(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】二重特異性コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
A61K 47/66 20170101AFI20240705BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240705BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240705BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240705BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240705BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240705BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20240705BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20240705BHJP
C07K 14/82 20060101ALI20240705BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20240705BHJP
C07K 14/37 20060101ALI20240705BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240705BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K47/66 ZNA
A61K39/395 N
C07K16/46
C07K16/28
C07K16/00
C07K19/00
C07K7/00
C07K14/00
C07K14/82
C07K14/195
C07K14/37
A61P35/00
A61P31/00
(21)【出願番号】P 2021529122
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2019082322
(87)【国際公開番号】W WO2020104690
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521221353
【氏名又は名称】ストライク ファーマ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】サーラ マングスボー
(72)【発明者】
【氏名】ヘレーナ パーション ロッツホルム
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/011421(WO,A1)
【文献】特表2015-513314(JP,A)
【文献】特開平10-211198(JP,A)
【文献】特表2010-532656(JP,A)
【文献】国際公開第2017/184619(WO,A1)
【文献】Int. J. Cancer,1999年,82, [5],p.700-708
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61K 38/00-38/58
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)CD40
に結合する少なくとも1つの第一の特異的結合分子、ここで、前記の第一の特異的結合分子は、CD40の作動薬であ
る;及び
ii)タグ部分
に結合する少なくとも1つの第二特異的結合分子、ここで、前記タグ部分は
ペプチドでありかつ癌抗原でな
く、前記ペプチドは配列番号6又は10~14のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または少なくとも5個のアミノ酸の配列番号6又は10~14のいずれか1つの断片を含む;
を含むコンジュゲートであって;
前記の第一の特異的結合分子と第二の特異的結合分子が、抗体の抗原結合性ドメインを含む抗原結合性タンパク質であり、かつ、共有結合で連結されている、コンジュゲート。
【請求項2】
前記第一の特異的結合分子が:
(i)抗体のFc領域をさらに含み;及び/又は
(ii)二価であり;及び/又は
(iii)モノクローナル抗体であり;及び/又は
(iv)モノクローナル抗体のF(ab')
2断片であり;及び/又は
(v)ヒトCD40
に結合し、かつ、ヒトCD40の作動
薬である、
請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記第一の特異的結合分子が、IgGアイソタイプの抗体である、請求項1又は2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記第一の特異的結合分子がIgG2アイソタイプの抗体である、請求項3に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記第一の特異的結合分子が:CP-870,893、APX005M、ADC-1013、ChiLob 7/4、SEA-CD40及びABS-1150/1151
から選択される抗体であるか、又は前記抗体のいずれか1つの抗原結合性ドメインを含む抗体
である、請求項3又は4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記第二の特異的結合分子がscFvである、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記第一の特異的結合分子及び前記第二の特異的結合分子がともに、ヒトのものであるか、又はヒト化されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
前記第二の特異的結合分子が、前記第一の特異的結合分子の軽鎖又は重鎖に共有結合により連結される、請求項1~7のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
前記コンジュゲートが、1つの第一の特異的結合分子及び2つの第二の特異的結合分子
を含み、
前記1つの第一の特異的結合分子は抗体であり、
前記2つの第二の特異的結合分子はscFvsであり、かつ:
i)1つのscFvが、前記抗体のそれぞれの重鎖のC
H3ドメインに結合されるか;又は
ii)1つのscFvが、前記抗体のそれぞれの軽鎖のCLドメインに結合される、請求項8に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
前記タグ部分がヒトB細胞エピトープを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
前記タグ部分がB細胞エピトープを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記B細胞エピトープが非ヒトB細胞エピトープである、請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記ペプチドが、人工的なアミノ酸若しくは非天然のアミノ酸配列を含むか、又は哺乳類のタンパク質では見られないアミノ酸配列から成る、請求項
1~12のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記ペプチドが、非ヒトアミノ酸配列であるアミノ酸配列を含む、請求項
1~12のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか一項に記載のコンジュゲートとタグ構築物を含む複合体であって、前記タグ構築物が抗原に共有結合
で結合されたタグ部分を含み、ここで、前記タグ構築物のタグ部分が、第二の特異的結合分子に非共有結合で結合されており、かつ、前記タグ部分が請求項1又は11~
14のいずれか一項に定義されるとおりのものである、複合体。
【請求項16】
前記抗原が癌抗原である、請求項
15に記載の複合体。
【請求項17】
前記癌抗原が、新生抗原、腫瘍関連抗原又は腫瘍ウイルス由来の抗原である、請求項
16に記載の複合体。
【請求項18】
前記抗原が病原菌由来である、請求項
15に記載の複合体。
【請求項19】
i)癌抗原でな
く、配列番号6又は10~14のいずれか1つに記載のアミノ酸配列、または少なくとも5個のアミノ酸の配列番号6又は10~14のいずれか1つの断片を含むタグ部分;及び
ii)癌抗原又は病原菌由来の抗原
;
を含むタグ構築物であって、
前記抗原はポリペプチドであり、かつ、前記タグ部分は、前記抗原に共有結合で連結される、タグ構築物。
【請求項20】
前記タグ部分が、請求項11~
14のいずれか一項に定義されるとおりのものである、請求項
19に記載の構築物。
【請求項21】
i)請求項1~
14のいずれか一項に
記載のコンジュゲート;又は
ii)請求項
19又は
20に
記載のタグ構築物;又は
iii)請求項
15~
18のいずれか一項に
記載の複合体
;
及び少なくとも1つの医薬的に許容される担体又は賦形剤、を含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~
14のいずれか一項に
記載のコンジュゲートと請求項
19又は
20に
記載のタグ構築物を含むキット。
【請求項23】
治療法における使用のための、請求項
15~
18のいずれか一項に
記載の複合体又は請求項
22に記載のキット。
【請求項24】
治療法における別々の、同時の、又は連続した使用のための組み合わせ調製物として、請求項1~
14のいずれか一項に
記載のコンジュゲートと請求項
19又は
20に
記載のタグ構築物を含む製品。
【請求項25】
癌の治療又は予防における使用のための、請求項
15~
17のいずれか一項に
記載の複合体。
【請求項26】
癌の治療又は予防における使用のための、請求項22に記載のキット。
【請求項27】
癌の治療又は予防における使用のための、請求項24に記載の製品。
【請求項28】
感染症の治療又は予防における使用のため
の、請求項
18に記載の複合体。
【請求項29】
感染症の治療又は予防における使用のための、請求項22に記載のキット。
【請求項30】
感染症の治療又は予防における使用のための、請求項24に記載の製品。
【請求項31】
抗原を認識するTCRを発現するT細胞を活性化するインビトロ又はエクスビボの方法であって、
i)請求項1~
14のいずれか一項に
記載のコンジュゲートと請求項
19又は
20に
記載のタグ構築物、ここで、前記タグ構築物が、前記TCRによって認識される抗原を含む;又は
ii)請求項
15~
18のいずれか一項に
記載の複合体、ここで、前記複合体のタグ構築物が、前記TCRによって認識される抗原を含む、
と抗原提示細胞を接触させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、コンジュゲート-タグ複合体を形成するようにタグ部分に結合することができる第二の結合分子に、特にペプチド結合を含めた共有結合を介して結合された、CD40に特異的に結合することができる第一の結合分子を含む新規コンジュゲートに関する。タグ部分は抗原をさらに含むタグ構築物の一部として提供されてもよい。本発明は、斯かるタグ-抗原構築物を伴ったコンジュゲートの複合体、及び治療法における、特に癌治療のための、斯かる複合体の使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
免疫応答を調節するモノクローナル抗体(mAbs)は、斯かる応答が持続的な腫瘍の根絶を提供するのに利用できる増強された兆候により、癌治療において高効率であると判明している。免疫チェックポイントCTLA-4及びPD-1を標的化した、異なる標的に対する様々な抗体が開発され、そしてそれが、例えば、T細胞性免疫性が癌の効果的な治療を提供するという考えを立証している。有望な臨床データもまた、抗原提示細胞(APC)上の共刺激受容体CD40に作動的に結合する免疫賦活mAbsを用いて得られた。
【0003】
CD40はTNF受容体スーパーファミリー(或いは、それはTNF受容体スーパーファミリメンバー5;TNFRSF5として知られている)のメンバーであり、例えばB細胞、樹状細胞(DC)、マクロファージ及び単球などの抗原提示細胞(APC)、並びに上皮及び内皮細胞、及び特定の腫瘍細胞上で発現される。成熟T細胞で主に発現される、そのリガンド(CD40リガンド;CD40L、CD154としても知られている)によって活性化されるとき、CD40は、APCを活性化し、そして先天的及び適応的免疫応答の両方を誘発する。例えば抗CD40抗体などの作動性CD40剤は、癌細胞の増殖を予防する及び/又は殺滅し、これにより癌に対する有効な治療療法を提供する免疫系を誘発するのに使用できる。特に、作動性CD40剤によって活性化されたAPCは、エフェクターT細胞、特にCD8+細胞障害性T細胞を含めたT細胞を刺激し、そして癌細胞(例えば、腫瘍)のT細胞性媒介性破壊に通じ得る。APCがマクロファージである場合、直接的な癌細胞のまた、殺滅も存在し、さらに、腫瘍細胞への抗CD40抗体の結合がアポトーシスを誘発し得る場合には、直接的な抗腫瘍性機構がCD40陽性腫瘍について観察され得る。
【0004】
抗体ADC-1013、CP-870,893、Chi Lob7/4、SEA-CD40及びAPX005Mを含めた様々な抗CD40抗体が、前臨床又は臨床開発において存在する。抗体ADC-1013はWO2016/023960に記載があり、そして、他の様々な抗CD40抗体がWO2015/091853及びUS2017/0342159において抗癌使用に関して提案されている。ChiLob7/4はUS2009/0074711に記載があり、SEA-CD40はUS2017/0137528に記載があり、CP870,893はUS2017/0342159に記載があり、及びAPX005M(時々APX005と単に呼ばれることがある)はWO2014/070934に記載がある。
【0005】
T細胞の有効な刺激(又はプライミング)はCD40刺激だけではなく、(MHCとの関連において、T細胞受容体(TCR)に結合するための)抗原の提示も必要とする。よって、T細胞刺激との関連において、T細胞に抗原を交差提示すること、言い換えれば、(細胞外の起源の)抗原を取り上げ、加工し、そしてT細胞に提示することは、APCに有利である。しかしながら、抗原物質は(例えば、腫瘍が切除された場合)常に存在しているとは限らないので、CD40作動薬は斯かる状況下において有効なT細胞刺激に至るのに低い有効性しかもたない可能性がある。(例えば、注射製品としてのCD40作動薬の用量を制限する毒性がある場合)CD40刺激もまた、T細胞活性化に不十分である可能性がある。従って、APC上のCD40の両方の作動性活性化を提供し、同時に、APCに抗原を送達することは、有益であろう。本発明はこの必要性に対処する。
【発明の概要】
【0006】
特に、CD40、そして最終的に、抗原成分の両方に特異的である二重特異性コンジュゲートが提供され、そしてそれは、抗原提示細胞、特にDCの活性化に、さらに特に治療法との関連において、使用され得る。抗原によって、治療法は、癌の予防又は治療処置であっても、或いは感染症の予防又は治療処置であってもよい(活性化されたT細胞は、感染細胞を標的化し、そして殺滅し得る)。
【0007】
二重特異性は、一緒に共有結合された2つの別々の特異的結合部分を含む。第一の結合部分はCD40に特異的である。しかしながら、抗原に対して直接的に特異的である第二の特異的結合部分を提供するよりむしろ、本発明のコンジュゲートは、代わりにタグに対して特異的である第二の結合部分を含む。タグは、そのタグが抗原に共有結合する構築物の一部として提供されてもよい。したがって、タグに結合することによって、第二の結合部分(したがって、コンジュゲート)は、抗原に間接的に結合し、そして抗原と抗体の間に化学結合が存在しないので、それによって抗原が変化し得るフレキシブルアプローチが提供され得る。言い換えれば、複合体はコンジュゲートとタグ構築物との間で形成されてもよく、そしてその複合体が、CD40作動薬(すなわち、APCの活性化のためのもの)及び抗原(すなわち、APCによる提示のためのもの)の両方を提供する。有利なことに、これは個別化薬における使用のためのコンジュゲート及び複合体を調製する際に柔軟性を可能にする。(各患者向けの別々のコンジュゲートの困難な合成及び製造を必要とするであろう)CD40作動薬(例えば、CD40結合剤)に直接融合させた抗原、又は作動薬に直接融合させた抗原特異的結合剤を含むコンジュゲートを調製するよりむしろ、本提案は、普遍的な剤、すなわち、二重特異性(CD40-及びタグ-特異性)コンジュゲートが製造されることを可能にし、そしてそれは、異なった抗原を含む異なったタグ構築物、或いは特に個々の患者の必要性に従って同じタグに結合することによって個々の、個別化された使用のためにテイラーメイドされ得る。このように、別個のタグ構築物だけが調製される必要があり、そして患者に特異的な治療薬を調製する容易さとコストにおける利益を提供する。CD40結合剤に直接かつ共有結合で融合した抗原と比較して、又はCD40結合剤と抗原を別々に提供するのと比較して、CD40結合剤への抗原の非共有結合が複合体の有効性に有利であり得ると、さらに考えられる。
【0008】
従って、第一の態様において、本開示は、以下の:
i)CD40を結合する第一の特異的結合分子、ここで、前記の第一の特異的結合分子はCD40の作動薬であり;及び
ii)タグ部分を結合する第二の特異的結合分子、
を含むコンジュゲートであって、
ここで、前記の第一の特異的結合分子と第二の特異的結合分子は、共有結合で連結されている、コンジュゲートを提供する。
【0009】
より特に、この態様は、以下の:
i)CD40を結合する少なくとも1つの第一の特異的結合分子、ここで、前記の第一の特異的結合分子は、CD40の作動薬であり、かつ、抗体の抗原結合性ドメインを含む抗原結合性タンパク質であり;及び
ii)タグ部分を結合する少なくとも1つの第二特異的結合分子、ここで、前記タグ部分は癌抗原でない、
を含むコンジュゲートであって;
ここで、前記の第一の特異的結合分子と第二の特異的結合分子は、抗体の抗原結合性ドメインを含む抗原結合性タンパク質であり、かつ、互いに共有結合で連結されている、コンジュゲートを提供する。
【0010】
特に、第一の特異的結合分子は、細胞、より特に抗原提示細胞の表面上に局在するとき、CD40に結合し得る。CD40はヒトCD40であってもよい。
先に述べたように、ある実施形態において、特異的結合分子は、以下でさらに記載するように、特異的結合タンパク質、特に抗原結合性タンパク質、すなわち、抗体ベースの分子である。特定の実施形態において、第一の特異的結合分子は抗体である。別の具体的な実施形態において、第二の特異的結合分子は一本鎖抗体構築物である。
【0011】
コンジュゲートは、少なくとも1つの第一の特異的結合分子と少なくとも1つの第二の特異的結合分子を含む。従って、それは、2つ以上の第一及び/又は第二の特異的結合分子を含んでもよい。ある実施形態において、コンジュゲートは1つの第一の特異的結合分子と2つ以上、例えば2~4つの、第二の特異的結合分子を含んでもよい。斯かる実施形態において、第一の特異的結合分子は二価であっても、又はそれは2以上の価数を有してもよい。或いは又はさらに、斯かる実施形態において、第二の特異的結合分子は一価であってもよい。
【0012】
コンジュゲートが結合し得るタグ部分は、抗原に共有結合で連結されたタグ部分を含むタグ構築物の形態をとってもよい。そのために特異的結合タンパク質が作製されるか又は得られてもよい任意の部分が、タグ部分として使用されてもよい。しかしながら特定の実施形態において、タグ部分は癌抗原でない。別の実施形態において、タグ部分は、哺乳動物細胞の表面で発現されたタンパク質ではないか、又はタグ部分は哺乳動物細胞の表面で発現された哺乳類タンパク質に生じるアミノ酸配列を含まないか、若しくはそれらで構成されない。ある実施形態において、タグ部分は、哺乳類タンパク質に生じるアミノ酸配列を含まないか、又はそれらで構成されない。
【0013】
一実施形態において、タグ部分は、既知の天然型B細胞エピトープであるか、又はそれを含んでもよい。別の実施形態において、タグ部分は、既知のB細胞エピトープを含まない。ある実施形態において、タグ部分は、既知のヒトB細胞エピトープを含まない。別の実施形態において、タグ部分は、天然のB細胞エピトープ、そして特にヒトの天然型B細胞エピトープであるエピトープを含まない。
【0014】
別の実施形態において、タグ部分はペプチドである。好都合なことに、タグ部分は合成により製造されたペプチドであってもよい。別の実施形態において、抗原は抗原性ペプチドである。よって、タグ構築物は、タグ配列(又はドメイン)である第一の配列(又はドメイン)と抗原配列(又はドメイン)である第二の配列(又はドメイン)を含むポリペプチドであってもよい。言い換えれば、タグ構築物は、タグペプチドと抗原ペプチドを含む融合ポリペプチド(或いは融合ペプチド又は融合タンパク質とも呼ばれる)であってもよい。
【0015】
特に、タグ構築物がペプチドタグ部分とペプチド抗原を含む場合には、タグ部分とペプチド抗原は、さまざまな起源に由来する。例えば、タグ部分は、第一のタンパク質からのアミノ酸配列を有するペプチドであってもよく、かつ、抗原は第二のタンパク質からのアミノ酸配列を有するペプチドであってもよい。好ましくは、タグ部分の配列は、抗原の配列とは異なった種に由来する。例えば、タグは、細菌、ウイルス又は真菌起源のものであり得る。例えば、タグ配列は、微生物の毒素(例えば、破傷風毒素、Ttx)が起源であり得る。よって、タグ構築物は、天然に見られる配列ではなく、そしてその一部分がタグ部分として機能し、及びもう一部分が抗原として機能する。むしろ、タグ構築物がペプチドタグ部分とペプチド抗原を含む場合には、タグ構築物は人工的な配列を有する。
【0016】
コンジュゲートは、CD40を結合する少なくとも1つの第一の特異的結合分子を含む。このことは、第一の特異的結合分子は、CD40に結合できること、より特にCD40に特異的に結合できることを意味する。同様に、少なくとも1つの第二の特異的結合分子はタグ部分を結合し、そしてそれは、第二の特異的結合部分がタグ部分、より特にタグ部分に特異的に結合することができることを意味している。
【0017】
更なる態様において、開示は、本明細書中に定義されるコンジュゲートとタグ構築物とを含む(又はその間の)複合体を提供し、そして、前記のタグ構築物は抗原にお共有結合されたタグ部分を含み、ここで、前記のタグ構築物のタグ部分はコンジュゲートの第二の特異的結合分子に非共有結合する。
【0018】
第二の特異的結合分子及び/又はコンジュゲート内の第二の特異的結合分子の数によって、複合体は1若しくは複数の、例えば、2つ以上のタグ構築物を含んでもよい。
これにより、複合体は、CD40及び抗原に対して向けられた特異的結合分子を含む。抗原は、癌抗原又は病原菌の抗原であってもよい。抗原はT細胞によって認識され得(より特に、抗原は、MHC分子で提示されるとき、T細胞のTCRによって認識され得る)、そしてT細胞は、複合体によって活性化又は刺激され得る。T細胞は、特にエフェクターT細胞、より特にCD4+又はCD8+T細胞であってもよい。
【0019】
特定の態様において、開示はまた、以下の:
i)タグ部分;及び
ii)抗原、そして前記の抗原は、癌抗原又は病原菌由来の抗原であり、
を含み、
ここで、前記タグ部分が前記抗原に共有結合で連結される、
タグ構築物も提供する。
【0020】
ある実施形態において、この態様は、以下の:
i)癌抗原でないタグ部分;及び
ii)抗原、癌抗原又は病原菌由来の抗原であるもの、
を含み、
ここで、前記抗原はポリペプチドであり、及び前記タグ部分は、前記抗原に共有結合により連結される、
タグ構築物を提供する。
【0021】
特定の実施形態において、タグ部分はB細胞エピトープを含まない。
別の実施形態において、抗原は抗原ポリペプチドである。或いは又はさらに、タグ部分はタグペプチドである。
以下の:
i)本明細書中に定義されるコンジュゲート;又は
ii)本明細書中に定義されるタグ構築物;又は
iii)本明細書中に定義される複合体、
を、少なくとも1つの医薬的に許容される担体若しくは賦形剤と一緒に含む医薬組成物もまた提供される。
【0022】
治療法での使用のための、本明細書中に定義される複合体でさらに提供される。同様に、製品が提供され、そしてその製品は、治療法における別々の、同時の、又は連続した使用のための組み合わせ調製物として、本明細書中に定義されるコンジュゲートと本明細書中に定義されるタグ構築物を含んでいる。「製品」という用語は、別々の製剤で投与するための、同じ若しくは異なる投与経路を介して同時に若しくはいろいろな時間に、又は同じ製剤で一緒に投与するための、治療用途で一緒提供され得る、コンジュゲートとタグ構築物の任意の組み合わせにも広く言及することは、この点で理解される。従って、本発明のこの態様において、コンジュゲートとタグ構築物を含む医薬的な組み合わせに対して、或いは治療法においてタグ構築物と組み合わせで使用するためのコンジュゲート、又はその逆に対しても或いは言及され得る。
【0023】
特に、複合体と製品は、癌の治療又は予防における使用のためのもの、又は感染症(すなわち、病原菌への感染症)の治療又は予防における使用のためのものである。癌がその細胞が抗原を発現する癌であり得、又は感染症が抗原を発現する病原菌によるものであり得ることは、この点で理解され得る。
【0024】
更なる態様において、癌を治療又は予防する方法もまた提供され、そしてその方法は、以下の:
i)本明細書中に定義される複合体、又は前記複合体を含む医薬組成物;又は
ii)本明細書中に定義されるコンジュゲート(又は前記コンジュゲートを含む医薬組成物)と本明細書中に定義されるタグ構築物(又は前記タグ構築物を含む医薬組成物)、
をそれを必要としている対象に投与することを含む。
【0025】
感染症を治療又は予防する方法もまた提供され、そしてその方法は、以下の:
i)本明細書中に定義される複合体、又は前記複合体を含む医薬組成物;又は
ii)本明細書中に定義されるコンジュゲート(又は前記コンジュゲートを含む医薬組成物)と本明細書中に定義されるタグ構築物(又は前記タグ構築物を含む医薬組成物)、
を前記対象に投与することを含む。
【0026】
特に、有効量の複合体、又はコンジュゲートとタグ(又は医薬組成物)が投与される。
