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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】金属粉末分析方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/3563 20140101AFI20240705BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20240705BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G01N21/3563
G01N21/27 A
G01N21/33
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021568300
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 GB2020051193
(87)【国際公開番号】W WO2020229838
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】1906874.1
(32)【優先日】2019-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517102994
【氏名又は名称】エルピーダブリュ テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LPW TECHNOLOGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ベン
(72)【発明者】
【氏名】フェラー,ベン
(72)【発明者】
【氏名】ウィークス,ニコラス ポール
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-532781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0355143(US,A1)
【文献】国際公開第2016/165746(WO,A1)
【文献】特開平09-281048(JP,A)
【文献】特開平09-043132(JP,A)
【文献】特開平08-050100(JP,A)
【文献】特開2018-155520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0111197(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/958
B22F 1/00-B22F 12/90
B33Y 10/00-B33Y 99/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Science Direct
ACS PUBLICATIONS
Scitation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形プロセスにおいて用いられる金属粉末を分析する方法であって、
前記粉末を融解せずに、前記粉末の領域を電磁スペクトルの不可視部分における放射線を含む電磁放射線で照射する工程と、
前記粉末の照射領域の別々の部分から戻った電磁スペクトルの不可視部分における放射線を含む照射放射線を別々に検出して、検出された放射線に基づいた出力を生成する工程と、
前記出力を処理して、前記粉末の個々の粒子の特性を決定し、その後、粒子の傘下の程度を推測し、前記特性が、特定の波長の放射線を反射および/または散乱する粒子の能力である工程と、
を備える方法。
【請求項2】
前記粉末の領域が紫外線および/または赤外線を含む光で照射され、少なくとも、戻された紫外線および/または赤外線が検出されることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記粉末が密集された状態であり、前記粉末の表面が照射されることを特徴とする、
請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記出力が、前記粉末の領域のそれぞれの区域から受けた放射線の1つまたは複数の波長あるいは検知された波長に基づいた値を含んでいることを特徴とする、
請求項1からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記区域が実質的に同じサイズであることを特徴とする、
請求項に記載の方法。
【請求項6】
各区域が、平均サイズの粉末の単一粒子によって占められる粉末の表面の面積よりも小さい面積を有していることを特徴とする、
請求項またはのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
各区域の面積が、平均サイズの粉末の単一粒子によって占められる粉末の表面の面積の10分の1、500分の1、あるいは1000分の1以下であることを特徴とする、
請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記値をデータセットとして格納する工程をさらに含む、
請求項からのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記データセットを処理することで、所定のしきい値未満の光度を有する粉末の領域の区域に関連する値を識別することによって、粒子間の空間に関連する値が識別されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記識別された値以外の値を処理することで、所定の範囲外にある特性を有する粒子を表す値が識別されることを特徴とする、
請求項に記載の方法。
【請求項11】
処理を行うことで、検出された波長をすべての処理された値の波長分布における外れ値として定義する区域を表す値が識別されることを特徴とする、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
所定数より多くの識別された区域が接続されているグループを識別することで、対象の粒子または粒子のグループが識別されることを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
積層造形プロセスにおいて用いられる金属粉末を分析するための装置であって、
前記粉末を融解せずに、前記粉末の領域を電磁スペクトルの不可視部分における放射線を含む電磁放射線で照射する手段と、
前記粉末の照射領域の別々の部分から戻った電磁スペクトルの不可視部分における放射線を含む照射放射線を別々に検出して、検出された放射線に基づいた出力を生成する検出器と、
前記出力を処理して、前記粉末の個々の粒子の特性を決定し、その後、粒子の傘下の程度を推測し、前記特性が、特定の波長の放射線を反射および/または散乱する粒子の能力であるプロセッサと、
を備える装置。
【請求項14】
粉末搬送装置または積層造形装置に設けられた請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記粉末の領域の表面を紫外線および/または赤外線を含む光で照射するように構成された照射装置をさらに備え、
前記検出器が、前記照射装置の照射面と同じ側への放射線を検出できるように配置されていることを特徴とする、
請求項13または14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記照射装置および検出器が、前記金属粉末が導入され得る筐体内に収容され、前記筐体が、対象の波長での前記金属粉末の制御された照射を可能にするために、その波長での電磁放射線の侵入を防止するか、または少なくとも制限することができることを特徴とする、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記検出器が、粉末の領域の少なくとも一部の画像を1つまたは複数のセンサーが配置されている画像平面に集束させる集束要素を備えていることを特徴とする、
