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特許7515510(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩の製造方法、およびそれを使用したトファシチニブの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩の製造方法、およびそれを使用したトファシチニブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 211/56 20060101AFI20240705BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 31/519 20060101ALN20240705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20240705BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20240705BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20240705BHJP
   A61P 1/04 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
C07D211/56 CSP
C07D487/04 140
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021559218
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-15
(86)【国際出願番号】 KR2020004547
(87)【国際公開番号】W WO2020204647
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0040383
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500309919
【氏名又は名称】ユーハン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】YUHAN Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】オ,サンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドゥビョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,キョンチャン
(72)【発明者】
【氏名】キム,サンウォン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヒョイク
(72)【発明者】
【氏名】イ,キョンシル
(72)【発明者】
【氏名】チョ,イクス
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジヘ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ,スヨン
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-534047(JP,A)
【文献】特開2019-023181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297825(US,A1)
【文献】国際公開第2018/060512(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02248803(EP,A1)
【文献】J.Heterocyclic Chem.,2016年,53,1259-1263
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 211/56
C07D 487/04
A61K 31/519
A61P 43/00
A61P 29/00
A61P 19/02
A61P 1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩の製造方法であって、
(a)イソプロパノール、イソプロパノール水溶液、およびイソプロパノールと有機溶媒の混合溶媒からなる群から選択される溶媒中において、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートをジベンゾイル-L-酒石酸と還流下で加熱して反応させた後、冷却して、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を調製する工程;ならびに
(b)工程(a)で得られたメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を塩基と反応させて、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートに転換した後、該メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを還元して、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを調製した後、該(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを酢酸と反応させて、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を調製する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記イソプロパノールと有機溶媒の混合溶媒が、メタノール、エタノール、n-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランおよびアセトニトリルからなる群から選択される有機溶媒とイソプロパノールの混合溶媒である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(a)が、イソプロパノールとメタノールの混合溶媒またはイソプロパノールとエタノールの混合溶媒中において、前記メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を再結晶化させる工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(a)における冷却が、0~55℃の範囲の温度に冷却することにより行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(b)で使用される塩基が、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される1つ以上の塩基である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
工程(b)の還元工程が、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムリチウムおよび水素化ナトリウムからなる群から選択される1つ以上の還元剤を使用することにより行われる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンと酢酸の前記反応が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、およびそれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒中で行われる、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物。
【請求項9】
(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩。
【請求項10】
トファシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法であって、
(i)請求項1~7のいずれか1項に記載の製造方法に従って、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を調製する工程;
