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特許7515529アンチロックブレーキシステムを備える車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】アンチロックブレーキシステムを備える車両
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20240705BHJP
   B60T 8/1763 20060101ALI20240705BHJP
   B60L 7/02 20060101ALI20240705BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20240705BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60T8/1763
B60L7/02
B60L7/24 D
B60L15/20 S
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022040105
(22)【出願日】2022-03-15
(65)【公開番号】P2022155511
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】63/167,735
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/590,900
(32)【優先日】2022-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】321004127
【氏名又は名称】コマツ アメリカ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】スターム・ニック
(72)【発明者】
【氏名】デン・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リースマン・コリー
(72)【発明者】
【氏名】ローハン・ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】オズボーン・ジョン
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-006921(JP,A)
【文献】特開2015-093571(JP,A)
【文献】特開平10-322803(JP,A)
【文献】特開2017-109552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257664(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60L 7/02
B60L 7/24
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大型車両であって、
シャーシと、
前記シャーシを支持する車輪と、
前記車輪と連動するモータを有し、前記モータが前記車輪を動かし、かつ前記車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成された駆動システムと、
前記車輪と連動し、前記車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成されたサービスブレーキと、
前記モータの動作を制御するように構成され、摩擦条件に基づいて選択的に、前記モータに調整済のダイナミックブレーキトルクを前記車輪に対して付与させ、かつ前記摩擦条件に基づいて選択的に、前記モータに未調整のダイナミックブレーキトルクを前記車輪に対して付与させる駆動システムコントローラと、
前記サービスブレーキの動作を制御するように構成されたサービスブレーキコントローラと、を備え、
前記サービスブレーキコントローラは、前記摩擦条件に基づいて選択的に、前記サービスブレーキに調整済のサービスブレーキトルクを前記車輪に対して付与させ、かつ前記摩擦条件に基づいて選択的に、前記サービスブレーキに未調整のサービスブレーキトルクを前記車輪に対して付与させ、
前記サービスブレーキが調整済のサービスブレーキトルクを付与している間、前記ダイナミックブレーキトルクの調整が無効化され、未調整のダイナミックブレーキトルクの付与が許容される、大型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の大型車両において、
前記サービスブレーキコントローラは、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定し、前記サービスブレーキコントローラは、前記許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも小さい場合、前記サービスブレーキトルクを未調整の所定の最小トルクに保持するように構成される、大型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の大型車両において、
前記サービスブレーキトルクが未調整の所定の最小トルクに保持されている間、前記調整済のダイナミックブレーキトルクの付与が許容される、大型車両。
【請求項4】
請求項1に記載の大型車両において、
前記サービスブレーキコントローラは、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定し、前記サービスブレーキコントローラは、(a)前記許容可能なサービスブレーキトルクがブレーキ信号によって要求されるサービスブレーキトルクよりも小さい場合、および(b)前記許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも大きい場合、前記サービスブレーキに調整済のサービスブレーキトルクを付与させるように構成される、大型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の大型車両において、
前記サービスブレーキコントローラは、無効化コマンドを前記駆動システムコントローラに伝達し、前記調整済のサービスブレーキトルクの付与中に、前記ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化し、未調整のダイナミックブレーキトルクの付与を許容する、大型車両。
【請求項6】
請求項1に記載の大型車両において、
前記サービスブレーキおよび前記駆動システムの前記モータは、第1の状態、第2の状態および第3の状態で動作可能であり、
前記第1の状態において、前記サービスブレーキコントローラおよび前記駆動システムコントローラは、摩擦条件がブレーキ信号によって要求されるブレーキトルクの値よりも小さいブレーキトルクを必要としない場合、未調整のサービスブレーキトルクおよび未調整のダイナミックブレーキトルクを付与し、
前記第2の状態において、前記サービスブレーキコントローラは、前記サービスブレーキトルクを未調整の所定の最小トルクに保持し、前記駆動システムコントローラは、調整済のダイナミックブレーキトルクを付与し、
前記第3の状態において、前記サービスブレーキコントローラは、調整済のサービスブレーキトルクを付与し、前記ダイナミックブレーキトルクの調整は無効化され、前記駆動システムコントローラは、未調整のダイナミックブレーキトルクを付与する、大型車両。
【請求項7】
請求項1に記載の大型車両において、
さらに、前記シャーシを支持する追加の車輪と、
前記追加の車輪に連動し、前記追加の車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成された追加のサービスブレーキと、を備え、
前記駆動システムは、前記追加の車輪に連動する追加のモータを有し、
前記追加のモータは、前記追加の車輪を動かし、かつ前記追加の車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成され、
前記サービスブレーキは、互いに独立して動作可能であり、
前記モータは、互いに独立して動作可能である、大型車両。
【請求項8】
大型車両を制動する方法であって、
ブレーキ要求を受信し、
前記車両の車輪と路面との間の摩擦条件を決定し、
前記摩擦条件に基づいて、許容可能なブレーキトルクを決定し、
前記車両の駆動システムのモータを使用して、前記車輪にダイナミックブレーキトルクを付与し、ここで、前記モータは、前記車両を動かすように動作可能、かつ前記車両を制動するように動作可能であり、
サービスブレーキを使用して、前記車輪にサービスブレーキトルクを付与し、ここで、前記サービスブレーキは、前記モータから独立して動作可能であり、
前記摩擦条件に基づいて選択的に、調整済および未調整のダイナミックブレーキトルクの間で、前記ダイナミックブレーキトルクを切り換え、
前記摩擦条件に基づいて選択的に、調整済および未調整のサービスブレーキトルクの間で、前記サービスブレーキトルクを切り換え、
前記摩擦条件に基づいて、前記ダイナミックブレーキトルクの調整よりも前記サービスブレーキトルクの調整を優先