請求項13から16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記検出器が、前記粉末の領域から戻った放射線の位置を空間的に解像できることを特徴とする、
請求項13から17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記検出器が、前記粉末の領域の一部から戻った放射線を一度に検出することを特徴とする、
請求項13から17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
前記粉末の領域のそれぞれの区域から受けた放射線の波長または検知された波長に応じた値を含むデータセットとして、前記出力を格納するように構成されていることを特徴とする、
請求項13から17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサが、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法を前記装置に実行させるように構成されていることを特徴とする、
請求項13から20のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末を分析するための方法及び装置に関し、限定するわけではないが、特に積層造形プロセス(additive manufacturing (AM))で使用される金属粉末を分析するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の積層造形プロセスでは、積層造形機によって粉末金属または合金から物品が製造される。積層造形機では、造形用プラットフォーム(build platform)上に粉末の層が堆積され、粉末がレーザーまたは電子ビームにより選択的に融解されて、1つまたは複数の物品が形成される。このプロセスが繰り返されることにより、物品が一層ずつ形成されていく。
【0003】
造形が完了すると、未融解の粉末を別の造形に再利用することができる。
【0004】
造形プロセスで使用される金属粉末の組成および状態によって、プロセスによって形成される物品の完全性が大きく影響される可能性がある。
【0005】
たとえば、造形工程中に、融解していない粉末が劣化することがある。金属粉末は徐々に酸化してその特性が変化することがあり、結果的に粉末から製造された物品の特性が変化してしまう。通常、粉末が酸化する傾向は温度とともに増加し、高温への暴露によって他の粉末特性も影響を受ける可能性がある。その結果、融解していない粉末が構築中の物品すなわちヒートゾーンに近いほど、劣化する可能性が高くなる。
【0006】
また、粉末が融解する際に、このプロセスにより、加熱された粉末の粒子が粉末床から製造された物品の周囲に飛散し、物品の周囲の未融解粉末の品質が低下してしまうこともある。
【0007】
造形物の適切な品質を確保するために、使用済み粉末を分析し、ある程度まで劣化した粉末の再利用を停止すること、および/または未使用粉末を再利用粉末と混合することで、混合粉末が継続使用できるような適切なバルク特性を持つようにすることが知られている。別の手法では、粉末のバッチが再利用される回数に一定の上限を設けている。
【0008】
これらの手法には多くの問題がある。
【0009】
粉末の状態は、通常、バルク酸素含有量の測定を行うことによって分析される。測定プロセスには、再利用できない粉末サンプルを検査することが含まれている。さらに重要なことには、再利用粉末と未使用の粉末とを混合して全体的なバルク酸素含有量が所望のしきい値を下回っている混合粉末を生成する際に、バルク酸素含有量(または他のバルク)測定では、再利用のための粉末の適合性に関して誤った結果を与える可能性があることが発明者によって認識されている。これは、バルク酸素含有量が望ましいしきい値を下回っていても、造形に重大な悪影響を与える可能性のある、高度に酸化またはその他の原因で劣化した粒子の存在に関する感度が高くないためである。
【0010】
粉末を再利用する回数に概略の制限を設けることは、比較的粗雑な手法であり、特定の造形によって発生する可能性のある粉末の劣化量が考慮されていない。劣化の性質と程度は、造形によって大幅に異なる可能性がある。
【0011】
粉末の既存の検査方法は破壊検査であるため、その結果は実際に再利用される粉末とは関係がなく、通常はその粉末の平均的な状態の近似値である。
【0012】
粉末の組成と状態の他の側面も、造形の品質に影響を与える可能性がある。
【0013】
汚染粒子の存在は、高度に酸化された粒子の存在と同様の影響を与える可能性がある。積層造形機で粉末の層が形成される際の密集度と同様に、粒子のサイズと形状も造形に影響を与える可能性がある。
【0014】
本発明の実施形態の目的は、これらの問題のいくつかまたはすべてに対処することである。特に、本発明の実施形態の目的は、非破壊的な方法で粉末状態を分析するための改善された方法および装置を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、積層造形プロセスで使用する金属粉末を分析するための方法が提供され、この方法は、前記粉末を融解せずに、前記粉末の領域を電磁スペクトルの不可視部分における放射線を含む電磁放射線で照射する工程と、前記粉末の照射領域の別々の部分から戻った電磁スペクトルの不可視部分における放射線を含む照射放射線を別々に検出して、検出された放射線に基づいた出力を生成する工程と、前記出力を処理して、前記粉末の1つまたは複数の特性を特定する工程と、を備えている。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、積層造形プロセスで使用する金属粉末を分析するための装置が提供され、この装置は、前記粉末を融解せずに、前記粉末の領域を電磁スペクトルの不可視部分における放射線を含む電磁放射線で照射する照射装置と、前記粉末の照射領域の別々の部分から戻った電磁スペクトルの不可視部分における放射線を含む照射放射線を別々に検出して、検出された放射線に基づいた出力を生成する検出器と、前記出力を処理して、前記粉末の1つまたは複数の特性を特定するプロセッサと、を備えている。
【0017】
この方法は、任意の適切な環境で実行することができる。粉末は、検査容器に入れられた検査用粉末のサンプルであり得る。あるいは、積層造形機またはパイプまたは導管などの粉末搬送装置で分析を行うことができる。したがって、該装置は、検査装置、粉末搬送装置、または積層造形装置に含まれ得る。
【0018】
放射線は、紫外線および/または赤外光などのいくつかの不可視光を含む光であり、さらに可視光を含み得る。照射装置は、LEDを含むランプ、白熱灯および/または放電ランプなどの任意の適切な照射装置を含み得る。造形プロセスにおいて積層造形機で粉末を融解するように動作するレーザー形成部などのレーザーを使用して、(低電力モードで)、粉末を照射することも可能である。照射手段は、粉末のすべての領域を同時に、または領域の一部を別々に照射することができる。照射手段は、粉末の領域にわたって放射線のビームを走査することができる。
【0019】
1つまたは複数の照射装置が設けられる場合、それらは、金属粉末が導入される筐体内に設けられるか、あるいは、障壁を介して粉末のサンプルに照射でき、さらには戻ってきた照射放射線を受け取ることができるように構成された開口部内に設けられることが好ましい。筐体は、対象の波長での金属粉末の制御された照射を可能にするために、対象の波長での電磁放射線の侵入を防止するか、または少なくとも制限することができる。筐体は、実質的に遮光性を有するか、あるいは実質的に遮光性を有するように構成することができる。筐体は、積層造形機、または粉末搬送、製造、加工、または処理装置に含まれ得る。
