インジウムと、酸素と、を有し、インジウム、元素M及び亜鉛の原子数比を示す三角図において、第1の座標(1:0:0)と、第2の座標(2:1:0)と、第3の座標(14:7:1)と、第4の座標(7:2:2)と、第5の座標(14:4:21)と、第6の座標(2:0:3)と、第1の座標と、をこの順に直線で結ぶ範囲内の組成を有する。また、元素Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウムまたはスズのいずれか一以上である。
【0011】
本発明の一態様は、第1の導電層と、第1の絶縁層と、半導体層と、一対の第2の導電層と、を有する半導体装置である。第1の絶縁層は、第1の導電層の上面と接し、半導体層は、第1の絶縁層の上面と接し、一対の第2の導電層は、半導体層の上面と接し、一対の第2の導電層は、第1の導電層と重畳する領域で離間する。半導体層は、インジウムと、酸素と、を有し、インジウム、元素M及び亜鉛の原子数比を示す三角図において、第1の座標(7:1:0)と、第2の座標(2:1:0)と、第3の座標(14:7:1)と、第4の座標(7:2:2)と、第5の座標(14:4:21)と、第6の座標(2:0:3)と、第7の座標(7:0:1)と、第1の座標と、をこの順に直線で結ぶ範囲内の組成を有する。また、元素Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウムまたはスズのいずれか一以上である。
【0012】
本発明の一態様は、第1の導電層と、第1の絶縁層と、半導体層と、一対の第2の導電層と、を有する半導体装置である。第1の絶縁層は、第1の導電層の上面と接し、半導体層は、第1の絶縁層の上面と接し、一対の第2の導電層は、半導体層の上面と接し、一対の第2の導電層は、第1の導電層と重畳する領域で離間する。半導体層は、インジウムと、亜鉛と、酸素と、を有し、インジウム、元素M及び亜鉛の原子数比を示す三角図において、第1の座標(44:11:10)と、第2の座標(4:1:6)と、第3の座標(2:0:3)と、第4の座標(11:0:2)と、第1の座標と、をこの順に直線で結ぶ範囲内の組成を有する。また、元素Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウムまたはスズのいずれか一以上である。
【0013】
本発明の一態様は、第1の導電層と、第1の絶縁層と、半導体層と、一対の第2の導電層と、を有する半導体装置である。第1の絶縁層は、第1の導電層の上面と接し、半導体層は、第1の絶縁層の上面と接し、一対の第2の導電層は、半導体層の上面と接し、一対の第2の導電層は、第1の導電層と重畳する領域で離間する。半導体層は、インジウムと、亜鉛と、酸素と、を有し、インジウム、元素M及び亜鉛の原子数比を示す三角図において、第1の座標(44:11:10)と、第2の座標(4:1:4)と、第3の座標(1:0:1)と、第4の座標(11:0:2)と、第1の座標と、をこの順に直線で結ぶ範囲内の組成を有する。また、元素Mは、ガリウム、アルミニウム、イットリウムまたはスズのいずれか一以上である。
【0014】
前述の半導体装置において、半導体層は、第1の金属酸化物膜と、第1の金属酸化物膜上の第2の金属酸化物膜との積層構造を有し、第1の金属酸化物膜は、第2の金属酸化物膜よりも結晶性が低いことが好ましい。
【0015】
前述の半導体装置において、第2の導電層は、第1の導電膜と、第1の導電膜上の第2の導電膜と、第2の導電膜上の第3の導電膜との積層構造を有することが好ましい。また、第2の導電膜は、銅、銀、金、またはアルミニウムを含ことが好ましい。また、第1の導電膜及び第3の導電膜は、それぞれ第2の導電膜とは異なる元素を含み、第1の導電膜及び第3の導電膜は、それぞれ独立に、チタン、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、亜鉛、インジウム、白金、及びルテニウムのうちのいずれかを含むことが好ましい。
【0016】
前述の半導体装置において、さらに第2の絶縁層を有し、第2の絶縁層は、半導体層の上面、並びに第2の導電層の上面及び側面と接することが好ましい。また、第2の絶縁層は、酸素を含むことが好ましい。
【0017】
前述の半導体装置において、さらに第3の絶縁層を有し、第3の絶縁層は、第2の絶縁層の上面と接することが好ましい。また、第3の絶縁層は、窒素を含むことが好ましい。
【0018】
前述の半導体装置において、第2の絶縁層は、酸化シリコンを含み、第3の絶縁層は、窒化シリコンを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、電気特性の良好な半導体装置を提供できる。または、信頼性の高い半導体装置を提供できる。または、電気特性の安定した半導体装置を提供できる。または、信頼性の高い表示装置を提供できる。
【0020】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A及び図1Bは、金属酸化物の組成を説明する図である。
図2A及び図2Bは、金属酸化物の組成を説明する図である。
図3A及び図3Bは、金属酸化物の組成を説明する図である。
図4は、金属酸化物の組成を説明する図である。
図5Aは、IGZOの結晶構造の分類を説明する図である。図5Bは、石英ガラスのXRDスペクトルを説明する図である。図5Cは、結晶性IGZOのXRDスペクトルを説明する図である。
図6A及び図6Bは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図7A及び図7Bは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図8Aは、トランジスタの構成例を示す上面図である。図8B及び図8Cは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図9A図9B及び図9Cは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図10Aは、トランジスタの構成例を示す上面図である。図10B及び図10Cは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図11A及び図11Bは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図12A及び図12Bは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図13A図13B及び図13Cは、トランジスタの作製方法を説明する断面図である。
図14A及び図14Bは、トランジスタの作製方法を説明する断面図である。
図15A及び図15Bは、トランジスタの作製方法を説明する断面図である。
図16A及び図16Bは、トランジスタの作製方法を説明する断面図である。
図17は、トランジスタの作製方法を説明する断面図である。
図18A及び図18Bは、トランジスタの作製方法を説明する断面図である。
図19A及び図19Bは、トランジスタの作製方法を説明する断面図である。
図20A及び図20Bは、トランジスタの作製方法を説明する断面図である。
図21A図21B図21C及び図21Dは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図22Aは、トランジスタの構成例を示す上面図である。図22B及び図22Cは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図23Aは、トランジスタの構成例を示す上面図である。図23B及び図23Cは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図24Aは、トランジスタの構成例を示す上面図である。図24B及び図24Cは、トランジスタの構成例を示す断面図である。
図25A図25B図25C図25D及び図25Eは、トランジスタの構成例である。
図26A図26B及び図26Cは、表示装置の上面図である。
図27は、表示装置の断面図である。
図28は、表示装置の断面図である。
図29は、表示装置の断面図である。
図30は、表示装置の断面図である。
図31は、表示装置の断面図である。
図32Aは、表示装置のブロック図である。図32B及び図32Cは、表示装置の回路図である。
図33A図33C及び図33Dは、表示装置の回路図である。図33Bは、表示装置のタイミングチャートである。
図34A及び図34Bは、表示モジュールの構成例である。
図35A及び図35Bは、電子機器の構成例である。
図36A図36B図36C及び図36Dは、電子機器の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。
【0024】
本明細書等にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではない。
【0025】
本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成要素同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成要素同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0026】
本明細書等において、トランジスタが有するソースとドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0027】
本明細書等において、トランジスタのチャネル長方向とは、ソース領域とドレイン領域間を最短距離で結ぶ直線に平行な方向のうちの1つをいう。すなわち、チャネル長方向は、トランジスタがオン状態のときに半導体層を流れる電流の方向のうちの1つに相当する。また、チャネル幅方向とは、当該チャネル長方向に直交する方向をいう。なお、トランジスタの構造や形状によっては、チャネル長方向及びチャネル幅方向は1つに定まらない場合がある。
【0028】
本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0029】
本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」や「絶縁層」という用語は、「導電膜」や「絶縁膜」という用語に相互に交換することが可能な場合がある。
【0030】
本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態とは、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも低い(pチャネル型トランジスタでは、Vthよりも高い)状態をいう。
【0031】
本明細書等において、表示装置の一態様である表示パネルは表示面に画像等を表示(出力)する機能を有するものである。したがって表示パネルは出力装置の一態様である。
【0032】
本明細書等では、表示パネルの基板に、例えばFPC(Flexible Printed Circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)などのコネクターが取り付けられたもの、または基板にCOG(Chip On Glass)方式等によりICが実装されたものを、表示パネルモジュール、表示モジュール、または単に表示パネルなどと呼ぶ場合がある。
【0033】
なお、本明細書等において、表示装置の一態様であるタッチパネルは表示面に画像等を表示する機能と、表示面に指やスタイラスなどの被検知体が触れる、押圧する、または近づくことなどを検出するタッチセンサとしての機能と、を有する。したがってタッチパネルは入出力装置の一態様である。
【0034】
タッチパネルは、例えばタッチセンサ付き表示パネル(または表示装置)、タッチセンサ機能つき表示パネル(または表示装置)とも呼ぶことができる。タッチパネルは、表示パネルとタッチセンサパネルとを有する構成とすることもできる。または、表示パネルの内部または表面にタッチセンサとしての機能を有する構成とすることもできる。
【0035】
本明細書等では、タッチパネルの基板に、コネクターやICが実装されたものを、タッチパネルモジュール、表示モジュール、または単にタッチパネルなどと呼ぶ場合がある。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置に好適に用いることができる金属酸化物について、説明する。
【0037】
本発明の一態様である半導体装置は、チャネル形成領域に半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を有する。金属酸化物を用いると、シリコンなどからなる半導体と比較して、トランジスタのスイッチング特性が良好で、かつオフ電流が極めて低いため好ましい。
【0038】
ここで、金属酸化物の組成は、トランジスタの電気的特性や、信頼性に大きく影響する。金属酸化物は、インジウムを有することが好ましい。さらに、金属酸化物はインジウム含有率が高いことが好ましい。金属酸化物のインジウム含有率を高くすることで、金属酸化物のキャリア移動度(電子移動度)を高くすることができる。したがって、インジウム含有率の高い金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、電界効果移動度が高く、大きな電流を流すことができる。また、当該トランジスタを用いた半導体装置は、高速駆動が可能となる。したがって、このような半導体装置を有する表示装置は、画素部のトランジスタと、駆動回路部に使用するトランジスタを同一基板上に形成することができる。また、このようなトランジスタを画素部に用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0039】
金属酸化物は、インジウムに加えて元素Mを有することが好ましい。元素Mは、酸素との結合エネルギーが高いことが好ましい。特に、元素Mは酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高いことが好ましい。金属酸化物は、インジウムよりも酸素との結合エネルギーが高い元素Mを有することにより、該金属酸化物中に酸素欠損が形成されにくくなる。元素Mとして、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムの一以上を用いることができる。特に、元素Mとして、ガリウム、アルミニウム、イットリウム、またはスズの一以上を用いることができる。また、元素Mは、金属酸化物のエネルギーギャップを大きくする機能を有する。
【0040】
元素Mとして、特にガリウムを好適に用いることができる。金属酸化物は、インジウムよりも酸素との結合エネルギーが高いガリウムを有することにより、該金属酸化物中に酸素欠損が形成されにくくなる。チャネル形成領域に用いられる金属酸化物中に酸素欠損が多く存在すると、トランジスタの電気特性や信頼性の低下に繋がる。したがって、インジウム及びガリウムを有する金属酸化物を用いることで、電界効果移動度が高く、かつ信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0041】
金属酸化物は、インジウムに加えて亜鉛を有することが好ましい。または、金属酸化物は、インジウム、元素M及び亜鉛を有することが好ましい。亜鉛は、金属酸化物の結晶性を高める機能を有する。結晶性を有する金属酸化物は、チャネル形成領域に好適に用いることができる。例えば、後述するCAAC(c-axis aligned crystal)構造、多結晶構造、微結晶(nc:nanocrystal)構造等を有する金属酸化物を、チャネル形成領域に用いることができる。結晶性を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、チャネル形成領域中の欠陥準位密度を低減でき、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0042】
金属酸化物の結晶性が高いほど、膜中の欠陥準位密度を低減できる。一方、結晶性の低い金属酸化物をチャネル形成領域に用いることで、大きな電流を流すことのできるトランジスタを実現することができる。
【0043】
<金属酸化物の組成>
金属酸化物の組成について、具体的に説明する。以下では、組成として、金属酸化物におけるインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比を示す。
【0044】
金属酸化物が有するインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲を、図1A図1B図2A及び図2Bに示す。図1A図1B図2A及び図2Bはインジウム、元素M及び亜鉛を頂点とする正三角形を用いてインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比を示しており、三角図、三角座標図、三角ダイアグラムともよばれる。なお、図1A図1B図2A及び図2Bでは、酸素の原子数比を記載していない。
【0045】
まず、各元素の原子数比について、図3A図3B及び図4を用いて説明する。図3A図3B及び図4はそれぞれ、元素X、元素Y及び元素Zを有する金属酸化物の例を示している。図3A図3B及び図4に示す三角図には、点X、点Y及び点Zを頂点とする正三角形と、金属酸化物の組成の例として座標点W(α:β:γ)を示している。
【0046】
座標点W(α:β:γ)は、元素X、元素Y及び元素Zの原子数比がX:Y:Z=α:β:γであることを示している。それぞれの元素の原子数比は、各頂点に近いほど高く、遠いほど低いことを示す。ここで、点Xは座標が(1:0:0)であり、元素X、元素Y及び元素Zの原子数比がX:Y:Z=1:0:0、つまり、金属酸化物が元素Xを有し、かつ元素Y及び元素Zのいずれも有さないことを示している。点Yは座標が(0:1:0)であり、元素X、元素Y及び元素Zの原子数比がX:Y:Z=0:1:0、つまり、金属酸化物が元素Yを有し、かつ元素X及び元素Zのいずれも有さないことを示している。点Zは座標が(0:0:1)であり、元素X、元素Y及び元素Zの原子数比がX:Y:Z=0:0:1、つまり、金属酸化物が元素Zを有し、かつ元素X及び元素Yのいずれも有さないことを示している。
【0047】
なお、本明細書等において、元素X、元素Y及び元素Zの原子数比をX:Y:Zと記す場合がある。また、元素X及び元素Yの合計の原子数と、元素Zの原子数の比を(X+Y):Zと記す場合がある。各元素の他の組み合わせについても同様に記す場合がある。
【0048】
図3Aには、線LNx、線LNy及び線LNzを示している。線LNxは、辺YZの長さをγ:βで分ける点Dx(0:β:γ)と、点Xを結ぶ直線である。線LNxは、元素Yと元素Zの原子数比がY:Z=β:γを満たす点の集合ともいえる。線LNyは、辺XZの長さをγ:αで分ける点Dy(α:0:γ)と、点Yを結ぶ直線である。線LNyは、元素Xと元素Zの原子数比がX:Z=α:γを満たす点の集合ともいえる。線LNzは、辺XYの長さをβ:αで分ける点Dz(α:β:0)と、点Zを結ぶ直線である。線LNzは、元素Xと元素Yの原子数比がX:Y=α:βを満たす点の集合ともいえる。また、線LNx、線LNy及び線LNzは、いずれも座標点W(α:β:γ)と交わる。
【0049】
なお、本明細書等において、「点Aと点Bを結ぶ直線」は「点Aと点Bを結ぶ線分」と置き換えることができる。
【0050】
ここで、座標点W(α:β:γ)は、線LNxと線LNyの交点であるとも言える。また、座標点W(α:β:γ)は、線LNyと線LNzの交点であるとも言える。また、座標点W(α:β:γ)は、線LNxと線LNzの交点であるとも言える。
【0051】
なお、辺XYは、元素X及び元素Yの合計の原子数と、元素Zの原子数の比が(X+Y):Z=1:0を満たす点の集合である。つまり、辺XYは、金属酸化物が元素Xまたは元素Yのいずれか一以上を有し、かつ元素Zを有さないことを示している。辺YZは、元素Xと、元素Y及び元素Zの合計の原子数比がX:(Y+Z)=0:1を満たす点の集合である。つまり、辺YZは、金属酸化物が元素Yまたは元素Zのいずれか一以上を有し、かつ元素Xを有さないことを示している。辺XZは、元素X及び元素Zの合計と、元素Yの原子数比が(X+Z):Y=1:0を満たす点の集合である。つまり、辺XZは、金属酸化物が元素Xまたは元素Zのいずれか一以上を有し、かつ元素Yを有さないことを示している。
【0052】
具体的な例として、座標点Wが(5:1:3)の場合で説明する。座標点W(5:1:3)の場合、線分XDzの長さと線分DzYの長さの比は1:5となる。線分YDxの長さと線分DxZの長さの比は3:1となる。線分XDyの長さと線分DyZの長さの比は3:5となる。また、線LNxは、元素Yと元素Zの原子数比がY:Z=1:3を満たす点である。線LNyは、元素Xと元素Zの原子数比がX:Z=5:3を満たす点の集合である。線LNzは、元素Xと元素Yの原子数比がX:Y=5:1を満たす点の集合である。
【0053】
図3Bには、線PEx、線PEy及び線PEzを示している。線PExは、座標点W(α:β:γ)から辺YZに下ろした垂線である。線PEyは、座標点W(α:β:γ)から辺XZに下ろした垂線である。線PEzは、座標点W(α:β:γ)から辺XYに下ろした垂線である。ここで、線PExの長さ、線PEyの長さ、線PEzの長さの比は、α:β:γとなる。
【0054】
具体的な例として、座標点Wが(5:1:3)の場合で説明する。座標点W(5:1:3)の場合、線PExの長さ、線PEyの長さ、線PEzの長さの比は、5:1:3となる。
【0055】
図4Aには、線PAx、線PAy及び線PAzを示している。線PAxは、辺YZと平行な直線であり、かつ座標点W(α:β:γ)と交わる。線PAyは、辺XZと平行な直線であり、かつ座標点W(α:β:γ)と交わる。線PAzは、辺XYと平行な直線であり、かつ座標点W(α:β:γ)と交わる。また、線PAxは、元素Xと、元素Y及び元素Zの合計の原子数の比がX:(Y+Z)=α:(β+γ)を満たす点の集合ともいえる。線PAyは、元素X及び元素Zの合計の原子数と、元素Yの原子数の比が(X+Z):Y=(α+γ):βを満たす点の集合ともいえる。線PAzは、元素X及び元素Yの合計の原子数と、元素Zの原子数の比が(X+Y):Z=(α+β):γを満たす点の集合ともいえる。
【0056】
具体的な例として、座標点Wが(5:1:3)の場合で説明する。座標点W(5:1:3)の場合、線PAxは、元素Xの原子数と、元素Y及び元素Zの合計の原子数の比がX:(Y+Z)=5:4を満たす点の集合である。線PAyは、元素X及び元素Zの合計の原子数と、元素Yの原子数の比が(X+Z):Y=8:1を満たす点の集合である。線PAzは、元素X及び元素Yの合計の原子数と、元素Zの原子数の比が(X+Y):Z=2:1を満たす点の集合である。
【0057】
以下では、トランジスタのチャネル形成領域に好適に用いることができる金属酸化物の組成について、具体的に説明する。
【0058】
〔金属酸化物の組成1〕
金属酸化物は、インジウムと、酸素とを有することが好ましい。金属酸化物は、さらに元素Mまたは亜鉛のいずれか一以上を有してもよい。トランジスタのチャネル形成領域に好適に用いることができる金属酸化物の組成を、図1Aに示す。金属酸化物のインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比は、図1Aに示す三角図において、範囲11に含まれることが好ましい。範囲11は、座標点A(1:0:0)と、座標点B(2:1:0)と、座標点C(14:7:1)と、座標点D(7:2:2)と、座標点E(14:4:21)と、座標点F(2:0:3)と、前記座標点Aと、をこの順に直線で結ぶ多角形の内部である。なお、範囲11には、各座標点及び各辺も含む。範囲11に含まれる組成を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0059】
なお、元素Mとして複数の元素を有する場合は、それらの元素の合計の原子数の比を、元素Mの原子数比として用いる。例えば、元素Mとして、ガリウム及びスズを有する場合は、ガリウム及びスズの合計の原子数の比を、元素Mの原子数比として用いる。
【0060】
ここで、座標点B(2:1:0)は、(In+M):Zn=1:0を満たす点の集合である線L1と、In:M=2:1を満たす点の集合である線L2の交点である。座標点C(14:7:1)は、前述の線L2と、In:(M+Zn)=7:4を満たす点の集合である線L3の交点である。また、座標点Cは、前述の線L2と、In:Zn=14:1を満たす点の集合である線L4の交点でもある。座標点D(7:2:2)は、前述の線L3と、In:Zn=7:2を満たす点の集合である線L5の交点である。また、座標点Dは、前述の線L3と、In:M=7:2を満たす点の集合である線L6の交点でもある。座標点E(14:4:21)は、前述の線L6と、In:Zn=2:3を満たす点の集合である線L7の交点である。座標点F(2:0:3)は、前述の線L7と、(In+Zn):M=1:0を満たす点の集合である線L8の交点である。
【0061】
なお、本明細書等において、インジウム、元素M及び亜鉛の原子数の比をIn:M:Znと記す場合がある。また、インジウム及び元素Mの合計の原子数と、亜鉛の原子数の比を(In+M):Znと記す場合がある。各元素の他の組み合わせについても同様である。
【0062】
辺ABは前述の線L1上にあり、辺BCは前述の線L2上にあり、辺CDは前述の線L3上にあり、辺DEは前述の線L6上にあり、辺EFは前述の線L7上にあり、辺FAは前述の線L8上にある。つまり、範囲11は、線L1、線L2、線L3、線L6、線L7、及び線L8に囲われた多角形の内部であるともいえる。
【0063】
金属酸化物の組成は、範囲11に示すように、線L2であるIn:M=2:1を満たす、またはIn:M=2:1よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、元素Mの原子数に対するインジウム原子数の比In/Mが、2以上であることが好ましい。インジウム含有率が高い金属酸化物はキャリア移動度(電子移動度)が高く、インジウム含有率の高い金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、電界効果移動度が高く、大きな電流を流すことができる。
【0064】
ただし、元素Mの含有率が高いと欠陥準位が増加し、信頼性試験でのしきい値電圧の変動量が大きくなってしまう場合がある。トランジスタの信頼性を評価する指標の1つとして、ゲートに電界を印加した状態で保持する、GBT(Gate Bias Temperature)ストレス試験がある。その中でも、ソース電位及びドレイン電位に対して、ゲートに正の電位を与えた状態で、高温下で保持する試験をPBTS(Positive Bias Temperature Stress)試験、ゲートに負の電位を与えた状態で、高温下で保持する試験をNBTS(Negative Bias Temperature Stress)試験と呼ぶ。また、白色LED光などの光を照射した状態で行うPBTS試験及びNBTS試験を、それぞれPBTIS(Positive Bias Temperature Illumination Stress)試験、NBTIS(Negative Bias Temperature Illumination Stress)試験と呼ぶ。
【0065】
特に、金属酸化物を用いたn型のトランジスタにおいては、トランジスタがオン状態(電流が流れている状態)ではゲートに正の電位が与えられる。したがって、PBTS試験でのしきい値電圧の変動量が、トランジスタの信頼性の指標として着目すべき重要な項目の1つとなる。
【0066】
ここで、元素Mを含まない、または元素Mの含有率の低い金属酸化物を用いることで、PBTS試験でのしきい値電圧の変動量を小さくすることができる。また、元素Mを含む場合には、金属酸化物の組成として、インジウム含有率よりも、元素Mの含有率を小さくすることが好ましい。さらに、元素Mの原子数に対するインジウム原子数の比In/Mが、2以上であることが好ましい。これにより、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0067】