開示は、対象の癌を治療若しくは予防するのに使用するための、又は感染症を治療若しくは予防するのに使用するための薬剤の製造における本明細書中に定義される複合体の使用を更に提供する。同様に、開示は、対象の癌を治療若しくは予防するのに使用するための、又は感染症を治療若しくは予防するのに使用するための薬剤の製造における本明細書中に定義されるコンジュゲート及び本明細書中に定義されるタグ構築物の使用を提供する。
【0027】
より一層更なる態様において、本開示は、本明細書中に定義されるコンジュゲート及び本明細書中に定義されるタグ構築物を含むキットを提供する。
【0028】
斯かるキットは治療用途のために提供されてもよい。よって、キットは、本明細書中に定義及び記載される治療法における使用のための複合体を調製するのに使用されてもよい。キットは、1若しくは複数のタグ構築物、特に異なる種のタグ構築物を含んでもよい。よって、2つ以上の異なるタグ構築物は提供されてもよく、そしてそのそれぞれが、それぞれの個々の抗原に結合された同じタグを有する異なる抗原を含有する。ある実施形態において、キットは、タグ構築物に関するライブラリを含んでもよい。
【0029】
別の態様において、開示は、抗原を認識するTCRを発現するT細胞を活性化するインビトロ又はエクスビボの方法を提供し、前記方法は、以下の:
i)本明細書中に定義されるコンジュゲートと本明細書中に定義されるタグ構築物、ここで、前記タグ構築物は、前記TCRによって認識される抗原を含み;
ii)本明細書中に定義される複合体、ここで、前記複合体のタグ構築物は前記TCRによって認識される抗原を含む、
と抗原提示細胞(APC)とを接触させることを含む。
特に、斯かる方法は、前記T細胞と前記APCを接触させることを含む。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1-1】
図1は、様々な刺激物質(二重特異性抗体、それらの親物質、モノクローナル抗体、及び対照)の存在下で培養したBMDCの上清に対して実施されたIL-12 ELISAの結果を示す。あらゆる場合において、ヒトCD40発現性BMDCが使用された。各抗体は表1に提供された名称の略語によって照会される。 Aは、CP-870,893ベースの抗体の存在下で培養したBMDCからの結果を示し;Bは、ABS-1150ベースの抗体の存在下で培養したBMDCからの結果を示す。1μg/mlのLPSの存在下で培養したBMDCからの上清が陽性対照として使用され、及び単なる培地が陰性対照として使用された。それぞれの試験濃度について、二重反復試験の平均値が提示される。0.0064~500nMの範囲に及ぶ抗体の力価が評価された。 以下で記載するように、各抗体は8つの異なる濃度にて試験された。各抗体に関して、すべての8つの濃度を使用することによる結果が、左側の最高濃度及び右側の最低濃度の使用から得られた結果を用いて示されている。いくつかの抗体に関して、最低抗体濃度で生じるIL-12のレベルは、グラフで見るには低すぎた。よって、例えば、特定の抗体に関して4つの結果だけが示されている場合、これらはその抗体の4つの最高濃度が使用されたときに得られた結果に対応している。LPSは、1つの濃度に関する二重反復試験の平均値として示され、培地がバックグラウンド活性状態を表す。
【
図1-2】
図1は、様々な刺激物質(二重特異性抗体、それらの親物質、モノクローナル抗体、及び対照)の存在下で培養したBMDCの上清に対して実施されたIL-12 ELISAの結果を示す。あらゆる場合において、ヒトCD40発現性BMDCが使用された。各抗体は表1に提供された名称の略語によって照会される。 Aは、CP-870,893ベースの抗体の存在下で培養したBMDCからの結果を示し;Bは、ABS-1150ベースの抗体の存在下で培養したBMDCからの結果を示す。1μg/mlのLPSの存在下で培養したBMDCからの上清が陽性対照として使用され、及び単なる培地が陰性対照として使用された。それぞれの試験濃度について、二重反復試験の平均値が提示される。0.0064~500nMの範囲に及ぶ抗体の力価が評価された。 以下で記載するように、各抗体は8つの異なる濃度にて試験された。各抗体に関して、すべての8つの濃度を使用することによる結果が、左側の最高濃度及び右側の最低濃度の使用から得られた結果を用いて示されている。いくつかの抗体に関して、最低抗体濃度で生じるIL-12のレベルは、グラフで見るには低すぎた。よって、例えば、特定の抗体に関して4つの結果だけが示されている場合、これらはその抗体の4つの最高濃度が使用されたときに得られた結果に対応している。LPSは、1つの濃度に関する二重反復試験の平均値として示され、培地がバックグラウンド活性状態を表す。
【
図2-1】
図2は、BMDC/T細胞共培養実験に続く、 (CPRG加水分解に基づく分光測光によって計測される)T細胞活性のレベルを示す。BMDCは、10nMの濃度にて示された抗体構築物(示したように、CP870,893に基づく構築物からの結果が右側にABS-1150に基づく構築物が左側に示されている;その抗体は表1に提供された名称の略語によって照会される)、並びに125nM(A)若しくは250nM(B)の濃度でのSLP UU-05、又は125nM(C)若しくは250nM(D)の濃度でのSLP UU-10のいずれかと共にインキュベートされた。各図の水平な線は、無抗体対照で得られたT細胞活性化の基礎レベルを示す。データは、二重反復試験値からの平均値+SEMとして提示される。
【
図2-2】
図2は、BMDC/T細胞共培養実験に続く、 (CPRG加水分解に基づく分光測光によって計測される)T細胞活性のレベルを示す。BMDCは、10nMの濃度にて示された抗体構築物(示したように、CP870,893に基づく構築物からの結果が右側にABS-1150に基づく構築物が左側に示されている;その抗体は表1に提供された名称の略語によって照会される)、並びに125nM(A)若しくは250nM(B)の濃度でのSLP UU-05、又は125nM(C)若しくは250nM(D)の濃度でのSLP UU-10のいずれかと共にインキュベートされた。各図の水平な線は、無抗体対照で得られたT細胞活性化の基礎レベルを示す。データは、二重反復試験値からの平均値+SEMとして提示される。
【
図3-1】
図3は、野性型C57Bl/6マウスにヒトCD40を発現するBMDC、Thy1.1を発現するトランスジェニックT細胞、MHCクラスIのgp100を認識するTCRを注射するインビボ実験の結果を示す。結果は、そのペプチドを注射したマウスにおける群内のそれぞれの個々のマウスに関するSLP UU-30のエピトープの存在を認識する増殖性T細胞のレベル(及び平均+/-SD)を示す。左側パネル(A)は、UU-30のみ(左)、Bi-1二重特異性抗体を伴ったUU-30、UU-30とIgG1サブクラスのモノクローナル親抗体CP-870,893;及びPBS対照(右)を投与したマウスで得られた結果を示す。右側パネル(B)は、二重特異性抗体がBi-2二重特異性抗体であり、及びモノクローナル親抗体がIgG2サブクラスのCP-870,893であることを除いて、同じものを示す。両方のパネルにおいて、特定のT細胞増殖の統計的に有意な増大が、UU-30のみを注射されたマウスに対して、二重特異性抗体と組み合わせてUU-30を注射したマウスにおいて示されている(有意値は、*が<0.05の調整p値を表す、Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAによって決定された)。同様に両方のパネルにおいて、特定のT細胞増殖における非有意(ns)差が、UU-30のみを注射されたマウスに対して、親モノクローナル抗体と組み合わせてUU-30を注射したマウスにおいて示されている。
図3Cは、単独のUU-30ペプチド又は様々な二重特異性抗体及びABS-1150/1151の親抗体との組み合わせを用いた、インビボにおける同様の方法でのABS-1150/1151の評価の結果を示す。T細胞増殖の有意差は、ペプチドのそれぞれの組み合わせ、並びにBi-10及びBi-12の二重特異性抗体とUU-30とを比較したときに確立されたが、しかしながら、親抗体とUU-30を組み合わせたときには、T細胞増殖に有意差がなかった。統計解析は、**がp<0.01及び*がp<0.05を表す、Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAを使用することで実施された。
【
図3-2】
図3は、野性型C57Bl/6マウスにヒトCD40を発現するBMDC、Thy1.1を発現するトランスジェニックT細胞、MHCクラスIのgp100を認識するTCRを注射するインビボ実験の結果を示す。結果は、そのペプチドを注射したマウスにおける群内のそれぞれの個々のマウスに関するSLP UU-30のエピトープの存在を認識する増殖性T細胞のレベル(及び平均+/-SD)を示す。左側パネル(A)は、UU-30のみ(左)、Bi-1二重特異性抗体を伴ったUU-30、UU-30とIgG1サブクラスのモノクローナル親抗体CP-870,893;及びPBS対照(右)を投与したマウスで得られた結果を示す。右側パネル(B)は、二重特異性抗体がBi-2二重特異性抗体であり、及びモノクローナル親抗体がIgG2サブクラスのCP-870,893であることを除いて、同じものを示す。両方のパネルにおいて、特定のT細胞増殖の統計的に有意な増大が、UU-30のみを注射されたマウスに対して、二重特異性抗体と組み合わせてUU-30を注射したマウスにおいて示されている(有意値は、*が<0.05の調整p値を表す、Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAによって決定された)。同様に両方のパネルにおいて、特定のT細胞増殖における非有意(ns)差が、UU-30のみを注射されたマウスに対して、親モノクローナル抗体と組み合わせてUU-30を注射したマウスにおいて示されている。
図3Cは、単独のUU-30ペプチド又は様々な二重特異性抗体及びABS-1150/1151の親抗体との組み合わせを用いた、インビボにおける同様の方法でのABS-1150/1151の評価の結果を示す。T細胞増殖の有意差は、ペプチドのそれぞれの組み合わせ、並びにBi-10及びBi-12の二重特異性抗体とUU-30とを比較したときに確立されたが、しかしながら、親抗体とUU-30を組み合わせたときには、T細胞増殖に有意差がなかった。統計解析は、**がp<0.01及び*がp<0.05を表す、Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAを使用することで実施された。
【
図4】
図4は、それらの二次構造の証拠として様々な推定TTx由来タグペプチドの円偏光二色性分光法の結果を示す。
【
図5】
図5は、推定タグペプチドに対する、DTPワクチンブースター受領の直前又は直後のいずれかで採取した個体由来の血清中の抗体の結合を測定するためのELISA実験の結果を示す。(既知のMTTEペプチドを含む)4つの推定タグペプチドに結合している抗体のレベルが、4つの異なる濃度の血清にて示されている。示されているように、配列番号10、13及び14の推定タグへの抗体結合は、すべての血清中濃度で最小限である。予想されたとおり、MTTEへの顕著な抗体結合がより低い2つの濃度にて見られ、そして、それ以前と比べてより高いレベルの抗体結合がDTPブースターワクチン後に採取した血清から見られる。
【
図6】
図6は、本発明による代表的な(A)コンジュゲート、(B)タグ構築物、及び(C)複合体を示す。
図6Aは、第一の特異的結合分子としての作動性抗CD40 IgG抗体、及び第二の特異的結合分子としてのタグ部分(例えば、タグペプチド)に特異的な2つのscFvを含む、別々の抗体のCH3ドメインにそれぞれ連結され、その結果、四価のコンジュゲート(CD40に対する二価及びタグペプチドに対する二価)を提供するコンジュゲートを示す。
図6Bは、抗原性ペプチドに連結されたタグ部分(例えば、タグペプチド)を含むタグ構築物を示す。
図6Bは、コンジュゲートの2つのscFvのそれぞれに、タグ部分(例えば、タグペプチド)を介して、結合するタグ構築物を含む複合体を示す。
【
図7】
図7は、マウスにおける排出(左側のグラフ)及び非排出(右側のグラフ)リンパ節の増殖性T細胞のパーセンテージを示す。示されているように、本発明による二重特異性コンジュゲートとタグ構築物の同時投与は、二重特異性コンジュゲートのみ又はタグ構築物のみの投与をおこなうよりはるかに効率的に抗原特異的T細胞応答を刺激する。コンジュゲートと構築物を、以下に記載するように、少量(L)、中量(M)又は多量(H)で投与した。アスタリスクは統計的有意性(*p<0.05)を示す。
【
図8】
図8は、Bi-17、抗FITC scFv FITC-8を含有する二重特異性コンジュゲートと、FITC標識ペプチドのインキュベートを示す。左側の目盛りは蛍光強度を示す。示されるように、Bi-17の添加前に、(0分にて)高い蛍光シグナルが検出される。高濃縮のBi-17の添加は、蛍光を完全にクエンチする。過剰量のFITC標識ペプチドが存在するようにBi-17濃度が低減されるので、クエンチは軽減される。
【
図9】
図9は、細胞蛍光によって計測される、樹状細胞によるFITC標識ペプチドの取り込みを示す。「FITC-NLV」はすべての蛍光細胞を示し、「FITC-NLV[Q]」は(トリパンブルを用いて外部蛍光シグナルをクエンチすることによって得られる)細胞内蛍光を有する細胞を示す。Aは、樹状細胞によるネイキッドペプチドの取り込みを示し、Bは、そのペプチドが二重特異性抗体との複合体として樹状細胞に適用されたときのペプチドの取り込みを示す。
【
図10】
図10は、本発明による二重特異性コンジュゲート及び(CMV抗原を含む)タグ構築物と接触させたときの、CMV抗原(CMV特定のT細胞の割合によって培養で計測されるように)に特異的なT細胞の増大を示す。示されているように、二重特異性抗原のみ又はタグ構築物のみに比べて、その細胞が二重特異性抗原とタグ構築物に接触したときに、有意により特異的なT細胞の増殖が見られた。***p<0.001、****p<0.0001、NS=有意ではない。
【
図11】
図11は、樹状細胞によるCD86(A)とCD40(B)の細胞表面発現に対する抗CD40抗体ABS-1150/1151の効果を示す。IgG1アイソタイプの抗体(X-SM083-ab-1)の効果が、IgG2アイソタイプの抗体(X-SM083-ab-2)の効果と比較される。タンパク質の発現に対する効果が非刺激細胞に対する倍率変化で示されている。各抗体に関して、複数の棒グラフが、力価範囲内の様々な濃度を表す(左から右に向かって、高濃度から低濃度)。示されているように、IgG2アイソタイプには、CD86細胞表面発現を増強し、かつ、CD40の細胞表面発現を低減することに関して、IgG1アイソタイプより優れた効果がある。
【
図12】
図12は、質量分析法で計測されるマウス血漿中のUU-30ペプチドの安定性を示す。ペプチドは、血漿のみ、2つの抗CD40モノクローナル抗体との組み合わせ、及び本発明による2つの二重特異性抗体を用いた複合体中でインキュベートされた。本発明の二重特異性抗体とUU-30ペプチドのコンジュゲート形成は、マウス血漿中のその安定性を大いに増強した。
【
図13】
図13は、質量分析法で計測されるマウス血漿(円)とヒト血漿(四角)中での3つの推定ペプチドタグ部分の安定性を示す。試験されたペプチドは、UU-50(配列番号10)、UU-51(配列番号12)及びUU-52(配列番号13)である。
【
図14】
図14は、黒色腫のマウスモデルに添加された腫瘍を示す。腫瘍接種の20日後に、腫瘍体積が、タグ構築物UU-30のみ(UU-30は、以下で詳述した、黒色腫抗原gp100からのエピトープを含有する)を投与したマウスを投与したマウスと、二重特異性抗体Bi-10(そしてそれは、UU-30タグ部分を結合する)と組み合わせたタグ構築物UU-30を投与したマウスとの間で比較される。示されているように、本発明の二重特異性抗体と組み合わせたUU-30の投与は、UU-30のみの投与に比べて、より低い腫瘍増殖をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、第一がCD40に特異的であり及び第二がタグ部分に特異的である、一緒に共有結合される少なくとも2つの特異的結合分子を含む二重特異性コンジュゲートに関する。
【0033】
特異的結合分子は、問題の標的分子、すなわち、CD40又はタグ部分のための任意の結合パートナー(例えば、親和性結合パートナー)である。すなわち、それは、CD40又はタグ部分に結合する任意の分子であり得る(すなわち、任意の分子はCD40又はタグ部分に結合することができる)。好ましい実施形態において、特異的結合分子は特異的結合タンパク質であるが、それは、例えば核酸分子、例えばアプタマーを含めた、任意の分子であってもよい。「特異的」とは、分子が、非標的分子への結合と区別され得る様式で、より特により大きい結合親和力で、その標的に結合することを意味する。すなわち、結合分子は、その他の、非標的分子に結合しないか、又は感知できる若しくは有意な程度までそうしないか、又は斯かる他の分子に低親和性で結合する。「に特異的」とは、或いは「に対して向けられた」と表現されてもよい。
【0034】
「CD40」という用語は、任意の種からのCD40を指す。よって、それは、ヒトCD40であっても、又は他の種、なかでも注目すべきは、他の哺乳類の対応する分子であってもよい。好ましくは、それはヒトCD40である。ヒトCD40のアミノ酸配列は配列番号50に示されている。特に、第一の特異的結合分子は、その天然状況において、そしてより特にCD40が細胞の表面に局在したときに、又はより特に細胞の表面で発現されたときに、CD40に結合する。
【0035】
第一の特異的結合分子はCD40を作動させることができる。すなわち、分子はCD40を活性化することができる。言い換えれば、第一の特異的結合分子はCD40シグナル伝達を高めることができる。第一の特異的結合分子は、CD40Lが不存在下でCD40に結合し、CD40のシグナル伝達を高め得る。或いは、CD40:CD40L複合体に結合し、CD40シグナル伝達を高め得る。第一の特異的結合分子は、CD40へのCD40Lの結合を完全に妨げ得るか、それはCD40へのCD40Lの結合を低減し得るか、又はそれはCD40へのCD40Lの結合を低減しないか若しくは妨げなくてもよい。よって、それは、CD40上のCD40L結合部位付近のエピトープ、重複エピトープ、又はCD40L結合部位とは別々のエピトープに結合してもよく、それは、立体構造変化を引き起こすことによって、完全に又は部分的にCD40L結合部位に影響し得る。第一の特異的結合分子は、CD40を発現する細胞、とりわけ、CD40を発現するAPC、例えば樹状細胞、又はB細胞、マクロファージ、単球又はいずれかの骨髄細胞などの活性を増強する(すなわち、活性化するか又は刺激する)。細胞は、CD11b陽性であっても、又はCD11c陽性であってもよい。特定の実施形態において、第一の特異的結合分子はDCを活性化することができる。
【0036】
DCなどの成熟APCは、CD40を介したシグナル伝達が起こり、そしてそれが、免疫細胞の活性化、増殖、及びサイトカイン及びケモカインの産生を含めた数個の生物学的な事象を引き起こしたときに、活性化された。DC又は他のAPC、CD40による活性化を測定する方法は当該技術分野で知られており(Schonbeck et al. 2001, Cell Mol Life Sci., 58:40-43、並びにWO 2015/091853及びUS 2017/0342159)、そして、以下の実施例に記載される。
【0037】
例えば、CD86やCD80などの細胞表面マーカーのレベルを計測することによって、サイトカイン放出(例えば、DCによるIL-12の放出)を計測することによって、及び/又は抗CD40結合分子により誘発されるT細胞の活性(例えば、IFNγの分泌)を計測することによって、特異的抗CD40結合分子がDCなどのAPCの活性を調節する(増強する)能力をどのように測定するかもまた、当該技術分野で知られており、かつ、報告されている。インビトロにおけるT細胞活性化アッセイは以下の実施例1に記載されている。
【0038】
いくつかの実施形態において、第一の特異的結合分子は、5μg/ml以下、例えば、4、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.4、0.3又は0.2μg/ml、典型的に0.1μg/mlと先に指定した上限の間の効力(例えば、WO2015/091853の実施例3に記載のとおり、EC50として計測される)を有するDCの活性化を増強し得る。
【0039】
当該技術分野で周知のとおり、CD40は細胞表面タンパク質である。リガンド又は作動薬による関与時に、CD40は内在化してもよい。TNFR内在化は免疫活性化を調整する方法になり得る。CD40に対する抗体は様々な内在化率を有し得る。理論によって拘束されるものではないが、抗体の内在化を作動能力に関連させることが可能である。従って、CD40の計測可能な内在化を駆動することが抗CD40抗体に望まれ得る。抗体-CD40複合体のの内在化は、第二の特異的結合分子に結合したタグ構築物内の抗原の標的細胞による内在化をもたらし、これにより抗原の交差提示を促進し得る。よって、第一の特異的結合分子がCD40に結合するときにCD40内在化を引き起こすことが特に好ましい。CD40の内在化は、以下の実施例に記載とおり実験的に計測されてもよい。
【0040】
タグ部分は、第二の特異的結合分子のための結合パートナーであり、かつ、コンジュゲートがそのタグ部分を含むタグ構築物に結合できるように使用され得る任意の部分(例えば、分子)であり得る。よって、タグ部分は親和性結合対のメンバーである。それは特異的結合分子によって標的化され得る任意の化学物質であり得る。そのため、タグ部分の性質は制限されることなく、そしてそれは、任意のタイプの分子、例えばペプチド、任意の有機分子、又は任意の小分子であってもよい。例えば、それはハプテンであってもよい。好ましくは、タグ部分はペプチドである。「ペプチド」という用語は、ポリペプチドやタンパク質を含めるように本明細書中で広く使用され、そして、アミノ酸残基の数を制限しないが、むしろ分子のタンパク質的性質を示す。これにより、「ペプチド」という用語は、「ポリペプチド」と同義であるか、又は交換可能である。ペプチドは、2以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体又はペプチド模倣物を含む化合物であり得る。アミノ酸は、天然又は合成であり、かつ、D又はL光学異性体である。タグ部分は、天然に生じる分子、断片若しくはその一部であってもよく、又はそれが人工分子であっても、若しくは合成分子であってもよい。タグ部分とタグペプチドは以下でさらに記載されている。
【0041】
本発明による使用において、タグ部分はタグ構築物の一部として提供され、ここで、該タグ部分は、本明細書中のほかの所に記載したように、抗原に共有結合される。従って、タグ部分は典型的には合成により製造される。
【0042】
先に詳述のとおり、ある実施形態において、タグ部分は癌抗原でなく、そしてこれにより、この実施形態において、第二の特異的結合分子は癌抗原に結合しない。特に、タグ部分はヒト癌抗原でない。タグ部分が癌抗原の一部でないことは、タグ部分が癌抗原の一部ではないことを含む、すなわち、それは癌抗原からのアミノ酸配列でない。特に、タグ部分は癌抗原からのエピトープでない。
【0043】
癌抗原(又は腫瘍抗原)は、以下でさらに記載するように、腫瘍特異的抗原(すなわち、突然変異から生じるネオエピトープ)と腫瘍関連抗原の両方を含む。本明細書中で言及される癌抗原は、特に、例えば、治療抗体又は他の薬物実体によって癌療法で標的化され得るタンパク質である。
【0044】
ある実施形態において、タグ部分はあらゆるB細胞エピトープを含まない。特定の実施形態において、タグ部分はあらゆるヒトB細胞エピトープを含まない。タグ部分は、コンジュゲート若しくはコンジュゲートを含む複合体が投与される対象において存在し得る任意の内因性抗体と、相互作用しないか、又は任意の有意な若しくは実質的な程度、相互作用しないように、設計又は選択され得る。一実施形態において、本発明のコンジュゲートと、本発明のコンジュゲートとタグが投与される対象の内在性抗体との間のタグ部分の結合の競合は回避され得る。従って、ある実施形態において、第二の特異的結合分子は、例えば、コンジュゲートが最初に投与されたときに、タグ部分に結合するために対象のあらゆる内因性抗体を妨害する。
【0045】
あらゆるB細胞エピトープ(例えば、ヒトB細胞エピトープ)を含まないタグ部分は、それが投与されたとき、タグ部分に対する(又はタグ構築物の抗原以外のコンジュゲート/複合体の任意の部分に対する)免疫応答の発生を回避するために、非免疫原性であり得る。
【0046】
或いは、ある実施形態において、タグ部分は、あらゆる天然のB細胞エピトープを含むわけではない(例えば、タグ部分はあらゆる天然ヒトB細胞エピトープを含むわけではない)。「天然のB細胞エピトープ」とは、コンジュゲート投与前に循環抗体を持っていない対象、例えばヒト(特にコンジュゲートが投与されるべき患者)に対するエピトープを意味する。この実施形態において、対象に対するタグ部分の投与が抗タグ抗体を引き起こすであろうことは可能性がある。
【0047】
B細胞エピトープを表すタグ部分の所定のアミノ酸配列(又は他の分子)が、それが投与された対象の種、対象のMHCレパートリー及びその対象が以前に晒された抗原が何かに依存するかどうかは、この点で理解される。よって、ヒト対象が晒されるペプチド又はタンパク質由来のタグ部分は、ヒトB細胞エピトープを含み得るが、問題のエピトープ配列は、他の種でB細胞エピトープとして機能しない可能性があるか、又は普遍的なB細胞エピトープではない。
【0048】
「普遍的」B細胞エピトープとは、集団の大部分の個体に存在する抗体によって結合されるB細胞エピトープを意味する。例えば、普遍的なヒトB細胞エピトープは所定の集団の大部分の個体が有する抗体に対するエピトープである。普遍的なB細胞エピトープは、これだけに限定されるものではないが、ワクチンで一般的に投与されるタンパク質又はペプチドであり得る。例えば、破傷風毒素(TTx)は多くの普遍的なB細胞エピトープを含んでいる。理論によって拘束されることなしに、これが破傷風トキソイド(TTd)、TTxの不活性型が世界中でほとんどすべての人々に投与された破傷風ワクチンで利用される理由であると考えられている。ある実施形態において、普遍的なヒトB細胞エピトープは、集団の少なくとも75%の個体の内因性抗体によってで認識されるB細胞エピトープである。普遍的なB細胞エピトープは、或いは、一般的なB細胞エピトープと定義されてもよい。
【0049】
