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特許7515531コンピュータシステム、処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-04
(45)【発行日】2024-07-12
(54)【発明の名称】コンピュータシステム、処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/215 20190101AFI20240705BHJP
   G06F 16/29 20190101ALI20240705BHJP
【FI】
G06F16/215
G06F16/29
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022065375
(22)【出願日】2022-04-11
(65)【公開番号】P2023155810
(43)【公開日】2023-10-23
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【弁理士】
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】生駒 卓士
【審査官】酒井 恭信
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-022066(JP,A)
【文献】特開2010-286376(JP,A)
【文献】特開2021-119548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00 - 16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る地理的領域における、最新の地物住所である最新地物住所と前記最新地物住所に対応する位置座標である最新地物座標との組み合わせを複数含む最新地図データベースと、同じ前記地理的領域における、前記最新地物住所とは異なる地物住所である参照用地物住所と前記参照用地物住所に対応する位置座標である参照用地物座標との組み合わせを複数含む参照用データベースとの双方を用いて、入力された地物住所から最新の地物住所を推定する制御部を備え
前記制御部が、
前記最新地図データベースを用いて、前記入力された地物住所に対応する前記最新地物住所を特定する事前特定処理を行い、
前記事前特定処理で特定された前記最新地物住所と前記入力された地物住所との一致の度合いである一致度が所与の基準を満たさない場合に、
(i)前記参照用データベースを用いて、前記入力された地物住所に対応する前記参照用地物住所および前記参照用地物座標を特定し、
(ii)前記最新地図データベースを用いて、前記特定された参照用地物座標に対応する前記最新地物座標を特定し、
(iii)前記特定された最新地物座標に対応する前記最新地物住所を、前記入力された地物住所に対応する、前記最新の地物住所として推定する、
コンピュータシステム。
【請求項2】
前記制御部が、
前記一致度が前記所与の基準を満たす場合には、前記参照用データベースを用いることなく、前記事前特定処理で特定された前記最新地物住所を、前記入力された地物住所に対応する、前記最新の地物住所として推定する、
請求項に記載のコンピュータシステム。
【請求項3】
前記最新地図データベースが、第1時期における前記最新地物住所および前記最新地物座標の個々の組合せを示し、
前記参照用データベースが、前記第1時期よりも前の第2時期における前記参照用地物住所および前記参照用地物座標の個々の組合せを示
請求項1又は2に記載のコンピュータシステム。
【請求項4】
或る地理的領域における、最新の地物住所である最新地物住所と前記最新地物住所に対応する位置座標である最新地物座標との組み合わせを複数含む最新地図データベースと、同じ前記地理的領域における、前記最新地物住所とは異なる地物住所である参照用地物住所と前記参照用地物住所に対応する位置座標である参照用地物座標との組み合わせを複数含む参照用データベースとの双方を用いて、入力された地物住所から最新の地物住所を推定する、処理方法であって、
コンピュータが、
前記最新地図データベースを用いて、前記入力された地物住所に対応する前記最新地物住所を特定する事前特定処理を行い、
前記事前特定処理で特定された前記最新地物住所と前記入力された地物住所との一致の度合いである一致度が所与の基準を満たさない場合に、
(i)前記参照用データベースを用いて、前記入力された地物住所に対応する前記参照用地物住所および前記参照用地物座標を特定し、
(ii)前記最新地図データベースを用いて、前記特定された参照用地物座標に対応する前記最新地物座標を特定し、
(iii)前記特定された最新地物座標に対応する前記最新地物住所を、前記入力された地物住所に対応する、前記最新の地物住所として推定する、
処理方法。
【請求項5】
コンピュータを、
或る地理的領域における、最新の地物住所である最新地物住所と前記最新地物住所に対応する位置座標である最新地物座標との組み合わせを複数含む最新地図データベースと、同じ前記地理的領域における、前記最新地物住所とは異なる地物住所である参照用地物住所と前記参照用地物住所に対応する位置座標である参照用地物座標との組み合わせを複数含む参照用データベースとの双方を用いて、入力された地物住所から最新の地物住所を推定する制御部、
として機能させるプログラムであって、
前記制御部が、
前記最新地図データベースを用いて、前記入力された地物住所に対応する前記最新地物住所を特定する事前特定処理を行い、
前記事前特定処理で特定された前記最新地物住所と前記入力された地物住所との一致の度合いである一致度が所与の基準を満たさない場合に、
(i)前記参照用データベースを用いて、前記入力された地物住所に対応する前記参照用地物住所および前記参照用地物座標を特定し、
(ii)前記最新地図データベースを用いて、前記特定された参照用地物座標に対応する前記最新地物座標を特定し、