PBTS試験でのしきい値電圧の変動の1つの要因として、半導体層とゲート絶縁層の界面、または界面近傍における欠陥準位が挙げられる。欠陥準位密度が大きいほど、PBTS試験での劣化が顕著になる。しかしながら、半導体層のゲート絶縁層と接する部分における元素Mの含有率を小さくすることで、当該欠陥準位の生成を抑制することができる。
【0068】
元素Mを含まない、または元素Mの含有率を小さくすることでPBTS劣化を抑制できる理由として、例えば以下のようなことが考えられる。半導体層に含まれる元素Mは、他の金属元素(例えばインジウムや亜鉛)と比較して、酸素を誘引しやすい性質を有する。そのため、元素Mを多く含む金属酸化物膜と、酸化物を含む絶縁層との界面において、元素Mが絶縁層中の余剰酸素と結合することで、キャリア(ここでは電子)トラップサイトを生じさせやすくなることが推察される。そのため、ゲートに正の電位が与えられた状態において、半導体層とゲート絶縁層との界面にキャリアがトラップされることで、しきい値電圧が変動することが考えられる。
【0069】
したがって、元素Mの原子数に対するインジウム原子数の比In/Mが2以上の金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより欠陥準位の生成を抑制でき、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0070】
金属酸化物の組成は、範囲11に示すように、線L3であるIn:(M+Zn)=7:4を満たす、またはIn:(M+Zn)=7:4よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、元素Mと亜鉛の合計の原子数に対するインジウム原子数の比In/(M+Zn)が、7/4以上であることが好ましい。インジウム含有率が高い金属酸化物はキャリア移動度(電子移動度)が高く、インジウム含有率の高い金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタは、電界効果移動度が高く、大きな電流を流すことができる。したがって、前述の範囲の原子数比を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0071】
金属酸化物の組成は、範囲11に示すように、線L6であるIn:M=7:2を満たす、またはIn:M=7:2よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、元素Mの原子数に対するインジウム原子数の比In/Mが、7/2以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより欠陥準位の生成を抑制でき、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0072】
金属酸化物の組成は、範囲11に示すように、線L7であるIn:Zn=2:3を満たす、またはIn:Zn=2:3よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、亜鉛原子数に対するインジウム原子数の比In/Znが、2/3以上であることが好ましい。亜鉛含有率が高いと、金属酸化物が多結晶になる場合がある。多結晶が有する結晶粒界は欠陥準位となり、キャリアトラップやキャリア発生源となることから、多結晶の金属酸化物を用いたトランジスタは電気特性の変動が大きく、信頼性が低くなってしまう場合がある。したがって、前述の範囲の原子数比とすることで金属酸化物が多結晶になることを抑制できる。また、当該金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高いトランジスタとすることができる。
【0073】
金属酸化物として、範囲11に含まれる組成を有するIn-M-Zn酸化物を用いることができる。In-M-Zn酸化物として、例えば、In:M:Zn=5:1:1、In:M:Zn=5:1:2、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:4、In:M:Zn=5:1:5、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=10:1:1、In:M:Zn=10:1:2、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=10:1:4、In:M:Zn=10:1:5、In:M:Zn=10:1:6、In:M:Zn=10:1:7、In:M:Zn=10:1:8、In:M:Zn=10:1:10、In:M:Zn=10:1:12、In:M:Zn=10:1:15、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。また、金属酸化物として、酸化インジウムを用いることができる。また、金属酸化物として、In-M酸化物を用いることができる。In-M酸化物として、例えば、In:M=2:1、In:M=7:2、In:M=5:1、In:M=7:1、In:M=10:1、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。また、金属酸化物として、In-Zn酸化物を用いることができる。In-Zn酸化物として、例えば、In:Zn=2:3、In:Zn=3:2、In:Zn=7:2、In:Zn=4:1、In:Zn=11:2、In:Zn=7:1、In:Zn=14:1、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。
【0074】
金属酸化物の組成の分析手法として、例えば、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectroscopy)などを用いることができる。なお、含有率が低い元素は、分析精度の影響により、実際の含有率と分析によって得られた含有率が異なる場合がある。例えば、元素Mの含有率が低い場合、分析によって得られた元素Mの含有率が、実際の含有率より低くなる場合がある。
【0075】
なお、金属酸化物をスパッタリング法で形成する場合、ターゲットの原子数比と、当該金属酸化物の原子数比が異なる場合がある。特に、亜鉛は、ターゲットの原子数比よりも金属酸化物の原子数比が小さくなる場合がある。具体的には、ターゲットに含まれる亜鉛の原子数比の40%以上90%以下程度となる場合がある。ここで、用いるターゲットは多結晶であることが好ましい。
【0076】
〔金属酸化物の組成2〕
金属酸化物は、元素Mまたは亜鉛のいずれか一以上と、インジウムと、酸素とを有することが好ましい。トランジスタのチャネル形成領域に好適に用いることができる金属酸化物の組成を、図1Bに示す。金属酸化物のインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比は、図1Bに示す三角図において、範囲13に含まれることが好ましい。範囲13は、座標点G(7:1:0)と、座標点B(2:1:0)と、座標点C(14:7:1)と、座標点D(7:2:2)と、座標点E(14:4:21)と、座標点F(2:0:3)と、座標点H(7:0:1)と、前記座標点Gと、をこの順に直線で結ぶ多角形の内部である。なお、範囲13には、各座標点及び各辺も含む。範囲13に含まれる組成を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0077】
ここで、座標点G(7:1:0)は、(In+M):Zn=1:0を満たす点の集合である線L1と、In:(M+Zn)=7:1を満たす点の集合である線L9の交点である。座標点H(7:0:1)は、前述の線L9と、(In+Zn):M=1:0を満たす点の集合である線L8の交点である。座標点B乃至座標点Fについては、前述の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0078】
辺GBは前述の線L1上にあり、辺BCは前述の線L2上にあり、辺CDは前述の線L3上にあり、辺DEは前述の線L6上にあり、辺EFは前述の線L7上にあり、辺FHは前述の線L8上にあり、辺HGは前述の線L9上にある。つまり、範囲13は、線L1、線L2、線L3、線L6、線L7、線L8及び線L9に囲われた多角形の内部であるともいえる。
【0079】
金属酸化物の組成は、範囲13に示すように、線L9であるIn:(M+Zn)=7:1を満たす、またはIn:(M+Zn)=7:1よりIn含有率が低いことが好ましい。つまり、元素Mと亜鉛の合計の原子数に対するインジウム原子数の比In/(M+Zn)が、7以下であることが好ましい。インジウム含有率が高いと、金属酸化物がビックスバイト型の結晶構造となる場合がある。または、金属酸化物がビックスバイト型の結晶構造と層状の結晶構造が共存する結晶構造となる場合がある。複数の結晶構造が共存する場合、異なる結晶構造の間において結晶粒界が形成される場合がある。結晶粒界は欠陥準位となり、キャリアトラップやキャリア発生源となることから、結晶粒界を有する金属酸化物を用いたトランジスタは電気特性の変動が大きく、信頼性が低くなってしまう場合がある。したがって、前述の範囲の原子数比とすることで金属酸化物がビックスバイト型の結晶構造を有することが抑制され、層状の結晶構造を有しやすくなる。また、当該金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高いトランジスタとすることができる。
【0080】
金属酸化物の組成は、範囲13に示すように、線L2であるIn:M=2:1を満たす、またはIn:M=2:1よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、元素Mの原子数に対するインジウム原子数の比In/Mが、2以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより欠陥準位の生成を抑制でき、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0081】
金属酸化物の組成は、範囲13に示すように、線L3であるIn:(M+Zn)=7:4を満たす、またはIn:(M+Zn)=7:4よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、元素Mと亜鉛の合計の原子数に対するインジウム原子数の比In/(M+Zn)が、7/4以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0082】
金属酸化物の組成は、範囲13に示すように、線L6であるIn:M=7:2を満たす、またはIn:M=7:2よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、元素Mの原子数に対するインジウム原子数の比In/Mが、7/2以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより欠陥準位の生成を抑制でき、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0083】
金属酸化物の組成は、範囲13に示すように、線L7であるIn:Zn=2:3を満たす、またはIn:Zn=2:3よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、亜鉛原子数に対するインジウム原子数の比In/Znが、2/3以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比とすることで金属酸化物が多結晶になることを抑制できる。また、当該金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高いトランジスタとすることができる。
【0084】
金属酸化物として、範囲13に含まれる組成を有するIn-M-Zn酸化物を用いることができる。In-M-Zn酸化物として、例えば、In:M:Zn=5:1:1、In:M:Zn=5:1:2、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:4、In:M:Zn=5:1:5、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=10:1:1、In:M:Zn=10:1:2、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=10:1:4、In:M:Zn=10:1:5、In:M:Zn=10:1:6、In:M:Zn=10:1:7、In:M:Zn=10:1:8、In:M:Zn=10:1:10、In:M:Zn=10:1:12、In:M:Zn=10:1:15、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。また、金属酸化物として、In-M酸化物を用いることができる。In-M酸化物として、例えば、In:M=2:1、In:M=7:2、In:M=5:1、In:M=7:1、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。また、金属酸化物として、In-Zn酸化物を用いることができる。In-Zn酸化物として、例えば、In:Zn=2:3、In:Zn=3:2、In:Zn=7:2、In:Zn=4:1、In:Zn=11:2、In:Zn=7:1、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。
【0085】
〔金属酸化物の組成3〕
金属酸化物は、インジウムと、亜鉛と、酸素とを有することが好ましい。金属酸化物は、さらに元素Mを有してもよい。トランジスタのチャネル形成領域に好適に用いることができる金属酸化物の組成を、図2Aに示す。金属酸化物のインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比は、図2Aに示す三角図において、範囲15に含まれることが好ましい。範囲15は、座標点I(44:11:10)と、座標点J(4:1:6)と、座標点F(2:0:3)と、座標点K(11:0:2)と、前記座標点Iと、をこの順に直線で結ぶ多角形の内部である。なお、範囲15には、各座標点及び各辺も含む。範囲15に含まれる組成を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0086】
ここで、座標点I(44:11:10)は、In:M=4:1を満たす点の集合である線L10と、(In+M):Zn=11:2を満たす点の集合である線L11の交点である。座標点J(4:1:6)は、前述の線L7と、前述の線L10の交点である。座標点K(11:0:2)は、前述の線L11と、前述の線L8の交点である。座標点Fについては、前述の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0087】
辺IJは前述の線L10上にあり、辺JFは前述の線L7上にあり、辺FKは前述の線L8上にあり、辺KIは前述の線L11上にある。つまり、範囲15は、線L10、線L7、線L8及び線L11に囲われた多角形の内部であるともいえる。
【0088】
金属酸化物の組成は、範囲15に示すように、線L10であるIn:M=4:1を満たす、またはIn:M=4:1よりIn含有率が高いことが好ましい。つまり、元素Mの原子数に対するインジウム原子数の比In/Mが、4以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより欠陥準位の生成を抑制でき、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0089】
金属酸化物の組成は、範囲15に示すように、線L7であるIn:Zn=2:3を満たす、またはIn:Zn=2:3よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、亜鉛原子数に対するインジウム原子数の比In/Znが、2/3以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比とすることで金属酸化物が多結晶になることを抑制できる。また、当該金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高いトランジスタとすることができる。
【0090】
金属酸化物の組成は、範囲15に示すように、線L11である(In+M):Zn=11:2を満たす、または(In+M):Zn=11:2より亜鉛含有率が高いことが好ましい。つまり、亜鉛原子数に対するインジウムと元素Mの合計の原子数の比(In+M)/Znが、11/2以下であることが好ましい。金属酸化物は亜鉛を有することにより、層状の結晶構造を有する傾向がある。また、亜鉛含有率が高いほど、結晶性の高い金属酸化物となる。
【0091】
金属酸化物として、範囲15に含まれる組成を有するIn-M-Zn酸化物を用いることができる。In-M-Zn酸化物として、例えば、In:M:Zn=5:1:2、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:4、In:M:Zn=5:1:5、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=10:1:2、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=10:1:4、In:M:Zn=10:1:5、In:M:Zn=10:1:6、In:M:Zn=10:1:7、In:M:Zn=10:1:8、In:M:Zn=10:1:10、In:M:Zn=10:1:12、In:M:Zn=10:1:15、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。また、金属酸化物として、In-Zn酸化物を用いることができる。In-Zn酸化物として、例えば、In:Zn=2:3、In:Zn=3:2、In:Zn=7:2、In:Zn=4:1、In:Zn=11:2、In:Zn=7:1、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。
【0092】
金属酸化物は前述の範囲の組成を有し、かつCAAC-OS(c-axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、またはCAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)であることが好ましい。
【0093】
ここで、トランジスタに用いることができる金属酸化物であるCAC-OS、及びCAAC-OSについて説明する。
【0094】
〔金属酸化物の構成〕
CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OS又はCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(又はホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OS又はCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0095】
CAC-OS又はCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0096】
CAC-OS又はCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0097】
CAC-OS又はCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OS又はCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0098】
すなわち、CAC-OS又はCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、又は金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0099】
〔金属酸化物の構造〕
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体として、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)及び非晶質酸化物半導体などがある。
【0100】
酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、上記とは異なる分類となる場合がある。ここで、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、図5Aを用いて説明を行う。図5Aは、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
【0101】
図5Aに示すように、IGZOは、大きく分けてAmorphousと、Crystallineと、Crystalと、に分類される。また、Amorphousの中には、completely amorphousが含まれる。また、Crystallineの中には、CAAC(c-axis aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)が含まれる。なお、Crystallineの分類には、後述するsingle crystal、及びpoly crystalは除かれる。また、Crystalの中には、single crystal、及びpoly crystalが含まれる。
【0102】
なお、図5Aに示す太枠内の構造は、New crystalline phaseに属する構造である。当該構造は、Amorphousと、Crystalとの間の境界領域にある。すなわち、エネルギー的に不安定なAmorphousと、Crystallineとは全く異なる構造と言い換えることができる。
【0103】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)パターンを用いて評価することができる。ここで、石英ガラス、及びCrystallineに分類される結晶構造を有するIGZO(結晶性IGZOともいう。)のXRDスペクトルを図5B、及び図5Cに示す。また、図5Bが石英ガラス、図5Cが結晶性IGZOのXRDスペクトルである。なお、図5Cに示す結晶性IGZOの組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]である。また、図5Cに示す結晶性IGZOの厚さは、500nmである。
【0104】
図5Bの矢印に示すように、石英ガラスは、XRDスペクトルのピークがほぼ左右対称である。一方で、図5Cの矢印に示すように、結晶性IGZOは、XRDスペクトルのピークが左右非対称である。XRDスペクトルのピークが左右非対称であることは、結晶の存在を明示している。別言すると、XRDスペクトルのピークで左右対称でないと、Amorphousであるとは言えない。なお、図5Cには、2θ=31°、またはその近傍に微結晶(nanocrystal)を明記してある。XRDスペクトルのピークにおいて、左右非対称となる由来は当該微結晶に起因すると推定される。
【0105】
具体的には、図5Cに示すように、結晶性IGZOはXRDスペクトルにおいて、2θ=34°またはその近傍にピークを有する。また、微結晶は、2θ=31°またはその近傍にピークを有する。X線回折パターンを用いて酸化物半導体膜を評価する場合、図5Cに示すように、2θ=34°またはその近傍のピークよりも低角度側のスペクトルの幅が広くなる。これは、酸化物半導体膜中に、2θ=31°またはその近傍にピークを有する微結晶が内在することを示唆している。
【0106】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0107】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、及び七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0108】
なお、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー)が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(poly crystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、及びIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0109】
CAAC-OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0110】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0111】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0112】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆又は低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0113】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0114】
〔酸化物半導体を有するトランジスタ〕
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0115】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0116】
トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性と言う。
【0117】
高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0118】
酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0119】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物として、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0120】
〔不純物〕
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0121】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0122】
酸化物半導体にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0123】
酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0124】
酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0125】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0126】
〔金属酸化物の組成4〕
金属酸化物は、インジウムと、亜鉛と、酸素とを有することが好ましい。金属酸化物は、さらに元素Mを有してもよい。トランジスタのチャネル形成領域に好適に用いることができる金属酸化物の組成を、図2Bに示す。金属酸化物のインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比は、図2Bに示す三角図において、範囲17に含まれることが好ましい。範囲17は、座標点I(44:11:10)と、座標点L(4:1:4)と、座標点M(1:0:1)と、座標点K(11:0:2)と、前記座標点Iと、をこの順に直線で結ぶ多角形の内部である。なお、範囲17には、各座標点及び各辺も含む。範囲17に含まれる組成を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0127】
