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特許7515472逆転駆動装置を備えた車両用トランスミッションユニット及び該トランスミッションユニットを搭載した車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】逆転駆動装置を備えた車両用トランスミッションユニット及び該トランスミッションユニットを搭載した車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/06 20060101AFI20240705BHJP
   F16H 63/30 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B60K17/06 A
F16H63/30
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021523427
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2019059214
(87)【国際公開番号】W WO2020089766
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】102018000009928
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】515217546
【氏名又は名称】ピアッジオ エ チ.ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ネスティ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ドヴェリ,ステファノ
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108636(JP,A)
【文献】特開2014-152832(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1583499(CN,A)
【文献】特開昭62-178493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/06
F16H 63/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用の無変速装置を備えたトランスミッションユニット(15)であって、
前進駆動を制御するためにメインドライブ(19,97)に動作可能に接続される駆動輪のシャフト(23)と、
逆転駆動用電動機(21)と、
逆転駆動用電動機(21)によって回転される制御ブッシュ(47)と、
駆動輪のシャフト(23)に動作可能に接続される従動トランスミッションブッシュ(63)と、
前記制御ブッシュ(47)と前記従動トランスミッションブッシュ(63)との間の相互結合を制御して、前記逆転駆動用電動機(21)の運動を前記駆動輪のシャフト(23)に伝達するためのアクチュエータ(121)とを備えており、
制御ブッシュ(47)及び従動トランスミッションブッシュ(63)が、駆動輪のシャフト(23)と同軸であり、逆転駆動時に回転軸線(X)を中心にシャフト(23)と一緒に回転し、
前記無段変速装置が、前記駆動輪のシャフト(23)と同軸であり、周囲に前記無段変速装置の伝動ベルト(97)が案内される、従動プーリ(19)を備えている
ことを特徴とするトランスミッションユニット。
【請求項2】
制御ブッシュ(47)が、補助駆動装置(33~45)によって逆転駆動用電動機(21)に作動的に接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のトランスミッションユニット。
【請求項3】
制御ブッシュ(47)が、制御ブッシュ(47)に対して軸線方向に移動可能であり、かつ、アクチュエータに機能的に結合されたセレクタ(61)にねじり結合されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のトランスミッションユニット。
【請求項4】
制御ブッシュ(47)及び従動トランスミッションブッシュ(63)が、駆動輪のシャフト(23)と同軸であり、
従動トランスミッションブッシュ(63)が、駆動輪のシャフト(23)にねじり結合され、
制御ブッシュ(47)が、駆動輪のシャフト(23)に対して空転可能に取り付けられ、
可動式のセレクタ(61)が、制御ブッシュ(47)にねじり結合され、アクチュエータ(121)の制御下で制御ブッシュ(47)に対して軸線方向に移動可能であり、従動トランスミッションブッシュ(63)に対して係合した位置と従動トランスミッションブッシュ(63)との係合解除した位置とをとるようにされ、
セレクタ(61)と従動トランスミッションブッシュ(63)との間には係合歯(75;73)が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のトランスミッションユニット。
【請求項5】
従動トランスミッションブッシュ(63)に取り付けられ、遠心力の影響を受けて、従動トランスミッションブッシュ(63)の回転軸線(X)からの距離が小さい第一径方向位置から、従動トランスミッションブッシュ(63)の回転軸線(X)からの距離が大きい第二径方向位置まで移動できるように結合された少なくとも一つの遠心質量体(84)をさらに備え、