(iii)前記特定された最新地物座標に対応する前記最新地物住所を、前記入力された地物住所に対応する、前記最新の地物住所として推定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面はコンピュータシステム、処理方法、プログラム、および/またはデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、住所情報に基づいて位置座標を対応づける座標付与装置が記載されている。この装置は、住所情報と位置座標とを予め対応づけたデータベースを参照して、入力された住所情報に対応する代表点の位置座標を、部分一致も許容して検索することにより特定する座標特定部と、位置座標の特定結果の正確性を表す正確性指標を設定する指標設定部と、位置座標および正確性指標とを出力する出力部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4249929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一側面は、現在の地物住所を精度良く推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係るコンピュータシステムは、或る地理的領域における、最新の地物住所である最新地物住所と前記最新地物住所に対応する位置座標である最新地物座標との組み合わせを複数含む最新地図データベースと、同じ前記地理的領域における、前記最新地物住所とは異なる地物住所である参照用地物住所と前記参照用地物住所に対応する位置座標である参照用地物座標との組み合わせを複数含む参照用データベースとの双方を用いて、入力された地物住所から最新の地物住所を推定する制御部を備え、前記制御部が、前記最新地図データベースを用いて、前記入力された地物住所に対応する前記最新地物住所を特定する事前特定処理を行い、前記事前特定処理で特定された前記最新地物住所と前記入力された地物住所との一致の度合いである一致度が所与の基準を満たさない場合に、(i)前記参照用データベースを用いて、前記入力された地物住所に対応する前記参照用地物住所および前記参照用地物座標を特定し、(ii)前記最新地図データベースを用いて、前記特定された参照用地物座標に対応する前記最新地物座標を特定し、(iii)前記特定された最新地物座標に対応する前記最新地物住所を、前記入力された地物住所に対応する、前記最新の地物住所として推定する
【発明の効果】
【0006】
本開示の一側面によれば、現在の地物住所を精度良く推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】住所管理システムの機能構成の一例を示す図である。
図2】住所管理システムで用いられるコンピュータのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】住所管理システムによる処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】最新の建物地図を用いた照合の一例を示すフローチャートである。
図5】過去の建物地図と最新の建物地図とを用いた照合の一例を示すフローチャートである。
図6】最新の土地地図と最新の建物地図とを用いた照合の一例を示すフローチャートである。
図7】過去の土地地図と最新の建物地図とを用いた照合の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら本開示での実施形態を詳細に説明する。図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
[システムの概要]
一例では、本開示に係るコンピュータシステムを住所管理システム10に適用する。住所管理システム10は、入力された地物住所から現在の地物住所を推定するコンピュータシステムである。
【0010】
地物とは、地上に存在する任意の有体物または無体物である。地物は自然物でも人工物でもよい。例えば、地物は、山地、農地、住宅地、更地、河川、湖、海、観光地、道路、鉄道、建物、公園、塔、信号機、踏切、横断歩道、歩道橋、浮標などを含み得る。無体物である地物の例として、任意の目的で設定された区域(例えば、撮影禁止区域、一時的な進入禁止区域など)、イベントが開催される区域、集合場所、撮影スポットなどが挙げられる。
【0011】
本開示において、地物住所とは地物の場所を特定する識別子であり、行政区画の名称を用いて表現される。例えば、地物住所は都道府県名、市区町村名、町名、および所定の番号体系を用いて表現される。地物住所は、建物の場所を特定する建物住所でもよいし、土地の場所を特定する土地住所でもよい。建物住所は、人為的に構築された任意の種類および任意の大きさの建物の場所を示す。土地住所は自然のまたは人工の土地の場所を示す。日本では、建物住所は住居表示と地番方式の住所とのいずれかの方式で表記される。住居表示は、例えば末尾が「11番5号」のように、街区符号および住居番号を用いる表記方式をいう。地番方式の住所は、例えば末尾が「1230番地」のように、地番を用いる表記方式をいう。日本では、土地住所は地番を用いた方式で表記される。建物住所と土地住所とは、一致する場合もあれば一致しない場合もある。建物が存在しない場所には、土地住所は存在するが建物住所は存在しない。建物の領域と土地の単位とが一致しない場合も多い。例えば、1筆の土地に複数の建物が存在する場合には、一つの土地住所(地番)に複数の建物住所が対応する。ひとまとまりの建物が2筆以上の土地にわたって建てられた場合には、一つの建物住所に複数の土地住所(地番)が対応する。
【0012】
地物住所は、建物の建築、解体、建替え、行政区画の変更(例えば、市町村の合併、地番方式の住所から住居表示への移行、町名または字名の変更、町界または字界の変更など)、区画整理、土地の分筆または合筆などのような様々な要因によって、時代の経過と共に変わり得る。そのため、ユーザが管理する住所データが古くなって現実と合わなくなることがある。このような古い住所データを修正または更新してデータ品質を向上させる住所クレンジングが知られている。最新の地物住所を示す地図情報を用いた住所クレンジングにより、入力された地物住所から現在の地物住所を推定したり、入力された地物住所が現実とあっているか否かを判定したりすることはできる。しかし、入力された地物住所(以下ではこれを「対象住所」ともいう)が設定された時期と、最新の地図情報が用意された時期との関係によっては、最新の地図情報だけでは、対象住所と現在の地物住所とのマッチングには精度の限界がある。