ここで、座標点L(4:1:4)は、前述の線L10と、In:Zn=1:1を満たす点の集合である線L12の交点である。座標点M(1:0:1)は、前述の線L12と、前述の線L8の交点である。座標点I及び座標点Kについては、前述の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0128】
辺ILは前述の線L10上にあり、辺LMは前述の線L12上にあり、辺MKは前述の線L8上にあり、辺KIは前述の線L11上にある。つまり、範囲17は、線L10、線L12、線L8及び線L11に囲われた多角形の内部であるともいえる。
【0129】
金属酸化物の組成は、範囲17に示すように、線L10であるIn:M=4:1を満たす、またはIn:M=4:1よりIn含有率が高いことが好ましい。つまり、元素Mの原子数に対するインジウム原子数の比In/Mが、4以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比を有する金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより欠陥準位の生成を抑制でき、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0130】
金属酸化物の組成は、範囲17に示すように、線L12であるIn:Zn=1:1を満たす、またはIn:Zn=1:1よりインジウム含有率が高いことが好ましい。つまり、亜鉛原子数に対するインジウム原子数の比In/Znが、1以上であることが好ましい。前述の範囲の原子数比とすることで金属酸化物が多結晶になることを抑制できる。金属酸化物が多結晶になりづらいことから、金属酸化物の形成条件のマージンを広げることができる。また、当該金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高いトランジスタとすることができる。
【0131】
金属酸化物の組成は、範囲17に示すように、線L11である(In+M):Zn=11:2を満たす、または(In+M):Zn=11:2より亜鉛含有率が高いことが好ましい。つまり、亜鉛原子数に対するインジウムと元素Mの合計の原子数の比(In+M)/Znが、11/2以下であることが好ましい。前述の範囲の原子数を有する金属酸化物は高い結晶性を有する。また、当該金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高いトランジスタとすることができる。
【0132】
金属酸化物として、範囲17に含まれる組成を有するIn-M-Zn酸化物を用いることができる。In-M-Zn酸化物として、例えば、In:M:Zn=5:1:2、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:4、In:M:Zn=5:1:5、In:M:Zn=10:1:2、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=10:1:4、In:M:Zn=10:1:5、In:M:Zn=10:1:6、In:M:Zn=10:1:7、In:M:Zn=10:1:8、In:M:Zn=10:1:10、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。また、金属酸化物として、In-Zn酸化物を用いることができる。In-Zn酸化物として、例えば、In:Zn=2:3、In:Zn=3:2、In:Zn=7:2、In:Zn=4:1、In:Zn=11:2、In:Zn=7:1、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。
【0133】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0134】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0135】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示した金属酸化物を適用した半導体装置の構成例について、説明する。以下では、トランジスタを例に挙げて説明する。
【0136】
<構成例1>
〔構成例1-1〕
本発明の一態様であるトランジスタ10のチャネル長方向の断面概略図を、図6Aに示す。
【0137】
トランジスタ10は、導電層104と、絶縁層106と、半導体層108と、導電層112aと、導電層112bとを有する。導電層104は、ゲート電極として機能する。絶縁層106の一部は、ゲート絶縁層として機能する。導電層112aは、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能し、導電層112bは他方として機能する。半導体層108の導電層104と重畳する領域はチャネル形成領域として機能する。トランジスタ10は、半導体層108よりも下方にゲート電極を有する、いわゆるボトムゲート型のトランジスタである。
【0138】
導電層112a、導電層112b及び半導体層108を覆って絶縁層114、絶縁層116及び絶縁層118が設けられている。絶縁層114、絶縁層116及び絶縁層118は、それぞれ保護層として機能する。
【0139】
導電層104として、金属または合金を含む導電膜を用いると、電気抵抗が抑制できるため好ましい。特に、導電層104として銅を含む導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電層104に酸化物膜を用いてもよい。
【0140】
絶縁層106として、酸化物膜を用いることが好ましい。特に半導体層108と接する部分には、酸化物膜を用いることが好ましい。
【0141】
絶縁層106は、絶縁耐圧が高いことが好ましい。絶縁層106の絶縁耐圧が高いことにより、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0142】
絶縁層106は、応力が小さいことが好ましい。絶縁層106の応力が小さいことにより、基板の反りなどの応力に起因する工程中の問題の発生を抑制できる。
【0143】
絶縁層106は、水、水素、ナトリウムなどの不純物が、絶縁層106の被形成面側の部材(例えば基板など)からトランジスタ10に拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。また、絶縁層106は、導電層104の成分がトランジスタ10に拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。絶縁層106が不純物などの拡散を抑制するバリア膜として機能することにより、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0144】
さらに、絶縁層106は、自身からの水、水素などの不純物の放出が少ないことが好ましい。絶縁層106からの不純物の放出が少ないことにより、不純物がトランジスタ10側に拡散することが抑制され、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0145】
さらに、絶縁層106は、酸素が拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。絶縁層106が酸素の拡散を抑制する機能を有することにより、酸素が絶縁層106より上側から導電層104へ拡散することが抑制され、導電層104が酸化されることを抑制できる。その結果、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0146】
図6Aは、絶縁層106が、絶縁層106aと絶縁層106a上の絶縁層106bとの積層構造である構成を示している。例えば、絶縁層106の被形成面側に位置する絶縁層106aに窒化物膜を用い、半導体層108と接する絶縁層106bに酸化物膜を用いることができる。
【0147】
絶縁層106aは、絶縁耐圧が高いことが好ましい。絶縁層106の絶縁耐圧が高いことにより、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0148】
絶縁層106aは、応力が小さいことが好ましい。絶縁層106の応力が小さいことにより、基板の反りなどの応力に起因する工程中の問題の発生を抑制できる。
【0149】
絶縁層106aは、水、水素、ナトリウムなどの不純物が、絶縁層106の被形成面側の部材(例えば基板など)からトランジスタ10に拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。また、絶縁層106は、導電層104の成分がトランジスタ10に拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。絶縁層106が不純物などの拡散を抑制する機能を有することにより、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0150】
さらに、絶縁層106aは、自身からの水、水素などの不純物の放出が少ないことが好ましい。絶縁層106aからの不純物の放出が少ないことにより、不純物がトランジスタ10側に拡散することが抑制され、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0151】
さらに、絶縁層106aは、酸素が拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。絶縁層106aが酸素の拡散を抑制する機能を有することにより、酸素が絶縁層106aより上側から導電層104へ拡散することが抑制され、導電層104が酸化されることを抑制できる。その結果、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0152】
絶縁層106aとして、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、などの酸化物膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物膜を用いることができる。絶縁層106aとして、特に窒化シリコンを好適に用いることができる。
【0153】
絶縁層106bは、半導体層108のチャネル形成領域と接する領域を有する。絶縁層106bは欠陥密度が低いことが好ましい。さらに、絶縁層106bは、自身からの水、水素などの水素を有する不純物の放出が少ないことが好ましい。絶縁層106bとして、酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどの酸化物膜を好適に用いることができる。
【0154】
図6Aに示すように、絶縁層106を積層構造とすることにより、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0155】
絶縁層106aとして窒化物膜を形成し、その後に絶縁層106aの上部に酸素を添加することで酸素を含む領域を形成し、該酸素を含む領域を絶縁層106bとしてもよい。酸素を添加する処理として、例えば、酸素を含む雰囲気下における加熱処理またはプラズマ処理や、イオンドーピング処理などがある。
【0156】
なお、本明細書等において、酸化窒化物とはその組成として窒素よりも酸素の含有量が多い物質を指し、酸化窒化物は酸化物に含まれる。窒化酸化物とはその組成として酸素より窒素の含有量が多い物質を指し、窒化酸化物は窒化物に含まれる。
【0157】
なお、図6Aは、絶縁層106として絶縁層106a及び絶縁層106bの2層構造を示したが、本発明の一態様はこれに限られない。絶縁層106は単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、絶縁層106a及び絶縁層106bのそれぞれが2層以上の積層構造を有してもよい。
【0158】
半導体層108は、半導体特性を示す金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう)を含んで構成される。半導体層108は、実施の形態1に示す組成を有する金属酸化物を用いることが好ましい。当該金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0159】
半導体層108には、結晶性を有する金属酸化物膜を用いることが好ましい。例えば、後述するCAAC(c-axis aligned crystal)構造、多結晶構造、微結晶(nc)構造等を有する金属酸化物膜を用いることができる。結晶性を有する金属酸化物膜を半導体層108に用いることにより、半導体層108中の欠陥準位密度を低減でき、信頼性の高い半導体装置を実現できる。
【0160】
半導体層108として、結晶性が高いほど、膜中の欠陥準位密度を低減できる。一方、結晶性の低い金属酸化物膜を用いることで、大きな電流を流すことのできるトランジスタを実現することができる。
【0161】
金属酸化物膜をスパッタリング法により形成する場合、形成時の基板温度(ステージ温度)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物膜を形成することができる。また、形成時に用いる成膜ガス全体に対する酸素ガスの流量の割合(酸素流量比ともいう)が高いほど、結晶性の高い金属酸化物膜を形成することができる。
【0162】
半導体層108は、半導体層108aと、半導体層108a上の半導体層108bとの積層構造を有すると好ましい。半導体層108a及び半導体層108bはそれぞれ、金属酸化物を含むことが好ましい。なお、半導体層108aと半導体層108bの境界(界面)を明確に確認できない場合がある。そこで、本発明の一形態を説明する図面では、これらの境界を破線で示している。半導体層108aと半導体層108bとは、それぞれ実施の形態1に示す金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0163】
バックチャネル側に位置する半導体層108bは、導電層104側に位置する半導体層108aよりも結晶性の高い領域を有することが好ましい。半導体層108bが結晶性の高い領域を有することにより、導電層112a及び導電層112bの形成の際に、半導体層108の一部がエッチングされ、消失してしまうことを抑制できる。さらに、半導体層108表面に洗浄処理を行う際に、半導体層108がダメージをうけることを抑制できる。
【0164】
半導体層108aと半導体層108bとは、例えば、形成条件を異ならせることで作り分けることができる。例えば、半導体層108aと半導体層108bとで、成膜ガス中の酸素ガスの流量を異ならせることができる。
【0165】
このとき、半導体層108aの形成条件として、ガス流量全体に占める酸素ガス流量の割合(酸素流量比又は酸素分圧ともいう)は0%以上50%未満が好ましく、さらには5%以上30%以下が好ましく、さらには5%以上20%以下が好ましい。前述の酸素流量比とすることで、半導体層108aの結晶性を低くすることができる。
【0166】
一方、半導体層108bの形成条件として、酸素流量比は50%以上100%以下が好ましく、さらには60%以上100%以下が好ましく、さらには70%以上100%以下が好ましく、さらには80%以上100%以下が好ましい。前述の酸素流量比とすることで、半導体層108bの結晶性を高くすることができる。
【0167】
半導体層108を積層構造とする場合、同じスパッタリングターゲットを用いて同じ処理室で連続して形成することで、界面を良好にすることができるため好ましい。特に、各金属酸化物膜の形成条件として、形成時の圧力、温度、電力等の条件を異ならせてもよいが、酸素流量比以外の条件を同じとすることで、形成工程にかかる時間を短縮できるため好ましい。また、半導体層108として、異なる組成の金属物酸化物膜の積層構造を用いてもよい。異なる組成の金属酸化物膜を積層する場合には、大気に暴露することなく、連続して形成することが好ましい。
【0168】
半導体層108の形成時の基板温度は、室温(25℃)以上200℃以下が好ましく、室温以上130℃以下がより好ましい。基板温度を前述の範囲とすることで、大面積のガラス基板を用いる場合に、基板の撓みまたは歪みを抑制できる。半導体層108を積層構造とする場合、半導体層108aと半導体層108bとで、基板温度を同じ温度とすると、生産性を高めることができる。また、半導体層108aと半導体層108bとで基板温度を異ならせる場合は、半導体層108a形成時の基板温度より半導体層108b形成時の基板温度を高くすることが好ましい。半導体層108b形成時の基板温度を高くすることで、半導体層108aの結晶性より半導体層108bの結晶性を高めることができる。なお、本明細書等において、室温とは基板を加熱しない場合の温度を含む。
【0169】
例えば、半導体層108aにCAC-OS(Cloud-Aligned Composite oxide semiconductor)膜を用い、半導体層108bにCAAC-OS(c-axis-aligned crystalline oxide semiconductor)膜を用いることが好ましい。
【0170】
半導体層108a及び半導体層108bの結晶性は、例えば、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)、電子線回折(ED:Electron Diffraction)等により解析できる。
【0171】
半導体層108aの厚さは、1nm以上50nm以下が好ましく、さらには5nm以上30nm以下が好ましく、さらには5nm以上20nm以下が好ましい。また、半導体層108bの厚さは、1nm以上50nm以下が好ましく、さらには5nm以上30nm以下が好ましく、さらには5nm以上20nm以下が好ましい。
【0172】
ここで、半導体層108中に形成されうる酸素欠損について、説明する。
【0173】
半導体層108が酸化物半導体を含む場合、特に、酸化物半導体に含まれる水素が金属原子と結合する酸素と反応して水になり、酸化物半導体中に酸素欠損(V:Oxygen Vacancy)が形成する場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VHと記す)はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。
【0174】
Hは、酸化物半導体のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、酸化物半導体においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、酸化物半導体のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0175】
以上より、半導体層108に酸化物半導体を用いる場合、半導体層108中のVHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0176】
半導体層108に酸化物半導体を用いる場合、チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域として機能する領域の酸化物半導体のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0177】
絶縁層114及び絶縁層116は、トランジスタ10の保護膜としての機能を有する。また、絶縁層114及び絶縁層116は、半導体層108に酸素を供給する機能を有する。
【0178】
絶縁層114及び絶縁層116から半導体層108、特に半導体層108のバックチャネル側に酸素を供給することで、半導体層108中のV及びVHを低減することができ、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。半導体層108に酸素を供給する処理として、他に、酸素を含む雰囲気での加熱処理、または酸素を含む雰囲気下におけるプラズマ処理などがある。
【0179】
導電層112a及び導電層112bは、金属または合金を含む導電膜を用いると、電気抵抗が抑制できるため好ましい。特に、導電層112a及び導電層112bとして銅を含む導電性材料を用いることが好ましい。なお、導電層112a及び導電層112bに酸化物膜を用いてもよい。
【0180】
図6Aでは、導電層112a及び導電層112bが、それぞれ被形成面側から順に、導電層113a、導電層113b、及び導電層113cが積層された積層構造を有する例を示している。
【0181】
導電層113bは、低抵抗な導電性材料を用いることが好ましい。導電層113a及び導電層113cは、それぞれ独立に導電層113bとは異なる導電性材料を用いることができる。導電層113bを、導電層113aと導電層113cとで挟むことにより、導電層113bの表面が酸化されることや、導電層113bの成分が周辺の層に拡散することを抑制できる。このような構成とすることにより、導電層112a及び導電層112bを極めて低抵抗なものとすることができる。
【0182】
導電層112a及び導電層112bにおいて、最も上部に位置する導電層113cは、銅またはアルミニウム等を含む導電膜よりも酸素と結合しにくい材料、または酸化しても導電性が損なわれにくい材料を含むことが好ましい。また、半導体層108と接する導電層113aには、半導体層108中の酸素が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。最も上部に位置する導電層113c、及び半導体層と接する導電層113aとして、例えば、チタン、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、亜鉛、インジウム、白金、またはルテニウム等を含む導電性材料を用いることができる。導電層113a及び導電層113cは、同じ導電性材料を用いることができる。また、導電層113a及び導電層113cは、異なる導電性材料を用いてもよい。
【0183】
半導体層108上に絶縁層114を形成する前に、洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理を行うことで、半導体層108の表面に吸着した水や水素、有機物成分等を除去することができる。洗浄方法として、洗浄液など用いたウェット洗浄、加熱処理、またはプラズマを用いたプラズマ処理による洗浄などがある。また、前述の洗浄を適宜組み合わせて行ってもよい。
【0184】
加熱処理として、酸化性ガスを含む雰囲気、または減圧雰囲気で行うことが好ましい。酸化性ガスとは、酸化力を有するガスを指す。酸化性ガスとして、例えば、酸素(O)、オゾン(O)、一酸化二窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)などの酸素を含むガスを用いることができる。加熱処理は、例えば、酸素ガスの雰囲気で、70℃以上200℃以下の温度で行うことができる。
【0185】
プラズマ処理として、酸化性ガスを含む雰囲気で行うことが好ましい。酸化性ガスを含む雰囲気でプラズマ処理を行うことで、半導体層108の表面の有機物を好適に除去できる。また、該プラズマ処理の後、半導体層108の表面を大気に暴露することなく、連続して絶縁層114を形成することが好ましい。プラズマ処理に連続して絶縁層114を形成することにより、半導体層108と絶縁層114の界面に不純物が付着することを抑制できる。
【0186】
なお、前述の洗浄処理により導電層112a及び導電層112bが酸化され、抵抗が高くなってしまうことにより、トランジスタの電気特性や信頼性に悪影響を及ぼす場合がある。そこで、洗浄処理として、酸化性ガス及び還元性ガスを含む混合ガスを用いたプラズマ処理を行うと特に好ましい。酸化性ガスとして、前述のガスを用いることができる。還元性ガスは還元力を有するガスを指す。還元性ガスとして、例えば、アンモニア(NH)、水素(H)などの水素を含むガス、または一酸化炭素(CO)を用いることができる。例えば、酸化性ガスである一酸化二窒素、及び還元性ガスであるアンモニアを含む混合ガスの雰囲気でプラズマ処理を行うことにより、導電層112a及び導電層112bが酸化されることを抑制するともに、効果的に半導体層108の表面に吸着した水や水素、有機物成分等を除去できる。
【0187】
プラズマ処理において、酸化性ガスの流量に対する還元性ガスの流量は0.005倍以上1倍以下が好ましく、さらには0.01倍以上0.9倍以下が好ましく、さらには0.02倍以上0.8倍以下が好ましく、さらには0.03倍以上0.6倍以下が好まく、さらには0.03倍以上0.5倍以下が好ましい。
【0188】
プラズマ処理に用いる混合ガスとして、酸化性ガス、還元性ガスに加えて、アルゴンなどの希ガスを含む混合ガスを用いてもよい。
【0189】
半導体層108と接する絶縁層114は、熱が加わることによる窒素酸化物(NO、xは0よりも大きく2以下)の放出が少ないことが好ましい。窒素酸化物は、例えば、NOまたはNOなどがある。
【0190】
窒素酸化物は、絶縁層114などに準位を形成する。当該準位は、半導体層108のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁層114と半導体層108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁層114側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁層114及び半導体層108界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向に変動してしまう。
【0191】
ここで、絶縁層114は、アンモニアの放出が多いことが好ましい。窒素酸化物は、熱が加わることによりアンモニア及び酸素と反応し、分解する。絶縁層114に含まれる窒素酸化物は、熱が加わることにより絶縁層114及び絶縁層116に含まれるアンモニアと反応するため、絶縁層114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁層114と半導体層108の界面において、電子がトラップされにくい。
【0192】
絶縁層114として、アンモニアの放出が多く、かつ窒素酸化物の放出が少ない膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧の変動を抑制でき、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0193】
絶縁層114として、例えば酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの酸化物膜を、プラズマ化学気相堆積装置(PECVD装置、または単にプラズマCVD装置という)を用いて形成することが好ましい。この場合、原料ガスとして、シリコンを含む堆積性ガス、酸化性ガス及びアンモニアガスを含む混合ガスを用いることが好ましい。アンモニアガスを含む混合ガスを用いて絶縁層114を形成することにより、アンモニアの放出が多い絶縁層114とすることができる。シリコンを含む堆積性ガスとして、例えば、シラン、ジシラン、トリシラン、フッ化シランを用いることができる。酸化性ガスとして、前述のガスを用いることができる。
【0194】
混合ガスにおける各々のガスの割合は、プラズマ化学気相堆積装置の処理室に供給するガスの流量を制御することにより制御できる。なお、混合ガスにおける各々のガスの比は、例えば、体積比、分圧比または重量比などで表現することができる。ここで、処理室に供給されるガスの流量比は、ガスの体積比、及び分圧比に概略一致する。
【0195】
前述の絶縁層114の形成前の洗浄処理としてプラズマ処理を行う場合、該プラズマ処理に用いるガスと、絶縁層114の形成に用いるガスで、共通するガスを用いることができる。プラズマ処理において、第1の酸化性ガス、及び還元性ガスを含む混合ガスを用い、絶縁層114の形成において、第2の酸化性ガス、アンモニアガス、及びシリコンを含む第1の堆積性ガス混合ガスを用いる。ここで、第1の酸化性ガスと第2の酸化性ガスに同じ種類のガスを用い、還元性ガスとしてアンモニアガスを用いることで、プラズマ処理及び絶縁層114の形成において、酸化性ガスとアンモニアガスを共通して用いることができる。共通するガスを用いることで、トランジスタの作製に用いるガスの種類を少なくすることができる。
【0196】
