(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】靴用部材及び靴
(51)【国際特許分類】
A43B 13/04 20060101AFI20240705BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240705BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20240705BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240705BHJP
C08L 1/02 20060101ALI20240705BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240705BHJP
C08J 9/04 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
A43B13/04 A
C08L101/00
C08L23/02
C08L53/00
C08L1/02
C08K3/013
C08J9/04 103
(21)【出願番号】P 2021558088
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2019045417
(87)【国際公開番号】W WO2021100137
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】立石 純一郎
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099690(JP,A)
【文献】特開2016-188353(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0208619(US,A1)
【文献】特開2014-189773(JP,A)
【文献】特開2013-133363(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109233260(CN,A)
【文献】特開2018-015149(JP,A)
【文献】富岡 恒憲,セルロース・ナノファイバー(CNF) 自動車を20kg軽くできる新素材、サンプル出荷始まる,日系XTECH,日本,2013年10月08日,第1ページ,,[2024年2月22日検索],インターネット<URL:https://xtech.nikkei.com/dm/article/COLUMN/20131001/306541/?P=3>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/04
C08L 101/00
C08L 23/02
C08L 53/00
C08L 1/02
C08K 3/013
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物で構成され、
該ポリマー組成物には、
オレフィン系ブロック共重合体と、エチレン-酢酸ビニル共重合体と、セルロースナノファイバーと、無機フィラーとが、それぞれ1種以上含まれており、且つ、
該ポリマー組成物には、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、及び、タルク粒子からなる群より選ばれる1種以上の前記無機フィラーが含まれており、
前記オレフィン系ブロック共重合体は、チェーンシャトリング共重合体であり、
前記セルロースナノファイバーは、疎水化されたセルロースナノファイバーである靴用部材。
【請求項2】
前記炭酸マグネシウム粒子、前記炭酸カルシウム粒子、前記シリカ粒子、及び、前記タルク粒子の内、少なくとも前記炭酸カルシウム粒子が前記ポリマー組成物に含まれている請求項1記載の靴用部材。
【請求項3】
前記ポリマー組成物には
、オレフィン系ランダム共重合
体が、さらに含まれている請求項
1記載の靴用部材。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか1項に記載された靴用部材を備えた靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴用部材と靴とに関し、より詳しくは、ポリマー組成物で構成された靴用部材と、そのような靴用部材を備えた靴とに関する。
【背景技術】
【0002】
靴底を構成するアウトソールやミッドソールなどの靴用部材は、ポリマー組成物によって構成されたりしている。
靴に対する軽量化の要望により、従来、靴用部材を薄肉化することや靴用部材を低比重化することが検討されている。
そのためポリマー組成物で発泡体を形成し、該発泡体で靴用部材を構成して低比重化を図ることが行われている。
このような形で靴用部材を低比重化すると、通常、同じポリマー組成物で非発泡な状態となるように構成された靴用部材に比べて強度が低下してしまう。
靴用部材を薄肉化して軽量化を図る場合は、該靴用部材が発泡状態であるか非発泡状態であるかに関係なく、通常、靴用部材の強度を低下させてしてしまう。
そこで、強度と軽量性との両立を図るべく、繊維を含むポリマー組成物で靴用部材を形成させることが検討されている(下記特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/178137号
【文献】国際公開第2016/159081号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
繊維を含む靴用部材には、さらなる強度の向上が求められているが、そのような要望を満たす靴用部材は、いまだ提供されていない。