【0013】
住所管理システム10は最新の地図情報だけではなく、該最新の地図情報とは少なくとも一部が異なる別の地図情報も参照して、入力された地物住所から現在の地物住所を推定する。複数の種類の地図情報を参照することで、現在の地物住所をより精度良く推定することが可能になる。一例では、住所管理システム10は、個々の最新の地物住所を示す第1地図情報を記憶する第1データベースと、第1地図情報とは少なくとも一部が異なる第2地図情報を記憶する第2データベースとの双方を参照して、入力された地物住所から現在の地物住所を推定する。
【0014】
[システムの構成]
図1は住所管理システム10の機能構成の一例を示す図である。一例では、住所管理システム10は通信ネットワークを介してデータベース群20にアクセスしてデータを読み取ったり書き込んだりすることができる。住所管理システム10はパーソナルコンピュータによって構成されてもよいし、業務用サーバなどの大型のコンピュータによって構成されてもよい。住所管理システム10は一つまたは複数のコンピュータにより構成され得る。複数のコンピュータが用いられる場合には、通信ネットワークを介してこれらのコンピュータが互いに接続されることで住所管理システム10が構成される。
【0015】
一例では、住所管理システム10は機能モジュールとして取得部11、照合部12、および出力部13を備える。これらの機能モジュールはいずれも、制御部の少なくとも一部を構成する。取得部11は、住所リストで示される個々の地物住所を対象住所として取得する機能モジュールである。照合部12はその対象住所から現在の地物住所を推定する機能モジュールである。出力部13はその推定結果、すなわちクレンジングされた住所リストを出力する機能モジュールである。
【0016】
データベース群20は、住所管理システム10において用いられるデータを記憶するデータベースの集合である。データベースとは、電子データを永続的に記憶する非一時的な記憶媒体または記憶装置である。それぞれのデータベースは住所管理システム10の一部として構築されてもよいし、住所管理システム10とは別のコンピュータシステムに設けられてもよい。
【0017】
一例では、データベース群20は最新の建物地図データベース21、過去の建物地図データベース22、最新の公図データベース23、および過去の公図データベース24を含む。これらのデータベースのいずれも、個々の地物住所を示す地図情報を記憶するデータベースの一例である。しかし、その地図情報の少なくとも一部は個々のデータベースの間で互いに異なる。一例では、個々のデータベースの地図情報は、地物住所および地物座標の個々の組合せを示す。地物座標とは地物の地理的位置を示す値であり、例えば、地物の中心などのような代表的な位置を示す。地物座標は緯度および経度を用いて表現されてもよいし、他の座標系に従って設定されてもよい。個々のデータベースにおいて地図情報の各データレコードは、例えば、地物住所「福岡県北九州市戸畑区中原新町3番1号」と地物座標「緯度:33.90、経度:130.84」とのような組合せを示す。以下では、地物座標の例として、建物の地理的位置を示す建物座標と、土地の地理的位置を示す土地座標とを示す。
【0018】
建物地図データベースは、個々の建物住所を示す建物地図情報を記憶する。一例では、建物地図情報は、建物住所および建物座標の個々の組合せを示す。建物地図情報の例として住宅地図が挙げられる。最新の建物地図データベース21は、最新の建物住所および最新の建物座標の個々の組合せを示す最新の建物地図情報を記憶する。過去の建物地図データベース22は、過去の建物住所および過去の建物座標の個々の組合せを示す過去の建物地図情報を記憶する。最新の建物地図情報が用意された時期を第1時期とすると、過去の建物地図情報が用意された時期は、第1時期よりも前の第2時期である。最新の建物地図情報と過去の建物地図情報との間で住所および座標が変わらない建物が存在し得ることに留意されたい。
【0019】
公図データベースは、個々の土地住所を示す公図、地籍図、土地改良図、法務局作成地図などの情報を記憶する。本開示において「公図」と言うときには、公図だけでなく、地籍図、土地改良図、法務局作成地図などを含むこともあり、また、「公図情報」と言うときには、公図だけでなく、地籍図、土地改良図、法務局作成地図などの情報を含むこともある。一例では、公図情報は、土地住所および土地座標の個々の組合せを示す。日本での公図情報の例としてブルーマップ(登録商標)が挙げられる。最新の公図データベース23は、最新の土地住所および最新の土地座標の個々の組合せを示す最新の公図情報を記憶する。過去の公図データベース24は、過去の土地住所および過去の土地座標の個々の組合せを示す過去の公図情報を記憶する。最新の公図情報が用意された時期を第1時期とすると、過去の公図情報が用意された時期は、第1時期よりも前の第2時期である。最新の公図情報と過去の公図情報との間で住所および座標が変わらない土地が存在し得ることに留意されたい。
【0020】
データベース群20内の各データベースのデータレコードは、地物住所および地物座標に加えて他のデータ項目を含んでもよい。その追加のデータ項目の例として、建物の居住者または利用者の氏名と、土地の所有者または利用者の氏名と、建物の名称、種別(戸建住宅、集合住宅、店舗、店舗兼住宅など)、形状、または位置と、電話番号とが挙げられる。
【0021】