プラズマ化学気相堆積装置を用いてプラズマ処理、及び絶縁層114の形成を行う場合を例に挙げて、説明する。ここで絶縁層114は酸化窒化シリコンとする。
【0197】
プラズマ処理において、酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)、及び還元性ガスであるアンモニアを含む混合ガスを用い、絶縁層114の形成において、堆積性ガスであるモノシランと、酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)、及びアンモニアを含む混合ガスを用いることができる。ここで、プラズマ処理及び絶縁層114の形成で、一酸化二窒素(NO)及びアンモニアを共通して用いることができる。つまり、一酸化二窒素(NO)及びアンモニアを用いてプラズマ処理を行い、その後にモノシランガスを流すことにより絶縁層114を形成できる。このように、同じ処理室で連続してプラズマ処理及び絶縁層114の形成を行うことができるため、半導体層108と絶縁層114の界面の不純物を少なくすることができ、良好な界面とすることができる。
【0198】
絶縁層114の形成において、堆積性ガスの流量に対する酸化性ガスの流量は20倍より大きく200倍以下が好ましく、さらには30倍以上150倍以下が好ましく、さらには40倍以上100倍以下が好ましく、さらには40倍以上80倍以下が好ましい。
【0199】
絶縁層114の形成において、アンモニアガスの流量は、酸化性ガスの流量以下であることが好ましい。酸化性ガスの流量に対するアンモニアガスの流量は0.01倍以上1倍以下が好ましく、さらには0.02倍以上0.9倍以下が好ましく、さらには0.03倍以上0.8倍以下が好ましく、さらには0.04倍以上0.6倍以下が好ましく、さらには0.05倍以上0.5倍以下が好ましい。前述のガス流量とすることで、アンモニアの放出が多い絶縁層114とすることができ、絶縁層114からの窒素酸化物の放出が少なくなることで、しきい値電圧の変動が小さいトランジスタとすることができる。また、前述のガス流量とすることで、処理室内の圧力が比較的高い場合においても、欠陥の少ない絶縁層114を形成することができる。なお、絶縁層114の形成時の条件、例えば圧力またはパワーにより、酸化性ガスの流量に対するアンモニアガスの好ましい流量が異なってくる場合がある。
【0200】
絶縁層114の形成時の処理室内の圧力は200Pa以下が好ましく、さらには150Pa以下が好ましく、さらには120Pa以下が好ましく、さらには100Pa以下が好ましい。前述の圧力の範囲とすることで、窒素酸化物の放出が少なく、かつ欠陥量の少ない絶縁層114を形成することができる。
【0201】
なお、アンモニアの放出が多く、かつ窒素酸化物の放出が少ない絶縁層は、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)において、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×1018/cm以上5×1019/cm以下である。なお、アンモニアの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上550℃以下の範囲における放出量とする。
【0202】
絶縁層114は、欠陥密度が低いことが好ましい。絶縁層114に含まれる欠陥密度が高いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁層114における酸素の透過性が減少してしまう。欠陥密度が低い絶縁層114を用いることにより、しきい値電圧の変動が小さく、優れた電気特性を有するトランジスタとすることができる。例えば、絶縁層114としてシリコンを含む絶縁膜を用いる場合、ESR測定において、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が3×1017spins/cm以下であることが好ましい。
【0203】
絶縁層114は半導体層108上に形成されるため、半導体層108へのダメージが少ない条件で形成された膜であることが好ましい。例えば、成膜速度(成膜レートともいう)が十分に遅い条件で形成することができる。例えば、プラズマCVD法により絶縁層114を形成する場合、低電力の条件で形成することにより、半導体層108に与えるダメージを極めて小さくすることができる。
【0204】
絶縁層116は、酸化物膜を用いることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含有する領域を有することがより好ましい。別言すると、絶縁層116は、酸素を放出することが可能な絶縁膜を有する。例えば、酸素雰囲気で絶縁層116を形成すること、形成後の絶縁層116に対して酸素雰囲気で熱処理、またはプラズマ処理を行うこと、または、絶縁層116上に酸素雰囲気で酸化物膜を形成することにより、絶縁層116中に酸素を供給することもできる。なお、絶縁層116として、TDSにおいて酸素分子の放出量が1.0×1019molecules/cm以上、好ましくは3.0×1020molecules/cm以上の領域を有する。また、前述の酸素の放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。
【0205】
絶縁層116は、欠陥密度が低いことが好ましく、代表的には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度が1.5×1018spins/cm未満、さらには1×1018spins/cm以下であることが好ましい。なお、絶縁層116は、絶縁層114と比較して半導体層108から離れているため、絶縁層114より欠陥密度が高くともよい。
【0206】
絶縁層114及び絶縁層116として、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜を一種以上含む絶縁層を用いることができる。
【0207】
絶縁層114及び絶縁層116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁層114と絶縁層116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の形態においては、絶縁層114と絶縁層116の境界(界面)を明確に確認できない場合がある。そこで、本発明の一形態を説明する図面では、これらの境界を破線で示している。なお、本実施の形態においては、絶縁層114と絶縁層116の2層構造について説明したが、本発明の一態様はこれに限られない。例えば、絶縁層114の単層構造、あるいは3層以上の積層構造としてもよい。
【0208】
絶縁層114を形成した後、絶縁層114の表面を大気に暴露することなく、連続して絶縁層116を形成することが好ましい。絶縁層114の形成に連続して絶縁層116を形成することにより、絶縁層114と絶縁層116の界面に不純物が付着することを抑制できる。
【0209】
前述の絶縁層114の形成に用いるガスと、絶縁層116の形成に用いるガスで、共通するガスを用いることができる。
【0210】
絶縁層114の形成において、第2の酸化性ガス、アンモニアガス、及びシリコンを含む第1の堆積性ガスを含む混合ガスを用い、絶縁層116の形成において、第3の酸化性ガス、及びシリコンを含む第2の堆積性ガスを含む混合ガスを用いる。ここで、第2の酸化性ガスと第3の酸化性ガスに同じ種類のガスを用い、シリコンを含む第1の堆積性ガスとシリコンを含む第2の堆積性ガスに同じ種類のガスを用いることで、絶縁層114の形成及び絶縁層116の形成において、酸化性ガスとシリコンを含む堆積性ガスを共通して用いることができる。共通するガスを用いることで、トランジスタの作製に用いるガスの種類を少なくすることができる。
【0211】
プラズマ化学気相堆積装置を用いて絶縁層114及び絶縁層116の形成を行う場合を例に挙げて、説明する。
【0212】
ここで絶縁層114及び絶縁層116ともに酸化窒化シリコンとする。絶縁層114の形成において、堆積性ガスであるモノシラン、酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)、及びアンモニアを含む混合ガスを用い、絶縁層116の形成において、堆積性ガスであるモノシラン、及び酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)を含む混合ガスを用いることができる。ここで、絶縁層114及び絶縁層116の形成で、モノシラン及び一酸化二窒素(NO)を共通して用いることができる。つまり、モノシラン、一酸化二窒素(NO)及びアンモニアを用いて絶縁層114を形成し、その後にアンモニアガスの供給を停止することにより絶縁層116を形成できる。このように、同じ処理室で連続して絶縁層114及び絶縁層116の形成を行うことができるため、絶縁層114と絶縁層116の界面の不純物を少なくすることができ、良好な界面とすることができる。
【0213】
さらに、前述の絶縁層114の形成前の洗浄処理としてプラズマ処理を行う場合、該プラズマ処理に用いるガスと、絶縁層114の形成に用いるガスと、絶縁層116の形成に用いるガスとで、共通するガスを用いると好ましい。共通するガスを用いることで、トランジスタの作製に用いるガスの種類を少なくすることができる。
【0214】
プラズマ化学気相堆積装置を用いてプラズマ処理、絶縁層114の形成、及び絶縁層116の形成を行う場合を例に挙げて、説明する。ここで絶縁層114及び絶縁層116は酸化窒化シリコンとする。
【0215】
プラズマ処理において、酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)、及び還元性ガスであるアンモニアを含む混合ガスを用いる。さらに、絶縁層114の形成において、堆積性ガスであるモノシラン、酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)、及びアンモニアを含む混合ガスを用いる。さらに、絶縁層116の形成において、堆積性ガスであるモノシラン、及び酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)を含む混合ガスを用いる。ここで、プラズマ処理、絶縁層114の形成及び絶縁層116の形成において、酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)を共通して用いることができる。また、プラズマ処理及び絶縁層114の形成で、アンモニアを共通して用いることができる。さらに、絶縁層114の形成及び絶縁層116の形成において、堆積性ガスであるモノシランを共通して用いることができる。つまり、一酸化二窒素(NO)及びアンモニアを用いてプラズマ処理を行い、その後にモノシランガスを流すことにより絶縁層114を形成できる。続いて、アンモニアガスの供給を停止することにより絶縁層116を形成できる。このように、同じ処理室で連続してプラズマ処理、絶縁層114の形成及び絶縁層116の形成を行うことができるため、半導体層108と絶縁層114の界面、絶縁層114と絶縁層116の界面それぞれで不純物を少なくすることができ、良好な界面とすることができる。
【0216】
絶縁層116を形成した後、絶縁層116の表面に対してプラズマ処理を行ってもよい。当該プラズマ処理により、絶縁層116の表面に吸着する水などの不純物を低減することができる。絶縁層116の表面に水などの不純物が吸着した場合、該不純物が半導体層108に達し、半導体層108中にV、VHなどが形成されてしまう場合がある。絶縁層116の表面に対してプラズマ処理を行い、絶縁層116の表面に水などの不純物が吸着することを抑制することにより、信頼性の高いトランジスタとすることができる。特に、絶縁層116の形成から、絶縁層118の形成までの間に絶縁層116の表面が大気に曝される場合には好適である。プラズマ処理として、例えば酸素、オゾン、窒素、一酸化二窒素、アルゴンなどの雰囲気で行うことができる。特に、窒素を好適に用いることができる。また、絶縁層116の形成とプラズマ処理とは、大気に曝すことなく連続して行われることが好ましい。
【0217】
絶縁層118は、トランジスタ10の保護膜としての機能を有する。絶縁層118は、水、水素などの不純物が、トランジスタ10の外部からトランジスタ10に拡散することを抑制する。すなわち、トランジスタ10の信頼性及び耐湿性を向上させることができ、信頼性を高めた半導体装置とすることができる。
【0218】
絶縁層118は、水、水素などの不純物が、トランジスタ10の外部からトランジスタ10に拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。また、絶縁層118は、自身からの水、水素などの水素を有する不純物の放出が少ないことが好ましい。さらに、絶縁層118は、酸素が拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。絶縁層118として、例えば、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、などの酸化物膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物膜を用いることができる。絶縁層118として、特に窒化シリコンを好適に用いることができる。
【0219】
ここで、絶縁層116が露出した状態で熱が加わると、絶縁層114及び絶縁層116が有する酸素が外方へ脱離してしまう場合がある。絶縁層114及び絶縁層116が有する酸素が外方へ脱離すると、絶縁層114及び絶縁層116が有する酸素量が減少し、半導体層108に供給される酸素量が減少してしまう場合がある。したがって、少なくとも絶縁層118を形成し始める際の温度は、絶縁層114及び絶縁層116が有する酸素が外方へ脱離しない温度であることが好ましい。絶縁層118が酸素の拡散を抑制する機能を有し、さらに、絶縁層114及び絶縁層116が有する酸素が外方へ脱離しない温度で絶縁層118を形成することで、半導体層108に酸素を供給でき、半導体層108中の酸素欠損を効率良く補填することができる。
【0220】
水、水素などの不純物が拡散することを抑制する機能、及び酸素が拡散することを抑制する機能を有する絶縁層118は、緻密な膜であることが好ましい。例えば、絶縁層118の形成時の基板温度を高くすることで、緻密な膜とすることができる。
【0221】
絶縁層118形成の際の基板温度は、180℃以上℃400℃以下が好ましく、さらには200℃以上℃380℃以下が好ましく、さらには220℃以上℃360℃以下が好ましく、さらには240℃以上℃350℃以下が好ましい。前述の基板温度とすることで、絶縁層114及び絶縁層116が有する酸素が外方へ脱離することを抑制でき、かつ絶縁層118を緻密な膜とすることができる。
【0222】
このような構成とすることで、電気特性が良好で、且つ極めて信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0223】
以上が構成例1-1についての説明である。
【0224】
以下では、前述の構成例1-1と一部の構成が異なるトランジスタの構成例について説明する。なお、以下では、前述の構成例1-1と重複する部分は説明を省略する場合がある。また、以下で示す図面において、前述の構成例1-1と同様の機能を有する部分についてはハッチングパターンを同じくし、符号を付さない場合もある。
【0225】
〔構成例1-2〕
本発明の一態様であるトランジスタ10Aのチャネル長方向の断面概略図を、図6Bに示す。トランジスタ10Aは、絶縁層106aの構成が異なる点で、前述のトランジスタ10と主に異なる。トランジスタ10Aにおいて、絶縁層106aは、絶縁層106a1と、絶縁層106a1上の絶縁層106a2と、絶縁層106a2上の絶縁層106a3との積層構造を有する。
【0226】
図6Bには、絶縁層106は、導電層104側から、絶縁層106a1、絶縁層106a2、絶縁層106a3、及び絶縁層106bがこの順に積層された構造を有する例を示している。絶縁層106a1は導電層104と接する。また、絶縁層106bは半導体層108と接する。
【0227】
絶縁層106aは、水、水素、ナトリウムなどの不純物の拡散を抑制すること、導電層104の成分の拡散を抑制すること、応力が小さいこと、絶縁耐圧が高いこと、水、水素などの不純物の放出が少ないこと、のうち1つ以上を満たすことが好ましく、これら全てを満たすことが最も好ましい。
【0228】
導電層104側に位置する絶縁層106a1、絶縁層106a2、及び絶縁層106a3として、前述の絶縁層106aに用いることのできる絶縁膜を用いることができる。絶縁層106が有する4つの絶縁膜は、それぞれプラズマCVD装置を用いて、大気に触れることなく連続して形成することが好ましい。
【0229】
絶縁層106a1は、水、水素、ナトリウムなどの不純物が、絶縁層106a1の被形成面側の部材(例えば基板など)からトランジスタ10に拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。また、絶縁層106a1は、導電層104の成分がトランジスタ10に拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。絶縁層106a2は応力が小さく、かつ絶縁耐圧が高いことが好ましい。絶縁層106a3は、自身からの水、水素などの不純物の放出が少ないことが好ましい。また、絶縁層106a3は、絶縁層106a2より下側からの水、水素などの不純物が、トランジスタ10に拡散することを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。
【0230】
絶縁層106a1及び絶縁層106a3は、これよりも下側からの不純物の拡散を防止できる、緻密な膜であることが好ましい。絶縁層106a1及び絶縁層106a3には、絶縁層106a2よりも成膜速度の遅い条件で形成した絶縁膜を適用することができる。一方、絶縁層106a2は、応力が小さく、成膜速度の速い条件で形成された絶縁膜を用いることが好ましい。また、絶縁層106a2は、絶縁層106a1及び絶縁層106a3よりも膜厚が厚いことが好ましい。
【0231】
絶縁層106a1、絶縁層106a2、及び絶縁層106a3のそれぞれに同じ膜種、例えばプラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜を用いた場合であっても、絶縁層106a2が、絶縁層106a1及び絶縁層106a3よりも膜密度が低い膜となる。したがって、絶縁層106の断面における透過型電子顕微鏡(TEM)像などにおいて、コントラストの違いとして観察することができる場合がある。なお、絶縁層106a1と絶縁層106a2の境界、及び絶縁層106a2と絶縁層106a3の境界(界面)を明確に確認できない場合がある。そこで、本発明の一形態を説明する図面では、これらの境界を破線で示している。
【0232】
このような構成とすることで、電気特性が良好で、且つ極めて信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0233】
〔構成例1-3〕
本発明の一態様であるトランジスタ10Bのチャネル長方向の断面概略図を、図7Aに示す。トランジスタ10Bは、絶縁層118上に導電層120を有する点で、前述のトランジスタ10と主に異なる。
【0234】
半導体層108は、導電層104及び導電層120の間に位置し、導電層104、半導体層108及び導電層120は互いに重なる領域を有する。トランジスタ10Bは、半導体層108の上下に、ゲート電極として機能する導電層104、及びバックゲート電極として機能する導電層120を有するデュアルゲート型のトランジスタである。また、トランジスタ10Bにおいて、絶縁層106の一部は第1のゲート絶縁層として機能し、絶縁層114、絶縁層116及び絶縁層118の一部は第2のゲート絶縁層として機能する。
【0235】
例えば、トランジスタ10Bは、導電層104及び導電層120に同じ電位を与えることにより、オン状態のときに流すことのできる電流を大きくすることができる。また、トランジスタ10Bは、導電層104及び導電層120の一方に、しきい値電圧を制御するための電位を与え、他方にトランジスタ10Bのオン状態及びオフ状態を制御する電位を与えることもできる。
【0236】
このような構成とすることで、電気特性が良好で、且つ極めて信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0237】
〔構成例1-4〕
本発明の一態様であるトランジスタ10Cのチャネル長方向の断面概略図を、図7Bに示す。トランジスタ10Cは、絶縁層106の構成が異なる点、及び導電層120を有する点で、前述のトランジスタ10と主に異なる。トランジスタ10Cは、前述の構成例1-2で例示したトランジスタ10Aに、前述の構成例1-3で例示したトランジスタ10Bで例示した導電層120を適用した場合の例である。
【0238】
このような構成とすることで、電気特性が良好で、且つ極めて信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0239】
<構成例2>
以下では、より具体的なトランジスタの構成例について説明する。
【0240】
〔構成例2-1〕
図8Aは、トランジスタ100の上面図であり、図8Bは、図8Aに示す一点鎖線A1-A2における切断面の断面図に相当し、図8Cは、図8Aに示す一点鎖線B1-B2における切断面の断面図に相当する。一点鎖線A1-A2方向はチャネル長方向、一点鎖線B1-B2方向はチャネル幅方向に相当する。なお、図8Aにおいて、トランジスタ100の構成要素の一部(ゲート絶縁層等)を省略して図示している。また、トランジスタの上面図については、以降の図面においても図8Aと同様に、構成要素の一部を省略して図示する。また、図9Aに、図8B中の一点鎖線で囲った領域Pを拡大した断面図を示している。
【0241】
トランジスタ100は基板102上に設けられ、導電層104、絶縁層106、半導体層108、導電層112a、及び導電層112b等を有する。絶縁層106は導電層104を覆って設けられている。半導体層108は島状の形状を有し、絶縁層106上に設けられている。導電層112a及び導電層112bは、それぞれ半導体層108の上面に接し、且つ、半導体層108上で離間して設けられている。また、絶縁層106、導電層112a、導電層112b、及び半導体層108を覆って絶縁層114が設けられ、絶縁層114上に絶縁層116が設けられている。
【0242】
導電層104は、ゲート電極として機能する。絶縁層106の一部は、ゲート絶縁層として機能する。導電層112aは、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能し、導電層112bは他方として機能する。半導体層108の導電層104と重畳する領域はチャネル形成領域として機能する。トランジスタ100は、半導体層108よりも被形成面側にゲート電極が設けられた、いわゆるボトムゲート型のトランジスタである。ここで、半導体層108の導電層104側とは反対側の面をバックチャネル側の面と呼ぶことがある。トランジスタ100は、半導体層108のバックチャネル側と、ソース電極及びドレイン電極との間に保護層を有さない、いわゆるチャネルエッチ構造のトランジスタである。
【0243】
半導体層108は、被形成面側(基板102側)から順に半導体層108aと、半導体層108bとが積層された積層構造を有する。半導体層108a及び半導体層108bはそれぞれ、金属酸化物を含むことが好ましい。また、バックチャネル側に位置する半導体層108bは、導電層104側に位置する半導体層108aよりも結晶性の高い膜であることが好ましい。これにより、導電層112a及び導電層112bの加工時に、半導体層108の一部がエッチングされ、消失してしまうことを抑制できる。
【0244】
例えば半導体層108は、半導体層108は、実施の形態1に示す組成を有する金属酸化物を用いることが好ましい。当該金属酸化物をチャネル形成領域に用いることにより、信頼性が高く、かつ電界効果移動度が高いトランジスタとすることができる。
【0245】
半導体層108a及び半導体層108bは、それぞれ実施の形態1に示す金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0246】
半導体層108a及び半導体層108bを、組成が同じ、または概略同じとしてもよい。半導体層108a及び半導体層108bの組成を同じ、または概略同じとすることで、同じスパッタリングターゲットを用いて半導体層108a及び半導体層108bを形成できるため、製造コストを削減できる。
【0247】
半導体層108a及び半導体層108bは、互いに組成の異なる層、結晶性の異なる層、または不純物濃度の異なる層を用いてもよい。また、3層以上の積層構造としてもよい。
【0248】
導電層112a及び導電層112bは、それぞれ被形成面側から順に、導電層113a、導電層113b、及び導電層113cが積層された積層構造を有する。
【0249】
導電層113bは、銅、銀、金、またはアルミニウム等を含む、低抵抗な導電性材料を用いることが好ましい。特に、導電層113bが銅またはアルミニウムを含むことが好ましい。導電層113bは、導電層113a及び導電層113cよりも低抵抗な導電性材料を用いることが好ましい。これにより、導電層112a及び導電層112bを極めて低抵抗なものとすることができる。
【0250】
導電層113a及び導電層113cは、それぞれ独立に、導電層113bとは異なる導電性材料を用いることができる。例えば、導電層113a及び導電層113cは、それぞれ独立に、チタン、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、亜鉛、インジウム、白金、またはルテニウム等を含む導電性材料を用いることが好ましい。
【0251】
このように、銅やアルミニウム等を含む導電層113bを、導電層113aと導電層113cとで挟むことにより、導電層113bの表面が酸化されることや、導電層113bの元素が周辺の層に拡散することを抑制できる。特に半導体層108と導電層113bとの間に導電層113aを設けることで、導電層113bに含まれる金属元素が半導体層108中に拡散することを防ぐことができ、信頼性の高いトランジスタ100を実現できる。
【0252】
ここで、導電層113bの端部に接して、絶縁層114が設けられている。後述するように、本発明の一態様によれば、導電層113bに酸化しやすい導電性材料を用い、その上に酸化物膜を含む絶縁層114を形成した場合であっても、導電層113bの表面が酸化されることを抑制できる。そのため、導電層113bと絶縁層114の界面には、酸化物を含む異層などは観測されないことが、本発明の一態様の特徴の一つである。
【0253】
なお、導電層112a及び導電層112bの構成は3層構造に限られず、銅、銀、金、またはアルミニウムを含む導電層を含む2層構造、または4層構造としてもよい。例えば、導電層112a及び導電層112bとして、導電層113aと導電層113bとを積層した2層構造としてもよいし、導電層113bと導電層113cとを積層した2層構造としてもよい。
【0254】
導電層112a及び導電層112bの形成の際、半導体層108の表面がダメージを受ける場合がある。ダメージを受けた半導体層108にVが形成され、さらに半導体層108中の水素がVに入りVHが形成されてしまう場合があることから、ダメージを受けた層を除去することが好ましい。ダメージを受けた層を除去することにより、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。ダメージを受けた層を除去した構成の例を、図9Bに示す。図9Bは、図8B中の一点鎖線で囲った領域Pを拡大した断面図である。図9Bでは、半導体層108bは、導電層112a及び導電層112bのいずれとも重ならない領域の膜厚が、導電層112a及び導電層112bのいずれかと重なる領域の膜厚より薄い例を示している。
【0255】
図9A及び図9Bには、導電層113a、導電層113b及び導電層113cの端部のいずれも一致、または概略一致する例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。導電層113a、導電層113b及び導電層113cの端部のいずれかが一致しない、または概略一致しなくてもよい。