そこで、本発明は、このような要望を満足させることを課題としており、強度に優れた靴用部材の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく本発明は、ポリマー組成物で構成され、該ポリマー組成物には、ポリマーと、セルロースナノファイバーと、無機フィラーとが、それぞれ1種以上含まれており、且つ、該ポリマー組成物には、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、及び、タルク粒子からなる群より選ばれる1種以上の前記無機フィラーが含まれている靴用部材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態の靴用部材を備えた靴を示した概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の靴用部材について以下にその実施の形態を例示しつつ説明する。
図1は、本実施形態の靴用部材で少なくとも一部が構成されている靴を示したもので、該靴1は、アッパー2と靴底用部材とを有している。
該靴1は、靴底用部材としてミッドソール3、及び、アウトソール4を有している。
【0008】
以下において
図1に示した靴1などについて説明する際には、踵の中心HCと爪先の中心TCとを結ぶシューセンター軸CXに沿った方向のことを長さ方向Xと称することがある。
また、シューセンター軸CXに沿った方向の内、踵から爪先に向けた方向X1を前方などと称し、爪先から踵に向けた方向X2を後方などと称することがある。
シューセンター軸CXに直交する方向の内、水平面HPに平行する方向を幅方向Yと称することがある。
この幅方向Yの内、足の第1指側に向けた方向Y1を内方などと称し、第5指側に向けた方向Y2を外方などと称することがある。
そして、水平面HPに直交する垂直方向Zを厚み方向や高さ方向と称することがある。
さらに、以下においては、この垂直方向Zにおいて上方に向かう方向Z1を上方向と称し、下方に向かう方向Z2を下方向と称することがある。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の靴1は最も下方にアウトソール4を備えている。
該アウトソール4は、靴1の接地面を構成するものである。
前記靴1は、着用者の足を上側から覆うアッパー2と前記アウトソール4との間にミッドソール3を備えている。
本実施形態のミッドソール3は、扁平形状を有し、その厚み方向が靴の高さ方向Zとなるように配されている。
該ミッドソール3の下面は、前記アウトソール4の上面に接しており、前記ミッドソール3の上面は、アッパー2に対して下側から接している。
ミッドソールの側面部31,32は、前記アッパー2や前記アウトソール4などによって覆われることなく露出した状態になっている。
即ち、本実施形態のミッドソール3は、靴1の外表面を構成する側面部31,32を備えている。
【0010】
本実施形態の靴1は、その一部を構成する靴用部材がポリマー組成物で構成され、該ポリマー組成物には、ポリマーと、セルロースナノファイバーと、無機フィラーとが、それぞれ1種以上含まれている。
さらに、該ポリマー組成物には、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、及び、タルク粒子からなる群より選ばれる1種以上の前記無機フィラーが含まれている。
本実施形態の前記靴1は、当該ポリマー組成物で構成された靴用部材として前記ミッドソールを備えている。
尚、該ポリマー組成物で構成された靴用部材は、アウトソール4や上記に具体的に例示されていない靴用部材であってもよい。
該靴用部材としては、例えば、靴の後端に踵を後方から覆うように配されるヒールカウンターと称される部材や靴の長さ方向中間部に土踏まずを覆うように配されるシャンクと称される部材などが挙げられる。
【0011】
本実施形態では、前記ミッドソール3は、靴1の軽量化に対する効果を発揮する上で、発泡体で構成されることが好ましい。
即ち、前記ミッドソール3を構成する前記発泡体は、気泡と、該気泡を包囲する膜を備えたセルを複数有し、前記膜が前記ポリマー組成物で構成されていることが好ましい。
該発泡体は、前記膜によって周囲の気泡から完全に独立している独立気泡を多数有するものであっても、隣り合うセルの間の前記膜が不完全で隣り合うセルの気泡どうしが接続された状態になっている連続気泡を多数有するものであってもよい。
前記発泡体は、独立気泡の割合が高くなると優れた強度と高い反発弾性率とを発揮する。
前記発泡体は、連続気泡の割合が高くなると柔軟性に優れ、高い緩衝性能を発揮する。
そして、本実施形態の前記ミッドソール3は、低比重な発泡体で構成されても、前記ポリマー組成物で構成されることによって優れた強度を発揮する。
【0012】
本実施形態のミッドソール3は、優れたクッション性を発揮させる上においてアスカーC硬度が80以下であることが好ましい。
該アスカーC硬度は、70以下であることがより好ましい。
尚、ミッドソール3に適度な反発弾性を発揮させる上において、ミッドソール3のアスカーC硬度は、10以上であることが好ましく、20以上であることがより好ましい。
ここで前記アスカーC硬度とは、JIS K7312のタイプCによるスプリング硬さ試験を23℃において実施した際の瞬時値を意味する。
【0013】
本実施形態のミッドソール3は、弾性率が低い方がクッション性に優れる。
本実施形態のミッドソール3は、過度に弾性率が低いと歩行時において足が地面から受ける衝撃力を吸収し切れなくなるおそれがある。
このようなことから、ミッドソールの弾性率(圧縮弾性率)は、0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1.0MPa以上であることが特に好ましく、1.5MPa以上であることがとりわけ好ましい。
ミッドソールの弾性率(圧縮弾性率)は、20MPa以下であることが好ましく、12MPa以下であることがより好ましく、8MPa以下であることが特に好ましく、4MPa以下であることがとりわけ好ましい。
【0014】
ミッドソールの弾性率は、JIS K6251:2017「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」の引張試験での低歪み領域での応力-歪み曲線の傾き(例えば、ε1=0.05%、及び、ε2=0.25%の歪み2点間に対応する応力/ひずみ曲線の傾き)から求めることができる。
