(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】化学療法とリコンビナントS. ROLFSIIレクチンとの併用
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20240705BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/7068 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20240705BHJP
A61K 31/282 20060101ALI20240705BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20240705BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240705BHJP
A61K 45/00 20060101ALN20240705BHJP
C07K 14/37 20060101ALN20240705BHJP
A61K 31/513 20060101ALN20240705BHJP
A61K 31/519 20060101ALN20240705BHJP
A61P 35/02 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
A61K38/16
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K31/7068
A61K31/7072
A61K31/337
A61K31/282
A61K33/243
A61K31/4745
A61K45/00 ZNA
C07K14/37
A61K31/513
A61K31/519
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2021524382
(86)(22)【出願日】2019-11-18
(86)【国際出願番号】 IB2019059873
(87)【国際公開番号】W WO2020104911
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】201821043455
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201821022667
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】515259694
【氏名又は名称】ユニケム ラボラトリーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】サテ,ダナンジャイ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,スディープ
(72)【発明者】
【氏名】バチャーテ,サチン・プラバカール
(72)【発明者】
【氏名】カンコンカール,モハニッシュ・プラディープ
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/095143(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/203261(WO,A1)
【文献】Mol. Cell Biochem.,2014年,394,pp.225-235,DOI:10.1007/s11010-014-2099-y
【文献】Oncotarget,2017年,Vol.8, No.26,pp.42466-42477
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58
A61K 31/00-33/44
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を有するSclerotium rolfsiiレクチンに由来するリコンビナントレクチンタンパク質と、
ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、パクリタキセル、カルボプラチン、シスプラチン及びイリノテカンから選択される1種以上の
抗ガン剤とを含む治療上有効な組み合わせ物であって、
該組み合わせ
物は相乗的であり、
以下からなる群:
2.5~80μg/mLの配列番号1及び1~300μMのゲムシタビン;
5~90μg/mLの配列番号1及び0.01~250μMの5-フルオロウラシル;
1~80μg/mLの配列番号1及び0.1~10nMのパクリタキセル;
2.5~80μg/mLの配列番号1及び50~1000μMのカルボプラチン;
1~90μg/mLの配列番号1及び0.1~500μMのシスプラチン;並びに
20~80μg/mLの配列番号1及び1~50μMのイリノテカン
から選択される、
治療上有効な組み合わせ物。
【請求項2】
該組み合わせ物が、対象におけるガンの予防又は治療用である、請求項1
に記載の治療上有効な組み合わせ物。
【請求項3】
対象におけるガンの治療又は予防のための医薬の製造のための
、請求項1に記載の治療上有効な組み合わせ物の使用。
【請求項4】
抗ガン剤は、同時に、別々に又は連続して投与されるものである、請求項
1に記載の
治療上有効な組み合わせ物。
【請求項5】
該組み合わせ物が、対象における口腔ガン、卵巣ガン
、乳ガン、膵臓ガン、結腸ガン又は膀胱ガンの治療又は予防に使用される、請求項1
に記載の治療上有効な組み合わせ物。
【請求項6】
該組み合わせ物が、1種以上の薬学的に許容し得る賦形剤を伴う組成物である、請求項1又は2
に記載の治療上有効な組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年12月18日に出願されたインド仮出願第201821022667号及び2018年11月19日に出願された同第201821043455号の利益を主張する。これらの内容全体は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、リコンビナントレクチンタンパク質と他の治療剤との生物医薬的組み合わせ及びガンにおける細胞の制御されない増殖を制御することに対するそれらの抗増殖作用に関する。
【0003】
発明の背景
ガンは、原発腫瘍から始まり、この腫瘍は、細胞の増殖及び分裂が過剰になることにより腫脹し又は病的に大きくなる。腫瘍は、良性、前悪性もしくは悪性である場合があり又はガン性の可能性のない病変を意味する場合がある。良性腫瘍は、非ガン性腫瘍であり、悪性腫瘍は、ガン性腫瘍である。ガンは、異常な細胞が制御不能な方法で分裂する場合である。ガンは、身体の他の部位に広がる場合がある。これは、続発性腫瘍又は転移と呼ばれる。
【0004】
ガン処置療法は、ガン組織の外科的除去、化学療法、多剤化学療法、放射線療法、免疫療法等を含む。これらの治療法は、ガン細胞とともに正常で健康な細胞にも影響を及ぼす侵襲的な技術であることが多い。また、これらの治療法は、相乗効果を達成するために組み合わせて使用され、その結果、構成薬剤の治療可能性を向上させ、用量を減少させ、薬剤の毒性を低減し、薬剤抵抗性の誘発を遅延させる。
【0005】
ガン処置のための化学療法は、ガン細胞の増殖様式に基づいて決定される。化学療法剤、例えば、ガンに必要な代謝産物の産生又は使用を妨げる代謝拮抗剤、有糸分裂に必要な微小管形成を妨げる抗微小管剤、DNA複製を遮断することによりDNAアルキル化を妨害可能なアルキル化薬、DNAを架橋可能な白金系薬剤、抗腫瘍性抗生物質、DNA複製に必要なトポイソメラーゼ酵素を阻害するトポイソメラーゼ阻害剤は、性質が異なる。
【0006】
口腔ガン、結腸ガン、卵巣ガン及び膀胱ガンを含むガンの90%超で発現する腫瘍胎児性Thomsen-Friedenreich抗原(Galβ1-3GalNAc-α-O-Ser/Thr、T又はTF)並びにTFの発現は、腫瘍の進行及び転移と関連している。出願人の以前の特許出願350/MUM/2009には、ガン胎児性TF炭水化物抗原に対して高い結合特異性を有する、真菌Sclerotium rolfsiiの菌核体から単離されたリコンビナントレクチンタンパク質が開示されている。
【0007】
ガン処置のための併用療法は、健康な細胞の望ましくない細胞傷害性のために有効な処置である。疾患の複雑さ、元の部位を越えて広がり、ある種の薬剤に抵抗性になる傾向及びその遺伝的多様性は、それを攻撃する各種のアプローチの必要性を強調している。併用療法は、治癒又は長期寛解の可能性を高めるだけでなく、単独のアプローチより重要な臓器又は組織への傷害を軽減する。ある種類の治療法では、別の種類の治療法に対して腫瘍がより脆弱になる場合がある。例えば、特定の化学療法剤は、放射線療法に対する腫瘍の脆弱性を増大させることができる。別の場合には、薬剤は、一緒に投与すると相乗効果を有し、互いの効力を向上する場合があるため、併用による有効性は、個々の影響より大きい。これらを組み合わせて使用することには、相乗効果があり、その利益は、何倍にも拡大される。US第5053386号(1991)では、外科手術後の悪性腫瘍転移のサプレッションのためのレクチン、アブリン及びAbrusのアグルチニンを含む組成物及び処置方法に言及されている。また、同文献には、放射線処置及び/又は化学療法のいずれか又は両方と組み合わせたタンパク質の使用も開示されている。
【0008】
Molecular and cellular biochemistry(Vol - 394 (1-2); Page - 225-235; Year - 2014)には、MCF-7(エストロゲン受容体陽性)及びMDA-MB231(エストロゲン受容体陰性)ヒト乳ガン細胞におけるKorean mistletoe(Viscum album var. coloratum agglutinin、VCA)由来のレクチン及びドキソルビシン(DOX)の組み合わせ及び単独での効果が開示されている。VCAとDOXとの組み合わせは、VCA又はDOX単独での処置と比較して、細胞増殖阻害において強力な相乗効果を示した。
【0009】
Oncotarget(Vol: 8 (26), Page: 42466 -42477, Year: 2017)には、ペメトレキセドとRana catesbeiana卵母細胞から単離されたシアル酸結合レクチン(cSBL)との併用処置が開示されており、この併用治処置により、中皮腫の標準治療であるペメトレキセドとシスプラチンの併用より高い用量依存的な細胞傷害性がもたらされることが開示されている。
【0010】
しかしながら、これらの併用療法の全てが有益な効果をもたらすわけではない。したがって、本調査では、新規かつ有用な抗増殖性併用パートナーの開発に焦点が当てられている。
【0011】
ガンのような命にかかわる疾患と闘うためには、その予防及び治療のための最良の方法を開発するのには時間が掛かる。併用療法は、このような選択肢の1つであると考えられる。
【0012】
発明の目的
本発明の主な目的は、ガン細胞の増殖を治療し又は予防するための代替方法を提供することである。より具体的には、ガン細胞の増殖を治療し又は予防するための、入手可能で効率的な方法を開発することが目的である。
【0013】
本発明の別の目的は、ガンの予防又は治療に有効な治療を提供することである。正確には、本発明の目的は、ガンの予防又は治療のための組み合わせ療法であって、この組み合わせは、リコンビナントレクチンタンパク質を含む相乗的組み合わせである、組み合わせ療法を提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的は、ガンの予防及び/又は治療のための治療上有効な組み合わせを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、ガンの予防及び/又は治療のための有効濃度の治療上有効な相乗的組み合わせを提供することである。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、ガンの予防及び/又は治療のための有効濃度の治療上有効な組み合わせの薬学的に許容し得る製剤を提供することである。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、ガン細胞の増殖の予防、治療又は阻害に有用な配列番号:1のアミノ酸配列を有するリコンビナントレクチンタンパク質の組み合わせを提供することである。