【0020】
粉末の領域は、粉末の表面、特に平面であり得る。この方法は、積層造形機の適切な容器、造形用プラットフォーム、あるいは粉末用凹部に粉末を載置することを含むので、粉末が実質的に平面の上面を有し、その表面が照射される。あるいは、この方法は、粉末の製造、加工または搬送のための容器などの粉末収容構造の一部を形成する適切な透明な障壁を通して粉末を照射することを含み得る。そのような障壁は平面であり得るが、一般に円形の断面を有するパイプの壁部または窓部のように湾曲していてもよい。
【0021】
粉末は密集した状態であり得る。粉末が密集される程度は、測定を行う前に所定の方法または回数で粉末を軽くたたくことによって、および/または測定の前に粉末を前処理漏斗に通すことなどよって制御することができる。粉末は、粉末が検出器に対して実質的に不透明であるように、照射された表面から十分な深さを有することが好ましい。
【0022】
装置は、照射装置および検出器から検査される粉末を分離するために、対象の放射の波長を透過するかあるいは少なくとも部分的に透過する窓部などの障壁を含み得る。装置は、使用中に、密集した形態の粉末が障壁を通して観察可能となるように、粉末が障壁によって支持されるかまたは障壁によって収容されるように配置される。したがって、照射装置は、窓部に照射するように配置され、検出器は、窓から、窓の下の位置から、または窓が実質的に垂直である場合は窓の横に並んで放射を受け取るように配置される。
【0023】
障壁が水平または実質的に水平である場合、粉末は密集した形態で障壁に支持される。障壁が水平または実質的に水平でない場合、例えば、容器またはパイプの側壁または窓部である場合は、粉末が窓部に対して積み重なるように収容されるような配置となる。ここで、パイプまたは導管の場合、窓から離れる下流方向に、窓部に対して粉末が積み重なるように作用するバルブまたは流量制限器を含み得る。
【0024】
粉末は、粉末のバッチから採取された粉末のサンプルである。粉末は、未使用の粉末または積層造形プロセスですでに使用されている再利用粉末の場合がある。粉末は、プロセスのさまざまな段階で分析でき、プロセスの複数のポイントで分析できる。したがって、粉末を分析するための装置は、積層造形機および粉末搬送および処理装置の様々なポイントに配置される。たとえば、粉末は、以下のプロセスの段階の1つ以上または任意に組み合わされた段階において分析可能である。すなわち、積層造形機への搬送中、積層造形機の粉末用容器内、積層造形機のプラットフォーム上、積層造形機内の粉末床内、積層造形機内の造形用容器内、積層造形機から搬送される際、ふるい分け工程後、および別の粉末と混合した後などに分析可能である。
【0025】
検出器はさまざまな形態を取り、任意の適切なセンサーを含むことができる。検出器は、粉末を照射するための手段として、粉末の領域の同じ側、特に照射面の同じ側で放射線を検出するように配置することができる。この方法には検出することが含まれ、検出器は粉末によって反射および/または散乱された放射線を検出するように配置される。検出器は、粉末のすべての領域から同時に、または領域の一部から別々に戻ってきた照射放射線を検出するように配置することができる。検出器は、粉末の領域を走査するように配置することができる。検出器と粉末との間の相対的な移動は、静止している粉末に対して検出器を移動させるか、または粉末搬送装置の場合のように、検出器を通過して粉末を移動させることによって実行することができる。
【0026】
検出器は、CCDまたはCMOSセンサーなどの検知要素の1次元または2次元アレイを含み得る。検出器は、1つまたは複数、あるいは一連のフォトダイオード、分光計または分光光度計を含み得る。検出器は、選択された波長の電磁放射を除外および/または許容するための1つまたは複数のフィルタを含み得る。
【0027】
検出器は、粉末から戻ってきた放射線を1つまたは複数のセンサーに集束させるための、レンズなどの1つまたは複数の集束要素を含み得る。1つまたは複数の集束要素は、粉末の領域の少なくとも一部の画像を、1つまたは複数のセンサーが配置されている画像平面に集束させることができる。検出器は、カメラまたは顕微鏡などの画像取込装置を含むことができる。検出器は、ハイパースペクトルカメラを含み得る。
【0028】
これらの配置により、検出器が放射源を空間的に解像できるため、および/または検出器が領域の一部から反射された光を一度に検出するため、および/または領域の一部のみが一度に照射されるため、装置は、粉末の照射領域の異なる部分から戻ってきた照射放射線を別々に検出することができる。
【0029】
出力を処理することで、以下の粉末のさまざまな異なる特性を特定することができる。すなわち、粉末の個々の粒子の状態、粉末および/または粉末の個々の粒子の表面特性、電磁放射との相互作用、特に特定の波長の放射を反射および/または散乱する能力に影響を与える粉末または粉末の個々の粒子の特性、粉末の個々の粒子の形状、粉末または粉末の個々の粒子の表面テクスチャー、汚染の有無、粉末の密集度、および粉末の展延性を特定することができる。
【0030】
出力には、粉末の領域のそれぞれの区域から受けた放射線の波長または検知された波長に応じた値が含まれる。また、出力には、粉末の領域のそれぞれの区域から受けた放射線の強度に応じた値も含まれる。出力には、異なる波長での放射線の強度に応じた値が含まれ得る。出力には、連続的な波長範囲にわたる放射線の強度に応じた値が含まれ得る。および/または、値は、1つまたは複数の離散波長での放射の強度に依存し得る。出力は、検出された波長の関数であり得る。出力には、複数の区域のそれぞれに対する値が含まれる。区域は、実質的に同じサイズである。区域は隣接している場合もあれば、空間的に分離されている場合もある。これらの区域は、合わせて、領域のすべてまたはほとんどを網羅する。各区域は、平均サイズの粉末の単一粒子が占める粉末の表面の面積よりも小さい面積を有することが好ましく、それは、その面積の4分の1、10分の1、100分の1、500分の1、あるいは1000分の1など、非常に小さいことが好ましい。そのため、積層造形用の金属粉末で一般的な粒子サイズに関しては、各区域は1000μm未満または100μm未満であり得る。このように、出力に含まれる少なくとも1つの、好ましくは複数の値は、粉末の単一粒子の影響を受ける。もちろん、平均粒子サイズは粉末の種類によって異なるため、区域の最適なサイズは粉末の種類によって異なる。このようにして、個々の粒子の状態を特定可能である。
【0031】
粉末の領域を分析して得られた値によって、データセットが形成される。
【0032】
放射線を検出し、出力を生成し、出力を処理するステップは、異なる箇所で実行できる。
【0033】
データセットには、粉末の照射領域の全部または一部の画像が実質的に含まれるが、少なくとも部分的には不可視波長の放射線を記録することによって取得されたものである。そのため、実際には、不可視波長を調べたときにのみ明らかになる特徴を認識できるようにするための人工着色を適用せずに、すべてのデータを人間の目に認識できるようにすることはできない。ではあるが、便宜上、本明細書で画像が参照される場合、画像は、少なくとも部分的には、不可視の電磁放射、特に不可視光を検出することによって得られたものを含んでいる。
【0034】
データセットが実質的に画像を含む場合、画像はデジタル画像であり得る。デジタル画像は、ピクセルなどの複数の要素によって形成されるか、またはそれらに分割することができる。要素はそれぞれ粉末の区域に対応し、その区域から検出器が別々に放射線を受け、出力を生成することができる。要素は、実質的に同じサイズであることが好ましい。したがって、粉末の撮像された領域または表面における粒子の数に対する画像内の要素の比は、少なくとも1:1のオーダーであることが好ましく、少なくとも4:1、10:1、100:1、500:1、または1000:1など、より高いことがさらに好ましい。そうすれば、その要素によって表される検出された放射線の波長は、粉末の単一粒子の特性によってのみ影響を受けることになる。