図2は、住所管理システム10で用いられるコンピュータ110のハードウェア構成の一例を示す図である。例えば、コンピュータ110は制御回路100を有する。一例では、制御回路100は、一つまたは複数のプロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信ポート104と、入出力ポート105とを有する。プロセッサ101はオペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する。ストレージ103はハードディスク、不揮発性の半導体メモリ、または取り出し可能な媒体(例えば、磁気ディスク、光ディスクなど)の記憶媒体で構成され、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを記憶する。メモリ102は、ストレージ103からロードされたプログラム、またはプロセッサ101による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ101は、メモリ102と協働してプログラムを実行することで、個々の機能モジュールとして機能する。通信ポート104は、プロセッサ101からの指令に従って、通信ネットワークNWを介して他の装置との間でデータ通信を行う。入出力ポート105は、プロセッサ101からの指令に従って、キーボード、マウス、モニタ、タッチパネルなどの入出力装置(ユーザインタフェース)との間で電気信号の入出力を実行する。
【0022】
コンピュータ110を住所管理システム10の制御部として機能させるためのプログラムは、住所管理システム10の各機能モジュールを実現するためのプログラムコードを含む。プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの非一時的な記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供されたプログラムはストレージ103に記憶される。プロセッサ101がメモリ102と協働してそのプログラムを実行することで、制御部、すなわち個々の機能モジュールが実現する。
【0023】
一例では、住所管理システム10は、データベース群20内の各種のデータを第1制御部(例えば照合部12)からの指示に応答して参照する参照ステップを、該第1制御部とは異なる第2制御部に実行させるプログラムを実行する。例えば、このプログラムはアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API)として実装される。第1制御部および第2制御部はいずれも機能モジュールであり、プロセッサ上で実現される。第1制御部が実行されるプロセッサと第2制御部が実行されるプロセッサとが同じでもよいし異なってもよい。例えば、第1制御部および第2制御部の少なくとも一つはプロセッサ101上で実現される。
【0024】
[システムでの処理手順]
図3図7を参照しながら、住所管理システム10による処理手順の一例を説明する。図3はその処理手順の一例を処理フローS1として示すフローチャートである。図4図7はいずれも、個々の照合処理の一例を示すフローチャートである。図4は最新の建物地図を用いた照合を示す。図5は過去の建物地図と最新の建物地図とを用いた照合を示す。図6は最新の土地地図と最新の建物地図とを用いた照合を示す。図7は過去の土地地図と最新の建物地図とを用いた照合を示す。
【0025】
以下では、対象住所が建物住所であるとして処理フローS1を説明する。処理フローS1では、住所管理システム10は最新の建物地図データベース21を第1データベースとして用い、最新の建物地図情報を第1地図情報として処理する。したがって、第1地物住所は最新の建物住所であり、第1地物座標は最新の建物座標である。更に、住所管理システム10は過去の建物地図データベース22、最新の公図データベース23、および過去の公図データベース24を第2データベースとして用い、過去の建物地図情報、最新の公図情報、および過去の公図情報を第2地図情報として処理する。第2地図情報が過去の建物地図情報である場合には、第2地物住所は過去の建物住所であり、第2地物座標は過去の建物座標である。第2地図情報が最新の公図情報である場合には、第2地物住所は最新の土地住所であり、第2地物座標は最新の土地座標である。第2地図情報が過去の公図情報である場合には、第2地物住所は過去の土地住所であり、第2地物座標は過去の土地座標である。
【0026】
ステップS11では、取得部11が住所リストを取得し、この住所リストで示される個々の建物住所を対象住所として受け付ける。例えば、取得部11は、住所管理システム10を利用する個人またはグループであるユーザによって指定された住所リストをユーザ端末から受信してもよいし、処理されるべき住所リストを所定のデータベースから読み出してもよい。
【0027】
以下では、住所リストの各行をレコードといい、1レコードが一つの建物住所(対象住所)を示すとする。各レコードは追加のデータ項目を含んでもよい。追加のデータ項目の例として、居住者、所有者、利用者などの氏名と、電話番号と、建物の名称、種別、形状、または位置とが挙げられる。
【0028】
ステップS12では、照合部12がその住所リストを最新の建物地図情報と照合する。図4を参照しながらその処理を説明する。
【0029】
ステップS121では、照合部12は一つの対象住所を住所リストから選択する。
【0030】
ステップS122では、照合部12は最新の建物地図情報を参照して、その対象住所に対応する最新の建物住所を特定する。照合部12は最新の建物地図データベース21にアクセスして、対象住所との文字列の一致度が最も高い最新の建物住所を特定する。照合部12は対象住所と完全に一致する最新の建物住所を特定するかもしれないし、対象住所の一部と一致する最新の建物住所を特定するかもしれない。
【0031】
ステップS123では、照合部12は特定された最新の建物住所の精度を推定する。この精度は、最新の建物住所が実際に現在の建物住所である確からしさを示す指標をいう。精度の設定方法および表現方法は任意の方針で設計されてよい。一例では、照合部12はその精度として、住所の階層に対応する以下の5段階のレベルを設定する。レベル0は完全一致を示し、他のレベルは部分一致を示す。レベル0からレベル4に移るに伴って精度が低くなっていく。
・レベル0:最新の建物住所が住居番号または地番まで対象住所と完全に一致する。
・レベル1:最新の建物住所が街区符号まで対象住所と一致する。
・レベル2:最新の建物住所が町名まで対象住所と一致する。
・レベル3:最新の建物住所が市区町村名まで対象住所と一致する。
・レベル4:最新の建物住所が都道府県名のみ対象住所と一致する。
【0032】
