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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】赤外線を反射する積層グレージング
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20240705BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20240705BHJP
   B60J 7/043 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C03C27/12 L
C03C27/12 N
B32B17/10
B60J7/043
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021557479
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020057608
(87)【国際公開番号】W WO2020193363
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】1903180
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【弁理士】
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ コンポワン
(72)【発明者】
【氏名】アントワーヌ ディゲ
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-222233(JP,A)
【文献】国際公開第2018/015312(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
B32B17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明ガラスの外側板(1)、及び透明ガラスの内側板(5)を含む積層グレージングであって、前記外側板及び前記内側板が、中間層(8)によって互いに結合されており、かつ前記グレージングの内側(6)から外側(7)まで、次の一連の要素を含む、積層グレージング:
-透明ガラスの前記内側板(5)、
-780nmから2500nmの間の赤外線を反射する層のスタック(4)、
-以下を含む、前記中間層(8):
a)ポリマー化合物又はワニスの層を含むか又はそれからなり、前記ポリマー化合物又は前記ワニスが、染料を含み、前記染料が、380~780nmの可視領域内の光の少なくとも80%を吸収し、赤外線、特に800~2000nmの波長の赤外線に対して実質的に透過性である、第1の薄板(2)、
b)バルク着色されていないプラスチック、好ましくは熱可塑性プラスチック、特に透明PVBの、第2の薄板(3)、
-透明ガラスの前記外側板(1)
ここで、前記染料の800~2000nmでの平均吸光度が、前記染料の380~780nmでの平均吸光度の、5分の1以下、好ましくは7分の1以下、又は更に10分の1以下であり、ここで、前記平均吸光度が、前記ポリマー化合物又は前記ワニスの0.25mmの厚さを有する層において前記染料が0.5重量%の濃度で、380~2000nmの吸収スペクトルについて、Perkin-Elmer lambda 900分光光度計で測定されるものである。
【請求項2】
透明ガラスの外側板(1)、及び透明ガラスの内側板(5)を含む積層グレージングであって、前記外側板及び前記内側板が、中間層(8)によって互いに結合されており、かつ前記グレージングの内側(6)から外側(7)まで、次の一連の要素を含む、積層グレージング:
-透明ガラスの前記内側板(5)、
-780nmから2500nmの間の赤外線を反射する層のスタック(4)、
-以下を含む、前記中間層(8):
a)ポリマー化合物又はワニスの層を含むか又はそれからなり、前記ポリマー化合物又は前記ワニスが、染料を含み、前記染料が、380~780nmの可視領域内の光の少なくとも80%を吸収し、赤外線、特に800~2000nmの波長の赤外線に対して実質的に透過性である、第1の薄板(2)、
b)バルク着色されていないプラスチック、好ましくは熱可塑性プラスチック、特に透明PVBの、第2の薄板(3)、
-透明ガラスの前記外側板(1)、
ここで、前記染料が、前記ポリマー化合物のマトリックス中で、25℃において、380nm~780nmの平均モル吸光係数の5分の1以下、好ましくは7分の1以下、更には10分の1以下の、780nm~2000nmの平均モル吸光係数を有する。
【請求項3】
赤外線を反射する層のスタックが、誘電体材料の層、特に酸化物又は窒化物の層によって隔てられている、銀をベースとする少なくとも2つの機能層を含むスタックである、請求項1又は2に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記第1の薄板(2)の前記ポリマー化合物又は前記ワニスが、少なくとも1つのメタクリル官能基を含むモノマー、オリゴマー、若しくはポリマー、又はエポキシド、又はPVB、ラテックス、ポリウレタン若しくはアクリレートの分散粒子を含むワニスから選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記染料が、Sudan Black B(登録商標)(CAS 4197-25-5)又はNigrosine Solvent black 5(CAS 11099-03-9)から選択され、好ましくはSudan Black B(登録商標)である、請求項1~のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記染料が、前記第1の薄板の0.1~10重量%、好ましくは前記第1の薄板の0.2~3重量%を占める、請求項1~のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項7】