【0035】
処理用のデータセットは、通常、200万から600万の区域のそれぞれの値を含み、一般に10から110μmあるいは40から50μmの範囲のサイズの約5000個の粒子を表している。しかしながら、データセットのサイズは用途によって大幅に異なる。
【0036】
画像が可視色で形成されているか、対象の不可視の電磁放射線を表現できる標準が用いられているか、あるいは検出された不可視波長がデータセット内において人工着色によって表されているのであれば、データセットは、確立された色標準、たとえばRGBまたはCIELABに従って、粉末の各区域または画像要素を表現するデータを含む。
【0037】
同じ体積または粉末のサンプルの複数の領域を分析することができる。領域は隣接していても離れていてもよい。実施形態では、同じ粉末の少なくとも2、3、4、5、10、50、100またはそれ以上の領域が分析されて、粉末の複数のデータセットが形成される。データセットの数は、統計的有意性に関して必要とされるデータの量によって異なる。複数の領域を分析することにより、粉末がどの程度良好に混合されているかを評価するのに役立つ。
【0038】
セット内のデータは、粉末の領域の1つの区域のデータ値を1つまたは複数の他の区域のデータ値および/または参照データと比較することによって処理される。
【0039】
データセット内のデータを削除することで、画像のトリミングと同じように、残されたデータが粉末の選択されたサブ領域を表すようにすることができる。これは、歪みを排除できるようにすることで検出器に画像を生成する集束要素が検出器に含まれている場合に役立つ。また、異なるデータセット間、特に同じサンプルに関連するデータセット間の比較をより簡単で信頼性の高いものにできる。一例として、データセットのサイズを縮小することで、粉末の2000×2000の連続区域を画定し、2000×2000の画像要素で構成される画像を画定することができる。
【0040】
データセットを処理することで、さらなる処理に用いるのに十分な品質を備えているかどうかを特定すること、および/または特定のセットにおいて個別に取得されたすべてのデータが十分に類似しているかどうかを特定することができる。所定の品質基準を満たさないデータは除外され、それ以上の処理は行われない。これには、例えば、データから統計を取得し、それらの統計が所定の範囲内にあるかどうか、またはデータセットとデータセットとが所定のしきい値以上に異なっているかどうかを特定することを含む。一例では、検出された放射線を定義するために使用される特定の検出された波長の平均強度、波長範囲、またはカラーチャネルが、放射線が検出された粉末のすべての区域について、あるいはしきい値輝度よりも大きいすべての区域について、その平均からの偏差と同様に計算される。
【0041】
粉末の粒子間の空間に関連するデータセット内のデータを特定することができる。これにより、そのデータを以降の処理から除外することができる。そのようなデータは、光度が所定のしきい値未満である粉末の領域の区域を定義するデータを特定することによって識別できる。粉末の粒子間の空間は、粒子よりも暗く見える傾向があるため、光度が低くなる。粉末のそのような区域は背景区域と見なすことができ、残りのより明るい領域は前景区域となる。データセットが画像を含む場合、このステップは、より暗い画像要素を識別することを含む。より暗い画像要素は背景要素と見なされ、より明るい要素は前景要素と見なされる。
【0042】
データセットを処理することで、それが表す粉末の粒子の数を特定するか、少なくとも推定することもできる。データセットが画像を含む場合、これは流域セグメンテーションによって実行できる。このステップは、存在する場合、画像から背景要素を除去した後に実行することが好ましい。
【0043】
あるいは、もしくはそれに加えて、データセットによって表される粒子の数は、データセットに依存しない別の適切な方法によって、例えば、データセットが表す区域のサイズ、粉末粒子の平均サイズ、および/または粉末の密集度といった情報によって推定され得る。
【0044】
粉末の前景区域を表すデータは、表面特性を含む、照射された放射線と粒子がどのように相互作用するかに影響を与える粉末の粒子の特性を表す。
【0045】
所定の範囲外にある表面特性を有するデータセットによって表される粉末の粒子の数を特定することができる。選択された範囲外にある測定された表面特性を有する粉末の割合が特定できる。
【0046】
これは、検出された放射線の波長が選択された範囲外にあるデータによって定義された区域、好ましくは前景区域を識別することによって実行できる。
【0047】
区域の選択は、検出された波長の統計分析に基づいて行われる。選択された区域は、検出された波長を、すべての前景区域にわたる波長分布の外れ値として定義する区域である。例えば、要素は、それらの波長がすべての区域の平均波長からどの程度偏差しているかを特定することによって選択され得る。選択された区域は、前景区域の波長分布の外側の5%以下、1%以下、または0.1%以下を表すことが好ましい。
【0048】
対象の範囲内にある特性を反映するデータを特定すると、その特性を持つ個々の粒子を特定できる。そのために、所定の数を超える接続された区域のグループが識別される。その数は、粉末の単一粒子が占めると予想される合計面積を表す数になるように選択される。したがって、識別された区域のグループは、選択された基準を満たす特性を有する少なくとも1つの、ただし通常は1つの粒子を表すと見なすことができる。
【0049】
粒子に対する区域の比率が1:1に近い場合、このステップは省略でき、単一の画像要素が単一の粒子を表すと見なされる。
【0050】
次に、識別された粒子ごとにデータを保存することができ、これは、粒子が占める粉末の1つまたは複数の区域に関連するデータである。識別されたグループ内の区域の数は、そのグループが表す粒子のサイズを示している。グループ内の区域から検出された放射線の平均波長は、そのグループが表す粒子の色またはその他の特性を表している。これにより、粒子の特性と共に、識別された粒子の数を特定することができ、さらには、このデータを分析することによって、粉末に関連するさまざまな情報を特定または推測することができる。このようにして識別された粒子は、色などの表面特性によってさらに分類され、特定の範囲に入る表面特性を有する粒子が識別される。その際に、他の手法を使用して、識別された粒子から対象の粒子を選択することもできる。
【0051】
前景区域に対する背景区域の比率は、粉末の粒子とそれらの粒子間の空間との間の比率に関する指標となり、したがって、粒子の密集度の指標となる。時間の経過とともに撮影された粉末のバッチの画像において観察された密集度の変化によって、粉末の流動特性に影響を与える変化を明らかにすることができる。
【0052】
金属粉末の酸化は通常それらの放射線に対する相互作用に影響を与えるため、粉末の領域または粉末のすべての前景区域から受ける波長の全体的な分布を特定することによって、粉末の化学的性質、特に粉末の酸化の程度が示される。酸化が特定種類の粉末の色にどのように影響するかについての情報を使用して、粉末のバルク酸素含有量を特定することができる。
【0053】
選択された範囲外の放射線の波長を返したと識別された粒子の数によって、粉末が高度に酸化された粒子を含むか、または汚染されているかを明らかにすることができ、その結果、粉末は使用または再利用されないことが望ましい場合がある。その数は、撮像された粒子の計算または推定された総数とともに、選択された範囲外にある測定された特性を有する粒子の割合を計算するために使用され得る。
【0054】
この情報は、分析された粉末または分析された粉末が取り出された粉末のその後の処理に関する情報を与えるため、あるいはその処理を制御するために使用され得る。