(ii)前記(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を、2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンと反応させて、(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを調製する工程;
(iii)前記(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを脱ベンジル化して、(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを調製する工程;および
(iv)前記(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンをシアノ酢酸エチルと反応させて、トファシチニブを調製する工程
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トファシチニブの製造に有用な中間体である(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩の新規な製造方法に関する。また、本発明は、前記製造方法で使用される新規な中間体、および前記製造方法で得られる新規な塩に関する。さらに、本発明は、前記製造方法を使用して、トファシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トファシチニブは、その化学名が3-[(3R,4R)-4-メチル-3-[メチル({7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル})アミノ]ピペリジン-1-イル]-3-オキソプロパンニトリルであり、以下の化学式1で示されるクエン酸塩の形態で使用される。トファシチニブは、ヤヌスキナーゼ阻害剤であり、関節リウマチ、活動性乾癬性関節炎、および重度の潰瘍性大腸炎の治療に有用である。
【化1】
【0003】
トファシチニブまたはそのクエン酸塩の製造方法は、WO2001/042246やWO2002/096909などに開示されている。この製造方法は、中間体(すなわち、1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン)をその安定な形態(すなわち、その塩酸塩)に転換する工程、およびL-酒石酸もしくはその誘導体または(+)-フェンシホス((S)-(+)2-ヒドロキシ-5,5-ジメチル-4-フェニル-1,3,2-ジオキサホスホリナン-2-オキシド)などの分割剤で分割を行う工程を含む。しかし、ラセミ体の1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンをその塩酸塩に転換する工程は、収率が極めて低い(62%)。また、(+)-フェンシホスは、非常に高価な分割試薬であることから、工業的な大量生産には適さないという問題がある。
【0004】
WO2014/102826では、トファシチニブの改良された製造方法が開示されている。また、WO2014/102826では、トファシチニブの製造に有用な光学的に活性な中間体の製造方法が開示されており、この製造方法は、ラセミ体のメチル(4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを、ラセミ体のメチル(1-トリチル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートに転換する工程、ラセミ体の前記メチル(1-トリチル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを、ラセミ体の1-トリチル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン塩酸塩に転換する工程、およびラセミ体の前記1-トリチル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン塩酸塩を分割する工程を含む。しかしながら、WO2014/102826に開示されているこの製造方法は、トリチル基を導入する工程をさらに実施する必要があるという欠点がある。
【0005】
EP3078665では、トファシチニブの製造方法が開示されており、この製造方法は、トファシチニブの最終中間体(すなわち、N-メチル-N-(4-メチルピペリジン-3-イル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン)を分割する工程、および分割した前記中間体をシアノ酢酸と反応させる工程を含む。しかしながら、トファシチニブの合成のほぼ最終段階で分割が行われるため、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
EP3421455では、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン塩酸塩の製造方法が開示されており、この製造方法は、フェロセン配位子を有するロジウム触媒などのキラル触媒を用いて、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを不斉水素化し、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを調製する工程、ならびに還元反応および塩酸塩への転換反応を実施する工程を含む。しかしながら、不斉水素化により得られるメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートの光学純度は非常に低い(82.3%ee)。また、この方法で製造される(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン塩酸塩の光学純度も非常に低い(97.3%ee)。また、この不斉水素化で使用されるキラル触媒は高価なロジウム錯体であるため、製造コストが高くなるという欠点がある。さらに、前記塩酸塩を製造する工程の収率は非常に低い(60%)という欠点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、工業的大量生産に適した、トファシチニブの改良された製造方法を開発するために様々な研究を行った。特に、本発明者らは、トファシニブの製造に有用な中間体である(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩を製造するための改良された方法を開発するために様々な研究を行った。
【0008】
本発明者らは、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを特定の溶媒中で直接分割して特定の溶媒和物を調製する工程を行った後、その遊離塩基へと転換する工程、およびその遊離塩基を還元する工程を行うことによって、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩を高収率かつ高光学純度で調製することができることを見出した。さらに、本発明者らは、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを特定の塩の形態(すなわち、酢酸塩の形態)で単離すると、その生成物(すなわち、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩)が高い光学純度で単離され、優れた安定性(貯蔵安定性など)を有することを見出した。
【0009】
したがって、本発明は、トファシニブの製造に有用な中間体である(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩の新規な製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記製造方法で使用される新規な中間体を提供する。
【0011】
また、本発明は、貯蔵安定性などの優れた安定性を有する(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を提供する。
【0012】
また、本発明は、前記方法を使用したトファシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩の製造方法であって、