【0018】
発明の概要
本発明の主な態様は、リコンビナントレクチンタンパク質と、1種以上の他の治療剤とを含む治療上有効な組み合わせである。
【0019】
好ましくは、この組み合わせは相乗的である。
【0020】
好ましくは、リコンビナントレクチンタンパク質の濃度は、0.5μg/mL~100μg/mLの範囲にある。
【0021】
好ましくは、この治療上有効な組み合わせは、対象におけるガンの予防又は治療に使用される。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、対象におけるガンの治療又は予防のためのリコンビナントレクチンタンパク質であって、リコンビナントレクチンタンパク質は、1種以上の他の治療剤と組み合わせて対象に投与され、ここで、他の治療剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、リコンビナントレクチンタンパク質が提供される。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、対象におけるガンの治療方法もしくは予防方法又は腫瘍細胞の増殖の阻害方法であって、対象に有効量のリコンビナントレクチンタンパク質を1種以上の他の治療剤と組み合わせて投与することを含み、ここで、他の治療剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、方法が提供される。
【0024】
本発明の第4の態様によれば、対象におけるガン又は腫瘍が増殖するのを予防し、治療し又は治癒するための併用療法であって、1種以上の他の治療剤と組み合わせたリコンビナントレクチンタンパク質の投与を含み、ここで、他の治療剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、併用療法が提供される。
【0025】
有利には、他の治療剤は、抗ガン剤である。
【0026】
好ましくは、抗ガン剤は、抗腫瘍性抗生物質である。
【0027】
好ましくは、抗ガン剤は、代謝拮抗剤、アルキル化抗腫瘍剤、抗微小管剤及び/又はトポイソメラーゼI阻害剤である。
【0028】
より好ましくは、抗ガン剤は、オキサザホスホリン、ナイトロジェンマスタード、アルキル化抗腫瘍剤、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、ビンカアルカロイド、タキサン、葉酸代謝拮抗剤又はピリミジンアンタゴニストである。
【0029】
より好ましくは、代謝拮抗剤は、5-フルロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、メトトレキサート、ペメトレキセド又はカペシタビンから選択される。
【0030】
より好ましくは、アルキル化抗腫瘍剤は、シスプラチン又はカルボプラチンから選択される白金系抗腫瘍剤である。
【0031】
より好ましくは、抗微小管剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン又はタキソテールから選択される。
【0032】
より好ましくは、トポイソメラーゼI阻害剤は、イリノテカン又はトポテカンから選択される。
【0033】
有利には、抗ガン剤は、シスプラチンであり、該組み合わせは、対象における口腔ガン、卵巣ガン又は膀胱ガンの治療又は予防に使用される。
【0034】
好ましくは、ここで、ガンは、口腔ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、10~90μg/mLであり、シスプラチンの濃度は、0.1~1.5μMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、5μg/mLであり、シスプラチンの濃度は、0.5~1.5μMである。
【0035】
好ましくは、ここで、ガンは、卵巣ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、1~2.5μg/mLであり、シスプラチンの濃度は、0.25~5μMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、5μg/mLであり、シスプラチンの濃度は、0.1~15μMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、10~20μg/mLであり、シスプラチンの濃度は、0.01~5μMである。
【0036】
好ましくは、ここで、ガンは、膀胱ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、5~80μg/mLであり、シスプラチンの濃度は、1~500μMである。
【0037】
有利には、抗ガン剤は、5-FUであり、該組み合わせは、口腔ガン、膵臓ガン又は結腸ガンの治療又は予防に使用される。
【0038】
好ましくは、ここで、ガンは、口腔ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、5~90μg/mLであり、5-FUの濃度は、0.01~5μMである。
【0039】
好ましくは、ここで、ガンは、膵臓ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、10~80μg/mLであり、5-FUの濃度は、1~250μMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、5μg/mLであり、5-FUの濃度は、1~50又は250μMである。
【0040】
好ましくは、ここで、ガンは、結腸ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、5~80μg/mLであり、5-FUの濃度は、10~200μMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、1μg/mLであり、5-FUの濃度は、50~200μMである。
【0041】
有利には、抗ガン剤は、イリノテカンであり、該組み合わせは、結腸ガンの治療又は予防に使用される。
【0042】
好ましくは、ここで、リコンビナントレクチンの濃度は、40~80μg/mLであり、イリノテカンの濃度は、1~50μMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、20μg/mLであり、イリノテカンの濃度は、1又は10~50μMである。
【0043】
有利には、抗ガン剤は、卵巣ガン又は乳ガンの治療又は予防のためのパクリタキセルである。
【0044】
好ましくは、ここで、ガンは、卵巣ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、1~20μg/mLであり、パクリタキセルの濃度は、0.25~5nMである。
【0045】
好ましくは、ここで、ガンは、乳ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、20~80μg/mLであり、パクリタキセルの濃度は、0.1~10nMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、10μg/mLであり、パクリタキセルの濃度は、1~10nMである。
【0046】
有利には、抗ガン剤は、ゲムシタビンであり、該組み合わせは、膀胱ガン又は膵臓ガンの治療又は予防に使用される。
【0047】
好ましくは、ここで、ガンは、膀胱ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、2.5~80μg/mLであり、ゲムシタビンの濃度は、1~300μMである。
【0048】
好ましくは、ここで、ガンは、膵臓ガンであり、リコンビナントレクチンの濃度は、5~20μg/mLであり、ゲムシタビンの濃度は、5~25μMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、40~80μg/mLであり、ゲムシタビンの濃度は、1~25μMである
【0049】
有利には、抗ガン剤は、カルボプラチンであり、該組み合わせは、乳ガンの治療又は予防に使用される。
【0050】
好ましくは、ここで、リコンビナントレクチンの濃度は、5~80μg/mLであり、カルボプラチンの濃度は、50~1000μMであるか又はここで、リコンビナントレクチンの濃度は、2.5μg/mLであり、カルボプラチンの濃度は、100~1000μMである。
【0051】
有利には、リコンビナントレクチンタンパク質は、配列番号:1、2もしくは3のアミノ酸配列を有するか又は配列番号1、2もしくは3に対して少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の相同性を有するタンパク質である。
【0052】
好ましくは、リコンビナントレクチンタンパク質の濃度は、0.5μg/mL~100μg/mLの範囲にある。より好ましくは、リコンビナントレクチンタンパク質の濃度は、1μg/mL~90μg/mLの範囲にある。
【0053】
好ましくは、他の治療剤の濃度は、0.001nM~1000μMの範囲にある。
【0054】
好ましくは、シスプラチンの濃度は、0.01μM~500μMの範囲にある。
【0055】
好ましくは、5-フルオロウラシル(5-FU)の濃度は、0.01μM~250μMの範囲にある。
【0056】
好ましくは、イリノテカンの濃度は、0.1μM~50μMの範囲にある。
【0057】
好ましくは、パクリタキセルの濃度は、0.001nM~10nMの範囲にある
【0058】
好ましくは、ゲムシタビンの濃度は、0.01μM~300μMの範囲にある。
【0059】
好ましくは、カルボプラチンの濃度が、10μM~1000μMの範囲にある。
【0060】
有利には、該組み合わせは、治療効果を達成するのに適した用量のリコンビナントレクチンと、治療効果を達成するのに適した用量の他の治療剤とを含む。
【0061】
好ましくは、リコンビナントレクチンの用量は、in vivoにおいて、0.5μg/mL~100μg/mLのリコンビナントレクチン濃度を達成するのに適している。
【0062】
好ましくは、他の治療剤の用量は、in vivoにおいて、0.001nM~1000μMの他の治療剤濃度を達成するのに適している。
【0063】
好ましくは、シスプラチンの用量は、in vivoにおいて、0.01μM~500μMのシスプラチン濃度を達成するのに適している。
【0064】
好ましくは、5-フルオロウラシル(5-FU)の用量は、in vivoにおいて、0.01μM~250μMの5-フルオロウラシル(5-FU)濃度を達成するのに適している。
【0065】
好ましくは、イリノテカンの用量は、in vivoにおいて、0.1μM~50μMのイリノテカン濃度を達成するのに適している。
【0066】
好ましくは、パクリタキセルの用量は、in vivoにおいて、0.001nM~10nMのパクリタキセル濃度を達成するのに適している。
【0067】
好ましくは、ゲムシタビンの用量は、in vivoにおいて、0.01μM~300μMのゲムシタビン濃度を達成するのに適している。
【0068】
有利には、リコンビナントレクチンタンパク質と他の治療剤との組み合わせは、組成物である。好ましくは、該組成物は、1種以上の薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む。