例えば対象住所が「福岡県X市Y町1番1号」であるとする。最新の建物地図データベース21から最新の建物住所として「福岡県X市Y町1番1号」を特定した場合には、照合部12は精度をレベル0と推定する。最新の建物住所として「福岡県X市Y町1番2号」を特定した場合には、照合部12は精度をレベル1と推定する。最新の建物住所として「福岡県X市Y町2番1号」を特定した場合には、照合部12は精度をレベル2と推定する。最新の建物住所として「福岡県X市Z町4番1号」を特定した場合には、照合部12は精度をレベル3と推定する。最新の建物住所として「福岡県P市Q区R町1番1号」を特定した場合には、照合部12は精度をレベル4と推定する。
【0033】
照合部12は、建物住所以外の追加のデータ項目(氏名、電話番号、建物の名称、種別、形状、または位置など)に基づいて、推定された精度を調整してもよい。例えば、照合部12は対象住所に対応する追加のデータ項目と、最新の建物住所に対応する追加のデータ項目とが一致する場合に、推定された精度を所定量(例えば1段階)だけ上げてもよい。氏名について、照合部12は、個人名の場合には、姓名のうちいずれか一方のみが一致した場合も「一致」とみなしてもよいし、法人名の場合には、「株式会社」、「一般社団法人」などの法人格を除いた名称のみが一致した場合も「一致」とみなしてもよい。
【0034】
ステップS124で示すように、照合部12は住所リストのすべての対象住所について最新の建物地図情報との照合を実行する。未処理の対象住所が存在する場合には(ステップS124においてNO)、処理はステップS121に戻り、照合部12は次の対象住所を住所リストから選択し、その対象住所についてステップS122,S123を実行する。すべての対象住所を処理した場合には(ステップS124においてYES)、照合部12はステップS12を終了する。一例では、照合部12はステップS12を実行して、対象住所と、特定された最新の建物住所と、推定された精度との対応関係を住所リストの各レコードに含める。精度を調整した場合には、照合部12はその調整の理由(例えば、住所リストと最新の建物地図情報との間で一致した追加のデータ項目)を更にレコードに含めてもよい。
【0035】
図3に戻って、ステップS13では、照合部12が、最新の建物住所の精度が低いレコードが存在するか否かを判定する。照合部12はそれぞれのレコードについて精度が所与の基準を満たすか否かを判定する。照合部12は、精度が基準を満たすレコード、すなわち、精度が高いレコードについては、特定された最新の建物住所を現在の建物住所として推定する。一方、精度が基準を満たさないレコード、すなわち、精度が低いレコードについては、照合部12はその推定を保留し、後続の処理において第2地図情報を更に参照して現在の建物住所を推定する。上記の例のように精度がレベル0~レベル4の5段階で示される場合には、所与の基準は「精度がレベル0であること」であってもよい。この場合には、照合部12は精度がレベル1~レベル4のいずれかであるレコードを、精度が低いレコードとして判定する。別の例として所与の基準が「精度がレベル0またはレベル1であること」である場合には、照合部12は精度がレベル2~レベル4のいずれかであるレコードを、精度が低いレコードとして判定する。
【0036】
すべてのレコードについて精度が基準を満たす場合には(ステップS13においてNO)、後述するステップS14~S18が省略されて、処理はステップS19に進む。一方、精度が低いレコードが存在する場合には(ステップS13においてYES)、処理はステップS14に進む。
【0037】
ステップS14では、照合部12が過去の建物地図情報と最新の建物地図情報とを用いて追加の照合を実行する。図5を参照しながらその処理を説明する。
【0038】
ステップS141では、照合部12は推定を保留した一つの対象住所を選択する。
【0039】
ステップS142では、照合部12は過去の建物地図情報を参照して、その対象住所に対応する過去の建物住所を特定する。照合部12は過去の建物地図データベース22にアクセスして、対象住所との文字列の一致度が最も高い過去の建物住所を特定する。照合部12は対象住所と完全に一致する過去の建物住所を特定するかもしれないし、対象住所の一部と一致する過去の建物住所を特定するかもしれない。部分一致の場合には、照合部12は複数の過去の建物住所を特定するかもしれない。この場合には、照合部12は追加のデータ項目に基づいて、その複数の候補から一つの建物住所を選択してもよい。
【0040】
ステップS143では、照合部12は、特定された過去の建物住所に対応する過去の建物座標を取得する。
【0041】
ステップS144では、照合部12は最新の建物地図情報を参照して、取得された過去の建物座標に対応する最新の建物座標を特定する。照合部12は最新の建物地図データベース21にアクセスして、過去の建物座標と一致するかまたは過去の建物座標に最も近い最新の建物座標を特定する。照合部12は、過去の建物座標に最も近い最新の建物座標として複数の座標を特定するかもしれない。この場合には、照合部12は追加のデータ項目に基づいて、その複数の候補から一つの最新の建物座標を選択してもよい。
【0042】
ステップS145では、照合部12は、特定された最新の建物座標に対応する最新の建物住所を取得する。
【0043】
ステップS146では、照合部12はステップS123と同様に、取得された最新の建物住所の精度を推定する。照合部12はステップS123と同様にその精度を調整してもよい。
【0044】
ステップS147で示すように、照合部12は推定を保留したすべての対象住所について、過去の建物地図情報および最新の建物地図情報を用いた追加の照合を実行する。未処理の対象住所が存在する場合には(ステップS147においてNO)、処理はステップS141に戻る。照合部12は保留中の次の対象住所についてステップS141~S146を実行する。保留中のすべての対象住所を処理した場合には(ステップS147においてYES)、照合部12はステップS14を終了する。一例では、照合部12はステップS14を実行して、対象住所と、最終的に特定された最新の建物住所と、最終的に推定された精度との対応関係を住所リストの各レコードに含める。この結果、保留中の対象住所のレコードについては最新の建物住所と精度とが更新される。
【0045】