B細胞エピトープは、直鎖(連続したアミノ酸配列)であっても又は立体構造(タンパク質の二次又は三次構造との関連において抗体によって認識される、タンパク質からの非連続的な一連のアミノ酸)であってもよい。
【0050】
例えば、TTxペプチド(以下でさらに記載される)に基づくタグペプチドは、抗TTx抗体がヒト対象で頻繁に見つかり、これにより特定のTTx誘導ペプチドと相互作用し得るので、ヒトB細胞エピトープである特定の配列(例えば、MTTEエピトープ、そしてそれは、以下に及び実施例で記載される天然の直鎖B細胞エピトープである)を含んでもよい。しかしながら、マウスは、それらが破傷風トキソイドに晒されたことがなく、これによりそれを認識する抗体を発現していないので、一般的にMTTEに対する循環抗体を有しない。しかしながら、すべてのTTx-誘導ペプチドが普遍的なヒトB細胞エピトープである(を含んでいる)というわけではなく、そしてこれは、以下でさらに考察されるスクリーニングによって決定できる。
【0051】
別の実施形態において、タグ部分は、天然のB細胞エピトープ(例えば、天然ヒトB細胞エピトープ)を含んでもよい。この実施形態において、タグ部分が、第二の特異的結合分子と比べて、内因性循環抗体によってあまり強く(すなわち、より弱くしか)結合されない場合に、有利であり得る。それはまた、この場合、内因性抗体がネイキッドペプチドを結合しない可能性もあり、またそれを弱くしか結合しない可能性もあるので、ネイキッドペプチドはそれが由来する(及びそれに対して内因性抗体が産生された)タンパク質に関してその立体構造に関連するときに、タグペプチドが異なる立体構造を採用する場合には、有利であり得る。特に、第二の特異的結合分子は、本発明のコンジュゲートとタグ部分が投与される対象の内因性循環抗体より強くタグ部分を結合し得る。
【0052】
タグ部分への抗体/特異的結合分子の結合の強度は、解離定数(Kd)の形で定量化され得る。Kdが大きければ大きいほど、相互作用が弱い(逆もまた同様である)。タグ部分と抗体又は特異的結合分子との間の結合相互作用のKdは、当該技術分野で既知のさまざまな方法、例えば、表面プラズモン共鳴法(SPR)によって測定され得る。よって、ある実施形態において、タグ部分は天然ヒトB細胞エピトープを含むが、ヒト内因性循環抗体によって結合されるものに比べて、より低いKdで第二の特異的結合分子によって結合される。特に、タグ部分は、天然ヒトB細胞エピトープを含んでもよいが、それが治療される対象の内因性循環抗体によって結合されるのに比べて、より低いKdで第二の特異的結合分子によって結合される。タグ部分と第二の特異的ヒト抗体との相互作用のKdは、治療される対象のタグ部分と内因性循環抗体との相互作用のKdと比較して、例えば、約2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、50倍、100倍又は1000倍以上であり得る。
【0053】
特定の実施形態において、タグ部分は非哺乳動物ペプチドである。すなわち、タグ部分は、哺乳類で見られないアミノ酸配列を有する(含む又はから成る)ペプチドであり得る。哺乳類で見られないアミノ酸配列とは、そのゲノムにより哺乳類でコードされないアミノ酸配列を意味する。よって、例えば、哺乳類の腸内の腸常在細菌によって分泌された細菌性タンパク質、及びこれにより哺乳類から単離され得るものは、本願の目的のための、「哺乳類で見られる」と見なさない。よって、ペプチドは、哺乳類タンパク質でも、また又は哺乳類タンパク質の断片でもない。よって、この実施形態において、第二の特異的結合分子は哺乳類タンパク質に結合しない。
【0054】
或いは、タグ部分は、哺乳動物細胞の表面で発現されないペプチドであってもよい。すなわち、タグ部分は、哺乳動物細胞表面タンパク質又は哺乳動物細胞表面タンパク質由来のペプチド(例えば、哺乳類表面タンパク質の一部又は断片)ではない。この実施形態において、第二の特異的結合分子は、哺乳動物細胞表面タンパク質に結合しない。
【0055】
タグペプチドは、あらゆるヒト配列を含まないように選択又は設計されてもよく、すなわち、タグペプチドは、ヒトで生じるアミノ酸配列に対応する(そこから得られる若しくは由来する)、又はポリペプチド内のあらゆるアミノ酸を含まない可能性がある。すなわち、タグ部分(タグペプチド)は非ヒトペプチドであってもよい、すなわち、タグ部分は、ヒトタンパク質、又はヒトタンパク質の一部若しくは断片でもない。哺乳類ペプチドに関する先の考察と同様に、非ヒトペプチドはヒトで見られないアミノ酸配列を有する(含む又はから成る)。ヒトで見られないアミノ酸配列は、ヒトゲノムによってコードされない、これにより、天然ヒト細胞によって産生されないアミノ酸配列である。よってこの実施形態において、第二の特異的結合分子はヒトタンパク質に結合しない。
【0056】
別の実施形態において、タグペプチドは、タグペプチドがイヌで生じるアミノ酸配列に対応する(そこから得られる若しくは由来する)、又はポリペプチド内のあらゆるアミノ酸配列を含まないように、あらゆるイヌの配列を含まないように選択又は設計されてもよい。よって、この実施形態において、第二の特異的結合分子はイヌのタンパク質に結合しない。
【0057】
タグペプチドは、天然ペプチド、すなわち、天然のタンパク質配列由来の配列を有するペプチドであってもよい。この場合、ペプチド配列は、非哺乳動物又は非ヒト起源のタンパク質、例えば、細菌性タンパク質又は酵母タンパク質などの原核生物又は微生物タンパク質由来であることが好ましい。以下に示した実施例にあるとおり、タグペプチドはクロストリジウム・テタニ(Clostridium tetani)由来であってもよい。或いは、タグペプチドは、人工配列、すなわち、天然に見られないアミノ酸配列を有していてもよい。よって、第二の特異的結合分子は、例えば細菌性タンパク質などの原核生物又は微生物性タンパク質に結合し得る。或いは、第二の特異的結合分子は、その第二の特異的結合分子があらゆる天然に存在するタンパク質を結合しないように、人工的な配列のみを結合し得る。
【0058】
特定の実施形態において、タグペプチドはα-ヘリカル構造を有する。別の実施形態において、タグペプチドは構造化されていない、すなわち、それが特定の二次構造を採用しない。実施例で詳述されるように、ペプチド二次構造は、公的に利用可能なソフトウェアを使用することで予測できる(例えばJpred4(http://www.compbio.dundee.ac.uk/jpred/, Drozdetskiy et al., Nucl. Acids Res. 43(W1): W389-W394, 2015)及びPASTA2.0(http://protein.bio.unipd.it/pasta2/, Walsh et al., Nucl. Acids Res. 42(W): W301-W307, 2014)。ペプチド二次構造は、当該技術分野で周知のとおり、円偏光二色性分光法によって実験的に決定される(Greenfield, N., Nat Protoc. 1(6): 2876-2890, 2006を参照のこと)。
【0059】
一実施形態において、タグペプチドの選択における考慮事項は、そのペプチドが可変構造を有してはいけないということである。言い換えると、理論によって拘束されるものではないが、タグペプチドの構造が、その内容によって変化又は変動しないことが望まれ得る。例えば、タグペプチドの構造が、それが溶液中で「ネイキッド」であるとき(すなわち無修正)、それが支持体に結合されているとき(すなわち固定)、及びそのN末端及び/又はC末端が修飾されているとき、例えば、そのペプチドが抗原との融合タンパク質との関連において合成されているか、又は化学的にラベルされている場合、などで同じであることが望まれ得る。ペプチドが可変構造を有する場合、それは、状況によって高い親和性で第二の特異的結合分子を結合するとは限らない。例えば、円偏光二色性分光法は、タグペプチドの構造が状況により変更されるか否かを決定するのに使用され得る。
【0060】
特定の実施形態において、タグペプチドは、CD4エピトープ(すなわち、CD4+T細胞によって認識されるか又は認識可能なエピトープ)を含んでもよい。CD4エピトープは、破傷風毒素に由来しても、又はその他の病原菌誘導抗原に由来してもよい。タグペプチド中の斯かるエピトープの存在は、Tヘルパー細胞にAPC上のCD4エピトープを提示し、その結果、タグ構築物の抗原内のCD8+エピトープを認識するCD8+T細胞を助けるのを誘発することによって、タグ自体がアジュバントとして作用することを可能にする場合がある。
【0061】
特定の実施形態において、タグペプチドは破傷風毒素に由来する。破傷風毒素由来の好適なタグペプチド配列の例としては、既知のヒトCD4エピトープを含み、かつ、配列番号6で規定されるアミノ酸配列を有する、以下で記載したMTTEが挙げられる。破傷風毒素由来の好適なタグペプチドの他の例としては、配列番号10~14のものが挙げられ、そしてそれは、あらゆる既知の普遍的なヒトCD4エピトープを含まない。よって、第二の特異的結合分子は、破傷風毒素、特に配列番号6又は配列番号10~14のいずれか一つに結合し得る。別の実施形態において、タグペプチドは、MTTEの一部、例えば、少なくとも5つのアミノ酸である。例えば、タグペプチドは、5~16、6~15、7~14、8~13又は10~12アミノ酸のMTTEの断片であってもよい。タグペプチドはまた、配列番号10~14の破傷風毒素由来ペプチドのうちの一つの一部、例えば、少なくとも5つのアミノ酸の配列番号10~14のうちのいずれか1つの断片(例えば、8~15、10~15、8~12又は10~12アミノ酸の断片)であってもよい。タグペプチドは、配列番号121の破傷風毒素由来ペプチド(配列番号12の断片である)又は配列番号122、123、124及び125の破傷風毒素由来ペプチド(配列番号13の断片である)のうちのいずれか一つであってもよい。よって、第二の特異的結合分子は、配列番号121~125のうちのいずれか一つの破傷風毒素を結合し得る。
【0062】
第一及び第二の特異的結合分子は、共有結合で連結される。これは、それぞれの分子が共有結合で互いに直接連結されるか、又はそれらがリンカー分子若しくはリンカー基を介して共有結合で連結されることを含む(すなわち、それらは共有結合によって直接的又は間接的に互いに連結され得る)。直接的であるか(例えば、ペプチド結合によって、又はそれらが一緒に相互作用(例えば、反応)できる様式で、それぞれの分子の化学基の活性化によって)、又はリンカーの手法により間接的であるかにかかわらず、2つの分子、特に、2つのタンパク質又はポリペプチドが一緒に、どのように連結されるかは、当該技術分野で周知されており、かつ、文献に幅広く記載されている。例えば、特異的結合分子は、別の結合分子の中(又は実際はリンカー分子の中)に存在するチオール、例えば、ヨード酢酸(NHIA)又はN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)のN-ヒドロキシスキシンイミドエステルと反応できる二官能性剤と反応し得る。アミド及びチオエーテル結合は、例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスキシンイミドエステルにより達成され得る。多くのリンカー分子が知られており、かつ、抗体構築物の分野を含め、コンジュゲートの構成部品を一緒に連結するための当該技術分野で標準的であり、そして任意の斯かるリンカーが使用できる。
【0063】
第一及び第二の結合分子がポリペプチド又はタンパク質である場合、それらは、ペプチド結合によって、又は好都合なことにアミノ酸配列の形態を取るリンカーの介在によって、互いに直接連結され得る。よって、コンジュゲートは、融合タンパク質(又は融合ポリペプチド)の形態を取り得るか、又は含み得、ここで、第一及び第二の特異的結合タンパク質(又はその構成ポリペプチド、例えば、鎖)は一緒に直接的連結されるか又はリンカー配列を介して間接的に連結される。例えば、典型的には、リンカーはGGGGSn(配列番号51)の形態をとり、ここで、nは、典型的に1~10、例えば2~6であり得る。代表的なリンカー(n=2の場合)は配列番号49に示されている。リンカーは、2つの結合分子(又は鎖若しくはその部品)を一緒に連結する以外の機能性も又はエフェクターの役割も果たさない。
【0064】
第一及び第二の特異的結合タンパク質又はその構成ポリペプチド(例えば、鎖)は、例えば、第一の特異的結合タンパク質(又はその鎖)がN又はC末端で第二の特異的結合タンパク質(又はその鎖)のN又はC末端に連結されて、互いに連結され得る。
【0065】
先に述べたように、好ましい実施形態において、特異的結合分子は特異的結合タンパク質であり、そしてより特にそれらは抗原結合性タンパク質であってもよい。「抗原結合性タンパク質」という用語は、抗体から得られるか若しくは由来するか、又は抗体の抗原結合ドメインに基づく抗原結合性ドメインを含む結合タンパク質を意味するために本明細書中に使用される。よって、抗原結合性タンパク質は、抗体の結合部位又は抗体由来の結合部位を含む抗体ベースの、又は抗体様の分子であってもよい。これにより、それは免疫学的な結合剤である。抗原結合性タンパク質は、例えば、抗CD40抗体からの軽鎖及び/又は重鎖可変領域を含んでも、又は抗CD40抗体からCDRを含んでもよい。これにより、抗原結合性タンパク質は、天然の抗体若しくはその断片、又は人工若しくは合成の抗体、又は抗体構築物、又は誘導体(例えば、以下でさらに考察される、一本鎖抗体)であってもよい。誤解を避けるために、本発明によると、抗原結合ドメインはT細胞受容体(TCR)由来ではない。よって、誤解を避けるために、本発明による抗原結合タンパク質はTCRを含まない。
【0066】
好ましくは、抗原結合タンパク質は、抗体、又はその抗原結合フラグメント若しくは誘導体である。
【0067】
「抗体」という用語、本明細書中で使用される場合、免疫グロブリン分子を指す。これにより、抗体は、ジスルフィド結合によって内部連結された少なくとも2つの重(H)鎖と2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域から成る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域から成る。VHとVLは、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。VHとVLは、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、さらに保存される領域と共に点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分され得る。各VHとVLは、典型的には、3つのCDR(抗原結合性ドメイン/部位を定義するために使用され得る)及び4つのFRを有する。抗体の定常領域は、様々な細胞又は因子への抗体の結合を媒介し得る。抗体のFc領域は、2つの重鎖の定常領域の部分(抗体のクラスに依存する、Fcに寄与する2又は3つの定常ドメイン)から構成され、そして特に、この領域は、APCを含めた特定の細胞に存在するFc受容体に結合してもよく、かつ、細胞を刺激する抗体の能力で役割を果たし得る。
【0068】
抗体は、ポリクロナール又はモノクローナル抗体であってもよい。抗体は任意のアイソタイプ(又はクラス)のものであってもよく、そしてそれは、重鎖中の定常ドメインのタイプによって決定される。よって、それは、IgA、IgD、IgE、IgG又はIgM抗体であってもよい。好ましくは、それはIgG抗体である。これらのクラスのうちのいくつかは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などサブクラスにさらに細分化され、そして抗体は、任意のサブクラスのものであってもよい。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造と三次元配置は周知である。本発明者らは、サブクラスIgG2のIgG抗体(すなわち、IgG2抗体)が、CD40に対して特に強い内在化作用を有することを実証した。CD40への作動性IgG2抗体の結合は、CD40の内在化を駆動するのに特に有効である。重要なことに、作動性IgG2抗体は、IgG1抗体よりCD40内在化を駆動するのに効果的である。以下の実施例で実証されるように、IgG2抗体は、同じ抗原結合性ドメインを用いたIgG1抗体よりも、CD40内在化を駆動するのにより効果的であり、そして、CD40内在化、これにより、第二の特異的結合分子に結合した任意の抗原の内在化、を駆動する際の抗体アイソタイプの重要性を実証する。よって、IgG2アイソタイプの抗体の使用は、優れたMHCクラスI又はII抗原負荷をもたらし、したがって、優れた免疫活性化をもたらし得る。CD40内在化の駆動における有効性を考えて、CD40の作動物質であるIgG2抗体は、本発明のコンジュゲートの第一の結合分子としての使用のために特に好まれる。
【0069】
哺乳類の抗体の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列及びそれらの可変ドメインのフレームワーク領域内のいくつかのアミノ酸に基づいて、2つの明らかに異なるタイプ:カッパ(κ)及びラムダ(λ)のうちの一つに割り当てられる。いくつかの実施形態において、カッパ(κ)軽鎖は好まれる。
【0070】
いくつかの実施形態において、特異的結合分子、そして特に第一の特異的結合分子(CD40を結合する)は、抗体又はその断片である。特に、それは完全又は全体の抗体(すなわち、H及びL鎖定常領域の全相補体を含む「完全長」抗体)である。他の実施形態において、特異的結合分子、及び特に第二の特異的結合分子は遺伝子操作又は合成抗体構築物である。
【0071】
特異的結合分子は、抗体の抗原結合性フラグメント、すなわち、抗原(例えば、CD40又はタグ部分)に特異的に結合する抗体の能力を維持する断片、であってもよい。斯かる断片は周知であり、そして、例はFab'、Fab、F(ab')2、Fv、Fd、又はdAb断片を含み、そしてそれは、当該技術分野で周知の技術により調製され得る。
【0072】
或いは、特異的結合分子は、合成又は人工的な構築物、すなわち、抗原結合性ドメインを含むが、遺伝子を組み換えられるか又は人工的に組み立てられる抗体様分子であってもよい。これには、キメラ又はCDRグラフト抗体、並びに一本鎖抗体及び他の構築物、例えば、scFv、dsFv、ds-scFv、二量体、ミニボディ、二重特異性抗体、シングルドメイン抗体(DABs)、TandAbs二量体、VHHなどの重鎖抗体、そしてラクダ抗体などが挙げられる。scFvは、典型的には、N末端からC末端の、リンカー配列でVL領域に連結したVH領域を含む。リンカーは、先に述べたアミノ酸配列であってもよい。例示的なリンカー配列はGGGGS4である。しかしながら、一本鎖抗体のための代替の形式が可能である。斯かる分子の調製は、当該技術分野で周知であり、そして、それらは完全な抗体と同じ様式による有用性についてスクリーニングされてもよい。
【0073】
第一及び第二の特異的抗原結合性タンパク質はヒト又はヒト化タンパク質であってもよい。ヒトタンパク質は、フレームワークとCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来するVHとVL領域を含み、同様にこれがタンパク質に含まれている場合、定常領域を含んでもよい。しかしながら、斯かるタンパク質は、ヒト生殖系列Ig配列によってコードされていないアミノ酸、例えば、ランダム又は部位突然変異で導入した突然変異、を含んでもよい。ヒト化タンパク質は、ヒトフレームワーク配列又はヒト「足場」配列にグラフトした別の種(例えば、マウス)の生殖系列由来のCDR配列を含んでもよく、及び/又はここで、非ヒト可変領域の特定のアミノ酸は、典型的にヒト抗体に存在するアミノ酸により一層対応するように変更される。これにより、ヒト化タンパク質は、ヒト由来及び非ヒト由来配列の両方を含むキメラタンパク質である。非ヒト配列は最小限であってもよい。
【0074】
別の実施形態において、コンジュゲートは、獣医学における使用、特にイヌでの使用のために設計され得る。この実施形態において、第一の特異的結合分子はイヌの特異的結合分子、例えば、イヌの抗体であってもよい。この実施形態において、第一の特異的結合分子は、イヌCD40に対する作動物質であり、好ましくはイヌ重鎖定常領域を有する。抗体はイヌIgG抗体であってもよい。イヌのサブクラスIgGBは、ある程度、ヒトIgG2のイヌ同等物であり、これにより、IgG2サブクラスがヒトにおける使用のために好まれるのと同じ理由で、イヌにおける使用のためのコンジュゲートは、第一の特異的結合分子としてイヌCD40の作動物質であるIgGB抗体を利用することが好ましい。
【0075】
これにより、抗原結合性タンパク質は、当該技術分野で周知の技術及び原理による遺伝子組み換え又は合成手段によって調製され得るか、発現され得るか、単離され得るか、又は作製され得る。
【0076】
その2つの標的それぞれ、すなわち、CD40とタグ部分のそれぞれ、に関して2つ以上の結合ドメインを有することがコンジュゲートにとって好ましい。言い換えれば、各標的あたり少なくとも二価を有することがコンジュゲートにとって好ましい。これに関して、価数は標的に関する結合ドメインの数と等価と見なすことができる。よって、価数は標的結合ドメインと見なすこともできる。従って、第一及び/又は第二の特異的結合分子は、それぞれ2つ以上の(抗原)結合ドメインを有してもよく、及び/又はコンジュゲートは2つ以上の第一及び/又は第二の特異的結合分子を含んでもよい。これにより、特異的結合分子は一価であってもよく、又はそれは2以上の価数を有してもよい、すなわち、それは、1つ、若しくは2つ以上の結合ドメイン、例えば、2~6又は2~4つの結合ドメインを含んでもよい。さらに、コンジュゲートは、1つの第一又は第二の特異的結合分子を含んでもよいか、又はそれは、2つ以上の第一及び/又は第二の特異的結合分子、例えば2~6、又は2~4つの第一及び/又は第二の特異的結合分子を含んでもよい。特異的結合分子が2以上の価数を有する場合、ある実施形態において、コンジュゲートは、1つの特異的結合分子、例えば2以上、例えば2の価数を有する1つの第一の特異的結合分子を含んでもよい。特異的結合分子が1の価数を有する場合、ある実施形態において、コンジュゲートは、2つ以上の特異的結合分子、例えば、2つ以上、例えば2~4つの一価の第二の特異的結合分子を含んでもよい。複数の第二の特異的結合パートナーが存在する場合、それらが同じ標的ペプチドに特異的であることは、理解される。コンジュゲート中に複数の第一又は第二の特異的結合パートナーが存在する場合、それぞれの第一の特異的結合分子及びそれぞれの第二の特異的結合分子は、通常同じであるが、異なっていてもよい(例えば、各コンジュゲートは、CD40に結合する1つの、二価の第一の特異的結合分子、並びにそのそれぞれが異なるタグ部分を結合するか、又はそのそれぞれが同じタグ部分に向けられているが、例えばその中の異なる部位に結合する、2つの、異なる、一価の第二の特異的結合分子、を含む場合がある)。
【0077】
1つの好ましい実施形態において、第一の特異的結合分子は二価である。さらに、斯かる実施形態において、第二の特異的結合分子は一価であってもよく、そしてコンジュゲートは2つの第二の特異的結合分子を含んでもよい。よって、斯かる実施形態において、コンジュゲートは四価である。異なる形態の四価のコンジュゲートが可能であることが、先の考察から理解される。例えば、2つ以上の第二の特異的結合分子(例えば、2、3又は4以上)を1つの第一の特異的結合分子に結合することによって、コンジュゲートの価数を増やすことが可能である。或いは又はさらに、2つ以上の第一の特異的結合分子が結合され得る。
【0078】
「結合親和力」という用語は、結合分子がその結合パートナー又は標的に結合するか又は結合しない傾向を指す。結合親和力は、結合パートナーに対して解離定数が(Kd)を決定することによって定量化され得る。同様に、その標的への結合分子の結合の特異性は、結合分子と非標的分子に関する解離定数と比較した、その標的に対する結合分子の比較解離定数(Kd)で定義され得る。典型的には、標的に対する特異的結合分子のKdは、別の非標的分子に関するKdより少なくとも2倍、好ましくは少なくとも5、10、15、20、30、40、50、100又は200倍低くなるであろう。結合親和力と解離定数は、周知の方法を使用することで容易に測定され得る。斯かる多くの方法がWO2015/091853に記載されている。第一及び第二の特異的結合分子は、別の非標的分子に結合するそれらの親和性に比べて、少なくとも2、5、10、50、100又は200倍高い親和性でそれらの標的に結合することができる可能性がある。
【0079】
第一及び第二の特異的結合分子は、少なくとも約10、5、4、3、2若しくは1μM、又は少なくとも約1000nM(すなわち、10、5、4、3、2、1μM、又は1000nM以下)の親和性(Kd)でそれらのそれぞれの標的を結合し得るが、例えば、900、800、700、600、500、400、300、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15、10、7、5、4、3、2、約1、0.5、0.2、0.1、0.05、0.01nM若しくはそれ以下のより高い親和性を示し得る。親和性は、例えばELISA、等温滴定熱量測定(ITC)、表面プラズモン共鳴法(例えば、BIAcore)又は蛍光分極アッセイを使用して測定できる。
【0080】
特異的結合分子とその標的との相互作用の強度は、そのオフレート(koff又はkd、解離速度定数、s-1)に基づいて或いは定量化され得る。受容体-リガンド相互作用のオフレートが計算され得る方法、例えば、表面プラズモン共鳴やストップドフロー分析は、当該技術分野で周知である。第一及び第二の特異的結合分子は0.0015s-1以下、例えば、0.001若しくは0.0005s-1以下、又は10-4、5×10-5若しくは10-5s-1以下のオフレートでそれらのそれぞれの標的を結合し得る。相互作用のオフレートはその半減期(半減期=1/koff)に直接的関連する。よって、例えば、0.0005s-1のオフレートを有する相互作用は、1/0.0005s、すなわち、2000秒又は33分の半減期がある。
【0081】
CD40への結合に関する親和定数(KD/Kd)は、典型的に1~10nMの範囲にあってもよい。会合速度(ka)は、典型的に0.4~3.4×106 1/Mの範囲にあってもよい。解離速度定数(kd)は、典型的に1~10×10-3 1/sの範囲にあってもよい。
【0082】
