(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】可食体のマーキング装置および方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240705BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20240705BHJP
A61J 3/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/08 D
A61J3/06 Q
(21)【出願番号】P 2021573032
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048655
(87)【国際公開番号】W WO2021149454
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2020007238
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000228110
【氏名又は名称】クオリカプス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】櫻本 博
(72)【発明者】
【氏名】池内 亨輔
【審査官】齋藤 健児
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175103(JP,A)
【文献】特開2011-212727(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008742(WO,A1)
【文献】特開2017-176681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/08
A61J 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食体を搬送する搬送装置と、可食体を検出する検出部と、レーザ光の走査により可食体にマーキングパターンを形成するレーザ加工部とを備え、前記搬送装置が、可食体を前記検出部および前記レーザ加工部に順次搬送する可食体のマーキング装置であって、
前記検出部は、可食体を撮像して該可食体の向きに関する向き情報を取得し、
前記レーザ加工部は、前記マーキングパターンの形成手順に関する複数のマーキング手順情報を、それぞれ異なる前記向き情報に関連付けて予め記憶部に記憶しており、前記検出部が取得した前記向き情報に基づき前記記憶部から抽出した前記マーキング手順情報により、可食体に前記マーキングパターンを形成する可食体のマーキング装置。
【請求項2】
複数の前記マーキング手順情報は、前記マーキングパターンにおけるマーキングの始点が互いに相違する請求項1に記載の可食体のマーキング装置。
【請求項3】
複数の前記マーキング手順情報は、可食体の中心よりも搬送方向下流側にマーキングの始点が設定されている請求項1または2に記載の可食体のマーキング装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記可食体の位置に関する位置情報を更に取得し、
前記レーザ加工部は、前記向き情報および位置情報に基づき可食体に前記マーキングパターンを形成する請求項1から3のいずれかに記載の可食体のマーキング装置。
【請求項5】
前記レーザ加工部は、レーザ光が透過する透明な包装材に包装された可食体に、前記包装材を介して前記マーキングパターンを形成する請求項1から4のいずれかに記載の可食体のマーキング装置。
【請求項6】
搬送装置により搬送される可食体を検出する検出ステップと、可食体にマーキングパターンを形成するマーキングステップとを備える可食体のマーキング方法であって、
前記検出ステップは、可食体を撮像して該可食体の向きに関する向き情報を取得し、
前記マーキングステップは、複数のマーキング手順情報がそれぞれ異なる向き情報に関連付けて記憶された記憶部から前記検出ステップで取得した前記向き情報に基づき抽出した前記マーキング手順情報により、可食体に前記マーキングパターンを形成する可食体のマーキング方法。
【請求項7】