【0069】
本発明の第5の態様によれば、ガンの治療又は予防のための1種以上の他の治療剤と組み合わせたリコンビナントレクチンタンパク質であって、他の治療剤は、5-フルロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチン又はイリノテカンのうちの1種以上から選択される、リコンビナントレクチンタンパク質が提供される。
【0070】
好ましくは、リコンビナントレクチンは、口腔ガン、卵巣ガン又は膀胱ガンの処置のためのものであり、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、シスプラチンと組み合わせて投与され、ここで、シスプラチンは、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0071】
好ましくは、リコンビナントレクチンは、口腔ガン、膵臓ガン又は結腸ガンの処置のためのものであり、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、5-FUと組み合わせて投与され、ここで、5-FUは、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0072】
好ましくは、リコンビナントレクチンは、結腸ガンの処置のためのものであり、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、イリノテカンと組み合わせて投与され、ここで、イリノテカンは、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0073】
好ましくは、リコンビナントレクチンは、卵巣ガン又は乳ガンの処置のためのものであり、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、パクリタキセルと組み合わせて投与され、ここで、パクリタキセルは、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0074】
好ましくは、リコンビナントレクチンは、膀胱ガン又は膵臓ガンの処置のためのものであり、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、ゲムシタビンと組み合わせて投与され、ここで、ゲムシタビンは、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0075】
好ましくは、リコンビナントレクチンは、乳ガンの処置のためのものであり、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、カルボプラチンと組み合わせて投与され、ここで、カルボプラチンは、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0076】
本発明の第6の態様によれば、リコンビナントレクチンタンパク質と組み合わせたガンの治療又は予防のための治療剤であって、治療剤は、5-フルロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、シスプラチン、パクリタキセル、カルボプラチン又はイリノテカンのうちの1種以上から選択される、治療剤が提供される。
【0077】
好ましくは、治療剤は、口腔ガン、卵巣ガン又は膀胱ガンの処置のためのものであり、ここで、治療剤は、シスプラチンであり、ここで、シスプラチンは、リコンビナントレクチンタンパク質と組み合わせて投与され、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0078】
好ましくは、治療剤は、口腔ガン、膵臓ガン又は結腸ガンの処置のためのものであり、ここで、治療剤は、5-FUであり、ここで、5-FUは、リコンビナントレクチンタンパク質と組み合わせて投与され、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0079】
好ましくは、治療剤は、結腸ガンの処置のためのものであり、ここで、治療剤は、イリノテカンであり、ここで、イリノテカンは、リコンビナントレクチンタンパク質と組み合わせて投与され、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0080】
好ましくは、治療剤は、卵巣ガン又は乳ガンの処置のためのものであり、ここで、治療剤は、パクリタキセルであり、ここで、パクリタキセルは、リコンビナントレクチンタンパク質と組み合わせて投与され、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0081】
好ましくは、治療剤は、膀胱ガン又は膵臓ガンの処置のためのものであり、ここで、治療剤は、ゲムシタビンであり、ここで、ゲムシタビンは、リコンビナントレクチンタンパク質と組み合わせて投与され、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0082】
好ましくは、治療剤は、乳ガンの処置のためのものであり、ここで、治療剤は、カルボプラチンであり、ここで、カルボプラチンは、リコンビナントレクチンタンパク質と組み合わせて投与され、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質は、同時に、別々に又は連続して投与される。
【0083】
発明の説明
定義
本明細書で使用する場合、「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指す。
【0084】
本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、天然アミノ酸及び合成アミノ酸並びに天然アミノ酸に類似する機能を有するアミノ酸類似物及びアミノ酸模倣物を指す。天然アミノ酸は、遺伝暗号によりコードされたものであり、タンパク質原生アミノ酸を含む。また、天然アミノ酸は、細胞における翻訳後に修飾されたアミノ酸も含む。合成アミノ酸は、非標準アミノ酸、例えば、セレノシステイン及びピロリシンを含む。典型的には、合成アミノ酸は、タンパク質原生アミノ酸ではない。
【0085】
「ガン」及び「腫瘍」という用語は、本発明において互換的に使用され、当業者に理解されるのと同じ意味を有する。これらは、正常な細胞が制御不能に増殖し、正常な体細胞を締め出すと形成される。このような拡大した増殖の形成は、組織/臓器/生物の正常な機能に影響を及ぼす。ガンは、体内の任意の場所で発生し、体の他の部位にも拡がる場合がある。ガン細胞が、体内で拡がるのは、転移と呼ばれる。
【0086】
「リコンビナント」という用語は、ヒトの介入により人工的に又は合成的に(すなわち、非天然に)改変された核酸又はポリペプチドを意味する。この改変は、その天然の環境又は状態の中で又はそこから取り出された物質に対して行うことができる。例えば、「リコンビナント核酸」は、例えば、クローニング、DNAシャッフリング又は他の周知の分子生物学的手法の間に、核酸を組み換えることにより調製される核酸である。「リコンビナントDNA分子」は、このような分子生物学的技術により、互いに連結されているDNAのセグメントから構成される。本明細書で使用する場合、「リコンビナントタンパク質」又は「リコンビナントポリペプチド」という用語は、リコンビナントDNA分子を使用して発現されるタンパク質分子を指す。
【0087】
本明細書で使用する場合、「レクチン」という用語は、炭水化物結合タンパク質を指す。より具体的には、本発明のリコンビナントレクチンタンパク質は、Sclerotium rolfsiiレクチン(SRL)由来のレクチンである。Sclerotium rolfsiiレクチン(SRL)は、土壌媒介植物病原性真菌であるS. rolfsiiの菌核体から単離されたレクチンである。
【0088】
本明細書で使用する場合、「相同性」又は「相同な」という用語は、所定の領域又は部分にわたって少なくとも部分的な同一性を共有する2つ以上の参照される実体を指す。相同性又は同一性の領域、領域又はドメインは、類似又は同じ2つ以上の参照される実体の一部を指す。このため、2つの配列が、1つ以上の配列領域にわたって同一である場合、それらは、これらの領域において同一性を共有する。実質的な相同性は、参照分子と少なくとも類似の構造又は機能(例えば、生物学的機能又は活性)を有するか又は有すると予測されるように、構造的又は機能的に保存されている分子を指す。また、実質的な相同性は、分子が参照分子の領域又は部分と相同性を共有する関連/対応する領域又は部分を有することを意味することができる。
【0089】
一実施態様では、2つの配列間の%「相同性」は、デフォルトパラメータによるBLASTPアルゴリズム(Altschul et al. Nucleic Acids Res. 1997 Sep 1;25(17):3389-402)を使用して決定される。特に、BLASTアルゴリズムは、URL:https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiを使用して、インターネット上でアクセスすることができる。代替的な実施態様では、グローバル配列アラインメントのために、2つの配列間の% 相同性は、デフォルトパラメータを使用するEMBOSS Needleアルゴリズムを使用して決定される。特に、EMBOSS Needleアルゴリズムは、URL:https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/を使用してインターネット上でアクセスすることができる。
【0090】
特に断りない限り、「相同性」という用語は、本明細書において、「配列同一性」という用語と互換的に使用される。
【0091】
「リコンビナントレクチンタンパク質」という用語は、ここでは、患者への投与時に、本明細書に記載された化合物を(直接又は間接的に)提供可能な任意の薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、水和物、プロドラッグ又は任意の他の化合物を包含することが意図される。塩、溶媒和物、水和物及びプロドラッグの調製は、当技術分野において公知の方法により行うことができる。
【0092】
本明細書で使用する場合、「治療(therapies)」及び「治療(therapy)」という用語は、疾患又はその1種以上の症状の治療、予防及び/又は管理に使用することができる任意の方法、組成物及び/又は活性成分を指す場合がある。
【0093】
本明細書全体を通して使用する場合、「併用療法」という用語は、同じ又は別々の医薬製剤中において、同時に又は異なる時点で、言及される治療剤を、ガンを患っている患者に投与することを包含することを意味する。治療剤が、異なる時間に投与される場合、治療剤は、増強又は相乗的応答が起こるように十分に近い時間に投与されるべきである。
【0094】
「化学療法」という用語は、ガンを処置するための薬物の使用を指し、本明細書で使用する場合、「化学療法剤」は、ガンの処置に有用な化合物である。
【0095】