弾性部材(91)が、前記少なくとも一つの遠心質量体(84)を第一径方向位置に偏らせるように適合されており、
前記少なくとも一つの遠心質量体(84)が第二径方向位置にある時に、前記遠心質量体が、セレクタ(61)及び従動トランスミッションブッシュ(63)の係合歯(75;73)間に位置し、前記係合歯形の相互係合を防止する
ことを特徴とする請求項4に記載のトランスミッションユニット。
【請求項6】
セレクタ(61)が、制御ブッシュ(43)及び従動トランスミッションブッシュ(63)と同軸であり、かつ、制御ブッシュ(47)及び従動トランスミッションブッシュ(63)の回転軸線(X)と平行に移動可能であり、
セレクタ(61)が制御ブッシュ(47)にのみねじり結合されている、従動トランスミッションブッシュ(63)から係合解除された第一位置と、
セレクタ(61)が制御ブッシュ(43)及び従動トランスミッションブッシュ(63)にねじり結合され、制御ブッシュ(47)から従動トランスミッションブッシュ(63)にトルクを伝達する、従動トランスミッションブッシュ(63)に係合している第二位置と
をとるように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のトランスミッションユニット。
【請求項7】
セレクタ(61)が、制御ブッシュ(47)の回転を従動トランスミッションブッシュ(63)に伝達するために、従動トランスミッションブッシュ(63)と一体の第二係合歯(73)と共働するように適合された第一係合歯(75)を備え、
好ましくは、前記第一係合歯及び第二係合歯のそれぞれが、各前側係合歯を備えている
ことを特徴とする請求項3又は6に記載のトランスミッションユニット。
【請求項8】
前記第一係止歯(75)及び第二係止歯(73)の各々が、駆動輪のシャフト(23)が逆転駆動の回転方向の従動トランスミッションブッシュ(63)よりも大きい角速度で回転する時に、従動トランスミッションブッシュ(63)がセレクタ(61)を従動トランスミッションブッシュ(63)から遠ざける方向に動かすことを可能にする、斜歯を備えている
ことを特徴とする請求項7に記載のトランスミッションユニット。
【請求項9】
前記駆動輪のシャフト(23)が前進方向に回転している場合に、逆転駆動装置の作動を防止するように適合された安全システムを備えている
ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載のトランスミッションユニット。
【請求項10】
前記安全システムが、駆動輪のシャフト(23)と一緒に回転し、かつ、遠心力の結果として、格納位置から拡大位置まで、シャフト(23)に対して、径方向に移動可能な少なくとも一つの遠心質量体(84)を備え、
前記拡大位置において、遠心質量体(84)が逆転駆動装置の作動を防止する
ことを特徴とする請求項9に記載のトランスミッションユニット。
【請求項11】
前記安全システムが、駆動輪のシャフト(23)が最小安全値よりも高い速度で前進方向に回転している場合に、セレクタ(61)と従動トランスミッションブッシュ(63)との間の相互係合を防止するように構成されている
ことを特徴とする請求項9に記載のトランスミッションユニット。
【請求項12】
前記安全システムが、従動トランスミッションブッシュ(63)に取り付けられ、かつ、遠心力の影響下で、従動トランスミッションブッシュ(63)の回転軸線(X)からの距離が小さい第一径方向位置から、従動トランスミッションブッシュ(63)の回転軸線(X)からの距離が大きい第二径方向位置まで移動できるように接続された少なくとも一つの遠心質量体(84)を備え、
弾性部材(91)が、遠心質量体(84)を第一径方向位置に戻すように構成され、かつ、
遠心質量体(84)が第二径方向位置にある時に、セレクタ(61)の従動トランスミッションブッシュ(63)への係合が防止されるように構成されている
ことを特徴とする請求項11に記載のトランスミッションユニット。
【請求項13】
逆転駆動装置の作動及び非作動を可能にするように、アクチュエータ(121)及びセレクタ(61)に動作可能に接続された移動フォーク(67)をさらに備えている
ことを特徴とする請求項3~12の何れか一項に記載のトランスミッションユニット。
【請求項14】
アクチュエータ(121)が、アクチュエータの軸線に沿って移動可能な要素(121A)を備えるリニアアクチュエータであり、フォーク(67)の並進軸線がアクチュエータ(121)の軸線と平行である
ことを特徴とする請求項13に記載のトランスミッションユニット。
【請求項15】
セレクタ(61)は、フォーク(67)に対してセレクタの回転軸線(X)を中心に回転できるように、フォーク(67)に対してねじり方向に自由であり、かつ、フォーク(67)に軸線方向に拘束され、フォークの軸方向の移動が、セレクタの回転軸線(X)に沿ったセレクタ(61)の移動を引き起こすようにされ、
アクチュエータ(121)が、フォーク(67)に軸方向の動きを与えるように適合されている
ことを特徴とする請求項13又は14に記載のトランスミッションユニット。
【請求項16】
前記アクチュエータ(121)の動きを前記フォーク(67)に伝達するために、関節ピン(126)を中心に回転するように適合され、かつ、前記アクチュエータ(121)及び前記フォーク(67)に機能的に接続された制御レバー(125)をさらに備え、
前記関節ピン(126)が、好ましくは、レバー(125)のアクチュエータ(121)に対する第一拘束位置(125A)と、レバー(125)のフォーク(67)に対する第二拘束位置(125B)との間の中間位置に配置されている