(a)イソプロパノール、イソプロパノール水溶液、およびイソプロパノールと有機溶媒の混合溶媒からなる群から選択される溶媒中において、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートをジベンゾイル-L-酒石酸と還流下で加熱して反応させた後、冷却して、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を調製する工程;ならびに
(b)工程(a)で得られたメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を塩基と反応させて、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートに転換した後、該メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを還元して、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを調製する工程
を含む方法が提供される。
【0014】
一実施形態において、工程(b)は、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを酢酸と反応させて、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を調製する工程[すなわち、工程(c)]をさらに含んでいてもよい。
【0015】
本発明の別の一態様によれば、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物が提供される。
【0016】
本発明のさらに別の一態様によれば、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の一態様によれば、トファシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法であって、
(i)前記製造方法に従って、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩を調製する工程;
(ii)前記(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩を、2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンと反応させて、(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを調製する工程;
(iii)前記(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを脱ベンジル化して、(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを調製する工程;および
(iv)前記(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンをシアノ酢酸エチルと反応させて、トファシチニブを調製する工程
を含む方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の方法によれば、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩を高収率かつ高光学純度で提供することができる。また、本発明により得られる特定の塩、すなわち、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩は、優れた安定性(貯蔵安定性など)を有することから、トファシチニブの製造のための中間体として有用に適用することができる。特に、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを酢酸塩の形態で単離する場合、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩の光学純度を増加させることができ、例えば、そのキラル純度を95.2%~99.8%に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例2で製造したメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物のPXRDスペクトルを示す。
図2】実施例2で製造したメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物のFT-IRスペクトルを示す。
図3】実施例6で製造した(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩のPXRDスペクトルを示す。
図4】実施例6で製造した(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩のDSCサーモグラムを示す。
図5】実施例6で製造した(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩のFT-IRスペクトルを示す。
図6】実施例7で製造した(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を長期保存条件下で6ヶ月間にわたり保存した際の安定性試験の結果(外観)を示す写真である(開始:開始時、6ヶ月:6ヶ月後)。
図7】(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン塩酸塩を長期保存条件下で6ヶ月間にわたり保存した際の安定性試験の結果(外観)を示す写真である(開始:開始時、6ヶ月:6ヶ月後)。
図8】実施例7で製造した(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を、安定性試験の開始時に測定したDSCサーモグラムを示す。
図9】実施例7で製造した(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を長期保存条件下で6ヶ月間にわたり保存した後に測定したDSCサーモグラムを示す。
図10】(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン塩酸塩を、安定性試験の開始時に測定したDSCサーモグラムを示す。
図11】(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン塩酸塩を長期保存条件下で6ヶ月間にわたり保存した後に測定したDSCサーモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、トファシニブの製造に有用な中間体である(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩の新規な製造方法を提供する。具体的には、本発明は、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩の製造方法であって、
(a)イソプロパノール、イソプロパノール水溶液、およびイソプロパノールと有機溶媒の混合溶媒からなる群から選択される溶媒中において、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートをジベンゾイル-L-酒石酸と還流下で加熱して反応させた後、冷却して、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を調製する工程;ならびに
(b)工程(a)で得られたメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を塩基と反応させて、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートに転換した後、該メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを還元して、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを調製する工程
を含む方法を提供する。
【0021】
