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特許7515457産業用装置の2つの電子デバイス間の通信のための無線デジタル通信方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】産業用装置の2つの電子デバイス間の通信のための無線デジタル通信方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/49 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
H04L25/49 K
H04L25/49 J
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021505412
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019070280
(87)【国際公開番号】W WO2020025507
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】102018000007652
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(31)【優先権主張番号】102018000007657
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】500200708
【氏名又は名称】マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】MARPOSS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト、パドバーニ
【審査官】阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-060736(JP,A)
【文献】特表2010-502452(JP,A)
【文献】特開2005-055374(JP,A)
【文献】特表2008-533754(JP,A)
【文献】特開2006-094456(JP,A)
【文献】特開2006-268925(JP,A)
【文献】特開2014-065566(JP,A)
【文献】特表2007-531131(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0020802(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0057500(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用装置の第1電子デバイスと第2電子デバイスとの間における通信のための無線デジタル通信方法であって、
-前記第1電子デバイス(3、16)が、所定個数のパルス(N)を有するパルス(15)の各シーケンスによって、少なくとも1つの情報のビットを符号化するステップであって、前記パルス(25)は、対応する個数(N-1)の無信号区間(26)と交互にされ、前記パルス(25)のシーケンスの各パルス(25)は、10ns以下のパルス持続時間(Tl)を有し、前記無信号区間(26)は、30ns以上の各無信号持続時間(TSj)を有するステップと、
-前記第1電子デバイス(3、16)が、前記パルス(25)のシーケンスに対応する複数の電波パルスを含む電波信号(RS)を、電波搬送波を変調せずに送信するステップと、
-前記第2電子デバイス(16、3)が、前記電波信号(RS)を受信して復号化し、前記少なくとも1つの情報のビットを取得するステップと、
を備え、
パルス(25)のシーケンスによって少なくとも1つの情報のビットを符号化する前記ステップは、
-前記少なくとも1つの情報のビットの値に応じて、前記パルス(25)のシーケンスに関する前記無信号持続時間(TSj)を変調すること、
を備える、
方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの情報のビットの前記値に応じて、前記パルス(25)のシーケンスに関する前記無信号持続時間(TSj)を変調する前記ステップは、
-前記少なくとも1つの情報のビットが第1論理値を持つか第2論理値を持つかに応じて、前記無信号区間(TSj)を第1の持続時間シーケンスまたは第2の持続時間シーケンスで変調すること、
を備える、
請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および第2の持続時間シーケンスのそれぞれは、交代する2つの持続時間値(TS1、TS2)を備える、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