CD40を結合する第一の特異的結合分子は、一実施形態において、抗体の抗原結合ドメインとFc領域を含む抗原結合性タンパク質であってもよい。先に述べたように、例えば、抗原結合分子が特定のクラス又はサブタイプ(例えば、IgG1)の定常領域を含んでいる、場合によっては、結合分子にとってFc領域を含むこともまた有益であり得る。例えば、これは、CD40陽性細胞の活性化を高め得るか、又はそれは分子の安定性又は半減期にとって有益であり得る。しかしながら、これは必要な要件でない。
【0083】
特定の実施形態において、第一の特異的結合分子は、完全な抗体と、特にモノクローナル抗体である。別の実施形態において、それは抗体のF(ab')2断片である。先に述べたように、抗体又は断片は任意のクラス又はアイソタイプのものであり得る。しかしながら、特定の実施形態において、それは、IgG抗体、そしてより特にIgG1又はIgG2抗体である。特定の実施形態において、IgG2形式が好まれる。例えば、それは、完全なIgG2抗体又はIgG2抗体のF(ab')2断片であってもよい。
【0084】
これにより、第一の特異的結合分子は、抗CD40抗体若しくは抗体断片、又はそれら由来の若しくはそれらから得られた抗原結合性タンパク質であってもよい。さまざまな抗CD40抗体が記載され、そして入手可能である。先に述べたように、抗CD40抗体は、WO2016/023960、WO2015/091853、US2017/032159、US2009/0074711、US2017/0137528、US2017/0342159及びWO2014/070934に記載があり、そしてこれらのいずれか、又は抗体若しくは抗体フラグメント、又はこれらに基づく若しくはこれらに由来する抗体構築物が使用され得る。これらの文書は、それらに基づく斯かる配列を含む抗原結合タンパク質若しくはコンジュゲートの調製を可能にする様々な抗体のCDR、及び/又はVH及びVL配列を提示する。それらはまた、様々な抗体変異体、及びヒト若しくはヒト化抗体の調製も記載する。或いは、抗CD40抗体は周知の方法によって製造され得る。
【0085】
先に述べたように、抗CD40抗体のCD40作動活性の測定及びスクリーニングの方法、例えばELISAによる、骨髄DCによるIL12産生を引き起こす抗体の能力を測定することによって、DC細胞活性化を測定することなど、は当該技術分野で周知であり、利用可能である。このように、作動性の第一の特異的結合分子が同定され、そして選択され得る。
【0086】
抗体は、CP870,893、APX005M、ADC-1013、Chi Lob7/4、SEA-CD40、ABS-1132/1133、ABS-1140/1135、及びABS-1150/1151から選択される抗体であってもよい。これらの抗体のいずれかがそのままで使用され得るか、又はそれらは、(単数若しくは複数の)第一の特異的結合分子としての使用のための抗体誘導体を調製するためのベースとして使用され得る。
【0087】
特に、以下の抗体に関して言及され得、そしてそれは、第一の特異的結合分子(別段に示さない限り、本明細書に示した及びこの文書を通じてCDR配列は、IMGTによって同定されるとおりのものである)として又は(例えば、断片若しくは他の誘導体又は構築物を得るための)そのベースとして使用され得る:
【0088】
(i)WO2015/091853に記載のある抗体ABS-1150/1151。この抗体のVH及びVL配列はそれぞれ配列番号23及び24で提示されている(対応するDNA配列は配列番号25及び26でそれぞれ提示されている)。VHCDR1、2及び3の配列はそれぞれ配列番号17~19で提示されており、そして、VLCDR1、2及び3の配列はそれぞれ配列番号20~22で提示されている。ABS-1132/1133とABS-1140/1135はまた、両方ともWO2015/091853に記載のもであり、そしてそれは、これらの抗体のCDR配列、完全なVL及びVH配列を提供する。
【0089】
(ii)US2017/0342159に記載のある抗体CP-870,893。この抗体のVH及びVL配列は配列番号27及び28でそれぞれ提示されている(対応するDNA配列は配列番号29及び30でそれぞれ提示されている)。IMGTによって同定される、VHCDR1、2及び3の配列は配列番号64~66でそれぞれ提示されており、そしてIMGTによって同定される、VLCDR1、2及び3の配列は配列番号67~69でそれぞれ提示されている。
【0090】
(iii)WO2016/023960に記載のある抗体ADC-1013。この抗体のVH及びVL配列は配列番号37及び38でそれぞれ提示されている(対応するDNA配列は配列番号39及び40でそれぞれ提示されている)。(IMGTによって同定される)VHCDR1、2及び3の配列は配列番号31~33でそれぞれ提示されており、そして(IMGTによって同定される)VLCDR1、2及び3の配列は配列番号34~36でそれぞれ提示されている。(Kabatによって同定される)VHCDR1、2及び3の配列は配列番号138~140でそれぞれ提示されており、そして(Kabatによって同定される)VLCDR1、2及び3の配列は配列番号141~143でそれぞれ提示されている。
【0091】
(iv)US2009/0074711に記載のある抗体ChiLob7/4。この抗体のVH及びVLアミノ酸配列は配列番号52及び53でそれぞれ提示されている。
(v)US2017/0137528に記載のある抗体SEA-CD40。この抗体のVH及びVLアミノ酸配列は配列番号54及び55でそれぞれ提示されている。
【0092】
(vi)WO2014/070934に記載のある抗体 APX005M。この抗体のVH及びVLアミノ酸配列は配列番号56及び57でそれぞれ提示されている。(IMGTによって同定される)VHCDR1、2及び3の配列は配列番号58~60でそれぞれ提示されており、そして(IMGTによって同定される)VLCDR1、2及び3の配列は配列番号61~63でそれぞれ提示されている。(Kabatによって同定される)VHCDR1、2及び3の配列は配列番号144~146でそれぞれ提示されており、そして(IMGTによって同定される)VLCDR1、2及び3の配列は配列番号147~149でそれぞれ提示されている。
【0093】
抗原結合性タンパク質は、各抗体それぞれのVH及び/又はVL、又はその変異体からの1若しくは複数のCDRを含んでもよい。
【0094】
よって、コンジュゲートの第一の特異的結合分子は、少なくとも1つの重鎖可変領域(VH)と少なくとも1つの軽鎖可変領域(VL)を含む抗原結合性タンパク質であってもよく、ここで:
(i) (a)VH領域は、それぞれ配列番号17、18及び19に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VHCDR1、2及び3を含み、及び
(b)VL領域は、それぞれ配列番号20、21及び22に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VLCDR1、2及び3を含み;又は
【0095】
(ii) (a)VH領域は、それぞれ配列番号31、32及び33に規定されるアミノ酸配列はを含む(ある実施形態において、それらから成る)VHCDR1、2及び3を含み、及び
(b)VL領域は、それぞれ配列番号34、35及び36に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VLCDR1、2及び3を含み;又は
(iii) (a)VH領域は、それぞれ配列番号58、59及び60に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VHCDR1、2及び3を含み、及び
(b)VL領域は、それぞれ配列番号61、62及び63に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VLCDR1、2及び3を含み;又は
【0096】
(iv) (a)VH領域は、それぞれ配列番号64、65及び66に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VHCDR1、2及び3を含み、及び
(b)VL領域は、それぞれ配列番号67、68及び69に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VLCDR1、2及び3を含み;又は
(v) (a)VH領域は、それぞれ配列番号138、139及び140に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VHCDR1、2及び3を含み、及び
(b)VL領域は、それぞれ配列番号141、142及び143に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VLCDR1、2及び3を含み;又は
【0097】
(vi) (a)VH領域は、それぞれ配列番号144、145及び146に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VHCDR1、2及び3を含み、及び
(b)VL領域は、それぞれ配列番号147、148及び149に規定されるアミノ酸配列を含む(ある実施形態において、それらから成る)VLCDR1、2及び3を含み;
任意選択によりここで、配列番号21のVLCDR2以外の前記CDR配列の1若しくは複数が1、2又は3つの配列修飾で修飾されているか、又はここで、配列番号21のVLCDR2が1又は2つの配列修飾で修飾されている。
【0098】
よって、CDR配列は、任意選択で、先に列挙された配列番号で示される配列に対する配列修飾を含む変異体配列であってもよい。配列修飾は、アミノ酸の置換、付加又は欠失、特に置換又は付加、そしてより特に置換であってもよい。置換は保存的置換であってもよい。ある実施形態において、CDRは1若しくは2つ、又は1つの修飾を含む。好ましくは、所定の可変領域内の1若しくは複数のCDR1及び2が修飾され、そしてCDR3は修飾されない。特定の好ましい実施形態において、CDRは修飾されていない。「保存的なアミノ酸置換」という用語は、本明細書中に使用される場合、あるアミノ酸残基が類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置換されるアミノ酸置換を指す。類似の側鎖を有するアミノ酸は、類似の特性を有する傾向があり、これにより、ポリペプチドの構造又は機能に重要なアミノ酸の保存的置換は、同じ位置での非保存性アミノ酸置換よりわずかしかポリペプチド構造/機能の影響を受けないことが予想され得る。塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン)、無極性側鎖(例えば、グリシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含めた、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当該技術分野で定義された。よって、保存的なアミノ酸置換は、特定のアミノ酸残基が同じファミリーの異なるアミノ酸残基に置換される置換であると考えられ得る。しかしながら、CDR配列のアミノ酸残基の置換はまた、非保存性置換であってもよく、そしてその置換において、あるアミノ酸残基が異なるファミリーに属する側鎖を有する他のものに置換される。
【0099】
変異CDRはそれらのそれぞれの対応する天然の、非修飾CDRと機能上同等である。機能上同等とは、タンパク質又はアミノ酸配列(ここではCDR)が、それに由来する又はそれに基づく(すなわち、それが対応する)タンパク質又はアミノ酸配列(ここではCDR)の機能又は活性を維持する又は実質的に維持することを意味する。特に、機能上同等な変異体は、対応する(非修飾)タンパク質又はアミノ酸配列の活性又は機能の少なくとも70%、又はより特に少なくとも75、80、85、90又は95%を維持し得る。実際には、これは、変異CDRが(天然の、又は非修飾抗原結合タンパク質(例えば、抗体)と比較して、又はCDR領域が修飾されていない抗原結合タンパク質と比較して)それが存在する抗原結合性タンパク質の機能、活性又は特性に否定的に影響しないか、又は実質的に否定的に影響しないことを意味する。主に、これは、変異CDRが抗原結合性タンパク質の結合特異的に影響しないことを意味する、すなわち、タンパク質がCD40に特異的に結合する能力を維持する。さらに、抗原結合タンパク質の結合親和力は、天然の、若しくは非修飾抗原結合タンパク質、又は非修飾CDR領域を有する抗原結合タンパク質と比較して、実質的に低減されない。しかしながら、抗原結合タンパク質の結合親和力はCDR領域、特にCDR1及び/又は2の修飾によって改善され得る。
【0100】
別の実施形態において、抗原結合性タンパク質は、配列番号23、27、37、52、54又は56のうちのいずれか1つに提示されるアミノ酸配列、或いは配列番号23、27、37、52、54又は56と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVH領域を含む。
別の実施形態において、抗原結合性タンパク質は、配列番号24、28、38、53、55又は57のうちのいずれか1つに提示されるアミノ酸配列、或いは配列番号24、28、38、53、55又は57と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVL領域を含む。
【0101】
別の実施形態において、抗原結合性タンパク質は以下のものを含む:
(a)配列番号23に提示されるアミノ酸配列又は配列番号23と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVH領域、並びに配列番号24に提示されるアミノ酸配列又は配列番号24と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVL領域;又は
(b)配列番号27に提示されるアミノ酸配列又は配列番号27と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVH領域、並びに配列番号28に提示されるアミノ酸配列又は配列番号28と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVL領域;又は
【0102】
(c)配列番号37に提示されるアミノ酸配列又は配列番号37と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVH領域、並びに配列番号38に提示されるアミノ酸配列又は配列番号38と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVL領域;又は
(d)配列番号52に提示されるアミノ酸配列又は配列番号52と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVH領域、並びに配列番号53に提示されるアミノ酸配列又は配列番号53と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVL領域;又は
【0103】
(e)配列番号54に提示されるアミノ酸配列又は配列番号54と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVH領域、並びに配列番号55に提示されるアミノ酸配列又は配列番号55と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVL領域;又は
(f)配列番号56に提示されるアミノ酸配列又は配列番号56と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVH領域、並びに配列番号57に提示されるアミノ酸配列又は配列番号57と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むVL領域。
【0104】
これにより、斯かる実施形態において、抗原結合性タンパク質が、先に指定した配列番号で提示されるVH及びVL領域配列の変異体である配列を含む、すなわち、それらが少なくとも70%の配列同一性の要件を満たす限り、指定した配列番号に対して配列修飾を含む、VH及びVL領域を含んでもよい。斯かる配列修飾は、1若しくは複数のアミノ酸置換、付加又は欠失であってもよい。配列修飾は先に考察されている。特に、アミノ酸置換は保存的置換であり得る。変異体配列は、先に定義及び説明したように、それらのそれぞれの親配列に対して機能上同等であってもよい。特定の実施形態において、斯かる変異体配列のCDR配列は修飾されていない。よって、特定の実施形態において、CDR配列は先の所定のCDR配列に提示されるとおりのものであってもよい。
【0105】
先に記載した任意の実施形態による抗原結合性タンパク質もまた、定常領域を含んでもよい。よって、抗原結合性タンパク質は、それぞれ、配列番号45と46に提示されるκとλ定常ドメイン配列のすべて又は一部を含む、或いはそれらと少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むヒト軽鎖領域を含有してもよい。より特に抗原結合タンパク質はFc領域を含んでもよい。Fc領域は、先に述べたように、任意のクラスの抗体からのものであってもよく、特にそれは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4領域であってもよい。
【0106】
よって、抗原結合タンパク質は、配列番号41、42、43若しくは44のいずれか1つに規定される配列、又はそれらと少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含む重鎖定常領域を含んでもよい。特に、第一の特異的結合分子は、配列番号41又は42のいずれか1つに規定される配列又はそれらと少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含む重鎖定常領域を含んでもよい。変異体配列、配列修飾、及び機能的等価性に関する上記の以前の考察はまた、このような関係にも適用される。よって、定常領域、又はそのドメインは、天然配列に対する1若しくは複数の配列修飾を含んでもよい。例えば、斯かる修飾(突然変異)定常領域を含む抗体又は抗体構築物の特性を変更するか又は影響し得る突然変異が知られている。斯かる変異体の1つであるIgG2 C127Sが以下の実施例1に記載されている。この変異体はIgG2B立体構造に固定されており、そしてそれは、IgG2抗体が免疫応答を開始する能力を高めることがわかっている。IgG2 C127S変異体のアミノ酸配列は配列番号15で提示されている。配列の比較から明らかになるように、天然IgG2定常並列(配列番号42に規定される)の14位のシステイン残基がC127S変異体ではセリンに置換される(配列番号15に規定される)。
【0107】
これにより、抗原結合性タンパク質は、少なくとも70%の配列同一性を有する指定された配列の変異体であるアミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態において、配列同一性は、少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98又は99%であり得る。
【0108】
%配列同一性は、任意の便利な方法によって評価され得る。しかしながら、配列間の同一性の程度を決定するために、配列の多重並置をおこなうコンピュータプログラム、例えば、Clustal W(Thompson, Higgins, Gibson, Nucleic Acids Res., 22:4673-4680, 1994)が有効である。所望であれば、Clustal Wアルゴリズムは、2つの配列の間で最高度の一致が得られるように、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:10915-10919, 1992)、並びに10のギャップ開始ペナルティーと0.1のギャップ伸長ペナルティーと一緒に使用され得、ここで、一方の配列の全長の少なくとも50%がアラインメントにかかわる。配列をアラインすることに使用され得る他の方法は、2つの配列の間で最高度の一致が得られ、かつ、同一のアミノ酸数が2つの配列の間で決定されるような、SmithとWatermanによる改訂された(Smith and Waterman, Adv. Appl. Math., 2:482, 1981)、NeedlemanとWunschのアラインメント手法(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol., 48:443, 1970)である。2つのアミノ酸配列の間で同一性のパーセンテージを計算する他の方法は、既に当該技術分野で認識されており、例えば、CarilloとLiptonによって記載されたもの(Carillo and Lipton, SIAM J. Applied Math., 48:1073, 1988)及びComputational Molecular Biology, Lesk, e.d. Oxford University Press, New York, 1988, Biocomputing: Informatics and Genomics Projectsに記載されたものが挙げられる。
【0109】
一般的に、斯かる計算のためにはコンピュータプログラムが用いられる。ALIGN(Myers and Miller, CABIOS, 4:11-17, 1988)、FASTA(Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85:2444-2448, 1988; Pearson, Methods in Enzymology, 183:63-98, 1990)及びギャップドBLAST(Altschul et al., Nucleic Acids Res., 25:3389-3402, 1997)、BLASTP、BLASTN又はGCG(Devereux, Haeberli, Smithies, Nucleic Acids Res., 12:387, 1984)などの配列の対を比較及びアラインするプログラムもまたこのために有用である。さらに、ヨーロッパのバイオインフォマティックス研究所のDaliサーバは、タンパク質配列の構造ベースのアラインメントを提供する(Holm, Trends in Biochemical Sciences, 20:478-480, 1995; Holm, J. Mol. Biol., 233:123-38, 1993; Holm, Nucleic Acid Res., 26:316-9, 1998)。
【0110】
配列同一性は、非修飾(すなわち基準)アミノ酸(又はヌクレオチド)配列の全長を通して決定される(すなわち、全体的な配列アラインメントが実施される)。
【0111】
基準点を提供すること手段として、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する本発明による配列が、デフォルトパラメータを有するALIGNプログラムを使用することで決定され得る(例えば、GENESTREAM network server, IGH, Montpellier, Franceにてインターネットにより入手可能)。
【0112】
第二の特異的結合分子は、先に提示された任意のタイプの抗原結合性タンパク質であってもよい。しかしながら、ある特定の実施形態において、それは、合成抗体構築物、そして特に一本鎖抗体であってもよい。ある実施形態において、第二の特異的結合分子はscFvである。
【0113】
第二の結合分子の特異性はタグ部分に依存し、そして上記の考察により、第二の結合分子はタグ部分に対して結合親和力を有する。特に抗原結合性タンパク質を含めた結合分子を調製することは、十分に当業者の所定の技能の範疇にあり、そしてそれは、所定の又は選択されるタグ部分に特有である。実際に、抗体-タグ部分対、例えば、抗体-ハプテン対は、当該技術分野で知られており、かつ、利用可能である。入手可能な抗体配列(タンパク質及びDNA)に基づいて、当業者は、一本鎖抗体、及びscFvのものを含めた、様々な抗体ベースの構築物が容易に調製できる。さらに、所望のタグ部分、例えば、タグペプチドがいったん同定及び調製されると、そのための特異的な結合剤を製造すること、又はそのための適切な又は好適な特異的結合分子を同定するために結合分子に関するライブラリをスクリーニングすることは、所定の事項である。抗体を製造及び選択するための技術、、並びにそれらの配列及びそれらをコードする配列を決定する技術、及び抗体の抗原結合ドメインに基づく派生抗体構築物を調製する技術は周知である。以下の実施例1は、ペプチド部分(pTAG-scFvと呼ばれる)に対する2つのscFvの第二の結合分子を記載している。他のタグペプチドに対して向けられた同等なscFV第二の結合分子が調製され得る。
【0114】
好ましくは、第二の特異的結合分子は、高親和性でタグ部分に(そしてより特に、本明細書中に定義されるようにタグ構築物に含まれていとき、タグ部分に)結合する。コンジュゲート内に存在するとき、第二の結合分子がタグ部分を結合して、長い半減期を有する複合体を形成できることは、この点で理解される。長い半減期とは、(先に詳述のように)0.0015s-1以下、好ましくは0.0005s-1以下のkoff(kd)を有する相互作用を意味する。
【0115】
特定の実施形態において、scFvは配列番号6のMTTEを結合する。MTTEを結合するscFvsの例としては、14GIIICII-b(配列番号47)及び1BIIICI-b(配列番号48)が挙げられる。14GIIICII-b scFvのCDRは、配列番号126-131に規定される。VHCDR1、2及び3は、それぞれ配列番号128~128に規定されるアミノ酸配列を有する。VLCDR1、2及び3は、それぞれ配列番号129~131に規定されるアミノ酸配列を有する。1BIIICI-b scFvのCDRは、配列番号132~137に規定される。VHCDR1、2及び3は、それぞれ配列番号132~134に規定されるアミノ酸配列を有する。VLCDR1、2及び3は、それぞれ配列番号135~137に規定されるアミノ酸配列を有する。特定の実施形態において、第二の特異的結合分子は、配列番号126~131に規定されるアミノ酸配列を有する6つのCDRを含むscFvである。別の実施形態において、第二の特異的結合分子は、配列番号132~137に規定されるアミノ酸配列を有する6つのCDRを含むscFvである。さらに別の実施形態において、第二の特異的結合分子は、配列番号47に規定されるアミノ酸配列又は配列番号48に規定されるアミノ酸配列、或いはそれと少なくとも80%、90%又は95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むscFvである。