着色されていないプラスチックの第2の薄板(3)が、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリウレタン(PU)又はポリ塩化ビニル(PVC)の薄板であり、好ましくはPVBの薄板である、請求項1~のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記第2の薄板(3)が、ポリビニルブチラールの2つの板、及びそれらの間に配置されているポリ(エチレンテレフタレート)の板からなることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項9】
前記ガラス板が、0.7mm~5mm、好ましくは1.6mm~3.1mmの厚さを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項10】
層の前記スタックが、0.5~100nmの厚さを有する薄層のシステムであり、前記スタックが、銀をベースとする1つ又は複数の層を含み、好ましくは銀をベースとする少なくとも2つの層を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項11】
前記中間層が、内側ガラス板の側から連続的に、染料を含む前記ポリマー化合物又は前記ワニスの層を含むか又はそれからなる前記第1の薄板(2)、次いでバルク着色されていないプラスチックの前記第2の薄板(3)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項12】
前記中間層が、内側ガラス板の側から連続的に、バルク着色されていないプラスチックの前記第2の薄板(3)、次いで、染料を含む前記ポリマー化合物又は前記ワニスの層を含むか又はそれからなる前記第1の薄板(2)を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項13】
自動車の屋根、サイドウィンドウ、又はバックウィンドウとしての、請求項1~12のいずれか一項に記載の積層グレージングの使用。
【請求項14】
少なくとも1枚の第1のガラス板及び1枚の第2のガラス板を含み、2つの板が熱可塑性中間層によって互いに結合されている、請求項1~12のいずれか一項に記載の積層グレージングの製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする、積層グレージングの製造方法:
-前記第1のガラス板の内面に780nm~2500nmの赤外線を反射する層のスタックを堆積させること、
-前記スタックに、染料を含むポリマー層又はワニスを堆積させること、ここで、前記染料は、可視領域内の光の実質的にすべてを吸収し、赤外線に対して実質的に透過性である、
-前記染料を含む前記ポリマー層又は前記ワニスを乾燥させ、任意選択で、硬化させること、
-前記層のスタック及び着色された前記ポリマー層で覆われたガラス板を、着色されていない透明な熱可塑性中間層、特に着色されていないPVB、及び第2のガラス板と組み立て、それによって、着色された前記ポリマー層が前記中間層と直接接触するようにすること、
-脱気し、その間に前記ガラス板と前記熱可塑性中間層との間に閉じ込められた空気を排除すること、並びに
加圧下及び/又は真空下で100~200℃の温度で積層グレージングを熱処理し、その間に積層グレージングの組み立てを行うこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車のサンルーフとして使用するための積層グレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
積層ガラスグレージングは、主に安全上の理由から、乗物又は建物においてさえも広く使用されている。この構造は実際に、破壊され又は損傷した場合に飛散するガラス破片によって引き起こされる損傷の危険性を排除することを確実にする。
【0003】
そのようなグレージングは、以下を必要とする:
-一方では、入射太陽放射線のすべてが通過することを可能とせず、乗物内部の過剰な加熱を抑制し、及び/又は(例えば、客室に入る熱量のために空調を過剰に使用することによる)エネルギー消費を制限すること、
-他方では、内部を十分に照らすために十分な量の光が通過することを可能にし、それによって、視覚的な快適さ及び快適さの感覚を維持すること。
【0004】
この2つの要件を満たすこと、すなわち、高エネルギー放射線の過大な侵入を防ぎ、内部を十分に照らすことは、必然的に妥協を伴う。したがって、光に対する一定の透明性を維持しながら、熱エネルギーの反射に関して最良の妥協を有する積層グレージングに対する要求がある。
【0005】
積層グレージングを通しての熱の透過を評価するために、全太陽光透過率(TTS:total solar transmittance)が、慣例「A」AM 1.5で標準規格ISO 13837に従ってしばしば測定される。可視領域(380~780nm)におけるグレージングを通る光透過率を評価するために、例えば、標準規格NF EN-410に従って測定される光透過率TLを使用することができる。
【0006】
上述の妥協を達成するために、積層構造のいくつかの構成が既に説明されている。
【0007】
第1の可能性によれば、着色ガラスの使用が知られており、これは、太陽スペクトルの異なる部分(紫外光-可視光-近赤外光)を区別することなく、放射線の一部を吸収し、入射放射線のスペクトルの大部分をフィルターで除去する。例えば、国際公開第2006/108980号パンフレットには、自動車の屋根用のこのようなグレージングが記載されている。このモデルによれば、30%程度のTTSに対して、10%程度の光透過TLが維持される。
【0008】
他の可能な構成によれば、任意に着色されている2つのガラス板を結合している、着色された中間層、特にPVB(ポリビニルブチラール)の着色された薄板を使用することが提案されている。この種の構成の一例として、例えば、欧州特許出願公開第0687554号明細書を参照することもできる。
【0009】
米国特許第6910729号明細書は、代替態様として、エレクトロクロミックガラス、乗物の内側に面する表面に配置されている低放射率層とを組み合わせた温感効果を有するグレージングを記載している。