【0256】
図9Cに示すように、導電層113b及び導電層113cの端部は、導電層113aの端部より内側に位置することが好ましい。さらに、導電層113cの端部は、導電層113bの端部と一致、概略一致することが好ましい。このような構成とすることにより、導電層113a、導電層113b、導電層113c及び半導体層108上に形成される層(例えば、絶縁層114)の段差被覆性が向上し、該層に段切れや鬆といった不具合が発生することを抑制できる。
【0257】
導電層113bの端部が導電層113aより内側に位置し、かつ導電層113cの端部が導電層113bの端部と一致する例を、図9Cに示す。図9Cは、図8B中の一点鎖線で囲った領域Pを拡大した断面図である。図9Cに示す構成とすることにより、導電層112a及び導電層112bの段差が小さくなり、導電層112a、導電層112b及び半導体層108a上に形成される層(例えば、絶縁層118)の段差被覆性が向上し、該層に段切れや鬆といった不具合が発生することを抑制できる。
【0258】
なお、図9Cでは、導電層113b及び導電層113cの端部が一致、または概略一致する例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。導電層113b及び導電層113cの端部が一致しない、または概略一致しなくてもよい。なお、導電層113bの端部が、導電層113cの端部より内側に位置する場合、導電層112a、導電層112b及び半導体層108a上に形成される層(例えば、絶縁層118)の段差被覆性が悪くなり、該層に段切れや鬆といった不具合が発生する場合がある。したがって、導電層113cの端部が導電層113bの端部より内側に位置すると好ましい。
【0259】
導電層104は、導電層113a、導電層113bに用いることのできる上述の導電性材料を適宜用いることができる。特に、銅を含む導電性材料を用いることが好ましい。
【0260】
半導体層108と接する絶縁層106及び絶縁層114には、酸化物を含む絶縁性材料を用いることが好ましい。また、絶縁層106や絶縁層114を積層構造とする場合には、半導体層108と接する層に、酸化物を含む絶縁性材料を用いる。
【0261】
絶縁層106には窒化シリコンや窒化アルミニウムなどの窒化物膜を用いてもよい。酸化物を含まない絶縁性材料を用いる場合には、絶縁層106の上部に酸素を添加する処理を施し、酸素を含む領域を形成することが好ましい。酸素を添加する処理として、例えば酸素を含む雰囲気下における加熱処理またはプラズマ処理や、イオンドーピング処理などがある。
【0262】
絶縁層116は、トランジスタ100を保護する保護層として機能する。絶縁層116は、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることができる。特に、絶縁層116として、窒化シリコンや酸化アルミニウムなどの酸素を拡散しにくい材料を用いることで、作製工程中に加わる熱などにより半導体層108や絶縁層114から絶縁層116を介して外部に酸素が脱離してしまうことを防ぐことができるため好ましい。
【0263】
絶縁層116として平坦化膜として機能する有機絶縁性材料を用いてもよい。または、絶縁層116として無機絶縁材料を含む膜と、有機絶縁材料を含む膜の積層膜を用いてもよい。
【0264】
半導体層108は、導電層112a及び導電層112bと接する部分及びその近傍に位置し、ソース領域及びドレイン領域として機能する一対の低抵抗領域が形成されていてもよい。当該領域は、半導体層108の一部であり、チャネル形成領域よりも低抵抗な領域である。また低抵抗領域は、キャリア濃度が高い領域、またはn型である領域などと言い換えることができる。また半導体層108において、一対の低抵抗領域に挟まれ、且つ、導電層104と重なる領域が、チャネル形成領域として機能する。
【0265】
以上が構成例2-1についての説明である。
【0266】
〔構成例2-2〕
以下では、前述の構成例2-1と一部の構成が異なるトランジスタの構成例について説明する。なお、以下では、前述の構成例2-1と重複する部分は説明を省略する場合がある。また、以下で示す図面において、前述の構成例2-1と同様の機能を有する部分についてはハッチングパターンを同じくし、符号を付さない場合もある。
【0267】
図10Aは、トランジスタ100Aの上面図であり、図10Bは、トランジスタ100Bのチャネル長方向の断面図であり、図10Cは、チャネル幅方向の断面図である。
【0268】
トランジスタ100Aは、絶縁層116上に導電層120a及び導電層120bを有する点で、構成例2-1に示すトランジスタ100と主に相違している。
【0269】
導電層120aは、絶縁層116及び絶縁層114を介して半導体層108と重畳する領域を有する。
【0270】
トランジスタ100Aにおいて、導電層104は、第1のゲート電極(ボトムゲート電極ともいう)としての機能を有し、導電層120aは、第2のゲート電極(トップゲート電極ともいう)としての機能を有する。また、絶縁層116及び絶縁層114の一部は、第2のゲート絶縁層として機能する。
【0271】
図10Cに示すように、導電層120aは、絶縁層116、絶縁層114、及び絶縁層106に設けられた開口部142bを介して、導電層104と電気的に接続されていてもよい。これにより、導電層120aと導電層104には同じ電位を与えることができ、オン電流の高いトランジスタを実現できる。
【0272】
図10A、及び図10Cに示すように、チャネル幅方向において、導電層104及び導電層120aが、半導体層108の端部より外側に突出していることが好ましい。このとき、図10Cに示すように、半導体層108のチャネル幅方向の全体が、導電層104及び導電層120aに覆われた構成となる。
【0273】
このような構成とすることで、半導体層108を一対のゲート電極によって生じる電界で、電気的に取り囲むことができる。このとき特に、導電層104と導電層120aに同じ電位を与えることが好ましい。これにより、半導体層108にチャネルを誘起させるための電界を効果的に印加できるため、トランジスタ100Aのオン電流を増大させることができる。そのため、トランジスタ100Aを微細化することもできる。
【0274】
なお、導電層104と導電層120aとを接続しない構成としてもよい。このとき、一対のゲート電極の一方には定電位を与え、他方にトランジスタ100Aを駆動するための信号を与えてもよい。このとき、一方の電極に与える電位により、トランジスタ100Aを他方の電極で駆動する際のしきい値電圧を制御することができる。
【0275】
導電層120bは、絶縁層116及び絶縁層114に設けられた開口部142aを介して、導電層112bと電気的に接続されている。導電層120bは、配線や電極として用いることができる。例えば表示装置に適用した場合、導電層120bを画素電極、または画素電極と接続するための配線として機能させることができる。
【0276】
以上が構成例2-2についての説明である。
【0277】
〔構成例2-3〕
図11A及び図11Bに示すトランジスタ100Bは、チャネル長方向の断面視において、絶縁層106bの端部が導電層112aの端部、または導電層112bの端部と概略一致する点で、前述の構成例2-2で示したトランジスタ100Aと主に相違している。また、トランジスタ100Bは、チャネル幅方向の断面視において、絶縁層106bの端部が半導体層108の端部と概略一致する。
【0278】
絶縁層106aは、半導体層108、導電層112aまたは導電層112bと重なる領域において、絶縁層106bと接する領域を有する。また、絶縁層106aは、半導体層108、導電層112a及び導電層112bのいずれとも重ならない領域において、絶縁層114と接する領域を有する。
【0279】
絶縁層106aは、導電層112a及び導電層112bの形成の際に、エッチングストッパ-として機能することが好ましい。例えば、絶縁層106bに酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどの酸化物膜を用いた場合は、絶縁層106aに酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、などの酸化物膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物膜を好適に用いることができる。
【0280】
絶縁層106aがエッチングストッパ-として機能することにより、導電層112a及び導電層112bの端部の段差が小さくなり、導電層112a及び導電層112b上に形成される層(例えば、絶縁層114)の段差被覆性が向上し、該層に段切れや鬆といった不具合が発生することを抑制できる。
【0281】
なお、図11A及び図11Bでは、半導体層108、導電層112a及び導電層112bのいずれとも重ならない領域の絶縁層106aの膜厚が、半導体層108、導電層112aまたは導電層112bと重なる領域の絶縁層106aの膜厚と概略等しい例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。半導体層108、導電層112a及び導電層112bのいずれとも重ならない領域の絶縁層106aの膜厚が、半導体層108、導電層112aまたは導電層112bと重なる領域の絶縁層106aの膜厚より薄くてもよい。
【0282】
以上が構成例2-3についての説明である。
【0283】
〔構成例2-4〕
図12A及び図12Bに示すトランジスタ100Cは、チャネル長方向の断面視において、絶縁層106bの端部が半導体層108の端部と概略一致する点で、前述の構成例2-2で示したトランジスタ100Aと主に相違している。また、トランジスタ100Bは、チャネル幅方向の断面視において、絶縁層106bの端部が半導体層108の端部と概略一致する。
【0284】
絶縁層106aは、半導体層108と重なる領域において、絶縁層106bと接する領域を有する。また、絶縁層106aは、半導体層108、導電層112a及び導電層112bのいずれとも重ならない領域において、絶縁層114と接する領域を有する。
【0285】
絶縁層106aは、半導体層108の形成の際に、エッチングストッパ-として機能することが好ましい。絶縁層106aがエッチングストッパ-として機能することにより、半導体層108の端部の段差が小さくなり、半導体層108上に形成される層(例えば、導電層112a及び導電層112b)の段差被覆性が向上し、該層に段切れや鬆といった不具合が発生することを抑制できる。
【0286】
なお、図12A及び図12Bでは、半導体層108と重ならない領域の絶縁層106aの膜厚が、半導体層108と重なる領域の絶縁層106aの膜厚と概略等しい例を示しているが、本発明の一態様はこれに限られない。半導体層108と重ならない領域の絶縁層106aの膜厚が、半導体層108と重なる領域の絶縁層106aの膜厚より薄くてもよい。
【0287】
以上が構成例2-4についての説明である。
【0288】
<作製方法例1>
以下では、本発明の一態様の半導体装置の作製方法について、図面を参照して説明する。ここでは、前述の構成例2-2で示したトランジスタ100Aを例に挙げて説明を行う。
【0289】
なお、半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成することができる。CVD法として、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法や、熱CVD法などがある。また、熱CVD法の一つに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0290】
半導体装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等を用いて形成することができる。
【0291】
半導体装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いて加工することができる。それ以外に、ナノインプリント法、サンドブラスト法、リフトオフ法などにより薄膜を加工してもよい。また、メタルマスクなどの遮蔽マスクを用いた成膜方法により、島状の薄膜を直接形成してもよい。
【0292】
フォトリソグラフィ法として、代表的には以下の2つの方法がある。一つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう一つは、感光性を有する薄膜を形成した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0293】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外光(EUV:Extreme Ultra-violet)やX線を用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0294】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0295】
図13乃至図17に示す各図は、トランジスタ100Aの作製方法を説明する図である。各図において、左側にチャネル長方向の断面を、右側にチャネル幅方向の断面をそれぞれ並べて示している。
【0296】
〔導電層104の形成〕
基板102上に導電膜を形成し、当該導電膜上にリソグラフィ工程によりレジストマスクを形成した後、導電膜をエッチングすることにより、ゲート電極として機能する導電層104を形成する。
【0297】
〔絶縁層106の形成〕
続いて、導電層104及び基板102を覆う絶縁層106を形成する(図13A)。絶縁層106は、例えばPECVD法等により形成することができる。
【0298】
絶縁層106を形成した後に、加熱処理を行ってもよい。加熱処理を行うことで、絶縁層106の表面及び膜中から水や水素を脱離させることができる。
【0299】
加熱処理の温度は、150℃以上基板の歪み点未満が好ましく、さらには250℃以上450℃以下が好ましく、さらには300℃以上450℃以下が好ましい。加熱処理は、希ガス、窒素または酸素の一以上を含む雰囲気で行うことができる。窒素を含む雰囲気、又は酸素を含む雰囲気として、乾燥空気(CDA:Clean Dry Air)を用いてもよい。なお、当該雰囲気に水素、水などの含有量が極力少ないことが好ましい。当該雰囲気として、露点が-60℃以下、好ましくは-100℃以下の高純度ガスを用いることが好ましい。水素、水などの含有量が極力少ない雰囲気を用いることで、絶縁層106に水素、水などが取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。加熱処理は、オーブン、急速加熱(RTA:Rapid Thermal Annealing)装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、加熱処理時間を短縮できる。
【0300】
続いて、絶縁層106に対して酸素を供給する処理を行ってもよい。酸素の供給処理として、絶縁層106に対してイオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理等により、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子イオン等を供給する。また、絶縁層106上に酸素の脱離を抑制する膜を形成した後、該膜を介して絶縁層106に酸素を添加してもよい。該膜は、酸素を添加した後に除去することが好ましい。上述の酸素の脱離を抑制する膜として、インジウム、亜鉛、ガリウム、錫、アルミニウム、クロム、タンタル、チタン、モリブデン、ニッケル、鉄、コバルト、またはタングステンの1以上を有する導電膜あるいは半導体膜を用いることができる。
【0301】
〔半導体層108の形成〕
続いて、絶縁層106上に金属酸化物膜108afと金属酸化物膜108bfを積層して形成する(図13B)。
【0302】
金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfは、それぞれ金属酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により形成することが好ましい。
【0303】
金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfを形成する際に、酸素ガスの他に、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい。なお、金属酸化物膜を形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合(以下、酸素流量比ともいう)は、0%以上100%以下の範囲とすることができる。
【0304】
酸素流量比を低くし、結晶性が比較的低い金属酸化物膜とすることで、導電性の高い金属酸化物膜を得ることができる。一方、酸素流量比を高くし、結晶性が比較的高い金属酸化物膜とすることで、エッチング耐性が高く、電気的に安定した金属酸化物膜を得ることができる。
【0305】
ここでは、ゲート電極として機能する導電層104側に位置する金属酸化物膜108afを結晶性の低い膜とし、バックチャネル側に位置する金属酸化物膜108bfを結晶性の高い膜とすることで、信頼性が高く、且つ電界効果移動度の高いトランジスタを実現できる。
【0306】
例えば、金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfの形成条件は、基板温度を室温以上200℃以下、好ましくは基板温度を室温以上140℃以下とすればよい。金属酸化物膜の形成時の基板温度を、例えば、室温以上140℃未満とすると、生産性が高くなり好ましい。
【0307】
より具体的には、金属酸化物膜108afの形成時の酸素流量は、0%以上50%未満が好ましく、さらには5%以上30%以下が好ましく、さらには5%以上20%以下が好ましく、代表的には10%とする。また、金属酸化物膜108bfの形成時の酸素流量比は、50%以上100%以下が好ましく、さらには60%以上100%以下が好ましく、さらには70%以上100%以下が好ましく、さらには80%以上100%以下が好ましく、代表的には100%とする。
【0308】
金属酸化物膜108afと金属酸化物膜108bfとは、同じまたは概略同じ組成の膜とすることができる。金属酸化物膜108afと金属酸化物膜108bfを、同じスパッタリングターゲットを用いて形成できるため、製造コストを低くできる。また、同じスパッタリングターゲットを用いる場合、同じ成膜装置にて真空中で連続して金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfを形成することができるため、半導体層108aと半導体層108bの界面に不純物が取り込まれることを抑制できる。また、金属酸化物膜108afと金属酸化物膜108bfとで、形成時の圧力、温度、電力等の条件を異ならせてもよいが、酸素流量比以外の条件を同じとすることで、形成工程にかかる時間を短縮することができるため好ましい。
【0309】
なお、金属酸化物膜108afと金属酸化物膜108bfとは、それぞれ異なる組成の膜であってもよい。このとき、金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfの両方に、In-Ga-Zn酸化物を用いた場合、金属酸化物膜108bfに、金属酸化物膜108afよりもInの含有割合の高い酸化物ターゲットを用いることが好ましい。
【0310】
金属酸化物膜108afと金属酸化物膜108bfの形成後、金属酸化物膜108bf上にレジストマスクを形成し、金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfをエッチングにより加工した後、レジストマスクを除去することで、半導体層108aと半導体層108bとが積層された、島状の半導体層108を形成することができる(図13C)。
【0311】
金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfの加工には、ウェットエッチング法及びドライエッチング法の一方または双方を用いればよい。
【0312】
なお、半導体層108の形成の際に、半導体層108と重なる領域の絶縁層106の膜厚より、半導体層108と重ならない領域の絶縁層106の膜厚が薄くなる場合がある。
【0313】
金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfを形成した後、または半導体層108に加工した後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理を行うことにより、金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bf、または半導体層108の表面及び膜中の水素や水を除去できる。また、加熱処理を行うことにより、金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bf、または半導体層108のエッチング速度が遅くなり、後の工程(例えば、導電層112a及び導電層112bの形成)で半導体層108が消失することを抑制できる。
【0314】
加熱処理の温度は、150℃以上基板の歪み点未満が好ましく、さらには250℃以上450℃以下が好ましく、さらには300℃以上450℃以下が好ましい。加熱処理は、希ガスまたは窒素の一以上を含む雰囲気で行うことができる。または、当該雰囲気で加熱した後、さらに酸素を含む雰囲気で加熱してもよい。窒素を含む雰囲気、又は酸素を含む雰囲気として、乾燥空気(CDA:Clean Dry Air)を用いてもよい。なお、当該雰囲気に水素、水などの含有量が極力少ないことが好ましい。当該雰囲気として、露点が-60℃以下、好ましくは-100℃以下の高純度ガスを用いることが好ましい。水素、水などの含有量が極力少ない雰囲気を用いることで、半導体層108に水素、水などが取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。加熱処理は、オーブン、急速加熱(RTA:Rapid Thermal Annealing)装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、加熱処理時間を短縮できる。
【0315】
〔導電層112a、導電層112bの形成〕
続いて、絶縁層106及び半導体層108を覆って、導電膜113af、導電膜113bf、及び導電膜113cfを積層して形成する。
【0316】
導電膜113bfは、後に導電層113bとなる膜であり、銅、銀、金、またはアルミニウムを含むことが好ましい。また、導電膜113af及び導電膜113cfはそれぞれ、後に導電層113a、導電層113bとなる膜であり、それぞれ独立にチタン、タングステン、モリブデン、クロム、タンタル、亜鉛、インジウム、白金、及びルテニウム等を含むことが好ましい。
【0317】
導電膜113af、導電膜113bf、及び導電膜113cfは、スパッタリング法、蒸着法、またはめっき法等の形成方法を用いて形成することが好ましい。
【0318】
続いて、導電膜113cf上にレジストマスク140を形成する(図14A)。
【0319】
続いて、レジストマスク140をマスクとして、導電膜113cf、導電膜113bf、及び導電膜113afをエッチングすることで、導電層113a、導電層113b、及び導電層113cが積層された構成を有する導電層112a及び導電層112bを形成することができる(図14B)。
【0320】
導電層112a及び導電層112bは、図14Bに示すように、半導体層108のチャネル形成領域上で離間するように加工されることが好ましい。言い換えると、導電層112a及び導電層112bの対向する端部が、導電層104及び半導体層108の両方と重畳するように、加工されることが好ましい。これにより、トランジスタのオン電流を高めることができる。
【0321】
なお、導電層112a及び導電層112bの形成の際に、導電層112a及び導電層112bと重なる領域の半導体層108の膜厚より、導電層112a及び導電層112bと重ならない領域の半導体層108の膜厚が薄くなる場合がある。
【0322】
導電層112a及び導電層112bの形成の際に、導電層112a及び導電層112bと重なる領域の絶縁層106の膜厚より、導電層112a及び導電層112bと重ならない領域の絶縁層106の膜厚が薄くなる場合がある。
【0323】
導電膜113cf、導電膜113bf、及び導電膜113afは、それぞれウェットエッチングまたはドライエッチング等でエッチングすることができる。また、一度の工程で3層を一括でエッチングしてもよいし、それぞれを異なる工程で、順にエッチングしてもよい。
【0324】
〔洗浄処理1〕
続いて、洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理として、洗浄液など用いたウェット洗浄、プラズマを用いたプラズマ処理、または熱処理による洗浄などがあり、前述の洗浄を適宜組み合わせて行ってもよい。洗浄処理として、特にリン酸を用いたウェット洗浄を好適に用いることができる。
【0325】
導電膜113cf、導電膜113bf、及び導電膜113afの形成の際、及び導電層112a及び導電層112bの形成の際に、半導体層108の表面がダメージを受ける場合がある。ダメージを受けた半導体層108にVが形成され、さらに半導体層108中の水素がVに入りVHが形成されてしまう場合がある。導電層112a及び導電層112bの形成の後に洗浄処理を行うことで、ダメージを受けた層を除去することができる。
【0326】
洗浄処理を行うことで、導電層112a及び導電層112bの形成の際に半導体層108の表面に付着した金属、有機物等を除去することができる。
【0327】
図14Bに示すように、導電層112a及び導電層112bの上面がレジストマスク140で覆われた状態で洗浄処理を行うことが好ましい。導電層112a及び導電層112bの上面がレジストマスク140で覆われた状態で洗浄処理を行うことにより、例えば、導電層113cが消失してしまうことを抑制できる。また、導電層112a及び導電層112bの上面がレジストマスク140で覆われた状態で洗浄処理を行うことにより、洗浄処理時に露出している導電層112a及び導電層112bの面積を小さくできるため、導電層112a及び導電層112bの成分が半導体層108に付着してしまうことを抑制できる。
【0328】
続いて、レジストマスク140を除去する(図15A)。
【0329】
なお、前述の洗浄処理は、レジストマスク140を除去した後に行ってもよい。
【0330】
〔洗浄処理2〕
続いて、洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理として、洗浄液など用いたウェット洗浄、プラズマを用いたプラズマ処理、または熱処理による洗浄などがあり、前述の洗浄を適宜組み合わせて行ってもよい。洗浄処理として、プラズマ処理を好適に用いることができる。図15Bでは、半導体層108、導電層112a、導電層112b、及び絶縁層106の表面が、プラズマ130に曝されている様子を模式的に示している。
【0331】
プラズマ処理は、特に、酸化性ガス及び還元性ガスを含む混合ガスを用いることが好ましい。プラズマ処理に酸化性ガス及び還元性ガスを用いることにより、導電層112a及び導電層112bが酸化されることを抑制するとともに、効果的に半導体層108の表面に吸着した水や水素、有機物成分等を除去できる。酸化性ガスとして、前述のガスを用いることができる。還元性ガスとして、前述のガスを用いることができる。
【0332】
プラズマ処理における酸化性ガスと還元性ガスの流量の割合は、導電層113a、導電層113b、及び導電層113cの酸化のしやすさに応じて設定することができるが、少なくとも還元性ガスの流量を、酸化性ガスの流量以下とすることが好ましい。酸化性ガスの流量に対する還元性ガスの流量が少なすぎると、導電層113b等の表面の酸化反応が優位となり、表面に酸化物が形成されやすくなる。一方、酸化性ガスの流量に対する還元性ガスの流量が大きすぎると、半導体層108の表面が還元されてしまうことや、半導体層108中に還元性ガスの成分(例えば、水素)が供給されてしまう恐れがある。