【0116】
第二の特異的結合分子は、第一の特異的結合分子の軽鎖又は重鎖に共有結合で連結されてもよい。先に言及したとおり、第二の特異的結合分子は、分子のいずれかの末端にて、又はその構成部分(例えば、ポリペプチド又は鎖)のいずれかの末端にて、例えば、そのC又はN末端にて第一の特異的結合分子に連結され得る。特定の実施形態において、第二の特異的結合分子は、第一の抗原結合タンパク質の重鎖又は軽鎖のC末端に連結される。従って、第二の特異的結合分子は、軽鎖(CL)の定常領域、又は重鎖(CHドメイン)の定常領域の定常ドメイン、例えば、CH3ドメインに連結され得る。しかしながら、第二の結合分子(例えば、scFv)は、重鎖又は軽鎖のN末端に取り付けられることが可能である。
【0117】
ある実施形態において、第一の特異的結合分子は、完全な抗体、例えば、IgG抗体であってもよく、そして、第二の特異的結合分子は、VH若しくはVL、又はより好ましくはそのCL又はCH3ドメインに連結され得る。より特に、第二の特異的結合分子は、それぞれの鎖のVH、VL、CL又はCH3ドメインに連結され得る。より一層特に、それぞれの2つの第二の特異的結合分子は、それぞれの2つの鎖の同じドメイン(同じタイプのドメインという意味)に連結され得る。しかしながら、他の実施形態において、第二の特異的結合分子は、2つの鎖で異なるドメイン(すなわち、異なるタイプのドメイン)に連結され得る、そして、例えば、1つの第二の結合分子はCLドメインに連結され得、そして、1つの第二の結合分子は、同じ又は別の鎖のCH3ドメインに連結され得る。ある実施形態において、第二の結合分子は、それぞれの鎖のCL及びCH3ドメインに連結され得る(すなわち、コンジュゲートは4つの第二の結合分子を含み得る)。
【0118】
1つの好ましい実施形態において、コンジュゲートは、1つの第一の特異的結合分子(そしてそれは、抗体である)及び2つの第二の特異的結合分子(そしてそれは、scFvsであり、かつ:
i)1つのscFvが、前記抗体のそれぞれの重鎖のC
H3ドメインに結合されるか;又は
ii)1つのscFvが、前記抗体のそれぞれの軽鎖のC
Lドメインに結合される)
を含む。(i)のコンジュゲート構造は
図6に示されている。
【0119】
本開示及び発明はまた、第一及び第二の特異的結合分子を含む本明細書中に定義されるコンジュゲートをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子まで拡張され、ここで、前記第一及び第二の結合分子はそれぞれの特異的結合タンパク質である。より特に、第一及び第二の結合分子は、本明細書中に開示されるように、抗原性結合タンパク質又はその鎖である。よって、ある実施形態において、ヌクレオチド配列は、CD40に特異的な第一の抗原結合性タンパク質(例えば、抗体)のVH領域又はVL領域及びタグ部分に特異的なscFvを含むポリペプチドをコードし得る。より特に、ポリペプチドは、抗CD40抗体の重鎖又は軽鎖及びタグ部分に特異的なscFvを含んでもよい。scFvは、軽鎖又は重鎖のN、又はより好ましくはC末端に直接的又は間接的に(すなわち、リンカーアミノ酸配列を介して)連結され得る。この態様の任意の実施形態による核酸分子は、DNA又はRNAであってもよい。特に、核酸分子は、本明細書中に定義されるVH又はVL領域を含むポリペプチド、又はより特に、本明細書中に定義されるVH領域を含む重鎖を含むポリペプチド、又は本明細書中に定義されるVL領域を含む軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。例えば、核酸分子は、配列番号25、26、29、30、39又は40に規定されるヌクレオチド配列、又は(それぞれ抗体ABS-1150のVHとVL、抗体CP-870,893のVHとVL、及び抗体ADC-1013のVHとVLをコードする)任意の前述の配列に対して少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含んでもよい。特定の実施形態において、配列同一性は、少なくとも75、80、85、90、95、96、97、98又は99%であってもよい。
【0120】
よって、ヌクレオチド配列は、特定のヌクレオチド配列のうちの1つの変異体であってもよい。例えば、変異体は、上記の核酸配列のいずれかの置換、欠失又は付加変異体であってもよい。変異ポリヌクレオチドは、配列番号で示された配列からの1、2、3、4、5、最大10、最大20、最大30、最大40、最大50、最大75以上のヌクレオチド置換及び/又は欠失を含んでもよい。変異ヌクレオチド配列は縮重した配列であってもよい。ヌクレオチド配列が同一性であると決定する方法は当該技術分野で周知である。斯かる同一性は、非修飾(すなわち、基準)ヌクレオチド配列の全長を通して決定される。
【0121】
ヌクレオチド配列が同一性を計測するためのアルゴリズムは当該技術分野で知られている。例えば、UWGCGパッケージは、 (例えば、その既定の設定で使用される)同一性について計算するのに使用できるBESTFITプログラムを提供する(Devereux et al (1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。PILEUP及びBLASTアルゴリズムはまた、例えば、Altschul S.F. (1993) J Mol Evol 36:290-300; Altschul, S, F et al (1990) J Mol Biol 215:403-10に記載のとおり、(典型的にそれらの既定の設定で)配列の同一性又はラインナップについて計算することに使用できる。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、米国立生物工学情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/ )を通して公的に入手可能である。BLASTプログラムは、デフォルトとして11のワード長(W)、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919を参照のこと)、50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、両鎖の比較を使用する。
【0122】
これにより、本発明のコンジュゲートは、それをコードし、発現することができるポリヌクレオチドの形態から製造されても、又はポリヌクレオチドの形態で送達されてもよい。コンジュゲートが2つ以上の鎖を含む場合、核酸分子は1若しくは複数の鎖をコードし得る。例えば、本発明のポリヌクレオチドは軽鎖、重鎖又は両方をコードし得る。2つの核酸分子が提供され得、そのうちの1つが軽鎖をコードし、そしてもう片方が対応する重鎖をエンコードする。斯かる核酸分子又は核酸分子の対は、コンジュゲートが作り出されるように、一緒に発現され得る。
【0123】
核酸分子は、Sambrookら(1989, Molecular Cloning-a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)に実施例の形で記載されるように、当該技術分野で周知の方法によって合成され得る。
【0124】
核酸分子は、コードされたヌクレオチド配列に作動可能に連結された対照配列を含む発現カセットの形態で提供され得、これにより、生体内でのコンジュゲートの発現を可能にする。次に、これらの発現カセットは、典型的には、ベクター(例えば、プラスミド又は遺伝子組み換えウイルスベクター)内に提供される。好適なベクターは、十分な量の遺伝情報を担持でき、かつ、そのコンジュゲート又は鎖の発現を可能にする任意のベクターであってもよい。
【0125】
これにより、本開示と発明はまた、異種の核酸配列に連結された、本明細書中に定義される核酸分子を含む遺伝子組み換え構築物を含む。「ヘテロロガス」とは、本明細書中で使用される場合、本明細書中に記載した核酸分子に天然では連結されない、すなわち、現実に本明細書中に記載する核酸分子に連結されない、核酸配列を意味する。構築物では、本明細書中に記載した核酸分子は、制限部位(すなわち、1若しくは複数の制限酵素によって認識されるヌクレオチド配列)が両側に配置されて、本発明の核酸分子の簡単なクローニングを可能にし得る。「遺伝子組み換え」構築物は、遺伝子組み換え技術、例えば分子クローニング、を使用して合成される核酸構築物である。
【0126】
「連結された」という用語は、構築物に関して本明細書中で使用される場合、核酸分子が異種の核酸配列に直接つなぎ合わせられることを単に意味し得る。好ましい実施形態において、遺伝子組み換え構築物では、本明細書中に開示された核酸分子は、異種の発現制御配列に作動可能に連結される。
【0127】
よって、本明細書中に定義される核酸分子を含む発現カセット、又は本明細書中に定義される核酸分子若しくは遺伝子組み換え構築物を含むベクターもまた、提供される。発現ベクターは、分子生物学の技術分野で日常的に構築され、そして、例えば、プラスミドDNA及び適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサー、ターミネータ、並びに、例えば、コンジュゲート又はその鎖の発現を可能にするための、必要であり得る、及び正しい方向性で配置されたポリアデニル化シグナルなどの他の構成要素の使用を伴ってもよい。
【0128】
他の好適なベクターは、当業者にとって明らかであり、例えば、クローニングがベクターが含むであろう。
【0129】
本開示及び発明はまた、本明細書中に定義されるコンジュゲート、又はその構成ポリペプチドが(例えば、鎖)を発現するために修飾された細胞も含む。よって、核酸分子、遺伝子組み換え構築物、又は本明細書中に定義されるベクターを含む細胞、すなわち、その中に斯かる分子、構築物又はベクターが導入された細胞もまた、提供される。細胞は、宿主細胞又は製造ホスト細胞と定義され得る。
【0130】
斯かる細胞としては、一過性の、又は好ましくは安定した、高等真核細胞株、例えば哺乳動物細胞又は昆虫細胞、例えば酵母などの下等真核細胞又は例えば細菌細胞などの原核細胞が挙げられる。細胞の特定の例としては、哺乳類のHEK293T、CHO、HeLa、NSO、及びCOS細胞が挙げられる。好ましくは、選択される細胞株は、安定しているだけではなく、成熟グリコシル化反応と細胞表面のポリペプチド発現もまた可能にする。斯かる細胞は、コンジュゲートを作製するための日常的な方法を使用することで培養され得る。
【0131】
コンジュゲートは、タグ部分に結合するために使用される。先に言及したとおり、タグ部分は、特異的結合分子がそのために提供される任意の分子又は実体である。しかしながら、好都合なことに、これは免疫原性などを最小限にするように容易に設計又は選択できるので、それはタグペプチドであってもよい。先に述べたように、タグペプチドは好ましくは非ヒトペプチドである。
【0132】
以下の実施例1に記載のとおり、可能性のあるタグペプチドを同定するために、ペプチドライブラリがスクリーニングされてもよい。例えば、非ヒトタンパク質配列、例えば、細菌性タンパク質、例えば、破傷風毒素(TTx)からの又はそれらに由来するペプチドに関するライブラリが得られ、そして、好適な特徴を有するペプチドを同定するためにスクリーニングされてもよい。特に、ペプチドは、対象、なかでも注目すべきは、ヒト対象のあらゆる内因性免疫に関係する(すなわち、ペプチドは、あらゆるB細胞エピトープ、特にあらゆる普遍的なヒトB細胞エピトープを含まない)斯かる特徴としては、例えば、良好な水溶度、α-ヘリカル構造及び非免疫原性が挙げられる。ペプチドライブラリは、合成ペプチドの調製を含めた様々な方法で作り出され得る。スクリーニングは、様々な利用可能なソフトウェアプログラムを使用してコンピュータにより、及び/又は構造的又はその他の分析によって実施されてもよい。B細胞エピトープの不存在は、対象からの血清に対する結合に関するスクリーニングによって決定され得る。
【0133】
TTxペプチド断片ライブラリからのペプチドのスクリーニングでは、配列番号10~13のペプチドを同定した。配列番号14は、実施例1に記載のとおり、キャップド末端を有する配列番号10の誘導体である。これらのうちのいずれか、特に、配列番号10、13及び14が使用され得る。他の好適なペプチドタグを同定するために、実施例1に記載のもの類似の様式で、他のペプチドライブラリがスクリーニングされ得る。
【0134】
先に述べたように、CD4エピトープを含有することはタグ部分にとって有利であり得るので、ペプチドは、斯かるエピトープを含有するように設計され得るか、又は含有するかスクリーニングされ得る。特定のペプチドが、いわゆる普遍的なTヘルパーエピトープを含有すること、そして、斯かるエピトープがタグペプチド内に含まれうることが、特に同定された。普遍的なエピトープは、特定のTTxペプチド、例えば、周知のP2及びP30Tヘルパーエピトープ、で同定され、そして、一実施形態において、タグペプチドは、これらのエピトープの一方又は両方を含んでもよい。別の実施形態において、タグペプチドはCD4エピトープを含むとは限らない。
【0135】
先に記載したように、タグ部分は、抗原に共有結合で連結したタグ部分を含むタグ構築物の一部として提供され得る。連結は、直接的であっても、又は間接的であってもよい、すなわち、タグ部分はリンカーを介して抗原に連結されてもよい。リンカーは、先に記載するとおりのものであってもよい。ある実施形態において、タグ構築物は、すなわち、融合ポリペプチドとして、抗原性ペプチドに連結されたタグペプチドを含んでもよい。融合は、例えば、リンカーペプチドを介して、直接的であっても、又は間接的であってもよい。タグペプチドと抗原ペプチドは、いずれかの順番で連結され得る、すなわち、タグペプチドは、抗原ペプチドのN又はC末端に存在し得る。別の実施形態において、抗原(例えば、腫瘍抗原)は、タグ構築物に埋め込まれている、すなわち、抗原に対してN末端とC端末の両方にタグ部分が存在する。よって、タグ構築物は、タグ部分が構築物のN末端とC末端に配置されるように、タグ部分が両側に配置された抗原を含んでもよい。
【0136】
これにより、コンジュゲートは、タグ部分を含むタグ構築物を非共有結合で結合するために使用され得る。このように、結合タグ構築物によってコンジュゲートに非共有結合で連結した抗原を含む複合体が形成され得る。これにより、複合体は、抗原及びCD40に対する特異的結合分子を含む。タグ構築物は、先に述べたように、合成又は人工的な構築物であるか、或いは人体の外、若しくはより幅広くは、コンジュゲート又は複合体が投与される対象の体外で製造された生物学的な構築物である。従って、本明細書中の複合体は、細胞内若しくは細胞上、例えば対象の体の細胞内若しくは細胞上のインサイチュにおいて、又は分離細胞又は細胞培養の細胞内若しくは細胞上などにおいてコンジュゲートとタンパク質の間の複合体を含まない。それは、コンジュゲートと、哺乳類の対象で生じ得る又は見られ得る天然のタンパク質である哺乳類タンパク質、例えば、細胞の表面で発現され得るタンパク質、との間の複合体を含まない。複合体は単離された複合体として提供される。
【0137】
先に説明したとおり、斯かる複合体は、(細胞表面にCD40を結合することによって)APCを活性化するのに使用され得、さらに、APCに抗原を同時送達する。よって、活性化されると同時に、APCは、抗原を取り込み、加工し、そしてその細胞表面のMHCに提示することを同時に引き起こす。これにより、複合体は、APCと、APCによる抗原提示の同時活性化を可能にする(すなわち、有効にする又は促進する)。APCは、例えば、とりわけDCを含めた、先に列挙した、任意のAPCであってもよい。
【0138】
複合体を使用するAPC活性化は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで実施されてもよい。よって、APCはインビトロ又はエクスビボで複合体とを接触させてもよいか、又は複合体(又はその構成部分)はインビボでAPCを活性化するために対象に投与され得る。そのため、複合体は、医療用と非医療用用途を有し得、そして斯かるすべての用途が本明細書中に包含される。例えば、単離又は培養されたAPCは、例えば、調査、開発又は試験目的のために、研究室環境で、複合体と接触させ得る。これは、コンジュゲートとタグ構築物を予備混合し、複合体を形成し、次にその複合体をAPCに適用することによって、達成され得る。或いは、コンジュゲートとタグ構築物は、複合体がAPC培養内で形成されるように、APCに個別に適用され得る。
【0139】
さらに、先に述べたように、複合体は、T細胞、そして特に抗原を認識するTCRを発現するT細胞、を活性化するのに使用され得る。具体的には、T細胞は、(すなわち、MHCと関連して)APCによって提示されるとき、抗原を認識する。よって、複合体によって活性化された、又は複合体による活性化のためのAPCは、T細胞と接触させられてもよい。よって、例えば、APCは、例えば、複合体(又はその構成部分)の存在下で培養又はインキュベートされ、その後、APCはT細胞と接触させられても、例えば、共同培養されても、又はT細胞の存在下でさらにインキュベートされてもよい。或いは、複合体(又はその構成部分)、APC及びT細胞は、一緒にインキュベート又は共同培養され得る。
【0140】
(治療的及び予防的処置の両方を含む)治療法における使用のために、以下により詳細に記載のとおり、複合体を対象に投与し得る。或いは、コンジュゲートとタグ構築物は、同様に以下で考察されるとおり、複合体がインビボで形成されるように、対象に別々に投与され得る。複合体及び抗原提示によって活性化されたAPCは、提示された抗原を認識するTCRを発現するT細胞をインビボにおいて活性化し得る。
【0141】
これにより、本開示及び発明による複合体の使用は、T細胞が活性化されることを可能にする。これは、特にエフェクターT細胞と、特にCD8+細胞障害性T細胞を含む。これにより、斯かる細胞障害性T細胞(CTL)は、T細胞によって認識される、すなわち、抗原が発現される、細胞を侵襲し、そして破壊するように免疫刺激される。先に述べたように、複合体のタグ部分の一部(又は構成要素)はCD4エピトープを含んでもよく、そのためこれは、CD4+T細胞を活性化するように作用し得る。さらに、抗原は、CD4及び/又はCD8エピトープを含んでもよい。よって、CD4+細胞が活性化され得る。このように活性化されたCD4+細胞は、免疫応答、例えば、内因的に活性化されたCD8+細胞によって媒介された免疫応答、を増大させ得る。ある実施形態において、CD4+及びCD8+細胞の両方が複合体によって活性化され得る。複合体の使用はT細胞の活性化、及び改善されるべき、その標的細胞に対するT細胞反応を可能にし得る。特に、T細胞活性化とT細胞免疫応答は、単独でのCD40(すなわち、親の第一の特異的結合分子)のための特異的結合分子の使用と比較して(例えば、単独で使用したときに、コンジュゲートの同じ第一の特異的結合分子と比較して)、又は、抗原と組み合わせて単独で使用されるとき(すなわち、複合体に結合する構築物で使用される抗原と一緒に第一の親の特異的結合分子(そのままでコンジュゲートの使用される)の混合物を使用するのと比較した場合)、改善され得る。以下の実施例1は、本発明の原理に従って調製したコンジュゲートの作動活性のレベルが、親抗体と比較して増強され得、そして少なくとも親抗体の作動活性のレベルがコンジュゲートによって維持され得ることを実証した。活性化APCの作動活性は、コンジュゲート内の抗体のクラスを変更することによって改善され得る。
【0142】
抗原は、それがCD40担持細胞、特にAPC、例えばDCに送達されることが所望される任意の抗原であってもよい。よって、抗原は、それがAPCに提示されることが所望される任意の抗原であってもよい。これにより、これは抗原であってもよく、そしてそれは、APCによって提示されるとき、T細胞によって認識され、活性化されることが望ましい。治療法との関連において、治療又は予防することが望まれる疾患又は状態に関連している抗原を認識するT細胞を活性化することが望ましい。よって、抗原は、除去するのが望ましい細胞(例えば、その表面上に)によって発現された、又はより特に除去するために標的化するための、抗原であり得る。これにより、抗原は、癌抗原又は感染症に関連している抗原、例えば、病原菌に由来する抗原、であってもよい。これにより、T細胞の標的細胞は、癌細胞であっても、又は病原菌が感染している細胞であってもよい。病原菌は、ウイルスであっても、又は細胞内病原であってもよい。
【0143】
従って、抗原はペプチドであってもよい。よって、抗原は、1若しくは複数の抗原エピトープを含有するペプチドを含んでも、又はそれらから成ってもよい。エピトープは、CD4及び/又はCD8+T細胞エピトープであってもよい。抗原は、癌細胞によって発現されたタンパク質若しくはポリペプチド、又は病原菌、或いはその一部であってもよい。特に、抗原は、癌細胞によって発現された新生抗原、すなわち、癌細胞における体細胞突然変異によって産生される抗原であってもよく、そしてそれは、非発癌細胞によって発現されない。よって、抗原性ペプチドは1若しくは複数の新生エピトープを含んでもよい。斯かる新生エピトープは、例えば、フレームシフト突然変異によって作り出され得る。斯かる突然変異は、マイクロサテライト不安定性(MSI)を示す癌で起こり得る。様々な新生抗原及び新生エピトープが知られており、そして様々な異なる癌に関連して文献に記載されている。これに代えて又はこれに加えて、抗原性ペプチドは、腫瘍関連抗原又は腫瘍ウイルス由来の抗原からの1若しくは複数のエピトープであっても、又はそれらを含んでもよい。また一方、例えば、癌の精巣抗原及びhTERT抗原を含めた、腫瘍関連抗原は、当該技術分野で周知であり、そして文献に広く記載されている。ウイルス抗原もまた周知であり、そして記載されている。
【0144】
既知の、正当性が実証された癌抗原(腫瘍特異的新生エピトープと腫瘍関連抗原の両方)の総覧はオンラインで公的に入手可能である:「癌の抗原性ペプチドデータベース」は https://caped.icp.ucl.ac.be/Peptide/listにてアクセス可能である。腫瘍抗原の大規模なリストはまた、Wang & Wang, Cell Research 27: 11-37, 2017でも提供されている。
【0145】
抗原は、天然に存在するタンパク質であっても、又は天然に存在するペプチド分子の断片若しくは一部であってもよい。或いは、それは、合成ペプチド、例えば、1若しくは複数の異なるエピトープ、例えば一緒に天然に生じないエピトープを含むように設計及び調製されたペプチドであってもよい。斯かる合成ペプチドは、リンカー、又はスペーサー、配列によって直接的又は間接的に連結された2つ以上のエピトープを含んでもよい。斯かる合成エピトープ含有ペプチド(例えば、合成の長いペプチド、SLP)の合成は当該技術分野で知られており、そして既知のSLPペプチドが使用され得る。
【0146】
別の態様において、本発明は、本明細書中に定義及び記載したコンジュゲート又は複合体を含む組成物及び製剤を提供する。ある実施形態において、斯かる製剤又は組成物は、タグ構築物と一緒にコンジュゲートを含んでもよい。コンジュゲート及びタグ構築物は、別々に、又は単一の組成物に一緒に処方若しくは提供されてもよい。よって、本発明は、医薬的に許容される担体又は賦形剤と一緒に、本明細書中に定義される複合体を含む医薬組成物を提供する。同様に、本発明は、本明細書中に定義されるコンジュゲート及び少なくとも1つの医薬的に許容される担体若しくは賦形剤、並びに本明細書中に定義されるタグ構築物を含む医薬組成物及び少なくとも1つの医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。本明細書中に定義されるコンジュゲートとタグ構築物を別々に含む、先に定義されるキット又は組み合わせ製品もまた提供される。斯かるキット及び製品において、コンジュゲート及びタグ構築物は、医薬的に許容される担体又は賦形剤を含む組成物で別々に提供され得る。
【0147】
本明細書中に使用される場合、「医薬的に許容される担体又は賦形剤」としては、任意の及びすべての、生理的に適合する溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗黴剤、並びに等張及び吸収遅延化剤などを含む。
【0148】
好ましくは、担体又は賦形剤は、非経口、例えば、(例えば、注射又は輸液による)皮内、静脈内、筋肉内又は皮下投与に好適である。投与経路に依存して、複合体又はその構成成分は、それを不活化又は変性し得る酸や他の天然の条件の作用から、複合体若しくは内容物を保護するための材料でのコーティングされ得る。
【0149】
好ましい医薬的に許容される担体は、水性の担体又は希釈剤を含む。医薬組成物、キット及び製品に用いられ得る好適な水性担体の例としては、水、緩衝用水及び生理的食塩水が挙げられる。他の担体の例としては、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及び好適なその混合物、植物油、例えばオリブ油など、並びに注射可能の有機エステル、例えばオレイン酸エチルなどが挙げられる。適切な流動性は、例えば、例えばレシチンなどのコーティング材の使用によって、分散液の場合には必要な粒度のメインテナンスによって、及び界面活性化合物の使用によって維持できる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール、例えばマンニトール、ソルビトールなど、又は塩化ナトリウムなどを含むことが望ましい。
【0150】
医薬組成物、製品又はキットはまた、医薬的に許容される抗酸化剤を含んでもよい。それらはまた、例えば保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含んでもよい。微生物の存在の予防は、殺菌手順によって、及び様々な抗菌及び抗黴剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの含有によって確保され得る。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを含むこともまた望まれ得る。加えて、注射可能な医薬形態の持続的吸収が、例えばモノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの吸収を遅らせる剤の含有によって引き起こされ得る。
【0151】
治療組成物は、典型的には、製造及び保管条件下において無菌かつ安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度に好適な他の規則構造として処方され得る。
【0152】