ことを特徴とする請求項13~15の何れか一項に記載のトランスミッションユニット。
【請求項17】
前記フォーク(67)及び前記アクチュエータ(121)が、前記制御レバーの同じ側で前記制御レバー(125)と共働するように配置されている
ことを特徴とする請求項16に記載のトランスミッションユニット。
【請求項18】
前記アクチュエータ(121)の位置を検出するように適合された安全センサ(123)を備えている
ことを特徴とする請求項1~17の何れか一項に記載のトランスミッションユニット。
【請求項19】
逆転駆動用電動機(21)が、前記駆動輪のシャフトに対して、前記主駆動装置とは反対側に配置されている
ことを特徴とする請求項1~18の何れか一項に記載のトランスミッションユニット。
【請求項20】
逆転駆動用電動機(21)及び補助駆動装置が、トランスミッションユニットのケース(17)内に設けられ、前記ケースが主駆動装置を収容する
ことを特徴とする請求項1~19の何れか一項に記載のトランスミッションユニット。
【請求項21】
駆動輪のシャフト(23)と駆動輪の車軸(101)との間にトランスミッション(103~109)、好ましくはギアトランスミッションをさらに備え、
好ましくは駆動輪のシャフト(23)と車軸(101)とが互いに平行である
ことを特徴とする請求項1~20の何れか一項に記載のトランスミッションユニット。
【請求項22】
無段変速機の従動プーリ(19)がスプライン接続された中空シャフト(95)からの入力運動を受ける可撓性連結部(93)を備え、
可能性連結部(93)の出力部が駆動輪のシャフト(23)に機械的に結合されている
ことを特徴とする請求項1~21の何れか一項に記載のトランスミッションユニット。
【請求項23】
請求項1~22の何れか一項に記載のトランスミッションユニット(15)と、主駆動装置(19,97)によって駆動輪(11)に動作可能に接続された内燃機関(13)とを備えていることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、排他的ではないが、二つ又は三つの車輪を有する車両用の逆転駆動装置を有するトランスミッションユニットに関する。本発明は、さらに、前記トランスミッションユニットを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に、モーターサイクルが、通常、逆転駆動装置を備えていないことは周知である。従って、後進運転時には、特に、運転者がサドルに跨っている場合には、前記車両は重くて動かしにくいので、動かすのはかなり厄介である。また、サドルから降りて車両を手動で押すのも厄介です。この操作は、車両に同乗者が座っている場合、特に複雑になる。また、車両が滑らかで平坦な地面にない場合、車両を手動で押す操作はほとんど不可能になる。
【0003】
このような問題を解決するために、モーターサイクルの中でも特に質量の大きいものには、自動車産業で使用されているものとよく似たギアボックスを使用する逆転駆動装置が設けられている。しかし、これらの解決手段はコストが高く、ギアトランスミッションを使用する必要がある。そのため、速度可変式トランスミッションを使用するモーターサイクルには適用されない。
【0004】
米国特許US4,923,028号には、逆転駆動装置を制御する電動機を備えたモーターサイクルが開示されている。前記電動機は、前進駆動を制御する吸熱エンジンから動力を得るメインカルダンシャフトとの機械的接続部に配置されている。このシステムは複雑であり、カルダンシャフトを使用する必要があり、本質的に安全ではない。
【0005】
米国特許US9,926,040号には、車両の逆転駆動装置用の機構が開示されており、この機構は、アクチュエータによって駆動輪に運動を伝達するシャフトに係合可能な減速機に運動を伝達する補助電動機を使用する。電動機から減速機への運動は、可撓性シャフトを介して伝達される。このシステムは、複雑でかさばる上に、機能的にも不十分である。
【0006】
従って、従来のトランスミッションの欠点及び限界を完全に又は部分的に克服又は軽減するトランスミッションユニットを提供することが必要である。
【発明の概要】
【0007】
従来技術の逆転駆動装置を有するトランスミッションユニットの限界及び欠点の一つ以上を克服又は軽減するために、前進駆動を制御するためのメイントランスミッションに作動的に接続された駆動輪のシャフトと、逆転駆動用電動機とを備えた車両用トランスミッションユニットが提供される。トランスミッションユニットは、逆転駆動用電動機によって回転される制御ブッシュと、駆動輪のシャフトに作動的に接続された従動トランスミッションブッシュとをさらに備えている。また、制御ブッシュと従動トランスミッションブッシュとの相互結合を制御して、逆転駆動用電動機の運動を駆動輪のシャフトに伝達するアクチュエータが設けられている。
【0008】
このようにして、アクチュエータを用いて逆転駆動装置の係合を制御することを可能にし、駆動輪のシャフトは、前進駆動のための通常の回転方向とは逆の方向に電動機で回転され得る。
【0009】
本明細書に開示される実施形態では、アクチュエータは、好ましくは、リニアアクチュエータであり、即ち、並進軸線に従って移動可能な作動要素が設けられている。前記アクチュエータは、電気アクチュエータ、例えばソレノイドアクチュエータであり得、磁石によって生成される電磁力の効果によって移動可能なアンカーを有し得る作動要素を備え得る。