前記マーキングステップは、レーザ光が透過する透明な包装材に包装された可食体に、前記包装材を介して前記マーキングパターンを形成する請求項6に記載の可食体のマーキング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品等の可食体にマーキングパターンを形成する可食体のマーキング装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の可食体のマーキング装置として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。このマーキング装置は、可食体を搬送する搬送手段と、可食体を検出する検出手段と、レーザ光の走査により可食体にマーキングパターンを形成するマーキング手段とを備えており、搬送手段が搬送する可食体を検出手段が撮像して該可食体の方向データを取得し、マーキング手段が、予め設定されたマーキングパターンを、方向データに基づき可食体の方向に合わせて形成するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、搬送されるワークに対してレーザ光の走査により文字やロゴなどのマーキングパターンを形成する場合、短時間で効率良く形成できるようにマーキングの始点および終点が予め設定される。
【0005】
例えば、上記特許文献1のマーキング装置により、「XYZ」の文字を、錠剤の割線に沿って一筆書きの要領で「Z」、「Y」および「X」の順にマーキングを行う場合、
図15(a)に示すように、割線Cを挟んで刻印Sと反対側に形成される「XYZ」の並び順と同じ向きに錠剤Eが移動すると、レーザ照射点が始点SPから終点EPまで移動する間の錠剤Eの移動距離Laが短いために、マーキングパターンMの形成を短時間で完了することができる。
【0006】
ところが、搬送される錠剤Eの向きはランダムであるため、
図15(b)に示すように、錠剤Eの向きが上下反転して、錠剤Eが「XYZ」の並び順と逆向きに移動する場合には、始点SPから終点EPまで走査が行われる間の錠剤Eの移動距離Lbが長くなり、マーキングパターンMの形成に時間がかかるおそれがあった。一方、マーキングパターンMの形成時間を短くするために錠剤Eの移動速度を速くすると、これに合わせてレーザ光の走査速度も速くする必要があるため、マーキングの品質が低下する問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、可食体の向きに拘らずレーザマーキングを迅速且つ正確に行うことができる可食体のマーキング装置および方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、可食体を搬送する搬送装置と、可食体を検出する検出部と、レーザ光の走査により可食体にマーキングパターンを形成するレーザ加工部とを備え、前記搬送装置が、可食体を前記検出部および前記レーザ加工部に順次搬送する可食体のマーキング装置であって、前記検出部は、可食体を撮像して該可食体の向きに関する向き情報を取得し、前記レーザ加工部は、前記マーキングパターンの形成手順に関する複数のマーキング手順情報を、それぞれ異なる前記向き情報に関連付けて予め記憶部に記憶しており、前記検出部が取得した前記向き情報に基づき前記記憶部から抽出した前記マーキング手順情報により、可食体に前記マーキングパターンを形成する可食体のマーキング装置により達成される。
【0009】
この可食体のマーキング装置において、複数の前記マーキング手順情報は、前記マーキングパターンにおけるマーキングの始点が互いに相違することが好ましい。
【0010】
複数の前記マーキング手順情報は、可食体の中心よりも搬送方向下流側にマーキングの始点が設定されていることが好ましい。
【0011】
前記検出部は、前記可食体の位置に関する位置情報を更に取得することが好ましく、前記レーザ加工部は、前記向き情報および位置情報に基づき可食体に前記マーキングパターンを形成することができる。
【0012】
前記レーザ加工部は、レーザ光が透過する透明な包装材に包装された可食体に、前記包装材を介して前記マーキングパターンを形成することができる。
【0013】
また、本発明の前記目的は、搬送装置により搬送される可食体を検出する検出ステップと、可食体にマーキングパターンを形成するマーキングステップとを備える可食体のマーキング方法であって、前記検出ステップは、可食体を撮像して該可食体の向きに関する向き情報を取得し、前記マーキングステップは、複数のマーキング手順情報がそれぞれ異なる向き情報に関連付けて記憶された記憶部から前記検出ステップで取得した前記向き情報に基づき抽出した前記マーキング手順情報により、可食体に前記マーキングパターンを形成する可食体のマーキング方法により達成される。