無菌注射剤溶液は、必要に応じて先に列挙された構成要素の1つ又はその組み合わせと共に、適切な溶媒中に必要な量で活性物質(例えば、複合体)を組み込み、続いて、滅菌精密濾過することによって調製された。一般的に、分散液は、基本的な分散媒体と先に列挙されたものからの他の必要な構成要素を含む無菌ビヒクル中に活性物質を組み込むことによって調製される。無菌注射剤溶液の調製のための無菌粉末の場合では、好ましい調製方法は、予め無菌で濾過されたその溶液から活性物質及び任意の所望の追加構成要素の粉末をもたらす、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0153】
医薬組成物、製品及びキットは、追加の有効成分、並びに複合体、又はその成分を含み、例えば、追加の治療薬又は予防薬を含んでもよい。よって、複合体は、例えば、癌治療において、単独療法として、又は併用療法の一部として使用され得る。
本明細書中に記載したキット又は組み合わせ製品が、さらに、取扱説明書を含んでもよい。
【0154】
本明細書中に定義される複合体、又は本明細書中に定義されるコンジュゲートとタグ構築物を含む組み合わせ製品が治療法に使用され得る。本発明の組み合わせ製品は、治療法における同時又は連続した使用のための組み合わせ製品として本明細書中に定義されるコンジュゲートと、本明細書中に定義されるタグ構築物を含む。すなわち、本明細書中に開示された組み合わせ製品を本発明に従ってすなわち、治療法で、使用するとき、コンジュゲートとタグ構築物が、同時又は連続して対象に投与される。「同時」投与とは、本明細書中に使用される場合、2つの成分が、同じ投与経路によって及び実質的に同じ位置にて、同時に又は少なくとも実質的に同時に対象に投与されることを意味する。「連続」投与とは、本明細書中に使用される場合、2つの成分が別々の時に対象に投与されることを意味する。特に、第一の成分の投与は、第二の成分の投与を開始する前に完了した。
【0155】
本発明の性質のため、2つの成分の連続投与は、両方(すなわち、コンジュゲートとタグ構築物)が同じ経路によって、そして実質的に同じ位置にて投与されるのを必要とする。さらに、コンジュゲートとタグ構築物の投与は、時間的に間隔をあけてもよく、両成分が投与されたとき、投与の間隔は、複合体が形成されることができるくらいでなければならない。よって、例えば、両成分は、互いに1時間以内に、又はより特に互いに40、30、20、15、10、8、7、6、5、4、3、2、1又は0分以内に投与され得る。
【0156】
治療目的で対象に投与される本発明の複合体の言及は、複合体の両成分(すなわち、本発明のコンジュゲートと本発明のタグ構築物)を含む予混合組成物(例えば、溶液)を指すと理解され、そしてその成分は、複合体及びその2つの個々の成分を含む動的平衡状態で存在し得る。
【0157】
治療法は、治療的であっても、又は予防的であってもよい。これにより、複合体(そして、組み合わせ製品)は、治療ワクチン又は予防ワクチンとして使用され得る。治療への適用では、複合体又は組成物は、状態又はその症状のうちの1若しくは複数を治す、緩和する又は部分的に止めるのに十分な量で、障害又は状態にすでに罹患している対象に投与される。斯かる治療処置は、病徴の重症度の軽減、又は無症状期間の頻度若しくは継続期間の延長をもたらし得る。これを達成するために適当な量は「治療的有効量」と定義される。所定の目的のための有効量は、疾患若しくは状態の重症度、並びに対象の体重と全身状態による。
【0158】
予防処置は、状態の予防、又は状態の発症若しくは開始の遅延を含んでもよい。例えば、複合体は、感染症を予防するか、感染症が発症し得る程度を低減するか、癌が発症又は再発する程度を予防、遅延若しくは低減するか、或いは例えば、転移癌の程度を予防若しくは低減することに使用され得る。
【0159】
本明細書中に使用される場合、「対象」という用語は、任意のヒト又は非ヒト動物対象を含む。対象は、特に哺乳類の対象であってもよい。特に、対象はヒトであっても、或いは実験動物、家畜、競技動物又は動物園の動物などであってもよい。これにより、それは、霊長目動物又は齧歯動物であってもよい。好ましい実施形態において、対象はヒトである。先に述べたように、本発明は、獣医学で使用されてもよく、その場合、対象は非ヒト哺乳類である。特定の実施形態において、対象はイヌであってもよく、その場合、先に記載したように、本発明のイヌコンジュゲートが使用され得る。
【0160】
特に、複合体(及び組み合わせ製品)は癌の治療又は予防に有用であり得る。癌とは、悪性又は前癌状態の新生物状態を意味する。これにより、癌は、任意の臓器、組織若しくは細胞タイプの任意の癌であり得る。固形腫瘍として存在する癌、又は固形腫瘍を示さない癌が含まれる。従って、造血性癌が含まれる。
【0161】
癌は、前立腺癌、乳癌、結腸直腸癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、子宮頚癌、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、多発性骨髄腫、白血病、急性リンパ芽球性白血病、黒色腫、膀胱癌、頭頚部癌、リンパ腫、神経膠芽腫、又は皮膚癌であってもよい。それはまた、副腎の癌、骨の癌、脳の癌、食道の癌、眼の癌、胃癌、口腔癌、陰茎癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌、及び腟癌であってもよい。マスト細胞腫瘍及び血管肉腫もまた本発明により治療され得る。イヌの治療法の場合では、本発明は、イヌ伝染性性器腫瘍(CTVT)、或いはイヌ黒色腫又は他のイヌ悪性腫瘍の治療に使用され得る。
【0162】
癌は、新たに診断され、治療のための投薬を受けていなくてもよく、或いはそれは、再発若しくは難治性の、又は再発且つ難治性の、原発性又は転移性のものであってもよい。
先に説明したように、コンジュゲート、したがって、複合体中に含まれるCD40結合剤は、CD40を作動することによって免疫系を活性化する。特に、T細胞が活性化され得る。その後の免疫応答は、腫瘍によるCD40発現に関係なく、隣接しているか又は接触可能な腫瘍細胞に対して抗癌効果を発揮する。そのため、複合体は、CD40陽性癌及びCD40陰性癌の両方に対して有効であり得る。
【0163】
CD40結合剤によって提供される作動性免疫活性化効果に加えて、複合体はまた抗原も提供し、そしてそれは、加工され、そして活性化されるT細胞に提示され得、これにより、抗原を発現する標的癌細胞をT細胞が免疫刺激し得る。
【0164】
これは、癌抗原の存在が低いか又は低減される、例えば、腫瘍が外科的に摘出された状況において、又は抗CD40治療薬が腫瘍内に送達されることができない場合において、特に利益なものであり得る。複合体は、活性化作動性シグナル付近の癌抗原を提供するための手段を提供する。
【0165】
癌抗原は、対象及び特定の癌に基づいて選択され得、これにより、個別化された医薬を可能にする。例えば、対象の癌は、遺伝子プロファイリングにかけられてもよく、選択されるべき好適な抗原を可能にする。そこから好適なタグ構築物が対象の癌型に依存して調製又は選択され得る、抗原又は抗原を含めたタグ構築物のバンク若しくはライブラリが提供され得る。
【0166】
複合体(及び組み合わせ製品)もまた、感染症の治療又は予防に有用であり得る。本発明は、ウイルス感染、特に例えば、エプスタイン-バールウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス(例えば、HHV6)、パルボウイルスB19、ヒトパピローマウイルス(HPV)及びRoss Riverウイルスによって引き起こされる感染症など、の治療法において使用されてもよいが、しかしながら、あらゆるウイルス感染が、原則として、本発明により治療され得る。細胞内への細菌感染、例えば、ブルセラ病(ブルセラ属の細菌種によって引き起こされる)、Q熱(コクシエラ・バーネティイ(Coxiella burnetii)によって引き起こされる)、例えばクラミジアなどのクラミジア種によって引き起こされる疾患(クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)によって引き起こされる)及び肺炎(クラミジア・ニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)によって引き起こされる)、ハンセン病(マイコバクテリウム・レプレ(Mycobacterium leprae)及びマイコバクテリウム・レプロマトーシス(Mycobacterium lepromatosis)によって引き起こされる)、並びに播種性結核(結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる)を含めた結核、もまた本発明により治療され得る。リーシュマニア症(リーシュマニア属のトリパノゾーマによって引き起こされる)及びトキソプラズマ症(アピコンプレクサ門トキソプラズマ・ゴンジィイ(Toxoplasma gondii)によって引き起こされる)を含めた、細胞内の真菌又は原虫感染症もまた当該発明によって治療され得る。
【0167】
抗原(例えば、癌抗原又は病原菌誘導抗原)は、治療されるべき対象のT細胞の特定のサブセットによって認識されるように選択されてもよく、そして、T細胞は、選ばれた抗原を認識することは知られているTCRを発現する。特に、抗原は、それが治療されるべき対象の養子細胞療法で使用されるT細胞によって認識されることに基づいて選択され得る。
【0168】
例えば、養子細胞療法では、T細胞は対象由来であり、そして着目の抗原を認識するT細胞を単離した。次に、単離されたT細胞は、増やされ及び/又は別の方法で処理されて、それらのエフェクター機能性が刺激され、次に、治療されるべき対象に再注入される。このような関係においては、再注入されたT細胞によって認識された抗原は、タグ構築物で使用され得る。次に、本発明の複合体は、抗原が再注入されたT細胞を活性化するように、対象に投与され得る。
【0169】
或いは、T細胞は、治療される対象又はドナーに由来してもよく、そして標的抗原を認識するTCRを発現するように遺伝子を組み換えられてもよい。次に、遺伝子を組み換えT細胞は、増やされ及び/又は別の方法で処理されて、それらのエフェクター機能性が刺激され、次に、治療されるべき対象に注入(再注入)される。このような関係においては、遺伝子を組み換えT細胞によって認識された抗原は、タグ構築物で使用され得る。次に、本発明の複合体は、抗原が注入されたT細胞を活性化するように、対象に投与され得る。
【0170】
そこで本発明の複合体の投与がが養子細胞療法と組み合わせられる方法は、その場合、タグ構築物で使用される抗原が癌抗原である癌治療において特に有用である。
【0171】
従って、特定の実施形態において、本発明は、対象の癌を治療する方法を提供し、その方法は、以下の:
(i)対象からT細胞を得;
(ii)標的癌抗原を認識するT細胞を単離し、そして任意選択で、単離されたT細胞を増やし;
(iii)単離されたT細胞を対象に再注入し;そして
(iv)本発明の複合体を対象に投与すること;ここで、タグ構築物は標的癌抗原を含む、
を含む。同様に、ステップ(iv)では、対象は、本発明のコンジュゲートと本発明のタグ構築物を別々に投与される場合が或いはあるであろう。
【0172】
別の実施形態において、本発明は、対象の癌を治療する方法を提供し、その方法は、以下の:
(i)対象又はドナーからT細胞を得;
(ii)標的癌抗原を認識するTCRを発現するT細胞の遺伝子を組み換え、そして任意選択で、遺伝的修飾前又は後にT細胞を増やし;
(iii)遺伝子を組み換えたT細胞を対象に注入し;そして
(iv)本発明の複合体を対象に投与すること、ここで、タグ構築物は標的癌抗原を含む、
を含む。同様に、ステップ(iv)では、対象は、本発明のコンジュゲートと本発明のタグ構築物を別々に投与される場合が或いはあるであろう。
【0173】
先に述べたように、タグ部分は、(少なくとも特定の個体における)ヒトB細胞エピトープを含んでもよく、又はそのタグ部分に対する抗体は、曝露中に経時的に開発され得るが、そのタグ部分は、治療される対象の内因性循環抗体に比べて、第二の特異的結合分子によってより強力に結合され得る。ある実施形態において、治療される対象の内因性循環抗体によって結合されるタグ部分は、それらの相互作用を伴う、本発明による1若しくは複数の第二の特異的結合分子と、治療される対象の内因性循環抗体とのそれらの相互作用の強度を比べるために分析され得る。内因性循環抗体に比べてより強力な本発明による第二の特異的結合分子を結合するタグ部分が選択される。次に、対象は、選択されたタグ部分と、そのタグ部分を結合する関連する第二の特異的結合分子を含むコンジュゲートとの組み合わせが投与される。
【0174】
別の実施形態において、B細胞エピトープを含むタグ部分が対象に投与されて、高親和性、すなわち、低いKd、でそのタグ部分を結合する第二の特異的結合分子を含むコンジュゲートと組み合わせて治療され得、そしてそれは、内因性抗体が組み合わせの投与後にコンジュゲートとタグの相互作用を妨害させない。高親和性でタグ部分を結合する第二の特異的結合分子の使用は、対象の内因性抗体によるタグの結合が妨害されること、又は斯かる内因性抗体が交換されるのを第二の特異的結合分子が回避することを可能にする。
【0175】
上記の実施形態において、本発明によるコンジュゲートとタグ構築物の組み合わせを利用する治療法に関する言及は、本発明による複合体の形態での成分の同時投与と、2つの成分の別々の投与の両方を含む。
【0176】
よって、ある実施形態において、本発明は、対象の癌又は感染症を治療又は予防する方法であって、以下の:
i)高親和性で相互作用するタグ部分と第二の特異的結合分子を同定し;
ii)(i)の第二の特異的結合分子、(i)のタグ部分を含むと本発明のタグ構築物及び抗原を含む本発明のコンジュゲートを選択し;そして
iii)(ii)のタグ構築物と(ii)のコンジュゲートとの組み合わせを対象に投与すること、
を含む方法を提供する。
【0177】
この方法は、タグ部分が対象の内因性抗体によって結合されるのと比べて、より高い親和性でタグ部分を結合する第二の特異的結合分子を含むコンジュゲートの利用と見なされ得る。
【0178】
先に述べたように、本発明の複合体、コンジュゲートと又はタグ構築物は、単独療法として、又は他の治療薬との組み合わせで使用され得る。よって、癌治療では、もう片方の治療薬は、多数のそのクラスが当該技術分野で知られている、例えば化学療法薬などの抗癌剤、又は例えばインターフェロン、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1、-PD-L1又は-CTLA4抗体)及び他の免疫促進剤(例えば、抗OX40作動性抗体)を含む免疫薬であってもよい。他の治療薬、例えば、抗増殖性若しくは抗炎症性サイトカイン、及び抗増殖性因子、免疫調整因子若しくは血液凝固に影響を及ぼす因子、又は血管新生の阻害剤が、癌又は実際は感染症の治療で有益であり得る。感染症の治療のための、他の(第二の)治療薬は、例えば、抗微生物剤、抗生物質、抗真菌又は抗ウイルス剤であってもよい。
【0179】
複合体、又は複合体を含む組成物、又はそのコンジュゲート及びタグ構築物成分を、当該技術分野で知られているさまざまな方法のうちの1若しくは複数を使用した1若しくは複数の投与経路を介して投与し得る。同様に、コンジュゲートとタグ構築物は、これらの同じ方法によって個別に投与され得る。当業者に理解されるとおり、投与の経路及び/又は様式は、所望の成果によって変化する。好ましい投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄又は例えば、注射又は輸液による、例えば、腫瘍の部位への直接的な、その他の非経口投与経路が挙げられる。「非経口投与」という語句は、本明細書中で使用される場合、通常、注射による、経腸及び局所投与以外の投与様式を意味する。或いは、例えば局所、表皮又は粘膜投与経路などの非経口(non-parenteral)経路が使用され得る。腫瘍周囲、腫瘍近傍(juxtatumoral)、腫瘍内、病巣内、病巣周囲(perilesional)、腔内注入、膀胱内投与及び吸入を含む局所投与もまた好ましい。しかしながら、複合体又は組成物はまた、全身的に投与されてもよい。
【0180】
コンジュゲートとタグ構築物が個別に投与される、すなわち、それらが最初に予混合されて複合体を形成するわけではない実施形態において、コンジュゲートとタグ構築物は同じ経路を介して投与されなければならない。好ましくは、それらは共に、2つの成分が投与直後に混合され、これにより組み合わせられて複合体を形成するように、同じ(実質的に同じ)部位にて、局所的に、例えば、皮内に投与される。これらの実施形態において、2つの成分は、同時又は次々と迅速に、対象に投与され、そして、第一の成分の投与と第二の成分の投与の間の遅延を回避しなければならない。これが、第一の成分が分解される又は投与部位から過度に拡散される前に第二の成分が投与され、そして複合体形成を確実にする。
【0181】
本発明の抗体の適した投与量は、熟練した医師によって決定されうる。本発明の医薬組成物及び製品中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者にとって毒性ではない、個々の対象、すなわち、患者、組成物及び投与方法についての所望の治療的応答を達成するのに有効である有効成分の量を得るために変更してもよい。選択される投与量レベルは、使用される特定の複合体/コンジュゲートの活性、投与経路、投与時間、複合体の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と組み合わせて使用されるその他の薬物、化合物及び/又は材料、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康及び以前の病歴及び医術において周知の同様の因子を含む種々の薬物動態因子に応じて変わる。
【0182】
本発明の複合体(又はコンジュゲート)の適した用量は、例えば、約0.1μg/治療されるべき患者の体重1kg~約100mg/治療されるべき患者の体重1kgの範囲であり得る。例えば、適した投与量は、1日あたり約0.1μg/kg~約10mg/kg体重又は1日あたり約10μg/kg~約5mg/ kg体重であり得る。
【0183】
投与計画は、最適の所望の応答(例えば、治療的応答)を提供するように調整してもよい。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよい、又は治療状況の緊急事態によって示されるように、用量を比例的に減少又は増大してもよい。投与の容易性及び投与量の均一性のために、非経口組成物を投与単位剤形に製剤化することは特に有利である。投与単位剤形とは、本明細書において、治療されるべき対象の単位投与量として適している物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果をもたらすように算出された活性化合物の所定の量を含有する。
【0184】
複合体/コンジュゲート及びタグ構築物は、単回用量で投与しても、複数回用量で投与してもよい。複数回用量は、同一又は異なる位置へ、同一経路によって投与しても、異なる経路によって投与してもよい。或いは、複合体を、持続放出製剤として投与でき、この場合には、あまり頻繁ではない投与が必要とされる。投与量及び頻度は、患者における抗体の半減期及び望まれる治療期間に応じて変わり得る。投与量及び投与の頻度はまた、治療が予防的であるか、治療的であるかに応じて変わり得る。予防的適用では、比較的低い投与量を、比較的低頻度の間隔で長期間にわたって投与してもよい。治療的適用では、比較的高い投与量を、例えば、患者が疾患の症状の部分寛解又は完全寛解を示すまで投与してもよい。
【0185】
例示的な投薬量レジームでは、複合体(又はコンジュゲートとタグ構築物の組み合わせ)は、2~10回繰り返されるサイクルで、1週間に1度、2週間に1度又は3週間に1度、対象に投与される。
【0186】
2種以上の薬剤の組み合わされた投与(併用投与)は、いくつかの異なる方法で達成してもよい。一実施形態では、複合体及びその他の薬剤を、単一組成物で一緒に投与してもよい。別の実施形態では、複合体及びその他の薬剤を、組み合わされた(併用)療法の一部として別個の組成物で投与してもよい。例えば、複合体を、その他の薬剤の前に、その後に又はそれと同時に投与してもよい。本発明の複合体を、腫瘍標的化複合体、標的療法、経路阻害剤又は例えば、PD-1、PD-L1、CD137、GITR、OX40、CTLA-4、CD27、HVEM、LtBR及びLAG3と組み合わせて、又はそれと連続して投与してもよい。さらに、複合体はまた、局所放射線照射と組み合わせてもよい。同様に、コンジュゲートとタグ構築物を個別に対象に投与するとき、斯かる付加療法は同時投与され得る。
本発明は、以下の実施例によってさらに例示されが、該実施例は、限定と理解されるべきものではない。
【実施例】
【0187】
実施例1
材料と方法
細胞
マウスClass I MHC H2との関連でオボアルブミンペプチドOVA257-264(SIINFEKL、配列番号1)を認識するTCRを発現するマウスT細胞ハイブリドーマであるB3Z(Karttunen et al., PNAS 89(13): 6020-6024, 1992)を、ペプチド添加とその後の抗原提示を評価するために使用した。B3Z細胞はIL-2プロモーターの制御下でβ-ガラクトシダーゼを発現し、これにより、T細胞活性化と増殖時に、酵素を発現する。β-ガラクトシダーゼは基質クロロフェノールレッド-β-D-ガラクトピラノシド(CPRG)を加水分解でき、そしてそれは、B3Z T-細胞活性化のレベルに対応する度合いで色の変化につながる。したがって、B3Z活性化は、分光測光で検出及び計測できる。
【0188】
Pmel-1マウス(Jackson Laboratory (USA)、以下でさらに説明されるマウス系統005023)は、マウスClass I MHC H2Dbとの関連でマウスgp100(25-33)ペプチド(配列番号2、黒色腫抗原gp100のアミノ酸25~33)に特異的なTCRを発現する、及びまた、H2Dbとの関連で対応するヒトgp100配列も認識するT細胞をもつトランスジェニックマウスである。Pmel-1T細胞を、成熟Pmel-1マウスからの脾臓及び鼠径リンパ節を摘出することによって単離した。これらの臓器を、70μmの細胞濾過器に対してそれらを刻み、続いて、細胞を細胞濾過器に通して通過して単独の細胞懸濁液を実現した。T細胞を単離し、そして単離したT細胞を養子T細胞移入実験に使用した。
【0189】
抗体とペプチド
抗CD40抗体を、Drug Discovery and Development(DDD)Platform、SciLifeLab(Sweden)によって製造するか、又はCP-870,893やABS-1150/1151(或いは本明細書中でABS-1150と呼ばれるときもある)の利用可能な軽鎖及び重鎖配列に基づいてAbsolute抗体(UK)からカスタム購入した。9つの二重特異性抗CD40抗体と6つの親作動性ヒト抗CD40抗体を試験した。表1に使用した抗体を記述した。抗体をHEK293細胞で発現させ、プロテインAを使用したアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、続いて、調製用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。エンドトキシン濃度は、LAL色素エンドトキシンアッセイで測定すると、<1 EU/mgであった。合成長ペプチド(SLP)を、Capra Science(Sweden)からカスタム購入した。表2に使用したSLPのアミノ酸配列を提供した。
【0190】
マウス
成熟C57BL/6マウス及び雄Pmel-1トランスジェニックマウスを、Uppsala Biomedical Center(BMC, Uppsala, Sweden)の動物飼育施設にて飼育した。すべての動物実験が、Uppsala地域の動物倫理委員会によって承認された。
【0191】
骨髄細胞の単離と骨髄樹状細胞(BMDC)の分化
骨髄細胞を、成熟雌tghCD40マウス(Mangsbo et al., Clin Cancer Res; 21(5); 1115-1126, 2015)の大腿骨と脛骨から無菌状態下で単離した。tghCD40からのBMDCはヒトCD40を発現する。軟組織の除去後に、骨を70%のエタノール中で消毒し、次に、骨の骨端を切り開くことによって骨髄を露出させた。骨の中心部が白くなるまでIMDM培地を使用して、骨髄細胞を骨から洗い流した。細胞塊を、70μmの細胞濾過器に通して単一細胞の懸濁液を得た。細胞を遠心分離で洗浄し、次に、10%のDMSOを追加したFBS中で-160℃にて使用時まで凍結した。
【0192】
BMDC分化のために、骨髄前駆細胞(先に記載したように単離する)を、解凍し、そして20ng/mlのmGM-CSFの存在下、完全IMDM培地(すなわち、10%のFBS、1%のペニシリン/ストレプトマイシン、1%のHEPES及び0.5%の2-メルカプトエタノールを補充したIMDM培地)中、2.5×105細胞/mlの濃度にて、非組織培養処理(TCT)プレート内で8日間培養した。半分の培地を3日目と6日目に交換し、20ng/mlのmGM-CSFを含む新しい完全IMDMに置換した。8日目に、予め加温したIMDM培地でプレートをゆるやかに洗浄することによって細胞を採集し、フローサイトメトリーを実施して、DC分化マーカー(CD11bとCD11c)及び活性化マーカー(CD86とMHC-II)を検出した。
【0193】
BMDCの成熟と活性化プロトコル
骨髄前駆細胞の分化の8日後に、96ウェルTCTプレート内に1ウェルあたり1×105個の未成熟BMDCを平板培養した。抗CD40抗体(表1を参照のこと)を500~0.0064nMの範囲に及ぶ濃度にて各ウェルに添加した。BMDCを、20ng/mLのmGM-CSFを補充したIMDM培地中で48時間培養し、その後、上清を回収し、IL-12に対するELISAを実施して、様々な抗体の作動性刺激能力を算定した。正の対照として、IL-12 ELISAを、(抗体の代わりに)1μg/mlのLPSの存在下で上述のとおり培養したBMDCの上清に対して実施し;陰性対照として、ELISAをIMDM培地に対して実施した。試験を二重反復試験でおこなった。
【0194】
【0195】
「scFvを付加する位置」とは、scFvが取り付けられる親抗体上の位置を意味する。取り付けは、ペプチドリンカー(配列番号49)を介しておこなう。IgG2のC127S変異体は、IgG2B立体構造内に固定され、IgG2抗体が免疫応答を開始する能力を高めることがわかった(White et al., Cancer Cell 27: 138-148, 2015)。
