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特許7515504量子コンピューティング・デバイス用の調整可能な超伝導共振器のためのデバイス、方法、システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】量子コンピューティング・デバイス用の調整可能な超伝導共振器のためのデバイス、方法、システム
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/10 20230101AFI20240705BHJP
【FI】
H10N60/10 G
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021556354
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020057560
(87)【国際公開番号】W WO2020200801
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】16/373,334
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ハート、シーン
(72)【発明者】
【氏名】グマン、パトリク
【審査官】鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-260025(JP,A)
【文献】特開2011-129594(JP,A)
【文献】特表2019-508876(JP,A)
【文献】特開平07-154003(JP,A)
【文献】特開平08-279629(JP,A)
【文献】特開昭64-042871(JP,A)
【文献】A. F. MORPURGO et al.,“Hot electron tunable supercurrent”,Applied Physics Letters,AIP Publishing,1998年02月23日,Vol. 72, No. 8,p.966-968,DOI: 10.1063/1.120612
【文献】L. CASPARIS et al.,“Voltage-controlled superconducting quantum bus”,Physical Review B,American Physical Society,2019年02月21日,Vol. 99, No. 8,p.085434-1-7,DOI: 10.1103/PhysRevB.99.085434
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/00-69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導結合デバイスであって、
共振器構造であって、超伝導材料で構成された共振器中心導体、第1のトランスモンに結合されるように構成された第1の端部、および第2のトランスモンに結合されるように構成された第2の端部を有する、前記共振器構造と、
前記共振器構造の前記共振器中心導体に近接して配置されたゲートであって、ゲート電圧を受け取り、前記ゲート電圧に基づいて前記共振器構造の前記共振器中心導体の力学的インダクタンスを変化させるように構成された、前記ゲートと、を備え、前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の結合の強度を変化させるように前記共振器構造を誘導
前記共振器構造および前記ゲートが前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の調整可能な結合を提供する、
超伝導結合デバイス。
【請求項2】
前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記ゲートが前記共振器構造の前記共振器中心導体の超流動密度を変化させた結果である、請求項1に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項3】
前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記共振器構造の特性周波数の変化を誘発する、請求項1または2に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項4】
前記共振器構造の前記特性周波数の前記変化が、前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の結合の前記強度の前記変化を可能にする、請求項3に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項5】
前記共振器構造の少なくとも共振器中心導体が、魔法角ねじれ二層グラフェン、WTe2、Sn1-δ-xInxTeを含む超伝導材料で形成されている、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項6】
前記ゲートが金属材料または超伝導材料で形成されている、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項7】
前記第1のトランスモンが前記共振器構造の前記第1の端部に容量結合され、前記第2のトランスモンが前記共振器構造の前記第2の端部に容量結合されている、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項8】
前記共振器構造に接続された接地面をさらに備える、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項9】
前記接地面が、前記共振器構造のシャント部分によって前記共振器構造に接続されている、請求項8に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項10】
基板構造をさらに備え、前記共振器構造が前記基板構造の表面に配置されている、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項11】
前記共振器構造上に配置された絶縁体をさらに備え、前記ゲートが前記絶縁体の構造上に配置されている、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項12】
前記共振器構造に近接して前記基板構造の前記表面に配置された接地面をさらに備える、請求項10に記載の超伝導結合デバイス。