【0333】
プラズマ処理において、酸化性ガスの流量に対する還元性ガスの流量は前述の範囲とすることが好ましい。プラズマ処理の際、導電層113c、導電層113b、及び導電層113aの表面もプラズマ130に曝されるが、プラズマ処理に用いるガスに還元性ガスが含まれているため、表面が酸化されたとしても直ちに還元され、結果として酸化物が形成されることが抑制される。これにより、例えば導電層113bに銅やアルミニウムなどの酸化されやすい材料を用いた場合であっても、導電層113bが酸化されることを抑制するとともに、効果的に半導体層108の表面に吸着した水や水素、有機物成分等を除去できる。
【0334】
ここで、プラズマ処理に用いるガスに還元性ガスを含まない場合について、説明する。還元性ガスを含まない場合、導電層113bがプラズマに曝されると、導電層113bの一部に酸化物が形成される場合がある。導電層113aや導電層113cにも酸化されやすい材料を用いた場合には、その表面にも酸化物が形成されることになる。導電層113a、導電層113bまたは導電層113cのいずれか一以上が酸化されると抵抗が高くなり、トランジスタの電気特性や信頼性に悪影響を及ぼす場合がある。また、導電層113a、導電層113bまたは導電層113cの表面に形成された酸化物は、プラズマ処理の最中や、後の絶縁層114の形成時に一部が飛散し、半導体層108bの表面を汚染してしまう場合がある。半導体層108bに付着した酸化物は、ドナーまたはアクセプタとして機能しうるため、トランジスタの電気特性や信頼性に悪影響を及ぼす恐れがある。例えば半導体層108中に銅元素が拡散した場合、銅元素がキャリアトラップとして機能し、電気特性や信頼性が損なわれる場合がある。
【0335】
一方、プラズマ処理に用いるガスに還元性ガスを含む場合、導電層113c、導電層113b、及び導電層113aの表面、特に導電層113bの側面が露出していても、その表面が酸化されることを抑制できる。そのため、導電層112a及び導電層112bが酸化されることを抑制するとともに、効果的に半導体層108の表面に吸着した水や水素、有機物成分等を除去でき、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0336】
さらに、プラズマ処理時間を調整すると好ましい。プラズマ処理の時間が長い場合、酸化性ガスによる酸化反応が進み、導電層113a、導電層113b、及び導電層113cが酸化されてしまう場合がある。また、プラズマ処理の時間が長い場合、第2のガスによる還元反応が進み、半導体層108の表面が還元されてしまう場合がある。そこで、プラズマ処理時間を調整し、導電層113a、導電層113b、及び導電層113cが酸化されること、および半導体層108の表面が還元されることを抑制することが好ましい。プラズマ処理の時間は、例えば、5sec以上180sec以下が好ましく、さらには10sec以上120sec以下が好ましく、さらには15sec以上60sec以下が好ましい。前述の処理時間とすることで、良好な電気特性を示し、かつ信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0337】
〔絶縁層114の形成〕
続いて、導電層112a、導電層112b、半導体層108、及び絶縁層106を覆うように、絶縁層114を形成する。
【0338】
絶縁層114は、例えば酸素を含む雰囲気で形成することが好ましい。特に、酸素を含む雰囲気でプラズマCVD法により形成することが好ましい。これにより、欠陥の少ない絶縁層114とすることができる。また、絶縁層114は、アンモニアの放出が多く、かつ窒素酸化物の放出が少ないことが好ましい。アンモニアの放出が多く、かつ窒素酸化物の放出が少ない絶縁層114を用いることで、トランジスタのしきい値電圧の変動を抑制することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0339】
絶縁層114として、例えば酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜などの酸化物膜を、プラズマ化学気相堆積装置(PECVD装置、または単にプラズマCVD装置という)を用いて形成することが好ましい。この場合、原料ガスとして、シリコンを含む堆積性ガス、及び酸化性ガスを含む混合ガスを用いることが好ましい。さらに、原料ガスがアンモニアを含むと好ましい。アンモニアを含む混合ガスを用いて絶縁層114を形成することにより、アンモニアの放出が多い絶縁層114とすることができる。シリコンを含む堆積性ガスとして、前述のガスを用いることができる。酸化性ガスとして、前述のガスを用いることができる。
【0340】
例えば、絶縁層114として酸化窒化シリコンを用いる場合は、例えば、モノシラン、一酸化二窒素及びアンモニアを含む混合ガスで絶縁層114を形成することができる。
【0341】
絶縁層114の形成において、堆積性ガスの流量に対する酸化性ガスの流量は前述の範囲とすることが好ましい。また、酸化性ガスの流量に対するアンモニアガスの流量は前述の範囲とすることが好ましい。前述の流量の範囲とすることで、アンモニアの放出が多い絶縁層114とすることができ、絶縁層114からの窒素酸化物の放出が少なくなることで、しきい値電圧の変動が小さいトランジスタとすることができる。また、前述のガス流量とすることで、処理室内の圧力が比較的高い場合においても、欠陥の少ない絶縁層114を形成することができる。
【0342】
絶縁層114の形成時の処理室内の圧力は前述の範囲とすることが好ましい。前述の圧力の範囲とすることで、窒素酸化物の放出が少なく、かつ欠陥量の少ない絶縁層114を形成することができる。
【0343】
絶縁層114を、マイクロ波を用いたPECVD法を用いて形成してもよい。マイクロ波とは300MHzから300GHzの周波数域を指す。マイクロ波は、電子温度が低く、電子エネルギーが小さい。また、供給された電力において、電子の加速に用いられる割合が少なく、より多くの分子の解離及び電離に用いられることが可能であり、密度の高いプラズマ(高密度プラズマ)を励起することができる。このため、被形成面及び堆積物へのプラズマダメージが少なく、欠陥の少ない絶縁層114を形成することができる。
【0344】
絶縁層114は、前述のプラズマ処理を行った後、基板102を大気に曝すことなく連続して形成を行うことが好ましい。例えば、プラズマ処理は、絶縁層114の成膜装置で行うことが好ましい。このとき、プラズマ処理は、絶縁層114を形成する処理室で行うことが好ましい。または、ゲートバルブ等を介して当該処理室と接続された処理室でプラズマ処理を行った後、大気に曝すことなく減圧下にて、絶縁層114の処理室に搬送する構成としてもよい。また、プラズマ処理と絶縁層114の形成を、同じ装置内の同じ処理室で連続して行う場合、プラズマ処理と絶縁層114の形成を、同じ温度で行うことが好ましい。
【0345】
プラズマ化学気相堆積装置を用いてプラズマ処理、及び絶縁層114の形成を行う場合を例に挙げて、説明する。ここで絶縁層114は酸化窒化シリコンとする。
【0346】
プラズマ処理において、酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)と、還元性ガスであるアンモニアを含む混合ガスを用い、絶縁層114の形成において、堆積性ガスであるモノシランと、酸化性ガスである一酸化二窒素(NO)と、アンモニアを含む混合ガスを用いることができる。ここで、プラズマ処理及び絶縁層114の形成で、一酸化二窒素(NO)及びアンモニアを共通して用いることができる。つまり、一酸化二窒素(NO)及びアンモニアをもちいてプラズマ処理を行い、その後にモノシランガスを流すことにより絶縁層114を形成できる。このように、同じ処理室で連続してプラズマ処理及び絶縁層114の形成を行うことができるため、半導体層108と絶縁層114の界面の不純物を少なくすることができ、良好な界面とすることができる。
【0347】
絶縁層114の形成後に、絶縁層114に酸素を供給する処理を行ってもよい。酸素を供給する処理は、上記絶縁層106と同様の方法を用いることができる。
【0348】
〔絶縁層116の形成〕
続いて、絶縁層114を覆うように絶縁層116を形成する(図16A)。
【0349】
絶縁層116は、絶縁層114よりも酸素や水素、水等が拡散しにくい絶縁膜を用いることが好ましい。絶縁層116が酸素を拡散しにくいことで、半導体層108中の酸素が絶縁層114を介して外部に脱離することを防ぐことができる。また、絶縁層116が水素を拡散しにくいことで、外部から水素や水等が半導体層108等に拡散することを防ぐことができる。
【0350】
絶縁層116の形成後に、加熱処理を行うと好ましい。加熱処理を行うことにより、絶縁層114及び絶縁層116が有する酸素が半導体層108へ拡散し、当該酸素により半導体層108中の酸素欠損(V)及びVHを低減することができる(加酸素化)。具体的には、半導体層108に拡散した酸素は、酸素欠損(V)を補填する。また、半導体層108に拡散した酸素は、VHから水素を奪って水分子(HO)として脱離し、水素が奪われたVHは酸素欠損(V)となる。さらに、VHから水素が奪われたことにより生成した酸素欠損(V)は、半導体層108に達した別の酸素により補填される。半導体層108中の酸素欠損(V)及びVHが低減することで、信頼性の高いトランジスタとすることができる。
【0351】
半導体層108に拡散した酸素は、半導体層108中に残存する水素と反応し、水分子(HO)として脱離する。つまり、半導体層108から水素を除去することができる(脱水化、脱水素化)。これにより、半導体層108中に残存する水素が酸素欠損(V)に結合してVHが生成することを抑制できる。
【0352】
加熱処理を行うことで、絶縁層116及び絶縁層114に含まれる水素や水を除去できる。また、加熱処理により、絶縁層116及び絶縁層114に含まれる欠陥を低減できる。
【0353】
さらに、加熱処理を行うことで、絶縁層114及び絶縁層116に含まれる窒素酸化物が、絶縁層114に含まれるアンモニアと反応し、絶縁層114及び絶縁層116に含まれる窒素酸化物が低減する。窒素酸化物が低減することにより、トランジスタのしきい値電圧の変動を抑制することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することができる。
【0354】
加熱処理の温度は、150℃以上基板の歪み点未満が好ましく、さらには250℃以上450℃以下が好ましく、さらには300℃以上450℃以下が好ましい。加熱処理は、希ガス、窒素または酸素の一以上を含む雰囲気で行うことができる。窒素を含む雰囲気、又は酸素を含む雰囲気として、超乾燥空気(CDA:Clean Dry Air)を用いてもよい。なお、当該雰囲気に水素、水などの含有量が極力少ないことが好ましい。当該雰囲気として、露点が-60℃以下、好ましくは-100℃以下の高純度ガスを用いることが好ましい。水素、水などの含有量が極力少ない雰囲気を用いることで、絶縁層116等に水素、水などが取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。加熱処理は、オーブン、急速加熱(RTA:Rapid Thermal Annealing)装置等を用いることができる。RTA装置を用いることで、加熱処理時間を短縮できる。
【0355】
〔絶縁層118の形成〕
続いて、絶縁層116を覆うように絶縁層118を形成する(図16B)。
【0356】
絶縁層118は、絶縁層114及び絶縁層116よりも酸素や水素、水等が拡散しにくい絶縁膜を用いることが好ましい。絶縁層118が酸素を拡散しにくいことで、絶縁層116、絶縁層114、及び半導体層108中の酸素が外部に脱離することを抑制できる。また、絶縁層118が水素を拡散しにくいことで、外部から水素や水等が半導体層108等に拡散することを抑制できる。絶縁層118として、特に窒化シリコンを好適に用いることができる。
【0357】
〔導電層120a、導電層120bの形成〕
続いて、絶縁層118、絶縁層116及び絶縁層114の一部をエッチングすることで、導電層112bに達する開口部142a、及び導電層104に達する開口部142bを形成する。
【0358】
続いて、開口部142a及び開口部142bを覆うように、導電膜を形成した後に、該導電膜を加工することにより、導電層120a及び導電層120bを形成することができる(図17A)。
【0359】
以上の工程により、トランジスタ100Aを作製することができる。
【0360】
<作製方法例2>
前述の<作製方法例1>に示すトランジスタ100Aの作製方法とは異なる作製方法について、説明する。なお、前述と重複する部分については説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0361】
まず、<作製方法例1>と同様に、絶縁層116まで形成する。絶縁層116の形成までは、図13A乃至図16Aに係る説明を参照できるため、詳細な説明は省略する。また、絶縁層116の形成後に、加熱処理を行うと好ましい。該加熱処理については、前述の<作製方法例1>の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0362】
続いて、絶縁層116を覆って、金属酸化物層150を形成する(図18A)。
【0363】
金属酸化物層150は、酸素及び水素を透過しにくい材料で形成される。金属酸化物層150は、絶縁層114及び絶縁層116に含まれる酸素が半導体層108とは反対側に拡散することを抑制する機能を有する。また、金属酸化物層150は、外部から水素及び水が絶縁層114及び絶縁層116側に拡散することを抑制する機能を有する。金属酸化物層150は、少なくとも絶縁層114及び絶縁層116よりも酸素及び水素を透過しにくい材料を用いることが好ましい。
【0364】
金属酸化物層150は、絶縁層でもよく、また導電層であってもよい。
【0365】
金属酸化物層150として、酸化シリコンよりも誘電率の高い絶縁性材料を用いることが好ましい。例えば、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、またはハフニウムアルミネート膜等を用いることができる。
【0366】
金属酸化物層150として、例えば、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、またはシリコンを含有したインジウムスズ酸化物(ITSO)などの、導電性酸化物を用いることもできる。
【0367】
金属酸化物層150として、半導体層108と同一の元素を一以上含む酸化物材料を用いることが好ましい。特に、半導体層108に適用可能な酸化物半導体材料を用いることが好ましい。金属酸化物層150を形成するために用いるスパッタリングターゲットは、Inの原子数比がMの原子数比以上であることが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=6:1:6、In:M:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0368】
金属酸化物層150として、特にIn-Ga-Zn酸化物(IGZO)を好適に用いることができる。半導体層108がIn-Ga-Zn酸化物の場合、In-Ga-Zn酸化物を形成するために用いるスパッタリングターゲットは、Inの原子数比がMの原子数比以上であることが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:1:1.2、In:Ga:Zn=2:1:3、In:Ga:Zn=3:1:2、In:Ga:Zn=4:2:3、In:Ga:Zn=4:2:4.1、In:Ga:Zn=5:1:3、In:Ga:Zn=5:1:6、In:Ga:Zn=5:1:7、In:Ga:Zn=5:1:8、In:Ga:Zn=6:1:6、In:Ga:Zn=5:2:5等が挙げられる。
【0369】
金属酸化物層150として、半導体層108と同じ組成のスパッタリングターゲットを用いて形成した金属酸化物膜を適用することができる。同じ組成のスパッタリングターゲットを用いることで、製造装置及びスパッタリングターゲットを共通化できるため、好ましい。
【0370】
半導体層108と金属酸化物層150の両方に、インジウム及びガリウムを含む金属酸化物材料を用いる場合、半導体層108よりもガリウムの組成(含有割合)が高い材料を金属酸化物層150に用いることができる。ガリウムの組成(含有割合)が高い材料を金属酸化物層150に用いることにより、酸素に対するブロッキング性をより高めることができるため、好ましい。このとき、半導体層108には、金属酸化物層150よりもインジウムの組成が高い材料を用いることで、トランジスタ100の電界効果移動度を高めることができる。
【0371】
金属酸化物層150は、スパッタリング装置を用いて形成すると好ましい。例えば、スパッタリング装置を用いて酸化物膜を形成する場合、酸素ガスを含む雰囲気で形成することで、絶縁層116、絶縁層114または半導体層108中に好適に酸素を供給することができる。
【0372】
金属酸化物層150は、例えば、酸素を含む雰囲気で形成することが好ましい。特に、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法により形成することが好ましい。これにより、金属酸化物層150の形成時に絶縁層116、絶縁層114または半導体層108に酸素を供給することができる。
【0373】
金属酸化物層150を、半導体層108の場合と同様の金属酸化物を含む酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により形成する場合には、上記を援用することができる。
【0374】
例えば、成膜ガスに酸素を用い、金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法により、金属酸化物層150を形成してもよい。例えば、金属ターゲットとしてアルミニウムを用いた場合には、酸化アルミニウム膜を形成することができる。
【0375】
金属酸化物層150の形成時に、成膜装置の処理室内に導入する成膜ガスの全流量に対する酸素流量の割合(酸素流量比)または処理室内の酸素分圧が高いほど、絶縁層116中に供給される酸素を増やすことができる。酸素流量比または酸素分圧は、例えば50%以上100%以下、好ましくは65%以上100%以下、より好ましくは80%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下とする。特に、酸素流量比100%とし、酸素分圧を100%にできるだけ近づけることが好ましい。
【0376】
このように、酸素を含む雰囲気でスパッタリング法により金属酸化物層150を形成することにより、金属酸化物層150の形成時に、絶縁層116へ酸素を供給するとともに、絶縁層116から酸素が脱離することを防ぐことができる。その結果、絶縁層116に極めて多くの酸素を閉じ込めることができる。そして、後の加熱処理によって、半導体層108に多くの酸素を供給することができる。その結果、半導体層108中の酸素欠損を低減でき、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0377】
次に、加熱処理を行うことで、絶縁層116から半導体層108に酸素を供給することが好ましい。加熱処理は、窒素、酸素、希ガスのうち一以上を含む雰囲気下にて、200℃以上400℃以下の温度で行うことができる。
【0378】
金属酸化物層150を形成した後、絶縁層118を形成する前に加熱処理を行うことで、絶縁層116から半導体層108に効果的に酸素を供給することができる。
【0379】
次に、金属酸化物層150を除去する(図18B)。なお、金属酸化物層150を除去した後の工程は、それぞれ、上記加熱処理の温度以下の温度で行うことが好ましい。これにより、半導体層108中の酸素が脱離することを抑制でき、半導体層108中に酸素欠損が形成されることを抑制できる。したがって、トランジスタの信頼性を高めることができる。
【0380】
金属酸化物層150の除去方法に特に限定は無いが、ウェットエッチングを好適に用いることができる。ウェットエッチングを用いることで、金属酸化物層150と同時に、絶縁層116がエッチングされることを抑制できる。これにより、絶縁層116の膜厚が薄くなることを抑制でき、絶縁層116の膜厚を均一にすることができる。
【0381】
続いて、絶縁層118を形成する。絶縁層118の形成以降は、前述の<作製方法例1>の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0382】
以上の工程により、トランジスタ100Aを作製することができる。
【0383】
<作製方法例3>
以下では、前述の構成例2-3で示したトランジスタ100Bの作製方法について、説明する。なお、前述と重複する部分については説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0384】
まず、<作製方法例1>と同様に、レジストマスク140まで形成する。レジストマスク140の形成までは、図13A乃至図14Aに係る説明を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0385】
続いて、レジストマスク140をマスクとして、導電膜113cf、導電膜113bf、及び導電膜113afをエッチングする。このエッチングの際、レジストマスク140及び半導体層108のいずれとも重ならない領域の絶縁層106bも除去する(図19A)。
【0386】
続いて、洗浄処理を行うことが好ましい。洗浄処理以降は、前述の<作製方法例1>の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0387】
以上の工程により、トランジスタ100Bを作製することができる(図19B)。
【0388】
<作製方法例4>
以下では、前述の構成例2-4で示したトランジスタ100Cの作製方法について、説明する。なお、前述と重複する部分については説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0389】
まず、<作製方法例1>と同様に、金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfまで形成する。金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfの形成までは、図13A及び図13Bに係る説明を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0390】
続いて、金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfの形成後、金属酸化物膜108bf上にレジストマスクを形成し、該レジストマスクをマスクとして、金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfをエッチングし、半導体層108を形成する。このエッチングの際、該レジストマスクと重ならない領域の絶縁層106bも除去する(図20A)。その後、該レジストマスクを除去する。
【0391】
金属酸化物膜108af及び金属酸化物膜108bfを形成した後、または半導体層108に加工した後、加熱処理を行ってもよい。加熱処理以降は、前述の<作製方法例1>の記載を参照できるため、詳細な説明は省略する。
【0392】
以上の工程により、トランジスタ100Cを作製することができる(図20B)。
【0393】
ここで例示したトランジスタの作製方法によれば、半導体層108と接する絶縁層114として、アンモニアの放出が多く、かつ窒素酸化物の放出が少ない膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧の変動を抑制することができ、良好な電気特性と、高い信頼性が実現されたトランジスタを作製することができる。
【0394】
以上がトランジスタの作製方法例についての説明である。
【0395】
<構成例の変形例>
以下では、上記で例示したトランジスタの構成例の変形例について説明する。
【0396】
〔変形例1〕
図21A及び図21Bに示すトランジスタ100Dは、導電層112a及び導電層112bが積層構造を有さず、単層構造である点で、前述の構成例2-1で示したトランジスタ100と主に相違している。
【0397】
導電層112a及び導電層112bを単層構造とすることで、作製工程を簡略にすることができ、生産性を向上させることができる。導電層112a、導電層112bとして、銅、銀、金、またはアルミニウムを含む導電性材料を用いることが好ましい。
【0398】
〔変形例2〕
図21C及び図21Dに示すトランジスタ100Eは、導電層112a及び導電層112bだけでなく、半導体層108が積層構造を有さず、単層構造である点で、前述の構成例2-1で例示したトランジスタ100と主に相違している。
【0399】
導電層112a及び導電層112bに加え、半導体層108を単層構造とすることで、さらに生産性を高めることができる。このとき、半導体層108として、結晶性を有する金属酸化物膜を用いることが好ましい。
【0400】
〔変形例3〕
図22A図22B及び図22Cに示すトランジスタ100Fは、導電層120a及び導電層120bの位置が異なる点で、前述の構成例2-2で例示したトランジスタ100Aと主に相違している。
【0401】
導電層120a及び導電層120bは、絶縁層116と絶縁層118との間に位置している。導電層120bは、絶縁層114及び絶縁層116に設けられた開口部142aを介して、導電層112bと電気的に接続されている。
【0402】
このような構成とすることで、導電層120aと半導体層108との距離を縮めることができるため、トランジスタ100Fの電気特性を向上させることができる。
【0403】
〔変形例4〕
図23A図23B及び図23Cに示すトランジスタ100Gは、絶縁層114の構成が異なる点で、前述の構成例2-1で例示したトランジスタ100と主に相違している。
【0404】
絶縁層114は、半導体層108のチャネル形成領域を覆う島状の形状に加工されている。また導電層112a及び導電層112bの半導体層108上に位置する端部が、絶縁層114上に位置している。したがって、絶縁層114はいわゆるチャネル保護層として機能し、導電層112a及び導電層112bのエッチングの際に、半導体層108のバックチャネル側を保護することができる。
【0405】
このとき、導電層112a及び導電層112bをエッチングした後に、上述した方法によりプラズマ処理を行なうことで、導電層112a及び導電層112bが酸化されることを抑制するとともに、絶縁層114中、及び絶縁層114を介して半導体層108中に酸素を供給することができる。また、プラズマ処理を行なった後に加熱処理を行なうことで、絶縁層114中の酸素を半導体層108に供給してもよい。
【0406】
〔変形例5〕
図24A図24B及び図24Cに示すトランジスタ100Hは、絶縁層114の構成が異なる点で、上記変形例4で例示したトランジスタ100Gと主に相違している。
【0407】
絶縁層114は、半導体層108や絶縁層106等を覆って設けられている。また、絶縁層114は、半導体層108と導電層112aまたは導電層112bとが接続する部分に、開口部142cが設けられている。
【0408】
このような構成とすることで、絶縁層114を島状に加工するよりも微細なトランジスタを実現することができる。
【0409】
本発明の一態様の作製方法によれば、半導体層108と接する絶縁層114として、アンモニアの放出が多く、かつ窒素酸化物の放出が少ない膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧の変動を抑制することができ、良好な電気特性と、高い信頼性が実現されたトランジスタを作製することができる。
【0410】
以上が変形例についての説明である。
【0411】
<応用例>
以下では、上記トランジスタを表示装置の画素に適用する場合の例について説明する。
【0412】