【0196】
抗体ABS-1150とCP-870,893のVH及びVL配列を、それぞれ配列番号23、24、27及び28に示す。ヒトIgG1、IgG2定常ドメイン、並びにヒトκ及びλ定常ドメイン配列をそれぞれ配列番号41、42、45及び46に示す。scFvs 14GIIICII-b、IBIIICI-b及びFITC-8の配列をそれぞれ配列番号47、48及び70に示す。
【0197】
インビトロT細胞活性化アッセイ
骨髄前駆細胞の分化の8日後に、25,000個の未成熟BMDCを96ウェルTCTプレート内でウェル単位で平板培養した。先に記載した様々な抗CD40抗体のうちの1つと組み合わせて、125nM又は250nMのいずれかの濃度にてUU-05又はUU-10SLP(表2)を含む混合物を、未成熟BMDC培養物に加えた。24時間後に、ペプチド/抗体混合物を含有する上清を、採集し、そしてBMDCに対する最小限の侵害で予め加温したIMDMを用いた遠心分離によってウェルを二度洗浄した。
【0198】
B3Z T細胞をBMDCに加え、そして、共培養物をさらに24時間インキュベートし、その後、その細胞を溶解バッファー(100mMのβ-メルカプトエタノール、0.125%のIGEPAL CA-630、9mMのMgCl2、及び1.8μg/mlのCPRG)の添加によって溶解した。細胞を溶解して、β-ガラクトシダーゼがCPRGに接触できるようにした。色変化を、溶解バッファー中での6時間のインキュベーション後に、595nmにて培地の吸光度を読み取ることによって測定した。
【0199】
【0200】
インビボ実験の設定
成熟雌C57BL/6マウス(18~20g重量)をインビボ抗原取り込みモデルに使用した。C57BL/6マウス群(1群あたり6~10匹のマウス)は、0日目に尾静脈注射によってPmel-1マウス(i.v.)からの11×106個の脾細胞、及び1×105個のtghCD40未成熟BMDC(右側足蹠注射)を受けた。1日目に、UU-30ペプチド(gp100(25-33)配列を含有、表2)と一緒の抗CD40抗体の様々な組み合わせを右側足蹠で注射して、インビボにおけるペプチド取り込みを調査した。72時間後に、脾臓及び右側膝窩リンパ節を摘出し、70μmの細胞濾過器を通過させて単一細胞の懸濁液を得た。Pmel-1細胞蓄積と活性化を、CD90.1(宿主T細胞で発現されていない類遺伝子性マーカー)を染色したフローサイトメトリーによって膝窩リンパ節で評価した。結果の統計解析を、Dunnettの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAを使用して実施した。
【0201】
フローサイトメトリー
以下のBiolegend(USA)製の蛍光標識抗体をフローサイトメトリー(クローン)に使用した:CD11c(N418)、CD11b(M1/70)、CD90.1(OX-7)、ICOS(C398.4A)、I-A/I-E(M5/114.15.2)、CD86(GL-1)。BD Biosciences(USA)製のhCD40(5C3)抗体もまた、フローサイトメトリーに使用した。フローサイトメトリー染色において、1~5×105個の細胞を、遠心分離によってフローサイトメトリーチューブ/プレート内でペレット化し、その後、抗体染色カクテルを細胞に添加した。細胞を4℃にて20分間インキュベートし、次に、1%のBSAを補充したPBSで洗浄した。細胞を、CytoFLEX Flow Cytometer(Beckman Coulter Life Science、USA)に流し込んだ。
【0202】
IL-12のELISA
ELISAプレートを、4℃にて一晩、精製抗マウスIL-12抗体(クローンC15.6、Biolegend)でコートした。プレートを、1%のBSAを補充したPBSでブロッキングし、その後、直線領域内の予想される読み出しのために好適な濃度に希釈した。培養上清をELISAプレートに加えた。その後、二次ビオチン化抗マウスIL-12(クローンC17.8、Biolegend)を加え、次に、ストレプトアビジン/HRP(Code No.P0397、Dako/Agilent, USA)を加え、そして、プレートを室温にて1時間インキュベートした。最後に、ELISA反応をTMB(34028, Sigma, USA)の添加によって進め、次に、反応を1MのH2SO4で停止させた。吸光度を450~570nmにて読み出した。
【0203】
データ分析
フローサイトメトリーからのデータを、FlowJoソフトウェア(FlowJo, LLC, USA)を使用して分析した。GraphPad Prism7(GraphPad Software, USA)を使用して、グラフをプロットし、そして統計解析を実施した。
【0204】
タグペプチドの選択
破傷風毒素ペプチドライブラリ(103個のペプチド、WO2011/115483の表1に列挙した)を、以下の特性を有するαヘリックス構造のペプチドをスクリーニングするために使用した:
・良好な溶解性
・好ましくは、タグ配列に対する内因性抗体応答がない。
【0205】
ペプチド構造を予測するために、以下のソフトウェアは使用した:JPRED4(http://www.compbio.dundee.ac.uk/jpred4; Drozdetskiy et al., Nucleic Acids Res 43(W1): W389-W394, 2015)及びPASTA2.0(http://protein.bio.unipd.it/pasta2; Walsh et al., Nucleic Acids Res 42(W1): W301-W307, 2014)。溶解性を予測するために、Innovagenペプチド溶解性計算機を使用した(https://pepcalc.com/peptide-solubility-calculator.php)。破傷風毒素タンパク質中の着目のペプチドの位置を、破傷風毒素結晶構造に関するPDB ID5n0bを使用した、PDBsum(European Bioinformatics Instituteウェブサイト( https://www.ebi.ac.uk/ )を通じて利用可能)を使用して分析した。
【0206】
円偏光二色性(CD)分光法
CD分光法を実施するために、着目のペプチドを50mMのリン酸ナトリウム、pH6で0.2mg/mlの濃度に溶解した。JASCO J-1500 CDスペクトロメーターを使用し、そして分析前と各分析の間に、キュベットを水ですすいだ。各ペプチドの間には、Hellmanex 2%をキュベットを洗浄するのに使用した。バッファーをベースラインの計測のために使用した。
【0207】
タグペプチドのELISA
ビオチン化ペプチドをストレプトアビジンプレート上にコートし、次に、ELISAプレートをBSA含有溶液でブロッキングした。ブロッキング後に、ペプチドを、様々な濃度にてジフテリア、破傷風及び百日咳に対するワクチン接種前及び後のドナーからの血清と共にインキュベートし、それに続いて、抗ヒトIgG HRP抗体を、ペプチドに結合するヒト抗体を検出するために使用した。アッセイをTMBを使用して進め、反応を停止させるために、H2SO4を使用する。
【0208】
結果
インビトロBMDCとT細胞の活性化
BMDCのインビトロ活性化を、以下の濃度範囲にて二重特異性、かつ、親モノクローン抗体を使用して評価した:0.0064nm、0.032nm、0.16nm、0.8nm、4nm、20nm、100nm及び500nm。
BMDCとT細胞のインビトロ活性化を、表1で列挙した10個の二重特異性抗体及び6つの対応する親モノクローナル抗体を使用して試験した。このインビトロ作業の結果を、以下の表3に規定する。
【0209】
抗体の一過性の産生をHEK293細胞で実施し、そして、抗体調製を、低/無エンドトキシン状態、かつ、>95%の単量体画分を確認した。安定性評価と併せてSPRとELISA(一重及び二重標的分析)を実施し、そして、すべての抗体が、親抗体の範囲内の親和性を有し、そしてこれらによる標的に結合した。抗体構築物を、先に記載したように、作動性特性と抗原負荷容量(T細胞活性化で計測される)に関して機能的に評価した。作動性特性を、先に列挙した濃度範囲の抗体構築物と細胞のインキュベーションに続く、IL-12 ELISAによって、hCD40トランスジェニックマウスのBMDCによって産生されるIL12p40レベルを計測することによって評価した。それぞれの抗体構築物とのインキュベーション中にBMDCによって産生されたIL-12p40の量を
図1に示す。それぞれの抗体構築物によって示される作動活性のレベル(すなわち、それぞれの抗体構築物によって引き起こされるDC活性化のレベル)を、
図1に示した結果に基づいて表3にまとめる。
【0210】
【0211】
先に示したとおり、CP-870,893抗CD40抗体に基づく二重特異性構築物に関して、作動活性のレベルは、取り付けられたscFvに依存し得る。特定のscFvsが、親抗体(例えば、Bi-1、Bi-2及びBi-3(それぞれが14GIIICII-b scFvを含む)並びにBi-7(IBIIICI-b scFvを含む)を参照のこと)に対して抗体構築物の作動能力を大いに高めることがわかったが、他のものは、親抗体の活性をまねる(Bi-17(抗FITC scFvを含む)を参照のこと)。IgG2親抗体は、IgG1親抗体に比べて、より高いレベルの作動活性を有し、そして、二重特異性デザインでは、IgG2アイソタイプはまた、IgG1アイソタイプを使用した二重特異性デザインに比べて、より高い活性を示す。IgG2構造内に柔軟性のないヒンジを引き起こす突然変異は、(天然IgG2アイソタイプとIgG2 C127Sアイソタイプを用いた結果と比較して)天然IgG2配列に対して作動活性を改善しない。また、表3にも示されるとおり、その作動活性レベルに対する、ABS-1150の抗CD40抗体へのscFv取り付けの効果はそれほど顕著ではなかった。
【0212】
T細胞活性化アッセイにおいて、UU-05ペプチド(配列番号3)を伴った関連抗体構築物を含む混合物と共に、BMDCをインキュベートした。UU-05は、そのN末端に、ペプチドタグとして機能する最小量の破傷風毒素エピトープ(MTTE)を含む。MTTEは破傷風毒素(TTx)α鎖の短い断片であり、そしてそれは、B細胞エピトープを含むのに必要な最小限の配列を含み、これにより、それに対して抗体が生じ得る。MTTEの識別はWO2011/115483に記載されている。UU-05のペプチドタグとして使用されるMTTEは、配列番号6に規定されるアミノ酸配列を有する:配列番号6のMTTEは、ヒトの天然ヒトB細胞エピトープであり(特に、ヒトはTTdを用いてワクチン接種した)、特に、マウスがワクチン接種で破傷風トキソイドに晒されない限り、マウスは配列番号6のMTTEに対する抗体を有していない(すなわち、当該実験構成において、マウスは、斯かる抗体の産生が引き起こされなかった場合、MTTEに対する内因性抗体を有しない)。C末端直近からMTTEには、配列番号7に規定されるアミノ酸配列を有するオボアルブミン(OVA)断片が位置し、そしてそれは、配列番号1のOVAエピトープを含む。UU-05のC末端、即時C末端直近からオボアルブミン断片は、配列番号8に規定されるアミノ酸配列を有する。
【0213】
24時間後に、BMDCを洗浄し、そして、先に記載したように、B3Z T細胞を加えた。先に詳述したように、B3Z T細胞は、H-2KbマウスMHC Iに提示されたとき、配列番号1のOVAペプチドを認識する。それらの同族ペプチド/MHCの認識により、T細胞は活性化される。活性化は、先に記載したように、細胞によるβ-ガラクトシダーゼの産生に基づいて分光測光で定量化されるが、それは、IL-2プロモーターの制御下にある(そしてこれにより、細胞が活性化されたとき、発現する)。表3に示すとおり、抗体構築物及び抗原性ペプチドUU-05と予めインキュベートしたBMDCと、B3Z T細胞のインキュベーションが、T細胞活性化をもたらした。対照として、BMDCを、抗原性ペプチドUU-05を含まないが、代わりにUU-10を含む抗体混合物と共にインキュベートした。B3Z T細胞とこれらのBMDCのインキュベーションの後に、T細胞の活性化をもたらさなかった。
【0214】
タグペプチドがペプチドの添加によってT細胞活性化を改善することを実証するために、BMDC/T細胞共培養実験を上述のとおり実施し、そしてそこでは、BMDCを、125nM又は250nMのいずれかの濃度にて、様々な抗体構築物(それぞれ10nM)及びUU-05又はUU-10ペプチドのいずれかと共にインキュベートした。UU-10ペプチド(配列番号4)は、UU-05と同じOVA断片及びC末端を含むが、N末端MTTEタグを欠いている。これは、UU-05が二重特異性構築物の抗MTTE scFvsによって結合するが、UU-10は結合できず、発明者の「引き込み」ストラテジーの成功を評価できることを意味する。
【0215】
(達成されたT細胞活性化のレベルに関する)実験の結果を
図2に示す。図面は、二重特異性コンジュゲートのscFv部分と相互作用できる(すなわち、それがscFvによって結合される)タグを抗原性ペプチドが含むときに限り、T細胞の活性化が起こり、そして、DCが抗体と抗原の単純混合物と接触するとき、それが起こらないことを例示する。特に、デザインにかかわらず、すべての二重特異性構築物、抗CD40抗体又はscFvは、同じ抗原性ペプチドと親抗体バージョンの適用と比較して、タグ付与した抗原性ペプチドを伴ったDCに適用するとき、T細胞活性化の改善を示した。表3に提示したT細胞活性化のレベルは、
図2に提示したデータに基づいている。
【0216】
インビボにおけるT細胞の活性化
マウスには、先に記載したように、Pmel-1T細胞を投与し、続いて、抗原性ペプチドUU-30と組み合わせた抗CD40抗体を投与した。UU-30は、配列番号5が規定されるアミノ酸配列を有し、かつ、そのN末端に配列番号6のMTTE配列を含み、そしてそのC末端直近が、配列番号9に規定するアミノ酸配列を有するヒトgp100エピトープの断片である。このgp100断片は、マウスH2Db Class I MHCとの関連で、同じMHC関係で、マウスgp100(25-33)断片に特異性を有する、TCRを発現するPmel-1マウスT細胞によって認識される。配列番号9は、マウス側方ペプチドが両側に配置されたヒトgp100エピトープを含んで、加工後にマウスAPCによって提示され得る合成の長いペプチドを作り出す。
【0217】
インビボ実験を、X-SM083-bi-1とX-SM083-bi-2(上記の表1に定義する)を組み合わせたUU-30を使用して実施した。Pmel-1T細胞は、それらが類遺伝子性マーカーThy1.1(CD90.1としても知られている)を発現するので、野生型C57BL/6マウスで追跡できる。
【0218】
(先に記載した)膝窩リンパ節の摘出、及び単一細胞懸濁液の調製に続いて、その懸濁液を染色し、フローサイトメトリーによって分析して、マウスにおけるPmel-1細胞の増殖を計測した。増殖を、総合的なCD8+T細胞集団におけるThy1.1+細胞の蓄積として測定した。結果を
図3に示し、UU-30ペプチドのみを投与したマウスと比較して、UU-30と二重特異性抗体の両方を投与したマウスにおいてThy.1.1+細胞の統計的に有意な増加が実証された。斯かる増加は、UU-30と対応する親抗体の混合物を投与したマウスでは見られなかったので、抗体への抗原性ペプチドの結合を可能にするための親抗体へのscFvの付加が、抗原に対するT細胞応答を高めることを実証した。
【0219】
タグペプチドの選択
好適なタグペプチドを、好適なタグ配列を同定するためのTTxタンパク質の断片に関するライブラリをスクリーニングすることによって同定した。完全長のTTxタンパク質は、配列番号16、UniProtエントリP04958に規定されるアミノ酸配列を有する。好適なタグペプチドは、以下の特性を示すことが望ましい:良好な溶解性、α-ヘリカル構造、及びあらゆる内因性免疫に関連しない(すなわち、配列がB細胞エピトープを含んではならない)。先に記載したように実施したコンピュータによる分析では、4つの特定の推定タグペプチドを同定した:SM083P001(配列番号10、配列番号16の第609~630アミノ酸に対応する);SM083P002(配列番号11、配列番号16の第81~101アミノ酸に対応する);SM083P003(配列番号12、配列番号16の第285~309アミノ酸に対応する);SM083P004(配列番号13、配列番号16の第225~245アミノ酸に対応する)。
【0220】
4つの同定ペプチドすべてが、主にαヘリックス二次構造を有し、かつ、β-シートを含まないと予想される。第5の推定タグペプチドはまた、N末端にAsp残基及びC末端にArg残基を用いてSM083P001の末端にキャップ付与することによって作製され、ペプチドSM083P005(配列番号14)が得られた。末端のキャップ付与は、ペプチドのα-ヘリカル構造の安定性を改善することを試みるために実施した。SM083P004以外のすべての推定タグペプチドが高度に可溶性であると予測された;SM083P004は、比較的に難溶性であることが予測された。
【0221】
N末端ビオチン化を有するペプチドを円偏光二色性分光法によって分析して、それらの二次構造を確認し、その結果を
図4に示す。先に記載した5つの推定タグペプチドに加えて、N末端ビオチン化MTTE(配列番号6)もまた分析した。ペプチドSM083P004及びSM083P005がα-ヘリックス二次構造を示し;他のものは構造化されてないことがわかった。N末端ペグ化又はビオチン化を有するペプチドの構造を、又はネイキッド(すなわち、非修飾)ペプチドとして、CD分析によってすべて調査して、それらのN末端を修飾したときにそれらの立体構造が変更したかどうか評価した。これは、そのN修飾が修飾されたときと比較して、SM083P001が、ネイキッドペプチドとして立体構造を変更されることを示した。SM083P003とSM083P004は、N末端で修飾されたとき、立体構造変化を示さなかった。
【0222】
着目のこれらの3つのペプチドがあらゆるB細胞エピトープを含まないことを確認するために、DTPワクチンブースター前後の健常ボランティアから採取した血清からペプチドを抗体結合について評価し、そして彼らから、我々は、既知の普遍的なB細胞エピトープ(MTTE)に対する抗体がDTPブースター後に増強されることを確証した。MTTEペプチドを正の対照として使用した。
図5に示すように、予想されたとおり(それが既知のTTx B細胞エピトープだと仮定すると)、MTTEが血清中の抗体によって結合されるのに対して、他のペプチドは結合されない。これは、配列番号10、13及び14のペプチドが本発明によるタグペプチドとしての使用に特に好適であることを実証している。
【0223】
この実験を、破傷風トキソイドを含有するワクチンを最近接種された最大8人のドナーからの血清を使用して繰り返した。ワクチン接種前後に採取された血清を試験した(SM083P001、SM083P004、SM083P005及びMTTEについて、4人のワクチン接種前のドナーと8人のワクチン接種後のドナーの血清を試験した;SM083P002及びSM083P003について、人数はそれぞれ3人及び7人であった)。MTTEペプチドとペプチドSM083P002のみが、400超の滴定濃度での抗体への結合を示し、そして、MTTEペプチドのみが、すべてのドナーからの内因性抗体によって認識された(表4)。
【0224】
【0225】
これらの結果は、選択された破傷風誘導ペプチドが普遍的なB細胞エピトープでなく、かつ、破傷風に対する予め形成された免疫の結果として、ワクチン接種スキーム開始時点でのこれらのペプチドに対する内因性の既存の抗体が存在する可能性が低いことを示唆している。
【0226】
実施例2-治療向け投与後のT細胞活性化の全身的な広がり
材料と方法
成熟雌C57BL/6マウス(18~20g重量)には、上記の実施例1に記載(「インビボ実験の設定」を参照のこと)のPmel-1マウス及びtghCD40未成熟BMDCからのCFSE(カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル)標識脾細胞を投与した。1日目に、抗体とUU-30ペプチドの様々な組み合わせを、先に記載したように投与した。この実施例で使用する抗体は、Ab-2とBi-10であり、そしてそれを7.5pmol(低い、L);15pmol(中程度、M);及び22.5pmol(高い、H)の用量で投与した。UU-30ペプチドを18.75pmol(L)、37.5pmol(M)、及び56.25pmol(H)の用量で投与した。
【0227】
72時間後に、排出膝窩及び非排出鼠径リンパ節を摘出し、そして70μmの細胞濾過器を通過させて、単一細胞の懸濁液を得た。Pmel-1細胞蓄積と増殖をフローサイトメトリーによって評価した。Pmel-1T細胞を類遺伝子性マーカーCD90.1の発現に基づいてゲートアウトさせ、そして、増殖性T細胞の数をCFSE膜色素の希釈に基づいて計測した。統計解析を、各用量レベルに関するダンの多重比較検定を用いたクラスカル・ウォリス検定を使用して実施し、そして抗体/ペプチド群のそれぞれの比較を用いてペプチド群を比較した。
【0228】
結果
Bi-10抗体は、UU-30においてペプチドタグを結合することができる二重特異性抗体であり;Ab-2抗体は親抗CD40抗体であり、これによりUU-30ペプチドを結合することができない。Bi-10とUU-30の同時投与は、排出と非排出領域リンパ節の両方におけるすべての用量でのペプチド単独投与と比較して、促進されたT細胞増殖をもたらし、その一方で、UU-30とAb-2の同時投与は、T細胞増殖においてまったく増大を引き起こさない(
図7)。T細胞増殖における統計的に有意な増大は、低用量のペプチドとBi-10抗体を使用することで、排出領域リンパ節で見られ;そして、非排出領域リンパ節では、高用量のペプチド及びBi-10抗体を使用することで見られた。本発明によるタグ構築物と二重特異性抗体の同時投与は、これにより、抗原特異的T細胞の増殖を駆動する。
【0229】
実施例3-四価抗体に対するタグとscFvとの間の相互作用の安定性
材料と方法
二重特異性抗体Bi-17はFITC-8scFvを含んでおり、そしてそれは、FITCを認識する。scFvは、抗CD40抗体の重鎖のC末端に位置している(すなわち、それはIgG2定常領域からC末端をコードする)。FITC-8scFvのアミノ酸配列は配列番号70に規定されている。
【0230】
Bi-17二重特異性抗体はAbsolute Antibody(UK)によって製造された。抗体をHEK293細胞で発現させ、そして、プロテインAを使用したアフィニティークロマトグラフィーとそれに続く、調製用サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。純度は、SDS-PAGEによって>94%であると決定し、及び単量体の含有量は、SEC分析によって>98%であると決定した。エンドトキシンレベルは、LAL色素エンドトキシンアッセイによって測定すると<1 EU/mgであった。
【0231】
CD14単球とPBMCの単離
末梢血単核細胞(PBMC)を、製造業者のプロトコルに従って細胞密度勾配Ficoll(登録商標)Paque Premium(GE Healthcare)と一緒にSepMate(Stemcell Technologies)を使用したフィコール分離によって、健常ボランティアによって提供されたBuffy Coatsから単離した。更なるCD14単球分離を、MACSヒトCD14マイクロビーズ分離キット(Miltenyi Biotec)を使用することで実施した。単離したCD14+細胞を、細胞の未成熟樹状細胞への分化を駆動するために、10%のFBS、100IU/mlの1% ペニシリン/ストレプトマイシン、10mMのHEPES及び0.1mMのβ-メルカプトエタノール(Gibco)、並びに150ng/mlのhGM-CSF及び50ng/mlのhIL-4(Peprotech)を補充した完全RPMI GlutaMAX培地中で6日間培養した。培地の半分を2~3日毎に(新鮮な培地で)置換した。
【0232】
細胞内ペプチドの追跡
CD14+細胞を6日間培養し、その後、単球由来樹状細胞(MoDC)を採集し、そして1×105細胞/ウェルを96ウェル平底組織培養プレート(Sarstedt)に播種した。ペプチドUU-44のみ(900nM)、抗体Bi-17のみ(300nM)又はペプチドUU-44(900nM)及び抗体Bi-17(300nM)を各ウェルに加え、そして、培養物をインキュベートした。ペプチドUU-44は配列番号71で規定されるアミノ酸配列を有する。FITCは、アミノヘキサン酸リンカーを介してペプチドのN末端に結合する。配列番号71はCMVタンパク質pp65(配列番号72)からのヒトHLA A2エピトープを含んでいる。
【0233】
それぞれの時点の細胞を氷冷PBSで処理して、内在化を停止させ、次に、フローサイトメトリー(FITCの検出に基づく)によって分析するまで、氷中に維持した。細胞内のペプチドを検出するために、トリパンブルを使用して、細胞外シグナルをクエンチした。
【0234】
クエンチング
UU-44ペプチドを、黒色のヌンク製MaxiSorpプレート内にPBS+1%のBSAで300nMの濃度に希釈した。標的化抗体Bi-17を連続的に希釈した。蛍光を、485nMでの励起及び520nMでの発光を用いてFLUOstar Omegaを使用して計測した。ペプチドのみの蛍光を0時点、次に、抗体添加の2、5及び30分後に計測した。
【0235】
結果
150~600 nMにてBi-17は、 300nMのペプチドUU-44の蛍光シグナルを完全にクエンチした(
図8)。これは、Bi17中の両方のscFvsが2つのUU-44ペプチドが二重特異性抗体ごとに結合されるのに十分な機能性及びバインドアップ(bind up)タグであることを示す。クエンチングは、経時的に維持される(ここでは最長30分まで計測した)。遊離ペプチドの過剰量が存在するとき、蛍光強度(Y軸)は予想のとおり計測できる。よって、Bi-17抗体の抗FITC scFvの結合はすべてのFITC蛍光シグナルをクエンチする。この相互作用は低nM範囲で存在する(Soderlind et al., Nature Biotechnology 18: 852-856, 2000)。
【0236】
MoDCによるペプチドUU-44の内在化を
図9に示す。図面は、FITC陽性である(すなわち、UU-44ペプチドを内在化させた)MoDCの割合を示す。
図9Aは、ペプチドUU-44単独での内在化を示す。経時的に、ペプチド取り込みの漸増がある(予想したとおり、実験を閉鎖方式で実施したため)。
【0237】