【0014】
前記マーキングステップは、レーザ光が透過する透明な包装材に包装された可食体に、前記包装材を介して前記マーキングパターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の可食体のマーキング装置および方法によれば、可食体の向きに拘らずレーザマーキングを迅速且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る可食体のマーキング装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す可食体のマーキング装置の要部拡大図である。
【
図3】
図1に示す可食体のマーキング装置の他の要部を示すブロック図である。
【
図4】マーキング手順情報テーブルの一例を示す図である。
【
図5】
図1に示す可食体のマーキング装置によるマーキング方法を説明するための図である。
【
図7】
図6に示すマーキング手順によりマーキングされる可食体を模式的に示す図である。
【
図9】
図8に示すマーキング手順によりマーキングされる可食体を模式的に示す図である。
【
図10】マーキング手順情報テーブルの他の例を示す図である。
【
図11】マーキング手順を説明するための図である。
【
図12】
図11に示すマーキング手順によりマーキングされる可食体を模式的に示す図である。
【
図13】
図1に示す可食体のマーキング装置の要部変形例を示す図である。
【
図14】
図1に示す可食体のマーキング装置の他の変形例を示す概略構成図である。
【
図15】従来の方法によりマーキングされる可食体を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る可食体のマーキング装置の概略構成図である。
図1に示すように、可食体のマーキング装置1は、可食体を供給する供給装置10と、供給装置10から供給された可食体を受け取って搬送する第1の搬送装置20と、第1の搬送装置20から可食体を受け取って搬送する第2の搬送装置30と、第2の搬送装置30から可食体を受け取って外部に排出する排出装置40とを備えている。
【0018】
供給装置10は、錠剤、カプセル剤、空カプセルなどの定形性を有する可食体が投入されるホッパー11と、ホッパー11内の可食体を整列させるフィーダ12と、フィーダ12により案内された可食体を搬送する供給ドラム13とを備えており、可食体は、供給ドラム13から中間ドラム14を介して第1の搬送装置20に供給される。供給ドラム13および中間ドラム14は、円筒状の外周面の軸方向および周方向に沿って整列配置された凹部からなる多数の保持部13a,14aを備えており、それぞれ保持部13a,14aに収容された可食体を吸引保持して搬送することができる。
【0019】
第1の搬送装置20は、供給ドラム13や中間ドラム14と同様にドラム状に形成されており、
図2に一部を切り欠いて示すように、可食体Eを保持する保持部22が、周方向および軸方向の双方に沿って等間隔に多数設けられている。保持部22は、底部に吸引孔24が形成されており、真空吸引装置(図示せず)により第1の搬送装置20の内部を減圧することにより、保持部22に収容された可食体Eを吸引孔24を介して吸引保持し、可食体Eの向きが搬送中に変化するのを防止しつつ、可食体Eを第1の搬送装置20の回転方向に沿って搬送することができる。
【0020】
第2の搬送装置30は、第1の搬送装置20と同様に構成されており、ドラム状の外周面に保持部32が形成されている。第1の搬送装置20により搬送される可食体は、第2の搬送装置30に引き渡される際に表裏が反転されて、排出装置40に搬送される。
【0021】
上記の構成を備える可食体のマーキング装置1において、第1の搬送装置20の近傍には、第1の検出部210、第1のレーザ加工部220および第1のマーキング検査部230が、第1の搬送装置20の搬送方向に沿って順次設けられている。
【0022】
図3は、第1の検出部210および第1のレーザ加工部220のブロック図である。
図1および
図3に示すように、第1の検出部210は、検出エリアA1に搬送された可食体に照明光を照射する照射部212と、照射部212の照射方向とは異なる方向から可食体を撮像するCCDエリアカメラやCCDラインカメラなどの撮像部214と、撮像部214で撮像された可食体の画像情報に対して画像処理を行うことで可食体の向き情報を取得する画像処理部216とを備えている。