【請求項13】
共振器構造の第1の端部を第1のトランスモンに結合することと、
第2のトランスモンに前記共振器構造の第2の端部を結合することと、
超伝導材料で構成された共振器中心導体に近接してゲートを配置することと、
前記ゲートによってゲート電圧を受け取ることと、
前記ゲート電圧に基づいて前記共振器構造の前記共振器中心導体の力学的インダクタンスを変化させることであって、前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の結合の強度を変化させるように前記共振器構造を誘導する、前記変化させることと、
を含み、前記共振器構造は前記共振器中心導体を有
前記共振器構造および前記ゲートが前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の調整可能な結合を提供する、
方法。
【請求項14】
前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記ゲートが前記共振器構造の前記共振器中心導体の超流動密度を変化させた結果である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記共振器構造の特性周波数の変化を誘発する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記共振器構造の前記特性周波数の前記変化が、前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の結合の前記強度の前記変化を可能にする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記共振器構造の少なくとも共振器中心導体が、魔法角ねじれ二層グラフェン、WTe2、Sn1-δ-xInxTeを含む超伝導材料で形成されている、請求項13ないし16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
リソグラフィ構成要素を備える超伝導体製造システムであって、ダイに対して動作させた場合に、
共振器構造の第1の端部を第1のトランスモンに結合することと、
第2のトランスモンに結合されるように構成された前記共振器構造の第2の端部を結合することと、
超伝導材料で構成された共振器中心導体上に近接してゲートを配置することと、
前記ゲートによってゲート電圧を受け取ることと、
前記ゲート電圧に基づいて前記共振器構造の前記共振器中心導体の力学的インダクタンスを変化させることであって、前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の結合の強度を変化させるように前記共振器構造を誘導する、前記変化させることと、
を含む動作を実行する超伝導体デバイスを製造するものであり、前記共振器構造は前記共振器中心導体を有
前記共振器構造および前記ゲートが前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の調整可能な結合を提供する、
超伝導体製造システム。
【請求項19】
前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記ゲートが前記共振器構造の前記共振器中心導体の超流動密度を変化させた結果である、請求項18に記載の超伝導体製造システム。
【請求項20】
前記力学的インダクタンスの前記変化が、前記共振器構造の特性周波数の変化を誘発する、請求項18または19に記載の超伝導体製造システム。
【請求項21】
前記共振器構造の前記特性周波数の前記変化が、前記第1のトランスモンと前記第2のトランスモンとの間の結合の前記強度の前記変化を可能にする、請求項20に記載の超伝導体製造システム。
【請求項22】
前記共振器構造の少なくとも共振器中心導体が、魔法角ねじれ二層グラフェン、WTe2、Sn1-δ-xInxTeを含む超伝導材料で形成されている、請求項18ないし21のいずれか一項に記載の超伝導体製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、超伝導量子デバイスにおける量子ビット結合を調整するための超伝導デバイス、製造方法、および製造システムに関する。より詳細には、本発明は、量子コンピューティング・デバイス用の調整可能な超伝導共振器のためのデバイス、方法、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
以降、単語または句の接頭辞「Q」は、使用される場合に明示的に区別されない限り、量子コンピューティングの文脈でのその単語または句の言及を示す。
【0003】
分子および亜原子粒子は、物理世界が最も基本的なレベルでどのように機能するかを探求する物理学の一分野である量子力学の法則に従う。このレベルでは、粒子は、奇妙な振る舞いをし、同時に2つ以上の状態をとり、非常に遠く離れた他の粒子と相互作用する。量子コンピューティングは、これらの量子現象を利用して情報を処理する。
【0004】
今日使用しているコンピュータは、古典的なコンピュータ(本明細書では「従来の」コンピュータもしくは従来のノード、または「CN」とも呼ばれる)として知られている。従来のコンピュータは、フォン・ノイマン・アーキテクチャとして知られているものにおいて、半導体材料および技術を用いて製造された従来のプロセッサと、半導体メモリと、磁気または固体記憶装置と、を使用する。特に、従来のコンピュータのプロセッサは、バイナリ・プロセッサであり、すなわち、1と0で表されたバイナリ・データで動作する。
【0005】
量子プロセッサ(qプロセッサ)は、もつれ合った量子ビット・デバイス(本明細書では簡潔に「量子ビット」と呼ばれる)の奇妙な性質を使用して、計算タスクを実行する。量子力学が機能する特定の領域では、物質の粒子は、「オン」状態、「オフ」状態、および同時に「オン」と「オフ」の両方の状態などの複数の状態で存在することができる。半導体プロセッサを使用するバイナリ・コンピューティングがオン状態とオフ状態(バイナリ・コードの1と0に相当)のみを使用することに限定されているのに対し、量子プロセッサは、物質のこれらの量子状態を利用してデータ・コンピューティングで使用可能な信号を出力する。
【0006】
