IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 双福鋼器株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図1
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図2
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図3
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図4
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図5
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図6
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図7
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図8
  • 特許-支柱とビームの連結構造 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】支柱とビームの連結構造
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/14 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
B65G1/14 E
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022004454
(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公開番号】P2023103753
(43)【公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591225291
【氏名又は名称】双福鋼器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 博文
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆之
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-040529(JP,A)
【文献】特開2000-050971(JP,A)
【文献】特開2007-159947(JP,A)
【文献】実開昭50-118114(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0054125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び後面並びに両側面を備えた断面矩形とされた支柱にビームを連結する連結構造であって、
前記支柱(3)は、前面及び後面のうち少なくとも一方を連結面として該連結面に係止孔(31)を上下方向に所定間隔をあけて列設し、
前記ビーム(6,9)は、前記係止孔に嵌入係止される係止爪(38)を設けた取付金具(21,22)を固設しており、
前記取付金具は、前記係止爪を設けることにより前記連結面に接合される固定板部(23)と、該固定板部の両側縁のうち一方の側縁から折曲されて前記支柱の左右両側面のうち一方の側面に接合される基板部(25)を備え、該基板部に前記ビームを固設して成る構成において、
前記固定板部(23)の両側縁のうち他方の側縁から折曲されて前記支柱の両側面のうち他方の側面に接合される保持板部(24)を設けており、該保持板部と前記基板部により支柱の両側面を保持するように構成して成ることを特徴とする支柱とビームの連結構造。
【請求項2】
前記支柱(3)は、前面(3F)及び後面(3B)のそれぞれに係止孔(31)を上下方向に所定間隔をあけて列設し、第1ビーム(9)に固設された第1取付金具(22)と第2ビーム(6)に固設された第2取付金具(21)をそれぞれ後面(3B)と前面(3F)に固定する構成とされ、
第1ビーム(9)の第1取付金具(22)は、前記固定板部(23)を前記後面(3R)に接合固定し、前記基板部(25)を支柱(3)の左右両側面のうち右側面(3R)に接合すると共に、前記保持板部(24)を左側面(3L)に接合し、