【0015】
前記ミッドソール3は、靴1の耐用期間を長期化させる上において厚み方向での圧縮永久歪が70%以下であることが好ましい。
前記圧縮永久歪は、65%以下であることがより好ましい。
なお、前記ミッドソール3を圧縮永久歪が全く生じない状態にさせることは容易ではなく、前記圧縮永久歪は、通常、1%以上となる。
この圧縮永久歪とは、ASTM D395A法(定荷重法)に基づいて測定される値であり、測定試料に対して23℃の温度条件下0.59MPaの圧力を22時間加え、前記測定試料を圧力から開放した24時間後に該測定試料の厚みを測定して求められる値を意味する。
【0016】
本実施形態のミッドソール3は、靴1に対して優れた軽量性を発揮させるべく、JIS K7112のA法「水中置換法」によって23℃の温度条件下において測定される密度の値が、0.5g/cm3以下の発泡体で構成されることが好ましい。
該発泡体の密度は、0.4g/cm3以下であることがより好ましく、0.3g/cm3以下であることがさらに好ましく、0.2g/cm3以下であることが特に好ましい。
該密度は、試料の浮上を防止するような機構を備えた比重計を用いて測定することができ、例えば、アルファミラージュ社から高精度電子比重計として市販されている比重計などによって測定することができる。
【0017】
本実施形態のミッドソール3を構成する前記発泡体は、上記のような密度において高い引裂強さを有していることが好ましい。
前記発泡体の引裂強さは、5N/mm以上であることが好ましく、6N/mm以上であることがより好ましい。
前記発泡体の引裂強さは、JIS K6252に準拠して測定することができる。
より具体的には、前記引裂強さは、下記条件にて求めることができる。
(引裂強さの測定条件)
測定機器:(株)東洋精機製作所製、製品名「STROGRAPH-R2」
試料形状:JIS K6252に指定されたアングル形試験片(切込み無し)
試験速度:500mm/min
【0018】
上記のような優れた強度をミッドソール3に発揮させる上において、本実施形態での前記ポリマー組成物にはセルロースナノファイバーとともに無機フィラーが含まれている。
本実施形態での前記ポリマー組成物には、炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、及び、タルク粒子からなる群より選ばれる1種以上の前記無機フィラーが含まれている。
そして本実施形態において前記ポリマー組成物で構成される靴用部材は、セルロースナノファイバーと上記の無機フィラーとの相乗効果によって優れた強度を発揮する。
【0019】
前記セルロースナノファイバーは、例えば、植物、動物、藻類、微生物、微生物産生物などに由来するものを採用することができる。
前記セルロースナノファイバーは、植物由来であることが好ましい。
前記セルロースナノファイバーの原料となる、植物は、植物そのものや、植物を加工した加工品、及び、不要となった廃棄物などであってもよい。
より具体的には、前記セルロースナノファイバーの原料となる、植物としては、例えば、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、パルプ(針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、再生パルプ、古紙など)、糸、布、農業廃棄物などが挙げられる。
【0020】
該セルロースナノファイバーは、前記ポリマー組成物に1質量%以上の割合で含有されることが好ましく、2質量%以上の割合で含有されることがより好ましく、3質量%以上の割合で含有されることがさらに好ましい。
該セルロースナノファイバーは、前記ポリマー組成物に20質量%以下の割合で含有されることが好ましく、16質量%以下の割合で含有されることがより好ましく、12質量%以下の割合で含有されることがさらに好ましい。
【0021】
前記セルロースナノファイバーは、前記ポリマー組成物に含有された状態において一部がナノサイズとなっていればよく、全てがナノサイズとなっていなくてもよい。
即ち、セルロースナノファイバーは、ポリマーなどと混合される前において全てがナノサイズになっていなくてもよい。
一般に植物は、1μm以上の太さを有する植物繊維で構成されており、一本の前記植物繊維は、複数本のセルロースナノファイバーの束によって構成されている。
そして、前記ポリマー組成物を調製する前のセルロースナノファイバーは、このような束の状態であってもよい。
即ち、前記セルロースナノファイバーは、前記ポリマー組成物を調製する前の状態において10~100μm程度の太さを有する束を構成していてもよい。
【0022】
一方で前記ミッドソール3を構成する前の前記ポリマー組成物中や、該ポリマー組成物が前記ミッドソール3を構成している状態でのセルロースナノファイバーは、平均繊維径が1nm以上400nm以下となっていることが好ましい。
ミッドソール3を構成する前のポリマー組成物中や前記ミッドソール3でのセルロースナノファイバーの平均繊維径は、200nm以下となっていることがより好ましい。
セルロースナノファイバーの平均長さは、平均繊維径の10倍~1000倍程度であることが好ましい。
セルロースナノファイバーの太さや長さは、透過型電子顕微鏡(TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、直接測定することができる。
より詳しくは、セルロースナノファイバーの平均繊維径は、上記のような顕微鏡を用いて複数視野での写真撮影を行い、得られた画像において無作為に選択した箇所における複数本(例えば、50本)の繊維の太さを測定し、得られた測定値を算術平均することによって求めることができる。
セルロースナノファイバーの平均長さは、平均繊維径と同様に透過型電子顕微鏡(TEM)や原子間力顕微鏡(AFM)で撮影した画像で、全長が測定可能なものを無作為に複数本(例えば、50本)選択してその長さを測定することによって求めることができる。