図3に戻って、ステップS15では、照合部12が、最新の建物住所の精度が低いレコードが存在するか否かを判定する。照合部12は保留中のレコードについて、ステップS13と同様の手法で、精度が所与の基準を満たすか否かを判定する。照合部12は、精度が基準を満たすレコード(精度が高いレコード)については、ステップS145において取得された最新の建物住所を現在の建物住所として推定する。一方、精度が基準を満たさないレコード(精度が低いレコード)については、照合部12はその推定を更に保留し、後続の処理において別の第2地図情報を参照して現在の建物住所を推定する。
【0046】
保留していたすべてのレコードについて精度が基準を満たす場合には(ステップS15においてNO)、後述するステップS16~S18が省略されて、処理はステップS19に進む。一方、精度が低いレコードが存在する場合には(ステップS15においてYES)、処理はステップS16に進む。
【0047】
ステップS16では、照合部12が最新の公図情報と最新の建物地図情報とを用いて追加の照合を実行する。図6を参照しながらその処理を説明する。
【0048】
ステップS161では、照合部12は推定を保留している一つの対象住所を選択する。
【0049】
ステップS162では、照合部12は最新の公図情報を参照して、その対象住所に対応する最新の土地住所を特定する。照合部12は最新の公図データベース23にアクセスして、対象住所との文字列の一致度が最も高い最新の土地住所を特定する。照合部12は対象住所と完全に一致する最新の土地住所を特定するかもしれないし、対象住所の一部と一致する最新の土地住所を特定するかもしれない。部分一致の場合には、照合部12は複数の最新の土地住所を特定するかもしれない。この場合には、照合部12は追加のデータ項目に基づいて、その複数の候補から一つの土地住所を選択してもよい。
【0050】
ステップS163では、照合部12は特定された最新の土地住所に対応する最新の土地座標を取得する。
【0051】
ステップS164では、照合部12は最新の建物地図情報を参照して、取得された最新の土地座標に対応する最新の建物座標を特定する。照合部12は最新の建物地図データベース21にアクセスして、最新の土地座標と一致するかまたは最新の土地座標に地理的距離が最も近い最新の建物座標を特定する。照合部12は、最新の土地座標に地理的距離が最も近い最新の建物座標として複数の座標を特定するかもしれない。この場合には、照合部12は追加のデータ項目に基づいて、その複数の候補から一つの最新の建物座標を選択してもよい。例えば、照合部12は追加のデータ項目として建物の種別(戸建住宅、集合住宅、店舗、店舗兼住宅)に基づいて、複数の候補から戸建住宅の建物座標を選択してもよい。
【0052】
ステップS165では、照合部12は特定された最新の建物座標に対応する最新の建物住所を取得する。
【0053】
ステップS166では、照合部12はステップS123と同様に、取得された最新の建物住所の精度を推定する。照合部12はステップS123と同様にその精度を調整してもよい。
【0054】
ステップS167で示すように、照合部12は推定を保留しているすべての対象住所について、最新の公図情報および最新の建物地図情報を用いた追加の照合を実行する。未処理の対象住所が存在する場合には(ステップS167においてNO)、処理はステップS161に戻る。照合部12は保留中の次の対象住所についてステップS161~S166を実行する。保留中のすべての対象住所を処理した場合には(ステップS167においてYES)、照合部12はステップS16を終了する。一例では、照合部12はステップS16を実行して、対象住所と、最終的に特定された最新の建物住所と、最終的に推定された精度との対応関係を住所リストの各レコードに含める。この結果、保留中の対象住所のレコードについては最新の建物住所と精度とが更新される。
【0055】
図3に戻って、ステップS17では、照合部12が、最新の建物住所の精度が低いレコードが存在するか否かを判定する。照合部12は保留中のレコードについて、ステップS13と同様の手法で、精度が所与の基準を満たすか否かを判定する。照合部12は、精度が基準を満たすレコード(精度が高いレコード)については、ステップS165において取得された最新の建物住所を現在の建物住所として推定する。一方、精度が基準を満たさないレコード(精度が低いレコード)については、照合部12はその推定を更に保留し、後続の処理において更に別の第2地図情報を参照して現在の建物住所を推定する。
【0056】
保留していたすべてのレコードについて精度が基準を満たす場合には(ステップS17においてNO)、後述するステップS18が省略されて、処理はステップS19に進む。一方、精度が低いレコードが存在する場合には(ステップS17においてYES)、処理はステップS18に進む。
【0057】
ステップS18では、照合部12が過去の公図情報と最新の建物地図情報とを用いて追加の照合を実行する。図7を参照しながらその処理を説明する。
【0058】
ステップS181では、照合部12は推定を保留している一つの対象住所を選択する。
【0059】
ステップS182では、照合部12は過去の公図情報を参照して、その対象住所に対応する過去の土地住所を特定する。照合部12は過去の公図データベース24にアクセスして、対象住所との文字列の一致度が最も高い過去の土地住所を特定する。照合部12は対象住所と完全に一致する過去の土地住所を特定するかもしれないし、対象住所の一部と一致する過去の土地住所を特定するかもしれない。部分一致の場合には、照合部12は複数の過去の土地住所を特定するかもしれない。この場合には、照合部12は追加のデータ項目に基づいて、その複数の候補から一つの土地住所を選択してもよい。
【0060】
ステップS183では、照合部12は特定された過去の土地住所に対応する過去の土地座標を取得する。
【0061】