第2ビーム(6)の第2取付金具(21)は、前記固定板部(23)を前記前面(3F)に接合固定し、前記基板部(25)を支柱(3)の左右両側面のうち左側面(3L)に接合すると共に、前記保持板部(24)を右側面(3R)に接合するように構成されており、
前記第1取付金具(22)及び第2取付金具(21)は、支柱の左右両側面(3L,3R)の上で、一方の取付金具の基板部(25)と他方の取付金具の保持板部(24)を相互に対向させると共に、前記基板部(25)には、支柱の側面に接合される基部(26)と、該基部から延設され支柱の側面との間に隙間を形成することより前記保持板部(24)を収容した状態で保持する先端部(27)を設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の支柱とビームの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱とビームの連結構造に関し、例えば、複数のラック間に荷受け棚を増設する際にラックの支柱と荷受け棚のビームとを相互に連結する連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫などにおいて物品をパレットに積載したまま保管できるようにするため、従来からネスティングラックなどと呼ばれるラックが使用されている。従来、この種のラックの使用時において、例えば複数のラックを所定間隔で並設し、それら複数のラック間に荷受け棚を増設することが行われている(特許文献1)。
【0003】
複数のラック間に荷受け棚を増設する際には、例えばラックの支柱に、複数のラック間を横架するビーム(梁材)が連結され、そのビームに棚部材などが設置される。従来、ラックの支柱とビームとの連結構造として、特許文献2,3に記載された連結構造が公知である。
【0004】
図9は、特許文献2に記載された従来の連結構造を示す図である。図9(A)に示すように、この連結構造は、ビーム102の端部にL字形の取付金具103を設け、その取付金具103を支柱101の前面101a及び側面101bに接合させるようにしてビーム102を支柱101に連結する。この際、支柱101の前面101aには複数の係止孔104が上下方向に所定間隔で列設されている。一方、L字形の取付金具103は、支柱101の前面101aに接合する固定板部103aと、固定板部103aの一端を直角に折曲して設けられ支柱101の側面101bに接合する基板部103bとを有している。固定板部103aには、前記係止孔104に係合する係止爪105が設けられている。またビーム102の端部は、基板部103bに溶接等で固設されている。これにより、取付金具103は、図9(B)に示すように、支柱101の側面101bにビーム102の端部を着脱自在に連結固定することができる構造となっている。
【0005】
ここで、従来の連結構造は、支柱101の前面101aの同じ高さ位置に左右一対となる係止孔104,104を並設しており、取付金具103の係止爪105は左右一方の係止孔104に嵌入係止される。図9(B)では、左右に並設された係止孔104,104のうち、取付金具103の係止爪105が右側の係止孔104に係止された状態を例示している。したがって、ビーム102に対向する方向から、もう1つ別のビームを同じ高さ位置に連結する際には、図9に示した取付金具103と対称な形状を有する取付金具の係止爪を左側の係止孔104に嵌入係止することが可能であり、これにより支柱101の同じ高さ位置から左右それぞれの方向に延びる2本のビームを支柱101に連結することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-284161号公報
【文献】特開平7-8336号公報
【文献】特開2000-289816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の連結構造のようにL字形の取付金具103を用いてビーム102を支柱101に取り付けると、支柱101に対するビーム102の連結強度が十分でないという問題がある。すなわち、従来のL字形の取付金具103の場合、固定板部103aを支柱101の前面101aに接合させかつ係止爪105を係止孔104に嵌入係止しているが、例えば図9(C)に示すように、ビーム102が片持ち支持された状態で荷重Fを受けたとき、下向きのモーメントにより、基板部103bの上端部を支柱101の側面101bから離反させる方向の力が作用するため、基板部103bの歪を受けることにより固定板部103aや係止爪105が変形したり、係止孔104から脱出するおそれがある。