産業用装置の第1電子デバイスと第2電子デバイスとの間における通信のための無線デジタル通信方法であって、
-前記第1電子デバイス(3、16)が、所定個数のパルス(N)を有するパルス(15)の各シーケンスによって、少なくとも1つの情報のビットを符号化するステップであって、前記パルス(25)は、対応する個数(N-1)の無信号区間(26)と交互にされ、前記パルス(25)のシーケンスの各パルス(25)は、10ns以下のパルス持続時間(Tl)を有し、前記無信号区間(26)は、30ns以上の各無信号持続時間(TSj)を有するステップと、
-前記第1電子デバイス(3、16)が、前記パルス(25)のシーケンスに対応する複数の電波パルスを含む電波信号(RS)を、電波搬送波を変調せずに送信するステップと、
-前記第2電子デバイス(16、3)が、前記電波信号(RS)を受信して復号化し、前記少なくとも1つの情報のビットを取得するステップと、
-スタンバイ状態にある際の前記第1電子デバイス(3)が要求メッセージを送信するステップであって、前記要求メッセージは、複数の情報ビットと、前記要求メッセージの最初の情報ビットの前記パルス(25)のシーケンスの前記最初のパルスの送信タイミングと、を含むステップと、
-前記第2電子デバイス(16)が前記要求メッセージを受信して、受信した前記要求メッセージから前記送信タイミングを抽出し、受信した前記要求メッセージの前記最初のパルスの受信タイミングを検出するステップと、
-前記第2電子デバイス(16)が、前記送信タイミングおよび前記受信タイミングに基づいて、前記要求メッセージの飛行時間を計算するステップと、
-前記第2電子デバイス(16)が、前記飛行時間に応じて、前記2つの電子デバイス(16、3)間の距離を推定するステップと、
-推定された前記距離が所定条件に適合した場合、前記第2電子デバイス(16)が応答メッセージを送信するステップと、
-前記応答メッセージの受信時に、前記第1電子デバイス(3)が、前記2つの電子デバイス(16)同士が互いに通信可能に連結された操作状態に切り替わるステップと、
を追加的に含む、
方法。
【請求項5】
スタンバイ状態にある際の前記第1電子デバイス(3)が要求メッセージを送信する前記ステップは、
-定期的にイベントを生成することと、
-前記要求メッセージを各イベント時に送信することと、
を備える、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
スタンバイ状態にある際の前記第1電子デバイス(3)が要求メッセージを送信する前記ステップは、
-少なくとも特定の方向に沿った加速度を、前記第1電子デバイス(3)の加速度計により検出することと、
-検出された前記加速度が特定の特徴を有する場合、前記要求メッセージを送信することと、
を備える、
請求項に記載の方法。
【請求項7】
検出された前記加速度の前記特定の特徴は、閾加速度値より大きい振幅、および閾時間値より短い持続時間のピークを含む、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2電子デバイス(16)は、所定の相互距離を置いて配置された2つの各アンテナを含む2つの受信機を備え、
-前記要求メッセージを受信する前記ステップは、前記2つの受信機が前記要求メッセージを受信することを含み、
-受信した前記要求メッセージの前記最初のパルスの前記受信タイミングを検出する前記ステップは、前記2つの受信機が受信した第1受信要求メッセージおよび第2受信要求メッセージの2つの受信タイミングを検出することを含み、
-前記方法は、前記第2電子デバイス(16)が、前記2つの受信タイミングに応じて到着時間差を計算するとともに、前記到着時間差に基づいて前記要求メッセージの到着角度を推定することを更に備え、
推定された前記距離が前記所定条件に適合するとともに推定された前記到着角度が別の所定条件に適合する場合、前記応答メッセージが送信される、
請求項乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2電子デバイス(16)に実質的に等しい追加の第2電子デバイスであって、前記第2電子デバイス(16)から所定距離を置いて配置されるとともに、これに通信インターフェース(18)を介して接続された追加の第2電子デバイスを備え、
-前記要求メッセージを受信する前記ステップは、前記要求メッセージを前記第2電子デバイスおよび追加の第2電子デバイスの受信機を介して受信することを含み、
-受信した前記要求メッセージの前記最初のパルスの前記受信タイミングを検出する前記ステップは、前記第2電子デバイス(16)および前記追加の第2電子デバイスが、第1受信要求メッセージおよび第2受信要求メッセージの2つの受信タイミングをそれぞれ検出することを含み、
前記方法は、