【0010】
有利な実施形態では、制御ブッシュ及び従動トランスミッションブッシュは、駆動輪のシャフトと同軸であり、逆転駆動時にこの回転軸を中心に、駆動輪のシャフトと共に回転する。
【0011】
本明細書で開示される実施形態では、制御ブッシュは、補助駆動装置によって逆転駆動用電動機に接続される。この駆動装置は、電動機と制御ブッシュとの間に正しいギア比を提供する。特に有利な実施形態では、補助駆動装置は、ギアトレイン、即ち、相互に噛み合う一連のギア対を備え、好ましくは、各々に各ギア対がスプライン接続された少なくとも一つの補助シャフト、及び好ましくは二つの補助シャフトを有する。有利な実施形態では、駆動装置は、電動機の回転軸線が駆動輪のシャフトの回転軸線と平行になるようになっている。この場合、駆動部は一連の平歯車を有し得る。
【0012】
本明細書に開示された実施形態では、制御ブッシュはセレクタにねじり結合されており、前記セレクタは、制御ブッシュに対して軸線方向に移動可能であり、かつ、アクチュエータに機能的に結合されている。「軸線方向に移動可能」とは、セレクタがそれ自身の回転軸線に対して平行に移動可能であることを意味する。セレクタ及び制御ブッシュが互いに、かつ、駆動輪のシャフトと同軸である場合、セレクタの軸線方向の動きは、駆動輪のシャフト及び制御ブッシュ共通回転軸線と平行な動きになる。
【0013】
有利な実施形態では、車両の駆動輪は、駆動輪のシャフトに直接、接続されていない。それどころか、追加のトランスミッション、好ましくは、ギアトランスミッションを用いて、駆動輪のシャフトに接続される駆動輪と同軸の軸を設けることができる。これらは、駆動輪のシャフトと駆動輪の軸線とを相互に平行に配置するための平歯車とすることができる。
【0014】
セレクタは、セレクタが制御ブッシュにのみねじり結合される従動トランスミッションブッシュに対する第一非係合位置と、セレクタが制御ブッシュ及び従動トランスミッションブッシュにねじり結合され、トルクを制御ブッシュから従動トランスミッションブッシュに伝達する従動トランスミッションブッシュに対する第二係合位置とをとるように軸線方向に移動可能であり得る。
【0015】
セレクタは、制御ブッシュの回転を従動トランスミッションブッシュに伝達するために、従動トランスミッションブッシュと一体の第二係合歯と共働するように適合された第一係合歯を有し得る。前記係合歯は、正面係合歯であり得、例えば、面取りされ得、セレクタ及び制御ブッシュの回転速度よりも高い角速度で従動ブッシュが回転する傾向にある時に、セレクタ及び従動ブッシュが互いに離れることを可能にする。
【0016】
トランスミッションユニットは、駆動輪のシャフトが前進方向に回転している時に、逆転駆動装置の作動を防止するように適合された安全システムを有し得る。前記安全システムは、例えば、遠心効果に基づく安全システムであり得る。
【0017】
幾つかの実施形態では、安全システムは、駆動輪のシャフトと一緒に回転し、遠心力の結果として、格納位置から引出位置まで、それに対して径方向に移動可能な少なくとも一つの遠心質量体、好ましくは一対の遠心質量体を備え、前記引出位置において、遠心質量体が逆転駆動装置の作動を防止する。有利な実施形態では、安全システムは、駆動輪のシャフトが最小安全値よりも大きい速度で前進方向に回転している場合に、セレクタと従動トランスミッションブッシュとの間の相互係合を防止するように構成されている。
【0018】
逆転駆動装置の係合及び係合解除を制御するために、有利な実施形態では、逆転駆動装置の起動及び停止を可能にするように、アクチュエータ及びセレクタに動作可能に接続される可動フォークを設けることができる。
【0019】
有利な実施形態では、前記フォークは、フォークの並進軸線と平行なピン又はステムと一体であるか、又はステム又はピンを有し得、前記並進運動は、逆転駆動装置の係合及び解除を制御するために、前述のアクチュエータによって与えられる。
【0020】
アクチュエータが、アクチュエータの軸線に従って移動可能な要素を備えたリニアアクチュエータである場合、フォークの並進軸線は、有利には、アクチュエータの軸線と平行である。
【0021】
幾つかの実施形態では、セレクタはフォークに対してねじり方向に自由であり、即ち、回転していないフォークに対してそれ自身の回転軸線周りを回転できるように、フォークに固定されている。さらに、有利には、セレクタはフォークに軸線方向に固定され得、それにより、フォークの動き、例えば、アクチュエータによって与えられるフォークの軸線方向の動きが、セレクタの回転軸線に沿ったセレクタの動きを決定する。
【0022】
アクチュエータの動きをフォークに伝達するために、関節ピンの周りを回転するように適合され、かつ、アクチュエータ及びフォークに機能的に接続された制御レバーを設けることが有利である。前記レバーは、増力レバーとして構成することができる。特に、有利な実施形態では、関節ピンは、レバーのアクチュエータに対する第一拘束位置と、レバーのフォークに対する第二拘束位置との間の中間位置に配置される。ピンによって決められる、レバーの回転軸線に対する二つの拘束位置の距離の間の適切な比率によって、アクチュエータによって生成される力が増加され、フォークの制御が容易になる。
【0023】
本明細書に開示されている実施形態では、電動機及び逆転駆動装置の係合及び係合解除を制御するアクチュエータは、吸熱エンジンの動力を駆動輪に伝達する主駆動装置が収容されているケースに設けられ得、特に有利には、前記主駆動装置は、変速比の連続可変装置を備えた駆動装置である。