【0010】
欧州特許出願公開第1060876号明細書は、別の解決策に従い、外側ガラス板、面2(面は外側から内側に番号付けされている)に配置された銀の2つの層を含む太陽光保護スタック、透明なPVBの薄板、着色されたPVBの薄板、フッ素ドープ酸化スズの低放射率層が堆積されている内側ガラス板からなる積層グレージングを記載している。しかしながら、近赤外線(すなわち、780~2500nm)を反射するスタック、特に銀をベースとするいくつかの層を含むスタックの使用は、外側から見た結果として得られるグレージングに非常に顕著な色合いを与え、特にグレージングの表面に対する法線から遠い視角に対する反射において赤みがかった外観を与え、この分野では見苦しくかつ望ましくないと考えられる着色を与える。
【0011】
更に、前述のシステム(着色PVB及び/又はガラス)の様々な他の組み合わせが提案されている。これによれば、最終的には、20~35%程度のTTS係数に対して、8~20%の程度の光透過率TLの値が一般的に得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような値は、全体的な満足を与えるが、今日までに提案されている解決策は、実施するのに費用がかかり、特にバルク着色ガラス及び/又はバルク着色PVB(又は他の中間層)の価格が高いために、最終グレージングの価格は比較的高い。「バルク着色」とは、原則として前記染料を含有しない透明なガラス又は透明なPVBとは対照的に、染料が製品(ガラス又はPVB)の製造工程中に、前記製品の体積全体に均一に分布するように導入されることを意味している。
【0013】
したがって、本発明の基礎となる課題は、製造が容易で経済的である積層ガラスを提案することであり、この合わせガラスは特に、車の屋根として機能することができ、TTSとTLとの間に要求される妥協点、特に、8~20%の可視光の透過率TL、及び20~35%のTTSファクター、好ましくは、視野角にかかわらず、外観において、及びより好ましくは内観において、比較的中間の色であるという妥協点を達成することができ、かつバルク着色ガラス又はバルク着色PVBを含まない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
より具体的には、前述の技術的課題を、本発明による積層グレージングによって解決する。
【0015】
前記グレージングは、以下の特徴を有する:このグレージングは、中間層によって互いに結合された透明ガラスの外側板及び透明ガラスの内側板を含む。このグレージングは、前記グレージングの内側から外側まで、以下の一連の要素を含む:
-前記透明ガラスの内側板、
-780nmから2500nmの間の赤外線を反射する層のスタック、
-以下を含む、中間層:
a)ポリマー化合物又はワニスの層を含むか又はそれからなり、前記ポリマー化合物又は前記ワニスが、染料を含み、前記染料が、380nm~780nmの可視領域内の光の実質的にすべてを吸収し、赤外線、特に近赤外線、に800nmと2000nmとの間の波長を有する赤外線に対して実質的に透過性である、第1の薄板、
b)透明な(すなわち、バルク着色されていない)プラスチック、好ましくは熱可塑性プラスチック、特に透明PVBの第2の薄板、
-透明ガラスの前記外側板。
【図面の簡単な説明】
【0016】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0017】
前記積層グレージングの追加の有利な特徴を以下に示す。これらは、当然、適用可能であれば、互いに組み合わせてもよい:
-前記染料のPerkin-Elmer lambda900分光光度計で測定したときの、前記ポリマー化合物又は前記ワニスの少なくとも10μm、例えば0.25mmの厚さを有する層における0.5重量%の濃度での380~2000nmの吸収スペクトルにおいて、800~2000nmの平均吸光度が、380~780nmの間の平均吸光度の5分の1以下、好ましくは7分の1以下、又は更に10分の1以下である。
-前記染料は、黒色又は実質的に黒色である。
-前記染料は、前記ポリマー化合物のマトリックス中で、25℃で、780nm~2000nmの平均モル吸光係数(又はモル吸光率)が、380nm~780nmの平均モル吸光係数の5分の1以下、好ましくは7分の1以下、更には10分の1以下である。周知のように、モル吸収性又はモル吸収係数とも呼ばれるモル吸光係数は、組成物が光を吸収する能力を特徴付ける。Beer-Lambertの法則は、モル吸光係数が組成物の濃度にも光が横切る厚さにも依存せず、溶質(この場合、染料)及び溶媒(この場合、マトリックス)の性質、入射光の波長及び温度に依存することを規定する。これによれば、「平均」モル吸光係数は、本発明において、考慮される波長範囲にわたって測定される前記係数の平均に対応する。
-赤外線を反射する層のスタックは、誘電体材料の層、特に酸化物又は窒化物の層によって隔てられている、銀をベースとする少なくとも2つの機能層を含むスタックである。
-第1の薄板のポリマー化合物は、少なくとも1つのメタクリル官能基を含むモノマー、オリゴマー、若しくはポリマー、又はエポキシド、又はPVB、ラテックス、ポリウレタン又はアクリレートの分散粒子を含むか若しくはそれからなるワニスから選択され、前記分散粒子の分散は特に、適当な溶媒(極性又は無極性)中で得られる。
-第1の薄板の厚さは、1~250μm、好ましくは5~100μm、非常に好ましくは7~50μmである。
-染料は、Sudan Black B(登録商標)((2,2-ジメチル-1,3-ジヒドロペリミジン-6-イル)-(4-フェニルアゾ-1-ナフチル)ジアゼン、C29246、CAS 4197-25-5)又はNigrosine Solvent black 5(CAS 11099-03-9)から選択され、好ましくはSudan Black B(登録商標)である。
-前記染料は、前記第1の薄板の0.1~10重量%、好ましくは前記第1の薄板の0.2~3重量%を占める。
-着色されていないプラスチックの第2の薄板は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリウレタン(PU)又はポリ塩化ビニル(PVC)の薄板であり、好ましくはPVBの薄板である。