リコンビナントレクチンタンパク質と組み合わせて使用することができる治療剤は、好ましくは、化学療法剤である。本発明で使用することができる化学療法剤(「用語」化学療法剤は、当業者に公知のものと同じ意味を有する)は制限されない。このような化学療法剤の非限定的な例は、アルキル化剤、例えば、マイトマイシンC、シクロホスファミド、ブスルファン、イホスファミド、イソスファミド、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、クロラムブシル、メクロレタミン又はダカルバジン等;代謝拮抗剤、例えば、ゲムシタビン、カペシタビン、5-フルオロウラシル、シタラビン、2-フルオロデオキシシチジン、メトトレキサート、イダトレキサート、トムデクス又はトリメトレキサート等;トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、テニポシド又はミトキサントロン等;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、イリノテカン(CPT-11)、7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN-38)又はトポテカン等;有糸分裂阻害剤、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン又はビノレルビン等;及び白金誘導体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、スピロプラチナ又はカルボプラチナ等である。
【0096】
化学療法剤は、上記されたように広く分類することができる。また、それらは、以下の表に記載されるように、サブクラスにさらに分類することができる。
【0097】
【0098】
「放射線療法(radiation therapy)」又は「放射線療法(radiotherapy)」という用語は、電離放射線によるガン及び他の疾患の処置である。電離放射線は、細胞の遺伝物質を損傷することにより治療される領域の細胞を損傷し又は破壊するエネルギーを蓄積し、これらの細胞が増殖し続けるのを不可能にする。放射線は、ガン細胞と正常細胞との両方に損傷を与えるが、後者は、自身を修復し、適切に機能することができる。本発明に従って使用される放射線療法は、ガンマ線、X線の使用及び/又は腫瘍細胞への放射性同位体の指向性送達を含むことができるが、これらに限定されない。また、マイクロ波及びUV照射等の他の形態のDNA損傷因子も企図される。放射線療法は、放射線量をガン部位に直接送達するための放射性ラベル抗体の使用(放射免疫療法)を含むことができること及び/又は放射線増感剤の使用を含むことができることがさらに意図される。
【0099】
「免疫療法」という用語は、ガン細胞をターゲットとし、破壊するための免疫エフェクター細胞及び分子の使用による。抗体は単独で、治療のエフェクターとして機能することができ又は他の細胞をリクルートして、細胞殺傷に実際に影響を及ぼすことができる。抗体は、薬剤又はトキシン(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラトキシン、百日咳トキシン等)にコンジュゲーションさせ、単にターゲット化剤として機能することができる。代替的には、エフェクターは、腫瘍細胞ターゲットと直接に又は間接的のいずれかで相互作用する表面分子を有するリンパ球であることができる。種々のエフェクター細胞は、細胞傷害性T細胞及びMK細胞を含む。治療様式の組み合わせ、すなわち、直接的細胞傷害性活性及びErbB2の阻害又は減少により、ErbB2過剰発現ガンの処置において治療的利益が提供されるであろう。
【0100】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容し得る塩」は、生物学的に又は他の点で望ましくなくはない化合物の生物学的有効性及び特性を保持している塩を指す。薬学的に許容し得る塩は、化合物の薬学的に許容し得る塩を指す。この塩は、当技術分野において周知の各種の有機及び無機カウンターイオンから得られる。
【0101】
「医薬組み合わせ」という用語は、単一の組成物に混合されているか又は別々に維持されているかどうかに関わらず、第1の医薬成分と第2の医薬成分との任意の組み合わせを指す。「医薬組成物」又は「薬学的に許容し得る組成物」もしくは「薬学的に許容し得る製剤」という用語は、本明細書に開示された化合物と、医薬賦形剤、例えば、希釈剤又は担体(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy 22nd ed., Pharmaceutical Press (Sep. 15, 2012)及びhandbook of Pharmaceutical Excipients, 6th edition, Raymond Rowe, Pharmaceutical Press (2009)を参照のこと)との混合物を指す。医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。医薬組成物は、一般的には、特定の意図される投与経路に合わせて調整されるであろう。
【0102】
「有効な」又は「治療上有効な」という用語は、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な効果を指す。当業者に理解されるであろうように、本組み合わせの効果は、所望の生物学的エンドポイント、送達される薬剤の薬物動態、処置される疾患、投与様式及び患者等の要因に応じて変化する場合がある。1種以上の症状又は臨床マーカーが減少する場合、治療は、一般的に「有効」である。代替的には、疾患、障害又は医学的状態の進行が遅くなり又は停止する場合、処置は、「有効」である。
【0103】
組み合わせ指数(CI)値を、Loeweの加法性モデルに基づいて決定し、種々の薬剤-薬剤濃度及び効果レベル(Fa、影響を受けたフラクション;ガン細胞増殖の阻害)について、相加的(CI=1)、拮抗的(CI>1)又は相乗的(CI<1)となることができる薬剤-薬剤相互作用の性質を評価した。CI値は、Chou et alによる方法に従って、CompuSynソフトウェア(ComboSyn Inc., Paramus, N.J.)を使用した線形回帰トレンドラインに基づいて計算され、それにより、双曲線及びS字形用量-効果曲線は、一次形式に変換される(Chou TC (2010) Drug combination studies and their synergy quantification using the Chou-Talalay method. Cancer Res 70: 440-6, instructions also available at ComboSyn, Inc., www.combosyn.com)。
【0104】
相乗効果により、個々の治療法の量(用量)を少なくして、疾患の効果的な処置が可能となる。用量が低いほど、有効性が低下することなく毒性が低くなる。加えて、相乗効果は、改善された効力をもたらす場合がある。最後に、相乗作用により、任意の単一の治療法と比較して、疾患の改善された回避又は減少がもたらされる場合がある。「添加剤」という用語は、任意の2種以上の治療剤の組み合わせの合計を指す。本明細書で使用する場合、「アンタゴニスト」という用語は、生物学的活性を遮断する(例えば、低下させ又は妨げる)ことを指す。「阻害する」又は「阻害」という用語は、測定可能な量を減少させることを意味する。
【0105】
本明細書で使用する場合、「抗ガン剤」という用語は、in vitroもしくはin vivoで、ガン細胞の機能を阻害し、それらの形成を阻害しかつ/又はそれらの破壊を引き起こす物質又は処置(例えば、放射線療法)を指す。
【0106】
「抗腫瘍抗生物質」という用語は、抗腫瘍効果を有する化学物質を指す。一部の実施態様では、本明細書で言及された「抗腫瘍抗生物質」は、感染症を処置するのに使用される抗菌性抗生物質ではない。DNAに干渉することにより細胞の増殖を阻害する抗ガン剤の一種である。
【0107】
「細胞傷害性」という用語は、ガン細胞系統に対する本発明の治療剤の効果との関連で使用され、「細胞に対する毒性」を意味する。ガン細胞を破壊するのに有効な治療剤は、細胞傷害性と呼ばれるか又は細胞傷害性を有すると記載される。
【0108】
「IC50」又はIC50という用語は、所定の定量的に測定可能なパラメータの50%阻害を引き起こす阻害用量を指す。この定量的尺度は、所定の生物学的、生化学的又は化学的パラメータ(又はパラメータの成分、すなわち、酵素、細胞、細胞レセプター又は微生物)を半分阻害するのに、特定の薬剤又は他の物質(阻害剤)がどれだけ必要であるかを示す。
【0109】
「相乗的」という用語は、任意の2種以上の単剤の相加効果より有効な2種以上の治療剤の組み合わせを指す。薬理学的薬剤の相乗作用は、組み合わせ指数(CI)値を計算することにより定量的に決定することができる。
【0110】
CI値は、以下に示された式を使用して、2つの薬剤A及びBについて測定されたIC50値に基づいて計算することができる。
【数1】
式中、
DA
(50)=50%の細胞傷害性を生じるBとの組み合わせにおける薬剤Aの濃度
ICA
(50)=50%の細胞傷害性を生じる単独での薬剤Aの濃度
DB
(50)=50%の細胞傷害性を生じるAとの組み合わせにおける薬剤Bの濃度
ICB
(50)=50%の細胞傷害性を生じる単独での薬剤Bの濃度
ここで、薬剤Aは、本発明のレクチン(例えば、配列番号1のタンパク質)であり、薬剤Bは、試験された他の治療剤である。
【0111】
相乗作用、相加作用又は拮抗作用は、下記基準に基づいて決定される。
CI>1-拮抗作用が示される
CI=1-加法効果が示される
CI<1-相乗作用が示される
【0112】
したがって、CI値が、1未満であると計算された場合、これは、薬剤AとBとが、相乗効果を有することを示す。
【0113】
本明細書で使用する場合、「対象」は、処置、観察又は実験の対象である動物を指す。「動物」は、冷血及び温血脊椎動物及び無脊椎動物、例えば、魚類、貝類、は虫類、特に、ほ乳類を含む。「ほ乳類」は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、霊長類、例えば、サル、チンパンジー及び類人間、特に、ヒトを含むが、これらに限定されない。
【0114】
加えて、本明細書で言及された任意の薬剤は、遊離化合物又は溶媒和物(例えば、水和物)のいずれかとして、非晶質形態又は結晶形態にあることができ、両方の形態が、本発明の範囲内にあることが意図される。溶媒和の方法は、当技術分野において一般公知である。
【0115】
添付の配列の簡単な説明
配列番号:1は、S. rolfsiiレクチンアミノ酸配列の変異体を表わす(WO第2010/095143号において、Rec-2として報告されている)。
【0116】
配列番号:2は、S. rolfsiiレクチンアミノ酸配列の変異体を表わす(WO第2010/095143号において、Rec-3として報告されている)。
【0117】
配列番号:3は、S. rolfsiiレクチンアミノ酸配列の変異体を表わす(WO第2014/203261号に報告されている)。
【0118】
配列番号:1のアミノ酸配列を有するリコンビナントレクチンタンパク質
【化1】
【0119】
配列番号:2のアミノ酸配列を有するリコンビナントレクチンタンパク質
【化2】
【0120】
配列番号:3のアミノ酸配列を有するリコンビナントレクチンタンパク質
【化3】
【0121】
発明の詳細な説明
本発明は、一般的には、リコンビナントレクチンタンパク質と、1種以上の他の治療剤とを含む治療上有効な組み合わせに関する。
【0122】
特定の実施態様では、リコンビナントレクチンタンパク質と、1種以上の他の治療剤とを含む治療上有効な組み合わせであって、該組み合わせは相乗的である、治療上有効な組み合わせが提供される。一部の実施態様では、リコンビナントレクチンタンパク質の濃度は、0.5μg/mL~100μg/mLの範囲にある。
【0123】
治療
本発明の治療上有効な組み合わせは、腫瘍の増殖又は転移の予防、ガンの治療又は治癒のためのものである。一部の実施態様によれば、相乗的組み合わせは、腺ガン、扁平上皮ガン、移行上皮ガン、基底細胞ガン、肉腫、リンパ腫、上皮細胞ガン又は非上皮細胞ガンの予防又は治療に使用することができる。特定の実施態様によれば、本発明の併用療法は、対象における膵臓ガン、腹部ガン、肝臓ガン、前立腺ガン、口腔ガン、結腸ガン、卵巣ガン、膀胱ガン、腎臓ガン、胃ガン、乳ガン、骨髄ガン、メラノーマ、白血病又は中枢神経系ガンの予防又は治療に使用することができる。
【0124】