-前記第2電子デバイス(16)および/または追加の第2電子デバイスが、前記2つの受信タイミングに応じて到着時間差を計算し、前記到着時間差に基づいて前記要求メッセージの到着角度を推定すること、
を更に備え、
推定された前記距離が前記所定条件に適合するとともに推定された前記到着角度が別の所定条件に適合する場合、前記第2電子デバイス(16)および/または前記追加の第2電子デバイスが前記応答メッセージを送信する、
請求項乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
産業用装置の第1および第2電子デバイス(3、16)間の通信のための無線デジタル通信システムであって、前記無線デジタル通信システム(20)は、前記第1および第2電子デバイス(3、16)のそれぞれについて、各符号化/復号化デバイス(21、22)と、各電波送受信機(23、24)と、を備え、前記符号化/復号化デバイス(21、22)および前記電波送受信機(23、24)は、
-前記第1電子デバイス(3、16)が、所定個数のパルス(N)を有するパルス(15)の各シーケンスによって、少なくとも1つの情報のビットを符号化するステップであって、前記パルス(25)は、対応する個数(N-1)の無信号区間(26)と交互にされ、前記パルス(25)のシーケンスの各パルス(25)は、10ns以下のパルス持続時間(Tl)を有し、前記無信号区間(26)は、30ns以上の各無信号持続時間(TSj)を有するステップと、
-前記第1電子デバイス(3、16)が、前記パルス(25)のシーケンスに対応する複数の電波パルスを含む電波信号(RS)を、電波搬送波を変調せずに送信するステップと、
-前記第2電子デバイス(16、3)が、前記電波信号(RS)を受信して復号化し、前記少なくとも1つの情報のビットを取得するステップと、を含む方法を実施するように構成される、
無線デジタル通信システム(20)。
【請求項11】
第1および第2電子デバイス(3、16)と、請求項10に記載の無線デジタル通信システム(20)と、を備える産業用装置。
【請求項12】
前記第1および第2電子デバイス(3、16)のそれぞれは、前記各符号化/復号化デバイス(21、22)と、前記各電波送受信機(23、24)と、を含む、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
第1および第2電子デバイス(3、16)を備える産業用装置であって、
前記第1および第2電子デバイス(3、16)のそれぞれは、各符号化/復号化デバイス(21、22)と、各電波送受信機(23、24)と、各制御ユニット(15、17)と、を備え、
前記符号化/復号化デバイス(21、22)および前記電波送受信機(23、24)は、前記第1および第2電子デバイス(3、16)間の通信のための無線デジタル通信システム(20)を形成し、
前記無線デジタル通信システム(20)および前記制御ユニット(15、17)は、請求項乃至のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成される、
産業用装置。
【請求項14】
第1および第2電子デバイス(3、16)を備える産業用装置であって、
前記第1および第2電子デバイス(3、16)のそれぞれは、各符号化/復号化デバイス(21、22)と、各電波送受信機(23、24)と、各制御ユニット(15、17)と、を備え、
前記符号化/復号化デバイス(21、22)および前記電波送受信機(23、24)は、前記第1および第2電子デバイス(3、16)間の通信のための無線デジタル通信システム(20)を形成し、
少なくとも前記第2電子デバイス(16)の前記電波送受信機(23、24)は、所定の相互距離を置いて配置された各アンテナを有する2つの受信機を備え、
前記無線デジタル通信システム(20)及び前記制御ユニット(15、17)は、
請求項に記載の方法を実施するように構成される、
産業用装置。
【請求項15】
第1電子デバイス(3)と、第2電子デバイス(16)と、追加の第2電子デバイスと、を備えた産業用装置であって、
前記追加の第2電子デバイスは、前記第2電子デバイス(16)から所定距離を置いて配置されるとともに前記第2電子デバイス(16)に実質的に等しく、
前記電子デバイスのそれぞれは、各符号化/復号化デバイス(21、22)と、各電波送受信機(23、24)と、各制御ユニット(15、17)と、を備え、
前記符号化/復号化デバイス(21、22)および前記電波送受信機(23、24)は、前記第1および第2電子デバイス(3、16)間の通信のための無線デジタル通信システム(20)を形成し、
前記無線デジタル通信システム(20)および前記制御ユニット(15、17)は、請求項に記載の方法を実施するように構成される、
産業用装置。
【請求項16】
フレーム(5)と、前記フレーム(5)に装着された可動の操作ヘッド(8)と、を備えた工作機械(2)を含む装置であって、