-代替的には、第2の薄板は、ポリビニルブチラールの2つの板、及びそれらの間に配置されているポリ(エチレンテレフタレート)の板からなる。
-ガラス板は、0.7mm~5mm、好ましくは1.6mm~3.1mmの厚さを有する。
-層のスタックは、0.5~100nmの厚さを有する薄層のシステムであり、前記スタックは、銀をベースとする1つ又は複数の層を含み、好ましくは銀をベースとする少なくとも2つの層を含む。
-中間層は、内側ガラス板に関して、連続的に、ポリマー化合物又はワニスの層を含むか又はそれからなる前記第1の薄板、次いで染料を含む前記ポリマー化合物又は前記ワニス、及び次いでバルク着色されていないプラスチック製の前記第2の薄板を含む。
-中間層は、内側ガラス板に関して、連続的に、バルク着色されていないプラスチック製の前記第2の薄板、次いでポリマー化合物又はワニスの層を含むか又はそれからなる前記第1の薄板、次いで染料を含む前記ポリマー化合物又は前記ワニスを含む。
【0018】
本発明はまた、自動車の屋根、サイドウィンドウ、又はバックウィンドウとしての、上記のような積層グレージングの使用に関する。
【0019】
更に、本発明は少なくとも1つの第1のガラス板及び1つの第2のガラス板を含み、2つの板が熱可塑性中間層によって互いに結合されている、上述の積層グレージングの製造方法に関する。この方法は、以下の工程を含むことを特徴とする:
-第1のガラス板の内面に780nm~2500nmの赤外線を反射する層のスタックを堆積させること、
-前記スタックに、染料を含むポリマー層又はワニスを堆積させること、ここで、前記染料は、可視領域内の光の実質的にすべてを吸収し、赤外線に対して実質的に透過性である、
-染料を含むポリマー層又はワニスを乾燥させ、及び/又は任意選択で硬化させること、
-層のスタック及び着色されたポリマー層で覆われたガラス板を、着色されていない透明な熱可塑性中間層、特に着色されていないPVB、及び第2のガラス板と組み立て、それによって、着色ポリマー層が前記中間層と直接接触するようにすること、
-脱気し、その間にガラス板と熱可塑性中間層との間に閉じ込められた空気を排除すること、並びに
-加圧下及び/又は真空下で100~200℃の温度で積層グレージングを熱処理し、その間に積層グレージングの組み立てを行うこと。
【0020】
非限定的な例として、本発明をより良く理解するために、添付の図1は、本発明によるグレージングの実施形態の断面図を示す。
【0021】
この実施形態は自動車用のグレージング屋根構造を製造するのに特に適しているが、バックウィンドウとして、又はサイドグレージングとしても使用することができる。
【0022】
本発明による積層グレージング10は、2枚の透明なガラス板1及び5、すなわちバルク着色されていないガラス板を含む。特に、前記グレージングは、フロート法によって慣用的に得られるガラスである。この種の着色されていないガラスは、特に光透過率TLが少なくとも88%であってよく、ほとんどの場合、90%程度である。
【0023】
グレージングは、乗物の外部6から内部空間7を隔てており、凸状であってもよい。
【0024】
本発明による積層グレージングの個々のガラス板1及び5は、ガラス製である。それらを互いに結合する中間層8と共に、それらは積層構造を形成している。これらのガラス板は、好ましくは1mm~5mmの厚さを有する。軽量化を目的として、ガラス板は、特に積層グレージングが自動車に装着される場合に、薄い厚さと高いレベルの安全性との間で、可能な限り良好な妥協点に到達することを可能にしなければならない。この妥協は特に、厚さが1.5mm~3.1mmのガラス板で得られる。
【0025】
本発明によれば、赤外線を選択的に反射する層のスタック4が内側ガラス板5に堆積されている。このようなスタックは周知であり、特に貴金属をベースとする層、特に銀をベースとする層と、しばしば干渉層と呼ばれる誘電体材料の層との組み合わせを含む。公知の方法では、これらのスタックが酸化物及び/又は窒化物などの誘電体材料の一連の層、並びに銀をベースとする層を含む金属層からなり、これらの層のいわゆる「低放射率」特性は、いわゆる近赤外線又は太陽赤外線(780nm~2000nmの波長を有する)を選択的に反射することを可能とし、また、特に前記干渉層又は干渉層の組合せによる光の反射を最小限に抑えることによって、太陽スペクトルの可視光(380nm~780nmの波長を有する)の少なくとも一部、好ましくは70%以上、更には80%以上を通過させることができる。更に、内側板の内面にこの種のスタックが存在することにより、冬季には熱を乗客室内に保持することができる。
【0026】
本発明によるスタックは特に、それらのシート抵抗が1.5Ω/□未満、より好ましくは1.2Ω/□未満、更には1.1Ω/□未満であるように選択される。シート抵抗は例えば、Nagy Mess-systemsのSRM-14Tタイプの器具を用いて測定することができる。
【0027】
これらのスタックは、厚さが1~30nm程度である数十層までの層を含むことができ、ここでは、しばしばマグネトロン支援で、カソードスパッタリングと呼ばれる技術によって堆積される。
【0028】
本発明による好ましいスタックは、銀をベースとする2つ、好ましくは3つ、又は更には4つの層を含む。
【0029】
前記スタックの例は特に、国際公開第2005/051858号パンフレット又は国際公開第2013/107983号パンフレットに記載されている。
【0030】
次に、スタック4を備えた内側ガラス板5は、中間層8によってガラス板に強固に結合される。
【0031】
中間層8は、透明なプラスチック(すなわち、それを着色するための、すなわち、その色又は通過する光の量を変化させるための、染料の添加がされていない)の少なくとも1つの中間薄板3を含む複合体である。この中間薄板は、公知の方法で、オートクレーブ内で2枚のガラス板の間で溶融され、それらを一緒に結合している。ポリビニルブチラール(PVB)は、任意に吸音性であってもよく、前記中間薄板3を製造するのに最も適した材料であることが見出された。ポリビニルブチラール(PVB)は、ほとんどの場合、0.38mm又は0.76mmの厚さで使用される。