ここで、前記サービスブレーキトルクの調整の優先は、前記車輪に調整済のサービスブレーキトルクを付与しつつ、前記ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化して、前記車輪に対する未調整のダイナミックブレーキトルクの付与を許容することを含む、大型車両の制動方法。
【請求項9】
請求項に記載の方法において、
さらに、前記摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定し、
前記許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも小さい場合、前記サービスブレーキを未調整の所定の最小トルクに保持する、方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法において、
さらに、前記サービスブレーキトルクを前記未調整の所定の最小トルクに保持しつつ、ダイナミックブレーキトルクを調整する、方法。
【請求項11】
請求項8に記載の方法において、
さらに、前記摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定し、
(a)前記許容可能なサービスブレーキトルクが要求されるサービスブレーキトルクより小さい場合、および(b)前記許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも大きい場合、前記サービスブレーキトルクを調整し、このとき、前記優先の結果として、前記ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化して、未調整のダイナミックブレーキトルクの付与を許容する、方法。
【請求項12】
請求項8に記載の方法において、
前記サービスブレーキおよび前記駆動システムの前記モータは、第1の状態、第2の状態および第3の状態で動作可能であり、
前記第1の状態において、摩擦条件が要求されるブレーキトルクの値よりも小さいブレーキトルクを必要としない場合、未調整のサービスブレーキトルクおよび未調整のダイナミックブレーキトルクが付与され、
前記第2の状態において、前記サービスブレーキトルクは、未調整の所定の最小トルクに保持され、前記ダイナミックブレーキトルクは調整され、
前記第3の状態において、サービスブレーキトルクは調整され、前記優先の結果として、前記ダイナミックブレーキトルクの調整が無効化され、未調整のダイナミックブレーキトルクの付与が許容される、方法。
【請求項13】
請求項8に記載の方法において、
前記車両は、
さらに、追加の車輪と、
前記追加の車輪に連動し、前記追加の車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成された追加のサービスブレーキと、
前記追加の車輪に連動する追加のモータと、を備え、
前記追加のモータは、前記追加の車輪を動かし、かつ前記追加の車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成され、
前記サービスブレーキは、互いに独立して動作可能であり、
前記モータは、互いに独立して動作可能である、方法。
【請求項14】
大型車両であって、
シャーシと、
前記シャーシを支持する車輪と、
前記車輪と連動し、前記車輪を動かし、かつ前記車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成されたモータと、
前記車輪と連動し、前記車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成されたサービスブレーキと、
前記モータの動作および前記サービスブレーキの動作を制御するように構成されたコントローラと、を備え、
1つ以上のブレーキ信号の受信に応答して、前記コントローラは、選択的に、前記モータに調整済のダイナミックブレーキトルクを前記車輪に対して付与させ、かつ選択的に、前記モータに未調整のダイナミックブレーキトルクを前記車輪に対して付与させるように構成され、
1つ以上のブレーキ信号の受信に応答して、前記コントローラは、摩擦条件に基づいて選択的に、前記モータに調整済のダイナミックブレーキトルクを前記車輪に対して付与させ、かつ前記摩擦条件に基づいて選択的に、前記モータに未調整のダイナミックブレーキトルクを前記車輪に対して付与させ、
前記1つ以上のブレーキ信号の受信に応答して、前記コントローラは、前記摩擦条件に基づいて選択的に、前記サービスブレーキに調整済のサービスブレーキトルクを前記車輪に対して付与させ、かつ前記摩擦条件に基づいて選択的に、前記サービスブレーキに未調整のサービスブレーキトルクを前記車輪に対して付与させ
前記コントローラは、前記摩擦条件に基づいて、前記調整済のダイナミックブレーキトルクの付与よりも前記調整済のサービスブレーキトルクの付与を優先し、
前記調整済のサービスブレーキトルクの付与の優先は、前記車輪に調整済のサービスブレーキトルクを付与しつつ、前記ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化して、前記車輪に対する未調整のダイナミックブレーキトルクの付与を許容することを含む、大型車両。
【請求項15】
請求項14に記載の大型車両において、
前記コントローラは、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定し、前記コントローラは、前記許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも小さい場合、前記サービスブレーキトルクを未調整の所定の最小トルクに保持するように構成される、大型車両。
【請求項16】
請求項15に記載の大型車両において、
前記サービスブレーキトルクを未調整の所定の最小トルクに保持しつつ、前記調整済のダイナミックブレーキトルクの付与を許容する、大型車両。
【請求項17】
請求項14に記載の大型車両において、
前記コントローラは、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定し、前記コントローラは、(a)前記許容可能なサービスブレーキトルクがブレーキ信号によって要求されるサービスブレーキトルクよりも小さい場合、および(b)前記許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも大きい場合、前記サービスブレーキに調整済のサービスブレーキトルクを付与させるように構成され、このとき、前記優先の結果として、前記ダイナミックブレーキトルクの調整が無効化され、未調整のダイナミックブレーキトルクの付与が許容される、大型車両。
【請求項18】
請求項14に記載の大型車両において、
前記サービスブレーキおよび前記モータは、第1の状態、第2の状態および第3の状態で動作可能であり、
前記第1の状態において、前記コントローラは、摩擦条件がブレーキペダルによって要求されるブレーキトルクの値よりも小さいブレーキトルクを必要としない場合、未調整のサービスブレーキトルクおよび未調整のダイナミックブレーキトルクを付与し、
前記第2の状態において、前記コントローラは、前記サービスブレーキトルクを未調整の所定の最小トルクに保持し、かつ調整済のダイナミックブレーキトルクを付与し、
前記第3の状態において、前記コントローラは、調整済のサービスブレーキトルクを付与し、このとき、前記優先の結果として、前記ダイナミックブレーキトルクの調整が無効化され、未調整のダイナミックブレーキトルクの付与が許容される、大型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月30日に出願された米国仮出願第63/167,735号の利益を主張するものである。上記出願の開示全体は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、アンチロックブレーキシステムを備える車両(例えば、大型車両)に関する。
【背景技術】
【0003】
本項では、本開示に関連する背景情報を提供するものであり、必ずしも先行技術ではない。
【0004】
大型のオフハイウェイダンプトラック(例えば、連結トラック、地下運搬トラック等)のような大型車両は、滑り易いおよび/または転がり抵抗の大きい条件(例えば、雪、凍結、泥、濡れ、砂、砂利および/または油のような条件)では、摩擦を喪失する場合がある。このような条件で急ブレーキをかけると、1つ以上の車輪がロックする。これが、車両に滑りを生じさせ、ブレーキ時間および距離が長くすることがある。
【0005】
大型車両は、車両を動かし、かつ車両を制動するように機能させる電気駆動システムを備え得る。また、これらの車両は、駆動システムの減速機能を補完する油圧式サービスブレーキを備える。本開示は、車両の摩擦力を保持し、車輪のロックを低減または排除して、停止距離および時間を短縮するように、サービスブレーキの付与および駆動システムの制動を制御するシステムを提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本項は、本開示の一般的な概要を説明するものであり、その全範囲または特徴の全てを包括的に開示するものではない。