【0024】
本明細書に開示されている実施形態では、アクチュエータは、ケースの外側に設けられ得る。幾つかの実施形態では、電動機は、ケースの内部に取り付けられることができる。ケースは、駆動輪のシャフト及び駆動輪の車軸、並びに駆動輪のシャフトと同軸の部材、特に制御ブッシュ及び従動トランスミッションブッシュ、及びセレクタを収容することができ、係合及び係合解除動作を制御するためのフォークを備える。電動機と制御ブッシュとの間のトランスミッション、好ましくはギアトランスミッション、並びに、駆動輪のシャフトから駆動輪の車軸へのトランスミッションは、ケース内に取り付けることができる。
【0025】
有利な実施形態では、ケースに対する逆転駆動装置の部材の配置は、逆転駆動装置を備えていないトランスミッションユニットの従来技術のケースに対して変更を必要としないようになっている。
【0026】
また、本明細書では、上述したトランスミッションユニットと、主駆動装置によって駆動輪のシャフトに動作可能に接続された内燃機関とを備える車両が開示される。
【0027】
追加の有利な特徴及び実施形態は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲に記載される。
本発明は、本発明の例示的かつ非限定的な実施形態を示す説明及び添付図面によって、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明によるトランスミッションユニットを備えた車両の側面図である。
図2】トランスミッションユニットを収容するケースの蓋の外観図である。
図3図2の蓋の内部斜視図である。
図4】逆転駆動用電動機から駆動輪のシャフトへの運動トランスミッションの斜視図である。
図6】逆転駆動装置の係合及び係合解除のための機構及び駆動輪のシャフトの回転軸線を含む平面に沿った断面図である。
図7】制御ブッシュの斜視図である。
図8】逆転駆動装置と係合するためのセレクタ、遠心分離機を備えた安全システム及び従動トランスミッションブッシュの回転軸線を含む平面に沿った断面図である。
図9A】遠心質量体を備えた安全システムの図8のIX-IX線に沿った断面図である。
図9B】遠心質量体が図9Aと異なる位置にある遠心質量体を備えた安全システムの図8のIX-IX線に沿った断面図である。
図10】安全システムの関連する遠心質量体を有する従動トランスミッションブッシュの等角図である。
図11】逆転駆動装置と係合するためのセレクタの斜視図である。
図12】セレクタを制御するためのフォークの斜視図である。
図13】逆転駆動装置のトランスミッションを作動させるためのアクチュエータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明によるトランスミッションユニットが適用され得る車両1、図示実施例ではスクータの側面図である。車両1は、サドル5を有するシャーシ3、一つ又は二つの前側操舵輪9の操舵を制御するハンドルバー7、後側駆動輪11及び車両が前方に進むために必要な機械的動力を発生させる吸熱エンジン13を備えている。符号15は、吸熱エンジンからの機械的動力を駆動輪11に伝達するトランスミッションユニットを全体的に示している。該トランスミッションユニットはケース17を備え、ケース17の中には、吸熱エンジン13から駆動輪11への動力の機械的トランスミッションと、吸熱エンジン13から駆動輪11への伝達比を変化させる装置、例えば無段変速機(略してCVT)が収容されている。
【0030】
図2及び図3は、ケース17の蓋18の外側及び内側を示す図である。符号A及びBは、各々、吸熱エンジン13のパワーテイクオフにスプライン接続された駆動プーリ(図示せず)の軸線、及び無段変速機の従動プーリ19(図5)の軸線を示している。無段変速機の特徴は、それ自体公知のタイプのものであり得、本明細書では詳細に説明しない。
【0031】
ケース17の内部には、逆転駆動用電動機21が収容されており、この電動機21は、全体を符号22で示すギアトランスミッションを介して、以下に詳細に説明する逆転駆動用制御ブッシュに運動を伝達する(図4)。逆転駆動用制御ブッシュは、図4に全体として符号24で示されている逆転駆動装置に係合するための機構又は装置の一部であり、以下に詳細に説明する。
【0032】
逆転駆動装置に係合するための機構は、ギアトランスミッション22を駆動輪11のシャフト23(図4及び図5)に接続する。シャフト23の端部23Aは、端部軸受22(図5)によってケース17に支持されている。
【0033】
特に図3に示すように、逆転駆動用電動機21は、シャフト23に対して、軸線Aから軸線Bに向かって延びる主駆動装置(詳細は図示せず)とは反対側に取り付けられている。
【0034】
ケース17の蓋18の外側には、特に図13を参照して以下に詳細に説明する、逆転駆動装置の係合及び係合解除を制御するアクチュエータユニット25が適用されている。
【0035】
図4には、逆転駆動用電動機21から係合機構24に運動を伝達するギアトランスミッション22が全体として示されている。ギアトランスミッション22を形成する個々のギアは図5により良く示されている。具体的には、逆転駆動用電動機21の出力軸31は、ケース17内に空転するように取り付けられた第一シャフト37にスプライン接続された第一ギア又はギアホイール35と噛み合うピニオン3を備えている。このシャフト37には第二ギア39がスプライン接続されており、第二ギア39は、ケース17内に空転するように取り付けられた第二シャフト42にスプライン接続されたギア41と噛み合い、第二シャフト42には第四ギア45がスプライン接続されている。第四ギア45は、逆転駆動装置係合機構24の制御ブッシュ47に回転運動を伝達する。制御ブッシュ47は、図6の断面にも示されており、制御ブッシュ47は図7の斜視図に図示されている。