【0055】
この方法は、所定の範囲外の特性を有すると識別された粒子の数または割合が所定の範囲を超える場合に、粉末が再利用に適していないことを指摘するステップを含み得る。所定の範囲および割合は、分析される特定の粉末やその使用目的に応じて決定される。ただし、通常は、著しく酸化、劣化または汚染された粒子の存在を特定することを目的としているため、その範囲は、造形プロセスにおいて用いられたことによる、酸素や低温に曝されたことで発生する通常の劣化であるとみなされる粉末を示す特性の値を含むように設定することが好ましい。したがって、測定された表面特性がこの範囲外となる粒子は外れ値となる。それらの測定された表面特性は、通常、高温にさらされた結果として(ただし、融解して構築物の一部を形成することなく)、それらが異常に劣化させらされたという事実を反映するものである。そのような外れ値の個体数が粒子の全個体数における所定の割合を超えた場合は、その粉末の再利用はリスクを高めることになると考えることができる。
【0056】
この方法はまた、測定された特性が所定の範囲内にある粉末の割合の平均特性を特定することを含み得る。この測定によって、著しく劣化した外れ値の粒子を除いた粉末の全体的な平均劣化が示される。したがって、この測定は、通常の劣化に起因する劣化のレベルの指標となる。
【0057】
この方法はまた、測定されたある割合の粉末の平均特性、つまり測定された表面特性が所定の範囲内にある粒子のおおよその割合が所定のしきい値より大きい(または小さい)場合に、検査された粉末が再利用に適していないことを示すことを含み得る。したがって、おそらくは累積的な通常の劣化の影響の結果、粉末が再利用に適するものではなくなっているということを示すことができる。
【0058】
この方法はまた、すべての前景区域のデータを処理することによって、すべての粉末、したがって測定されたすべての粒子の平均特性を特定することを含み得る。このような測定により、すべての粒子の全体的な平均劣化が示され、バルク酸素測定ではそれが構築されることによって粒子の表面特性に影響を及ぼす外部酸化層の酸素だけでなく、粒子の「内部」酸素、つまり内部に存在する酸素も測定できることを除いて、バルク酸素測定と同様の指標を得ることが可能である。
【0059】
この方法はまた、すべての測定された粒子の平均特性が所定のしきい値よりも大きいかまたは小さい場合に、その粉末が再利用に適していないことを示すことを含み得る。この方法は、積層造形機または粉末加工、処理または搬送装置を制御することなどの、測定された粉末の特性に基づいた装置の制御を含み得る。
【0060】
粉末、つまり対象の粒子の測定された平均特性が必要な場合、これは平均であり、対象の粒子が存在する粉末領域の区域によって表される平均測定表面特性を特定することによって得られる。
【0061】
この方法によって分析された粉末に関する情報は、積層造形装置および/または粉末処理、搬送および加工装置を含む装置を自動的に制御するために使用され得る。装置は、例えば、粉末の検出された状態に応じて、粉末を廃棄および/または加工させることができる。
【0062】
プロセッサは、プログラムされたコンピュータであり、装置に上記の方法ステップのいくつかまたはすべてを実行させるように構成され得る。
【0063】
本発明のすべての態様において、特定の範囲内にある波長を含む放射線を返す粉末の粒子を特定することができ、これを使用して、関係する粉末タイプに関連する実験データを考慮して粒子の酸化の程度を推測することができる。
【0064】
本発明の態様の実施形態は、粉末の状態を特定し、粉末サンプルが特定の造形工程での再利用に適しているかどうかを決定するための非破壊的な方法および装置を提供する。外れ値の粒子の割合を調べることによって特定が行われる場合、現在のバルク粉末特性の測定よりも改善された意思決定、ひいては粉末の使用を可能にする、新規で有用な粉末状態の測定が提供される。
【0065】
この方法および装置は、対象の粒子の同様の特性とは異なる表面特性を有する汚染粒子の存在を特定するのにも有用である。
【0066】
本発明の第3の態様によれば、積層造形プロセスで使用される金属粉末を分析するための方法が提供され、この方法は、障壁の近傍に密集状態の粉末を提供するステップと、障壁を通して粉末の領域を照射するステップと、障壁を通じて粉末の照射領域の別々の部分から戻ってきた照射放射線を別々に検出し、検出された放射線に従った出力を生成するステップと、出力を処理して、粉末の1つまたは複数の特性を特定するステップとを備えている。
【0067】
本発明の第4の態様によれば、積層造形プロセスで使用される金属粉末を分析するための装置が提供され、この装置は、使用時に分析される粉末を密集した状態で収容する障壁を有する金属粉末用の容器または導管と、障壁を介して電磁放射線で粉末の領域を照射するための照射装置と、粉末の照射領域の異なる部分から障壁を介して戻ってきた照射放射線を別々に検出し、検出された放射線にしたがって出力を生成するための検出器と、出力を処理することによって粉末の1つまたは複数の特性を特定するように構成されたプロセッサとを備えている。
【0068】
障壁は、容器または導管の壁部であり得る。障壁は、容器または導管の壁部における窓部であり、窓部は、対象の電磁放射線に対して少なくとも部分的に透過性を有している。電磁放射線は、赤外線、可視光線、および紫外線を含む光であり得る。本発明の第3および第4の態様は、粉末が不可視電磁放射線で照射されることまたは不可視放射線が検出されることが必要でないこと以外は、望ましくはまたは必要に応じて、本発明の第1および第2の態様のいずれかまたはすべての特徴を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明をより明確に理解するために、その実施形態を、例示のみを目的として、添付の図面を参照して説明する。
図1】粉末の状態を分析するための装置の実施形態を示す概略図である。
図2】粉末の状態を分析するための装置の実施形態を示す概略図である。
図3】粉末の状態を分析するための装置の実施形態を示す概略図である。
図4】粉末の状態を分析するための装置を含む粉末処理および搬送装置の実施形態を示す概略図である。
図5】粉末の状態を分析するための装置を含む粉末処理および搬送装置の実施形態を示す概略図である。
図6】粉末の状態を分析するための装置を含む粉末処理および搬送装置の実施形態を示す概略図である。
図7】粉末の状態を分析するための様々な装置を含む積層造形機を示す概略側面図である。
図8図7の装置の概略平面図である。
図9】粉末の画像を処理する工程に関連するステップを示すフローチャートである。
図10】波長に対する粒子数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下では、上、下、上部、底部などの用語を使用して、図に示されている向きで図示された装置を説明するが、その向きは、その向きで使用することを意図されたものであるものの、その向きに限定されるものではない。同様の参照番号は、全図において同様の構成要素を示すために使用される。それぞれの図面は同縮尺ではない。
【0071】
図面を参照すると、図1は、金属粉末を分析するための第1の装置を示している。装置は、開閉可能な実質的に光を通さない筐体1を含む。筐体は、皿またはスライドあるいはその他の任意の適切な形態をとることができる粉末3用の容器2を収容する。容器は上部が開いており、一辺が約10mmのほぼ正方形の開口部を有し、その断面積は約100mmである。また、その深さは少なくとも2mmである。図示されている容器は浅いが、容器が長くなるように深くすることも可能である。容器は筐体から取り外し可能である。筐体は、さらに、可視光線に加えて紫外線および赤外線を感知するデジタルカメラ5に取り付けられる(または含まれる)レンズ(または顕微鏡)4と、紫外線、赤外線および可視光線を放射するランプ6とを収容する。カメラ4は、約6メガピクセル(別の実施形態では12メガピクセル)を有するCCDセンサーなどの実質的に正方形のセンサーを含み、キーボードおよびマウスまたはその他のユーザーインターフェースを含み、ディスプレイ8および/または他の出力装置に接続されたコンピュータ7に接続されている。ランプは拡散光を提供するように配置されている。それらランプはドームまたはフラットドームランプとして示されている。別の構成(および他の実施形態)では、リングライトを使用することができる。