【0007】
一態様において、本開示は、シャーシと、シャーシを支持する車輪と、駆動システムと、サービスブレーキと、駆動システムコントローラと、サービスブレーキコントローラとを備える車両(例えば、大型車両)を提供する。駆動システムは、車輪に連動するモータを有する。モータは、車輪を動かし、かつ車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成される。サービスブレーキは、車輪に連動し、車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成される。駆動システムコントローラは、モータの動作を制御するように構成される。駆動システムコントローラは、摩擦条件に基づいて、車輪に対するダイナミックブレーキトルクを選択的に調整する。サービスブレーキコントローラは、サービスブレーキの動作を制御するように構成される。サービスブレーキコントローラは、摩擦条件に基づいて、車輪に対するサービスブレーキトルクを選択的に調整してもよい。ダイナミックブレーキトルクの調整は、サービスブレーキトルクの調整中に、無効化される。例えば、サービスブレーキコントローラは、サービスブレーキトルクの調整中に、ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化してもよい。
【0008】
前項の車両のいくつかの構成において、サービスブレーキコントローラは、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定する。サービスブレーキコントローラは、許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも小さい場合、サービスブレーキトルクを未調整の最小トルクに保持するように構成される。
【0009】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、サービスブレーキコントローラは、サービスブレーキトルクを未調整の最小トルクに保持しつつ、ダイナミックブレーキトルクの調整を可能とする。
【0010】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、サービスブレーキコントローラは、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定する。サービスブレーキコントローラは、(a)許容可能なサービスブレーキトルクがブレーキ信号によって(例えば、ブレーキペダルから)要求されるサービスブレーキトルクよりも小さい場合、および(b)許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも大きい場合、サービスブレーキトルクを調整するように構成される。
【0011】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、サービスブレーキコントローラは、駆動システムコントローラに無効化コマンドを伝達し、サービスブレーキトルクの調整中に、ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化する。
【0012】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、サービスブレーキおよび駆動システムのモータは、第1の状態、第2の状態および第3の状態で動作可能である。第1の状態において、サービスブレーキコントローラおよび駆動システムコントローラは、摩擦条件がブレーキ信号によって(例えば、ブレーキペダルから)要求されるブレーキトルクの値よりも小さいブレーキトルクを必要としない場合、未調整のサービスブレーキトルクおよび未調整のダイナミックブレーキトルクを付与する。第2の状態において、サービスブレーキコントローラは、サービスブレーキトルクを未調整の最小トルクに保持し、駆動システムコントローラは、調整済のダイナミックブレーキトルクを付与する。第3の状態において、サービスブレーキコントローラは、調整済のサービスブレーキトルクを付与し、駆動システムコントローラは、未調整のダイナミックブレーキトルクを付与する。
【0013】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、車両は、駆動システムコントローラおよびサービスブレーキコントローラと連動するコンビネーションブレーキペダルを備える。ブレーキペダルが第1の距離だけ踏み込まれた場合、駆動システムコントローラは、車輪に対するダイナミックブレーキトルクを、モータに付与させる。ブレーキペダルが第1の距離よりも大きい第2の距離だけ踏み込まれた場合、サービスブレーキコントローラは、車輪に対するサービスブレーキトルクを、サービスブレーキに付与させる。
【0014】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、車両は、シャーシを支持する追加の車輪と、追加の車輪に連動し、追加の車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成された追加のサービスブレーキと、を備える。駆動システムは、追加の車輪に連動する追加のモータを有する。追加モータは、追加の車輪を動かし、かつ追加の車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成される。
【0015】
上記項の車両のいくつかの構成において、サービスブレーキは、互いに独立して動作可能であり、モータは、互いに独立して動作可能である。
【0016】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、サービスブレーキは、油圧動作式ディスクブレーキである。
【0017】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、駆動システムコントローラおよびサービスブレーキコントローラは、1つ以上のブレーキ信号に応答して、それぞれダイナミックブレーキトルクおよびサービスブレーキトルクを付与するように構成される。
【0018】
別の態様において、本開示は、車両のブレーキペダルからブレーキ要求を受信し、車両の車輪と地表との間の摩擦条件を決定し、摩擦条件に基づいて、最大の許容可能なブレーキトルクを決定し、車両の駆動システムのモータを使用して、車輪にダイナミックブレーキトルクを付与し、ここで、モータは、車両を動かすように動作可能、かつ車両を制動するように動作可能であり、サービスブレーキを使用して、車輪にサービスブレーキトルクを付与し、ここで、サービスブレーキは、モータから独立して動作可能であり、調整済および未調整のダイナミックブレーキトルクの間で、ダイナミックブレーキトルクを選択的に切り換え、調整済および未調整のサービスブレーキトルクの間で、サービスブレーキトルクを選択的に切り換え、調整済のサービスブレーキトルクを車輪に付与しつつ、車輪への調整済のダイナミックブレーキトルクを無効化する、方法を提供する。
【0019】
上記項の方法のいくつかの構成において、方法は、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定し、許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも小さい場合、サービスブレーキトルクを未調整の最小トルクに保持する。
【0020】
上記項のいずれかの方法のいくつかの構成において、方法は、サービスブレーキトルクを未調整の最小トルクに保持しつつ、ダイナミックブレーキトルクを調整する。
【0021】
上記項のいずれかの方法のいくつかの構成について、方法は、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定し、(a)許容可能なサービスブレーキトルクがブレーキペダルによって要求されるサービスブレーキトルクよりも小さい場合、および(b)許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも大きい場合、サービスブレーキトルクを調整する。
【0022】
上記項のいずれかの方法のいくつかの構成において、方法は、サービスブレーキトルクの調整中に、無効化コマンドを生成し、ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化する。
【0023】
上記項のいずれかの方法のいくつかの構成において、サービスブレーキおよび駆動システムのモータは、第1の状態、第2の状態および第3の状態で動作可能である。第1の状態において、摩擦条件がブレーキペダルによって要求されるブレーキトルクの値よりも小さいブレーキトルクを必要としない場合、未調整のサービスブレーキトルクおよび未調整のダイナミックブレーキトルクが付与される。第2の状態において、サービスブレーキトルクは、未調整の最小トルクに保持され、ダイナミックブレーキトルクは調整される。第3の状態において、サービスブレーキトルクは調整され、ダイナミックブレーキトルクは調整されない。