【0036】
より詳細には、制御ブッシュ47は、ギア又はギアホイール45と噛み合うギアホイール49を備え、前記ギアホイール49は、円盤状体51の周縁部に形成されている。円盤状体51は、中央に孔が形成されており、円盤状本体51の一方の側面から突出する第一のほぼ円筒形の部分53と、円盤状本体51の反対側の側面から突出する第二のほぼ円筒形の部分55(図6参照)とを有している。前記部分53及び55は、円盤状体51と同軸である。ほぼ円筒状の部分53には、軸受57が取り付けられており、それにより、制御ブッシュ47が駆動輪11のシャフト23に支持されている。また、ケース17に形成された取付座と制御ブッシュ47のほぼ円筒状の部分53との間には、追加の軸受59が介在している。軸受57の内部には、駆動輪11のシャフト23の第二端部23Bが挿入されており、前記シャフト23が、端部23Aの軸受22(図5)だけでなく、端部23Bの軸受57及び59の組み合わせによっても、ケース17に回転可能に支持されているようにされている。
【0037】
図7に示すように、ほぼ円筒状の部分55は、制御ブッシュ47及びセレクタ61(図5及び図6参照)の間のねじり結合のためのスプラインプロファイル55Aを備え、セレクタ61は、以下でさらに明らかになるように、逆転駆動装置の係合及び係合解除のために利用される。セレクタ61は、図5及び図6では、取り付けられた状態で示されており、図11の斜視図では分離した状態で示されている。セレクタ61は、実質的に環状の形状を備え、制御ブッシュ47のスプラインプロファイル55Aに結合されるスプラインプロファイル61Aを有している。
【0038】
特に図11及び図8に示すように、セレクタ61は、以下に詳細に説明される従動トランスミッションブッシュ63に取り付けられており、また、セレクタ61は、円周方向の溝65を有しており、この溝65には、以下に説明する方法で逆転駆動装置の係合及び係合解除を制御するために、アクチュエータユニット25に機能的に接続された制御フォーク67のプロング67Aが係合する。制御フォーク67は、図12の斜視図に分離した状態で示されている。
【0039】
従動トランスミッションブッシュ63は、車両1が前方に移動している場合に逆転駆動装置の係合を防止する安全システムを形成する部材と共に、図10の斜視図に分離した状態で示されている。前記安全システムについては、以下に説明する。図8は、従動トランスミッションブッシュ63及びセレクタ61を、従動トランスミッションブッシュ63及びセレクタ61の回転軸線Xを含む平面に沿った断面で示している。特に図8及び図10に示すように、従動トランスミッションブッシュ63は、環状突起部71を備えた円盤状体69を備え、前記環状突起部71から前側傾歯73が突出しており、この前側歯73が係合歯を画定している。前側斜歯73は、特に図11で見ることができるセレクタ61と一体に形成された面取りされた前側歯75を備えた係合歯と共働し得る。前側歯75は、従動トランスミッションブッシュ63の方向を向いたセレクタ61の表面61Bから突出しており、そこから環状突起77も突出しており、前記突起は、セレクタ61の前側歯75が配置される直径よりも小さい直径を有している。特に図8の断面に示すように、環状突起は、セレクタ61の本体に形成された座部に設けられたリングによって形成され得る。
【0040】
駆動トランスミッションブッシュ63は、ブッシュ79にスプライン接続されており、ブッシュ79の内部には、特に図8に示すように、スプラインプロファイル81が設けられている。取付時に、トランスミッションブッシュ63がスプライン接続されたブッシュ79は、駆動輪のシャフト23上に取り付けられる。ブッシュ79のスプラインプロファイル81は、駆動輪のシャフト23に形成された対応する溝付きプロファイル83と係合する。このようにして、従動トランスミッションブッシュ63、ブッシュ79、及び駆動輪11のシャフト23は、互いに同軸でねじり結合されて一体的に回転するようにされている。
【0041】
従動トランスミッションブッシュ63は、車両1が進行方向に進んでいて、かつ、駆動輪11が所定の閾値よりも高い角速度で回転している時に、逆転駆動装置の係合を防止する安全システムに関連付けられている。図示の実施形態では、安全システムは、遠心システムである。要約すると、安全システムは、従動トランスミッションブッシュ63及び駆動輪11のシャフト23と一緒に回転する質量体を有している。シャフト23が閾値以上の速度で回転する場合には、遠心力が、従動トランスミッションブッシュ63及びシャフト23と共に、回転する質量体に作用して、回転軸線(軸線X)から離れた径方向の位置に配置させ、それにより、逆転駆動装置の係合が阻止されることになる。
【0042】