【0023】
照射部212は、例えばリング照明であり、可食体を全周から均一に照射することができる。可食体が溝状の割線を有する錠剤の場合、撮像部214が取得した可食体の割線により、画像処理部216において可食体の向き情報を取得することができる。向き情報は、可食体の向きを特定可能な情報であれば特に限定されないが、本実施形態では、搬送方向に対する割線の向きを表す角度であり、0~360度の範囲に設定される。割線を挟んだ可食体の上下の判別(例えば、向き情報が0度の場合と180度の場合との判別)は、可食体に形成された刻印やマークなどの特徴を利用することができ、あるいは、可食体が異形(例えば涙型)の外形を有する場合には外形を利用することができる。
【0024】
但し、可食体の向きの判別は、割線を検出する方法に限定されるものではなく、例えば、可食体の複数個所に凹部が形成されている場合には、この凹部をアライメントマークとして可食体の向きを判別することができる。また、可食体の形状が、多角形状や楕円形状など非円形状である場合には、外形線の一部または全部から可食体の向きを判別することができる。第1の検出部210において検出された可食体の位置および向きに関する位置情報および向き情報は、第1の搬送装置20における各可食体の配置と個別に対応付けられて、イーサネット通信やシリアル通信等により、第1のレーザ加工部220および第1のマーキング検査部230に出力される。
【0025】
第1のレーザ加工部220は、レーザ光を出射する光源部222と、光源部222から出射されたレーザ光をガルバノスキャナにより走査する走査部224と、マーキングパターンに関する情報を記憶する記憶部226と、光源部222の出力および走査部224の走査を制御する制御部228とを備えており、マーキングエリアA2に搬送された可食体に対して、レーザスポットの走査によりマーキングを行うことができる。なお、記憶部226は、第1のレーザ加工部220に内蔵されているが、第1のレーザ加工部220とは別体の記憶装置を利用してもよい。光源部222から出射されたレーザ光は、可食体の表面に対して略垂直に入射することが好ましく、これによって可食体の表面におけるレーザ照射面積の変化が小さくなるため、マーキングの濃淡の変化等を抑制することができる。
【0026】
光源部222から出射されるレーザ光としては、YVO4レーザ光、YLFレーザ光、YAGレーザ光などの固体レーザ光や、エキシマレーザ光、炭酸ガスレーザ光などの気体レーザ光、色素レーザ光などの液体レーザ光を例示することができる。可食体のマーキングは、可食体の表面に、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等の変色誘起酸化物を含有させる等して、可食体の表面を変色させる方法を好ましく例示することができるが、可食体の表面の一部を削ることによりマーキングを行うことも可能であり、特に限定されるものではない。
【0027】
記憶部226に記憶されるマーキングパターンは、例えば、文字、数字、記号、図形等やこれらの組み合わせであり、基準座標系での座標情報として予め格納されている。制御部228は、第1の検出部210から入力された可食体毎の位置情報および向き情報に基づいて、基準座標系での座標情報を加工座標系での座標情報に変換し、この加工座標系で走査部224の駆動制御を行うことにより、それぞれの可食体の向きに合わせてマーキングパターンを形成することができる。
【0028】
また、記憶部226は、マーキング手順情報を向き情報に関連付けて記憶する。マーキング手順情報は、マーキングパターンの形成手順に関する情報であり、例えば、一筆書きの要領でマーキングパターンを形成する場合には、マーキングの始点および終点の基準座標系での座標情報や、文字間のブランク等を形成するための光源部222のオンオフ情報などが含まれる。マーキング手順情報は、可食体の向きに応じてマーキングを効率良く形成できるように、マーキングの始点が相違するものが、向き情報に関連付けられて複数記憶されている。
【0029】
図4は、記憶部226に記憶されているマーキング手順情報テーブルの一例を示す図である。
図4に示すマーキング手順情報テーブルは、始点が異なる2つのマーキング手順(手順Aおよび手順B)が、向き情報の角度範囲に関連付けられている。
【0030】