【0024】
上記項のいずれかの方法のいくつかの構成において、ブレーキペダルは、コンビネーションブレーキペダルである。ブレーキペダルが第1の距離だけ踏み込まれた場合、モータは車輪にダイナミックブレーキトルクを付与する。ブレーキペダルが第1の距離よりも大きい第2の距離だけ踏み込まれた場合、サービスブレーキは、車輪にサービスブレーキトルクを付与する。
【0025】
上記項のいずれかの方法のいくつかの構成において、車両は、追加の車輪と、追加の車輪に連動し、追加の車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成された追加のサービスブレーキと、追加の車輪に連動する追加のモータと、を備える。追加のモータは、追加の車輪を動かし、かつ追加の車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成される。
【0026】
上記項の方法のいくつかの構成において、サービスブレーキは、互いに独立して動作可能であり、モータは互いに独立して動作可能である。
【0027】
上記項のいずれかの方法のいくつかの構成において、サービスブレーキは、油圧動作式ディスクブレーキである。
【0028】
別の態様において、本開示は、シャーシと、シャーシを支持する車輪と、モータと、サービスブレーキと、コントローラと、を備え得る大型車両を提供する。モータは、車輪に連動し、車輪を動かし、かつ車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成される。サービスブレーキは、車輪に連動し、車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成される。コントローラは、モータの動作およびサービスブレーキの動作を制御するように構成される。1つ以上のブレーキ信号の受信に応答して、コントローラは、摩擦条件に基づいて、車輪に対するダイナミックブレーキトルクを選択的に調整し、かつ摩擦条件に基づいて、車輪に対するサービスブレーキトルクを選択的に調整する。コントローラは、サービスブレーキトルクの調整中に、ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化にしてもよい。
【0029】
上項の車両のいくつかの構成において、コントローラは、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定する。コントローラは、許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも小さい場合、サービスブレーキトルクを未調整の最小トルクに保持するように構成される。
【0030】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、コントローラは、サービスブレーキトルクを未調整の最小トルクに保持しつつ、ダイナミックブレーキトルクの調整を可能にする。
【0031】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、コントローラは、摩擦条件に基づいて、許容可能なサービスブレーキトルクを決定する。コントローラは、(a)許容可能なサービスブレーキトルクがブレーキ信号によって要求されるサービスブレーキトルクよりも小さい場合、および(b)許容可能なサービスブレーキトルクが所定の最小値よりも大きい場合、サービスブレーキトルクを調整するように構成されてもよい。
【0032】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、サービスブレーキおよびモータは、第1の状態、第2の状態および第3の状態で動作可能である。第1の状態において、コントローラは、摩擦条件がブレーキペダルによって要求されるブレーキトルクの値よりも小さいブレーキトルクを必要としない場合、未調整のサービスブレーキトルクおよび未調整のダイナミックブレーキトルクを付与する。第2の状態において、コントローラは、サービスブレーキトルクを未調整の最小トルクに保持し、かつ変調済のダイナミックブレーキトルクを付与する。第3の状態において、コントローラは、調整済のサービスブレーキトルクを付与し、かつ未調整のダイナミックブレーキトルクを付与する。
【0033】
いくつかの構成において、上記項のいずれかの車両は、コントローラと連動するコンビネーションブレーキペダルを備える。ブレーキペダルが第1の距離だけ踏み込まれた場合、コントローラは、車輪に対するダイナミックブレーキトルクを、モータに付与させる。ブレーキペダルが第1の距離よりも大きい第2の距離だけ踏み込まれた場合、コントローラは、車輪に対するサービスブレーキトルクを、サービスブレーキに付与させる。
【0034】
いくつかの構成において、上記項のいずれかの車両は、シャーシを支持する追加の車輪と、追加の車輪に連動し、追加の車輪にサービスブレーキトルクを付与するように構成された追加のサービスブレーキと、追加の車輪に連動する追加のモータと、を備える。追加のモータは、追加の車輪を動かし、かつ追加の車輪にダイナミックブレーキトルクを付与するように構成される。
【0035】
上記項の車両のいくつかの構成において、サービスブレーキは、互いに独立して動作可能であり、モータは互いに独立して動作可能である。
【0036】
上記項のいずれかの車両のいくつかの構成において、サービスブレーキは、油圧動作式のディスクブレーキである。
【0037】
さらなる適用可能な範囲は、本明細書に提供される説明から明らかになるであろう。本概要における説明および具体例は、説明のみを目的としており、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本明細書に記載された図面は、選択された実施形態の例示のみを目的とするものであり、全ての可能な実施形態ではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0039】
対応する参照番号は、図面の複数の図を通して対応する部品を示す。
【0040】
図1】本開示の原理に係る大型車両の概略側面図である。
【0041】
図2図1の車両の模式的な俯瞰図である。
【0042】
図3】車両のダイナミックブレーキシステムを制御する処理を示すフローチャートである。
【0043】
図4】車両のサービスブレーキシステムを制御する処理を示すフローチャートである。
【0044】
図5A】第1の摩擦状態の間に付与されるブレーキトルクを示すグラフ図である。
【0045】
図5B】第2の摩擦状態の間に付与されるブレーキトルクを示すグラフ図である。
【0046】
図5C】第3の摩擦状態の間に付与されるブレーキトルクを示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
次に、例示的な実施形態について、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【0048】
例示的な実施形態は、本開示が徹底され、かつ当業者に範囲を詳細に伝えるように提供される。本開示の実施形態の徹底的な理解を提供するために、特定の構成要素、装置、および方法の例のような多数の具体的な詳細が記載されている。具体的な詳細が採用される必要がないこと、例示的な実施形態が多くの異なる形態で具現化され得ること、およびいずれも本開示の範囲を限定するように解釈されるべきではないことは、当業者にとって明らかであろう。いくつかの例示的な実施形態において、周知のプロセス、周知の装置構造、および周知の技術は、詳細には説明されない。
【0049】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態を説明する目的に対してのみであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むように意図され得る。「備える」、「構成する」、「含む」および「有する」なる用語は、包括的であり、したがって、既述の特徴、整数、ステップ、操作、要素および/または構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。本明細書に記載された方法ステップ、プロセスおよび操作は、実行の順序として具体的に特定されない限り、議論または図示された特定の順序でそれらの実行を必ずしも必要とすると解釈されるものではない。また、追加または代替のステップが採用され得ることも理解されたい。
【0050】
ある要素または層が、他の要素または層「上」にある、「係合する」、「接続する」または「結合する」と言及される場合、それは他の要素または層上に直接あっても、直接係合しても、直接接続しても、直接結合してもよく、介在する要素または層が存在してもよい。これに対して、ある要素が、他の要素または層「上に直接ある」、「に直接係合する」、「に直接接続する」または「に直接結合する」と言及される場合、介在する要素または層が存在しなくてもよい。要素同士の間の関係を説明するために使用される他の単語も同様に解釈されるべきである(例えば、「同士の間」対「同士の直接の間」、「隣接」対「直接隣接」等)。本明細書で使用される場合、「および/または」なる用語は、1つ以上の関連する列挙された項目の任意および全ての組み合わせを含む。