より詳細には、本明細書に示される実施形態では、従動トランスミッションブッシュ63には、各関節ピン85を介して二つの質量体84が関節接続されている(特に図8図9A図9B参照)。例えば、質量体84は、特に図8,9A,9Bに示すように、アーチ状の形状を有し得、かつ、従動トランスミッションブッシュ63の環状シート87に収容され得る。環状シート87は、図9A及び図9Bに示す二つの位置の一方から他方への、ピン85を中心とした質量体84の揺動を可能にするのに十分な径方向の寸法を有する。より詳細には、図9Aでは、質量体は、回転軸線Xから最小距離の位置にある。質量体84が従動トランスミッションブッシュ63にピン85を介して関節接続されている端部とは反対側の質量体84の端部には、弾性部材91、例えば、ヘリカルトラクションスプリング91が固定され得る。前記弾性部材91は、最小エネルギの位置である図9Aの位置において、質量体84に応力を与える。質量体84が従動トランスミッションブッシュ63の軸線Xを中心に回転すると、質量体84が受ける遠心力により、質量体84が弾性部材91の弾性力に抗して、図9Aの位置から図9Bの位置に移動する。
【0043】
駆動輪11のシャフト23には、可撓性連結部93を備えたクラッチがスプライン接続されており、このクラッチは、無段変速機の従動プーリ19がスプライン接続された中空シャフト95から入力される運動を受ける(特に図5参照)。符号97は、台形断面のベルトを示しており、このベルトは、無段変速機の駆動プーリ(図示せず)からの動きを受けて、従動プーリ19に伝達する。無段変速機によって与えられる回転運動は、車両1が進行方向前方に進まなければならない時に、可撓性連結部を備えたクラッチ93を介して駆動輪11のシャフト23に伝達される。
【0044】
図示の実施形態では、駆動輪11のシャフト23は、一連のギアを用いて駆動輪11の車軸101(図5参照)に機械的に連結されている。車軸101は、ベアリング102及び104によってケース17に支持されている。図示の実施形態では、シャフト23と車軸101との間の伝達機構は、シャフト23と一体の、又は、シャフト23と一体に形成された第一ギア101を有する。この第一ギア103は、ケース17内で空転するように取り付けられた中間シャフトにスプライン接続されたギア105と噛み合い、前記中間シャフトには、ギア107がスプライン接続されている。ギア107は、駆動輪11の車軸101にスプライン接続されたギア109と噛み合う。
【0045】
これまで説明してきたトランスミッションユニットの動作は以下の通りである。
【0046】
車両1の前進走行中、吸熱エンジン13は、駆動プーリ(図示せず)、ベルト97及び従動プーリ19からなる変速機を介して、後側駆動輪11に機械的な動力を供給する。その運動は、従動プーリ95から、中空シャフト95及び可撓性連結部を備えたクラッチ93を介して、シャフト23に伝達され、そこからギア103、105、107及び109を介して、駆動輪11の車軸101に伝達される。
【0047】
車両1の前進走行中は、逆転駆動装置は非動作状態である。制御フォーク67は後方位置にあり、その位置において、圧縮ばね111(図5及び図6)によって押圧されており、前記圧縮ばね111は制御フォーク67を矢印f67の方向に押圧する。この位置では、制御フォーク67は、セレクタ61を、図5及び図6に示す非作動位置に維持する。この非作動位置では、セレクタ61の前側歯75は、従動トランスミッションブッシュ63と一体の前側歯73と係合していない。従って、逆転駆動用電動機21のいかなる回転も、駆動輪11に影響を与えない。
【0048】
車両1が前進走行すると、シャフト23の回転により、遠心質量体84が図9Bの拡大位置に維持される。この位置では、質量体84は、セレクタ61の従動トランスミッションブッシュ63への接近動作を阻止する。図9Bの拡大位置では、質量体84は、図8に詳細に示されているように、セレクタ61と一体の環状突起77の前方に位置する。セレクタ61の従動トランスミッションブッシュ63側への軸方向の移動は、質量体84が環状突起77と接触することで阻止される。このようにして、車両1の操作ミスや制御ユニットの故障により、セレクタ61が制御フォーク67を介して押し出されたとしても、そのような押し出しによって、前側歯73及び75の相互係合を引き起こすことはない。
【0049】
従って、逆転駆動装置は、車両1が動かない場合にのみ、あるいは、駆動輪11の車軸101、ひいては駆動輪11のシャフト23が、質量体84が図9Aに表される最小エネルギ位置にあるような低速(最低速度閾値)で回転する場合にのみ、係合することができる。
【0050】
逆転駆動装置を係合させて車両1を後方に走行させるために、前方への走行動作が停止したら、制御フォーク67を矢印f67(図6)と反対の方向に移動させる。この移動は、圧縮バネ111の力に抗して、アクチュエータによって行われる。フォーク67の矢印f67と反対の方向への移動により、制御ブッシュ47、従動トランスミッションブッシュ63、及びセレクタ61の回転軸線と一致する、駆動輪11のシャフト23の回転軸線Xに平行なセレクタ61の軸方向のスライドが生じる。セレクタ61のスプラインプロファイル61Aと制御ブッシュ47のスプラインプロファイル55Aとの間の結合により、摺動が許容される。
【0051】
この軸線方向の動きにより、セレクタ61の前側歯75は、従動トランスミッションブッシュ63の前側歯73と係合する。
【0052】
セレクタ61の従動トランスミッションブッシュ63への軸方向の変位が行われると、逆転駆動用電動機21が作動され得る。これにより、ギア33,35,39及び41を介して制御ブッシュ47が回転駆動される。スプラインプロファイル55A及び61A間の連結により、セレクタ61に運動が伝達され、前側歯75と前側歯73との間の連結により、従動トランスミッションブッシュ63に回転運動を伝達される。従動トランスミッションブッシュ63は、スプラインプロファイル81をシャフト23の溝付きプロファイル83に噛合わせることによって、回転運動を駆動輪11のシャフト23に伝達する。そして、シャフト23は、一連のギア103,105,107及び109並びに車軸101を介して、駆動輪11に運動を伝達する。