従来のコンピュータは、情報をビットで符号化する。各ビットは、1または0の値をとることができる。これらの1と0は、最終的にコンピュータ機能を駆動するオン/オフ・スイッチとして作用する。一方、量子コンピュータは、量子ビットに基づいており、量子物理学の2つの重要な原理、すなわち重ね合わせ(superposition)およびもつれ(entanglement)に従って動作する。重ね合わせとは、各量子ビットが1と0の両方を同時に表すことができることを意味する。もつれとは、重ね合わせ状態にある量子ビットが非古典的な仕方で互いに相関し得ること、すなわち、(1であるか、0であるか、またはその両方であるかにかかわらず)一方の状態が、もう一方の状態に依存し得ること、および2つの量子ビットがもつれ合っている場合の方が、2つの量子ビットを個々に扱う場合よりも、2つの量子ビットに関して確認され得る情報が多いことを意味する。
【0007】
これらの2つの原理を使用して、量子ビットは、より洗練された情報プロセッサとして動作し、従来のコンピュータを使用しては取り扱いにくい問題を量子コンピュータが解決することを可能にする。IBM(R)は、超伝導量子ビットを使用した量子プロセッサの動作性を成功裏に構築および実証した(IBMは、米国およびその他の国におけるInternational Business Machines Corporationの登録商標である)。
【0008】
量子ビットなどの超伝導デバイスは、既知の半導体製造技法で超伝導および半導体材料を使用して製造される。超伝導デバイスは、一般に、デバイスの特性と機能を実装するために、異なる材料の1つまたは複数の層を使用する。材料の層は、超伝導性、導電性、半導電性、絶縁性、抵抗性、誘導性、容量性であってもよく、または他の任意の数の特性を有することができる。材料の性質、材料の形状、サイズまたは配置、材料に隣接する他の材料、および他の多くの考慮事項を考慮すると、材料の異なる層を異なる方法を使用して形成しなければならない場合がある。
【0009】
超伝導デバイスは、多くの場合、平面であり、すなわち、超伝導構造が1つの平面上に製造される。非平面デバイスは、構造の一部が所与の製造平面の上または下に形成される3次元(3D)デバイスである。
【0010】
qプロセッサは、2つ以上の量子ビットのセットとして実施される。量子ビットは、単一の製造面上に共平面デバイスの格子として製造される。このようなqプロセッサの実装形態は、一般に、表面コード方式(SCS:Surface Code Scheme)または表面コード・アーキテクチャ(SCA:Surface Code Architecture)として知られるフォールト・トレラントな量子アーキテクチャとして受け入れられている。
【発明の概要】
【0011】
例示的な実施形態は、超伝導デバイス、ならびにその製造の方法およびシステムを提供する。超伝導結合デバイスの一実施形態は、共振器構造を含む。一実施形態では、共振器構造は、第1のデバイスに結合されるように構成された第1の端部と、第2のデバイスに結合されるように構成された第2の端部と、を有する。本実施形態は、共振器構造の一部に近接して配置されたゲートをさらに含む。本実施形態では、ゲートは、ゲート電圧を受け取り、ゲート電圧に基づいて共振器の一部の力学的インダクタンス(kinetic inductance)を変化させるように構成され、力学的インダクタンスの変化が、第1のデバイスと第2のデバイスとの間の結合の強度を変化させるように共振器構造を誘導する。
【0012】
別の実施形態では、力学的インダクタンスの変化は、ゲートが共振器構造の一部の超流動密度(superfluid density)を変化させた結果である。別の実施形態では、力学的インダクタンスの変化は、共振器構造の特性周波数の変化を誘発する。別の実施形態では、共振器構造の特性周波数の変化は、第1のデバイスと第2のデバイスとの間の結合の強度の変化を可能にする。
【0013】
別の実施形態では、共振器構造の少なくとも一部は、魔法角ねじれ二層グラフェン(magicangle twisted bilayer graphene)、WTe、Sn1-δ-xInTe、または別の適切な材料を含む超伝導材料で形成されている。別の実施形態では、ゲートは、金属材料または超伝導材料で形成されている。
【0014】
別の実施形態では、第1のデバイスは、共振器構造の第1の端部に容量結合され、第2のデバイスは、共振器構造の第2の端部に容量結合されている。
【0015】
別の実施形態は、共振器構造に接続された接地面をさらに含む。別の実施形態では、接地面は、共振器構造のシャント部分によって共振器構造に接続されている。
【0016】
別の実施形態は、基板構造をさらに含み、共振器構造は、基板構造の表面に配置されている。別の実施形態は、共振器構造上に配置された絶縁体をさらに含み、ゲートは、絶縁構造上に配置されている。
【0017】
別の実施形態は、共振器構造に近接して基板の表面に配置された接地面をさらに含む。
【0018】
別の実施形態では、第1のデバイスは、第1の量子ビットであり、第2のデバイスは、第2の量子ビットである。
【0019】
別の実施形態では、第1のデバイスは、量子ビットであり、第2のデバイスは、量子コンピューティング・デバイスの読み出し測定回路を含む。
【0020】
別の実施形態では、第1のデバイスは、第1のトランスモンであり、第2のデバイスは、第2のトランスモンであり、共振器構造およびゲートは、第1のトランスモンと第2のトランスモンとの間の調整可能な結合を提供する。
【0021】
一実施形態は、超伝導デバイスを製造するための製造方法を含む。
【0022】
一実施形態は、超伝導デバイスを製造するための製造システムを含む。
【0023】
本発明の特徴と考えられる新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、本発明自体、ならびに好ましい使用様式、さらなる目的、およびその利点は、添付の図面と併せて読むとき、例示的な実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】例示的な実施形態を使用して解決することができる問題を示す例示的な表面コード・アーキテクチャ(SCA)を示す図である。
図2】例示的な実施形態による、例示的なゲート調整可能な共振器を示す図である。
図3】例示的な実施形態による、例示的なシャントされたゲート調整可能な共振器を示す図である。
図4】例示的な実施形態による、SCA配置における超伝導共振器の調整の例示的な実装形態を示す図である。
図5】例示的な実施形態による、ゲート調整可能な共振器構造の断面図である。
図6】別の例示的な実施形態による、ゲート調整可能な共振器構造の断面図である。