本発明の製造方法において、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートは公知の化合物であり、市販されている。必要に応じて、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメート塩酸塩などの酸付加塩を、炭酸カリウムなどの塩基で処理することにより、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートに転換して、本発明の製造方法で使用してもよい。
【0022】
工程(a)の反応は、イソプロパノール、イソプロパノール水溶液、およびイソプロパノールと有機溶媒の混合溶媒からなる群から選択される溶媒中で行われる。前記イソプロパノールと有機溶媒の混合溶媒は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランおよびアセトニトリルからなる群から選択される有機溶媒とイソプロパノールの混合溶媒であってもよい。好ましくは、工程(a)の反応は、イソプロパノール、イソプロパノール水溶液、イソプロパノールとメタノールの混合溶媒、イソプロパノールとエタノールの混合溶媒、またはイソプロパノールとn-プロパノールの混合溶媒中で実施してもよい。前記イソプロパノール水溶液またはイソプロパノールと有機溶媒の前記混合溶媒におけるイソプロパノールと水または有機溶媒の体積比は、60:1~30:1であってもよい。
【0023】
工程(a)において、分割剤として使用されるジベンゾイル-L-酒石酸は、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメート1当量に対して、0.5~2.0当量、好ましくは0.7~1.1当量の比率で使用してもよい。ジベンゾイル-L-酒石酸は、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートの溶液に直接加えてもよい。あるいは、ジベンゾイル-L-酒石酸は、ジベンゾイル-L-酒石酸を含む溶液の形態で、ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートの溶液に加えてもよい。ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートとジベンゾイル-L-酒石酸の反応は、還流下で加熱することにより実施される。還流下での加熱は、使用する溶媒に応じて、例えば、55~100℃の温度で実施してもよい。還流加熱後の冷却は、0~55℃の温度になるように実施してもよい。この冷却によって、立体特異的なエナンチオマーが沈殿する。この冷却/沈殿工程は、例えば、1~24時間、好ましくは2~5時間、より好ましくは約3時間にわたり実施してもよいが、これらに限定されない。得られた沈殿物は、濾過、洗浄、乾燥などの方法によって単離してもよい。例えば、乾燥は、30~60℃、好ましくは40~50℃で実施してもよいが、これらに限定されない。
【0024】
工程(a)で得られる生成物は、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物の形態であることが本発明により見出された。このイソプロパノール溶媒和物は、下記の化学式3で示される。すなわち、工程(a)で得られる生成物は、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートと、ジベンゾイル-L-酒石酸と、イソプロパノールとが、1:1:1の当量比で組み合わさった溶媒和物の形態である。続いて、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を、炭酸塩や水酸化物などの塩基と反応させて、遊離塩基の形態に転換してもよく、これにより、次の反応工程を効率的に実施できる。本発明の製造方法は、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を経由して進行することから、公知の方法と比較して、より早い段階でキラル分割が実施され、これにより、製造コストを下げ、高い光学純度を有する生成物を提供することが可能である。
【化2】
【0025】
また、工程(a)で調製されたメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を、特定の溶媒中で再結晶化すると、そのキラル純度を99%以上、より好ましくは99.5%以上、さらにより好ましくは99.8%以上、特により好ましくは99.9%以上に増加できることが本発明により見出された。したがって、工程(a)は、再結晶化工程をさらに含んでいてもよい。具体的には、工程(a)は、イソプロパノールとメタノールの混合溶媒またはイソプロパノールとエタノールの混合溶媒中において、前記工程で得られたメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を再結晶化させる工程をさらに含んでいてもよい。この再結晶化は、例えば、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物と、イソプロパノールとメタノールの混合溶媒またはイソプロパノールとエタノールの混合溶媒との混合物を還流下で加熱した後、5~15℃の温度に冷却して沈殿させることにより実施してもよい。得られた沈殿物は、濾過、洗浄、乾燥などの方法によって単離してもよい。例えば、乾燥は、30~60℃、好ましくは40~50℃で実施してもよいが、これらに限定されない。
【0026】
本発明の製造方法は、前記工程で調製されたメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を塩基と反応させて、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートに転換した後、該メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートを還元して、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを調製する工程[すなわち、工程(b)]を含む。
【0027】
メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートへの転換(すなわち、遊離塩基の形態への転換)に使用する塩基は、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの従来の無機塩基であってもよく、好ましくは炭酸カリウムであってもよい。前記塩基は、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物1当量に対して、1.0~5.0当量の比率で使用してもよいが、これに限定されない。メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物と塩基の反応は、メチルt-ブチルエーテルなどの従来の有機溶媒中で実施してもよい。
【0028】
(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンの形成に使用する還元剤は、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムリチウム、水素化ナトリウムなどであってもよく、好ましくは水素化アルミニウムリチウムであってもよい。前記還元剤は、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメート1当量に対して、1.0~5.0当量の比率で使用してもよいが、これに限定されない。前記還元は、テトラヒドロフランなどの従来の有機溶媒中で実施してもよい。
【0029】
(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを特定の塩の形態(すなわち、酢酸塩の形態)に転換すると、これにより得られる(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を高い光学純度(99%ee以上)で単離することができ、この酢酸塩は、優れた安定性(保存安定性など)を有することが本発明により見出された。したがって、本発明の製造方法は、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンをその酢酸塩に転換する工程をさらに含んでいてもよい。具体的には、本発明の製造方法は、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンを酢酸と反応させて、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を調製する工程[工程(c)]をさらに含んでいてもよい。