特定の実施態様によれば、本発明の併用療法は、膵臓ガン、口腔ガン、結腸ガン、卵巣ガン、膀胱ガン、乳ガンの予防又は治療に使用することができる。
【0125】
レクチンタンパク質
リコンビナントレクチンタンパク質は、配列番号:1のアミノ酸配列を有するタンパク質又は一部の実施態様では、配列番号1に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質である。一部の実施態様では、リコンビナントレクチンタンパク質は、配列番号2又は3に対して少なくとも60%の相同性を有するアミノ酸配列を含むことができる。一部の実施態様では、リコンビナントレクチンタンパク質は、配列番号1に対して少なくとも70%、80%、90%、95%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、リコンビナントレクチンタンパク質は、配列番号:1、2又は3のアミノ酸配列を含む。一部の実施態様では、レクチンタンパク質は、200個未満のアミノ酸残基、好ましくは、150個未満のアミノ酸残基を含む。
【0126】
他の治療剤
一部の実施態様では、他の治療剤は、ガンの処置のための化学療法に使用される抗ガン剤である。一部の実施態様では、他の治療剤は、アルキル化剤、例えば、マイトマイシンC、シクロホスファミド、ブスルファン、イホスファミド、イソスファミド、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、クロラムブシル、メクロレタミン又はダカルバジン等;代謝拮抗剤、例えば、ゲムシタビン、カペシタビン、5-フルオロウラシル、シタラビン、2-フルオロデオキシシチジン、メトトレキサート、イダトレキサート、トムデクス又はトリメトレキサート等;トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、テニポシド又はミトキサントロン等;トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、イリノテカン(CPT-11)、7-エチル-10-ヒドロキシ-カンプトテシン(SN-38)又はトポテカン等;有糸分裂阻害剤、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン又はビノレルビン等;及び白金誘導体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、スピロプラチナ又はカルボプラチナ等である。
【0127】
米国ガン学会(www.cancer.org)によれば、乳ガンの処置に使用される化学療法剤は、パクリタキセル、タキソール、ドセタキセル、タキソテール、ドキソルビシン、エピルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン、イキサベピロン及びエリブリンから選択される。同様に、膵臓ガンの処置には、化学療法剤は、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル、オキサリプラチン、パクリタキセル、カペシタビン、シスプラチン及びイリノテカンから選択される。また、口腔及び中咽頭ガンの処置には、化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、パクリタキセル、ドセタキセル及びヒドロキシ尿素から選択される。結腸又は大腸ガンの処置にも同様に、化学療法剤は、5-FU、カペシタビン、イリノテカン、オキサリプラチン及びトリフルリジンとチピラシルとの組み合わせから選択される。卵巣ガンの処置には、薬剤は、白金化合物、例えば、シスプラチンもしくはカルボプラチン及びタキサン、例えば、パクリタキセルもしくはドセタキセル又はこれらの組み合わせから選択される。膀胱ガンの処置には、化学療法剤は、ゲムシタビン、シスプラチン、メトトレキサート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、カルボプラチン又はそれらの組み合わせから選択される。
【0128】
本発明の具体的な実施態様によれば、他の治療剤は、乳ガン又は卵巣ガンについてパクリタキセル、シスプラチン及びカルボプラチン、口腔ガンについてシスプラチン及び5-FU、膀胱ガンについてシスプラチン、ゲムシタビン、膵臓ガンについて5-FU及びゲムシタビン並びに結腸ガンについて5-FU及びイリノテカンから選択することができる。
【0129】
計画
治療上有効な組み合わせは、同じ又は別々の医薬製剤中において、同時に又は異なる時点で、リコンビナントレクチンタンパク質及び他の治療剤を対象に投与することを含むことができ、ここで、リコンビナントレクチンタンパク質及び他の治療剤は、互いに対して同時に、別々に又は連続して投与することができる。
【0130】
本明細書で使用する場合、「同時投与」という用語は、リコンビナントレクチンタンパク質及び他の治療剤を含む組成物が約15分以内、より具体的には、約10、5又は1分のいずれか以内の時間分離で投与されることを意味する。リコンビナントレクチンタンパク質及び治療剤が、同時に投与される場合、リコンビナントレクチンタンパク質及び治療剤は、同じ組成物(例えば、リコンビナントレクチンタンパク質及び1種以上の治療剤の両方を含む組成物)又は別々の組成物(例えば、リコンビナントレクチンタンパク質は、一方の組成物に含有され、1種以上の治療剤は、他方の組成物に含有される)に含有させることができる。
【0131】
「連続投与」において、他の治療剤は、リコンビナントレクチンタンパク質の投与前又は同投与後のいずれかに投与される。連続投与において、リコンビナントレクチンタンパク質及び他の治療剤は、約15分超、より具体的には、約20分、30分、40分、50分及び60分又はそれ以上のいずれかを超える時間分離で投与することができる。リコンビナントレクチンタンパク質又は他の治療剤のいずれかを最初に投与することができる。リコンビナントレクチンタンパク質及び他の治療剤は、同じ又は異なるパッケージに含ませることができる別々の組成物に含有される。
【0132】
「別々の投与」において、リコンビナントレクチンタンパク質及び他の治療剤は、一方が最初に投与され、他方が2番目に投与されるか又はその逆の連続的な様式で投与することができる。2回の投与の間の時間分離は、60分超である。
【0133】
別の実施態様では、ガンの治療又は予防のためのリコンビナントレクチンタンパク質の使用であって、配列番号:1のアミノ酸配列を有するリコンビナントレクチンタンパク質を別の治療剤と組み合わせて投与することを含み、ここで、他の治療剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、使用が提供される。
【0134】
具体的な実施態様では、対象におけるガンの予防又は治療のためのリコンビナントレクチンタンパク質の使用であって、対象に有効量のリコンビナントレクチンを代謝拮抗剤、アルキル化抗腫瘍剤、抗微小管剤及びトポイソメラーゼI阻害剤から選択される他の抗ガン剤と組み合わせて投与することを含み、ここで、代謝拮抗剤は、5-FU、ゲムシタビン、メトトレキサート、ペメトレキセド又はカペシタビンから選択され、アルキル化抗腫瘍剤は、シスプラチン又はカルボプラチンから選択される白金系抗腫瘍剤であり、抗微小管剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン又はタキソテールから選択され、トポイソメラーゼI阻害剤は、イリノテカン又はトポテカンであり、ここで、他の抗ガン剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、使用が提供される。
【0135】
さらに別の具体的な実施態様では、ガンの治療又は予防のためのリコンビナントレクチンタンパク質の使用であって、リコンビナントレクチンタンパク質をパクリタキセル、5-フルオロウラシル、シスプラチン、カルボプラチン、イリノテカン及びゲムシタビンから選択される別の抗ガン剤と組み合わせて投与することを含み、ここで、他の抗ガン剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、使用が提供される。
【0136】
本発明の別の態様は、対象におけるガンの治療又は予防方法であって、対象に有効量のリコンビナントタンパク質を別の治療剤と組み合わせて投与することを含み、ここで、他の治療剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、方法である。
【0137】
具体的な実施態様では、対象におけるガンの治療又は予防方法であって、対象に有効量のリコンビナントタンパク質を代謝拮抗剤、アルキル化抗腫瘍剤、抗微小管剤及びトポイソメラーゼI阻害剤から選択される他の抗ガン剤と組み合わせて投与することを含み、ここで、代謝拮抗剤は、5-FU、ゲムシタビン、メトトレキサート、ペメトレキセド又はカペシタビンから選択され、アルキル化抗腫瘍剤は、シスプラチン又はカルボプラチンから選択される白金系抗腫瘍剤であり、抗微小管剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン又はタキソテールから選択され、トポイソメラーゼI阻害剤は、イリノテカン又はトポテカンであり、ここで、他の抗ガン剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、方法が提供される。
【0138】
さらに別の具体的な実施態様では、対象におけるガンの治療又は予防方法であって、対象に有効量のリコンビナントタンパク質をパクリタキセル、5-FU、シスプラチン、カルボプラチン、イリノテカン及びゲムシタビンから選択される他の抗ガン剤と組み合わせて投与することを含み、ここで、他の抗ガン剤は、同時に、別々に又は連続して投与される、方法が提供される。
【0139】
例示的な組み合わせ
単独で使用した場合のリコンビナントレクチンタンパク質は、有効な細胞傷害性を示した。ただし、他の治療剤と組み合わせた場合、試験細胞系統に対する効果は、非常に驚くべきものであった。この組み合わせは、相加的に有効な効果を示すだけでなく、高い相乗作用も観察された。この組み合わせは、ガン細胞の増殖の阻害に非常に有効であった。
【0140】
本発明の別の具体的な態様によれば、リコンビナントレクチンタンパク質と、パクリタキセル、5-FU、カルボプラチン、シスプラチン、イリノテカン及びゲムシタビンから選択される別の抗ガン剤とを含む、相乗的組み合わせが提供される。この組み合わせは、ガンの治療又は予防に使用される。
【0141】
本発明の主な態様は、配列番号:1のアミノ酸配列を有するリコンビナントレクチンタンパク質と、シスプラチンとを含む相乗的組み合わせであり、ここで、この組み合わせは、乳ガン、口腔ガン、卵巣ガン又は膀胱ガンの治療又は予防に使用される。
【0142】
本発明の別の主な態様は、リコンビナントレクチンタンパク質と、5-FUとを含む相乗的組み合わせであり、ここで、この組み合わせは、膵臓ガン、口腔ガン又は結腸ガンの治療又は予防に使用される。
【0143】
本発明の更なる主な態様は、リコンビナントレクチンタンパク質と、イリノテカンとを含む相乗的組み合わせであり、ここで、この組み合わせは、結腸ガンの治療又は予防に使用される。
【0144】
本発明のさらに別の主な態様は、リコンビナントレクチンタンパク質と、パクリタキセルとを含む相乗的組み合わせであり、ここで、この組み合わせは、卵巣ガン又は乳ガンの治療又は予防に使用される。
【0145】
本発明のさらに別の主な態様は、リコンビナントレクチンタンパク質と、ゲムシタビンとを含む相乗的組み合わせであり、ここで、この組み合わせは、膀胱ガン又は膵臓ガンの治療又は予防に使用される。
【0146】
本発明の別の主な態様は、リコンビナントレクチンタンパク質と、カルボプラチンとを含む相乗的組み合わせであり、ここで、この組み合わせは、乳ガンの治療又は予防に使用される。