図7】別の例示的な実施形態による、ゲート調整可能な共振器構造の断面図である。
図8】例示的な実施形態による、SCA配置における超伝導共振器の調整の例示的な実装形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を説明するために使用される例示的な実施形態は、一般に、量子コンピューティング・デバイス用の調整可能な超伝導共振器を提供することによって、上述した問題および他の関連する問題に対処し、これらの問題を解決する。例示的な実施形態はまた、量子コンピューティング・デバイス用の調整可能な超伝導共振器を製造するための製造方法およびシステムを提供する。
【0026】
図1は、例示的な実施形態を使用して解決することができる問題を示す例示的な表面コード・アーキテクチャ(SCA)を示す。SCA100などの超伝導量子ビット・アーキテクチャは、平面2次元(2D)グリッド上に、いくつかの量子ビット102、102A、および102Bを格子の形態で配置する。量子ビットは、互いに結合されており、共振線104(「バス」としても知られる)を使用して通信する。量子ビット102の量子状態は、特定の量子ビットに容量結合された読み出し線106を使用して読み出される。
【0027】
典型的には、読み出し線106は、特定の量子ビットの量子ビット状態が分散読み出し(dispersive readout)を使用して測定される共振線である。分散読み出しは、共振器との分散相互作用を使用し、この相互作用により、量子ビットの状態に応じて共振器の周波数を変化させる分散シフトが生じる。共振器周波数は、典型的には、基底状態および励起状態に対応する共振周波数の中点付近の周波数で、マイクロ波パルスを用いて問い合わせされる。反射信号の位相および振幅が量子ビットの状態を区別するために使用される。
【0028】
しかしながら、分散読み出しを使用する既存のアーキテクチャは、マイクロ波クロストークまたは量子ビット間の周波数衝突あるいはその両方の影響を受けやすく、その結果、量子状態測定において性能劣化が生じ、それに応じて量子コンピュータの性能が低下する。
【0029】
既存のアーキテクチャに関する上記の問題に対処するために、量子ビット間の結合の調整を可能にするアーキテクチャを開発する試みがなされてきた。実験的には、量子ビット結合の調整は、以前は磁束を用いて回路要素を制御することに依存していた。しかしながら、これらの磁束調整可能な量子ビットには、磁束ノイズに起因するコヒーレンス時間の短縮、磁束の微調整の必要性、オンチップ・クロストークに対する量子ビットの感受性(例えば、30%もの高さ)、磁束を生成するために必要な電流に起因する加熱、およびコヒーレンス時間の短縮に起因する量子ビット性能の劣化を含むいくつかの欠点がある。いくつかの最近の活動は、量子ビット結合の電圧制御調整の開発に焦点を合わせている。電圧制御調整の開発に向けた最近のアプローチの1つは、ゲート調整された半導体スイッチを介して2つの接地されたトランスモンを制御可能に短絡する提案を含む。別の最近のアプローチでは、半導体ナノワイヤに基づく電圧制御スイッチを使用して、超伝導キャビティの一端を制御可能に接地して、接地されたゲートモン(gatemon)の結合を変化させる。
【0030】
量子ビット間のマイクロ波クロストークまたは周波数衝突あるいはその両方の低減などの利点を提供するために、量子ビット結合に関連する上述した問題に対処する量子コンピューティング・デバイス用の調整可能な超伝導共振器を提供するための解決策が必要とされている。例えば、そのような解決策は、読み出し中または量子ビットへの制御パルスの印加中に、量子ビット102Aと量子ビット102Bとの間のマイクロ波クロストークまたは周波数衝突あるいはその両方を低減または排除するために、量子ビット102Aと量子ビット102Bとの間の結合を制御することを可能にする。
【0031】
一実施形態は、量子コンピューティング・デバイス用の調整可能な結合アーキテクチャを提供する。一実施形態は、近接したゲートに印加される電圧が、量子ビットに結合された共振器構造の一部または全部において超流動密度および力学的インダクタンスを調整する、ゲート調整可能な超伝導共振器を含む。力学的インダクタンスを調整することにより、共振器の特性周波数が調整され、量子ビット間の結合の強度を調整することが可能となり、例えば、量子ビット間の弱い結合から量子ビット間の強い結合への調整が可能になる。
【0032】
力学的インダクタンスは、可動電荷キャリアの慣性質量を等価インダクタンスとして表したものであり、超伝導体などのキャリア移動度の高い導体で観察される。力学的インダクタンスは、力学的インダクタンスが増加するにつれキャリア密度が減少するように、キャリア密度(または超流動密度)に反比例する。
【0033】
本実施形態では、金属ゲートのゲート電圧を変化させると、電荷密度が変化する。電荷密度が変化すると、力学的インダクタンスが変化し、それに対応して、量子ビットを結合する共振器の特性周波数が変化する。共振器の特性周波数が変動すると、量子ビット間の結合強度が変動する。
【0034】
1つまたは複数の実施形態は、ゲート電圧の調整を介して、最近傍量子ビット間の徐々に調整可能な結合を提供する。別の実施形態は、調整可能な読み出し共振器により量子ビットからの多重読み出しを提供する。さらに別の実施形態は、望ましくない遷移周波数を有する量子ビットと1つまたは複数の他の量子ビットとの結合を遮断または低減することによって、望ましくない遷移周波数を有する量子ビットを遮断する能力を提供する。1つまたは複数の実施形態は、調整可能な超伝導共振器の使用を提供して、より高速なゲートおよび量子ビット間の調整可能な結合強度を有する新規の量子ゲート・ハードウェア・アプローチを提供する。
【0035】
別の実施形態は、調整可能な結合共振器のための製造方法をソフトウェア・アプリケーションとして実装することができるように提供する。製造方法の実施形態を実装するアプリケーションは、リソグラフィ・システムなどの既存の超伝導製造システムと連携して動作するように構成することができる。
【0036】
説明を明確にするために、またそれに対するいかなる限定も暗示することなく、例示的な実施形態は、格子状に配置された例示的な数の量子ビットを使用して説明される。一実施形態は、例示的な実施形態の範囲内で、異なる数の量子ビット、格子内の異なる配置、量子ビット以外の超伝導デバイス、超伝導体に基づかない量子ビットのタイプ、またはそれらのなんらかの組合せで実施することができる。一実施形態は、超伝導素子への調整可能な結合が望まれる他の超伝導製造を同様に改善するために実施することができる。