【0072】
使用に際して、分析される粉末のバッチから取得された粉末3のサンプルが、筐体1の内あるいは外のいずれかにおいて容器2に導入される。粉末は、上から見たときに容器2の底部が完全に覆い隠されるだけの、密集した状態の粉末の深さが得られるのに十分な量で導入される。したがって、粉末の深さは、通常、少なくとも2つ、好ましくは2つ以上の粒子の層を含む。粉末は、容器を軽くたたくことなどによって容器内で平らにされ、その結果、実質的に平坦な上面を有している。筐体の外側で粉末が容器に導入された場合は、容器は筐体内において顕微鏡の下に配置され、筐体が閉じられる。
【0073】
次に、ランプ6が作動する。ランプは、コンピュータ7によって制御することができる。ランプは、容器2内の粉末3の上面を照射するように配置される。実質的に遮光性を有している筐体内においてランプで粉末を照射することにより、制御可能で再現性のある光の条件で粉末を分析することができる。なお、本実施形態および他の説明される実施形態では、ランプは異なる配置で設けられ、カメラおよび/またはレンズの前に配置され得る。
【0074】
次に、カメラ5は、容器内の照射された粉末の表面のデジタル画像を撮影し、それをコンピュータ7に送信する。デジタル画像は、カメラによって検出された光のすべての波長に関連する情報を含んでいる。カメラと顕微鏡は、容器内の粉末の表面の約12mmの画像を撮影するように配置されている。粉末の表面の実質的にすべてが撮像されるまで、粉末の表面の複数の画像が撮影される。別の実施形態では、カメラとレンズは、異なる視野を有している。したがって、粉末の表面を単一の画像で取り込むことができる。
【0075】
積層造形プロセスで使用される金属粉末は、通常、平均直径が数十ミクロンのオーダーである。そして、カメラによって撮像される粉末の表面に見える粒子の数は数千のオーダーであり、よってセンサーのピクセル数よりも約3桁少なくなる。したがって、カメラは、画像に示されている粉末の粒子の数の約1000倍のピクセルが存在する、粉末表面のデジタル画像を生成することができる。
【0076】
次に、カメラによって撮影された画像は、コンピュータ7に送信され、処理される。
【0077】
図2は、金属粉末を分析するための第2の装置を示している。この場合、粉末3を収容するための容器2の下側に、遮光性の筐体1が設けられている。筐体は、図1の実施形態のものと同様のカメラ5およびレンズ4ならびにランプ6を上向きに収容している。容器の基部は、ランプによって生成され、カメラが感知できる光の波長に対して透過性を有するかまたは少なくとも部分的に透過性を有している。したがって、カメラは、容器2内の粉末3の表面の画像を、容器の基部を通して撮影することができる。粉末が支持されている容器の基部の上面は実質的に平面であるため、カメラには撮像される粉末の平坦な表面が向けられている。容器の基部の底面は、その上面と実質的に平行である。
【0078】
図3は、粉末3を分析するための別の装置を示している。この装置は、粉末を収容するための一端が閉じた細長い管2を含んでいる。管2は、1つの平らな側壁2aを有する。便宜上、管は正方形または長方形の断面を有するが、D字型の断面など、他の断面も可能である。カメラ5およびレンズ4の組立体が、図1および2の装置と同様に、ランプ6とともに実質的に遮光性を有する筐体1内に設けられている。カメラは容器の平坦な側壁に向けられている。この側壁は、ランプによって生成され、カメラが感知できる光の波長に対して少なくとも部分的に透過性を有しており、図2の容器2の基部と同様に、実質的に互いに平行で対向した平坦な側面を有している。カメラは、容器に含まれる密集した状態の粉末を、側壁を通して撮像するように配置されている。容器は、筐体とカメラとに対して移動するように取り付けられており、カメラが容器に含まれる粉末のサンプルの表面のさまざまな部分を撮像できるようになっている。
【0079】
図4は、粉末ふるいに導入及び導出され、さらには粉末混合装置につながるパイプ10を含む粉末搬送装置を示している。各パイプ10は、平坦または実質的に平坦な透明な窓部11を含み、窓部11上に、パイプ10内の粉末の画像を窓部11を通して撮影するための適切なレンズ4が取り付けられたデジタルカメラ5を収容する遮光性を有する筐体1が取り付けられている。ランプ6は、窓部11を通して粉末を照射するために、筐体内におけるレンズ4の周囲に設けられている。カメラは、カメラによって検出された光のすべての波長に関連する情報を含むその画像を、出力装置8を備えたコンピュータ7に出力する。あるいは、またはそれに加えて、出力は、粉末搬送装置またはその関連機器を制御するコンピュータまたはプロセッサに送られ得る。混合装置の下流のパイプ10には、パイプを通る粉末を流したり停止したりするためのバルブ12(バタフライバルブなど)が設けられている。これにより、パイプに粉末を満たすことができ、ランプによって生成され、カメラが感知できる光の波長に対して透過性を有するパイプの窓部11に密集した状態の粉末が向けられる。
【0080】
図1に示される装置と同様に、デジタルカメラ5は、パイプが分析対象の密集状態の粉末で満たされているときにカメラによって撮像されるウィンドウ11の区域に見える粉末粒子の予想数の約1000倍のピクセル数を有するセンサーを備えている。同様に、ランプ6が発光し、カメラ4が、紫外線、可視光線、および赤外線を含む広域スペクトルの光を感知する。ウィンドウ11は、この広域スペクトルの光に対して実質的に透過性を有している。
【0081】
ふるいに導入及び導出するパイプ10の両方に、窓部11とカメラ5を備えた関連する筐体1とが設けられ、ふるいの前後での粉末の状態を分析することができる。カメラはまた、粉末混合装置への両方の入口に入る粉末の状態を分析することができる。
【0082】
窓部は、例えば積層造形機などの他の種類の装置の粉末搬送導管または粉末貯蔵容器に設けることができる。
【0083】
図5は、下部円錐台壁部と円筒形側壁とを有するホッパーを備えた粉末貯蔵装置を示している。直立パイプ10は、パイプ10を通りホッパーに送られる粉末を流したり停止したりするためのバルブ12を介して、ホッパー上部の入口に接続されている。ホッパーの底部には出口が設けられており、粉末をホッパーから流出させたりそれを停止したりするためのバルブ12も取り付けられている。ホッパーは金属粉末を保管するためのものであり、金属粉末を製造するために使用される噴霧器と共に使用するか、あるいはその一部を形成することができる。ホッパーの円錐台形の基部には2つの窓部11が設けられ、それぞれの窓部には、窓部に対して密集状態にされたホッパー内の粉末を撮像するためのランプ6と(図4に示すタイプの)レンズ4を有するカメラ5とを収容する筐体が取り付けられている。図4の装置と同様に、窓部は、ランプによって生成され、カメラが感知できる光の波長に対して透過性を有し、実質的に平行で互いに対向した平面を有している。
【0084】
ホッパー12aに通じるパイプ10は、ホッパーへの入口におけるバルブの上方のパイプの部分に沿って等間隔に配置された5対の窓部を備えている。各窓部には、ホッパー12aの下部における筐体1と同じように、レンズ4を有するカメラ5およびランプ6を収容するそれぞれの筐体1が取り付けられている。これらのカメラによって、パイプ内において密集された状態の金属粉末をパイプの長さ方向に沿ったさまざまな位置で撮像できる。これは、例えば、パイプ10に送られた粉末が、例えば製造工程中に、経時的に変化したかどうかを特定可能とする場合に有用である。