【0030】
酢酸は、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン1当量に対して、0.8~1.5当量、好ましくは0.9~1.1当量の比率で使用してもよい。(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンと酢酸の反応は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリル、およびそれらの混合溶媒からなる群から選択される溶媒中で行ってもよい。好ましくは、この反応は、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、またはそれらの混合溶媒中で実施してもよい。また、この反応は、30~50℃、好ましくは30~40℃の温度で1~3時間にわたり実施してもよい。得られた生成物は、冷却、沈殿物の濾過、洗浄、乾燥などの方法によって単離してもよい。例えば、冷却は、-5~10℃、好ましくは0~5℃で実施してもよく、乾燥は、20~50℃、好ましくは35~45℃で実施してもよいが、これらに限定されない。
【0031】
また、本発明は、前記製造方法の中間体として使用され、化学式3で示される新規な溶媒和物、すなわち、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物を、その範囲内に含む。
【0032】
また、本発明は、トファシチニブの製造に有用な中間体としての新規な立体異性体、すなわち、化学式4で示される(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩を、その範囲内に含む。
【化3】
【0033】
また、本発明は、トファシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法であって、前記製造方法に従って製造された(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩(好ましくは、酢酸塩)をトファシチニブに転換する工程を含む方法を、その範囲内に含む。具体的には、本発明は、トファシチニブまたはその薬学的に許容可能な塩の製造方法であって、
(i)前記製造方法に従って、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩を調製する工程;
(ii)前記(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその塩を、2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンと反応させて、(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを調製する工程;
(iii)前記(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを脱ベンジル化して、(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンを調製する工程;および
(iv)前記(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンをシアノ酢酸エチルと反応させて、トファシチニブを調製する工程
を含む方法を提供する。
【0034】
前記製造方法において、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンの塩は、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩であってもよい。
【0035】
工程(ii)~(iv)は、本発明に従って調製された(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミンまたはその酢酸塩を使用すること以外は、公知の方法(例えば、WO2002/096909、J. Heterocyclic. Chem, 53, 1259(2016), Org. Process Res. Dev. 2014, 18, 1714などに開示されている方法)に従って実施してもよい。
【0036】
本発明の製造方法の全体的な反応式は、以下の反応式1で表される。
【化4】
【0037】
以下、実施例を参照することにより本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を一例として説明するためのものであり、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【実施例
【0038】
粉末X線回折(PXRD)スペクトルは、Bruker D8アドバンスX線粉末回折計(X線源:CuKα、管電圧:40kV、管電流:40mA、発散スリット:0.3°、散乱スリット:0.3°)で測定した。FT-IRスペクトルは、Agilent Cary 630 FT-IR分光計で測定した。サンプルをATRプリズムの表面に密着させた後、4000~650cm-1の波数で反射スペクトルを測定した。質量の測定は、Waters e2695 QDa 質量分析計(QDa検出器を備えたWaters e2695セパレーションモジュール)(キャピラリー電圧:0.8kV、プローブ温度:600℃、コーン電圧:10V、イオン源:エレクトロスプレー、分析モード:ポジティブモード、およびスキャン範囲:50~1000Da)で行った。融点(M.P)の測定は、メトラー・トレドMP80 Melting Point System(開始温度:120℃、終了温度:200℃、加熱速度:1℃/分)を使用して行った。旋光度の測定は、Jasco P-2000シリーズ旋光計(波長:589nm、光路長:100mm、20℃においてCHCl100mL中1g)を使用して行った。示差走査熱量(DSC)の測定は、メトラー・トレドDSC 1 STAR示差走査熱量計(サンプル容器:密閉アルミニウムパン、99%窒素条件、開始温度:30℃、終了温度:300℃、加熱速度:10℃/分)を使用して行った。核磁気共鳴(NMR)スペクトル分析は、Bruker分光計(400MHz)を使用して行い、化学シフトはppm単位で分析した。
【0039】
実施例1:メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物の製造
ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメート塩酸塩(840g)、メチルt-ブチルエーテル(8.4L)、および炭酸カリウム溶液(427gを精製水3.4Lに溶解)の混合物を、室温で約15分間撹拌した。有機層を分離し、減圧下で濃縮した。イソプロパノール(1.7L)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を減圧下でさらに濃縮した。イソプロパノール(3.4L)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を約15分間撹拌した。ジベンゾイル-L-酒石酸(1.0kg)のイソプロパノール(10.0L)溶液を、ラセミ体の前記メチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートのイソプロパノール溶液に徐々に加えた。反応混合物を還流下で3時間加熱し、約50℃に冷却した後、50±5℃で約3時間撹拌した。生成物を濾過した後、イソプロパノール(0.8L)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約45℃で真空乾燥して、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物897.5gを得た(収率:46.9%)。
キラル純度:98.0%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.0(m, 4H), 7.69(m, 2H), 7.55(m, 4H), 7.30-7.38(m, 5H), 7.09(m, 1H), 5.79(d, 2H), 3.74-3.89(m, 4H), 3.46(s, 3H), 2.81-2.91(m, 2H), 2.62(m, 2H), 1.73(b, 1H), 1.41-1.53(m, 2H), 1.03(d, 6H), 0.73(d, 3H)