【0147】
さらに別の実施態様によれば、併用療法は、放射線療法と同時に、本発明の成分を投与することを含むことができる。
【0148】
医薬組成物
本発明の別の態様は、別の治療剤との組み合わせでのリコンビナントレクチンタンパク質と、1種以上の薬学的に許容し得る賦形剤とを含む、組成物である。
【0149】
本発明の態様によれば、組み合わせられた調製物は、適切な薬学的に許容し得る形態/医薬組成物にある。この調製物は、適切な経口形態もしくは非経口投与可能な形態又はインプラントであることができる。この調製物は、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、皮内、デポー注射、くも膜下、経皮、舌下、肝内、経口又は吸入投与のための錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、懸濁剤、液剤、エマルジョン、粉末又はシロップの形態にあることができる。
【0150】
本発明の態様によれば、医薬組成物は、1種以上の薬学的に許容し得る賦形剤も含む。薬学的に許容し得る賦形剤は、当業者に公知の製剤中の非活性医薬成分、例えば、安定剤、可溶化剤、保存剤、崩壊剤、バインダー、充填剤及び潤滑剤又は当業者に公知の任意の他のものを指す。
【0151】
本発明に使用される組成物は、50mM Tris塩基(トロメタミン)、150mM 塩化ナトリウム(pH8.0±0.2)を含む。ただし、このような非経口組成物は、浸透圧修飾剤としてのデキストロース、グリセロール、塩化ナトリウム又はマンニトール;酸化防止剤としてのアスコルビン酸、アセチルシステイン、亜硫酸塩(重亜硫酸塩、メタ亜硫酸塩)又はモノチオグリエルコール;抗菌剤としてのフェノール、メタクレゾール、ベンジルアルコール、パラベン(メチル、プロピル、ブチル)、クロロブタノール、チメロサール及びフェニル水銀塩(アセタート、ボラート、ニトラート);キレート剤としてのカルシウム二ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、二ナトリウムEDTA、ナトリウムEDTA、カルシウム又はジエチレントリアミンペンタ酢酸;界面活性剤としてのポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(Tween 80)、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween 20)、レシチン、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー(Pluronics)又はソルビタントリオレアート(span 85);及び共溶媒としてのプロピレングリコール、グリセリン、エタノール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、ジメチルアセトアミド又はCremophor ELを含むが、これらに限定されない賦形剤を含む。他の医薬組成物は、当業者の従前の知識に従って、標準的な書籍に列挙され、国を跨いだ規制当局により許容される賦形剤を使用して調製される。
【0152】
医薬組成物中のリコンビナントレクチンタンパク質及び他の治療剤の好ましい量は、組成物の形態、投与経路、対象の種類、年齢及び遺伝的構成並びにガンのステージ及び処置方法により変化する。
【0153】
濃度及び用量
一部の実施態様によれば、リコンビナントレクチンタンパク質の有効濃度は、0.5μg/mL~100μg/mLの範囲にある。特定の実施態様では、有効濃度は、1μg/mL~90μg/mLの範囲にある。一部の実施態様によれば、他の治療剤の有効濃度は、0.001nM~1000μMの範囲にある。当業者であれば、組み合わせの場合、有効濃度は、組み合わせた際に相乗効果を与える全ての成分の濃度であるという事実を認識しているであろう。このため、リコンビナントレクチンタンパク質の有効濃度は、他の治療剤、処置方法及びガンの種類に基づいて異なるであろう。同様に、各治療剤の有効濃度は、リコンビナントレクチンタンパク質と共に又は個別に使用される場合、ガンの種類について異なるであろう。例えば、本発明において、卵巣ガン細胞系統の場合に、リコンビナントレクチンタンパク質の有効相乗濃度は、1μg/mL~20μg/mLであったが、濃度2.5μg/mL リコンビナントレクチンタンパク質では、両方の場合にパクリタキセルを他の治療剤として使用した場合でも、乳ガン細胞系統について相乗効果が見られなかった。同様に、これら両方のガンにおけるパクリタキセルの有効相乗濃度は異なる。このため、全ての活性剤の濃度は、ガンの種類に基づいて変化し、当業者であれば、それを十分に認識している。
【0154】
本発明者らは、幾つかのガンの処置について、リコンビナントレクチンタンパク質単独及び上記列挙された治療剤と組み合わせた効果を試験するために、異なるガン細胞系統について幾つかの研究を行った。本発明者らは、膵臓ガンについてゲムシタビン及び5-FU、乳ガンについてパクリタキセル及びカルボプラチン、口腔ガンについてシスプラチン及び5-FU、結腸ガンについて5-FU及びイリノテカン、卵巣ガンについてシスプラチン及びパクリタキセル並びに膀胱ガンについてシスプラチン及びゲムシタビンを選択した。
【0155】
治療又は予防は、治療上有効量のレクチンを対象に投与することを含むことができる。一部の実施態様では、レクチンは、0.1~1000mg/kg、0.5~100mg/kg又は1~50mg/kgの用量で投与される。処置される状態及び対象の性質に従って投与されるレクチンの量を決定することは、当業者の能力の範囲内であろう。
【0156】
治療又は予防は、治療上有効量の他の治療剤を対象に投与することを含むことができる。一部の実施態様では、他の治療剤は、体表面積当たり1~10,000mg(mg/m2)、好ましくは、10~1,000mg/m2、好ましくは、50~600mg/m2の用量で投与される。
【0157】
このため、本発明は、レクチンタンパク質と、薬学的に許容し得る希釈剤又は賦形剤とを含む、医薬組成物も提供する。例示的な希釈剤及び賦形剤は、滅菌水、生理食塩水及び/又は薬学的に許容し得るバッファーを含む。レクチン又は組成物の投与は、注射(静脈内(ボーラス又は注入)、動脈内、腹腔内、皮下(ボーラス又は注入)、脳室内、筋肉内又はクモ膜下を含む)、経口摂取(例えば、錠剤、ゲル剤、ロゼンジ又は液剤の摂取)、吸入、粘膜(例えば、口腔、鼻又は直腸粘膜)を介する局所を含む(が、これらに限定されない)任意の適切な経路により、スプレー剤、錠剤、経皮パッチ、皮下インプラントの形態又は坐剤の形態での送達によることができる。一部の実施態様では、レクチン(例えば、配列番号:1、2、3のアミノ酸配列を有するレクチン)又は本明細書に記載された医薬組成物は、対象に経腸的に、非経口的に又は局所的に投与される。レクチン又は医薬組成物は、固体(例えば、錠剤又はカプセル剤)、凍結乾燥粉末、液体(例えば、液剤又は懸濁剤)、半固体又は当業者に公知の任意の他の形態である剤形として投与することができる。レクチン又は医薬組成物は、液剤もしくは懸濁剤を静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下もしくは皮内にデポー注射により注射することにより対象に投与することができ又はくも膜下、経皮、舌下もしくは経口、局所もしくは吸入法により投与することができる。対象は、ほ乳類の対象であることができる。一部の実施態様では、対象は、ヒトである。特に、対象は、ガンを患っているヒトの対象であることができる。
【0158】
実施例
本発明の実施例は、選択されたガン細胞に対する配列番号:1単独及び代表的な抗ガン剤との組み合わせの効果を実証するためのものである。ここで選択された抗ガン剤は、代謝拮抗剤、アルキル化抗腫瘍剤、抗微小管剤及びトポイソメラーゼI阻害剤である各クラスの化学療法剤を表わす。このため、当業者であれば、以下の実施例には含まれないが、上記列挙された化学療法剤のクラスに属する任意の他の抗ガン剤が、ある程度の濃度変動を伴って同様の相乗効果を実証するであろうという事実を十分認識するであろう。したがって、以下に列挙された実施例は、実証の目的のためだけであり、いかなる様式においても本発明の範囲を限定するものではない。
【0159】
実験に使用された細胞系統は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手した。
【0160】
実施例1:膵ガン細胞(PANC-1細胞系統)に対する配列番号1、ゲムシタビン及び5-フルオロウラシル(5-FU)単独での細胞傷害性効果並びに配列番号1とゲムシタビン及び5-FUとの組み合わせでの相乗的細胞傷害性効果
膵臓ガン細胞系統(PANC-1)における化学療法剤であるゲムシタビン及び5-フルオロウラシルと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果を決定するための研究を行った。この研究を実施例1-1及び実施例1-2に記載される2段階で行った。
【0161】
実施例1-1-PANC-1細胞系統における細胞傷害性についての配列番号:1の存在下でのゲムシタビン及び5-FUのIC50値の測定
PANC-1細胞における細胞傷害性についてのゲムシタビンのIC50に対する配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンの濃度の効果を決定するための研究を行った。逆に、配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンのIC50に対するゲムシタビンの濃度の効果を決定するための研究を行った。
【0162】
同様に、配列番号:1のリコンビナントレクチンと組み合わせた5-FUについての別の研究を行った。
【0163】
細胞を配列番号:1のリコンビナントレクチン及び化学療法剤と48時間接触させておき、細胞傷害性効果(% 細胞傷害性)を測定した。
【0164】
細胞傷害性効果を、細胞代謝活性を評価するための周知の比色MTTアッセイ(Mossman, T. 1983 Rapid colorimetric assay for cellular growth and survival: application to proliferation and cytotoxicity assays Journal of Immunological Methods, volume 65, pages 55-63)により決定した。
【0165】
% 細胞傷害性データに基づいて、IC50値を、ソフトウェアGraphPad Prismバージョン4.01を使用して決定した。これらの決定されたIC50値を以下の表1及び表2に示す。
【0166】
【0167】
【0168】
表1及び表2は、配列番号:1単独又はゲムシタビンもしくは5-FUとの組み合わせでのIC50に関する。配列番号:1のアミノ酸配列を有するリコンビナントレクチンタンパク質をゲムシタビン又は5-フルロウラシル(5-FU)と組み合わせて使用した場合、膵臓ガン細胞に対するIC50がかなり低下したことが観察される。
【0169】
実施例1-2-配列番号:1を伴うゲムシタビン及び5-FUについてのCI値の計算
更なる研究において、PANC-1細胞を配列番号:1(2.5μg/mL~80μg/mL)と組み合わせたゲムシタビン(0.01μM~50μM)で48時間処理した。各組み合わせについての細胞傷害性効果を、MTTアッセイにより決定した。同様に、別のセットの細胞を配列番号:1(2.5μg/mL~80μg/mL)と組み合わせた5-FU(0.1μM~250μM)で処理した。
【0170】
実施例1-1におけるのと同じ方法を使用して、配列番号:1のリコンビナントレクチンの所定の濃度におけるゲムシタビンについてのIC50値を測定し、ゲムシタビンの所定の濃度における配列番号:1のリコンビナントレクチンについてのIC50値を測定した。ゲムシタビン及び配列番号:1のリコンビナントレクチン単独でのそれぞれについてのIC50値も測定した。ゲムシタビンの代わりに、5-FUについても同様に行った。