前記第1電子デバイス(3)は前記操作ヘッド(8)に接続可能であり、前記第2電子デバイス(16)は前記フレーム(5)に接続される、
請求項11乃至15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記第1電子デバイスは、ワークピース(7)のチェックを実施するとともに対応する読取値を提供するプローブ(3)によって構成され、
前記第2電子デバイスは、前記読取値を前記無線デジタル通信システム(20)を介して収集するように構成された制御ユニット(17)を備えた基地局(16)によって構成される、
請求項11乃至16のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用装置の2つの電子デバイス間の通信のための無線デジタル通信方法、および対応する無線デジタル通信システムに関する。
【0002】
特に、本発明は、少なくとも、可動プローブと工作機械のフレームに取り付けられた少なくとも1つの基地局との間における通信において有利に、しかし排他的ではなく適用される。以下に参照する説明は、純粋に例示的なものである。
【背景技術】
【0003】
例えば、フィラー装置(探知装置)を有するプローブ等のプローブと、工作機械のフレームに取り付けられた基地局との間における無線通信のための産業設備および装置の分野で使用される無線通信システムが知られている。このような無線通信システムは、キャリア信号を利用して情報を或る電子デバイスから別のものに送信する。このキャリア信号は、例えば、当該情報を含む変調信号によって適切に変調される特性を有する赤外線帯域の光学搬送波又は電波搬送波である。変調される搬送波の特性とは、例えば、振幅、位相、または周波数である。
【0004】
変調される搬送波の特性がどのようなものであっても、変調信号の情報内容がどのようなものであっても、情報内容の送信中に、搬送波信号は継続的に送信される。すなわち、変調された搬送波に基づく無線通信は、電磁場を継続的に放出する。
【0005】
産業適用分野における不利な点は、以下に記す。
-多大な電力消費。これは、バッテリにより給電される可動プローブにおいて特に望ましくない。
-同一の作業領域に共存する多くのワイヤレス通信システム同士の干渉。
-強力な破壊的干渉の領域を生成するマルチパス・フェーディングと呼ばれる現象の存在。このような領域は、先験的に知ることのできない多くの金属物や多くの人が存在し移動する実際の産業作業環境において、実質的に特定することができない。
【0006】
更に、産業用装置のプローブは、いずれも、通常基地局に通信可能に接続する必要がある。これにより、これら産業用装置のプローブは通信中に相互に認識可能である。特定の工作機械の基地局は、他の工作機械に関連して動作するプローブの送信を考慮しないようになされている。無線通信プロトコルを採用する既知のシステムにおいて、プローブと基地局との相互認識または認証には、認識プロセスまたは認証の開始に際してオペレータまたは外部システムの介入が必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、上述の欠点がないと同時に安価で実施できるとともに製造が容易である、産業用装置の2つの電子デバイス間における無線通信方法、および関連するシステムを提供することである。
【0008】
本発明によれば、添付の特許請求の範囲に規定される、産業用装置の2つの電子デバイス間の通信のための無線デジタル通信方法、産業用装置の2つの電子デバイス間の通信のための無線デジタル通信システム、および産業用装置が提供される。
【0009】
本発明の非限定的な実施形態を、添付図面を参照して例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明による無線通信方法により互いに通信する2つの電子デバイスを備えた産業用装置を概略的に示す図。
図2】本発明による無線通信方法の一部を示すタイムチャート。
図3】本発明による無線通信方法の符号化ステップの一実施形態を示す時間図。
図4】本発明による無線通信方法の符号化ステップの別の実施形態を示す時間図。
図5】本発明による無線通信方法の符号化ステップの別の実施形態を示す時間図。
図6】本発明による無線通信方法の符号化ステップの別の実施形態を示す時間図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1において、符号1は、工作機械2と「タッチトリガ」タイプのプローブ3とを備えた産業用装置全体を示す。
【0012】
工作機械2は、ベース4と、ベース4に固定的に連結されたフレーム5と、ワークピース7が配置される作業領域6と、例えばワークピース7を加工するように適合されたツール9を支持する主軸を備えた可動の操作ヘッド8と、を備えている。操作ヘッド8は、フレーム5に取り付けられたガイド10に沿って摺動可能であるようにフレーム5に装着され、これにより作業領域6内で可動となっている。工作機械2は、符号11で示される数値制御装置を更に備えている。