【0040】
実施例2:メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物の精製
実施例1で製造したメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物(100g、キラル純度:98.0%)、イソプロパノール(2.7L)、およびメタノール(0.3L)の混合物を、還流下で約3時間加熱し、約10℃に冷却した後、10±5℃で約3時間撹拌した。生成物を濾過した後、イソプロパノールとメタノールの混合溶媒(0.2L、27:3(v/v))で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約45℃で真空乾燥して、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物94.2gを得た(収率:94.2%)。
キラル純度:99.90%
M.P:134.5~136.5℃
MS m/z 263(M++H)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.0(m, 4H), 7.69(m, 2H), 7.55(m, 4H), 7.30-7.38(m, 5H), 7.09(m, 1H), 5.79(d, 2H), 3.74-3.89(m, 4H), 3.46(s, 3H), 2.81-2.91(m, 2H), 2.62(m, 2H), 1.73(b, 1H), 1.41-1.53(m, 2H), 1.03(d, 6H), 0.73(d, 3H).
旋光度:8.93°~10.02°
【0041】
得られたメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物のPXRDスペクトルを図1に示す。図1に示すように、回折ピークは、2θ角で、5.18±0.2°、10.34±0.2°、15.52±0.2°、20.73±0.2°、22.53±0.2°、および36.66±0.2°に存在する。
【0042】
また、得られたメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物のFT-IRスペクトルを図2に示す。図2に示すように、赤外線吸収周波数は、3287cm-1、2970cm-1、1732cm-1、1713cm-1、1697cm-1、1557cm-1、1498cm-1、1450cm-1、1373cm-1、1354cm-1、1307cm-1、1265cm-1、1247cm-1、1221cm-1、1172cm-1、1107cm-1、1070cm-1、1050cm-1、1015cm-1、976cm-1、927cm-1、895cm-1、847cm-1、811cm-1、752cm-1、723cm-1、705cm-1、664cm-1、649cm-1、592cm-1、563cm-1、515cm-1、および497cm-1である。
【0043】
実施例3:メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物の精製
実施例1で製造したメチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物(100g、キラル純度:98.0%)、イソプロパノール(2.7L)、および無水エタノール(0.3L)の混合物を、還流下で約3時間加熱し、約10℃に冷却した後、10±5℃で約3時間撹拌した。生成物を濾過した後、イソプロパノールと無水エタノールの混合溶媒(0.2L、27:3(v/v))で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約45℃で真空乾燥して、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物95.4gを得た(収率:95.4%)。
キラル純度:99.86%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.0(m, 4H), 7.69(m, 2H), 7.55(m, 4H), 7.30-7.38(m, 5H), 7.09(m, 1H), 5.79(d, 2H), 3.74-3.89(m, 4H), 3.46(s, 3H), 2.81-2.91(m, 2H), 2.62(m, 2H), 1.73(b, 1H), 1.41-1.53(m, 2H), 1.03(d, 6H), 0.73(d, 3H)
【0044】
実施例4:メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物の製造
ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメート塩酸塩(10g)、メチルt-ブチルエーテル(100mL)、および炭酸カリウム溶液(5gを精製水40mLに溶解)の混合物を、室温で約15分間撹拌した。有機層を分離し、減圧下で濃縮した。イソプロパノール(20mL)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を減圧下でさらに濃縮した。イソプロパノール(285mL)および精製水(15mL)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を約15分間撹拌した。ジベンゾイル-L-酒石酸(12.0g)を前記溶液に加えた。反応混合物を還流下で1時間加熱し、約50℃に冷却した後、50±5℃で約3時間撹拌した。生成物を濾過した後、イソプロパノール(10mL)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約45℃で真空乾燥して、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物8.3gを得た(収率:36.5%)。
キラル純度:96.54%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.0(m, 4H), 7.69(m, 2H), 7.55(m, 4H), 7.30-7.38(m, 5H), 7.09(m, 1H), 5.79(d, 2H), 3.74-3.89(m, 4H), 3.46(s, 3H), 2.81-2.91(m, 2H), 2.62(m, 2H), 1.73(b, 1H), 1.41-1.53(m, 2H), 1.03(d, 6H), 0.73(d, 3H)
【0045】
実施例5:メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物の製造
ラセミ体のメチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメート塩酸塩(3.0kg)、メチルt-ブチルエーテル(30.0L)、および炭酸カリウム溶液(1.5kgを精製水12Lに溶解)の混合物を、室温で約15分間撹拌した。有機層を分離し、減圧下で濃縮した。イソプロパノール(6.0L)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を減圧下でさらに濃縮した。イソプロパノール(6.0L)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を約15分間撹拌した。ジベンゾイル-L-酒石酸(2.5kg)のイソプロパノール(30.0L)溶液を、ラセミ体の前記メチル(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートのイソプロパノール溶液に徐々に加えた。反応混合物を還流下で3時間加熱し、約50℃に冷却した後、50±5℃で約3時間撹拌した。生成物を濾過した後、イソプロパノール(3.0L)で洗浄した。得られた湿潤ケーキ、イソプロパノール(85.4L)、およびメタノール(10.2L)の混合物を還流下で3時間加熱し、約10℃に冷却した後、10±5℃で約3時間撹拌した。生成物を濾過した後、イソプロパノールとメタノールの混合溶媒(6.8L、27:3(v/v))で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約45℃で真空乾燥して、メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物3.0kgを得た(収率:43.9%)。