ステップS184では、照合部12は最新の建物地図情報を参照して、取得された過去の土地座標に対応する最新の建物座標を特定する。照合部12は最新の建物地図データベース21にアクセスして、過去の土地座標と一致するかまたは過去の土地座標に地理的距離が最も近い最新の建物座標を特定する。照合部12は、過去の土地座標に地理的距離が最も近い最新の建物座標として複数の座標を特定するかもしれない。この場合には、照合部12は追加のデータ項目に基づいて、その複数の候補から一つの最新の建物座標を選択してもよい。例えば、照合部12は追加のデータ項目として建物の種別(戸建住宅、集合住宅、店舗、店舗兼住宅)に基づいて、複数の候補から戸建住宅の建物座標を選択するようにしてもよい。
【0062】
ステップS185では、照合部12は特定された最新の建物座標に対応する最新の建物住所を取得する。
【0063】
ステップS186では、照合部12はステップS123と同様に、取得された最新の建物住所の精度を推定する。照合部12はステップS123と同様にその精度を調整してもよい。
【0064】
ステップS187で示すように、照合部12は推定を保留しているすべての対象住所について、過去の公図情報および最新の建物地図情報を用いた追加の照合を実行する。未処理の対象住所が存在する場合には(ステップS187においてNO)、処理はステップS181に戻る。照合部12は保留中の次の対象住所についてステップS181~S186を実行する。保留中のすべての対象住所を処理した場合には(ステップS187においてYES)、照合部12はステップS18を終了する。一例では、照合部12はステップS18を実行して、対象住所と、最終的に特定された最新の建物住所と、最終的に推定された精度との対応関係を住所リストの各レコードに含める。この結果、保留中の対象住所のレコードについては最新の建物住所と精度とが更新される。
【0065】
図3に戻り、ステップS19では、出力部13がクレンジングされた住所リストを出力する。出力部はその住所リストをユーザ端末に向けて送信してもよいし、所定のデータベースに格納してもよい。一例では、クレンジングされた住所リストの個々のレコードは、入力された建物住所(対象住所)と、推定された現在の建物住所と、精度とを示す。ユーザはこの住所リストを参照することで、自身が管理しているそれぞれの建物住所が現実と合っているのかを確認したり、その建物住所が現在はどのように変わったかを把握したりすることができる。ユーザはその住所リストから、推定された現在の建物住所の確からしさを知ることもできる。
【0066】
処理フローS1に示すように、一例では、住所管理システム10は第1地物座標および第2地物座標を参照して、入力された地物住所と、第1地物住所と、第2地物住所との対応関係を判定し、入力された地物住所に対応する第1地物住所を現在の地物住所として推定する。
【0067】
[効果]
以上説明したように、本開示の一側面に係るコンピュータシステムは、個々の最新の地物住所を示す第1地図情報を記憶する第1データベースと、第1地図情報とは少なくとも一部が異なる第2地図情報を記憶する第2データベースとの双方を参照して、入力された地物住所から現在の地物住所を推定する制御部を備える。
【0068】
本開示の一側面に係るプログラムは、個々の最新の地物住所を示す第1地図情報を記憶する第1データベースと、前記第1地図情報とは少なくとも一部が異なる第2地図情報を記憶する第2データベースとの双方を参照して、入力された地物住所から現在の地物住所を推定するステップをコンピュータに実行させる。
【0069】
このような側面においては、最新の地図情報である第1地図情報だけでなく、その第1地図情報とは少なくとも一部が異なる第2地図情報も参照することで、現在の地物住所を精度良く推定することが可能になる。その結果、入力された地物住所を現在の地物住所に変換できる可能性も高まる。
【0070】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、第1地図情報が、第1地物住所および第1地物座標の個々の組合せを示し、第2地図情報が、第2地物住所および第2地物座標の個々の組合せを示し、制御部が、第1地物座標および第2地物座標を参照して、入力された地物住所と、第1地物住所と、第2地物住所との対応関係を判定し、入力された地物住所に対応する第1地物住所を現在の地物住所として推定してもよい。この構成により第1地物住所と第2地物住所との位置関係を導出できるので、入力された地物住所と、第1地物住所と、第2地物住所との対応関係をより正確に特定できる。その結果、現在の地物住所をより精度良く推定できる。
【0071】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、制御部が、第2地図情報を参照して、入力された地物住所に対応する第2地物住所および第2地物座標を特定し、第1地図情報を参照して、特定された第2地物座標に対応する第1地物座標を特定し、特定された第1地物座標に対応する第1地物住所を現在の地物住所として推定してもよい。第2地図情報を参照して最新の地物住所への手掛かりを得た後に、地物座標に基づいて第1地物住所を取得することで、現在の地物住所を精度良く推定できる。
【0072】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、制御部が、第1地図情報を参照して、入力された地物住所に対応する第1地物住所を特定し、特定された第1地物住所の精度を推定し、推定された精度が所与の基準を満たす場合には、第2地図情報を参照することなく、特定された第1地物住所を現在の地物住所として推定し、推定された精度が基準を満たさない場合には、第1地図情報および第2地図情報を参照して、特定された第1地物座標に対応する第1地物住所を現在の地物住所として推定してもよい。この手順によって現在の地物住所を推定することで、必要な場合に限って第2地図情報が参照されるので、コンピュータシステムの処理量を押さえつつ現在の地物住所を精度良く推定できる。
【0073】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、第1地図情報が、第1時期に用意された最新の地物住所および最新の地物座標の個々の組合せを示し、第2地図情報が、第1時期よりも前の第2時期に用意された過去の地物住所および過去の地物座標の個々の組合せを示し、制御部が、入力された地物住所に対応する最新の地物住所を現在の地物住所として推定してもよい。最新の地図情報に加えて過去の地図情報を参照することで、地物住所の変更の履歴を手掛かりとして用いて現在の地物住所を精度良く推定できる。