【0008】
ビームの連結強度を上げるためには、例えばL字形の取付金具をコ字形に改変し、係止爪が設けられた固定板部103aの左右両側に支柱101の左右両側面を抱き込むような一対の側板部を設けることが考えられる。しかしこの場合、支柱の所定高さ位置に1つのビームを連結することは可能であるが、このビームに対向する方向から、もう1つのビームを同じ高さ位置に連結することができないという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、支柱に対するビームの連結強度を従来よりも向上させ、更に支柱の同じ高さ位置において対向する方向から複数のビームを連結することが可能な連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明が解決手段として採用したところは、前面(3F)及び後面(3B)並びに両側面(3L,3R)を備えた断面矩形とされた支柱(3)にビーム(6,9)を連結する連結構造であって、前記支柱(3)は、前面(3F)及び後面(3B)のうち少なくとも一方を連結面として該連結面に係止孔(31)を上下方向に所定間隔をあけて列設し、前記ビーム(6,9)は、前記係止孔(31)に嵌入係止される係止爪(38)を設けた取付金具(21,22)を固設しており、前記取付金具は、前記係止爪を設けることにより前記連結面に接合される固定板部(23)と、該固定板部の両側縁のうち一方の側縁から折曲されて前記支柱の左右両側面のうち一方の側面に接合される基板部(25)を備え、該基板部に前記ビームを固設して成る構成において、前記固定板部(23)の両側縁のうち他方の側縁から折曲されて前記支柱の両側面のうち他方の側面に接合される保持板部(24)を設けており、該保持板部と前記基板部により支柱の両側面を保持するように構成した点にある。
【0011】
また好ましくは、前記支柱(3)は、前面(3F)及び後面(3B)のそれぞれに係止孔(31)を上下方向に所定間隔をあけて列設し、第1ビーム(9)に固設された第1取付金具(22)と第2ビーム(6)に固設された第2取付金具(21)をそれぞれ後面(3B)と前面(3F)に固定する構成とされ、第1ビーム(9)の第1取付金具(22)は、前記固定板部(23)を前記後面(3R)に接合固定し、前記基板部(25)を支柱(3)の左右両側面のうち右側面(3R)に接合すると共に、前記保持板部(24)を左側面(3L)に接合し、第2ビーム(6)の第2取付金具(21)は、前記固定板部(23)を前記前面(3F)に接合固定し、前記基板部(25)を支柱(3)の左右両側面のうち左側面(3L)に接合すると共に、前記保持板部(24)を右側面(3R)に接合するように構成されており、前記第1取付金具(22)及び第2取付金具(21)は、支柱の左右両側面(3L,3R)の上で、一方の取付金具の基板部(25)と他方の取付金具の保持板部(24)を相互に対向させると共に、前記基板部(25)には、支柱の側面に接合される基部(26)と、該基部から延設され支柱の側面との間に隙間を形成することより前記保持板部(24)を収容した状態で保持する先端部(27)を設けた構成とすることである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、取付金具(21,22)が、支柱(3)の前面(3F)又は後面(3B)に接合される固定板部(23)と、該固定板部(23)の両側縁のうち一方の側縁から折曲されて支柱(3)の左右両側面(3L,3R)のうち一方の側面に接合される基板部(25)と、固定板部(23)の両側縁のうち他方の側縁から折曲されて支柱(3)の両側面(3L,3R)のうち他方の側面に接合される保持板部(24)を設けており、基板部(25)と保持板部(24)とにより支柱(3)の両側面を保持する構成であるため、支柱(3)の同じ高さ位置において対向する方向から複数のビームを支柱(3)に連結可能としつつ、支柱(3)に対するビームの連結強度を従来よりも向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】複数のラック間に荷受け棚を増設した連結ラックの一例を示す斜視図である。
図2】支柱の構造を例示する図である。
図3】ラックの支柱に第1ビームと第2ビームとを連結する構造を示す斜視図である。
図4】ラックの支柱に第1ビームと第2ビームとを連結する構造を示す平面図である。
図5】第2ビームの取付金具を支柱の前面側に取り付けた状態を示す平面図である。