【0032】
PVBの代わりに、本発明によれば、2つのガラス板の間に溶融された中間薄板を構成するため、他の全ての公知の材料、例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリウレタン(PU)又はポリ塩化ビニル(PVC)などの熱可塑性プラスチックを使用することも可能である。
【0033】
代替的には、あまり好ましくはないが、PVBの薄板は例えば、PVBの2つの層の間に組み込まれたポリ(エチレンテレフタレート)(PET)の支持層を含む層のシステムからなる薄板と置き換えることができる。このようにして、積層構造10においての個々のガラス1、5を一緒に接合するための3層の薄板が得られる。
【0034】
本発明によれば、中間層8は、工業的に従来使用されているPVBの透明な薄板3の下に、すなわち、層4のスタックと前記中間薄板3との間に、染料を含む追加の層又は薄板2を更に含む。
【0035】
図1は、内部7から外部6へと、層又は薄板2、次いで薄板3までをこの順序で含む中間層を示す。しかしながら、これらの2つの薄板の連続の順序を逆にした場合、本発明の範囲内にあるが、この構成はあまり好ましくない。
【0036】
この追加層2は、有利にはポリマー化合物の層からなることができる。そのようなポリマーは特に、国際公開第2018/178559号パンフレット、国際公開第2018/178547号パンフレット、又は国際公開第2018/115768号パンフレットに記載されているタイプのものであってもよく、特に、(メタ)アクリレート又はエポキシドタイプのポリマーであってもよく、又はそれらを含んでいてもよい。
【0037】
本発明によれば、ポリマー層2は、有利には少なくとも1つのメタクリル官能基を含むモノマー、オリゴマー、又はポリマーから選択される(メタ)アクリレート化合物を含む液体組成物から得ることができる。例えば、液体組成物は、少なくとも1つの脂肪族ウレタン-アクリルオリゴマー、少なくとも1つの単官能性、二官能性又は三官能性(メタ)アクリレートモノマー、少なくとも1種の重合開始剤及び染料を含む。
【0038】
可能な実施形態によれば、液体組成物は、(メタ)アクリレート化合物の全重量に対して重量パーセントで、30~80重量%の少なくとも1種の脂肪族ウレタン-アクリルオリゴマー及び20~70重量%の少なくとも1種の単官能性又は二官能性(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0039】
有利には、染料は、がポリマー化合物の層中に存在するポリマー化合物の全重量に対して0.01~10重量%の量の割合で存在する。ポリマー層2は、接着促進剤を更に含んでいてもよい。
【0040】
ポリマー層2は、上述の液体組成物の室温での適用、ローラーコーティング、散布、浸漬、カーテンコーティング、又は噴霧によって、層4のスタックに堆積させることができる。
【0041】
次いで、ポリマー層2は、有利には200℃未満の温度で乾燥することによって、UV架橋によって、又は電子ビームによって硬化される。
【0042】
硬化させたポリマー層2の厚さは、1~250μm、典型的には5~50μmであってよい。
【0043】
可能な実施形態によれば、着色されているポリマー層が堆積される層のスタックの表面及び/又はポリマー層と接触する熱可塑性中間層の面の表面は、接着促進剤で前もって処理されていてもよい。
【0044】
前記ポリマーは、可視領域(380~780nm)における光の吸収の質のために特に選択されるが、以下に記載される意味で、近赤外線、特に780~2000nmに対して実質的に透過性でもある、染料(又は着色剤)のためのマトリックスとして働く。例えば、Sudanタイプの染料、特に、構造式が以下に示される染料Sudan Black Bを有利に選択することができる:
【化1】
【0045】
当然、本発明は、この種の化合物に限定されるものではなく、そのプラスチックマトリックス中において780nm~2000nmでの低い赤外吸収係数を有する任意の染料を、本発明に従って使用することができ、可視領域における高い吸収係数を使用することができる。したがって、使用される染料は、原則的に黒色である。しかしながら、可視光線の全てを吸収しないが、可視光線の少なくとも80%、又は少なくとも90%を吸収し、次いで暗色ではあるがわずかな彩色を有する染料を使用することもできる。
【0046】
別の実施形態によれば、染料を含むポリマー層2は、前記染料をベースとするワニスの形態でスタック4が設けられた内側ガラス板5に堆積されていてもよい。このようなワニスは例えば、適切な溶媒(極性又は無極性)中、すなわち、染料を溶解させて均一な層の形態で堆積させることを可能とする溶媒中のPVB、ラテックス、ポリウレタン、又はアクリレートの分散粒子の液体溶液からなる。
【0047】
有利には、前記染料は、それがスタック中に存在し、前記マトリックス(又はワニス)の全重量の0.5%の濃度で存在する付加的な層2において、少なくとも5マイクロメートルであり、0.25mmまでであることができ、好ましくは10~40マイクロメートルである層の厚さについて、380~780nmの間のその積分された吸光度の、780nmと2000nmの間のその積分された吸光度に対する比が、5より大きい、好ましくは7より大きい、又は更に10より大きいように選択される。
【0048】
染料の選択の別の可能な実施形態によれば、染料は、前記ポリマー化合物のマトリックス中で、25℃で、380nm~780nmでの平均モル吸光係数の5分の1以下、好ましくは7分の1以下、又は10分の1以下でさえある、780nm~2000nmでの平均モル吸光係数を有することができる。
【0049】
最後に、積層構造10は、透明ガラスである別の外側ガラス板1を含み、これは、中間層8の上にあり、好ましくは薄板3と直接接触しており、積層構造を完成させている。
【0050】
本発明による積層グレージングは、好ましくは、L、a*、b*国際測色系において、以下を有する:
-透過光では、Lの値は、60未満、又は55未満であり、かつa*及びb*の値は、絶対値が5未満であり、好ましくは3未満である。より好ましくは、a*及びb*の値は負であるか、又はゼロに非常に近い。
-外部反射では、Lの値は、35未満、又は30未満のであり、a*及びb*の値は、絶対値が5未満であり、好ましくは3未満である。より好ましくは、a*及びb*の値は負であるか、又はゼロに非常に近い。
-内部反射では、Lの値は、40未満、又は35未満であり、a*及びb*の値は、絶対値が5未満であり、好ましくは3未満である。より好ましくは、a*及びb*の値は負であるか、又はゼロに非常に近い。
【0051】
これによれば、本発明による積層グレージングは、有利には外部反射だけでなく、内部反射においても比較的中間の色を有する。
【0052】
上述の積層構造10の製造、特に、積層グレージングの2つのガラス板を結合するために従来使用されているプラスチック薄板3(特に透明PVB)と組み合わせた、熱可塑性中間層8における追加層2の組み込みは、特に、国際公開第2018/178559号パンフレット、国際公開第2018/178547号パンフレット又は国際公開第2018/115768号パンフレットに記載されているような方法によって実施することができる。前記製造の実施についてのより詳細については、これらを参照されたい。
【0053】
より詳細には、積層グレージングを製造するための前記方法は、以下の工程を含む:
-真空カソードスパッタリング技術により、第1の内側ガラス板5の内面に、上述の赤外線反射スタック4を堆積させること、
-任意選択で上記のグレージングを成形すること、例えば曲げ又は強化を行うこと、
-特にローラ被膜により、散布により、浸漬により、カーテンコーティングにより、又は好ましくはスプレー(スプレーコーティング)により上記の第1のガラス板(スタック4を備えた薄板5)の内面に、染料を含むプラスチックのポリマー層2又は染料を含むワニスを液状堆積させること、
-ポリマー層2を乾燥させ、任意選択で硬化させること、
-着色されているポリマー層2でコーティングされたガラス板5を、染色されていない透明な熱可塑性中間層3、特に染色されていないPVB、及び第2のガラス板1と組み立てて、着色されているポリマー層が前記中間層と直接接触するようにすること、
-脱気し、その間に、ガラス板と熱可塑性中間層8との間に閉じ込められた空気を除去すること、並びに
-加圧下及び/又は真空下で、60~200℃の温度で、積層ガラスを熱処理すること。
【0054】
積層グレージングとして、特に自動車用のグレージング屋根として適用するために使用される場合、本発明によるグレージングは、その特定の構造のために、上記の技術的問題を解決することを可能にする。特に、本発明によるグレージングは、以下の利点を組み合わせることができる:
-その組成物に含まれる材料が既存の構造に存在する最も高価な要素を含まない(特に、最初からバルク染色されているPVBを含まず、バルク染色されているガラスを含まない)ことによる、その材料の低いコスト、及びそれによる、低い製造コスト。更に、本発明に従って使用可能な液体堆積の操作は一般に、高いライン速度のために安価であり、使用される染料は商業的に入手可能であり、安価である。
-グレージングの外側の中間の色、特に大きな視野角での色。実際に、赤外線反射薄層のスタックの反射色は、染料を含むポリマー層を通過する際に強く減衰される。
-大きな視野角でも、グレージングの内側の中間の色。
-ポリマー層中の染料の重量濃度を、前記層の全重量の5%まで、又は更には10%までの値に調整することによる、グレージングの光透過率の調整の可能性。
-以下に起因する、得られた積層グレージングの最適な太陽光制御特性:
a)第1のガラス板上に、太陽赤外線を反射するが、可視領域の放射線の大部分を通過させるスタックが存在すること、
b)グレージング内の染料の性質及び配置のため、入射太陽放射線はまず、染料を含む層を通過し、可視光線の調節可能な部分(380nmと780nmとの間)は染料の濃度に応じて吸収される。主に太陽スペクトルの赤外線部分を含む残留放射線は、層のスタックによって染料を含む層へと反射される。染料は、近赤外線領域の放射線を吸収しないので、グレージング、ひいては乗物の客室の付加的な加熱は観察されない。
【0055】
更に、可視領域の光反射は、グレージングの両側で低く、典型的には15%未満、又は更には10%未満であり、良好な外側の美的外観及び改善された内側の快適性の両方を、特に夜間に確実にすることを可能にする。
【0056】
有利には、層のスタックは、内部を十分に照らすために十分な量の光が通過することを可能にし、それによって、視覚的な快適さ及び快適な感覚を維持するように有利に選択される。これによれば、有利には、2.1ミリメートルの厚さを有する透明ガラスに堆積されたときに、少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は更には少なくとも70%の上記の意味での光透過TLを有するグレージングをもたらす層のスタックを選択することができる。
【0057】
本発明によるグレージングの実施形態を以下に示す:
【0058】
〈A-本発明による積層構造の製造〉
寸法10×10cmの、図1に関連して上述したような積層構造の試験片Aを作製する。
【0059】
試験片Aを次のようにして得る:
-Planiclear(登録商標)(約90%のTL、未染色)の呼称で本出願人である会社により市販されている2.1mmの厚さを有する第1の透明なガラスに、マグネトロン支援カソードスパッタリングの技術によって、層のスタックを堆積させる。スタックは、銀の3つの層を含み、国際公開第2005/051858号パンフレットの実施例14に記載されている。そのシート抵抗は、(Nagy Mess Systems社のタイプSRM-14T装置を用いて測定した場合)1.0Ω/□である。
-Sartomer CN9002タイプのアクリレートオリゴマー(二官能性脂肪族ウレタン-アクリレートオリゴマー)及びSR 410モノマー(単官能性芳香族アクリルモノマー)を含む液体組成物を、50/50重量比で作製して、この第1の透明ガラスに堆積させる。Black Sudan Bタイプの染料を、初期組成物の全重量に対して0.5重量%の割合でアクリレート配合物に添加し、並びに得られた混合物の2重量%に等しい量のSpeedcure 73光開始剤を添加して、重合を誘導する。