第1のマーキング検査部230は、検査エリアA3に搬送された可食体に照明光を照射する照射部232と、可食体を撮像するCCDエリアカメラやCCDラインカメラなどの撮像部234とを備えている。照射部232は、可食体の表面に形成されたマーキングパターンを鮮明にするように照射することが好ましく、例えば、LED等の光源からの照射光を導光拡散板により拡散させて面発光させる。
【0031】
第1のマーキング検査部230は、マーキングパターンに対応する基準パターン情報がメモリ部に予め格納されており、撮像部234が可食体を撮像した情報からマーキングパターン情報を抽出して、第1の検出部210から入力された向き情報に基づき基準パターン情報と比較することにより、可食体のマーキング精度を検査する。予め設定された基準パターン情報は基準座標系で設定されているため、第1の検出部210から入力された可食体の位置情報および向き情報に基づいてマーキングパターン情報を補正(あるいは、基準パターン情報を補正)した後に、マーキングパターン情報を基準パターン情報と比較してパターンマッチング等が行われる。
【0032】
また、第2の搬送装置30の近傍には、第2の検出部310、第2のレーザ加工部320および第2のマーキング検査部330が、第2の搬送装置30の搬送方向に沿って順次設けられている。第2の検出部310、第2のレーザ加工部320および第2のマーキング検査部330の構成は、それぞれ第1の検出部210、第1のレーザ加工部220および第1のマーキング検査部230の構成と同様であり、第2の検出部310が照射部312および撮像部314を備え、第2のマーキング検査部330が照射部332および撮像部334を備えている。第2の搬送装置30は、第1の搬送装置20から可食体を受け取って搬送し、第1の搬送装置20による搬送中にマーキングパターンが形成された面とは反対側の面に、第2のレーザ加工部320がマーキングを行う。
【0033】
排出装置40は、第1のマーキング検査部230および第2のマーキング検査部330におけるマーキング検査の結果に基づいて可食体の振り分けを行う振り分け部42を備えており、良品のみを排出コンベア44に案内して排出する。
【0034】
次に、上記の構成を備える可食体のマーキング装置1を用いて可食体にマーキングを行う方法を説明する。
図1に示す供給装置10から第1の搬送装置20に供給された可食体Eは、
図5(a)に示すように、第1の搬送装置20の軸方向に整列した状態となるように、個別に保持部22に収容される。このとき、それぞれの可食体Eに形成された割線Cおよび刻印Sの向きはランダムである。
【0035】
可食体Eが第1の検出部210の検出エリアA1に搬送されると、撮像部214が、列ごとの可食体Eの画像情報を撮像し、割線Cおよび刻印Sを含む画像情報に基づいて画像処理部216が可食体Eの向き情報を取得する。取得された向き情報は、第1のレーザ加工部220に送信される。なお、取得した画像情報に割線Cが存在しない可食体Eについては、その旨が向き情報の代わりに出力される。
【0036】
ついで、可食体Eが第1のレーザ加工部220のマーキングエリアA2に搬送されると、
図5(b)に示すように、各可食体Eの方向に合わせてマーキングが行われ、マーキングパターンM1が割線Cに沿って形成される。マーキングパターンM1の形成手順は、各可食体Eの向き情報に基づき、
図4に示すマーキング手順情報テーブルに基づき決定される。
【0037】
例えば、向き情報(移動方向に対する割線Cの向きがなす角度)が0度の場合には、マーキング手順情報テーブルから手順Aが選択され、
図6に示すように、可食体Eの中心である原点Oからレーザ照射点が破線の矢印で示すように始点SPまで移動してマーキングが開始され、途中で破線の矢印で示すマーキングオフ期間を介在させながら終点EPまでマーキングを行うことにより、「Z」、「Y」、「X」の順にマーキングが行われる。このマーキング手順情報により、
図7(a)~(d)に示すように搬送される可食体Eへのマーキングを行うと、短い移動距離L1でマーキングパターンM1の形成を完了することができる。
【0038】
一方、向き情報が180度の場合には、
図4に示すマーキング手順情報テーブルから手順Bが選択され、
図8に示すように、「X」、「Y」、「Z」の順にマーキングが行われるように、始点SPおよび終点EPが設定される。このマーキング手順情報により、
図9(a)~(d)に示すように搬送される可食体Eへのマーキングを行うと、この場合も短い移動距離L2でマーキングパターンM1の形成を完了することができる。
【0039】