図6】支柱の同じ高さ位置に第1ビームと第2ビームとを連結した状態を示す平面図である。
図7】支柱の同じ高さ位置に第1ビームと第2ビームとを連結した状態を示す斜視図である。
図8】ラックの後側支柱に第1ビームと第2ビームとを連結する構造の例を示す斜視図である。
図9】従来の連結構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下において参照する各図面では互いに共通する部材に同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0015】
(連結ラックの1例)
図1は、本発明の連結構造を実施した連結ラック1の一構成例を示している。尚、本発明の連結構造は、ラックに限らず、広く、支柱とビームを連結する構造として実施可能であり、以下に説明する連結ラックは、1例であると理解されたい。
【0016】
図示のように、連結ラック1は、ネスティングラックなどと呼ばれる複数のラック1a,1bを左右方向に所定間隔で設置し、それら複数のラック1a,1bの間に増設用の荷受け棚8を設け、複数のラック1a,1bを荷受け棚8で相互に連結している。
【0017】
ラック1a,1bは、例えば倉庫などにおいて物品(荷物)をパレットに積載したまま保管できるように形成されている。ラック1a,1bは、例えばネスティングラックとして構成され、不使用時には増設用の荷受け棚8及び後述する荷受け棚4,4を取り外すことにより、一方のラック1aの内側に他方のラック1bを入れ子状にネスティング(段積み)することにより占有スペースを縮小して保管することができる。
【0018】
ラック1a,1bは、それぞれ同一の構成を有している。すなわち、ラック1a,1bは、床面に設置される矩形状のベース部2と、ベース部2によって鉛直方向に立設した状態に支持される4本の支柱3と、4本の支柱3の2箇所の高さ位置に設置される荷受け棚4,4とを備えている。ベース部2に支持される4本の支柱3は、ベース部2の前方側において左右方向に所定間隔を隔てた状態に固定される一対の前側支柱3a,3b、及び、ベース部2の後方側において左右方向に所定間隔を隔てた状態に固定される一対の後側支柱3c,3dで構成される。
【0019】
ベース部2は、例えば金属製の角パイプを溶接などによって矩形状に組み付けた基台であり、矩形状の平面サイズは、例えばパレットを積載可能なサイズとされている。そのため、ベース部2は、その上面に物品(荷物)を積載した状態のパレットをそのまま載置することができる。また、ベース部2は、前述のように前側支柱3a,3b及び後側支柱3c,3dを鉛直方向に立設させた状態に支持する。ベース部2の下方には、フォークリフトのフォークなどを差し込むことが可能な空間が形成される。そのため、ラック1a,1bは、フォークリフトなどでベース部2を持ち上げることにより移動させることが可能である。
【0020】
前側支柱3a,3bは、左右方向に、ベース部2の後端側左右方向の寸法よりも大きな間隔を有している。つまり、一対の前側支柱3a,3bの間には、別のラックのベース部2の後端側を収容可能な間隔が確保される。一方、後側支柱3c,3dの左右方向の間隔は、前側支柱3a,3bの間隔よりも狭くなっており、例えばベース部2の後面側に固定される。そのため、不使用時に複数のラック1a,1bをネスティングするときには、一方のラック1aの一対の前側支柱3a,3bの間から別のラック1bの後端部を入れ子状に差し込んでいくことが可能である。
【0021】
荷受け棚4,4は、4本の支柱3の任意の高さ位置に着脱可能な棚部材である。図1では、各ラック1a,1bの4本の支柱3の上下方向の上部と中央部の2箇所の高さ位置に荷受け棚4,4が設けられた例を示している。各ラック1a,1bに設けられる荷受け棚4,4は、相互に同じ高さ位置である。ただし、荷受け棚4の取り付け位置はこれに限られるものではなく、また荷受け棚4の設置数も2つに限られるものではない。例えば、荷受け棚4は、4本の支柱3の上部又は中央部の1箇所のみに設置されたものであっても良い。また、3つ以上の荷受け棚4がそれぞれ異なる高さ位置に設置されたものであっても構わない。
【0022】
荷受け棚4は、ビームを構成する連結部材6,6と、荷受部材7,7とを備えており、ベース部2の上方位置で物品(荷物)を積載することが可能である。ラック1a,1bの支柱3に荷受け棚4を設置することにより、ラック1a,1bを多段構成とすることができる。
【0023】