【0060】
このようにして得られた液体組成物を、スタックで覆われたガラス基板に、マイヤーバーを用いて堆積させて、ガラス基材の上に約20μmの厚さを有する湿潤層を得る。このようにして得られた層を、紫外線照射(約280mJ/cm2のUVB線量、16m/分の移動速度)によって硬化させる。乾燥した着色されている層の厚さは、約10~15μmである。
【0061】
Eastman社によってSaflex RK11(登録商標)という呼称で市販されている、厚さ0.76mmの透明PVBの薄板を、着色されている層でコーティングされた第1のガラス板上に置き、第1の透明ガラス板と同一の第2の透明ガラス板を、積層グレージングを閉じるように中間層に貼り付ける。このアセンブリを130℃、12バールの圧力で30分間オートクレーブ処理する。このオートクレーブ処理工程の過程で、任意に、染料の表面密度を均質化する傾向があるPVB内部の染料の拡散を観察することができる。
【0062】
〈B-本発明による積層構造の特徴〉
上記のようなグレージングの光学的特性評価は、Perkin Elmer社のLambda900分光光度計を用いて実施する。
【0063】
添付の図3は、先の実施例に従って得られた積層グレージングの透過スペクトル(曲線1)及び反射スペクトルを示す。反射スペクトルは、グレージングの外面(外側ガラス側、曲線3)及びグレージングの内面(内側ガラス側、曲線2)の両方で測定されている。
【0064】
近赤外線波長の反射は、650~900nmの波長領域では、グレージングのどの表面(内側又は外側)を測定しても、ほぼ同一であることが分かる。この特性は、Black Sudan B染料の近赤外領域での吸収がないことを示している。
【0065】
更に、外面の可視光の反射は低くなっている(RL <10%)。更に、肉眼で観察される色はあまり顕著ではなく、実質的に中間である。
【0066】
以下の表1は、本発明による積層グレージングの主な測色データを示す:
【0067】
【表1】
【0068】
更に、光透過率TLは、アクリレートをベースとする着色層によって効率的に低減され、図3のスペクトルから積分されたTLは18%と測定される。視覚的には、得られた積層グレージングは、透過光が暗灰色に見える。
【0069】
ISO 13837標準規格A、図3のスペクトルからAM1.5に従って測定されたTTSは、26%であり、上記の従来技術の構成について、PVB及び/又は着色ガラスの使用に基づいて得られた値に非常に近い。
【0070】
本発明によれば、色素の濃度に作用することによって、グレージングの光透過率及び全エネルギー透過率を、5%程度のTLs及び15%程度のTTSまでの水準まで更に低下させることができるように思われる。
【0071】
〈C-本発明の染料の選択〉
図2は、以下を示している:
-バルク染色されたPVBの0.38mmの薄板である市販のRB17の吸収スペクトル(実線で示される曲線)、
-0.5重量%の染料Black Sudan Bを含む、上記のようなアクリレート薄板の0.25mmの薄板の吸収スペクトル(点線で示される曲線)。
【0072】
2つのスペクトルの比較は、染料Black Sudan Bを含有する薄板が可視領域で光を強く吸収し、染料は可視光のほとんど全てを吸収し、近赤外領域、特に800~2000nmでは光をほとんど吸収しないことを明確に示している。より詳細には、図2が800~2000nmの間のアクリレート薄板の平均の吸収が、可視領域(380~780nm)におけるその平均の吸収に対して、5分の1以下、又は更には7分の1以下、又は更には10分の1以下であることを示す。
【0073】
対照的に、着色PVBを含む薄板である市販のRB17は、IR放射線の実質的な部分、特に800~2000nmのIR放射線を吸収する。
【0074】
染料を含む薄板(又は層)のこの性能、及び入射太陽放射線とIR反射層のスタックとの間の、本発明によるグレージングにおけるその特定の位置決めは、これにより、特に強い日射の下でのグレージングの加熱を防止することを可能にしつつ、その選択性を維持する。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明による積層グレージングは、入射太陽放射線のIR部分の50%を超える、又は更に70%を超える部分を外部に反射する。本発明の別の利点によれば、外側から見た場合、積層グレージングは特に目立った目に見える望ましくない着色を伴わずに、暗い外観又は(部分的である)鏡面効果を有することができる。特に、外側から見たグレージングのいかなる着色効果も抑制され、これは通常、グレージング内に反射層のスタックが存在するためであり、これはより多くの場合、反射において非常に着色された外観を有する。有利には本発明の実施形態によれば、層のスタックと外部との間の染料の中間層における存在は、スタックでの太陽放射線の反射から生じる初期色を、人間の目には知覚できないか、又はほとんど知覚できないレベルまで減衰させることを可能にする。
【0076】
本発明による積層グレージングは例えば、中間層における染料の濃度を適合させることによって、屋根ガラスだけでなく、乗物のサイドガラス又はリアガラスにも使用するのに特に適している。積層グレージングは、乗物内部のある程度の明るさと同様に、高められた熱感を与える。この高められた熱感は、光の伝達及びエネルギーの伝達に関する高選択性によって得られる。
本発明の実施態様の一部を以下の項目1~15に記載する。
〈項目1〉
透明ガラスの外側板(1)、及び透明ガラスの内側板(5)を含む積層グレージングであって、前記外側板及び前記内側板が、中間層(8)によって互いに結合されており、かつ前記グレージングの内側(6)から外側(7)まで、次の一連の要素を含む、積層グレージング:
-透明ガラスの前記内側板(5)、
-780nmから2500nmの間の赤外線を反射する層のスタック(4)、
-以下を含む、前記中間層(8):