【0037】
さらに、図および例示的な実施形態では、例示的な調整可能な結合共振器の簡略図が使用されている。調整可能な結合共振器の実際の製造においては、本明細書に図示または記載されていない追加の構造、あるいは本明細書に図示および記載されているものとは異なる構造が、例示的な実施形態の範囲を逸脱することなく存在してもよい。同様に、例示的な実施形態の範囲内で、例示的な調整可能な結合共振器に図示または記載される構造は、本明細書に記載されるものと同様の動作または結果をもたらすように異なる仕方で製造されてもよい。
【0038】
例示的な構造、層、および形成物の2次元図面において異なる陰影をつけた部分は、本明細書に記載されているように、例示的な製造における異なる構造、層、材料、および形成物を表すことが意図されている。異なる構造、層、材料、および形成物は、当業者に知られている適切な材料を使用して製造することができる。
【0039】
本明細書に描かれている形状の特定の形状、場所、位置、または寸法は、そのような特性が実施形態の特徴として明示的に記載されていない限り、例示的な実施形態を限定することを意図していない。形状、場所、位置、寸法、またはそれらの組合せは、図面および説明を明確にするためにのみ選択されており、例示的な実施形態による目的を達成するために、実際のリソグラフィで使用される可能性のある実際の形状、場所、位置、または寸法から誇張、最小化、またはその他の方法で変更されている可能性がある。
【0040】
さらに、例示的な実施形態は、特定の実際のまたは仮想の超伝導デバイス、例えば、量子ビットに関して、単なる例として説明されている。様々な例示的な実施形態によって説明されるステップは、同様のやり方で様々な調整可能な結合共振器を製造するために適合させることができ、そのような適合は、例示的な実施形態の範囲内で企図される。
【0041】
アプリケーションに実装される場合の実施形態は、本明細書に記載された特定のステップを製造プロセスに実行させる。製造プロセスのステップは、いくつかの図に描かれている。すべてのステップが特定の製造プロセスにおいて必要であるとは限らない。一部の製造プロセスは、例示的な実施形態の範囲を逸脱することなく、異なる順序でステップを実施し、特定のステップを組み合わせ、特定のステップを除去もしくは置換し、またはこれらのステップおよびステップの他の操作のいくつかの組合せを実行することができる。
【0042】
例示的な実施形態は、特定のタイプの材料、電気的特性、構造、形成物、層の配向、方向、ステップ、動作、平面、寸法、数、データ処理システム、環境、構成要素、およびアプリケーションに関して、単なる例として説明される。これらおよび他の類似のアーチファクトのいかなる特定の明示も、本発明を限定することを意図したものではない。これらおよび他の類似のアーチファクトのいかなる適切な明示も、例示的な実施形態の範囲内で選択することができる。
【0043】
例示的な実施形態は、特定の設計、アーキテクチャ、レイアウト、概略図、およびツールを単なる例として使用して説明されており、例示的な実施形態に限定されない。例示的な実施形態は、他の同等のまたは同様の目的の設計、アーキテクチャ、レイアウト、概略図、およびツールと連携して使用することができる。
【0044】
本開示の例は、説明を明確にするためにのみ使用されており、例示的な実施形態を限定するものではない。本明細書に列挙されている利点は、単なる例であり、例示的な実施形態に限定することを意図するものではない。追加のまたは異なる利点は、特定の例示的な実施形態によって実現することができる。さらに、特定の例示的な実施形態は、上で列挙された利点のいくつか、またはすべてを有してもよく、あるいはいずれも有さなくてもよい。
【0045】
図2を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、例示的なゲート調整可能な共振器を示す。上面図200は、一方の端部で結合パッド204に接続され、もう一方の端部で接地層210に接続された超伝導材料で構成された共振器中心導体202と、共振器202に近接した金属ゲート206と、を有する調整可能な超伝導共振器構造を示す。
【0046】
図2に示す特定の実施形態では、共振器中心導体202は、蛇行構成で示されている。他の特定の実施形態では、共振器中心導体202は、一直線の構成または任意の他の適切な共振器構成であってもよい。図示する実施形態では、金属ゲート206は、平面の矩形形状であり、共振器中心導体202の実質的に全長の下に、近接して配置されている。他の特定の実施形態では、金属ゲート206は、任意の適切な形状、サイズ、または構成であってもよい。他の実施形態では、他のゲートおよび量子ビット構造が使用されてもよく、ゲート構造は、共振器中心導体202全体をゲート制御しなくてもよく、共振器中心導体202の一部のみをゲート制御してもよい。他の実施形態では、2つ以上の量子ビットが、共振器中心導体202に、その長さに沿った異なる位置で容量結合されていてもよい。1つまたは複数の実施形態では、共振器中心導体202と金属ゲート206は、絶縁体材料または真空によって分離される。一実施形態では、金属ゲート206は、実質的に共振器の全長ではなく、その一部のみと重なっていてもよい。
【0047】
一部の実施形態では、接地層210は、共振器が共平面導波路を構成するように構築されてもよい。この幾何学形状では、接地面は、共振器の長さに沿って変化しない距離だけ、共振器中心導体202から両側に分離されている。寸法は、典型的には、1MHz~20GHzの周波数領域でインピーダンスが50オームの伝送線路の設計仕様を指針とする。図2に示す実施形態では、この接地面の幾何学形状は、明瞭にするために示されていない。
【0048】
特定の実施形態では、共振器中心導体202、結合パッド204、ゲート206、または接地層210を形成することができる可能性のある超伝導材料には、アルミニウム、インジウム、ニオブ、窒化ニオブ、窒化ニオブチタン、二セレン化ニオブ、タンタル、チタン、またはモリブデン・レニウムのうちの1つまたは複数が含まれる。特定の実施形態では、金属ゲート206を形成することができる可能性のある金属または導電性ゲート材料には、金、プラチナ、パラジウム、金合金(例えば、パラジウム金)、銅、またはグラファイトが含まれる。上記は、可能性のある超伝導材料および金属材料の非網羅的なリストであり、他の実施形態では、他の適切な超伝導材料または金属材料が使用されてもよいことを理解されたい。一部の実施形態では、共振器は、一部のみがゲート調整可能な超伝導体材料で構成されてもよく、共振器の他の部分は、ゲート調整可能ではない材料で構成されてもよい。結合パッド204は、量子ビット208を共振器中心導体202に容量結合するように構成されている。