連結部材6,6は、各ラック1a,1bにおいて、左側の前側支柱3aと後側支柱3cとを相互に連結すると共に、右側の前側支柱3bと後側支柱3dとを相互に連結する。すなわち、連結部材6,6は、各ラック1a,1bの左右両側において互いに所定間隔を隔てた平行な状態で前後方向に沿って配置され、前方端部が前側支柱3a,3bに連結され、後方端部が後側支柱3c,3dに連結される。連結部材6,6の前方端部及び後方端部には、前側支柱3a,3b及び後側支柱3c,3dに固定するための取付金具21が設けられている。この取付金具21は、溶接などによって連結部材6,6の前方端部及び後方端部に固着されている。
【0024】
荷受部材7,7は、左右の連結部材6,6に横架され、物品(荷物)を載置可能とする荷受け棚4を構成する。例えば荷受部材7,7の両端部には、連結部材6,6の上面幅に対応した下向き切欠き状の凹部が形成されており、その凹部を連結部材6,6の上面に被せて係合させることにより、連結部材6,6に設置される。
【0025】
増設用の荷受け棚8は、所定間隔で設置される複数のラック1a,1bに架設され、物品(荷物)を載置できるように構成されている。図1では、複数のラック1a,1bの間において荷受け棚4,4と同じ2箇所の高さ位置に設けられた例を示している。この荷受け棚8は、複数のラック1a,1bに横架されて左右方向に延びる一対のビーム9,9と、それら一対のビーム9,9に架設されて前後方向に延びる荷受部材10,10とを備えている。
【0026】
一対のビーム9,9のうちの前方側に配置されるビーム9は、隣り合うラック1a,1bの前側支柱3b,3aの間で左右方向に延び、その両端がそれぞれ前側支柱3b,3aに連結固定される。また、一対のビーム9,9のうちの後方側に配置されるビーム9は、隣り合うラック1a,1bの後側支柱3d,3cの間で左右方向に延び、その両端がそれぞれ後側支柱3d,3cに連結固定される。
【0027】
荷受部材10,10は、前後のビーム9,9に架設され、物品(荷物)を載置可能とする増設用の荷受け棚8を構成する。例えば荷受部材10,10の両端部には、ビーム9,9の上面幅に対応した下向き切欠き状の凹部が形成されており、その凹部をビーム9,9の上面に被せて係合させることにより、ビーム9,9に設置される。
【0028】
この際、増設用の荷受け棚8,8は、各ラック1a,1bに設置された荷受け棚4,4と同じ高さ位置に設置されるため、ビーム9,9の取付金具22は、連結部材6,6の取付金具21と同じ高さ位置で支柱3に取り付けられる。これを可能とするため、支柱3と取付金具21,22の間には、以下に説明するような本発明に係る連結構造の実施形態が構成されている。
【0029】
(連結構造)
図2は、支柱3の構造を例示している。支柱3は、金属製の角パイプにより形成され、図例の場合、水平断面が矩形である。支柱3は、前面3F、後面3B、右側面3R、及び、左側面3Lの4つの面を有している。この支柱3は、前面3F及び後面3Bの両面に、係止孔31と孔33とが上下方向に多数形成されている。例えば、支柱3の前面3F及び後面3Bには、左右方向に一対の係止孔31,31が並設されており、それら一対の係止孔31,31が支柱3の長手方向(上下方向)に沿って所定間隔で多数形成されている。左右に並設される一対の係止孔31,31は、左右対称の形状であり、上部から下部に向かって幅狭とされた形状を有する。そして係止孔31は、内側に位置して、挿入された取付金具21,22の係止爪38に係合する係止片32を有している。また、上下に並ぶ2つの係止孔31の間には、後述するピン40を挿通するための孔33が設けられている。ここで、支柱3の前面側に形成される一対の係止孔31,31は、後面側に形成される一対の係止孔31,31と同じ高さ位置に形成される。これにより、支柱3の前面側及び後面側のそれぞれの同じ高さ位置に取付金具21,22を取り付けることができる。
【0030】
図3ないし図7は、ラック1aの前側支柱3b(以下、単に「支柱3」という。)に対して、ビーム9(以下、「第1ビーム9」という。)と、連結部材6(以下、「第2ビーム6」という。)を連結するための連結構造を示している。
【0031】
図示実施形態の場合、第2ビーム6は、前後方向に延びるアーム桟12を有しており、そのアーム桟12の前方端部に支柱3に臨まされるビーム接続部13を固設している。アーム桟12及びビーム接続部13は、支柱3と同様、金属製の角パイプによって構成されており、ビーム接続部13は、アーム桟12の前方端部において、アーム桟12の側面に溶接などによって固設され、先端に取付金具21が溶接などによって固設されている。