キラル純度:99.93%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.0(m, 4H), 7.69(m, 2H), 7.55(m, 4H), 7.30-7.38(m, 5H), 7.09(m, 1H), 5.79(d, 2H), 3.74-3.89(m, 4H), 3.46(s, 3H), 2.81-2.91(m, 2H), 2.62(m, 2H), 1.73(b, 1H), 1.41-1.53(m, 2H), 1.03(d, 6H), 0.73(d, 3H)
【0046】
実施例6:(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩の製造
メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物(1:1:1、キラル純度:99.93%)(2.5kg)およびメチルt-ブチルエーテル(25.0L)の混合物を10℃以下に冷却した後、10%炭酸カリウム溶液(15.0L)を加えた。反応混合物を約30分間撹拌した。有機層を分離し、精製水(2.5L)で洗浄した後、減圧濃縮した。テトラヒドロフラン(3.5L)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を減圧下でさらに濃縮した。テトラヒドロフラン(16.3L)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を約15分間撹拌した。水素化アルミニウムリチウム(181.6g)を3回に分けて前記溶液に加えた。反応混合物を還流下で3時間加熱し、-10~-5℃に冷却した。内部温度を0℃以下に維持しながら、テトラヒドロフラン水溶液(1.8L、THF:精製水=5:2(v/v))を徐々に加えた。反応混合物の温度を室温に上げた後、約30分間撹拌し、濾過した。湿潤ケーキをテトラヒドロフラン(5.0L)で洗浄した。濾液および前記洗浄した溶液を合わせた後、得られた混合物を減圧下で濃縮した。酢酸イソプロピル(5.0L)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を減圧下でさらに濃縮した。メチルエチルケトン(12.5L)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を35±5℃で約15分間撹拌した。酢酸(220.5g)を前記得られた溶液に加えた。反応混合物を約30分間撹拌し、約5℃に冷却した後、0~5℃で約1時間撹拌した。生成物を濾過した後、冷メチルエチルケトン(2.5L)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約40℃で真空乾燥して、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩889.3gを得た(収率:87.0%)。
化学的純度:99.99%
キラル純度:100%
M.P:116.5~118.5℃
MS m/z 219(M++H)
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.0(m, 4H), 7.31(m, 4H), 7.25(m, 2H), 3.61(d, 1H), 3.40(d, 1H), 2.76(b, 3H), 2.35(s, 3H), 2.21(b, 2H), 1.99(s, 3H), 1.83(b, 1H), 1.50(b, 2H), 1.04(d, 3H)
旋光度:26.9°~28.2°
【0047】
得られた(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩のPXRDスペクトルを図3に示す。図3に示すように、回折ピークは、2θ角で、7.60±0.2°、10.49±0.2°、13.53±0.2°、14.44±0.2°、14.99±0.2°、15.27±0.2°、16.37±0.2°、16.89±0.2°、17.49±0.2°、18.47±0.2°、20.47±0.2°、22.08±0.2°、23.00±0.2°、24.07±0.2°、24.63±0.2°、26.67±0.2°、27.24±0.2°、27.87±0.2°、29.12±0.2°、31.84±0.2°、35.55±0.2°、および37.42±0.2°に存在する。
【0048】
また、得られた(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩のDSCサーモグラムを図4に示し、FT-IRスペクトルを図5に示す。図5に示すように、赤外線吸収周波数は、2944cm-1、2917cm-1、1546cm-1、1477cm-1、1395cm-1、1332cm-1、1262cm-1、1211cm-1、1162cm-1、1124cm-1、1099cm-1、1073cm-1、1057cm-1、1006cm-1、961cm-1、930cm-1、911cm-1、815cm-1、784cm-1、746cm-1、702cm-1、652cm-1、616cm-1、485cm-1、448cm-1、および403cm-1である。
【0049】
実施例7:(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩の製造
メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物(1:1:1、キラル純度:97.20%)(25.0g)およびメチルt-ブチルエーテル(250mL)の混合物を10℃以下に冷却した後、10%炭酸カリウム溶液(150mL)を加えた。反応混合物を約30分間撹拌した。有機層を分離し、精製水(25mL)で洗浄した後、減圧濃縮した。テトラヒドロフラン(35mL)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を減圧下でさらに濃縮した。テトラヒドロフラン(163mL)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を約15分間撹拌した。水素化アルミニウムリチウム(1.99g)を前記溶液に加えた。反応混合物を還流下で3時間加熱し、-10~-5℃に冷却した。内部温度を0℃以下に維持しながら、テトラヒドロフラン水溶液(18mL、THF:精製水=5:2(v/v))を徐々に加えた。反応混合物の温度を室温まで上げた後、反応混合物を約30分間撹拌し、濾過した。湿潤ケーキをテトラヒドロフラン(50mL)で洗浄した。濾液および前記洗浄した溶液を合わせた後、得られた混合物を減圧下で濃縮した。メチルエチルケトン(125mL)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を35±5℃で約15分間撹拌した。前記得られた溶液に酢酸(2.21g)を加えた。反応混合物を約30分間撹拌し、約5℃に冷却した後、0~5℃で約1時間撹拌した。生成物を濾過した後、冷メチルエチルケトン(25mL)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約40℃で真空乾燥して、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩8.45gを得た(収率:82.7%)。
化学的純度:100%
キラル純度:99.91%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.0(m, 4H), 7.31(m, 4H), 7.25(m, 2H), 3.61(d, 1H), 3.40(d, 1H), 2.76(b, 3H), 2.35(s, 3H), 2.21(b, 2H), 1.99(s, 3H), 1.83(b, 1H), 1.50(b, 2H), 1.04(d, 3H)
【0050】
実施例8:(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩の製造