【0051】
本明細書において、第1、第2、第3等なる用語を用いて、種々の要素、構成要素、領域、層および/または部位を説明され得るが、これらの要素、構成要素、領域、層および/または部位は、これらの用語によって限定されるべきものではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層または部位を、他の領域、層または部位と区別するためにのみ使用され得る。本明細書において使用される場合、「第1」、「第2」および他の数的用語のような用語は、文脈によって明確に示されない限り、配列または順序を意味することはない。したがって、後述する第1の要素、第1の構成要素、第1の領域、第1の層または第1の部位は、例示的な実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、第2の構成要素、第2の領域、第2の層または第2の部位と称することができる。
【0052】
説明を容易にするために、「内側」、「外側」、「下方」、「の下」、「下部の」、「上方」、「上部の」等のような空間的相対用語は、ある要素または特徴と、図に示すような他の要素または特徴との関係を説明するのに、本明細書において使用することができる。空間的相対用語は、図に記載された方向に加えて、使用または操作の際に、装置の異なる方向を包含するように意図され得る。例えば、図中の装置が裏返された場合、他の要素または特徴の「下方」として記載された要素は、他の要素または特徴の「上方」を向くであろう。したがって、「下方」なる例示的用語は、上方および下方の双方の方向を包含し得る。装置は、他の方向(90°回転または他の方向)を向いてもよく、本明細書で使用される空間的相対記述は、それに応じて解釈される。
【0053】
図1および図2を参照すると、大型車両10が提供される。例えば、車両10は、掘削、建設および/または採鉱のような各種の重作業用途のオフハイウェイダンプトラックまたはアーティキュレートダンプトラックであってもよい。車両10は、車両フレームまたはシャーシ12と、ダンプ本体14と、複数の後車輪組立体16と、複数の前車輪組立体18と、駆動システム20と、サービスブレーキシステム22とを備え得る。ダンプ本体14は、車両フレーム12に支持され、車両フレーム12の後端部またはその近傍に配置されたピボット21を中心に車両フレーム12に対して回転可能とし得る。油圧巻上システムは、ロード位置(図1に示す。)とアンロード(またはダンプ)位置との間で、車両フレーム12に対してダンプ本体14を回転するように動作させることができる。
【0054】
後車輪組立体16および前車輪組立体18は、車両フレーム12を支持する。後車輪組立体16は、駆動システム20によって動かされ、かつ制動され得る。図1および図2に示す例示的な車両10において、各後車輪組立体16は、一対のリム24と、各リム24に取り付けられた一対のタイヤ26とを含む。図2に示すように、第1の後車輪組立体16のリム24は、第1のスピンドル28に回転可能に取り付けられ、第2の後車輪組立体16のリム24は、第2のスピンドル30に回転可能に取り付けられ得る。このようにして、2つの後車輪組立体16の4つのリム24および4つのタイヤ26は、一直線構成(すなわち、一方の後車輪組立体16の2つのリム24および2つのタイヤ26が車両フレーム12の一方の横側面に配置され、他方の後車輪組立体16の2つのリム24および2つのタイヤ26が車両フレーム12の他方の横側面に配置された状態)で配置され得る。各前車輪組立体18は、リム32およびタイヤ34を備える。
【0055】
駆動システム20は、駆動システムコントローラまたは制御モジュール36と、複数の電気駆動モータ38とを備え得る。駆動システム20は、電気駆動モータ38に電力を供給する電気エネルギーを生成するディーゼルエンジン(図示せず。)を有するディーゼル電気駆動システムであってもよい。電気駆動モータ38は、例えば、誘導トラクションモータであり得る。各電気駆動モータ38は、各後車輪組立体16に結合され、各後車輪組立体16を動かし、かつ遅らせるように構成される。電気駆動モータ38は、互いに独立して動作可能である。電気駆動モータ38の動作は、車両10の操作者からの入力および検出された摩擦条件に基づいて、駆動システムコントローラ36によって制御される。例えば、操作者がアクセルペダル(図示せず。)を踏むと、駆動システムコントローラ36は、駆動モータ38が後車輪組立体16に伝達するトルクの値を増加させることができる。操作者がブレーキペダル44を踏むと、ブレーキ信号が駆動システムコントローラ36に伝達され、駆動システムコントローラ36は、後車輪組立体16に対して制動トルクを、駆動モータ38に付与させ、車両10を減速させることができる。以下により詳細に説明するように、駆動システムコントローラ36は、サービスブレーキシステム22から受信した信号および検出されたタイヤ対地摩擦条件に基づいて、制動トルクを選択的に調整し、ブレーキ事象中に後車輪組立体16のロックを低減または防止することができる。駆動システム20による制動トルクの付与は、「ダイナミックブレーキ」と称される。
【0056】
図に示す例示的な車両10において、後車輪組立体のみが電気モータ38によって駆動される。しかしながら、車両10のいくつかの構成において、駆動システム20は、前車輪組立体18を動かし、遅らせるように構成された追加の電気モータを有することができる。
【0057】
サービスブレーキシステム22は、サービスブレーキコントローラまたは制御モジュール40と、複数のサービスブレーキ42とを備え得る。サービスブレーキコントローラ40は、駆動システムコントローラ36およびサービスブレーキ42と連動する。サービスブレーキ42は、例えば、油冷式、油圧動作式、多板式ブレーキであってもよい。サービスブレーキ42は、各後輪および前車輪組立体16、18に取り付けら得る。サービスブレーキコントローラ40は、各サービスブレーキ42を制御するように構成される。すなわち、サービスブレーキコントローラ40は、車両10の操作者からの入力(例えば、操作者がブレーキペダル44に十分な圧力を付与し、ブレーキ信号をサービスブレーキコントローラ40に伝達することに応答して)および検出されたタイヤ対地摩擦条件に基づいて、サービスブレーキ42を選択的に付与および調節することができる。サービスブレーキシステム22は、サービスブレーキ42を動作させる動作油の流れを制御する調整弁(例えば、PPC(比例圧力制御)およびカット弁)によって、サービスブレーキ42を調整するアンチロックブレーキシステムを有する。
【0058】
車輪速度センサ46は、各後車輪および前車輪組立体16、18またはその近傍に搭載され得る。車輪速度センサ46は、例えば、ホール効果センサ、磁気抵抗センサまたは可変リラクタンスセンサ、あるいは各車輪組立体16、18の回転速度を測定するように構成された任意のタイプのセンサであってもよい(すなわち、車輪速度センサ46は、左前車輪組立体18、右前車輪組立体18、左後車輪組立体16および右後車輪組立体16それぞれの個別の速度を測定することができる)。車輪速度センサ46は、駆動システムコントローラ36およびサービスブレーキコントローラ40と連動する。駆動システムコントローラ36および/またはサービスブレーキコントローラ40は、車輪速度センサ46からのデータおよび/または車両10に取り付けられたジャイロセンサ(図示せず。)および/または加速度センサ(図示せず。)からのデータに基づいて、ブレーキ事象中に車輪組立体16、18のいずれかがロックまたはスリップしているかを決定することができる。
【0059】
ブレーキペダル44は、車両10の運転室内に配置されてもよく、コンビネーションブレーキペダルであってもよい。すなわち、車両10の操作者がブレーキペダル44を第1の距離まで踏み込むと(例えば、第1の距離はブレーキペダル44の可動範囲の最初の70%であり得る)、駆動システム20のみが制動トルクを付与し、車両を減速する。車両10の操作者がブレーキペダル44を第1の距離よりもさらに踏み込むと(例えば、ブレーキペダル44の可動範囲の70%以上)、サービスブレーキコントローラ40は、サービスブレーキ42を動作させ、補助的な制動力を提供する。車両10のいくつかの構成において、コンビネーションブレーキペダル44は、2つの個別のブレーキペダル(すなわち、サービスブレーキ42を制御するブレーキペダルと、駆動システム20のダイナミックブレーキを制御する他のブレーキペダル)と置換することができる。いくつかの構成において、車両10は、いかなるブレーキペダルも含まなくてもよい。その代わりに、例えば、1つ以上の手で操作されるレバー、ボタンまたはジョイスティックからコントローラ36、40に1つ以上のブレーキ信号が送信されてもよく、または1つ以上のブレーキ信号が自律走行システムによって生成されてもよい。
【0060】