【0171】
組み合わせ指数(CI)値を各薬剤濃度での組み合わせについて決定した。CI値を、以下に示された式を使用して、IC50値に基づいて計算した。
【数2】
式中、
DA
(50)=50%の細胞傷害性を生じるBとの組み合わせにおける薬剤Aの濃度
ICA
(50)=50%の細胞傷害性を生じる単独での薬剤Aの濃度
DB
(50)=50%の細胞傷害性を生じるAとの組み合わせにおける薬剤Bの濃度
ICB
(50)=50%の細胞傷害性を生じる単独での薬剤Bの濃度
ここで、薬剤Aは、配列番号1であり、薬剤Bは、試験された他の治療剤である。
【0172】
相乗作用、相加作用又は拮抗作用を下記基準に基づいて決定した。
CI>1-拮抗作用が示される
CI=1-加法効果が示される
CI<1-相乗作用が示される
【0173】
PANC-1細胞系統に対する、配列番号:1とゲムシタビン及び5-FUとの組み合わせの研究についての組み合わせ指数計算の結果を以下に表にする。
【0174】
【0175】
本発明の態様によれば、上記表に示されたように、膵臓細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1とゲムシタビンとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が以下の配列番号:1濃度について観察された。
5μg/mL、10μg/mL及び20μg/mL 配列番号:1と5μM及び25μM ゲムシタビン
40μg/mL及び80μg/mL 配列番号:1と1μM、5μM及び25μM ゲムシタビン
【0176】
拮抗作用が、0.01μM、0.1μM及び50μM ゲムシタビンとの配列番号:1の全ての濃度で観察された。2.5μg/mL 配列番号:1では、全ての濃度のゲムシタビンについて、拮抗作用が観察された。1μM ゲムシタビンとの5μg/mL及び10μg/mL 配列番号:1についても、で拮抗作用が観察された。
【0177】
相加効果が、1μM ゲムシタビンとの20μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0178】
【0179】
本発明の態様によれば、上記表に示されたように、膵臓細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1と5-FUとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が以下の配列番号:1濃度について観察された。
5μg/mL 配列番号:1と1μM~50μM及び250μM 5-FU
10μg/mL~80μg/mL 配列番号:1と1μM~250μM 5-FU
【0180】
拮抗作用が、配列番号:1及び5-FU両方のより低い濃度で観察された。
【0181】
相加効果が、100μM 5-FUとの5μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0182】
表1~表4の結果から、配列番号:1がゲムシタビン及び5-フルオロウラシルとの組み合わせで相乗効果を示すことが実証されている。これらの組み合わせは、ガン細胞の増殖を阻害するのに非常に有効であった。使用した配列番号:1の濃度は、約2.5μg/mL~約80μg/mLであった。本発明の他の治療剤、すなわち、配列番号:1以外の濃度は、1μM~約250μMである。
【0183】
実施例2:乳ガン細胞(MDA-MB-231細胞系統)に対する配列番号:1、パクリタキセル及びカルボプラチン単独の細胞傷害性効果、パクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果
乳ガン細胞系統(MDA-MB-231)において、化学療法剤であるパクリタキセル及びカルボプラチンと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果を決定するための研究を行った。この研究を実施例2-1及び実施例2-2に記載される2段階で行った。
【0184】
実施例2-1-配列番号:1の存在下でのパクリタキセル及びカルボプラチンのMDA-MB-231細胞についてのIC50値の測定
MDA-MB-231細胞における細胞傷害性についてのパクリタキセルのIC50に対する配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンの濃度の効果を決定するための研究を行った。逆に、配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンのIC50に対するパクリタキセルの濃度の効果を決定するための研究を行った。
【0185】
同様に、配列番号:1のリコンビナントレクチンと組み合わせたカルボプラチンについての別の研究を行った。
【0186】
これを、実施例1-1におけるのと同じ技術を使用して行った。決定されたIC50値を以下の表5及び表6に示す。
【0187】
【0188】
【0189】
表5及び表6は、配列番号:1単独及びパクリタキセル又はカルボプラチンとの組み合わせでのIC50に関する。配列番号:1をカルボプラチン又はパクリタキセルと組み合わせて使用した場合、乳ガン細胞に対するIC50がかなり低下したことが観察される。
【0190】
実施例2-2-配列番号:1を伴うパクリタキセル又はカルボプラチンについてのCI値の計算
更なる研究において、MDA-MB-231細胞を配列番号:1(2.5μg/mL~80μg/mL)と組み合わせたパクリタキセル(0.001nM~10nM)で48時間処理した。同様に、別のセットの細胞を配列番号:1(2.5μg/mL~80μg/mL)と組み合わせたカルボプラチン(10μM~1000μM)で処理した。組み合わせ指数値を各薬剤の組み合わせについて決定した。得られた拮抗作用、相加効果又は相乗効果を実施例1-2に記載されたように決定した。結果を以下に表にする。
【0191】
【0192】
本発明の態様によれば、上記表に示されたように、乳ガン細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1とパクリタキセルとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が以下の配列番号:1濃度について観察された。
10μg/mL~80μg/mL 配列番号:1と1nM~10nM パクリタキセル
20μg/mL~80μg/mL 配列番号:1と0.1nM パクリタキセル
【0193】
拮抗作用が、配列番号:1(2.5μg/mL及び5μg/mL)及びパクリタキセル(0.001nM及び0.01nM)両方のより低い濃度で観察された。
【0194】
相加効果が、5nM及び10nM パクリタキセルとの5μg/mL 配列番号:1並びに0.1nM パクリタキセルとの10μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0195】
【0196】
上記表に示されたように、乳ガン細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1とカルボプラチンとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が以下の配列番号:1濃度について観察された。
2.5μg/mL~80μg/mL 配列番号:1と100μM~1000μM カルボプラチン
5μg/mL~80μg/mL 配列番号:1と50μM カルボプラチン
【0197】
拮抗作用が、10μM カルボプラチンとの2.5μg/mL~20μg/mL 配列番号:1で観察された。また、拮抗作用が、50μM カルボプラチンとの2.5μg/mL 配列番号:1でも観察された。
【0198】
相加効果が、10μM カルボプラチンとの40μg/mL~80μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0199】
結果から、配列番号:1がパクリタキセル又はカルボプラチンとの組み合わせで相乗効果を示すことが実証された。
【0200】
実施例3:口腔ガン細胞(KB細胞系統)に対する配列番号:1、5-FU及びシスプラチン単独の細胞傷害性効果並びに5-FU及びシスプラチンと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果
口腔ガン細胞系統(KB細胞系統)において、化学療法剤である5-FU及びシスプラチンと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果を決定するための研究を行った。この研究を実施例3-1及び実施例3-2に記載される2段階で行った。
【0201】
実施例3-1-配列番号:1の存在下での5-FU及びシスプラチンのKB細胞についてのIC50値の測定
KB細胞における細胞傷害性についての5-FUのIC50に対する配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンの濃度の効果を決定するための研究を行った。逆に、配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンのIC50に対する5-FUの濃度の効果を決定するための研究を行った。
【0202】
同様に、配列番号:1のリコンビナントレクチンと組み合わせたシスプラチンについての別の研究を行った。
【0203】
これを、実施例1-1におけるのと同じ技術を使用して行った。決定されたIC50値を以下の表9及び表10に示す。
【0204】
【0205】
【0206】
表9及び表10は、配列番号:1単独及び5-FU又はシスプラチンとの組み合わせでのIC50に関する。配列番号:1を5-FU及びシスプラチンと組み合わせて使用した場合、口腔ガン細胞に対するIC50がかなり低下したことが観察される。
【0207】
実施例3-2-配列番号:1を伴う5-FU及びシスプラチンについてのCI値の計算
更なる研究において、KB細胞を配列番号:1(5.0μg/mL~90μg/mL)と組み合わせた5-FU(0.01μM~5.0μM)で48時間処理した。同様に、別のセットの細胞を配列番号:1(5.0μg/mL~90μg/mL)と組み合わせたシスプラチン(0.1μM~1.5μM)で処理した。組み合わせ指数値を各薬剤の組み合わせについて決定した。得られた拮抗作用、相加効果又は相乗効果を実施例1-2に記載されたように決定した。結果を以下に表にする。
【0208】
【0209】
【0210】
本発明の態様によれば、上記表に示されたように、KB細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1と5-FUとの組み合わせは、試験された全ての濃度(配列番号:1-5.0μg/mL~90μg/mL及び5-FU-0.01μM~5μM)で相乗作用を示した。一方、配列番号:1とシスプラチンとの組み合わせの場合、相乗作用が以下の濃度で観察された。
10μg/mL~90μg/mL 配列番号:1と0.1μM~1.5μM シスプラチン及び
5μg/mL 配列番号:1と0.5μM~1.5μM シスプラチン
【0211】
拮抗作用が、配列番号:1及びシスプラチン両方のより低い濃度で観察された。
【0212】
実施例4:結腸ガン細胞(HT-29細胞系統)に対する配列番号:1、5-FU及びイリノテカン単独の細胞傷害性効果並びに5-FU及びイリノテカンと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果
結腸ガン細胞系統(HT-29)において、化学療法剤である5-FU及びイリノテカンと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果を決定するための研究を行った。この研究を実施例4-1及び実施例4-2に記載される2段階で行った。