【0032】
一方、第1ビーム9も、支柱3と同様、金属製の角パイプによって構成されており、支柱3に臨む端部には、取付金具22が溶接などによって固設されている。
【0033】
第1ビーム9と第2ビーム6の取付金具21,22は、共通の構成を有している。すなわち、取付金具21,22は、それぞれ支柱3の前面3F及び後面3Bに接合する固定板部23と、固定板部23の左右両側縁のうち一方の側縁から折曲されて支柱3の左右両側面3L,3Rのうちの一方の側面に接合される基板部25と、固定板部23の左右両側縁のうち他方の側縁から折曲されて支柱3の左右両側面3L,3Rのうちの他方の側面に接合される保持板部24とを有するほぼコ字形の金具により構成されている。
【0034】
固定板部23は、支柱3の前面3F又は後面3B(図例の場合、取付金具21の固定板部23は前面3F、取付金具22の固定板部23は後面3B)に接合されたとき、上下左右に形成された4つの係止爪38をそれぞれ支柱3の係止孔31に嵌入した状態で係止片32に係合され、これにより、取付金具21,22を支柱3に固定する。左右に並設された係止爪38,38と係止孔31,31は、それぞれ、左右対称の形状を有している。
【0035】
具体的には、係止爪38は固定板部23の内側に突出しており、係止孔31に差し込むと共に下方に押し下げることにより、係止片32に係合する。固定板部23の上部に設けられる係止爪38と、下部に設けられる係止爪38との間隔は、支柱3に形成された係止孔31,31の上下方向の間隔に一致している。そのため、固定板部23は、4つの係止爪38を4つの係止孔31の係止片32に同時に係合させることができる。
【0036】
また、固定板部23には、上部2箇所の係止爪38と下部2箇所の係止爪38との間にピン40を挿通する孔39が形成されている。4つの係止爪38が支柱3の係止片32に係合したとき、孔39は、支柱3に設けられた孔33の位置に合致し、互いに連通し、ピン40を挿通することにより、固定板部23の上下方向の移動が阻止される。
【0037】
係止爪38を係止孔31に嵌入して係止片32に係合することにより固定板部23が支柱3の前面3F又は後面3Bに接合されたとき、支柱3の左右両側面3L,3Rには、基板部25と保持板部24のそれぞれが接合される。これにより、取付金具21,22は、固定板部23により支柱3の前面3F又は後面3Bを保持し、固定板部23の左右両側縁から互いに平行な状態で直角方向に延びる基板部25及び保持板部24により支柱3の左右両側面3L,3Rを保持する。つまり、取付金具21,22は、それぞれ支柱3の前面3F又は後面3Bと左右両側面3L,3Rの3面を抱き込んだ状態で保持し、前記係止爪38と係止片32の係合により離脱不能に固定される。
【0038】
図9に基づいて上述した従来のL字形の取付金具の場合、固定板部103aを支柱101の前面101aに接合させかつ係止爪105を係止孔104に嵌入係止しているが、例えば、ビームが片持ち支持された状態で荷重Fを受けたとき、下向きのモーメントにより、基板部103bの下端部を支点として上端部を支柱101から離反させる方向の力が作用するため、基板部103bと固定板部103aに生じる応力により係止爪105が変形したり、係止孔104から脱出するおそれがある。これに対し、本実施形態の連結構造では、取付金具21,22を、固定板部23と、基板部25と、保持板部24とを備えたほぼコ字形の形状とすることにより、ビーム6,9(第2ビーム6は接続部13)の端部から基板部25に対して、上端部を支柱3から離反させる方向の力が作用する場合であっても、基板部25とは反対側で支柱3の側面に接合している保持板部24が力を受止め支持ることにより、係止爪38の変形や係止孔31からの離脱を阻止することができる。すなわち、本実施形態の連結構造は、取付金具21,22をコ字形に形成して固定板部23の左右両側で支柱3の左右両側面3L,3Rを抱き込む構造を採用することにより応力を分散するので、連結強度が向上する。
【0039】
ここで、図4に示すように、基板部25に接続される第1ビーム9と、第2ビーム6のビーム接続部13は、支柱3の前後方向の幅寸法L1と同程度の幅寸法を有するため、それぞれ取付金具21,22の基板部25の前後方向の長さL3は、支柱3の前後方向の幅寸法L1と同程度の長さとして形成される。これにより、基板部25は、第1ビーム9及び第2ビーム6のビーム接続部13の端面全体を覆うように広い面積の範囲で固着することができる。
【0040】