【0085】
各カメラは、コンピュータまたはプロセッサ7に出力を提供し、コンピュータまたはプロセッサ7は、適切なユーザーインターフェース8を介してユーザーに、あるいはこの出力によって制御される機器に出力を提供する。パイプ10の長さ方向に沿って複数の筐体1およびカメラ4を設ける代わりに、単一のカメラ(あるいはより少数のカメラ)をパイプに対して移動可能に取り付け、パイプの長さ方向に沿った異なる位置で粉末を撮像するように配置することもできる。
【0086】
ホッパーへの入口にあるバルブ12を閉じることで、撮像対象の粉末を密集させた状態でパイプに充填させることができる。
【0087】
図6は、粉末を搬送するためのパイプの一部を示している。パイプには、バイパス導管10aが取り付けられ、バイパス導管10aには、バイパスに出入りする粉末の流れを制御できるバルブ12が設けられている。バイパス導管との接続部の間におけるパイプ内に、さらなるバルブ12が設けられている。バイパス導管は、図4および5の筐体と同じように、レンズを有するカメラおよびランプが収容されている筐体1が取り付けられた実質的に平面の窓部11を備えている。カメラの出力は、コンピュータまたはプロセッサ7、ディスプレイまたはその他の出力装置8、あるいは、カメラの出力に応じて制御される装置に接続される。バイパス導管は、 パイプ10よりも断面が小さいパイプによって形成される。バルブが制御されることで、パイプ10内を流れる粉末が導管に流入して導管を満たし、筐体1内のカメラ4によって密集された状態の粉末を撮像することが可能になる。バイパスにより、導管内を流れる粉末から分析のためのサンプルを効率的に採取できるため、粉末が密集した状態でパイプ内を移動していない場合でも、密集した状態の粉末を撮像することができる。
【0088】
図7図8は、積層造形機13を示している。積層造形機は、実質的に遮光性を有するか、有するように構成された筐体1を備えている。筐体は、粉末送出ピストン15を備えた粉末送出容器14、造形用プラットフォーム16を備えた造形容器14a、および粉末送出容器から造形容器に粉末を搬送するための、可動支持体に取り付けられたワイパーブレード17を収容している。筐体はまた、造形用プラットフォーム16上で粉末を選択的に融解するためのレーザーの出力光学系18を収容している。 これらの機能はすべて、既知の選択的層融解積層造形機に共通している。
【0089】
筐体1はさらに、粉末送出容器および造形容器内の粉末の上面の区域の画像を撮影するための適切なレンズ4を備えた2台のカメラ5、および各カメラの周りに配置されたランプ6を収容している。また、画像センサー19およびランプ20が、ワイパーブレード17の可動支持体に取り付けられ、ワイパーブレードが容器を行き来する際に、粉末送出容器または造形容器内の粉末の表面の画像をスキャンするように配置されている。他の実施形態と同様に、ランプ6、20は発光し、カメラ5およびセンサー19は、紫外線、可視光線、および赤外線を含む広域スペクトルの光を感知する。
【0090】
レンズ4を備えたカメラ5および関連するランプ6もまた、粉末容器および造形容器の側壁を介して窓部の裏側に配置された筐体1に取り付けられ、それら窓部を通して容器内において密集した状態の粉末を撮像することができる。
【0091】
さらに、レンズ4を備えたカメラ5および関連するランプ6が、粉末容器と造形容器との間に延在するプラットフォームに形成された窓の下側に配置された筐体1にも取り付けられており、そのプラットフォーム上の粉末を撮像することができる。
【0092】
3つの窓部はすべて、ランプによって生成され、カメラが感知できる光の波長に対して透過性を有している。プラットフォームの窓部は、実質的に平行で互いに対向した平面を有している。粉末容器および造形容器への窓部もそのような表面を有するか、これが平坦でない場合には、容器の内壁の形状に一致するように成形され得る。
【0093】
カメラ5およびセンサー19は、出力装置8を備えた接続されたコンピュータまたはプロセッサ7に画像を出力するように配置されるか、または出力に応じて積層造形機を制御するように配置される。図1および2に示される装置と同様に、デジタルカメラ5およびセンサー19は、粉末の撮像される区域に示される粒子の数の約1000倍のピクセル数を有する粉末の画像を生成するように配置される。
【0094】
図7および8に示される積層造形機は、図示された撮像装置のすべてを備えている必要はないことは当然である。ただし、複数のデバイスを使用して、その使用のさまざまな段階で粉末を撮像することができる。
【0095】
使用時、装置の各実施形態では、装置内の粉末の表面のデジタル画像を生成する。デジタル画像は、カメラによって検出された光のすべての波長、すなわち、画像の要素に相当する粉末の表面の各区域からカメラによって受け取られる光の波長、に関連する情報を含む画像要素の特性を定義するデータのセットを含んでいる。画像に示されている粉末の粒子数に対する画像要素の比率は約1000である。画像データはコンピュータに送信され、変数L、aおよびbを用いたCIELAB色空間内などのように、光の波長または波長の組み合わせ、あるいは画像の各要素の光度によって表される検知された波長が定義される方法で、コンピュータに保存される。
【0096】
コンピュータは、図9に示されるステップの少なくともいくつかを実行することによって、画像に示される粉末の状態に関する情報を特定するために、画像データを処理するように構成されている。
【0097】
任意の第1のステップ21として、画像は、元の画像の境界(または他の選択された領域)の外側の要素を取り除いて、所定のサイズにトリミングされる。この任意のステップにより、画像の歪んだ領域を除外したり、異なるカメラやセンサーで撮影した画像をまとめて同じ領域を表したり、同じピクセル数にしたりすることができる。
【0098】
次に、残りの画像データを22において検査し、それがさらなる処理のために十分な品質であることを確認する。そうでない場合は、23で不適格とされ、新しい画像が取得される。
【0099】
画像データが十分な品質であることを示している場合、コンピュータは次に、輝度が所定のしきい値未満である要素を識別し、画像内の粉末の粒子間の空間(または他の背景材料)を表す要素を削除する目的で、24において画像データからこれらを削除する。実際のしきい値は、使用されている特定の装置の特性と検査されている粉末の種類によって異なる。しきい値の外側にある画像の要素が削除されると、残りの画像要素は、画像の前景にある粉末の粒子を表していることになる。
【0100】
次に、残りの画像要素のデータを25において処理することで、流域セグメンテーションなどの適切な手法を使用して、それらが表す粒子の数を推定することができる。表わされた粒子の総数は、別の方法で推定することも可能である。所与の粉末および装置について、画像データによって表される数に対応する粉末の表面の区域に見えると予想される粒子の数は、予想される粉末の粒子サイズおよび予想される粉末の密集度の情報を用いて計算することができる。
【0101】
次に、残りの画像要素のデータを26において統計的に分析して、各画像要素によって表される波長または検知された波長が残りのすべての要素の対応する平均値を中心にどのように分布しているか特定し、要素の全個体数のうちのしきい値の割合を外れている波長または検知された波長を表す外れ値要素を検出する。これは、外れ値検出のカイ二乗検定を用いて実行することができる。機械学習の使用などを含め、他の手法を使用することも可能である。分析対象の粉末の種類に応じて全個体数に対する適切な割合を選択できるが、その一般的な割合は対象の要素の0.1%であり、つまり、外れ値の個体数が占めるのは、要素の全個体数の0.1%である。
【0102】