このように、第1の検出部210が取得した向き情報に基づき記憶部226から抽出したマーキング手順情報により、可食体EにマーキングパターンM1を形成することで、可食体Eの向きに拘らず、可食体Eに対して短い搬送距離で迅速且つ正確にマーキングを行うことができる。
【0040】
マーキングパターンM1は、割線Cの向きを考慮して形成されていればよく、例えば割線Cと重なり合わないような配置であれば、必ずしも割線Cに沿って形成する必要はない。割線Cが存在しない可食体Eについては、
図5(b)に示すように、上記のマーキングパターンM1とは異なるマーキングパターンM2を形成してもよく、あるいは、マーキングパターンを形成しないようにしてもよい。
【0041】
刻印Sを備えない円形の可食体のように可食体の上下の判別が不要な場合には、向き情報を、0~180度の範囲に設定すればよい。この場合は、
図4に示すマーキング手順情報テーブルとして、例えば、0度以上45度未満および135度以上180度未満の場合と、45度以上135度未満の場合の2種類の手順を設定することができる。
【0042】
次に、可食体Eが第1のマーキング検査部230の検査エリアA3に搬送されると、撮像部234が、列ごとの可食体Eの画像情報を取得する。この後、第1の検出部210が取得した向き情報に基づいてマーキングパターン情報の傾きが修正され、修正後のマーキングパターン情報を予め設定された基準パターン情報と比較して、パターンマッチング等の公知の検査方法によりマーキング精度の検査が行われる。
【0043】
こうして、可食体Eの一方面に対するマーキングおよび検査が行われた後、可食体Eが第1の搬送装置20から第2の搬送装置30に引き渡され、第2の検出部310、第2のレーザ加工部320および第2のマーキング検査部330に順次搬送されることにより、上記と同様にして、可食体Eの他方面に対するマーキングおよびマーキング検査が行われる。すなわち、第2のレーザ加工部320においては、第2の検出部310が取得した向き情報に基づいて抽出されたマーキング手順情報により可食体へのマーキングが行われ、第2のマーキング検査部330においては、第2の検出部310が取得した向き情報に基づいてマーキング精度の検査が行われる。第2のレーザ加工部320および第2のマーキング検査部330においては、第2の検出部310が取得した向き情報の代わりに、第1の検出部210が取得した向き情報に基づいてマーキングおよびマーキング検査を行うことも可能であり、これによって可食体の表裏におけるマーキング方向を一致させることができる。
【0044】
この後、可食体Eは、第2の搬送装置30から排出装置40に搬送される。排出装置40には、第1のマーキング検査部230および第2のマーキング検査部330から、可食体E毎のマーキング良否判定情報が入力され、良品と判定された可食体Eが、振り分け部42を経て排出コンベア44に案内される一方、不良品と判定された可食体Eは、不良排出部45においてエアで吹き出されて不良排出シュート46に案内される。不良排出確認センサ47は、不良判定された可食体Eが第2の搬送装置30に残留していないかをチェックし、不良の可食体Eが残留していた場合に、振り分け部42において可食体Eを廃棄シュート48に案内する。
【0045】
記憶部226に記憶されるマーキング手順情報は、本実施形態では手順Aおよび手順Bの2つとしているが、複数であれば特に限定されない。例えば、可食体の割線を挟んだ両側にそれぞれ「XYZ」および「ABC」の文字を印刷する場合には、
図10に示すマーキング手順情報テーブルのように、4つのマーキング手順情報(手順C~F)を、90度毎の向き情報に関連付けてもよい。
図11(a)~(d)は、
図10の手順C~Fに対応しており、マーキングパターンにおける始点SPが互いに相違する。
図12(a)~(d)は、向き情報が0度,90度,180度,270度の場合に、それぞれ手順C~Fのマーキング手順によりマーキングされる可食体を示している。マーキングパターンの形成完了までの搬送距離L11,L12,L13,L14は、いずれの場合も短い距離に抑制され、可食体Eの向きに拘らず迅速且つ正確にマーキングを行うことが可能である。なお、
図12においては、刻印Sの図示を省略している。
【0046】
各マーキング手順情報は、いずれも可食体の中心(原点)より搬送方向下流側(例えば、
図8における原点Oよりも右側)に、マーキングの始点が設定されていることが好ましく、これによって、迅速なマーキングを確実に行うことができる。
【0047】