メチル((3R,4R)-1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)カルバメートジベンゾイル-L-酒石酸塩のイソプロパノール溶媒和物(1:1:1、キラル純度:95.20%)(25.0g)およびメチルt-ブチルエーテル(250mL)の混合物を10℃以下に冷却した後、10%炭酸カリウム溶液(150mL)を加えた。反応混合物を約30分間撹拌した。有機層を分離し、精製水(25mL)で洗浄した後、減圧濃縮した。テトラヒドロフラン(35mL)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を減圧下でさらに濃縮した。テトラヒドロフラン(163mL)を前記濃縮物に加え、得られた混合物を約15分間撹拌した。水素化アルミニウムリチウム(1.99g)を前記溶液に加えた。反応混合物を還流下で3時間加熱し、-10~-5℃に冷却した。内部温度を0℃以下に維持しながら、テトラヒドロフラン水溶液(18mL、THF:精製水=5:2(v/v))を徐々に加えた。反応混合物の温度を室温まで上げた後、反応混合物を約30分間撹拌し、セライトパッドに通して濾過した。湿潤ケーキをテトラヒドロフラン(50mL)で洗浄した。濾液および前記洗浄した溶液を合わせた後、得られた混合物を減圧下で濃縮した。メチルエチルケトン(125mL)を濃縮物に加え、得られた混合物を35±5℃で約15分間撹拌した。前記得られた溶液に酢酸(2.21g)を加えた。反応混合物を約30分間撹拌し、約5℃に冷却した後、0~5℃で約1時間撹拌した。生成物を濾過した後、冷メチルエチルケトン(25mL)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約40℃で真空乾燥して、(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩8.06gを得た(収率:78.9%)。
化学的純度:100%
キラル純度:99.87%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 8.0(m, 4H), 7.31(m, 4H), 7.25(m, 2H), 3.61(d, 1H), 3.40(d, 1H), 2.76(b, 3H), 2.35(s, 3H), 2.21(b, 2H), 1.99(s, 3H), 1.83(b, 1H), 1.50(b, 2H), 1.04(d, 3H)
【0051】
実施例9:(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンの製造
(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩(キラル純度:99.98%)(50.0g)および5%炭酸水素ナトリウム溶液(1.5L)の混合物を約30分間撹拌した。2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(33.8g)を反応混合物に加えた後、100±5℃で12時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、約1時間撹拌した後、濾過した。得られた生成物を精製水(500mL)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約50℃で真空乾燥して、(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン64.1gを得た(収率:97%)。
化学的純度:98%
キラル純度:99.98%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 11.80(s, 1H), 7.31(m, 4H), 7.21 - 7.25(m, 1H), 7.12(s, 1H), 6.58(b, 1H), 4.99(b, 1H), 3.38 - 3.50(m, 5H), 2.77 - 2.81(m, 1H), 2.64(b, 1H), 2.53 - 2.55(m, 1H), 2.24(b, 1H), 2.18(b, 1H), 1.60 - 1.63(m, 2H), 0.87(d, 3H)
【0052】
実施例10:(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミンの製造
(3R,4R)-(1-ベンジル-4-メチルピペリジン-3-イル)-2-クロロ-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン(化学的純度:99.7%、キラル純度:99.98%)(450.0g)および精製水(4.5L)を水添反応器に加えた。炭素担持10%水酸化パラジウム触媒(20.5g)および塩酸溶液(53mL)を加えた。水添反応器に水素を充填し、30psiに加圧した後、70±5℃で3時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、窒素で置換して水素ガスを除去した。反応混合物をセライトパッドに通して濾過した。湿潤ケーキを精製水(0.9L)で洗浄した。濾液および前記洗浄した溶液を合わせたものにジクロロメタン(4.5L)を加えた後、約30分間撹拌した。50%水酸化ナトリウム溶液を使用して、反応混合物のpHを約10~12に調整した。有機層を分離し、減圧下で濃縮して、(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン287gを得た(収率:96%)。
化学的純度:99.8%
キラル純度:99.98%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 11.61(s, 1H), 8.08(s, 1H), 7.11(d, 1H), 6.52(d, 1H), 4.78(s, 1H), 3.31(s, 3H), 3.09 - 3.14(m, 1H), 2.78 - 2.84(m, 2H), 2.74(m, 1H), 2.29 - 2.32(m, 1H), 1.70 - 1.76(m, 1H), 1.44 - 1.48(m, 1H), 0.96(d, 3H)
【0053】
実施例11:トファシチニブの製造
(3R,4R)-(4-メチルピペリジン-3-イル)-N-メチル-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-アミン(化学的純度:99.8%、キラル純度:99.98%)(270.0g)およびテトラヒドロフラン(2.7L)の混合物に、シアノ酢酸エチル(187g)および1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(168g)を加えた。反応温度を20~30℃に維持しながら、反応混合物を24時間撹拌した。反応混合物に精製水(5.4L)を加え、20%塩酸溶液でpHを7~8に調整した。反応混合物を12時間撹拌した後、濾過した。得られた生成物を33%テトラヒドロフラン水溶液(0.8L)で洗浄した。得られた湿潤ケーキを約60℃で乾燥して、トファシチニブ267gを得た(収率:78%)。
化学的純度:99.2%
キラル純度:99.98%
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6) δ 11.67(s, 1H), 8.11(d, 1H), 7.14(s, 1H), 6.56(s, 1H), 4.85(s, 1H), 3.62 - 4.15(m, 4.5H), 3.37 - 3.43(m, 1.5H), 3.25(s, 3H), 2.38 - 2.42(m, 1H), 1.68 - 1.72(m, 1H), 1.53 - 1.59(m, 1H), 0.99 - 1.03(m, 3H)
【0054】
試験例:安定性試験
以下の表1に示す長期保存条件下で、実施例7で製造した(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩と、公知の方法に従って製造した(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン塩酸塩の安定性試験を実施した。
【表1】
【0055】
長期保存条件下での安定性試験の結果を図6図11に示す。表2は、その結果をまとめたものである。
【表2】
【0056】
この安定性試験の結果から分かるように、本発明に従って製造された(3R,4R)-1-ベンジル-N,4-ジメチルピペリジン-3-アミン酢酸塩は、試験の開始時と終了時とで、外観、化学的純度、キラル純度、およびDSCピーク温度に有意な変化は認められなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11