【0049】
一実施形態では、ゲート電圧Vgateが金属ゲート206に印加されて、共振器中心導体202内のキャリア密度の制御可能な変動を引き起こし、それによって、共振器中心導体202の力学的インダクタンスLがキャリア密度nに反比例するため、共振器中心導体202の力学的インダクタンスの変化をさらに引き起こす。力学的インダクタンスLの変化は、中心導体202を含む共振器の特性周波数の変化をさらに引き起こし、これは、量子ビット208と他のデバイスとの間の結合の強度をさらに変化させる。したがって、ゲート電圧Vgateは、力学的インダクタンスLを調整するように構成可能であり、したがって、中心導体202を含む共振器を離調して、量子ビット208と他のデバイスとの間の結合の強度を変化させることができる。
【0050】
図3を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、例示的なシャントされたゲート調整可能な共振器を示す。上面図300は、一方の端部で第1の結合パッド304Aに接続され、もう一方の端部で第2の結合パッド304Bに接続された超伝導材料で構成された共振器中心導体302を有するシャントされた調整可能超伝導共振器構造を示す。共振器中心導体302は、共振器中心導体302を接地面308に結合するシャント部分312に接続されている。一実施形態では、共振器中心導体302およびシャント部分312は、同じ超伝導材料の連続部材から構成されてもよい。金属ゲート306は、シャント部分312に近接している。特定の実施形態では、接地面308は、超伝導材料で形成された超伝導接地面である。他の実施形態では、他のゲートおよび量子ビット構造が使用されてもよく、ゲート構造は、共振器中心導体302の全部もしくは一部、またはシャント312の全部もしくは一部、あるいはその両方をゲート制御することができる。
【0051】
一部の実施形態では、接地層308は、共振器が共平面導波路を備えるように構築されてもよい。この幾何学形状では、接地面は、共振器の長さに沿って変化しない距離だけ、どちらの側にも共振器中心導体302ならびにシャント312から分離されている。寸法は、典型的には、1MHz~20GHzの周波数領域でインピーダンスが50オームの伝送線路の設計仕様を指針とする。図3に示す実施形態では、この接地面の幾何学形状は、明確にするために示されていない。
【0052】
図3に示す特定の実施形態では、共振器中心導体302は、蛇行構成で示されている。他の特定の実施形態では、共振器中心導体302は、一直線の構成または任意の他の適切な共振器構成であってもよい。図示する実施形態では、金属ゲート306は、平面の矩形形状であり、シャント部分312の実質的に全長に近接して配置されている。他の特定の実施形態では、金属ゲート306は、任意の適切な形状、サイズ、または構成であってもよい。1つまたは複数の実施形態では、共振器中心導体302と金属ゲート306は、絶縁体材料または真空によって分離されている。
【0053】
第1の結合パッド304Aは、第1の量子ビット310Aを共振器中心導体302に容量結合するように構成され、第2の結合パッド304Bは、第2の量子ビット310Bを共振器中心導体302に容量結合するように構成されている。一部の実施形態では、第1の結合パッド304Aは、量子ビット310Aを共振器中心導体302に容量結合するように構成され、第2の結合パッド304Bは、読み出し測定回路などの別のデバイスに容量結合するように構成されている。一部の実施形態では、第1の結合パッド304Aは、量子ビット310Aを共振器中心導体302に容量結合するように構成され、第2の結合パッド304Bは、例えば、ワイヤボンドまたはバンプボンドを使用して、読み出し測定回路に直接結合する。
【0054】
一実施形態では、ゲート電圧Vgateが金属ゲート306に印加されて、共振器中心導体302内のキャリア密度の制御可能な変動を引き起こし、それによって、共振器中心導体302の力学的インダクタンスLがキャリア密度nに反比例するため、共振器中心導体302の力学的インダクタンスの変化をさらに引き起こす。力学的インダクタンスLの変動は、中心導体302を含む共振器の特性周波数の変化をさらに引き起こし、これは、第1の量子ビット310Aと第2の量子ビット310Bとの間の結合の強度をさらに変化させる。したがって、ゲート電圧Vgateは、力学的インダクタンスLを調整するように構成可能であり、したがって、中心導体302を含む共振器を離調させて、第1の量子ビット310Aと第2の量子ビット310Bとの間の結合強度を変化させることができる。
【0055】
図4を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、SCA配置における超伝導共振器の調整の例示的な実装形態を示す。上面図400は、平面2次元(2D)グリッド上に格子状に形成されたいくつかの量子ビット402を示す。量子ビットは、互いに結合されており、共振線404(「バス」としても知られている)を使用して通信する。量子ビット102の量子状態は、特定の量子ビットに容量結合された読み出し線406、406Aを使用して読み出される。読み出し線406Aのそれぞれは、これに近接して配置された金属ゲート408をさらに含み、様々な実施形態に関して本明細書に記載されるようなゲート調整可能な共振器を形成する。
【0056】
図示する実施形態では、ゲート調整可能な共振器を形成する読み出し線406Aのそれぞれ、および対応する金属ゲート408は、個々に制御可能なゲート電圧を受け取るように構成され、読み出し線406からの特定の量子ビット402の制御された結合および分離を可能にする。1つまたは複数の実施形態では、ゲート調整可能な共振器の個々にゲート制御されるセクションは、調整可能な読み出し共振器を介した量子ビット402の多重化読み出しの能力を提供する。
【0057】
図5を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、ゲート調整可能な共振器構造体500の断面図を示す。構造体500は、基板構造502の表面(例えば、上面)に形成された超伝導接地面部分504を有する基板構造502を含む。特定の実施形態では、基板構造502は、シリコン(Si)またはサファイアなどの任意の適切な基板材料で形成することができる。構造体500は、超伝導接地面部分504に近接して基板構造502の表面に配置された共振器中心導体506をさらに含む。共振器中心導体506および超伝導接地面部分504は一緒になって、共平面導波路共振器を構成している。一部の実施形態では、構造体500の構成要素の寸法および位置は、ゲート510による静電容量を考慮するように設計されてもよい。