また、基板部25は、前後方向に沿って、基部26と、先端部27と、段差部28とを有している。基部26は、固定板部23に接続される基端側に設けられ、支柱3の側面に接合する。段差部28は、基部26と先端部27との中間位置に設けられ、基部26と先端部27との間に段差を形成する。先端部27は、段差部28を介して基部26に接続され、基部26よりも外側の位置で延設される。これにより、基板部25は、固定板部23が支柱3の前面3F又は後面3Bに装着されたとき、基部26を支柱3の側面に接合させると共に、先端部27を支柱3の側面から所定間隔Dだけ離間させ支柱3の側面との間に隙間35(図5参照)を形成する。この隙間35の間隔Dは、保持板部24の板厚Tにほぼ等しくなるように形成される。
【0041】
一方、保持板部24は、前後方向の長さL2が基板部25の先端部27の前後方向の長さL4よりも短く形成されており、固定板部23が支柱3の前面3F又は後面3Bに装着されたとき支柱3の側面に接合する。したがって、取付金具21,22は、支柱3の左右両側面3L,3Rの上で、一方の取付金具の基板部25の先端部27と他方の取付金具の保持板部24とを相互に対向させた状態に配置することができる。具体的には、図6に示すように、取付金具21,22の保持板部24は、支柱3の反対側に配置される取付金具22,21の基板部25の先端部27と支柱3の側面との間に形成される隙間に収容した状態に配置され、一方の取付金具の基板部25の先端部27と、他方の取付金具の保持板部24とを重ね合わせた状態に設置することができる。
【0042】
上記のように構成される連結構造は、例えば図7に示すように、第2ビーム6に設けられた取付金具21と、第1ビーム9に設けられた取付金具22とを、支柱3の同じ高さ位置で前後両面に取り付け可能である。特に、取付金具21,22の相互において、基板部25の先端部27の内側に保持板部24が進入し、基板部25の先端部27の内面が保持板部24を保持する。したがって、第1ビーム9と第2ビーム6の2つのビームは、取付金具21,22を相互に保持し合う状態で取け付けられるので、連結強度をより一層高めることが可能である。
【0043】
また、支柱3に対して取付金具21,22を取り付けた後には、図7に示すようにピン40を孔39に装着しておくことで、取付金具21,22の係止爪38と支柱3に形成された係止孔31の係止片32との係合状態が解除されてしまうことを防止することができる。つまり、ピン40は、係止爪38が係止片32から離脱することを防止する離脱防止手段として設けられる。尚、離脱防止手段としてのピン40は、取付金具21,22のそれぞれに対して個別に装着されることが好ましい。
【0044】
上記においては、ラック1aの支柱3bに対して第2ビーム6と増設用の荷受け棚8を構成する第1ビーム9とを同じ高さ位置で相互に連結する構造を例に挙げて説明した。これに対し、ラック1bの支柱3aに対して第2ビーム6と増設用の荷受け棚8を構成する第1ビーム9とを同じ高さ位置で相互に連結する構造は、上述した構造を左右反転させた構造として実現される。
【0045】
次に、図8は、ラック1bの後側支柱3cに第2ビーム6と第1ビーム9とを連結する構造の例を示す斜視図である。ラック1bの第2ビーム6は、前後方向に延びるアーム桟12の後方端部にビーム接続部14を備えている。ビーム接続部14は、支柱3と同様、金属製の角パイプによって構成される。そしてビーム接続部14は、アーム桟12の後方端部において、アーム桟12の側面に溶接などによって固着され、ラック1bの後側支柱3cに向かって延設される。そのビーム接続部14の先端に取付金具21が溶接などによって固定されている。
【0046】
ビーム接続部14が支柱3の前面に臨む構成とされるため、ビーム接続部14の先端は、取付金具21の固定板部23に固着されている。つまり、ビーム又はその接続部を取付金具21の基板部に固着した上記の実施形態から固着箇所を変更している。この場合、ビーム接続部14は、取付金具21の固定板部23に設けられた2つの孔39,39のうちの一方の孔39のみを閉鎖し、他方の孔39を開放した状態に固定されることが好ましい。これにより、図8に示すように、取付金具21を支柱3の前面に取り付けた後にピン40を他方の孔39に装着することができる。
【0047】
一方、増設用の荷受け棚8の第1ビーム9の端部には、上記の実施形態と同様の取付金具22が溶接などによって固定されている。このとき、第1ビーム9の端部は、取付金具22の基板部25に固定される。そして、取付金具22の固定板部23が支柱3の後面側に取り付けられる。これにより、取付金具22は、取付金具21と同じ高さ位置に取り付けられ、第1ビーム9をビーム接続部14と同じ高さ位置で支柱3に連結することができる。