本実施形態においては、第1の搬送装置20および第2の搬送装置30をいずれも搬送ドラムとしているが、保持した可食体の姿勢が搬送中に変化しない構成であれば、他の構成であってもよい。例えば、
図13(a)および
図13(b)に示すように、第1の搬送装置20および第2の搬送装置30を、いずれもスラットコンベアやベルトコンベアなどのコンベア装置として、第1の搬送装置20により水平搬送される可食体を、反転機構60により表裏反転させて、第2の搬送装置30に搭載して水平搬送することで、本実施形態と同様に、可食体の表裏両面にマーキングを行うことができる。また、
図13(c)に示すように、第2の搬送装置30を、上方から可食体を真空吸引可能な吸引孔を有する吸引ベルトにより構成し、第1の搬送装置20により水平搬送される可食体を第2の搬送装置30に吸着保持させて下方からマーキングを行うことにより、可食体の表裏両面にマーキングを行うこともできる。
図13(a)から(c)において、
図1と同様の構成部分には同一の符号を付している。また、第1の検出部210、第1のレーザ加工部220および第1のマーキング検査部230は、必ずしも同一の搬送ドラム(またはコンベア装置)に沿って配置する必要はない。例えば、
図1に示す可食体のマーキング装置1において、供給装置10と第1の搬送装置20との間に新たな搬送ドラム等を配置し、この搬送ドラムで搬送される可食体の一方面を検出して可食体の向き情報を取得するように、新たな検出装置を設けてもよい。この構成によれば、可食体の一方面から取得した向き情報に基づき、可食体の他方面にマーキングおよびマーキング検査を行うことができるので、被マーキング面に割線等の方向を示すものが存在しない場合でも、可食体の方向に合わせてマーキングを行うことが可能になる。
【0048】
第1のレーザ加工部220(または第2のレーザ加工部320)による可食体へのマーキングパターンの形成は、PTP包装体等のように、レーザ光が透過する透明な包装材(例えば、透明プラスチック)に包装された可食体に対しても行うことができ、包装材を介して第1の検出部210(または第2の検出部310)が取得した向き情報に基づいてマーキング手順情報を抽出し、このマーキング手順情報に基づいて、包装材を介して可食体にマーキングパターンを形成することができる。この場合のレーザ光の種類も、上記の中から包装材の材料等に応じて適宜選択することができる。
【0049】
また、本実施形態においては、第1の搬送装置20および第2の搬送装置30による可食体の搬送中にマーキングを行うことで、可食体の表裏面へのマーキングを可能にしているが、例えば、両面に割線が形成された可食体の一方面のみにマーキングを行う場合には、可食体のマーキング装置1は、第1の搬送装置20による可食体の搬送中のみにマーキングを行うように構成し、第2の搬送装置30およびこの近傍に配置される第2の検出部310、第2のレーザ加工部320および第2のマーキング検査部330を備えない構成にすることもできる。
【0050】
本実施形態の可食体のマーキング装置1は、第1の搬送装置20および第2の搬送装置30が回転軸方向に複数の保持部22を備える多列方式としているが、可食体を1つずつ搬送する構成であってもよい。
図14は、このような単列方式のマーキング装置の一例を示す概略構成図であり、
図1と同様の機能を有する構成部分に同一の符号を付している。
【0051】
図14に示す可食体のマーキング装置1は、供給装置10が回転ディスクの回転により可食体を整列させる搬送装置であり、第1の搬送装置20および第2の搬送装置30が、可食体を外周面に真空吸着させる吸引ローラからなる。
図14に示すマーキング装置1によれば、供給装置10により単列に整列した可食体が、第1の搬送装置20および第2の搬送装置30により単列のまま上方に搬送されて、第1のレーザ加工部220および第2のレーザ加工部320により表裏面へのマーキングが行われる。可食体の搬送速度は、マーキングを迅速に効率良く行うためになるべく高めることが好ましく、例えば、100~2000mm/秒の範囲に設定することが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
1 可食体のマーキング装置
20 第1の搬送装置
210 第1の検出部
212 照射部
214 撮像部
216 画像処理部
220 第1のレーザ加工部
222 光源部
224 走査部
226 記憶部
228 制御部
230 第1のマーキング検査部
232 照射部
234 撮像部