【0058】
図5に示す実施形態では、共振器中心導体506は、超伝導材料としての魔法角ねじれ二層グラフェン(MATBG:Magic-Angle Twisted Bilayer Graphene)材料で形成されている。特定の実施形態では、MATBG材料は、0ケルビン(K)~1.7Kの超伝導臨界温度Tに調整されている。
【0059】
構造体500は、共振器中心導体506と金属ゲート510とを分離する絶縁体層または真空領域508をさらに含む。1つまたは複数の実施形態では、構造体500は、図2図4に関して説明したものなどのゲート調整可能な共振器の一例である。1つまたは複数の実施形態では、共振器中心導体506は、図3の第1の量子ビット310Aおよび第2の量子ビット310Bなどの2つの超伝導デバイス間に容量結合されている。一部の実施形態では、構造体500は、構造202、構造302、または構造306、あるいはその組合せの断面図を表す。
【0060】
一実施形態では、ゲート電圧Vgateが金属ゲート510に印加されて、共振器中心導体506内のキャリア密度の制御可能な変動を引き起こし、それによって、共振器中心導体506の力学的インダクタンスLがキャリア密度nに反比例するため、共振器中心導体506の力学的インダクタンスの変化をさらに引き起こす。力学的インダクタンスLの変動は、構造体500内の共振器の特性周波数の変化をさらに引き起こし、これは、第1の量子ビット310Aと第2の量子ビット310Bとの間の結合の強度をさらに変化させる。したがって、ゲート電圧Vgate力学的インダクタンスLを調整するように構成可能であり、したがって、構造体500内の共振器を調整して、第1の量子ビット310Aと第2の量子ビット310Bとの間の結合の強度を変化させることができる。
【0061】
図6を参照すると、この図は、別の例示的な実施形態による、ゲート調整可能な共振器構造体600の断面図を示す。構造体600は、基板構造602の表面(例えば、上面)に形成された超伝導接地面部分604を有する基板構造602を含む。特定の実施形態では、基板構造602は、シリコン(Si)またはサファイアなどの任意の適切な基板材料で形成することができる。構造体600は、超伝導接地面部分604に近接して基板構造602の表面に配置された超伝導材料で形成された共振器中心導体606をさらに含む。共振器中心導体606および超伝導接地面部分604は一緒になって、共平面導波路共振器を構成している。一部の実施形態では、構造体600の構成要素の寸法および位置は、ゲート610による静電容量を考慮するように設計されてもよい。
【0062】
図6に示す実施形態では、共振器中心導体606は、超伝導材料としての二テルル化タングステン(WTe)材料で形成されている。特定の実施形態では、WTe材料は、0K~0.61Kの超伝導臨界温度Tに調整されている。
【0063】
構造体600は、共振器中心導体606と金属ゲート610とを分離する絶縁体層または真空領域608をさらに含む。1つまたは複数の実施形態では、構造体600は、図2図4に関して説明したものなどのゲート調整可能な共振器の一例である。1つまたは複数の実施形態では、共振器中心導体606は、図3の第1の量子ビット310Aおよび第2の量子ビット310Bなどの2つの超伝導デバイス間に容量結合されている。一部の実施形態では、構造体600は、構造202、構造302、または構造306、あるいはその組合せの断面図を表す。
【0064】
一実施形態では、ゲート電圧Vgateが金属ゲート610に印加されて、共振器中心導体606内のキャリア密度の制御可能な変動を引き起こし、それによって、共振器中心導体606の力学的インダクタンスLがキャリア密度nに反比例するため、共振器中心導体606の力学的インダクタンスの変動をさらに引き起こす。力学的インダクタンスLの変動は、構造体600内の共振器の特性周波数の変化をさらに引き起こし、これは、第1の量子ビット310Aと第2の量子ビット310Bとの間の結合の強度をさらに変化させる。したがって、ゲート電圧Vgateは、力学的インダクタンスLを調整するように構成可能であり、したがって、構造体600内の共振器を調整して、第1の量子ビット310Aと第2の量子ビット310Bとの間の結合の強度を変化させることができる。
【0065】
図7を参照すると、この図は、別の例示的な実施形態による、ゲート調整可能な共振器構造体700の断面図を示す。構造体700は、基板構造702の表面(例えば、上面)に形成された超伝導接地面部分704を有する基板構造702を含む。特定の実施形態では、基板構造702は、シリコン(Si)またはサファイアなどの任意の適切な基板材料で形成することができる。構造体700は、超伝導接地面部分704に近接して基板構造702の表面に配置された超伝導材料で形成された共振器中心導体706をさらに含む。共振器中心導体706および超伝導接地面部分704は一緒になって、共平面導波路共振器を構成している。一部の実施形態では、構造体700の構成要素の寸法および位置は、ゲート710による静電容量を考慮するように設計されてもよい。
【0066】
図7に示す実施形態では、共振器中心導体706は、超伝導材料としてのSn1-δ-xInTe材料の薄層で形成されている。
【0067】
構造体700は、共振器中心導体706と金属ゲート710とを分離する絶縁体層または真空領域708をさらに含む。1つまたは複数の実施形態では、構造体700は、図2図4に関して説明したものなどのゲート調整可能な共振器の一例である。1つまたは複数の実施形態では、共振器中心導体706は、図3の第1の量子ビット310Aおよび第2の量子ビット310Bなどの2つの超伝導デバイス間に容量結合されている。一部の実施形態では、構造体700は、構造202、構造302、または構造306、あるいはその組合せの断面図を表す。
【0068】