図25の各図は、表示装置の副画素の一部を示した上面概略図である。1つの副画素は、少なくとも1つのトランジスタと、画素電極として機能する導電層(ここでは導電層120b)とを有する。なお、ここでは説明を容易にするため、副画素の一部の構成の例を示しているが、副画素に適用する表示素子の種類や、画素に付加する機能等に応じて、他のトランジスタや容量素子等を適宜設けることができる。
【0413】
図25Aにおいて、導電層104の一部はゲート線(走査線ともいう)として機能し、導電層112aの一部はソース線(ビデオ信号線ともいう)として機能し、導電層112bの一部はトランジスタと導電層120bとを電気的に接続する配線として機能する。
【0414】
図25Aでは、導電層104は一部が突出した上面形状を有し、この突出した部分の上に、半導体層108が設けられ、トランジスタが構成されている。
【0415】
図25B及び図25Cは、導電層104が突出した部分を有さない場合の例を示している。図25Bは、半導体層108のチャネル長方向と導電層104の延伸方向とが平行な例であり、図25Cは、これらが直交する例である。
【0416】
図25D及び図25Eは、導電層112bが円弧状、または概略円弧状の部分を有するU字の上面形状を有している。また導電層112aと導電層112bとは、半導体層108上において、2つの距離が常に等距離になるように、配置されている。このような構成とすることで、トランジスタのチャネル幅を大きくすることが可能で、より大きな電流を流すことができる。
【0417】
なお、本発明の一態様のトランジスタは、表示装置だけでなく、様々な回路や装置に適用することができる。例えば演算回路、メモリ回路、駆動回路、及びインターフェース回路など、電子機器等に実装されるICチップ内の各種回路、または、液晶素子や有機EL素子などが適用されたディスプレイデバイスや、タッチセンサ、光学センサ、生体センサ等の各種センサデバイスにおける駆動回路などに好適に用いることができる。
【0418】
以上が、応用例についての説明である。
【0419】
<半導体装置の構成要素>
以下では、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0420】
〔基板〕
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有している必要がある。例えば、シリコンや炭化シリコンを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、これらの基板上に半導体素子が設けられたものを、基板102として用いてもよい。
【0421】
基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ100等を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100等の間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100等は耐熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0422】
〔絶縁層106〕
絶縁層106として、例えば、酸化物絶縁膜または窒化物絶縁膜を単層または積層して形成することができる。なお、半導体層108との界面特性を向上させるため、絶縁層106において少なくとも半導体層108と接する領域は酸化物絶縁膜で形成することが好ましい。また、絶縁層106には、加熱により酸素を放出する膜を用いることが好ましい。
【0423】
絶縁層106として、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn酸化物などを用いればよく、単層または積層で設けることができる。
【0424】
絶縁層106の半導体層108に接する側に窒化シリコン膜などの酸化物膜以外の膜を用いた場合、半導体層108と接する表面に対して酸素プラズマ処理などの前処理を行い、当該表面、または表面近傍を酸化することが好ましい。
【0425】
〔導電膜〕
ゲート電極として機能する導電層104及び導電層120a、配線として機能する120b、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能する導電層112a、及びソース電極またはドレイン電極の他方として機能する導電層112bなど、半導体装置を構成する導電膜として、クロム、銅、アルミニウム、金、銀、亜鉛、モリブデン、タンタル、チタン、タングステン、マンガン、ニッケル、鉄、コバルトから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
【0426】
特に、ソース電極またはドレイン電極の一方として機能する導電層112a、及びソース電極またはドレイン電極の他方として機能する導電層112bは、銅、銀、金、またはアルミニウム等を含む、低抵抗な導電性材料を用いることが好ましい。特に、銅、またはアルミニウムは量産性に優れるため好ましい。
【0427】
半導体装置を構成する上記導電膜として、In-Sn酸化物、In-W酸化物、In-W-Zn酸化物、In-Ti酸化物、In-Ti-Sn酸化物、In-Zn酸化物、In-Sn-Si酸化物、In-Ga-Zn酸化物等の酸化物導電体または金属酸化物膜を適用することもできる。
【0428】
ここで、酸化物導電体(OC:OxideConductor)について説明を行う。例えば、半導体特性を有する金属酸化物に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナー準位が形成される。この結果、金属酸化物は、導電性が高くなり導電体化する。導電体化された金属酸化物を、酸化物導電体ということができる。
【0429】
半導体装置を構成する上記導電膜として、上記酸化物導電体(金属酸化物)を含む導電膜と、金属または合金を含む導電膜の積層構造としてもよい。金属または合金を含む導電膜を用いることで、配線抵抗を小さくすることができる。このとき、ゲート絶縁層として機能する絶縁層と接する側には酸化物導電体を含む導電膜を適用することが好ましい。
【0430】
導電層104、導電層112a、導電層112bには、Cu-X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用してもよい。Cu-X合金膜を用いることで、ウエットエッチングプロセスで加工できるため、製造コストを抑制することが可能となる。
【0431】
〔絶縁層114、絶縁層116〕
半導体層108上に設けられる絶縁層114として、PECVD法、スパッタリング法、ALD法などにより形成された、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネオジム膜等を一種以上含む絶縁層を用いることができる。特に、プラズマCVD法により形成された酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を用いることが好ましい。なお、絶縁層114を2層以上の積層構造としてもよい。
【0432】
保護層として機能する絶縁層116として、PECVD法、スパッタリング法、ALD法等により形成された、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜等を一種以上含む絶縁層を用いることができる。なお、絶縁層116を、2層以上の積層構造としてもよい。
【0433】
〔半導体層〕
半導体層108がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、例えば、In:M:Zn=5:1:1、In:M:Zn=5:1:2、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:4、In:M:Zn=5:1:5、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=10:1:1、In:M:Zn=10:1:2、In:M:Zn=10:1:3、In:M:Zn=10:1:4、In:M:Zn=10:1:5、In:M:Zn=10:1:6、In:M:Zn=10:1:7、In:M:Zn=10:1:8、In:M:Zn=10:1:10、In:M:Zn=10:1:12、In:M:Zn=10:1:15、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。
【0434】
半導体層108が酸化インジウムの場合、酸化インジウムを成膜するために用いるスパッタリングターゲットとして、酸化インジウムを用いることができる。
【0435】
半導体層108がIn-M酸化物の場合、In-M酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、例えば、In:M=2:1、In:M=7:2、In:M=5:1、In:M=7:1、In:M=10:1、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。
【0436】
半導体層108がIn-Zn酸化物の場合、In-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、例えば、In:Zn=2:3、In:Zn=3:2、In:Zn=7:2、In:Zn=4:1、In:Zn=11:2、In:Zn=7:1、In:Zn=14:1、またはこれらの近傍を好適に用いることができる。
【0437】
スパッタリングターゲットとして、多結晶の酸化物を含むターゲットを用いると、結晶性を有する半導体層108を形成しやすくなるため好ましい。なお、成膜される半導体層108の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、半導体層108に用いるスパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=5:1:3<原子数比>の場合、成膜される半導体層108の組成は、In:Ga:Zn=5:1:2.4<原子数比>の近傍となる場合がある。
【0438】
上記ターゲットを用いて、基板温度を100℃以上130℃以下として、スパッタリング法により形成した金属酸化物は、nc(nano crystal)構造及びCAAC構造のいずれか一方の結晶構造、またはこれらが混在した構造をとりやすい。一方、基板温度を室温として、スパッタリング法により形成した金属酸化物は、ncの結晶構造をとりやすい。
【0439】
半導体層108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上である。このように、シリコンよりもエネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0440】
以上が構成要素についての説明である。
【0441】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0442】
(実施の形態3)
本実施の形態では、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の一例について説明する。
【0443】
<構成例>
図26Aに、表示装置700の上面図を示す。表示装置700は、シール材712により貼りあわされた第1の基板701と第2の基板705を有する。また第1の基板701、第2の基板705、及びシール材712で封止される領域において、第1の基板701上に画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706が設けられる。また画素部702には、複数の表示素子が設けられる。
【0444】
第1の基板701の第2の基板705と重ならない部分に、FPC716(FPC:Flexible printed circuit)が接続されるFPC端子部708が設けられている。FPC716によって、FPC端子部708及び信号線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706のそれぞれに各種信号等が供給される。
【0445】
ゲートドライバ回路部706は、複数設けられていてもよい。また、ゲートドライバ回路部706及びソースドライバ回路部704は、それぞれ半導体基板等に別途形成され、パッケージされたICチップの形態であってもよい。当該ICチップは、第1の基板701上、またはFPC716に実装することができる。
【0446】
画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲートドライバ回路部706が有するトランジスタに、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタを適用することができる。
【0447】
画素部702に設けられる表示素子として、液晶素子、発光素子などが挙げられる。液晶素子として、透過型の液晶素子、反射型の液晶素子、半透過型の液晶素子などを用いることができる。また、発光素子として、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic LED)、QLED(Quantum-dot LED)、半導体レーザなどの、自発光性の発光素子が挙げられる。また、シャッター方式または光干渉方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子や、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、または電子粉流体(登録商標)方式等を適用した表示素子などを用いることもできる。
【0448】
図26Bに示す表示装置700Aは、第1の基板701に換えて、可撓性を有する樹脂層743が適用され、フレキシブルディスプレイとして用いることのできる表示装置の例である。
【0449】
表示装置700Aは、画素部702が矩形形状でなく、角部が円弧状の形状を有している。また、図26B中の領域P1に示すように、画素部702、及び樹脂層743の一部が切りかかれた切欠き部を有する。一対のゲートドライバ回路部706は、画素部702を挟んで両側に設けられる。またゲートドライバ回路部706は、画素部702の角部において、円弧状の輪郭に沿って設けられている。
【0450】
樹脂層743は、FPC端子部708が設けられる部分が突出した形状を有している。また樹脂層743のFPC端子部708を含む一部は、図26B中の領域P2で裏側に折り返すことができる。樹脂層743の一部を折り返すことで、FPC716を画素部702の裏側に重ねて配置した状態で、表示装置700Aを電子機器に実装することができ、電子機器の省スペース化を図ることができる。
【0451】
表示装置700Aに接続されるFPC716には、IC717が実装されている。IC717は、例えばソースドライバ回路としての機能を有する。このとき、表示装置700Bにおけるソースドライバ回路部704は、保護回路、バッファ回路、デマルチプレクサ回路等の少なくとも一を含む構成とすることができる。
【0452】
図26Cに示す表示装置700Bは、大型の画面を有する電子機器に好適に用いることのできる表示装置である。例えばテレビジョン装置、モニタ装置、パーソナルコンピュータ(ノート型またはデスクトップ型を含む)、タブレット端末、デジタルサイネージなどに好適に用いることができる。
【0453】
表示装置700Bは、複数のソースドライバIC721と、一対のゲートドライバ回路部722を有する。
【0454】
複数のソースドライバIC721は、それぞれFPC723に取り付けられている。また、複数のFPC723は、一方の端子が第1の基板701に、他方の端子がプリント基板724にそれぞれ接続されている。FPC723を折り曲げることで、プリント基板724を画素部702の裏側に配置して、電子機器に実装することができ、電子機器の省スペース化を図ることができる。
【0455】
一方、ゲートドライバ回路部722は、第1の基板701上に形成されている。これにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0456】
このような構成とすることで、大型で且つ高解像度の表示装置を実現できる。例えば画面サイズが対角30インチ以上、40インチ以上、50インチ以上、または60インチ以上の表示装置にも適用することができる。また、解像度が4K2K、または8K4Kなどといった極めて高解像度の表示装置を実現することができる。
【0457】
<断面構成例>
以下では、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について、図27乃至図31を用いて説明する。なお、図27乃至図30は、それぞれ図26Aに示す一点鎖線Q-Rにおける断面図である。また図31は、図26Bに示した表示装置700A中の一点鎖線S-Tにおける断面図である。図27乃至図29は、表示素子として液晶素子を用いた構成であり、図30及び図31は、EL素子を用いた構成である。
【0458】
〔表示装置の共通部分に関する説明〕
図27乃至図31に示す表示装置は、引き回し配線部711と、画素部702と、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。引き回し配線部711は、信号線710を有する。画素部702は、トランジスタ750及び容量素子790を有する。ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を有する。図28では、容量素子790が無い場合を示している。
【0459】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、実施の形態2で例示したトランジスタを適用できる。
【0460】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くできる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くでき、画像信号の書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくできるため、消費電力を低減する効果を奏する。
【0461】
本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、シリコンウェハ等により形成された駆動回路を適用しない構成も可能であり、表示装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0462】
図27図30、及び図31に示す容量素子790は、トランジスタ750が有するゲート電極と同一の膜を加工して形成される下部電極と、ソース電極またはドレイン電極と同一の導電膜を加工して形成される上部電極と、を有する。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ750のゲート絶縁層として機能する絶縁膜の一部が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0463】
トランジスタ750、トランジスタ752、及び容量素子790上には平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0464】
画素部702が有するトランジスタ750と、ソースドライバ回路部704が有するトランジスタ752とは、異なる構造のトランジスタを用いてもよい。例えば、いずれか一方にトップゲート型のトランジスタを適用し、他方にボトムゲート型のトランジスタを適用した構成としてもよい。なお、上記ゲートドライバ回路部706についてもソースドライバ回路部704と同様である。
【0465】
信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極等と同じ導電膜で形成されている。このとき、銅元素を含む材料等の低抵抗な材料を用いると、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可能となるため好ましい。
【0466】
FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC716を有する。接続電極760は、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して電気的に接続される。ここでは、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極等と同じ導電膜で形成されている。
【0467】
第1の基板701及び第2の基板705として、例えばガラス基板、またはプラスチック基板等の可撓性を有する基板を用いることができる。第1の基板701に可撓性を有する基板を用いる場合には、第1の基板701とトランジスタ750等との間に、水や水素に対するバリア性を有する絶縁層を設けることが好ましい。
【0468】
第2の基板705側には、遮光層738と、着色層736と、これらに接する絶縁層734と、が設けられる。
【0469】
〔液晶素子を用いる表示装置の構成例〕
図27に示す表示装置700は、液晶素子775及びスペーサ778を有する。液晶素子775は、導電層772、導電層774、及びこれらの間に液晶層776を有する。導電層774は、第2の基板705側に設けられ、共通電極としての機能を有する。また、導電層772は、トランジスタ750が有するソース電極またはドレイン電極と電気的に接続される。導電層772は、平坦化絶縁膜770上に形成され、画素電極として機能する。
【0470】
導電層772には、可視光に対して透光性の材料、または反射性の材料を用いることができる。透光性の材料として、例えば、インジウム、亜鉛、スズ等を含む酸化物材料を用いるとよい。反射性の材料として、例えば、アルミニウム、銀等を含む材料を用いるとよい。
【0471】
導電層772に反射性の材料を用いると、表示装置700は反射型の液晶表示装置となる。一方、導電層772に透光性の材料を用いると、透過型の液晶表示装置となる。反射型の液晶表示装置の場合、視認側に偏光板を設ける。一方、透過型の液晶表示装置の場合、液晶素子を挟むように一対の偏光板を設ける。
【0472】
図28に示す表示装置700は、横電界方式(例えば、FFSモード)の液晶素子775を用いる例を示す。導電層772上に絶縁層773を介して、共通電極として機能する導電層774が設けられる。導電層772と導電層774との間に生じる電界によって、液晶層776の配向状態を制御することができる。
【0473】
図28において、導電層774、絶縁層773、導電層772の積層構造により保持容量を構成することができる。そのため、別途容量素子を設ける必要がなく、開口率を高めることができる。
【0474】
図27及び図28には図示しないが、液晶層776と接する配向膜を設ける構成としてもよい。また、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)、及びバックライト、サイドライトなどの光源を適宜設けることができる。
【0475】
液晶層776には、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)、高分子ネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよい。
【0476】
液晶素子のモードとして、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、ゲストホストモードなどを用いることができる。
【0477】
液晶層776に高分子分散型液晶や、高分子ネットワーク型液晶などを用いた、散乱型の液晶を用いることもできる。このとき、着色層736を設けずに白黒表示を行う構成としてもよいし、着色層736を用いてカラー表示を行う構成としてもよい。
【0478】
液晶素子の駆動方法として、継時加法混色法に基づいてカラー表示を行う、時間分割表示方式(フィールドシーケンシャル駆動方式ともいう)を適用してもよい。その場合、着色層736を設けない構成とすることができる。時間分割表示方式を用いた場合、例えばR(赤色)、G(緑色)、B(青色)のそれぞれの色を呈する副画素を設ける必要がないため、画素の開口率を向上させることや、精細度を高められるなどの利点がある。
【0479】
図28に示す表示装置700と異なる、横電界方式(例えば、FFSモード)の液晶素子775を用いる例を図29に示す。
【0480】
図29に示す表示装置700は、第1の基板701と第2の基板705との間に、トランジスタ750、トランジスタ752、液晶素子775等を有する。第1の基板701と第2の基板705とは、封止層732によって貼り合されている。
【0481】
液晶素子775は、導電層714、液晶層776、及び導電層713を有する。導電層713は第1の基板701上に設けられる。導電層713上に一以上の絶縁層が設けられ、当該絶縁層上に、導電層714が設けられる。また、液晶層776は、導電層714と第2の基板705の間に位置する。導電層713は、配線728と電気的に接続され、共通電極として機能する。導電層714は、トランジスタ750と電気的に接続され、画素電極として機能する。配線728には、共通電位が与えられる。
【0482】
導電層714は、櫛歯状、またはスリットを有する上面形状を有する。液晶素子775は、導電層714と導電層713との間に生じる電界によって、液晶層776の配向状態が制御される。
【0483】
導電層714、導電層713、及びこれらに挟持された一以上の絶縁層の積層構造により、保持容量として機能する容量素子790が形成されている。そのため、別途容量素子を設ける必要がなく、開口率を高めることができる。
【0484】
導電層714及び導電層713には、それぞれ可視光に対して透光性の材料、または反射性の材料を用いることができる。透光性の材料として、例えば、インジウム、亜鉛、スズ等を含む酸化物材料を用いるとよい。反射性の材料として、例えば、アルミニウム、銀等を含む材料を用いるとよい。
【0485】
導電層714または導電層713のいずれか一方、または両方に反射性の材料を用いると、表示装置700は反射型の液晶表示装置となる。一方、導電層714または導電層713の両方に透光性の材料を用いると、表示装置700は透過型の液晶表示装置となる。反射型の液晶表示装置の場合、視認側に偏光板を設ける。一方、透過型の液晶表示装置の場合、液晶素子を挟むように、一対の偏光板を設ける。
【0486】
図29では、透過型の液晶表示装置の例を示している。第1の基板701よりも外側に、偏光板755と、光源757が設けられ、第2の基板705よりも外側に、偏光板756が設けられている。光源757は、バックライトとして機能する。
【0487】
第2の基板705の、第1の基板701側の面には、遮光層738及び着色層736が設けられている。また遮光層738及び着色層736を覆って、平坦化層として機能する絶縁層734が設けられている。絶縁層734の第1の基板701側の面には、スペーサ727が設けられている。
【0488】
液晶層776は、導電層714を覆う配向膜725と、絶縁層734を覆う配向膜726との間に位置している。なお、配向膜725及び配向膜726は、不要であれば設けなくてもよい。
【0489】
図29には図示しないが、第2の基板705よりも外側に、位相差フィルム、反射防止フィルムなどの光学部材(光学フィルム)、保護フィルム、防汚フィルム等を適宜設けることができる。反射防止フィルムとして、AG(Anti Glare)フィルム、AR(Anti Reflection)フィルムなどがある。
【0490】
図29に示す表示装置700は、画素電極として機能する導電層714や、共通電極として機能する導電層713の被形成面側に、平坦化層として機能する有機絶縁膜を設けない構成を有する。また、表示装置700が有するトランジスタ750等として、作製工程を比較的短くできる、ボトムゲート型のトランジスタが適用されている。このような構成とすることで、製造コストを低減でき、且つ、製造歩留りを高めることができ、信頼性の高い表示装置を安価で提供することが可能となる。
【0491】
〔発光素子を用いる表示装置の構成例〕
図30に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電層772、EL層786、及び導電膜788を有する。EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0492】