図9Bは、二重特異性抗体Bi-17と組み合わせて細胞に適用されたとき、ペプチドUU-44の内在化を示す。ペプチドがBi17によって結合され、そしてFITCシグナルがscFvによってクエンチされるので、初めは、低い蛍光シグナルが見られた。2~6時間で、細胞内FITCシグナルの漸増があり、そして、輸送体抗体がCD40に結合し、そしてそれ自体が内在化されるので、ペプチドが細胞によって安定して内在化されることを示している。二重特異性抗体からのペプチドの放出は、細胞内で起こり、そして経時的に増加して、そして経時的な加工と抗原提示のために送達されるペプチドの貯留リザーバを形成する。これにより、二重特異性抗体を介したペプチドの送達は、MHCクラスI提示のための期間を通じて抗原を提供できる。
【0238】
実施例4-感染性疾患に特異的なT細胞の増大
材料と方法
単球とT細胞をCMV陽性、HLA-A2陽性ドナーから得、そして、血液からPBMCを単離するために、製造業者のプロトコルに従ってフィコール分離を実施した。更なる分離において、CD14+単球陽性選択とT細胞陰性選択の両方のために、製造業者のプロトコルに従ってMACSビーズを使用した。CD14+単球を、hGM-CSF及びIL4の存在下で6日間培養し、そして、サイトカインを0、3及び5日目に添加した。
【0239】
6日目に、MoDCを採集し、カウントし、そして平板培養した、次に、抗体とペプチドを以下のようにして加えた:1つのサンプルにのみ、200nMのプチドUU-44を加え、別のサンプルにのに100nMの二重特異性抗体Bi-17を加え、そして第三のサンプルに200nMのUU-44と100nMのBi-17を加えた。最終サンプルに関しては、Bi17抗体とUU-44ペプチドを混合し、そしてサンプルへの添加前に37℃にて30分間インキュベートして、ペプチド-抗体複合体を形成できるようにした。
【0240】
成熟化の1日後に、同じドナーからT細胞を5:1のT細胞:MoDC比で培養物に追加した。次に、培養物は、7日間インキュベートし、それに続いて四量体染色を使用することによって分析して、UU-44のpp65エピトープに特異的なT細胞の増大を検出した。
Tukeyの多重比較検定を用いた一元配置ANOVAを、UU-44、Bi-17及びUU-44/Bi-17群間の差の統計的有意性を評価するために使用した。
【0241】
結果
UU-44のCMV pp65エピトープに特異的なそれぞれの培養物中のT細胞の割合を
図10に示す。データは、ペプチドUU-44のみ又は二重特異性抗体Bi17のみと免疫細胞のインキュベーションが、対照に対してpp65特異的T細胞の少しの増大ももたらさないことを示している。二重特異性抗体Bi17と組み合わせたペプチドUU-44と免疫細胞のインキュベーションは、pp65特異的T細胞の統計的に有意な増大を結果として生じ、そして、本発明のコンジュゲート/ペプチドコンジュゲートの使用が抗原特異的T細胞の増大を駆動することを実証した。
【0242】
実施例5-標的タンパク質の内在化
材料と方法
ヒトCD14+細胞を、先に記載のとおり、6日間で未成熟DCに分化させ、そして1×105細胞/ウェルの密度にて96ウェル組織培養プレート(Sarsedt)内に播種した。ABS-1150/1151クローンであるX-SM083-ab-1(IgG1)とX-SM083-ab-2(IgG2)を、LPSと非刺激細胞を伴って滴定範囲(3.9~500 nM)で使用して、抗体の作動特性とCD40発現に対するそれらの効果を調査した。
【0243】
試験抗体を、(滴定範囲内の)様々な濃度にて樹状細胞に加え、次に、それを、37℃にて48時間インキュベートした。LPS(1μg/ml)を陽性対照として使用した。以下のマーカー:CD14-APC-Cy7(HCD14)、HLA-DR PE-Cy5(L243)、CD86-BV421(IT2.2)、CD40-FITC(5C3)、CD1a-PE(HI149)、CD83-APC(HB15e)及びIL12 p40サンドイッチELISA(Biolegend ELISA MAXキット、cat. 430704)、を使用してDC活性化をFACSによって評価した。
【0244】
使用した検出抗体、CD40-FITC(5C3)は、ABS-1150/1151によって妨げられた(データ未掲載)。しかしながら、細胞に対する試験抗体の適用とFACS分析の間で48時間が経過したので、これが得られた結果に影響を与えないであろうと考えられた。
【0245】
結果
本発明の抗体によるその関与時のCD40の内在化が、標的細胞による抗原取り込みを確実にするために必要である。IgG1又はIgG2フォーマットのいずれかにおけるABS-1150/1151抗体を、ヒトMoDCを刺激すること、及び標的タンパク質表面発現に伴う、2つの抗体の作動活性を調査することに使用した。ABS-1150/1151抗体のIgG2サブタイプは、非刺激細胞に対するCD86発現の倍率変化に関して、CD86の上方制御におけるIgG1サブタイプ(
図11Aを参照のこと)より優れていた。他の活性化/成熟化マーカーの発現及びIL12産生に関しても、類似の結果を得た(データ未掲載)。
【0246】
IgG2サブタイプ抗体はまた、CD40の細胞表面発現の減少を引き起こし、そしてそれは、IgG1サブタイプを使用したときには見られなかった(
図11B)。よって、IgG2サブタイプの抗体は、CD40内在化を推進する際にIgG1サブタイプのものより優れており、そしてそれは、本発明に有利である。これはまた、
図2のデータによっても支持され、そしてそれは、IgG2形式のABS-1150/1151が、IgG1形式に比べて、抗原提示を改善することを示す。
【0247】
実施例6-二重特異性抗体への結合によるペプチドの血漿安定性の増強
材料と方法
ペプチドUU-30(配列番号5)をCapra Science(Sweden)から購入した。二重特異性抗体X-SM083-bi-9とX-SM083-bi-12(略してBi-9とBi-12)、及びそれらの対応親モノクローナル抗体対応物X-SM083-ab-1とX-SM083-ab-3(ab-1とab3)は、Drug DiscoveryとDevelopment Platform, SciLifeLab(Sweden)によって製造された(実施例1と表1を参照のこと)。マウス血漿(抗凝血物質としてK2EDTAを含有)をInnovative Research(USA)から購入した。LCグレードのアセトニトリル(ACN)とメタノール(MeOH)をMilliporeから入手した。MSグレードのギ酸(HCOOH)をVWRから入手した。タイプ1milliQ水(25℃にて18.2mΩ.cm, Millipore)を移動相の調製に使用した。
【0248】
1μMのUU-30ペプチドを、それぞれ0.5:1と1:1のモルAg:Ab比にて結合抗体(Bi-9とBi-12)及び非結合抗体(Ab1とAb-3)と混合して、<1%の遊離ペプチドを達成した。複合体を、600rpmでの撹拌下で37℃に予め加温したマウス血漿と混ぜた。反応を、3倍量の氷冷メタノールを加えることによって、時点にて停止した。ゼロ分のサンプルに100%の氷冷メタノールを加え、その後、ペプチドに血漿を加えた。サンプルを、ボルテックス処理し、3220×g及び4℃にて20分間遠心分離し、その後、上清を留去し、続いて100μLの2%のACN;0.05%のHCOOH;97.5%のH2O中で乾燥材の再構成をし、その後、LC-MS/MSによって分析した。比較のために、いずれの抗体も添加していないUU-30のサンプルも同様に調製した。
【0249】
分析は、Acquity UHPLCシステムに接続したQTrap6500による陽性電子スプレーモードでのLC-MS/MSによるペプチド遷移状態のモニタリングに基づいた。10μLのサンプルアリコートを60℃に設定したBEH C8カラム(2.1×50mm、1.7μm)に注入し、1.6分以内の0%から100%への移動相Bの線形勾配を用いて500μL/分にて溶出した。移動相Aの組成は0.1%のHCOOH:99.9%のH2O及びBは0.1%のHCOOH:99.9%のACNであった。UU-30に関するMRMモードでの遷移状態モニターを862.4 > 1012.6 (DP, 120 V; CE, 38 V), 718.8 > 810.3 (DP, 120 V; CE 30 V)及び616.2 > 740.1 (DP, 100 V; CE, 18 V)に設定された。キャピラリ管電圧を5.5kV、温度を450℃に、ガス1及び2を60 auに及びカーテンガスを40 auに設定した。
【0250】
結果
より大きいタンパク質へのペプチドの結合は、理論上、ペプチドの血清安定性を改善する場合がある。よって、本発明によるペプチドタグ構築物は、二重特異性ペプチドとの複合体との関連で改善された半減期を有する場合がある。マススペクトル法を使用することにより、我々は、T細胞エピトープとMTTEタグを含む、UU-30ペプチドが、ペプチドが非結合抗体と一緒に混合されただけであるときと比較して、二重特異性抗体と複合化されたときに血漿中で改善された半減期を有するかどうか評価した。
本発明による二重特異性抗体とUU-30の複合体化は、ペプチドが血漿中で遊離状態にあったときと比べ、ペプチドの半減期の有意な延長をもたらしたことがわかった(
図12及び表5)。
【0251】
【0252】
本発明によるペプチド構築物の半減期の改善は、T細胞エピトープに対して有効な免疫応答をもたらすためのより大きな機会を提供する。よって、本発明の二重特異性抗体の使用は、作り出される標的抗原に対する有効な免疫応答の可能性を広げる。
【0253】
実施例7-血漿中のペプチドタグの安定性
実施例1で同定した潜在的タグペプチドSM083P001(配列番号10)、SM083P003(配列番号12)及びSM083P004(配列番号13)を試験して、血漿中でのそれらの安定性を測定した。
【0254】
材料と方法
3つのペプチドをCapra Scienceから購入した。
マウス血漿(抗凝血物質K2EDTA含有)をInnovative Researchから購入したが、それに対して、ヒト血漿(クエン酸ナトリウム抗凝血物質含有)をUppsala大学病院から入手した。LCグレードのアセトニトリル(ACN)とメタノール(MeOH)をMilliporeから入手した。MSグレードギ酸(HCOOH)をVWRから取り寄せた。タイプ1milliQ水(25℃にて18.2mΩ.cm, Millipore)を移動相の調製に使用した。
【0255】
10μMのそれぞれのペプチドを、600rpmでの撹拌下で37℃にて17時間、ヒト又はマウス血漿中でインキュベートした。インキュベーションを、3倍量の氷冷メタノールを加えることによって、時点にて停止した。ゼロ分のサンプルに100%の氷冷メタノールを加え、その後、ペプチドに血漿を加えた。サンプルを、ボルテックス処理し、3220×g及び4℃にて20分間遠心分離し、その後、上清を留去し、続いて100μLの2%のACN;0.05%のHCOOH;97.5%のH2O中で乾燥材の再構成をし、その後、LC-MS/MSによって分析した。
【0256】
分析は、Acquity UHPLCシステムに接続したTQ-S microによる陽性電子スプレーモードでのLC-MS/MSによるペプチド遷移状態のモニタリングに基づいた。10μLのサンプルアリコートを60℃に設定したBEH C8カラム(2.1×50mm、1.7μm)に注入し、1.6分以内の0%から100%への移動相Bの線形勾配を用いて500μL/分にて溶出した。移動相Aの組成は0.1%のHCOOH:99.9%のH2O及びBは0.1%のHCOOH:99.9%のACNであった。SM083P001についてMRMモードでの遷移状態モニターは875.54 > 1097.22及び875.54 > 1170.51(CE, 15 V; Cone, 27 V)、SM083P003については728.21 > 838.31及び728.21 > 943.62(CE, 25 V; Cone, 21 V)そしてSM083P004については814.88 > 1078.33及び814.88 > 1136.44(CE, 20 V; Cone, 25 V)であった。線源条件をキャピラリ管電圧について2kVに設定し、ガス温度を600℃に設定した。
【0257】
結果
図13及び表6に示したように、3つのペプチドすべてが、マウス及びヒト血漿中の両方で良好な半減期を実証し、そしてそれは、タグペプチドとしての本発明におけるそれらの使用を支持している。
【0258】
【0259】
実施例8-新規抗TagペプチドscFvsの作出
ファージディスプレイ選択を実施して、潜在的タグペプチドSM083P001-5(配列番号10-14)を認識するscFvsを単離した。
【0260】
材料と方法
Naiveライブラリからのファージディスプレイ選択
5つのビオチン化ペプチド抗原(SM083P001-0005、実施例1を参照のこと)に関して、ファージディスプレイを、以前に報告されたもの(Sall, A. et al., Protein Eng Des Sel 29, 427-437, 2016)と、設計及び構造が類似した2つの社内構築ヒト合成scFvファージライブラリーSciLifeLib1及びSciLifeLib2を利用した、4ラウンドの濃縮を使用して実施した。選択を、ストレプトアビジンコート常磁性粒子(Dynabeads M-280, ThermoFisher Scientific, #11206D)上にペプチドを固定することによって実施し、選択過程におけるステップの大部分を、自動化し、Kingfisher Flexロボットを用いて実施した。ラウンド1及び2におけるファージ-抗原インキュベーションステップの前に、非特異的又はストレプトアビジン結合剤を取り除くために、ファージストックをストレプトアビジンコートビーズにより事前選択した。抗原量を徐々に減少させ(濃度範囲200~50nM)、かつ、洗浄の回数と強度を増強することによって(5~10)、異なるラウンド間での選択圧を増強した。ファージの溶出をトリプシンを使用して実施した。回収したファージを、寒天平板上で37℃にて一晩(ラウンド1)又は溶液中で30℃にて一晩(ラウンド2~4)のいずれかでTop10F' E.コリ(E. coli)内で増殖させた。ファージストックを、過剰量のM13K07介助ファージ(New England Biolabs, #N0315S)を用いて感染させ、そしてIPTGの添加によってscFv発現を誘発することによって作製した。一晩培養物を、PEG/ NaCl沈殿させ、選択バッファー(PBS中の2%(w/v)のBSA、0.05%(v/v)のTween-20)で再懸濁して、次のラウンドの選択に使用した。
【0261】
可溶性scFvsの再クローニングと発現
可溶性scFvの製造を可能にするために、それぞれの選択手順の第三及び第四ラウンドからファージミドDNAを単離した。プールでは、scFv断片をコードする遺伝子をスクリーニングベクター内にサブクローン化し、そして、C末端で三重FLAGタグ及びヘキサヒスチジン(His)タグを伴ったscFvの分泌のためのシグナルを提供した。それに続いて、構築物をTOP10 E.コリ内に形質転換した。それぞれの選択手順に関しては、ラウンド3及び4からの合計188個のコロニーを釣菌し、そして96ウェルプレート内で培養し、scFv(上清)を発現させて、結合について評価した。
【0262】
一次ELISAと配列決定
選択したscFvの結合をまずELISAによって評価した。各クローンをその標的ペプチド及びストレプトアビジンに対して、すべて二重反復試験で試験した。PBSで1μg/mlに希釈したストレプトアビジンを、4℃にて一晩ポリスチレン384ウェルプレート(#Corning, 3700)上にコートした。ビオチン化ペプチドをPBT(PBS中、0.5%(w/v)のBSA、0.05%(v/v)のTween-20)中に加え、続いて、scFv(培養上清)を加えた。結合の検出は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合α-FLAG M2抗体と、それに続く発色基質Ultra TMB-ELISAとのインキュベーションによって可能になった。シグナル発生を1Mの硫酸の添加によって終止させ、そして吸光度は450nmにて計測した。ELISAで陽性と見なされたクローンを、DNA配列決定(GATC Biotech, Cologne Germany)にかけた。
【0263】
二次ELISA
それぞれの選択手順について同定されたすべての配列が独特なクローンを、二次ELISAスクリーンでさらに分析した。ここで、SM083P001、SM083P003及びSM083P004のN末端ペグ化ペプチド変異体への結合を評価した。加えて、scFvのサブセットに対して、ファージ選択と一次ELISAスクリーンで使用したストレプトアビジンの代わりにビオチン化ペプチドに関する捕獲表面としてニュートラアビジンを使用する三次ELISAで結合を分析した。
【0264】
表面プラズモン共鳴法(SPR)を使用した親和性の測定
親和性測定を、選択したscFvのサブセットに対してBiacore T200バイオセンサ装置(GE Healthcare)により実施した。SM083P003とSM083P004ペプチドを、予め固定したストレプトアビジンを用いてセンサーチップSA上に捕獲した。1つのストレプトアビジン表面を修飾しないまま残し、そして基準表面として使用した。0.16~100nMの範囲に及ぶ、それぞれのscFvクローンと基準抗体の5倍希釈系列を、動作バッファーで調製し、続いて、チップ表面上に注射した。解離相に続いて、チップ表面を10mMのグリシンHCl、pH2.1を用いて再生した。ストレプトアビジンを固定した表面である基準表面の反応曲線を引き算することによって、scFvクローンの反応曲線センサーグラムを得た。Biacore T200 Evaluation3.1ソフトウェアを使用してデータを分析し、そして、動力学的パラメーターを計算し、そして1:1ラングミュア結合モデルを仮定した。
【0265】
エピトープマッピング
SM083P003(Y-SM083-p03-B06とC06)及びSM083P004(Y-SM083-p04-C04、D04、F04、G04及びH04)に特異的なScFv結合剤を、15-merのペプチドを使用して、詳細にエピトープマッピングした。SM083P003には25aaの長さがあるのに対して、SM083P004は21aaであった。しかしながら、さらなる修飾が抗体結合に影響することなく可能であるか調査するために、37aa領域に及ぶ1セットの15-merのペプチドを評価した。すなわち、SM083P003に特異的なscFvを、以下の配列DANLISIDIKNDLYEKTLNDYKAIANKLSQVTSCNDP(配列番号73)に見られるペプチドに対して分析し、その一方で、抗SM083P004を、TIGKSKYFQDPALLLMHELIHVLHGLYGMQVSSHEII(配列番号74)に見られるペプチドに対して評価した。下線を引いた領域はそれぞれSM083P003とSM083P004に対応しており、そして、これらを囲む配列は、破傷風毒素において天然に見られるものである。合計で、N末端ビオチン部分、C末端のグリシンアミドを担持し、及び1つのアミノ酸シフトでSM083P003とSM083P004を網羅する46個の15-merのペプチドを、JPT Peptide Technologies GmbH(Germany)から注文した(表7)。
【0266】
384ウェルELISAプレートを4℃にて一晩、PBS中の2μg/mlストレプトアビジンを用いてコートした。洗浄及びブロッキング(PBS中の5%のBSA)に続いて、ペプチドを1時間結合させた。すべてのscFvクローンを、PBT(PBS中の0.5%(w/v)のBSA、0.05%(v/v)のTween-20)で2μg/mlに希釈し、そして1時間結合させた。結合の検出を、先に記載したようなHRP結合α- FLAG M2抗体の使用によって可能にした。各サンプルを、ブランクウェルのバックグランドの引き算を用いて、そこから平均吸光度値が取り戻される、二重反復試験でアッセイした。0.5に等しいか又はそれより高い吸光度値を陽性と見なした。
【0267】
【0268】
結果
Naiveライブラリからのファージディスプレイ選択と、それに続く結合スクリーン及び配列決定
SciLifeLib1及び2を使用した5つのペプチドSM083P001-0005に関して並行して、合計10回のファージ選択手順を実施した。188個のクローンを釣菌し、一次ELISAで10個の実績物のそれぞれから分析した。陽性クローンをSM083P002以外のすべてのペプチドについて同定した。その後の陽性クローンの配列決定を合計22個の独特なクローンをもたらした(表8及び9)。
【0269】
配列が独特なクローンのすべてを二次ELISAで分析した。ここで、ペプチドのN末端部分とビオチンとの間にペグ化スペーサーを有するペプチドへの結合を評価した。表8にまとめたように、配列が独特なscFvのうち8つのみがこの選抜基準を通過した。同様に、目下の8つのscFvがそれらの同族ペプチドと相互作用に関してストレプトアビジンに依存しないことを確認するために、ビオチン化ペプチドの捕獲表面としてニュートラアビジンを使用して結合を評価した。8つのscFvのすべてが捕獲表面と無関係にそれらの同族ペプチドを結合すると結論づけられ得る(データ未掲載)。
【0270】
【0271】
【0272】
親和性の測定(SPR)
同族のペプチドへの結合に関する結合速度定数(kd(M-1 s-1))、解離速度定数(kd(s-1))及び平衡解離(KD(M))を含めた動力学的パラメーターを、表面プラズモン共鳴法によって、
scFvのサブセットに関して計算した。結果を表10に示す。
【0273】
【0274】
エピトープマッピング
15-merのペプチドのアレイに対するエピトープマッピングによって、9~15aa長のウィンドウに対してscFvのエピトープをマッピングすることが可能であった(表11)。同族ペプチド及びより短い15-merのペプチドに対する相対的親和性を計算しなかったが、これはペプチドトリミングが可能であることを示している。
【0275】
【0276】
実施例9-インビボにおける二重特異性抗体の効果
材料と方法
8週齢の雄B6.Cg-Thy1a/Cy Tg(TcraTcrb)8Rest/Jマウス(本明細書中でpmelマウスと呼ばれる)をインビボ腫瘍実験に使用した。マウスをUppsala Biomedicalセンターの動物飼育施設で飼育し、そして動物実験はUppsala動物試験倫理委員会、Uppsala, Swedenによって承認された。
【0277】
マウスを2つの処置群(1群あたりn=2)に分割した。群1を18.75pmolのペプチドUU-30を用いてワクチン接種し、それに対して、群2を18.75pmolのUU-30と7.5pmolの二重特異性抗体Bi-10の組み合わせを用いてワクチン接種した。ワクチン接種を、プライム-ブースト-ブースト様式での膝窩内への皮内注射によって実施した。プライミングと第一のブーストにおいて、4×105個のtghCD40発現性未成熟骨髄由来樹状細胞(BMDC)をワクチンと混合し、それぞれ0日目と4日目に、右側膝窩内に注射した。8日目に、4×105個のtghCD40未成熟BMDCと混合した第二のブーストを左側膝窩内に投与した。5日目に、75,000個のB16-F1黒色腫細胞を右側脇腹に接種した。腫瘍サイズを1日おきに計測して、腫瘍の進行を経過観察した。
【0278】
結果
図14に示したように、腫瘍接種後20日までに、ペプチドUU-30のみを用いてワクチン接種したマウスは400mm
3超の平均体積の腫瘍を発症した。Bi-10と組み合わせたペプチドUU-30を用いてワクチン接種したマウスはたった約100mm
3しかない平均体積の腫瘍を発症した。これは、本発明によるワクチン接種が抗腫瘍性免疫応答を刺激するのに有効であることを示している。
【0279】
実施例10-SPRによる抗MTTE scFvの作出と結合特性評価
材料と方法
小規模生産と精製
IBIIICI及び14GIIICIIクローンのVH及びVLドメインの配列を、ハイブリドーマ細胞の配列決定によって得た(Absolute Antibody, Cleveland, UKによって実施)。
グリシン-セリンリンカー((Gly4Ser)4)を介して、抗体の重鎖の可変ドメインを軽鎖の可変ドメインに融合することによって、対応するscFv構築物を作り出した(配列番号47及び48)。scFv遺伝子をスクリーニングベクター内にサブクローン化し、C末端に三重FLAGタグ及びとヘキサヒスチジン(His)タグを伴ったscFv分泌のためのシグナルを提供した。scFv遺伝子の合成及びサブクローニングをGenScript(Piscataway, NJ, USA)に外注した。それに続いて、構築物をTOP10 E.コリ内に形質転換した。溶解細胞の細菌上清を、重力流下で固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を使用してNi-NTA精製し、そしてPBSにバッファー交換した。精製scFv断片を、還元条件下のゲル電気泳動によって分析して、純度と完全性を測定した。
【0280】
表面プラズモン共鳴法(SPR)の測定
scFvクローンの親和性測定を、Biacore T200(GE Healthcare)を使用したSPRによって実施した。NHS-EDC化学反応を使用した一級アミンカップリングによってα-FLAG M2抗体をCM5 Sチップ上に固定し、それらのFlagタグによるscFvsの捕獲を可能にした。5つの異なる濃度(0.16nM~100nM)のビオチン化MTTE-ペプチド(配列番号6)から成る5倍希釈系列をフローセル中に連続して注射して、捕獲scFv断片に結合できるようにした。陰性対照として、スクランブルMTTE配列を同様に注射した。酸性条件下、pH2.2にて10mMのグリシン-HClを使用することで表面の再生を達成した。
得られた単一サイクルの動力学的データを1:1ラングミュア結合モデルに当てはめ、そして動力学的パラメーター、ka(1/Ms)、kd(1/s)及びKD(M)をソフトウェアBIAevaluationを使用して検索した。
【0281】
結果
小規模生産と精製
細菌に発現させ、そして精製したscFv断片のゲル電気泳動では、予想された分子量のscFvに対応する1つの主要タンパク質バンドにより高い純度を示した(データ未掲載)。
【0282】
表面プラズモン共鳴法(SPR)の測定
単一サイクルの動力学的アプローチを、MTTEペプチドに結合するIBIIICI-b及び14GIIICII-bの、結合速度定数(kd(M-1 s-1))、解離速度定数(kd(s-1))及び平衡解離(KD(M))を含めた動力学的パラメーターを測定するのに使用した。結果を表12に示す。スクランブル陰性対照ペプチドへの結合は検出できなかった(未掲載)。
【0283】
【配列表】