車両10の操作者が十分な距離だけブレーキペダル44を踏み込んでサービスブレーキ42を動作させると(すなわち、ブレーキペダル44が第1の距離以上踏み込まれると)、停止距離を短くし、車輪組立体16、18のロックまたはスリップを低減または防止するように車両10を減速するアンチロックブレーキ方式が適用される。アンチロックブレーキ方式において、駆動システムコントローラ36は、ダイナミックブレーキプロセス100に従って、駆動システム20のダイナミックブレーキを制御してもよく、サービスブレーキコントローラ40は、サービスブレーキプロセス200に従って、サービスブレーキ42を制御してもよい。プロセス100、200は、互いに並行して動作し、車輪組立体16、18がロックしたりスリップするのを防止しつつ、できるだけ短い停止距離となるように車両10を減速させる。プロセス100、200は、制御状態が1回のブレーキ事象中に数回変化し得るように、複数回(例えば、コントローラ36、40の各タイムステップにおいて)、再評価または繰り返されてもよい。
【0061】
次に、図3を参照して、駆動コントローラ36により実行されるダイナミックブレーキプロセス100を説明する。ステップ110において、駆動システムコントローラ36は、ブレーキペダル44から(すなわち、ブレーキペダル44が車両10の操作者によって動作されることに応答して)、ダイナミックブレーキ要求信号を受信する。次に、ステップ120において、駆動システムコントローラ36は、タイヤ対地摩擦条件を評価する。上述したように、駆動システムコントローラ36は、車輪速度センサ46からのデータ、および/または車両10に取り付けられたジャイロセンサおよび/または加速度計からのデータに基づいて、左後車輪組立体16、右後車輪組立体16、左前車輪組立体18および/または右前車輪組立体18のいずれ(もしあれば)がブレーキ事象中にロックまたはスリップするのかを決定することができる。駆動システムコントローラ36は、そのセンサデータに基づいて、各車輪組立体16、18のタイヤ対地摩擦を計算することができる。
【0062】
ステップ130において、駆動システムコントローラ36は、ステップ120において決定されたタイヤ対地摩擦に基づいて、駆動システム20が後車輪組立体16に付与し得るダイナミックブレーキトルクの最大許容値を決定することができる。
【0063】
ステップ140において、駆動システムコントローラ36は、サービスブレーキコントローラ40からの無効化コマンドがアクティブか非アクティブかを判断する。無効化コマンドは、駆動システムコントローラ36に指示し、駆動システム20の電気モータ38によって付与されるダイナミックブレーキトルクの調整を無効化する、サービスブレーキコントローラ40からの信号である。すなわち、無効化コマンドがアクティブである場合(すなわち、ステップ140における質問に対する回答が「Yes」である場合)、駆動システムコントローラ36は、ダイナミックブレーキトルクを調整することはできず、未調整のダイナミックブレーキトルクをそのまま付与することができる。無効化コマンドが非アクティブである場合(すなわち、ステップ140における質問に対する回答が「No」である場合)、駆動システムコントローラ36は、調整済または未調整のダイナミックブレーキトルクのいずれかを付与することができる。
【0064】
ステップ140において、駆動システムコントローラ36が、サービスブレーキコントローラ40からの無効化コマンドが非アクティブであると判断した場合(すなわち、ステップ140における質問に対する回答が「No」の場合)、駆動システムコントローラ36は、ステップ150において、タイヤ対地摩擦条件が、ブレーキペダル44によって要求されるダイナミックブレーキトルクの値よりも小さいダイナミックブレーキトルクを必要とするか否かを判断する。すなわち、駆動システムコントローラ36は、ステップ130において決定されたダイナミックブレーキトルクの最大許容値が、操作者のブレーキペダル44の動作によって要求されるダイナミックブレーキトルクの値よりも小さいか否かを判断する。
【0065】
ステップ150において、駆動システムコントローラ36が、摩擦条件がダイナミックブレーキトルクの要求された値よりも小さいダイナミックブレーキトルクを必要していると判断した場合(すなわち、ステップ150における質問に対する回答が「Yes」の場合)、駆動システムコントローラ36は、(ステップ160において)、電気モータ38に調整済のダイナミックブレーキトルク(例えば、ステップ130において決定された最大許容ダイナミックブレーキトルク以下の調整済のダイナミックブレーキトルク)を付与させ、駆動システム調整ステータスを「アクティブ」にセットすることができる(これは、駆動システム20が調整済のダイナミックブレーキトルクを付与していることを示す。)。後述するように、駆動システム調整ステータスは、サービスブレーキコントローラ40に伝達され、サービスブレーキプロセス200において参照される(図4)。
【0066】
ステップ140において、駆動システムコントローラ36が、サービスブレーキコントローラ40からの無効化コマンドがアクティブであると決定した場合(すなわち、ステップ140における質問に対する回答が「Yes」の場合)、駆動システムコントローラ36は、ステップ150および160をスキップする。その代わりに、駆動システムコントローラ36は、(ステップ180において)、ブレーキペダル44によって要求された完全に未調整のダイナミックブレーキトルクを付与し、駆動システム調整ステータスを「非アクティブ」に設定する。さらに、駆動システムコントローラ36が、ステップ150において、タイヤ対地摩擦条件が、ブレーキペダル44によって要求されるダイナミックブレーキトルクの値よりも小さいダイナミックブレーキトルクを必要としないと判断した場合(すなわち、ステップ150における質問に対する回答が「No」の場合)、駆動システムコントローラ36は、ステップ160をスキップし、上述したようなステップ180を実行する。すなわち、駆動システムコントローラ36は、(ステップ180において)、ブレーキペダル44によって要求される完全に未調整のダイナミックブレーキトルクを付与し、駆動システム調整ステータスを「非アクティブ」に設定する(これは、駆動システム20が未調整のダイナミックブレーキトルクを付与していることを示す。)。
【0067】
次に、図4を参照して、サービスブレーキコントローラ40により実行されるサービスブレーキプロセス200について説明する。ステップ210において、サービスブレーキコントローラ40は、ブレーキペダル44から(すなわち、操作者がブレーキペダル44を十分な距離で踏み込み、サービスブレーキ42を動作させることに応答して)、サービスブレーキ要求信号を受信する。次に、ステップ220において、サービスブレーキコントローラ40は、タイヤ対地摩擦条件を評価する(または、駆動システムコントローラ36から摩擦条件を受信する)。上述したように、コントローラ36および/またはコントローラ40は、車輪速度センサ46からのデータ、および車両10に取り付けられたジャイロセンサおよび/または加速度計からのデータに基づいて、ブレーキ事象中に車輪組立体16、18のいずれ(もしあれば)がロックまたはスリップしているかを決定することができる。コントローラ36、40は、そのセンサデータに基づいて、各車輪組立体16、18のタイヤ対地摩擦を計算することができる。
【0068】
ステップ230において、サービスブレーキコントローラ40は、ステップ220において決定されたタイヤ対地摩擦に基づいて、サービスブレーキシステム22が後車輪組立体16に付与し得るサービスブレーキトルクの最大許容値を決定することができる。サービスブレーキコントローラ40が、(サービスブレーキ42の初期付与時に車輪回転減速限界を超えることによって確立される)スリップまたはロックの重要度を決定した後、最大許容サービスブレーキトルクは、初期車輪減速中に計算された最大摩擦係数に基づいて計算されることができ、その後、実際の車両速度の割合として、各車輪速度に基づいて要求されるように調整される。
【0069】
ステップ240において、サービスブレーキコントローラ40は、タイヤ対地摩擦条件が、ブレーキペダル44によって要求されるサービスブレーキトルクの値よりも小さいサービスブレーキトルクを必要としているか否かを判断する。すなわち、サービスブレーキコントローラ40は、ステップ230において決定されたサービスブレーキトルクの最大許容値が、操作者によるブレーキペダル44の動作によって要求されるサービスブレーキトルクの値よりも小さいか否かを判断する。
【0070】