一実施形態では、ゲート電圧Vgateが金属ゲート710に印加されて、共振器中心導体706内のキャリア密度の制御可能な変動を引き起こし、それによって、共振器中心導体706の力学的インダクタンスLがキャリア密度nに反比例するため、共振器中心導体706の力学的インダクタンスの変動をさらに引き起こす。力学的インダクタンスLの変動は、構造体700内の共振器の特性周波数の変化をさらに引き起こし、これは、第1の量子ビット310Aと第2の量子ビット310Bとの間の結合の強度をさらに変化させる。したがって、ゲート電圧Vgateは、力学的インダクタンスLを調整するように構成可能であり、したがって、構造体700内の共振器を調整して、第1の量子ビット310Aと第2の量子ビット310Bとの間の結合の強度を変化させることができる。
【0069】
図8を参照すると、この図は、例示的な実施形態による、SCA配置における超伝導共振器の調整の例示的な実施態様を示す。上面図800は、平面2次元(2D)グリッド上に格子状に形成されたいくつかの量子ビット802を示す。量子ビット802の量子状態は、特定の量子ビットに容量結合された読み出し線806を使用して読み出される。量子ビットは互いに結合されており、共振線804(「バス」としても知られている)を使用して通信する。共振線804のそれぞれは、それに近接して配置されたゲート808をさらに含み、様々な実施形態に関して本明細書に記載されたようなゲート調整可能な共振器を形成する。
【0070】
図示する実施形態では、ゲート調整可能な共振器を形成する共振線804および対応するゲート808のそれぞれは、量子ビット802のペアの制御された結合および分離を可能にするために、個々に制御可能なゲート電圧を受け取るように構成されている。1つまたは複数の実施形態では、ゲート調整可能な共振器の個々にゲート制御されるセクションは、最近傍量子ビット間の結合を徐々に調整する能力を提供する。1つまたは複数の実施形態では、ゲート調整可能な共振器の個々にゲート制御されるセクションは、望ましくない遷移周波数を有する量子ビットを遮断する能力を提供する。1つまたは複数の実施形態では、ゲート調整可能な共振器の個々にゲート制御されるセクションは、より高速なゲートおよび量子ビット間の調整可能な結合強度を有する新規の量子ゲート・ハードウェア・アプローチを提供する。
【0071】
本発明の様々な実施形態は、関連する図面を参照して本明細書に記載されている。本発明の範囲から逸脱することなく代替の実施形態を考案することができる。以下の説明および図面において、要素間に様々な接続および位置関係(例えば、上、下、隣接など)が規定されているが、当業者は、本明細書に記載された位置関係の多くは、向きが変わっても記載されている機能が維持されている場合は、向きに依存しないことを認識するであろう。これらの接続または位置関係あるいはその両方は、特に明記されていない限り、直接的または間接的であってもよく、本発明は、この点に関して限定的であることは意図していない。したがって、エンティティの結合は、直接的または間接的な結合のいずれかを指すことができ、エンティティ間の位置関係は、直接的または間接的な位置関係であってもよい。間接的な位置関係の例として、層「B」の上に層「A」を形成することに対する本明細書における言及は、層「A」および層「B」の関連する特徴および機能性が中間層によって実質的に変化しない限り、1つまたは複数の中間層(例えば層「C」)が層「A」と層「B」との間にある状況を含む。
【0072】
以下の定義および略語は、特許請求の範囲および本明細書の解釈に使用されるべきである。明細書で使用されるとき、用語「備える」、「備えている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「含有する」、または「含有している」、あるいはそれらの任意の他の変形形態は、非排他的な包含を含むことを意図している。例えば、要素の列挙を含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素だけに限定されず、そのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置に明示的に列挙されていない、あるいは固有の他の要素を含むことができる。
【0073】
加えて、用語「例示的」は、本明細書では、「例、実例、または例示として役立つ」ことを意味するために使用される。「例示的」として本明細書に記載された任意の実施形態または設計は、他の実施形態または設計よりも好ましいもしくは有利であると必ずしも解釈されるべきではない。用語「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」は、1以上の任意の整数、すなわち1、2、3、4などを含むと理解される。用語「複数」は、2以上の任意の整数、すなわち2、3、4、5などを含むと理解される。用語「接続」は、間接的な「接続」および直接の「接続」を含むことができる。
【0074】
「一実施形態」、「実施形態」、「例示的実施形態」などへの本明細書における言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含むことを示すが、すべての実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含んでも、含まなくてもよい。さらに、そのような言い回しは、必ずしも同じ実施形態に言及しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性がある実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、他の実施形態に関連するそのような特徴、構造、または特性に影響を与えることは、当業者の知識の範囲内であると思われる。
【0075】
用語「約」、「実質的に」、「およそ」、およびそれらの変形は、出願を申請する時点で利用可能な機器に基づいた特定の量の測定値に関連付けられた誤差の程度を含むことを意図している。例えば、「約」は、所与の値の±8%、または5%、または2%の範囲を含むことができる。
【0076】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されているが、網羅的であること、または開示された実施形態に限定されることを意図するものでもない。記載された実施形態の範囲および思想から逸脱することなく、多くの変更形態および変形形態が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場で見出される技術に対する実際の応用または技術的改良を最も良く説明するか、または当業者が本明細書に記載された実施形態を理解することができるように選択された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8