該平均長さも平均繊維径と同様に測定値の算術平均値として求めることができる。
尚、上記のような顕微鏡観察においてセルロースナノファイバーが曲線状態になって観測されるような場合でのセルロースナノファイバーの長さとは、当該セルロースナノファイバーの両端間の直線距離ではなく曲線に沿って測定される一端から他端までの寸法を意味する。
【0023】
前記セルロースナノファイバーは、変性品であっても非変性品であってもよいが、変性によって疎水化されていることが好ましい。
疎水変性されたセルロースナノファイバーとしては、例えば、セルロースが分子構造中に有する複数の水酸基の内の1以上が、水酸基よりも疎水性が高い疎水性基を含む置換基で置換されたものを採用することができる。
【0024】
疎水化されたセルロースナノファイバーは、非変性のセルロースナノファイバーに比べて凝集し難く、前記ポリマー組成物を調製する際に優れた分散性を発揮する。
前記ポリマー組成物のベースポリマーと前記無機フィラー(炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、タルク粒子)との両方に対して親和性を発揮する上で、完全に疎水化されていなくてもよく、テトラヒドロピラン環に結合してピラノース環を構成している水酸基の一部が残存していることが好ましい。
即ち、本実施形態において前記ミッドソール3を構成する前記ポリマー組成物は、セルロースの分子構造中におけるテトラヒドロピラン環に結合する複数の水酸基の内の1以上が置換基によって置換され、前記水酸基の内の1以上が存続しているセルロースナノファイバーを含有していることが好ましい。
【0025】
前記置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アルケニレン基、及び、アリーレン基などの疎水性基が挙げられる。
前記置換基としては、上記のような疎水性基がテトラヒドロピラン環に直接結合した状態のものであってもエーテル結合やエステル結合したものであってもよい。
即ち、前記置換基は、例えば、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキレンエーテル基、アルケニレンエーテル基、及び、アリーレンエーテル基などであってもよい。
また、前記置換基は、例えば、アルキルエステル基、アルケニルエステル基、アルキレンエステル基、アルケニレンエステル基、及び、アリーレンエステル基などであってもよい。
【0026】
前記ポリマー組成物には、セルロースナノファイバーを1種単独で含有させても2種類以上を含有させてもよい。
即ち、前記ポリマー組成物では、平均繊維径や平均長さの異なる2種類以上のセルロースナノファイバーが含有されていたり、出発原料が異なる2種類以上のセルロースナノファイバーが含有されていたり、疎水化されたセルロースナノファイバーと疎水化されていないセルロースナノファイバーとが含有されていてもよい。
【0027】
前記無機フィラー(炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、タルク粒子)は、その合計量(炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、及び、タルク粒子の合計量)がセルロースナノファイバーに対して0.1倍から10倍の質量比率となるように前記ポリマー組成物に含有され得る。
前記ポリマー組成物における前記無機フィラーの合計含有量は、前記セルロースナノファイバーに対して0.2倍以上であっても、0.3倍以上であってもよい。
前記ポリマー組成物における前記無機フィラーの合計含有量は、前記セルロースナノファイバーに対して9倍以下であっても、8倍以下であってもよい。
【0028】
前記無機フィラーは、例えば、表面処理がなされていない無処理品であっても、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などによって表面処理されたものであってもよい。
【0029】
前記脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、牛脂脂肪酸、パーム脂肪酸、ヤシ脂肪酸、大豆脂肪酸、ナフテン酸、アビエチン酸、ネオアビエチン酸などの飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸が挙げられる。
前記脂肪酸エステルとしては、例えば、上記のような脂肪酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、sec-ブチルエステル、tert-ブチルエステルなどが挙げられる。
該脂肪酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩;鉄塩;亜鉛塩;アンモニウム塩などが挙げられる。
【0030】
前記シランカップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。
前記チタネートカップリング剤としては、例えば、テトラキス[2,2-ビス(アリルオキシメチル)ブトキシ]チタン(IV)、ジイソプロポキシチタンジイソステアレート、(2-n-ブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、ジノルマルブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラキス(2-エチルヘキシルオキシ)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタンなどが挙げられる。
【0031】
前記無機フィラーは、ポリマー組成物を調製する際の作業性を良好にして、ポリマー組成物のベースポリマーの劣化を抑制する上において、レーザー回折・散乱法によって求められる平均粒子径(体積基準でのメジアン径(D50))が、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。