【0013】
プローブ3は、操作ヘッド8に接続可能である。より具体的には、プローブ3は、操作ヘッド8の本体に取り付けられ得る。その目的は、ワークピース7のチェックを実施すること、特に、ワークピースの位置および寸法をその加工前、加工中、および加工後にチェックすること、そして対応する読取値を提供することである。一般に、プローブ3と操作ヘッド8は、いずれかがツール9に連結されるが、図1では、図示を単純にするように、プローブ3およびツール9の両方が同時に操作ヘッド8に取り付けられている。
【0014】
特に、プローブ3は、可動アーム12を備える。アーム12は、一端部に、フィーラ13(接触子)と、検出デバイス14と、制御ユニット15と、を有している。検出デバイス14は、例えば、フィーラ13がピース7に接触すると即座に電気信号を生成するように適合されたマイクロスイッチを含んでいる。制御ユニットは、例えば、検出デバイス14に連結されて接触により生成された電気信号をそこから受信するマイクロコントローラである。可動アーム12、フィーラ13、および検出デバイス14は、タッチトリガプローブを形成していることに留意されたい。
【0015】
概略的に図示するように、工作機械2は、フレーム5に接続可能な基地局16であって、制御ユニット17を有する基地局16を備えている。制御ユニット17は、例えば、通信インターフェース18を介して数値制御装置11に接続されたマイクロコントローラである。
【0016】
プローブ3は、少なくとも1つの所定方向に沿った加速度を検出するための加速度計19を更に備えている。
【0017】
産業用装置1は、プローブ3と基地局16とにより構成される2つの電子デバイス間の通信のための、全体として符号20で示す無線デジタル通信システムを備えている。2つの電子デバイスの一方および他方は、第1電子デバイスおよび第2電子デバイスとして特定され得る。通信システム20は、本発明の方法、すなわち無線デジタル通信プロトコルを実施する。
【0018】
通信システム20は、2つの電子デバイス3および16のそれぞれについて、各符号化/復号化デバイス21および22を備えている。当該デバイスは、情報ビットを符号化して送信すべき信号を取得し、且つ受信した信号を復号して情報ビットを特定するためのものである。2つの電子デバイス3および16は、対応する符号化/復号化デバイス21および22に接続された各電波送受信機23および24もそれぞれ含んでいる。
【0019】
図2は、プローブ3から基地局16への、またはその逆のデジタル信号の送信を示す。各符号化/復号化デバイス21、22は、デジタル信号の少なくとも1つの情報のビット、好適には各情報ビットを、所定個数Nのパルス25の各シーケンスで符号化するように構成されている。パルス25は、対応する個数(N-1)の無信号区間26と交互にされている。換言すれば、2つの隣接するパルス25は、無信号区間26により離間している。N個のパルス25のシーケンスは、TBで示される、ビット時間に等しい合計持続時間を有する。各パルス25は、実質的にエネルギー制限された時間関数により定義され、10ns以下のパルス持続時間Tl、好適には各パルス25について同一のパルス持続時間Tlを有している。無信号区間26は、それぞれが30ns以上である各無信号持続時間TSjを有している。
【0020】
図2では、各パルス25が矩形の波形を有するものとして概略的に示されているが、これは本発明の本質的な特徴ではない。
【0021】
電子デバイス3(または16)の送信側の送受信機23(または24)は、図1においてRSで示す無線信号であって、パルス25のシーケンス(パルスシーケンス25)に対応する複数の無線パルスを含む電波信号を、電波搬送波を変調せずに送信するように構成されている。換言すれば、電波信号RSの各パルスは、実質的にエネルギー制限されたパルスであり、実質的に同一のパルス持続時間Tlを有する。そして電波信号RSのパルス同士は、無信号持続時間TSjにより実質的に間を置いている。電子デバイス16(または3)の受信側の送受信機24(または23)は、電波信号RSを受信し、これを各符号化/復号化デバイス22(または21)に供給するように構成されている。符号化/復号化デバイス22(または21)は、このような電波信号RSを復号して各情報のビットを取得するように構成されている。
【0022】