ステップ240において、サービスブレーキコントローラ40は、摩擦条件が要求されるサービスブレーキトルクの値よりも小さいサービスブレーキトルクを必要としていると判断した場合(すなわち、ステップ240における質問に対する回答が「Yes」の場合)、サービスブレーキコントローラ40は、(ステップ250において)、ステップ230において決定した許容サービスブレーキトルクの最大値が所定の最小サービスブレーキトルク未満であるか否かを判断する(所定の最小サービスブレーキトルクは、ゼロ以上となり得る)。許容サービスブレーキトルクの最大値が所定の最小値未満である場合(すなわち、ステップ250における質問に対する回答が「Yes」の場合)、サービスブレーキコントローラ40は、(ステップ255において)、駆動システム調整ステータスがアクティブであるか否かを判断する。上述したように、駆動システム調整ステータスは、駆動システムコントローラ36からサービスブレーキコントローラ40に伝達される。ステップ255において、サービスブレーキコントローラ40が、駆動システム調整ステータスがアクティブであると判断した場合(すなわち、ステップ255における質問に対する回答が「Yes」の場合)、サービスブレーキコントローラ40は、(ステップ260において)、サービスブレーキ42に未調整のサービスブレーキトルクを付与させ、サービスブレーキトルクを所定の最小トルクに保持させる。次に、ステップ265において、サービスブレーキコントローラ40は、無効化コマンドを非アクティブにすることによって、ダイナミックブレーキトルクの調整を可能にする。無効化コマンドを非アクティブにすることによって、駆動システムコントローラ36は、図3に示し、上述したプロセス100に従って、調整済または未調整のダイナミックブレーキトルクのいずれかを付与することができる。すなわち、無効化コマンドを非アクティブにすることにより、駆動システムコントローラ36は、ダイナミックブレーキが調整されるか調整されないかを、(プロセス100に従って)決定することができる。
【0071】
(a)サービスブレーキコントローラ40が、(ステップ250において)、許容サービスブレーキトルクの最大値が所定の最小値を超えていると判断した場合(すなわち、ステップ250における質問に対する回答が「No」の場合)、または(b)サービスブレーキコントローラ40が、(ステップ255において)、駆動システム調整ステータスが非アクティブであると判断した場合(すなわち、ステップ255における質問に対する回答が「No」の場合)のいずれかの場合、サービスブレーキコントローラ40は、(ステップ270において)、サービスブレーキ42に調整済のサービスブレーキトルクを付与させる。次に、ステップ275において、サービスブレーキコントローラ40は、無効化コマンドをアクティブにすることによって、ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化する。無効化コマンドをアクティブにすることによって、駆動システムコントローラ36は、ダイナミックブレーキトルクを調整するのを防止し、未調整のダイナミックブレーキトルクをそのまま許容する。
【0072】
ステップ240において、サービスブレーキコントローラ40は、摩擦条件がサービスブレーキトルクの要求された値よりも小さいサービスブレーキトルクを必要としていないと判断した場合(すなわち、ステップ240における質問に対する回答が「No」の場合)、サービスブレーキコントローラ40は、(ステップ280において)、サービスブレーキ42に、ブレーキペダル44によって要求された完全な値で未調整のサービスブレーキトルクを付与する。次に、ステップ285において、サービスブレーキコントローラ40は、(無効化コマンドが以前にアクティブであった場合)、無効化コマンドを非アクティブにすること、または(無効化コマンドが既に非アクティブであった場合)、無効化コマンドを非アクティブ状態に維持することによって、ダイナミックブレーキトルクの調整を可能にする。ステップ285において、ダイナミックブレーキトルクの調整を可能にすることによって、サービスブレーキコントローラ40は、必ずしもダイナミックブレーキトルクの調整を強制しないことを理解されたい。むしろ、ステップ285において、ダイナミックブレーキトルクの調整を可能にすることによって、サービスブレーキコントローラ40は、駆動システムコントローラ36がプロセス100に従って調整済または未調整のダイナミックブレーキトルクを付与するか否かを決定することを単に可能にしている。
【0073】
ダイナミックブレーキプロセス100およびサービスブレーキプロセス200は、ブレーキペダル44が動作されている限り、ブレーキ事象中、連続的にループしてもよい。
【0074】
図5A図5Cは、ブレーキ事象中の3つの異なる状態におけるサービスブレーキトルクおよびダイナミックブレーキトルクの分担を示す。図5Aは、状態1を示し、この状態では、未調整のサービスブレーキトルクおよび未調整のダイナミックブレーキトルクの双方が、ブレーキペダル44により要求される完全なブレーキトルク値で付与される。状態1において、利用可能な最大ブレーキトルク(すなわち、ロックまたはスリップすることなく、タイヤ対地摩擦条件が許容するブレーキトルクの最大値)は、完全な未調整のサービスブレーキトルクと完全な未調整のダイナミックブレーキトルクとの合計よりも大きい。状態1は、ダイナミックブレーキプロセス100(図3)のステップ180(すなわち、ステップ140における質問に対する回答が「Yes」の場合、またはステップ140および150における質問に対する回答の双方が「No」の場合)、およびサービスブレーキプロセス200(図4)のステップ280(すなわち、ステップ240における質問に対する回答が「No」の場合)に相当する。
【0075】
図5Bは、状態2を示し、この状態では、利用可能な最大ブレーキトルク(すなわち、ロックまたはスリップすることなく、タイヤ対地摩擦条件が許容するブレーキトルクの最大値)が状態1よりも小さく、所定の最小サービスブレーキトルクおよび調整済のダイナミックブレーキトルクのみを許容する。状態2は、ダイナミックブレーキプロセス100(図3)のステップ160(すなわち、ステップ140における質問に対する回答が「No」であり、ステップ150における質問に対する回答が「Yes」の場合)、およびサービスブレーキプロセス200(図4)のステップ260(すなわち、ステップ240、250および255における質問に対する回答の全てが「Yes」の場合)に相当する。
【0076】
図5Cは、状態3を示し、この状態では、利用可能な最大ブレーキトルク(すなわち、ロックまたはスリップすることなく、タイヤ対地摩擦条件が許容するブレーキトルクの最大値)が状態1より小さく、状態2より大きい。状態2において、摩擦条件は、完全な未調整のダイナミックブレーキトルクおよび調整済のサービスブレーキトルクを許容する。状態3は、ダイナミックブレーキプロセス100(図3)のステップ180(すなわち、ステップ140における質問に対する回答が「Yes」、またはステップ140および150における質問に対する回答の双方が「No」である場合)、およびサービスブレーキプロセス200(図4)のステップ270(すなわち、ステップ240における質問に対する回答が「Yes」であり、ステップ250および255の双方における質問に対する回答が「No」の場合)に相当する。
【0077】
以下に、例示的なブレーキ事象中のアンチロックブレーキ方式の例示的な適用を示す。操作者がブレーキペダル44を踏んだ際に車輪のスリップがない場合(すなわち、車両の速度と車輪の速度との間に差がない場合)、状態は状態1であり、コントローラ36、40は、完全なダイナミックブレーキトルクおよび完全なサービスブレーキトルクを付与する。ブレーキ中に比較的小さい車輪スリップがある場合(すなわち、車両の速度と車輪の速度との間の差が比較的小さい場合)、状態は状態3に遷移し、コントローラ36、40は、完全なダイナミックブレーキトルクおよび調整済のサービスブレーキトルクを付与する。比較的大きい車輪スリップがある場合(すなわち、車両の速度と車輪の速度との間の差が比較的大きい場合)、状態は状態2に遷移し、コントローラ36、40は、調整済のダイナミックブレーキトルクおよび最小サービスブレーキトルクを付与する。そして、再び車輪スリップが比較的小さいスリップの値まで減少する場合(すなわち、車両の速度と車輪の速度との間の差が比較的小さくなる場合)、状態は状態3に遷移する。車両10が完全に停止する前に、再びスリップが発生しない場合(すなわち、車両の速度と車輪の速度との間の差がゼロの場合)、状態は状態1に遷移する。
【0078】
任意の車輪にサービスブレーキトルクを付与しつつ、同時に同一の車輪に対するダイナミックブレーキトルクを調製することは好ましくなく、全体としてのブレーキ性能を低下させる可能性がある。上述したプロセス100、200を使用したアンチロックブレーキ方式は、1つのシステム(駆動システム20またはサービスブレーキシステム22のいずれか)のみが、任意の時点で所定の車輪に対するブレーキトルクを調整することを許容する。これにより、コントローラ36、40同士の間での限定的な調整のみで、スリップコントロールおよびアンチロックコントロールを改善することができる。さらに、サービスブレーキ42に対する調整を優先させることによって(すなわち、サービスブレーキトルクを調整している際に、ダイナミックブレーキトルクの調整を無効化することによって)、サービスブレーキ42の摩耗を低減することができる。
【0079】