このステップを可視化すると図10に示すようになり、横軸の検知された波長(または色)の測定値に対して、縦軸に画像要素の数が表されている。ここでは、27で示す平均値を中心にした概してベル型の分布曲線と、低しきい値28および高しきい値29とが示されており、両しきい値の外側であって曲線の下側に相当する領域によって、外れ値となる全個体数の0.1%が示されている。
【0103】
次に、外れ値要素は30において連結成分フィルタにかけられ、それらが定義する画像で空間的に接続されているかどうかが判断される。所定の数の要素を超える接続された画像要素の任意のグループが、単一の粒子を表すと見なされる。そのような識別された各グループを表すデータは、一意の粒子識別子に関連付けられ、最初の識別子は最大の接続された要素のグループを識別し、2番目の識別子は次に大きい接続された要素のグループを識別し、3番目以降も同様である。
【0104】
この段階で、コンピュータは、粒子に照射される様々な光の波長との相互作用に影響を及ぼし、粉末内の統計的外れ値を明らかにさせる個々の粒子のサイズと表面特性とを定義する一連の画像データを生成している。その表面特性には、可視光に関する限り色が含まれるが、紫外光および赤外光との相互作用を変化させる特性が含まれるという点でより広い特性である。これらの不可視波長を含めることにより、特に粒子組成に関連して、装置で検出できる粒子特性の範囲が広がる。
【0105】
次に、このデータは31において分析され、分析された粉末の状態に関連する有用なデータが抽出される。
【0106】
そのデータには、
所定の範囲外にある表面特性を有する粒子の数および割合と、
所定の範囲内にある粒子から受けた光の平均波長と、
すべての画像要素から受けた平均波長と、が含まれる。
【0107】
金属粒子が光に対してどのように作用するかは、粒子が劣化するにつれて変化することが分かっている。特に、粒子が酸化したり、熱にさらされたりすると変化する。粒子が酸化されるほど、または粒子がさらされる温度が高くなるほど、作用が大きく変化する。したがって、変化の量は、粒子が受けた劣化の程度に関連し、したがって、再利用への適合性にも関連している。一部の種類の粒子に関しては、このような特性の変化は粒子の色の変化として観察者が視認することができるが、さらに不可視波長を使用して粒子を調べることによって、より広い範囲の種類の粒子における変化を検出できる可能性が高くなる。
【0108】
さらに、粉末のバッチの状態が通常であるにもかかわらず、高度に劣化した粒子が存在することによって、そのバッチを再利用に不適切であると特定できることが分かっている。これは、高度に劣化した粒子が造形物に1つでも含まれていると、造形物の特性に大きな影響を与える可能性があるためである。高度に劣化した粒子が物品に組み込まれた場合、特に粒子が使用に際して応力集中が発生する物品の箇所に組み込まれた場合に、物品が安全でなくなる可能性がある。
【0109】
上述の第1の測定値は、サンプルが採取される粉末のバッチが十分に混合され、または粉末の撮像された区域が粉末の全体としての典型的な構成を表していると仮定すると、サンプル全体および検査された粉末のバッチ全体における著しく劣化した粒子の割合を表している。特定のバッチから複数のサンプルを取り出し別々に分析するか、粉末のバッチに対して複数の検査を行うことで、粉末の表面の画像を複数枚撮影するなどして精度を向上させることができる。および/または特定のサンプルを分析し、混合してから、再分析してもよい。特定の粉末と造形物について、適切な波長範囲とそのしきい値の範囲外の最小割合を決めることができ、しきい値外の粒子の割合が選択した限度を超える場合、その粉末のバッチは、少なくとも対象の造形物については再利用に適さないと見なすことができる。
【0110】
したがって、この測定値により、バルク量に関係なく粉末の状態を特定することができる。
【0111】
第2の測定値は、しきい値の外側にある粒子を考慮に入れない場合の、残りの粉末の平均劣化の指標を示す。このような測定値は、従来のバルク酸素測定の結果に似ているが、大幅に劣化した粒子(または内部酸素)の影響を排除することを除けば、より便利で非破壊的な方法で取得される。所定の範囲外にある粒子を考慮に入れない場合に、残りの粒子から受けた平均波長が別の所定の範囲外にあるとき、粉末は再利用に不適切であると見なされる。
【0112】
第3の測定値は第2の測定値と似ているが、著しく劣化した粒子を考慮に入れている。粒子から受けた光の平均波長が別の所定の範囲外にある場合、粉末は再利用には不適切であると見なされる。
【0113】
粉末を再利用するかどうかの決定は、上記の3つの測定値の1つ以上に基づいて行うことができる。通常、いずれかの測定値に基づいて、粉末を再利用すべきではないと判断された場合、粉末は再利用されない。一実施形態では、第1および第2の測定値が計算され、いずれかの測定値が再利用に適さないと示している場合、粉末は再利用に不適切であると見なされる。
【0114】
新しい粉末を使用する前に分析し、その後、造形プロセスおよびそれ以降の造形プロセスで使用した後に分析することが有用である。新しい粉末の分析により、その後の分析のデータと比較するための有用な制御データを得ることができる。
【0115】
粉末に関するその他の情報は、粉末によって戻される光を検出することによって特定することができる。粉末以外の人工物が粉末中に検出されることもあり得る。異常な粉末粒子、例えば、意図されたものとは異なる材料で作られた粒子も検出される可能性があり、異常な粒子は、観察可能な特性によって識別され得る。粉末が受ける総入射エネルギーの推定を行うこともできる。粉末のサンプルまたは粉末のバッチの複数の画像が作成および分析される場合、画像間の結果を比較することにより、粉末がどれだけよく混合されているかを特定することができる。積層造形機などの別々の機械で処理された粉末の画像を使用して、機械の性能を比較したり機械の状態を判断したりすることができる。装置内の別々の期間および/または別々の位置で撮影された画像は、装置を通過する粉末を追跡するのに有用である。
【0116】
装置が粉末処理装置または積層造形機に組み込まれている場合、検査結果の出力に基づいて、装置に特定の機能を自動的に実行させることができる。例えば、粉末を継続使用には不適格とみなすことができ、あるいは他の粉末と組み合わせることでリフレッシュし、継続使用に供することもできる。積層造形機を停止するか、ワイパーブレードを使用して粉末の層を除去し、粉末が融解する前に交換することもできる。
【0117】
粉末を使用した造形物を検証するために、粉末の分析に関連するデータを保存することができる。特に、造形プロセス中に堆積された粉末の層の表面の少なくとも一部の分析を保存することで、造形プロセス全体で使用される粉末の一貫性またはその他の事実を提供することができる。また、タイムスタンプ付きのデータを、粉末搬送システム全体のさまざまな箇所で撮影された粉末の複数の画像から比較して、たとえば、酸化または汚染された粉末がシステム内をどの程度効率的に移動するかなど、そのシステムの性能を審査できる。
【0118】
各例において、コンピュータは適切なソフトウェアを備えており、そのソフトウェアによって、カメラに画像を撮影させ、画像を処理して画像要素間の色分布を特定し、ユーザーが範囲、割合またはその他の値を入力することができ、3つの測定値の1つまたは複数を計算し、ユーザーが指定した範囲と割合を考慮して特定のサンプルが再利用可能かどうかを判断し、この結果をディスプレイ8などを介してユーザーに出力することができる。
【0119】
上記の実施形態は、単なる例として説明されている。添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱しない範囲において、多くの変形例が可能である。
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