有利には、通信システム20は、プローブ3から提供された読取値をデジタル形式で基地局16に送信するための産業装置1において使用される。基地局16の制御ユニット17は、通信システム20を介して受信した読取値を収集するように構成される。特に、プローブ3の制御ユニット15は、検出デバイス14から供給された電気信号をデジタル信号に、すなわち単一のビットまたは通常は複数のビットのシーケンスに変換するように構成される。ビットは、図2を参照して上述した態様において符号化/復号化デバイス21により符号化され、各送受信機23により電波(電波信号RS)で送信される。基地局16において、送受信機24が電波信号RSを受信し、各符号化/復号化デバイス22が電波信号RSを復号化してデジタル信号を取得し、このデジタル信号を制御ユニット17が収集する。
【0023】
また、通信システム20は、反対方向の送信、すなわちコマンドおよびプログラミング制御をデジタル形式で基地局16からプローブ3に送信するように使用される。
【0024】
特に図3を参照すると、各符号化/復号化デバイス21、22は、対応する情報ビットの値に基づいて、N個のパルスの各シーケンスのパルス25の極性を変調するように構成されている。図3の例において、情報のビットが高い論理値(図3においてビット=1)を有している場合、パルス25は全て正の値を有する。あるいは、情報のビットが低い論理値(図3においてビット=0)を有する場合、パルス25は全て負の値を有する、すなわち、BPSK変調等の相変調において一般に意図されるように反対の極性となる。無信号持続時間TSjは互いに同一である。
【0025】
図3の変形例である図4に示す本発明の別の実施形態によれば、情報のビットが高い論理値を有する場合、パルス25のシーケンスは、交代する正パルス25aおよび負パルス25bにより特徴付けられる。あるいは、情報のビットが低い論理値を有する場合、パルス25のシーケンスは、異なるパルスの交代を特徴とする。このような異なる交代は、高い論理レベルを有する情報のビットを特徴付ける極性と反対の、好適にはこれに直交する極性を有するパルスから構成され得る。この目的は、符号化/復号化デバイス21、22による復号化の実施中に、情報のビットの高い論理値と低い論理値とを容易に区別可能とすることである。互いに直交するパルスのシーケンスは、パルスのシーケンスの互いの相互相関が低いことを意味する。
【0026】
図5に示す本発明の別の実施形態によれば、各符号化/復号化デバイス21、22は、N個のパルス25の各シーケンスにおける無信号持続時間TSjを、対応する情報のビットの値(パルス位置変調)の関数として(に応じて)、特に2つの別個の持続時間のシーケンスに応じて変調するように構成されている。この目的は、情報のビットの高い論理値と低い論理値とを容易に区別可能とすることである。
【0027】
図5に示す例において、情報のビットが高い論理値を有する場合、無信号持続時間TSjが、2つの値TS1とTS2との第1の交代に応じて変調される。この交代では、例えば第2の値TS2より大きい第1の値TS1から第2の値TS2が開始する。あるいは、情報のビットが低い論理値を有する場合、無信号持続時間TSjは、同じ2つの値TS1およびTS2であって、第2の値TS2から開始する第2の交代に応じて変調される。換言すれば、無信号持続時間TSjの変調に応じた2つの別個の持続時間のシーケンスは、二極性のシーケンスとして定義され得る。
【0028】
図5の実施形態の変形例であって図示しない本発明の別の実施形態によれば、無信号持続時間TSjが変調されることに応じた2つの別個の持続時間のシーケンスは、3つの極性のシーケンスであるか(すなわち、互いに交代する無信号時間TSjの3つの異なる値が含まれる)、または3より大きい次数のシーケンスである。
【0029】
図6に示す本発明の別の実施形態によれば、各符号化/復号化デバイス21、22は、N個のパルスの各シーケンスのパルス25の振幅を、対応する情報のビットに応じて、オン/オフキーイング(On-Of Keying(OOK))変調にしたがって、特に、抑制される、すなわち送信されないパルス数が異なることで互いに異なる2つの異なるパルスシーケンスにしたがって、変調するように構成されている。無信号持続時間TSjは互いに同一である。
【0030】
図6の例において、存在するパルスは25cで示され、抑制されるパルスは破線で表されるとともに25dで示される。
【0031】
図示しない本発明の別の実施形態において、パルス25および無信号持続時間TSjの上述の変調技術(振幅または極性/位相変調)のうちの少なくともいくつかが組み合わされて、通信のロバスト性を向上させ得る混合変調とされている。例えば、各符号化/復号化デバイス21、22は、パルス25の極性を変調すると同時に、2つの別個の持続時間のシーケンスにしたがって無信号持続時間TSjを変調するように構成される。
【0032】
例として、情報が1Mbpsの速度で送信され、各情報のビットについてのパルスの個数Nが32であり、パルス持続時間Tlが2nsであるとすると、100万分の1秒(1μs)間、すなわち1ビットの情報を送信するのに必要な時間の間で、電磁場は64ns、すなわち6.4%の時間しか放出されない。これにより高いエネルギー効率が確保される。本例において、無信号持続時間TSjは約30.2nsに等しいことが観察され得る。