該平均粒子径は、0.5μm以上であってもよい。
該平均粒子径は、ポリマー組成物に対して優れた強度を発揮させる上において20μm以下であることが好ましい。
該平均粒子径は、18μm以下であることがより好ましく、16μm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
前記炭酸マグネシウム粒子は、マグネサイト鉱石を粉砕した天然品であってもよいが、マグネシウム塩水溶液と、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの炭酸塩との反応物である合成品が好適である。
前記炭酸マグネシウム粒子は、無水炭酸マグネシウムを含むものであっても、塩基性炭酸マグネシウムと称される水和物を含むものであってもよい。
即ち、炭酸マグネシウム粒子は、「MgCO3」で表される化合物で構成された粒子であっても「mMgCO3・Mg(OH)2・nH2O」(m=3~5,n=3~7)で表される化合物で構成された粒子であってもよい。
【0033】
前記炭酸カルシウム粒子は、石灰石や貝殻を粉砕した天然品(重質炭酸カルシウム粒子)であってもよい。
前記炭酸カルシウム粒子は、化学反応によって得られる軽質炭酸カルシウム粒子であってもよい。
前記炭酸カルシウム粒子は、炭酸カルシウムがカルサイトの結晶形態となっていても、アラゴナイトの結晶形態となっていても、バテライトの結晶形態となっていてもよい。
前記炭酸カルシウム粒子は、他の結晶形態に比べて低硬度且つ低密度であるカルサイトの結晶形態となっている炭酸カルシウムを含むことが好ましい。
【0034】
前記シリカ粒子は、火炎法やアーク法によって得られる乾式シリカ粒子であっても、沈降法やゲル法によって得られる湿式シリカ粒子であってもよい。
【0035】
前記タルク粒子は、滑石の粉砕物であってもよい。
前記タルク粒子は、「Mg3Si4O10(OH)2」で表される化合物で構成された粒子であってもよい。
【0036】
本実施形態のポリマー組成物は、前記炭酸マグネシウム粒子、前記炭酸カルシウム粒子、前記シリカ粒子、及び、前記タルク粒子の4種類全てを含んでいても、これらの内の3種類を含んでいても、2種類を含んでいても、1種類のみを含んでいてもよい。
本実施形態のポリマー組成物は、少なくとも前記炭酸カルシウム粒子を含有することが好ましい。
【0037】
本実施形態のポリマー組成物は、上記無機フィラー以外にもアルミナ粒子などの他の無機フィラーを含有してもよいが、他の無機フィラーの含有量は、前記炭酸マグネシウム粒子、前記炭酸カルシウム粒子、前記シリカ粒子、及び、前記タルク粒子の合計含有量の1/5以下の質量割合とされることが好ましく、1/10以下の質量割合とされることがより好ましい。
【0038】
前記ポリマー組成物の主成分となるポリマーは、特に限定されるものではなく、当該ポリマー組成物によって構成される部材に要求される特性値などによって各種のものが選択され得る。
本実施形態の前記ポリマーとしては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)などのポリエチレン樹脂;プロピレンホモポリマー(ホモPP)、ランダムポリプロピレン樹脂(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン樹脂(ブロックPP)などのポリプロピレン樹脂;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体などのエチレン-αオレフィン共重合体;プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-ヘキセン共重合体、プロピレン-オクテン共重合体などのプロピレン-αオレフィン共重合体;環状オレフィンポリマー(COP);環状オレフィン共重合体(COC)などが挙げられる。
【0039】
前記ポリマーは、例えば、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、プロピレン-酢酸ビニル共重合体等であってもよい。
【0040】
前記ポリマーとしては、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂等のポリウレタン系ポリマー;スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)、ポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)等のスチレン系ポリマー等であってもよい。
【0041】
前記ポリマーとしては、例えば、フッ素樹脂やフッ素ゴムなどのフッ素系ポリマー;ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6,6、ポリアミド610などのポリアミド樹脂やポリアミド系エラストマーといったポリアミド系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;シリコーン系エラストマー;ブタジエンゴム(BR);イソプレンゴム(IR);クロロプレン(CR);天然ゴム(NR);スチレンブタジエンゴム(SBR);アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR);ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。
【0042】
本実施形態において前記ミッドソール3を構成する前記ポリマー組成物は、上記のようなポリマーを1種単独で含有していても、上記のようなポリマーを2種以上含有していてもよい。
【0043】
前記ポリマー組成物は、セルロースナノファイバーと無機フィラー(炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、タルク粒子)との補強効果をより顕著に発揮させる上において、エチレン-αオレフィン共重合体やプロピレン-αオレフィン共重合体などのオレフィン系共重合体やエチレン-酢酸ビニル共重合体を含むことが好ましい。