有機化合物に用いることのできる材料として、蛍光性材料または燐光性材料などが挙げられる。また、量子ドットに用いることのできる材料として、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、などが挙げられる。
【0493】
図30に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770上に導電層772の一部を覆う絶縁膜730が設けられる。ここで、発光素子782は透光性の導電膜788を有し、トップエミッション型の発光素子である。なお、発光素子782は、導電層772側に光を射出するボトムエミッション構造や、導電層772側及び導電膜788側の双方に光を射出するデュアルエミッション構造としてもよい。
【0494】
着色層736は発光素子782と重なる位置に設けられ、遮光層738は絶縁膜730と重なる位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に設けられている。また、着色層736及び遮光層738は、絶縁層734で覆われている。また、発光素子782と絶縁層734の間は封止層732で充填されている。なお、EL層786を画素毎に島状または画素列毎に縞状に形成する、すなわち塗り分けにより形成する場合においては、着色層736を設けない構成としてもよい。
【0495】
図31には、フレキシブルディスプレイに好適に適用できる表示装置の構成を示している。図31は、図26Bに示した表示装置700A中の一点鎖線S-Tにおける断面図である。
【0496】
図31に示す表示装置700Aは、図30で示した第1の基板701に換えて、支持基板745、接着層742、樹脂層743、及び絶縁層744が積層された構成を有する。トランジスタ750や容量素子790等は、樹脂層743上に設けられた絶縁層744上に設けられている。
【0497】
支持基板745は、有機樹脂やガラス等を含み、可撓性を有する程度に薄い基板である。樹脂層743は、ポリイミドやアクリルなどの有機樹脂を含む層である。絶縁層744は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機絶縁膜を含む。樹脂層743と支持基板745とは、接着層742によって貼りあわされている。樹脂層743は、支持基板745よりも薄いことが好ましい。
【0498】
図31に示す表示装置700Aは、図30で示した第2の基板705に換えて保護層740を有する。保護層740は、封止層732と貼りあわされている。保護層740として、ガラス基板や樹脂フィルムなどを用いることができる。また、保護層740として、偏光板、散乱板などの光学部材や、タッチセンサパネルなどの入力装置、またはこれらを2つ以上積層した構成を適用してもよい。
【0499】
発光素子782が有するEL層786は、絶縁膜730及び導電層772上に島状に設けられている。EL層786を、副画素毎に発光色が異なるように作り分けることで、着色層736を用いずにカラー表示を実現することができる。また、発光素子782を覆って、保護層741が設けられている。保護層741は発光素子782に水などの不純物が拡散することを防ぐ機能を有する。保護層741は、無機絶縁膜を用いることが好ましい。また、無機絶縁膜と有機絶縁膜をそれぞれ一以上含む積層構造とすることがより好ましい。
【0500】
図31では、折り曲げ可能な領域P2を示している。領域P2では、支持基板745、接着層742のほか、絶縁層744等の無機絶縁膜が設けられていない部分を有する。また、領域P2において、接続電極760を覆って樹脂層746が設けられている。折り曲げ可能な領域P2に無機絶縁膜を設けず、且つ、金属または合金を含む導電層と、有機材料を含む層のみを積層した構成とすることで、曲げた際にクラックが生じることを防ぐことができる。また、領域P2に支持基板745を設けないことで、極めて小さい曲率半径で、表示装置700Aの一部を曲げることができる。
【0501】
〔表示装置に入力装置を設ける構成例〕
図27乃至図30に示す表示装置700、または図31に示す表示装置700Aに入力装置を設けてもよい。当該入力装置として、例えば、タッチセンサ等が挙げられる。
【0502】
例えばセンサの方式として、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、感圧方式など様々な方式を用いることができる。または、これら2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0503】
なお、タッチパネルの構成は、入力装置を一対の基板の内側に形成する、所謂インセル型のタッチパネル、入力装置を表示装置700上に形成する、所謂オンセル型のタッチパネル、または表示装置700に貼り合わせて用いる、所謂アウトセル型のタッチパネルなどがある。
【0504】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0505】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0506】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、図32A乃至図32Cを用いて説明を行う。
【0507】
図32Aに示す表示装置は、画素部502と、駆動回路部504と、保護回路506と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成としてもよい。
【0508】
画素部502や駆動回路部504が有するトランジスタに、本発明の一態様のトランジスタを適用することができる。また保護回路506にも、本発明の一態様のトランジスタを適用してもよい。
【0509】
画素部502は、X行Y列(X、Yはそれぞれ独立に2以上の自然数)に配置された複数の画素回路501を有する。各画素回路501はそれぞれ、表示素子を駆動する回路を有する。
【0510】
駆動回路部504は、ゲート線GL_1乃至GL_Xに走査信号を出力するゲートドライバ504a、データ線DL_1乃至DL_Yにデータ信号を供給するソースドライバ504bなどの駆動回路を有する。ゲートドライバ504aは、少なくともシフトレジスタを有する構成とすればよい。またソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。また、シフトレジスタなどを用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0511】
端子部507は、外部の回路から表示装置に電源、制御信号、及び画像信号等を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0512】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。図32Aに示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路501の間の配線であるゲート線GL_1乃至GL_X、またはソースドライバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DL_1乃至DL_Y等の各種配線に接続される。なお、図32Aでは、保護回路506と画素回路501とを区別するため、保護回路506にハッチングを付している。
【0513】
ゲートドライバ504aとソースドライバ504bは、それぞれ画素部502と同じ基板上に設けられていてもよいし、ゲートドライバ回路またはソースドライバ回路が別途形成された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)をCOGやTAB(Tape Automated Bonding)によって基板に実装する構成としてもよい。
【0514】
図32Aに示す複数の画素回路501は、例えば、図32B及び図32Cに示す構成とすることができる。
【0515】
図32Bに示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容量素子560と、を有する。また画素回路501には、データ線DL_n、ゲート線GL_m、電位供給線VL等が接続されている。
【0516】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0517】
図32Cに示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素子562と、発光素子572と、を有する。また画素回路501には、データ線DL_n、ゲート線GL_m、電位供給線VL_a、電位供給線VL_b等が接続されている。
【0518】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。トランジスタ554のゲートに与えられる電位に応じて、発光素子572に流れる電流が制御されることにより、発光素子572からの発光輝度が制御される。
【0519】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0520】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0521】
(実施の形態5)
以下では、画素に表示される階調を補正するためのメモリを備える画素回路と、これを有する表示装置について説明する。実施の形態2で例示したトランジスタは、以下で例示する画素回路に用いられるトランジスタに適用することができる。
【0522】
<回路構成>
図33Aに、画素回路400の回路図を示す。画素回路400は、トランジスタM1、トランジスタM2、容量C1、及び回路401を有する。また画素回路400には、配線S1、配線S2、配線G1、及び配線G2が接続される。
【0523】
トランジスタM1は、ゲートが配線G1と、ソース及びドレインの一方が配線S1と、他方が容量C1の一方の電極と、それぞれ接続する。トランジスタM2は、ゲートが配線G2と、ソース及びドレインの一方が配線S2と、他方が容量C1の他方の電極、及び回路401と、それぞれ接続する。
【0524】
回路401は、少なくとも一の表示素子を含む回路である。表示素子として様々な素子を用いることができるが、代表的には有機EL素子やLED素子などの発光素子、液晶素子、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子等を適用することができる。
【0525】
トランジスタM1と容量C1とを接続するノードをN1、トランジスタM2と回路401とを接続するノードをN2とする。
【0526】
画素回路400は、トランジスタM1をオフ状態とすることで、ノードN1の電位を保持することができる。また、トランジスタM2をオフ状態とすることで、ノードN2の電位を保持することができる。また、トランジスタM2をオフ状態とした状態で、トランジスタM1を介してノードN1に所定の電位を書き込むことで、容量C1を介した容量結合により、ノードN1の電位の変位に応じてノードN2の電位を変化させることができる。
【0527】
ここで、トランジスタM1、トランジスタM2のうちの一方または両方に、実施の形態2で例示した、酸化物半導体が適用されたトランジスタを適用することができる。そのため極めて低いオフ電流により、ノードN1及びノードN2の電位を長期間に亘って保持することができる。なお、各ノードの電位を保持する期間が短い場合(具体的には、フレーム周波数が30Hz以上である場合等)には、シリコン等の半導体を適用したトランジスタを用いてもよい。
【0528】
<駆動方法例>
続いて、図33Bを用いて、画素回路400の動作方法の一例を説明する。図33Bは、画素回路400の動作に係るタイミングチャートである。なおここでは説明を容易にするため、配線抵抗などの各種抵抗や、トランジスタや配線などの寄生容量、及びトランジスタのしきい値電圧などの影響は考慮しない。
【0529】
図33Bに示す動作では、1フレーム期間を期間T1と期間T2とに分ける。期間T1はノードN2に電位を書き込む期間であり、期間T2はノードN1に電位を書き込む期間である。
【0530】
〔期間T1〕
期間T1では、配線G1と配線G2の両方に、トランジスタをオン状態にする電位を与える。また、配線S1には固定電位である電位Vrefを供給し、配線S2には第1データ電位Vを供給する。
【0531】
ノードN1には、トランジスタM1を介して配線S1から電位Vrefが与えられる。また、ノードN2には、トランジスタM2を介して第1データ電位Vが与えられる。したがって、容量C1には電位差V-Vrefが保持された状態となる。
【0532】
〔期間T2〕
続いて期間T2では、配線G1にはトランジスタM1をオン状態とする電位を与え、配線G2にはトランジスタM2をオフ状態とする電位を与える。また、配線S1には第2データ電位Vdataを供給する。配線S2には所定の定電位を与える、またはフローティングとしてもよい。
【0533】
ノードN1には、トランジスタM1を介して第2データ電位Vdataが与えられる。このとき、容量C1による容量結合により、第2データ電位Vdataに応じてノードN2の電位が電位dVだけ変化する。すなわち、回路401には、第1データ電位Vwと電位dVを足した電位が入力されることとなる。なお、図33BではdVが正の値であるように示しているが、負の値であってもよい。すなわち、第2データ電位Vdataが電位Vrefより低くてもよい。
【0534】
ここで、電位dVは、容量C1の容量値と、回路401の容量値によって概ね決定される。容量C1の容量値が回路401の容量値よりも十分に大きい場合、電位dVは第2データ電位Vdataに近い電位となる。
【0535】
このように、画素回路400は、2種類のデータ信号を組み合わせて表示素子を含む回路401に供給する電位を生成することができるため、画素回路400内で階調の補正を行うことが可能となる。
【0536】
画素回路400は、配線S1及び配線S2に供給可能な最大電位を超える電位を生成することも可能となる。例えば発光素子を用いた場合では、ハイダイナミックレンジ(HDR)表示等を行うことができる。また、液晶素子を用いた場合では、オーバードライブ駆動等を実現できる。
【0537】
<適用例>
〔液晶素子を用いた例〕
図33Cに示す画素回路400LCは、回路401LCを有する。回路401LCは、液晶素子LCと、容量C2とを有する。
【0538】
液晶素子LCは、一方の電極がノードN2及び容量C2の一方の電極と、他方の電極が電位Vcom2が与えられる配線と接続する。容量C2は、他方の電極が電位Vcom1が与えられる配線と接続する。
【0539】
容量C2は保持容量として機能する。なお、容量C2は不要であれば省略することができる。
【0540】
画素回路400LCは、液晶素子LCに高い電圧を供給することができるため、例えばオーバードライブ駆動により高速な表示を実現すること、駆動電圧の高い液晶材料を適用することなどができる。また、配線S1または配線S2に補正信号を供給することで、使用温度や液晶素子LCの劣化状態等に応じて階調を補正することもできる。
【0541】
〔発光素子を用いた例〕
図33Dに示す画素回路400ELは、回路401ELを有する。回路401ELは、発光素子EL、トランジスタM3、及び容量C2を有する。
【0542】
トランジスタM3は、ゲートがノードN2及び容量C2の一方の電極と、ソース及びドレインの一方が電位VHが与えられる配線と、他方が発光素子ELの一方の電極と、それぞれ接続される。容量C2は、他方の電極が電位Vcomが与えられる配線と接続する。発光素子ELは、他方の電極が電位Vが与えられる配線と接続する。
【0543】
トランジスタM3は、発光素子ELに供給する電流を制御する機能を有する。容量C2は保持容量として機能する。容量C2は不要であれば省略することができる。
【0544】
なお、ここでは発光素子ELのアノード側がトランジスタM3と接続する構成を示しているが、カソード側にトランジスタM3を接続してもよい。そのとき、電位Vと電位Vの値を適宜変更することができる。
【0545】
画素回路400ELは、トランジスタM3のゲートに高い電位を与えることで、発光素子ELに大きな電流を流すことができるため、例えばHDR表示などを実現することができる。また、また、配線S1または配線S2に補正信号を供給することで、トランジスタM3や発光素子ELの電気特性のばらつきの補正を行うこともできる。
【0546】
なお、図33C及び図33Dで例示した回路に限られず、別途トランジスタや容量などを追加した構成としてもよい。
【0547】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0548】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様を用いて作製することができる表示モジュールについて説明する。
【0549】
図34Aに示す表示モジュール6000は、上部カバー6001と下部カバー6002との間に、FPC6005が接続された表示装置6006、フレーム6009、プリント基板6010、及びバッテリー6011を有する。
【0550】
例えば、本発明の一態様を用いて作製された表示装置を、表示装置6006に用いることができる。表示装置6006により、極めて消費電力の低い表示モジュールを実現することができる。
【0551】
上部カバー6001及び下部カバー6002は、表示装置6006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0552】
表示装置6006はタッチパネルとしての機能を有していてもよい。
【0553】
フレーム6009は、表示装置6006の保護機能、プリント基板6010の動作により発生する電磁波を遮断する機能、放熱板としての機能等を有していてもよい。
【0554】
プリント基板6010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信号処理回路、バッテリー制御回路等を有する。バッテリー6011による電源であってもよい。
【0555】
図34Bは、光学式のタッチセンサを備える表示モジュール6000の断面概略図である。
【0556】
表示モジュール6000は、プリント基板6010に設けられた発光部6015及び受光部6016を有する。また、上部カバー6001と下部カバー6002により囲まれた領域に一対の導光部(導光部6017a、導光部6017b)を有する。
【0557】
表示装置6006は、フレーム6009を間に介してプリント基板6010やバッテリー6011と重ねて設けられている。表示装置6006とフレーム6009は、導光部6017a、導光部6017bに固定されている。
【0558】
発光部6015から発せられた光6018は、導光部6017aにより表示装置6006の上部を経由し、導光部6017bを通って受光部6016に達する。例えば指やスタイラスなどの被検知体により、光6018が遮られることにより、タッチ操作を検出することができる。
【0559】
発光部6015は、例えば表示装置6006の隣接する2辺に沿って複数設けられる。受光部6016は、発光部6015と対向する位置に複数設けられる。これにより、タッチ操作がなされた位置の情報を取得することができる。
【0560】
発光部6015は、例えばLED素子などの光源を用いることができ、特に、赤外線を発する光源を用いることが好ましい。受光部6016は、発光部6015が発する光を受光し、電気信号に変換する光電素子を用いることができる。好適には、赤外線を受光可能なフォトダイオードを用いることができる。
【0561】
光6018を透過する導光部6017a、導光部6017bにより、発光部6015と受光部6016とを表示装置6006の下側に配置することができ、外光が受光部6016に到達してタッチセンサが誤動作することを抑制できる。特に、可視光を吸収し、赤外線を透過する樹脂を用いると、タッチセンサの誤動作をより効果的に抑制できる。
【0562】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0563】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置を適用可能な、電子機器の例について説明する。
【0564】
図35Aに示す電子機器6500は、スマートフォンとして用いることのできる携帯情報端末機である。
【0565】
電子機器6500は、筐体6501、表示部6502、電源ボタン6503、ボタン6504、スピーカ6505、マイク6506、カメラ6507、及び光源6508等を有する。表示部6502はタッチパネル機能を備える。
【0566】
表示部6502に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0567】
図35Bは、筐体6501のマイク6506側の端部を含む断面概略図である。
【0568】
筐体6501の表示面側には透光性を有する保護部材6510が設けられ、筐体6501と保護部材6510に囲まれた空間内に、表示パネル6511、光学部材6512、タッチセンサパネル6513、プリント基板6517、バッテリー6518等が配置されている。
【0569】
保護部材6510には、表示パネル6511、光学部材6512、及びタッチセンサパネル6513が図示しない接着層により固定されている。
【0570】
表示部6502よりも外側の領域において、表示パネル6511の一部が折り返されている。また、当該折り返された部分に、FPC6515が接続されている。FPC6515には、IC6516が実装されている。またFPC6515は、プリント基板6517に設けられた端子に接続されている。
【0571】
表示パネル6511には本発明の一態様のフレキシブルディスプレイパネルを適用することができる。そのため、極めて軽量な電子機器を実現できる。また、表示パネル6511が極めて薄いため、電子機器の厚さを抑えつつ、大容量のバッテリー6518を搭載することもできる。また、表示パネル6511の一部を折り返して、画素部の裏側にFPC6515との接続部を配置することにより、狭額縁の電子機器を実現できる。
【0572】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0573】
(実施の形態8)
本実施の形態では、本発明の一態様を用いて作製された表示装置を備える電子機器について説明する。
【0574】
以下で例示する電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を備えるものである。したがって、高い解像度が実現された電子機器である。また高い解像度と、大きな画面が両立された電子機器とすることができる。
【0575】
本発明の一態様の電子機器の表示部には、例えばフルハイビジョン、4K2K、8K4K、16K8K、またはそれ以上の解像度を有する映像を表示させることができる。
【0576】
電子機器として、例えば、テレビジョン装置、ノート型のパーソナルコンピュータ、モニタ装置、デジタルサイネージ、パチンコ機、ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。
【0577】
本発明の一態様が適用された電子機器は、家屋やビルの内壁または外壁、自動車等の内装または外装等が有する平面または曲面に沿って組み込むことができる。
【0578】
図36Aにテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7500が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0579】
図36Aに示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7500にタッチパネルを適用し、これに触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7111は、操作ボタンの他に表示部を有していてもよい。
【0580】
なお、テレビジョン装置7100は、テレビ放送の受信機や、ネットワーク接続のための通信装置を有していてもよい。
【0581】
図36Bに、ノート型パーソナルコンピュータ7200を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7500が組み込まれている。
【0582】
図36C及び図36Dに、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)の一例を示す。
【0583】
図36Cに示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7500、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0584】
図36Dは円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7500を有する。
【0585】
表示部7500が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができ、また人の目につきやすいため、例えば広告の宣伝効果を高める効果を奏する。
【0586】
表示部7500にタッチパネルを適用し、使用者が操作できる構成とすると好ましい。これにより、広告用途だけでなく、路線情報や交通情報、商用施設の案内情報など、使用者が求める情報を提供するための用途にも用いることができる。
【0587】
図36C及び図36Dに示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、ユーザが所持するスマートフォン等の情報端末機7311と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7500に表示される広告の情報を情報端末機7311の画面に表示させることや、情報端末機7311を操作することで、表示部7500の表示を切り替えることができる。
【0588】
デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数のユーザが同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0589】
図36A乃至図36Dにおける表示部7500に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0590】
本実施の形態の電子機器は表示部を有する構成としたが、表示部を有さない電子機器にも本発明の一態様を適用することができる。
【0591】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0592】
10、10A、10B、10C:トランジスタ、11、13、15、17:範囲、100、100A、100B、100C、100D、100E、100F、100G、100H:トランジスタ、102:基板、104:導電層、106、106a、106a1、106a2、106a3、106b:絶縁層、108、108a、108b:半導体層、108af、108bf:金属酸化物膜、112:ゲート電極、112a、112b、113、113a、113b、113c:導電層、113af、113bf、113cf:導電膜、114、116、118:絶縁層、120、120a、120b:導電層、130:プラズマ、140:レジストマスク、142a、142b、142c:開口部、150:金属酸化物層
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図21C
図21D
図22A
図22B
図22C
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図24C
図25A
図25B
図25C
図25D
図25E
図26A
図26B
図26C
図27
図28
図29
図30
図31
図32A
図32B
図32C
図33A
図33B
図33C
図33D
図34A
図34B
図35A
図35B
図36A
図36B
図36C
図36D