【0033】
電磁波の伝搬速度は、真空中の光の速度、すなわち3’10m/sよりわずかに小さいため、信号RSは、1mの距離を約3.3nsで、そして10mの距離を約33nsで伝わる。これは、パルス持続時間Tlが3.3nsより短く、無信号区間が33nsより長い場合、半径1mの内周と半径10mの外周との間に含まれる環状領域において、パルス25が重なり合わないということを意味する。これは、プローブ3と基地局16との間に存在する障害物の表面でパルス25が数回反射した後、急速に減衰することにもよる。実際に、パルス持続時間Tlが極端に減少すると、信号RSのスペクトル内容が、伝搬距離の増加に伴い強く減衰する非常に高い周波数にシフトする。
【0034】
非常に短縮されたパルス持続時間Tl、パルス持続時間Tlよりはるかに長い無信号持続時間TSj(例えばパルス持続時間Tlの10倍)、および変調されたキャリアの不存在は、マルチパス・フェーディング現象を大幅に低減させることができる。実際に、電波搬送波を継続的に放出することにより、送信機から距離を置いた電磁場の分布・分散が形成される。これは、電磁波の伝搬時間と比較すると、実質的に変化はなく、建設的および破壊的な干渉領域の空間における無限の反復を有する。このような反復は、移動する多くの金属物体や人が存在する実際の産業作業環境では特定することが実質的に不可能である。2つの電子デバイス3および16のうちの一方が破壊的な干渉領域に配置された場合、通信の質が悪化し、これにより通信が失われる可能性さえある。非常に短い持続時間を有する電波パルスにより特徴付けられる信号RSは、電磁場の前記変化のない分布・分散を生成しないため、マルチパス・フェーディングを減少させる、更には、上述の例のようにパルス持続時間Tlと無信号持続時間TSjとの比率を適切に選択することにより決定される有限次元の領域においてマルチパス・フェーディングを解消する。
【0035】
有利には、各送受信機23および24は、信号RSに由来する反射信号の少なくとも一部を受信するための、いわゆるレーキ受信機として構成された各受信機(図示せず)を備える。この目的は、信号の非有向路全てからエネルギーを収集し、これにより通信のロバスト性を向上させること、すなわち、受信時の信号とノイズとのより高い比率を得ることである。レーキ受信機のタスクは、信号RSの反射パルスが互いから、且つ直接パルスから十分に時間的に離れているという前提において容易化される。
【0036】
本発明の無線デジタル通信システムおよび対応する通信システム20の他の利点は、同一領域内において複数の通信システムを共存させ得る、すなわち同時に動作させ得ることである。このような共存は、互いに異なるパルスの個数Nおよび無信号持続時間TSjに関する限り、情報のビットの符号化スキームを選択できることで可能になる。特に、各符号化スキームは、高い自己相関性、すなわち、同一スキームで符号化された時間シフトレプリカに対する高い相関性、および、低い相互相関性、すなわち異なる符号化スキームで符号化された時間シフトレプリカに対する低い相関性を呈する必要がある。
【0037】
本発明の別の態様によれば、制御ユニット15および17は、上記の無線デジタル通信プロトコルに基づいて、プローブ3と基地局16との間で情報を交換する方法を実施するように構成される。
【0038】
プローブ3は、操作ヘッド8に取り付けられる前には、通常マガジンに収容されるとともに、電気エネルギーの消費を最小限にすべくスタンバイ状態にある。プローブ3がスタンバイ状態にある場合、その制御ユニット15は定期的にイベントを生成し、これにより、プローブ3は基地局16宛てに意図された要求メッセージを送信する。要求メッセージは、上述の無線デジタル通信プロトコルに従って送信される。すなわち、要求メッセージは、複数のビットを含み、そのそれぞれが、電波信号RSの電波パルスのシーケンスが対応するN個のパルス25のシーケンスで符号化されている。
【0039】
また、要求メッセージは、要求メッセージの最初の情報ビットのパルス25のシーケンスのうちの最初のパルスの送信タイミング(時刻)を示すタイムスタンプを含んでいる。送信タイミングは、制御ユニット15の内部クロックに基づいて、且つ符号化/復号化デバイス21の内部遅延に基づいて決定される。
【0040】
基地局16は、要求メッセージを受信し、これを復号化して送信タイミングに関する情報を含むタイムスタンプを抽出する。基地局16の制御ユニット17は、各送受信機24と協働して、受信した要求メッセージの最初のパルスの受信タイミングを検出する。
【0041】