該オレフィン系共重合体は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
即ち、前記ポリマー組成物は、オレフィン系ランダム共重合体(POE)、オレフィン系ブロック共重合体(OBC)、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の内の何れかを含有することが好ましい。
より具体的には、前記ポリマー組成物は、エチレン-αオレフィンランダム共重合体、エチレン-αオレフィンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体、プロピレン-αオレフィンブロック共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体の内の何れかを含有することが好ましい。
【0044】
前記ポリマー組成物は、オレフィン系ランダム共重合体、オレフィン系ブロック共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体の3種全てを含有することが好ましい。
前記ポリマー組成物は、エチレン-αオレフィンランダム共重合体、エチレン-αオレフィンブロック共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体の3種のポリマーを含有することがより好ましい。
【0045】
オレフィン系ランダム共重合体、オレフィン系ブロック共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体の3種全てを含有する前記ポリマー組成物で構成される部材は、アモルファス状態のポリマーで構成されるマトリックス中にエチレンやプロピレンによる微細な結晶を含んだ状態となる。
例えば、エチレン-αオレフィンランダム共重合体、エチレン-αオレフィンブロック共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する部材は、ポリマーの分子鎖におけるポリエチレン部分によって微細な結晶が形成されるとともにアモルファス領域に前記セルロースナノファイバーや前記無機フィラーを含有することで優れた機械的強度を発揮する。
【0046】
オレフィン系ランダム共重合体、オレフィン系ブロック共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体の合計含有量に占める前記オレフィン系ランダム共重合体の割合は、例えば、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
前記オレフィン系ランダム共重合体の割合は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
オレフィン系ランダム共重合体、オレフィン系ブロック共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体の合計含有量に占める前記オレフィン系ブロック共重合体の割合は、例えば、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
前記オレフィン系ブロック共重合体の割合は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
オレフィン系ランダム共重合体、オレフィン系ブロック共重合体、及び、エチレン-酢酸ビニル共重合体の合計含有量に占める前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合は、例えば、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の割合は、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0049】
前記オレフィン系ランダム共重合体は、アモルファス領域を構成するポリマーとして好適に機能し得る。
従って、前記オレフィン系ランダム共重合体は、結晶性が低いことが好ましく、密度が0.88g/cm3を超え0.91g/cm3未満のエチレン-αオレフィン共重合体であることが好ましい。
前記オレフィン系ランダム共重合体は、DSC法(昇温速度10℃/min)によって求められる融点(融解ピーク温度)が55℃以上77℃以下であることが好ましい。
【0050】
前記オレフィン系ブロック共重合体は、オレフィンの微細結晶を形成させるためのポリマーとして好適である。
前記オレフィン系ブロック共重合体は、エチレン-αオレフィンブロック共重合体であることが好ましく、エチレン-ヘキセンブロック共重合体かエチレン-オクテンブロック共重合体かのいずれかであることが好ましい。
本実施形態において前記ポリマー組成物に含有させる前記オレフィン系ブロック共重合体は、エチレン-オクテンブロック共重合体であることがより好ましい。
該オレフィン系ブロック共重合体は、エチレンと炭素数が4以上のαオレフィンとが2種類の重合触媒とアルキルアルミニウムやアルキル亜鉛化合物などの連鎖移動剤(WO2005/090426、WO2005/090427に記載のシャトリング剤)との存在下において共重合されたチェーンシャトリング共重合体であることが好ましい。
【0051】
チェーンシャトリング共重合体は、重合時に単独重合とブロック共重合とがそれぞれ複数回繰り返されるため、一般的なブロック共重合体とは異なり単独重合が進行する時に形成されるブロックが、当該ブロックを構成するモノマーのホモポリマーと同様の結晶を形成できる状態になり得る。
具体的には、エチレンと1-オクテンブロックとのチェーンシャトリング共重合体は、分子中にエチレンの単独重合体である高密度ポリエチレン(HDPE)と同様に結晶化することが可能なエチレンブロックを有している。
従って、チェーンシャトリング共重合体であるエチレン-オクテンブロック共重合体は、高密度ポリエチレンの結晶と同じ微小結晶を前記ポリマー組成物によって構成される部材に多数形成させるのに有効に機能する。