【0074】
他の側面に係るコンピュータシステムでは、第1地図情報が、最新の建物住所および最新の建物座標の個々の組合せを示し、第2地図情報が、土地住所および土地座標の個々の組合せを示し、制御部が、入力された建物住所に対応する最新の建物住所を現在の地物住所として推定してもよい。最新の建物住所に加えて土地住所を参照することで、地物住所の体系の違いを手掛かりとして用いて現在の地物住所を精度良く推定できる。
【0075】
[変形例]
以上、本開示をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0076】
対象住所が土地住所である場合には、住所管理システム10は処理フローS1と同様の処理手順によって、入力された土地住所に対応する最新の土地住所を現在の土地住所として推定し得る。現在の土地住所(地番)を推定することで、分筆、合筆、土地の利用履歴、土壌汚染の有無などのような、土地そのものの状況を把握することが可能になる。建物ではない地物(例えば、浄化槽、防災無線、防災倉庫、消防団格納庫、ため池、鳥獣害対策用の柵、消火栓、防火水槽、公園、看板、防犯灯、街路灯、ごみステーション、ソーラーパネルなど)に関する管理、あるいは、土地住所(地番)で作成または整備された登記簿、建築計画などの各種情報の管理も、その推定によって容易になり得る。
【0077】
現在の土地住所を推定する場合には、住所管理システム10は最新の公図データベース23を第1データベースとして用い、最新の公図情報を第1地図情報として処理する。したがって、第1地物住所は最新の土地住所であり、第1地物座標は最新の土地座標である。更に、住所管理システム10は過去の公図データベース24、最新の建物地図データベース21、および過去の建物地図データベース22を第2データベースとして用い、過去の公図情報、最新の建物地図情報、および過去の建物地図情報を第2地図情報として処理する。第2地図情報が過去の公図情報である場合には、第2地物住所は過去の土地住所であり、第2地物座標は過去の土地座標である。第2地図情報が最新の建物地図情報である場合には、第2地物住所は最新の建物住所であり、第2地物座標は最新の建物座標である。第2地図情報が過去の建物地図情報である場合には、第2地物住所は過去の建物住所であり、第2地物座標は過去の建物座標である。
【0078】
上記の処理フローS1では、住所管理システム10は過去の建物地図データベース22、最新の公図データベース23、および過去の公図データベース24を第2データベースとして用いる。しかし、住所管理システム10はこの三つのデータベースのうちの任意の一つまたは二つのみを第2データベースとして用いてもよい。すなわち、コンピュータシステムによって用いられる第2データベースの個数は限定されない。
【0079】
上記の処理フローS1では、住所管理システム10は第2データベースとして、過去の建物地図データベース22、最新の公図データベース23、および過去の公図データベース24をこの順に参照する。しかし、複数の第2データベースを用いる場合において、コンピュータシステムは個々の第2データベースを任意の順序で参照してもよい。
【0080】
第2データベースとして用いられる過去の地図情報のデータベースは、複数の世代にわたって複数個存在してもよい。すなわち、或る一種類の地図情報について、複数の過去版のデータベースが存在してもよい。この場合には、コンピュータシステムはそれぞれの過去版のデータベースを第2データベースとして用いる。例えば、コンピュータシステムは複数の過去版のデータベースを、時間を遡るかたちで順に参照しながら、入力された地物住所から現在の地物住所を推定してもよい。
【0081】
本開示において、第1コンピュータが第2コンピュータ“に向けて”データまたは情報を送信するとは、第1コンピュータが、直接に、または少なくとも一つの通信装置を介して(すなわち間接的に)、第2コンピュータにデータまたは情報を送信することを意味する。
【0082】
本開示に係るコンピュータシステムは、データベース群を備えるスタンドアロンのコンピュータによって実現されてもよい。
【0083】
本開示において、「少なくとも一つのプロセッサが、第1の処理を実行し、第2の処理を実行し、…第nの処理を実行する。」との表現、またはこれに対応する表現は、第1の処理から第nの処理までのn個の処理の実行主体(すなわちプロセッサ)が途中で変わる場合を含む概念を示す。すなわち、この表現は、n個の処理のすべてが同じプロセッサで実行される場合と、n個の処理においてプロセッサが任意の方針で変わる場合との双方を含む概念を示す。
【0084】
コンピュータシステム内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」の二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【0085】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0086】
以上の実施形態の全部または一部に記載された態様は、現在の地物住所の推定、移動経路または移動履歴に関する制御、処理速度の向上、処理精度の向上、使い勝手の向上、データを利用した機能の向上または適切な機能の提供その他の機能向上または適切な機能の提供、データおよび/またはプログラムの容量の削減、装置および/またはシステムの小型化等の適切なデータ、プログラム、記録媒体、装置および/またはシステムの提供、並びにデータ、プログラム、装置またはシステムの制作・製造コストの削減、制作・製造の容易化、制作・製造時間の短縮等のデータ、プログラム、記録媒体、装置および/またはシステムの制作・製造の適切化のいずれか一つの課題を解決する。
【符号の説明】
【0087】
10…住所管理システム、11…取得部、12…照合部、13…出力部、20…データベース群、21…最新の建物地図データベース、22…過去の建物地図データベース、23…最新の公図データベース、24…過去の公図データベース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7