本開示のアンチロックブレーキ方式のいくつかの構成において、サービスブレーキコントローラ40は、駆動システム20が既に所定の車輪でダイナミックブレーキトルクを調整または低減している場合、所定の車輪でサービスブレーキ42を無効化してもよい。この方式は、サービスブレーキが付与される前に、ダイナミックブレーキトルクが付与されている状況で適用され得る。例えば、ブレーキペダル44が最初に、ダイナミックブレーキを付与するのに十分な距離だけ踏み込まれ、ブレーキペダル44がサービスブレーキを付与するのに十分な距離だけ踏み込まれたときに、駆動システム20が既にダイナミックブレーキトルクを調整している状況では、サービスブレーキコントローラ40は、サービスブレーキを無効化してもよい。
【0080】
駆動システムコントローラ36およびサービスブレーキコントローラ40は、互いに信号通信する物理的に分離されたコントローラであるか、または駆動システムコントローラ36およびサービスブレーキコントローラ40は、単一の物理的コントローラの一部であり得ることを理解されたい。いくつかの構成において、単一のコントローラは、モータ38およびサービスブレーキ42を制御し、上述したようなプロセス100、200を実行することができる。いくつかの構成において、単一のコントローラは、モータ38およびサービスブレーキ42を制御し、プロセス100、200の組み合わせであるプロセスを実行することができる。
【0081】
車両10のいくつかの構成において、前車輪組立体18のサービスブレーキ42は、上述した後車輪組立体16のサービスブレーキ42の制御とは異なる方式で制御され得る(例えば、車両10が前車輪組立体18用のダイナミックブレーキを有さない構成において)。車両10が前車輪組立体18用のダイナミックブレーキを備える構成において、上述したプロセス100、200が適用され、前車輪組立体18のダイナミックブレーキおよび/またはサービスブレーキを制御することができる。
【0082】
サービスブレーキコントローラ40は、ダイナミックブレーキトルクの調整を選択的に無効化するように構成されていると上述したが、車両10のいくつかの構成において、駆動システムコントローラ36は、サービスブレーキトルクの調整を選択的に無効化にするように構成されてもよい。
【0083】
本出願において、以下の定義を含め、「コントロールモジュール」なる用語または「コントローラ」なる用語は、「回路」なる用語と置換され得る。「コントロールモジュール」なる用語または「コントローラ」なる用語は、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル、アナログまたはアナログ/デジタルの混合ディスクリート回路、デジタル、アナログまたはアナログ/デジタルの混合集積回路、組合せ論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、コードを実行するプロセッサ回路(共有、専用またはグループ)、プロセッサ回路によって実行されるコードを格納するメモリ回路(共有、専用またはグループ)、上記機能を提供する他の適切なハードウェア部品、またはシステムオンチップのような上記の一部または全ての組み合わせのいずれかを指すか、一部または含むことができる。
【0084】
コントロールモジュールまたはコントローラは、1つ以上のインタフェース回路を含んでもよい。いくつかの例において、インタフェース回路は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット、ワイドエリアネットワーク(WAN)またはそれらの組み合わせに接続される有線または無線のインタフェースを含んでもよい。本開示の任意の所定のコントロールモジュールまたはコントローラの機能は、インターフェース回路を介して接続される複数のコントロールモジュール同士の間で分散されてもよい。例えば、複数のモジュールは、ロードバランシングを可能にしてもよい。さらなる例において、サーバ(リモートまたはクラウドとしても知られる。)モジュールは、クライアントモジュールに代わって、いくつかの機能を達成してもよい。
【0085】
上記で使用されるコードなる用語は、ソフトウェア、ファームウェアおよび/またはマイクロコードを含み、プログラム、ルーチン、関数、クラス、データ構造および/またはオブジェクトを指すことがある。共有プロセッサ回路なる用語は、複数のモジュールからの一部または全てのコードを実行する単一のプロセッサ回路を包含する。グループプロセッサ回路なる用語は、追加のプロセッサ回路と組み合わせて、1つ以上のモジュールからの一部または全てのコードを実行するプロセッサ回路を包含する。複数のプロセッサ回路への言及は、個別のダイ上の複数のプロセッサ回路、単一のダイ上の複数のプロセッサ回路、単一のプロセッサ回路の複数のコア、単一のプロセッサ回路の複数のスレッドまたは上記の組み合わせを包含する。共有メモリ回路なる用語は、複数のモジュールからの一部または全てのコードを格納する単一のメモリ回路を包含する。グループメモリ回路なる用語は、追加のメモリと組み合わせて、1つ以上のモジュールからの一部または全てのコードを格納するメモリ回路を包含する。
【0086】
記憶回路なる用語は、コンピュータ可読媒体なる用語のサブセットである。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体なる用語は、媒体(搬送波上等)を伝播する一過性の電気または電磁信号を包含しないので、コンピュータ可読媒体なる用語は、有形かつ非一過性であると見なすことができる。非一時的な有形のコンピュータ可読媒体の非限定的な例は、不揮発性メモリ回路(フラッシュメモリ回路、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ回路またはマスク読み取り専用メモリ回路等)、揮発性メモリ回路(静的ランダムアクセスメモリ回路またはダイナミックランダムアクセスメモリ回路等)、磁気ストレージ媒体(アナログまたはデジタル磁気テープ、あるいはハードディスクドライブ等)および光ストレージ媒体(CD、DVDまたはブルーレイディスク等)である。
【0087】
本出願に記載された装置および方法は、汎用コンピュータを構成して作成された特殊目的コンピュータによって部分的または完全に実施され、コンピュータプログラムで具現化された1つ以上の特定の機能を実行してもよい。上述した機能ブロック、フローチャート構成要素および他の要素は、ソフトウェア仕様として機能し、これは熟練技術者またはプログラマーの日常作業によってコンピュータプログラムに変換され得る。
【0088】
コンピュータプログラムは、少なくとも1つの非一過性で有形のコンピュータ可読媒体に格納されるプロセッサ実行可能命令を含む。また、コンピュータプログラムは、格納されたデータを含むかまたはそれに依存してもよい。コンピュータプログラムは、特殊目的コンピュータのハードウェアと相互作用する基本入力/出力システム(BIOS)、特殊目的コンピュータの特定のデバイスと相互作用するデバイスドライバ、1つ以上のオペレーティングシステム、ユーザアプリケーション、バックグラウンドサービス、バックグラウンドアプリケーション等を包含してもよい。
【0089】
コンピュータプログラムは、(i)HTML(ハイパーテキストマークアップ言語)、XML(拡張可能マークアップ言語)またはJSON(JavaScript Object Notation)のような解析対象の記述テキスト、(ii)アセンブリコード、(iii)コンパイラによってソースコードから生成されるオブジェクトコード、(iv)インタープリタによる実行用のソースコード、(v)ジャストインタイムコンパイラによるコンパイルおよび実行用のソースコード等含んでもよい。一例として、ソースコードは、C、C++、C#、Objective-C、Swift(登録商標)、Haskell、Go、SQL、R、Lisp、Java(登録商標)、Fortran、Perl、Pascal、Curl、OCaml、Javascript(登録商標)、HTML5(Hypertext Markup Language 5th revision)、Ada、ASP(Active Server Pages)、PHP(PHP:Hypertext Preprocessor)、Scala、Eiffel、Smalltalk(登録商標)、Erlang、Ruby、Flash(登録商標)、Visual Basic(登録商標)、Lua、MATLAB(登録商標)、SIMULINK(登録商標)およびPython(登録商標)を含む言語からの構文を使用して記述されてもよい。
【0090】
前述の実施形態の説明は、例示および説明の目的で提供されるものである。それは、網羅的であること、または開示を制限することを意図していない。特定の実施形態の個別の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されないが、該当する場合、交換可能であり、特に図示または説明されていなくても、選択された実施形態において使用可能である。また、同一のものを多くの方法で変更することができる。そのような変更は、本開示からの逸脱とみなされることはなく、そのような全ての変更は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C