【0213】
実施例4-1-配列番号:1の存在下での5-FU及びイリノテカンのHT-29細胞についてのIC50値の測定
HT-29細胞における細胞傷害性についての5-FUのIC50に対する配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンの濃度の効果を決定するための研究を行った。逆に、配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンのIC50に対する5-FUの濃度の効果を決定するための研究を行った。
【0214】
同様に、配列番号:1のリコンビナントレクチンと組み合わせたイリノテカンについての別の研究を行った。
【0215】
これを、実施例1-1におけるのと同じ技術を使用して行った。決定されたIC50値を以下の表13及び表14に示す。
【0216】
【0217】
【0218】
表13及び表14は、配列番号:1単独及び5-FU又はイリノテカンとの組み合わせでのIC50に関する。配列番号:1を5-FU及びイリノテカンと組み合わせて使用した場合、結腸ガン細胞に対するIC50がかなり低下したことが観察された。
【0219】
実施例4-2-配列番号:1を伴う5-FU及びイリノテカンについてのCI値の計算
更なる研究において、HT-29細胞を配列番号:1(1μg/mL~80μg/mL)と組み合わせた5-FU(5μM~200μM)で48時間処理した。同様に、別のセットの細胞を配列番号:1(1μg/mL~80μg/mL)と組み合わせたイリノテカン(0.1μM~50μM)で処理した。組み合わせ指数値を各薬剤の組み合わせについて決定した。得られた拮抗作用、相加効果又は相乗効果を実施例1-2に記載されたように決定した。結果を以下に表にする。
【0220】
【0221】
本発明の態様によれば、上記表に示されたように、結腸ガン細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1と5-FUとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が、以下の配列番号:1濃度で観察された。
5μg/mL~80μg/mL 配列番号:1と濃度10μM~200μM 5-FU
1μg/mL 配列番号:1と濃度50μM~200μM 5-FU
【0222】
拮抗作用が、濃度5μM 5-FUとの全ての濃度の配列番号:1及び1μg/mL 配列番号:1と濃度10μM 5-FUとを含む組み合わせで観察された。
【0223】
【0224】
相乗効果が、上記表に示されたように、結腸ガン系統に対して両組み合わせについて観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1とイリノテカンとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が、以下の配列番号:1濃度で観察された。
20μg/mL~80μg/mL 配列番号:1と濃度1μM~50μM(5μMを除く) イリノテカン
【0225】
拮抗作用が、0.1μM イリノテカンとの濃度1μg/mL~80μg/mL 配列番号:1及び0.01~50μM イリノテカンとの1μg/mL~10μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0226】
相乗効果が、5μM イリノテカンとの20μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0227】
実施例5:卵巣ガン細胞(PA-1細胞系統)に対する配列番号:1、シスプラチン及びパクリタキセル単独の細胞傷害性効果並びにシスプラチン及びパクリタキセルと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果
卵巣ガン細胞系統(PA-1細胞系統)において、化学療法剤であるシスプラチン及びパクリタキセルと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果を決定するための研究を行った。この研究を実施例5-1及び実施例5-2に記載される2段階で行った。
【0228】
実施例5-1-配列番号:1の存在下でのシスプラチン及びパクリタキセルのPA-1細胞系統における細胞傷害性についてのIC50値の測定
MDA-MB-231細胞における細胞傷害性についてのシスプラチンのIC50に対する配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンの濃度の効果を決定するための研究を行った。逆に、配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンのIC50に対するシスプラチンの濃度の効果を決定するための研究を行った。
【0229】
同様に、配列番号:1のリコンビナントレクチンと組み合わせたパクリタキセルについての別の研究を行った。
【0230】
これを、実施例1-1におけるのと同じ技術を使用して行った。決定されたIC50値を以下の表17及び表18に示す。
【0231】
【0232】
【0233】
表17及び表18は、配列番号:1単独及びシスプラチン又はパクリタキセルとの組み合わせでのIC50に関する。配列番号:1をシスプラチン又はパクリタキセルと組み合わせて使用した場合、卵巣ガン細胞に対するIC50がかなり低下したことが観察される。
【0234】
実施例5-2-配列番号:1を伴うシスプラチン及びパクリタキセルについてのCI値の計算
更なる研究において、PA-1細胞を配列番号:1(1μg/mL~20μg/mL)と組み合わせたシスプラチン(0.01μM~5μM)で48時間処理した。同様に、別のセットの細胞を配列番号:1(1μg/mL~20μg/mL)と組み合わせたパクリタキセル(0.01nM~5nM)で処理した。組み合わせ指数値を各薬剤の組み合わせについて決定した。得られた拮抗作用、相加効果又は相乗効果を実施例1-2に記載されたように決定した。結果を以下に表にする。
【0235】
【0236】
本発明の態様によれば、上記表に示されたように、卵巣ガン細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1とシスプラチンとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が、以下の配列番号:1濃度で観察された。
試験された全ての濃度(1μg/mL~20μg/mL) 配列番号:1と0.25μM~5μM シスプラチン
5μg/mL~20μg/mL 配列番号:1と0.1μM シスプラチン
10μg/mL~20μg/mL 配列番号:1と0.01μM シスプラチン
【0237】
拮抗作用が、0.01μM シスプラチンとの1μg/mL~5μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0238】
拮抗作用が、0.1μM シスプラチンとの1μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0239】
相加効果が、0.1μM シスプラチンとの2.5μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0240】
【0241】
本発明の態様によれば、上記表に示されたように、卵巣ガン細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1とパクリタキセルとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が、以下の配列番号:1濃度で観察された。
試験された全ての濃度(1μg/mL~20μg/mL) 配列番号:1と0.25nM~5nM パクリタキセル
【0242】
拮抗作用が、0.01nM~0.1nM パクリタキセルとの1μg/mL~15μg/mL 配列番号:1で観察された。相加効果が、0.01nM~0.1nM パクリタキセルとの20μM 配列番号:1で観察された。
【0243】
結果から、配列番号:1は、シスプラチン又はパクリタキセルとの組み合わせで相乗効果を示すことが実証された。
【0244】
実施例6:膀胱ガン細胞(T24細胞系統)に対する配列番号:1、シスプラチン及びゲムシタビン単独の細胞傷害性効果並びにシスプラチン及びゲムシタビンと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果
膀胱ガン細胞系統(T24細胞系統)において、化学療法剤であるシスプラチン及びゲムシタビンと組み合わせた配列番号:1の相乗的細胞傷害性効果を決定するための研究を行った。この研究を実施例6-1及び実施例6-2に記載される2段階で行った。
【0245】
実施例6-1-配列番号:1の存在下でのシスプラチン及びゲムシタビンのT24細胞系統に対するIC50値の測定
T24細胞における細胞傷害性についてのシスプラチンのIC50に対する配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンの濃度の効果を決定するための研究を行った。逆に、配列番号:1で表わされるリコンビナントレクチンのIC50に対するシスプラチンの濃度の効果を決定するための研究を行った。
【0246】
同様に、配列番号:1のリコンビナントレクチンと組み合わせたゲムシタビンについての別の研究を行った。
【0247】
これを、実施例1-1におけるのと同じ技術を使用して行った。決定されたIC50値を以下の表21及び表22に示す。
【0248】
【0249】
【0250】
表21及び表22は、配列番号:1単独及びシスプラチン及びゲムシタビンとの組み合わせでのIC50に関する。配列番号:1をシスプラチン及びゲムシタビンと組み合わせて使用した場合、膀胱ガン細胞に対するIC50がかなり低下した。
【0251】
実施例6-2-配列番号:1を伴うシスプラチン及びゲムシタビンについてのCI値の計算
更なる研究において、T24細胞を配列番号:1(2.5μg/mL~80μg/mL)と組み合わせたシスプラチン(1μM~500μM)で48時間処理した。同様に、別のセットの細胞を配列番号:1(2.5μg/mL~80μg/mL)と組み合わせたゲムシタビン(1μM~300μM)で処理した。組み合わせ指数値を各薬剤の組み合わせについて決定した。得られた拮抗作用、相加効果又は相乗効果を実施例1-2に記載されたように決定した。結果を以下に表にする。
【0252】
【0253】
本発明の態様によれば、上記表に示されたように、膀胱ガン細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1とシスプラチンとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果に対する有効濃度が、以下の配列番号:1濃度で観察された。
5μg/mL~80μg/mL 配列番号:1と試験された全ての濃度(1μM~500μM) シスプラチン
【0254】
拮抗作用が、1μM及び10μM シスプラチンとの2.5μM 配列番号:1で観察された。
【0255】
相加効果が、25μM~500μM シスプラチンとの2.5μg/mL 配列番号:1で観察された。
【0256】
【0257】
上記表に示されたように、膀胱ガン細胞系統に対する両組み合わせについて相乗作用が観察された。相乗効果(すなわち、CI<1)を示した濃度ペアを下線で示す。配列番号:1とゲムシタビンとの組み合わせについて、相乗的細胞傷害性効果が、全ての濃度(2.5μM~80μM 配列番号:1と1μM~300μM ゲムシタビン)で観察された。
【0258】
実施例の概要
まとめると、本発明について試験された細胞系統において相乗作用が観察された濃度を以下の表に要約する。
【0259】
【配列表】