言い換えると、エチレン-αオレフィンブロック共重合体は、高密度ポリエチレン(HDPE)と同様の融点を示すものが好ましく、DSC法(昇温速度10℃/min)によって求められる融点(融解ピーク温度)が115℃以上125℃以下であることが好ましい。
【0052】
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、ランダム共重合体であることが好ましい。
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体は、ポリマー組成物に柔軟性や接着性を発揮させる上において、酢酸ビニルの含有率(VAコンテント)が8質量%以上であることが好ましく10質量%以上であることがより好ましい。
酢酸ビニルの含有率は、35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
本実施形態のミッドソール3を発泡体で構成する場合、ミッドソール3の形成に用いられるポリマー組成物は、発泡剤を含有してもよい。
【0054】
前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、ジメチル-2,2’-アゾビスブチレート、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチル-プロピオンアミジン]等のアゾ化合物;N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等のニトロソ化合物;4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3’-ジスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;p-トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物;トリヒドラジノトリアジンなどの有機系熱分解型発泡剤を採用することができる。
【0055】
前記発泡剤は、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩;亜硝酸アンモニウム等の亜硝酸塩、水素化合物などの無機系熱分解型発泡剤であってもよい。
【0056】
前記発泡剤が上記のような熱分解型発泡剤である場合、前記ポリマー組成物には、例えば、酸化亜鉛などの金属酸化物系発泡助剤、尿素系発泡助剤、サリチル酸系発泡助剤、安息香酸系発泡助剤などの発泡助剤を含有させてもよい。
【0057】
前記発泡剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の各種脂肪族炭化水素類などの有機系発泡剤、空気、二酸化炭素、窒素、アルゴン、水などの無機系発泡剤であってもよい。
【0058】
本実施形態のミッドソール3は、架橋発泡体によって構成されてもよい。
即ち、本実施形態のミッドソール3は、架橋状態のポリマー組成物によって構成されてもよい。
従って、ミッドソール3の形成に用いられるポリマー組成物は、架橋剤や架橋助剤を含有してもよい。
【0059】
前記架橋剤としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0060】
前記架橋助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルシアヌレート(TAC)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリシクロデカンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどを挙げることができる。
【0061】
前記ポリマー組成物は、上記以外にも、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、耐侯剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、顔料、離型剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤、消臭剤、香料等の添加剤を含んでもよい。
また、前記ポリマー組成物は、添加剤としてロジンや酸変性ポリマーなどの接着性向上剤を含有していてもよい。
なかでも酸変性ポリマーは、前記無機フィラーや前記セルロースナノファイバーと併用されることでミッドソール3を構成するポリマー組成物の強度が向上するため好適である。
該酸変性ポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸やマレイン酸エステルなどの極性モノマーと、エチレン、プロピレン、炭素数4以上のαオレフィンなどのオレフィン系モノマーとの共重合体が挙げられる。
該共重合体は、前記極性ポリマーが主鎖を構成するブロックコポリマーやランダムコポリマーであっても、前記極性ポリマーが側鎖を構成するグラフトコポリマーであってもよい。
前記共重合体は、複数のオレフィン系モノマーと1以上の極性モノマーとの3種以上のモノマーを構成単位とした共重合体であってもよい。
該添加剤の合計量は、通常、ポリマー組成物の5質量%以下の割合とされる。
【0062】
本実施形態におけるミッドソール3は、前記ポリマー、前記セルロースナノファイバー、及び、前記無機フィラー(炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、タルク粒子)を含み、必要に応じて前記架橋剤や前記発泡剤などを含む配合原料を用意し、当該配合原料を溶融混練するなどして前記ポリマー組成物を調製し、該ポリマー組成物を成形型で成形するなどして作製することができる。
【0063】
本実施形態においては、前記ポリマー組成物をミッドソール3の形成材料とする場合を主に例示しているが、前記ポリマー組成物はミッドソール以外の靴用部材の形成材料とすることも可能である。