この時点で、制御ユニット17は、送信タイミングおよび受信タイミングに基づいて要求リクエストの飛行時間を計算し、飛行時間に応じてプローブと基地局16との間の距離を推定する。飛行時間とは、プローブ3による基地局16への要求メッセージを運んだ電波信号RSの伝搬時間である。推定された距離が所定条件に適合する場合、例えば、このような推定された距離が作業領域6の範囲を示す所定距離より短い場合、基地局16は応答メッセージを送信する。
【0042】
プローブ3は、応答メッセージを受信すると、2つの電子デバイス3、16が互いに通信可能に連結された操作状態に切り替わる。こうして、プローブ3は基地局16と通信することができる。
【0043】
上述の情報交換方法では、制御ユニット15および17の内部クロックが互いに調整されていることが必要である。代替実施形態によれば、クロックの調整は、プローブ3と基地局16との間でメッセージを二重交換することにより2つのクロック間の差を補償することでなされてもよい。このようなメッセージは、メッセージそれ自体の最初のパルスの送信タイミングに対応するタイムスタンプを含んでいる。
【0044】
本発明の別の実施形態によれば、応答メッセージは、定期的に生成される内部イベントの結果としてではなく、スタンバイ状態中に検出された別のイベントの結果として、プローブ3により送信される。
【0045】
加速度計19は、特定の方向に沿った加速度を検出するように、プローブ3がスタンバイ状態にある間、アクティブである。特定の方向とは、例えば、操作ヘッド8の長手方向軸に対して、特に、プローブ3が操作ヘッド8に取り付けられている際の主軸の長手方向軸に対して平行な方向である。このようにして、操作ヘッド8がプローブ3を係合把持しているときに発生する振動が、加速度計19により加速度として検出され得る。検出された加速度が所定の特徴を有している場合、プローブ3は要求メッセージを送信する。特に想定可能な実施形態によれば、検出された加速度が、閾加速度値より大きい振幅、および閾時間値より短い持続時間のピークを有する場合、プローブ3は要求メッセージを送信する。
【0046】
図示しない本発明の別の実施形態によれば、基地局16の少なくとも送受信機24は、要求メッセージを受信するように所定の相互距離を置いて配置された2つの各アンテナを含む2つの受信機を備える。基地局16の制御ユニット17は、前記2つの受信機から、第1受信要求メッセージおよび第2受信要求メッセージを収集し、2つのそれぞれの受信タイミングを検出する。
【0047】
制御ユニット17は、2つの受信タイミングに応じて到着時間差を計算するとともに、この到着時間差に基づいて要求メッセージの到着角度を推定するように構成されている。推定された距離に関する所定条件が満たされていることに加えて、推定された到着角度が別の所定条件に適合している場合、例えば、推定された到着角度が基地局16の位置に対する作業領域6の位置を示す所定角度より小さい場合、基地局16は応答メッセージを送信する。
【0048】
図示しない代替実施形態によれば、第2電子デバイス16に実質的に等しい追加の第2電子デバイスが、これから所定の距離を置いて配置される。換言すれば、機械の2つの別々の点に配置されるとともに通信インターフェース18により相互接続された2つの基地局16が、応答メッセージを受信する。本例においても、受信した第1要求メッセージおよび受信した第2要求メッセージは、通信インターフェース18を介して接続された各制御ユニット17で処理され、それぞれの受信タイミングが検出される。その後の処理は、上述の実施形態と同一であり、対話する制御ユニット17の一方または両方により実施される。距離及び角度に関する上述の条件が満たされれば、基地局16のうちの少なくとも一方が応答メッセージを送信する。
【0049】
送受信機24および制御ユニット17は、パルス持続時間Tlの100分の1の大きさのオーダーの時間を検出可能な既知のタイプのデジタル電子回路で構成される。したがって、上述の方法は、1センチメートルの大きさのオーダーの分解能で、プローブ3と基地局16との間の距離を推定することができる。
【0050】
上述の情報交換方法は、自己認識手順を実質的に実施する。そして、基地局およびプローブをそれぞれ有する種々の産業用装置が存在し、基地局とプローブとが自装置においてのみ通信しなければならない広いエリアにおいて、プローブ3を基地局16に、オペレータや外部システムを介入させずに通信可能に連結しなければならない場合に、非常に有利である。
【0051】
特定の実施形態について説明してきたが、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての変更例、変形例、簡略例および適用例は本発明の範囲に属するものであるため、本発明は当該実施形態に限定されると見なされるべきではない。例えば、タッチトリガプローブ3に加えて、またはこれに代えて他のセンサが提供され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6