a)ポリマー化合物又はワニスの層を含むか又はそれからなり、前記ポリマー化合物又は前記ワニスが、染料を含み、前記染料が、380~780nmの可視領域内の光の実質的に全てを吸収し、赤外線、特に800~2000nmの波長の赤外線に対して実質的に透過性である、第1の薄板(2)、
b)バルク着色されていないプラスチック、好ましくは熱可塑性プラスチック、特に透明PVBの、第2の薄板(3)、
-透明ガラスの前記外側板(1)。
〈項目2〉
前記染料の800~2000nmでの平均吸光度が、前記染料の380~780nmでの平均吸光度の、5分の1以下、好ましくは7分の1以下、又は更に10分の1以下であり、ここで、前記平均吸光度が、前記ポリマー化合物又は前記ワニスの0.25mmの厚さを有する層において前記染料が0.5重量%の濃度で、380~2000nmの吸収スペクトルについて、Perkin-Elmer lambda 900分光光度計で測定されるものである、項目1に記載の積層グレージング。
〈項目3〉
前記染料が、前記ポリマー化合物のマトリックス中で、25℃において、380nm~780nmの平均モル吸光係数の5分の1以下、好ましくは7分の1以下、更には10分の1以下の、780nm~2000nmの平均モル吸光係数を有する、項目1に記載の積層グレージング。
〈項目4〉
赤外線を反射する層のスタックが、誘電体材料の層、特に酸化物又は窒化物の層によって隔てられている、銀をベースとする少なくとも2つの機能層を含むスタックである、項目1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目5〉
前記第1の薄板(2)の前記ポリマー化合物が、少なくとも1つのメタクリル官能基を含むモノマー、オリゴマー、若しくはポリマー、又はエポキシド、又はPVB、ラテックス、ポリウレタン若しくはアクリレートの分散粒子を含むワニスから選択される、項目1~4のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目6〉
前記染料が、Sudan Black B(登録商標)(CAS 4197-25-5)又はNigrosine Solvent black 5(CAS 11099-03-9)から選択され、好ましくはSudan Black B(登録商標)である、項目1~5のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目7〉
前記染料が、前記第1の薄板の0.1~10重量%、好ましくは前記第1の薄板の0.2~3重量%を占める、項目1~6のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目8〉
着色されていないプラスチックの第2の薄板(3)が、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリウレタン(PU)又はポリ塩化ビニル(PVC)の薄板であり、好ましくはPVBの薄板である、項目1~7のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目9〉
前記第2の薄板(3)が、ポリビニルブチラールの2つの板、及びそれらの間に配置されているポリ(エチレンテレフタレート)の板からなることを特徴とする、項目1~7のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目10〉
前記ガラス板が、0.7mm~5mm、好ましくは1.6mm~3.1mmの厚さを有することを特徴とする、項目1~9のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目11〉
層の前記スタックが、0.5~100nmの厚さを有する薄層のシステムであり、前記スタックが、銀をベースとする1つ又は複数の層を含み、好ましくは銀をベースとする少なくとも2つの層を含む、項目1~10のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目12〉
前記中間層が、前記内側ガラス板に関して、連続的に、ポリマー化合物又はワニスの層を含むか又はそれからなる前記第1の薄板(2)、次いで染料を含む前記ポリマー化合物又は前記ワニス、及び次いでバルク着色されていないプラスチックの前記第2の薄板(3)を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目13〉
前記中間層が、内側ガラス板に関して、連続的に、バルク着色されていないプラスチックの前記第2の薄板(3)、次いでポリマー化合物又はワニスの層を含むか又はそれからなる前記第1の薄板(2)、及び次いで染料を含む前記ポリマー化合物又は前記ワニスを含む、項目1~12のいずれか一項に記載の積層グレージング。
〈項目14〉
自動車の屋根、サイドウィンドウ、又はバックウィンドウとしての、項目1~13のいずれか一項に記載の積層グレージングの使用。
〈項目15〉
少なくとも1枚の第1のガラス板及び1枚の第2のガラス板を含み、2つの板が熱可塑性中間層によって互いに結合されている、項目1~13のいずれか一項に記載の積層グレージングの製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする、積層グレージングの製造方法:
-前記第1のガラス板の内面に780nm~2500nmの赤外線を反射する層のスタックを堆積させること、
-前記スタックに、染料を含むポリマー層又はワニスを堆積させること、ここで、前記染料は、可視領域内の光の実質的にすべてを吸収し、赤外線に対して実質的に透過性である、
-前記染料を含む前記ポリマー層又は前記ワニスを乾燥させ、及び/又は任意選択で、硬化させること、
-前記層のスタック及び着色された前記ポリマー層で覆われたガラス板を、着色されていない透明な熱可塑性中間層、特に着色されていないPVB、及び第2のガラス板と組み立て、それによって、着色された前記ポリマー層が前記中間層と直接接触するようにすること、
-脱気し、その間に前記ガラス板と前記熱可塑性中間層との間に閉じ込められた空気を排除すること、並びに
加圧下及び/又は真空下で100~200℃の温度で積層グレージングを熱処理し、その間に積層グレージングの組み立てを行うこと。
図1
図2
図3