【0053】
例えば、車両を駐車するために、所望のリバース走行が完了すると、逆転駆動用電動機21は停止され得、かつ、セレクタ61が後方に移動され得、逆転駆動装置と係合したアクチュエータを停止させた後に、圧縮ばね111による押圧効果により、制御フォーク67が非係合位置に持って行かれる。
【0054】
逆転駆動中に従動トランスミッションブッシュ63の回転速度がセレクタ61及び制御ブッシュ47の回転速度よりも大きくなった場合、前側係合歯75及び73の面取りされた形状により、従動トランスミッションブッシュ63がセレクタ61を回転で追い越すことができ、上述した逆転駆動装置の構成要素が破損する危険性を回避することができる。
【0055】
制御フォーク67の動きを制御するために、図2に示すように、好ましくはケース17の外側に取り付けられたアクチュエータユニット25が設けられる。また、アクチュエータユニット25は、図13の等角図において、ケース17から分離して示されている。
【0056】
図示された実施形態では、アクチュエータユニット25は、アクチュエータ121、好ましくはリニアアクチュエータ、即ち、並進軸線に従って移動可能な要素を有するアクチュエータを備えている。例えば、アクチュエータ121は、可動式アンカー121Aを有するソレノイドアクチュエータとすることができる。アクチュエータ121は、ケース17と一体のプレート128に取り付けられることができる。アクチュエータ121は、プレート128と一体であり、ひいてはケース17と一体であるピン126を中心に回動するレバー125の第一端部125Aに作用する。回転ピン126は、レバー125の端部125A及び125Bの間の中間位置に位置する。これらの端部は、レバー125とアクチュエータ121との間の拘束、及び、レバー125とフォーク67との間の拘束を規定する。ソレノイドアクチュエータ121の可動アンカー121Aの矢印f121(図13)に従った動きにより、ピン126を中心としたレバー125の揺動と、それに対応するレバー125の第二端部125Bの矢印f125に従った動きが生じる。レバー125の第二端部125Bは、制御フォーク67と一体のピン又はステム127(図12及び図6参照)を押圧する。
【0057】
有利な実施形態では、ステム又はピン127は、制御フォーク67の本体と実質的に直交しており、前記本体が二つのプロング67Aを形成している。特に有利な実施形態では、ピン127の軸線は、シャフト23の軸線と平行である。
【0058】
ピン127の軸線は、フォークの並進方向を規定し、好ましくは、シャフト23、制御ブッシュ47、セレクタ61、及び従動トランスミッションブッシュ63の回転軸線と平行である。さらに、ピン127の軸線は、好ましくは、アクチュエータ121の可動アンカー121Aの軸線と平行であり、かつ、そこから離れており(即ち、同軸ではなく)、即ち、アクチュエータ121の運動軸線と平行である。この制御フォーク67及びアクチュエータ121の特定の平行配置により、アクチュエータが制御フォーク67のステム127に対して同軸で、且つ、頭部に設けられている実施形態に関しては、モータセットの全体的な嵩を最適化することができる。
【0059】
実質的に、ソレノイドアクチュエータ121は、増強レバー125を介して、制御フォーク67を圧縮ばね111の力に抗してアクティブな位置に押すように構成されている。
【0060】
逆転駆動装置の安全性を高めるために、アクチュエータ及びレバー67の位置を感知できる安全センサが設けられ得る。例えば、レバー125が設けられている場合には,センサ123はレバー125に関連付けられ得、レバー自体の実際の位置,ひいては逆転駆動装置の実際の(係合又は係合解除)位置を検出することができる。センサ123は、例えば、中央電子制御ユニットと連動させることができ、この中央電子制御ユニットは、レバー125が逆転駆動装置を係合解除する位置にある時にのみ、車両1の前方走行に許可を与えるように構成され得る。また、センサ123は、逆転駆動用電動機21の始動を許可する信号を出力することができる。当該許可は、中央制御ユニット(図示せず)が、制御フォーク67を介してセレクタ61の係合完了の信号をセンサ123から受け取った場合にのみ行われる。好ましくは、センサ123は、コントロールフォーク67及びアクチュエータが配置されているレバー125の同じ側に配置され、その軸線はコントロールフォーク67及びアクチュエーの一方と平行である。言い換えれば、例えば図2及び図13に示すように、アクチュエータ121、センサ123及び制御フォーク67に関連するステム127は、ケース17の内部に向けられたフォークの側部に配置されている。制御フォーク67、アクチュエータ121及びセンサ123のこの特定の配置により、制御ブッシュ47の作動ユニットをコンパクトにすることができ、車両の横方向の嵩を最小化することができる。
【0061】
アクチュエータ121及び制御フォーク67間に配置された増強レバー125を使用することにより、アクチュエータ121から必要とされる力を低減することができ、従って、アクチュエータのコスト及び寸法を低減することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13