本実施形態のポリマー組成物は、先に述べたようにアウトソール4、シャンク、ヒールカウンターなどの靴用部材の形成材料とすることもできる。
また、ミッドソール3、アウトソール4、シャンク、及び、ヒールカウンターなどについては、ポリマー組成物のみで構成されても、ポリマー組成物で構成された部材と繊維シートや樹脂フィルムなどとのタイの部材との複合体であってもよい。
さらに、本実施形態における靴用部材は、第1のポリマー組成物と第1のポリマー組成物とは異なる第2のポリマー組成物とを含む2種類以上のポリマー組成物によって構成されてもよい。
即ち、靴用部材は、一つの部位が第1のポリマー組成物で構成され、他の部位が第2のポリマー組成物で構成されてもよい。
このように、本発明は、上記例示に何等限定されるものではない。
【実施例】
【0064】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
<配合材料>
ポリマー組成物を調製するための配合材料として次のようなものを用意した。
1)エチレン-αオレフィンブロック共重合体(OBC)
エチレンとαオレフィンとを構成単位として含んでいるチェーンシャトリング共重合体であり、融点(mp)が119℃のエチレン-αオレフィンブロック共重合体。
2)エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)
酢酸ビニル含有率(VA)が25質量%で融点(mp)が77℃のエチレン-酢酸ビニル共重合体。
3)無機フィラー
・炭酸カルシウム粒子(CaCO3)
・湿式(沈降法)シリカ粒子(Precipitated silica)
・乾式(火炎法)シリカ粒子(Fumed silica)
・炭酸マグネシウム粒子(MgCO3)
・タルク粒子
4)セルロースナノファイバー
5)各種添加剤
・活性剤:酸化亜鉛、ステアリン酸
・架橋剤:ジクミルペルオキシド(DCP)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)含有物(TAIC含有量60質量%)
・発泡剤:有機系熱分解型発泡剤(アゾジカルボンアミド(ADCA))
・酸変性PE(マレイン酸変性ポリエチレン)
【0066】
<評価1:「発泡体1-0」の調製>
表1に示すように、上記配合材料を用い、且つ、無機フィラーやセルロースナノファイバーを含有させることなく架橋された状態のポリマーを含む発泡体を作製した。
該発泡体の硬度(アスカーC硬度)、比重、引張強度、及び、引裂強度(切込みを設けていないアングル形試験片で求められる引裂き強さ)を測定した結果を併せて表1に示す。
【0067】
<評価2:「発泡体1-1」~「発泡体1-5」の調製>
表1に示す割合で無機フィラーを含有させたこと以外は「発泡体1-0」と同様に発泡体を調製し、「発泡体1-0」と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0068】
<評価3:「発泡体2-0」の調製>
表1に示す割合でセルロースナノファイバーを含有させたこと以外は「発泡体1-0」と同様に発泡体を調製し、「発泡体1-0」と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
<評価4:「発泡体2-1」~「発泡体2-5」の調製>
表1に示す割合で無機フィラーとセルロースナノファイバーとの両方を含有させたこと以外は「発泡体1-0」と同様に発泡体を調製し、「発泡体1-0」と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0070】
<評価5:「発泡体3-0」の調製>
表1に示す割合で酸変性PEとセルロースナノファイバーとを含有させたこと以外は「発泡体1-0」と同様に発泡体を調製し、「発泡体1-0」と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0071】
<評価6:「発泡体3-1」、「発泡体3-2」、「発泡体3-4」の調製>
表1に示す割合で酸変性PE、無機フィラー、及び、セルロースナノファイバーを含有させたこと以外は「発泡体1-0」と同様に発泡体を調製し、「発泡体1-0」と同様に各種物性を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
<評価7:金属粒子での検討>
評価4(「発泡体2-1」~「発泡体2-5」)での無機フィラー(炭酸マグネシウム粒子、炭酸カルシウム粒子、シリカ粒子、タルク粒子)に代えて金属粒子を用いて発泡体の調製を試みた。
しかしながら、金属粒子を含有させてこれまでと同じ方法で発泡体を作製しようとしても良好な発泡状態の発泡体を作製することができなかった。
そのため、この評価では、各種物性を測定してはいない。
【0073】
<引張強度比の算出>
「評価2」で調製した無機フィラーだけを含む発泡体(「発泡体1-1」~「発泡体1-5」)と、「評価4」で調製した無機フィラーとセルロースナノファイバーとの両方を含む発泡体(「発泡体2-1」~「発泡体2-5」)とに関し、同じ無機フィラーを用いているものどうしで「引張強度」を比較し、セルロースナノファイバーの有無で引張強度がどの程度変化したかを算出し、その比率を「引張強度比」とした。
また、「評価4」で調製した発泡体と「評価6」で調製した発泡体とに関して酸変性PEの有無による「引張強度比」についても同様に算出した。
【0074】
<引裂強度比の算出>
上記の「引張強度比」と同様に「引裂強度」についても「引裂強度比」を算出した。
【0075】
【0076】
表1での「引張強度比」や「引裂強度比」を見ると、本願発明の実施例に該当する事例(「発泡体2-1」~「発泡体2-5」、「発泡体3-1」、「発泡体3-2」、及び、「発泡体3-4」)については、発泡体に対して高い補強効果が発生していることが分かる。
即ち、本発明によれば、強度に優れた靴用部材が提供されることがわかる。
【符号の説明】
【0077】
1:靴、2:アッパー、3:ミッドソール、4:アウトソール