【0048】
図8では、一方のラック1bの支柱3cに対して第2ビーム6と増設用の荷受け棚8を構成する第1ビーム9とを同じ高さ位置で相互に連結する構造を例に挙げて説明した。これに対し、他方のラック1aの支柱3dに対して第2ビーム6と第1ビーム9とを同じ高さ位置で相互に連結する構造は、上述した構造を左右反転させた構造として実現される。
【0049】
このように本実施形態の連結ラック1は、複数のラック1a,1bのそれぞれに荷受け棚4を設置した状態で、複数のラック1a,1b間に増設用の荷受け棚8を設置することが可能である。荷受け棚4を保持する第2ビーム6は、前方端部及び後方端部のそれぞれに取付金具21が設けられており、各ラック1a,1bの支柱3の前面3Fに固定板部23の係止爪38を係合させることで支柱3の所定高さ位置に設置される。また、荷受け棚8を保持する第1ビーム9は、所定間隔を隔てて設置された複数のラック1a,1bの間を横架するように配置され、その両端に取付金具22が設けられており、各ラック1a,1bの支柱3の後面3Bに固定板部23の係止爪38を係合させることで支柱3の所定高さ位置に設置される。支柱3の前面3F又は後面3Bに取り付けられる取付金具21,22は、支柱3の前面3F又は後面3Bに接合する固定板部23と、固定板部23の左右両側縁から支柱3の左右両側面3L,3Rに沿って延びる基板部25及び保持板部24とを有しており、固定板部23の係止爪38が支柱3の係止孔31に係合した状態のとき、基板部25及び保持板部24のそれぞれが支柱3の左右両側面3L,3Rに接合する。したがって、取付金具21,22は、支柱3の左右両側面3L,3Rを抱き込むような状態で支柱3に取り付けられるため、従来のようなL字形の金具よりも第1ビーム9をより強固に支柱3に連結することが可能である。
【0050】
また、第1ビーム9の取付金具22は、固定板部23を支柱3の後面3Bに接合固定し、基板部25を支柱3の左右両側面3L,3Rのうち右側面3Rに接合すると共に、保持板部24を左側面3Lに接合し、第2ビーム6の取付金具21は、固定板部23を支柱3の前面3Fに接合固定し、基板部25を支柱3の左右両側面3L,3Rのうち左側面3Lに接合すると共に、保持板部24を右側面3Rに接合するように構成されている。そして、取付金具22及び取付金具21は、支柱3の左右両側面3L,3Rの上で、一方の取付金具の基板部25と他方の取付金具の保持板部24を相互に対向させると共に、基板部25には、支柱3の側面に接合される基部26と、該基部26から延設され支柱3の側面との間に隙間35を形成することより保持板部24を収容した状態で保持する先端部27を設けている。したがって、取付金具21,22は、互いの基板部25と保持板部24とを重ね合わせた状態で支柱3の側面に接合させることができるため、第1ビーム9及び第2ビーム6のそれぞれを支柱3の同じ高さ位置においてより強固に連結することが可能である。
【0051】
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明したものに限定されるものではない。すなわち、本発明には、上記各実施形態において説明したものに種々の変形例を適用したものが含まれる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、取付金具21,22の固定板部23に4つの係止爪38が形成されており、それら4つの係止爪38が支柱3の前面又は後面に形成された4つの係止孔31に係合する例を説明した。しかし、固定板部23に設けられる係止爪38は、4つに限られるものではなく、少なくとも1つあれば良い。
【符号の説明】
【0053】
1 連結ラック
1a,1b ラック
2 ベース部
3(3a,3b,3c,3d) 支柱
3F 前面
3B 後面
3L 左側面
3R 右側面
4 荷受け棚
6 連結部材(第2ビーム)
7 荷受部材
8 荷受け棚
9 ビーム(第1ビーム)
10 荷受部材
12 アーム桟
13,14 ビーム接続部
21,22 取付金具
23 固定板部
24 保持板部
25 基板部
26 基部
27 先端部
28 段差部
31 係止孔
32 係止片
33 孔
35 隙間
38 係止爪
39 孔
40 ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9